【伊藤座長】 それでは、所定の時刻になりましたので、第7回の「法曹制度検討会」を開会させていただきます。御多忙のところ、また酷暑の中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。議事に先立ちまして、事務局から配布資料の説明をお願いいたします。
【植村参事官】 それでは、配布資料の確認をさせていただきます。
本日、事務局から新たにお配りいたしましたのは、資料7−1でございます。これは、既に委員の皆様の御了解をいただいております開催予定期日を取りまとめたものでございます。
そのほか、席上配布資料といたしまして、特任検事経験者に対する法曹資格の付与の問題についての検討のたたき台(案)であります、事務局資料5−14、司法試験合格後に民間等における一定の実務経験を経た者に対して、法曹資格の付与を行うための具体的条件を含めた制度整備の問題についての事務局資料6−3から6−8を改めて配布させていただいております。
また、日弁連、最高裁から次第に記載いたしましたとおりの資料の御提出がありましたので、御紹介をいたします。
以上でございます。
【伊藤座長】 それでは、議事に入りたいと思います。
本日は、議事次第にございますとおり、まず最初に特任検事経験者に対する法曹資格の付与の問題につきまして、前回に引き続いて議論をいただきます。2番目に司法試験合格後に民間等における一定の実務経験を経た者に対して法曹資格の付与を行うための具体的な条件を含めた制度整備の問題について議論をいただきます。最後に裁判官の人事評価の在り方に関する研究会の報告書について最高裁から報告をいただくという順番でまいりたいと思います。
まず、特任検事経験者に対する法曹資格の付与の問題でございますが、前回に引き続きまして、席上配布されております事務局資料5−14、検討のたたき台(案)の「3 その他の条件を要求するか」について議論をお願いしたいと思います。
条件の問題につきましては、前回の御議論を伺っておりますと、何らかの研修を考えてはどうかという御意見を委員の方からいただいたように思います。それについての問題を若干整理してみますと、どういう事項、内容についての研修が考えられるか、これが1つの問題だと思います。そのうち、どの研修が必要であって実施すべきかという問題が更にあるかと思います。そういう研修を行う場合に、その位置づけについて弁護士資格付与の条件とするのか、それとも弁護士になった後に研修に参加することでいいのか、この辺りも論点として御議論をいただきたいところでございます。
そこで、ただいま申しましたような研修の内容、位置づけ等をめぐって本日改めて御意見をちょうだいできればと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
【平山委員】 前回の議事録をまだ拝見いたしておりませんので、前回どういうことを申し上げたか正確にわかりませんが、そういう意味で、少し繰り返しになる部分があるかと思いますが、意見を申し上げてよろしゅうございますか。
【伊藤座長】 どうぞ。
【平山委員】 この件につきましては、私は基本的には特任検事に法曹資格を付与するという方向に賛成だということを申し上げたと思います。これは長い間のテーマでもございましたし、私自身としては、個々の特任検事の方々が、検事として非常に優れた活動をされているというようなことも承知いたしておりまして、それを積極的に取り入れていくべきではないかと思っておりますが、基本的には、やはり改革審の意見書の趣旨を尊重する。どのように尊重するかということは、私たちは踏まえておく必要があるのかなということです。
意見書の趣旨は、長期的には法曹全体の統一的な質の高いリーガル・プロフェッション化ということを考えるべきだと、ただ、現状では、法曹の絶対量が不足している、法曹人口が足りないということがしきりに書かれておりまして、言わばそれの補完策、あるいは刺激策と言いますか、そういうものとして改革審の意見書は特任検事についても法曹資格を付与するということを提起していると思うのです。ですから、そういう意味で、将来法科大学院が完成しまして、法曹人口が十分に行き渡ったという時点では、やはり一度補完策は再検討をして見直す必要があるのではないかというようなことを是非我々としては、この際考えておく必要があるのではないかというようなことを思っております。
しかし、それにいたしましても、やはり補完策として法曹資格を与えるということになりますと、これは個々の方が優れているかどうかという問題ではなくて、システムの問題ですので、十分能力担保措置と言いますか、そういうものをきちんと備える必要があるだろうと思います。やはり、法曹というのは、人の命とか、あるいは財産とか、いろいろな意味で非常に重要な部分を一人で扱うということになりますので、例えば検事として優れた方が直ちに弁護士としてやれるかという問題については、十分考えて制度措置をお取りいただかないと、いろいろな問題が起きはしないかという心配をしているわけであります。そういう意味で、是非今日の議論をしていただきたいと思っております。
具体的にはどういうことかと言いますと、この前、川中日弁連副会長が来まして、プレゼンをいたしましたけれども、その能力担保措置として司法試験の口述試験に見合うようなものをやったらどうかということを提案をしていたと思いますけれども、能力担保措置も大きく分けると2つあると思います。試験によって能力担保措置を考えるというようなこと、それから、研修によって能力担保措置をやるという方法、いずれにしても2つ大きなものとしてあると思いますので、日弁連が提起しましたのも、有力な能力担保措置の一つだと思っております。そういう意味で先生方にも日弁連案を御検討いただきたいと思います。
ただ、私自身としましては、例えば検事正もおやりになった方について、試験をどのように、誰がやるかということになりますと、なかなか大変かなと思いまして、できればきちんと能力担保措置として事前研修をやっていただきたい。
それは、どういうことかと言いますと、私は綱紀・懲戒の委員を長くやってきましたけれども、例えば特任検事ではなく、法曹資格を有しておられる現役の検事さんが、お辞めになって直ちに弁護士に登録された場合に、結構事故が起こるのです。それはやはり倫理研修の問題で、つまり人柄が悪いという問題ではございませんで、要するに、弁護士はAとBの対立の中にどう関わっていいのかというような弁護士倫理の問題は、かなり難しいのです。ですから、これは十分承知してスタートしていただかないと困ると思っておりまして、そういう意味でも倫理研修を中心にきちんとしたシステムをつくって差し上げないと、かえって審議会の意見書が法曹資格を付与すると言っていることについて意味がなくなって、かえって批判を受けたりするというようなことがありますので、是非そこのところを御議論いただきたいと思っております。
【伊藤座長】 ただいま、平山委員からは倫理研修を中心とした研修を要求することによって、能力担保措置とすべきであると。大体そういう御趣旨の御発言がありましたが、ほかの委員の方はいかがでしょうか。
どうぞ、田中委員。
【田中委員】 一応弁護士法5条を改正するという前提で議論しているわけで、それを前提にして考えると、平山委員がおっしゃるように確かに弁護士倫理の研修は非常に大事だと思うのですけれども、それだったら別に特任検事だけではなくて、検事や裁判官からなるときも全部やるというようなことも考えられるのであり、弁護士倫理の研修は基本的には、弁護士資格を取った後でやるという方が、ほかの人とのバランスから見て適切ではないかという感じがします。
確かに今まで別の仕事をやっていた人が弁護士になるときにいろいろ問題があることは事実でして、それは特任検事だけではなくて、普通の検事でもそうですし、大学の法律学の教授もそうですし、そういう者について内部で重点的に研修するというのは非常に大事だと思うのですけれども、特任検事だから予め研修を受けなければ資格を認めないというのは、ちょっとほかとのバランスから見てどうかと思います。これから他の特例的な形で弁護士の資格を取る人に対して研修を充実させる必要はあると思うのですけれども、それを資格を付与するための条件にするというのは、少しバランスのことを考えると引っ掛かるのです。私は基本的には、弁護士法5条を改正するのでしたら、同じように弁護士の資格を認めて、研修とかは弁護士資格を取った後に充実してやるという方が、この制度の趣旨から見て適切ではないかと思います。
【伊藤座長】 田中委員は、研修は当然あるべき姿ではあるけれども、それは弁護士資格を付与した後にそういうものを要求した方が、むしろいいのではないかというような御意見でございますが、ほかの方は、いかがですか。
どうぞ、釜田委員。
【釜田委員】 大体田中委員の御意見と同じでございますが、この前伺いましたところによりますと、各弁護士会ですか、そこで新たに登録をなさった方に対しては研修があるとおっしゃっておられましたので、そこの弁護士会での研修をいろいろと充実されることを通じて、この問題も解決されるのではないかというような印象を持っております。
したがいまして、結論的には、先ほどの田中委員と同じようなことでいいのではないかと思います。
【伊藤座長】 どうぞ、平山委員。
【平山委員】 私は、資格付与の前提と言っているのではないのです。資格は付与するが、弁護士としての登録までの間に研修をやらせることはできないかということであります。全くの事後研修になりますと、なかなか実が上がらないという問題がありまして、そういうことが法制上考えられないかということです。
【伊藤座長】 そうすると、先生のおっしゃっているのは、登録は登録として認めて。
【平山委員】 資格付与と登録は別問題です。資格付与は行政行為ですから、例えば国でおやりになるわけですね。弁護士会に登録というのを次にやる。登録までには、例えば6か月ならば6か月の研修をやっていただくということが考えられないものかと思います。
例えば、ある弁護士が、私なら私の弁護士事務所においでいただいて研修をする。いろいろな研修があって、具体的なものは後にあると思いますが、何かそういう意味で特任検事の場合は、書き方が次の議論になる企業との場合と違った書き方がされていますので、資格そのものは与えられて、登録までにそういう事前研修ができないものかというのが私の提案している趣旨なのです。
【伊藤座長】 例えば、東京弁護士会に登録申請をするまでに、先生の事務所で研修をするということですか。
【平山委員】 弁護士会によるものでもいいし、いろいろなことが考えられるかと思います。
【伊藤座長】 どうぞ岡田委員。
【岡田委員】 弁護士資格は付与するけれども、弁護士活動はできないということですね。
【平山委員】 資格はありますけれども、登録前にやっていただくということはできないのかと。法制上そういうことが可能かどうか少し検討していただかないといけないと思いますが。
【木村委員】 やはり、弁護士法5条を改正して資格を付与することの趣旨から言うと、登録期間中に研修するというのは、少し制度上複雑化してくるような気がしないでもないのです。
私は、先般の検討会で配布されました特任検事関係資料などを見てみますと、特任検事の能力の担保ということについては、全く法曹資格を有する検事と同程度の能力を担保する制度が設けられていると思います。経験年数に応じて、副検事の場合には各種研修があるとか、非常にきちんとやっているので、内容的に見ますと、私は法曹資格付与ということについては、基本的に意見書の意向を踏まえて、今、平山委員の言われたようなことをもし含めるとしたら、資格付与、登録後に強制ではないと思うのですが、そういう形での研修は絶対に必要だと思うのですが、制度上は、やはり弁護士となる資格を有するということでいいのではないかと思います。先般いただいた資料を読んでみますと、大変きちんとした試験の内容、その他が書いてございます。
ただ、2つばかり質問がございまして、1つは改正した場合に、特任検事を退職された方にさかのぼるわけでございますか、現在退職された方が約六十人ぐらいおられるわけですが、この法が改正されますと、そういう方々が皆資格を持っている者として弁護士登録ができることになるわけでございますが、それとも法ができた以降の方にのみ適用されるのか、そこら辺はどうなのでございましょうか。
【伊藤座長】 基本的な考え方というか、可能性として少し説明していただきたいと思います。
【植村参事官】 その点に関しましては、立法措置が講じられたときを基準にして、それまでに5年の経験まで含めて条件が整っておられる方については、認めてはいかがかと考えております。
ただ、年齢の問題がございまして、もともと検事の定年というのは63歳でございますので、そんなことを言っては失礼ですが、資格のある方全員が、もう一度弁護士登録をしてやろうかというと、またそれは話が別かなということでございまして、そういう意味で何人の方が与えられた資格を活用されるか、少し申し上げにくいところがございます。
【木村委員】 今の参事官のは、法の下の平等の原理にそぐわないアイデアになりますね。どなたでも一応は、登録の申請はできるのではないでしょうか。
【植村参事官】 私が申し上げたのは、法的には登録をしたい方は登録をしていただければ弁護士活動ができるわけでございまして、ただ現実にその方が、本当に登録しようとされるかどうかは、年齢のこともあるので、その方のお考えによって決まってくるということです。
【木村委員】 その方の立場に立っての御発言ということで、非常に思慮ある発言だと思います。
やはり、これは全般的な司法制度改革の非常に大きい一つのルーツになっているのだと思います。
私も、先般いろいろメールなどで寄せられた資料の内容についてお問い合わせをさせていただきまして、事務局の方から私のところにそれが提供されましたが、その中にも個人ですけれども、特任検事に法曹資格の付与ということもございましたので、何かそういう1つ大きい法曹人口の増大に結び付く大変前向きのこととして評価していいのではないかと思いましたものですから、かつて退職された方も含めてそういうことをお考えになる機会があるのかなと思いました。
