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法曹制度検討会(第4回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日 時
平成14年5月14日(火)13:30〜17:20

2 場 所

司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者

(委 員)
伊藤 眞、岡田ヒロミ、奥野正寛、小貫芳信、釜田泰介、木村利人、佐々木茂美、田中成明、中川英彦、平山正剛、松尾龍彦(敬称略)

(説明者)
井元義久(日本弁護士連合会副会長)
有吉 眞(日本弁護士連合会事務次長)
金井康雄(最高裁判所事務総局人事局参事官)
甲斐行夫(法務省刑事局参事官)
藤井 篤(日本弁護士連合会司法改革調査室嘱託)

(事務局)
山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、植村稔参事官

4 議 題

(1) 弁護士倫理等に関する弁護士会の態勢の整備等−弁護士会による綱紀、懲戒手続の透明化・迅速化・実効化を図ること
(2) 検察官・裁判官の身分を離れた検事・判事補が、検察官・裁判官に復帰した場合の、退職手当や共済関係等の面での適切な配慮
(3) その他

5 配布資料

【事務局配布資料】
 資料4−1 綱紀・懲戒手続についての司法制度改革審議会での主なやりとり
 資料4−2 最高裁裁判官選任に関する外国法調査について
 資料4−3 法曹制度検討会 今後の開催予定(案)

【日弁連配布資料】
 資料 弁護士の綱紀・懲戒制度の概要と日弁連の改革の基本方針について
 資料 綱紀・懲戒制度に関する資料
 資料 弁護士懲戒制度の運用状況

【法務省配布資料】
 資料 検事外部派遣先一覧

【最高裁配布資料】
 資料 判事補の経験の多様化のための制度の整備に関する検討状況について(説明骨子)

6 議 事

 議事に先立ち、事務局から、事務局配布資料4−1から資料4−3まで、日弁連配布資料、法務省配布資料、最高裁配布資料について確認がなされた。

 (1) 弁護士倫理等に関する弁護士会の態勢の整備等−弁護士会による綱紀、懲戒手続の透明化・迅速化・実効化を図ること

① 日弁連からの説明
 日弁連配布資料「弁護士の綱紀・懲戒制度の概要と日弁連の改革の基本方針について」に沿って、日弁連配布資料「綱紀・懲戒制度に関する資料」及び「弁護士懲戒制度の運用状況」を引用しながら説明がなされた。

② 事務局からの説明
 前回検討会における事務局配布資料3−8「綱紀・懲戒手続 検討のたたき台(案)」について説明がなされた。

③ ①及び②に関する質疑応答等
 上記①及び②の説明に対して、次のような質疑応答及び意見交換がなされた。(○:委員、●:事務局、□:日弁連、■:座長)

○ 事務局配布資料3−8の3の(1)及び(3)については問題がある。まず、(1)については、推進計画上「日弁連の検討状況も踏まえた上で検討し」とされていることから、本日の「日弁連綱紀審査会は会則上の組織としたい」旨の日弁連の説明を踏まえる形で、たたき台は「会則上の組織としてはどうか」とすべきである。次に(3)には、日弁連綱紀審査会の議決に拘束力を付与しない案(ア案)と、3分の2の多数による議決に拘束力を付与する案(イ案)、過半数による議決に拘束力を付与する案(ウ案)が並べてあるが、司法制度改革審議会の審議の実情が反映されていない。同審議会では、日弁連の原案(審議会において日弁連会長のプレゼンテーション等で示された案。事務局配布資料4−1の添付資料2「弁護士のあり方について」及び同添付資料3「弁護士のあり方について」(補充書)参照)を採用するという結論、つまり日弁連綱紀審査会の議決については拘束力を与えないということで議論がまとまっていると理解している。よって、ア案をたたき台とすべきである。

● 司法制度改革審議会における議論の過程を見ると(事務局配布資料4−1「綱紀・懲戒手続についての司法制度改革審議会での主なやりとり」に基づき、同審議会での審議の経過を説明)、日弁連が日弁連綱紀審査会の議決の拘束力について勧告的な効力のみを持つものと一貫して主張してきたことは明らかであるが、委員の意見を見る限り、議決に法的拘束力を持たせるべきであるという意見が述べられたことはあったものの、法的拘束力を持たせる必要はないとの意見が明示的に述べられたことはないと認識している。同審議会意見書においても、拘束力があるともないとも記載されていない。このような審議経過を踏まえると、同意見書は、議決の拘束力についてはその後の検討に委ねたとみるのが相当であると考えたものである。もちろん、当事務局に審議会意見の確定的な解釈を行う権限があるなどとは毛頭考えていない。この点については委員の皆様に十分議論願いたい。

