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法曹制度検討会(第6回) 議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日時
平成14年7月9日(火)14:00〜17:30

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)
伊藤 眞(座長)、岡田ヒロミ、奥野正寛、小貫芳信、釜田泰介、木村利人、佐々木茂美、田中成明、中川英彦、平山正剛、松尾龍彦(敬称略)
(説明者)
川中 宏(日本弁護士連合会副会長)
永尾廣久(日本弁護士連合会副会長)
有吉 眞(日本弁護士連合会事務次長)
黒川弘務(法務省大臣官房司法法制部司法法制課長)
金井康雄(最高裁判所事務総局人事局参事官)
(事務局)
大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、植村稔参事官

4 議題
(1)弁護士倫理等に関する弁護士会の態勢の整備等−弁護士会による綱紀、懲戒手続の透明化・迅速化・実効化を図ること
(2)弁護士法第72条について、隣接法律専門職種の業務内容や会社形態の多様化などの変化に対応する見地からの企業法務等との関係も含め検討した上で、規制対象となる範囲・態様に関する予測可能性を確保すること(企業法務との関係を除く。)
(3)弁護士報酬の透明化・合理化−報酬規定の会則の必要的記載事項からの削除
(4)企業法務等の位置付け−いわゆる特任検事、副検事、簡易裁判所判事の経験者の活用等を検討し、少なくとも、いわゆる特任検事経験者に対して法曹資格を付与すること(副検事、簡易裁判所判事の経験者の活用等を除く。)
(5)企業法務等の位置付け−司法試験合格後に民間等における一定の実務経験を経た者に対して法曹資格の付与を行うための具体的条件を含めた制度整備
(6)その他

5 配布資料
【事務局配布資料】
[弁護士倫理等に関する弁護士会の態勢の整備等]
資料6−1日弁連綱紀審査会(仮称)の議決の種類と論点(案)
[弁護士報酬規定]
資料6−2「資格者団体の活動に関する独占禁止法上の考え方」の公表について(平成13年10月24日公正取引委員会)
[民間等における実務経験を経た者に対する法曹資格の付与]
資料6−3「企業法務等の位置付け」について
資料6−4規制改革推進3か年計画(改定)平成14年3月29日閣議決定(抜粋)
資料6−5企業法務等の位置付けに関する司法制度改革審議会の審議の状況
資料6−6現在の司法修習制度の概要
資料6−7企業法務関係資料
資料6−8国家公務員に係る法律事務の取扱いについて(内閣官房行政改革推進事務局公務員制度等改革推進室)

【日弁連配布資料】
資料綱紀審査会メモ
資料綱紀審査会の議決

【最高裁配布資料】
資料裁判官の人事評価の在り方に関する研究会の協議の経過

6 議事
【伊藤座長】それでは、定刻になりましたので、第6回法曹制度検討会を開会させていただきます。お忙しい中、また、この暑さの中、御出席いただきまして、ありがとうございます。
 まず、議事に先立ちまして、7月5日の顧問会議でとりまとめられました「顧問会議アピール」につきまして、事務局から説明をお願いします。

【大野次長】お手元に「国民一人ひとりが輝く透明で開かれた社会を目指して」という3枚ものアピールと、それから「内閣総理大臣挨拶要旨」を配らせていただいております。これにつきまして、御説明申し上げます。
 7月5日に開催されました顧問会議におきまして、「国民一人ひとりが輝く透明で開かれた社会を目指して」と題するアピールが取りまとめられ、司法制度改革推進本部長である小泉内閣総理大臣に提出されました。このアピールは司法制度改革推進本部令第1条第2項に基づきまして、顧問会議が司法制度改革推進本部長に意見を述べたものであり、同時に、国民に向けたアピールとしての意味も持つものと位置づけられております。
 アピールの内容は、司法制度改革審議会の意見の趣旨に従いまして、「21世紀の日本を支える司法の姿」として、「国民にとって身近でわかりやすい司法」、「国民にとって頼もしく、公正で力強い司法」、「国民にとって利用しやすく速い司法」の3つを掲げた上で、推進すべき具体的な改革の内容を示したものになっております。特に、「2年以内に判決がなされるように制度的基盤の整備や人的基盤の拡充を十分に行う」との目標を掲げた点が注目されております。
 このアピールを受けまして、小泉内閣総理大臣は、お手元の挨拶要旨にございますように、「全国どの町に住む人にも法律サービスを活用できる社会を実現すること」、「裁判の結果が必ず2年以内に出るようにすること」などを具体的な目標として改革を進める必要があるとし、改革に向けた強い決意を述べられております。
 本検討会におかれましては、このアピール及び総理大臣の発言の趣旨をも十分に踏まえて、今後の検討を進めていただければ幸いと存じます。
 以上です。

【伊藤座長】ただいまのアピール及び事務局からの説明に対しまして、何か御質問や御意見はございますか。

【木村委員】大変にわかりやすい御説明をいただいてありがとうございました。顧問会議の委員というのは何人かいて、そして、いち早く新聞でも報道されましたし、その内容もまたインターネットに出てくるかと思うんですが、各検討会の事務局の担当者がそれに出席して、要するに傍聴しているということなんでしょうか。それとも、これもまた一般の国民に公開されて、マスメディアの方々のみならず、ほかの方々も傍聴できるというシステムなのか、そこのところはどうなのでしょうか。

【大野次長】顧問会議は、本部の顧問会議ということでありまして、通例、本部長である総理大臣、総理大臣が出席されない場合でも副本部長である法務大臣が出席されて会議が行われます。
 事務局側は事務局長以下、私どもが陪席するわけでありますけれども、従来は、検討会の代表の方の御出席はございませんでした。ただ、前回、7月5日の顧問会議におきまして、法曹養成問題が個別的な問題として取り上げられましたので、法曹養成検討会の田中座長が御出席になって、会議に加わっておられます。
 それから、この顧問会議は検討会と同様、マスコミが傍聴しております。また、議事要旨と議事録がインターネットで公開されております。そういう状況でございます。

【伊藤座長】それでは、議事の方に進みたいと思いますが、まず事務局から配布資料の確認をお願いします。

【植村参事官】それでは、配布資料の確認をさせていただきます。次第にありますとおり、事務局資料は6−1から6−8まででございます。このうち資料6−1は、座長の御指示に基づきまして作成したものでございます。そのほか、席上に、事務局から配布させていただきました資料として、「綱紀・懲戒手続 検討のたたき台(案)」であります事務局資料3−8、「弁護士法第72条の予測可能性の確保のための措置 検討のたたき台(案)」であります事務局資料5−5、「報酬規定の会則の必要的記載事項からの削除 検討のたたき台(案)」であります事務局資料5−8、「特任検事経験者に対する法曹資格の付与 検討のたたき台(案)」についての事務局資料5−14を配布させていただいております。
 また、日弁連、最高裁から、それぞれ次第に記載いたしましたとおりの資料の御提出がありましたので、御紹介をいたします。
 更に日弁連、法務省から前回までに配布されました資料のうち、本日の御議論に必要な資料が席上に配布されております。
 以上でございます。

【伊藤座長】お手元にございますでしょうか。それでは、本日は議事次第にございますとおり、まず最初に、「弁護士倫理等に関する弁護士会の態勢の整備等−弁護士会による綱紀・懲戒手続の透明化・迅速化・実効化を図ること」、これをやりまして、2番目に、弁護士法第72条の問題、3番目に、報酬規定の会則の必要的記載事項からの削除の問題につきまして、これらはいずれも前回御議論を始めていただいておりますが、引き続きまして、議論をしていただきます。
 更に、4番目に、特任検事経験者に対する法曹資格の付与の問題、5番目に、司法試験合格後に民間等における一定の実務経験を経た者に対して、法曹資格の付与を行うための具体的条件を含めた制度整備の問題、このような順番で順次議事を進めていきたいと思います。
 最後に、関係機関タイムといたしまして、去る6月22日付けで一部の新聞にも報道がございましたので、裁判官の人事評価制度についての人事評価研究会の検討状況、これにつきまして、最高裁から報告をしていただきます。
 そういうような順番でございますが、まず、弁護士会による綱紀・懲戒手続の透明化・迅速化・実効化を図ること、この問題に入りたいと思います。前回に引き続きまして、日弁連綱紀審査会の議決に関連する議論でございます。
 その議論に入る前に、事務局から席上配布をしております資料3−8の「検討のたたき台(案)」の3の(2)でございますが、「日弁連綱紀審査会の構成人数は、若干人とし、具体的には、日弁連の会則で定めることはどうか。」という項目について、審議をお願いしたいと思います。この点につきましては、特に御異論がないように思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、この点はこういうことで御了解いただいたものといたします。
 そこで本題の方の綱紀審査会の議決に関する議論でございますが、前回の検討会での議論を踏まえまして、私の方で内容を指示して、事務局に綱紀審査会の議決の種類と論点を書き出した書面の案、事務局資料6−1を作ってもらいました。もし、よろしければこの書面に記載した順序で議論をしていただきたいと思いますが、順序はそれでよろしいでしょうか。
 それでは、その点に関しまして、まず日弁連から発言がございます。川中副会長よろしくお願いいたします。

【日弁連(川中副会長)】日本弁護士連合会の副会長をしております川中でございます。座ったまま話をさせていただきます。
 日弁連に再度意見陳述をする機会を与えていただきましてありがとうございます。本日配布ということで「綱紀審査会メモ」と書いた2枚つづりのメモと、「綱紀審査会の議決」と書いた図表を配布させていただいておりますが、これに基づいて説明させていただきたいと思います。
 日弁連は、綱紀審査会を国民に対する説明責任を果たすための機関として設計して、議決の拘束力については、綱紀委員会に再審査義務を課すという拘束力は認めるけれども、直接、懲戒委員会の審査に付するところまでは認めないという立場をとってきて、その旨のプレゼンテーションをいたしました。
 しかし、前々回5月14日と前回6月18日の検討会における先生方の議論の結果、直接懲戒委員会の審査に付する拘束力を認めるべしという意見が圧倒的に多数でありまして、それを前提として綱紀審査会の制度設計を検討していくというとりまとめが行われました。
 日弁連執行部としては、この検討会の検討結果を重くかつ厳粛に受け止め、内部で慎重な討議を重ねてまいりましたが、本日執行部の責任で配布しているペーパー案のような制度設計で、是非先生方の御理解をいただきたいと思います。
 その図表に基づいて御説明申し上げますと、単位会の綱紀委員会で懲戒不相当となり、それに対して日弁連綱紀委員会に異議の申出をして、そこでも懲戒不相当となったときに懲戒請求人は綱紀審査会に不服申立てができるというわけです。綱紀審査会の議決に拘束力を認めるという前提で制度設計を考えるとき、綱紀審査会の任務、役割はということでありますが、日弁連綱紀委員会の出した懲戒に付さないという結論が相当かどうかを議決するのを第一義とすると思います。その場合、議決要件をどの程度のものとするかが本日の課題でありますが、私たちは、それについては少なくとも出席委員の3分の2以上の加重された議決要件でお願いをしたいと思います。
 その理由について、簡単に申し上げますと、単位会の綱紀委員会、それから日弁連の綱紀委員会はいずれも、外部の方に参与員としてではなくて、綱紀委員として加わってもらう。したがって、当然のことながら議決権を持つというような改革を行うことにしているわけです。このことを前提にしますと、綱紀審査会は外部委員の入った綱紀委員会で2度出された懲戒不相当という結論を覆すわけですので、それ相応な慎重な議決要件にした方が妥当ではないかと考えるからであります。
 検察審査会は御存じのように、11名の委員全員の出席を議決要件にしております。全員出席だと一人でも欠席すれば議決ができないことになりますので、そこまでの加重された要件は必要とは思いませんけれども、しかしながら、綱紀審査会の定員の半数を下回らないような議決要件をお願いをしたいと思います。綱紀審査会の定員の半数を下回るような結果となるような議決要件では、制度設計としてはまずいのではないかと私たちは考えているところであります。
 綱紀審査会が3分の2以上の多数で単位会の懲戒委員会の審査に付するのを相当とするという議決をした場合は、その案件は「綱紀審査会メモ」の「3 議決後の手続」の(1)で書いておりますような手続に沿って、単位会の懲戒委員会の審査に付されることになります。それ以外の場合は、審査請求を棄却するという決定がなされることになると思います。
 以上が「綱紀審査会メモ」の2枚目のNo.2の方に要約的にまとめた制度設計でありまして、綱紀審査会の在り方としては、議決の拘束力を認めるという前提で考えるなら、これが本則ではないのかと考えますので、私たちはこの案でもよいと考えております。
 しかしながら、綱紀審査会で自ら懲戒委員会の審査に付するを相当とするという議決をするまでには至らなかったけれども、懲戒委員会の審査には付さないという日弁連綱紀委員会の結論が相当かどうかを再度日弁連の綱紀委員会で審査をすべしという議決はあってもよいとも考えます。この場合の綱紀審査会の議決は、綱紀委員会の審査に付するを相当とするというものであって、言わば綱紀委員会に再検討して欲しいというものですから、この場合の議決の要件は過半数でよいと考えます。
 事務局から出されたたたき台は再調査という言葉を使っておりますが、私たちが再調査という言葉ではなくて、再審査という言葉を使っていますのは、日弁連の綱紀委員会というのは、今度の綱紀・懲戒手続の改革で新しく設ける委員会でありまして、単位会綱紀委員会の調査結果に対する異議申出を受けて、懲戒に付さないという単位会綱紀委員会の結論が相当かどうかを審査する機関になるわけです。弁護士法では、綱紀委員会について調査という言葉が使われておりますけれども、この新しく設けられます日弁連綱紀委員会は、単位会の綱紀委員会とは役割を異にするので、調査という言葉は不適当で審査という言葉を使うべきではないのかと考えて、この綱紀審査会から綱紀委員会に再審査を命ずるというように再審査という言葉を使うべきだと考えております。
 この再審査を担当する綱紀委員会は従前から日弁連が主張しておりましたように、公正さを担保するために当初の綱紀委員会ではなくて、別の綱紀委員会、仮称第2綱紀委員会ということで御説明申し上げることにいたしますが、そこで審査することが妥当だと考えております。
 そして、第2綱紀委員会で再審査の結果、過半数の要件で懲戒委員会に付するのを相当とするというような議決がなされたときは、そこから懲戒委員会、これまた同じような手続に従って、単位会の懲戒委員会に付されることになります。第2綱紀委員会においても、なお、懲戒不相当という結論が出たときに、その結論に対して、再度不服申立ができるのかできないのかというのが大きな問題になるかと思いますが、私たちはその結論に対しては、再度不服申立ができないものとする制度設計を是非お願いをしたいと考えております。
 その理由を申し上げますと、第2綱紀委員会は再度案件について、懲戒に付するを相当とするか否かを審査するものですが、懲戒不相当の議決をした場合に、自動的に綱紀審査会に戻るとする制度設計は法律的に困難ではないのかと考えます。理屈を言うようでございますけれども、第2綱紀委員会で再審査した結果、やはり懲戒不相当となれば、それで懲戒請求人が納得するという場合もなくはないわけですので、そういう場合にまで、綱紀審査会に戻す必要はさらさらないわけですので、やはり請求人の不服申立によって再び綱紀審査会の審査にかけるというような制度設計を考えざるを得ないと思うのです。
 しかしながら、懲戒請求人に対して一度のみならず2度までも不服申立を認める必要があるのかということについては、疑問なしとしないわけであります。この図表でも明らかなように、単位会の綱紀委員会の結論に対して異議申出をし、日弁連の綱紀委員会の結論に対して不服申立をしたということで、綱紀審査会までで、言わば三審制のように綱紀審査まで保障されているということも言えるわけですので、綱紀審査会から第2綱紀委員会に行って、そこに出された懲戒不相当という結論に対して、再び不服申立を認める必要はないのではないかというように考えるわけであります。
 逆に被懲戒請求人という弁護士の立場に立って考えた場合ですが、懲戒にかけられるかどうかが決まるまで、5度も審査機関にかけられるわけです。単位会の綱紀委員会、日弁連の綱紀委員会、それで綱紀審査会、そこから第2綱紀委員会に行って、また、綱紀審査会に戻って来ると、ちょうど5度になるわけで、不安定な立場が長く続きますし、懲戒請求されている間は登録替えなどもできないという法的な制限もあるということになると、その不利益は少なくないし、また、迅速性に欠けることになると思います。
 非行を犯した弁護士であればやむを得ないという御意見があるかもしれませんけれども、我が国の綱紀懲戒制度は何人も懲戒請求できるということになっておりますので、かなりの部分は濫訴的な請求が多いと思います。
 そういう濫訴的な懲戒請求によって長い間、被懲戒請求人の立場に立たされる弁護士の立場から言うと、正直申し上げまして、その心理的負担は決して少なくないと思います。
 前回、井元副会長は、自分も懲戒請求にかけられたことがあると言いましたけれども、私自身も私自身から言わせれば、全く言いがかり的なことで事件の相手方から懲戒請求をされまして、日弁連の懲戒委員会の方まで来たということがありましたが、5度も弁明書などを書いたりするというのは、なかなか大変ではないかと思うわけであります。
 綱紀懲戒手続は、透明性と同時に迅速性の確保も大事なことでありますので、審議会意見書が言っているとおりでありますが、やはり制度設計に当たっては、国民にわかりやすいできるだけ簡明な制度にすべきであると思います。
 再び繰り返しますが、単位会の綱紀委員会、日弁連の綱紀委員会、綱紀審査会に行き、綱紀審査会から日弁連の綱紀委員会に行き、再び綱紀審査会に戻ってくるという制度設計は、透明性はともかく、迅速性という要請に反するのではないかと思われます。
 私たちは綱紀審査会から第2綱紀委員会に行き、そこから再び綱紀審査会に戻ってきて、そこでまた審査の結果、3分の2の要件で、そこから懲戒委員会にかけられる道が残るという案になるのであれば、私たちは3分の2の多数決で懲戒委員会の審査に付するという制度案の方が簡明でありますので、こちらの制度でお願いしたいと考えます。
 この図表の左側半分だけになるわけですが、そういう場合に問題になると思われますのは、綱紀審査会の審査の中で、事実を確かめたいとか、もっと調査をして欲しいという場合が出てきたときにどうするかという問題はあると思います。
 私たちもその点をよく考えたわけですが、そうした場合には、綱紀委員会の委員を呼んで、その委員に説明を尽くさせるとか、あるいは綱紀審査会には事務局を設けることになっておりますので、事務局に調査を命じるということによって、実際は全部調査をして欲しいということは解消できてしまうと思われます。なぜなら、綱紀委員会も綱紀審査会も調査権限という点では同じ権限しか持っていないわけでして、綱紀委員会で調査できることは綱紀審査会でも調査できる。逆に綱紀審査会で調査できないことは綱紀委員会でも調査できないということになりますので、調査をすべしということで、事実の調査という意味ですが、調査をすべしということで、綱紀審査会から綱紀委員会の再審査に付する必要性はまずないと思います。
 そういうことで、私たちはもし第2綱紀委員会から綱紀審査会に戻るという案であれば、3分の2の加重された多数決で懲戒委員会の審査に付するという方の制度設計を是非お願いをしたいと思います。
 以上です。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。ただ今の日弁連の御意見を踏まえまして、資料6−1の1にございます懲戒委員会の審査に付することを相当とする議決の要件として、出席者の過半数とするか、3分の2以上の多数による議決とするか、その他の特別多数による議決とするか、これについて議論をお願いしたいと思います。日弁連のお考えはただ今お話しいただいたとおり、3分の2以上の多数による議決でございます。
 それでは、どうぞ御意見をお願いいたします。