もう一つ質問なのですが、特任検事に至る前の副検事の受験資格のところで、これは事実関係だけで結構なのですが、「警部以上の警察官」とか、「警務官たる三等陸尉、三等海尉又は三等空尉以上の自衛官」というのは、実際上、先般配布していただきました資料の平成14年6月法務省作成の特任検事関係資料の中では、検察事務官、裁判所事務官というのが副検事の選考資格の中で大きく位置づけられていると思うのですが、警察官、自衛官というのも、実際にケースとしてあったのでございましょうか。
【伊藤座長】 もしわかりましたら、黒川さんちょっと説明していだけますでしょうか。
【法務省(黒川司法法制課長)】 件数のデータ的なものは、今持ち合わせておりませんが、実例としてはございます。相当数ございます。
【木村委員】 そうですか、その中から、資料のおしまいの方にございますように、受験されて、割合に倍率が高いわけですね、要するに通る人が少ないわけですが、実際に通って特任検事としてお仕事されている方もいらっしゃることになるのですね。
【法務省(黒川司法法制課長)】 はい、ございます。
【木村委員】 ということは、非常に幅広い給源と言いますか、司法試験を通られた方とは違うルートで、しかし非常に経験を積まれた方々が特任検事として長い時間お働きになられた後の資格の付与ということが、社会的には非常に前向きに働くということが評価できるのではないかと私自身は考えておりますので、その点で田中委員並びに釜田委員の意見と似てまいります。
【伊藤座長】 どうもありがとうございます。ほかの方、どうぞ佐々木委員お願いします。
【佐々木委員】 私も基本的に田中委員のお考え、今述べられた木村委員のお考えに賛成でございます。
その理由でございますけれども、この前お渡しいただいた資料を拝見いたしました点で、いわゆるノンキャリアの方々を、言わば自分の力で職務の中でたたき上げられた方、我々資格のある者とは違う道筋ではありますけれども、任命に当たってそれなりの素養をチェックされていると。とりわけ、民商法であるとか、そういう試験をチェックされているという点がございます。
その後のプロセスの中で、法務省配布の資料5によると、昭和63年には函館地検の検事正になっておられたり、あるいは支部長検事になっておられる。こういう方々、あるいはそういう役割を果たしてこられた方々に対する問題だと認識しております。
私自身、実は若いころ刑事事件の左陪席裁判官をやっておりましたけれども、九州でこういう特任検事のシステムを初めて知りました。私の担当していたのは、合議の左陪席ですので、その中には地域の汚職等の事件、あるいは保険金詐欺事件、あるいはその他の一般的な詐欺背任事件というのがございました。その中で、公判時に立ち会われた方が、極めて事前準備、あるいは中間準備において正確なことをされた。言わば経済的な取引のシステムであるとか、とりわけ保険のシステムについての成熟性であるとか、そういうことについての公判維持に対する熱意であるとか、その点について全く疑問を持ったことがありませんでした。その場所、任地を離れるときに、飲み会の席で初めてこういう方が特任検事だと分かりました。その方が「私は本当の検事ではないのです。」とおっしゃったのですけれども、こういうシステムがあることを知った次第であります。
したがいまして、現実の実務、とりわけ福岡地方は多いと思いますけれども、九州地方におけるシステムを支えられている方々、これを見ますと、やはり我々実務家としては、誠に同じような資質と能力を持っておられると感じております。
そして、座長のおっしゃった、どういう事項、内容についての研修かと申しますと、確かに平山先生がおっしゃいましたように、倫理の点については、依頼者との関係であるとか、あるいはもっとどろどろとした関係があるのかもしれません。そして相手方代理人の立場も出てくるかもしれません。そういう問題については、確かに何らかの措置を取るべきであると考えます。研修の位置付けとしましても、倫理研修にふさわしいようなことはしなければいけないと考えますが、私としては、他の会員と同様に入会後、登録後にやはり単位会、ないし日弁連の方でそれぞれお考えのところに従って、それぞれの地域にふさわしい倫理の問題を扱っていただければと考えておりますので、登録後、資格付与後というのに賛成でございます。
【伊藤座長】 どうぞ、小貫委員。
【小貫委員】 私は、検事という立場で、同僚や先輩に特任検事をたくさん持っていますので、実は平山委員、あるいは佐々木委員、他の法曹の方から特任検事はどんな評価を受けているのかというのを非常に関心を持って聞いたのですけれども、今聞いてみますと、非常に高い評価を受けておるということで、心強いというか、ありがたい話だと思って聞かせていただきました。
実際に私は内部から見させていただいても、特任検事は、私どものような司法修習を経た検事と比べて全く遜色はないというのが私の実感でございます。
したがって、退職後に弁護士資格を付与するということについては、能力的に国民に迷惑を掛けるようなことはないのではなかろうかと確信している次第です。
もう一点、前回のお話の中で、民事部門はどうなのだろうかというようなことを心配する向きもあったやに私は伺っておりました。ただ、民事訴訟だとか、行政事件だとか、刑事訴訟だとか、人事訴訟だとかというのは、全く別世界のように考えるのは私自身はいかがなものかなと思っております。実際に私も検事になって17年間、刑事事件で捜査や公判をやった後で、18年目の春から訟務検事になれということで、4年ほど訟務検事を経験したことがございます。その折には、訟務検事になってやる仕事は民事事件であり、あるいは行政事件であったわけですけれども、刑事でやった17年間は全く無駄かというと、そうではございませんで、そもそも根っこは同質でございましたので、刑事17年間の経験というのは、大いに役立ったなと私自身は感じておりました。
要するに、どんな訴訟であれ、証拠を集めて、事実を確定して、法律を適用して、そして判断するという根本的なところは全く同じなわけでして、したがって、こういう人たちについて、そうそう民事について心配されることはないだろうと思っております。
心配されることはない理由については、前回、法務省の黒川課長の方からいろいろ説明がございました。将来、もし民事専門にやりたいとか、あるいは行政事件訴訟で税務訴訟をやりたいという方がおれば、それはその分野を自助努力で勉強されれば十分対応できることではないのかなと私自身は思っております。
先ほど平山委員から出されました倫理研修については、非常に重要なことだと私も思っております。これは十分に研修させていただきたいと思いますけれども、ただそれを資格要件だとか、あるいは登録要件にするまでの必要はないし、実際のところ私どもが検事を退職して、弁護士になるときにも十分な倫理研修を受ける機会が登録後にあるとも聞いているので、それと同じく扱ってよいのではないかと私自身は思います。そういうことで、研修をやるにしても登録後でよいのではなかろうかというのが私の結論でございます。
【伊藤座長】 ただいまの皆様の御意見を伺っていますと、特に弁護士倫理の関係の研修、これは大変重要なもので不可欠なものであるという点の認識は恐らく一致していると思います。その上で、資格要件、あるいは登録の要件とするかどうかということについては、大方の御意見は弁護士となった後にその種の研修を義務づける、ないしはより充実した研修を弁護士会で実施していただくということでよいのではないかと承りましたが、いかがでしょうか、そのようなまとめでよろしいでしょうか。
どうぞ、松尾委員。
【松尾委員】 前回も意見を述べましたので、繰り返しになるかと思いますが、今のことに関連して申し上げますと、特任検事の実態、あるいは能力、今いろいろ御紹介がありましたが、まさにそのとおりであろうと思います。したがって、法曹資格を付与することには全く異論はありません。刑事事件については非常に知識・経験もあり、能力もあり、あるいは少なくとも5年以上のキャリアがあるということで、刑事事件については問題があるとは考えておりません。
しかし、民事事件については、先ほど、民事も刑事も余り根本的に変わるものではないという御発言がありましたが、私は必ずしもそうは思わない。またそれを見る国民の目と言いますか、利用者から見た場合に、やはりこの方は刑事事件としては詳しいけれども、民事事件としてはどうだろうかという疑問と言いますか、そういう不安な部分があります。つまり、弁護士になることは、民事も刑事も含めての、いわゆるフル規格として能力を期待されるわけでありますので、どうしても特任検事という方が弁護士になったときに、刑事は問題ないにしても、やはり民事について実際に自分が依頼するときに、果たしてどうなのだろうかというような見方があることは、これは避けられないと思うのです。
そういう面から見ると、民事についての何らかの私なりに言う「補完措置」を考えておく必要があるのではないか。つまり、高度の能力担保措置とは言いませんけれども、少なくとも何らかの「補完措置」というものは考えておく必要があるのではなかろうか。
そうすると、研修なのか、試験なのかということなのですが、あるいは日弁連が主張されている司法試験の口述試験も一つの選択肢であろうかと思いますが、私はどちらかと言うと、民事研修をできるならば登録要件にしてほしいと思っております。しかし、これは技術的な問題もあるでしょうし、制度設計をする中でかなり難しいなと、理屈はそうであっても、実際問題として難しいなというような状態であれば、恐らく日弁連だと思いますが、次善の策として事後の研修は必要要件であり、絶対措置すべきであると考えます。
もう一点の倫理研修については、これは事前であっても、事後であっても結構だと思っております。
【伊藤座長】 わかりました。それでは、この点は松尾委員も最後におっしゃいましたけれども、研修というのを資格付与の法制上の要件とするというところまではしないというのが大方の御意見だというようにまとめさせていただきます。
しかし、研修の問題自身は大変重要なことでございまして、弁護士倫理と言いましても、一般的、抽象的に倫理をどうするというわけではなくて、やはり具体的な事件を素材にして倫理の在り方を問題にするということでございますから、素材の取り方によっては民事の事件を材料にして、そこで民事的な研修の色彩も織り交ぜながら倫理の問題を取り扱うということもできるかと思いますので、大いに弁護士会の方では工夫をしていただいて、今の松尾委員の御発言も生きるように努力していただきたいと思います。
それでは、この点は大方の意見として、もう繰り返しませんけれども、資格付与の要件とはしないけれども、今後のことについては十分御検討いただきたいということにさせていただきます。
【植村参事官】 今の座長の取りまとめの中で資格付与の要件としないという取りまとめをされましたけれども、平山委員の方から資格要件ではないが、登録の要件という言葉遣いもあったわけでございます。事務局といたしましては、御質問も受けないでお答えするのはいかがかと思いますが、登録要件ということは、法制上、それを経ないと登録を拒絶できるということになりますので、結局資格を認めないのと同じことになってしまうと思っております。
したがいまして、平山先生のおっしゃいました登録要件というところも含めて、それもしないでよろしいという取りまとめということを確認させていただけないかと思っております。
【平山委員】 1つだけよろしいですが、それはわかりますが、弁護士法では登録要件も別に条文としてあるのですね。ですから、そういう意味で申し上げておるわけです。資格付与要件と登録要件は別になっていますから。
【伊藤座長】 わかりました。どうぞ、木村委員。
【木村委員】 今の松尾委員の言われたことにも関連しますが、一応弁護士法5条に恐らく今の事案が入ってくるかと思いますけれども、弁護士法上で、最高裁判所の裁判官とか、あるいは大学の特定の学部の教授または助教授ですね、そういう方々について、今まで一応弁護士資格を与えて、研修その他について何の問題もなくて、このまま一応登録その他につきまして容認されてきたので、もし松尾委員の言うようなことになりますと、例えば、法学部で特定の法律学を担当されている先生でも全く刑事とか民事とか、実際上の手続に詳しくない方もたくさんいらっしゃるわけですね。ですから、もし、松尾委員のおっしゃるように特任検事にのみ研修をするというようなことになってきますと、そういう方々を含めて、弁護士法5条で弁護士となる資格を得たものに対しては、全員研修をしてもらうというようなことに論理的にはならざるを得なくなってくる可能性も出てくるわです。
ですから、これもやはり法の下の平等という観点からすると、いろいろな問題が出てくるので、そこら辺はこの検討会でそういう話し合いがあったということで、私なんかはむしろ大学の教授にも弁護士になるのだったら研修をきちんと受けてもらいたいという具合にも思っているぐらいですので、そこら辺のところも含めて検討会ではそういう話も出たというのは議事録に残していただいていいのではないでしょうか。
【平山委員】 今の木村先生のそこを議事録に残せとおっしゃっているのは将来のことを考えますと、非常に重要だと思います。よろしくお願いいたします。
【伊藤座長】 それでは、資格付与の要件としない。それから先ほどの登録の要件、研修自体を要件とするようなことはしないということで、しかし、事後の研修については十分留意をしていただくような方向が望ましいと、その程度の取りまとめにしておきたいと思います。
それでは、次に民間等における実務経験を経た者に対する法曹資格の付与でございます。これにつきまして、具体的条件を含めた制度整備の問題に入りたいと思います。
まず、事務局からこの問題についての説明をお願いいたします。
【小林参事官】 それでは御説明の方をさせていただきたいと思います。資料6−3以降でございます。本件につきましては、もともと規制改革の観点から、法曹人口の増加も絡めまして問題提起されたものでございます。
