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法曹制度検討会(第25回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)

1 日時
平成16年7月1日(木) 13:00〜15:10

2 場所
永田町合同庁舎 第4共用会議室

3 出席者
(委 員) 伊藤 眞(座長)、太田 茂、岡田ヒロミ、木村利人、佐々木茂美、田中成明、中川英彦、平山正剛、松尾龍彦(敬称略)
(説明者) 小川宏嗣日本弁護士連合会副会長、岩井重一日本弁護士連合会副会長、大谷晃大法務省大臣官房司法法制部司法法制課長、中村慎最高裁判所事務総局総務局第一課長、戸倉三郎最高裁判所事務総局人事局参事官
(事務局) 山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、植村稔参事官

4 議題
(1)第159回国会における法曹制度検討会関係の立法について
(2)企業法務等の位置付け−いわゆる特任検事、副検事、簡易裁判所判事の経験者の活用等を検討し、少なくとも、いわゆる特任検事経験者に対して法曹資格を付与すること(特任検事経験者の活用等を除く。)
(3)その他

5 配布資料

【事務局配布資料】
[副検事、簡易裁判所判事の経験者の活用等]
○資料25−1 副検事、簡易裁判所判事の経験者の活用等について
○資料25−2 副検事、簡易裁判所判事の経験者の活用等・参照条文

【日弁連配布資料】
[副検事、簡易裁判所判事の経験者の活用等]
○資料副検事、簡易裁判所判事経験者の専門性の活用について
[その他]
○資料1  弁護士制度の改革の到達点
○資料2  日本弁護士連合会会則
○資料2−2 議事規程
○資料2−3 弁護士法人規程
○資料2−4 公職就任の届出等に関する規程
○資料2−5 営利業務の届出等に関する規程
○資料2−6 綱紀委員会及び綱紀手続に関する規程
○資料2−7 綱紀審査会及び綱紀審査手続に関する規程
○資料2−8 懲戒委員会及び懲戒手続に関する規程
○資料2−9 懲戒処分の公告及び公表等に関する規程
○資料2−10 弁護士会の懲戒の通知に関する規程
○資料2−11 外国法事務弁護士の公職就任の届出等に関する規程
○資料2−12 外国法事務弁護士の営利業務の届出等に関する規程
○資料2−13 外国法事務弁護士綱紀委員会及び綱紀手続に関する規程
○資料2−14 外国法事務弁護士懲戒委員会及び懲戒手続に関する規程
○資料2−15 外国法事務弁護士懲戒処分の公告及び公表等に関する規程
○資料2−16 弁護士の報酬に関する規程
○資料2−17 外国法事務弁護士の報酬に関する規程
○資料2−18 営利業務及び公務に従事する弁護士に対する弁護士会及び日本弁護士連合会の指導・監督に関する基準
○資料2−19 懲戒処分の公表等に関する規則
○資料3 弁護士常駐型公設事務所一覧
○資料3−2 法律相談センター開設状況一覧
○資料4 弁護士法5条にかかる弁護士資格認定のための研修について
○資料4−2 弁護士資格付与のための指定研修平成16年度実施要領
○資料4−3 カリキュラム表
○資料4−4 弁護士法5条による弁護士資格認定者数等について

【法務省、日弁連配布資料】
○資料 検事の弁護士職務経験制度の運用に関する取りまとめ

【法務省配布資料】
[副検事、簡易裁判所判事の経験者の活用等]
○資料1 副検事について
○資料2 副検事の選考方法
(別添1)検察官・公証人特別任用等審査会委員名簿
(別添2)第112回副検事の選考筆記試験問題(平成15年8月11日実施)
(別添3)副検事の選考受験者数及び合格者数調
○資料3 年度別副検事任官者・現在員数調
○資料4 年度別副検事退職者数調
○資料5 副検事の職務内容等
○資料6 副検事の研修等
○資料7 平成5年以降に退職した副検事の分布状況

【最高裁配布資料】
[副検事、簡易裁判所判事の経験者の活用等]
○資料1 簡易裁判所判事の選考手続について
○資料2 選考による簡易裁判所判事に対する研修の概要
○資料3 簡易裁判所判事の職務内容
○資料4 選考による簡易裁判所判事の新規任命者数
○資料5 選考による簡易裁判所判事退官者数
○資料6 簡易裁判所判事の現在員数
○資料7 簡易裁判所判事選考受験者数・合格者数・合格率推移
[その他]
(判事補の経験の多様化について)
○資料1 判事補の経験多様化に関する基本方針
(平成16年6月23日最高裁判所裁判官会議議決)
○資料2 判事補の経験の多様化について
○資料3 判事補の弁護士職務経験制度に関する取りまとめ
(平成16年6月23日最高裁判所・日本弁護士連合会)
(裁判員の人事評価について)
○資料4 裁判官の人事評価に関する規則
(平成16年最高裁判所規則第1号)
○資料5 裁判官の新しい人事評価制度の概要
(調停官制度について)
○資料6 調停官配置表(平成16年4月1日現在)

【委員配布資料】
 ○副検事、簡易裁判所判事の経験者の活用問題についての意見(抄)(釜田委員)

6 議事

【伊藤座長】所定の時刻でございますので、第25回法曹制度検討会を始めさせていただきたいと思います。御多忙の中、お集まりいただきましてありがとうございます。
 奥野委員、釜田委員は所用のために御欠席ということでございます。
 それでは、議事に先立ちまして、事務局から配布資料の確認がございます。

【植村参事官】それでは、配布資料の確認をさせていただきます。
 事務局から配布させていただきましたのは、資料25−1と25−2でございます。
 また、本日御欠席の釜田委員から、本日の議題(2)に関します御意見が提出されております。
 さらに日弁連、法務省、最高裁から、次第に記載しましたとおり、多数の資料が配布されております。以上、御紹介いたしました。

【伊藤座長】それでは、本日は次第にございますとおり、まず議題(1)の第159回国会における法曹制度検討会関係の立法について事務局から説明をお願いします。続いて議題(2)の問題、具体的には副検事、簡易裁判所判事の経験者の活用等の問題につきまして議事をお願いします。最後に議題(3)といたしまして、前回、開催の検討会から半年以上経過しておりますので、関係機関タイムといたしまして、その間の状況につきまして、関係機関からの報告をお願いしたいと存じます。
 そこで早速議事に入りますが、まず第159回国会における法曹制度検討会関係の立法について、事務局から説明をお願いいたします。

【大野事務局次長】それでは、去る6月16日に閉会いたしました第159回国会における法曹制度検討会関係の立法につきまして手短に御説明いたします。
 第159回国会には、法曹制度検討会関係では、委員の皆様方に御検討をいただき取りまとめていただきました方向に沿いまして、「弁護士法の一部を改正する法律案」と「判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律案」の2本の法案を内閣から国会に提出いたしました。委員の皆様方には、この3月に法律案関係資料をお送りさせていただいております。「このうち弁護士法の一部を改正する法律案」は、弁護士法に定めております弁護士資格の特例措置を改正するものでございまして、その中心は法律学の大学教授等に関する特例措置を廃止する点等でございました。衆議院で可決された後、3月31日原案どおり参議院で可決され成立いたしました。昨年の通常国会での弁護士法の改正部分とともに、既に4月1日から施行されております。
 続いて、「判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律案」でございます。判事補、検事に多様な経験を積ませるため、最高裁や法務省におきましては、これまでにも行政省庁への出向、民間企業等への派遣、海外留学、在外公館での勤務等の機会を設けてきたところでございます。この法律案は、こうした経験多様化のための新しいメニューといたしまして、判事補や検事の身分を離れ、弁護士としての職務経験を積むことを可能とするものでございます。衆議院で可決後、6月11日原案どおり参議院で可決され成立し、6月18日に公布されました。公布の日から1年以内の政令で定める日から施行されることとなっております。
 以上、第159回国会で成立いたしました当検討会関係の二つの法律の御説明をさせていただきました。
 改めて委員の皆様方に感謝申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、議題(2)の副検事、簡易裁判所判事の経験者の活用等の問題につきまして議事をお願いしたいと思います。法務省、最高裁、日弁連の順で、この問題につきましてのプレゼンテーションをお願いいたします。大体それぞれ10分程度でお願いしたいと存じます。
 まず副検事の経験者の活用等につきまして、法務省からプレゼンテーションをお願いいたします。どうぞ、大谷さん。