【岡田委員】前回の会議と今回の説明が違ってきている部分があるので、確認したいのです。日弁連の綱紀委員会は調査ではなく、審査と言われたので、前回までは単位会の綱紀委員会と日弁連の綱紀委員会は同じような役割だと認識していたのですが、今のお話ですと、そうではなくて、日弁連の綱紀委員会は審査であるということを言われましたので、その確認。
 それから、審査会から日弁連の第2綱紀委員会に下りてきたときに、そこで調べた結果は審査会に報告というのはもうないということですか。ここに不服申立は×になっているのですけれども、その中に含まれるのですか。

【川中日弁連副会長】後の方は私から。日弁連の第2綱紀委員会で出した結論は綱紀審査会にその理由とともに通知するというのは当然前提として考えております。説明が抜けてしまって申し訳ございません。

【日弁連(有吉事務次長)】第1点の方について、有吉の方からお答えします。
 日弁連では、綱紀審査会自体について、従前の見解ですけれども、厳密な意味での不服申立ということではなくて、いわゆるオンブズマン的な立場から、市民の目で見ていただく。この点について、もう少し調べた方がいいのではないかというようなことであれば、それを綱紀委員会の方に下ろして、再調査していただくという制度設計をしていたわけですが、今回、綱紀審査会自体がそういったものではなくて、不服申立機関として、日弁連の綱紀委員会の結論に対してそれが妥当かどうかを判断していただくという前提に立ったものですから、これは厳密には調査だけではなくて、審査という形でその結論の当否を審査をしていただく機関として構成し直したということでございます。前回とはちょっと制度設計が異なっております。

【岡田委員】そうですか。そうすると、審査会は懲戒委員会に下ろすか、日弁連の綱紀委員会に下ろすか、その2つしかないということですか。何か今、綱紀委員会の担当者を呼んで説明させるというのがあったのですけれども、その中に含まれてしまうわけですか。

【日弁連(有吉事務次長)】基本的には綱紀審査会は、まず日弁連綱紀委員会の結論が妥当かどうかを判断していただく。もし、それが不当であれば、日弁連としては、3分の2で懲戒委員会の手続に付するということでございまして、更に今申し上げたように、再審査は綱紀委員会に行く道もあってもいいかもしれないけれども、これは先ほど申し上げたように、それがファイナルであるという場合には、そういうことも考えられる。もし、それが綱紀委員会の方に下ろさないということであれば、綱紀審査会の中で調査について不十分かどうか十分に事務局等が事実を調査して説明させていただきます。こういうことです。

【岡田委員】わかりました。

【伊藤座長】それでは、多数決の要件について、皆様から御意見を承りたいと思います。どうぞお願いいたします。
 単純に申しますと、単純過半数か3分の2か、あるいはそれ以外の特別多数かという選択でございますが、これは決めていただかないと困りますので、皆様全員から。

【小貫委員】私は日弁連意見に賛成でございます。3分の2の特別多数でいかがかと考えております。日弁連の説明の中でもありましたけれども、まず、綱紀審査会の議論の場に上がってくるまで、単位弁護士会の懲戒手続を経て、しかも、日弁連の綱紀委員会の議論もなされている。これの上に乗るのが綱紀審査会の議論ということになるわけです。しかも、懲戒を申し立てられた弁護士さんの地位の安定ということについても、やはりそれなりの配慮は必要だろうということを考えます。そうしますと、この綱紀委員会の結論を覆すには、やはり慎重な配慮があってしかるべきと、このように考えておりますので、3分の2の特別多数を要するという意見に賛成したいと思っております。

【伊藤座長】ありがとうございました。どうぞ、佐々木委員お願いします。

【佐々木委員】結論から申しますと、3分の2でいいのではないかと考えております。検察審査会とパラレルに考えますと、まず、議決の前提として委員の全員出席を要求するかという点がまず問題になるわけですけれども、機動性という面から考えまして、早期にやらないといけないという面があるでしょうから、その点は出席者による議決でいいと思います。それから、3分の2の特別多数を要求するかどうかにつきましても、縷々説明がありましたけれども、やはり議決の重みと申しますか、そういう点を考慮しますと、3分の2を要求することでいいのではないかと考えます。なお、前回の議論でもありましたとおり、濫申立的な事件をも扱うことになる審査会の形として、それが制度設計としてはいいのではないかと考えております。

【伊藤座長】ほかにいかがでしょうか。では、まず中川委員から順番にまいります。

【中川委員】私も結論的には3分の2で賛成でございます。ただ、この3分の2というのが、何人くらいの3分の2かというのは若干問題であろうと思っておりまして、例えば5人くらいの委員ですと1人反対しますと3分の2の議決にならないですね。さっき若干名というお話がございましたが、この若干名は何人くらいかというのがよく考えていただきたいなという点はございます。3分の2の根拠は、今、佐々木委員がおっしゃいましたように、かなり難しい事案が来るのではないかということでございまして、具体的にイメージするのは大変難しいですけれども、例えば報酬が非常にかけ離れて高いとか、あるいは常識を離れて事件をほったらかされたとか、そういう程度を評価するような問題とか、これは全く想像の話ですけれども、この前もちょっと申し上げましたが、外から見ると、わざと事件を長引かせて、特に刑事事件などの場合に、被告人の人権を守るというようなケースがあったとしますと、これはなかなか判断が難しいと思うのです。したがいまして、そういう複雑というか、判断に非常に迷うような事件が多数上がってくるのではないか。この多数という面につきまして、私は、この前、日弁連さんの数字をちょうだいしておるのですけれども、単位弁護士会の綱紀委員会に上がってきた事案というのが2001年で880件あると。日弁連の綱紀委員会から上がってきたものが530件あるというお話でございました。
 そうしますと、ここの日弁連の綱紀委員会で矛を収める方がいらっしゃればいいのですけれども、そうではなくて、徹底的にやるんだということで言われますと、仮に半分としましても、年間200から300件くらいの案件が綱紀審査会に上がってくるのではないかという感じがいたします。これは大変な数字でありまして、先ほどの事案の複雑性と絡めて考えますと、これは非常にヘビーなことになるのではないかということもございます。その辺も考えて制度を作っておきませんと、何か一番トップのところで全部たまって、動かなくなるという問題もあるなというように思いますが、それは人数を増やすなり何なりということもございますでしょうけれども、とにかく3分の2という要件はそれでいいのではないかと思っております。

【伊藤座長】ただ今の中川委員の御発言に関して、何か日弁連の方から御説明ありますか。

【日弁連(川中副会長)】綱紀審査会の委員の構成でありますけれども、10名から15名という人数を考えております。検察審査会の11人という数は、よく考えてみますと、いろいろな含みがあって、なかなかよく考えられた、別に十一面観音ということから来ている数字ではないと思いますけれども、その辺りが1つ参考になるのかなと思いますが、今のところは10名ないし15名ということで考えております。

【伊藤座長】松尾委員、お願いします。

【松尾委員】日弁連が前回の検討会の意向を受けて、このようにお考えを変更されたということについては、いろいろな問題があるのでしょうが、それはそれなりとして、私は評価したいと思っております。
 そこで問題の委員を何人にするかということですが、今の御説明で、私も15人くらいが委員として選任されるのではないかと思っておりましたので、そういう計算からすると、日弁連が主張される3分の2以上というのは妥当であるということ。
 その理由は、1つは、綱紀審査会のはっきりした意思を示すという意味では、3分の2以上は必要であろうと考えます。
 それから、先ほど日弁連の説明にありましたように、単位会の綱紀委員会、それから日弁連綱紀委員会という過程を経て、その中に外部委員が当然委員として入っているというような綱紀委員会の構成、そういうことをいろいろ勘案してみますと、3分の2以上は妥当であると考えます。

【伊藤座長】ほかの委員の方どうぞ。岡田委員。

【岡田委員】私も3分の2がいいのか、過半数がいいのか、ずっと悩んでいるのですけれども、今のお話を伺っていると、3分の2というのは妥当ではないかという感じはいたします。ただ、今、説明の中で単位会とか、日弁連の綱紀委員に外部の方が入っているということで、それを根拠にされたのですが、その部分で綱紀審査会というのは、法曹関係以外の方という、そこに特徴があるわけなので、そこの説明からすると、綱紀委員会に外部委員が入っているよというのは、私などはちょっと割り切れない部分があるので、そこはもう少し説明の仕方があるのかなと思います。そうでないと、綱紀審査会というものがせっかく新しく作られたという割には、所詮は今まであったのに上に持ってきた、ないしは横に持ってきたという感じがして仕方がないのです。ですから、説明のところで躊躇しているということで、数字に関しては私自身は決心がつかないのですが、3分の2でいいのかなという感じです。

【木村委員】質問ですが、要するに、この図表で見ていると、仮に懲戒相当3分の2で議決して、単位弁護士会が懲戒処分を検討することになってくるわけですけれども、従来の歴史的な経緯はどうなのでしょうか。つまり、日弁連による懲戒処分というのは、従来もあったわけですね。これで見ていきますと、結局戻っていくところは単位弁護士会になって、一応『自由と正義』などに報告されて、日弁連の名前で公表されるわけですが、それは単位弁護士会でやったことを追認する形で出るので、日弁連が懲戒したという形になるのですか、このやり方で。それが私はよくわからないのです。
 つまり、ここを通り抜けて、私などが見ますと、単位弁護士会でどうにもこうにもならなくなったのが日弁連に来て、日弁連がきちんと決めて、これはノーならノー、イエスならイエスと言って、それについて不服の弁護士さんが行政訴訟を起こしたり何なりするような形を取っていたのではないかと思うのですが、そこら辺のところが、今度の新しい案では抜け道がすっと出来て、また、単位弁護士会に戻ってしまうという感じになりませんか。

【日弁連(有吉事務次長)】現行制度は、異議申出がありますと、いきなり日弁連の懲戒委員会にかかるわけです。日弁連の懲戒委員会の案件につきましては、単位会で十分な調査がされていないものにつきまして、必ずしも自判をするわけではなくて、差戻しをしまして、単位会の懲戒委員会にこの点をもう少し調査しろという差戻しという判断もございます。厳密には弁護士の立場からいたしますと、いきなり異議申出で日弁連の懲戒委員会が自判をされるということは、実質的に1回しか懲戒判断がないということになりまして、非常にこれはイレギュラーなものだと我々は考えております。本来、単位会の綱紀委員会の段階でクロと言われれば、単位会の懲戒委員会に行って、それで不服があれば日弁連の懲戒委員会に行って、更にそれで不服があれば高裁に行くわけですけれども、原則はこのように、被審査弁護士が2回審査が受けられるというのが本来の在り方ではないかと考えます。今までは単位会の綱紀委員会と懲戒委員会の判断に対する懲戒請求人からの異議申出は、日弁連懲戒委員会がまとめて受けていましたが、日弁連綱紀委員会を今度新たに作ります。すると、日弁連綱紀委員会に来た案件は、まだ単位会の懲戒委員会を通っていませんので、日弁連綱紀委員会や日弁連綱紀審査会が懲戒相当だと言った場合には、単位会の綱紀委員会が懲戒相当と言ったのとパラレルにした方が、被審査弁護士の方からすると、原則どおり2回単位会の審査が受けられるという点でバランスがいいのではないかという考え方に基づいて、単位会の懲戒委員会の方にいくことにさせていただきたいと考えたわけです。

【木村委員】そうしますと、懲戒請求人の立場からしますと、今まではどうにもこうにも単位弁護士会がうまく動いてくれなかったので、日弁連の方できちんとやってくれると思っていたのが、今度の案では違って、何か国民の目付けが審査をする形は取っていますけれども、日弁連がきちんとやるというのがどうも明確に出ていないような気がするんです。

