① 第3回検討会事務局配布資料3ー8「検討のたたき台(案)」にある事項について
次のような説明、質疑応答及び意見交換がなされた。(○:委員、●:事務局、□:日弁連、■:座長。以下、同じ)
■:資料3−8の「1(単位弁護士会の)綱紀委員会の構成委員に裁判官、検察官及び学識経験者の委員を加えることはどうか。」及び「2 日弁連綱紀委員会を、法律上の組織とした上、同委員会が、現行の日弁連懲戒委員会に代わって、懲戒請求者からの(単位弁護士会の)綱紀委員会の議決に対する異議申出を審査することはどうか。」については、特に異論はないと思われるがどうか。
○:異議なし。
□:日弁連からの説明
日弁連配布資料「綱紀・懲戒制度改革に関する審議会意見書の提言と日弁連の対応対照表」、「こんな弁護士にご注意!」、「会員の非違行為の対応について」、「市民窓口の設置及び紛議調停制度の改善に関するお願い」、「市民の苦情等に対する日弁連の対応」、「平成11年〜13年度苦情相談処理概要(第二東京弁護士会)」、「東京弁護士会市民窓口に寄せられた苦情等相談内容と件数」、「紛議調停申立の実状」、「アメリカの懲戒制度とその改革」を引用しながら、綱紀・懲戒に関連する日弁連の取組みについて説明がなされた。
○:日弁連綱紀審査会の議決の拘束力の問題は、綱紀・懲戒制度の本質にかかわる問題であり、弁護士が国家権力との対立の中で弁護士自治を獲得したという歴史的背景を考えても、拘束力を今すぐ持たせるのは問題があると思う。弁護士の綱紀・懲戒の最終的な決定・責任は弁護士会が負うものとさせてもらいたい。また、一般国民のみで構成する日弁連綱紀審査会の委員が議決書を作成することは技術的に難しいと思う。なお、私は拘束力なしとの見解であるが、自判するという意味の拘束力がないと言っているのであって、裁判において原審に返すという意味での差戻しの拘束力はあると考えている。
○:各弁護士会の苦情相談の窓口、紛議調停制度、綱紀・懲戒制度の連携がとれていれば、具体的には苦情相談窓口であっせんを受けることができるならば、綱紀・懲戒の件数もかなり減少すると思う。また、日弁連綱紀審査会が懲戒処分相当としているものを日弁連綱紀委員会へ戻すというのは、透明性の観点から、納得がいかないものがある。
□:苦情相談の窓口では、別室でじっくりと話を聞いた上で、懲戒手続についての説明をするケースもあるし、後で事実関係を調査した上で注意をするということもしている。日弁連としても、苦情相談から綱紀・懲戒につなげることは重要だと思っている。
○:日弁連が会員全員に義務付けた倫理研修とはどのようなものなのか。また、日弁連には、弁護士倫理に関する常設の事務局があるのか。担当の理事がいるのか。
□:日弁連では全会員に対し、初年度、5年目、10年目、20年目というように倫理研修を義務付け、例外なく受講させている。内容についても、事例研究を中心に工夫をしている。また、現在、倫理担当の理事を中心に外部委員を入れて弁護士倫理の規定の改訂作業を行っている。
■:日弁連綱紀審査会の「懲戒委員会の審査に付することを相当とする議決」の拘束力について、前回意見を述べた委員も含めて、皆さんから発言をいただきたい。
○:議決の方法を工夫する必要があると思うが、拘束力は認めた方がいいと思う。
○:弁護士自治を開かれたものとして考え、日弁連綱紀審査会には一般の方が参加しているということに重きを置くと、拘束力は認める方向で考えるべきだと思う。
○:一定の議決については、拘束力ありとすべきである。法律の専門家以外の一般の人の意見を聞くのであるから、それにはある程度の重みを持たせる必要がある。
○:専門家で構成される日弁連綱紀委員会の判断が、一般国民で構成される日弁連綱紀審査会で覆るということは余程の事態であると思うが、そこで最後に出された判断は尊重するべきだと思う。(日弁連綱紀審査会の制度設計としては、)拘束というかは別にしても、その判断に従ってもらうことだと思う。
○:懲戒の本質は、組織の秩序維持にあると考える。弁護士に限らず、医者、企業、学校、労働組合等のどれもが自律的な機能を持っている。公益性という問題はあると思うが弁護士だけが特別なわけではない。現行の制度で十分機能していると思う。あえて拘束力を持たせなくても、弁護士会に任せておけばいいと思う。ただ、懲戒の重さと事案の中味との関係については、少し不透明であると思う。
○:国民に開かれた日弁連として、国民生活に大きく貢献してきた歴史的な背景を考えても、日弁連綱紀審査会の議決の拘束力としては、事務局資料3−8のウ案しか考えられないと思う。
○:日弁連綱紀審査会が設置される目的は、民意の反映にあると思う。その目的を実効性のあるものとするためには、議決の方法を検討する必要はあるが、基本的には、拘束力は持たせるべきである。
