① 日弁連からの説明
日弁連配布資料1「弁護士制度改革と弁護士法30条の改正問題の位置づけについて(総論)」、資料2「弁護士法30条の改正問題について(各論)」に沿って日弁連の検討状況の説明があった。
② 事務局からの説明
事務局配布資料3−5「弁護士の活動領域の拡大 検討のたたき台(案)」に沿って、資料3−6「国家公務員法抜粋」及び資料3−7「地方公務員法抜粋」を引用しながら説明がなされた。
③ ①及び②に関する質疑応答等
上記①及び②の説明に対して、次のような質疑応答及び意見交換がなされた。(○:委員、□:日弁連、■:座長)
[主として弁護士法30条1項に関する議論]
○ 日弁連は、弁護士制度の改革について会内の大方のコンセンサスを得たとのことであるが、反対していた会員の論拠はどんなものであったのか。
□ 人権擁護が弁護士活動の中心であると考える会員を中心に、弁護士人口の増加が弁護士の生活を圧迫するのではないかといった不安感から、人権擁護活動に支障を来すのではないかとの意見が出た。弁護士法30条の改正については、日弁連理事会においては、ほとんど異論は出なかった。
○ 日弁連としては、人権擁護活動や社会正義の実現と弁護士法30条改正とは全く相反しないと考えているということでいいのか。
□ そのように思う。
○ 日弁連が説明した中にあった、公務就任及び企業等に雇用され若しくは役員として就職する場合の弁護士職務の「独立性の保持」については、具体的なイメージが浮かばない。組織に所属すればそこの組織決定に従うというのが通常であり、この点をあまり強調し過ぎると、せっかくの自由化も絵に描いた餅となってしまうのではないか。
○ 国民のため、利用者のためという立場から考えれば、組織に入った弁護士は組織のために専念すべきであって、弁護士としての活動は控えるべきでないか。
□ 弁護士の公益的な義務としては、法律相談、国選弁護、当番弁護士等があるが、企業に入ったり、公職に就いたとしても、このような公益的な義務は果たすべきとも考えられる。
○ 今後10年先、15年先に弁護士人口が増加し、国民生活の隅々にまで弁護士が行き渡るようになったとすれば、届出制の意味もなくなってくるのではないか。
□ 10年、15年先はともかく、現時点においては自由化された状況を事後的にでもキャッチしておく必要があると考える。
○ 弁護士が公務、企業の分野に進出していくことには大賛成であるが、それに伴い弁護士倫理の問題も何とかしなければならない問題であると思う。弁護士倫理の問題というのは行為規制に関する問題であり、ここで「独立性の保持」という言葉を使うのはおかしいのではないか。
□ 「独立性の保持」という表現を用いて、より高い弁護士倫理を目指したと理解していただきたい。
○ 弁護士の活動領域の拡大の目的は、裁判官や検察官に広い経験を積ませる制度と同じく、弁護士にいろいろな経験を積ませて法曹としての資質を高めることだと理解してきたが、そうではないのか。
■ 私の理解では、弁護士の活動領域の拡大の中には弁護士の活躍の場面を増やすだけでなく、質的向上という目的も当然含まれていると考えている。
■ いろいろ意見が出たが、弁護士法第30条第1項、第2項を削除し弁護士の公務就任を自由化すること、ただし、公務就任の事実は弁護士会として知っておく必要があるので届出制とすること、その届出制については法律ではなく弁護士会の会則で規定するということについては大方の一致を得たということでよろしいか。
○ (「異議なし」との声あり)
[主として弁護士法30条3項に関する議論]
○ 弁護士法30条3項の許可制から届出制への改正は、企業にとって非常に好ましいことであると思う。日本の企業で法務部門を持っているのは約1000社くらいであり、その人口は1万人くらいである。法務部門の社員を育てるには10年程度の教育期間が必要であり、コストも多くかかる。これからは企業のニーズに応じて専門家に来てもらうことになると思う。ただし、行為規範についてはしっかり作ってもらう必要がある。
○ 営業等を届出制として事後的にチェックするシステムとしては、日弁連としてどのようなものを考えているのか。
□ 従前は、単位弁護士会ごとに営業許可取扱に関する規則等を置き、その中で原則不許可業種も定めている場合が多かったが、業種による規制は好ましくなく、今後は、業種ではなく、個々の営業の内容が社会的に批判を受けているかどうかなどに着目した上で、弁護士の信用、品位を害することのないようなシステムを検討したいと思う。
○ 司法制度改革審議会の意見としては、将来を見据えて、国際的に競える企業を作るために、法律家を増やし、企業への参加を進めていきたいとの理念が反映されているのではないかと思う。
○ 海外から日本の企業の様子を見ていると、日本のロイヤーが十分に機能していないがために総会屋等が暗躍している点が目に付く。日本の企業の生き残りをかけて弁護士に企業で活躍していってほしいと思う。
○ 最近は企業においてもグローバルな議論をしなければならなくなり、その中では、物事を筋道立てて考えることができる人、根本的に法律に立ち返って考えることができる人が求められている。企業でも人材育成は行っているが、弁護士にも来てもらってお互いに交流すべきである。
○ 行為規範に関する規定を設けるのは、弁護士が営業等に従事する場合に限るのか。それとも公務就任の場合も同様に検討しているのか。
□ 日弁連としては、営業に従事する場合、公務に就任する場合のいずれについても行為規範に関する規定を置くことを検討したいと考えている。
■ 弁護士の営業等の自由化についても弁護士法30条3項の改正の方向性としては異論がないものとして、引き続き日弁連の方で検討をお願いし、しかるべき時期には報告をしてもらいたいと思う。また、行為規範については、会則で規定するか、あるいは、ある程度抽象的に法律で規定し、さらに具体的な事柄については会則で定めることにするという方向でよろしいか。
○ (「異議なし」との声あり)
○ 行為規範というものは、依頼者の利益に軸足をおくものか、人権とか自由とかに軸足をおくものかによって全く違ったものとなると思う。日弁連の新たな報告があった時点でまた協議したいと思う。