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法曹制度検討会(第8回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)

1 日時
平成14年8月29日(木)10:00〜12:10

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員) 伊藤 眞(座長)、岡田ヒロミ、奥野正寛、小貫芳信、釜田泰介、木村利人、 佐々木茂美、田中成明、中川英彦、平山正剛、松尾龍彦(敬称略)
(説明者) 明賀英樹(日本弁護士連合会司法改革調査室嘱託)
金井康雄(最高裁判所事務総局人事局参事官)
(事務局) 山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、植村稔参事官、小林徹参事官

4 議題
(1)「裁判官の人事評価の在り方に関する研究会報告書」について
(2)企業法務等の位置付け−司法試験合格後に民間等における一定の実務経験を経た者に対して法曹資格の付与を行うための具体的条件を含めた制度整備
(3)その他

5 配布資料
【事務局配布資料】
[民間等における実務経験を経た者に対する法曹資格の付与]
○資料8−1 「企業法務等の位置付け」について(補足版)

【日弁連、最高裁配布資料】
○資料 いわゆる非常勤裁判官制度の創設について(弁護士任官等に関する協議会の協議の取りまとめ)(平成14年8月23日最高裁、日弁連)

【委員配布資料】
○「司法制度改革審議会意見書」と「裁判官の人事評価の在り方に関する研究会報告書」の異同について(平山委員)

6 議事
【伊藤座長】それでは、所定の時刻でございますので、第8回の「法曹制度検討会」を始めさせていただきます。御多忙の中、お集まりいただきましてありがとうございます。
 まず、議事に先立ちまして、事務局から配布資料の説明ないし確認をお願いいたします。

【植村参事官】それでは、配布資料の確認をさせていただきます。本日事務局から資料8−1を配らせていただいております。それから、席上配布資料といたしまして、司法試験合格後に民間等における一定の実務経験を経た者に対して法曹資格の付与を行うための具体的条件を含めた制度整備の問題につきましての事務局資料6−3から6−8を改めて配布させていただいております。
 また、本日の日弁連、最高裁からの御報告に関連いたしまして、第3回検討会で御了解をいただきました民事調停、家事調停の分野に、いわゆる非常勤裁判官制度を導入するための法改正の方向性についての事務局資料3−9を配布させていただいております。
 このほか平山委員から「『司法制度改革審議会意見書』と『裁判官の人事評価の在り方に関する研究会報告書』の異同について」と題する2枚紙の資料の御提出がありました。後ほどの御発言の際にお使いになると伺っております。
 また、最高裁と日弁連から次第に記載いたしましたとおりの資料の御提出がありましたので、御紹介をいたします。
 更に日弁連から前回までに配布されました資料のうち、本日の御議論に必要な資料が席上配布されております。
 以上でございます。

【伊藤座長】それでは、議事の確認をまずさせていただきたいと思います。
 第1は次第にありますとおり、「裁判官の人事評価の在り方に関する研究会の報告書」についてでございます。今、事務局から話がございましたとおり、平山委員から、この段階で研究会の報告書について意見を述べておきたいというお話がございましたので、前回に引き続きまして、この問題について議事を行うこととさせていただきまして、具体的には平山委員に御意見を述べていただきたいと存じます。その他の委員の方もこの段階で意見をおっしゃりたいという場合には、そのようにお願いをいたします。
 議題の第2でございますが、これは前回に引き続きまして、司法試験合格後民間等における一定の実務経験を経た者に対して法曹資格の付与を行うための具体的条件を含めた制度整備の問題につきまして、議論をいただきたいと思います。
 それから、民事調停、家事調停の分野に、いわゆる非常勤裁判官制度を導入するための法改正に関しましては、第3回の検討会で御議論をいただきまして、その方向を出していただいたところでございますけれども、その後、最高裁と日弁連が具体的な制度設計に関する検討を続けてこられまして、既に新聞報道もございましたけれども、このたび合意が得られたということでございますので、関係機関タイムとして報告をいただきたいと思います。
 ただ、時間の関係もございますので、本日のところは簡単な報告をしていただくことといたしまして、内容についての具体的な説明やこれに対する質問等は次回の検討会でお願いしたいと思います。
 そこで早速でございますけれども、人事評価研究会の報告書について、議論をお願いしたいと思います。平山委員に、この報告書についての意見をちょうだいしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【平山委員】ありがとうございます。前回に金井さんの方からも大変わかりやすい行き届いた御説明がございましたが、何分にも私どもの方が資料をいただきまして、間がなくて、読む機会を持っておりませんでしたので、その日はどう読んだらいいかというような質問はいたしておりますけれども、その後、夏休みを利用させていただきまして、少し読み込みをさせていただきました。
 ただ、今の時点では、裁判所の方の本格的な御検討がまた進んでいないわけでございますから、私の方で論評を加えるとかいうことではございませんで、私の方は客観的に意見書と今度の報告書の異同につきまして、今日、配布させていただきましたように、7項目について意見書と報告書を比較いたしてみますと、後ほど申し上げますけれども、私の分析によりますと、異なる部分の方が多いと感じておりまして、そういう点で委員の先生方におかれましても、御検討いただきますときに、御留意賜りたいというのが申し出た趣旨でございます。
 裁判所のこれまでの努力には私は大変敬意を表しておりまして、私個人といたしましては、小さな司法の中で裁判所が最善の努力をされてきたと日頃信じておりますし、日頃からそのように言っております。それによりまして、対外的には立法、行政との関係では、司法全体の独立が維持され、守られてきたと高く評価しております。
 しかし、裁判所内における個々の裁判官の、いわゆる憲法上定められた独立について、人事制度の関係で問題がないのかという論議がなされてきたことも事実であります。
 そこで、審議会意見書は、これまでにも増して、裁判官の独立性に対する国民の信頼感を高めるため、裁判官の人事評価について、透明性、客観性を確保すべきだと述べていると思っております。
 これは私が第3回のこの検討会で法曹制度全体との関係で、どういうことを今回の意見書は言っているかということを分析して出しておりますけれども、その中で3つございまして、高い質、国民的基盤と説明責任、独立性というものが掲げられていると思います。
 その中に、我々の弁護士会もこの3つの中で検討しなければいけないということで1学期に検討いただいているわけでございますが、裁判所につきましても、私が作成し、第3回の検討会で提出いたしましたあの表「法曹制度改革の全体像について」に示しておりますように、高い質の問題、それから国民的基盤、説明責任の問題、そして、3つ目の独立性の問題を十分検討するようにというのが審議会の改革の理念だと思うのです。
 そういう点から見ますと、特にこの人事評価の点につきましては、2番目の説明責任、それから3番目の独立性につきまして、どうすればいいかということを意見書は求めていると思います。そして、1つの考え方と言いますか、方針として透明性、客観性を確保しろということがこの意見書の理念だと思います。
 そういうことで考えてみますと、第1に、この報告書自体は非常に詳細でなるほどと思う点がある力作だと思います。ただ、私は審議会意見書の改革の理念との間に、かなり乖離があるのではないかと心配いたしております。そこで裁判所における今後の具体化作業に当たりましては、その点に十分御配意いただきまして、御検討いただけないだろうかと思うわけであります。
 特に外部評価、利用者評価を否定しておられる点が1つございます。2つ目には、評価者を、地家裁所長、高裁長官とされておりまして、この点も問題があるのではないかと思いますので、十分御検討賜りたいと思います。3つ目には、不服申立を内部手続にして、第三者機関は関与させないということを明確にされておりまして、この点も審議会意見書とは大分乖離があるのではないかと思うわけであります。
 今のところ若干補足的に時間をいただきまして申し上げますと、第1の、外部評価、利用者評価の点につきましては、審議会意見書は裁判所内部のみではなくて、裁判所外部の見方に配慮し得るような適切な方法を検討されたいと言っているわけであります。
 これに対しまして報告書では、裁判所外の意見を積極的に取り入れることは否定されていると考えるわけであります。これが第1点でございます。そういう意味で、審議会意見書が、透明性、客観性を確保しよう。それが21世紀の司法には大事だと言った点に報告書は乖離することにならないかというのが私の第1の心配であります。
 2番目は、評価者を地家裁所長、高裁長官とした点であります。審議会意見書は最終的な評価は最高裁の裁判官会議によりなされることを前提として、第一次的な評価権者を明確化すべきだと明確にうたっているわけでありますが、この点につきまして、報告書では、評価者を地家裁所長、高裁長官としまして、しかも、評価権者ではなくて、評価者でいいのだということをおっしゃっているわけであります。
 それから、最終的に評価がどこで確定するかが少し明らかでないように思いまして、むしろ最高裁判官会議によりなされるということを、あるいは否定されているのかなという心配をするわけであります。この点が2番目の問題点だと思っております。
 3番目は、不服申立を内部手続にして、第三者機関を関与させないとされている点でありまして、これも審議会意見書では評価内容等に関して、評価対象者本人に不服がある場合については、適切な手続を設けるべきだ。適切な手続の読み方でありますけれども、これは私は第三者機関が最終的には不服申立について何らかの関与できるようなものを考えたのではなかろうかと思うわけでありますが、報告書はその点について、記録化するにとどめて、第三者機関の審議は否定するということが明確になっているわけでありまして、ここが審議会意見書との間に理念の乖離があるのか、あるいは私は理念は御理解いただいているけれども、特に裁判官の独立についての方法論に違いがあるのかなと思います。そういう意味では、これから十分議論して、どちらの方法の方が、独立性を保つのにはいいかということはあるのだと思いますけれども、十分その点を審議会意見書との間に違いがあるということを御理解いただいて、裁判所における今後の審理を進めていただきたいと思っているわけであります。
 以上のようなことが、大体私が申し上げたいことでありますが、1つ座長にもお願いしたいのでございますが、私は憲法77条の問題があることは十分承知いたしております。しかし、人事評価制度が最終的に最高裁の規則によって定めるか、あるいは裁判所法によって定めるかという問題はありますけれども、いずれにしても、今次の改革で問題の本質はその決定プロセスに、どのよう内容的、手続的な正当性を与えるかということでございますので、この検討会におきましても、十分この問題を時間をかけて検討して、意見を申し上げた方が日本のためにいいと考えているわけであります。
 以上のようなことで、ちょっと差し出がましいと思いましたけれども、今日意見を申し上げておきたいと思ったわけであります。
 それから、私が本日提出いたしました表「審議会意見書と研究会報告書の異同について」でございますが、これはまさに私が夏休みに読んで、自分の分析をしてみただけでありますので、これが公定力を持った分析とは思っておりませんが、表の結論の部分、7項目について第1項目は評価と人事の関係で両者は「異なる」という判断でございます。
 それから、第一次的な評価権者の明確化という点でやはり「異なる」。それから、評価基準と評価方法についても「異なる」と私は読みました。
 その次の本人の意向を組み取る適切な方法、この点については、私は結論を不明確と書いておりますが、これは「裁判官の人事評価の在り方に関する研究会」も大変努力されていて、「異なる」とは言い切れないかなと、そういう方向性についてかなり近いものかあるかなと思いますので、異同ですから、異でもなく同でもなくて、そういう意味で不明確としているわけであります。趣旨が不明確ということではございません。
 その次の裁判所外部の見方に配慮し得るような適切な方法、これは先ほども申し上げましたけれども、十分御検討いただかないと、改革審議会の理念に乖離してないかと考えるわけであります。
 それから、評価の本人への開示、これは非常に思い切って、この報告書もきちんとこれを押さえておられる。これは私は大変高く評価すべきだと「同じ」になっております。
 最後の不服申立手続でございます。これも私の方は「異なる」と書いておりますが、大変努力されていて、前半の方は同じ趣旨になっているように思うのですが、問題は適切な手続というところであって、私としては審議会は後段の部分を言っていると解するわけでありまして、そうなると、後段については明確に否定されておりますので、「異なる」とさせていただいたというわけであります。
 そういう意味で、意見ではございませんで、今後の裁判所におかれる正式の検討の場において、是非審議会の意見書の改革の理念をもう一度検討し直していただいて、それでもなお裁判官の独立という問題、大変大きな問題ですので、やはりこれがいいというのであれば、そういうこともあり得るのかなと思いますけれども、私自身は今次の司法改革の法曹像について考えると、私は高い質をどう確保するか。それから、国民的な基盤をどう得ていくかということと、それから独立性をどう保つかということが非常に大事だと思っておりますので、とりあえず意見を申し上げておくということであります。以上です。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。そのほかの委員の方で、この段階で報告書につきまして意見を述べておきたいという方がおいでになりましたらお願いいたします。
 では、木村委員からどうぞ。

