① 事務局からの説明
第7回検討会事務局配布資料6−3から6−8に基づいて説明がなされた。
② 日弁連からの説明
第7回検討会日弁連配布資料「企業法務等の位置付けについて」に基づいて説明がなされた。
③ ①②の説明に対して、次のような質疑応答がなされた。
○:企業法務等の「等」として、説明では国会議員や公務員が出てくるが、企業に続くものとして、国連など国際機関や各種財団などの職員が対象となることも考えられるところ、「等」の内容についてどのように考えているのか。
●:あくまでも「等」であり、また法律的な知識・経験の中でも社会的に高度の専門性を有していると評価できるものを活用していくという観点からなされた提案であるため、最初から何かを除外して議論を行うつもりはない。企業以外の社会的な実体を備えた団体についても、①業務内容が高度の専門性を有すると評価できるか、また、②評価できるとして実際に資格の付与を行う認定の対象とすることが可能か、を併せて考えていくべきであろうと思っている。ただ、資格付与の候補に該当する者が余りに少ない場合、類型的な評価をすることはなかなか難しいのではないか。
○:制度を作る場合は、将来的に「等」の中に何が入ってくるかについて、ビジョンを持っていることが必要になるのではないか。企業法務等の企業について、日本国内の企業を想定しているのか、例えば、日本企業が海外企業と合併して本社が海外移転した場合で、外国本社で企業法務に携わる場合も考えられるが、このような場合は含まれるのか。
●:確かに、企業の国際化がこの議論の背景にある。しかし、日本の弁護士資格を付与するという制度についての議論であり、評価する対象はあくまでも日本の法体系に関連する実務経験であることが前提ではないか。
○:企業に法務部が置かれることは既に定着しているところである。我が国の企業数は200万から300万社、あるいは580万社あるといわれており、いわゆる上場企業は3,500社程度あるが、ある調査結果によると、その中で企業法務部という独立の部門を持っている企業、あるいは企業法務に専任している職員を配置しているとする企業は約1,100社あるようである。他の調査結果とを併せると、日本では7,000から8,000人が法務マンとして企業法務に携わっていると考えられる。企業法務に携わる者のうち、司法試験合格者は15社17人であり、むしろ社内弁護士の方が25社39人と多い。また、米国やイギリスなどのロースクールを卒業して外国の弁護士資格を取得して企業法務に携わっている者は、297社227人在籍しているとされる。基本的に、法務部が持つ機能は紛争を未然に防ぐ予防法務に力点が置かれている。その具体的な事務としては、①法律相談、②国内及び海外の契約の交渉の立会い・契約書の審査・作成などの契約に関する事務、③いわゆるコーポレート・マター(株主総会や取締役会関係業務)、④コンプライアンス業務(独禁法や各種業法について社内に知識を普及し現場で問題を生じないようにする業務)がある。その他、M&A、大型プロジェクト、不祥事を起こした場合の法的サポート業務(危機管理)などがあり、以上が企業法務における事務の九割を占めているといわれる。そして、残りの一割を占めているのは、訴訟対策である。訴訟については、弁護士に対してアウトソーシングされている。企業法務を歴史的に見ると、昭和40年代の高度成長期における企業活動の範囲が拡大したが、弁護士の数が少なかったため、企業が自前で育てようとしたことが企業法務部の始まりとされている。その後、訴訟実務を行う弁護士と、いわゆる予防法務を始めとするビジネス・ローを行う企業法務部の役割の棲み分けがなされるようになったといわれている。企業のニーズの面をいうと、一般的な予防法務は既に行うことができるところが多いため、知的財産権・金融・IT・渉外関係・税務関係・環境関係などの専門的知識を必要とする問題に対して適切なアドバイスができる弁護士が必要となっている。しかし、そのような弁護士となると数も限られ、かといって企業が自前で育てると時間と労力がかかるという事情があるようだ。
○:事務局の説明も含めて、弁護士はフル規格でなければならず、また、司法修習を経ることが必須であるという考え方が基本にあるようである。しかし、医師を例にとると外科医、内科医等と細分化・専門化が進んでおり、弁護士に関しても同様に法的紛争は多様になっているのであるから、今後もフル規格であることにとらわれていると、専門性を有する弁護士を生めないこととなるおそれもある。昨今のグローバル化、生活の多様化の中にあって画一化した弁護士ではなく、多様な経験を持つ弁護士が出てくるようにすることは大切なことではないか。
○:細分化・専門化された職業として医師が例に挙がったが、医師も最初から専門化・細分化されているのではなく、出発点となる医師国家試験では幅広く医療全般にわたる知識が問われている点に注意すべきである。もっとも、昨今の社会的な変動と、弁護士に求められる社会的役割に変化が生じている状況で、今後ますます多様な経験と知識を持つ弁護士が企業法務に進出するようになることは大きな意義があると思われる。
○:「一定の実務経験」と言えるための要件として、日弁連の意見は「相当程度の経験を有する弁護士の在籍する企業の法務部門において、その弁護士の指導の下で10年以上の法律実務経験を積むことと」としているが、実際に企業法務に在籍している弁護士の数を考えると、非現実的な要件となってしまわないか。
□:現在企業法務に在籍している弁護士の数は相当少ないが、将来的には司法試験に合格して企業法務に入る者の数が増加することが考えられる。そして、資格付与を行うための具体的条件として研修を示したのは、現在の企業法務ではどれだけ長く在籍していたとしても、弁護士資格の取得のために必要と考えられる弁護士倫理や刑事弁護についての業務を経験せず、またその情報が入ってくることもないと思われるからである。そのような状態で弁護士資格を付与することには無理があるのではないかという趣旨から、一定のトレーニングを受ける必要があることを説明した。
○:法曹資格を付与するに当たり、事務局の説明にあった地位(ポスト)ではなく事務に着目するという点が気になるところである。企業法務といっても、企業によって業務の内容も異なると思われる。したがって、例えば企業法務を何年経験すれば資格が付与されるべきかという議論の前に、やはり、その者ごとに検討し、何らかの制限をかける必要があるのではないか。
●:企業法務といっても企業の規模、法務部の組織の態様、取り扱われている業務の内容に違いがあることはご指摘のとおりであり、その中で対象となる業務の内容を明確化し、そして該当する候補者が司法修習を経ずに法曹資格を付与するに値するかは、個別に判断することとして議論を進めてはどうかということを説明したものである。
■:その点を含めて次回検討会に議論の続きを行いたい。