【日弁連(有吉事務次長)】その辺は、単位会懲戒委員会の結論に対しては、懲戒請求人に異議申出ができる制度はそのまま残りますので、もし、単位会の懲戒委員会の結論に不服であれば、日弁連の懲戒委員会の方に異議申出をしていただいて、日弁連でもう一度きちんとというのかどうかわかりませんが、決定させていただくというシステムになっています。

【木村委員】そうすると、日弁連の懲戒委員会というのは残るわけですか。それはこの図に出ていませんね。

【日弁連(有吉事務次長)】それは懲戒ルートなものですから、懲戒委員会に行った後は、今までのルートと同じように、単位会の懲戒委員会の結論に不服であれば、懲戒請求人から異議の申出ができる、日弁連の懲戒委員会に行くというルートは残っております。

【木村委員】それが目に見えるといいですね。今度の案では非常に新しいアイデアを入れて、日弁連が司法改革の迅速性とか、的確な判断をきちんとしろということで、特に議決権を持った外部の方々を入れて柔軟に対応されているということも私は評価したいと思うのです。それが二段構えのようですが、これは単位弁護士会の委員会にも綱紀委員会には外部の方はお入りになるのですか。

【日弁連(川中副会長)】はい。

【木村委員】そうですね。そうすると、綱紀や懲戒については外部の方々が、単位弁護士会の委員会にも入って、日弁連の委員会にも入ったりして、最終的には市民の審査会が決定するという最初の案でしたが、ともかく市民のところでイエス・ノーを決めるということにして、その決めるのを最初事務局の方から出てきました試案、資料3−8のウ案で、相当とする議決は過半数でいいのではないかと私は思っていたのです。このように仮に3分の2というように締め付けをして、委員の御発言でも3分の2が妥当だというお考えが多いようですけれども、もしそれだとしたら、外部の方々がお入りになったところで2回もやって更に、3分の2という非常に重みのある決定をするとすれば、もう一遍そこで、それをひっくり返す形になる差戻しというのは要らないのではないか。むしろこれは綱紀審査委員会というのが非常に権威を持って、国民に開かれた司法、国民のための司法、日本弁護士連合会ということを言っている原則からしますと、Bにあるような、もう一遍ここで差戻しをするようなスタイルは必要ではなくて、混乱するだけです。また日弁連綱紀委員会に差し戻すことは何か繰り返しが起こるような気がするので、むしろ3分の2ならば、私の説では、むしろ懲戒相当ということで単位弁護士にいく。これは過半数だったらいろいろ問題があるかもしれませんけれども、3分の2だったらそれの方がすっきりするのではないか。制度設計の点からも、国民に開かれた日本弁護士連合会という観点から、国民が最後のところで綱紀審査会できちんと3分の2でやっているんだということになれば、後の方の行ったり来たりがなくなるのではないかと思うのですが、それはいかがでございますか。

【日弁連(川中副会長)】私たちは、そういうことであれば、それでお願いしますというのが先ほどの内容です。

【伊藤座長】後半の方は次の事項でやりますけれども、そういうような条件付きかもしれませんが、3分の2ということでよろしゅうございますね。

【木村委員】条件付きの3分の2です。

【釜田委員】先ほどの日弁連の御説明を伺いました結果では、3分の2は説得力を持っていると感じました。なお、私ちょっと疑問が残るのですが、先ほど中川委員がおっしゃった200から300件くらいの請求案件が上がってくるんじゃないかという予測をなさいました。日弁連も数回前の御説明のときに、数百件のものが予測されると。私はなぜそんなものが出てくるのかとあのとき以来疑問を持っているわけでありますが、もし、仮にそういうことであるとすれば、地区の弁護士会から数件ずつ上がってくる結果ですね。それをここへ全部綱紀審査会が扱うということになりますと、1年間に処理する能力という点から非常に難しいような予測ができますね。
 お伺いしたいのは1点なのですが、日弁連で今回お考えになられる中で、地域の弁護士会の綱紀委員会の横に、このような綱紀審査会を設けるということを御検討になられた上での話なのですか。私が心配しているのは、数を伺ったので、何百というものが上がってくるとなりますと、ちょっと性格が変わってくるような感じを受けたので。もし、そういうことも全部御検討になられた上で、なお機能するということであれば、議決に関しては3分の2で結構です。それだけお伺いいたします。

【日弁連(有吉事務次長)】日弁連の方では、単位会の綱紀委員会自体は二十数名の弁護士しかいない単位会から、4,000名以上の弁護士会までございまして、もともと不服の流れとしては、今、考えていたのは、日弁連の綱紀委員会に対する結論に対して、一般の方から見て、それが妥当かどうかを判断してもらおうという観点で考えていたものですから、もともと地方の綱紀委員会というのは、本当に数が少ないのと、事件がそれほどないところが多うございまして、そこまでの制度設計は予定はしておりませんでした。大きな単位会の方では、幾つかの部会を設けて、そこで主査制度を採って議論しておりますので、対応ができるのですけれども、小さな単位会では、それが精一杯という現状でございますので、日弁連としては、日弁連の結果に対して、判断していただこうと。今度新しくできた綱紀委員会の結論に対して判断していただこう、この点に主眼を置いて作ったということでございまして、先ほどのような単位会の横にという制度は考えておりませんでした。

【釜田委員】さっき200から300という予測ですが、あれはいかがですか。

【川中日弁連副会長】やり方はいろいろあると思うのですけれども、綱紀審査会の事務局が事案を整理して御説明申し上げるということとか、あるいはお一人お一人に主査になっていただいて、問題があると思うものを全体にかけるとか、部会制を採るとかという方法でやることができるのではないかと思っております。ほかの方の例でいきますと、例えばお医者さんの診療報酬の審査機関がありますけれども、あれも主査制を採って審査をしていくということで、それこそ何万件というのをやっているようですので、全体で議論していただくというのは数が絞られてくることになるのではないかと思います。だから、十分それはやり方によって、事務局がいなければなかなか大変ですけれども、そのためにも事務局を十分活用してやっていただくということになろうかと思います。

【伊藤座長】よろしいですか。あと奥野委員、田中委員、平山委員、お三方でしょうか。それでは、奥野委員から。

【奥野委員】3分の2で結構だと思います。

【田中委員】結論的には木村委員と同じ趣旨でして、かなり日弁連は今日の時点で見解を変えられたので、それだったらこの前の私の議論は訂正して、3分の2以上の多数決で、木村委員がおっしゃったような条件付きでいいのではないかと考えております。

【平山委員】私は前回、前々回、日弁連の会員の気持ちを酌みまして、意見を十分述べさせていただいておりまして、議事録を見ましても、私が時間を相当いただいてしまったという思いがありまして、あれで前回に座長が拘束力問題については取りまとめをしていただきましたので、そのことを非常に重く受け止めておりまして、特に日弁連では市民の司法というのを掲げているわけでありますから、これはやはりここで先生方がお決めいただいたことを率直に受け取るということで、執行部にもそういうお願いをしてきたわけであります。ですから、今日も具体的制度設計につきましては、「資料6−1」の1(懲戒委員会の審査に付することを相当とする議決)の議決の要件については、やはり先生方の大方の御意見が3分の2ということであれば私はそれでいいと思っておりまして、ただ、「資料6−1」の2(日弁連綱紀委員会の再調査に付することを相当とする議決)を設けるか、設けるとした場合の議決の要件をどうするかということがたたき台に設けられておりますが、私は本制度は全体としてシンプルなものの方が市民にもわかりやすいですし、落ち着きがいいのではないかと思いますので、この2の議決は設けない方がいいと思います。
 それから、先ほど大野次長の方から説明がございましたように、顧問会議でも今度の司法改革の理念というのは、事件とか事案を短時間に決着をつけていくという趣旨がございますので、いま申し上げた1(懲戒委員会の審査に付することを相当とする議決)だけの制度にするのがよいのではないかと思います。以上です。

【伊藤座長】そういたしますと、後半との関係で若干条件付きという御意見もございますが、議決要件に関する限りは、全員一致で3分の2というように承りますので、そのことを前提にして今後の作業を進めるようにさせていただきます。
 引き続きまして、先ほど木村委員からお話が出ましたけれども、ただいまの日弁連の資料にも出てまいりましたが、綱紀審査会から日弁連綱紀委員会に対して再審査、ないし事務局のたたき台では再調査でございますが、これを求める議決、これを過半数でという考え方が1つ。それはむしろ手続を複雑にするだけであって、3分の2ということを前提にして、それが成立しないのであればそこで終わりというように簡明にするという考え方の2つがあるようでございまして、具体的には本日の日弁連の資料にございます「綱紀審査会メモNO.2」というのがそれに基づいているかと理解をいたします。その点についての御議論を、先ほど来、1、2の委員の方から既に出ておりますけれども、もう少し議論を進めてまいりたいと思いますが、前回、この点について御意見を述べられました田中委員のお考えを承れればと存じます。

【田中委員】結論はさっき話したとおりなのですが、前回提案しました趣旨は、ここでは再調査になっておりますけれども、1つは事務局のイ案が、賛成者の数だけで懲戒委員会と綱紀委員会に振り分けられているのはおかしいという点と、もう一つ、綱紀委員会に戻すという点については、日弁連もそういうルートをつくっていらっしゃったから、そういうものを活かすには、どうしたらいいかということからそういう選択肢があるのではないかと考えていたわけです。再調査の場合には、一旦戻して懲戒委員会に回すという決定をしない限り、もう一回審査会へ不服の申立があれば対応せざるを得ない。もう一回戻ってくるので、行きっぱなしというのは制度設計としては具合が悪いのではないかと考えていたわけで、そういった意味では、日弁連の1枚目の案の3の(2)の「更なる不服申立はできない」というのは、制度設計の問題として整合性に欠けるのではないかと思います。
 しかし、再調査という選択肢を入れることについて問題がないかというと、これも結構ややこしい問題がありまして、この前発言した後、いろいろ考えたのですが、第1回の議決の仕方というのは非常に難しくて、日弁連のようにまずAについて出席者の3分の2以上という形で議決するとなると、戻ってきたときにはもう一遍Aについて議決するということになるわけですね。
 そういうことを避けるためには、1つの案としては、まず1回目はBで再調査を求めるか、いきなりAについて付議するかという、どちらで議決するかを決めて、もしBならば過半数が賛成した場合には、Aには入らずに戻して、その結果、もう一遍再審査することになれば、今度はBという選択肢はのけて、AとCの選択肢だけにするという形で、2回審査をすることを避けるという選択肢も考えられます。
 それから、Aについて3分の2の賛成がが得られなくて、過半数を超えたときにBにしなくてはならないという必然性もないので、決定の性質が違うわけですから、Aで3分の2の賛成が得られなかったら、それでしまいだということもあり得るわけです。
 そういった意味で第1回目の議決の仕方などを考えると、ややこしい問題があるのではないかということがひっかかるわけです。
 それから、綱紀委員会で再調査をした結果、多分、懲戒委員会に回らない限り、ほとんどすべてのケースはまたここへ戻ってくるだろうというので、事実上2回審査することになることは、こういう事例から見て間違いないのではないかと思うわけです。しかし、その点については、時間が延びて手続が繁雑になるだけだということはあるので、それについて今、岡田委員の質問に対して川中副会長が説明されましたように、綱紀委員会から委員を派遣して、不十分なところがあれば説明するとか、報告する機会を設けて審査会の機能そのものを充実させるとおっしゃった点と、審査会の機能をオンブズマン的なものから、不服申立的な形で、決定についての当否を議論するということをおっしゃったわけですけれども、そうすると、Bという選択肢は、不服申立との関連では中途半端というか、プラスアルファ的な議決になるので、これは取ってしまった方がすっきりすると思うので、綱紀審査会の性格をそういうふうに考えられるのであれば、AとCだけの方がすっきりします。審査会の位置づけを不服申立ということにかなり純化して議決の拘束力を認めるとするならば、綱紀審査会メモのNo.2でもよいという御説明を伺って、これならば、議論を混乱させましたけれども、日弁連の原案も事務局の原案もできるだけ活かした制度設計をするにはどうしたらいいかということを考えた上でもう一つ選択肢を加える必要はないのではないかと考えます。
 日弁連の方でNo.2でも構わないとおっしゃるのであれば、こちらの方が元々すっきりすると思いますので、結論的には木村委員のお考えに非常に近いのですけれども、そういうことで再調査とか再審査、差戻しについてこだわりませんので、No.2でやった方が、制度としてはっきりすればこれの方がいいと考えております。

【伊藤座長】先ほども御説明の中で日弁連からお話があったかと思いますけれども、Bという選択肢は、もともと綱紀審査会から日弁連の綱紀委員会に、再調査、再審査を求めることによって、そこで新たな事実や新たな証拠が出てくる可能性があるのではないか、そういうことも恐らく考え方の前提にあったように思うのですけれども、果たしてそういうことが実際上期待できるかという点について、さっきもちょっとお話がございましたがいかがでしょうか。

【日弁連(川中副会長)】そういう場合を私たちも実際に、先ほど私が御説明申し上げたような綱紀審査会と綱紀委員会の役割を考えますと、再審査、あるいは再調査という形で綱紀委員会で実際に調査しなければならない場合というのは、ほとんどないのではないかと思うのです。
 先ほども言いましたように、綱紀審査会は一切自ら審査をしないということであれば綱紀委員会に調査をしてください、その点を調査した上でもう一回判断してくださいということはあると思うのですけれども、綱紀審査会も自ら審査をする。それは市民の方だからできないということになるのではなくて、それは綱紀委員会に呼んでよく説明させる。質問もするということ。あるいは事務局に調査を命ずる。この点はきちんと調査をしてきてくださいということでやれば、先ほど言いましたように綱紀審査会の調査権限と綱紀委員会の調査権限と何にもその差はございませんので、綱紀委員会が強制的な調査権限を持っているわけでもございませんので、その点では、綱紀審査会が自ら調査することによって、ほとんどすべて解決、解消する。ほとんどすべてというか、全部と言っていいと思うのですが、解消すると思います。

【平山委員】今の副会長の説明のとおりだと思います。私自身は実は綱紀委員というのを2期、日弁連で懲戒委員も3期やりまして、今の制度の下では調査を尽くせるものは全部尽くしているというのが実情なのです。ですから、もう一度調査しろとおっしゃるようなケースは、ほとんど考えにくくて、むしろ日弁連の綱紀委員会の判断を、市民から見れば、これはという何かそういうところで御意見をいただけるというようなものではないかという気がいたしております。
 ですから、今の制度の下で再調査を命じられましても、なかなか再調査できるものはないのではないかいう気がいたしますので、是非、綱紀審査会の方に事務局もできますので、そこを使っていただいておやりいただくという程度の方がよろしいかと思っております。

【松尾委員】私はこの問題についてシンプルに制度設計するということ自体は賛成なんですが、考え方としては、皆さんとちょっと違うのは、日弁連のメモにあるBという仕組みは、大事にしたいなと思うのです。
 と申しますのは、先ほど御説明がありましたが、綱紀審査会が審査をすると言われましたけれども、これは日弁連の綱紀委員会とは別の視点で、しかもこれは市民だけでやるわけですから、綱紀委員会とは別の見方で審査するということが1つ。
 それから、どの程度事実関係なども含めて審査するのかというのがまだはっきりしていないというようなことであれば、日弁連の綱紀委員会の結果について、まだまだ疑問とするところがあるだろうという意見が当然そこに出てくるだろうし、あるいは3分の2以上の議決には達しなかったけれども、いわゆるかなりクロの心証が強いと思われるような意見も出てくるだろうと思います。
 したがって、綱紀審査会での審査の内容が納得できない限り、多分に疑問が残ったまま、そこで終わってしまうというのはいかがであろうかと思います。そうすると、Bという制度設計をする余地というのは十分考える必要がある。
 ついでに申しますと、議決の要件とすれば、その場合は出席委員の過半数によって決めるというのはいかがですか。シンプルに制度設計をするということは冒頭に申し上げましたけれども、賛成ではありますけれども、このBの考え方は十分に検討する必要があると思います。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。どうぞ岡田委員。