【木村委員】ただいまの平山委員の問題提起は、大変重要な内容を含んでいると思うのです。私としては、前回の第7回の検討会のときに、伊藤座長に質問を申し上げまして、本日出て来た研究会報告書に基づいて、また我々の検討会ではある程度討議を行うという時間もあるわけでございますかと私がお伺いしましたところ、座長が大変明快に、研究会の報告書を踏まえて更に作業を進めていただいてその結果をここで報告していただくと、そのように考えておりますと大変に明快な御回答をいただきまして、私としては、大変心強められたわけです。これからこの内容につきまして、是非今の平山委員の問題提起を含めまして、我々の検討会の検討課題として大変に重要な意味を持っているので、その点を先般の報告書、また我々のインプットを含めた討議の機会を、いろんな時間の切迫の中で大変かと思いますけれども、座長として御配慮いただいて、何とかそういう時間もきちんと持つようにしていただければと要望しておきたいというのが私の意見でございます。

【伊藤座長】わかりました。それでは、恐れ入れます、岡田委員から先にお願いします。

【岡田委員】前回質問だけして、しり切れとんぼになっているのですが、私も平山委員の指摘と同じで、今回のこの項目の中で本人への開示というのはマルだと思うのです。
 そう考えますと、自己評価と、裁判所内部の見方への評価、配慮、それから不服申立、その辺はサンカクかなという感じがするのです。あとは、意見書とは違うのではないかなという感じがしています。
 総合的に考えますと、以前いただいた資料の中で、評価制度を整備する上での基本理念ということで、公正性とか、納得性とか、そういう項目を7つ挙げてあるのですが、私はこの中で、公正性と透明性と客観性の3つが今回の報告書ではどうも薄いのではないかなという感じがしております。是非とも、先ほど来ありますけれども、日弁連さん、最高裁判所さん、今回は本当に英断をふるっていらっしゃるだけに、7つの項目を是非ともクリアしていただきたいなというのが大きな意見です。
 それから前回質問の中で、裁判官に対しての苦情を本人に知らせているかということを申し上げまして、それは知らせていないということだったのですが、確かに日弁連の綱紀委員会も、個人批判的なものが多いということですから、裁判官に関しても同じだろうとは思いますが、自分に対して外がどういう評価をしている、ないしは誤解をしているということを本人が知るということはとても大事なことではないかと思うのです。
 それに対して裁判所の方の考え方は、何か本人が独立して判決を下すというその辺の判断に迷いがあってはいけないという配慮がとてもあちこちに見えるのですけれども、でも、私はそういう心配は無用ではないかと思うのです。少なくとも裁判官たるものは、自分の責任で判決を出すわけですから、そういう外の意見に戸惑うというようなことはないだろうと。やはり、自分なりに信念を持って判断をされていると思うのですが、どうも裁判所の中でそういう配慮をなさっているような気がして仕方がないという感じです。そういう外からの意見に関しては、正しい場合もあるし、正しくない場合もあると思うのです。正しくないものに関しては、やはりそれは正しくないと本人が主張するチャンスを与える。そこで本人自身も自分に自信が出てくると思うものですから、是非ともそういう機会をこれから先考えていただきたいなと。そうすることが、今回の自己評価とか、本人への開示、不服申立、その辺に影響してくるのではないかなと思いました。
 そういう意味では、私たちから見て、裁判所がとても敷居が高くて、裁判官というのが雲の上の人のような感じがするというのは、やはり何か組織として守られているというか、保護されているという感じがして仕方がないのですが、多分裁判官の方々はそうではなくて、やはり自分自身を裸にしたいというお気持ちもあるのではないかなと思いましたので、大変下世話な意見かもしれないのですけれども、そういうことを少し配慮していただけたらなと思いました。
 最後にもう一つですが、報告書の中で裁判官というのは独立して、上下関係と言うのでしょうか、管理者と言っていいかわからないのですけれども、所長と個人の裁判官というのは、指示・命令の関係にはないですね。ですけれども、行政というのは、指示・命令がありますね。報告書の中ではその辺が行政の指示・命令のところにするっと逃げ込んでいらっしゃるような感じが多々するのです。ですから、やはり裁判官が独立しているのだということから考えれば、所長とか、そういう方々が今回評価するに当たって、変に配慮しながらあえて行政の管理者のところを引用しながらという感じがするものですから、これは私だけの独断かもしれないのですが、その辺のことも何か参考になればと思いました。以上です。

【伊藤座長】ありがとうございました。では、小貫委員お願いします。

【小貫委員】まだ、最高裁の意見をこれからつくる段階で、研究会の報告書の読み方で余り議論するのはいかがなものかと思うのですけれども、ただ、平山委員の御指摘の中で、どうしても気にかかることが1点ございましたので、あえて意見を申し上げておきたいと思います。
 それは、外部評価に配慮するという項目について、全く否定しているのではないかというお話でございました。審議会の意見書でも裁判官の独立に配慮しつつ、こういうことをしなさいということになってございまして、そのような視点でこの報告書を読みますと、外部意見の評価の問題点について指摘が多いものですから、後で書いてある「もっとも」という前向き評価の点が非常に薄くなっているような印象は受けますけれども、やはり審議会の意見書が指摘しているように、裁判官の独立というのは、裁判の生命線ですので、やはりこれは重視しなければいけないだろうと思います。
 そういう観点で、この研究会の報告書を読みますと、やはりいろいろな重要な視点が指摘されているし、納得できる点も多々あるのではなかろうかと思います。
 そういう意味で、報告書の47ページでしたか、裁判所外の声に耳をふさぐものであっては相当ではないと、こういうことを表明しているのでございまして、外部評価に対して配慮することを全く否定していると言うことが相当かどうかは、私はいかがなものかと思いましたので、あえて意見を申し上げさせていただきました。以上です。

【平山委員】その点、私は意見がありますけれども、今、ここでこれ以上議論することではないと思いますので、問題提起だけをしておきたいと思います。

【伊藤座長】わかりました。ほかにいかがでしょうか。どうぞ、松尾委員。

【松尾委員】改革審議会の意見書の読み方ですが、確かに今、話に出ております裁判官の職務執行の独立ということは尊重しなければならないということが大前提にあるのですが、外部評価の件については、意見書はかなり積極的な意思を示されているのではないかと私は思います。そういう観点から、この研究会の報告書を読み、結論的に言いますと、やや不足であるという考えです。
 例えば、46ページから47ページにかけてのくだりなどを読みますと、要するに裁判所外の関係者等の声に謙虚に耳を傾ける姿勢が大事だと言いながら、あとのくだりを読みますと、裁判官の人事評価の資料として裁判所外部からの情報を取り入れることについては、種々の問題があると言っております。そして、以下の内容を見ますと、かなり外部評価を取り入れることについて、消極的、あるいは受け身的な考え方でまとめられているのではないかと報告書については読めると思うのです。
 そうしますと、先ほど申しましたように、改革審議会の意見書でいう外部評価の問題は、私は積極的な意思が示されたものと考えますので、研究会報告書のこの部分については、ややもの足りないのではないかという結論になるわけであります。
 確かに技術的な問題だとか、ではどうすればいいのか、外部評価をどのような形で考えればいいのかと、いろいろと難しい問題があることはわかります。しかし、単に外部の情報も取り入れる、それを取捨選択して活用するということになっておりますが、そこだけの問題として考えるのではなくて、例えば第一次評価した段階、これは地裁、家裁の所長が評価者になっていますが、その第一次評価をした段階で、外部の意見を導入することはできないか。つまり、第一次評価が果たして相当であったかどうかということを外部の目から見るシステム。例えば、全部の裁判官を対象にするのは大変だと思いますが、評価の過程でいささか問題になったようなケース、裁判官の評価の結論をどのように第一次評価者である地家裁の所長は評価したのか。あるいは外部の情報があった場合に、それがどのように取捨選択して評価に活用したのか、わかりやすく言えば、そういった部分についてチェックするような形で外部の意見をそこに導入する。そして、第二次評価者である高裁長官のところに上げる形にする。こういうことも一つの考え方でありますが、そういったことを検討できないかどうか。
 最高裁は、具体的に制度設計するということで、今後いろいろ検討されることになっております。繰り返して申しますが、外部評価というものを単に外部の情報を入れるということではなくて、第一次評価の段階で外部の1つの委員会みたいなものを作ったとすれば、どういう意見がそこに出てくるのか、評価の仕方についてどう考えているのか、そうした意味の外部の見方を導入してもいいのではなかろうかと考えます。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。それでは、前回も申し上げましたし、先ほど木村委員からも言及していただきましたけれども、意見書を踏まえて最高裁で具体的な制度の検討をされることになるかと思いますが、その際には本日委員の皆様から出していただいた意見につきましても、十分参考にしていただければと存じます。
 その上で、この問題につきましては、時期を見まして最高裁から更に具体的な制度の検討状況を説明していただきまして、当検討会でその内容についての審議をしていただくということでお願いしたいと存じます。
 それでは、引き続きまして、民間等における実務経験を経た者に対する法曹資格の付与につきまして、審議をお願いいたします。前回に引き続きでございますが、法曹資格の付与を行うための具体的条件を含めた法整備についての議論をお願いしたいと存じます。
 まず、資料8−1につきまして、事務局から説明をお願いいたします。