資料6−4をご覧いただきたいと思いますけれども、資料6−3の2ページ目にございますような弁護士法第5条第2号の現在の修習免除者がいるわけでございますが、これに加えまして、司法試験合格後の民間における実務経験者にも法曹資格を付与することを規制改革の立場から求められたものでございます。
その後、内容が司法制度改革と関連してくるわけでございますので、司法制度改革の一環としても検討が進められまして、最終的には規制改革あるいは司法制度改革、両者とも平成14年度中に措置をするということで結論が出されたわけでございます。
こうした議論の背景といたしましては、弁護士の不足という一般的な状況に加えまして、国際化あるいは技術の高度化が進む中で、企業側が自ら必要な人材の養成あるいは確保に努力した結果、いわゆる企業法務と呼ばれている分野におきまして、商事法を中心にしまして、非常に高度な専門性を有する人材やノウハウが蓄積されるに至ったことが挙げられるのではないかと思います。こうした高度の専門的知識あるいは能力を社会的にも活用するために、これらの方々に法曹資格を付与して社会の様々な分野で弁護士として活躍していただくというのが今回の趣旨と理解しております。
このように本件の方向性というのは、意見書において明確に示されているわけでございますけれども、その具体化のためには、先ほどの資料6−3の2ページ目でございますけれども、いくつかの論点について考え方を整理する必要がありましてこれらの点につき、当検討会における御検討をお願いする次第でございます。
具体的な論点の説明に入る前に、若干補足的に2点申し上げておきたいことがございます。1点は、今回の措置というのは、あくまでも現行の弁護士制度を前提としたものであるということでございます。今回の措置は先ほど申し上げましたように、高度の専門性を有する実務経験を評価しようということではございますけれども、決してイギリスなどの一部の国で見られるような法廷に出る弁護士と出ない弁護士の二分制というような制度を念頭に置いたものではないということでございます。今回の意見書でもそういう方向性は出されていないわけでございまして、したがって制度設計に当たりましては、基本的には通例の弁護士と同様の識見能力が要求されるということを考えなければいけないということでございます。2点目は、現在行われております法科大学院、新司法試験、新司法修習制度を巡る検討との関係でございます。事柄の性格上、これらの検討の内容いかんは本件にもいろいろな面で関係してくると思いますけれども、現にまだ検討中でございますし、そもそも現行制度の下での司法試験合格者につきましても、今回の措置の対象にすべきと考えられますので、とりあえず現行制度を前提に議論を進めていただければと存じます。
将来について現時点で確たることは申し上げることはできませんけれども、恐らくは司法修習につきまして平たい言葉で言いますと現行よりも重たくなることはなかろうと思われますので、司法試験合格者を対象した制度である限りは現行制度を前提とした議論をしても大きく方向性を誤ることはないのではないか、少なくとも安易な方向での制度設計になる恐れはないのではないかと考えております。
それでは個別の論点の説明に入りたいと思います。「3 検討すべき課題」のAのところでございますが、まず対象となる実務経験の内容でございます。このうち一番上のポツにございます企業法務についてでありますが、これは先ほどお話ししたように今回の措置の対象として、まず念頭に置かれているものでございます。資料6−7にもう少し具体的なイメージをお持ちいただけるように事務局で実施しましたヒアリング結果などもまとめてございます。資料6−7の2枚目の2B「実態調査から」のあたりを見ていただきますと、司法試験合格者数は法務部門内で7名、従業者全体で17名ということでございますが、これはアンケートで悉皆ではございませんので、恐らくは20〜30名程度の方は企業で御活躍されているのではないかと考えられます。また、法務部門の業務内容としましては3「法務部門の業務内容」にございますように、契約関係あるいは法律相談等関係、訴訟等の管理関係が多いということでございますし、今後重要となってくるものとしては4「今後重要となる法務問題」にございますように、知的財産権・M&A・企業再編・IT関係・電子商取引といった最先端の問題を扱っているということでございます。
次に2つ目として国会議員でございます。これにつきましては資料6−5をご覧いただきたいと思います。司法制度改革審議会の審議の状況ということで、議事録の抜粋でございますけれども、企業法務などについての議論の経過をまとめたものでございますが、資料6−5の10ページをおあけいただきたいと思います。中ほどの水原委員の御発言からご覧いただければと思いますけれども、これは意見書の取りまとめの最終段階に近いところでございますけれども「ここで2行目に『民間等における一定の実務経験を経た者に対して』云々とありますが、これは『民間の企業法務や国会議員等として、一定の職務経験を経た者』という表現にしてはいかがであろうかと思います」云々ということでございまして問題提起があったわけでございます。これに対しまして吉岡委員からこれは現場の経験という意味からすると少し違うのではないかという御発言があったわけですが、水原委員の方から大学の教授でもそういう実務経験はない場合もあるというお話がありまして、吉岡委員は必ずしも納得されたわけではございませんけれども、11ページの上の最後のところでございますが井上委員から「御趣旨はよく分かるのですが、これまで議論がなかったとすれば、『等』ということでまとめておくのがよろしいのではないでしょうか」という終わり方になっておるわけでございまして、いわば継続検討のような形になったわけでございます。こういった経過を踏まえますと、やはり当検討会において御検討をお願いするのが適当ではないかと考えた次第でございます。
また、もう少し実質的な背景といたしましては、先ほど来申し上げております弁護士法第5条第2号には、衆議院もしくは参議院の法制局参事これらはいわば議員立法の事務方に当たるわけでございますが、これらの方々も5年の実務経験で法曹資格を与えられるということになっておりますので、これらの方々と直接立法に関与されている国会議員の方とのバランスということもあろうかと思います。なお、本件につきましてはこれまでも議員立法により措置するという動きがあったと承知いたしております。
3番目に公務員でございます。現在の第5条第2号は司法関係及び一部法律の立案関係の公務員となっておりますけれども、今回企業法務等の実務経験をその高度の専門性に着目して評価していくということになれば、これまで対象とされていなかった公務の中にもそれらに対応するような法律関係業務があるのではないかといった新たな視点で検討する必要が生じると考えられるわけでございます。また、改革審の意見書を踏まえて、この3月に閣議決定をいたしました司法制度改革推進計画について、政府部内で調整を行う過程で内閣官房で行政改革の一環として公務員制度改革を担当しております公務員制度等改革推進室からも強い関心が寄せられた経緯がございます。
司法制度改革と公務員制度改革とは相互に関連する局面も多ございまして、公務員制度改革の中でも採用試験の抜本改革のあり方についての検討の一環として、法科大学院の新設への対応などの議論が行われているということでございますけれども、本件についても考え方を整理したものとして資料6−8が提出されております。これは公務員制度等改革推進室の名前で出されている資料でございますけれども、ここにおきましては国家公務員の法律事務においては、内閣法制局参事官などに相当すると考えられる実務内容が見られるところであり、企業法務等の実務による法曹資格の付与の検討に当たっては、国家公務員についても資格付与の対象の拡大を検討することが必要ではないか、また、このことが法律実務家の人材の流動性を高めることにつながるというような考え方が示されているところでございます。
具体的には、この資料6−8の1ページ目から2ページ目にかけてでございますけれども「A法律立案事務」及び「B法律審査事務」これら2つは「法律立案」と括ってもいいかもしれませんけれども、更に「③訴訟関係事務」が対象になり得るものとして挙げられているところでございます。また、司法試験合格者で修習を受けていない国家公務員が少なくとも70名程度はいるということも紹介されております。なお、国家公務員について議論をする際には、ある意味で類似業務を行っていると考えられます地方公務員についても議論をする必要があるのではないかと思います。したがって、資料6−3におきましても、一般的に公務員とさせていただいております。
また、同じように国会議員について議論していただく際には、ある意味では類似業務を行っております地方議会議員についても議論していただく必要があるのではないか、企業と申しましてもその外延については必ずしも明確ではないということも考慮いたしまして、全体として資料6−3の2ページ目のAにつきましては「等」を加えさせていただいております。
次にBでございますけれども付与する法曹資格についての議論でございます。ここでは弁護士となる資格と考えることはどうかとしておりますけれども、もともと今般の措置につきましては冒頭申し上げましたように、司法試験合格後一定の実務経験を経て高度の専門性を有するに至った方を社会的にも活用していこうというものでございますので、その趣旨からいっても弁護士としての活躍を想定しているものだと解されるわけでございます。なお、現行の弁護士法第5条第2号も同様に弁護士となる資格が認められるというスキームになっております。
最後にCでございます。当該実務経験を法曹資格の付与に当たって、どのように評価するかということでございますけれども、これはやや持って回った言い方でございますけれども、意図するところは御紹介したような業務のすべてについて現行第5条第2号のように一定の実務経験のみで、いわば自動的に法曹資格を付与するというようなことが適当であるかどうかということでございます。
恐縮でございますが大きく4つのポイントがあろうかと思います。
1つ目は、今の第5条第2号を見ていただきますと、これはいわばポストなり職を指定しているわけでございますけれども、特に企業法務でありますとかあるいは公務員につきましては、業務の多様性からもう少しきめ細かくむしろポストではなくて、評価すべき事務自体を規定する必要があるのではないかということでございます。例えば企業法務について言えば、予防法務としての契約関係事務あるいは訴訟関係事務といったものが考えられるのではないかと思います。
2つ目は、特に企業法務と公務員につきましては、今申し上げたように、対象となる事務の内容をできるだけ明確に規定したとしても、果たして候補となります該当者が経てきた実務経験がそれに値するものかどうかについては、結局のところ個々人ごとに判定する必要があるのではないかということでございます。もちろん、その場合には判定機関をどこにするのかもまた検討する必要があるわけでございます。
3つ目は、実務経験の期間の問題でございます。現行の第5条第2号に掲げられている業務につきましては、基本的には御覧いただきますと分かりますように、司法関係組織の業務でございます。また、その業務内容もかなり定型的に評価することが可能と考えられますけれども、今回検討の対象になっておりますのは、それらに比べますと、もちろん法律についての高度の専門性を要する業務であることは間違いないわけでありますけれども、弁護士との業務との類似性でありますとか、あるいは近接性という観点からしますとどちらかというとやや遠い業務でございます。
もちろん、そういったものについても高度の専門性を有するものについては、社会的に活用していこうというのが今般の司法制度改革の狙いであるわけでございますけれども、そうした「この道何年」というような高度の専門性を担保するということから考えますと、果たして5年で十分であろうかということが議論になり得るのではないか、例えば10年ぐらいということは考えられないかということが議論になるのではないかと考えております。
4番目は、一定の年限の実務経験だけで十分であろうかという問題でございます。もちろん、相当の実務経験を積んでいただければ、例えば法律一般に通ずる基本的な法律的な思考能力やリーガルマインドと言い換えてもいいかもしれませんけれども、そういったものや法律専門家たるにふさわしい識見などはまず身に付けていただいているということが期待されるわけでございますけれども、法律実務家として必要な知識、能力、特にオールラウンドな面でそういったものが身についているかどうかということについていきますと、実務経験の内容によっても異なるでしょうし、また、場合によっては個々人によってばらつきがあることも考えられるわけでございます。このため、こうした部分については何らかの担保措置が必要ではないかという御議論もあり得るのではないかと考えております。
この点については恐らく3つぐらいの考え方があるのではないかと思います。
まず、実務経験の審査さえしっかりすれば、それ以上の担保措置は不要ではないかという議論も当然あろうかと思います。先ほど例として出しましたけれども、仮に経験年数が10年ということになりますと、それだけの経験を積めば弁護士として必要な能力は確保できるのではないかという御議論も十分あり得ると思います。他方、通常であればそうした能力は期待できるけれども、場合によっては若干個人差があるかもしれない、そういったケースに備えて、念のためにスクリーニングをするということで、例えば民事、刑事の裁判実務に関する試験を行うという考え方もあり得るのではないかと思います。
3番目の考え方は、ある意味では一番慎重なのかもしれませんけれども、実務経験とは、あくまでも実務経験であるので、何年経験したから弁護士としてのオールラウンドな能力が身に付くというわけではなくて、それらについてはやはり別途研修が必要ではないかという考え方があり得るのではないかということでございます。
