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知的財産訴訟検討会(第10回) 議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日 時
平成15年7月15日(火) 13:30 〜17:20

2 場 所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)
伊藤 眞(座長)、阿部一正、荒井寿光、飯村敏明、小野瀬 厚、加藤 恒、小林昭寛、櫻井敬子、沢山博史、末吉 亙、中山信弘(敬称略)
(事務局)
古口 章事務局次長、近藤昌昭参事官、吉村真幸企画官、平瀬知明参事官補佐
(関係省庁・団体)
最高裁判所、特許庁、日本弁護士連合会、日本弁理士会

4 議題等
(1)推進計画について
(2)民事訴訟法の改正について
(3)知的財産訴訟における専門的知見の導入に関する改善の方向性
(4)「知的財産裁判所」に関する検討

5 議 事

【開会】

○伊藤座長 それでは、定刻でございますので、第10回知的財産訴訟検討会を開催させていただきます。お忙しいところどうもありがとうございます。
 今回はまず7月8日の第5回知的財産戦略本部会合で決定されました推進計画のうち、当検討会が関係する部分について事務局より紹介してもらいます。
 次に民事訴訟法の改正について、関係機関から紹介をお願いします。
 その後、第2論点である、専門家が裁判官をサポートするための訴訟手続への新たな参加制度と、このテーマと関係の深い、いわゆる技術系裁判官についての2巡目の検討を併せて行っていただき、続いて特許裁判所について2巡目の検討を行っていただく予定です。
 それでは、まず事務局からお手元の資料の確認をお願いします。

○近藤参事官 それでは、事務局からの配布資料について御説明いたします。
 資料1として「知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画(抜粋)」というものがございます。資料2として「知的財産訴訟における専門的知見の導入に関する改善の方向性」という検討資料。資料3として「『知的財産裁判所』に関する検討」という題名の検討資料がございます。そのほかに、メインテーブルの方には、第9回の議事概要、第8回の議事録をお配りしてございます。
 それから、NBL別冊81号の「知的財産訴訟制度の国際比較 制度と運用について」は、5月20日に報告していただいたものプラス、その時にもお配りしました韓国に関するものも併せて合冊となったものをお配りしております。参考にしていただければと思います。

○伊藤座長 お手元の資料、よろしいでしょうか。
 では、推進計画について事務局から説明をお願いします。

【推進計画について】

○近藤参事官 知的財産訴訟検討会資料1を御覧いただきたいと思います。
 前回、知的財産戦略本部会合における推進計画案について、知財戦略本部の久貝参事官から御説明をいただきました。ほとんどがその内容と同じですが、特に当検討会との関連が深いところを抜粋させていただいております。前回にお配りしてあるものから違っているところが1点ございまして、4の(1)「知的財産高等裁判所の創設を図る」というところで、前回は「図る」のところについてアンダーラインが引いてありまして、調整中ということになっておりました。これはそのままそれが取れております。内容としては、本文の内容、(2)(3)(4)についても、前回のものと同じでございます。御覧いただければと思います。

○伊藤座長 それでは次に、新聞でも報道されておりますが、民事訴訟法等の一部を改正する法案が国会で成立したようでございますので、その点につきまして、小野瀬委員から御説明をお願いいたします。