【小林参事官】それでは、資料8−1をご覧いただきたいと思います。
 この資料8−1は、前回御説明をさせていただきました際に使用しました資料の6−3でございますけれども、この資料につきまして、前回の質疑等も踏まえまして、もう少し論点を詳しく記述するよう補足して作成したものでございます。前回、かなり駆け足で御説明申し上げたので、お聞き苦しい点もあったかと思いますけれども、そういう意味で若干説明が重複する部分もございますけれども、おさらいもかねて簡単に御説明させていただきたいと思います。
 資料8−1の1ページは特に変更はございませんので、2ページ目から御説明をさせていただきたいと思います。「検討すべき課題(補足版)」ということでございますけれども、①の中の「検討の対象として考えられるもの」につきましては変更はございません。同じく、①の中の「なお」書きの部分が今回追加した部分でございまして、いわゆる「等」についての補足的な御説明でございます。
 前回、木村委員の方から民間等となっているが、その「等」には例えば国際機関、あるいは財団といったものは考えられないのか、という御質問があったかと思います。その際、私の方から御説明申し上げましたように、法律に関する実務経験の中でも社会的に活用を図るべき高度の専門性を有すると、客観的に評価することが可能かどうかということがポイントではないかというふうに考えております。
 そのような評価が可能な業務であれば、必ずしもプライベートな企業に限定する必要はないのではないかと考えております。
 したがいまして、現時点でこれらの対象でございますが、企業法務は前回御説明したかと思いますけれども、その他、改革審での議論の過程で挙がりました国会議員、それから公務員制度改革、行政改革との関係で公務員という辺りが対象になるかと考えております。国会議員との関連で申し上げれば、地方議会議員についても御議論していただく必要があるのではないかと考えております。同じような意味で、地方公務員についても、この公務員の中に含んで考えているわけであります。
 次に②の「付与する『法曹資格』の内容をどのように考えるか。」という部分については前回と変更ございません。弁護士となる資格というふうに考えることでどうかということでございます。
 その次の③の「当該実務経験を、法曹資格の付与に当たって、どう評価するか。」ということにつきましては、前回、口頭で御説明した4つの論点を少し詳しく記述させていただいております。
 1つ目の○につきましては、現行の弁護士法第5条第2号、3ページ目の参考のところに掲げてございますが、これが今、いわゆる修習を経ずして弁護士資格が与えられるものでございます。この現行弁護士法第5条第2号につきましては、いわば何々省の職員でありますとか、あるいは参事官でありますとか、ポストを指定しているわけでございますけれども、今回対象として考えている企業法務と公務員につきましては、業務が非常に多様でございますので、そういった多様性を配慮しますと、もう少しきめ細かく、むしろ評価すべき業務の内容に着目する必要があるのではないかということでございます。例えば、企業法務に関しましては裁判手続関係でありますとか、あるいはいわゆる予防法務としての契約関係業務などが考えられますし、また、公務員に関しましては同じように裁判手続でありますとか、準司法的な手続、そういったものもございますし、あるいは法令の立案、そういった業務が例として挙げられるのではないかと考えられます。
 勿論、このように具体的に規定をしていくということは、正直申し上げて技術的にはなかなか難しい面があることも事実でございますし、したがいまして、その具体的な当てはめにつきましては、4つ目の○にありますように、個々人ごとに判定をしていくということが必要になってくるわけでございますけれども、安易な資格付与になることなく、他方、社会的なニーズに的確に応えていくためには、このようなスキームが必要になるのではないかと考えております。
 それから、2つ目の○でございますが、実務経験の期間の問題でございます。先ほど申しました弁護士法第5条第2号は、基本的には司法関係、立法関係の組織の業務でございまして、その業務内容もかなり定型的な評価が可能なものが、現行第5条第2号に規定されているわけでございますが、今般検討の対象となっております企業法務、あるいは公務員は、そうした定型的な評価がなかなか難しいものでございます。勿論、そういったものについても、高度の専門性を有するというものにつきましては、これをできるだけ社会的に活用していこうというのが、今般の司法制度改革のねらいと理解しておりますけれども、こういう、いわばこの道何年というような高度の専門性を確保しなければいけないということからすると、必ずしも今の第5条第2号のような5年では十分ではないのではないか、例えば10年程度といったことに代えられないかという問題意識でございます。
 3つ目の○でございますけれども、ここは弁護士としての業務を行うのに必要な実務能力の担保として、現在の第5条第2号のように、経験年数だけで十分であろうかという問題でございます。勿論、司法試験を合格されているわけでございますし、その司法試験合格後に更に相当の実務経験を積んでおられるわけでございますから、例えば法律一般に通ずるような基本的な法律的思考能力、いわゆるリーガル・マインドといっていいのかもしれませんけれども、あるいはまた、法律家、専門家たるにふさわしい識見、こういったものはまず期待されるわけでございますけれども、他方、弁護士として必要なオールラウンドな知識、能力、特に実務的な能力につきましては、実務経験の内容によっても異なるでございましょうし、個々人においてばらつきがあるのではないかということが考えられるわけでございまして、こうした点について、何らかの担保的な措置が必要ではないかという問題意識でございます。具体的には、研修などが考えられるのではないかと思いますけれども、もし、仮に研修が必要ということになりますれば、その内容、実施主体、期間などについて、更に具体的な検討を進める必要があるではないかということでございます。
 4つ目の○につきましては、先ほど申し上げました個々人ごとに判定をする必要があるのではないかということでございますが、その判定につきましては、公正性を担保するという観点からも、国が責任を持って行うべきではないかという問題意識でございます。「なお」書きでございますけれども、少しわかりにくい表現になっておりますが、以上、私が申し上げた4つの点の御説明は、基本的には企業法務でありますとか、あるいは公務員のような、現行第5条第2号に掲げられているものと同様の定型的な評価がなかなか難しいものについての論点でございますが、例えば国会議員のように、そのような定型的な評価が可能と考えられるものにつきましては、以上4点について別途の扱いとするということも考えられるのではないかという問題意識でございます。特に国会議員につきましては、既に第5条第2号に衆議院、もしくは参議院の法制局参事が掲げられてございますが、これらの方々は、いわば国会議員の補助者、事務当局として業務を行っておられる方でございまして、こういったこととのバランスからいっても、これらと同じような扱いをするということも考えられるのではないかという問題意識を「なお」書きとして記述いたしております。
 以上が御説明でございます。

【伊藤座長】それでは、ただいまの事務当局から示していただいた考え方については、十分後から議論の時間を取りますが、とりあえず質問がございましたら、その点に限定して発言をお願いします。

【平山委員】4つほど前回及び今回の小林参事官の御説明に質問をしておきたいと思います。まず第一は、前回の議事録の10ページ辺りのところにございましたが、現行の司法試験と現行の司法修習制度を前提として御議論いただきたいという趣旨の発言がございましたと思うのです。
 田中委員が座長をされている法曹養成制度検討会が既に先行的に行われているという状況がございますが、そういう新しい法科大学院の新司法試験と、いわゆるプロセス教育が実施されることは、もはや避けられない状況と言いますか、当然の状況でございますが、そのことを抜きにして、この問題を議論するのはどうかというのが私の第1の疑問なのです。参事官の説明では、現行制度を前提にやっておけば、きつすぎることはないのではないかという趣旨のことがございますが、逆にきつすぎることにならないかと。例えば、実務経験年数などについて、そういう気もいたしますので、そのことも睨んでこの議論はしておく必要があるのだろうと思うのです。
 一つは、この制度は恐らく恒常的なものを目指していると思うのです。特任検事などの場合は、むしろ補完的なものと私は考えておりますけれども、これは恐らく恒常的なものになってくる。そうなるとこれから改革を行われようとしていることも前提にしておかないと、ちょっと議論を誤るかなという気がしておりまして、1つ質問をしておきたいと思います。
 2つ目は、審議会意見書の88ページの解釈について、事務当局はどういうことでおやりになっているか。つまり、前々回と前回に一定の結論が出ました特任検事への法曹資格の付与が一つでございます。それから、今日の司法試験合格後の修習を行わないで企業法務等の実務経験を経た者への法曹資格の付与、これが2つ目です。
 3つ目は、秋以降にこれから検討予定の簡裁判事、副検事経験者の専門性活用の問題、これは審議会意見書では明確に書き分けられているわけでありますが、小林参事官としては、今申し上げた1、2、3について、基本的差異はあるということで議論しようとされているのか。それとも、それはないということで進めるということなのか。私は今申し上げましたように、今日の問題はむしろ司法修習の代替問題でございますけれども、制度としては恒常的なものになっていくことを意見書はねらっているのではないかと思います。そういう点でどうお考えになっているかをお聞かせ願いたいと思います。
 特に審議会意見書を読みますと、1つ目については、法曹資格の付与を行うための制度整備と書かれておりました。2つ目については、法曹資格の付与を行うための具体的条件を含めた制度整備となっております。3つ目の、簡裁判事・副検事については、単に専門性の活用と書いているわけでありまして、この辺りのことを我々は踏まえて、これからの議論をしておく必要があるかと思いますので、2つ目の質問でございます。
 3つ目は、企業法務等という、この「等」でございますけれども、これにはどこまでやるかということでございますけれども、意見書を見ますと、企業法務関係についてはかなり議論されておりますけれども、例えば公務員も含めて広く措置を採らなければいけないということは、別に議論はまだ行われていないように思いますので、ここであえてその他に広めて、ここでやる必要があるのか、立法化に熟しているかという疑問が若干ありました。特に、私は本件について公務員まで入れてやることになると、相当骨抜きにならないかという気持ちがありまして、私たちは司法修習のお陰で今日あると思っている部分もございまして、これが骨抜きになったら、弁護士法第4条の崩壊になるような気もします。
 弁護士法第4条は、やはり第1条から第3条を受けてあるわけでございまして、そういう意味で、ここはやはり慎重に検討をしておく必要がある。しかし、時代の流れもありますので、第4条自身がいらないというのであれば話は別でありますけれども、そういうところを我々は踏まえておかないと、どこまで広げるかということでございます。それから、先ほどの能力担保措置をどこまで付けるかという問題と非常に深くかかわっているように思うわけでありまして、その点を「等」について、どこまで進めようとされているのかを事務当局としてはどう考えているかお聞きしたいと思います。
 最後に、これは前回の説明で、少しお聞きしておきたいと思いましたのは、法曹資格をこれに付与するといたしまして、例えば実務経験の業務の内容を付与条件として満たしているかどうかという判定とか、あるいは能力担保措置として、例えば試験とか研修を具体的条件とするとなれば、その判定手続の手順といいますか、これはどういうことになっていくのか、つまり、まず1を固めて、それに合格した人が2に行くのか、それとも全体が要件を満たした時点で、「えい、やー」ということで認定することになるのか、その辺の手順がちょっとわからないかなと思います。その4点について、説明を求めまして、御議論いただいた方がいいのかと思っております。
 以上です。