【岡田委員】私も松尾委員と全く同じで、このB案を出すについては、日弁連さんは大変な御苦労なさっただろうとお察しいたします。ここまで勇気を奮って出していただいたのを、ここで、それは要らないよというのも大変私の気持ちとしては残念だと。
 それにもまして、やはり3分の2というと、例えば15人のうちの9人が懲戒委員会に掛けるべきだと言った場合でももう終わりですね。つまり、その9人の判断というものは大多数の意見なのに、残り6人の委員の意見というものが尊重されるということに関して、私としても、松尾委員のおっしゃった割り切れないものが残るのです。やはり綱紀委員会と審査会とははっきり分けなければいけない。いろいろ説明とか何かという話がありましたけれども、それはきちんとシステムができていて、後々あと人が変わったり、時代が変わっても大丈夫だという担保があるのであればともかく、そうではないとなると、最初言われたものがだんだん訳がわからなくなっていくような感じもしないわけではないので、やはりB案というものは残しておいて欲しいなと思います。

【釜田委員】私、結論から言いますと、今回お決めになられた原案のままでとりあえずスタートするのがいいのではないかと思います。それは先ほど私、依然として数百の案件が上がってくるということにこだわるわけでございますが、これはそもそもスタート時に平山委員もおっしゃったわけでございますが、将来の高い質の法曹家を誕生させるという前提での審議に関わっておるわけでございます。その高い質の法曹家は当然のことながら、質の高い国民が支えているわけでございますから、先ほど来、不安の要素として御紹介ございました濫訴、あるいは司法裁判の遅延につながるような、ことさらに何かをやるということがあっての数百件ということがどうも予測されておりますが、それは今からの法曹養成、それから国民全体の教育もだんだんと充実していくわけでございますから、いずれそういうことがない時代が来ると思うのです。こういうところに何百もあがってくるというのが異常なわけでして、そういうことがなくなるということを前提にして、しかし、まだ予測し切れない点がございますから、とりあえずこれだけ日弁連の方で時間を費されてお考えになられた案でございますから、私は尊重したいということで、今回の案自体が、審議会の答申からもう一歩踏み出された形で充実策を講じられたということで、私の理解ではここまでは、審議会自身は求めておられたかどうか、そこの辺りがはっきりしないのでございますが、意見書を読ましていただく限りは、そこの結論ははっきりしていない。そこを日弁連の方でもう一歩踏み出されてなさったわけでございますから、私はとりあえずこれでスタートしてみて、何か将来問題があれば、そこでもう一度考えるという方法もあるんではないかと思います。

【伊藤座長】釜田委員が原案とおっしゃるのは、このBの議決を含んだ、日弁連がおっしゃっている第2綱紀委員会の議決、懲戒不相当という議決。これに対して更に不服申立を認めるという。

【釜田委員】それはそれでファイナルでいいと思うのです。さっきおっしゃった日弁連の綱紀委員会が不相当の判断をなさったら、それで終わると。

【伊藤座長】要するに、先ほどの御説明のとおりでの1枚目の方の考え方、これを支持されるという御趣旨ですね。

【釜田委員】今の段階ではこれでいく。いろいろここで考えれば、いろいろ案はあり得るわけでございますが、そこら辺へ入ってきますと、かなり混乱状態が生じますので、とりあえずこれでスタートしてみて、問題があれば、また将来の議題になるという手があるのではないかと思います。

【木村委員】私は釜田委員の意見に反対なのです。この間の顧問会議で国民にとって身近でわかりやすい司法、それからここに書いてありますように、頼もしく公正で力強い、利用しやすく速いという、そういう趣旨に沿って日弁連が極めて積極的にそれに対応した案をお考えいただいて、それでせっかくお考えいただいた中でちょっと付け加えた感じになったのです、差戻しというのはですね。私はとてもよく練れた考えではあると思いますけれども、しかし、国民の目から見ると、どうしてもわかりにくい、見えにくい、しかも、同じ組織の中で、違う委員会とは言っても、第1があって第2があったという形で、そこに戻って、過半数の場合にはそこで議決するという形で、しかも不服申立ができなくて、そこで終わってしまいという形にしますと、どこか納得できないものが残ってしまうのではないか。100年に一遍の司法改革で、大変にこれはすばらしいアイデアを出されて、国民による綱紀審査会という開かれたシステムを作り出したわけですので、これを先ほど田中委員が言っておられましたけれども、単純明快な司法のシステムという意義を、国民が一番受け取りやすく思うのではないかと私は思ったわけです。
 そこで関連してくるのですけれども、この綱紀審査会の議決の、今日お配りいただいた資料に図がございますが、綱紀審査会が真ん中にあって、3分の2の議決ということで非常に重い議決をするわけです。最初の質問は、重い議決をしてこの段階の議決が日弁連の議決になるかどうかということです。それは当然そうですね。日弁連の議決になるのですね。
 そして、○○弁護士会懲戒委員会と書いてありますが、そこに行くわけですね。その上、矢印で懲戒処分と書いてありますね。これは懲戒処分なのか、私が見たところによると、本日の日弁連の綱紀審査会のメモによると、「議決後の手続」というところに、大事なことがここに書いてあると私は思ったのですが、3の(1)のところの3行目、「通知を受けた弁護士会は、懲戒委員会にその審査を求めなければならない」ということです。ですから、矢印が上へ行って、懲戒委員会に行きます。ですから、これは懲戒処分と決まっているのではなくて、懲戒処分審査じゃないんですか。

【日弁連(有吉事務次長)】この図は弁護士会の懲戒委員会で、4つの懲戒処分の種類がございます。それから、棄却もあるのですが、それが言い渡せますよという程度の意味でして、ここに書いてあるとおり、日弁連から弁護士会に通知いたしますと、単位会の綱紀委員会から懲戒手続に付するのを相当と言われた通知を受けた場合と同じように、懲戒委員会に審査に付しますというところまでの話でございます。その後、結論が出た場合には、懲戒処分がここで出てきますということです。

【木村委員】ですから、処分と書いてしまうと、あたかも弁護士会が全くそれに拘束されて、この人を懲戒しなくてはいけないというように誤解を招きますね。これは審査に付することを相当と認めたわけですね。したがって、右の方に行かないで、こっちの右の図で書いてある方にいかないでも、綱紀審査会が3分の2という重さで懲戒相当の決定をして、ローカルな弁護士会に行っても、なおそこで懲戒処分について慎重にもう一遍審査し、調査をしまして、懲戒相当かどうかを定めるというプロセスが残っているので、これでやりますと、弁護士会の懲戒委員会によって懲戒処分が下されるという非常にストレートな拘束力を持っていくように見えますが、そうではなくて審査するわけでしょう。懲戒審査相当なのです。どうなのですか。

【日弁連(有吉事務次長)】おっしゃるとおりでございまして、懲戒委員会は、独立した委員会でございますから、そこに審査の手続にかけるということの意味でございます。そのあと、懲戒処分が出るかもしれないという、懲戒委員会が独立して判断していただくということになります。

【木村委員】国民の綱紀審査会による3分の2の議決という重みがありますから、恐らくはマスメディアその他によっては、例えば単位弁護士会がそれに反する決定をするときには、いろいろな問題にはなると思います。これと併せて明記しておきませんと、我々、この図をもらいますと、綱紀審査会で決めたことに沿って、懲戒処分までストレートに行くと思ってしまうのです。

【日弁連(川中副会長)】わかりました。それは決してそういうことではございません。そうでないということを前々から力説していたところでありますので。

【伊藤座長】ただいまの点は木村委員の御指摘のとおりだと思います。御意見が分かれているようですが、結局、3分の2で綱紀審査会の議決によって懲戒委員会に行くという、そこに達しなかったような場合、言わば過半数と3分の2の中間的な領域の意見分布になったときに、あえて日弁連の第2綱紀委員会に再調査か再審査をもう一度やると、それに対する不服申立の可否は別といたしまして、そういう道をもう一つ残しておくのが適切なのかどうか。そういった辺りのところで御意見が分かれるかと思いますが、どうぞ田中委員。

【田中委員】私も松尾委員や岡田委員のおっしゃる趣旨はよくわかるのです。ただ、そのプロセスに先ほど日弁連から説明がありましたように、綱紀審査会に綱紀委員会の方が出ていって説明したり、あるいは事務局が調査をやったりして、審査のプロセスの中に組み込んでいくということをやっていただけるならば、決議の性質として、懲戒委員会の審査に付するということのほかに、綱紀委員会の審査に付するということは、かなり性質の違う問題であって、3分の2に達しなかったけれども、過半数はあるから、当然そこに行くという問題でも、必ずしもないところがあるということを考えると、3分の2は難しいけれども、過半数くらいだったらまあもう一偏審査に回してみようかということになりかねないので、それは審査のプロセスの中できちんとやって、腹をくくって、懲戒委員会に掛けるかどうかということを、かなり重大な責任があるんだという前提で審査をしていただくとした方が締まりがあると思います。
 それから、一旦外出しの制度にしますと、さっきもお話ししましたように、日弁連のこの再度不服申立できないという案は、制度設計としてちょっと納得が得られないのではないかと思うのです。そういうことになると、審査の中を充実させて、趣旨は組み込んでいって、決定としてはAかCかに腹をくくって審査してもらうという方が、審議そのものにある種のゆるみがあった方が議論しやすいという点はあるかもしれませんけれども、緊張感を持たせる意味で、Bをカットしてしまった方がいいと思います。最初はBを入れた方が活性化するかと思ったのですが、手続的に非常に難しいのではないかと思って、それについて不服申立機関という形で純化する方針を日弁連が採用になったから、その方がすっきりすると考えるわけです。
 ただ、おっしゃるようなこともあるので、それは必ず審査の中にビルトインしてもらわないと困るという前提です。

【伊藤座長】まず中川委員からお願いします。

【中川委員】私も田中先生の意見に賛成ですけれども、先ほどからいろいろ御説明ありましたように、綱紀審査会と、日弁連の第2綱紀審査会の間でキャッチボールをしましても、何か非常に新しい事実とか考え方が出てくるか、その保障は全くないわけです。ただ、いたずらに時間だけがかかるというのと、それから綱紀審査会に二重の負担をかけることになりますね。そうすると、先ほど来出ております案件件数がどんどん増えるということになりまして、効率が悪い。迅速化という問題が1つあると思います。したがいまして、これはできるだけシンプルにして、しかし、岡田委員が言われます問題もあるわけですから、綱紀審査会の議決の中に、かなり灰色というか、そういう意見もありましたよ。それを尊重して単位弁護士会の懲戒委員会は考えてくださいよという実質的な部分を議決の中に十分盛り込んでいくということがいいのではないかと思うのです。
 これは質問なんですけれども、この議決はオープンになるのでしょうか。ならないんでしょうか。

【日弁連(川中副会長)】議決というのは、何分の何でやったとか何かですか。

【中川委員】それとその内容です。

【日弁連(川中副会長)】内容はその時点で事前公表という制度があります。

【日弁連(有吉事務次長)】今でも日弁連の、あるいは単位会の綱紀委員会、懲戒委員会の手続の結果については公表しているものがありますので、その流れからいきますと、綱紀審査会の結論についても、公表するということはあると思います。議事要旨的なものもその中には当然入ってくるという形にはなると思います。懲戒委員会手続に付するという場合については、それを公表することがあり得ると思います。

【中川委員】だから、付さない場合はオープンにならない。つまり、そのぎりぎりのところで、あと委員の方が一人賛成ならば付したというケースはどうなのかということです。細かい話で恐縮ですけれども。もしそれがオープンになるのなら、大事なところで、請求者の立場から言えば、要するに、懲戒をしてくれと言って申立てたのに、議決のときに、Cの却下か棄却となったときに、どういう理由でこうなったのだと。綱紀審査会はどういう意見だったということは知りたいと思うのです。それはできるのですか。

【日弁連(川中副会長)】それはできます。懲戒請求人には議決書を送りますから、それは全部いきます。

【日弁連(有吉事務次長)】シロになった場合に、その理由まで国民に公表するということは、今までも綱紀委員会というのは、もともと懲戒委員会の結論に至る前のものですから、それがシロだった場合については、特にそれが必要と認める場合には公表するということになっていまして、原則は公表しておりません。

【中川委員】懲戒委員会は綱紀委員会の意見を十分尊重という何かがあれば、そこで1つの担保はあるなと思ったのですがね。

【小貫委員】私は前回の検討会では田中委員の意見を聞いた上で、決議内容にはバラエティーがあってもいいのではないかというようなことを申し上げました。今日、日弁連の御説明を聞いておりまして、結論的にはシンプルなNO.2案がいいのではないかと考えております。
 前回私がそう申し上げたのは、要するに、審査会に来た案件について、事実解明が不十分であったり、あるいは事実に対する視点の当て方が違って、新しい調査が必要だという事案については、審査会で軍配を左に振っていいか、右に振っていいわからない事態も出てくるのではないか。このときのための対応を考えていく必要があるという趣旨で申し上げたつもりでした。
 今日お伺いしておりますと、当然この綱紀審査会には事実調査権限と言ったらいいのか、事実解明権限と言ったらいいのか、そういう権限は当然あるのだと。その上で日弁連の事務局、あるいは単位弁護士会の綱紀委員会の方で、いろいろ嘱託に応じたり、調査依頼に応じて十分な対応もできるということでございました。
 そうしますと、事実不明という自体は、審査会の権限の中で解消できるということになるわけですから、改めてバラエティーに富んだ決議内容の主文を設ける必要はないのではないか、つまり差戻しという事態は考えなくてもいいのではないかと思っております。
 いろいろ努力して調査を尽くしたけれども、事実不明という場合は、結局は懲戒できないということにならざるを得ないわけでして、調査で事実不明を弁護士さんの懲戒の方向に働かせることができないのは当然でございますから、そういうことを考えますと、Bという事態というのはないのではないか。私の理解だとそのように思います。
 したがいまして、NO.2の案で日弁連が制度設計をできるのであれば、むしろこの方が簡明であって、また、再不服申立という議論もやらなくても済みますので、NO.2案に賛成したいと思っております。

【佐々木委員】私も今の小貫委員と同一の見解であります。ちょっと申し上げたいのは、1枚目のペーパーでいきますと、3の(2)の②で「更なる不服申立はできない。検察審査会法32条参照」と書いてございますけれども、検察審査会で不起訴不当ということになりまして、検察庁へ返しますと、検察庁の方が再起という手続を取られて、なお不起訴処分にされた場合には、必ずこれは不起訴処分に対して不服申立ができるというのが確定的取扱いであります。したがいまして、これをなかなか検察審査会法より弱めた形で不服審査申立ができない形にするというのは、先ほど田中委員がおっしゃったような形で、外部に出しながらなかなか難しいことではないかという点が1つございます。
 それから、第2点といたしまして、審査会と綱紀委員会との食い違いでございますけれども、先ほど伊藤座長からの御質問がございましたけれども、シロかクロかわからないから、審査会では十分審議ができていないから戻すというところの言わば証拠不十分、こういうものがあるだろうかというところで川中副会長の方から、およそ考えられないのではないか。私もどうも単位弁護士会の綱紀委員会、それから日弁連の綱紀委員会の資料以外に、検事のような強制権限がないところで、証拠不十分をどうにかするという法的手段がないものですから、そうだといたしますと、そのような食違いを是正することを日弁連綱紀委員会に求めるのはいかがなものかなという気持ちでおります。
 それから、前回、田中委員がおっしゃった評価基準の違い、今、小貫さんもちょっとおっしゃいましたけれども、この評価基準の違い、日弁連綱紀委員会と綱紀審査会と違う場合どうするのかという問題がありますけれども、これも法的な評価の問題ですので、ここは綱紀審査会の方で腹をくくっていただいてやっていただくという以外にないのではないか。法解釈という規範の問題になりますから、そういう感じでおります。
 したがいまして、第1点の問題については、検察審査会法32条のようにやると、機動性を欠いて、迅速性を欠いて、キャッチボールになるじゃないか。
 第2点については、強制捜査権限がない綱紀委員会に戻すということの実益がないし、先ほどの話では事務局の方でバックアップが綱紀審査会にできる、これでやっていただいた方がいいんじゃないかと考えますので、シンプルな2ページのNO.2でお願いしたいなと、このように考えております。