以上、3つの考え方を申し上げましたけれども、これらの考え方についてどう考えていくかということでございます。
一方で、実務経験で培った高度の専門性を社会的にも活用していこうという今回の措置の趣旨からすれば、余り厳格な要件を求めればそもそも該当者がいなくなってしまうという問題もございます。また他方で、先ほど来申し上げていますように現行制度を前提とすれば、どのようなバックグラウンドにせよ、一旦法曹資格が付与されてしまえばオールラウンドな弁護士業務が可能でありますし、また場合によってはそういうことが求められるということもあり得るわけでございまして、今後司法試験合格者が増えていくことも考えますと、余り安易な制度設計をして事実上司法修習の潜脱となってしまうというようなことも避けるべきという考え方も十分あろうかと思います。先ほど申し上げた経験年数の議論も含めまして、その辺の折り合いをどのようにつけていくのかということが課題ではないかと考えております。
以上駆け足になりましたけれども説明を終わらせていただきます。
【伊藤座長】 それではこの点について日弁連から御発言をお願いいたします。
【日弁連(伊礼副会長)】 日弁連の方からただいまの司法試験合格後の企業法務等の経験者に対する弁護士、法曹資格と書いてありますが、弁護士資格の付与につきまして、日弁連の考えていることを意見として言わせていただきたいと思います。御検討のほどよろしくお願いいたします。ペーパーを一応用意してまいりましたのでこれに沿って御説明をさせていただきたいと思います。
お手元に本日付の「企業法務等の位置付けについて」という1枚のペーパーが配られてあろうかと思いますが、骨子はこういうことでございますので、これに沿った形で意見を申し述べさせていただきたいと思っております。基本的には改革審の意見書に述べられておりますように、弁護士資格を付与する具体的な条件をこちらの方で考えるというような視点で意見を述べさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
まず、司法試験合格後に民間等で一定の実務経験を経た者に対しまして、法曹資格を付与するという条件を検討するに当たりましては、先ほど事務局からも御説明がありましたように、現在法曹制度検討会において進められております法曹養成制度の中で、司法修習がどういう位置付けであるかということが未確定な状態にありますので、それが確定するまでは、将来のことについての検討が足りないところがありますので、現行の司法試験を前提として意見を述べるということをお許し願いたいと思います。
現行の弁護士法第5条第2号は司法試験に合格した後に5年以上裁判実務や立法実務等の公職に就任した者につきまして、司法修習を経ていなくても弁護士資格を付与しておりますことは先ほど事務局からの御説明にあったとおりでございます。
これは同号に規定する職につきましては5年という実務経験を経れば司法修習を終えたのと同等の法曹実務教育を受けたと評価することができるということから設けられているということであります。この制度は、特別な実務経験を経た者を弁護士として迎え、弁護士層全体の職能の充実を目的とした制度と理解されております。しかし、弁護士は社会生活上の医師として、社会の隅々にまで法の支配を浸透させていくべき責務があると理解しておりますが、あくまで法曹実務家養成の基本は、司法修習を終えた者に対し、弁護士資格を付与するということは原則として堅持すべきだと思っております。改革審の意見書でも法曹養成制度は、プロセスを重視した制度であるべきだということが言われておりますことを明記すべきだと思います。かように考えますと民間等における一定の実務経験を経た者に法曹資格を付与するという問題は、弁護士法第5条第2号を改正して例外措置を追加するという視点ではなくて、裁判実務や立法実務とは別の実務経験を有する者に対しまして、司法修習に代替し得る能力担保措置を講じた上で、弁護士資格を付与するための制度として考えていくべきことだと思います。
日弁連といたしましては、ますます複雑高度化して国際化が進展してまいります21世紀の我が国の姿にかんがみました場合、国民の多様なニーズに応えていくために、多様な実務経験を経た弁護士が存在することは必要であると考えるものではありますけれども、前述いたしましたように意見書が弁護士の責務を十全に果たすという観点からは、やはり司法修習を経た弁護士が本来のあるべき弁護士像であり、法律実務のトレーニングを経験しない弁護士は本来あるべきではないと考えております。
そこで以上のような観点から本件を検討いたします場合に、民間等という用語について我々の考えとしましては、企業法務に従事したことや公務員などの公職に従事したことを分けて考える必要があろうかと思っております。
また、法曹資格につきましては先ほど事務局から御説明がありましたとおり、弁護士資格を付与するかどうかということだけで考えたい。法曹という文字は意見書に書かれておりますけれども、その他の法曹である裁判官と検察官の件は今回は外したいと思っておりますのでよろしくお願いいたします。
企業の法務部門につきましては、近時コンプライアンスの養成や企業活動の国際化等によりまして充実強化が図られておりまして、法務部や法務担当職員を置く企業が増大しておりますことは先ほどの御説明のとおりでございます。
しかし、一部の大企業を除きますと、その組織は現在見る限り小規模にとどまっておりまして、法務担当者の教育も実務家養成という評価をすることが困難な状態にあるということがお配りになりました別冊NBLに指摘されております。経験豊富な弁護士が在籍する法務部はまだ極めて少ないということも数字として表われてきております。
したがいまして、このような現状を前提とする限りには、直ちにすべての企業法務での一定の実務経験の下で弁護士資格を付与するということになりますと躊躇せざるを得ないと思います。そこで、将来的に企業法務での実務経験の下で弁護士資格を付与するためには、一定の絞りをかけるということはやむを得ないことだと思いますが、日弁連といたしましては、相当程度の実務経験を有する弁護士が在籍する法務部におきまして、その弁護士の指導の下に一定年数の法律実務の経験を積むことを要件とすべきであると考えております。また、一定の年数といたしましては、弁護士法第5条第2号に定める5年ではやはり短くてその倍程度の年数は必要ではなかろうかと考えております。また、弁護士資格の付与に際しましては、一定の能力担保措置が必要であるということも考えております。企業法務の実務経験では得ることが難しいと思われる弁護士倫理の研修や刑事弁護を含む法律事務所での弁護実務研修の課程を修了したことを要件として付与すべきではなかろうかと思っております。この研修に当たりましては日弁連が責任を持って行わせていただくというようなつもりでおります。研修の期間でございますけれども、その量などから見まして6か月程度は必要ではなかろうかと思っております。
公職に従事した者への法曹資格の付与の点でございますが、一定の公職の実務経験に対する弁護士資格付与については、公職の範囲につきまして先ほど言いましたあるべき弁護士像から考えまして、立法実務や訴訟実務、ないしこれに準ずる実務の経験に限るべきであると考えております。法律と無縁な実務経験をもって弁護士資格を付与することは認めるべきではないのではなかろうかと思っております
また、実務経験年数についてでございますけれども、企業法務の場合と同様に、一定の実務経験を通じまして、10年程度が相当であろうかと思います。これは第5条第2号との関連でその2倍程度は必要なのではなかろうかという考え方からであります。
更に弁護士倫理や刑事弁護を含む弁護実務の研修も是非とも行う必要があろうかと思っております。基本的に日弁連としましては、かような具体的な条件を付した上で弁護士資格を付与すべきだと考えているところでありますので御検討の方よろしくお願いいたします。なお、詳細等につきましては日弁連内の弁護士制度改革推進本部の事務局長、高中正彦事務局長が同席しておりますので、詳細につきましてはまた後から御説明等をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。以上でございます。御検討のほどよろしくお願いいたします。
【伊藤座長】 どうもありがとうございました。それではただいまの事務局及び日弁連の御説明につきましては質問等がございましたらお願いいたします。どうぞ、木村委員。
【木村委員】 事務局の方からいろいろ詳しく御説明していただきまして、今、質問等というお話でしたが、「等」がよく分からなったのが資料でよく分かったのですが、資料の6−5の最後のところで井上委員という方が「『等』ということでまとめておくのがよろしいのではないでしょうか」ということで、「企業法務等」という「等」になったようでございます。それで企業法務等の中に、今、日弁連の方からお話がございましたように、その文章の後に出てくる「民間等で一定の実務経験を有する」ということで「企業法務担当者」、「公務員等」と書いてあるわけでございますけれども、素人が読むと「企業法務等」と書いてありますと、まさかその後に公務員や国会議員のことが出てくるように思えないような文章になってしまうのです。企業というところにつながらないものですから。企業法務等の位置付けに関し、もし「企業等」と書いてあれば、つまり、「企業、国会議員、公務員と法務実務の位置付けについての検討」と書いてあればよかったと思うのですが司法制度改革審議会の意見書にこう書いてあるわけです。「企業法務」という言葉は実際に今使われているかどうかというのが1つの質問です。
第2に、例えば企業だけではなく、国会議員でも公務員でもなく、かつ企業にいるわけでもなく、国連などの国際機関とか財団だとか、いろいろなところで司法試験を合格されてお仕事をされている方も将来的には出てくる可能性もたくさんあるわけです。ここの「等」の使い方は非常に難しいと思うのですが、この点についていかがでしょうか。将来構想から言うと、企業だけに縛られないで国際的な視野からもっといろいろな団体が入るような表現の可能性はないのでしょうか。
【小林参事官】 ストレートなお答えにならないかもしれませんけれども、経緯を含めて若干御説明をいたしますと、「民間等」の「等」につきましては少し私の先ほどの説明がややミスリーディングだったかもしれませんけれども、原案の段階から「等」が入っていたことは間違いなくて、ただ「等」の中の具体的なものとして国会議員という議論も含めて考えたらいいのではないかというのが井上委員の御発言だったということでございまして、もともと「等」が入っていたということについては変わりはないわけであります。
2番目の御質問として、「企業法務等」となっているけれども、国際機関なりそういったいろいろな組織で活躍される場合はどうなのかということでございますが、もともと「等」でございますので、最初からこういうものは外すという議論をしていただく必要はないとは思いますけれども、1つはやはり今回の措置は法律に関する経験の中で、社会的に高度な専門性を有するものについては活用していこうということで、そういう評価ができるものを、いわば対象にしていこうということで提案がされているわけでございますので、いわゆる企業以外の組織での業務についても同じように評価できるかどうかというのが、まず第1点でございます。
それから、評価するとして、そういう専門性が確認できるかどうか、制度を組み立てていく際に、そういった評価が可能かどうかという問題と両方併せて検討していただく必要があるのではないかと考えております。
先ほど少し人数を申し上げましたけれども、人数を申し上げたのは、社会的にそういう実態があると、大体そういう組織で働いていれば、これぐらいの知識経験能力が身に付くだろうということが推測できるわけでございますけれども、余り数が少ないと言いますか、今、実際に該当する方がおられないと、そこはやや想像の世界になってしまいますので、そこを評価していくというのは難しい面もあるということは御理解いただきたいと思います。ただ初めから特定の者を排除するというつもりはもちろんございません。
【木村委員】 将来的にこういう制度をつくる場合には、「等」という中に何が入ってくるかという一つのビジョンが必要になってくるかと思うのですが、もう一つ今のお話を聞いていて分かったのは、いろいろ参事官の方でも資料をそろえて調査していただいたものを踏まえて、現状で非常に具体的に大体これぐらいの人数がいるのではないかということなのですが、企業法務の企業というのは例えば日本国内の会社の企業ということで今お考えなのか、それとも日本の企業に入ったのだけれども、それが合併して本社がニューヨークになって、ニューヨークで企業法務をやっていて、実際上は日本の企業ではないというような方まで含めるようになるのか、そこら辺のところも一ついかがでしょうか。国際的な動向からするとそういう人も含めた方が、日本国内でお仕事をなされている方々が司法試験を通って、もしそういう人がいれば、将来弁護士資格を持つようになるという可能性が、現段階で具体的な方向性を出していく中で、それもやはり視野に入っているのかどうかという点です。
【小林参事官】 先ほどの御説明の際にも少し触れたかと思いますが、企業がまさに自前で法務部を作り、その中で人材の育成確保を図ってきた背景の大きな一つの要素としては、確かに国際化ということがあったと思いますし、そういう意味で国際的に通用する人材を育成されているということは、私が申し上げるよりも中川委員などの方がお詳しいと思いますけれども、そういうことは確かだと思います。
ただ、今回の制度の趣旨ということからしますと、働く場所はいずこであれ、やはり日本の弁護士資格を付与するということになりますと、やはり評価する対象としては、少なくとも日本の法体系に関連する実務経験ということを念頭に置いて議論する必要があるのではないかと考えております。
【伊藤座長】 どうぞ、中川委員。