【伊藤座長】小林参事官から今の点について御説明いただいて、その後、議論に入った方がいいかと思いますので、小林参事官から御説明をお願いしたいと思います。

【小林参事官】御質問が多岐にわたったので、ひょっとすると答弁漏れがあるかもしれませんが、その場合は御指摘ください。
 まず第1点の、今回のスコープといいますか、どういうところを視野に入れているのかということでございますか、まず第一点として、現行制度の下での該当者と申しますか、適格者、こういった方については、是非これを社会的に活用を図っていこうということがまず、意見書として明確に出されていると思います。したがって、現行制度の下での対象者というものは、是非対象にしていきたいということでございます。
 それから、2番目に、新しい制度の検討が今、進みつつあり、かつ、具体的なスタートが予定されているということでございまして、この点についてどう考えるのかということでございますが、これは正直に申し上げてなかなか難しい問題ではあろうかと思っておりますが、私どもとしては、与えられた制約の中で最善を尽くすということを考えていかなければならないのではないかと思っております。そういった観点から考えますと、まずは現行制度を前提とした制度設計を考えていくべきではないかと思っております。
 新しい制度になりますと、当然、関係と申しますか、影響はしてくるかとは存じますけれとも、ただ、それがどのような形で影響するのかということは、必ずしも単純ではないのではないか、仮に修習の期間が短縮されたからといって、それがストレートに今回の経験年数の問題でありますとか、あるいは仮に研修が必要かどうかという問題についての議論に、必ずしもストレートに影響する、あるいは機械的に片方が短くなれば片方が短くなるという問題でもない面もあるのではないかと考えておりまして、その部分につきましては、十分に今後の議論の動向やその後の状況を踏まえて判断をしていく必要があるのではないかということでございます。
 ただ、非常に大きく申し上げれば、前回私の方が御説明したように、大きな方向性としては、先ほどきつすぎるのが心配だということでございましたけれども、少なくとも安易に流れるという方向でやりすぎるということはないのではないか。現行制度を前提にして考えればということで、現行制度を前提に議論を進めていくということにさせていただきたいということでございます。
 勿論、将来にわたって新しい制度に移行し、その実績なり、あるいはそれを踏まえた社会的な実態というのか出てきた段階で、もしどうしても、先生の言葉を借りれば、きつすぎるということであれば、それはタイミングよくきちんと見直しをいくということであろうかと思いますけれども、現時点では今申し上げたようなスタンスで議論をしていただければと考えております。
 それから、2つ目の問題は意見書の表現ぶりの問題でございまして、類似のような対象として3つあって、それぞれ表現ぶりが違っているようだけれども、それについてどう考えているのかということでございますが、結論的に申し上げれば、確かに表現ぶりは異なっておりますし、そのニュアンスも恐らくあるのだと思いますので、それを踏まえつつ議論をしていただくということではあろうかと思いますが、他方、表現がこうだから、したがって機械的にこうである、というものではないと思っておりまして、それは十分それぞれの対象者の置かれている状況、それに対する社会的なニーズを踏まえて、個々それぞれについて、どのような制度設計が適切であるかということについて、御議論いただくということではないかと考えております。
 ニュアンスはあると思いますけれども、したがって、機械的にこちらについてはこう、こちらについてはこうという問題ではないのでないかということでございまして、個々それぞれに最もふさわしい制度を御検討いただければと考えております。
 それから、3番目の「等」について、どこまで広がっていくのかということでございますが、確か民間等というのが意見書でございまして、「等」の中に公務員等が入ってくるのは、やや性格の異なるものではないかという御指摘は理解できるところでございますが、前回御紹介しましたように経緯がそれぞれございます。
 国会議員につきましては、この改革審の審議の段階で委員から問題提起がありまして、ただ、その段階では合意を得るに至らず、いわば継続協議的なものになっておりますので、これは経緯的に申し上げて、司法制度改革を具体化する事務局としては、やはり御審議いただかないわけにはいかないと考えております。
 それから、公務員の方につきましては、これも前回御紹介しましたように、政府全体として大きな課題となっております行政改革、その中での1つの大きな柱であります公務員制度改革、こちらの方から是非司法制度改革と行政改革を有機的に検討していくという観点からは、是非検討すべきではないかという御指摘を受けておりますし、前回御説明したときからの若干の事情の進展といたしましては、行政改革推進本部というのが司法制度改革推進本部と同じように政府に置かれておりまして、全閣僚がメンバーになっているものでございますが、この行政改革推進本部におきましても、採用試験の抜本改革の在り方、これは公務員の採用試験の在り方でございますが、この採用試験の抜本改革の在り方ということを決定いたしておりまして、この決定の中でも司法試験合格者について、国家公務員の一定の実務経験を経た者に、法曹資格付与の対象を拡大することについて司法制度改革推進本部において検討することが適切であるという決定をこの8月2日にいたしております。
 そういう意味におきまして、政府全体としての意思決定といたしましても、是非、この司法制度改革の中で議論してほしいということでございますので、ここはやはり御議論をいただく必要があるのではないかなと。決して恣意的に「等」であるからどんなものでも入るのだ、ということで議論をしていただくというつもりはございません。それぞれ必要性、あるいは社会的な背景に応じてお願いをしているということでございます。
 それから、4番目の判定手続の手順という問題でございますが、これから必要な条件を議論していただくわけなので、そういった中でどういう要素が必要かということが決まっていない中で、余り先走った議論をするのは適当ではないと思いますが、イメージを持っていただくために、1つのイメージとして申し上げれば、経験年数がございますから、この経験年数を満たしているかどうか、一応判定させていただいた上で次のステップに進んでいただく。そうでないと、もし仮に次のステップが、例えば研修が必要だとなった場合に、可能性もない方に研修を受けていただくのはいかがかと思いますので、そこは手順を踏んで固めていくといいますか、そういう形を取るということになろうかと思います。
 ただ、これは法律的にどう設計するかは法制的な問題もあると思いますので、ただ、非常に漠としたイメージで言えば、経験年数を固めて、それから次のステップが必要であれば、次のステップに進んでいただくという手順をイメージしていただければいいのではないかと考えております。
 以上です。

【伊藤座長】それでは議論に入っていただきたいと思います。ただいま説明がございました資料8−1の2枚目のところで、「検討すべき課題(補足版)」として検討項目が挙がっておりますが、ちょっと区切りまして、①、②、③の最初の○「ポストというよりも、業務の内容に着目すべきではないか」。ここまでを一体として、ここに含まれることにつきまして、意見をいただいて、後半は経験年数以降への事項についての議論をいただくということで、一応前半の部分は①、②、③の最初の○まで。これに含まれる事項についての御意見を頂戴したいと思います。どうぞよろしくお願いします。
 例えば、前回も御議論が出ましたけれども、検討の対象として考えられるものの例に関して、御意見がございましたらお願いいたします。

【松尾委員】民間等における一定の実務経験という①の部分でありますけれども、民間等の中に企業法務、あるいは公務員を検討の対象とするということについて、私は異論はありません。当然のことだと思いますが、国会議員に対する法曹資格の付与について、果たして検討しなければならないかどうかということについて疑問があります。
 というのは、改革審議会の第60回の議事録を読みますと、民間等の中に国会議員を入れるべきだという意見も勿論ありますが、それに対する消極意見を述べた委員もあります。いずれにしても、この改革審で国会議員についての一つの方向性を示したものであるとは私は考えません。したがって、ここの民間等ということについて、国会議員について、果たして法曹資格付与について検討しなければならないかどうかという点。
 もう一つは、この国会議員は立法府でありますから、当然立法に関与したということは言えるのでしょうが、その内容的に見れば、すべての国会議員が法律関係の実務について関与していたかどうかと言えるかどうかです。例えば、弁護士法第5条第2号にある衆議院、もしくは参議院の法制局参事だとか、あるいは内閣法制局参事官といった方々の職務と同じように立法実務について関与をされてきたかどうかという点は、もう少し論議しなければならない点かと思います。
 そういうふうに考えますと、民間等の中に国会議員を入れて検討する必要があるかどうかということになります。もし国会議員の問題について検討するということになれば、企業等の問題としての括りではなくて、別の柱として国会議員についての問題を検討すべきであろうと考えます。

【伊藤座長】今、松尾委員について、国会議員については、ややこのカテゴリーではなくて、別の形で議論をすべきである。あるいは、そもそもここで議論をするのに適しているかどうかという趣旨の御意見が出ましたが、ちょっとその点に関して議論を続けていただきたいと思います。

【木村委員】松尾委員のおっしゃるとおりだと思うのです。ただ、ここで全般的に言えることは、これらの今、我々が討議している対象の方々というのは、基本的には司法試験に合格しているという、これは日本でも大変に厳しい試験に合格しているという共通の前提でお話しをしていることなので、全部の国会議員に法曹資格を付与するとか、そういうことでは一切無いわけです。司法試験合格後にということでございまして、国会議員としては立法に全く関与しないということは、5年間ほとんどないと思うのです。
 いろんな形で立法作業に参与している、特に司法試験合格の方々は、特にそういう専門的知識を持って、法的な委員会、その他に属してやっておられるというケースが多いのでございますので、私としては、やはり極めて簡単にすれば、ここに参考資料として弁護士法がございますけれども、この第5条の中にむしろ入れ込んでしまって、第3号くらいがあるいは第2号に入れるか、確かに松尾委員のおっしゃるようにちょっとキャラクターが違うので、そこら辺、民間等の「等」に入らないという感じもいたしますので、もし入れるとすれば、そういう入れ方がいいのかなと思うのです。基本的には司法試験に合格しているということが、重要な意味があると思うのです。この要件が外されたら、私は大変なことだと思うので、そういう点ではこれがあるということは大変に意味があると評価したいのです。国会議員の方々、いろんな方々がいらっしゃいますが、司法試験を通った方々は大変にそういう意味では御活躍されているという認識を持っておりますので、そこら辺の内容を具体的に見ますと、一定年限で法曹資格の付与ということは、前向きに考えていいのではないか。むしろ、これは審議会のいわば意見書の方向に沿った形に、あるいは新しい展開になるのではないか。それだけが論議されているというわけではないのですが確かに言及はされているわけですので、そういうふうに私自身は考えております。