【伊藤座長】奥野委員はいかがでしょうか。

【奥野委員】正直言って非常に悩んでいるという言い方はおかしいのですが、両方の意見、松尾委員、岡田委員の御意見と、田中委員、木村委員、中川委員、小貫委員、佐々木委員の御意見、それなりに説得力があると思うんです。ちょっと決めかねているというのが率直なところです。
 私自身の印象では、綱紀審査会という外部委員だけから成る会議をつくっておきながら、しかも3分の2以上の議決があった場合以外は、綱紀審査会の権限を事実上認めないと言いますか、とりわけ綱紀委員会が過半数の意見がありながら、しかし、3分の2を下回っているということで、その場合に、綱紀審査会の過半数の意見を無視するということに日弁連がするということは非常に私としては違和感を感じる決定だというのが1点でございます。
 2点目、これは木村委員が特に言われたこういう日弁連の第2綱紀委員会に流すようなやり方は、極めて単純さに欠けるという御意見なんですが、私は率直に言うと、そこは余り関係ないのではないかと思っております。
 それはどうしてかと言いますと、検察審査会の方に同じような仕組があって、検察審査会ではこういう再審みたいなものを認めているわけです。仮にこれを外すと、弁護士の方は再審を認めないでいて、検察審査会の方だけ再審があるのかという、ある意味ではまた複雑さを増すという面もあって、どちらが単純かというのは、それほど単純な議論ではないのではないかというのが私の率直な印象であります。
 一番私自身が悩んでいるのは、先ほどから田中委員がおっしゃっている日弁連の綱紀委員会にもう一遍戻したからといって、どういう新しい議論が出てくるのだというところで私は非常に悩んでおりまして、勿論、判断のところでは、先ほど小貫委員がおっしゃったように、多分違いはあるのだろうと思うのです。そういう意味で、言わばせっかく外部の方を頼んだのだから、判断が違うならばその判断を優先すべきではないかというのも、私は非常に一理ある考え方で、どちらかというと、そちらに近い意見を私自身は持っているのですけれども、他方で、判断をそこまで言い出しても切りがないし、調査のところではもう限界に来ているだろうという意見はおっしゃるとおりなので、率直に言って私は皆さんの御意見に賛同します。

【松尾委員】少数意見を述べましたので、その立場から現時点の考え方を申し上げます。私は、先ほど申し上げましたように、日弁連の綱紀審査会メモのBの考え方があってもいいのではないか。そういう余地も拘束力を持たせた形であってもいいのではないかということを申し上げました。しかし、皆さんの御意見と、もう一つ、日弁連の説明の中で言われました綱紀審査会の審査の中で、日弁連綱紀委員会の詳細な説明や審査会事務局の調査などで疑問点に応えていただく部分がありました。
 ですから、この綱紀審査会で疑問点やその他、十分に審査できるような制度設計をしてほしい。十分な審査ができるような制度設計にしてほしいということを前提条件にいたしまして、皆さんがおっしゃるように、AとCとの考え方に変えることも可能です。それはこの問題だけで時間を取るわけにいきませんので、意見を集約するということを考えて、あくまでも前提条件付きでAとCの議決を認めるということです。

【岡田委員】最後ですけれども、中川委員の考え方というのを私は採用したいと思うのです。それはどんな形に採用するかというと、15人のうちの9人が懲戒委員会に掛けるべきだという、その事実を何か今までの統計だとお一人の方が何回も綱紀委員会に掛けられてというのがありましたね。ああいう場合に、生かすような形を取っていただきたいと思うのです。
 そうすれば、審査会の3分の2には満たないけれども、過半数以上の人の意見というものが後で生きてくるのではないかと思いまして、もしそういうことができるのであれば、私も皆さんに合わせてという感じで、やはり条件を付けるということです。

【伊藤座長】わかりました。そういたしますと、松尾委員、岡田委員も、御自身の御意見はBの議決を生かすということですが、しかし、全体のことを考えればしかるべき手当をするということが前提でBの議決というのはなしでCだけにするとおっしゃっていただきましたので、この場での大方の御意見としてはそちらにまとめたいと思います。
 もちろん、そのことの関係で、綱紀審査会の調査権能を強化するとか、3分の2の議決に到達しなかった場合でも、それはそれなりの重みでございますので、それを過半数は超えているということで何か生かせる道があるのかどうか、その辺りは大変難しい問題があると思いますが、検討する余地はなくはないと思いますので、そういった趣旨でこの場では一応考え方としては、A、Cの議決に限って、Bの議決はしないということにとりまとめたいと存じます。
 そういった御議論を踏まえてですけれども、この綱紀懲戒制度につきましては、かなり改正しなければいけない点が多くあるように思います。そこで、いろいろな相互関係なども整備しなければいけませんので、法制的に整合性のとれた制度とする必要がございますので、法制面の検討につきましては、事務局で更に関係各方面と調整をしながら進めて、その結果については当検討会で適時に報告していただくということにさせていただきたいと思います。
 それでは、大分時間を取りましたが、次に弁護士法72条の問題に入りたいと思います。
 72条の問題につきまして、前回に引き続き事務局資料5−2の検討のたたき台(案)では、「弁護士法第72条ただし書きを、例えば『この法律及び他の法律に別段の定めがある場合は、この限りではない。』などと改正することはどうか。」というようなことでお示しをしておりますが、これも前回、かなり御意見をいただいたように記憶しております。この点についてなお御意見、特にこういうことで掲げるのについての反対の御意見というものがあれば、承りたいと思いますが、いかがでしょうか。
 趣旨を明確にするということで、このようなたたき台(案)の考え方を採用してよろしいですか。

(「はい」という声あり)

【伊藤座長】それでは、そのようにさせていただきます。
 引き続きまして、報酬規定の会則の必要的記載事項からの削除の問題に進みます。
 まず、前回、日弁連から、事務局資料6−2の公正取引委員会作成の「『資格者団体の活動に関する独占禁止法上の考え方』の公表について」の言及がございましたので、その点に関連して事務局の説明をお願いいたします。

【植村参事官】私から御説明をさせていただきます。
 ただいま座長からお話がございましたように、資料6−2と申しますのは、昨年の10月に公表されました公正取引委員会作成の「『資格者団体の活動に関する独占禁止法上の考え方』の公表について」という資料でございます。
 ポイントのみを御説明いたします。
 弁護士会を含む資格者団体の定める報酬規定に関する公正取引委員会の考え方は、この資料の5枚目から始まりまして、右肩に<別添>と打ってございますが、「資格者団体の活動に関する独占禁止法上の考え方」の中に記載されております。その2ページの第2の1を御覧ください。ここに「1 報酬に関する活動について」という標題が掲げられておりまして、その次の3ページの(1)の②を御覧いただきますと、独占禁止法上問題となる場合といたしまして、「会則に資格者の収受する報酬に関する基準を記載することが法定されていない場合において、標準額、目標額等、会員の収受する報酬について共通の目安となるような基準を設定すること」が挙げられております。
 一方、めくっていただきまして、4ページ目の(2)をごらんください。そこに「独占禁止法上問題とならない場合」の①といたしまして、報酬に関する情報を統計処理し会員に提供すること、②といたしまして、原価計算や積算について、一般的な方法を作成して、一般的な指導を行うことが挙げられております。ただし、①につきましても、②につきましても、会員間に報酬についての共通の目安を与えることのないものに限るとされております。
 前回事務局資料として委員の皆様方に配布いたしました弁理士報酬についてのガイドブックや、税理士業務報酬算定に関するガイドラインは、この②に該当するものと思われます。
 私からの御説明は以上でございます。

【伊藤座長】前回、奥野委員から、日弁連に対しまして、数点の御質問がございまして、それに関連して、日弁連からお答えがございましたが、なお、それに付け加えることがあれば日弁連からお願いいたします。

【日弁連(永尾副会長)】それでは、同じく副会長の永尾ですけれども、私の方から若干補足をさせていただきたいと思います。
 前回の検討会におきまして、弁護士報酬規定に関して、日弁連の意見を述べる機会を与えていただいてありがとうございました。本日は少しだけ補足させていただきたいと思います。
 弁護士報酬について議論をいただく際に、是非お願いしたいと思いますことは、検討委員の皆様御自身が、あるいは御家族、御友人の方が現実に法的な問題を抱えたり、または、法的なトラブルに遭遇して弁護士に相談したい、または依頼したい、こういう具体的な場面を想定していただいて、そのときに何らかの弁護士報酬の目安、もしくは参考となるものがあった方がいいかどうか。そういう観点から御議論いただければ、と考えております。これまで多くの市民の皆さんにとって、弁護士は近づきにくいとか、敷居が高いとかと言われてきましたが、その大きな原因の1つに、「弁護士に頼むといくらかかるの分わからない」ということがあったと思います。
 先ほどの顧問会議のアピールにもございましたけれども、私たちは弁護士に対するアクセスをより容易にするという観点で、目安もしくは参考になるものが、具体的な場面で、市民の皆様が必要とされるのではないかと考えております。
 そこで私たちは、現在の弁護士報酬についての標準規定の中で、最低、例えば「10万円以上」という条項を削除する。あるいは、市場における競争制限的な効果を持たないものにするように改正作業を進めて行きたいと考えております。そのとき、当検討会での皆様の御議論を十分踏まえる。また、多くの市民の皆様から御意見をいただきながら、より一層透明度の高いものに改善する。そういう努力を尽くしていきたい、このように考えております。
 今、座長の御指摘ではございましたけれども、直接のお答えの補足ということではないのが大変申し訳ございませんが、私どもとしまして、これまで一度も司法を利用したことのない市民、企業が弁護士に相談若しくは依頼をする。そういう場面を頭に描いていただきながら議論を進めていただければということを切にお願い申し上げまして、日弁連からの補足ということでお願いしたいと思います。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。ただいまの事務局それから日弁連・永尾副会長からの御説明に関しまして、何か御質問がございましょうか。

【木村委員】今、副会長からお話があったのですが、弁護士に頼むといくらかかるかわからないという不満があるということを指摘されましたが、今までは要するに、目安という形でずっと来ていたわけですね。それでどうして不安に思っていたのですかね。弁護士事務所に聞くなり何なりすれば、これはこうこうこうなっていますよという説明をする義務があるし、また、することができわけです。ですから、何かちょっと矛盾しているような印象を持ったのですが、なぜなのでしょうか。

【日弁連(永尾副会長)】いろいろ原因、理由はあろうかと思いますが、弁護士会としては、それなりに説明をする努力、パンフレットを作ったり、それなりの努力はしていると思いますが、何しろ弁護士が偏在をしていますので、ある意味では非常に弁護士を知らない人にとっては、報酬の前の段階で、どこに行っていいかわからないという状況もあるわけで、弁護士会というのはもっと遠いという存在だという現実がある。そこをどう克服するかというのも顧問会議のアピールの中にも入っているわけですので、いろいろ原因があって、御指摘の矛盾は表面的には私もあると思うのですが、現実はなかなか難しい問題、要するに、弁護士と国民の間の距離がかなり遠い現実をどう埋めていくのかというのが弁護士会の大きな課題の1つであるとは考えています。

【木村委員】今までの日常的な弁護士業務の中で、弁護士の先生方は、クライアントが来たときに、こうこうこうなっていますということを最初に言う責任も義務もなかったのですか。

【日弁連(永尾副会長)】最近は、弁護士報酬の契約書をつくるその前提として、こういうものになっていますという弁護士会がつくりました標準規定をお見せしながら、それこそプレゼンテーションをして契約合意を得るというようにしています。それが十分ではないということで、この指摘にもなっているわけです。

【木村委員】そういう意味では、目安ということで、今までのものが機能していたわけですか。

【永尾委員】一部機能してきたことは事実だと思うのですが、国民全体にとって十分機能していないのをどうするかということが、ここで大きな問題になっているのではないかと考えております。

【木村委員】機能していないのでしたら、それはなくなっても全く同じ状況ということになりますね。

【日弁連(永尾副会長)】一部は機能してきたと思うのですが、十分でないというところに問題の深刻性があると。それはやはり遠い存在であるということをどう埋めるかということ。

【木村委員】もし、機能してなかったのなら、なくても全く同じですね。

【日弁連(永尾副会長)】全然機能していないとは考えていないわけです。

【伊藤座長】引き続いてどうぞほかの方からも。

【岡田委員】消費生活センターで相談を受けていて、最近弁護士さんの方へ誘導することがとても多いのですが、やはり費用が高いということはまず消費者が言いますし、それと弁護士会で今決まっている標準規定というのは、それ以下で費用を取ってはいけないという感じですね。目安ではなくて、あくまでも従わなければならないという感じです。そうすると、中に大変正義感の強い弁護士さんが消費者に対して安くしてあげようという感じでやるときに、すごくこそこそと悪いことをやるような感じでやられるのですね。あれはおかしいと思うのです。そういう面で自由であって、その中で妥当なものというのは、会で決めるというのではなくて、何らか決め方があるのではないかと思うのと、現実にあの決まりは守られていないのではないか。突然事務所に飛び込んできたとか、これは大変難解な事件であるという場合は会則に従っているのかもしれないのですけれども、ほとんどはそうではないのではないかと思っています。ですから、ああいう基準というのは要らないのではないかと思います。