○ 日弁連は、綱紀・懲戒手続問題について臨時総会で方向性を出すなど、積極的な取組をしていると評価したい。事務局配布資料には、日弁連綱紀審査会の議決の拘束力についてア案ないしウ案の3案が例示されているが、司法制度改革推進計画において、弁護士会運営の透明化に関する提言がされていることも踏まえ、日弁連の基本方針であるア案に確定しているということではなく、全体の流れの中で、3つの案について検討すべきである。

○ 事務局からの説明の中で、審議会の議論において検察審査会と比較しての検討がなされている部分の紹介があったが、検察審査会は国家の公訴権に関する制度で、日弁連綱紀審査会は自律権に関する制度である。この2つを並びで議論するのはどうか。

○ 悪質な弁護士による被害がある一方で、現行の弁護士会の綱紀委員会や懲戒委員会が何をしているのか、一般の人にはわからないということが、弁護士に対する不信感を招く要因となっている。

○ 審議会の議論は、日弁連綱紀審査会の議決の拘束力についてはペンディングになっていると思う。

○ いずれ議論を進めていくと、同じような問題に突き当たると思われるので、事務局のたたき台(案)で進めて欲しい。

○ 日弁連綱紀審査会を法律上の組織にすることと議決に拘束力を持たせることについてはどのような関連性があるか。

□ 完全にパラレルな問題ではないが、大きく関連していると考える。

● 仮に、議決に拘束力を持たせる組織として日弁連綱紀審査会を制度設計した場合には、法律上の組織として日弁連綱紀審査会を位置づけておかないと法制的に難しいと考える。また、仮に議決の拘束力を認めない場合であっても、法律上の機関の議決を審査し、少なくとも日弁連綱紀委員会に再審査を行わせる機関であるからには法律上の組織としておいた方がよいのではないか、と考えている。

○ 議決の拘束力についてはア案がよいと思う。懲戒というのは基本的に集団としての秩序、信用を守るための自浄作用であり、本来内部で処理することだと思う。透明化を目指すことは大賛成であるが、法律上の組織とか、拘束力を持たせるとかいうのは行き過ぎではないか。懲戒案件の多くは依頼者に対するサービスの内容が悪いというもので、原因の大半が依頼者の不満ではないだろうか。何を懲戒するのかについても十分な議論をして欲しい。

○ 依頼者との間の苦情処理に関する制度との関係はどうか。

□ 苦情相談窓口を設置しているところでは懲戒請求は減っている。

○ 議決の拘束力についてはウ案がよいと考える。懲戒について、リーガルエシックスの観点から見ると、プロフェッショナルコンダクトとして背反行為がある場合と、パーソナルな問題がある場合の大体2つに分かれる。資料を見ると、重ねて懲戒処分を受けて、中には4回処分を受けている人もいる。全国的に見て、プロフェッショナルミスコンダクトよる懲戒処分が多いのか、パーソナルな理由による懲戒処分が多いのか。

□ 1999年の742件中、依頼者からのクレームが271件で36.5パーセント、相手方からのクレームが315件で42.5パーセントで、これは両方とも事件に絡むものが多いと思う。この他が約20パーセントあるが、このうちどの程度がパーソナルな部分かについては精査していない。

○ 懲戒制度の設計に当たっては、性悪の弁護士が万が一出てきた場合に備えてどうしておくべきかということを考えなくてはいけない。それを考えるのがこの場における検討であると考える。どういう事例が多いか、何人くらい処分を受けているかということよりも、議論の本質は、日弁連が国民にとって望ましい姿でありつづけるための制度設計をするべきである。そして、日弁連が委嘱した国民の方々で構成される綱紀審査会の議決に拘束力を認めないというのは理解できない。拘束力を認めた方が、請求人ばかりでなく、請求を受けた弁護士としても時間が節約されるのではないか。イ案かウ案であろう。

○ 現行の弁護士法を見ると強制加入制度がとられており、資格があっても登録しないと弁護士として活動できず、弁護士会は国家から完全に独立した団体で国の監督権が及ばないという特質がある。綱紀・懲戒問題の根底をなす弁護士自治の在り方について、弁護士自治は誰のためにあるのかを考えると、弁護士法1条にいう基本的人権や社会正義を守っていくという目的実現のため、国民に対してどういう責任を果たしていくかということにある。弁護士法という法律で国会から負託された権限を果たしていくためには、内部的に完結させるだけではなく、開かれた体系として国民に示していくことが求められていると思う。国民から見た場合という観点では、綱紀審査会と検察審査会は同じ視点で考えるべきであると思う。