【法務省(大谷司法法制課長)】法務省司法法制部司法法制課長の大谷でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、私から副検事というものについて御説明をさせていただきます。一昨年の検討会におきまして特任検事ということについて法務省から説明させていただきました。その際、特任検事の給源は副検事であると、そう御説明させていただきまして、そのときにも副検事のことについて御説明させていただきましたが、今回はそれよりも若干詳しく副検事の制度、あるいはその仕事、人となり、そういったものについて説明させていただきたいと思います。
 お手元に「副検事関係資料」という資料が行っておるかと思いますが、これに基づいて御説明をさせていただきます。
 まず副検事とは一体何かということなのですけれども、資料1にまとめてあるとおりでございまして、広く検察官というものには検事総長、次長検事、検事長、検事、副検事とこの5種類がございます。要するに副検事というのは検察官の種類の一つでございます。ただ、検事と副検事といった場合に、実は自らの責任において捜査・公判という検察事務に従事するという職務の内容、権限ということで差があるわけではございません。ただ、副検事につきましては、検事に比べて補職の範囲が制限されており、基本的には区検察庁、これは簡易裁判所に相対するものなのですけれども、区検察庁の検察官の職のみにこれを補するとされている点が検事との違いでございます。ですから制度上は原則として区検察庁に対応する簡易裁判所の管轄に係る事件、例えば窃盗であるとか、横領、そういったものについて捜査・公判に従事するということが想定されているものでございます。
 しかしながら、実際に扱っている事件はそのような簡裁管轄事件に限られておりません。検察庁法第12条により、地方検察庁の検察官の仕事も取扱うことができるようになっております。こういった措置によりまして、副検事も地方検察庁の検察官事務取扱という資格で、例えば、詐欺、業務上横領、覚せい剤取締法違反、そういった地方裁判所の管轄に係る事件、こういったものについての捜査・公判にも従事しております。このような地方検察庁で扱い事件についても相当程度この副検事が処理をしているのが実情でございます。
 では、どういった人がこのような副検事になるのか、そのあたりのことについて御説明をさせていただきます。資料2を見ていただきますと、ここに副検事の選考方法を取りまとめております。その給源となる人材なのですけれども、第2として受験資格が書いてあります。(1)は司法試験に合格した者ですけれども、(2)はそこに書いたような、原則として俸給表で4級以上の検察事務官、法務事務官、裁判所事務官、裁判所書記官等そういう国家公務員がこの母体となっております。こういった4級の俸給に達して、さらにそこで3年以上その職に在った者というのが受験資格になっておりまして、これだけ見ますと、何か3年だけ仕事をしているように見えますけれども、決してそうではなくて、俸給表の4級に達するためには、一般的に大学を卒業しまして国家公務員のⅡ種試験に合格して、検察事務官になった者を例にとりますと、大体10年以上勤務しなければこの受験資格を得ることはできない、そういうような状況になっております。
 次に副検事選考試験の中身なのですが、次のページをめくっていただきますと書いてありますとおり、一つは、まず筆記試験、第1次選考ということで筆記試験を行います。第2次選考で口述試験があります。
 その科目につきましては、ここに書いてありますとおり、憲法、民法、刑法、刑事訴訟法、検察庁法及び一般教養となっております。特に民法が試験科目になっていることに注目していただきたいと思います。
 この副検事選考の試験問題の具体例につきましては、2ページ後にありますけれども、別添2という形で、これは平成15年8月に実施したものですけれども、その一例として挙げております。後ほど詳しく御覧いただければいいのですけれども、基本的に司法試験を指向した内容、形式で、法律に関する基本的な理解を問う問題等が出題されております。難度も相当高く、次のページ、別添3にありますような受験者数、合格者数になっておりまして、この表の一番下にありますとおり、平成15年度につきましては、最終合格率約13%ということになっております。合格者の平均年齢は30代後半ということです。
 ここで、特にお伝えしたいことは、副検事の経験者が全国各地に所在しているということです。これは資料の一番最後の資料7を御覧になっていただきたいのですが、平成5年4月以降に副検事を退職された方が現在どこにお住まいなのか、これを都道府県別にあらわしたものなのですけれども、北は北海道から南は沖縄まで全都道府県に所在しております。今、御説明したとおり、副検事というのは検察事務官であるとか、裁判所の職員、そういったものを出身母体としておりますので、いずれも地元で就職し退職後はまた地元に戻って暮らす方が非常に多いというのが実情でございます。このように副検事出身者につきましては、全国各地に所在しているということから、特に弁護士の少ない地域では、その専門性を活用するメリットは大きいと思われます。
 一方、こういった副検事の能力についてどう担保されているのかという問題について若干御説明をさせていただきます。既に説明しましたように、長年の検察事務官等としての経験、これに加えまして、副検事試験というかなり難しい選考を経て選抜されます。そして、これに加えまして、先ほども申し上げましたように、副検事任官後は、区検察庁の検察官の職に補され、その区検に対応する簡易裁判所に係る事件の捜査・公判に従事する。それとともに地方検察庁の検察官事務取扱いとして、地方裁判所の管轄に係る事件、この捜査・公判にも従事しているという状況にあります。こうやって実際の現場でそういう仕事をしてそのスキルなり能力を磨いております。そして、検察庁の場合には必ず決裁というのがございますから、そこで次席検事、検事正、そういった者からの決裁を受けながら、スキルを磨いていくという状況にございます。
今まで副検事が、例えば地方裁判所における訴訟遂行に支障が出ているのかといえば、そういうようなことは一切ございません。副検事の職務は今申し上げましたように、あくまでも刑事事件が中心になります。しかしながら刑事事件の中にも、例えば不動産売買をめぐる詐欺事件であるとか、競売入札妨害の事件、あるいは企業を舞台とした特捜事件、企業活動の全般を把握する必要のある脱税事件、財政・経済事件あるいは民事に絡む事件を相当数扱うことになります。そういった事件を扱うのには刑事的な知識だけではなくて、民事の実体法や手続法の知識もないと、こういうものには十分対処できません。こうしたものについても日頃の事件を通じて、知識、能力、実務の研鑽を積み、そういった実務経験を有していると言えると思います。
 そのほか、日頃の仕事を通じての研鑽のほかに、資料の中の資料6にまとめましたが、一定期間ごとに研修を行っております。任官1年目につきましては、ここに書いていますように、新任副検事の実務研修を行っております。それから、5年目に第2次研修、12年目に第3次研修といったように、経験年数に応じていろいろな研修が実施されております。こういう形で日頃の実務を通じ、あるいは研修制度を通じ、その能力を担保するようなにしておりまして、法律の専門家として、その職務を適正に行うことができる能力を身につけていると考えています。
 こういった副検事の経験者、この専門性をどう活用していくかという問題について若干御説明させていただきます。このような副検事の経験者につきまして、その専門性は副検事を退官した後につきましても、幅広く社会において活用して、それを社会に還元するということが、今言われています国民に対して提供される法律サービスの向上にも資すると思います。また、社会における有意な人材の活用という観点からも望ましいのではないかと思います。そして、副検事経験者自体の立場から言いますと、長年の公務を通じていろいろ培ってきた専門性、こういったものを広く社会に還元して、いわば社会に対する恩返しをしたいと、そのように考えている者が非常に多いのも実情でございます。私も現場でこういう副検事の皆さんと一緒に仕事をしてきたわけですけれども、こういった人たちと一緒に仕事をしてきた者としては、そういった謙虚な希望を叶える場を与えていただきたいと切に願う次第でございます。
 具体的には、副検事に一定期間以上在職した者に対して、例えば限定的な弁護士資格とでもいうべき資格、そういったものを付与することが一つの案としては考えられるかと思います。
 先ほども申し上げましたように、副検事は、主として簡易裁判所管轄の、そして場合によってはかなり多くですが、地方裁判所管轄の刑事事件の捜査・公判を通じて法律専門家としての実務経験を有しております。それに加え刑事事件というアプローチですけれども、被害者の被害回復についても関わってきたものであります。ですから、そういう刑事事件、刑事手続、そういったものを中心に、その専門性を活用することが望ましいのではないかと考えられます。
 また、具体的には、例えば刑事に関して、本来のベースである簡易裁判所管轄の事件について弁護人となる権限であるとか、その他、そういう各種刑事関係の手続の代理権などを付与するというようなことが一つの案としては考えられます。また、民事についても、全てというわけにはいかないでしょうけれども、そういった刑事事件、犯罪行為をポイントにして、それに関する、例えば法律相談、訴訟代理、そういったものについて、ある程度の権限を与えるというようなこともまた考えられるかと思います。
 一方、実は司法書士というものがございまして、これについては、先般来の改革等により、既に簡易裁判所管轄の民事訴訟の代理権等が認められております。ですから副検事につきましては、まさに現に簡易裁判所あるいは地方裁判所の事件を取扱っているものでありますから、法廷等の活動につきましては、司法書士に優るとも劣らない、そういった能力、経験を有するものであることも御理解いただきたいと思います。
 また、これは制度を創設するという話ではありませんが、法務省といたしましても、今般の司法制度改革により実現した各種制度の運用に関しましては、法律に関する専門的能力を有している者として、全国各地に所在する副検事を積極的に活用する方策、こういったことについて引き続き検討してまいりたいと考えております。例えばADRというようなものがその一つでありまして、現在このADRに関係する法律の制定に向けての検討がまさにこの本部で進められているわけでありますが、今後ますますこのADRの手続は多様化していくでしょうし、また活性化していくものと考えられます。ADRというのは裁判手続ではできない、そういった柔軟な解決を行うことに特徴がありますが、やはり法律を紛争解決の規範として用いるADR、それが中心的な役割を果たすと考えられるところであります。そういった各種ADR機関にこういった副検事の経験者を活用すること、特に副検事の経験者が在職時に得意とした交通事故に関するもの、犯罪被害に関する損害賠償に係る紛争についてのADRの手続者として活用すること、そういったことも大変有益なのではないかと思っております。
 るる述べましたが、非常に簡単ですが、私の方からの御説明は以上であります。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。
 引き続きまして、簡易裁判所判事の経験者の活用等につきまして、最高裁からプレゼンテーションをお願いいたします。中村さん、どうぞよろしく。

【最高裁(中村総務局第一課長)】最高裁判所総務局第一課長の中村でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は、簡易裁判所判事の有する専門性の活用について御説明させていただきます。まず簡易裁判所判事がどのような専門性を有するかについて、簡易裁判所の判事の任命資格、選考手続、職務内容の面から簡単に御説明させていただきます。
 まず任命資格でございますが、本部事務局から資料25−2というのが配られておりますが、その4ページ目に裁判所法の抜粋が記載されております。裁判所法第44条、45条というところで、簡易裁判所判事の任命資格が記載されております。第44条につきましては、いわゆる法曹資格がある者の規定でございますが、大多数の簡易裁判所判事はこの第45条というところの、いわゆる法曹資格を有しない者について、多年司法事務にたずさわり、その他簡易裁判所判事の職務に必要な学識経験のある者、ということの任命資格に基づいて、選考により簡易裁判所判事に任命されているということになります。
 この選考手続でございますが、最高裁からお配りさせていただいています「簡易裁判所判事について」の資料1を御覧いただきたいと思います。ここに表を書かせていただいておりますが、2段階の選考手続になっております。まず第1段階といたしまして、各地方裁判所に有識者を含めて置かれております簡易裁判所判事推薦委員会というところにおきまして、任官希望する者が、人物、法律、実務経験等で簡易裁判所判事として適当と認められるかどうかというのを審査しております。その審査に基づきまして、適当と認められた場合には高裁長官を経まして、最高裁に置かれました簡易裁判所判事選考委員会に対して、適任者として推薦がされます。この推薦を受けた者の中から、この選考委員会が筆記試験、口述試験という第1次選考、第2次選考というさらに2段階の試験を経て選考になります。
 この第1次試験の筆記試験でございますが、科目といたしましては、憲法、民法、刑法、民訴、刑訴の5科目の筆記(論文式)による法律試験ということでありまして、いわゆる現在の司法試験の論文式試験の試験科目と概ね同じになっております。
 それを合格した者については、さらに第2次選考ということで口述試験が行われております。この口述試験については、法律問題、一般的な身上、経歴、適性等の試問が行われるということで、法律問題については現在の司法試験の口述試験と概ね同じということになっております。
 資料7というのを御覧いただきたいのですが、これがここ10年間の平成5年以降の合格者・合格率の推移であります。ここ3年間で見ますと、大体毎年50余名程度が合格いたしまして、平均的に言いますと、合格率が33%程度ということで、かなり厳しい試験ということが言えると思います。
 このような選考手続を経て、最高裁から内閣の方に、簡易裁判所判事候補者を指名いたしまして、これを受けて内閣によって簡易裁判所が任命されるという手続になっております。
 さらに簡易裁判所判事に任命された後においても、相当期間にわたる密度の濃い研修が行われております。資料2を御覧いただきたいと思います。これが選考によって任命された簡易裁判所判事に対する研修の概要でございます。具体的に申しますと、任官後約8カ月にわたって、初任者研修1、2、3というものでありますが、合計8カ月であるわけですけれども、まず最初の8カ月みっちりと研修を行っております。
 第1ステップとして、まず配属庁で3カ月程度、先輩の裁判官から実際の事件処理の指導を受けます。そして第2ステップとして、司法研修所において2カ月程度、民事、刑事事件の講義を受けたり、司法修習生の教材などを使用しながら、判決起案、模擬裁判などを行って、教官等から講評を受けたりして研修を続けます。さらに第3ステップということで、また配属庁に戻り、それまで約5カ月間の研修を踏まえて現実の事件を処理しながら、さらに研修を重ねることになります。任官後も3年目、5年目、それから6年目以降について、それぞれ司法研修所等において、実際の事件処理や訴訟運営に関する研究等を行い、順次高度な研修へステップアップをしながら能力向上を図っているという次第であります。
次に簡易裁判所判事の職務内容について御説明させていただきます。横の表で恐縮なのですが、資料3を御覧ください。簡易裁判所判事の職務内容、権限は、先ほど申しましたいわゆる法曹資格を有する簡易裁判所判事と全く同一であります。簡易裁判所というのは、地方裁判所に比べ比較的軽微な事件を取扱う裁判所でありますが、簡易裁判所の管轄に属する事件について簡易裁判所判事は裁判官として単独で法廷を主宰し必要な事実認定や法律判断を行っているということであります。ここに簡易裁判所の民事事件、刑事事件ということで例を挙げさせていただいております。民事事件については、比較的少額な第一審訴訟、原則として第1回の期日で審理・判決まで行う少額訴訟、調停等、刑事事件につきましては、いわゆる罰金等、比較的軽微な犯罪に関する第一審訴訟、令状、そういった事件につきまして、簡易裁判所判事一人(単独)で処理しております。裁判官として中立公正な立場で法廷を主宰し必要な判断を行っているということでございます。
 さらに簡易裁判所は、国民に身近な裁判所として、いわゆる弁護士のゼロワン地域を含みます全国438カ所に設けられております。簡易裁判所判事はこうした簡易裁判所において、適正・迅速な事件処理をするべく懸命に執務に励んでいるのが実情でございます。とりわけ簡易裁判所の事件の特徴といたしまして本人の申立事件が多いことが挙げられます。民事訴訟事件、民事調停事件で言いますと、双方とも代理人が付いてないという事件が全体の9割以上を占めているのが現状でございます。こういった事件については、裁判官としての中立公正という限界はございますが、その限界の範囲内で本人に対し、裁判手続等を丹念に説明し又必要なものについては適切に釈明等を行いながら数多くの事件を処理しているというのが実情でございます。また、特に地方の小規模な簡易裁判所におきましては、簡易裁判所判事があらゆる種類の事件を一人で担当しているのが実情でありまして、職務内容も多岐にわたっているということでございます。
 このように、選考による簡易裁判所判事につきましては、厳しい試験を経て任命され、また現実の執務において多数の事件を処理しながら、法律実務家としての能力を高めながら経験を重ねておりまして、実体法、手続法の両面にわたり相当程度高い専門性を有していると考えております。
 このような簡易裁判所判事の専門性を活用していくということは、司法制度を利用しやすく、その機能を高める上で極めて有用であると考えております。具体的に申し上げますと、我が国における法曹人口の不足、こういうことを反映した地方における著しい弁護士過疎、あるいは簡易裁判所事件における弁護士選任事件の少なさを解消するために簡易裁判所判事の経験者に対しまして、簡易裁判所における民事事件の訴訟代理権や刑事事件の弁護人になる権限等を与えるということが考えられると思います。この点は既に司法制度改革審議会の際にも委員から御指摘があり、さらに古くからも議論されているところであります。
 さきに御説明させていただきましたように、簡易裁判所判事は、裁判官として中立公正な立場で法廷を主宰し必要な判断を行っているということでございまして、このような多岐にわたる職務経験によって培われた専門性に照らしませば、簡易裁判所における訴訟代理権等を与えるということも、国民の司法に対する利便を一層高めるために効果的な方法の一つと言えるのではないかと考えております。
 さらに簡易裁判所判事は、当事者の話し合いによって紛争を解決する、いわゆる調停手続におきまして、調停主任といたしまして手続を主宰した経験を有します。また、本人自身が申し立てる民事事件等において数多く担当しているという実情もございますので、現在その整備が検討されておりますADRの手続主宰者として活用することもまた有益であると考えております。
 いずれにいたしましても、国民の利便性、司法制度の機能の向上を図るためには、司法制度を担う法曹は、より多様な給源から、多数生まれた方が望ましいと考えておりますところで、最高裁といたしましても、簡易裁判所判事の有する専門性の活用については、簡易裁判所に限った限定的な資格の付与ということを積極的に検討するのが適当であると考えているところでございます。
 以上、簡単ではございますが、簡易裁判所判事の有する専門性の活用についての御説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。
 続きまして、副検事、簡易裁判所判事の経験者の活用等の問題について、日弁連からプレゼンテーションをお願いいたします。小川さんどうぞ。

