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法曹制度検討会(第5回) 議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日時
平成14年6月18日(火)13:30〜17:00

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)
伊藤 眞(座長)、岡田ヒロミ、奥野正寛、小貫芳信、釜田泰介、木村利人、佐々木茂美、田中成明、中川英彦、平山正剛、松尾龍彦(敬称略)
(説明者)
川中 宏(日本弁護士連合会副会長)
永尾廣久(日本弁護士連合会副会長)
有吉 眞(日本弁護士連合会事務次長)
小池 裕(最高裁判所事務総局審議官)
(事務局)
山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、植村稔参事官、松永邦男参事官

4 議題
(1)弁護士倫理等に関する弁護士会の態勢の整備等−弁護士会による綱紀、懲戒手続の透明化・迅速化・実効化を図ること
(2)弁護士法第72条について、隣接法律専門職種の業務内容や会社形態の多様化などの変化に対応する見地からの企業法務等との関係も含め検討した上で、規制対象となる範囲・態様に関する予測可能性を確保すること(企業法務との関係を除く。)
(3)弁護士報酬の透明化・合理化−報酬規定の会則の必要的記載事項からの削除
(4)企業法務等の位置付け−いわゆる特任検事、副検事、簡易裁判所判事の経験者の活用等を検討し、少なくとも、いわゆる特任検事経験者に対して法曹資格を付与すること(副検事、簡易裁判所判事の経験者の活用等を除く。)
(5)その他

5 配布資料
資料5−1裁判所法
資料5−2検察庁法
[弁護士倫理等に関する弁護士会の態勢の整備等]
資料5−3綱紀・懲戒手続 検討のたたき台(案)その2
資料5−4隣接法律専門職種等における懲戒処分の公告に関する規定
[弁護士法72条の予測可能性の確保のための措置]
資料5−5弁護士法72条の予測可能性の確保のための措置 検討のたたき台(案)
資料5−6旧弁護士法第7条及び経過規定
資料5−7意見書で提案された隣接法律専門職種の権限拡大の実現について
[弁護士報酬規定]
資料5−8報酬規定の会則の必要的記載事項からの削除 検討のたたき台(案)
資料5−9弁護士報酬の概要(日弁連)
資料5−10弁護士報酬規定についての司法制度改革審議会での主なやりとり
資料5−11隣接法律専門職種等に関する報酬規定削除等の経過
資料5−12弁理士報酬についてのガイドブック(改訂版・平成14年3月・日本弁理士会総合政策検討委員会(初版・平成12年12月弁理士会弁理士報酬問題検討会))
資料5−13税理士業務報酬算定に関するガイドライン(指針)(平成14年2月・日本税理士会連合会業務対策部)
[特任検事経験者に対する法曹資格の付与]
資料5−14特任検事経験者に対する法曹資格の付与 検討のたたき台(案)

【日弁連配布資料】
資料綱紀・懲戒制度改革に関する審議会意見書の提言と日弁連の対応対照表(表)
資料「こんな弁護士にご注意!」(パンフレット)
資料会員の非違行為の対応について(要請書)−事前公表制度の整備等−
 懲戒手続に付されたことの公表に関する会規(モデル案)添付
資料市民窓口の設置及び紛議調停制度の改善に関するお願い
 市民窓口の設置に関する規則(参考案)添付
資料市民の苦情等に対する日弁連の対応(図)
資料平成11年〜13年度苦情相談処理概要(第二東京弁護士会)
資料東京弁護士会市民窓口に寄せられた苦情等相談内容と件数(表)
資料紛議調停申立の実状(表)
資料アメリカの懲戒制度とその改革
資料弁護士法第72条改正問題に関する見解
資料弁護士報酬規定に関する日弁連の取りくみ
資料特任検事に対する法曹資格の付与について(要約)
資料特任検事への法曹資格付与について

【法務省配布資料】
資料特任検事関係資料
 資料1特任検事について
 資料2特任検事の選考方法
 資料3年度別特任検事任官者・現在員数調
 資料4年度別特任検事退職者数調
 資料5特任検事の職務内容等
 資料6特任検事の研修等

【最高裁配布資料】
資料一般規則制定諮問委員会委員名簿

6 議事
【伊藤座長】それでは、定刻になりましたので、第5回の「法曹制度検討会」を始めさせていただきます。御多忙の中御出席いただきまして、ありがとうございます。
 それでは、議事に先立ちまして、事務局から配布資料の確認をさせていただきます。

【植村参事官】それでは、配布資料の確認をさせていただきます。事務局の方から、資料の5−1から5−14まで配らせていただいております。
 そのほか、席上配布資料といたしまして、事務局資料の3−8「綱紀・懲戒手続 検討のたたき台(案)」、本日の検討に関連いたします日弁連臨時総会決議、司法制度改革審議会意見書の抜粋及び同審議会の議事録の抜粋を配布させていただいております。
 また、次第に書かせていただきましたとおり、日弁連、法務省、最高裁からそれぞれ資料の提出をいただいております。
 以上でございます。

【伊藤座長】それでは、お手元の次第にございますとおり、まず最初に弁護士倫理等に関する弁護士会の体制の整備等、弁護士会による綱紀・懲戒手続の透明化・迅速化・実効化を図ることにつきまして、前回の審議を受けまして、引き続き御議論をいただきます。
 続きまして、弁護士法72条の問題、第3に報酬規定の会則の必要的記載事項からの削除の問題、第4に特任検事経験者に対する法曹資格の付与の問題等につきまして、順次審議をお願いしたいと存じます。
 なお、最後に申しました、特任検事経験者に対する法曹資格の付与の問題でございますけれども、第3回の検討会で御了解いただきました、事務局資料3−1「法曹制度検討会進行の枠組み(案)」におきましては、特任検事経験者に対する法曹資格の付与の問題のほかに、副検事、簡易裁判所判事の経験者の活用等についても、夏前に検討をお願いしていたところでございます。しかしながら、推進計画で見ますと、平成15年通常国会への法案提出を予定しておりますのは、特任検事経験者に対する法曹資格の付与の問題のみでございますので、この特任検事経験者に対する法曹資格付与の問題を先行して本日議論していただきたいと思います。この点は御了解いただけますでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

【伊藤座長】それから、最後に例によりまして関係機関タイムといたしまして、下級裁判所の裁判官の指名過程に関する諮問機関の設置につきまして、最高裁が一般規則制定諮問委員会に諮問されたことに関しまして、最高裁から報告していただきます。
 それでは、早速でございますけれども、綱紀・懲戒手続の透明化・迅速化・実効化を図ること、この問題に入りたいと思います。先ほど説明がございましたが、前回に引き続きまして、席上配布しております事務局資料3−8検討のたたき台(案)にある事項についての審議をお願いしたいと存じます。
 前回の御議論でもそうですが、議論の中心は拘束力の問題でございますが、それに入る前に事務局資料3−8に記載されております、「1(単位弁護士会の)綱紀委員会の構成委員に裁判官、検察官及び学識経験者の委員を加えることはどうか」及び「2日弁連綱紀委員会を、法律上の組織とした上、同委員会が、現行の日弁連懲戒委員会に代わって、懲戒請求者からの(単位弁護士会の)綱紀委員会の議決に対する異議申出を審査することはどうか」についての審議をお願いしたいと思いますが、今、申しました2つにつきましては、格別の御異論がないように思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

【伊藤座長】それでは、異議がないということで承りました。
 そこで、前回お願いいたしましたとおり、日弁連綱紀審査会の議決の拘束力について、各委員の御発言に関連いたしまして、日弁連と平山委員から発言をお願いしたいと存じます。
 まず、日弁連からお願いいたします。

【日弁連(有吉次長)】日弁連の事務次長をしております、有吉でございます。
 本日、お手元にお配りさせていただきました、日本弁護士連合会と記載されている封筒の中に、日弁連で本日準備いたしました資料を用意させていただいておりますので、そちらをごらんいただきながら御説明させていただきたいと思います。
 まず、前回も議論させていただいておりますが、日弁連として今回の弁護士の綱紀・懲戒手続の改革につきまして、審議会の意見書で記載されている事項を日弁連の総会において、どのように決議し対応してきたかということを簡単に一覧表で記載させていただきましたのが、一番最初の「綱紀・懲戒制度改革に関する審議会意見書の提言と日弁連の対応対照表」でございます。
 ここにお示ししておりますとおり、審議会意見書で求められた事項につきましては、日弁連といたしまして誠心誠意その趣旨に従いまして対応させていただいたと考えております。
 特に日弁連の綱紀・懲戒の本件綱紀審査会に関するところでございますけれども、弁護士会の綱紀委員会は、従来は参与員という形で議決権がない委員ということになっておりましたが、弁護士会綱紀委員会につきましては、一般の市民の方からも入っていただき、委員として参加していただくと同時に、議決権も有するという制度の改革を提言させていただいております。
 同様に、日弁連につきましても、綱紀委員会につきましては、法律上の綱紀委員会とするということにいたしまして、そこに外部委員に入っていただいて調査する制度を考えさせていただいておりますので、その点も御注目いただきたいと思います。
 なお、日弁連綱紀委員会につきましては、複数の審査体を設置いたしまして、綱紀審査会において懲戒手続に付することが相当であるという議決をいただいた場合には、別に綱紀委員会、第2綱紀委員会と言いますか、こちらの方で審査するというシステムを考えてございます。
 そのほか、協力義務等ございますが、審議会の意見書には特に指摘されていなかった問題といたしまして、後に述べます事前公表の制度、懲戒事由を類型化して事情に応じた適正な懲戒処分ができるような類型化の作業、それから累犯加重、何回も同じような処分を受けているというようなことを、やはり1つの情状として重く受け止める累犯加重制度も導入することを検討いたしております。
 次にパンフレットが入ってございます。「こんな弁護士にご注意!」ということで、日弁連の方で特に消費者問題、クレジット、サラ金関係につきまして、整理屋との提携弁護士が最近非常に注目されていることにかんがみまして、各単位会にこのようなチラシをお配りすると同時に、法律相談その他においてこういった形で勧誘があった市民に対して、その裏側に記載している各地の弁護士会の法律相談、こちらの方に何かあったら御相談いただきたいということで作ったパンフレットでございます。綱紀・懲戒に至る過程の中で、紛議調停という部分で、非常に市民からの問い合わせとかクレームがあるということから、このようなパンフレットを作成しまして、警告させていただいておりますという紹介でございます。
 次に、平成14年6月5日付で、日弁連会長から全国の弁護士会の会長に対しまして、先ほど日弁連が総会で提唱していた事前公表制度につきまして、全国的に整備をされたいという通知をさせていただいたものをお手元に配布させていただいております。
 この事前公表の整備というのは、御承知のように情報が非常に不足しているということから、日弁連の総会では懲戒委員会の審査に付された段階で公表するということを決議しておりますが、もっと前の段階、つまり綱紀委員会の調査に付された段階においても、被害が拡大する恐れのあるもの、弁護士の信用を害するような事情があるというような場合には、積極的に広報することによって被害を未然に防止すべきであるということで、日弁連としては会規モデル案を付けまして、全国の弁護士会会長にこのような対応をするように要請いたしております。その書面でございます。
 次に、平成14年1月31日付「市民窓口の設置及び紛議調停制度の改善に関するお願い」と題する書面がございます。これは、平成14年1月31日付で日弁連より全国の弁護士会の会長に対して、いまだ市民窓口、苦情相談というような正式な機関が設置されていない弁護士会につきましては、直ちにそういった制度を整備するように、紛議調停につきましては、弁護士法上要求されている制度でございますから全国に設置されておりますが、十分に活用されていない、あるいは、市民に対して十分周知されていないといったような事情がございますので、その改善をお願いした書面でございます。
 平成14年1月31日現在では、市民窓口が設置されている弁護士会は27会でございましたが、現在この通知を受けまして、37会が設置済み。2会が今、日弁連の常務理事会において会則の審査中ということで、39会は既に設置がなされております。市民窓口の具体的な中身につきましては、後に具体的に第二東京弁護士会の例で御説明させていただきたいと存じます。
 ずっとめくっていただきますと、「市民の苦情に対する日弁連の対応」という1枚紙で図を設けさせていただいておりますが、ざっとこれを見ていただきますと、市民からの苦情につきましては、弁護士会の苦情相談窓口において、例えば事務局が対応しているわけですけれども、いろいろな苦情をここで受け付けさせていただいております。この苦情相談窓口というのは、基本的には弁護士会の理事者、役員経験者等が最終的に対応するということを、日弁連では全国に要請いたしておりますが、ここで苦情を受け付けたものにつきましては、理事者の方で判断し、必要な場合には法律相談センターというところで、法律相談を受けていただき、弁護士をあっせんさせていただく。あるいは、紛議調停手続につきましては、仕事を適切にしてくれていないとか、報酬が高いというようなクレームがあった場合に、弁護士と依頼者との紛議の調停等につきまして調停手続を行いまして、適切な仕事をしているかどうか、あるいは報酬が高過ぎるという場合には返還を命ずるというようなこともさせていただいております。
 なお、こういった制度を使いましても、これは弁護士会としては懲戒に付する必要があるといった事案につきましては、一番右側にございます弁護士会の綱紀・懲戒手続の懲戒請求という手続をとらせていただくという形をとっております。なお、これにつきましては一般からの懲戒請求と同時に、会請求と言いまして弁護士会が独自に立件した案件につきましても、綱紀委員会に調査を命じるという手続をとらさせていただいております。
 次のページ、これは具体的には単位会が一番直接の窓口になっておりますので、第二東京弁護士会の例を基に、苦情相談の内容につきまして、第二東京弁護士会で会報に載せた記事をここに抜粋させていただき、説明させていただきたいと思います。
 平成11年〜13年の苦情相談の処理概要でございますが、(2)というのが真ん中より下のところにございます。第二東京弁護士会では、平成11年度、苦情相談を事務局の段階で143件受けております。内容につきましては、専ら依頼した弁護士と相手方弁護士というのが圧倒的に多いわけでございますが、苦情につきましては事件処理の不満というのが一番多うございます。応対が非常に不満であるといったような苦情、報酬に関連するような苦情といったものがございます。
 こういった苦情を受けまして、苦情相談窓口を説明したというのが73件、法律相談ないしは弁護士あっせんを受けるように勧めたのが20件、紛議調停について説明したのが16件、懲戒請求の手続について説明したのが25件、こういった形で事務局で処理いたしまして、(1)のところに戻っていただきますが、弁護士会の役員と綱紀・懲戒の委員等の経験者レベルで処理させていただきまして、(1)のウの(カ)というところを見ていただきますと、紛議調停申立または懲戒手続といった説明を最終的にさせていただいたのが25件というような対応をさせていただいております。同様に平成12年度、13年度と大体同じような傾向にあるかと思います。
 次に、東京弁護士会の市民窓口に寄せられた苦情相談の内容ですが、これにつきましては統計のとり方がまだ統一されておりません。したがいまして、第二東京弁護士会に比べますと非常に多い件数になっておりますが、例えば1997年の108件というのが下の方にございます。報酬規定の問い合わせといったようなものもカウントしておりますので、これはカウントの違いでこういった数字が出ております。ただ、大体1,000件ぐらいの苦情相談について、弁護士会としても対応させていただいているといった現状と、報酬への不満、事件処理についての報告や説明がない、あるいは、先ほどパンフレットで説明させていただいたような非弁提携の疑いといった苦情につきまして、弁護士会の方に寄せられまして、これは理事者の方でも適切に対応させていただいているというような状況でございます。
 その次のページ、紛議調停制度の実情でございますが、これは現在日本弁護士連合会では弁護士白書という統計資料を作成中でございます。その弁護士白書の中で現在校正中のものを持ってまいりました。全国の紛議調停、先ほど言った報酬が高い、あるいは適切に処理してくれていないといった不満に対して、弁護士会が中に入りまして、自主的に解決する制度でございますが、これを見ていただきますと、まだ地方会においては紛議調停を利用している会がゼロといったようなところがございます。こういった紛議調停も年々増えている傾向にはございますけれども、こういった制度もなお一層充実する必要があるということで、先ほど会長の方から全国にこの制度をもう少し広報し、その結果等についても公表するという制度を作るように要請させていただいたところでございます。なお最後になりますが、「アメリカの懲戒制度とその改革」という資料を添付させていただいております。これは非常に大部でございますので、その要約につきましては枠囲みで1〜6まで基本的な中身の要約をさせていただいた上で、それに関連する資料をその後にずっと付けさせていただいております。アメリカの懲戒制度につきましては、御承知かと思いますが、基本的には弁護士会が主体となって懲戒手続を進めているということ、一般の方につきましては、日弁連の綱紀委員会のようなところに異議申出ができる制度までが認められているというのが実情であろうかと思いますが、これにつきましては後にまたごらんいただければと思います。
 簡単でございますけれども、以上でございます。

【伊藤座長】有吉次長、どうもありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、平山委員からお話しをお願いたします。

