① 日弁連からの説明
日弁連配布資料「弁護士の綱紀・懲戒制度の概要と日弁連の改革の基本方針について」に沿って、日弁連配布資料「綱紀・懲戒制度に関する資料」及び「弁護士懲戒制度の運用状況」を引用しながら説明がなされた。
② 事務局からの説明
前回検討会における事務局配布資料3−8「綱紀・懲戒手続 検討のたたき台(案)」について説明がなされた。
③ ①及び②に関する質疑応答等
上記①及び②の説明に対して、次のような質疑応答及び意見交換がなされた。(○:委員、●:事務局、□:日弁連、■:座長)
○ 事務局配布資料3−8の3の(1)及び(3)については問題がある。まず、(1)については、推進計画上「日弁連の検討状況も踏まえた上で検討し」とされていることから、本日の「日弁連綱紀審査会は会則上の組織としたい」旨の日弁連の説明を踏まえる形で、たたき台は「会則上の組織としてはどうか」とすべきである。次に(3)には、日弁連綱紀審査会の議決に拘束力を付与しない案(ア案)と、3分の2の多数による議決に拘束力を付与する案(イ案)、過半数による議決に拘束力を付与する案(ウ案)が並べてあるが、司法制度改革審議会の審議の実情が反映されていない。同審議会では、日弁連の原案(審議会において日弁連会長のプレゼンテーション等で示された案。事務局配布資料4−1の添付資料2「弁護士のあり方について」及び同添付資料3「弁護士のあり方について」(補充書)参照)を採用するという結論、つまり日弁連綱紀審査会の議決については拘束力を与えないということで議論がまとまっていると理解している。よって、ア案をたたき台とすべきである。
● 司法制度改革審議会における議論の過程を見ると(事務局配布資料4−1「綱紀・懲戒手続についての司法制度改革審議会での主なやりとり」に基づき、同審議会での審議の経過を説明)、日弁連が日弁連綱紀審査会の議決の拘束力について勧告的な効力のみを持つものと一貫して主張してきたことは明らかであるが、委員の意見を見る限り、議決に法的拘束力を持たせるべきであるという意見が述べられたことはあったものの、法的拘束力を持たせる必要はないとの意見が明示的に述べられたことはないと認識している。同審議会意見書においても、拘束力があるともないとも記載されていない。このような審議経過を踏まえると、同意見書は、議決の拘束力についてはその後の検討に委ねたとみるのが相当であると考えたものである。もちろん、当事務局に審議会意見の確定的な解釈を行う権限があるなどとは毛頭考えていない。この点については委員の皆様に十分議論願いたい。
○ 日弁連は、綱紀・懲戒手続問題について臨時総会で方向性を出すなど、積極的な取組をしていると評価したい。事務局配布資料には、日弁連綱紀審査会の議決の拘束力についてア案ないしウ案の3案が例示されているが、司法制度改革推進計画において、弁護士会運営の透明化に関する提言がされていることも踏まえ、日弁連の基本方針であるア案に確定しているということではなく、全体の流れの中で、3つの案について検討すべきである。
○ 事務局からの説明の中で、審議会の議論において検察審査会と比較しての検討がなされている部分の紹介があったが、検察審査会は国家の公訴権に関する制度で、日弁連綱紀審査会は自律権に関する制度である。この2つを並びで議論するのはどうか。
○ 悪質な弁護士による被害がある一方で、現行の弁護士会の綱紀委員会や懲戒委員会が何をしているのか、一般の人にはわからないということが、弁護士に対する不信感を招く要因となっている。
○ 審議会の議論は、日弁連綱紀審査会の議決の拘束力についてはペンディングになっていると思う。
○ いずれ議論を進めていくと、同じような問題に突き当たると思われるので、事務局のたたき台(案)で進めて欲しい。
○ 日弁連綱紀審査会を法律上の組織にすることと議決に拘束力を持たせることについてはどのような関連性があるか。
□ 完全にパラレルな問題ではないが、大きく関連していると考える。
● 仮に、議決に拘束力を持たせる組織として日弁連綱紀審査会を制度設計した場合には、法律上の組織として日弁連綱紀審査会を位置づけておかないと法制的に難しいと考える。また、仮に議決の拘束力を認めない場合であっても、法律上の機関の議決を審査し、少なくとも日弁連綱紀委員会に再審査を行わせる機関であるからには法律上の組織としておいた方がよいのではないか、と考えている。