【中川委員】 質問でもないのですけれども、少し企業法務というもののイメージは少し分かりにくいですね。したがいまして、その辺少し5〜6分よろしいでしょうか。
【伊藤座長】 どうぞ。
【中川委員】 企業法務という言葉はございますし、会社法務部という人もおりまして、何か観念として日本には定着しているように思います。数字的に申し上げますと、今、日本全体で企業の数はいくつあるかというと、これは全然定説がありませんで、中小企業庁は580万社とか言っていますし、一般に200〜300万社、200万、250万、300万という人がいるのです。いわゆる上場企業は、その中で3,500社ぐらいでございます。これは店頭も含めて3,500社ぐらいでございます。これは一応規模の大きい企業と見ていいと思いますけれども、その中でいわゆる企業法務という独立の組織ないしは、企業法務専任の人を持っている企業は、証拠はございませんが大体1,000社ぐらいだと思います。この1,000社はどこから出てきたかと思いますと、今日配布いただきました商事法務研究会の第8次調査は5年ごとに行っておりまして、第8回目の調査ということになっておりますが、そこで5,000社ぐらいにアンケートしまして1,100社ぐらいから回答が戻ってきております。回答した1,100社位は大体法務の組織なり法務の専任者を持っていると見てよろしいかと思います。また、商事法務研究会が事務局をやっております経営法友会がございまして、これは全国の企業の法務部門の研究会ですが、ここに加入している会社が大体900社弱ございます。そういうことを考え合わせますと、大体日本で1,000社程度が法務専門部署、あるいは法務専任者を持っている会社だろうと見てよろしいかと思います。
しからば、そういう中で法務要員つまり法務部専属で働いている人は、何人位いるかということでございますけれども、これも確たる証拠はありませんが、先ほどの経営法友会所属の900社弱の名簿で勘定いたしますと、大体7,000人〜8,000人ぐらいだと思います。日本全国で7,000〜8,000人が、いわゆる法務マンと呼ぶ人もおりますけれども、法務マンとして働いている。これは大変な数字です。ただ、経験的にはもちろんその中に新入社員もおられるでしょうし、長い方は30年ぐらいの方もおられますし、それは千差万別でございますけれども、とにかく毎日法務の仕事をしているという人です。
先ほど御紹介ありましたように司法試験合格者というのは、その人数の中で何人いるかということは、このアンケートによりますと15社中17人しかいないのです。ごくごくわずかだと。むしろ弁護士の方が数が多くて25社中39名おられるということでございます。
法務要員の中で外国に留学して、外国の弁護士資格を取ってくる人が最近増えておりまして、そういう人は統計によると297社中227名いるということになっております。これは主としてアメリカ、イギリスあたりのロースクールを出て、それから司法試験を受けてその国の弁護士資格を取ってきたという方だと思います。人数的にはそんな感じでございます。
仕事と言いますか、機能の面で申し上げますと、先ほど事務局からも御説明がございましたけれども、基本的に予防法務ということで呼んでおりますけれども、つまり法廷での紛争処理ではなくて、予防的にそういうものを防ぐところに力点を置いた仕事ということになっております。
具体的に申し上げますと、いろいろな取引と言ってもいいのでしょうか、会社活動の法的なリスクを分析して、それを事前に避けるという仕事が一番多いかと思います。これは具体的には法務相談と呼ばれておりますが法律相談です。いろいろ持ち込まれます日常の会社活動の法的な相談に乗るというのが一番比重が多いのではないかと。
その次が契約書の審査それから契約書の作成、契約の交渉に参加するというか立ち会うというか契約事務でございます。これは国内のものもあれば海外のものもございまして、かなりの比重を占めていると思います。
3番目がコーポレート・マターと我々は呼んでおりますけれども、いわゆる取締役会とか株主総会とかの運営あるいはそれに伴う法律問題がございますが、そういうものの解決ということでございます。
4番目は社内啓蒙。これは意外と比重が高いのですが、いわゆるコンプライアンスだと思いますけれども、独禁法やいろいろな業法がございますのでそれらについて社内の知識を広め、できるだけ現場で問題を起こさないような措置を講じるというコンプライアンスの仕事がございます。
あとは会社によりますけれども、M&A、会社の買収でありますとか、あるいは大型プロジェクトの立案とか、法的な分析とか、そういう仕事があります。
それから危機管理です。いわゆる不祥事を起こした場合の法的な面からのサポート、解決、不祥事対策、そういったものをやっておりまして、それらが法務部の9割位を占めているのではないかという感じがします。
残りの1割は何かと言いますと、これは訴訟対策でございまして、いわゆる原告になる場合もございますし被告になる場合もございますが、法廷に関連するものは弁護士がおられれば別ですけれども、大半の企業はアウトソースしております。つまり、顧問の先生なり、あるいは適切な弁護士にお願いをして訴訟を取り扱っていただくということでございます。
ただし、その下準備と言いますか、資料の収集でありますとか情報の整理とか、あるいは場合によっては準備書面も書かせていただくような会社もありますけれども、そういうような仕事は法務部でやりまして法廷での訴訟活動はアウトソースするとなっておりまして、これは歴史的に見ますと要するに日本の昭和40年代ぐらいの高度成長期の折に、企業活動が一挙に広がった時代がございます。対外的にも広がりました。その時にこういう実務を相談できる弁護士の数が極端に少なくてどうしようもなくなったのです。
そういうことで、企業が自前で育てていくということから、昭和40年よりももっと前ですかね、昭和30年代ぐらいかもしれませんがそれがだんだん根付いていきまして、いわゆる予防法務というものは企業でやるが、法廷活動の方は弁護士にお願いをするという一種の住み分けみたいなものが出て現在に至っているという感じでございまして、いわゆる英語で言えばビジネス・ローヤーの不足が企業法務というものを逆に発展させてきたというようなことではなかろうかと思っております。
したがいまして、企業のサイドから見ますと、どういうニーズがあるかと申し上げますと、やはり一般予防法務機能は、十分企業の中にあります。したがいまして、それをカバーするものというのは何かと言いますと、いわゆる非常に専門性の高いリーガル・サービスなのです。例えば、知的財産権の問題もそうですし、金融問題、IT絡みの取引に伴ういろいろな法律問題や渉外関係です。渉外と言いますのは、いわゆる外国との取引のことです。税務、タックス・マターです。環境問題に伴うもろもろのもの。これは法整備そのものが、こういう分野でまだまだ未熟なわけでございますけれども、事態の方はどんどん進行しておりまして、日常的にいろいろな法律問題が発生しておりますがそれを専門的にアドバイスいただける専門弁護士先生は非常に数が少のうございます。かといって企業の方でこれを育てるというのもものすごい時間と労力が掛かりまして、なかなか追い付かない面がございまして、やはりこの辺は外部の専門弁護士に是非お願いをしたいというのが企業の本当の切実なニーズでございます。
ここから先は私の意見になりますのでお聞きいただきたいと思うのですが、今日の議題にも関連いたしますけれども、今の事務局のお話もそうなのですけれども、結局弁護士というのはフル規格でないといかぬのだという立場が非常に強いのです。そのためには、司法試験の合格と司法修習がマストであると。逆にこれさえあればフル規格になるのだというお立場が大変強いように思いますけれども、本当にそうなのだろうかと。
例えば、医療のことをお考えいただくと分かるのですが、ホームドクターもいっぱいおりますけれども、いろいろなお医者さんがいらっしゃいまして、外科もあれば小児科もあるし、脳外科もあれば心臓外科もあると、精神科もあるというように非常に専門化、細分化されております。それでもって総合的に国民の健康を支えておるというのが医療の実態でございます。それが更に細分化、専門化の方向に進んでいくだろうと予測されます。社会の病気であります法的な紛争問題にしましても、やはり同じでないかという気がするわけです。余りフル規格にとらわれておりますと今申し上げました専門性というものが弱くなってしまって、社会全体としてどうなのだろうかと。どんどんグローバル化も進んでいきますし、国民の生活も多様化していくわけですから、やはり平山先生もおっしゃいましたが、いわゆるリーガル・プロフェッションをもっと育てていく必要があるのではないかというような感じを持っておるわけです。
そういう観点からしますと、私は企業法務だけではなくて、先ほど木村先生もおっしゃいました、いろいろな分野から多様な法律家が出てきて、そういう人たちが必要なサービスを自分の専門分野において提供すると。もちろん、一定の資質なり能力は担保されていなければいかぬと思いますけれども、皆が同じように金太郎飴である必要は全くないのではないかというような感じを持っておりまして、企業法務の御議論のときにその辺も少し念頭に置いてやっていただいたら大変ありがたいなと思い、とりあえず申し上げたいと思います。
【伊藤座長】 分かりました。もう御意見でも結構ですからおっしゃってください。どうぞ、木村委員。
【木村委員】 中川委員から大変に詳しい御説明を聞いて、私も知らないことがいっぱいあったものですから、大変に勉強になってこういう機会はありがたいことだと思って心から感謝申し上げます。ただ1点だけ、一番最後で私の意見も引用されてくださって大変ありがたかったのですが、医師の専門性の問題と社会的な医師としての法律家の問題に関連して、医療はジェネラル・プラクティショナーみたいなのもあり、非常に専門化する人もいるということですが、出発点のところは医師の場合も非常に幅広く知識を試される国家試験、私も厚労省の医師の国家試験の委員をしているのですけれども、そこでは医学部の勉強に基づいて非常に幅広く全般的な知識をきちんと試験して、そういう国家試験を通って医師になって、それぞれ専門化していくというのがありますので、最初から専門家とジェネラル・プラクティショナーに分かれているのではないという点です。
一応そういう点で医師国家試験は医療の全般的な知識を国として国家試験として行っているという点は大事なポイントだと思うのです。ですからそういう意味ではいわゆる法律家としての資質を司法試験できちんと考査するということは非常に意味があると思うのですが、中川委員が一番最後に言われましたように、社会的な変動とリーガル・プロフェッションの社会的な役割の変化や多様な経験と知識と教養を持った人がいろいろな形に出ていくということの意味は大変に大きいものがあるのではないか、そういう意味から中川委員と全く同じ見解でございます。
【伊藤座長】 この問題は次回も引き続き議論をいたしますので申し訳ございませんが、田中委員と岡田委員から意見をいただいて次回に続けたいと思います。どうぞ、田中委員。
【田中委員】 日弁連と中川委員にお聞きしたいのですが、司法試験に受かった企業法務担当者について、日弁連の条件に企業法務担当者については、相当程度の経験を有する弁護士の在籍する企業の法務部門において、その弁護士の指導の下で云々とありますけれども、私があちこちから聞いた限りでは、企業法務で弁護士の指導の下に日常的な業務をやっているというケースは非常に少なくて、この条件から言いますと、顧問弁護的なものは入らないわけでして、こういう弁護士の在籍する企業の法務部門の下において弁護士の指導の下で云々という条件は、私の知っている限りでは非常に非現実的な要件であって、司法試験に受かってかつ企業法務の一定の経験者をこの際に活用しようという趣旨から見ると、大分ずれているような感じがいたします。この点、日弁連には、このような条件をおっしゃる趣旨と、中川委員には、実際にこういうことを本当に行われているのは一体どの程度あるのかという実態を少し教えていただきたいと思います。
【日弁連(伊礼副会長)】 確かに中川さんがおっしゃいましたように、日本の企業法務の中で弁護士がどれだけコミットしているかということを考えた場合に、非常に少ないということは今日の資料からも明らかになっておりまして、我々が調べた限りでも相当少ないということは認めざるを得ないのですけれども、翻って考えますとどんなに長い間企業法務の中にいましても仮に弁護士資格を得るということになった場合には、弁護士が一体どういうことをやっているのか、弁護士倫理はどういうことが守られているのかということ、あるいは先ほど言いました刑事弁護などにつきまして、まるっきり情報として入ってこないであろうと。指導弁護士として企業内におられれば、その先生からこういう問題はどうやるのだという情報の伝達がスムーズに行われまして、弁護士になるだけの知識や情報を得られると思うのですけれども、それが全然得られないような状態の中で法曹資格を与える要件に加えるというのは相当無理があるのではないかというような考え方から、やはり弁護士がいるというところで、それなりに日常的なトレーニングを受けられた人に弁護士資格を与えるべきではないかという発想からそうなっているのです。
現在は少ないけれども、これからは企業法務にたくさん弁護士が入っていくというような状態が日常的に存在するということが予想されまして、現に日弁連全体の動きでも企業法務に入ってもいいという若い先生がたくさんおりますので、そういう状態になればその弁護士から一応試験を受かった人たちも十分トレーニングを受けて、この制度それ自体が将来的にはスムーズに回っていくだろうという思いで表明しておるということであります。
【伊藤座長】 まだ、そこは議論が続くと思いますけれども次回もございますので。では岡田委員お願いします。