【日弁連(小川副会長)】日弁連の副会長の小川でございます。よろしくお願いいたします。それでは日弁連のプレゼンテーションをさせていただきます。
 日弁連としましては、結論的に副検事、簡易裁判所判事の経験者の活用問題に対して、新たに弁護士に準ずる資格を創設し、これを副検事、簡易裁判所判事の経験者に付与するということについては反対いたします。副検事、簡易裁判所判事の経験者の活用は、新たな資格付与によることなく個別具体的に検討していただきたいと、このように考えております。
 理由について述べさせていただきますが、まずは司法制度改革審議会意見書の求めるの法曹資格、法曹養成とは一体何であったのか、この点から御説明していきたいと思います。百年に一度と言われる今次の司法制度改革の一つの柱は、司法制度の担い手となるべき法曹及び法曹資格者に対して、従前以上の高い資質と能力の確保と向上を求めており、同時に法曹人口の大幅増員を図ると、これが大きな柱になっており、既に現実化しつつあります。審議会意見書を踏まえて、今年の4月1日より法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度が既にスタートしております。4年後の平成20年4月には、この制度に基づいて多数の弁護士が誕生します。その結果、現在2万人の弁護士人口が平成30年には5万人になります。
 このたびの弁護士法の一部改正によりまして、旧弁護士法第5条3号に基づく例外的な弁護士資格の制度、つまり一定の大学の法律学の教授等に与えられておりました弁護士資格、この制度は廃止されました。それで結局この審議会意見書の方針としては、司法試験に合格した者のみ弁護士資格を付与するという、こういう弁護士資格制度の基本的原則が明確にされております。審議会意見書は、特任検事、副検事、簡易裁判所判事の経験者の活用等の検討に関し、特任検事経験者を副検事、簡易裁判所判事の経験者と区別して特任検事の法曹資格の付与という、このような制度整備を行うということを述べており、既にこの法律改正はなされております。内閣の司法制度改革推進計画に基づいて法律が改正されましたことは皆さん御存じのとおりでございます。
 ちなみにこの推進計画には、副検事、簡易裁判所判事の経験者に対して新しい法曹に準ずる資格を創設して、この資格を付与するということは全く触れられておりません。現行の司法試験に合格しておらず、かつ司法修習を修了していない者、また新たな法曹養成制度によって法曹資格を取得する者でない副検事、簡易裁判所判事の経験者に対して、弁護士に準ずる資格を新しく創設して、これを付与するということは制度設計として審議会意見書の求める法曹養成、法曹資格に関する基本理念に私たちは逆行するものではないか、このように考えております。
 また、この審議会意見書の基本理念との関係だけではなく、司法制度の利用者の立場から見ましても、最高裁判所あるいは法務省が提起される弁護士に準ずる資格の創設は、後に述べますように、非常にいびつで分かりにくく、利用しにくいものと言わざるを得ません。それゆえに反対する次第でございます。
 ところで、司法制度改革によって弁護士人口は大幅に増加します。司法試験合格者数は、長らく500人程度で推移しておりましたが、平成11年度には1000名、平成14年度からは1200名、本年度からは1500名となり、平成22年度には3000名と大幅増加が見込まれております。その結果、平成30年には法曹人口は、先ほどお話しましたように5万人になると予想されております。弁護士人口は現在の2.5倍と増加します。簡易裁判所管轄の事件につきましても、弁護士は十分対応できる体制になると考えております。
 加えまして、当連合会と弁護士会の各単位会では、弁護士への司法アクセスの障害の解消に努力しております。法曹人口の大幅増加を待つまでもなく、既に日本弁護士連合会と各単位会は全国で弁護士への司法アクセス解消のための活動を行ってきております。資料3−2を資料として出させていただきましたが、法律相談センターは275カ所の活動を行っております。公設事務所では常駐型が27カ所、都市型が6カ所、法律相談拡張型、これは公設事務所併設といった方がいいかと思いますが、3カ所実施しております。現在も引き続いて大幅増加を目指して努力しております。
 なお、ゼロワン地域での法律相談センターの未設置場所は残すところ30カ所余になりました。公設事務所についても、本年度中に6カ所余増設されることになっております。このように弁護士会では、地域司法計画の展開、総合法律扶助制度と日本司法支援センターへの積極的な取組とその拡充等に努力しアクセス障害は必ず解消できるものと、このような方向で頑張っております。
 次に簡易裁判所判事、副検事の専門性と弁護士の職務の専門性について比較して考えてみたいと思います。
 刑事事件について最初に述べますが、刑事弁護の本質につきましては、単に刑事法、刑事手続に関する知識、経験を有するだけでは足りません。弁護士は精神的な基盤として、一民間人として、検察、警察という巨大な国家権力と対峙しながら、被疑者・被告人のために最善を尽くすこと、及び事案の解明に向けての事実上、法律上の様々な技術を習得することが不可欠でございます。簡易裁判所判事、副検事はこのような刑事弁護の本質に関わる精神的基盤と弁護技術を必ずしも有するとは思われません。
 次に簡易裁判所判事及び副検事の権限についても少し検討してみたいと思います。簡易裁判所判事の担当できる刑事事件は、裁判所法第33条1項に定められた軽微な事件に限られており、副検事の権限もこれに対応するものであります。簡易裁判所判事、副検事は、いずれも刑事法全般について実体法、手続法の全面にわたる知識を有しておられるかといいますと、必ずしもこの点はそうとは言えないと思われます。特に副検事の取扱事件について指摘しておきたいということは、本来、検事が行うべき地方裁判所管轄の捜査・公判に副検事が検察官事務取扱として従事していることであります。このことは検事の人員不足等、いわゆる肩代わりであります。変則的・例外的な状況を見直し改善するというのが本来の姿でもあるにも関わらず、このようなことを一般化、合理化して副検事に簡易裁判所の事件以外にも専門的な知識や経験があるというような考え方は本来これは本末転倒と言われてもやむを得ないものではないかと思います。司法試験合格者・法曹人口の大幅増加が図られますと、検事の数も大幅に増加されますので、副検事の肩代わり現象というのはむしろ改善され、副検事の職務というのは本来の職務に限局されていくようになるべきではないかと私たちは考えております。
 加えて副検事経験者の公正な弁護が必ずしも期待できるのかという点について触れてみたいと思います。副検事は、検察事務官時代を含めて長期間にわたり検事の指揮命令の下で執務し、副検事任命後も捜査・公判のみに従事しております。副検事退官後に検事に対して毅然たる態度で被疑者とか被告人を本当に弁護できるのかどうかという疑問もあります。ましてや先ほども触れられましたように、便宜退官時の最寄りの地域で執務されるということになりますと、担当検察官がかつての上司だとか同僚だとか、部下などに、そのような関係のある人たちに対して公正な観点から、依頼者の信頼をかち取れるかと、このような疑問も残されておりす。
 次に民事事件について簡単に述べます。副検事には民事事件の経験がないということ、あるいは極めて乏しいと言えると思います。簡易裁判所の判事の経験者が、民事事件の代理人たる専門性を有するということも必ずしも言えないと思います。民事裁判とは、私たちが非常に頭を痛めるところでありますが、まず弁護士が当事者の提供する様々な資料、情報、説明、認識等を基にして、当初は極めて不十分でありがちな事実関係を組み立てながら、証拠と照らし合わせながら、また証拠の収集や評価を行い、そして法律構成、事案の見通し、あるいは解決への粘り強い依頼者への説得等を加味をしながら最適な手続の選択をし、そのような一連の作業を行いながら弁護を行っております。裁判官は弁護士によって整理された主張、事実関係と証拠を照らし合わせながら、それで当否を判断されております。弁護士と裁判官との役割には根本的な違いがあるという点を一つ頭に置いていただきたいと思います。
 準弁護士資格の付与というものはいびつな制度でありまして、利用者の混乱とか不便を招かないかという疑問も持っております。最高裁、法務省の見解によりますと、副検事、簡易裁判所判事の経験者の取り扱うことができる裁判管轄は、簡易裁判所に限定されております。そのため、簡易裁判所判事経験者は民事の法律相談や示談事件、これは事件価額の制限はなく全てに関与することができることになります。しかし最終的な解決のために訴訟を起こすということになる、あるいは訴訟を起こされて受ける段になった、その段階で簡易裁判所の事件であればいいのでありますが、地裁管轄の事件ということになりますと、当然ここには権限がございません。最初相談を受けた段階と解決を図る裁判との関係では、依頼を受けた人からの納得できるような一連の解決が図れない、途中でおりなければいけないと、こういうような状況が生じ、非常に依頼者に混乱を招くことになります。
 同様に副検事経験者の刑事裁判についても同じようなことが言えます。と申しますのは、捜査段階の弁護ということになりますと、裁判管轄に関わらず相談を受け、あるいは被疑者レベルで接見等相談を受けることができますが、いったん公判になりまして、この起訴が地裁管轄ということになりますと、地裁の事件については弁護活動ができません。その段階ではいわゆるフル規格の今の弁護士に改めて依頼しなければならないと、このような事態が生じます。法曹資格のある弁護士とまた準弁護士資格を付与された副検事、簡易裁判所判事経験者との意見が異なるというようなことも生じます。利用者に混乱、不便、経済的な負担を招くようなこのような制度設計そのものに無理があるのではないかと、このように私たちは考えております。
 基本的には憲法第37条3項に定めております資格を有する弁護人とは、法曹資格を有する弁護人を想定しております。審議会意見書も刑事司法制度の改革に関する刑事弁護のあり方として、捜査・公判を通じて一貫して弁護することの重要性というのを強調していることを頭の片隅に置いていただけると非常にありがたいと思います。
 最後に副検事と簡易裁判所判事経験者の専門性の活用という点について一言述べさせていただきます。
 副検事、簡易裁判所判事の経験者は、現行制度では、先ほども触れられておりましたように司法書士になることができます。そして簡裁代理権を一定の範囲で持つことができます。また、改革審議会意見書が例示しますような多様な人材を確保する方策としては、私たちは調停制度における調停委員、簡易裁判所の民事訴訟における司法委員、新しい家庭裁判所、人事訴訟における参与員、あるいは今度作られます労働審判員における審判員等についても考えることができるだろうと思われます。特に司法教育のスタッフとしての活用というものが考えられます。とりわけ裁判員制度が今後実施されるわけでありますが、これを支えるために必要とされております学生や一般人や会社、地域への司法教育のスタッフとしての活用も極めて重要なことであろうかと考えております。
 したがいまして、副検事、簡易裁判所判事の経験者の有する専門性の活用という点では、準弁護士という新たな資格を創設して、これを付与するというのではなくて、以上のように個別具体的に検討いただきたいと、このように考えております。
 以上でございます。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの法務省、最高裁、日弁連のお三方のプレゼンテーションについての御質問をお願いいたします。どうぞ、どなたからでも結構です。木村委員どうぞ。