【伊藤座長】どうぞ、田中委員。

【田中委員】私も基本的には木村委員のおっしゃったことに賛成です。実務経験云々という話は、ちょっと表現はよくないかもしれませんが、何かちまちました実務に焦点を合わせて議論されているきらいがあるのですけれども、国会議員の仕事というのは、アメリカの場合特にそうですが、ロビイングなども弁護士の活動の一部とみられており、議員立法にロビイングがつながっているわけです。そういう活動に実務経験を活用していくという観点から見れば、国会議員が法制局参事などの専門技術的な仕事をやっていないから、実務経験がないという形で排除していくというのは疑問で、私もむしろ第5条の中に入れた方がいいと思います。国会議員について、議員立法にどの程度関与したか、何本くらい議員立法に関与したかということを審査して、資格を認めるかどうかということまでやる必要はなくて、巨視的な視点から立法に参画するというのは、これからの弁護士の活動としても重要だと思いますので、むしろ企業法務とか公務員のような位置付けよりも強いというか、ポストによって資格を与えるという検討の余地があるのではないかという感じを持っております。

【岡田委員】今まで出ていますように、やはり司法試験に受かっているという部分ですね。それと、現在国会議員の方でこの対象になるという方は、大方行政から国会議員になられた方だろうと思うのです。そうすると、行政の場で実務もやっていらっしゃる、法律に関係することもやっていらっしゃる方も多いのかなという部分を考えますと、今までの弁護士さんにとって、どちらかというと、距離があったというか、弱い部分であった行政の中のことを知っているという部分では、私たち消費者からすれば、行政訴訟とかになったときに、頼りになるのかなという期待もあるし、もう一つは、国会議員の方に広い視野を持っていただく。言っていいかどうかわからないですけれども、自分の立場のために利用するということではなくて、弁護士資格を持てば、当然公平で公正な対応をしなければいけないという部分では、より私たちの期待する国会議員になっていただけるのかなという感じもしますので、やはり外すという理由はないのではないかなということ。
 あとは企業等の中に入れるのか、ないしは第5条の中に入れるのかということに関しては、私はちょっと企業と国家公務員とは違うのかなという感じはします。
 以上です。

【松尾委員】私が先ほど述べた件は、誤解なく言いますと、国会議員全部でなく、要するにこれは司法試験を合格された方であること、勿論これはわかっております。
 それから、国会議員に対して、法曹資格を付与しないということを考えているわけでは全くありません。誤解のないように言っておきます。
 ただ、現行で言いますと、国会議員に法曹資格を付与すべきだという意見も結構あります。中には、司法修習を受けられた方もいます。そういう中で、この問題を考えるときに、先ほど申しましたように、民間等における「等」の中に含めて検討することについてはいかがであろうか。もう少しきちっとした形で国会議員に対する法曹資格付与をどう考えるか、どういうふうに検討するかということをきちっとした形でやった方がいいのではないかという意見です。何も国会議員に付与すべきでないという意見を言っているわけではないということです。

【伊藤座長】そういたしますと、今、松尾委員の御発言にもございましたように、司法試験に合格されている国会議員について、前向きに検討するということ自体については余り認識の違いがないようで、かつ、民間等と言いますか、企業法務などの場合と違って、国会議員という職務の特性に応じた取扱いをすべきであるという御意見が比較的多いように思いましたが、この点、なかなか重大な問題でございますので、まだ、そういう方向でというふうにとりまとめを急ぐ必要は必ずしもないかと思いますので、ただ、議論の大勢はそのような御意見が多かったということだけ確認をさせていただきまして、そのほか、検討の対象、それから法曹資格等についての御発言、先ほど中川委員が挙手されましたがいかがでしょうか。

【中川委員】2つございますけれども、まず企業法務に関して、小林参事官の方でおとりまとめいただきましたのは、実務経験、ポストというよりも業務の内容に注目してというお話なのですけれども、この前もちょっと申し上げましたように、企業法務というものを考えなくていいかということなのです。企業法務といいましても様々ありまして、然るべき規模、あるいは研修可能な人員を備えている企業法務というところでの経験が望ましいのは言うまでもないことだと思っております。
 そういう意味で、これは法律的にかなり難しいのかもしれませんが、企業法務の枠というとおかしいのですけれども、こういう規模なりこういう内容を備えた企業法務での研修としておいた方が、よりいいのではないかという気がしております。
 実態的には、この前もちょっと申し上げましたけれども、例の企業法務の実態調査などでも出ておりますが、修習が十分できるという会社は、多分日本全体で500 社くらいであろうと。その500 社はどういう基準で選べるかというと、やはり大きくとらえれば資本金ベースではないかと私は思っておりまして、資本金ベースで言いますと、大体100 億円くらいの会社になりますと、7、8人以上の企業法務の要員を抱えておるというのが、調査結果からも出ておるわけです。
 そういうところでありますと、一応司法試験を合格された方を受け入れまして、かなり多様な実務経験を積んでいただくことが可能ではないかと思っておりまして、何かそういう制度的な枠をつくれないかというのが、第1点でございます。
 資本金で切るのは難しいのだというお話もございましたけれども、これは大変古い施行令なのですが、公認会計士の第三次試験の前に行うインターンシップを2年間行うというのがございます。業務研修で、それはたまたま昔の施行令ですから、小さい金額ですが、資本金500 万円以上の会社で、そういう業務を行うべきだというような法令もございまして、必ずしも資本金ベースでの設計をすることがおかしくはなく、1つの根拠となるのではないかと思っておりまして、その辺を何とかできないかという点が第1点です。
 それと関連するのですが、業務内容というのがここには裁判手続関係とか契約関係と書いてございますけれども、これは実際問題として非常に難しいのです。ではどういうことを裁判手続というか、どういうことを契約関係と言うのかという話になりますと、これはそれこそ千差万別でありまして、文房具屋さんで売られている不動産取引契約書で契約をやっても契約関係ですし、何百億円のプロジェクトの契約をやっても契約関係ですから、やはりこれだけで判断するのは、かなり難しいのではないか。勿論、こういうスタンダードを持ち込むことについては、一向に構わないと思いますけれとも、これだけで判断するのは相当難しいと思います。
 したがいまして、かくかくしかじかの企業法務での研修というものをベースにして、それプラス業務の内容ということで設計した方が安定性があるのではないかと思っております。その点が第1点でございます。
 もう一つは、公務員の話でございますけれども、これは資料6−8で頂戴しておりますけれども、確かに公務員の方でいろんな法律業務に携わる方は結構おられると思いまして、基本的には私も賛成なのですけれども、先ほど地方公務員というのをおっしゃいましたね。地方公務員まで含めるというのは、いろいろあるのでしょうけれども、よくイメージが湧かない。それから法律業務と言いましても、非常に限られたものではないかと思います。
 それから、期間の問題ですね。公務員の方というのは非常に異動がありますから、半年、1年の経験で経験をしたということにするのかどうか。ちょっとその辺がわかりませんので、これはむしろ御説明いただいた方がいいと思うのですけれども、そういう感じをちょっと持っております。
 以上です。

【小林参事官】それでは後段の方の点について御説明申し上げます。
 地方公務員のイメージがちょっとわからないということでございますけれども、地方公務員も、基本的には国家公務員のところで議論されているのと同じような業務を念頭に置いております。1つは、地方自治体が当事者となるような訴訟関係の業務、これは損害賠償でありますとか、いろんな行政処分の取消訴訟、そういったものがございますので、そういったものについて携わった方ということになります。
 もう一つは、国家公務員の場合で言いますと、法令の立案ということになりますが、地方自治体の場合ですと、これは条例関係の立案ということになります。ただ、ここはやや質的に差があるわけでございまして、国全体の統一的な法体系となる法律の立案と、一自治体の中で適用される条例の適用ということになりますと、自ずと質的な差はあるとは思いますが、検討の対象にはすべきではないかということでございます。
 恐らく地方自治体の中にもいろんなレベルがございますし、それから規模も、中川委員が前半でおっしゃった話でございますが、規模もそれこそ東京都から一村までいろんな規模がございますので、それに応じた扱いを考えなければいけないということでございますが、業務の性格から言うと類似性があるということでございます。
 そういう意味で申し上げれば、国家公務員でも全般では広過ぎるとすると、地方公務員なら更に広いのではないかなという御懸念だと思いますが、そこは業務の内容できちんと的確なものに限定をしたいと考えております。
 それから、異動の問題でございますが、これは当然のことながらその業務に携わっていなかった期間はカウントいたしませんので、その分、勤続年数としては長くなってしまうわけで、それで後で出てくる年数をどう考えるかという議論にも影響してきますけれども、それは当然異動して、ほかの部分で業務されたものについてはカウントしないということでございますので、安易な付与にはならないと考えております。
 若干前半の御意見の部分について補足させていただきたいのですが、規模の問題でございますけれども、これは規模だけで切るのは難しいのではないかと考えているという意味でございまして、決して規模と申しますか、所属している部署についての評価、こういったものを排除するつもりはございません。ただ、それだけで切るのはなかなか難しいのではないかということでございます。
 同じ問題は、業務で切る場合もございまして、ここでは丸めて裁判手続関係とか契約関係ということで先ほどおっしゃったような文房具屋でのやりとりまでも入り得るような書き方になっておりますが、これは当然定型的な契約関係みたいなものは除かれるわけでございまして、それにふさわしい業務に限定をしていく。なかなか難しいというのは御指摘のとおりでございまして、これは我々として十分知恵を出していかなければいけないと考えております。

【木村委員】参事官にお伺いしたいのですが、ここに企業法務と書いてある中には、例えばアメリカですとパテント・ロイヤー、企業内での特許、知的財産関係、大変な重要な役割なのですが、それは省いているのですか。弁理士法か何かで他の規定があるのでしょうか。
 ここに書いてあるのは裁判手続関係、契約関係だけでございますが、例えばそういう知的財産を扱っているのは、日本で通常の場合、企業法務部というのにいるのですか。それとも特許部というのがあって、そこにいらっしゃるのか。しかし、大きく考えればそれも企業法務ですね。それはどうなのですか。

【小林参事官】企業法務の方がどういうような業務を行っているか、これは企業によっても差があるわけでございますが、一般論として申し上げれば、いわゆる知財関係の業務というのも非常に重要な業務と考えておりますので、かつこれから非常にニーズが高い部分だと思っておりますので、これはこの契約関係の中で含んで考えております。それを排除するつもりはございません。