○ 国民のための制度設計をするということに同感である。2001年1月23日付けの「弁護士のあり方について」の中で「日弁連は、弁護士に対する懲戒権限が、国民から付託されたものであり、その厳正・的確・迅速な行使は、何よりも国民に対する責務であると考えている。」等と日弁連自ら表明していることからも、弁護士自治はどうあるべきか、国民の信頼にどう応えていくべきかという方向で考えるべきである。綱紀審査会が一般国民だけで構成されるという形を見ると、検察審査会と同様に考えるのが一般的ではないかと思う。市民だけで構成される日弁連綱紀審査会の議決に拘束力を持たせないことについては疑問である。綱紀審査会の位置付けは単に会則上のものではなく、法律に根拠を持つ組織にするべきである。

○ 時代の流れもよく考えるべきである。弁護士人口が5万人、6万人になれば、弁護士像も変わり、競争原理が働くようになる。つまりマーケットが生まれ、クライアントが弁護士を選ぶようになる。懲戒だけが悪い弁護士を駆逐するものではない。

○ 日弁連綱紀審査会の議決に拘束力を持たせた方が、国民の日弁連に対する疑心暗鬼がなくなり、弁護士のアカウンタビリティーをより一層果たすことになるのではないか。弁護士人口が増加してマーケットが生まれてくることによる自浄作用については、企業は情報があるので弁護士の善し悪しを判断できるから、当てはまると思うが、十分な情報が得られない一般国民にとっては、弁護士の善し悪しがわかりにくいので、こうした作用が働くことは期待しがたいということもある。

■ 本日の議論を踏まえて、次回引き続き審議を続ける。

(2) 検察官・裁判官の身分を離れた検事・判事補が、検察官・裁判官に復帰した場合の、退職手当や共済関係等の面での適切な配慮
 最高裁から、最高裁配布資料「判事補の経験の多様化のための制度の整備に関する検討状況について(説明骨子)」に沿って、法務省から、法務省配布資料「検事外部派遣先一覧」を引用して、それぞれの検討状況について説明がなされた。これに対して、次のような質疑がなされた。(○:委員、■:座長:△:最高裁、▲:法務省)

○ 他の行政官庁に出向したり、留学をしている検察官の人数は。

▲ 平成13年度で、留学している者は約18名、他の行政官庁への出向者は約40名である。

○ 検察庁、裁判所の外からの受入の状況はどうか。

▲ 弁護士からの検事任官者は、平成3年以降現在までの間で7名。裁判官については、法務省民事局等を含めると相当数になる。

△ 裁判官については、弁護士からの任官者のほか、一定の場合に認められている大学の法学部の助教授や教授、検察官から一定程度来てもらっているが、それ以外は資格の問題があるので難しい。

○ 同期の裁判官のうちの40パーセント程度は外へ出て経験をしているということであるが、その裁判官は、出向等ということで、裁判官の身分を有している、したがって裁判所へ戻ってくるときも問題はない、それ以外の弁護士として他職経験する場合だけが問題となる、ということでよいのか。

△ 「官」の身分を離れて他職を経験するといったときに一番問題になるのが弁護士である。

○ 検察官が身分を離れて弁護士になる場合も同じ問題が生じると考えてよいのか。

▲ そのとおりである。

○ 立法措置が必要になると考えられるが、裁判官と検察官を同じ法律で措置するのか。

▲ 立法措置が必要となることについては、最高裁と同じ見解である。内容的にも、かなりパラレルなものになると考えるが、同じ法律で措置するか別の法律となるのかについては、立法技術的な話になるので、今後の検討となる。

■ この問題については、事務局に法的措置の検討をお願いしたい。

(3) その他
① 最高裁裁判官選任に関する外国法調査について
 事務局から、事務局配布資料4−2「最高裁裁判官選任に関する外国法調査について」に沿って説明がなされ、了承された。

② 検討会開催期日の追加について
 7月9日の期日追加の理由として、推進計画上、「法律事務における企業法務等の位置付けについて検討し、少なくとも、司法試験合格後に民間企業等における一定の実務経験を経た者に対して法曹資格を付与することについて、所要の法案を提出する(平成15年通常国会を予定)。(本部及び法務省)」とされている部分を、当検討会の検討対象とすることについて説明がなされ、事務局配布資料4−3「法曹制度検討会今後の開催予定(案)」が了承された。

③ 関係機関タイム
 弁護士会から、公設事務所の設置状況について説明がなされた。

(4) 次回の予定
 次回(6月18日)は、弁護士法改正問題(綱紀・懲戒手続問題、弁護士法72条問題、報酬規定削除問題、特任検事への法曹資格付与問題、司法修習を経ていない司法試験合格者への法曹資格付与問題等)について議事を進める予定。

(以上)