【民事訴訟法の改正について】

○小野瀬委員 民事訴訟法等の一部を改正する法律案でございますけれども、その3月4日に国会に提出されておりましたが、その後5月13日に衆議院で可決されまして、参議院に送付されました。その後、国会の日程等でなかなか審議入りしなかったわけでございますけれども、先週7月9日に参議院において可決されまして成立しております。
 7月16日公布の予定でございまして、まだ法律番号は決まっておりません。
 この法律の知的財産に関する分野といたしましては、専門委員制度の創設、特許権等関係訴訟事件の専属管轄化という2点があろうかと思います。
 この点につきまして、国会の審議におきましては、専門委員につきましては、一般的な制度といたしまして、中立性の確保をどうするのかといったようなことが主に中心的な議論となっておりました。ただ、知的財産の関係で言いますと、知財分野における専門委員制度の活用の在り方、例えば、専門家の確保をどうするか、こういったような点が議論になっておりました。
 また、専属管轄化の点につきましては、地方に住んでいる人の利益をどのように配慮するかといったような点の質問が多くございまして、それにつきましては、電話会議システム、テレビ会議システム、あるいは今回の改正法でも移送の制度といったものが設けられているという質疑がなされておりました。
 今回の改正法の施行時期でございますけれども、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するとされておりまして、今後、政令を定めるという予定でございます。実際には、規則等の準備がございますので、来年の4月1日というのが1つの有力な選択肢ではないかと思っておる次第でございます。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。
 次に、法案成立を受けて裁判所が改正法をどのように運用していくつもりか、その準備状況につきまして、若干時間を取って説明をお願いしたいと考えております。
 この点につきまして、最高裁行政局の定塚誠課長から御説明をお願いしたいと思います。