【木村委員】そうですか。アメリカですと、セクシャルハラスメント問題の対応をする弁護士が企業法務もやっていますね。そういうのも入ってくるのですか。

【小林参事官】当然企業内のそういう雇用問題、あるいはそういうセクハラの問題、そういったものも含めてこの中に含んで考えております。

【木村委員】非常に幅広い概念ですね。

【小林参事官】はい。ただ、幅広いのですが、他方、レベルと申しますか、先ほどのお話に出ました、では何でも入るのかということになりますと、定型的なものは除いていくということになると思います。

【木村委員】この場合も論議されているのは、先ほど国会議員のところでも申し上げたわけでございますが、司法試験合格後という共通の前提がございますね。ですから、基本的には実務経験を経た方、その内容、質、業務の内容に着目ということでございますが、司法試験合格後という非常に大きな前提があるということは、これは踏まえて、法曹資格の付与については、前向きに検討した方が、審議会の意見に沿った方向になるのではないかと思いますけれども、個人的な見解です。

【伊藤座長】わかりました。そういたしますと、まだ議論を続けていただかなければいけないと思いますが、恐らく余り御異論のないところとして、付与される法曹資格は弁護士となる資格と、それから対象者について、これも具体的なところへ行くといろいろ議論はあるわけですけれども、企業法務、国会議員、地方議会議員、公務員、これについて考える。
 更に企業法務について、これは先ほどの中川委員の御発言がございましたが、実際には裁判手続関係、契約関係と一般的に言っていても、どういう内容を含むものかについては更に議論を詰めなければいけないし、場合によっては規模、組織等についても、それを勘案するようなことを考えなければいけないというところがございますけれども、一応考え方としてはこういう業務の内容で考えて見るというようなところで、それから国会議員につきましては、付与に当たっての考え方で、具体的に言えば第5条第2号的なものとして考えるかどうか。この辺りについても大方の意見ということで、先ほどとりまとめましたけれども、なお議論を続けていただきたいというふうに考えております。
 時間の関係もございますので、後半の方でまず経験年数、能力担保措置、法曹資格付与のための具体的条件を判定するための手続、この辺りについて御意見を頂戴したいと思いますが、いかがでしょうか。

【中川委員】確かに司法試験を合格されている方というのが前提なのはよくわかるのですが、それもありますが、要すれば司法修習を省略するということなのですね。ですから、その司法修習を省略することと、それから企業なら企業で研修することとの内容が大体見合っておるということを問題にしておるわけでありまして、したがって、私も然るべき規模の、然るべき所で研修をしないと1年なり1年半の司法修習と見合いにならないでしょうということを申し上げているわけでございますので、やはり企業法務の中身をちゃんとしておくというのは、私は大変大切なことだと思っております。
 それから、年数ですけれども、これは10年とおっしゃっていますけれども、これは客観的に見てちょっと長いのではないかと思います。企業法務での研修というのは、よく考えてみますと、実は弁護士事務所での実務とほとんど変わりがないわけでございまして、単に勉強するということではないのです。実際に出てきました生の素材を自分で直接担当して、責任を持って処理するというのが企業法務での研修でありますから、直接担当し、かつ責任を持つということで、5年間あるいは10年間やるということで、いわゆるスクールでの研修とは全然質が違うということをまず念頭に置いていただきたいと思います。
 そういう観点からいきますと、5年間で十分であると思っておりまして、10年というのは非常に長いし、実態的に考えましても、10年間も企業にいて、それから出ていくという人はまずいないわけでございまして、制度そのものがおかしいという感じもいたしますので、期間的には5年あれば十分ではないかと思います。
 それから、事後の研修につきましても、これはそれと同じようなことになるのですけれども、もう余り研修すべきことはないのではないか。特に将来、法科大学院を経由して来られた方などは、多分その辺について十分な研修も受けておられるでしょうから、余り事後の研修に力を入れる必要はないのではないかと思っておりまして、ただ、法廷事務とか弁護士倫理の問題はございますから、数か月間程度の研修は必要であろうかと思いますが、余りその辺に力点を置く必要はないと思っております。
 それから、国家資格付与につきまして、国が判定するというのは、これはそうだろうなと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、どういうスタンダードで判定するかというのはなかなか難しい問題がございまして、これはよく知恵を出して、つまり事後試験的なものにならないようにするということが大切ではないかと思います。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。今、中川委員の御発言の中で、まず、経験年数については、ほかの委員の方いかがでしょうか。御意見があればお願いいたします。

【松尾委員】その前に中川委員に御質問したいのですが、経験年数5年の法務マンですね。これはイメージとして、どういうところまでの仕事ができるのか。つまり、一人前の仕事ができるのか。ちょっと足りないのか、そこのところのイメージがちょっと湧かないものですから、どういうふうになっているのか。大企業でそういう経験の多いところと、そうでない企業で、こつこつとおやりになっているような場合は違うと思うのですが、平均的に言ってどういうふうな状態になっているのかということが1つ。
 もう一つは、新人をいきなり法務マンにするのか、それとも他の業務をやったある程度の経験者を法務部に入れるのか、その場合にどういう教育、養成と言いますか、そういうことがなされているのか。その辺ちょっとお伺いしたいと思います。

【中川委員】それなりの規模のあります企業は、ほとんど全部、新人から法務に採用いたします。これはその方が教育しやすいということがございまして、営業経験とか、他の経験をした人もたまにはおりますけれども、これはやりにくいのです。ですから、現状で言いますと、我々学卒と言っておりますが、大学の法学部を出て入社した人をそこから教育するというのが大体原則でございます。
 5年目にどんなふうになるかと言いますと、5年というのは一応区切りなのですが、一応すべての問題を自分の判断でできる程度になる。これは学卒の方の前提です。そういうのが大体5年、ですから、5年目に主任とか主事とか簡単な役職に就ける、管理者ではないのだけれども、一応卒業したというか、一人前になったという意味でそういう名称を付ける会社が多いようです。
 ただ、大変複雑で企業にとっても下手をすれば影響が大きいようなものは、そういう人にはまだ任せられません。これはもっと上位の人が必要だと思いますが、大体5年で一人前になるというのが現状でございます。
 司法試験に合格した方は、ベースがありますから、私どもも何人かそういう人は経験がございますが、ものすごくスピードが早いです。これはやはり違いまして、半分くらいの期間で学卒の人と比べれば半分くらいの期間で十分やっていける。それから加速度と言いますか、その後の伸びも非常に成長が早いというイメージでございます。

【伊藤座長】では、奥野委員からお願いします。

【奥野委員】クラリファイ・クエスチョンに近いのですけれどけも、先ほど議論があって、国会議員をどうするかという話がありましたけれども、企業法務、国会議員、公務員と3つ並んでいるわけですが、経験年数というのは「延べ」なのか、それとも公務員なら公務員で5年なのか、先ほど岡田委員の方からもお話がありましたけれども、国会議員の場合は公務員をやってからという話が多かったので、例えば国会議員を別にしてしまうと、公務員で4年やって、国会議員で6年やって、10年に足りないという種類の問題というのはかなり出てきてしまう可能性があるので、第5条に入れるという御意見も一方ではわかるのですけれども、そこら辺の「延べ」との関係も少し考えてみた方がいいので、「延べ」なのかどうなのかというのがまず一つの質問です。
 もう一つは、やや意見に近いのですが、私、素人なのでよくはわかりませんが、5年か10年かという議論をするときに、もう一つ上の○の方でポストよりも業務の内容に着目すべきと書いてあるわけです。ポストの方で議論するのなら長めに取るべきだろうと思いますけれども、どのくらいやれるかという中川委員のお話もありましたけれども、業務の内容の方に着目するのならば、10年は長過ぎるのではないかというのが私の意見です。

【伊藤座長】今の前半の方の御質問はどうでしょうか。

【小林参事官】通算の御議論でございますけれども、結論から言うと、両方の考え方があろうかと思います。
 1つは、同じカテゴリーと言いますか、実務経験として考えていくのだから、当然そこは通算しても然るべきではないかという考え方でございまして、これは現在の第5条第2号の方はそういう考え方を取っているわけでございます。
 もう一つの考え方としましては、これはあくまでも専門性を評価するものであると。単純に修習と同じような内容を広く薄くと言いますか、そういうふうに他で補完していくということではなくて、むしろ高度の専門性を活用していこうということに着目するという考え方もあり得るわけでございまして、そうだとすると、性格の違うものを単純に通算していいのかという議論もございますので、これは両論の議論があり得るのではないかと思っております。

【奥野委員】一言ですが、時代として労働の流動化と言いますか、いろんな仕事を動くということが、これからの時代では普通になると思うので、できれば通算をするという方向でお考えになった方がいいのではないかというのが私の意見です。

【伊藤座長】ありがとうございます。では、岡田委員お願いします。

【岡田委員】中川委員のお話を聞いていて、やはり企業法務というのはすごい格差があるのだろうという感じがしまして、以前いただいたアンケート調査でも、資本金が1,000億円以上の企業に関しては、やはり弁護士さんも中にいたりということで、それ以下の企業とは随分違うと思うのです。企業法務の人に弁護士資格を与えたとして、その方が引き続きその企業の中で仕事をされるのと、外へ出て独立されるといった場合に、私たちからすれば企業の中でのお仕事であれば、それはそちらの企業の責任でいいのだと思うので、5年もいいしと思うのです。ただ、外で弁護士として活躍なさるのであれば、今までやっていらした仕事が、この第5条に掲げる方々よりは法律的に専門性というところからすると、やはり欠けるのではないかというふうに考えますので、ここに合わせたような感じで、同じ5年というのはどうなのかなと思います。かといって、10年は長いような気がするのです。では、何年がいいかというのはわからないのですが、5年ではどうなのかという感じがします。

【木村委員】これも先ほど来、いろいろ問題になっていることの1つで、要するにロースクールが将来にわたって非常に整備されてきますね。そのロースクールを卒業した方が司法試験に合格されて、この際、研修所に行くよりも、企業に行けば5年で法曹資格が取れるのではないかという選択に安易に行かないような締め付けをする必要があるのではないかと思うのです。法曹資格取得の1つのルートとしてこれを考えると、大学の先生はそれなりの理由があるようですけれども、その辺のところを踏まえて、私は先ほど中川委員の御発言などをお伺いすると、一人前でやっといろんな企業の非常に重要な法務を担当できるようになるのが5年だということでございまして、私はその一人前になるスピードが司法試験を通られた方は非常に早いということは、大変にその成果が上がっていると思うのですが、基本的に言うとやはり10年くらいは必要ではないかと思うのです。それに例えば今、1つの企業に入りましても、それが倒産したりということもあるわけでございまして、やはり通算して10年ということでよいのではないかと思います。いろんなところに動く可能性もありますし、先ほどの奥野委員の御意見もございましたように、企業が非常に流動化している中で、年限的にはやはり10年程度はやっていただいた上で、法曹資格ということにした方が、どうも趣旨に合うのではないかと思うのです。そこら辺のところ、私としては、これが何か将来的に法曹資格の安易な1つのルートにならないような方向付けをきちんとしておいて、これはあくまでも特例として考えるような方向でいいのではないかと思います。