○ 議決の拘束力についてはア案がよいと思う。懲戒というのは基本的に集団としての秩序、信用を守るための自浄作用であり、本来内部で処理することだと思う。透明化を目指すことは大賛成であるが、法律上の組織とか、拘束力を持たせるとかいうのは行き過ぎではないか。懲戒案件の多くは依頼者に対するサービスの内容が悪いというもので、原因の大半が依頼者の不満ではないだろうか。何を懲戒するのかについても十分な議論をして欲しい。
○ 依頼者との間の苦情処理に関する制度との関係はどうか。
□ 苦情相談窓口を設置しているところでは懲戒請求は減っている。
○ 議決の拘束力についてはウ案がよいと考える。懲戒について、リーガルエシックスの観点から見ると、プロフェッショナルコンダクトとして背反行為がある場合と、パーソナルな問題がある場合の大体2つに分かれる。資料を見ると、重ねて懲戒処分を受けて、中には4回処分を受けている人もいる。全国的に見て、プロフェッショナルミスコンダクトよる懲戒処分が多いのか、パーソナルな理由による懲戒処分が多いのか。
□ 1999年の742件中、依頼者からのクレームが271件で36.5パーセント、相手方からのクレームが315件で42.5パーセントで、これは両方とも事件に絡むものが多いと思う。この他が約20パーセントあるが、このうちどの程度がパーソナルな部分かについては精査していない。
○ 懲戒制度の設計に当たっては、性悪の弁護士が万が一出てきた場合に備えてどうしておくべきかということを考えなくてはいけない。それを考えるのがこの場における検討であると考える。どういう事例が多いか、何人くらい処分を受けているかということよりも、議論の本質は、日弁連が国民にとって望ましい姿でありつづけるための制度設計をするべきである。そして、日弁連が委嘱した国民の方々で構成される綱紀審査会の議決に拘束力を認めないというのは理解できない。拘束力を認めた方が、請求人ばかりでなく、請求を受けた弁護士としても時間が節約されるのではないか。イ案かウ案であろう。
○ 現行の弁護士法を見ると強制加入制度がとられており、資格があっても登録しないと弁護士として活動できず、弁護士会は国家から完全に独立した団体で国の監督権が及ばないという特質がある。綱紀・懲戒問題の根底をなす弁護士自治の在り方について、弁護士自治は誰のためにあるのかを考えると、弁護士法1条にいう基本的人権や社会正義を守っていくという目的実現のため、国民に対してどういう責任を果たしていくかということにある。弁護士法という法律で国会から負託された権限を果たしていくためには、内部的に完結させるだけではなく、開かれた体系として国民に示していくことが求められていると思う。国民から見た場合という観点では、綱紀審査会と検察審査会は同じ視点で考えるべきであると思う。
○ 国民のための制度設計をするということに同感である。2001年1月23日付けの「弁護士のあり方について」の中で「日弁連は、弁護士に対する懲戒権限が、国民から付託されたものであり、その厳正・的確・迅速な行使は、何よりも国民に対する責務であると考えている。」等と日弁連自ら表明していることからも、弁護士自治はどうあるべきか、国民の信頼にどう応えていくべきかという方向で考えるべきである。綱紀審査会が一般国民だけで構成されるという形を見ると、検察審査会と同様に考えるのが一般的ではないかと思う。市民だけで構成される日弁連綱紀審査会の議決に拘束力を持たせないことについては疑問である。綱紀審査会の位置付けは単に会則上のものではなく、法律に根拠を持つ組織にするべきである。
○ 時代の流れもよく考えるべきである。弁護士人口が5万人、6万人になれば、弁護士像も変わり、競争原理が働くようになる。つまりマーケットが生まれ、クライアントが弁護士を選ぶようになる。懲戒だけが悪い弁護士を駆逐するものではない。
○ 日弁連綱紀審査会の議決に拘束力を持たせた方が、国民の日弁連に対する疑心暗鬼がなくなり、弁護士のアカウンタビリティーをより一層果たすことになるのではないか。弁護士人口が増加してマーケットが生まれてくることによる自浄作用については、企業は情報があるので弁護士の善し悪しを判断できるから、当てはまると思うが、十分な情報が得られない一般国民にとっては、弁護士の善し悪しがわかりにくいので、こうした作用が働くことは期待しがたいということもある。
■ 本日の議論を踏まえて、次回引き続き審議を続ける。