○定塚最高裁判所事務総局行政局第一課長 最高裁の第一課長をしています定塚でございます。簡単に御説明させていただきます。
 ただいま法務省の小野瀬委員の方から御説明がございました改正民事訴訟法の成立に伴いまして、裁判所がこれをどのように運用していくかということにつきまして、簡単に御説明させていただきたいと思います。
 お手元に、本日発売になりましたNBLという雑誌の抜き刷りを配布させていただいております。この中にもそういうことを書かせていただいておりますので、適宜参照していただきたいと思いますし、これから暑い夏を迎えまして、皆様お昼寝などをされると思いますので、これは睡眠導入剤として使っていただければと思っているわけでございます。
 まず申し上げたいことですが、この改正民事訴訟法、一番後ろに知財の関係だけの条文を抜粋して見開き2ページにしてございます。
 この改正民事訴訟法は、我が国の知的財産権訴訟制度にとって極めて画期的であり、驚くような内容が含まれているということでございます。私どもといたしましては、産業界を始めとするユーザーの皆様方の御期待に応えるべく、この新たな制度を最大限、活用してまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 主な民事訴訟法の改正、知財関係の改正は4点ございます。抜き刷りの20ページ、最初のページの二に書いてございます。ここから4点ばかりございます。
 第1が「特許権、実用新案権等に関する訴訟の東京・大阪の裁判所への専属管轄化」という点でございます。皆様よく御存じのCAFCのあるアメリカでも、第一審は50州ばらばらでやっておる。しかも、必ずしも特許の専門家ではない裁判官と陪審員、言わば素人による非専門的処理が行われているのが実情でございます。これを我が国では第一審段階から東京・大阪に知財の専属管轄にして専門的処理を行うということで、これはアメリカでも行い得なかった画期的な試みだというものでございます。
 控訴審は東京高裁一本に集めて、専門的処理を行うということにされました。
 ちなみに、後ろの方に、アメリカのCAFCと東京高等裁判所の比較ということで、29ページに別表10というのを載せさせていただきましたので、後ほど御覧いただければと思います。
 改正の目玉の第2番目でございますが、これは「著作権、商標権等に関する訴訟の東京・大阪の裁判所の競合管轄化」でございます。これもCAFCのございますアメリカでは、御存じのように、著作権等は一審も二審も全国でばらばらに行われて、どこかの裁判所に集中させるということは行われておりません。コンテンツ・ビジネスの重要性ということが官邸の会議でも言われておりましたけれども、そのようなことを考えますと、著作権等々の重要性というものはこれから増すばかりと思います。我が国の制度はこれからの時代を見据えた世界に冠たる制度ではないかと思われるところでございます。
 第3番目が「知的財産権訴訟に五人合議制を導入」されたということでございます。
 第4が「専門的知見を訴訟に反映させる専門委員制度の導入」したという4点が、知財関係訴訟に関する主要な民訴法の改正点でございます。
 そもそもこのような改正は、この検討会の座長でいらっしゃる東大の伊藤眞教授ほか、多くの高名な学者の先生、あるいは実務家の先生方等が集まって、法制審議会で議論が重ねられたことによる成果でございます。関係者の皆さんが、とにかく産業界のニーズに応えた、力強い知財訴訟制度をつくろう、実質的に言わば知財裁判所と言えるような制度をつくろうということで、産業界からのヒアリングを含めまして、さまざまな努力、大変な努力をして、この改正が実現したということでございます。
 抜き刷りの27ページに記載しましたが、そもそも産業界からは知的財産権訴訟に対して、大きく3つの要請が寄せられておりました。
 1つ目が、順番とちょっと違って、これは(3)として書いてございますが、1つ目が、訴訟を更に迅速化・充実化させてほしい。という要請でございます。2番目が、技術専門性の強化でございます。第3が、判例の事実上の早期統一化。この3つの大きな要請がございました。今回の民訴法改正はこれらの3つの要請にすべて応えることができる内容になっております。
 まず第1の迅速化、充実化の要請に応えるものが東京・大阪への専属管轄化、あるいは競合管轄化でございます。
 東京・大阪には知財専門部がございまして、飯村裁判長ほか、知財訴訟に強い専門家の裁判官と技術専門家である調査官によりまして、他の裁判所と比べて迅速でハイレベルな事件処理が行われていることは皆様御承知のとおりでございます。
 24ページに別表4というのを付けました。年によっていろいろございますが、おおむね東京・大阪では他の裁判所の半分程度の時間で事件処理が行われるということが見て取れると思います。この東京・大阪に知財事件を集中させることによりまして、一層の迅速化、充実化が図れることは間違いないことだと思われます。
 第2に、技術専門性の強化でございますが、この要請に応えるものが専門委員制度でございます。技術というのは日進月歩でございまして、特に特許になるような最先端の技術については、その分野の一握りの専門家しかわからないということも少なくありません。しかも、そのような専門家の方々はとてもお忙しく、とても常勤という形で裁判所に力を貸していただくことはできません。
 このような考慮から、非常勤の形で、まさに裁判の重要な場面で裁判所に力を貸していただける制度として、専門委員という制度が導入されたわけでございます。裁判所といたしましては、このような非常勤の技術専門家にできるだけ数多く、また、幅広い分野から審理に加わっていただきたいということで、少なくとも100 人規模で専門委員を選任させていただく予定にしております。
 どのような専門委員を準備することが望ましいかということで、産業界の代表でいらっしゃる阿部委員、加藤委員、沢山委員からいろいろお話を伺わせていただきました。あるいは中山教授の御紹介で東大の名誉教授の吉川弘之先生のところをお訪ね申し上げまして、こういう方面から、あるいはああいう方面から専門委員を入れるといいよという御助言をいただきました。
 現在、そのような御助言に従いまして、さまざまな学会、あるいは研究所などを回って、専門委員の候補者の選任をお願いして歩いているところでございます。
 今のところ、それぞれの団体からいずれも前向きな御回答をいただいておるというところでございまして、改正民事訴訟法施行までの間、先ほどの小野瀬委員のお話ですと来年の4月1日が有力ということでございますが、それまでの間に各方面の皆様方の協力を得て、100 人規模の専門委員を選任させていただいて、このような専門家の方々の知見をしっかり訴訟の過程に導入させていただくということを考えております。
 これによりまして、多様化、細分化する技術にしっかりと対応する知財訴訟というものを行っていきたいと考えております。
 第3番目が事実上の判例統一機能の創出でございます。
 現在、東京高裁には4か部の知的財産権専門部がございますが、今般知財訴訟に5人合議制が導入されましたので、それぞれの部から裁判長、あるいは裁判長に準ずる方を出していただいて、その方と判決起案担当の裁判官と5人で合議を組む、言わば大合議法廷というものを設けることによりまして、例えば東京高裁で同じ論点の訴訟が違う部に係属しているような場合などに、事実上早期に判例統一をする運用も可能になるだろうと思っております。
 以上、簡単に申し上げさせていただきましたが、改革審議会の意見を受けて、実質上の知財裁判所をつくろうということで法制審議会で検討していただいた内容が、民訴法改正ということで、見事に結実したと思っております。
 裁判所といたしましては、このような要請、あるいは期待というものを重く受け止めまして、今、申し上げたような最大限の運用上の努力をいたしまして、来年の改正民訴法施行と同時に、産業界の皆様方の御要請に十分応えた実質上の知財裁判所を実現するように積極的に頑張ってまいりたいと思っております。
 どうぞよろしくお願いします。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。ただいまの御説明について何か御質問ございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。