【木村委員】副検事の先ほどの御発表の件ですけれども、副検事というのは、検察の人事の全体のプログラムの中に組み込まれているので、人事異動などでは副検事も全国津々浦々を動き回るわけですね。

【法務省(大谷司法法制課長)】副検事は必ずしもそうではありません。

【木村委員】副検事はそうではないのですか。

【法務省(大谷司法法制課長)】必ずしも検事と同様に全国津々浦々を動くというわけではありません。最終的には御自分の出身地で勤務されるというのが一番多いですね。

【木村委員】先ほどのお話を聞いたり、副検事関係資料の7を見ますと、全国的に非常に分布されているので、私は全国各地を人事異動で回り、それに伴っていろいろなお仕事の内容や多方面な経験をするのかと思ったのですが、そうでないのですね。非常に地域的な性格を持った検事としての職業なのですね。

【法務省(大谷司法法制課長)】必ずしも1カ所にいるというわけではありません。もちろん転勤はありますけれども。基本的には、それぞれさっき申し上げましたように検察事務官であるとか裁判所事務官としての出身地から出発しますので、最終的にはそこで勤務を終える方が多いような形になっているというだけで、必ずしもずっと固定しているわけではありませんけれども、検事のように全国津々浦々2年毎に動いていくというのとはちょっと違います。

【木村委員】分かりました。重ねて御質問申し上げたいのですけれども、ということは、地域の区検察庁で、地元で貢献するような立場での弁護士に準ずる資格を与えるという制度を作るという御提案ですか。

【法務省(大谷司法法制課長)】地元の区検という仕切りは多分なく、例えば、簡裁事件を扱うというような形になるのかと思います。ある都道府県の一つだけで適用する代理権を与えるというのは制度的にはちょっと難しいのかなと思いますけれども。

【木村委員】今般の法務省からの御提案は、要するに今まで養った法的な経験を活かしたような形での弁護士資格を新たに創設するという御提案ですか。

【法務省(大谷司法法制課長)】それに近いです。既に、今、司法書士などはそういう限定的な弁護士に準ずるという、一部そういう訴訟代理権を有しているわけですから、そういうようなイメージですね。

【木村委員】そうですか。それは検察庁の内部ではいろいろな、内部のことを聞くわけにいかないのですけど、内部では意見は統一されているわけですね、そのことについて。

【法務省(大谷司法法制課長)】細かい具体的な制度設計が全てできているというわけではなくて、今般、多様な供給源の下で、法曹を充実させましょうという、こういうところから出発しているわけですから、そういう中で副検事の経験者のその経験を社会にどう活かしていくかと、そういう観点からこういう発想でこういう仕事ができるのではないかという御提案をさせていただいているだけです。

【木村委員】一つの御提案というわけですね。

【法務省(大谷司法法制課長)】そうです。ですから細かく、もうすぐにでも法律が出せるような、そんな細かい制度設計ができているわけではありません。こういうことが一つ考えられるのではないでしょうかということで御提案させていただいています。

【木村委員】その他の法務省側のそういう活用の具体的な事例としてはどんなことが挙げられるのでございますか。

【法務省(大谷司法法制課長)】具体的な事例ですか。

【木村委員】例えば、今、弁護士資格ということだけが出てきましたが、その他には何かありますでしょうか。

【法務省(大谷司法法制課長)】発想としては、先ほど若干プレゼンテーションの中で申し上げましたけれども、ADRの中で、今後どういう形で活用していくかというのは一つの大きなテーマだとは思っています。それから、中には司法書士などになられる方もあるやには聞いておりますけれども、そこは詳細は私の方は承知していません。

【木村委員】分かりました。ちょっと背景がよく分からないものですから。

【岡田委員】二つほどお聞きしたいのですが、まず簡裁判事の採用は、平成14年が50人で、平成15年は54人と増えています。一方、副検事は、平成15年が40人で平成16年29人と減っているのです。思うに、これから法曹資格を持った方が増えることになり、副検事にしろ、簡裁判事にしろ、当然資格を持った方々で対応できるのかなと思ったのですが。そのためにだんだん数としては減っていくとも考えられます。ところが簡裁判事は増えています。そこのところを知りたいと思うのと、もう一つは、先ほどお話にありましたけれど、副検事は試験を受ければ特任検事になれるわけですが、なかなか特任検事というのは難しいみたいなので、副検事から今までのお仕事を活かしてということなのだろうと思うのですが、一方で簡裁判事は司法書士になれば、当然簡裁の訴額の枠で訴訟代理ができるわけです。そういう道があるにも関わらず準弁護士資格を望まれるという、その辺の考え方をちょっと知りたいと思います。以上二つなのですが。

【伊藤座長】まず副検事の方になる方の人数の増減等について、大谷さん。

【法務省(大谷司法法制課長)】純粋に試験をやっていますので、試験に合格しない者は合格できないというだけなので、確かにたまたま昨年は29人、約30人ですから、前年より10人減っていますけれども、政策的な意図があって別に少なくしているというわけではありません。受験者数は昨年より若干増えていますけれども、純粋に試験の結果によるものだと。裏返せば、それだけ試験自体は公平に行われているということが言えるかと思いますけれども。

【太田委員】私は、大阪地検等で大勢の副検事と長く付き合っていますので、実情を申し上げますと、基本的に数を埋めるために試験のレベルを下げることはしていないのですね。そういった意味では副検事の試験は、特任検事と比べればそれよりレベルは低いですけれども、きちんとした試験なのです。それと確かに特任検事になった場合には法曹資格が取得できるという一つの新たな希望は実現したのですけれども、これには別の意味の厳しさがありまして、特任検事の場合は検事並みですから全国異動の人事に組み込まれることになるのですね。2、3年で全国を転勤するということにもなってきます。副検事の場合には、基本的に地方の地検単位で事務官として採用された人が大半の給源ですので、一定期間は教育的な見地から他高検管内に移動させるということもしていますが、基本的には出身庁中心の勤務であり、恒常的な全国異動とはされていません。優秀で十分特任検事の能力がありそうな副検事に、よく特任試験を受けたらどうだい、と勧めるのですよ。ところが、かなりの者が、いや、私は検事の仕事はやりたいけれども、やっぱり家庭の状況からは、全国異動は無理ですというのが意外と多いのですね。ですから、副検事の中には、潜在的に特任検事並の力を持った者も相当いる、というのが実情だということです。

【松尾委員】法務省にお尋ねします。副検事が地検の事務取扱いとして、捜査・公判にも従事しているという御説明がありましたですね。副検事関係資料5によりますと、副検事のところですが、地検特捜部が取扱う重大事件の捜査・公判も担当するように読めるのですけれども、実態としては、そういう重大事件について副検事が具体的にはどういう仕事をやっているのか。それから、そういう事務取扱いの状況というのは、ずっと続くような状態なのか。確か一時期、検事の志望が少ないときに、特例的にそういう副検事の事務取扱いとしたと聞いているのですが、そういう状況は今後も続いていくのかどうか。副検事はもともと簡裁事件を対象とするのが原則となっているわけですから、そこのところはどういう状況になっているのか、お聞きしたいと思います。

【法務省(大谷司法法制課長)】前段の部分なのですが、副検事が特捜部が取り扱う事件に関与しているのかと言われれば、そのとおり実は関与しています。私もかつて特捜部にいたことがありますけれども、専門性のある副検事が数名いて、かなり重要な取り調べ、あるいは証拠物の調査等を行っています。副検事には例えば帳簿を読むのが非常にうまいといったような、そういう専門性を持っている方も多数おられますし、我々などよりも、いろいろな人生経験を積んでおりますので相手方によっては非常に取り調べもうまくいくということもあって、特捜事件を始めとして重大事件にかなり関与しておられる副検事さんもおられることは事実です。
 後段の方の、今後どうなっていくのかというところなのですけれども、確かに一時期、非常に検察官の数が不足していて、地裁事件かなりの数を副検事にお願いしていたという時期があって、それも事実なのですけれども、最近では事件数も増えている一方、1件1件の事件がすごく難しくなっています。複雑多様化というのですか、ですから個々の検事が、例えば従前10件扱っていて、今も10件といっても、事件の質が全然違うというのが実情です。犯罪もかなり巧妙化してきまして、その意味では副検事の方に従前どおり地方事件も相当程度はやっていただくという時期がまだ続くと思っておりますけれども。

【伊藤座長】先ほどの岡田委員の質問について、簡易裁判所判事に関する部分で、なぜ、弁護士に準ずるような資格について、改めてそういうことが問題になるのか、そのあたり、中村さんから。

【法務省(大谷司法法制課長)】副検事の場合は、まず刑事事件をやるということですから、これは司法書士はできませんので、そこは多分全然違うと思います。

【最高裁(中村総務局第一課長)】簡易裁判所判事の関係でございますが、先ほどの御質問、司法書士の道があるのになぜ別のことを考えるのだという御質問だと思いますけど、司法書士というのは訴訟代理権が本来ではなくて、むしろ登記の実務等をやるのが司法書士の本来の仕事であると考えています。簡易裁判所判事経験者がいったん司法書士という登記の実務を経験して、更に特別の認定を得て訴訟代理権を得るというのはちょっとやり方として変なのではないかと。むしろ簡易裁判所判事というのは、簡易裁判所での訴訟について、まさに裁判官としてあらゆる手続について精通しているわけですが、端的に訴訟の代理権、簡易裁判所における訴訟の代理権という資格を付与した方がいいのではないかと、こういう考え方でございます。