【平山委員】ありがとうございます。実は、前回の5月14日の議事録を拝見いたしましたところ、私が検討会の事務局でお作りいただきました、資料3−8と審議会のペーパーのことで最初に「たたき台」について問題があると申し上げましたので、そのことで大変時間をとって、あるいは御迷惑をかけたのではないかと反省いたしておりまして、それにもかかわらず先生方の非常に示唆に富む御意見をうかがえたことを拝見してまいりました。
 ただ、前回は自分の意見を申し上げておりませんので、座長にお願いいたしましたのは、最初に発言させていただきたいということで、これもお許しを得ましたので申し上げて、先生方のなお御指導を仰ぎたいと思っております。
 実は審議会の意見書の78ページによりますと、弁護士会が国民から求められている弁護士像として3つの期待、役割が明記されているわけであります。国民の社会生活上の医師たれと、頼もしい権利の守り手たれと、信頼し得る正義の担い手たれということがありまして、このことに大変弁護士は感動いたしております。こういうことでやっていこうということで、みんなの意思統一をいたしているわけであります。
 それから、司法制度改革推進法上にも第4条にわざわざ日弁連の責務と、司法改革に望むべき責務ということでうたわれまして、これは今までなかったことではないかと思います。大変日弁連の位置付け、役割をきちっとうたっていただいていると考えるわけでありまして、そういう中で今次の弁護士会の改革は進めなければいけないということは全員一致しているわけであります。
 そこで、4月16日の第3回検討会で、これも御配慮いただきまして、司法改革の全体像というのを出させていただきました。あの中で、何が弁護士改革に求められているかと言うと、高い質、国民的基盤に基づく・国民への説明責任、そして独立性の3つが求められていて、多くの弁護士会の改革もこの3つの中で処理していかなければいけないと思うわけでありまして、前回も日弁連の改革そのものを事務局でお出しいただきました。資料の2−2あるいは3−1を御参照いただきますと、ものすごく多くの改革課題があるわけであります。それでやろうと。それは、いずれも今の高い質、説明責任、独立性という中に位置づけることができると考えておりまして、そういうことから言って、その中の改革の1つとしまして、今日、有吉次長が説明いたしました色刷りのペーパーがあるというように考えておりまして、綱紀・懲戒制度の改革ということで、意見書ではその部分に限っては水色のところが示されている。それに対しまして、我々日弁連としてはそれをなお広く前進してやっていこうではないかという部分を黄色として掲げているということでございまして、その1つに今日のペーパーの綱紀審査会というのが3段目にありますけれども、綱紀審査会の位置づけはここにあるというように御理解を賜りたいと思うわけであります。そうすると、綱紀審査会だけが今次の改革ではありませんで、多くの改革の中の1つであるということを是非御理解を賜りたいというのが、私の最初に総論的に申し上げたいことでございます。
 それから、先日の議論になっております、いわゆる拘束力という問題についての考え方を述べさせていただきたいと思います。ただ、拘束力という論争は、私から言えば何となく神学論争みたいなところがありまして、そうではなくて綱紀審査会をわざわざ我々が市民の協力を得て新設するという以上は、その勧告が出た場合にいかに生かすかという問題ではないかと思っているわけであります。しかし、ここでは便宜上拘束力ということで、なぜ我々が御意見を今日も申し上げるかということを御理解いただきたいと思います。
 その最終的な拘束力ということにつきまして、なかなかこれが今すぐそれを入れることが困難と言いますか、問題だと考えている理由は、以下のとおりであります。大きく分ければ2つございまして、第1は懲戒権の本質に関わる問題だと考えているわけでありまして、これはなかなか理論的な面がございまして、これを振りかざすことはどうかと思いますけれども、実は弁護士会にとりましては、弁護士自治との関係で、懲戒権という自律権能というのは非常に大事なものだということを、歴史的に考えているわけであります。そのために、懲戒権の構造も、綱紀と懲戒という2重構造にしてきちっとやろうとしているわけでありまして、検察審査会の公訴と裁判所という関係ではないのです。二重構造の懲戒なのです。そういうことを我々は歴史的面からも考えてきました。したがって自律権能はやはり自ら最終的な責任をもって決定をするということが、非常に大事だと思っているわけでありまして、その点が1点でございます。
 また、自律権能を中心にいたします、弁護士自治というのは、歴史的な意味も非常に持っているのでありまして、ここで今、私がそういうことを言うのはどうかと思いますけれども、やはり人権蹂躙の歴史の中で、弁護士が弱い立場の人を護るために重要な役割を果たしてきましたことはまぎれもない事実です。そして、そういう役割を果たす中で、その成果として弁護士自治が確立されてきたと考えておりまして、これに対する会員の思いというのは非常に強いのです。
 それから、私はそれにもまして今の憲法上の個人の尊厳とか、基本的人権の擁護の最後の砦は、弁護士が果たさなければいけないという意味で、弁護士自治はその担保制度になっているのではないかと考えておりまして、戦後の社会の発展状況に鑑みると、将来は、どのような場面が到来するかはわかりませんけれども、しかし何か国民、市民の権利と、例えば国家権力が対峙するようなこと、ないとは思いますけれども、そういうことがあって、最後の砦として役割を果たすことは、弁護士会に憲法は期待しているのではないかということを考えますと、本質論からいきまして、我々に綱紀・懲戒の最終的な決定と最終責任はなおとらせていただくという方がいいのではないか、これが第1点でございます。
 第2は、私などはむしろ第2の問題が非常に困難な問題だと思っておりまして、それはいわば政策的な問題、あるいは制度設計上の技術的な問題です。そのような現実から綱紀審査会に一気に最終的な決定をしていただくのには、無理があるというように思っております。そのことをちょっと申し上げてみますと、もともとこの綱紀審査会設置のねらいでございますが、これは政策的に言いますとさっきの3つの今次改革の理念である、特に説明責任、そういうところを弁護士会は国民、市民と離れたものではないのだと、国民の負託に常に応えていくと、そのためには基盤を市民、国民に置きなさいと、そしてすべてのことを常に説明しなさいと、これはアカウンタビリティーと言っていると思いますけれども、そういう観点から我々としては是非今までの綱紀・懲戒制度はわかりにくい、自分たちは一生懸命やっているのだと言っておりますけれども、外から見てはわかりにくいという問題が指摘されましたので、それはそうであれば是非そうしようということで、この綱紀審査会の導入を提言しているわけです。そういう意味で、ねらいは本来そこにあるということでございます。
 更にもう一つは、国民の弁護士会運営の参加という意味もありまして、そういう意味でもこれを大事にしていきたいと思っております。
 それであれば、即拘束力ありと言ったらいいのではないかという議論もあると思いますけれども、最初の制度上の理念の問題、それから以下に申し上げますような技術的な障害、この技術的な障害といたしましては、まず我々は綱紀審査会を原案として提言いたしておりますけれども、例えば検察審査会法をここに事務局からお出しいただいておりますけれども、その中には審査員の身分保障、審査会法に基づきまして、全員出席を要請する25条とか、独自の照会権を認める36条、更には証人に対する召喚権に応じない場合の過料制裁37条、43条、こういうものがありまして、これを弁護士会の内部に設置するこの委員会に、こういう強制手段を予定することは難しいのではないかと考えているわけです。したがって、そういう重装備なものとしては御提案をしていないということであります。
 なお、例えば綱紀審査会が即これで懲戒に付しなさいということになりますと、綱紀審査会に言わば議決書というものも作っていただくことになりますが、この作業なども今のところは予定しておりませんで、綱紀委員会の議決書というのをごらんいただくとわかりますけれども、判決書とほぼ同じ作業をやっているわけです。そういうものを綱紀審査会にすぐお作りいただくということにした方がいいのかどうかという、非常に技術的に難しい問題もあると考えております。
 前回も申し上げましたけれども、私も日弁連で懲戒委員を6年ぐらいやりましたけれども、刑事裁判、民事裁判に関わっている事件がここへ来ることもあります。その時の判断というのは非常に難しい。そういう中で第三者機関にすぐ決定をしていただくということについて、非常に危惧をいたしておりまして、その責任は我々が直接調べて、単位会の綱紀が調べて、日弁連の綱紀が調べたという中で、そしてもう一度後に申し上げますけれども、綱紀審査会からこれはだめだと言っていただいた場合はもう一回やるわけです。これをやる拘束力という意味では、もう拘束力はあるわけでございまして、聞き置くのではないのです。差し戻しまして、したがって、私から言えば差し戻しの拘束力は持っているのです。ただ、言わば自判の拘束力がちょっと難しいのではないかということを申し上げているのです。そこのところがどうもごちゃごちゃになって、我々も反省しなければいけないと思いますけれども、そういうものをまず御説明してお話すればよかったように思うのですけれども、そういうことが出てなかったという点で、あるいは御迷惑を掛けているのではないかという気もいたしておりまして、私どもとしては最終の二重構造の懲戒の責任は我々が持って決定させていただきたいということを述べている。しかし、その間にせっかく出していただく意見はきちっと尊重する。したがって、私などは尊重義務をうたったらいいのではないかということを言っておりますけれども、そういう制度として生かしていきたいとは考えております。これが1つの理由です。
 更にまたもう一つは、さっきの日弁連の対応対照表ペーパーでわかりますように、単位会の綱紀にも、日弁連の綱紀にも今度は外部委員に市民も入っていただきまして、評決権があるわけです。その方々の単位会の評決、そして日弁連での評決を通過して来ているわけです。これについて、新しい市民だけでお作りいただく委員会で、例えば多数決でそれを一気に覆してしまうということがどうかという問題もあるのではないかという気がいたしておりまして、これは制度ですから、例えば綱紀審査会をそう位置づけすることは矛盾ではないと思いますけれども、以前のように我々が外部委員に評決権もない状態でのときとは違うのではないかと思っておりまして、ここも私どもが一気に踏み切れない理由になっているわけであります。更にもう一つは、審査会の議決の重みでございます。今、申し上げましたように、我々としては、破棄差し戻しの拘束力はあると、一定期間内、例えば2か月なら2か月以内に別な綱紀委員会がもう一度やるわけでありまして、そうすると単位会の綱紀、日弁連の綱紀、日弁連の綱紀と3つ掛けまして、例えばそこに6人ずつの外部委員がいれば、もう18人の外部委員の目を通すわけです。そういうこともひとつ是非お考えいただきまして、ここのところをいい形にしていただけないかというのが私たちの考え方であります。
 それから、最後に検察審査会との比較がよく言われておりますけれども、これは生まれも育ちも違うものです。検察審査会は御承知のように国民が当事者となる起訴陪審制に代わる制度として戦後設けられたものでございまして、国の公訴権と裁判の問題で、この綱紀審査会は弁護士会の懲戒制度という中の問題です。ですから、全然違うものですから、例えて考えるのはいいと思いますけれども、ちょっとやはり違うのではないかというのが1つございまして、特に検察審査会につきましても、戦後立法時に議論がありました。私も議事録を拝見しておりまして、元検事総長の佐藤先生がいろいろ答弁されております。その中でもありますけれども、是非拘束力なしでやらせていただきたいと、その結果が悪ければ、あるいは機能しないということであれば、見直しを図りたいというような御主張があったと思います。その後50年経ちまして、今回の審議会にはきちっとペーパーができておりまして、例えば審議会の意見書の48ページに明記されることになったということがあると思うのです。そういう意味では、そういう思いで作った綱紀審査会が機能しないということが実証されれば、つまり私などは率直に言いますと、10年ぐらいやらせていただいてこれが機能しなければ拘束力を持たせたらいいではないかと個人的には思っております。
 ただ、委員の先生方のお話の中にございますけれども、例えば岡田先生のお話の中に、何回もやっていたらかえって時間が掛かるではないかと、これは非常によくわかるわけです。また、奥野先生でしたか、せっかく市民の声を聞くのに、拘束力なしというのはおかしいよと、これも非常によくわかるわけです。ただ、そこで私の方は時間は切りますと、破棄差戻しの拘束力はありますということを御説明していなかったので、そういう御意見があるのではないかという気もいたいておりまして、そのほかに我々といたしましては迅速性・実効性については、別な制度を導入しているわけです。例えば、今の調査員制度の導入とか、複数審査体の導入とか、弁護士の調査・審査への協力義務の強化とか、あるいは審理期間の設定とか、もういろいろなことをやりまして迅速化を図っていこうとしています。しかし、説明責任の方は、単位会で外部委員に入っていただく、そして綱紀にも日弁連にも入っていただく、これも是非やっていただく方がいいと、わかっていただくことが一番大事だと、市民と直結するという意味で非常に役立つと思っております。
 ただ、残念ですが私も含めまして、懲戒の最終決定と責任は、弁護士会が持っていた方が憲法上の要請からもいいのではないか。私はそういう意味で公表性も入れましたし、いろいろな意味で先生方の御理解を得て、そこまで言うならそれでひとつやってみろということをおっしゃっていただきたいというのが、私の願望であります。
 ちょっと長くなったかもしれませんが、御質問がございましたらそれにお答えしたいと思っております。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。それでは、それぞれの方に御意見をいただきたいと思いますが、その前に今の有吉次長と平山委員の御説明に対する御意見に若干の時間をいただきたいと思います。どうぞ、小貫委員。

【小貫委員】今の平山委員の意見の真意を確認しておきたいのですが、1点目の懲戒の本質論で、自律権とか自治ということを強調されました。どうも聞き方によりますと、どんな制度を仕込むかも含めて弁護士会に任せるべきであって、この委員の間で異論を差し挟むべきではないのではないかというような意見にも聞こえるような節もあったので、これはそうではないのですね。

【平山委員】全く違います。

【小貫委員】だとすれば、意見として弁護士自治との絡みでちょっと言わせていただきたいのですけれども、今回議論されている拘束力の問題というのは、自治を害するものだというような理解はしておりません。と言いますのは、この綱紀審査会というのはあくまでも弁護士会の中に作る組織でございまして、恐らくその委員の選任も日弁連がされるのだろうし、事務局の構成もそういうことになるのだろうと思います。
 そして、綱紀審査会の議決に拘束力を認めるのが仮に妥当だとしても、それは懲戒委員会に上程するということだけでございまして、懲戒委員会の決議まで縛るという話ではありませんので、あくまでも最終の議決をする役割を担うのは懲戒委員会であるわけで、私はどうも今まで聞かせていただいた今回の拘束力の問題というのは、すべて自治の枠内の話ではないのかなと思っております。

【伊藤座長】今の小貫委員の御意見の後半の部分は御意見として、また後からほかの方にもと思いますけれども、とりあえず有吉次長と平山委員の御発言に関する御質問はほかにございますか。
 では、岡田委員からお願いします。

【岡田委員】6月12日の週の新聞に、最高裁、日弁連、検察庁の記事が載りまして、やはり司法制度改革というのはこのように動いているのだなと、大変意を強くしたのです。その後に日弁連配布資料「こんな弁護士にご注意!」を弁護士会に行って見まして、初めて見るパンフレットで、消費者のために大変すばらしいものだと思うのです。ただ、これを弁護士会に置いてあるというのが大変残念で、私は東京都と私が属している消費生活センターに送ってもらいましたが。どうして全国のセンターに送ってくださらないのかなというのが1つありまして、是非とも今後は全国のセンターに送っていただきたいと思います。これはお願いです。
 先ほどの説明の中で、前回釜田委員の方から出ました苦情処理ということに関して、私もとても関心を持っているのです。今日、こちらの日弁連の対応というのを見せていただいて、この前の釜田委員の質問に対して、苦情処理とこちらの綱紀委員会とか懲戒委員会は全然連携していないというような回答だったように思うのですが、これを見るとまさにそのとおりだなという感じがするのです。
 しかも、この苦情処理が役員の方が対応するという割には、ただ助言で終わっているというのは大変もったいないような気がするのです。私どもセンターから見ますと、以前PL法ができたときに、PLセンターというのができました。そのときに、まず相談があって、それから裁定委員会というのがあって、この裁定委員会は外部の人が入っているADRだったですが、私たちの期待に反したなと思ったのは、相談部分であっせんをしてくれないことなのです。ただ聞いて、ああしなさい、こうしなさいと言うだけでは何のための相談なのか。裁定委員会などに行く前に、何らかのあっせんをしていただければ解決する案件というのはかなりあるのではないかと思ったのですが、これは弁護士法72条の関係だと言われて、改めてそこで72条というものの重みを感じたのです。苦情センターの中であっせんして、そこで解決する部分があると思うので、ここと紛議調停、それから綱紀というのが連携できないのかと思うのです。是非弁護士会もこれをやっていただいて、役員の方にあっせんしてもらえれば多分当事者である弁護士もそれなりに聞くと思います。自分で反省するものがあったり、逆に言い分もあると思うのです。それを役員の方に聞いていただく、そして申立人に説明することによって相談した方も納得する。
 ただ、こちらに来なさい、あなたは弁護士を頼みなさいだけでは、あまり納得しないのではないかという感じがするのです。ですから、最初は相談したとしても、2回目、3回目、ないしは2人目、3人目の相談というのは行かなくなるのではないか。全国でそういうものを作るということですが、この前弁護士さんにもお話したのですけれども、是非苦情相談センターができたら、日弁連でシンポジウムをおやりになったらどうですかと、これは絶対マスコミにも受けますよという話をしたのですけれども、この苦情相談をもう少し検討していただけないかなと思います。
 先ほどの平山委員のお話について、私はこの前突っ走ってしまった感じがあったのですけれども、私の疑問として審査会の処分相当ですか、それを日弁連の別の綱紀委員会でやるということで、その辺がやはり外から見ると不明瞭というか透明感においてはどうかなという感じがするのです。それはむしろ単位会の懲戒委員会の方へ戻された方が、もっと明白なような気がするのですが、それをやりたくない根拠というのがいろいろお聞きはしているのですが、どうも私たちの解釈ではなるほどと納得できる部分がもう一つないのです。ですから、むしろそのことのデメリットとかメリットとか、その辺のことを明らかにしていただければ理解できるのかなと思います。

【伊藤座長】では、前半の部分については、有吉次長からお願いします。

【日弁連(有吉次長)】有吉の方から説明させていただきます。苦情相談窓口、私も苦情相談員をさせていただいておりました。依頼者から苦情をいただきまして、電話で苦情をいただく場合もありますし、来会される方もおります。私どもが理事者のときに、直接苦情を申し出てきた方と別室に入りまして、1時間から1時間半ぐらいいろいろな資料を見させていただいて、苦情を聞かさせていただきました。
 その結果、いろいろな種類がありますが、何件か問題のある弁護士に対して事実関係を確認して注意したり、それから懲戒手続がございますからということで、是非やってくださいとは言いませんけれども、そういった説明もさせていただいたりと、そういうような対応もさせていただいておりまして、あるいはもしかしたらたまたまそういうことがなかったのかもしれませんけれども、私どもの方ではそういったこともさせていただいておりますし、これからもそういう趣旨でもっと徹底するようにと会長の方からも通知をさせていただいたところでございますので、懲戒と苦情はまさにこの苦情のところから懲戒手続、あるいは弁護士の懲戒というところにつなげていくことは非常に重要なことだと思っておりますので、これからも続けていくようにしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。後半の部分で、平山委員から、日弁連の別の綱紀委員会で検討するということについてはいかがですか。