【平山委員】木村委員の発言もございましたが、そういう面も1つあるのではないかと思っております。また、中川委員のお話の、例のしっかりした企業法務が必要ではないかというお話も大事だと思います。私、弁護士の一人として考えますと、法曹資格という場合は、活動範囲に制限のない、いわばフル・スキルの法曹を前提としているものと考えています。
 そういう立場からは、当該企業法務での特定業務の経験も、あわせて、一定程度は法曹の基礎的訓練を伴っていることが大切ではないかと思います。
 そういうことを考えると、その部分も非常に大事で、日弁連はこの前のペーパーですと、一定の経験を有する法曹がそこにいてという提案をしているのだろうと思うのです。そういう意味で、そこの歯止めが一定程度はないと、文房具屋さんの契約書ということになりかねないという意味がありまして、非常にこの判定は難しくなってくるのかというのが1点であります。そういう意味で、日弁連が提案しておりますことも、十分御検討はいただきたいというのは、その点でございます。
 それから年限の方でございますが、最初に小林さんの方に質問いたしましたけれども、今の制度を前提にすれば、私は10年というのも1つの考えかと思うのです。
 ただ、法科大学院ができて、そこで実務教育も一定程度やると。プロセス教育に代わるということを考えますと、そこを出た人を、今までどおりの例えば10年ということでいいかというと、確かにそれはちょっとどうかなと気持ちの上で思っておりまして、しかし、弁護士法第4条はだてにあるのではなくて、やはりそれなりの歴史的な経過を踏まえてあって、第1条から第3条の基本的人権の擁護とか、社会正義の実現とか、そのほかの法律に高度に精通するとか、いろんなことがございまして、フル規格として例えば刑事弁護などもやらなくてはいけないわけです。人の命に関わることもありましょうし、そういうことを考えると、やはりフル規格のものとしての法曹ということをイメージします場合は、一定程度は今までの司法修習が果たしてきた役割を代替するような実態がないといけないではないかという気が一方でいたしますので、5年ではちょっと短か過ぎるのではないか。しかし、10年はそういう時代の流れからするとどうかなという気がいたしておりまして、その辺りを十分みんなで考える必要があるのかと。私としては、やはり審議会意見書は、この部分については、私は恒常的な制度として提案していると思うのです。別に法曹が今足りないから、法曹人口が不足しているから、補完的という意味ではないと思うのです。これは中川委員もしょっちゅうおっしゃいますけれども、ある部分について非常に精通した弁護士も必要でございますから、そういうことを考えていくと、恒常的な制度。
 しかし、恒常的な制度にする以上は、やはり補完策、能力担保措置、これは重たいものにした方がいいというのが私の意見であります。例えば事前研修にされた方がいいのではないかと私は思っておりまして、特任検事のときには軽い担保措置に賛成いたしましたけれども、ここはきちっとした事前研修とか、特に倫理研修その他、刑事弁護もやれるわけですから、そういうこともきちっとやって、少なくとも3か月、今の修習生は弁護士修習が3か月ありますけれども、少なくともその辺りはきちっとやらないと、そういう意味で、フル・スキルの法曹としては、非常に危険ということで、利用者の方の権利保護、それから、言わば民主性ということに裏打ちされた法曹を恒常的につくるというのが大事ですので、その辺りを十分検討していただきたいなと思っております。

【松尾委員】経験年数ですが、5年がいいか10年がいいかというのは、外部からはなかなか判断できない問題でありますが、中川委員の御説明を前提として考えますと、大規模企業で法務教育や養成もよくされている。つまり、環境がいいというところの企業であれば、5年の経験でもいいのではないかという考え方は成り立つと思います。しかし、そういう企業ばかりではなくて、先ほどから出ておりますように、格差と言いますか、企業によってはそれほどの経験もなく教育ががなされているとは限らない法務マンもいるわけです。司法試験に合格したとは言いながら、やはりそこに差があるということは事実であろうと思います。こういう全体的なことを考えますと、5年でいいとは言い切れないと思います。
 では、10年かというと皆さんがそれぞれ言われていますように能力の程度などいろんな要因がある。特にロースクールの関係、あるいは新しい司法修習などとの関係、あるいは時代の流れなどを考えますと10年は長過ぎる。そうすると、具体的に私は7年か8年くらいのところが妥当ではないかなと考えるわけであります。別に真ん中を取ってという考え方ではないのですが、5年か10年かの考え方で言うとそういうことに落ち着くのではないかなという主張です。

【釜田委員】これは年数の問題が出ますのは、能力との関係でいろいろ不安要素があるというのは、思いが出てくるかなと思うのですが、これは今、問題にしておりますのは、資格要件ですね。資格を認めるということと、実際に将来実務家として業務に携わることと分けて考える必要があるのではないかと私は思うわけでありますが、資格認定につきましては、今まで個々人の能力というものを考え出しますと、これは個別差というものがございますから、これは5年から10年、ひょっとしたらもっともっと年数を必要とするという気になる場合もあると思いますので、資格認定のところはもう少し明確に、今の現行法の第5条の第2号、第3号辺りに合わせるとした上で、実際に登録段階で各弁護士会というものが、今以上に会員の質の統一といいますか、何らか今以上の貢献をしていただく。だから、登録後に何か手を打つことによって、今の年数が抱えている不安要素の部分を取り除くということができないのでしょうか。そういう辺りと切り離せば解決できるような気がしているのですが、いかがでしょうか。

【伊藤座長】研修のお話が関係するようですね。

【釜田委員】研修というとちょっとあれですが、各弁護士会の方でそれを研修と呼ぶかは別としまして、何年になるか、実際の実務に携わる前に、どこかでアプレンティスシップのような制度を考えていただくというのはどうなのでしょうか。

【伊藤座長】広い意味での研修ということになるかもしれませんけれども、おっしゃる御趣旨はよくわかります。
 では、先に奥野委員、お願いします。

【奥野委員】今の釜田委員の意見とある意味では問題意識は同じで、議事進行に関するお話なのですけれども、年数に少し議論が集中し過ぎていて、私の印象では、年限の議論をする前に、まずクリアーしないと何の年限の話をしているのかよくわからないと私は思うのです。
 1つは、先ほど申し上げたポストの議論をするのか、業務内容の議論をするのか、業務内容としてもどこまでの議論をするのかによって年限というのはどうでも変わるという感じが非常にするのです。そういう意味でどのくらい限定的なことをお考えの上で、年齢にするかという話をまずしないとまずいのではないかというのが1点です。
 もう一点は、○でいうと4番目の話があって、法曹資格のためにある種の委員会みたいなものでつくって、それがいわば年限に加えて本人の今までの経験がどのくらいあるのかというのを一人一人個別に見ましょうかというのが多分4番目の話で、もしこの4番目の話をきちんと運営できるのならば、例えば5年と言わず3年くらいでも、本当にいい人はいるかもしれない。極端に言えば、別にそうしろというわけではないですが、人によっては5年ではとても無理で10年は必要だということになるかもしれない。
 つまり、もしこれが本当に機能するなら2番目で出てくる年限というのは、ある意味では必要最小限の年限であって、これをミニマムをクリアーした上で、この委員会がどこまで判断しますかという話になりますから、随分年限の議論も変わってくると思うのです。できれば1番と4番、場合によっては、今、釜田委員の話でも出ました研修の話も含めて少し議論された上でないと、ちょっと年限の話はできないのではないかと思います。

【伊藤座長】おっしゃるとおりだと思います。年限についても、本日ここで結論を出してしまうというわけではなくて、いろいろ御意見を承って、ただいまの御指摘のとおり他の実務経験の内容とか、判定手続の内容とか、そういったことを勘案いたしまして、最終的な結論をどういうふうに持っていくかを考えたいと思っております。
 小貫委員、どうぞ。

【小貫委員】奥野委員と同じようなことを言いたかったのですが、人の資格に関係する事柄でございますので、基準というのは明確で客観的で形式的なものが一番いいと思うのです。事務局から説明があったように、業務内容で切っていきましょうと言っても、日本語の限界なのか、もともと難しい多様性が対象の中にあるのかわかりませんが、それを法的な文言ですぱっと切れる問題じゃない。かと言って、企業の業務内容はなかなか外から見えないものですから、認定者を決めるにしても、一件一件チェックするというのは、これは至難の技だろうと思うのです。
 そんな中で、ではどう考えるかというと、単に客観的で形式的で、余り判断要素の入らないような基準というのはないのだろうかと考えると、やはり経験年数と、私が考えるのは、研修を前提にした認定ということなのですけれども、そういったものを考えざるを得ないのではないか、こんなふうに思っています。それで一緒に議論してほしいということになるのです。
 あと1点、中川委員のお話を伺って、なるほどと思いながら聞いておりました。私、実態がよくわからないところがあったものですから、5年と言われればそうかなという気もするわけですが、恐らく中川委員の経験された法務というのは、日本の中でもトップクラスのところだったのだろうなと、こんなふうに私自身は認識しているのですが、いろいろ格差がある中で、一番安全なところで形式的な基準線を引かざるを得ないだろうと思うのです。これがやはり資格付与をするときの基準設定のやり方だとこんなふうに思うものです。だとすると、5年で一人前になりますよと中川委員が言う以上は、安全率を見込んで10年という考え方も大いにあってよろしいのではないかと思うのですが、10年以内くらいが私の感じるところでございます。

【伊藤座長】今までの議論を聞いておられて、事務局の方で何か、特に経験年数についてお考えありますか。

【小林参事官】特に奥野委員の御指摘に関連した部分でございますけれども、全部が関連してくるというのは事実だと思います。
 それから、この経験年数の考え方として、2つの要素があると思うのです。
 1つは、まさに司法修習に代替すると言いますか、司法修習で学ぶような内容を実務で学べるかどうかということでございまして、それについて言えば、確かに理論的には密度掛ける経験年数になりますから、密度が濃くなれば短くていいのではないかという議論は確かに論理として成立するのではないかと思います。
 もう一つの議論は、今回は非常に高度の専門性を社会で経験された方の高度の専門性を評価していこうという政策的な判断が背景になって、今回の措置ということがされたのだとすれば、そうすると、高度の専門性を確保するにはどれくらいの年数が必要になるのかという議論があろうかと思いまして、そうだとすると、単純に第5条第2号の5年という年数と比較するわけにはいかないのではないか。そういう2つの要素が考えられるではないかということでございます。
 その専門性の議論は研修の必要性の議論と絡んでくるわけでございまして、今回の対象の方は、確かに法律関係でございますし、かつまた、比較的弁護士さんの業務に近いところは経験するということではございますが、弁護士さんの業務そのものは、もし、やれば法律違反になるわけでございまして、それそのものは経験しないということになりますので、そういう意味で言うと、第5条第2号の方が経験されている業務とは少し質的に違うところがあるということでございますので、それを踏まえて何らかの補完措置が必要ではないかということでございますので、その辺りは全部絡んでくる議論ではないかと思いますが、単純に数量的な議論ではない部分もあるのではないかということでございます。