【岡田委員】 今、お話を聞いていて、先ほど事務局の方から説明がありましたポストではなく事務に着目するということと、個々人ごとに判定するという部分が、今の皆さんの意見を聞いていると、それから弁護士会の意見の中にも入っていないのですが、私はここの部分が少し気になっているので、5年でいいか10年でいいかとか、実務経験のみでいいかということだけではどうなのかと思っているのですが、それは私だけでしょうか。
むしろ、こちらの方が企業によって当然同じ企業法務をやっていましても、レベルも違うだろうし、仕事の内容も違うと思うのです。ですからそれを単純に10年の経験でいいということではなくて、やはり何らかその前にふるいにかける必要があるのではないかと思ったもので、せっかく4つ出していただいたのに前の2つが抜けているような感じがしたのですけれども。
【小林参事官】 事務局の問題提起といたしましてはその2点も必要だろうということで申し上げたわけでございまして、おっしゃるように企業法務といっても、先ほど中川委員から御紹介があったように、企業の規模も法務部の組織の形態も違いますし、そこで扱われている業務内容も恐らく千差万別ですので、そういった中で社会的に活用するに値するようなものを絞り込んでいく必要があるわけですけれども、それはできるだけ対象となる業務をまず明確化するということと、そしてそこをいくら明確化したとしても、結局該当される可能性のある候補者の方がそれに値するかどうかは、やはり個々に判断せざるを得ないのではないかということを前提として御議論をしていただくということで申し上げたので事務局としてはそういう仕組みは必要だろうと考えております。
【伊藤座長】 その点また御意見あると思いますが、次回にまたお願いいたします。
それでは、もう一つ報告と質疑をお願いしたい事項がございます。人事評価研究会の報告書でございますが、この報告書につきまして、最高裁から報告をお願いしたいと思います。
では、金井さんどうぞよろしくお願いします。
【最高裁(金井人事局参事官)】 最高裁の金井でございます。今、座長から御紹介ありました点について御報告させていただきたいと思います。
「裁判官の人事評価の在り方に関する研究会」は、最高裁の事務総局に設置されておりました研究会でございますけれども、7月16日に報告書が取りまとめられて提出されました。お手元に資料として配らせていただいておりますが、報告書と、その他に研究会報告の概要というペーパーも配られているかと思いますので、本日は概要というペーパーに即しまして中身について多少御説明させていただきたいと思っております。
人事評価の在り方に関する研究会ですけれども、概要ペーパーの冒頭に記載させていただいたような基本的な考え方で多角的、総合的に検討した結果を報告書という形で報告したわけでございます。そこで、具体的にどんな内容の報告になっているかというところをざっと御紹介させていただきたいと思います。
まず、概要ペーパーの「1 評価の目的」というところでございます。
人事評価の在り方を検討するに当たっては、評価の目的をどこに置くのかというところをはっきりさせなければいけないという問題意識から、検討会では、お手元のペーパーの枠囲いに書かれておりますような2つの目的が裁判官の人事評価の場合には挙げられるのではないかということでございまして、そういう認識の下に報告がされております。
なお、その中で○に書かれている事柄ですけれども、研究会の議論の中で、こういった目的からいたしますと、裁判官の人事評価においては、基本的には、短期的な視点からの明確なランク付けといったものは必ずしも必要ではなくて、むしろ長期的な視点からの評価、その集積が重要であるという研究結果になっております。
これまでの裁判官の人事評価におきましても、長い期間をかけて多くの者が見るということによりまして、評価の客観性・公平性が保たれるという考え方の下に人事評価がされてきたという認識もこの報告書の本体に記載されているところでございます。
次に2の基本的な理念をどうするかという問題でございます。ここは、研究会での議論の結果、枠の中に書かれておりますAからGまで7つの基本的な理念の下に評価制度を考えていったらどうかという提言になっております。
本日は、この中で一番重要と思われます「A裁判官の職権行使の独立や職務の実情への配慮」の問題につきまして、若干御説明させていただきたいと思います。
裁判官の場合に、独立して裁判権を行使する。その職務に関しては、他からは一切干渉を受けることがない。そういう意味で、裁判事務の処理につきましては、上司からの指揮・監督に服することは一切ないわけです。また、そういったことがあってはならないわけでございます。
少し具体的に申し上げますと、合議事件の処理を考えてみましても、合議体の構成員は、それぞれ一人ひとりの裁判官が独立して同じ発言権と評決権を持っております。したがいまして、合議体の構成員は3人で構成されていますけれども、裁判長が、一番若い左陪席裁判官との議論においても同じ立場で議論していく。ですから、左陪席裁判官も同じ一票を持っているという基本的な原則が貫かれているわけでございます。ですから、裁判事務処理の場面では、合議の中でもそうでございますし、また同じ部に属している右陪席裁判官が単独で事件で処理しているというような場合に、裁判長が右陪席の単独の事件処理にいろいろくちばしをはさむというようなことも一切許されないというのが裁判官の仕事の最も基本的な特殊性ということができようかと思います。
研究会の報告の中では、こういった裁判官の職務の特性を十分に踏まえた評価制度にすべきであるということがうたわれております。
それが最も端的に記載されていますのが、1ページの一番下の○のところでございますけれども、人事評価制度を考えていく上では、こういった観点からきちんとした評価制度を用意していくべきであるというのが今回の報告書の一番基本的なところになっております。
次に概要ペーパーの2ページ目をごらんいただきたいと思いますけれども、だんだん具体的になってくるわけですが、裁判官の評価を考える場合に、評価基準、評価の項目、評価の形式をどうしていくかというところが問題になるわけですが、この点につきまして、まず評価の項目を考えていく場合には、その前提として裁判官に求められる資質・能力をどう考えていったらいいかということが議論になりました。
その中で、研究会におきましては、枠の中に記載されたような議論がされております。裁判官ですので、まず事件処理能力が基本になることは間違いないわけですが、そのほかに組織を運営していく能力とか、そういった能力の背後にあって、それを支えていく基盤としての人格的資質も求められるという報告になってございます。
「(2)評価項目及び評価形式の在り方」というところをごらんいただきたいと思いますけれども、そういった資質・能力を量っていく上では、どういう評価形式の在り方を考えたらいいかということでございますが、諸外国の例なども参考にしながら検討した結果、裁判官の評価につきまして(2)の下に書いてある枠囲いの中に記載されているような事柄が打ち出されているわけでございます。
詳細な評価項目を設定して、それぞれについて段階式に評価するというのが一般的な評価のイメージかと思いますが、裁判官の場合にそういう方式ではなく、大きな項目について基本的に文章式で評価する。しかも、その評価の際に、どういう視点で評価したらいいのかという評価の視点を具体的に明らかにするといった方式が打ち出されております。具体的にどういう項目、どういう視点になっているかということにつきましては、後ろの方に別紙1ということで付けてございますので、それをごらんいただけたらと思います。
次に、評価の手続の関係でございます。ここもいろいろな論点がございますが、まず、評価者をどうするかということでございますが、3ページの上の枠囲いの中に記載されているような提言がされております。
地方裁判所・家庭裁判所に所属する裁判官につきましては、地・家裁の所長を第一次評価者といたしまして、高裁長官を第二次評価者としてはどうだろう、高裁所属の裁判官については、高裁長官を評価者としてはどうかという提言でございます。
「(2)評価情報の収集方法」につきましても、種々検討会では議論されました。ア、イというようなところの問題もございますけれども、本日は、主にかなり時間をかけて議論されました本人の意向を汲み取る方法、それから、裁判所外部の見方に配慮する方法の2つにつきまして、研究会でどんなことが提言されているのかを御報告させていただきたいと思います。
まず「ウ 本人の意向を汲み取る方法」に関してでございますが、3ページの下の方に記載させていただいております。基本的には、個々の裁判官から自己申告書面の任意的な提出制度、それを受けまして評価者が個々の裁判官と面談する制度を設けてはどうかという提言になってございます。
こういった制度を設ける意味、趣旨につきましては、研究会では3ページの一番下の○に書かれておりますが、3つほど意義を述べております。
1つ目は、評価の客観性を担保する上で非常に有益である。
2つ目としまして、評価者の認識を本人にフィードバックするといった形を取ることによりまして、裁判官の自己研さんとか、能力開発に資することになるのではないかということです。
3つ目といたしまして、評価に対する本人の納得性を高めることにもつながるということ。
こういった3つが考えられまして、特に面談につきましては、大規模庁においては、その実施に膨大な時間を要することになるわけですけれども、こういった仕組み、面談の制度は、新しい人事評価制度の中で重要な役割を担うことが期待されますので、充実した面談が行われるように望みたいという意見が付されております。
4ページの上の方に「エ 裁判所外部の見方に配慮する方法」というところでございますけれども、研究会の報告では、枠囲いに記載されているような提言になっております。具体的には、事件関係者その他の部外の方々を対象とするアンケート調査を行うことが相当でないという結論になっているわけですが、しかしながら、裁判所の外からもたらされる裁判官の執務状況に関する情報につきましては、評価者は、裁判官の職権行使の独立に配慮しながら、取捨選択の上、評価に活用することが求められるとされているところでございます。
研究会では、裁判官がその職務を行うに当たって、独善に陥ることは最も避けなければならないことである、当事者を始め、裁判所外の関係者の声に謙虚に耳を傾ける姿勢を持つことが重要であるという認識が研究会報告書の本体の中に示されております。
そういう認識の下で、いろいろ議論がされたわけですけれども、この枠囲いの中に書かれているような意見が多数を占めるに至ったところでございます。
「(3)評価の実施時期」につきましては、毎年一定の時期に評価を行うことが適当であるとされております。
次に4ページの下の方になりますが「5 本人への開示及び不服がある場合の手続」の関係でございますが、まず「(1)本人への開示」のところにつきましては、枠囲いの中に記載されているとおりでございまして、開示を希望する者に対して、評価書面そのものの写しを交付することによって、言わば全面的に開示する方法を取ってはどうかというのが今回の研究会の提言でございます。
人事評価を開示するということにつきましては、メリット、デメリットいろいろ考えられるわけですけれども、裁判官の人事評価に関する限りは、裁判官の職権行使の独立性に影響を及ぼすような評価が行われているのではないかという疑念をいささかとも生じさせないことが必要であるという認識に立ちまして、研究会の報告では、今申し上げたような形の開示制度を取ってはどうかという提言になってございます。
5ページになりますが「(2)不服がある場合の手続」につきまして、枠囲いに記載されているような仕組みが提言されております。
被評価者が評価の内容について不服を述べる機会を保障する。それを受けまして、評価者が評価内容を改めて考え直す、再考するという手続を設けてはどうかということが基本になっております。
「6 制度化の方法」というところで書かせていただきましたが、研究会の議論の中では、ここに書いてあるような理由から、最高裁判所の規則で評価の制度化をすることが憲法の趣旨にかなうのではないかという意見になっております。
最後になりますが、研究会が提言した人事評価制度につきましては、この報告を踏まえまして、今後最高裁においてどういう形で整備を進めていくか検討を進めていきたいと思っております。
最高裁が作成した司法制度改革推進計画の要綱の上では、平成15年度末までに所要の措置を講ずるという計画になっております。
したがいまして、これから検討を進めまして、当検討会におきましても、最高裁における検討状況を御報告し、そこでの意見も踏まえまして、平成15年の末までの間に制度を整備することを目指したいと考えております。
研究会の報告ですけれども、報告書は概要ペーパーの「7 終わりに」というところに記載されていますとおり、これから申し上げますようなメッセージをもって報告書を締めくくっております。
裁判官の人事評価制度というのは、裁判官の資質・能力を適正に評価でき、その意欲の向上に資するものでなければならない。他方、裁判官の職務が多面的また総合的な資質・能力を要するものであることに加えまして、評価資料の収集についても、職務、身分の特性から特別な配慮を要する点があるということで、評価の実施にはもともと大きな困難を伴っているわけですが、それだけに制度化や実施の段階において様々な問題に直面することが予想される。研究会が示した考え方を踏まえて、新たな裁判官の人事評価制度をきちんと整備することによりまして、裁判官の質を高め、国民の裁判官に対する信頼を一層高めていくということに努力しなければならないと指摘されているところでありまして、これからの検討におきましては、ここもきちんと踏まえた制度の検討をしていきたいと考えているところでございます。
早口でしたけれども、以上でございます。
【伊藤座長】 大変多岐にわたって重要な提言をされている報告書について簡潔に御説明いただきましたが、若干の時間、質問、御意見等を承りたいと存じます。
では、岡田委員から。