【平山委員】承知いたしました。私自身も、おっしゃることを非常に悩みます。どう説明するのかなという点はあります。ただ、先ほど申し上げましたように、日弁連の懲戒制度というのは二重構造、これは綱紀委員会ということではなくて、つまり綱紀に来たときが言わば懲戒制度の始まりみたいなところがございまして、2段階構造なものですから、これで絞っていっているわけですが、我々から見ると懲戒制度が他の機関によって一定程度決定づけられるということについてどうかなという心配を1つしております。
 もう一つは技術的な問題で、先ほど申し上げましたように綱紀委員会の議決書というのを作成しますけれども、裁判の判決と同じようなものを作成して出すわけです。そのところをお願いするのに、相当手立てが必要になってきて、非常に難しいのではないかという、これは率直に申し上げまして言いにくいのですけれども、もう今や法律家でなくても、そのぐらいは書けるよとおっしゃればそのとおりで、私はそれでいいのではないかという気もしますが、なかなか裁判所が判決を急に書けるのかとおっしゃるのと同じような意味がありまして、非常に緻密な議論をして、例えば事実を、これは懲戒事由に該当するかどうかという事実調査をきちっとやって、そしてその議決書を作りまして懲戒委員会に渡すという作業に自判となればなってくるのです。そういうことをお願いするとなると、相当な数の先生方とか、あるいは相当な数のいろいろな制度を設けないと難しいかなということで、先ほど申し上げましたように、検察審査会にはそのためにいろいろな制度がありますけれども、日弁連が今、改革案で出しておりますのは、そういうところまでは予定してないものですから、そうするとむしろ勧告していただいて、これはもう一回見直せと言っていただいて、わかりましたということでそれを別のところがもう一回きちっとやった方が精度が高いと思っておりまして、おわかりいただけるかわかりませんがそういうことです。

【伊藤座長】なお御意見あると思いますが、後でまた御意見をいただきます。
 木村委員、どうぞ。

【木村委員】審議会の意見書の提言に伴う日弁連の対応その他について、大変詳しく御説明いただきまして、どうもありがとうございました。わからなかった点も大分明確になってきたわけなのですが、先ほど有吉次長の方から御説明いただきました、この事前公表制度の整備等に関する会員の要請書の中の、第1ページの下から4行目でございますが、大変大事なことがここに書いてありまして、日弁連では1998年から全会員に倫理研修を義務づけていると、リーガル・エシックス・コミッティーですけれども、法律の倫理というのは大変重要な教育の一環になっておりまして、諸外国ではロースクールで全部やることになっているわけですけれども、具体的に1998年と申しますと4年前ですが、日弁連では何をどのように義務づけたかということなのですが、どのように、どこで、何回ぐらいやって、それに何人ぐらいが参加しているかという情報を当然お持ちかと思うのです。
 それに伴いまして、例えば倫理担当の常務理事とかがいらっしゃるのか、そういう倫理委員会、我々はここで綱紀の問題と懲戒のことだけ、これは最終のところだけの問題をやっているのですが、それに関連するさまざまな倫理問題があるわけでございまして、これは世界的に見てもバー・アソシエーションというところでは、リーガル・エシックス・コミッティーをもって担当の理事がいるわけですが、日弁連としましてはそういう常設、常置のリーガル・エシックス・コミッティー、事務局みたいのがあって、そこに何か担当の理事がいらっしゃるのかどうか、この2点につきましてお伺いしたいと思います。

【伊藤座長】では、お願いします。

【日弁連(有吉次長)】日弁連では、全会員に倫理研修を義務づけております。具体的には、初年度登録、5年目、10年目、20年目といった、一定年限を経過した弁護士に対して、たしか30年とかもあったと思います。かなりベテランの方でもいろいろと仕事をしていると迷うこともございまして、これは必ず受研しなければならないということになってございます。たまたま海外留学等で、どうしても出られな場合には、直近の年度の倫理研修を受けなければならないという形で、全員が受けるというシステムになっております。
 倫理の具体的な事例を持ち出してまいりまして、具体的なケースに基づいてどう考えるのかということにつきまして議論していただき、講師の方からその考え方について、実際にはこういうような解決があったのだとか、こういう問題でこういう懲戒を受けた方がいるのだというようなことを結果等も報告し、その中で自分たちの倫理を磨いていくというような研修をさせていただいております。これは、数としては50人とか100人という単位でやっていますけれども、全国にあるものですから、幾つかのブロックにお任せして、日弁連では倫理研修のプログラムを日弁連の中で精査して、これは倫理研修としてふさわしいと認定したものについてだけ、認めるというような制度です。倫理委員についても充実させようという取組みをしております。現在、日弁連には外部委員の方々も入っていただきまして、倫理の改定作業を行っています。弁護士倫理という規定がございまして、日弁連では総会で決議した倫理規定がございますが、今の時代にマッチングしていないといったような問題もございますので、いろいろな外部の方々の意見もお聞きしながら、倫理規定の改定作業を行っております。この倫理委員会の内容につきましては、逐次議事録をインターネットで公開させていただいておりますので、ごらんいただければと思いますが、担当の理事がもちろんその倫理委員会の方も主査として担当していただいているというような状況で、今、倫理の改定作業も行っております。

【伊藤座長】ありがとうございました。それでは、なお御質問があるかと思いますが、これからはそれぞれの委員の方の御意見、特に拘束力について率直なところを承りたいと思います。前回既に結論についてもお話しいただいた委員の方も何人かおいでになりますけれども、とりあえず結論については前回必ずしも確定的な形で御意見をいただいていない方にまずそれぞれお話しいただいて、更にその後で前回御意見をいただいた方も含めて全員に御意見をちょうだいしたいと思います。
 では、順不同でございますが、田中委員からお願いいたします。

【田中委員】私もある弁護士会で綱紀委員会の参与員をやったことがありますが、やはりきちんと正規の委員とされたほうがよいと思います。平山委員のいろいろな御意見を伺っていて、自治の話と拘束力の話とはちょっとずれているという感じがいたします。ただ綱紀委員会にかかっているケースは玉石混交であるということは事実で、どういうケースが出てくるかわからないということも事実だと思いますけれども、拘束力という表現はたしかに平山委員のおっしゃるように、少し不適切なこともあるかもしれないのですが、綱紀審査会で審査して、中にはもう一度綱紀委員会で再調査するのが適切だという案件もあり得ると思うのです。綱紀委員会に戻すのではなくて、直接懲戒委員会に回してもいいのだというケースもあると思うので、そういう区分けをしていけば、先ほどの差戻しの拘束力があるということをおっしゃるのとパラレルに、やはり拘束力は懲戒委員会にかける件についても、ただその条件についてはいろいろ考える必要があると思いますけれども、認めるべきではないかと思います。
 議決書の作成云々ということをおっしゃいましたけれども、私が関与していた綱紀委員会では懲戒委員会に回すのに、そんなに難しい書類が作成されていなかったと思います。あれくらいのものは、綱紀審査会でも十分書けるのではないでしょうか。いずれにしも最終的には懲戒委員会で決定されるわけですから、そういった意味では議決の仕方を工夫して拘束力を認めた方がすっきりするのではないかと考えています。

【伊藤座長】佐々木委員は、いかがでしょうか。

【佐々木委員】前回申しましたとおり、自律権が開かれたものという形で、せっかく日弁連の綱紀審査会という形で、日弁連の会長が委嘱されたものであるにせよ、一般の国民の方が参加されている。これに重きを置きますと、やはり拘束力を認める方向で検討されるべきではないかと考えます。
 なお、自律権の問題でございますけれども、そうは言っても懲戒委員会等で十分議論がその後になされることが予定されておりますので、決して相手方弁護士のように自律権の範囲を超えまして、なお東京高裁に提訴できる道はないわけでございますので、責任はやはり日弁連にとっていただく範囲内にとどまっていると考えております。
 以上です。

【伊藤座長】先ほど御発言がございましたが、小貫委員、念のために。

【小貫委員】先ほどは自律権と議決権のことだけ申し上げましたけれども、結論的には一定の議決について拘束力ありとすべきではなかろうかと考えております。今回、綱紀審査会というのは、国民の声を反映させるという意味でも、弁護士会の懲戒権の行使に説得力を持たせるためにも、有意義な制度ではなかろうかという評価をしております。懲戒委員会、あるいは綱紀委員会の委員の方というのは、現状固定されておりますけれども、その中核になるのは弁護士さんであったり、検事、判事、いずれも法曹の一画を占める人たちが委員になっています。今度は市民も選任されるということですけれども、従来、学識経験者も法律を教えておられる方、法律に携わっておられる方が入っておられたやに私は理解しております。そういうことで、これまで、公正な懲戒審査をしようという努力はしてきたし、内容もそう批判のあるものではないというように、私自身綱紀委員会の参与員の経験からそう思っておりますけれども、知らず知らずのうちに偏ったものになる可能性も、これはまた否定できないわけで、そういうときに利用者の代表の方だとか、法律分野以外でのところでいろいろ活躍されている見識のある方々に集まっていただいて、その意見を聞いてみるということは、大きく見れば法曹のため、あるいは弁護士会のためにもなる話ではなかろうかと思っております。
 では、どれだけの重みを持たせたらいいかということなのですけれども、こういった有意義なものであれば、ある程度の重みを持たすのがいいのではなかろうかというのが1点。もう一つは、綱紀委員会の決定に不服があるからこそ、綱紀審査会に掛かってくると思うのです。綱紀審査会でいろいろ審議を尽くしてみたら、綱紀委員会とは違う結論に至ったと、それを綱紀委員会に戻して、そこでいろいろ審議をしたら、結局日の目を見ずに終わってしまったということでは、不服申立者の納得というのは、必ずしも得られないのではなかろうかということを考えるわけです。
 そういったことで、一定の議決については、拘束力ありの方向で、いろいろ具体的なことを考えていかれたらいかがかなというように私は思っております。

【伊藤座長】釜田委員は、前回結論についてはお話しいただきましたか。私の認識違いであるかもしれませんが、恐れ入れますがもう一度お願いいたします。

【釜田委員】私は、改めて審議会意見書の該当箇所を読んでみたわけでございますが、ここは確かに先ほど平山委員がおっしゃいましたように、検察審査会の記述とよく対比されるのですが、審議会の意見書の文章は違っておりますね。違っているということは、前回審議会の議事録を確認したわけでございますが、最終的にはここに出た審議会の文章が最終結論であると、この文面から審議会がどういう意見を最終的に結論として下されたのかということを引き出すわけでございますが、そのように考えますと改めてそこへ立ち返ってあれから考えてみますと、審議会はどうもこの文言の範囲内で見る限りは、現行の制度、弁護士法61条の制度を前提にしておっしゃっておられると。しかし、国民が参加する機関を導入せよということも提言されているわけです。
 そこから、日弁連の方で検討に移られたわけでございますが、先ほどの平山委員の御説明の中にちょっとあったお言葉ではないかと思いますが、日弁連としては現行制度を超える、あるいは、意見書の提言をもう一歩進めると言いますか、そういうところまで立ち入ったのだと、私もそれでちょっと納得がいったわけでございます。
 ですから、今回御提案された日弁連の御方針は、新たに綱紀委員会を日弁連段階で作って、そしてその後に国民から構成される審査会に付すと。そこまでの構造はこの意見書からは具体的には出てまいりませんね。そこへ踏み込まれて、より深く立ち入られていいものをお作りになられたのは、日弁連の御判断だったのだなということを、改めて確認したわけです。
 そうしますと、日弁連でそこまでなさった上で、なお審査に付するか否かを、綱紀委員会へ戻すというようにお書きになられたわけですね。その文章から拝見しますと、この前も申し上げたのですが、2度にわたって綱紀委員会で審査しますね。しかも、今度は意見書でも外部の国民をそこに参加させようということで、そういうことも日弁連としてはお考えになっていらっしゃる。そうしますと、今までの制度と違うもののところで2度検討されて出た結論と、その後の国民から構成される委員会の結論が対立するような事態はどんなことがあるのか、何回考えても具体的なものとしてイメージが湧かないのです。ですから、私の経験からしますと、先ほどもおっしゃいましたように非常に厳密な手続に従って、専門家の集団ですからやってらっしゃいますね。それを今度は2度されるわけですね。2度されまして出た結論を、なお3回目に今度は専門家集団を抜いたところの会議で指摘を受けると、ここがおかしい。要するに結論が対立するという状況を想定してらっしゃいますね。懲戒に付するのは相当でないという結論が出て、こちらは相当という結論を得たと。しかもそのときは、法律に触れるような問題のときはだれもそんなことを、懲戒の対象になる前にもう処理さておりますね。そうしますと、弁護士法で書いてあります一番の対立は、弁護士として、法曹家としての品位の概念です。いわゆる高い法曹家の資質というものが求められていて、それを巡って専門家集団が参加したところと参加していないところが対立する事態というのは、私は考えられない。
 だから、もしそこに対立が出てときには、よほどのことしか私の頭には浮かばないのですが、ですから弁護士会のほかのメンバーの方々が、そういうものを見過したことを驚かれるような事態かなというように思います。
 そうしますと、最後にやっとそこで気づかれたということは、おのずから尊重せざるを得なくなるのではないかという感じなのです。この前、事実上そういうものに拘束されてくるのではないですかと申し上げたのは、何かあいまいな言葉なのですが、そんなものは法律には書けないであろうからそのとおりですけれども、はっきりと文章にするときには何か尊重するとか、そういう言葉にしないといけないと思うのですけれども、私はそういう点では2度通ったものが3度目のところで指摘を得けるのは、異常な事態しか考えられないと。だから、おのずから拘束ですね。拘束というのか、尊重するというのか、懲戒委員会へ戻すような事態にならざるを得ないのではないかというのが私の感じなのです。それは本当に異常事態と言いますか、そんなことはほとんどないような気もします。
 2度に渡って同じ結論が出たものを、そこを3度目が覆すというような事態ですね。そのときは異常事態ですから、これは懲戒委員会へ結び付けてもいいのではないかというのが私の感じです。

【伊藤座長】制度的な設計としては。

【釜田委員】拘束という言葉かどうかは別としましてね。

【伊藤座長】その判断に従ってもらうということで理解してよろしゅうございますね。

【釜田委員】はい、結構です。

【伊藤座長】ほかの方は、私の記憶が間違いなければ、前回結論をお述べいただいたようにも思いますが、もう一度中川委員から御意見をお願いできますでしょうか。

【中川委員】私は、この前申し上げましたように、懲戒の本質というのは、組織の秩序の維持だと思っております。弁護士自治と結び付けられますと、ちょっと違和感があるのですが、どの団体であれ、どの組織であれ、弁護士会であろうが医師会であろうが、企業であろうが学校であろうが、労働組合であろうが、その秩序を維持する自律的な機能というのは、どこかで持っていなければいけないし、現に持っているわけです。弁護士会だけが特別であるということはないと思っているわけです。
 そういうことから見ますと、現行の弁護士会の懲戒制度というのは、異常とは言いませんけれども、公益性ということはあるのでしょうけれども、相当程度のシステムになっているのではないかと思います。
 また、現におやりになっていることは、私も直接には経験しておりませんけれども、出てきております結論なんかを雑誌で拝見しますと、それなりにきちんとした処理をやっておられるというように見受けられますので、原則というか組織の秩序維持にお任せしてもいいのではないかと思っておるのです。
 ただ、1つだけ、さっき岡田さんも言われたのですが、懲戒の中身と懲戒の程度、これがやや不透明ではないかと、この前のお話では戒告から除名まで4つの処分がある。それは処分の方はよくわかるけれども、今度は懲戒対象になるべきものは何なのだと、それと懲戒の処分とのリンケージと言いますか、どのように結び付いているのかという点が、さっき類型化とおっしゃいましたので、多分そのことをお考えになっているのだなと思ったのですが、特に弁護士倫理というのは、実は利用者の苦情に直結している問題が大変多いのですけれども、弁護士倫理と懲戒とのリンケージをどのように付けていかれるのか、その辺りはもう少しクリアーにされた方が、いわゆる綱紀審査会の判断もできやすくなるのではないかと思うのです。
 それと、これはもうどこまでいっても解決のつかない問題が1つあると思うのですが、それは今、釜田先生おっしゃいましたけれども、異常な事態です。異常な事態というのは何かと言えば、多分思想とか信条でしか解決のつかない問題。ある方がおっしゃっているには、例えばオウムの事件とか、あるいは例のカレーの事件、ああいうものの弁護をされる方が、仮に懲戒対象になったときに、それを懲戒すべきかすべきでないかという問題は、これはもう法律とか事実の問題ではないと思うのです。これはもう思想とか信条の問題になると思います。
 そういう非常に対立した問題をどうするのか、拘束力を付ければ、それで一応結論は出るでしょうけれども、しかし本当にそれでいいのかと、それはもう戻さないと仕方がないのではないかというのが私の考えでありまして、ですから類型化と言いますか、懲戒処分と懲戒事由とをもう少しはっきりさせていただくといいと思います。特に苦情処理の中に、懲戒にするべきものが含まれているわけですけれども、それがうずもれないようにやっていただく必要があるのではないかということをお願いしたいということであります。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。それでは、木村委員、お願いします。