【伊藤座長】それでは、どうぞ、御意見も含めて御議論をお願いしたいと思います。どうぞ、木村委員。

【木村委員】日弁連の小川先生にお伺いしたいのですけど、日弁連としては、法曹資格といいますか、これは大変に厳格な司法試験を受けて通って、しかも厳しい研修を経ることが必要だということで、私たち国民も司法の安定性ということからも、司法試験を経て、そのためのトレーニングを受けた方に対する信頼感が強いと思うのですね。そういう点、極めて当然だと思うのですが、これは過ぎたことなのですけれども、特任検事の場合にはそうでない特例があって、しかも司法書士にも限定された資格を付与したということで、そういう厳格さから外れるところを、日弁連はかつて総会で容認したわけですね。その点はどういうことで理由付けをしたのでございますか、念のため簡単にお伺いしたいのですが。

【日弁連(小川副会長)】言ってみれば、妥協の産物みたいなところでございまして、端的に言ってしまえば。ただ、特任検事につきましては非常に限られた範囲で非常に難しい試験を受けられて経験をしておられてということで、実は認めたわけでございますが、ただ、今日も資料の中に入っておりますが、弁護士会の方で研修を行うことになっております。その研修に希望された特任検事は、平均年齢が75歳で、若い人でも72歳、一番お年寄りは85歳ぐらいだと認識しております。
 それで、弁護士になられても、弁護士会費等がすごいかかるわけですね。それでこれだけの年を経てから弁護士資格を取られても、本当に弁護活動ができないのではないかというようなことを危惧しながら、果たして特任検事の制度がうまく活きていくのかどうか、こういうことについて非常に危惧を持っているというところがございます。
 それから、司法書士につきましても、いろいろと実力を上げていただくために弁護士会としては全面的に研修等を行っております。ところが、今いろいろなところで、簡易裁判所の裁判官等ともお話しする機会がありますが、訴訟手続に精通しておられないために、例えば欠席裁判でも公示送達による呼出しをした場合には証明が必要であるのにそのことを知らないままに立証の準備をしないで法廷に臨み、裁判所から立証を求められて、依頼者から話を聞いているだけで証人としては不適格なのに「私を証人にして調べてください」と代理人に立った司法書士がそういうことを言ったり、全く訴訟手続と離れたような訴訟活動をされるので非常に困ったとかという話もあちこちで聞きますので、そういうこともありまして、弁護士会としては過去に認めてしまったものをどうのこうのというよりも、前向きの方向でより良い制度を確立するために取り組んでいこうと、こういうことを考えております。
 加えて、司法書士に関しては、司法書士の登記業務というのはもともと双方から受けるのですね。双方代理も可能なのですね。このように登記業務は両方から委任を受けるわけですが、訴訟事件になりますと、これは一方からのみしか受けられないことになっていて、この双方代理の問題等が非常に大きな問題になります。しかし、これまでの仕事の延長で深く考えないままに双方代理等について関わったりする人が結構おるようでございますので、そのようなことがないようにより一層研修等に取り組んでいきたいと思っております。
 何か答えになっておりませんで、申し訳ございません。

【伊藤座長】それでは、どうぞ、本日のこの問題そのものについての御意見をお願いしたいと思います。

【平山委員】それでは、今のに関連をしていると思いますので、私が早々と御意見を申し上げるのは大変恐縮でございますが、まず長い間、座長、非常に御尽力いただきまして、大変よくリードしていただいたことに敬意を表します。
 さて、本件につきましてですが、私、今までこの法曹制度検討会で三つのことを前提に、その時どきの課題に対処してきたと思っております。それは第1には、司法制度改革審議会意見書に依拠して積極的に改革を進めるという立場であります。第2には、今度の改革は利用者である国民・市民の立場から是非実現すべきものかどうかをまず優先的に考えようということです。第3が、この改革は、高い質の法曹、国民に直結した大きな法曹の理念に沿うかどうかということで、この制度検討会でも、第1回、第2回、座長の肝入りでやっていただきまして、私は2002年の4月16日付で法曹制度改革全体像というものを出させていただいておりました。そこでも触れておりましたが、この三つの立場に立って進めるということをやってきたと思っております。
 そういう意味で、この三つの基本的な視点に立って改革を進めることには、さっき木村委員の質問がちょっとありましたけど、弁護士会にとっては大変な犠牲と痛みを伴うものもありました。例えば率直に申し上げますと、法律事項からの報酬規定の削除や拘束力のある綱紀審査会の設置、あるいは司法書士の代理権問題で、弁護士法第72条の改正、こういうものは我々だけの立場で考えますと、大変な痛みを伴うものでありましたけれども、しかし、これはさっき申し上げました三つの基本的立場からみれば、これはしのがなければいけない。そして痛みを乗り越えて積極的にこの改革を進めるべきであるという立場で私は取り組んできたと思っております。
 したがって、例えば特任検事につきましては、司法制度審議会意見書に明確に法曹資格を与えるということがうたわれておりましたので、会内には有力な反対論もあったのですが、意見書に明記されているので、前に進めざるを得ないとの立場から、私の方は、例えば事前研修をやってほしいというようなことをここで提案させていただきました。この点国会で幸い事前研修ということが取り上げられて通ったように思いますけど、そういう形で審議会意見書を尊重し、ぜひ前へ進めようということでやってきました。
 そういう点からいきますと、本日の課題は、座長が特任検事のときとは分離して、本日やっていただくことにも意味があると思いますけど、やっぱりこれは別だと。今次の司法制度改革とは異質なものだととらえる必要があるのではないかと思っております。それぞれの簡易裁判所判事、副検事につきましては、私から見れば、これは自己完結的な制度ではないかと思っております。それぞれの制度の歴史に照らしても、そういう意味で、この延長上に新たな資格を創設いたしまして、対応しなければならないという改革の必要性は今はないと考えるのが普通ではないか。そのことがあるために、司法制度改革意見書も特任検事とは分離してうたっていると、こう理解いたしております。
 私は調停委員もさせていただいておりますので、個人的に言いますと、例えば簡易裁判所の判事の方は優れた方が非常に多いですね。そして立派に職責を果たしておられ、日夜大変苦労されています。おっしゃるとおり、御苦労されていることをよく承知いたしております。しかし、そのことと今次のこの司法制度改革の中で、その延長上に新しい資格を創設しなければいけないかどうかということになりますと私は話は別だと思うのですね。もっと大きな立場で時間をかけて十分検討された上でやるべき課題だと思っておりまして、そういう意味で、例えば副検事についても同じですね。その個人個人の方々は非常に勉強されて、難しい試験を通っておられるということも分かります。しかし、自己完結的な制度の延長上に新しく今次の改革でやる必要があるかということになると私は話が別だと思っておりまして、新しい高い質の法曹育成を目的といたしました法曹養成制度が、田中委員などの努力もありましてスタートとしたばかりです。そして弁護士会が言いますように、近い将来5万人にならんとする新しいプロセスを経た法曹が出てくる。次の改革は、そういうことの帰趨を見定める必要があるのではないか。
 それから、もう一つは、意見書当時、平成13年当時は予想してなかった事態も起きてきているわけであります。どういうことかというと言いますと、例えば司法ネットの創設ですね。総合法律支援法というのができまして、まさに当時司法過疎と言われた問題が、法律に基づいて解決されるという事態にまでなっているわけであります。そうすると、これの帰趨も見定めていいのではないか。それでも、なお、司法過疎が残るということであれば、おっしゃるように、その手当てとしての新しい制度も検討されていいと思いますけれども。
 それから、例えば弁護士法第5条の改正が国会でありましたけれども、これはまさに司法試験に受かってない人については、特例を廃止していこうという、これは高度の高い質の法曹を統一していこうという考えだと思うのですね。それから、もう一つ新しい事態といたしましてADRの検討が始まっております。ここではどういうことに立法がされていくか、今のところ私は分かりませんけれども、やはりここで十分活躍していただける場面も出てくるのではないかと思っております。
 それから、弁護士会の方で、先ほど小川副会長が言いましたけれども、特に刑事弁護につきましては、憲法が保障している被告人の弁護人というのは私は非常に重いものだと思うのですね。そういう意味で、安易に今の弁護士制度以外に資格を設けてやらせることでいいのかということは全く別な立場から検討いただかなければいけないと思います。例えば副検事さん、個人個人は私は優れていると思いますけれども、その方々が密着して検察官一体の原則の中でやってこられてすぐ弁護士になって、果たして憲法が保障しているような弁護人として活躍をお願いできるのかどうかということは十分冷静にみんなで検討していただく必要があるのではないかというようなことを思いまして、今次の司法制度改革では、私はこの問題は消極で幕引きをしていただくのがいいと考えております。しかし活躍していただかなければいけない場合もいっぱいあると思います。確かにそういう意味で、日頃御苦労かけてきた方々に何らかの道が開けるのを私も強く希望しますけれども、制度論ですから、我々もきちんと処理をした方がいいのではないかというのが私の意見であります。長くなりましたけれども。

【伊藤座長】どうぞ、ほかの委員の方も、御意見をお願いいたします。どうぞ、岡田委員。

【岡田委員】簡易裁判所というと、やっぱり私たち消費者に一番身近な裁判所なものですから、いわゆる利用者としての希望といいますか、意見を述べたいと思います。簡裁の場合は、本人申立てが多くて、9割が本人訴訟ないし本人手続であるということからすると、弁護士はあまり簡裁の事件に関わっていらっしゃらないと思うのです。弁護士さんの簡裁の裁判官の評価とか、その辺はそれなりに情報があるのだろうと思うのですが、私どもの経験では、簡裁の判事さんというのは、根気よくお話を聞いてくれるし、しかも少額訴訟の裁判では、本当に私たちのレベルまでおりてきて、私たちに分かるような形で話をしてくれます。そういう意味では、やはり弁護士さん、地裁以上の裁判官の方、それから検事さん、そういう方々とはまたちょっと違った、私たちのことを理解してくれるという感じを、消費者は持っているように思うのです。
 そう考えると、やはりこういう方々が弁護士に準ずるような資格を持たれて相談に乗っていただけるということは、もう一つ頼りになるところができるという感じがするのです。
 一方で、新しい司法試験の選択科目から消費者関連法が除かれるとか、あとは最近ロースクールの先生にお聞きしましたら、学生のほとんどが知的財産とか渉外弁護士の方をすごく希望しているとのことです。消費者問題などは全然関心を持ってくれないということなのでしょうか。また、弁護士会の消費者問題委員会の方のお話を聞きますと、なかなか若い弁護士が関心を持ってくれないとのことです。どうも消費者にとっては、司法制度改革を期待したのだけれども、何かどんどん隅の方へ追いやられるような気もするのです。その辺を考えると、副検事や簡裁の判事の方に弁護士に準ずるような、その名称がいいのか、ないしはそういう制度がいいのかどうか分かりませんけれども、直に私たちと接するような場面、司法委員とか調停委員とか、そんなのではなくて、誰もが接するような、そういう立場であっていただくのもいいのではないかと感じます。もちろんそうでなければいけないということではないのですが、そういうことも是非とも考えていただければと思います。
 ただ、もう一つ、先ほど私が質問した中で、この簡裁の判事とか副検事の制度がこれからもどんどん続いていくのかどうなのか。その辺によっては弁護士会の方も考え方もちょっと変わってくるのではないかとも思います。

