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法曹制度検討会(第7回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり


1 日 時

平成14年7月22日(月)15:00〜17:45

2 場 所

永田町合同庁舎第4共用会議室

3 出席者

(委 員)
伊藤 眞(座長)、岡田ヒロミ、奥野正寛、小貫芳信、釜田泰介、木村利人、佐々木茂美、田中成明、中川英彦、平山正剛、松尾龍彦(敬称略)

(説明者)

伊礼勇吉(日本弁護士連合会副会長)
金井康雄(最高裁判所事務総局人事局参事官)

(事務局)

大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、植村稔参事官、小林徹参事官

4 議 題

(1)企業法務等の位置付け−いわゆる特任検事、副検事、簡易裁判所判事の経験者の活用等を検討し、少なくとも、いわゆる特任検事経験者に対して法曹資格を付与すること(副検事、簡易裁判所判事の経験者の活用等を除く。)
(2)企業法務等の位置付け−司法試験合格後に民間等における一定の実務経験を経た者に対して法曹資格の付与を行うための具体的条件を含めた制度整備
(3)「裁判官の人事評価の在り方に関する研究会報告書」について

5 配布資料

【事務局配布資料】
資料7−1 法曹制度検討会 今後の開催予定

【日弁連配付資料】

資料企業法務等の位置付けについて
資料会社法務部−第八次実態調査の分析報告−
 (別冊NBL no.63(抄))

【最高裁配布資料】

資料裁判官の新たな人事評価制度のために−研究会報告の概要−(平成14年7月16日裁判官の人事評価の在り方に関する研究会)
資料裁判官の人事評価の在り方に関する研究会報告書(平成14年7月16日裁判官の人事評価の在り方に関する研究会)

6 議 事

 議事に先立ち、事務局から、事務局配布資料7−1、日弁連配布資料、最高裁配布資料等について確認がなされた。

(1) 企業法務等の位置付け−いわゆる特任検事、副検事、簡易裁判所判事の経験者の活用等を検討し、少なくとも、いわゆる特任検事経験者に対して法曹資格を付与すること(副検事、簡易裁判所判事の経験者の活用等を除く。)

 第6回検討会に引き続き、第5回検討会事務局配布資料5−14「検討のたたき台(案)」の3の「その他の条件を要求するか。」について、次のような意見交換がなされた。(○:委員、●:事務局、□:日弁連、■:座長、△:最高裁。以下、同じ)

○:特任検事に対して弁護士資格を付与するにあたって、試験を実施するのも一つの方法であると思うが、試験については誰がどのように実施するか等の問題があると思う。特任検事については、弁護士となる資格が付与された後、弁護士登録までに弁護士としての倫理研修を行うことを中心としたシステムを作る必要があると考える。

○:弁護士としての倫理研修は必要だと思うが、弁護士法5条に記載された他の特例とのバランス上、研修を資格付与要件とか登録要件にするのではなく、弁護士になった後に受けるものとすれば足りると考える。

○:単位弁護士会において新規登録者に対して実施している研修を充実させ、弁護士になった後に、倫理研修を実施することで足りると思う。

○:資格を付与した後、登録までに研修を義務付けて登録要件とするような仕組みは、制度的に分かりにくいのではないか。制度的には、研修等の「その他の条件」は必要ないと考える。

○:今までに出会った特任検事は、普通の検事に劣らない資質・能力を備えていたと思う。弁護士倫理の点については何らかの措置が必要だと考えるが、弁護士になった後で、単位弁護士会又は日弁連の行う倫理研修を受けてもらえればいいと思う。

○:検事といえども、民事訴訟、人事訴訟、行政訴訟にもかかわる機会はあり、どんな訴訟であっても根本的な部分は同じであると思う。民事についてことさらに研修を行う必要はないし、倫理研修も、資格付与や登録の要件とするまでもないと考える。

○:特任検事は刑事では問題ないとしても、民事でも同じであるとは思えない。国民は、民事も刑事もできるフル規格の弁護士を期待していると思う。

■:弁護士としての倫理研修が不可欠であることは各委員の一致した意見であるが、その研修を資格付与要件や登録要件とする必要はなく、弁護士となった後に行うもので足りるというのが大方の意見と伺って取りまとめをしたい。ただ、民事関係の研修が必要であるとの意見もあるので、日弁連及び単位弁護士会には、倫理研修における題材の選び方などで工夫していただきたいと思う。