【木村委員】前回の検討会で、私の意見ははっきりと申し上げましたけれども、私は事務局の検討のたたき台(案)で出てきましたうちの3のウのところ、「日弁連綱紀審査会が、懲戒委員会の審査に付することを相当とする議決をした場合には、懲戒委員会の審査に付すこととする」と、これが日本弁護士連合会が国民に開かれた日弁連という、大変な高邁な思想の下に、非常に実践的に人権と社会正義のために大きな貢献をしてきたという、歴史の流れから見ますと、論理的にもうそうならざるを得ないというのが私の見解なわけですけれども、特に国の司法制度の中でもこの意見書の中で、はっきりと国民の司法参加ということを言いまして、検察審査会その他も開かれた形でやっていくし、司法のシステム自体が、制度として国民に開かれていこうという方向性にあるときに、言わば法律のプロの職業専門家団体が、その枠内でお互いを監視しながら、極めて倫理的な判断をした、それが国民の意見と違ってしまったということも、これまた事実であれば、それはそういうことではっきりとした形で対応していくことになるのは当然ではないかと思うわけです。日本弁護士制度の歴史の本を見ますと、やはりこの問題については非常に弁護士会の内部でいろいろな見解の相違があるかと思いますけれども、本質的にこの司法制度改革の持っている方向性と、国民に開かれた日本弁護士連合会という思想を考えますと、どうしても「ウ案」にならざるを得ないのではないかと、またなるべきであると考えているわけです。
 ついでながら、事実関係の再確認なのでございますけれども、弁護士会の有吉さんにお伺いしたいのですが、単位弁護士会で懲戒請求人がこれは悪い弁護士だから、ともかく懲戒しようという請求人が、綱紀委員会にまず掛けるわけですね。それで、その案件についてのみ綱紀委員会が調査をして、今度は懲戒にいくわけですね。これはだめだと言ってきたものの中のどれぐらいが懲戒にいくのですか。相当の人数がだめと言ってきて、しかしその中には調査するに値しないとしてはねて、例えば懲戒委員会に行かないケースもあるというように聞いていますけれども、どれくらいの割合で行っているのか。
 それに関連して、例えばその内容が具体的な事案について公開されているのかどうか、つまり綱紀についても懲戒についても、どういう理由で、なぜこういう判断が下ったかということは、国民の目に見える形でやられてきているのか、それは今後の弁護士会の在り方にも関係してきますが、例えばこういうものを新しく作ったにしても、公開されていく形なるのか、プライバシーの問題があるからということを全面に出して、最後まで公開しないということでいくのか、それともプロセス自体を公開するということでいくのかという理念にも関わってくると思うのですが、現状で綱紀委員会にどれくらいの案件が来て、それが実際懲戒委員会に行くのは何%ぐらいなのかということをお伺いしたいのですけれども。

【日弁連(有吉次長)】前回の第4回で、懲戒請求の経過フォローという図を付けさせていただきましたが、これは統計上今年の3月までの統計数字が一番積もっているという意味で、1998年の申立事件で申し上げますと、懲戒請求件数が768件ございまして、これは基本的には全部単位会の綱紀委員会の方に付議されます。綱紀委員会の中で、もちろん不適法なものは却下というのが11件ございましたが、そのほかは全部審査の対象となっております。
 審査の結果、懲戒不相当となったものは598件ございました。懲戒相当となったものが94件ございまして、まだ調査中のものが42件残っています。懲戒相当となった案件につきましては、懲戒委員会の方に事案が継続するわけですが、94件中懲戒されたのが68件、懲戒せずというのは13件、まだ現在審査中のものが8件残っているという状況になっております。
 懲戒手続、経過についての公開の情勢ですけれども、日弁連では『自由と正義』には、懲戒の理由の中身につきましても、理由を付して公告させていただいております。
 記者会見といった公表につきましては、公表基準というのを設けまして一定の社会的に問題のあった事案等については公表するという制度もとらせていただいております。
 なお、日弁連では今後インターネットを通じて公開することも検討しておりますので、申し添えさせていただきます。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。

【木村委員】今のことで、御質問よろしいですか。

【伊藤座長】先に皆さんの御意見を承りたいと思います。
 松尾委員、お願いします。

【松尾委員】私、前回の検討会ではっきりと綱紀審査会の組織については、法律的根拠を持つものであり、したがってその議決については法的拘束力を有するものであるということを述べた次第であります。
 弁護士の懲戒制度については、透明化・迅速化・実効化ということが求められているわけで、複雑な会内事情の中で、こういう基本方針をまとめられたということについては、私は評価いたします。しかし、この見直しの中で象徴的とも言える綱紀審査会が、新しく設けられたというそれ自体は、透明化という意味で高く評価していますけれども、それが効果として実効があるかどうかについては、いささか疑問を持っております。
 要するに、この綱紀審査会というものは、何のために作られたかということだと思うのです。しかもそれは有識者でありますが、市民で構成される組織ですね。そうすると、日弁連がこの組織を作った主な目的というのは、市民の参加を求め、市民の素朴な意見をここで聞こうではないかと、民意を反映させようではないかと、市民感覚を大事にしようではないかという趣旨で作られたと思うのです。
 そうしますと、日弁連の綱紀委員会とは違った結論を出すこともあり得ると思うのです。これは数的には非常に少ないし、本当にあるのかなということもあるのですが、しかしそれはゼロではないと思うのです。そのときに、市民の意見を大事にしよう、意見を尊重しよう、民意を反映させようとして作った組織の意見について、何ら応えようとしないというか、ほかの綱紀委員会でもやろうという考えはあったにしても、市民の立場から見れば、一定の議決、結論について、結果としてそれが尊重されないで終わってしまうようなことになると、何のための組織なのかと思います。日弁連は、有識者であってもそういう市民の判断について、議決という形は求めないのか、法的な意味を持つ議決というものを求めているのではなくて、むしろ前回の説明の中でオンブズマンという言葉がありましたね、オンブズマン的な単に勧告を出すだけの組織としてしか位置づけていないのではなかろうかという印象を受けるわけです。
 そうすると、いかに綱紀審査会で多数による率直な民意の意見を出したとしても、結果的に悪い言葉ですが、それは聞き置く程度と言いますか、そういう形になりはしないかと思うのです。
 改革審の意見書の中でも、国民が関与する場合は、主体的・実効的であるべきだということを、しばしば述べられておりますが、日弁連の自治の範囲であると決め付けられると、何ら効果のない、実効化されないままの組織になってしまうのではなかろうかという危惧を持っております。
 ただし、日弁連及び平山委員がおっしゃったような問題。本当に綱紀審査会が拘束力を持った組織として機能するのであろうかとか、あるいはその後の問題についていろいろ懸念されました。多分に技術的な問題もありました。そういった問題について、わからないわけではないのです。ですから、基本的には先ほどから申しますように、一定の議決に拘束力を持たせる組織であるべきだと、法的根拠を持つべき組織であるべきだと言いながらも、やはり日弁連の主張されている部分というものをどのように調和して考えたらいいのだろうかということで、非常に悩ましい気持ちを持っていることも事実であります。
 そうすると、何らかの条件付きか、綱紀審査会のやり方の問題、あるいは議決の要件や内容の問題、そういったことを考えていく制度設計をすることもあり得るのではなかろうかと思います。
 例えて言うならば、議決としても懲戒相当というストレートのボールを投げるのではなくて、懲戒しないということはおかしいよと、不懲戒不相当ということになろうかと思いますが、懲戒しないことはやはり問題があるのではないか、この綱紀審査会の大部分の意見は懲戒すべきだという意見が多いのだという意見を付して、不懲戒不相当だという議決の出し方だって考えられます。そこに拘束力を持つ。先ほど平山委員がおっしゃったように、それは事実上の拘束力になるのだからということですから、そこに拘束力を持たせたとしても、何も矛盾するものではないというような考え方もできる。それを具体的に制度設計するということだって考えられないことはない。ただし、それがいいかどうかということは、まだ私も最終的な判断ができない部分があるのですが、そういう意見です。

【伊藤座長】ありがとうございました。では、奥野委員、お願いします。

【奥野委員】結論から言うと、前回も申し上げましたけれども、この綱紀審査会というのは、メンバーについても日弁連がお選びになって、それから審査会で出された結論が拘束力を持つ、持たないというのは議論にはなっていますが、いずれにしてもそれが最終決定になるのではなくて、懲戒委員会に基本的には差し戻されると。最終的な判断は、懲戒委員会の方でされるということですから、せっかく日弁連さんが選ばれて、しかもこういう仕組みを作られた綱紀審査会の意見を生かすためには、しかも自治ということをおっしゃられるのでしたらば、むしろそれを委員会にとにかく反映させるという意味での拘束力を付けるのは、ある意味で当然ではないのかなというのが私のこれに関する意見です。
 この検討会での今後の議事との関係では、率直に申しまして日弁連さんがおっしゃっていらっしゃること、あるいは平山委員がおっしゃっていることに、私が誤解しているのかもしれませんが、少し疑問がありますので、一言申し上げさせていただきたいのです。
 それは、団体の自治ということに関する考え方なのです。日弁連がさまざまな歴史的な経緯の中で、国家権力と闘ってこられて、自治というものを確保されたと、これは大変すばらしいことだと思います。すばらしいことなのですけれども、では国家権力とかそういう権力といわゆる民間の団体とか対抗関係にあって、常に闘争する。したがって、自治は常に正しいものであるという、そこまで平山委員がおっしゃっているかは別問題ですが、ややそれに近い発想をされている。少なくとも日弁連が、取り分けここまでこだわるということは、自治ということに関して普通我々が考えているよりは少し強固に、ある思い入れを持たれているとしか、私には思えないので、そこについて申し上げたいのです。
 そういう時代というのは、つまり国家権力と民間団体の自治との対立と言いますか、そういうことがある意味で日々あって、したがって民間団体の自治、国家権力に対する対抗力の育成というのが非常に大事だと思われていた時代というのは、そろそろ終わりに来つつあると、むしろ、それが不要になったとは思いませんけれども、もう一つ新しい軸が生まれてきていて、それはここでも随分議論されていますけれども、国民に対する説明責任というものであって、いわゆる国民というものを鏡にして、権力が悪いことをしているのか、民間が何かしているのかということを判断してもらう、そういう時代にそろそろ来つつあって、逆に言えば組織とか団体であっても、必ず国民のために善しかしないような組織とか団体というのはあり得ないと思うのです。やはりどんなにいい組織・団体を作っても、ひょっとしたらそれがおかしな団体になるかもしれない、そのときには国民に対する説明責任ということで問題を解決していくしかない、そういう意味では無原則な自治というのは認めるべきではないと思うのです。
 まさに今度の綱紀審査会みたいな案を日弁連が作られてこられたということは、大変すばらしいことだと思うので、その考え方をもう少しストレートに突き詰めていただきたい。
 そういう意味で言うと、せっかく作られた中立的な国民の意見みたいなものを、どうやって最終意見に反映させていけるのかという、むしろ積極的な形で物事をお考えいただきたくて、自治という言葉もその中でセカンダリー、二次的、三次的な問題であって、何か自治がすべて一人歩きするというような形では、余り御議論していただきたくないなと、あるいは平山委員がなさっているという意味ではないのですけれども、そういう形にはしたくないなということで、今後取り分け日弁連の自治というのが今後とも問題になると思いますので、是非そこはお願いしたいと思います。

【伊藤座長】では、岡田委員、お願いします。

【岡田委員】今、何人かの委員の方がおっしゃったのですが、私も自治と言われると、まるでブラックボックスに入ってしまうような、そんな感じがして仕方がないのです。裁判官にしろ、検察官にしろ、民間に入って、みんなの考え方を知ろうというのが司法制度改革で、弁護士もそうしようという中で、そこにぽんと弁護士の自治というのが出てくると、やはり表現としては利用者の立場になるのだと言いながら、私たちはやはり違うのだというような感じがして仕方がないのです。それはこちらのひがみかもしれないですけれども、何かその言葉を聞くとすごい拒絶されているような感じがして仕方がないのです。
 あと審査会に関しては、松尾委員ほかいろいろな方がおっしゃいましたけれども、私はきちんとこういうものが法律で位置づけられれば、おっしゃっている人選のこととか、選ばれた方のことも、おのずから整備されているのではないかと、その辺を実際に作る前、ないしは動く前から弁護士会がいろいろ御心配なさるというのが、むしろおせっかいというか、そんな気もするのです。ですから、むしろ外から見て、弁護士会はこう変わったというような、前回も言いましたけれども、そういう意味では是非単位会の懲戒委員会に戻される方が、すごくクリアーだし、スマートだなという気がします。
 ただ、そこに先ほどの田中委員の考え方、それは私は思ってもいなかったのですが、そういう選択肢もあってもいいのかなと思いました。
 以上です。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。それぞれ、平山委員には最初にお話しいただきましたし、全員の委員の方に御意見を承りまして、この綱紀審査会の意見を尊重するということについては、拘束力の有無についての御意見、立場を問わず、これは共通しているところだと思いますし、時に綱紀・懲戒の問題というのは非常に重大な価値判断に掛かる問題を含んでいるというようなことや、釜田委員からの御発言がございましたが、結論が対立する事案というのは、そんなに年中起きるわけではなくて、非常に例外的なものであろうというような認識についても、恐らく委員の方のお考えは共通しているところだろうと思いますけれども、制度設計として結論をどうするかということに関しましては、ただいま承っている限りでは、大方の御意見は拘束力を認めるということで考えた方がいいのではないか。特に松尾委員から少し詳しくお話がございましたけれども、例えば議決の要件、議決の種類、内容、拘束力と言っても具体的にどういう制度設計をするのかというようなことを、こういったことについては、平山委員や中川委員の御意見も十分尊重しながら、合理的な制度を作るのがよろしいのではないかというように私は承りましたので、大方の意見でございます拘束力を認めるという前提で、今、申しましたような点について今後の具体的な問題についての審議を進めていきたいと思いますが、いかがでしょうか。

【平山委員】私の方は、申し上げたとおりでありまして、今、私は弁護士自治と申しましたが、私自身も自律権能と弁護士自治というのは同義語ではないというのはわかっておりまして、最初に申し上げたつもりでありますが、そういう意味ではむやみに振りかざす時代ではないと。例えば、この審議会のペーパーも公共性の空間を我々が埋めていくというようなことがありまして、奥野先生が御指摘のような方向にみんな向いていることは間違いないのです。
 そういう中で、我々がこういうものを作りますので、これでひとつやらせていただけませんかということを是非お願いしたいということで、これからの制度設計がどうなるのかわかりませんが、私たちは尊重義務はあると思います。これは、いろいろな法律にございますね。勧告がされたら尊重するというような法律は幾らでもあるわけですが、そういう意味で尊重しなければいけない。尊重しないものであれば、おっしゃるとおり作る必要はないわけでありまして、ただそれを尊重しながら、どのように我々としては最終責任をとっていくかということの調整に非常に悩んでいるというところなのです。
 ですから、それを座長においてはおくみ取りいただきまして、松尾先生も御指摘のように、具体的なことは今日できる状況ではございませんので、今後みんなで知恵を出していただいて、我々も納得できるような案ができれば、我々としてはそれを謙虚に受けとめなければならないと思いますが、現在のところこれが最上にいいというように今思っているもので申し上げているわけですから、どうぞそこのとこはあえて申し上げさせていただきたいと思います。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。どうぞ、木村委員。

【木村委員】この「ウ案」のところですけれども、念のために文言の解釈ですが、仮にこれは松尾委員の御発言や、先ほどの小貫委員の御発言にも関連しますが、「日弁連綱紀審査会が、懲戒委員会の審査に付することを相当とする」と書いてありますね。これは、懲戒委員会は懲戒せよということと同じなのですか。あるいは、その次に「懲戒委員会の審査に付することとする」というのは、懲戒せよというように言っているのかどうか、私はそうではないと思うのです。ですから、それこそ弁護士の自治の精神から言っても、小貫委員が一番最初に発言されましたように、何かそこで市民に本当に開かれた、市民だけの委員会、これは大変な大英断だと思うのです。市民だけの委員会が最終的に登場するというのは、すばらしいアイデアをお出しになって、日弁連の画期的な、今までなかった制度をとり入れたわけですので、すばらしいとは思いますが、この懲戒委員会の審査に付することを相当とするというのは、必ずしも懲戒せよと言っていることになるとはならないというように理解しますので、懲戒せよと言っていれば懲戒しなければならないという拘束力が生じますが、相当としてそこで審査をもう一遍やって、弁護士方がその自治の原則に従って最終的に懲戒委員会で、あるいは懲戒しないかもしれないわけですね。
 ですから、自治の原理は侵されていないと自治論から言っても思われますし、奥野委員の御発言にもあったように、私は何回も申し上げているように、国民に開かれたというところが1つのキーワードですので、また新しい理念ですので、そこら辺を尊重してくださるような方向で、弁護士会としては対応してくださるのが一番望ましいのではないか重ねて申し上げたいと思います。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。今の御意見は、議決の内容との関係もございますので、またその段階で今、承ったことも前提にして議論したいと思います。
 それでは、中川委員、お願いします。

【中川委員】弁護士会の肩を持つわけでも何でもないのですけれども、ちょっと厳し過ぎないかなと思います。要するに、弁護士さんに対する不信みたいなものがありますね。皆さんの御意見を伺っていますと、理論的根拠は何もないのですね。もうここまで作るなら拘束力をやったらどうだとおっしゃっているだけでして、これは1つの考えだと思うのですが、私は平山委員が最初に言われましたように、弁護士は品質を高め、説明義務を果たしていくのだと、これは英語で言うと、プロフェッションでありアカウンタビリティーですね。リーガル・プロフェッションとして弁護士はあるべきだということをおっしゃっているわけだし、そのようにだんだん脱皮をしていこうという努力をなさっているわけですから、自治という言葉もだんだんなくなってくるのではないでしょうか。
 それから、弁護士さんの数が将来どんどん増えてきますと、この前も申し上げましたけれども、競争原理というものが強く働いてくるはずなのです。良質の弁護士さんと悪い弁護士さんというものが、そういう市場の中で当然振り分けされてきますし、これは懲戒とは直接関係はないのだけれども、国民の見る目も少しずつ肥えていくというように、タイムファクターを入れて考えていかないといけませんね。
 それだからということではないのだけれども、ちょっとの今の現状固定で弁護士会がこうだとか、弁護士さんはこうだとかいうことを決め付けない方がいいなと思うのです。
 私も実は30年ぐらい企業法務というのをやってまいりまして、内外の弁護士さんとお付き合いがいっぱいあるのですけれども、それはもうものすごい立派な方もいっぱいいらっしゃいます。それから、とんでもない人もいっぱいいらっしゃいます。いっぱいと言うと、ちょっと語弊があるけれども、これはどの団体でも、どこでもみんなそうなのであって、弁護士会だけを悪者にするというのは、かえって育てないことになるのですね。だから、少し柔らかい、柔軟な目で見ていくと。努力されていないなら別ですよ、だけどいろいろな努力をしようとおっしゃっているわけだから、そこはちょっと柔らかい目で見たらどうかというのが、私のベースにある考え方でございます。

