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法曹制度検討会(第3回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日 時
平成14年4月16日(火)13:30〜17:00

2 場 所

司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者

(委 員)
伊藤 眞、岡田ヒロミ、小貫芳信、釜田泰介、木村利人、佐々木茂美、田中成明、中川英彦、平山正剛、松尾龍彦(敬称略)

(説明者)
川中 宏(日本弁護士連合会副会長)
高中正彦(日本弁護士連合会弁護士制度改革推進本部事務局長)
小池 裕(最高裁判所事務総局審議官)
金井康雄(最高裁判所事務総局人事局参事官)

(事務局)
大野恒太郎事務局次長、松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、植村稔参事官

4 議 題

  1. 進行の枠組み
  2. 弁護士の活動領域の拡大−弁護士の公務就任の制限及び営業等の許可制について、届出制に移行することによる自由化を図ること
  3. 弁護士倫理等に関する弁護士会の態勢の整備等−弁護士会による綱紀・懲戒手続の透明化・迅速化・実効化を図ること
  4. 民事調停、家事調停の分野にいわゆる非常勤裁判官制度を導入するための法改正の方向性について
  5. その他

5 配布資料

【事務局配布資料】
資料3−1 法曹制度検討会 進行の枠組み(案)
資料3−2 弁護士法改正に関し想定される主な論点(案)
資料3−3 弁護士法
資料3−4 日本弁護士会連合会会則

 [弁護士の活動領域の拡大]
資料3−5 弁護士の活動領域の拡大検討のたたき台(案)
資料3−6 国家公務員法抜粋
資料3−7 地方公務員法抜粋

 [弁護士倫理等に関する弁護士会の態勢の整備等]
資料3−8 綱紀・懲戒手続 検討のたたき台(案)

 [民事調停、家事調停の分野にいわゆる非常勤裁判官制度を導入するための法改正の方向性]
資料3−9 民事調停、家事調停の分野にいわゆる非常勤裁判官制度を導入するための法改正の方向性について(案)
資料3−10 民事調停法抜粋
資料3−11 家事審判法抜粋

(参考資料)
司法制度改革推進計画
司法制度改革に関する措置・取組一覧

【日弁連配布資料】
資料1 弁護士制度改革と弁護士法30条の改正問題の位置づけについて(総論)
資料2 弁護士法30条の改正問題について(各論)
資料3 弁護士の綱紀・懲戒制度の概要と日弁連の改革の基本方針について

【最高裁配布資料】
下級裁判所裁判官の指名に関する諮問機関の設置について

【委員配布資料】
法曹制度改革全体像(平山委員)

6 議 事

 議事に先立って事務局から、事務局配布資料3−1から資料3−11まで及び参考資料について確認の後、参考資料「司法制度改革に関する措置・取組一覧」について説明がなされた。これに対して、次のような質疑がなされた。(○:委員、●:事務局)

○ 例えば、参考資料「司法制度改革に関する措置・取組一覧」12ページの第3弁護士制度の改革で、政府(司法制度改革推進計画)の欄が空欄となっている部分であっても、この検討会で議論すること自体は差し支えないのか。

● 例えば、弁護士制度の改革のように、推進計画において、平成15年通常国会に法案を提出することが予定されている事項もあり、議論すべき優先度の高いものから議論していただきたいと考えている。

(1) 進行の枠組み

① 事務局からの説明

 事務局配布資料3−1「法曹制度検討会 進行の枠組み(案)」に基づき、法曹制度検討会における検討事項について、3期に分けた上での大まかな進行の枠組みについて説明がなされた。これに対して、次のような質疑がなされた。(○:委員、●:事務局)

○ 第2回法曹制度検討会の事務局配布資料2−2「主な検討事項と検討順序」と今回の配布資料3−1を比較すると、資料2−2で第4類型とされている検討事項、例えば法曹人口の拡大等が、資料3−1では検討事項として挙がっていないが、これらの事項については検討会から外したのではなく、これらの事項についてもその都度協議していくものであるという理解でよいか。