(2) 企業法務等の位置付け−司法試験合格後に民間等における一定の実務経験を経た者に対して法曹資格の付与を行うための具体的条件を含めた制度整備

① 事務局からの説明

 第7回検討会事務局配布資料6−3から6−8に基づいて説明がなされた。

② 日弁連からの説明

 第7回検討会日弁連配布資料「企業法務等の位置付けについて」に基づいて説明がなされた。

③ ①②の説明に対して、次のような質疑応答がなされた。

○:企業法務等の「等」として、説明では国会議員や公務員が出てくるが、企業に続くものとして、国連など国際機関や各種財団などの職員が対象となることも考えられるところ、「等」の内容についてどのように考えているのか。

●:あくまでも「等」であり、また法律的な知識・経験の中でも社会的に高度の専門性を有していると評価できるものを活用していくという観点からなされた提案であるため、最初から何かを除外して議論を行うつもりはない。企業以外の社会的な実体を備えた団体についても、①業務内容が高度の専門性を有すると評価できるか、また、②評価できるとして実際に資格の付与を行う認定の対象とすることが可能か、を併せて考えていくべきであろうと思っている。ただ、資格付与の候補に該当する者が余りに少ない場合、類型的な評価をすることはなかなか難しいのではないか。

○:制度を作る場合は、将来的に「等」の中に何が入ってくるかについて、ビジョンを持っていることが必要になるのではないか。企業法務等の企業について、日本国内の企業を想定しているのか、例えば、日本企業が海外企業と合併して本社が海外移転した場合で、外国本社で企業法務に携わる場合も考えられるが、このような場合は含まれるのか。

●:確かに、企業の国際化がこの議論の背景にある。しかし、日本の弁護士資格を付与するという制度についての議論であり、評価する対象はあくまでも日本の法体系に関連する実務経験であることが前提ではないか。

○:企業に法務部が置かれることは既に定着しているところである。我が国の企業数は200万から300万社、あるいは580万社あるといわれており、いわゆる上場企業は3,500社程度あるが、ある調査結果によると、その中で企業法務部という独立の部門を持っている企業、あるいは企業法務に専任している職員を配置しているとする企業は約1,100社あるようである。他の調査結果とを併せると、日本では7,000から8,000人が法務マンとして企業法務に携わっていると考えられる。企業法務に携わる者のうち、司法試験合格者は15社17人であり、むしろ社内弁護士の方が25社39人と多い。また、米国やイギリスなどのロースクールを卒業して外国の弁護士資格を取得して企業法務に携わっている者は、297社227人在籍しているとされる。基本的に、法務部が持つ機能は紛争を未然に防ぐ予防法務に力点が置かれている。その具体的な事務としては、①法律相談、②国内及び海外の契約の交渉の立会い・契約書の審査・作成などの契約に関する事務、③いわゆるコーポレート・マター(株主総会や取締役会関係業務)、④コンプライアンス業務(独禁法や各種業法について社内に知識を普及し現場で問題を生じないようにする業務)がある。その他、M&A、大型プロジェクト、不祥事を起こした場合の法的サポート業務(危機管理)などがあり、以上が企業法務における事務の九割を占めているといわれる。そして、残りの一割を占めているのは、訴訟対策である。訴訟については、弁護士に対してアウトソーシングされている。企業法務を歴史的に見ると、昭和40年代の高度成長期における企業活動の範囲が拡大したが、弁護士の数が少なかったため、企業が自前で育てようとしたことが企業法務部の始まりとされている。その後、訴訟実務を行う弁護士と、いわゆる予防法務を始めとするビジネス・ローを行う企業法務部の役割の棲み分けがなされるようになったといわれている。企業のニーズの面をいうと、一般的な予防法務は既に行うことができるところが多いため、知的財産権・金融・IT・渉外関係・税務関係・環境関係などの専門的知識を必要とする問題に対して適切なアドバイスができる弁護士が必要となっている。しかし、そのような弁護士となると数も限られ、かといって企業が自前で育てると時間と労力がかかるという事情があるようだ。

○:事務局の説明も含めて、弁護士はフル規格でなければならず、また、司法修習を経ることが必須であるという考え方が基本にあるようである。しかし、医師を例にとると外科医、内科医等と細分化・専門化が進んでおり、弁護士に関しても同様に法的紛争は多様になっているのであるから、今後もフル規格であることにとらわれていると、専門性を有する弁護士を生めないこととなるおそれもある。昨今のグローバル化、生活の多様化の中にあって画一化した弁護士ではなく、多様な経験を持つ弁護士が出てくるようにすることは大切なことではないか。