【伊藤座長】どうぞ、田中委員。

【田中委員】簡易裁判所判事にしろ副検事の問題にしろ、それぞれ裁判所とか検察庁の仕事をするために、それぞれその立場では適切な人を選んで適切な仕事をしてもらっていると思います。仕組みとして活用してきていることは分かるし、それにふさわしい人もいらっしゃると思いますがけれども、そういう人が辞めた後のことについてもいろいろ配慮されることは分かるわけですけれども、制度の問題として考えた場合、やはり国際的に見ても、法曹資格の問題は、基本的には一元化の方向に向かうというのが趨勢ではないかと思うのです。利用者の観点から見てアクセスが難しいという点は、本来の法曹三者として共通の資格を持った人を拡充して対応するというのが本筋だと思うわけです。そういった意味では、司法書士についても、個人的にはあまり賛成ではないのですけれども、少し様子を見てみないと、ああいうのが本当にプラスなのか、マイナスなのか分からないところがあります。法曹資格の国際化の動向の中では、ああいう限定的な権限を認めていくこと、いわんや限定的な資格を新たに作るといったことは国際化の障害になるといったこともあり得ると考えますと、新しい資格を作って、弁護士あるいはそれに類似する法律業務を行う人の資格をどんどん追加していくというのはあまり適切ではないし、それが利用者のニーズに本当に合致するかどうかも非常に疑わしいと思うわけです。副検事とか簡易裁判所の判事を辞めた方については、先ほどのお話を伺っていますと、ADRその他の形で活用するということについては法曹三者のどなたも異論はないわけでして、いろいろな新しくできるADRの組織が、みんな簡易裁判所のミニチュアだとか、簡易裁判所の変形版みたいになるとちょっと困るのですけれども、そういった意味では、こういう資格を持った人をどの程度活用するかというのは慎重に考えるべきだと思うのです。いろいろな方法で、副検事とか簡易裁判所判事を辞めた方を広い意味での法律業務の拡充を担うワン・オブ・ゼムとして活用していく方法はあり得ると思うので、その点について法曹三者の合意が得られることなどについてはどんどん進められたらいいと思いますが、新しい資格を限定的にしろ認めるというのは、法曹一元といいますか、法曹資格の共通化とか、アクセスのしやすさ、透明性という観点から、ちょっと不適切でないかというのが私の意見です。

【伊藤座長】佐々木委員、ございますか。

【佐々木委員】大きい目で見られた田中先生の立場は十分承知しているわけでございますけれども、別の立場から見ますと、司法書士にフル規格ではない簡易裁判所に限定された形で訴訟代理権が付与されたのは、一つのニーズがあったわけで、先ほど日弁連のプレゼンテーションにあったことよりも、現実にも、現場では、業者相手の訴訟代理で原告の代理人として出てきているというようなことも聞いております。そういうニーズがあったのだろうと思っております。そこで、給源が主にフルの書記官で、いわば一般人相手に、一般人と裁判官とをコーディネートしている、そういう人たちが簡裁判事になっており、現実に、9割が本人事件で、生の実態の声を現実には吸い上げて法律構成しているのが簡裁判事です。そして、認定の司法書士を研修していく立場にあるのも簡裁判事で、司法書士研修の主体でやっておるわけでございます。認定司法書士の研鑽を主宰する簡裁判事が簡裁の訴訟代理権も付与されないとこういうことになりますと、ちょっと認定司法書士に代理権を付与した制度との齟齬と申しますか、そこがどうなのかなと思います。
 また、裁判官と代理人弁護士の役割分担は、地方裁判所では確かに日弁連のおっしゃるとおりだと思いますけれども、簡易裁判所では調停あるいは地方の独立簡裁と申しますけど、僻地の簡裁にまいりますと、そういうものもなくて、駆け込んで来る人に対してどう対応するかという、まさに紛争の生の実態に取り組み法的紛争に収斂させていくと、こういう仕事にいそしんでいるわけでございます。それがそういう経験の中で積み上げた専門性を、いわばボランティアの形で、これを還元していくというような感じがあるわけであります。年齢的にも、もう既に70歳を超えているわけですので、そして地方に帰っている人たちがわずかですが、そういうボランティア的だと恐らく思います。そういう形での社会での活用はあっていいのではないか、こう私の方は実は考えているわけでございます。
 したがいまして、この問題については幅の広い議論がございましょうけれども、時代の流れ、あるいは認定司法書士の今後のあり方であるとか、法曹養成制度の進展具合だとか、そういう流れの中で見ていく問題であろうと思いますけれども、今申し上げた現実、あるいは現実を踏まえた我が国の僻地での司法のレベルを上げていくと、そういうことにも考慮した制度設計があってもいいのではないかと考えています。
 以上でございます。

【太田委員】私も日弁連の御意見や平山委員の御発言のように、確かに司法制度改革推進計画の中では、副検事、簡裁判事についてはある意味でニュートラルな検討課題だということであった。また、3000人という法曹人口大幅増加の展望が見えているという中で、日弁連の御懸念や反対の理由の中には、私もなるほどと思われる部分が少なからずございます。それらを踏まえますと、今回、この場でクリアカットに白黒をつけるようなことは困難であり、今後の将来に向けての検討課題にしていただくことにならざるを得ないのかなと思っているのです。
 ただ、先ほどから日弁連の意見等をいろいろ伺っておりまして、反対される理由のいくつかには、私としては反論したい点や是非御理解いただきたいという点がいくつかありますので申し上げます。まず、伺っていますと、ちょっと俗な言い方で恐縮なのですが、反対の本音は、理論的なことというよりも、やはり3000人という大幅増加を前にして、司法書士に加えて、また新たに副検事、簡裁判事の人たちが参入してきて弁護士の職域を侵されるのではないかというような懸念、また検察出身者の副検事に対する不信感のようなものが根強くあるように私には見えるのです。しかし、私はこの問題は、このような対立の観点からとらえるのではなく、国民に対するサービスの観点から、本来の法曹三者の周辺で専門性を有する者をどのように活用していくべきか、という補完の関係として考えるだろうと思うのです。
 今、ご意見の中に、副検事出身者には利用者の側からのニーズがあるのかという点がございます。これはちょっと御紹介しますと、例えば、大阪地検では年間の取扱い事件の受理件数が約21万件あります。その中で公判請求事件は約1万2000件にすぎません。約7万7000件がは略式命令請求です。その中では、交通事故の業過事件が約6300件、道路交通法違反事件が6万7000件という数字です。むしろ公判請求になる事件は割合としては多くなく一部にすぎないですね。副検事の専門性というのは、例えば交通事件に関しては、すばらしいものがあります。むしろ私ども検事は、交通事件関係で一寸分からないものや不慣れなものについて、優秀な副検事に「ちょっと○○副検事さん、教えてください。」というようなことも多いのです。
 こういう人たちが、例えば略式命令請求か、公判請求になるか、といういわばボーダーラインの事件について、捜査段階から弁護人として適切に関与して、豊富な経験に基づいて過失の有無や程度などについて事件の筋を見きわめて、過失は否定できないと判断すれば示談に努力するなど適切に対応すれば、公判請求は免れて略式に持っていことができ、被疑者にとっても被害者にとっても良い結果がもたらされるいうことだってあると思うのですね。私はそのような意味での日常的な分野の事件における副検事の専門性というのは非常に大きいと思います。それを一つ紹介しておきます。
 もう一つ、刑事弁護の本質論で、国家権力との対峙の問題、弁護士と裁判官は根本的に違うということをおっしゃいました。しかし、私はこれはそのようなことは乗り越えるべき話だと思います。話がちょっと飛びますけれども、弁護士から裁判官への任官は大いに推進されていいでしょう。しかし、余り元の出身がどのような職かということにこだわりますと、弁護人出身の裁判官が刑事事件の裁判官になるということについて、これまで被告人の立場にしか立ったことのない者が、検察官や被害者側から見て、果たして中立公正な裁判をしてくれるのかという懸念がないとはいいきれません。しかし、私たちはそういうことは言わないのです。それはなぜかというと、法律家というものは、それぞれの司、司(つかさ、つかさ)、において、いったんある職に就けば、その法曹職業倫理に基づいて公正な職務をしていただけるものだと信頼するからこそ、弁護士からの裁判官任官は、結構だと思っているわけです。副検事は、検察のOB云々で元の上司に対してどうの、というお話ございましたけれども、63歳で退官して、いまさら組織への忠誠心はなくただ、社会のために役立つ仕事をしたいと思っている副検事の方々に、そういう懸念はありません。むしろどちらかというと、副検事さんは職人肌の人たちなんですね。職人肌の人たちというのは、自分が今担当する事件に一生懸命になるんです。弁護の立場に立てば、経験を生かして依頼者のためにベストを尽くすということなのです。ですから、さっき言われた国家権力の対立とか、組織の忠誠、そういうようなことの懸念を反対の理由に述べられることは当たらないと思います。
 もう一つ、私も熱心な副検事さんともいろいろ接しまして、皆さんのお話聞いていますと、彼らの願いは、自分たちの職務が社会からよく理解され、退職後においてもそれを活かして世の中に貢献することが、励みや誇りになる、というまじめな気持ちことなのですね。再就職先の確保、というような低い次元ではありません。刑事弁護はいわゆる儲かるような仕事ではないとよく聞きます。一般の弁護士さんだって、刑事弁護はもうかる仕事ではありませんよね。まして簡裁の刑事事件だけということであれば、事務所の維持費にも足りないでしょう。ですから、一般の弁護士事務所と張り合って副検事OBが自前の事務所を構えて事件で稼ぐというような形ではなく、例えば一つのイメージですけれども、地方の法律事務所で、ホームローヤー的な事務所に、非常勤とか客員という形で副検事さんのOBが入って交通事件を中心にを担当する。公判請求になり、難しい法律問題があれば、上司の弁護士とチームを組んでやる。事務所に交通事件の相談がくれば、そのような時に、副検事出身者にちょっと出て来てよということで対応させる。孫に小遣いをやる程度の収入でもいいかもしれません。そういう形で、全国の津々浦々の副検事OBを活用するメリットは私は非常にあると思いますね。そういったことを将来見据えていただければなと思います。
 これは検事の例ですが、テレビで御覧になったことあると思いますけど、、吉岡さんという検事正経験者の方が、稚内で彩北法律事務所というところで本当に地元の住民のための法律サービスにがんばっておられます。あの方のご活躍ぶりに、国家権力行使の検察官出身という色合いを感じられる方はないと思います。レベルは違いますけど、地方に広く根付く多くの副検事出身者の将来の姿についても、私は、似通ったイメージを持っております。ですから日弁連の方々には、決して警戒心が先行する形でなくて、これからの行く先を見据えて見守っていただきたい。
 もう一つ、最後に私は3000人ということを見据えるとしてもちょっと懸念を持っております。というのは、大幅に法曹人口が増加しても、それが本当に全国津々浦々行き渡るかということですね。例えば、私がかつて勤務した高知県においては、室戸や中村市、足摺方面では常駐の弁護士はいませんでしたし、法曹人口が、かつての500人から700人、900人とある程度増えてきても、高知の弁護士会の活動実人員は、確か減少気味ということだったと思います。那覇などもそうですね。ですから、3000人に増えても、やはりそのほとんどは、大都市集中ということで、地方にかなり弱い部分が出てくるのではないかという懸念もあります。もちろん司法ネット構想や弁護士会の様々な御努力がなされていることは承知していますが、ちょっとそういった懸念がある。
 そのような観点も含め、この問題は、今回結論は出せないとしても、まさに中長期的に本当に国民の側に立って専門性をどう活かすかという観点から検討していただければなと思っております。