● 法曹人口の拡大については、司法制度改革推進計画に明記されているところであり、当然予算措置の上でそれなりの配慮がなされ、着実に実行されていくものと考えている。事務局としては、まずはこれを見守り、その結果を検討会で報告させていただくべき性質のものと考えている。

② 平山委員からの説明

 平山委員配布資料「法曹制度改革全体像」に基づき、検討委員間で共通の認識を得た上で検討を進める必要がある旨の説明がなされた。これに対して、次のような意見交換等がなされた。(○:委員、■:座長)

○ 様々な分野の委員が集まって議論をしていくに当たって、このような分かりやすく整理された書面によって共通認識を持つということは大変重要なことだと思う。

○ 法曹三者として何をすべきかといった考え方は確かに重要であると思うが、利用者は何を求めるかといった視点も忘れてはならないと考える。

○ 委員が自分の意見を発表するために、検討会の場で資料を配り、意見陳述の機会を与えてほしいと思った場合のルールについては、何か取り決めがあるのか。

■ 今後、検討会で資料の配布、意見陳述の希望がある委員については、事前に申し出てもらった上で、事務局の協力も得て対処していきたいと考えている。

③ 委員の問題提起に関する事務局からの説明

 第2回法曹制度検討会における委員からの「「最高裁裁判官の地位の重要性に配慮しつつ、その選任過程について透明性・客観性を確保するための適切な措置」については大変重い問題であり、この検討会で取り扱うことは妥当か」との問題提起に対して、次のような説明等がなされた。(○:委員、●:事務局、■:座長)

● 司法制度改革審議会は、最高裁裁判官の選任等の在り方について、特に「最高裁裁判官の地位の重要性に配慮しつつ」と断った上で、その選任過程について透明性、客観性を確保するための適切な措置を検討するよう求めているところであり、事務局としては、検討会の委員の皆様に事務局と一体となって検討していただきたいと考えている。検討に当たっては、諸外国において、我が国の最高裁と同様の権限を有している裁判所の裁判官の選任方法等について十分な調査を行い、また、かつて我が国に存在した最高裁裁判官に関する任命諮問委員会についても予め資料を集め、議論の材料としていただくことが必要であると考えている。検討会の議論の時期は、この秋になろうかと思うが、検討会の御意見を承った後、この問題をどう取り扱うかなどについては、委員からの指摘も踏まえ、慎重に対応していきたい。

■ こうした方向性に対し異論はないか。

○ 異論はない。

④ 議事進行に当たっての座長からの提言(○:委員、■:座長)

■ ①から③までの議論を聞かせていただき、座長としては、当面、事務局から説明のあった資料3−1「法曹制度検討会 進行の枠組み(案)」に沿って議事を進めていきたいと考える。

○ 異論はない。

(2) 弁護士の公務就任及び営業等の自由化

① 日弁連からの説明

 日弁連配布資料1「弁護士制度改革と弁護士法30条の改正問題の位置づけについて(総論)」、資料2「弁護士法30条の改正問題について(各論)」に沿って日弁連の検討状況の説明があった。

② 事務局からの説明

 事務局配布資料3−5「弁護士の活動領域の拡大 検討のたたき台(案)」に沿って、資料3−6「国家公務員法抜粋」及び資料3−7「地方公務員法抜粋」を引用しながら説明がなされた。

③ ①及び②に関する質疑応答等

 上記①及び②の説明に対して、次のような質疑応答及び意見交換がなされた。(○:委員、□:日弁連、■:座長)

[主として弁護士法30条1項に関する議論]

○ 日弁連は、弁護士制度の改革について会内の大方のコンセンサスを得たとのことであるが、反対していた会員の論拠はどんなものであったのか。

□ 人権擁護が弁護士活動の中心であると考える会員を中心に、弁護士人口の増加が弁護士の生活を圧迫するのではないかといった不安感から、人権擁護活動に支障を来すのではないかとの意見が出た。弁護士法30条の改正については、日弁連理事会においては、ほとんど異論は出なかった。