【知的財産訴訟における専門的知見の導入に関する改善の方向性】

○伊藤座長 それでは、次の議題に進みたいと思います。これより知的財産訴訟における専門的知見の導入に関する改善の方向性について、検討に入りたいと思います。この論点は既に本年2月の第5回検討会におきまして御議論いただいた、専門家が裁判官をサポートするための訴訟手続への新たな参加制度と、4月の第7回検討会において御議論いただきました、いわゆる技術系裁判官に関する第2巡目の検討ということになります。そこで、まず事務局から資料2の12ページまでの説明をお願いします。

【第5回及び第7回の検討会の議論の概要】

○近藤参事官 資料2を御覧ください。1ページから7ページまでは、第5回及び第7回の検討会における議論の概要をまとめています。まず1ページは、第5回及び第7回の検討会資料でお示しした検討の方向性を再度記載させていただいております。
 次に2ページ以降ですけれども、第5回、第7回における委員の皆様の御意見を紹介しております。
 まず第5回の検討会において、議論の方向に関する意見として、例えば侵害訴訟と審決取消訴訟の訴訟類型の違いを意識して考えるべきであるとの意見がありました。
 これについては、前回、飯村委員より、東京高裁の裁判所調査官の実情について御説明していただいたわけですが、結論的には、調査官の職務、役割は担当裁判官によって大きく左右される。しかし、調査官の仕事のやり方等については、東京地裁の調査官と本質的に異なることはないという御報告というふうに理解いたしました。
 したがって、1巡目の検討と同様に、地裁・高裁共通の制度設計にするということを前提にレジュメができておりますことは、初めにお断りしておきます。
 次に、現行制度の評価に関する御意見といたしまして、例えば侵害訴訟を経験した中で、一番時間がかかっているのは、当該業界の技術常識について共通の理解を得ることであり、調査官がより積極的に関与すべきであるという御意見。当事者の持つ不満は、裁判官が技術をわかってくれないということと、裁判官が技術的に適正な判断をしてくれないということの2種類があるという御意見。そのほか、現行調査官制度については不自由は感じていないという御意見もありました。
 また、裁判所調査官の権限の拡大に関する御意見としては、現在の調査官の権限は不足で、技術系裁判官そのものか、それに近いものまで踏み込まないと、本当によい知的財産訴訟制度はできないのではないかという御意見や、現実的な問題として、調査官の権限を拡大してほしいという御意見がありました。
 また、裁判所調査官の透明性、中立性の確保の意見としては、例えば代理人の立場から調査官制度について不満があるのは透明性であり、専門委員に準じて知財専門委員制度を提唱したいとの御意見。それから、調査官と裁判官との間にどのような情報交換がされているのか、確認をするチャンスが欲しいとの御意見。また、調査官への反論の問題は、裁判官の心証をどの限度で開示するかに帰着するのではないかという御意見がありました。
 4ページの下の方ですが、専門家としてどのような者を活用すべきかに関する意見としては、特許庁審査官、審判官を中心に、広く人材を求めればよいという御意見。大体ほぼ一致していたように思っています。
 また、専門委員との関係はどうあるべきかに関する御意見としては、審理への関与の仕方について、調査官は原則関与し、専門委員は必要に応じて関与するという御意見が多かったように思います。また、要求される専門性についても、調査官は技術的知見及び特許等の法律上の判断に関する専門性を有し、専門委員は調査官では対応が困難な専門性の高い技術に関する専門性を有することとする案がよいとする御意見のほか、調査官及び専門委員のいずれもが技術的知見及び特許等の法律上の判断に関する専門性を有するとする案がよいとの御意見もございました。
 次に5ページの、いわゆる技術系裁判官について第7回の検討会で御議論いただいた御意見を御紹介いたします。
 例えば今後更にバイオや情報通信などの先端技術が増えることを考えると、専門委員が活用されるという前提に立っても、法律的、かつ技術的に当該事件の中に当てはめていく技術、包括的な役割が必要となり、これを技術系裁判官の役割にすればよいとの御意見。それから、技術的素養のある人が法曹の資格を取ることができるようにしてほしいとの御意見。裁判官は、法の支配の担い手であり、それがどういうものかを議論しないと結論が出ないとの御意見。裁判官は法のプロであっても、それ以外では素人でなければならないし、十分に説得力ある主張を行うことは当事者の義務であり、むしろ専門家はプロであるがゆえの偏見があるとの御意見などがありました。
 以上が7ページまでの具体的な抜粋したところの説明です。