【伊藤座長】順番に、田中委員、それから木村委員、お願いします。

【田中委員】先ほどの木村委員の発言に関連して、先ほどの私の発言は、事務局の「イ案」と「ウ案」の区別にも異議があるという趣旨でして、これは座長もお話がありましたように後でまた検討していただいて、基本的には拘束力を求めるとしても、議決の仕方にいろいろなバリエーションがあるので、その点では今、中川委員がおっしゃったような弁護士会の現状とか、そういうものを踏まえた配慮は十分可能だということなので、具体的にどうすればいいかという議論は次の段階の問題だと理解しています。

【伊藤座長】わかりました。どうぞ、木村委員。

【木村委員】今の中川委員の意見には、基本的に問題があると思うのです。私が考えるところでは、ここにいらっしゃる委員の先生方は極めて論理的かつ理論的な背景に基づいて御発言されていると思うのです。ですから、そういう意味で理論的に裏づけのない発言だというのは取り消してもらわないと困ると思うのです。
 特になぜ私がこのようなことを強調するかと言いますと、日弁連の配布資料によれば、1991年には21人の弁護士の方が懲戒を受けている。それが2001年には62人です。そのように倫理的な基準の緩みと言うか、たるみと言うか、これは本日の新聞の付録の記事にもございますけれども、事前の公表のことに関連してもそうですけれども、優秀な弁護士がいて、そして一生懸命やっているときに、ごく少数の、極めて少ない、非常にでたらめな弁護士によって、全体の弁護士のイメージが崩れてしまったら、これは大変に私どもも悲しいことですし、また恐らくはこれで一番悲憤慷慨するのは弁護士自身だと思うのです。ですから、こういうことが国民の目にさらされたときに、国民はどう判断するかという、極めて論理的な構成の上に立った開かれた国民参加ということを述べているのであって、この点につきまして何かいかにも弁護士を悪者にして、感情論で弁護士会だけやっつけているというように、もしお取りになるとすると、やはり相当中川委員の方に問題があるのではないかと思います。

【伊藤座長】学識経験、識見豊かな方のお集まりいただいているところでございますので、その辺りは是非理性的にお願いしたいと思います。
 どうぞ、松尾委員。

【松尾委員】私たちは、何も弁護士会についてどうのこうの言っているわけではなくて、弁護士会はこれまで相当国民との関係においても努力されている。前向きにおやりになっている。要するに、市民のための司法ということを築かれようとしてる。その努力というのは、私はいろいろ接触が多いものですから、十二分にわかっております。理解もしております。
 ただ、この問題においてはせっかく大英断で作られた組織なのに、実質的に余り効果がないようなことになるのではなかろうかなという危惧がまずあるので、それならばやはり拘束力を持ってきちっとした方がいいのではなかろうか、それは国民に開かれた司法であり、開かれた弁護士の綱紀・懲戒の問題の手続であると思うから、あえてそのように言っているわけです。
 だから、基本的にはそういう拘束力を持たせる、法的な根拠を持たせる。けれども、現実にはいろいろな問題もあります。懲戒相当の意見は例外的であり、数も少ないでしょうが、ないとは言い切れません。ですから、そういったときに備えて、制度設計をする以上は、議決にしても議決の内容だとか、議決の要件だとか、拘束力はどこまでの範囲にするとか、いろいろな検討しなければいけない問題が今後起きてくると思うのです。それで提案しているわけです。
 したがって、中川委員のおっしゃるように、弁護士に対して不信感が強過ぎるための意見ではないかとおっしゃるのは、私もそれは言い過ぎではなかろうかと思います。失礼ですけれども。

【伊藤座長】それでは、奥野委員の御意見を伺って休憩にしたいと思います。

【奥野委員】皆さんの意見を聞いていると、私の考え方は全然違うので、念のために申し上げたいのですが、木村委員がおっしゃるように、悪徳弁護士の数が増えているからこういうことをしなければいけないというのは、そうではないと思うのです。つまり悪徳弁護士が増えたって、日弁連の本体がちゃんとしていれば、日弁連にちゃんと罰してもらえるので、これは問題ではないと思うのです。
 それから、日弁連は信頼していますというのも、申し訳ないけれども問題があって、日弁連が信頼できなくなる可能性があるからこういう拘束力を付けた方がいいというのを我々が言っていることで、今の日弁連は我々は信頼しています。だけど、ひょっとして将来何かの拍子に日弁連という組織がおかしくなってしまう可能性がゼロではないと、そのときにどうしたらいいかというときになって、そこであたふたしてももう遅いわけです。今、制度を作っているわけですから、制度を作っているときにはひょっとしてあり得ないかもしれないけれども、日弁連という組織がおかしくなるかもしれないという可能性を視野に入れて、そうならなければ万々歳で、拘束力があろうがなかろうが構わないわけですけれども、万が一にもおかしくなってしまったときにどうすればいいかということを、我々のような人が考えるしかないわけです。何か仕組みを変えられるとしたら、今しかないわけですから、それで今議論をしているのであって、万が一そういう変なことが起きるのだとしたら、やはり拘束力を付けておく方がはるかに安心だねというのが、私が申し上げたいことです。
 今の日弁連は、私は完全に信頼しております。それは申し上げるまでもないことだと思って、言わなかっただけです。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。皆さん審議に大変熱心に参加される余り、やや表現が厳しいところがございましたけれども、先ほど私の方で申し上げましたように、意見の大勢という意味では、拘束力を制度的なもとして認めるということでとりまとめさせていただきたいと思います。
 ただ、中川委員、平山委員がおっしゃるような御懸念については、これは何度も松尾委員に御発言いただきましたけれども、具体的な制度設計の中にそういった懸念に十分対応できるような形での姿を考えていきたいと思います。そういうことであれば、平山委員も議論の大勢を尊重する御趣旨と、先ほどの御発言を承りましたので、とりあえずそれを前提にして、具体的な制度の内容についてこれから更に議論を進めていきたいと思います。恐縮でございますが、そのように御了解ください。
 ここで10分ほど休憩をさせていただきます。

(休 憩)

【伊藤座長】それでは、まだお疲れもとれないと思いますけれども、審議を再開したいと存じます。先ほど考え方の大勢は整理をさせていただいたとおりでございますが、それを前提にしたときに、1つは資料3−8の3の(1)にございます、綱紀審査会を法律上の組織とすることはどうかという点でございます。これはもし拘束力を付与するということであれば法律上の組織ということで、よろしゅうございますね。

(「異議なし」と声あり)

【伊藤座長】引き続きまして、先ほど木村委員からも御発言がございましたが、資料3−8(3)でア、イ、ウということで、アは先ほどのようなとりまとめであれば、この考え方にはいかないと、イかウかということになるわけでございますが、この内容について何か御意見、先ほど田中委員からも御発言がございましたが、それではお願いいたします。

【田中委員】もっと早い段階に言うべきだったかもしれないのですけれども、事務局の案の整理に異議がありまして、御質問もあるのですが、先ほど来、綱紀審査会の審査の権限の問題とか、議決書の作成の難しさというようなことを、平山委員がおっしゃったわけですが、そういうことを考えますと、綱紀審査会がいろいろ審議した結果、これは懲戒相当だという結論だけでなくして、もう一回綱紀審査会で再調査したらどうかという議決の選択肢もあり得るのではないかという感じがします。イ案とウ案を見ますと、ウ案はみんな懲戒委員会に行くと、イ案は私が今、話したものに近いように思うのですが、これは、何か票数の多い少ないだけで懲戒委員会に回すか、あるいは綱紀委員会で再検討するかとなっているのですけれども、議決の内容そのものを変えてしまって、懲戒委員会の審査に付するという議決の場合にはこういう条件でやり、綱紀委員会で再審査をすべきだという場合には、またそれについての要件を決めていくというような形で、少し検察審査会などに似ているところもあるかもしれないですが、やはり綱紀審査会の審査能力とか、発足当初はどうやっていくかというところから見ると、議決の仕方をもう少し工夫してやった方がいいのではないかということで、イ案の整理の仕方を変えることになるのかもわからないですけれども、イ案、ウ案という整理の仕方で議論しない方が適切ではないかという意見なのですが、事務局の方はそれでは具合が悪いですか。

【伊藤座長】事務局から、その点について説明をしていただきましょう。

【植村参事官】今、田中委員から御指摘がございました点は、誠にそのとおりという気がいたしておるわけでございます。イ案は、出席者の3分の2以上の多数で懲戒委員会の審査に付することを相当とする議決をした場合に、懲戒委員会の審査に付するということになりますが、3分の2には達しないものの、過半数で同じ懲戒委員会の審査に付することを相当とする議決をした場合には、今度は日弁連綱紀委員会が再検討するということで、言わば議決の内容と議決の効果、ここに乖離が生じていると言われても仕方がない記載ぶりであったかなと、今思っておるところでございまして、田中委員からも検察審査会のお話も出ましたけれども、検察審査会では現行法上は3分の2以上の議決がありますと起訴相当の議決ができるわけでございますが、別に不起訴不当というのがございまして、これは過半数でできるというように扱われておるようでございます。
 そういうこともありますので、今、田中委員がおっしゃいましたように、まず懲戒委員会の審査に付することを相当とする議決というものがあるだろうということと、それ以外に日弁連綱紀委員会にもう一度調査をお願いするような議決、これもあってもいいのではないかということを、私どもとしても考えておるところでございます。
 ですから、是非委員の方々でその辺を議論していただいて、議決の種類について整理をしていただければ幸いに存じます。
 以上でございます。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。ただいまの点、いかがでしょうか。
 木村委員、どうぞ。

【木村委員】御説明の趣旨は、田中委員、植村参事官のお話でわかるような気がするのですけれども、少しすっきりしないと言いますか、日弁連綱紀委員会の判断に対して不服があって日弁連綱紀審査会に上がってくるわけですね。そこでまた日弁連綱紀委員会に戻すというような形が、果たして最終的に国民に開かれた形で議決をするというようなシステムをとろうとしているときにふさわしいのかどうか、どうも論理構成上これは無理があるのではないかと私自身は思うわけなのですが、いかがでございましょうか。そういう議決の内容で変えるわけですか。

【伊藤座長】今の説明と言いますか、田中委員の御発言も変えることを考えていいのではないかということだと思いますが。

【木村委員】そうですか。私としては、これははっきりと懲戒委員会の審査に付することを相当とするということでいくのが望ましいという見解にあるわけですけれども、ほかの先生方はどうお考えかわかりませんけれども。

【伊藤座長】もちろん、過半数要件か3分の2かは別として、木村委員がおっしゃるような結論に到達する場合もあるけれども、しかし場合によっては綱紀審査会で、そこまでは言えないけれども、もう一度きちんと調べた方がいいのではないかという結論もあり得るのではないかというのが御発言の趣旨だと思いますが。

【木村委員】そうですか。しかし、この場合懲戒委員会でも調べるわけでございますか。

【伊藤座長】どうですか、田中委員。

【田中委員】趣旨は、やはり懲戒委員会に付するというのは、先ほど釜田委員がおっしゃったように、いろいろケースを想定してみても、余り考えられないのではないかということが1つはあるのです。ただ、弁護士さんの他に外部委員も入っているのですけれども、そういう綱紀委員会のプロフェッショナルな観点を入れた評価基準と、全く外部の者ばかりでやる評価基準とがずれている場合があると思うのです。そういったずれている場合は、やはり綱紀委員会の審査の基準を少し見直すとか、そういうことをもう一回やる必要があるのではないかというようなケースはかなりあるのではないかと考えてみると、分けた方がこの綱紀審査会の役割がかえって膨らむのではないかと思います。そういうことでないと、ほとんどレアケースでしか機能しないという可能性があり得るのではないかということです。
 これは日弁連の趣旨に合うかどうか知らないのですけれども、たくさん綱紀委員会に戻ってきて大変だということになるかもしれないですが、いろいろな評価基準をフィードバックする機能としては、そちらの方が大きいのではないかというのが、私の個人的な意見です。

【伊藤座長】ほかの委員の方、いかがでしょうか。どうぞ、岡田委員。

【岡田委員】田中委員のお話で、私もそういう選択肢があってもいいのかなと思うのは、しょせん私たち一般の人間が判断するのですから、専門の方の考え方と違うわけで、そちらで調べたものが上がってきて、どうも自分たちとしては白か黒かはっきりしろと言われると困ってしまうという部分がある事例というのは、結構あるのではないかと思うのです。それをもう一回調べ直していただいて、その後また上に上がるのかどうするのか、そこはまた考えないといけないのでしょうけれども、それも弁護士会と一般の私との考えのコンセンサスを得る方法ではないかと思うので、そういう選択肢はあってもいいのかなと思います。

【伊藤座長】ほかに、いかがでしょうか。どうぞ、小貫委員。

【小貫委員】私も同じ意見なのですが、具体的な案件を扱う場面を想定してみますと、いろいろ疎明資料も見たけれども、こういう観点で調査してみると、あるいは違った結論になるかもしれないけれども、実のところ現段階の審査会の状況では判断できませんという例もあると思うのです。そういうものについて、過半数でやるのかどうか、そういう議論は別としても、もう一回綱紀委員会の方で調査するというような決議が類型としてあってもいいのではないかというように私も思います。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。いかがでしょうか。そういたしますと、今の点についての議論の大勢は、確かに3分の2か過半数でイ案のような分け方をするというのは、これはどうもあまり合理性がないというのは、事務局も自ら認められたところでございますので、しかし趣旨を考えるとむしろ議決の内容をもう少しバラエティーがあるものに工夫をした方がいいし、また工夫をすればそのことが事案の性質に応じて合理的に働く余地があるというのが多くの御意見のようでございますので、そのことを前提にしてもう少しどういう具体的な制度設計になるのか、その辺りをまた事務局でも考えていただいて、議論を続けるということでいかがでしょうか。
 木村委員、どうぞ。

【木村委員】背景で簡単に御説明いただきたいと思うのは、例えばウ案になった場合、日本弁護士連合会というのは、何か臨時総会手続ということが必要になるのでしょうか。つまりどうしても受け入れられないというような事務上の手続とか、その面での障害があるのかどうかということについてお伺いしたいと思います。
 そうすると、例えばイ案の場合には臨時総会を開かなくてできるのか、何かそういう手続上の問題が背景にあるように思うのですが、そこら辺のところはいかがでございますか。

【伊藤座長】平山委員、あるいは有吉次長、何か御発言ございましたらどうぞ。

【平山委員】それは、私は執行部でも何でもございませんのでわかりませんが。

【日弁連(川中副会長)】それでは、私の方から答えさせていただいてよろしいでしょうか。
 副会長をしております川中と言います。2月28日の臨時総会での決議は、事務局の方から資料を出されておりますとおり、綱紀審査会には拘束力を持たせないということで決議をしております。それと違う結論が出たときはどうするのかということで、それだけでは別に総会は必要としない、私たちの意見と反する方向の検討が進んだというだけのことになると思うのですけれども、それに対して日弁連がそのことを前提にした制度設計をやる場合に、弁護士法あるいは日弁連会則を改正をしなければならないということになった場合には、当然これは総会でもう一回決議をし直すのではなくて、その会則改正のための総会でやらなければならない。当然そうなれば、2月28日の臨時総会の決議と違う決議の在り方というのが当然問題になってくるだろうと思います。

【平山委員】ちょっと参考に、実は私が聞いているところでは、日弁連でこの問題につきまして弁護士法の改正、会則の改正案というのはもう相当審議を進めているのですね。ですから、それを次回に皆さんにお配りしてごらんいただくのも、進める上でひとつの参考にしていただけるのではないかという気がいたしますけれども、どうでしょうか。

【伊藤座長】それは、もちろん参考資料としていただく分には構いませんが。

【平山委員】現実問題としてどう処理するかという問題につきましては、相当役立つと思うのです。そういう気がいたしますけれども。

【伊藤座長】一応先ほどとりまとめましたように、拘束力を認めるということで今後のこの検討会の審議は進めるという前提を御了解いただいた上で、何か参考資料としてまた別にお出しいただけるということであれば、それは構いませんが。

【平山委員】先ほど質問が出ましたように、どう対応していくかということにつきまして、事前に準備しているものがありますので、例えばイ案について御議論がありましたけれども、そういうもののヒントになることがあるかもしれません。それは専門家がずっと詰めてやっていることですから、ごらんいただいた方が議論としてはやりやすいのではないかという気がします。

【伊藤座長】どうぞ。

【植村参事官】検討会で、今日非常に重要な問題を御議論いただいたわけでございます。一番争点になっておりました、基本的な方向性の部分については、大方の意見ということで方向性が出たわけでございまして、事務局といたしましても、その方向性に従って具体的にどのように改正法に高めていくのか、その検討をしていきたいと思っておりますが、内々弁護士会でお進めになっております案が、恐らく前提が違っている、つまり拘束力を認めない方向でのものかという気がいたしますが、いずれにいたしましても、この検討会でまだまだ議論していただかなければいけないこともたくさんございまして、日弁連の方で今までの蓄積があれば、関係機関ということで事務局に御協力いただけないかなと思います。それで私どもの方で見させていただいた上で、ちょっと失礼な言い方かもしれませんが、若干消化させていただきたいと思います。私どもも私どもなりにいろいろ検討いたしておりますので、生のままで検討会に上げていただくよりは、まず事前に関係機関と事務局ということでやらせていただければ幸いであるという気がいたしております。

【日弁連(川中副会長)】日弁連サイドとしては、日弁連の各委員会の方とも相談させていただいて、そういう方向でやらせていただくように体制を整えたいと思います。その後でということで、平山先生いかかですか。