【岡田委員】 2つ質問があるのですけれども、評価者のところで審議会の意見書は評価権者という言葉を使っていたように思うのですが、これを見ると評価者ということで、そうすると評価権者というのはだれなのか、もし評価権者がいないとすれば、この評価者の責任というのはどうなのかということ。
あと、裁判官に関して、裁判所外から言わば苦情みたいにものも入ってくるかと思いますけれども、そういう苦情というのは、本人に知らされるのか、またそれはどの時点で知らされるのか、その2つのことを知りたいと思います。
【最高裁(金井人事局参事官)】 まず、評価者の問題でございます。この点は、実は報告書の本体を少しごらんいただけたらと思いますが、31ページでございます。この(注)の部分で議論されているところでございます。
先ほど早口で申し上げたわけですけれども、裁判官の人事評価の目的とか、裁判官の職務の特性を考えてますと、裁判官の場合の評価というのは、どういうことが基本になるべきかと言いますと、長期間かけてその人の力量が浮き彫りになるような形の評価制度が適切ではないか。そうなりますと、結局その評価というのは、毎年毎年の評価を通じて、評価の情報を蓄積していく、その結果おのずと個々の裁判官の力量が長期間の間に明らかになるという仕組みがいいのではないかということが一つ言われているわけです。
また、毎年毎年、この人はAの裁判官だ、Bの裁判官だというランク付けをする必要性がないというところも考慮されまして、結局そうなりますと、評価情報を提供する立場に立つという趣旨で評価者とした方が実態に合うのではないかということがこの研究会の考え方であると思います。
また、評価がそういうことだとしますと、最終的に評価権者ということを決めて、毎年Aの裁判官、Bの裁判官とする必要はないというのがこの結論でございます。そういった考え方から評価権者がだれかということよりは、むしろ評価の情報の提供者をどうしたらいいかということの方がより重要だということで、こういう報告になっております。
2番目の外部から裁判官について、いろいろな問題点の指摘がされた場合に、どういう時期にどういう形で伝わるかということでございますけれども、実は、ここが非常に難しい問題でございまして、裁判官の職権行使の独立の原則からいたしますと、例えばクレームが事務局に入ってくるという場合に、裁判官が現在担当している事件についてこういうクレームが入ってきましたということをストレートに裁判官に伝えていいものかどうかというのがまず問題になります。
個々の審理に影響が及ばないような形でそれがされていかなければならないということでございますので、そこはこれまではどうしてきたかと言いますと、やはり事務局なり、最終的には、地方裁判所であれば、所長のところで事実関係について十分吟味する。本当に重要な事柄であれば、それが何らかの形で裁判官に伝わるようにしなければいけないのですが、しかし、その際にも個々の裁判官の職権行使の独立との関係で、十分配慮しながら話をしていくということになりますので、当事者から寄せられたクレームとか、外部から寄せられたクレームの内容によって対応が変わってくるということで、一概にこういう時期にこういう形でということはなかなか申し上げられないことになっております。
そういう問題もございまして、研究会においてもそういうものを直ちに評価に反映させるのはやはり難しい問題があるということを考慮されて、先ほど申し上げたような報告になったものと考えます。
【岡田委員】 ありがとうございました。
【伊藤座長】 では、木村委員どうぞ。
【木村委員】 20回にわたる研究会の非常に熱心な討議を踏まえて、こういうものが出てきたことは、委員の一人として、お働きに心から感謝を申し上げたいと思います。
これは、座長にお伺いしたいのでありますけれども、本日出てきた書類に基づいて、また我々の検討会では、ある程度討議を行うという時間もあるわけでございますね。
【伊藤座長】 それは、本日またここで、まさに御意見をいただいている最中ですが、これは最高裁の方で受け止めていただいて、この研究会の報告書を踏まえて、更に作業を進めていただいて、その結果をまたここで報告していただくと、そのように考えております。
【木村委員】 大変そのシステムは民主的で、我々の検討会にふさわしいやり方だと思いました。座長の御配慮に心から感謝を申し上げたいと思います。
それで、2、3の点を見ますと、大変新しいいろいろ意欲的な、例えば情報源の多様化の問題とか、自己申告制度とか、評価書面の写しの報告とか、不服の申立とか、今まで余り裁判官の評価になじまなかったかもしれないと思うようなことを意欲的に取り上げたということは高く評価したいと思うのです。
ただ、例えば概要の4ページでございますけれども、本文の方を詳しく読んでおりませんけれども、ここも外部の見方に配慮するという方向性が出てきたわけです。裁判所外部からもたらされる裁判官の執務状況に関する情報というのは、例えば特定の裁判官の職務への取り組みが非常に独善的であるとか何とかというようなことになるのかもしれませんが、非常にいいという場合もあるでしょうし、すばらしいというようなこともきっとあるかと思うのですけれども、この執務状況に関する情報というのは、現在までのところ例えばどういうルートで入ってくるのか。もちろん、これは裁判をしているわけですから、弁護士さんとか、あるいは検察官とか、原告とか被告とか、あるいは家族とか、いろいろなルートから入ってくるのだと思うのです。そういうようなことをめぐって、評価者がそれを取捨選択の上というと、評価者も非常に恣意的な取捨選択の主観性によってしまうのではないかという恐れがあるのですが、何か客観的な外部評価ということも含めたようなことの在り方をもう少し積極的にここで取り上げるわけにはいかなかったかなという印象があります。
最初の質問は、要するに裁判所外部からもたらされる情報というのは、具体的に例えばどういうところから、どのようなものがあるのかということを、もしお差し支えがなければお教えいただければと思います。
【最高裁(金井人事局参事官)】 様々な形で入ってくるかと思うのです。まず、裁判官が属している部の書記官室に入ってくることがあると思います。例えば、判決言渡期日が何月何日と予定されていたのだけれども、それが変更されてしまったと、どうしてかということで苦情めいたことで入ってくるということがあるかと思います。
それから、裁判所の中の裁判事務を担当しているセクションと、言わば後方部隊で、庶務的な部の担当をしている事務局部門とございまして、事務局の方にクレームとして入ってくるということがございます。
また、事件関係者で、人によっては所長のところに直接クレームが入ってくるというようなこともございます。多くの場合は、事件処理の上で相手方との関係で不利益に扱われているのではないかというような御疑問があり、それを裁判所にぶつけてくるというようなことがままあるのではなかと思うわけです。
実情としてはそういうことかと思っております。評価者が取捨選択の上というように研究会の提言では書かれているわけですが、これは外部から寄せられるいろいろな御指摘につきましては、事実関係、しかもそれは重要な事柄なので、事件処理の上で考え直してもらわなければならないということもあるかもしれません。それから、思い込み程度の情報というものもあるかもしれません。ですから、裁判所に寄せられるいろいろな情報は様々なのです。それをすべて担当の裁判官にぶつけることが本当にいいのかどうかというところが問題になりまして、やはり評価者の方で事実関係をきちんと確認して、本当に問題なものにつきましては、裁判官本人に確認した上で事情を十分に踏まえて評価に反映させていくという仕組みを取ってはどうかというのが今回の提言になっていると思います。
【木村委員】 この論議の過程で、そういう内部情報を例えばコミッティーでやるというような話は一切出てこなかったのですか。人事評価に関連して、例えば外部の人も入れて、これは内部的な、もちろん裁判官の職権の独立というのは大変大きな問題になりますけれども。大学でも第三者の評価とか、そういうことで我々の授業の内容、あるいは研究の内容とかがだんだん世の中にどういう評価されるのか、自分たちだけでいいと思ってやっていても、それがほかの方々から見ると成果が何も社会に還元されていないとか、いろいろな問題があるわけでございますね。そのなようなことに関して、論議の中で評価者の主観による選択ではなくて、コミッティーによる選択みたいなことは、話としては何か出てこなかったでしょうか。
【最高裁(金井人事局参事官)】 外部の方にも入ってもらった機関で評価をしてはどうかという議論は、実は研究会の中ではされておりません。ただ、今回の報告書の中で本体の35ページというところをごらんいただきますと、上から2段落目でございますけれども、裁判官により構成される委員会とか、裁判官会議による評価をしてはどうかというのが議論の1つになりました。これは、今の木村委員が御指摘のものに少し近い事柄かなと思うわけですけれども、これにつきましてはここにいろいろ書かれているのですけれども、エッセンスとしては、今回研究会が提案しておられる評価というのは、個々の裁判官の力量が、特徴が浮かび上がるような文章式の評価にしましょうということになっています。面談もしたり、様々な仕組みを用意していくわけですけれども、そういうことを合議制の委員会組織で本当にやり抜けるのかというところが問題になりまして、最終的には評価者としては地家裁段階であれば所長がやった方がいいだろうと。所長の立場ですと、多くの裁判官についての様々な情報が集積されやすいところですし、ほかの裁判官との比較等々もしながら、情報の取捨選択をして、適切な評価ができるのではないかと、責任を持って評価できるのではないか、そのような議論がされまして、評価者について先ほども申し上げましたような報告になっているということでございます。
もう一つだけ、外部の見方がきちんと反映されなければならないという御指摘はそのとおりだと思っておりまして、それをどういう形でやっていくかというのが大きな課題かと思います。今回の裁判官制度改革の中では、この評価の問題とはちょっと離れるわけですが、裁判官が例えば10年間の任期を満了しますと判事になるとか、判事としての再任の段階がまいります。そういう段階で、本当に判事に任命していいのか、再任していいのかというところの審査をするために、外部の方を交えた諮問機関をつくるというのが審議会意見で提言されておりまして、それを実現していく方向で検討が進められるわけですけれども、そういった形で10年ごとの任命のところでは外部の皆さんの意見がきちんと反映するような仕組みが取られると思いますので、それとセットでお考えいただけたらどうかと思います。
【木村委員】 そういう方向は、大変いいのではないかと思います。
【平山委員】 20回おやりいただいて、報告書を大部なものを拝見しているのですが、例の意見書が出まして直ちに着手されたこと、それから今日までにこういうものをおつくりいただいたことに、本当に敬意を表します。また、金井さんの説明も、内容に基づいて非常に丁寧にやっていただいたと思います。
ただ、我々はこれを読み込んでませんので、踏み込んだ質問は今日はできませんので、座長に後ほどお願いをしたいと思っておりますが、2、3お聞かせいただきたいのですが、端的に言いまして、金井さんの感じでも結構ですけれども、報告書は審議会の意見書の方向を幾つか言っていますね。それに沿って結論としては出ているのか、それともそれは検討の結果、ここは大分違うというところがあるのかどうかを読み込むのにお聞きしておきたい。この前の新聞ですと、外部評価か何かでこれは取り入れないことになったというような記載があったように思いますので、そういう点で金井さんの方がお気づきになっている点がどこかということ。
もう一つは、言わば今度の司法制度改革の中心的なテーマ、裁判所がどう変わるかというようなことは、みんなが関心を持っていますので、そういう意味でこの提案はどうだと、この報告書の中のここを見てほしいというような部分を端的にしていただきますと、我々は夏休みによく読んで感動したいと思うのです。そういう意味で、今日特に強調していただくことがあるのか。
私は、今、散見していまして、キャリアシステムを取っているドイツ、フランスの考え方を何となく基本に置かれているように見えるものですから、その辺りは審議会のペーパーはキャリアシステムを将来ともずっと維持するということではなくて、もちろん法曹一元にそのまま変わるということでもございませんけれども、非常に議論して新しい日本の司法ということを言っていますね。そういう意味で、この報告書の作成過程の研究会は、どういうトーンで行われているかを是非お聞きしたいと思います。
あとは座長にお願いしたいと思います。
【伊藤座長】 3点ほどおっしゃいましたが、いかがでしょうか。
【最高裁(金井人事局参事官)】 まず第1点目の改革審議会意見との関係で、どういう関係になるのかということかと思います。研究会では、司法制度改革審議会の意見を十分に踏まえた議論をしていただいていたかと思います。この報告書の本体でも、そういう意味で第1の3という項目を設けまして、そこでは司法制度改革審議会意見の指摘事項というものを本体の3ページに報告書の中に盛り込んでありまして、それを踏まえた検討がされているものと私自身は受け止めております。
先ほど外部評価と言いますか、そこの問題を指摘されましたけれども、そこはこの報告書ですと44ページをごらんいただきたいわけですが、中ほどに「裁判所外部の見方に配慮する方法」ということで記載がされております。「審議会意見は、『評価に当たっては、…裁判所内部のみではなく裁判所外部の見方に配慮し得るような適切な方法を検討すべきである。』」これが外部評価と言われている事柄なのですが、審議会意見ではこういう意見になっております。では、これではなかなか中身がわかりにくいものですから、審議会でどういう議論がされたのかというところが問題になるかと思います。