【平山委員】この問題については、前回時間がなくて、全く発言いたしておりませんので、少し、私の意見を申し上げさせていただきます。
 率直に申し上げれば、報酬に関する立法の歴史をみてみますと、決して弁護士保護のためのものではなく、依頼者である国民・市民のための制度として立法されてきたと思っております。そしてまた、現在、この規定を弁護士法から削除しなければならない立法事実があるのかは、私としては大変疑問に思っております。依頼者と弁護士間の「契約自由の原則」を拘束しない、単なる「目安」としての「標準」を示すものであれば、規定があった方が、国民・市民の司法アクセスに有用であると信じています。しかし、規制改革委員会の意見があり、これを受けて内閣の閣議決定まで行われている実状があり、更に司改審の意見書がある以上、報酬規定を会則の必要的記載事項から削除することは避けられないと思いますので、最終的にはこの事務局案で進めていただくしかないと思います。ところで、前回、奥野先生のお話を聞いて、実は私自身目からうろこが落ちると言いますか、なるほどと思ったことがございます。その点について申し上げますと、これまで、学生とか修習生と話すときに、私は「己の魂の生活と仕事の一致」ということを言ってきました。例えば刑事弁護ですと、何と言っても人権の擁護が基本だと。民事弁護ですと、紛争の予防、解決で社会の平和に貢献することが基本だというようなことを弁護士の哲学として言ってきました。そうすると、彼らの質問は、報酬はどうなのですかと聞かれるのです。そういう意味で、我々が弁護士の使命とか奉仕の精神の面に力点を置きすぎて、報酬問題と真正面から向き合ってこなかったのではないかとの思いがいたしまして、この前、奥野先生から弁護士の仕事は1つの弁護士委任契約と見れば取引であり、経済活動ではないかとご指摘をうけて、更に、中川先生も以前同様のことをおっしゃっていたと思いますけれども、そういう面について我々は、もうちょっと考えなければいけない時期に来ているのではないかと思いまして、特に私自身としては、我々は目安ということを言っておりますけれども、ご指摘を受けてみると我々のための目安になっていたのではないかという心配をするわけでございます。
 そういう意味では、ここで我々としては、これまでの報酬規定が市民とか依頼者の方の真の目安になっていたのかということを本質的に、これから議論していく必要があるのだろうと思っております。そして、この意見書の司法アクセス拡充というところにこの問題が取り上げられていますのは、これはやはりこれまでの報酬規定に正当性があるのか、合理性があるのかを問い直して、かつ透明度を高めて、きちんと作成するようにと要請されたものであり、そこは我々は真剣に受け取っていくべきだと思います。
 私は、その報酬規定が合理性があり、正当性があるものであれば、それが市民や依頼者の目安になることは、憲法第32条の裁判を受ける権利をサポートすることになると思うわけであります。弁護士報酬がきちんと正当性があって、合理性があるものであれば、それは、市民の裁判を受ける権利を守ることになると思うのです。「市民の裁判を受ける権利」を守るものとしては、積極的な意味で言いますと、法律扶助制度がありますけれども、それと同じような働きをこの報酬規定が果たすことになると思います。
 私自身は、仮に弁護士法上から報酬に関する規定が削除になりましても、真に市民の目安となる報酬規定は我々は努力して作らなければいけないと思います。その場合に、奥野先生がおっしゃったように、情報の非対称性という問題がありまして、我々だけで作ると、やはり思い込みがあったりする可能性があるのです。そういう意味で、外部の方にきちんと今までの統計等を示して、弁護士の仕事が他士業とは違いまして、なかなか見込みがつかないとか、多様でございますので、そういうこともよく述べまして、検討していただく。そうすると、私はこの意見書の趣旨は市民の方から見て合理性、正当性があるものは是非作りなさいよ。ただし、あなたたちが手前勝手に作ってはいけませんよと。こういうことではないかと思いますので、そういう意味で、この意見書に沿って進めるということであれば、削除していただいて結構だと思います。ただし、我々が3学期に正当な合理性を持った目安規定を出してご検討いただくことになりますので、そういうときに、奥野先生をはじめ、諸先生に是非御指導いただいて、こういうのはいいということをご指導いただきたいなと思っております。

【松尾委員】削除の問題と弁護士報酬の透明化、情報化の問題は、私は密接に関係があるけれども、別の問題だと思うのです。削除は、今、平山先生が言われたように、私もこれは削除は時代の流れ、あるいは規制改革の問題などからいっても避けられないと思われます。
 ところで、透明化、情報化の問題ですが、一般の国民が依頼者となって弁護士を訪ねたときに、どのくらいの弁護士費用がかかるのだろうかという不安感、これは確か思いますし、現実にそれが弁護士に対するアクセス障害になっているということもそうだと思います。
 したがって、何らかの情報を依頼者だけでなく、一般の国民に伝えることは必要だと思います。それがいわゆる「報酬の目安」という言葉を使うこと自体、公正取引委員会などの見解などもありまして、目安ということが使えるかどうか、微妙なところがあると思いますが、いわゆる目安的な情報を開示して、透明化を図り、不安感を除くということは重要かと思います。
 ただし、情報開示ということに関連して申し上げますと、現行の日弁連の報酬規定、これの内容を見ますと、一部には大分わかりやすくなったと言われておりますが、まだまだ一般の依頼者にはわかりにくい部分があると思います。
 ここに資料がありますが、簡易な算定方式とありますけれども、経済的利益の額というのは何だということです。一般にはほとんど理解できていません。例えば損害賠償事件ならば、損害賠償の請求額かなと思われる程度のことは分かりますが、それ以外、全く金銭的に算定できないような事案の場合に、これのどれに当てはまるのだということを考えてくると不安になることもあります。この経済的利益の額、昔はこれは訴額と言っていました。訴額とか経済的利益というのが、一般の人には本当にわかりにくい。何のことかわからない。これを説明されても理解はできないという状況ではないかと思います。それから、着手金、報酬金にしても、この言葉自体もわからないだろうし、ここに書かれている数字、パーセンテージで書いてありますが、この数字が果たして妥当かどうかということも判断できない。それから、先ほど出ております最低額10万円の問題もそれが妥当かどうかもわからない。
 それから、これはあくまでも日弁連が基準として出している報酬規定でありますが、これが全国的に見て、これを基にしてそれぞれの単位会が本当に新しい、そのローカル性も勘案して作られているかどうか。聞くところによると、どうもそういうことではなくて、やはり日弁連の基準の報酬規定というか、これをほぼ援用してやられているというような実態があります。
 そういうことになってくると、それは単なる基準ではなくて、日弁連が全国一律にこういう規定でやれというようになっているのではないかと考えられます。そういう部分は手直ししていかないと、公正取引委員会が言う問題が起きてくると考えております。
 だから、技術的な問題もあるから、専門家の御意見をお聞きになって新しく見直していかれるのでしょうが、まず整理しますと、依頼者が非常にわかりやすい規定にする。くどいようですが、目安というかどうか、言葉の問題にも引っ掛かるのですが、要するに、透明化、情報化ということを大事にして、わかりやすくする。それは仕組みであり、金額の相当性であり、その金額を決めた理由は何だというようなところまで徹底して御説明願い、理解ができるようなものにしていかなくてはならないということで、全面的に見直し、改定された方がいいのではないかと思います。一般の国民に理解できる何らかの規定を設ける必要はあるという考え方です。

【伊藤座長】わかりました。中川委員どうぞ。

【中川委員】私は、弁護士報酬の問題は、恐らく弁護士改革の中で一番重要な問題だと思います。と言いますのは、利用者の側から見ますと、例えば健康保険と比べていただくとよくわかるのですが、病気になったときに、健康保険というものがある。そうすると、自分の負担すべき金額は大体どれくらいだろうなという目安が立つのです。あとは健康保険でカバーしてくれる。安心して治療が受けられると。大体そういうことになっております。社会的な病気であります紛争の場合は、補償みたいなものが全くございません。結局弁護士さんに相談をしなければいけないのだけれども、そのときに、いくらくらいかかるのだろうかということが非常にわかりにくいわけです。これはある意味では仕方がないのです。そんなもの一生にあるかないかわからないことを最初から全部透明化するということは不可能だと思いますけれども、だから、報酬の問題だけではないのですけれども、特にずばりと聞いて、大体先生幾らになるのでしょうかと言って、このくらいになりますというような物事ではございませんし、極めてその辺が難しい問題なのです。だから、ある程度目安みたいなものがないと、利用する側からは判断できないという問題は私はあると思います。
 さっき岡田委員も言われましたように、今の報酬規定というのは少し堅苦しくなっておりまして、弾力性がない。だから、これだけかかるのですよと言われますと、そんなものですかということにならざるを得ないのです。大きな企業の場合は、御存じのようにバーゲニングパワーもございますし、いろいろな情報も持っておりますから、これは高いとか安いとか、だめならば別の先生にお願いするということができますが、個人ではできません。したがいまして、もう少しわかりやすいものにしていく必要がどうしてもあるなということが私の基本でございます。
 多分、余り偉そうなことは言えませんが、弁護士さんに私個人で払ったことはないのですが、企業としてお金を払ったのは、この中では一番私が多いのではないかと思っておりまして、100億円を超えるくらいのお金を内外の弁護士さんに払っております。払うときに本当に苦労いたします。それが妥当な報酬なのかどうかということは、大変苦労いたします。
 もう一つ申し上げたいのは、1つは、何らかの目安。それがさっき平山委員も言われましたように、利用者との間で納得できるようなフォーミュラーと言うか、シンプルでわかりやすいものにすべきだというのが1つです。
 もう一つは、報酬の選択肢ということがあるのです。これは何かと言いますと、弁護士報酬には3つくらい種類がありまして、物事に応じていくらくらいですよという目安で報酬を決める場合。時間制、かけた労力に対して支払うというタイムチャージと言っております、そういう報酬。もう一つは、今、アメリカなどでも大分普遍的になっているようですが、成功払い報酬、コンティンジェントと言っております。最初は一銭もお金は要りません。成功すれば回収したお金の25パーセントとか30パーセントとか、かなり高率のものはいただきますが、それ以外は一銭も要りませんという非常に賭けの要素の強い報酬体系なのですが、その3つくらいがございます。
 それぞれ長短がありまして、目安の場合は、お互いにリスクがあるのです。頼む方も頼まれる方も、弁護士さんにしてみれば、ものすごく手間がかかった場合は損をします。依頼者の場合は、簡単にできた場合は、これは依頼者が損するという関係になりまして、リスクをお互いとらなきゃいけない。その代わり金額の目安がありますので、予算化できると言いますか、予測がやさしいということが言えます。
 タイムチャージの場合は、これは予測ができないのです。どれくらいかかるかわからない。しかし、時間辺り幾らというのがございますから、非常に合理的で納得性が高いという長所があります。
 成功払い報酬の場合は、ものにもよりますけれども非常に頼みやすいのです。お金はとりあえずいりませんから、とにかく頼みやすい。その代わり高額報酬を取られるというデメリットもありまして、それぞれ一長一短はあるのですが、どれを採用するかということについては、これは依頼者と弁護士さんとが十分話しあえるような選択肢と言いますか、私はこの事件についてはこの報酬体系でやりたい、この事件についてはこれでやりたいというような選択肢を残した報酬目安、そういうものを是非お考えいただきたいなと思っております。
 特に企業の立場から言いますと、選択肢が多ければ多いほど依頼しやすいと。あるいは予算化しやすい。いろいろメリットもございますし、それから個人の皆さんも、自分の事件の性質に応じて一番納得できる報酬体系を選べるというメリットがありますから、1本でなくて、幾つもの選択肢を残すということを是非お考えをいただきたいなと思っております。

【伊藤座長】この点、まだ御意見があると思うのですが、ちょっと時間の関係もございまして、とりあえず当検討会の任務という意味では、報酬規定を会則の必要的記載事項から削除すると、この点は御意見は一致していると思いますので、この段階でそれを確認させていただきます。その上で、目安その他がどういうものであるべきかについては、弁護士会と公正取引委員会で協議をなさるでしょうから、それにお任せをするとして、更に今、皆さんの問題意識にございましたような、特に依頼者に対する報酬情報の開示という問題につきましては、日弁連で十分御検討いただきまして、年明けの検討会でまた報告をしていただくという取扱いでよろしいでしょうか。

【奥野委員】できるだけ短くお話ししますけれども、目安をつくるということに関して、皆さん一言で目安とおっしゃっているのです。そこに非常に大きな問題があって、要するに、日弁連が目安をつくるということに非常に大きな問題があるのだということを理解していただきたいのです。
 つまり、弁護士報酬に依頼人の側から目安があるといいなと。これは非常によくわかります。私は目安があった方がいいと思います。でも、その目安を日弁連さんがつくると、まさに情報の非対称性というものがあるために、非常に高い目安をつくる可能性がある。しかも、ある種の、こう言ったら失礼な言い方かもしれませんけれども、非常にカルテル的な組織がそういうことをしようとすると、カルテル的な目安をつくる可能性がある。それでもって非常に値引くわけですが、値引いてやったという形で結果的に非常に高い価格を付けてくる可能性もあるわけです。
 そういう意味で言うと、日弁連が目安をつくるべきではなくて、だれかが目安をつくるならば、第三者がつくるべきだと。例えば債券とか国債などは格付け機関というのがありますが、医者などもそういう方向にだんだん動いているわけですが、要するに、弁護士さんでも非常にいい弁護士さんもいれば悪い弁護士さんもいるわけで、悪い弁護士さんに高い価格を取られるのは非常に悲惨ですが、いい弁護士さんだったら、いいお金を払ってもいいかもしれない。
 中川委員がおっしゃったように、いろいろお金の掛かるケースもあります。だから、そういう意味で、まさに多様な世界、弁護士報酬というのは極めて多様にならざるを得ない世界だと思うのです。そこに目安みたいものをと言われても、なかなかそれは難しいわけで、そうではなくて、ある種の格付けを第三者がして、この弁護士はいい弁護士だけれども、比較的高いですよとか、この弁護士さんはちょっと問題があるかもしれないけれども、安い料金でやってくれますよとか、そういういろんなことを第三者の立場でおっしゃっていただく。それを我々利用者がそういう情報を使う。そういう形でいくべきであって、日弁連さんが目安をつくるということに関しては、極めて警戒的であるべきではないかと私は思います。
 その点だけはリマークしていただければと思います。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。それでは、一応先ほどのようなとりまとめにさせていただきます。ちょっとこの辺りで5分くらい休憩を取らせていただきます。

(休 憩)

【伊藤座長】再開いたします。続きまして、特任検事経験者に対する法曹資格の付与の問題に入ります。
 まず事務局から事務局資料5−14検討のたたき台(案)について説明をお願いいたします。

【植村参事官】 それでは、資料5−14に基づきまして「特任検事経験者に対する法曹資格の付与 検討のたたき台(案)」について、私から説明をさせていただきます。
 司法制度改革審議会意見書は、第3の8におきまして、隣接法律専門職種の活用等の検討と関連して、「特任検事、副検事、簡易裁判所判事の経験者の有する専門性の活用等を検討し、少なくとも、特任検事へ法曹資格の付与を行うための制度整備を行うべきである。」としております。
 そして、司法制度改革推進計画では、IIIの第3の7の(2)におきまして「いわゆる特任検事、副検事、簡易裁判所判事の経験者の活用等を検討し、少なくとも、いわゆる特任検事経験者に対して法曹資格を付与するための所要の法案を提出する(平成15年通常国会を予定)。(本部及び法務省)」とされております。
 前回、座長から御説明をいただき、委員の皆様の御了解をいただいたところでございますが、推進計画上、平成15年通常国会への法案提出を予定しております特任検事経験者に対する法曹資格の付与の問題を先行して議論していただくことになりました。
 それ以外の副検事、簡易裁判所判事経験者の活用についても、当検討会で議論していただく予定にしておりますが、いつごろ検討していただくかにつきましては、今後、関係機関の御意見も伺いながら、座長と御相談させていただきたいと考えております。
 そこで、たたき台(案)に戻っていただきますが、第1にありますように、「弁護士法5条を改正し、いわゆる特任検事経験者に対して法曹資格(弁護士となる資格)を付与すべきと考えるが、どうか。」という点について御議論をお願いしたいと思います。
 第2に「特任検事としての経験年数を要求するか。要求する場合、何年とするか。」について御議論をお願いしたいと思います。
 これは現行の弁護士法5条を御覧いただきますと、1号から4号までが列挙されているわけでありますが、1号の最高裁裁判官の職にあった者は別格といたしまして、その他の類型につきましては、いずれも1つの職で、または2以上の職を通算して5年以上の経験を要求しております。そこで、特任検事経験者についても、経験年数を要求するのが相当ではないか。その場合、何年とするのが相当かという問題意識でございます。
 第3に「その他の条件を要求するか。」という論点であります。これは隣接法律専門職種の活用の場面におきましては、具体的には、司法書士に対する簡易裁判所での訴訟代理権等の付与や、弁理士に対する特許権等の侵害訴訟の代理権の付与が問題となったわけであります。いずれも意見書において、信頼性の高い能力担保措置を講ずることを条件としていたわけであります。
 これに対し、特任検事につきましては、意見書上の記載では、「少なくとも、特任検事へ法曹資格の付与を行うための制度整備を行うべきであると異なった記載をしているわけでありますが、いわゆる特任検事経験者についても、何らかの条件を設定すべきかどうかについて御議論をいただきたいと思います。
 以上でございます。