【平山委員】要するに、田中先生などから御意見があったように、差戻し的なことについては考え方は一致しているわけでしょう。

【伊藤座長】こういうことにさせていただきましょう。先ほど一応大方の意見ということでとりまとめさせていただいて、この検討会の今後の審議は当然拘束力を前提にして進めます。ただ、イ案の具体的な内容についての御発言がございまして、議決のバラエティー、内容についてもう少しいろいろな類型を認めてもいいのではないかという御発言がございましたので、それを検討する際の資料としてまず事務局の方とどういう資料が一番適切なのかとかを相談された上で必要なものを説明していただくなり、出していただくなりにさせていただきます。

【木村委員】座長の意見に賛成です。これは検討会でいろいろ討議しているわけでございますけれども、やはり日本弁護士連合会の、それこそ根幹に関わる弁護士法のことでございますので、そことのコミュニケーションがうまくいかなければ、我々はもちろん我々で責任を持って討議するわけですけれども、そういう点で今の座長の御判断によって、こういう形でコミュニケーションを行っていくということについては、弁護士の自治の原則に沿って大変に望ましいことではないかと思いましたので、賛成いたします。

【伊藤座長】どうもありがとうございます。
 そうなりますと、先ほど来の御発言にもございましたように、議決の類型として綱紀委員会においてもっと調査をしろと、調査をやり直せというような内容の議決を考えるかどうか、それももちろん一定の要件があるかと思いますが、それについては次回以降また御指摘を踏まえて考えたいと思います。
 なお、もう1点でございますが、この懲戒委員会の審査に付することを相当とする議決については、単純な過半数か、それとも3分の2以上の多数を要するかという点がございますが、これも今後の審議の中でもう少し詰めていけばよろしいかと思いますが、今の段階で何か御意見があれば承っておきたいと思いますが、いかがでしょうか。

【平山委員】私は、ア案しか今日まで考えていませんでしたので、次回に申し上げたいと思います。

【伊藤座長】はいわかりました。ほかの委員の方で何か御発言ございますか。

【木村委員】私は、ウ点しか考えていなかったのですが、これは具体的に事務局の方で内容について御提案いただいて、それについて審議するということなのですが、こういう方向で御検討されることにつき賛成です。

【松尾委員】私は検察審査会の3分の2要件は、やはり大きな参考になろうかと思いますので、最終的ではありませんがそういう意見です。

【伊藤座長】では、この点は次回以降の審議で続けたいと思います。
 それでは、大分慎重な審議をしていただきましたが、次に本日新たに配布のございました事務局資料5−3「綱紀・懲戒手続 検討のたたき台(案)その2」について、まず事務局から説明をお願いいたします。

【植村参事官】それでは、私の方から資料5−3に基づきまして説明をさせていただきます。
 前回の検討会におきまして、日弁連から日弁連臨時総会で承認されました、綱紀・懲戒制度の改革に関する基本方針についての御説明があり、今日更に有吉次長の方から資料に基づきまして、その御説明をいただきました。日弁連でお決めになった方針の中に、懲戒処分等の公表の拡充という事項が入っておりまして、その中に懲戒処分の内容を官報に掲載し、各弁護士会なり日弁連のホームページに掲載するなど、懲戒処分の公表方法・手段を拡充するという御方針がございます。懲戒処分の拡充というのは、意見書にも記載がございまして、日弁連の御方針はこれに沿うものでございます。
 その後、私どもの方で、隣接法律専門職種等につきまして、立法例を調べてみました。それを資料5−4にとりまとめております。ごらんいただければわかりますとおり、多くの職種におきましては、懲戒処分の官報公告というものを法律で規定しています。そこで、事務局といたしましては、弁護士につきましても大きく隣接法律専門職種同様、懲戒処分の官報公告につきましては、法律で規定しておくのが相当であると考えた次第であります。
 そこで、資料5−3にありますとおり、弁護士会が懲戒処分をしたときは、その旨を遅滞なく日弁連に報告し、日弁連はこの報告を受けたとき、または自ら弁護士の懲戒処分をしたときは、遅滞なくその旨を官報を持って公告しなければならないとすることはどうかとお諮りさせていただいた次第でございます。
 以上でございます。

【伊藤座長】それでは、ただ今のたたき台(案)につきまして、御質問、御意見ございますでしょうか。

【松尾委員】私は、官報公告は賛成です。

【伊藤座長】ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
 皆さん、ただいま松尾委員からの御発言がございましたが、同様のお考えと承ってよろしいでしょうか。
 どうぞ、木村委員。

【木村委員】先ほどの御説明によりますと、『自由と正義』というのに載っているという話ですね。それが刊行以来ずっと載っているということでありますが、余り詳しくは載っていませんね。

【日弁連(川中副会長)】いや載っています。懲戒事由そのものが載っています。

【木村委員】それは、どこから命令されているわけではなくて、日本弁護士連合会の自主的な規制に基づいてやっているわけですね。ここに書いてある官報をもって公告するというのは、法律の中に入るわけですか。

【植村参事官】そうでございます。

【木村委員】そうしますと、日弁連の自主的な公告については、日弁連が続けてやっていくということですね。

【植村参事官】それはそうされるであろうと思っております。

【木村委員】わかりました。これに関連しますと、官報並びの日弁連の特定の雑誌、研究誌に掲載されて、一般の人たちにはほとんど届かないということですので、先ほど事務次長から御案内がございましたように、ホームページに載せるとか、日弁連の中での周知方についての特別の検討を是非されますようにお願いしたいと思います。

【日弁連(川中副会長)】再三後ろから申し訳ありません。今の木村委員のおっしゃることは、もちろん当然のこととして近々インターネットに載せるよう検討を進めておりますので、それは必ず実現をしたいと考えております。
 『自由と正義』に載せるのは、これは弁護士会の機関誌でありますので、余り見ないのではないかという御心配がおありかと思いますけれども、決してそうではありません。あちこちに配布をしておりますので、木村先生、御希望でしたら配布できるようにさせていただきます。
 官報に載せることに私たち日弁連は異論はございませんけれども、まさに官報に載ってだれが見るのかという問題がありまして、そういう意味では『自由と正義』の方がはるかに見やすいと思います。
 よけいなことかもしれませんが、もう一つは官報は、たくさんの破産公告が出ていまして、申し込んでから数か月経たないと掲載できないというぐらい掲載件数が多うございますので、『自由と正義』の方がもっと早くなるだろうと思っております。そういう意味でも、全然公表については異論ございません。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。そういう意見の交換がございまして、非常に心強く感じている次第でございますが、懲戒処分について官報で公告することを法律で規定すること自体は、格別の御異論がないものと受け止めましたが、よろしゅうございますか。

(「異議なし」と声あり)

【伊藤座長】それでは、この問題はこの程度にいたしまして、引き続きまして、弁護士法第72条の問題に入りたいと思います。
 まず、事務局から資料5−5「弁護士法72条の予測可能性の確保のための措置 検討のたたき台(案)」について説明をお願いいたします。

【植村参事官】それでは、資料5−5に基づきまして、私から説明をさせていただきます。
 事務局といたしましては、「弁護士法第72条ただし書を、例えば、『この法律及び他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。』などと改正することはどうか」について御議論をしていただきたいと考えております。
 現行の弁護士法第72条、ただし書きは、参考としてそこに記載させていただいておりますが、「ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない」という条文になっております。しかしながら、この法律、すなわち現行の弁護士法には、弁護士法第72条本文に言う、別段の定めは実はございません。この点からまず御説明をさせていただきますが、資料5−6の1をごらんください。昭和30年法律第155号「弁護士法の一部を改正する法律」が施行される以前には、弁護士法に外国の弁護士となる資格を有する者の特例について定めました第7条の規定がございました。すなわち、旧7条の第1項で外国の弁護士となる資格を有し、かつ日本国の法律につき相当の知識を有する者は、最高裁判所の承認を受けて、第3条に規定する事務を行うことができると定めておりました。第3条に規定する事務というのは、日本の弁護士さんができる事務でございます。
 旧7条の2項では、外国法の弁護士となる資格を有する者は、最高裁判所の承認を受けて、外国人または外国法に関し、第3条に規定する事務を行うことができると定めていたわけであります。
 これらの規定を受けまして、第72条ただし書きは、「ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない」。つまりこういった承認を受けておられる外国の弁護士さんが、日本国内で法律事務をできるということになっていたわけであります。
 それでは、どうして昭和30年、法律第155 号、弁護士法の一部を改正する法律が施行された以降も、第72条ただし書きが削除されなかったのかという問題でございますが、これは資料5−6の2に記載しましたとおり、法改正に当たりまして経過規定が置かれました。改正法施行の際、現に改正前の弁護士法第7条第1項または第2項に規定する、最高裁判所の承認を受けている者については、なお従前の例によるという規定がございまして、この関係で、第72条ただし書きを維持する必要があったということでございます。そして、現在でも昭和30年法律第155号の経過規定の適用を受けておられる方がいらっしゃるということのようでございます。
 一方、今度は席上配布いたしました司法制度改革審議会議意見書の抜粋をごらんいただきたいと思います。
 「III 司法制度を支える法曹の在り方」「第3 弁護士制度の改革」「7.隣接専門職種の活用等」という表題になりました、3枚紙の抜粋でございます。2枚目以降に説明文が記載されております。ここにございますとおり、弁護士法72条本文は、弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事件に関して法律事務を取り扱うことなどを業とすることを禁止しているわけでございますが、司法書士、弁理士、税理士、行政書士、社会保険労務士、土地家屋調査士などの、いわゆる隣接法律専門職種は、それぞれの業法に定められたところに従い、限定的な法律事務を取り扱っているわけでございます。
 そして意見書は、国民の権利擁護に不十分な現状を直ちに解消する必要性にかんがみ、利用者の視点から、当面の法的需要を充足させるための措置を講ずる必要があるといたしまして、司法書士、弁理士、税理士につきまして、具体的な法的手当てを提言しておりました。これは、戻っていただきまして、抜粋の1ページ目の一番上に白丸がありますが、「訴訟手続において隣接法律専門職種などの有する専門性を活用する見地から」と書いてございまして、黒ポツの一番目が司法書士、2番目が弁理士、3番目が税理士についての法的手当てでございました。
 次に資料5−7を開いていただきたいと思います。今、申し上げました司法書士、弁理士、税理士につきまして、意見書で書かれておりました法的手当ては、その後現実に国会で法改正が行われております。すなわち税理士についての、税務訴訟において裁判所の許可を得ることなく、補佐人として弁護士である訴訟代理人とともに、裁判所に出頭し、陳述する権限の付与については1に記載してございます。司法書士についての簡易裁判所での訴訟代理権等の付与につきましては、2に記載してございます。1枚めくっていただきまして、弁理士についての原則として弁護士が訴訟代理人となった事件に限ってのことではありますが、特許権等の侵害訴訟での代理権の付与につきまして、3に記載したとおりの法改正が行われております。
 これらの法改正は、いずれも弁護士法第72条によって取り扱うことを禁止されてまいりました法律事務につきまして、税理士、司法書士、弁理士に対しまして、それぞれ改正法の範囲内で新たに取り扱う権限を与えるというものでございます。
 しかしながら、たたき台(案)で書かせていただきました、72条のただし書きを見ていただきますと、「ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない」とされているだけでございまして、弁護士法でない法律、すなわち他の法律に別段の定めがある場合には触れていないわけでございます。
 したがいまして、法律を読む人、国民の側からいたしますと、税理士、司法書士、弁理士につきましては、それぞれ改正法の範囲内で新たな法律事務を取り扱う権限が付与されたはずでございますのに、弁護士法72条によりますと、相変わらず法律事務を取り扱う権限は弁護士だけに与えられているように読めるわけでございまして、国民の皆さんにとっはわかりづらい規定と言われても仕方がないと思っているわけであります。
 法律の理屈を申しますと、弁護士法第72条の本文と申しますのは、対象者を限定することなく、弁護士以外の者が報酬を得る目的で法律事務を取り扱うことを業とすることを禁止しておりますが、弁理士さん等の隣接法律専門職種についての業法は、特定の人、例えば弁理士さんでありますとか、司法書士さんでありますとか、そういう特定の人に限って適用される法律でございまして、弁護士法第72条本文を一般法、隣接法律専門職種についての業法を特別法と見ることができるように思われます。
 そうでありますと、法律の世界では特別法は一般法に優先するということになっておりまして、法制度としておかしいとまでは言えないわけでございます。ですから、これまでの立法というのは特に72条ただし書きをいじらないで行われてきたわけであります。
 しかしながら、第72条ただし書きが、今、申しましたような趣旨で国民の目から見ると非常にわかりにくいという点は、本日席上に配布させていただきました、司法制度改革審議会の審議におきましても、第60回審議会におきまして、竹下会長代理から御指摘があったところでございます。「弁護士法第72条及びワンストップサービスについての主なやりとり」というものをごらんください。かなり厚い資料でございます。この資料の33ページの終わりから34ページの初めにかけて、竹下会長代理の御発言がございます。ちょっと読ませていただきますが、「ここで書いてあるのは、34ページも82ページも、むしろ弁護士法72条の規律内容をはっきりさせたくださいということなのです。どうしてはっきりしないのかというと、今のような企業法務の例で、常識的に考えると、当然ではないかと思うようなものまで形式上は72条に違反するということになりそうなのです。それから、隣接法律専門職種との関係でもそうです。一方では弁護士法では、弁護士法に別段の定めがある場合でなければ、報酬を得る目的で他人の法律事務を扱うことを業とすることは許されないと言っているのに、他の法律で別段の定めをしてあると、それはよいということになっているのは、やはり国民の目から見ると非常にわかりにくい、そういう意味で72条の内容を見直してくださいというのがここの趣旨なのです」というように発言をされております。つまり竹下会長代理は、意見書の記載につきまして、72条のただし書きにつきまして、見直しを求める趣旨であるというように発言されているわけでございます。そこで、事務局といたしましては、先ほど御説明いたしまたような税理士、司法書士、弁理士にそれぞれ新たに法律事務を取り扱う権限を付与する法改正が行われれば、弁護士法第72条本文による禁止が解除されるということを、言わば確認的に示す趣旨でございますが、たたき台(案)といたしまして、弁護士法第72条ただし書きを、例えばこの法律及び他の法律に別段の定めがある場合は、この限りではないなどと改正することはどうかというようにさせていただいたわけであります。
 なお、弁護士法72条の予測可能性の確保のための措置につきましては、先ほどの竹下会長代理の御発言にもありましたような、会社形態の多様化などの変化に対応する見地からの企業法務等との関係からの検討や、さらにその他の観点からの検討もあり得るものと思いますが、これらの観点からの検討につきましては、既にお諮りいたしましたとおり9月以降にお願いしたいと思っております。
 以上でございます。

【伊藤座長】やや法律の技術的な表現のようなことで、おわかりにくいかと思いますけれども、趣旨としては今、説明がございましたように、隣接法律職種の取り扱える法律事務の範囲が広がったものですから、それに合わせてそのことを72条との関係ではっきりさせようという趣旨の検討事項でございます。
 これに関しましては、日弁連から御発言がございますので、川中副会長、お願いいたします。

【日弁連(川中副会長)】川中でございます。日弁連配布資料「弁護士法第72条改正問題に関する見解」というものを出させてもらっておりますが、これに基づいて若干日弁連の考え方を御説明申し上げたいと思います。
 改めて言うまでもないことでありまして、今、植村参事官の御説明を聞いておっても、72条の立法趣旨そのものについては維持することを前提にしておりますが、確認的に弁護士法72条というのは、こういう趣旨で設けられておりますということを確認していただきたいということで、公益的見地から弁護士72条の立法趣旨は維持されるべきであるということを書きました。
 その弁護士法72条の立法趣旨の内容は、有名な最高裁判例でここに引用しておりますとおりでございます。もちろんこれは改めて申すまでもなく、弁護士のためにあるのではなくて、当事者その他の関係人等の利益を損ね、法律生活の公正円滑な営みを妨げ、引いては法律秩序を害することを防止するためにあると私たちも理解しております。これは、あるいは言わずもがなで、そんなことはわかっているというようなことを言われることかもしれませんが、あえて申し上げました。
 問題は、ただし書きについて植村参事官が御説明になりましたような、わかりにくさというのがあることはもちろん承知しておりますけれども、では「この法律及び他の法律」を加えたら、審議会意見書が言っているような予測可能性が確保できるのかというようなことを言ったら、それは問いでもって問いに答えたに等しいようなことで、何も明らかになっていないのではないかというように思います。
 これもまた改めて申し上げることではございませんけれども、72条に違反すれば罰則が伴います、いわゆる刑罰法規でございますので、そういう意味では審議会意見書が言っておりますように、規制の対象たる範囲と態様について、予測可能できるような規定にすべきだという要請はもっともだと思います。私たちが検討いたしましたところ、「他の法律」ではせっかくの審議会意見書を受けて法改正をやるのに、不十分ではないかと考えております。
 日弁連は、どういう考えを持っているのだと言われると、これまた困るわけですが、1つ考えられるのはこの弁護士法72条は、先ほど植村参事官の御説明にありましたように、一般法でございますので、それに対する例外的な法律は、具体的に一つ一つ列挙していく方法はあるだろうと思います。弁理士法に基づくそれぞれの業務、あるいは司法書士法に基づくそれぞれの業務ということで、例えばそういう立法例としては独占禁止法で、わざわざ1章設けて適用除外、独占禁止法に言う事業者団体にならない団体はこれだというように列挙しているという例もございます。そういう方法もあるだろうと思います。
 あるいは、正当な業務行為としてなされる場合はこの限りではないというような形でやる場合もあるだろうと、正当な業務行為というとまた範囲が広がってしまうので、その辺りについて日弁連としても1つの委員会で検討しているのですけれども、審議会意見書の言う予測可能性の確保ということを十分満たすような条文案というものはいまだ持って来られていないのですけれども、聞くところによりますとADR検討会の方でもこの弁護士法72条の問題を必然的に扱わざるを得ないし、それを扱うことが当然日程に上ってくるというようなことでございますので、そちらの方の検討と併せて、私たち日弁連も検討いたしますけれども、こちらの方と併せてもう少し時間を掛けて検討いただけたらというところが、本日までの日弁連の意見でございます。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。それでは、先ほどの事務局からの説明と、ただいまの川中副会長の御発言に関しまして、御質問がある方いかがでしょうか。なかなか何が争点なのかというのがおわかりにくいかと思いますけれども、どうぞ木村委員。