○:細分化・専門化された職業として医師が例に挙がったが、医師も最初から専門化・細分化されているのではなく、出発点となる医師国家試験では幅広く医療全般にわたる知識が問われている点に注意すべきである。もっとも、昨今の社会的な変動と、弁護士に求められる社会的役割に変化が生じている状況で、今後ますます多様な経験と知識を持つ弁護士が企業法務に進出するようになることは大きな意義があると思われる。

○:「一定の実務経験」と言えるための要件として、日弁連の意見は「相当程度の経験を有する弁護士の在籍する企業の法務部門において、その弁護士の指導の下で10年以上の法律実務経験を積むことと」としているが、実際に企業法務に在籍している弁護士の数を考えると、非現実的な要件となってしまわないか。

□:現在企業法務に在籍している弁護士の数は相当少ないが、将来的には司法試験に合格して企業法務に入る者の数が増加することが考えられる。そして、資格付与を行うための具体的条件として研修を示したのは、現在の企業法務ではどれだけ長く在籍していたとしても、弁護士資格の取得のために必要と考えられる弁護士倫理や刑事弁護についての業務を経験せず、またその情報が入ってくることもないと思われるからである。そのような状態で弁護士資格を付与することには無理があるのではないかという趣旨から、一定のトレーニングを受ける必要があることを説明した。

○:法曹資格を付与するに当たり、事務局の説明にあった地位(ポスト)ではなく事務に着目するという点が気になるところである。企業法務といっても、企業によって業務の内容も異なると思われる。したがって、例えば企業法務を何年経験すれば資格が付与されるべきかという議論の前に、やはり、その者ごとに検討し、何らかの制限をかける必要があるのではないか。

●:企業法務といっても企業の規模、法務部の組織の態様、取り扱われている業務の内容に違いがあることはご指摘のとおりであり、その中で対象となる業務の内容を明確化し、そして該当する候補者が司法修習を経ずに法曹資格を付与するに値するかは、個別に判断することとして議論を進めてはどうかということを説明したものである。

■:その点を含めて次回検討会に議論の続きを行いたい。

(3)「裁判官の人事評価の在り方に関する研究会報告書」について

① 最高裁から第7回検討会最高裁配布資料「裁判官の新たな人事評価制度のために−研究会報告の概要−」及び「裁判官の人事評価の在り方に関する研究会報告書」に基づいて説明がなされた。

② ①の説明に対して、次のような質疑応答がなされた。

○:裁判所外部からの情報を、評価の問題とは切り離したのはなぜか。

△:外部からの情報については、裁判官の職務行使の独立にも配慮しながら、事務局(裁判所長)の方で事実関係を確認した上で、評価に活用すべきものとされている。

○:端的に言って、この報告書の内容は審議会の意見書の趣旨に沿ったものとなっているのか。この報告書の目玉となるものは何か。キャリアシステムについてはどう考えているのか。

△:審議会意見の指摘事項については、報告書にも引用されており、これを十分に踏まえた上で議論を行っていただいたと思っている。裁判所が新規に採用すべきとされた制度は、自己申告書面制度、面談制度、不服申立を受けて評価を再考する制度等である。研究会においてキャリアシステムを維持していくための人事評価制度ということで議論がされたことはないと承知している。

○:このような人事評価は、アナログ印象評価と呼ばれるものであって、民間では考えられない。裁判官の職務の特殊性から評価が難しいのはわかるが、もう少し評価を昇格やポストに反映する必要があるのではないか。

△:研究会においては、民間部門の人事評価制度についてのヒアリングも実施されている。議論を重ねた結果、民間の評価制度をそのまま導入するのは難しいということになり、このような報告に至ったものであると承知している。

■:最高裁はこの報告書に基づいて人事評価制度の検討をされることと思うが、時期をみて更に最高裁からその検討状況についての説明を伺い、当検討会で検討することとしたい。

(4) 次回の予定

 次回(8月29日)は、引き続き、司法試験合格後に民間等における一定の実務経験を経た者に対して法曹資格の付与を行うための具体的条件を含めた制度整備の問題について議事を進める予定。

(以上)