【伊藤座長】特任検事と申しましても、それにつきまして、皆様の方で必ずしもそういうものについてよく知識などがないようにも思いますので、どういう人が、どういう経過を経て、特任検事に任命されているのか。また、特任検事の仕事というのはどういうものなのか、こういったことなどにつきまして、法務省から説明をお願いできますでしょうか。

【法務省(黒川司法法制課長)】法務省司法法制課長の黒川でございます。よろしくお願いします。
 まず、お手元にお配りさせていただいております資料につきまして、前回も同じような資料を配布させていただいておりますが、若干誤植がございまして、今日配布させていただいたものを確定版として使用させていただきたいと思います。
 資料は1〜6までございますが、このうち資料1が総括的な説明を記したものでありまして、資料2以下は、特任検事選考方法、任官者、現在員数、退職者数のデータや参考資料になっております。
 まず、全体の御説明の前提として、検察庁の人員構成を簡単に御説明いたしますと、検察庁という組織は、ごくおおざっぱに申しまして、検事と副検事と検察事務官、この3つの職種に就く者たちで構成されております。全国に検事は約千四百名、副検事が八百数十名、検察事務官が八千数百名おります。そして、特任検事は、約千四百名おります検事の中で四十数名存在しているものでございます。
 まず特任検事とは何かと申しますと、法律の条文の中で、特任検事という用語が出てくるわけではございません。検察庁法上、検事の任命資格として、幾つかのパターンが法定されておりますけれども、そのうち1つのルートを経て検事に任命される者を特任検事と呼んでいるに過ぎません。具体的に申しますと、大多数の検事は司法試験に合格し、司法修習を終えた後に任命されておりますけれども、このルートのほかに、3年以上副検事の職にあった者が特別の試験に合格して検事に任命される場合がございます。こちらのルートで任命された検事を一般に特任検事と呼んでいるわけです。
 したがいまして、司法試験に合格して修習を経た検事と、副検事等を経て検事に任官したものとは、任命のルートが異なっているだけでございまして、両者の間には法令上の権限は勿論、担当する職務内容においても、何ら変わることはありません。全く同じ存在でございます。
 次に、どういった方々が、どういった過程を経て特任検事になるのかを御説明いたします。
 まず、配布させていただいた資料の一番最後のページ、資料6をごらんください。この左上の方に紫の網掛けで示した部分、左の欄外に検察事務官と書いてございますが、特任検事のほとんどの者がこの検察事務官出身でございます。これらの者がこの図で言うピンクの大きい矢印で示しております副検事選考試験に合格し、また、同じようにこうして副検事になったものが、同様の矢印で示した検察官特別考試という試験に合格して特任検事になるというのがおおまかな仕組みであります。
 順を追って少し詳しく御説明いたしたいと思いますが、前後しまして恐縮ですが、資料2、これは5枚目から資料2になりますが、この中の検察事務官が特任検事になるためには、副検事にならなければなりませんので、その副検事になるための選考手続をまず御説明します。
 資料2を1枚めくっていただきまして、中段に(参考)と書いてございますが、ここに副検事選考試験の受験資格と選考概要が記載されています。
 まず1番の「受験資格」の(2)に、「3年以上政令で定める2級官吏その他の公務員の職に在った者」とございますが、ここの意味するところを端的に申し上げますと、大学を卒業して、国家公務員試験に合格して検察事務官になった者であっても、一般的に申しまして、10年以上検察事務官としての仕事を勤め上げなければ、そもそも副検事選考試験の受件資格を得ることはできないということを意味いたします。
 そして、副検事選考試験は1枚めくっていただきまして、「2 選考概要」にありますとおり、筆記試験、口述試験がございまして、難易度も相当に高く、最終合格率は平均24.6パーセント、約4人に1人の合格という形になっております。この辺のデータはこの資料の終わりの方にいろいろ付けてございますので、後ほど御覧いただければと思います。
 ちなみに、この副検事選考試験の合格者の平均年齢は30代後半ということになります。この副検事ですけれども、どういった仕事をしているかと申しますと、本来は比較的法定刑の軽い罪を扱う区検察庁、簡易裁判所に対応しております区検察庁の検察官の職のみにこれを充てることとされており、具体的には道路交通法違反等のほか、窃盗、横領など、簡易裁判所管轄に係る事件の捜査・公判に従事しております。しかしながら、実際にはこれにとどまらずに、地方検察庁の検察官の仕事も相当担当させており、詐欺であるとか業務上横領であるとか、覚せい剤取締法違反等の地方裁判所管轄に係る事件の捜査公判にも従事しておりまして、現実には本来検事が担うべき地方検察庁の事件も、その約7割は副検事が処理しているのが実情でございます。
 さて、このような副検事の職務を3年以上経験して、初めて特任検事となるための検察官特別考試の受験資格を得ることができます。特別考試についての詳細は、また戻っていただいて、資料2の1枚目の第2に記載してございますが、これも筆記試験と口述試験がございまして、特任検事選考試験の科目は憲法、民法、商法、刑法、刑事訴訟法、選択科目としての民事訴訟法等と従来の司法試験と同一の科目のほか、検察の実務という科目がございます。
 検察の実務という科目は、検察官としての高度の実務能力を問うもので、事件記録に従って、起訴状や不起訴裁定書を起案するという司法研修所の2回試験の検察科目と類似した試験を実施しております。試験問題の例についても、資料として添付しておりますので、後ほど御覧いただきたいと思います。
 この検察官特別考試の合格率は資料の後ろから6枚目の一覧表に記載してございます。右上に別添5と書いてございますが、この合格率の平均は約10パーセントであって、合格者数はおおむね年間一桁台であることがおわかりいただけると思います。
 ちなみにこの検察官特別考試の合格者の平均年齢は40代後半となっております。このように特別考試は極めて合格の困難な試験でございまして、司法試験に勝るとも劣らない難易度の高い試験ということができると思います。
 このような狭き門の特別考試に合格した者が特任検事に任命されていくわけでございますが、これは繰り返しになりますが、司法修習を終えた検事とは任命資格が異なっているに過ぎず、両者の間には法令上の権限はもちろん、担当する職務内容についても全く変わりません。
 したがって、当然のことですけれども、検察庁の中の次席検事や地検支部の支部長検事といった管理職にも登用されておりますし、検事正すなわち地方検察庁のトップに登用された者も存在しております。
 このように特任検事は長年の検察事務官等の経験、三年以上の副検事としての経験に加え、副検事選考試験、検察官特別考試といういずれも難易度の高い試験により選抜されたものであって、これにより特任検事が司法修習を終えた検事と同等の能力を有することが担保されているということが言えます。
 また、これに加えまして、先ほども申し上げたとおり、特任検事は検事に任官した後、修習を終えた検事と全く同じ職務を行っておりまして、例えば検事としては人事訴訟などの民事事件の訴訟遂行の経験も積むことが通常でございますし、また、一般の平素の事件処理の中で刑事事件の中でも不動産売買を巡る詐欺事件であるとか、競売入札妨害事件であるとか、あるいは大企業を舞台にした種々の企業犯罪を巡る事件、脱税事件などの財政経済事件など、民事の実体法や手続法に関する高度の法的識見を要する事件も多数処理しております。
 そして、検察という立場は全面的な挙証責任を負わされ、訴訟手続全般について立証を全うする立場にございますので、このように相当程度民事事件に関しても習練を積んでおりますし、司法修習を終えた検事、もちろん、弁護士とも対等にわたりあえる能力や実務経験を有していると考えております。
 また、戻っていただきますが、最後の資料6に書かれていますように、検察事務官時代、あるいは副検事時代、それぞれその年次に応じて種々の研修が行われております。このようなさまざまな試験制度、あるいはオン・ザ・ジョブ・トレーニング、こういった継続的な一連の能力担保制度によって、検事として全く一人前でございますし、司法修習を終えた検事と同等の能力を身に付けているものと考えております。
 以上、簡単でございますが、特任検事についての御説明を終わらせていただきます。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。
 それでは、この問題につきまして、日弁連からの発言がございますので、川中副会長お願いいたします。

【日弁連(川中副会長)】私たち日弁連はこの問題を考えた場合、一番最初に思いましたのは、法曹というのは何も弁護士だけを指すのではなくて、裁判官、検察官、弁護士を意味するということで、これは審議会意見書にもそうはっきりとうたっているわけです。審議会意見書は特任検事に法曹資格を付与するための法制度の整備ということを言っているわけですので、どうしてこの検討会は弁護士資格だけを検討することになって、判事資格は検討しないのかという点が不思議でありますので、私たちは弁護士資格のみならず、判事資格も併せて検討されるべきだろうと思いまして、お配りしていますペーパーにはそういう観点から意見を書かせてもらっております。
 その次に先生方の御注意を引きたいと思いますのは、法曹は、今度の審議会意見書では、あるべき法曹として法の支配の直接の担い手であるし、国民の社会生活の医師としての役割を負い、中でも弁護士は基本的人権を擁護し、社会正義を実現するとの使命に基づき、国民にとって頼もしい権利の守り手であるとともに、信頼し得る正義の担い手とならなければならないと書かれておりまして、私たちもこれにいたく共鳴しまして、これを目指そうということになっているわけであります。そのような法曹というものの理念像と比較してどう考えるべきかということが問題になるのだろうと思いますが、現行制度では法曹資格は司法試験の合格と司法修習という2つのものを要求しているわけです。
 特任検事は先ほどの黒川課長のお話にありましたように大変能力が高く、修習検事と同じように仕事をしているということがありますけれども、その法曹資格を付与する原則である司法試験合格と修習を経たという2つの要件とも欠いているわけであります。
 のみならず、現行法は特任検事の身分を保持したまま、法曹資格を付与することができないのかというと決してそうではありません。司法試験に合格さえすれば、修習をしなくても、修習をするということになれば、特任検事の身分を離れなければならないわけですけれども、司法試験に合格すれば、修習をしなくても法曹資格を取得する道があるわけですので、今、問題にする法曹資格は、結局、司法試験を受験して合格しなかったか、始めから司法試験を受けることをあきらめていたか、そういう特任検事の方の法曹資格問題だと整理できるわけであります。
 現行法を見ますと、現行法では、弁護士法の5条2号で検事に5年以上在職した者、法曹資格を取得した後、5年以上検察官の仕事をした者は、司法修習を経なくても弁護士資格を与えるとなっておりますので、5年の期間は最低必要だろうということ。
 それから、能力担保措置が司法試験に合格していないということでありますので、一律に能力はあるものとして擬制していいのかという問題がありますので、少なくとも現行司法試験を全部受けるということまでは必要ないにしても、司法試験の短答式、論文式、口述試験の3つありますけれども、最後の口述試験程度は受けていただくということが必要なのではないかと思います。
 判事資格の場合には、司法修習生の資格を取得してから10年以上検察官の仕事をやれば、司法修習を経なくても判事資格を取得できるということになっていますので、判事資格の場合には10年という資格を必要とするということで考えるべきではないかと思います。
 もっとも弁護士法の規定は資格取得後5年以上、ないしは10年以上の検察官としての在職ということが要件でありますけれども、長年特任検事として勤務なさってきた方が、それまでの経験を全然評価をしないで、口述試験の合格の後更に5年、更に10年というのは酷な話だろうと思いますので、司法試験、口述試験の合格後の前後を問わず5年ないし10年で弁護士ないし判事の資格を与えるべきだろというのが日弁連の見解であります。
 特任検事は恐らく検察官希望者がなかなか増えない時期に、特例としてこういう措置を検察庁内部で設けられていたんだろうと推察いたしますのて、これから司法試験の合格者1,500人、あるいは3,000人と合格してくる中で、検察官希望者も相当増えていくということが予測されるわけですので、ちょうど現行司法試験が廃止が予定されております平成23年以降は、つまり法科大学院を基幹とする法曹養成制度で3,000人の司法試験合格者を出す時期になるということになるわけですが、その時期以降は特任検事という制度そのものを廃止すべきではないかと思います。
 以上です。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。ただいまの事務局、法務省、日弁連の説明ないし御発言に対しまして、質問がございましたらお願いいたします。
 特に質問という形では御発言ございませんか。岡田委員どうぞ。

【岡田委員】今の御説明ですと、特任検事の難しい試験の合格が、平均年齢40歳後半ということで、それから5年やって弁護士というと、もうかなりいいお年で、そこから御自分で独立して弁護士事務所というのも、ちょっと考えられないのですけれども。法務省としては、この特任検事が弁護士になった後、どういうことをお考えなのか。その辺がお聞きできれば、もう少し私の中でイメージとして、弁護士会の意見も理解できると思うのですけれども。

【伊藤座長】黒川さん、何かございましたらお願いします。

【法務省(黒川司法法制課長)】確かに特任検事になる時期が50歳近くであります。その後、ここで御議論いただいて、相当程度の在職が必要となりますと、資格を得るのが50台半ばくらいでしょう。それぞれの方々がどういうお考えで、仮に資格を与えられたときに、その資格を生かされるかどうかは何とも申し上げられませんが、1つ申し上げさせていただきたいのは、特任検事の出身庁あるいは出身地、これは全国的に相当分散しておりまして、検察庁の組織は全国8つのブロックに分かれておりますが、それぞれのブロックにほぼ均等に分散しておりますので、地方で住居を持たれたり、地方で活用したいというお考えの方が多いように見受けられます。その意味では、都会地で活躍したいというよりも、地方で国民の皆様のリーガルサービスに従事したいと考える者が多いのではないかと想像しております。

【伊藤座長】そういうイメージということですけれども、いかがでしょうか。ほかに御質問はございませんか。
 それでは、審議に入りたいと思います。先ほど事務局から御説明申し上げましたたたき台の(案)につきまして、順次御意見を承りたいと思いますが、弁護士法5条を改正し、いわゆる特任検事経験者に対して法曹資格(弁護士となる資格)を付与すべきと考えるがどうかと。この点につきましては、いかがでしょうか。御意見、あるいは御異論のある方はございますか。

【平山委員】その前にたたき台を、さっき川中副会長が判事のことをおっしゃったのですが、これは弁護士に絞ってお出しいただいたのは、説明を受けたような気もするのですが、これは何でしたか。

【植村参事官】川中副会長からもお話がありましたように、通常、法曹資格という言葉を使う場合には、弁護士となる資格だけではなくて、弁護士、検察官、裁判官、いわゆる法曹三者となる資格の意味で用いられることが多いのではないかと思っております。
 ただ、今回こういうたたき台(案)とさせていただきましたのは、実質論で申しますと、この審議会の意見書が、「III 法曹制度を支える法曹の在り方」の中で、まず法曹人口の問題を取り上げ、法曹人口が少ないという議論があった上で、「第3 弁護士制度の改革」の中で、弁護士制度の改革についていろいろ意見が述べられておりまして、その中の7で隣接法律専門職種の活用等ということで、弁護士さん以外のいろいろな士業の方が取り扱うことのできる法律事務の範囲を広げようという話が出てきております。これも弁護士不足を補う方策として位置づけられていると理解しております。それに続きまして、8といたしまして、企業法務等の位置づけというのが出てまいりまして、この後御議論いただきます司法試験合格後に民間等で一定の実務経験を経た人に対して司法修習を経ずに法曹資格を与えようという話がございますが、その次に、今、議論していただいております特任検事等の経験者の有する専門性の活用等が挙げられておりまして、その中で特任検事への法曹資格の付与ということが言われているわけでございます。意見書の説明文を御覧いただきましても、この8の企業法務等の位置づけのところは、「隣接法律専門職種の活用等の検討と関連して」と書いてございます。ということで、議事録を見ても、審議会においては、法曹資格の中身が何なのかという御議論はなかったようでございますが、議論の流れとしては、弁護士さんの数が足りないという現状に対して弁護士さんの数を増やすとともに、隣接の方の取り扱うことのできる法律事務の範囲を広げましょうとか、それから、弁護士さんとなる資格を与える範囲をもうちょっと今より広げてもよろしいのではないでしょうかという文脈で出てきた話ではないかと受け止めておりまして、そういう意味で弁護士さんとしての活躍を念頭に置けばよいのではないかというのが実質的な理由でございます。
 法制の面からも、現行の裁判所法を見ていただきますと、判事、判事補になるためには、原則として司法試験と司法修習の双方を経ることが必要とされており、その例外は大学の先生など極めて少ないわけでございます。特任検事経験者というのは司法試験と司法修習のいずれをも経ていないわけでございまして、こうした点もあってから、弁護士となる資格で足りると考えた次第でございます。