【松尾委員】副検事、簡易裁判所の判事については、いろいろ御説明がありましたように、豊富な経験と法律知識あるということは十分理解しております。法務省、最高裁側の御意見についても、その趣旨は分からないことはありません。しかし、今、そういった人たちに対して新しい限定的な資格を付与することがどうかということになりますと、必要性、緊急性の問題から、現段階では疑問であり、消極的であります。むしろ、そうした人たちの専門性の活用ということを考えますと、専門性の活用をするためには具体的に何をすべきなのか。そういう資格の付与だけではないはずですから、活用の具体的な問題について検討し、今後どうなるか、状況の把握といいますか、推移を踏まえて検討を続けるべき問題ではないかと考えております。
 もう少しそのことに関連して具体的に申し上げますと、改革審議会の意見書というのが出発点ですから、ここに戻って考えてみますと、この副検事や簡易裁判所の判事経験者の専門性の活用ということについては、これは新しい資格を与えろというような明確な提言をしているわけでもないし、むしろ先ほど述べたように、専門性の活用ということを、とにかくいろいろな面から考えるべきではないかということを示唆しているものであると私は考えます。ですから、そういう資格の問題として明確に提言している特任検事の経験者とは全く事情も違うし、したがって意見書の書きぶりも違ってきているのではないかと、このようにまず考えます。
 第2に、現段階でそうした資格の付与を認めなくても、検事や簡易裁判所判事の経験者に全く付与の道が閉ざされたわけではないと考えます。副検事の場合は、特任検事経験者に法曹資格が付与されることになった新しい制度によるルートというものがあるわけですね。これについてもいろいろな意見がありますが、私はそういうルートがある以上、全く付与の道が閉ざされているとは言えないと思います。
 それから、副検事もそうなのですが、簡易裁判所判事の経験者については、これも先ほどから話が出ておりますように、司法書士法による法務大臣の認定司法書士の制度がありますので、このルートを通じて簡裁事件の代理権付与の道があるのではないか。これについてもいろいろな意見があるし、そういうルートについての疑問もあろうかと思いますが、少なくとも制度的に考えますと、そういう道があるのではなかろうかと考えます。
 第3に、簡裁事件対象の限定的な資格付与であったとしても、実際にそれが付与された場合懸念するのは、刑事、民事の事物管轄の問題が起きたときの処理のことなのですが、地方裁判所への事件移行によって、弁護人とか代理人が交代するというようなことがあろうかと思います。そうした場合に、当事者や訴訟関係者に混乱を招くことがあるのではなかろうか。そういうことも十分懸念しておく必要があろうかと思います。これは日弁連からも指摘されたと思いますが、特に刑事事件について、そういうことが予想されるのではなかろうか。
 第4に、必要性の問題なのですが、法曹人口の大幅増員によって弁護士人口も大幅に増えてくるでしょうし、弁護士過疎と言われていた問題も弁護士会のいろいろな御努力によって、将来的には解消していくであろうし、これから弁護士の環境が大きく変わっていくであろう情勢の中で、この副検事や簡易裁判所判事経験者に対する新しい資格の付与というものが果たして必要なのか。そこまでの緊急性があるのかと考えると、これは冒頭に申し上げましたように、むしろそういう状況ではないのではなかろうか。現段階では付与しなくてもよいのではないか、こういう消極的な意見になるわけです。
 最後に、第5点ですが、これもいろいろ皆さんから御意見が出ておりますが、要するに専門性の活用ということ自体は大変重要なことでありますし、これを十分に考えておく必要があると思います。具体的にどうかというと、調停委員だとか参与員とか司法委員とかいろいろな考え方もあろうと思いますが、まず当面の問題として一番活用しやすいというのは、一つにはADR関係、総合法律支援の司法ネットの関係、こういったことに、副検事さんや簡易裁判所判事経験者の法律知識と経験が有効に活用できるのではなかろうかと思います。
 それから、弁護士会からもおっしゃいましたが、司法教育の関係のスタッフの問題ですね。これは私もすごく関心を持っておりまして、今まで司法教育が国民になされていない実態から不安や紛争が起きるというような問題もあったかと思います。これは文部科学省との問題もあるのでしょうが、やはり司法教育というものを、中等教育、高等教育の中で、あるいは地域の教育の問題として司法教育を大事にしてやっていく必要があるのではなかろうか。もちろんこれは弁護士さんの活動も期待されますが、それ以上に地域に密着されるであろう、こういった副検事、簡易裁判所判事経験者の活用を十分に考えられるところではなかろうかと思います。
 そう考えますと、こうした人たちの専門性を活用する分野というものは相当開けているのではなかろうかと考えております。以上です。

【伊藤座長】時間の制約がございますので、そろそろ議論の取りまとめをしたいと思いますが、中川委員、木村委員、大変恐縮ですが、時間のことを配慮していただいて御発言いただけますか。

【中川委員】専門性の活用という観点から言いますと、副検事とか簡裁判事の皆さんだけの問題ではないですね。これは学校の先生もそうですし、公務員の方もそうですし、民間で長く経営に当たってきたような方もそれなりの経験、知識をお持ちですよね。そういうものを現役から離れて活用すると、これは社会一般の問題でございまして、特に副検事さん、簡易裁判所の判事だけの問題ではないと私は思います。ただ、そういう場面で、今、こういう方々が大変に必要なのだと。さっき岡田さんが言われましたように、どうしてもこういう方々を活用しなければいけないのだという状況があるのであれば、それはそれなりの資格を考えてもいいかと思いますけれども、それならば、なぜ、今までそうしてなかったのかという問題もありますし、それから老後の仕事とするのはおかしいのではないかと思います。本当にそういう必要性があるのであれば、もっと若い方をどんどん活用すればいいと思いますし、何か老後対策みたいな感じがしまして、少しその辺にひっかかるものを感じます。
 ですから緊急の必要性といいますか、本当にそうした方がいいのだという程度の問題であるならば、これは資格とは切り離して、先ほどからいろいろ議論されていますように、広い意味での法曹を支えるボランティアとして考えていただいた方がいいのではないか。そのときは、何も副検事、簡易裁判所の判事さんだけではなくて、公務員としてもいろいろ法曹に携わった方、学者、企業でそういう人もたくさんいるわけですから、そういう人たちを社会的に活用するという制度を考えるというのが筋ではないかと思いますね。幸い司法ネットとかADRとかあるわけですから、そちらの方でどう活用できるか、これを大いに考えていただいたらお国のためになるのではないかというのが私の意見でございます。

【木村委員】先ほど岡田委員の言われたように、簡裁判事その他の方々に非常に親しい感情を消費者・国民のレベルで持っているということは大変大事なことだと思うのですね。それは非常に大事な事実だと思うのです。先ほど副検事さんにしても、地元に大変密着して、あまり動かないというお話でしたが、動くという人もいるということですけれども、そういう方が地元では、ああ、簡裁の判事さん、副検事さんという、そのイメージがある意味では長らく定着していると思うのです。
 そういう中で何か特別な資格を得て新しいお仕事というよりも、むしろそういう方々が、あの判事さんがこの学校でお話しするとか、こういうことで特別の講演会を開くとか、あの検事さんがこういう形でのお仕事をするとか、これから例えば、裁判員制度とか、日本の新しい司法改革の中で持っている教育的役割が、地元の中で非常に大きい役割が、信頼された社会的な身分と経験を持った方々がそういう場面で若い世代に訴えるお仕事ができる可能性が非常にあるのではないかと思います。
 ですから、これは意見書の大きなラインを踏み越えて、そして新たな資格の付与ということについては、やや疑義があるのではないかと思います。むしろ私としては専門性の活用、特に地元に密着した司法制度の中で、本当に地元の方々に慕われる立場にあった人たちの新しい司法教育の人材としてのあり方を、特に若い世代、次の世代の教育のあり方について、積極的に地元の方々が、特に司法関係の方々が考えるような方向性が望ましいのではないかというのが私の意見です。

【伊藤座長】ありがとうございました。それでは、この問題に関しましては、何らかの弁護士に準じた資格の付与、これを前提としない活用、これについては、関係機関におかれまして、今後、努力していただくということで、これは恐らくどなたにも御異論がないところかと思います。また、委員の方の御発言を伺っていますと、簡裁で取り扱う事件の範囲に着目するとか、あるいは限定された範囲で訴訟代理権を付与したり、弁護人となる資格を付与することについては積極的と受けとめられる御意見もございましたし、それに対立する御意見もございました。
 そこで本日の議論のいわば最大公約数といたしましては、今後の法曹人口の増加とか、司法ネットの整備、簡易裁判所における訴訟代理権の付与を受けた司法書士の職務の遂行状況、こういったものを見きわめて考えていくべき問題ではないだろうかと、このあたりで集約をさせていただきたいと思いますが、それでよろしゅうございましょうか。
(「はい。」と声あり。)

【伊藤座長】ありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、関係機関タイムといたしまして、最高裁、法務省、日弁連から、前回の検討会以降の当検討会関係の事項についての御報告をお願いいたします。まず最高裁から、戸倉さんお願いいたします。

【最高裁(戸倉人事局参事官)】最高裁人事局参事官の戸倉でございます。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、お手元にお配りしております最高裁の資料目録に基づいて御報告申し上げます。
 まず資料1でございますが、これは判事補の経験多様化のための方策につきまして、平成15年3月の当検討会で最高裁から御報告させていただいておりますが、その際、その担保措置につきましては、こういった多様な経験を積むことを最高裁判所の裁判官会議で議決する等の措置を講ずるという御報告をさせていただいておりましたが、先ほどもありましたように、6月11日に「判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律」が成立いたしまして、判事補の経験多様化のためのいわば制度的な基盤が一応出揃ったことを踏まえまして、6月23日の最高裁の裁判官会議におきまして、資料1のような「判事補の経験多様化に関する基本方針」というものを議決いたしました。
 この議決は、裁判官会議の議決でございますので簡潔ではございますが、その中身、実質におきましては、資料2にございますとおり、昨年の3月にも御報告しましたような具体的な多様化のための施策を踏まえた議決でございます。
 この担保措置に関しましては、最高裁の議決のほかに、下級裁判所裁判官指名諮問委員会の審議の中で、この経験多様化について配慮することを確認してもらうというお話も申し上げておりましたが、この関係では、昨年の7月14日の第3回の指名諮問委員会におきまして、判事補が多様な法律専門家としての経験を積む制度が整備された段階では、この制度による多様な経験を積んだことが、判事補から判事への指名の適否を検討する上で重要な考慮要素となるものとすると、そういう確認がされておりますので、併せて御報告させていただきます。
 次に裁判官の人事評価制度の整備でございますが、これは資料4を御覧いただければと思います。人事評価制度につきましては、昨年12月の一般規則制定諮問委員会の答申をいただいた上で、この資料4のとおり、今年の1月7日に、裁判官の人事評価に関する規則が制定されまして、本年の4月からそれが実施されております。規則の内容のうち、この検討会でもいろいろ御意見をいただきました外部の情報を配慮するという点につきましても、規則3条の2項にございますように、「裁判官の独立に配慮しつつ」ということを前提といたしまして、外部からの情報についても配慮という規定を設けております。
 その具体的な内容につきましては、次の資料5に全体の概要が書いてございますが、その真ん中あたりの具体的な手続というところに、評価情報の把握、外部からの情報につきまして、原則として各裁判所の総務課を窓口といたしまして、情報提供者の氏名、連絡先及び具体的な事実を記載した形の情報を直接いただくというシステムを作っております。
 詳細については、資料を御覧いただければと思いますが、裁判官に対する評価の開示、不服申出等、従来の制度に比べまして、非常に手続が透明化したものと考えております。
 次に調停官制度でございますが、これは資料6を御覧いただければと思いますが、調停官制度につきましても、今年の1月から実施しております。表にございますとおり、民事調停官及び家事調停官に現在29名在籍しております。採用時は30名でしたが、1名が事情によって退職されましたので、現在29名ということでございます。この調停官につきましては、本年10月にもほぼこれと同じ規模で拡大するため、現在手続中でございます。
 最後に、資料3を御覧いただければと思いますが、先ほど申し上げました経験多様化の1つとしまして、判事補がその身分を離れまして弁護士登録をし、その上で弁護士職務を経験するという制度ができまして、その運用についての合意を日本弁護士連合会と最高裁判所の間でいたしました。6月23日に資料3のような合意をいたしまして、その中で判事補の職務経験の開始時期につきましては、ここの4項にございますように、1回目の異動期から2回目の異動期の間を基本とするとしてございます。現在、判事補の異動サイクルからいたしますと、1回目の異動期が任官後2年半経過時、2回目が、通常ですと、5年半経過時ということでございます。
 このほか、事務所と判事補のマッチングといった細かい手続につきましても、合意いたしましたときの協議委員との間で、基本的な了解に至っております。今後、来年の4月に向けまして、日本弁護士連合会とも緊密な連携をとりながら、裁判所といたしましても、判事補の希望の状況等もございますけれども、何とか2桁に乗る規模で、来年4月に弁護士職務経験を開始したいと考えております。
 御報告は以上でございます。