【木村委員】「この法律及び他の法律」と書いてありますね。これはこの法律と併せて他の法律にというように読むのですが、「この法律又は他の法律」とは違うわけですね。「この法律及び他の法律」というのは、この法律と併せて他の法律でもという意味で、「又は」とは違うということなのかどうか、それが1点です。
 こういう場合によく、「法律に別段の定めがある場合はこの限りではない」というようにして、このとか、あのとかと言わない場合もあるのですね。資料5−5の案では、「この法律及び他の」と、「この」と「他の」が入るわけですが、法律に別段の定めがある場合はこの限りではないとすることもあるように思うのですけれども、この2点につきましてお伺いしたいのですが。

【伊藤座長】どうぞ。

【植村参事官】誠にごもっともな御質問でございまして、恐らく事務局が考えましたことを法律的に表現するやり方というのは、このやり方だけではないと思います。そういう意味で、「例えば」、「など」と書いてみたわけでございまして、「この法律及び他の法律」と書くのが、ここで御審議いただくためには一番具体的に出てまいりますので、一番よかろうということで書きました。
 今、木村委員からお話がありましたように、何を書くかという目的からするとずれがあるわけではないと思いますので、この辺り立法技術的な問題でございますので、方向性をいただいた後、政府部内で専門的にその辺りを担当しているところがございますので、そちらといろいろ話をさせていただいて、最終的な表現ぶりについては決めていきたいと考えております。

【木村委員】「及び」と「又は」は、どうですか。

【植村参事官】ここは、記憶がうろ覚えでございますが、厳密にどちらでなければならないということではなかった気がしております。ここは多分語感の問題で、どちらでもいいというのが法制的な見解だったように思いますが、間違いであればどなたかに御指摘いただければと思います。専門家の方もいらっしゃいますので。

【伊藤座長】もし何かその点あればいかがですか。

【松永参事官】私は、去年まで内閣法制局の参事官をやっておりましたが、「及び」と「又は」の使い方はなかなか難しくて、「A又はB」と書くか、「A及びB」と書くか、意味的には同じなのですが、全体の文章の中でのわかりやすさ等を勘案するものであって、法文で必ずしもどちらにしなければいけないということは決まっておりません。
 そういう意味では、先ほど植村参事官から説明がありましたとおり、かなり法律的な問題で、多分全体の条文を見ながら決められるということになろうかと思われます。

【伊藤座長】その辺りのことは、その方面の専門家がいらっしゃいますので、ここでは先ほどお二人の方から御説明がございました、隣接法律専門職種について、一定の法律事務の取り扱いが拡張されたことを前提にして、それをわかりやすさという意味で事務局のたたき台(案)のような表現にしたらいいのか、それとも川中副会長からお話がありましたような別な表現にしたらいいのか、その辺りの実質の御意見をいただければよろしいかと思いますが、いかがでしょうか。
 中川委員、どうぞ。

【中川委員】適用除外というと言葉が出まして、ちょっとそれについて御意見を伺い、自分の意見かもしれないのですけれども、適用除外と言いますと、何か第72条というものが厳然としたものがあって、この中のちょっとしたものを分けていくよという印象を非常に受けるのです。公益性ということをおっしゃいましたけれども、しかしそれは弁理士にしてもほかの士の付く職種は全部公益性があるわけでして、非常に大切な部分は扱っておりますけれども、弁護士だけが絶対ではないと思います。だから、独禁法みたいな考え方で、一般的に職業独占というか、職業を独占しているのは弁護士だと、そのうちの一部を分けていくのだと発想がもしあるしたら、私はそれはおかしいのではないかと思っているわけです。
 言葉の問題は、お任せすればいいのであって、ここでものの考え方をどうするか、さっきおっしゃったように、ADRの検討会や、企業法務のときにも恐らくそういう議論が出てくるのではないかと思いまして、ちょっとここでもし御意見を伺えれば伺いたいと思っております。

【伊藤座長】川中さん、今の御指摘についていかがでしょうか。

【日弁連(川中副会長)】中川委員のおっしゃることもよくわかるのですけれども、私があえて弁護士法72条の立法趣旨を書きましたのは、伝統的にはそういう考えできていると。今度は司法書士さんは簡裁の代理権を持ちましたけれども、ではそれ以前の登記事務も法律事務ではないのかと言ったら、法律事務であったわけですから、もちろん法律に基づくものは、「他の法律」というような文言がなくても、ずっとそういうことで扱えてきているわけですので、ただ説明の仕方として今のようなことで考えていくべきではないのかなということで申し上げたわけです。

【伊藤座長】どうぞ。先に松尾委員。

【松尾委員】この弁護士法72条の立法趣旨は維持しなければいけないと、これは原則的には私もそうだと思います。
 ただし書きの以下の件ですが、今お話があったように、これは言葉も適切ではないと思うし、そういう考え方ではなくて、現実に司法書士法などの改正がありまして、限定的だけれども、訴訟代理権を持つという状況になってきている。つまりこの72条が立法された時代から相当変わってきたようなことを考えてくると、ここに改めて規定を設けるということは必要だと思います。ただ、その場合にこの事務局原案のように、他の法律に別段の定め云々という言葉を使うか、一つ一つ具体的に法律を並べていくかという、まさに技術的な問題があるだけであって、ここに設けるということはどういう形になっても構わないと思います。
 もう1点、先ほどADRの検討会が開かれていて、そことの調整、あるいは言葉の問題なのか内容の問題なのかわかりませんが、そこと足並みをそろえるということは必要かと思います。

【伊藤座長】では岡田委員、お願いします。

【岡田委員】消費生活センターというのは、消費者保護基本法に基づいて位置づけられているのですが、その中で市町村は事業者と消費者のトラブルをあっせんすることができるとなっているのです。ただ報酬を得てという部分で解釈が分かれる部分ではあるのですが、年老いた弁護士さんが弁護士法違反だと言って来られるケースもあるのです。
 先ほど法務省の方にお礼を言ったのですけれども、サービサー法というのができましたけれども、これに反する債権回収はまさに弁護士法違反なのです。ところが、私たちセンターとしてはそれをどこに持っていっていいかわからないのです。弁護士法に違反するのだけれども、現実弁護士法に違反して法律行為をやっている人を、だれが訴えるのかとか、その辺になると手続でもすごくわからないし、全く機能していないと。サービサー法ができたのだけれども、これまたほとんどセンターに入ってくるような債権回収業者は、法律の適用を受けるような事業者ではないと、そこですごく消費者は脅されたりします。今とってもそういう相談が多いのですが、そうしたケースについて今回法務省の方で事例を消費者センターからあげていいよということでペーパーが回ってきたものですから、ここでやっと私たちもよりどころが1つできたと思っているのです。これを考えますと、サービサー法もそうだし、消費者保護基本法もそれぞれの法律であっせんができるとなっていて、先ほど川中副会長の説明もありましたけれども、現実には実態としてあるのだということです。ほかの法律で認められたものがある現実を踏まえると、現在の弁護士法72条はやはりわかりにくいと思うので、これからいろいろな法律ができて、その中で法律行為ができるということであればその文言を入れてもいいのではないかと思います。

【伊藤座長】わかりました。この問題は、本日で結論を出すというわけではなくて、次回に続けて審議をお願いしたいと思います。特に事務局から御説明しました、たたき台(案)に対して反対であるとか、そういう意見はございますか。
 平山委員、どうぞ。

【平山委員】反対ということではございませんで、当面の対策としてこれは1つの方法だと思います。ただ、さっきお話が出ておりますけれども、仲裁検討会とかADR検討会がせっかく検討していますので、そこで総合的におやりになってもいいのではないかという気がいたしておりまして、このたたき台そのものはそういう意味があると思います。

【伊藤座長】ありがとうございました。それでは、これは継続して審議をするということにさせていただきたいと思います。
 引き続きまして、報酬規定を会則の必要的記載事項からの削除するという問題に入りたいと思います。この問題につきまして、まず日弁連から検討状況の説明を、永尾副会長にお願いいたします。

【日弁連(永尾副会長)】日本弁護士連合会の副会長をしております、永尾と言います。よろしくお願いいたします。
 日弁連配布資料「弁護士報酬規定に関する日弁連の取りくみ」をごらんいただきながら、私の方からお話しをさせていただきたいと思います。
 日弁連としましては、まず何より市民にとってわかりやすい弁護士報酬規定というのが、市民や企業が弁護士に依頼するときに、弁護士の費用の予測を可能にする目安として必要不可欠であるということを強調させていただきたいと思います。このペーパーにもありますとおり、意見書にも一番最初に弁護士報酬については利用者に目安が付けやすくするなどの見地からの取組みが必要だということを書かれておりまして、更に弁護士会が報酬に関する何らかの規定を設けることが予定されているということに是非御注目をいただきたいと思います。
 本日の資料にも配られておりますが、審議会の議論の中でやはり目安が必要であるということが委員の共通の認識になっていたからだと考えております。
 そこで、日弁連としましては、公正取引委員会が平成13年10月に示しました、事業者団体の報酬規定が法定事項から削除されたときには、報酬の目安となる報酬規定は独占禁止法に違反するという見解が、弁護士会の報酬規定にも当てはまるという点には異論がございます。到底容認できないという考えです。
 既に公正取引委員会とは、日弁連としまして市民代表なども交えて協議を始めさせていただいております。今後とも十分な協議を尽くして、その変更を是非していただきたいということで、取組みを進めていきたいと考えております。
 したがいまして、公正取引委員会の現在の見解を前提として弁護士法33条2項8号の弁護士の報酬に関する標準を示す規定を削除することについて、日弁連としては反対せざるを得ないということで、言わば条件付きの反対ということでございますが、その点を本日申し上げさせていただきたいと思います。
 以下、どうして目安としての報酬規定が必要なのかということでございますが、少し私の方からお話しさせていただきたいと思います。
 何と言っても弁護士の場合、業務が非常に多様であるということでございます。市民や企業の法律的な事務全般を取り扱うということで、非常に取り扱う業務範囲が広い。国際的な分野から日常の市民生活に至るまで多種多様であるということで、依頼者も大企業、中企業、一般市民から社会的弱者まで、あらゆる人たちを含んでおりますし、たとえ同じような分野の事件であっても、極めて個性が強いということで、解決に要する時間労力が千差万別だということで、解決手法も一様ではありませんし、勝ったり負けたりするというようなことで、当事者の得られる利益と弁護士の方が費やした労力、経費と必ずしも比例するわけではないということでございます。
 財産の大半が争いになっているケース、企業が存亡をかけて争っているケースいろいろございます。依頼者の死活に関わるような重大な案件も少なくないわけでございますし、名誉とか人格とか、経済的な評価になじみにくい案件も多々ございます。
 そういう点は、資料に配られておりますが、隣接する他の資格者の方が主としてというような表現になりますが、定形的な種類の書類の作成とか、特定の領域におけるある程度決められた手続を行う業務というのと、決定的に違うと私たちは考えております。これが業務に対する報酬の定形化が非常に難しいというところに結び付いているというように考えております。
 したがいまして、弁護士報酬を個々の弁護士が全く自由裁量だと、当事者間がもう合意し、契約すればでいいとした場合には、かえって非常にわかりにくい、または大きなばらつきが生じてしまうのではないか。そういうようなことは、かえって弁護士報酬が透明でなくなるということになるのではないか。そこで、弁護士会として、事件の種類に応じた弁護士報酬についての一定の目安を、市民や企業に広く示すことが必要だと考えております。
 「2割司法」ということで、司法制度改革審議会の中で抜本的な司法改革をするということで進めていただいているわけですが、市民の司法に対する利用度の低さをどう打開するかというときに、やはり市民にとって目安としての報酬規定を失うというのは、かえって利用しやすい司法を目指す運動に逆行するのではないかと考えております。要するに、目安を失ってだれが困るのかということを考える必要があるのではないかということでございます。弁護士等にもう既に依頼している、継続・反復までいかなくても、企業で頼んでいるような方にとっては、実際にも報酬規定に依存することなく個々の契約で報酬が決まっているのではないかと思います。
 報酬規定が必要な利用者というのは、そういう大企業だとか、既に弁護士を頼んでいる人たちではなく、弁護士を利用すること自体が一生に一度の出来事になるかもしれないような一般の市民であり、中小企業なのではないか。そういう方にとって弁護士の法的サービスの質や報酬の多寡を比較検討するということは、実際には容易ではないのではないか。これは「情報の非対称性」と呼ぶそうですが、そういうことでやはり目安が必要ではないか。本日の資料の中に司法制度改革審議会の報告書、「民事訴訟利用者調査」報告書というのを紹介させていただいていますが、特に自然人の場合については費用の予測がつかないというという不安が訴訟をためらう要因として働いている可能性が指摘されているということでございます。
 したがって、弁護士会が報酬規定を法律事項から削除してしまうというのは、これから司法を新しく利用しようとする人にとって、有害な結果を招来するのではないかというようなことを考えております。
 それでは、他士業はどうなっているかということで、これも本日の資料にございますが、御承知のとおり、先日、法律改正が行われまして、報酬規定が廃止されました。その点について私の方から2点申し上げたいと思いますが、1つは国会の付帯決議でございます。「司法書士及び土地家屋調査士の業務に係る報酬規定が会則から削除されるに伴い、適切な報酬設定が行われるとともに、利用者にわかりやすく明示されるよう、その周知徹底を図ること」という付帯決議になっております。
 現実の問題としまして、最近の報道によりますと、司法書士会では統計処理と称して目安づくりが考えられているという報道がございます。弁護士会の方で調べた中に、獣医師のケースがございました。正確なところはよくわかりませんが、同様な話があるというように聞いております。要するに、獣医師会も報酬規定がないということだそうです。そこで、幾ら払っていいかわからないということで、市民の苦情が殺到したということで、会員にアンケートをとって、ホームページで平均値が紹介されています。
 というような状況にございまして、弁護士の場合はやはり目安が必要なのではないか、それは隣接他士業に比較して大きいのではないかと考えているということでございます。
 もうしばらく目安の必要性ということで申し上げたいと思いますが、弁護士法で報酬規定がいつからこの条文があるかということも、念のために調べさせていただきました。そうすると、明治時代からあるということでございます。念のための御紹介ですが、明治26年の旧々弁護士法に、「弁護士会会則には謝金及び手数料に関する規定を設けるべし」ということがありまして、昭和8年の旧弁護士法にも「弁護士の報酬に関し標準を示す規定」を定めるべしというようになっておりまして、現行の昭和24年の弁護士法33条2項8号に「弁護士報酬に関する標準を示す規定」というのがあるわけです。
 なぜ報酬規定がこうやって法律事項になったかというと、我が国の弁護士制度が整備される前の、いわゆる三百代言が横行した時代の反省からではないか。そのとき弁護士の品位の保持と国民の信頼の確保を図るために必要だったのではないかというようなことを私たちは今、考えております。
 いずれにしても、今の問題としまして弁護士法1条というのがございまして、弁護士が基本的人権の擁護と社会正義の実現ということで、高い公共的使命と役割を担うべき存在だということで位置づけられているわけでございますが、確かに弁護士も1つの職業でありますし、経済的基盤が必要だということは言うまでもないわけですが、私どもとしましては、営利を主たる目的とする職業ではないというように考えております。もちろん、合理的な努力によって市民が利用しやすい報酬額を目指すべきだと考えておりますが、これは価格引き下げ競争によって、十分な質のリーガルサービスをより多くの依頼者に提供するというものではないと考えております。
 むしろ質の確保されたリーガルサービスの提供によってこそ、依頼者とか社会一般に対して公共的使命を果たすということが求められているのではないか。そういうような使命にふさわしい活動を行う、制度的に確保するためにも弁護士法は弁護士会に対して報酬規定を会則に定めることを求めていると見るべきではないかと考えているわけでございます。
 先ほど公正取引委員会のことを少し御紹介いたしましたが、これを申し上げて大体私の話を終わらせていただきますが、公正取引委員会は平成13年10月24日に、正確な名称でいきますと「資格者団体の活動に関する独占禁止法上の考え方の公表について」ということで、本日の資料にも入っていたかと思います。この見解によりますと、弁護士の報酬規定についても、弁護士法の根拠を失うと、任意の会則により報酬規定を設置することはおろか、弁護士会が弁護士報酬の目安を示すことも独禁法違反だということで取り扱われる危険性が極めて強いという状況でございます。
 ということですので、先ほども申し上げましたけれども、国民の司法アクセスを容易にする見地からは、このような公正取引委員会の見解をそのまま容認することはできないということで、変更してもらうための協議をこれから尽くしていきたい。目安というのはやはり必要であると。弁護士会の報酬規定の実情ということについても、よくよく必要性と合わせて御理解いただくということで取組みを進めていきたいと思います。
 日弁連としても、今の報酬規定が万全のものであるということ、それを死守しなければいけないと考えているわけでは決してございません。報酬規定を標準にすぎないということをはっきりさせるというための改正を進めていきたい。そしてそのためには、意見書の指摘にありますように、「策定過程の透明化」という御指摘がありますように、外部のユーザー、有識者の意見も聴取しながら、経済界、消費者、労働界、マスコミなどの参加を得ておりますが、改定作業の透明性を確保しながら、速やかに進めていくということでやっていきたいと思います。
 もう一つ、意見書が指摘しておりますように、個々の弁護士が報酬情報を開示、提供の強化、報酬契約書の作成の義務化、依頼者に対する報酬説明義務の徹底というのも、もちろん会内で積極的に取り組んでいくということでございます。
 これで終わりになるわけですが、最後にもう一回申し上げたいと思いますが、本日のテーマというのは、弁護士法の33条2項8号を削除するかどうかというのがテーマですが、司法制度改革審議会の意見書は決して閣議決定に従って、この条項を単純に削除せよと言っているわけではないと思っております。報酬規定に関して何らかの規定が必要だと示唆していると考えております。本当に弁護士の報酬規定が今の日本社会に必要ないのかどうか、是非委員の先生方におかれましては、慎重に御検討いただきまして、これまで1度も裁判所に行ったことのないような、市民とか企業にとって、本当に報酬規定が必要ないと言い切れるのかどうか、よくよく慎重に御審議いただければということを心からお願い申し上げまして、私の話とさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。引き続きまして、事務局から事務局資料5−8、「検討のたたき台(案)」について説明をお願いします。