【具体案の検討】

○近藤参事官 続きまして、8ページから12ページまでですけれども、これは具体案の提示となっておりますが、ここでは知的財産訴訟における専門的知見の導入のための新たな方策案について、皆様に御議論いただくためのたたき台となるものを挙げています。調査官の権限等を拡大する案や、いわゆる技術系裁判官の案として、A案からD案まで挙げております。
 各案を整理するに当たり、基本的な考え方としては、裁判に関与する専門家について、その権限を拡大することと、透明性を確保することをどのようにバランスさせるかが問題であり、考えられる組み合わせとして、A案からD案を挙げております。本レジュメの一番最後のページに、比較対照の表を付けておりますので、それを参照していただきながら説明を聞いていただければと思います。
 一番左側が現行の調査官ということになっておりますが、これは裁判官の命を受けて調査報告を行うということで、それ以外の権限については基本的には権限がないということになっています。
 それに対して検討されている案として、まずA案ですけれども、現行の裁判所調査官の権限を拡大するという案です。A案のコンセプトは、裁判官への専門的知見の提供を充実させることを重視する案でありまして、従来の裁判所調査官は裁判官を裁判所内部においてサポートし、裁判官の命を受けて必要な調査を行う専門家であったが、更にその権限を明確化、及び拡大することとし、技術及び知的財産に関する専門家として、評議に参加することを含め、すべての手続段階において裁判官を補助し、専門的知見に基づく参考意見を述べるというものです。
 A−1案とA−2案という2つの案が掲げておりますが、これの主な違いは、A−1案は、専門家は当事者の前に出ることをせず、専ら裁判所の内部機関として裁判官に専門的知見を提供するという案です。他方、A−2案は、A−1案の権限に加えて、期日に立ち会い、所定の権限を有するなど、当事者の前に出てき得ることを規定するものです。
 具体的には、A−1案は、現行の裁判所調査官の権限に加えて、評議において参考意見を述べることとし、また、透明性、中立性を確保するために除斥・忌避・回避の規定を適用するというものです。
 A−2案は、A−1案の権限に加えて、更に期日に立ち会い発問等を行い、また、期日外において当事者に釈明を求めるという権限を有する案です。
 透明性・中立性の確保についても、除斥・忌避・回避のほかに、裁判官への報告内容を当事者に開示し得るかどうかということについては、この表では○から×という形でいろいろ組み合わせがあり得るという形で御議論いただきたいと思っております。
 開示の点は、評議の秘密を保持することとの関係から、報告内容を開示するか否か、するとした場合にどのような開示をするかについては、13ページのところで別途御議論をいただくということを予定しております。
 次にB案ですが、現行の裁判所調査官の透明性の拡大をする案です。
 B案のコンセプトは、調査官の裁判への関与の透明性を図ることを重視する案でして、調査官の報告内容等を当事者に開示することにより、これに対する反論の機会を保障するなど、専門委員の要素を加味するものです。この案は現行の調査官及び専門委員に近いものに再構成するもので、具体的な権限としては、期日に立ち会い発問等を行うものです。このときの期日における権限は、専門委員の期日における権限を目安とすることが考えられます。
 また、透明性・中立性を確保するために、除斥・忌避・回避の規定の適用、自己の専門性の開示、調査範囲に一定の制限を加える、裁判官への報告内容を当事者に開示するというものです。
 なお、期日における権限の具体的方策案と、報告内容の開示についての具体的方策案については、13ページで別途検討していただくということで、先ほどと同じです。
 次にC案は、いわゆる技術系裁判官のうち、法曹資格を有しない技術者等が評議に参加するという案です。C案のコンセプトとしては、技術等の専門家が、裁判官の補助としての関与としてではなく、裁判の判断形成に主体的に関与するというものです。期日における所定の権限を有し、技術及び知的財産に関する専門家として、評議に参加し、参考意見を述べるか、もしくは評決権まで有するとするものです。この案の専門家は調査を行ったり、裁判官に報告したりすることはありませんので、報告内容の開示の問題が生じる局面はありません。
 C−1案とC−2案の違いは、C−1案は評議において参考意見を述べるものであるのに対して、C−2案は評決権まで有するというものです。なお、レジュメの17ページの方では、いわゆる技術系裁判官の検討において考慮すべき論点を挙げておりますので、議論いただく際にはこちらも御参照いただければと思います。
 次にD案ですが、いわゆる技術系裁判官のうち、技術的素養を持つ者が法曹資格を取得し、裁判官になるとする案です。D案のコンセプトは、今後より多くの技術的素養を有する者が法科大学院等を経て、裁判官に任命されると考えられるため、このような者を知的財産訴訟における裁判官とする案でございます。
 例えば理科系の大学を卒業した後に、法科大学院を終了して司法試験に合格し、法曹としての裁判所法42条の任命ルートを経て、裁判官に任命されるというようなイメージです。
 この案は今後の法科大学院等の運用に期待するものですが、この案も前回、第7回の検討会で支持する御意見がございました。C案との比較でもという意見が述べられておりましたので、この案についても、この一覧表に記載させていただいているということでございます。
 これらA案からD案をお示ししましたが、これらの各案を参考にしていただき、知的財産訴訟における専門的知見の導入について、具体的方策はどうあるべきかについて御議論いただきたいと思います。
 このAからDというのは、あくまでもパッケージとしてこういうものが考え得るのではないかということで事務局の方で御用意させていただいた案ですので、これ以外でこういう案の方がいいのではないかということについて御議論いただくことは、一向に差し支えございません。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。それでは、この案についての御質問、更にそれぞれの方の御意見、いずれでも結構ですので、どうぞお願いをいたします。