【中川委員】ものすごく即物的なことを申し上げますけれども、最後の認定の問題ですが、これは私は今、小貫さんおっしゃるように、基準的な何か規格でもってやるのは無理だと思うのです。結局は人間が判定するしかないので、例えば面接という手があるのです。これは民間と弁護士さんと、学者さんが入ってもいいですけれども、この程度の人であれば、法曹資格を与えてもいいのではないかという判断を、そういう面接方式でやっていただくというのが実際は一番いいと思います。そこが固まれば、奥野先生おっしゃるように、私は年限に余りこだわる必要がないので、ミニマム5年それ以上経てばいつでもその面接を受けられるという形にしておけばいいのではないかという感じがいたしますので、1つのアイデアとして。

【佐々木委員】簡単に申し上げたいと思いますけれども、このスキームがポストではなくて、業務の高度性であるとか、業務内容に着目しますと、企業法務等の、中川委員からおっしゃった多様性を勘案しますと、第5条第2号の5年では足りない。したがって、ポストではない形でありますと、あながち木村委員がおっしゃった10年というのも合理的な面もあるのではないかと思います。
 ただ10年ひと昔という話もありますので、そういうことになってもとも思いますので、それは次回までにもう少し考えてみたいと思います。
 それから、法曹資格、弁護士資格を与える点につきましては、我々サイドから申しますと、やはり弁護士資格ということになりますと、法廷に立たれる場合も想定しなければいけませんので、平山委員がおっしゃったようなスキルの問題、これはどうしてもどこかで克服していただかなくてはいけない。したがいまして、研修内容としては倫理の問題と、それから刑事弁護を全然やらないというわけにはいかないのではないか。経済取引もいっぱいあるわけですから、そういう刑事弁護を含むスキルの研修機会を設ける必要があるのではないか。例えば先ほどおっしゃった資料6−6にありますけれども、これが実務修習、弁護士修習における3か月というのが1つの目途になろうかなと今のところは考えます。

【木村委員】今の佐々木委員の御発言にも関係しますが、結局、企業内法務と言うか、そういうことでお仕事をなさっている方々の論理はやはり企業の論理だと思うのです。企業がどのように利益を上げ、どのような契約をするかという、企業の論理で業務を行っているので、その方々が日本の社会の中で法的に認められている法曹資格としての弁護士業務を行うに当たっても絶対に研修が必要になると思うのです。やはり社会的正義の実現、あるいは人権の擁護という公正の立場に立ったプロフェッションであるということをきちんと研修しませんと、法曹資格を与えられた弁護士業務が企業寄りになる可能性もあります。弁護士は仕事の内容によっては当然企業の弁護をするということに勿論なりますけれども、にもかかわらず、社会的正義と人権の擁護の基本理念についてのきちんとした研修をして、それを条件にした認定ということにするのが望ましいのではないか。したがって、何かある一定の資格があって、自動的になって、それから研修を受けてもらうというのではなくて、研修を受けてもらうことが何らかの認定、あるいは単位の取得とか、新しいロースクールの中での関連科目の単位を取得するとか、そういうような形でのきちんとした保証があって、そして、法曹資格が認定されるということが望ましいのではないかと思いました。

【伊藤座長】それでは次回も続けていただきますが、一応今までの皆さんの御意見を承ったところで、簡単にとりまとめをしておきますと、職務が定型的に高度な法律業務とは必ずしも言えない企業法務等の対象者につきましては、一律に10年とするのがいいのかどうかについてはかなり御疑問の意見が多かったように思います。これは結局、経験内容ですとか、そういったものと密接に関係してくるので、5年では短いという御意見も多かったように思いますが、7、8年という具体的な御提案もございましたけれども、その辺りを含めて検討してはどうかという御意見が多かったように思います。
 それから、やはり研修につきましては、これは弁護士業務というのが、ジェネラルサービスである以上、義務的なものとしてやってもらわないと具合が悪いのではないかという御意見が大方の御意見だったように承ります。
 それから、何らかの意味で資格の認定、手続を公のものとしてつくらなければいけないということについては、余り御異論がないように思います。
 そこで、そういった議論を踏まえまして、次回は、例えば研修の内容についてどういうものが考えられるのか、この辺りを事務当局で少し詰めていただいて、それを報告してもらった上で更に議論を続けたいと思います。
 それから国会議員につきましては、冒頭申し上げましたけれども、今申し上げましたような非定型的な業務内容の対象者とは違うので、むしろ第5条第2号の範疇で考えていくのがいいのではないかという御意見が多かったように私は承りましたが、この点も、それをもって最終的な結論と今日してしまうということではなくて、もう少し次回議論を続けたいと思います。
 ということで、雑駁でございますが、中間的なとりまとめでよろしければ最後にいわゆる非常勤裁判官制度について、関係機関タイムということでお願いしたいと思います。
 最高裁と日弁連が具体的な制度設計に関する検討を続けてこられて合意が得られたということでございますので、その報告をお願いしたいと存じます。
 また、御質問等があるかと思いますが、それにつきましては、次回の検討会でその点につきましても、時間を設定するつもりでおりますので、本日のところは報告を承るということだけにとどめさせていただきたいと思います。
 それでは、どうぞよしろくお願いいたします。

【最高裁(金井人事局参事官)】最高裁の金井でございます。

【日弁連(明賀弁護士)】日弁連の明賀です。

【最高裁(金井人事局参事官)】本日は適宜私の方から、今、座長から御紹介いただきました件について、御報告させていただきたいと思います。最高裁と日弁連とで共同で御報告させていただくという位置付けです。
 最高裁と日弁連は、昨年12月7日、弁護士任官等に関する協議が整いまして、そのとりまとめ文書、それから本年4月16日になりますけれども、当検討会におきまして協議されておりますが、その協議結果を受けまして、民事調停事件及び家事調停事件の分野において、いわゆる非常勤裁判官制度を導入することについて、今年3月から、おおむね月2回のペースで協議を重ねてまいりました。その結果、協議が整いまして、先週の金曜日ですけれども、8月23日に、これから申し上げます内容の新しい制度の創設に向けて、お互いに協力するということを合意した次第でございます。本日はお手元にその合意文書が配布されておりますので、それをごらんいただきたいと思います。
 この問題につきましては、4月16日の検討会におきまして、御協議いただいたところでございます。本日、事務局から資料3−1ということで、その際の文書が配布されておりますけれども、その際には民事調停、家事調停の分野に、いわゆる非常勤裁判官制度を導入するための法改正の方向性についてということで御議論いただいて、この紙に書かれているような方向で一応の方針が示されたと思っております。
 今回の最高裁判所と日本弁護士連合会の間の合意は、その際の方向性に沿った合意内容になっていると思っております。
 お手元にございます今回の合意文書をごらんいただきたいと思うわけですけれども、この合意では、第1項で、創設を目指す制度の目的について記載されております。第2項では、創設を目指す新しい制度の骨格ということで、担当職務それから身分関係等について合意がされております。第3項では、制度化の時期について合意がされているということでございます。
 この1項をごらんいただきたいのですけれども、最高裁と日弁連とは、文書の1項に記載されてございますとおり、当面、民事調停事件及び家事調停事件の分野に弁護士が非常勤の形態で調停主任または家事審判官たる裁判官と同等の立場で調停手続を主宰する制度、いわゆる非常勤裁判官制度でございますけれども、これを創設することによりまして、弁護士から常勤裁判官への任官を促進するための環境を整備するとともに、併せて調停手続をより一層充実、活性化する、こういうことを目指しまして、今後、制度化に向けた準備を進めていきたいと考えている次第でございます。
 この合意文書の具体的内容等につきましては、先ほど座長からお話ございましたとおり、次回報告させていただきまして、御協議いただけたらと思っている次第です。

【日弁連(明賀弁護士)】時間も過ぎているようですので、簡単にコメントさせていただきます。
 非常勤裁判官制度は、弁護士のまま非常勤の形態で裁判官と同等の職務に従事するもので、初めて創設されるものです。弁護士任官の推進と調停の充実・活性化を目的としているものです。これはまず調停分野に導入するということになっていますので、調停分野以外の職務の範囲の拡大については今後の課題となります。調停分野で実績を重ねて、将来の制度的発展も期したいと考えています。以上です。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御報告についての質疑は次回にお願いをしたいと存じます。どうもありがとうございました。
 本日の議事はこの辺りで終了させていただきたいと思います。次回は9月10日午後1時30分から午後5時まで、今回に引き続きまして、司法試験合格後に民間等における一定の実務経験を経た者に対して法曹資格の付与を行うための具体的な条件を含めた制度整備の問題について議論をいただき、その後に弁護士法第72条の規制対象となる範囲、対応に関する予測可能性を確保するということに関しまして、会社形態の多様化などの変化に対応する見地からの企業法務との関係、その他の観点からの検討をお願いしたいと思います。具体的には、親子会社の問題につきまして、中川委員からプレゼンテーションをお願いしております。中川委員、次回どうぞよろしくお願いいたします。
 更に、ただいまお話があったとおりでございますが、民事調停、家事調停の分野に、いわゆる非常勤裁判官制度を導入するための法改正につきまして、本日の報告に引き続きまして、具体的な制度設計に関し、最高裁、日弁連から報告をしていただいて、御質問等を承りたいと存じます。
 以上でこざいますが、特に何か最後に御発言ございますか。どうぞ小貫委員どうぞ。

【小貫委員】今後の進行についてお願いが1点あるのです。専門性の活用について、副検事と簡裁判事は積み残したままになっております。この問題というのは、特任検事、あるいは企業法務等とも若干論点が重なったり、あるいは関連するところが多いものですから、余り時期をずらさない時点で御議論いただければありがたいと思います。是非事務局も御検討いただきたいということでございます。

【植村参事官】その点に関しましては、また関係機関ともよくお話をさせていただいて、具体的にいつごろこの検討会での御検討をお願いするか、考えさせていただきたいと思います。十分今の御意見を踏まえて、検討させていただきたいと思います。

【伊藤座長】それではよろしゅうございますか。どうもありがとうございました。

(以上)