【植村参事官】それでは、資料5−8に基づきまして、「報酬規定の会則の必要的記載事項からの削除」に関する「検討のたたき台(案)」につきまして、私から説明をさせていただきます。
 「報酬規定は会則の必要的記載事項から削除すべきと考えるがどうか」について御議論をいただきたいと考えております。
 既に御紹介がございましたとおり、現行弁護士法は33条2項8号、46条2項1号によりまして、日弁連及び各単位弁護士会が弁護士の報酬に関する標準を示す規定を、会則で必ず定めるべきものとしており、現に日弁連は報酬等基準規定を定め、各弁護士会はこれを受けてそれぞれの報酬規定を定めております。
 なお、日弁連で国民向けにお作りになっております「弁護士報酬の概要」というペーパーを、資料5−9としております。報酬規定が弁護士会及び日弁連の会則の必要的記載事項とされたのは、報酬規定を定めることによりまして、弁護士報酬を適正なものとするとともに、弁護士報酬についての予測可能性を確保し、国民が弁護士をより利用しやすくするためであると言われております。ただ今、日弁連から詳しい御説明があったところでございます。
 一方で弁護士ばかりでなく、弁理士や司法書士等、隣接法律専門職種等のいわゆる資格者が属する団体が報酬規定を定めることは、独占禁止法上の競争制限に当たる恐れがあるのではないか、資格者間における競争を活性化する観点から、報酬規定は削除すべきではないかという議論がございます。
 資料5−11をごらんいただきたいと思います。「隣接法律専門職種等に関する報酬規定削除等の経過」というペーパーでございますが、このペーパーにまとめましたとおり、この観点に立ちましてまず行政書士、弁理士についてその旨の法改正が行われました。その後も平成13年3月の規制改革推進3か年計画、ページをめくっていただきまして、平成14年3月の規制改革推進3か年計画(改定)によりまして、ここに記載しましたとおりの閣議決定が行われまして、既に税理士、司法書士、土地家屋調査士については、その旨の法改正が行われたところであります。したがいまして、いまだ法改正が行われておりませんのは、弁護士、社会保険労務士、公認会計士でございますが、報酬規定の削除を盛り込んだ社会保険労務士法改正案が準備されておるようでございまして、今国会にも提出される予定と聞いております。
 この資料5−11の別紙2をごらんください。この別紙2は、平成12年12月12日付けの行政改革推進本部規制改革委員会によります「規制改革についての見解」の抄本でございます。この見解は、その4か月ばかり後になりますが、平成13年3月の閣議決定であります規制改革推進3か年計画につながってくるものでございますので、若干御紹介させていただきたいと思います。
 別紙2の1ページの下の方に、(2)として「基本的な考え方」という項がございます。ここに規制改革委員会が報酬規定を会則の記載事項から削除するよう提言した理由が、コンパクトにまとめられております。これを引用させていただきますと、まず「報酬規定が利用者の利便のために設けられているとしても、また、資格者団体が報酬基準を明示することが独占禁止法上直ちに問題とならない場合であっても、資格者団体が個々の資格者の原価計算の要素を考慮せずに一律に基準額を示すことは適切ではなく、資格者団体が基準額を示すことに代えて各資格者が独自の報酬額を算定できるよう、報酬についての基本的な考え方や原価計算の方法を示すことにとどめるべきである」というのがi)であります。
 ii)といたしまして、「各資格者が独自に適切な報酬額を算定し事務所に掲示し、依頼者に詳細に説明すれば、利用者も報酬についての不安を解消することは可能であり、さらに、各資格者の報酬額を広告記載事項として認めることにより、利用者にとって資格者についての情報が不足しているという情報の非対称性を解消でき、利用者は資格者に業務を依頼する前に、あらかじめおおよその報酬額を知り、同業他者と比較することが可能となり、また、合理化により低廉な報酬ですぐれたサービスを提供できる資格者は、その業務を拡大することも可能となるのではないか」と記載されております。
 iii )といたしまして、「報酬基準は、最高価格を抑制する上限規制的に機能する場合がある一方で、基準額より下がらないという最低価格を定める機能をも有しており、報酬基準が報酬の値崩れに対する防波堤になっているとの指摘もあり、さらに、報酬基準自体は目安であるとしても、当事者による報酬額の交渉はそこを出発点とするため、結果として資格者間でほぼ横並びの報酬になり、廉価なサービスを提供するための真の努力が行われているとは言えない」等の理由を挙げているわけでございます。
 また、2ページの下から2段落目をごらんください。ここでは、弁護士の報酬規定について特に記載がございまして、「弁護士の報酬規定については、あくまでも目安であるとされているが、i)として、弁護士が報酬全額を免除することができるのは、依頼者が経済的資力に乏しいとき又は特別の事情があるときに限られる、ii)依頼者が経済的資力に乏しいとき又は特別の事情があるとき以外は、民事事件の場合で、着手金及び報酬金の増減の範囲を基準額の30パーセント以内としたり、着手金の最低額を10万円としているなど、問題がある」というように指摘をしております。
 そこで、資料5−11の最初のページに戻っていただきます。弁護士につきまして、どういう経過になっておるかと言いますと、まず平成13年3月の規制改革推進3か年計画という閣議決定によりまして、弁護士について司法制度改革審議会の審議結果をも踏まえ、報酬規定を会則記載事項から削除すると決定されております。
 そして、その年の6月に審議会意見書が出されたわけでございますが、1枚めくっていただきまして、先ほども申し上げましたが、本年3月に規制改革推進3か年計画(改定)という閣議決定におきまして、弁護士について司法制度改革審議会の審議結果をも踏まえ、報酬規定を会則記載事項から削除する、という閣議決定がなされているわけであります。
 本日、席上に司法制度改革審議会意見書のこの問題についての記載部分を配布いたしております。司法制度改革審議会の意見書には、弁護士法第33条において、弁護士の報酬に関する標準を示す規定が必要的会則事項とされていることについては、規制改革推進3か年計画(平成13年3月30日閣議決定)において、報酬規定を会則記載事項から削除すると定められていることを踏まえて、適切な対応がなさるべきであるとされておりますが、事務局といたしましては、意見書に言う閣議決定で削除すると定められていることを踏まえた適切な対応とは、削除、更には、後ほど御説明いたします、弁理士会が作成されましたガイドブックや税理士会が作成されましたガイドラインのような、会員向け資料の作成を意味するものと考えております。
 そこで、たたき台(案)といたしまして、「報酬規定は、会則の必要的記載事項から削除すべきと考えるがどうか」とさせていただいた次第でございます。
 なお、報酬規定の削除の関係では、弁護士に事件を依頼する国民の側に立ちますと、弁護士会からも御説明がありました、弁護士に事件処理を依頼するとどの程度の報酬を支払うことになるのか、またどうしてそのような額になるのかなどについて、依頼先の弁護士から事前に十分な情報の提供を受けた上で具体的に説明を受け、更に依頼前に報酬についてきちんと契約書取りかわすようにするなどいたしまして、報酬についての透明性を確保し、弁護士をより利用しやすくすることが大変重要になってくるわけでございます。
 そこでたたき台(案)の(注)に書きましたとおり、このような見地からの個々の弁護士の報酬情報の開示・提供の強化、報酬契約書の作成の義務化、依頼者に対する報酬説明義務等の徹底につきましては、第3回検討会で御了解をいただいた資料3−1、法曹制度検討会「進行の枠組案」におきまして、年明けの検討会で日弁連に検討状況を報告していただいた上で、別途検討していただくこととされております。
 なお、先ほども申し上げましたが、既に報酬規定を削除した隣接法律専門職種のうち、弁理士、税理士につきましては、まず資料5−12でございますが、これは弁理士会が作りました、「弁理士報酬についてのガイドブック」でございます。
 資料5−13が、税理士会が作りました「税理士業務報酬算定に関するガイドライン(指針)」でございます。これらが各会員向けに作成されております。
 ごらんいただきますと、それぞれの資料の冒頭部分には、報酬規定が削除されるに至った経緯や、弁理士会、税理士会がこのようなガイドブックないしガイドラインを作成した目的、それは要するにこれらを参考にして各弁理士、各税理士がそれぞれの報酬基準を作成してほしいということでございますが、その説明がございます。委員の皆様方の参考になると思いましたので、資料とさせていただいた次第でございます。
 私からは以上でございます。

【伊藤座長】この問題は大変重要な問題でございますので、次回に引き続いて審議をお願いしたいと思いますが、数分だけ時間を延長させていただきまして、ただいまの永尾副会長と事務局のそれぞれの説明についての御質問だけ若干承りたいと思いますが、いかがでしょうか。
 小貫委員、どうぞ。

【小貫委員】日弁連の方では、この弁理士報酬のガイドブックと税理士の方のガイドラインというのは、もう中身を検討されておられるのでしょうか。

【日弁連(永尾副会長)】いただきまして、ざっと見ておりますが、十分検討しているという状況ではございません。

【小貫委員】そうですか、実は私は初めて見るのですが、日弁連は目安と言っておられるのだけれども、この程度のものだと全く想定されているところから外れるものだという御認識なのか、その辺を伺っておきたかったのですが。

【日弁連(永尾副会長)】十分な検討はしておりませんが、感触ということで申し上げますと、税理士さん弁理士さん、先ほど申し上げましたけれども、よく実情を知りませんけれども、私たちとちょっと違うと、非常に定型的な仕事で、かなり計算というのがしやすいのではないかというように私たちの方は考えているわけです。
 私たちの方は多種多様な、非定型的ですし、経済的な価値をどう評価するかという難しいことを含めた、一言で言えばバラエティーに富んだ仕事についてのガイドブックというものには、単純にはなかなかならないのではないかと思います。こういうものがあることは承知の上で、これは恐らく弁護士会の場合には1つの参考にはなりましょうけれども、これで同じようなものを作れば足りるということにはならないのではないかという話をして、これから検討するところでございます。

【伊藤座長】どうぞ、奥野委員。

【奥野委員】2つ目と3つ目の意見に関わるかもしれないのですが、3点ほどお聞きしたいのですけれども、1点は日弁連からいただいた「弁護士報酬規定に関する日弁連の取りくみ」に「規制改革推進3か年計画」という政府が出した文章がありますね。ここで一般論として、資格者間における競争を活性化する観点から報酬規定を策定するというように書いてあるわけですね。弁護士についても、司法制度改革審議会の審議結果をも踏まえですから、当然資格者間の競争も念頭にあるはずですね。それにもかかわらず、日弁連の一番下に書いてある箱の中には、競争活性化の話が何もないのですが、これは政府の計画を意図的に無視してこういうことをおっしゃっているつもりなのか、つまり日弁連が競争活性化についてどういう御判断をされているのかということについて、意見を教えていただきたいと思います。
 2番目は、情報の非対称性ということで、情報の非対称性という言葉は経済から出た言葉ですので、私の専門ですから、一言お聞きしたいのですが、まさにおっしゃるとおり、弁護士に一生に一度しか関わらないような人は、弁護士の費用などというのは幾らかわからない。そういう意味で、弁護士の方々が非常に悪意であれば、非常に高いお金をふっ掛けるということが可能だと、だから目安が必要だという議論は、一方でよくわかるのです。ただし、そのときに、その目安を情報をよく知っている弁護士が一方的に作ったら、非常に高い価格を付けるということが可能であるわけです。それはまさに情報を知らない大衆から搾取するということが可能となるわけですね。そういうことなので普通は、情報を持っている人がそういう目安を作ってはいけないという仕組みを作るというのが、経済学上の常識であって、まさに株式とか債券などの場合でも、債券の格付けをするのは債券を出す人ではなくて、第三者が格付機関として作るわけです。だから、そういう意味では、目安は日弁連さんは作るべきではなくて、第三者がやるべきだというのが本来のロジックなのですが、言わば情報の非対称性に基づいた独占力ということに関して、日弁連さんはどうお考えになっていらっしゃるのか、それを2番目にお聞きしたいと思います。3番目に、関連分野で、どこだったか覚えていないのですが、こういうことをしたために目安がなくなったので統計を作って、報酬の平均値を出していますというお話でしたね。

【日弁連(永尾副会長)】獣医師会です。

【奥野委員】それをすると何が起こるかというと、平均値より高いお金を付けるような人には、だれも行かなくなるわけです。当然平均値以下にみんな行き出すわけです。そうすると、料金がまたまた下がるわけです。まさに情報の非対称性の犠牲者になっている依頼者を助けるような仕組みになるわけです。ですから、まさにそういう統計数値を出すことはいいことだというように私は思うのですが、何か議論が間違っていますでしょうか。その3点を教えていただきたいのですが。

【伊藤座長】それでは、永尾副会長、いろいろお考えもあろうと思いますが、とりあえず今日の段階でお答えできる範囲でお話しいただければと思います。

【日弁連(永尾副会長)】では、簡単にということだと思いますが、競争の活性化という点では、競争といっても2つあると思いますが、先ほど価格引き下げ競争というのはちょっとなじまないのではないかという趣旨で申し上げたということなのですが。

【奥野委員】一言だけ言いますが、競争というのはよりよいものをより安い価格でやるのが競争だと私は思います。分けないでください。

【日弁連(永尾副会長)】よりよいものを市民に適正な価格ということで、今、努力をしているというように思っております。

【奥野委員】よりよいものをより安い価格でやらないと。

【日弁連(永尾副会長)】そういうように思っているということでございます。

【奥野委員】結構です。

【日弁連(永尾副会長)】2番目ですけれども、目安の問題について私たちとしては第三者と一緒に作るということで、先ほどから申し上げました公正取引委員会とも交渉も一緒にしているのですけれども、必要性を含めてどうするかということ、それから目安であるということが、社会的に見て適正であるという意味で外部の方に入っていただいてということを今、考えてやっているということでございます。
 3番目の平均値のことにつまましては、今の委員の御指摘に別に反論するつもりはございません。目安ということになると大体そういうことになるのではないかと、私個人はそう思っているのですけれども、それはまた目安というのは一体何なのかということについて、多種多様な分野についてどうなるのかという検討をこれから速やかにしていかなければいけないということです。

【伊藤座長】ちょっと時間が過ぎていますから、次回また質疑も続けますので、皆さんそれぞれ御予定があると思いますので。
 それでは、次回につきましては、ただいまのお二人についての質疑と、それを更に踏まえた意見交換をこの点についても続けたいと思います。
 特任検事経験者に対する法曹資格の付与、これは丸々残ってしまったわけでございますけれども、これも恐縮ですが次回にさせていただきたいと思います。
 実はもう一つございまして、関係機関タイムということで、下級裁判所の裁判官の指名過程に関する諮問機関の設置につきまして、最高裁が一般規則制定諮問委員会に諮問されたことに関しまして、最高裁から簡単で結構でございますので、御説明をお願いしたいと思います。

【最高裁(小池審議官)】手短に御報告させていただきます。先だっての検討会におきまして、下級裁判所の裁判官の指名過程に関与する諮問機関の設置について、最高裁が検討を行うために一般規則制定諮問委員会を開催する準備を開始するという御報告をいたしました。その後の検討状況を御報告いたします。
 この6月12日に開催されました裁判官会議におきまして、この諮問機関の設置について一般規則制定諮問委員会に諮問するという決定をいたしました。これは一部報道もされたところでございます。お手元に、最高裁配布資料「一般規則制定諮問委員会委員名簿」がございます。6月14日付けで任命手続を完了いたしました。ごらんいただきましたとおり、多角的な視点から検討を行うという趣旨で、各界から委員を選任いたしました。従来ですと、法曹三者のメンバーが多いところでございますが、経済界、労働界、報道機関、自治体等、幅広く各界から委員を選任いたしました。
 第1回会議は、7月31日に開催する予定でございます。その後も回数を重ねるということでございますので、事実上委員の方と日程は調整していますが、2回以降はこの委員会が主体的に日程を指定していくということになります。
 この一般規則制定諮問委員会の検討状況については、随時この検討会で御説明して、また御意見を賜りたいと考えております。
 以上でございます。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。ただいまの点について何か、どうぞ木村委員。

【木村委員】こういう具合にして、いろいろな他方面の方々が任命されて、大変すばらしいことだと思います。新聞でもいろいろ拝見しましたけれども、恐らく一般の方々は御存知ないと思うのですが、私なんかがこれを見ていますと、例えば早稲田大学政治経済学部の長谷川眞理子教授は経済学の先生でもなければ、政治の先生でもなくて、生物学の教授ですね。

【最高裁(小池審議官)】人類学です。

【木村委員】ですから、本当は肩書の後に専門分野や職業の内容がちょっと入ると、非常に多面的な人選をしているということがわかるので、そういうことも考慮したような書類の作り方を考えていただければと思います。

【最高裁(小池審議官)】勉強させていただきます。

【伊藤座長】貴重な御指摘どうもありがとうございました。
 それでは、少し時間が過ぎておりますので、どうもありがとうございました。
 本日の議事はこの辺りで終了したいと思います。次回は7月9日、午後2時から5時30分まで、本日に引き続きまして、弁護士法改正問題、具体的には綱紀・懲戒手続の問題、それから弁護士法72条の問題、報酬規定削除の問題、特任検事経験者に法曹資格を付与する問題、司法修習を経ていない司法試験合格者に法曹資格を付与する問題等につきまして、順次議事を進めたいと思います。
 なお、恒例ではございますが、会議終了後に私から報道関係の方に対しまして、記者レクを行うことになっておりますので、この点も御了承いただければと思います。
 これで、本日の検討会は終了させていただきます。