○:日弁連綱紀審査会の議決に拘束力を持たせたとしても、最終的な判断は日弁連懲戒委員会が行うことには変わりないと思う。せっかく日弁連綱紀審査会を作り、しかも弁護士自治を主張するのであれば、懲戒委員会に反映させる意味での拘束力を持たせることは当然の帰結と言えると思う。国家権力と民間団体との対立の時代は既に過去のものであり、現在では、国も民間団体も国民に対する説明責任を果たすべきであると考える時代に来ていると思う。
○:弁護士自治という言葉は、非常にブラックボックス的である。外から見てクリアーでスマートな弁護士会と思われるよう、日弁連綱紀審査会の議決には拘束力を持たせて懲戒委員会にかけた方がいいと思う。
■:日弁連綱紀審査会の議決を尊重するということは、全委員に共通の認識であると思うが、制度設計として、議決の拘束力については、大方の意見は拘束力を認めた方がいいのではないかということ、ただし、議決の要件、種類、内容等については、拘束力を待たせないと考える側の意見も取り入れながら、合理的な制度を作っていくのがよいということであったと承ることとしたい。今後は、拘束力があるという前提で具体的な検討を行っていきたいと考えるがどうか。
○:各委員の意見には、弁護士会に対して厳しすぎる面があると思う。弁護士会としても努力をしているのであるから、もう少し柔らかい目で見ることができないかと言っておきたいと思う。
○:今の日弁連に対して不信感があるとか、問題があるとかいうわけではない。制度を作る現段階としては、万が一日弁連に問題が生じたような場合も視野に入れて制度設計をしていく必要があると思う。この制度を使用することがなければ、それは非常に望ましいことである。
■:意見の大勢としては、拘束力を認めるということでまとめさせていただきたいと思う。
■:資料3−8の3の(1)にある、「日弁連綱紀審査会を法律上の組織とする」かどうかについては、日弁連綱紀審査会の「懲戒委員会の審査に付することを相当とする議決」に法的拘束力を認めるとすれば、審査会を法律上の組織とする必要があると考えるがどうか。
○:異議なし。
■:日弁連綱紀審査会の「懲戒委員会の審査に付することを相当とする議決」に拘束力を認めることを前提として、どのような議決に拘束力を認めるのが相当かについて意見をお聞かせいただきたい。
○:資料3−8の3の(3)のイ案、ウ案の分け方には問題がある。イ案では、懲戒委員会の審査に付するという意見の票数によって、懲戒委員会に行くか、綱紀委員会に行くかが変わるのはおかしいと思う。また、日弁連綱紀審査会の審査結果には、懲戒委員会の審査に付することを相当とするもののほかにも、日弁連綱紀委員会に再調査させる旨の結果もあり得ると思う。議決の結果については、それぞれ要件を定めて、工夫する必要がある。
●:イ案については、後段部分で、過半数ではあるが3分の2以上の多数に達しない「懲戒委員会の審査に付することを相当とする議決」の効力として、日弁連綱紀委員会が再検討することとするのは、議決の内容と議決の効力に乖離が生じており、問題があると考えている。さらに、イ案についても、ウ案についても、議決の種類として、「懲戒委員会の審査に付することを相当とする議決」のほかに、検察審査会において、検察官に対し再捜査を要請するような場合になされる不起訴不当の議決に相当する、日弁連綱紀審査会の委員の過半数による「日弁連綱紀委員会における調査不十分の議決」ないし「その再調査に付する議決」があるのではないかと考える。
○:日弁連綱紀委員会の結果に不服があって上がってきたものを、また元に戻すということは理論構成上無理があるのではないか。
○:日弁連綱紀委員会と日弁連綱紀審査会とは、評価基準のずれが生じる可能性がある。日弁連綱紀委員会に再調査させるケースを考えておいた方が日弁連綱紀審査会の役割も膨らむのではないか。
○:一般の市民だけでは、白か黒か迷うこともあると思う。議決の選択肢として、日弁連綱紀委員会にもう一度調査させることもあっていいと思う。
○:検討会の意見としてウ案ということになった場合、日弁連としては臨時総会を開く必要が出てくるのか。
□:それだけでは臨時総会を開く必要性は生じないが、日弁連で検討した結果、法や会則を改正することになった場合には、改正のための総会が必要となる。
■:次回検討会においては、どのような議決に拘束力を認めるのかの点や、議決の種類について、引き続き議論していきたいと思う。
② 懲戒処分の公表について
事務局配布資料5−3「綱紀・懲戒手続 検討のたたき台(案)その2」について、資料5−4「隣接法律専門職種等における懲戒処分の公告に関する規定」を引用して、説明がなされた。これに対して次のような質疑応答及び意見交換がなされた。
○:日弁連として、官報以外の公告方法は考えているのか。
□:従来からの掲載している日弁連機関誌「自由と正義」のほかに、近々日弁連のホームページへの掲載も予定している。
■:懲戒処分については官報で公告する旨法律で規定するという方向で、異論はないか。
○:異議なし。