○ 日弁連としては、人権擁護活動や社会正義の実現と弁護士法30条改正とは全く相反しないと考えているということでいいのか。

□ そのように思う。

○ 日弁連が説明した中にあった、公務就任及び企業等に雇用され若しくは役員として就職する場合の弁護士職務の「独立性の保持」については、具体的なイメージが浮かばない。組織に所属すればそこの組織決定に従うというのが通常であり、この点をあまり強調し過ぎると、せっかくの自由化も絵に描いた餅となってしまうのではないか。

○ 国民のため、利用者のためという立場から考えれば、組織に入った弁護士は組織のために専念すべきであって、弁護士としての活動は控えるべきでないか。

□ 弁護士の公益的な義務としては、法律相談、国選弁護、当番弁護士等があるが、企業に入ったり、公職に就いたとしても、このような公益的な義務は果たすべきとも考えられる。

○ 今後10年先、15年先に弁護士人口が増加し、国民生活の隅々にまで弁護士が行き渡るようになったとすれば、届出制の意味もなくなってくるのではないか。

□ 10年、15年先はともかく、現時点においては自由化された状況を事後的にでもキャッチしておく必要があると考える。

○ 弁護士が公務、企業の分野に進出していくことには大賛成であるが、それに伴い弁護士倫理の問題も何とかしなければならない問題であると思う。弁護士倫理の問題というのは行為規制に関する問題であり、ここで「独立性の保持」という言葉を使うのはおかしいのではないか。

□ 「独立性の保持」という表現を用いて、より高い弁護士倫理を目指したと理解していただきたい。

○ 弁護士の活動領域の拡大の目的は、裁判官や検察官に広い経験を積ませる制度と同じく、弁護士にいろいろな経験を積ませて法曹としての資質を高めることだと理解してきたが、そうではないのか。

■ 私の理解では、弁護士の活動領域の拡大の中には弁護士の活躍の場面を増やすだけでなく、質的向上という目的も当然含まれていると考えている。

■ いろいろ意見が出たが、弁護士法第30条第1項、第2項を削除し弁護士の公務就任を自由化すること、ただし、公務就任の事実は弁護士会として知っておく必要があるので届出制とすること、その届出制については法律ではなく弁護士会の会則で規定するということについては大方の一致を得たということでよろしいか。

○ (「異議なし」との声あり)

[主として弁護士法30条3項に関する議論]

○ 弁護士法30条3項の許可制から届出制への改正は、企業にとって非常に好ましいことであると思う。日本の企業で法務部門を持っているのは約1000社くらいであり、その人口は1万人くらいである。法務部門の社員を育てるには10年程度の教育期間が必要であり、コストも多くかかる。これからは企業のニーズに応じて専門家に来てもらうことになると思う。ただし、行為規範についてはしっかり作ってもらう必要がある。

○ 営業等を届出制として事後的にチェックするシステムとしては、日弁連としてどのようなものを考えているのか。

□ 従前は、単位弁護士会ごとに営業許可取扱に関する規則等を置き、その中で原則不許可業種も定めている場合が多かったが、業種による規制は好ましくなく、今後は、業種ではなく、個々の営業の内容が社会的に批判を受けているかどうかなどに着目した上で、弁護士の信用、品位を害することのないようなシステムを検討したいと思う。

○ 司法制度改革審議会の意見としては、将来を見据えて、国際的に競える企業を作るために、法律家を増やし、企業への参加を進めていきたいとの理念が反映されているのではないかと思う。

○ 海外から日本の企業の様子を見ていると、日本のロイヤーが十分に機能していないがために総会屋等が暗躍している点が目に付く。日本の企業の生き残りをかけて弁護士に企業で活躍していってほしいと思う。

○ 最近は企業においてもグローバルな議論をしなければならなくなり、その中では、物事を筋道立てて考えることができる人、根本的に法律に立ち返って考えることができる人が求められている。企業でも人材育成は行っているが、弁護士にも来てもらってお互いに交流すべきである。