○末吉委員 それでは、レジュメの一番最後の表に基づいて、弁護士会で議論してきたところを報告したいと思います。先回ちょっと申しましたが、透明性、中立性の確保というのが最重要課題であると考えまして、B案を基調に考えてまいりました。
 ただ、いろいろ考えてまいりますと、B案とA−2案の折衷的な形に最終的になると思いますが、まず、透明性、中立性の確保という観点から、これはまた後で申し述べますが、報告内容の当事者への開示、⑨ですね。これは中間報告的なもので結構ですが、これを求めるということで、B案の⑨の○というのが一番大きいのではないかと思います。
 ただ、表の⑦というのがございますが、いろいろ議論してみると、自己の専門性の開示ということが果たしてどの程度透明性・中立性の確保に意義があることなのか、疑義もあるという意見もございましたし、それから、⑧の調査範囲の制限につきましては、もう一度いろいろ議論してみると、むしろ調査事項の明示、どういうことが調査依頼をされているのかということが明示されるということで、調査依頼書の開示のような形、調査依頼事項の開示で十分なのかもしれないという議論がございました。
 それから、権限の拡大でございますが、私どもとしては、透明性の確保があるということを前提に考えますと、このB案では②にのみ○が付いてございますが、裁判長の訴訟指揮の下にある限りは、③の期日外において釈明を求める、あるいは④の評議において参考意見を述べるということは、○であってもよろしいのではないかという結論になりました。このように、B案を修正した形、ちょっとA案に近くなるのでございますが、それがよろしいのでないかというふうに議論がまとまった次第でございます。