【伊藤座長】ありがとうございました。引き続きまして、法務省に関しまして、大谷さんからお願いいたします。

【法務省(大谷司法法制課長)】法務省から、御報告を1点だけさせていただきます。これは、今、最高裁の方から一番最後に御報告になったことと全く同様のことでございます。「判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律」が6月11日に成立いたしまして、来年の4月から、私どもも検事を弁護士職務経験制度に出すということになっております。
 そこで最高裁と同様、私ども法務省といたしましても、日本弁護士連合会と、お手元に「検事の弁護士職務経験制度の運用に関する取りまとめ」という2枚紙が行っておると思いますが、6月23日に日弁連とこういう運用に関する基本的な取りまとめを行いました。取りまとめの内容はそのとおりでありますが、基本的には、先ほど最高裁から御説明あったものに相当するものとなっております。
 法務省といたしましては、今後、関係法令制定後におきまして、運用要領、そういったものの締結に向けまして、今後も日本弁護士連合会との間で協議を継続することとしております。また、この制度の円滑な実施により制度の趣旨が適切に実現されるよう、今後とも日本弁護士連合会と密接に連携いたしまして、その環境、条件の整備に努めてまいりたいと考えております。
 法務省からの御報告は以上でございます。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。
 それでは、日弁連から岩井副会長お願いいたします。

【日弁連(岩井副会長)】日弁連の副会長の岩井でございます。本日は弁護士制度の改革の進捗状況につきまして、当連合会として報告させていただく機会をお与えいただきましてありがとうございます。時間の関係もございますので、5点ほど述べさせていただきます。
 第1点は、判事補、検事の弁護士職務経験制度、第2点は、弁護士倫理を今日の状況に応じて改めることを目的としました弁護士職務基本規程、第3に、弁護士報酬の透明化・合理化、第4に、法律相談活動などの充実、第5点は、弁護士資格付与のための指定研修につきまして、概略を説明させていただきます。
 資料1のペーパーがございますけれども、この資料1を前提にお話しをさせていただきます。まず1点目の判事補、検事の弁護士職務経験制度の創設の点につきましては、先ほど最高裁、法務省の方から御報告がございましたけれども、6月11日の法律の成立を受けまして、この制度の運用につきまして、日弁連は最高裁と法務省との間でそれぞれ取りまとめの合意をさせていただきました。
 当連合会としましては、新たな制度の発足に当たりまして、できるだけ多数の判事補や検事の方々が弁護士職務経験を積むことを期待し、多様な受入れ事務所を十分に準備して迎え入れたいと考えております。多数の判事補、検事の方々が、社会の中で生の社会的紛争に直接接して、弁護士としてその解決のために尽力することを通しまして、裁判官、検察官としての資質の陶冶に努められるよう、責任を持って受け入れ態勢を整える所存でございます。
 第2点目の弁護士職務基本規程に関してでございますけれども、当連合会は内閣に提出しました司法制度改革推進計画の中で、弁護士がその使命にふさわしい職業倫理を保持するために弁護士倫理を今日の状況に応じて改めるため、必要な検討を経た上、所要の取組を行うことを表明いたしました。
 当連合会の弁護士倫理委員会には、外部委員の方々が参加されておられますけれども、昨年の5月30日には、委員会より第1次の弁護士業務基本規程案が提出されまして、各弁護士会や関係委員会あてに意見照会をいたしました。その後、意見照会の結果を踏まえまして、昨年11月28日に弁護士倫理委員会の第2次案と申すべき弁護士職務基本規程が作成されまして、改めて各弁護士会、関係委員会、さらに会員に対して意見照会、意見募集をいたしました。弁護士倫理委員会の方で2次案に対しての各種意見を参考にしながら、本年6月25日委員会としての第3次案を作成し執行部あてに提出しました。委員会の最終案を踏まえ、本年11月に予定されております臨時総会におきまして、会則の一部改正、弁護士職務基本規程の会規化を図る所存でございます。
 会規化によりまして、弁護士の職務遂行に際して守るべき行動指針を示し、規範としての位置付けを明確にするとともに、国民の皆様に対して、弁護士の職務についての説明責任を尽くしてまいります。
 第3点目の弁護士報酬の透明化・合理化の取組でございますけれども、昨年11月18日に開催されました法曹制度検討会におきまして、藤井前日弁連副会長の方で、弁護士法33条2項8号、46条の改正に伴って、報酬等基準規程を廃止した上で、別途弁護士の報酬に関しまして、審議会意見書の意見に沿った「弁護士の報酬に関する規程」を作成中であることを御報告させていただきました。
 そこでその後の取組でございますけれども、本年2月26日の日弁連臨時総会で、本年3月には、御手元に配布してございます参考資料でございますけれども、「弁護士報酬ガイドブック」を作成しまして、全会員に配布いたしました。このガイドブックは、弁護士報酬をめぐる無用なトラブルの発生を未然に防止し、弁護士の報酬に関する規程の周知徹底を図るために作成されたものでございます。この資料の中には、見積書や委任契約書のひな形なども用意し、各弁護士が創意工夫しながら規程どおりに見積書や委任契約書を作成し、報酬に関する情報を自ら発信していく環境整備に努力しているところでございます。
 第4点目の法律相談活動などの取り組みにつきましては、お手元の資料3及び資料3−2を御覧ください。先ほども小川副会長からの報告にもござましたとおり、本年6月末現在、全国約280カ所で法律相談センターを設置しておりまして、本年5月、北海道の名寄にも公設事務所を設置しました。そこで公設事務所も法律相談センターも全く設置されてない支部は、おかげさまでなくなりました。
 また、弁護士常駐型公設事務所の設置状況でございますけれども、資料3のとおりでございます。過疎地型公設事務所は、本年5月末現在、全国で27カ所設置ということになっております。また、本年6月から11月までさらに4カ所の設置を予定しております。都市型公設事務所も本年6月末現在、東京に4カ所、大阪に2カ所設置しておりますけれども、本年7月から来年4月まで、東京、岡山、札幌、横浜の4カ所に設置の予定でございます。
 第5点目の弁護士資格付与のための指定研修については、資料1の12ページの「企業法務等の位置付け」の項に書かさせていただいております。指定研修の内容でございますけれども、資料4を御覧ください。ここで研修主体であります日弁連において、講義などを受講する集合研修、研修生が法律事務所で弁護士の指導を受ける実務研修、これを総時間数188時間の予定で実施することとしております。
 平成16年度の実施要領につきましては、資料4−2でございます。このような、資料4−2に基づきまして本年度実施する予定でございます。具体的なカリキュラムでございますけれども、資料4−3のとおりでございます。このようなカリキュラムで実施する予定でございます。
 なお、本年度の指定研修の申込み状況でございますが、資料4−4のとおり、現在のところ日弁連への申込者は41名となっております。今後、全部で50名程度の申込みが予定されております。
 そのほか、弁護士の公務就任の制限や営業などの許可制から届出制への移行による規則の整備、弁護士会運営の透明化など多くの改革の取組がございますけれども、時間の関係上割愛させていただきます。
 以上をもちまして、日弁連の取組状況を報告させていただきました。ありがとうございました。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。
 予定の時間を過ぎておりますので、本日の議事はこのあたりで終了させていただきたいと思いますが、本日の検討を終了いたしますと、司法制度改革推進計画で定められました事項については、全て当検討会で検討していただいたことになります。誠にありがたく存じる次第でございます。
 そこで、事務局から御挨拶をお願いしたいと思います。

【山崎局長】伊藤座長ほか、委員の皆様方におきましては、2年数カ月、25回にわたりまして本当に熱心な御討議をいただきましてありがとうございます。心から御礼を申し上げたいと思います。
 この法曹制度検討会はテーマが結構多くて、順次法案化したものを見ていても相当なものがございます。最初は弁護士法改正ということで、弁護士制度、綱紀・懲戒の問題、あるいは営業の自由化の関係で許可制から届出制にするとか、弁護士報酬の規程を会則から削除する、こういうような一群の法改正を行いました。これとともに、弁護士の資格の特例を2回にわたって改正したということになります。その次に、先ほども出てまいりました民事、家事の調停官制度の創設、今年は、また最後に弁護士職務経験の法律を提出したということでございます。
 それから、法律以外では、最高裁判所で裁判官の指名諮問委員会を設置する、あるいは人事評価を改めるというような様々なものがあったわけでございます。
 このように、皆様方の熱心な御討議のおかげで、司法も大きく変わってきているわけでございます。今後とも司法界はきちんと努力をしなければならないという覚悟をしておるところでございます。この検討会以外でも、本部の検討全体といたしましても、この通常国会で10本の法律を提出させていただいて、そのうち9本成立をしたということでございしまして、大きな山は越えたという状況で今90%ぐらいのところに来ているのかなということでございます。この秋に臨時国会が開かれれば、きちんと提出をして終わらせるというものが三つぐらいございますけれども、これもきちんとやってまいりたいと思っております。
 11月30日には、この推進本部もきちんとした形で終了するということを目指して、我々も残りのわずか5カ月でございますけれども、頑張りたいと思います。法曹界の方は当然でございますけれども、それ以外の方々、今後も法曹界をお忘れなく、見捨てないでいただきたい。いろいろな形で御意見等をちょうだいできれば、法曹界も変わってまいりますので、今後ともよろしくお願いをしたいと思っているところでございます。
 どうも、本当にありがとうございました。

【伊藤座長】私からも一言御挨拶を申し上げたいと存じます。今、山崎局長のお話を伺いながら、当検討会で検討していただいた事項を思い起こしますと、いずれも我が国の司法制度の今後に関わる根幹的重要な問題であったかと思います。そういった多種多様な問題につきまして、当検討会において十分審議をしていただき、それが法律、規則、その他の形で方向性を示すことができましたのは、ひとえに委員各位の皆様の御尽力によるもの、そして、いわば縁の下の力持ち的な役割を担っていただいた事務当局の皆さんの力ではなかったかと思う次第であります。
 皆様方の本分は誠に御多忙であたったにも関わらず、長期間にわたりまして、また、それぞれの回、必ずしも短い時間とは言えませんでしたけれども、審議に御参加いただきまして、こういった形で今日その成果を見るに至ったことにつきまして、大変取りまとめ役としては、つたないことばかりで御迷惑をかけたかと思いますが、改めてお礼を申し上げる次第でございます。どうも長期間ありがとうございました。

以上