○ 行為規範に関する規定を設けるのは、弁護士が営業等に従事する場合に限るのか。それとも公務就任の場合も同様に検討しているのか。

□ 日弁連としては、営業に従事する場合、公務に就任する場合のいずれについても行為規範に関する規定を置くことを検討したいと考えている。

■ 弁護士の営業等の自由化についても弁護士法30条3項の改正の方向性としては異論がないものとして、引き続き日弁連の方で検討をお願いし、しかるべき時期には報告をしてもらいたいと思う。また、行為規範については、会則で規定するか、あるいは、ある程度抽象的に法律で規定し、さらに具体的な事柄については会則で定めることにするという方向でよろしいか。

○ (「異議なし」との声あり)

○ 行為規範というものは、依頼者の利益に軸足をおくものか、人権とか自由とかに軸足をおくものかによって全く違ったものとなると思う。日弁連の新たな報告があった時点でまた協議したいと思う。

(3) 綱紀・懲戒手続の透明化・迅速化・実行化

 座長から、綱紀・懲戒手続については、本日の議事進行の都合上、日弁連の検討状況の説明及び事務局の説明も含め次回にお願いしたい旨の提案があり、委員からの了解が得られた。

(4) 民事調停、家事調停の分野にいわゆる非常勤裁判官制度を導入するための法改正の方向性

 事務局から、事務局配布資料3−9「民事調停、家事調停の分野にいわゆる非常勤裁判官制度を導入するための法改正の方向性について(案)」に沿って、資料3−10「民事調停法抜粋」及び資料3−11「家事審判法抜粋」を引用しながら説明がなされた。これに対して、次のような質疑がなされた。(○:委員、●:事務局、△:最高裁、■:座長)

○ 資料3−9の2の(2)の「調停主任など」とは他にどんな役割があるのか。家事審判法には、調停と審判があるが、ここでいう「家事調停の分野」とは両方を含むのか。本格的な弁護士任官のためのワンステップという説明があったが、いわゆる非常勤裁判官制度自体は継続的なものなのかそれとも一時的なものなのか。

● 「調停主任など」には民事調停法17条の調停に代わる決定についての裁判官の役割も含む方向であるが、「家事調停の分野」とは、調停に限定していると聞いている。

△ いわゆる非常勤裁判官制度については、制度が新設されれば、制度としてうまく機能する限り存続するものと考えている。

○ いわゆる非常勤裁判官の勤務形態や職務の独立性等については、どのような制度設計を考えているのか。

△ 具体的な制度設計は、日弁連とも協議しながらこれから検討していくところであるが、いわゆる非常勤裁判官が調停事件を円滑に処理することができる制度作りを考えていきたいと思う。

○ 調停というものを、申立人が調停委員を自由に選定できるとか、更にADRとして柔軟なものにすることはできないか。

○ 調停委員の範囲を更に広げて、専門分野に応じた調停委員を選ぶことができるようにすべきである。

■ 資料3−9の方向性としては異論のないところだと思うので、今後、具体的な制度に関する検討が進んだ段階で、関係機関から説明してもらうこととしたい。

(5) 関係機関タイム

 最高裁から、最高裁配布資料「下級裁判所裁判官の指名に関する諮問機関の設置につい て」に沿って説明がなされた。これに対して、次のような質疑がなされた。(○:委員、△:最高裁)

○ 下級裁判所裁判官の指名に関する諮問機関の設置については、最高裁の方で全て取り仕切って、決めてしまおうと考えているのか。

△ 前回から説明しているとおり、一般規則制定諮問委員会での審議の状況は、随時この検討会でも報告させていただき、そこで出た意見は委員会にフィードバックしてさらに検討する。そして、最高裁側の検討が熟して来た時点では、またこの検討会で発表することを考えている。

○ 検討の結果、立法措置が必要となる可能性も残っているということでよいか。

△ 司法制度改革審議会の意見に沿った措置の中味の問題であると考えるので、規則でやるか、立法でやるかは、今後検討していただくことであると思う。

(6) 次回の予定

 次回(5月14日)は、弁護士会による綱紀・懲戒手続の透明化・迅速化・実効化を図ることの議事を進めるほか、検察官や裁判官の身分を離れた検事・判事補が、検察官、裁判官に復帰した場合になされるべき配慮について議事を行う予定。

(以上)