【平山委員】わかりました。それでは、意見の方でございますけれども、私はこの特任検事の方々に我々よりずっと優れた方がおられることも承知いたしておりまして、この問題自体についても、臨司意見書のときも大分議論されて、伊藤元検事総長が何か書いておられましたけれども、非常に残念だとお書きになっているような、大分前からの課題でありますことを承知いたしております。私は法曹資格、特に弁護士資格について、意見書のとおりに与えるということでよろしいと思っております。ただ、本日、日弁連の川中さんが言いましたように、制度論として考えると、何か能力担保措置が必要ではないかと、特に弁護士倫理の関係、民事弁護についての研修を考えたらどうかと思います。口述試験を受けろというのは酷かとも思いますが、そのようなことを考えるというのは制度論として1つあるのかというのがございます。私は、弁護士会が弁護士倫理や民事弁護に関する研修をきちんと設けて、それをやっていただくようなことは将来考える必要があるのかという気がいたしております。
 もう一つは、非常に難しいのは、恐らく検察庁の方としては、これは暫定的なとはお考えになっていないのではないかと思いますけれども、司改審の意見書そのものは、長期的な展望としては統一したリーガル・プロフェッション化というものを目指していると思うのです。ただし、短期的には今の方々をちゃんと活用しなければいけないということが書かれたような気がいたしますので、そういうことを考えると、それも長期的にはロースクールが発足いたしまして、充実したものになって、正規の検事が続々登場されるときには、見直していただくのも1つの考え方かと思っておりまして、我々がとやかく言うことではないかもしれませんけれども、この意見書が示しているとおり長期的に見ればリーガルプロフェッションとして高い質をみんなで維持しようという考え方を検討していただくことが必要と思っております。
 この意見書で、特任検事については、法曹資格を与えることを前提に書かれていますので、そのことには特に異論はありません。

【伊藤座長】松尾委員、どうぞ。

【松尾委員】私も結論においては、特任検事経験者に対して法曹資格を付与するということは賛成です。今後の法曹については私が言うまでもなく、法科大学院を中心にした法曹養成ということが主流になってくると思いますけれども、それだけではなくて、いろんなルートからの法曹資格の付与ということも考えておく必要があるのではなかろうかと思います。特に特任検事の場合は、先ほどの説明にありましたように、レベルの高い特別考試の試験を通って、しかも実務的にも修習検事と同等の仕事をおやりになっているということですから、多分に法曹資格を付与される状況にあるのではなかろうかと思います。
 もう一つ、弁護士になったときに、どこで活動するのだということについては、弁護士の少ないと言われている地方において活躍されるということですから、その点も考えますと、法曹資格の付与というのは当然考えられるのではないかと思います。
 ただ、今、平山委員もおっしゃったのですが、やはり検事ですから、刑事には非常に強いわけですけれども、民事においてはいろいろな関与はされているのでしょうが、やはり民事に強いと必ずしも言えないと思います。しかし、法曹資格を得て弁護士になるということになれば、民事も刑事もやるというフル規格の弁護士が要請されるわけですから、弱いと言われている民事の部分をどうしなければならないかということを考える必要がある。司法書士の簡裁代理権ですが、それに当たって、能力担保措置が考えられました。私もその検討会に委員として関与いたしましたが、あれほどのがっちりした能力担保措置は必要ではないと思いますけれども、何らかの補完措置は必要ではないかという考え方を持っております。具体的に補完措置を何にするかということについては、試験もあり、研修もあろうかと思いますし、また、日弁連が提案されている司法試験の口述試験も選択肢の1つであろうと思いますが、現実的にはやはり、研修が最適ではではないかというのが、今考えている補完措置であります。研修をどういう形で、だれが主体となってやるか、どのくらいの期間でやるか、いろいろな検討すべき問題があろうかと思いますが、いずれにしても、関係者がいろいろなメニューを出し合って、どういう形のものが一番理想的な補完措置かということをお決めになることが必要かと思います。
 2番目の特任検事としての、経験年数については、私は5年くらいが妥当であろうと考えます。
 以上です。

【伊藤座長】どうぞ、岡田委員。

【岡田委員】弁護士さんというのは、圧倒的に民事を得意となさる方が多くて、刑事問題に関しては余り得意じゃないという方がどうも私どもの感覚としては感じるのです。そういう面で特任検事の方が弁護士になるというのは、私たちも刑事問題、今、もう民事だ刑事だと2つはっきり分けられないというのが圧倒的に多いものですから、その辺でそういう弁護士さんがいると使い勝手はよくなるだろうなというのが1つ。
 先ほどありました司法試験、ロースクール構想、あれが成立したとしても、日本全国に平等に法曹人口が増えるとは想定されないということもちらちら聞いておりますけれども、そのように考えると、弁護士の数が少ないようなところにもちゃんといらっしゃるという部分ではいいことだと。私たちにとっては大変心強いと思います。
 あと、民事の方が弱いということですけれども、よくわからないのですけれども、刑事事件をやるについても、基礎として民事というのはやはり必要ですから、研修をなさればそれでいいのではないかなと思います。

【伊藤座長】それでは、特任検事経験者に対して法曹資格、弁護士となる資格を付与すべきであるという点はよろしゅうございますね。それから、5年という点はどうでしょう。

【木村委員】一番最初に法曹資格ということが出てきましたが、これはタイトルとしては、特任検事経験者に対する弁護士資格の付与としてしまうとどこかまずいですか。それに関連してお伺いしたいと思ったのは、先ほどのお話をいろいろお伺いしていまして、基本的には特任検事への法曹資格付与に賛成なわけですけれども、法曹資格とした場合に、常識的に裁判官も含まれるという参事官のお話でしたが、裁判官の任官と、あるいは裁判官の定年との絡み合いで年齢的な問題があるのかどうか。そういう点で、例えば最高裁の方でこういう形で1つの、割に積極的な給源として法曹資格に判事というのが入ってくると、いろんな問題が生ずるのか。そこら辺のところはどうでしょうか。

【植村参事官】最高裁の方がどう受け取るかというのは私が答えるわけにまいりませんので、その前のところでお答えしようかと思いますけれども、なぜ私どもの方で「法曹資格(弁護士となる資格)」と書いたかというと、意見書には法曹資格という言葉しか使ってないものですから、それを勝手に弁護士資格しか与えないという意味で、弁護士資格と最初から書くのは気が引けたものですから、こういう表現にさせていただいたということでございます。
 繰り返しになると思いますが、年齢の問題というのは、個別個別のその方の問題なのでちょっと置いておくとして、法制度として見た場合に、今の裁判所法の考え方は先ほど申しましたように、大学の先生を除いては原則として司法試験と司法修習を経ることを必要としているわけでございます。裁判官というのは、法廷が仕事場でございまして、その法廷の場で、民事事件であれば原告、被告、それぞれに弁護士さんが付くことも多いわけでございます。それから、刑事事件であれば検察官、そして弁護人とともに被告人がいるわけでございまして、そういう法廷の場において、双方の立場をにらみながら仕事をしていくわけでございますが、そのためには、司法試験合格後、生の法廷体験を含む司法修習を出発点として経験を積んでいく、それが原則として必要であるということで今法律はでき上がっておりますので、そこに特任検事経験者に資格を認めようとするときに、何か特任検事の方に裁判官になっていただく特に大きな立法動機があればともかく、先ほど説明いたしましたように、特任検事経験者に対する資格の付与につきましては、弁護士人口の問題があって、それを補うものとして、隣接法律専門職種の方と同じような意味で、弁護士さんとしての活躍を期待しているというのが私どもとしては自然な意見書の読み方だと思いましたので、とりあえずは弁護士資格を考えておけばよいのではないかということでございます。

【伊藤座長】この点は実質を議論いたしますと、いろいろお考えがあると思いますが、とりあえず私どもの任務ということで、弁護士資格、勿論、最終的には弁護士法の改正になるわけですから、弁護士資格であることは当たり前なのですけれども、こういうことで御了解いただければと思います。
 それから、5年ということも平山委員からも、あるいは日弁連の川中副会長からもお話が出ましたが、これも大体そんなところでよろしゅうございますか。
 それから、その他の条件につきましては、試験をするという考え方と、研修、特に民事というお話が出ましたが、民事を中心にして研修をということがございましたが、その点、もう少し議論をしていただいた方がいいかと思いますので、その他の条件の内容が、そもそもそういうものを要求するかどうか、要求するとすれば、その内容をどうするか。これについては次回引き続き御議論をいただくことにしたいと思います。
 本日の予定ですと、次に民間等における実務経験を経た者に対する法曹資格の付与の問題があるのですか、これは時間を取りますので、大変恐縮ですが、これは次回に送らせていただくことにいたします。次に関係機関タイムということで、去る6月22日付で一部の新聞報道もございましたが、裁判官の人事評価制度についての人事評価研究会の研究状況について、最高裁から、これは金井さんになるのでしょうか、説明をお願いできればと存じます。

【最高裁(金井人事局参事官)】最高裁の参事官をしております金井でございます。
 今、座長からも御紹介がありましたように、先日、裁判官の人事評価に関しまして、一部新聞報道がされました。この新聞報道ですけれども、現在、最高裁事務総局に設置されております裁判官の人事評価の在り方に関する研究会、そこで検討を重ねている事柄でございますので、この場をお借りいたしまして、検討状況について簡単に御説明させていただきたいと思っております。
 この研究会、3月12日に開かれました検討会の場におきまして多少御説明したところなのですけれども、最高裁は昨年の6月に出されました司法制度改革審議会の意見を受けまして、裁判官の人事評価制度の整備に取り組むことといたしたわけでございます。
 その一環といたしまして、委員7名、内訳としましては、裁判所外部の委員5名、高裁、地裁の裁判官各1名ずつ、合計7名による研究会をつくりまして、検討を重ねてきたということでございます。
本日お手元に資料といたしまして「裁判官の人事評価の在り方に関する研究会の協議の経過」というものを配らせていただいております。昨年の9月7日に第1回の研究会を開きまして、2枚目をごらんいただきますと、第19回研究会を7月1日に開きまして、第20回研究会は7月16日に予定されているという審議の経過をたどってきております。
 この研究会ですけれども、おおむね月2回のペースで裁判官の人事評価の在り方全般につきまして、調査検討が進められてまいりました。
 第8回研究会以降でございますが、今年に入りましてからは、各論点について、どういう制度をとったらいいかということについて研究が重ねられてきたということでございます。
 この研究会では、この経過にも出てまいりますけれども、例えば第1回の研究会では、裁判官の人事評価制度の現状と課題について、幹事の方から説明をさせていただいております。そのほか、諸外国の裁判官の人事制度、その下における評価制度につきまして、第3回、第4回の研究会で幹事から報告を受けたり、研究会の委員の中に外国の制度について研究されている方がおられますので、そういった方々から報告を受けたりということもしております。そのほかに公務部門における人事評価制度の実情、あるいは民間部門における人事評価制度の実情につきまして、第2回の研究会、あるいは第5回の研究会で有識者の方々からヒアリングを行うということもしてまいりました。
 第6回の研究会でございますけれども、第一線の裁判官から意見聴取をするということもいたしました。また、裁判官がこの問題についてどう考えているかということにつきましては、こうした直接の意見聴取のほかに全国の高等裁判所で意見交換会というのが実施されたわけでございますが、そこで意見を聴取するということもいたしましたし、最高裁事務総局に直接裁判官の方から意見を寄せていただくということもいたしました。そういったことも参考にしながら、この研究会の協議が進められてきたわけでございます。
 また、こうした協議の状況につきましては、最高裁のホームページにおいて公開してきたところでございます。
 現在の状況ですけれども、来週火曜日になりますが、7月16日に開催される予定の研究会で報告書がとりまとめられまして提出されるという段取りになっているわけですが、その最後の詰めの作業がされているという状況になっております。
 こういうことで研究会、次回7月16日の第20回の研究会でその報告の内容がまとまります。当検討会との関係では、次回7月22日に会議が予定されておりますので、その場で人事評価の在り方に関する研究会の報告の内容につきまして、詳しく御報告させていただけたらと思っております。
 以上でございます。

【伊藤座長】ありがとうございます。何か今の御説明につきまして、御質問等ございますか。木村委員どうぞ

【木村委員】3回研究会と4回研究会ですが、独仏英米と、これは制度的に非常に進んでいる国ですね。いつも我々大陸法とか英米法とか、そういうところを参照してやっているのですが、例えば北欧だとかアジアとか、そういうことについての調査というのは、一応はあるのですか。それとも、このときにはそういうことをやったのだけれども、それだけで終わったのでしょうか。

【最高裁(金井人事局参事官)】この研究会では、ここに記載させていただきました独仏英米、この4か国の調査結果だけを前提にして、議論していただいております。

【木村委員】我々、アジアの中におけるいろんなコンタクトがあって、そういうアジアの中での発想とか、いろいろ日本も近隣諸国に学ぶべきところも結構あります。また、遠いのですが、北欧などは非常にユニークな制度をいろいろ採っていますので、我々が法律制度というと、必ず独仏英米になってしまうのですが、最高裁として今後は非常に広範な視野から、いろいろな調査をするという方向性を出していただければなという気がします。いつも英米独仏ですものね。それは納得できるのですけれども、でも、ちょっと発想を変えていただかないといけないのではないかなという気もするのです。

【最高裁(金井人事局参事官)】この研究会でどういう制度について研究をし、検討の素材にしていこうかというところを委員の皆さん方にお諮りいたしまして、典型的な場合として、公務部門でどうしているのだろうか、民間部門でどうしているのだろかということと、諸外国ということで差し当たり我が国の法制度に重要な影響を及ぼしているだろうと思われる4か国をやってみましょうという経緯でもってさせていただいております。

【伊藤座長】そういうことでございますので、御指摘は今後是非生かしていただければと思います。
 それでは、今、金井さんから御説明ございましたが、7月16日に研究会の答申が出るということでございますので、次回のこの検討会で内容の報告をしていただきまして、それについて御質問や御意見をちょうだいしたいと考えております。
 先ほど次回に回しました議題が大きな議題でございますので、本日はこの辺りで終了したいと思います。
 次回は7月22日午後3時から午後5時まで、本日に引き続きまして、先ほどの特任検事経験者に対する法曹資格の付与に関する条件の問題と、全部次回送りにいたしましたけれども、民間等における実務経験を経た者に対する法曹資格の付与につきまして議論をしていただくことになります。
 また、直前に申しましたが、最高裁からの研究会の答申内容についても、報告をしていただくことになります。
 もう一つでございますが、8月29日午前10時から12時までというのを一応お時間を取っていただいております。本日始める段階ではその点をどうするかということは未確定だったわけですが、若干積み残しが出ましたので、これは開催せざるを得ないと思います。誠に暑いところ恐縮でございますが、もう確定的に御予定いただければと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本日は長時間にわたりまして、どうもありがとうございました。