研究会では、この44ページの一番下の(注)をごらんいただきたいのですけれども、審議会の審議の際に委員からどういう意見があったかということも、44ページから45ページにかけて記述されておりますが、どうも全体を見てまいりますと、法曹関係者とか裁判利用者の声をそのまま評価に取り入れていくということについては、消極的なニュアンスの意見の方の方が多数であったというような感じがいたしております。それが、この報告書の中にも記載されておりますので、審議会が何を求めていたのかというところも頭に置きながら十分に研究会では議論していただけたものと思っております。
2番目の関係で、今回の報告書の中で、ここが目玉だというところについては、これは受け止め方が様々かと思うのですけれども、裁判所の内部にいる人間として、この報告の中を見てまいりますと、新しい新機軸が幾つか打ち出されております。
先ほど木村委員からも御指摘があったのですが、自己申告をしまして、それを受けて評価者が全裁判官と面談をすると、その中でいろいろな会話をしなから、事実確認をしながら評価に入っていく。その後、希望者には評価書面も全面的に開示するというところが打ち出されております。また、不服がある場合に再考する手続を設けましょうと、こういう一連の手続、これは実はこれまでの裁判官の評価ではほとんどされていなかったことでございまして、これをきちんと裁判官の世界で制度化してやり抜いていくというのは、本当に画期的なことになってくるのではないかと思っております。
今回の報告はそういう内容なのですが、それをきちんと受け止めてどういう形で整備していったらいいのかということを裁判所としてはこれから検討してまいりたいと思っているところです。
3点目、キャリアシステムの御指摘がございました。キャリアシステムを維持するためにこういう評価をしていくべきであるという議論は一切されておりません。ただ、評価の項目をどうするかというようなところの議論の際には、同じような仕組みで運営、制度設計がされている国の評価項目等を参考にしたらどうか、そういう発想で議論がされていたと承知しております。
外国の制度を研究しながら、我が国制度に取り入れていくというのは、なかなか難しいなと今回痛切に感じたわけです。それぞれの制度が持つ文化的な背景、歴史的な背景、社会的な背景、それぞれを踏まえながら議論しなければいけないことだと思っております。また、今回の研究会でも、そういうところを十分に意識しながら、限界を念頭に置きながら、しかし参考になるところは取り入れたらどうかという視点で、議論をいただいた上で、報告をまとめられたものと思っております。
【伊藤座長】 松尾委員、お願いします。
【松尾委員】 では簡単に、裁判官の人事評価の在り方については、これまで裁判所内外でいろいろと意見がありました。中には厳しい批判とも言える意見があったわけですが、こういった問題について真正面から取り組んで研究されたということは、大変意味が大きいと思っております。
私の関心事は、先ほど説明がありましたように、本人に対する開示、不服の手続を明確にされているという点について評価したいと思います。
これは質問になるのですが、基本的に文章式の評価ということになっているのですが、これはそれなりに利点があると思います。しかし、文章式の評価ということになると、やはり評価者の記述、表現によってかなりあいまいな部分もないとは言い切れない。この研究会報告書の本文の30ページのところにも書いてありますけれども、どうしてもそういう部分が出てくる。だとすると、文章式評価のメリット、利点と、チェック項目の段階式評価といった点を加味する形の総合評価によって客観性を担保するという考え方はあってもいいのではなかろうかという感想を持ちますので、その点についてお答えいただきたいと思います。
もう一点は、何と言っても先ほどから出ております、外部の見方に対する問題なのですが、これは私たちから見て大変大きな問題でありまして、確かに改革審議会の意見書の外部の見方というのは何を意味するかは、あいまいな面があるのですけれども、これはこの報告書だけのとらえ方ではなくて、もうちょっと長期間にものを考えて、何らかのいい制度化を考えてみてもいいのではなかろうかと思います。
確かに、個々人の裁判官の問題について、外部が評価するというのは、大変技術的、現実的に難しい問題があろうかと思いますが、裁判官の人事評価というものをどのように考えるのだという視点で、これは最高裁の中央だけの問題ではなくて、個々の裁判所の組織の中に、その地域の外部の人たちを入れて関与させての、長い目で見た裁判官の評価ということも考えてみる必要があるのではなかろうか、それがまさしく改革審議会が指摘している外部の見方に対する配慮の方法ではないかと私は考えおりますので、その点についてお答えいただきたいと思います。
【最高裁(金井人事局参事官)】 2点御質問があったかと思います。まず、最初の文書式評価を基本に段階式評価も取り入れたらどうかという御質問かと思いますが、ここは実は研究会でも結構議論が重ねられたところでございまして、具体的には報告書その本体でまいりますと、25ページ、26ページとその議論の経過が紹介されているところです。今、松尾委員から御指摘がありましたような文章式評価のほかに、一部の項目については段階式できちんと評価をした方がいいのではないかという意見の委員もいらっしゃいました。そういう中で様々な議論がされて、最終的には文書式評価を基本にすることで足りるのではないかというのが多数意見になったという経緯がございます。
そこで、もっとも議論されましたのは、裁判官の評価というものがどういうものであるべきかということなのですが、先ほども出てまいったのですけれども、毎年評価結果をA、B、C、Dと段階式にきちんと決める必要が本当にあるのかどうかという点が議論になりまして、報告書の中に随所で出てくるわけですけれども、裁判官の評価の結果が毎年の人事にそのまま端的に反映していくという形になってございません。例えば、Aだからボーナスが高くなるとか、Aだからいい任地に行くとか、そういう形にはなってないわけです。それはどうしてかと言いますと、裁判官の職権行使の独立を考えた上での人事と評価との関係ということがあるかと思うのですが、そういうところからまいりますと、段階式評価を毎年しなければ本当にいけないのかどうか、それによるメリット・デメリット、両方を十分考えた上での仕組みを提言すべきだという議論が研究会でかなり重ねられまして、今回のような中身になっているということでございます。
もう一つ、外部評価の関係でのお尋ねだったかと思うのですが、やはり長期間にわたる裁判官としての執務ぶりにつきまして、きちんと外部の見方を反映してはどうかという御意見かと思います。それは先ほども申し上げましたような形、要するに再任の時期、判事への任命の時期に指名諮問のための委員会組織がこれからつくられることになると思いますので、そういったところで、その組織の検討の中で、長期にわたる外部の見方というのが反映されていくということになるのではないかと思います。
【伊藤座長】 それでは、最後に。
【中川委員】 今まで裁判官の人事ということを全くボックスの中に入れておられたのを、外へ持ち出された、これは本当に画期的でございますし、大変いいことだと思います。ただ、私ども民間の立場から見ますと、確かに上司がいませんから、独立でお仕事をされている面から見ますと、評価が非常にやりにくいということはよくわかります。ただ、職務上指揮権がないということと、評価ができないということとは別なのではないか、やりにくさはある、けれども本来それは別なのではないかという気もします。これはよくわかりません。
それは横に置いておきましても、長期間の評価、これもある程度わかるのですが、ではその長期間であろうが短期であろうが、それをどう処遇に反映されるかという点が、いま一つ見えないというところが問題ではないかと思っております。
例えば、この報告書の8ページの下の方にもありますが、裁判官に任官をして法曹資格取得20年間は特別な事情がない限り昇給ペースの差を現在設けてないということになっております。こんなものは、我々から見ますと論外でございまして、20年だともうじき定年ですね。だから、そんなことはあり得ないのではないかと。長期でもいいけれども、やはりどこかで昇給なりポストなり、何かに反映できるということがありませんと、単にアナログ、我々はこういう評価のやり方を印象評価と呼んでいるのですが、いわゆるデジタル、数字的な部分が全然ないわけです。態度だけ、行動だけを評価しましてフィードバックするというのは、いわゆる印象評価、アナログ評価なのですが、それ自体問題だという意見もあるかもしれませんが、それはそれとしましても、若干蓄積をした結果を何かに反映するということが評価の最大の要素でございますので、やはり少し考えていただいた方がいいのではないかという感じがいたします。
ちょっと厳しいことを申し上げたかもしれませんけれども、民間人はどんどんやっておりまして、フィードバックなどというのは当たり前でして、全然ほめられも何もしないわけですから、そういうことでございます。
【伊藤座長】 裁判官の職務との関係で、いろいろ難しいと思いますが、金井さん何かお考えがありましたら。
【最高裁(金井人事局参事官)】 研究会の中でいろいろ議論をされまして、実はこの研究会のメンバーは7人おられたわけですけれども、法曹外の有識者の方から、当初は今、中川委員御指摘のような問題提起もされたことがございました。また、民間部門における評価の実情等についてもヒアリングをやっておりまして、そこでも端的に今のような御指摘がされていたわけですけれども、どうもその後いろいろ議論を重ねていきますと、裁判官の仕事、職務を考えていった場合に、なかなか民間企業等でやっている評価制度をそのまま引っ張ってくるのは難しい面があるという結論になったわけでございます。裁判官の仕事を考えてみますと、単に法的な知識だとか法的な技量をはかればいいというだけでは済まないところがあると思います。仕事としては、非常に多面的で、求められる判断というのは総合的な判断が求められますので、結局は評価の仕方が非常に難しいというところが出てくるかと思います。
先ほど御指摘もございましたけれども、情報を収集する手立てが職権行使の独立との関係で、ある程度制約を受けざるを得ない。そういう両面から、研究会においても毎年ランクづけをして、それを直ちに人事に反映させていくというのは難しい面があるということになったものと思います。
審議会の議論でも、中川委員が御指摘されていることと多少関係するところがございまして、例えば裁判官の報酬については、段階をもっと簡素化したらどうかと審議会の意見書に出されております。そこの理由としましては、昇進の有無とか、遅い・早いが、その職権行使の独立性に影響を及さないようにする必要があると。また、裁判官の職務の複雑・困難及び責任の度は、その職務の性質上判然と分類し難いものであるといった2つの理由を挙げまして、裁判官の報酬の刻みをもっと少なくしろと審議会の意見では打ち出されているところなのです。裁判官の場合の評価とそれを人事にどのように反映させていくかというところは、なかなか難しい問題があるようでして、長期間かけて把握できたところに従って人事をしていくべきであるという考え方が、従来原則的な考え方ではなかったかなと思っているところでございます。
【平山委員】 進行につきまして、希望を申し上げてよろしいですか。この問題は、最初にも申し上げましたけれども、非常に大きな、弁護士会の改革などは比ではございませんで、立派な日本の裁判官改革というのが、今まで裁判所がどうやってこられたという問題ではなくて、審議会で取り上げている問題ですので、是非我々はこのペーパーを夏によく読み込みまして、もう一度検討させていただくような、9月でいいと思いますけれども、やっておいた方が、裁判所でこれからこれに基づいて具体化をやっていかれるのは、それで是非やっていただくとしまして、我々もさっき木村委員のお話もありましたけれども、関心を持って、きちんと読み込んでサポートしていくようなことを考えないといけないのかと思っておりまして、ただ今日の金井さんの説明だけでわかりましたという訳にはまいらないと思いますので、是非御配慮いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【伊藤座長】 皆さんの御意見を、なおどういう形でお伝えするかについては、事務局でも考えてもらうようにいたします。
それでは、大変貴重な御意見ありがとうございました。最高裁では、この報告書に基づいて、制度の検討をされることになりますが、当然本日の御意見などについては十分御参考にしていただきたいと思います。
推進計画では、人事評価につきましては、透明性・客観性を確保するための仕組みを整備すると、最高裁における検討状況を踏まえた上で検討し、なお必要な場合には設置期限までに所要の処置を講ずるということになっておりますので、時期を見て最高裁から更に検討状況について、ここでの説明をお願いして、それに対して当検討会で検討するという、先ほどの木村委員からの御質問にもございましたが、そういうことでやっていきたいと思います。
大分予定を過ぎておりますので、何かございますか。
【最高裁(金井人事局参事官)】 今の点ですけれども、裁判所といたしましても、今、座長からの御説明のような形、報告書が出されたばかりですので、これからどういう形で制度を整備していったらいいかということを検討させていただきまして、姿ができた段階でこの検討会に御報告すると。その上で、意見をちょうだいいたしまして、その先の制度化を進めていくというようなやり方をさせていただけたらと思っております。
【伊藤座長】 どうもありがとうございました。それでは、大分予定した時刻が過ぎておりますが、本日の議事はこの辺りで終了したいと思います。
次回は、8月29日、午前10時から午後0時まで、本日に引き続きまして、司法試験合格後に民間等における一定の実務経験を経た者に対して、法曹資格の付与を行うための具体的条件を含めた制度整備の問題について議論をしていただくことにいたします。
なお恒例ですが、検討会の模様につきましては、会議終了後私から報道関係の方に対しまして、いわゆる記者レクを行います。
(以上)