○伊藤座長 A−2案とB案ですね。その折衷というか、修正して、両者の評価すべき点を併せ持つような考え方ということだと思いますが、どうぞほかの方。

○加藤委員 先に末吉委員に質問させていただいた上で、私の意見を述べる形でよろしゅうございますか。
 弁護士会で御検討いただいた案は、C案とかD案については、一応考慮しないという前提でのことでございましょうか。
 実は私のこうしたらどうかというのは、ある意味では組み合わせ方なので、例えばB案なりA案を選ばれた場合については、C案、D案は全く土俵から外れた上でのことなのか、あるいは技術系裁判官とか、本当の裁判官のD案のようなケースというのはまた別途のお話なのか。その辺についてはどういうふうに考えたらよろしいでしょうか。

○末吉委員 ちょっと言葉が足りなかったようですが、技術系裁判官につきましては、弁護士会としては、D案の意見を前から差し上げておりまして、是非、技術系裁判官をD案の形で増やしていただきたいということで、その点についてはD案を支持したいと思います。

○加藤委員 私としては、2段階のものになって恐縮ですが、将来的な姿と言いますか、まず、前提として産業界の代表として申し上げたいことは、侵害訴訟において当事者の攻撃・防御を1か所で行いやすくするため、それにふさわしい姿での専門家の参加制度というものを考えることを前提としております。
 そうした場合、将来的、あるいは理想的な姿としては、D案を支持するものであります。その場合についても、やはり調査官というのは必要であろうということでございますから、将来的、理想的にはD案プラスA−1案で組み合わせをしたらどうかという意見でございます。
 しかしながら、この案の最大の問題は、D案について、かなり先になるということでございますので、それまでの間、やはり最善とは言えないものの、次善の策を用意すべきであろうということで、C−2案プラスA−1案という形で当面運用したらいかがかなということでございます。いわゆる技術系裁判官、この場合C−2案ですから評決権を持った技術系裁判官を入れた上で、一定の調査官のサポートが必要であるということで、いわゆる技術系裁判官が技術の側面を見るわけですから、その場合の調査官の役割については、それほど前面に出なくても足りるであろうという前提で、A−1案を支持したいと思っております。

○伊藤座長 加藤委員の御意見は、A−1案で調査官の補助を受けながら、技術系裁判官が裁判官としての権限を行使して、それを裁判体全体としての判断に生かすという、イメージとしてはそういうことですね。

○加藤委員 そういうことでございます。

○飯村委員 今の御発言に対する関連質問ですけれども、技術系裁判官の本質的な素養というのはどういうふうにして担保されるのでしょうか。

○加藤委員 技術系裁判官、逆に言いますと、給源という考え方でお答えしますと、やはり法律の側面と技術の側面両方を兼ね備えていないと、C案に言うところの技術系裁判官についてはやれないだろうということで、言わば特許庁における審査官、審判官、技術に詳しい弁護士、弁理士、更に企業まで広げてもいいのではないかということをイメージしております。
 ただ、その場合について、当然評決に加わるわけですから、相当レベルの選定基準というのは用意しませんと、やれないことにはなろうかと思っております。そういったイメージでございます。

○飯村委員 前提となるイメージについての確認ですけれども、例えば地裁であれば、裁判官は、合議体であっても単独体でも審理できるのですけれども、単独体も想定しての話でしょうか。

○加藤委員 そういう場合については、想定しておりません。一応合議体の中の一構成裁判官というイメージを持っております。

○櫻井委員 組み合わせて議論すると話が複雑になるので、1つずつ考えたいのですけれども、裁判官が裁判するという立場でどういうことが必要かということを考えますと、C案というのは、独立して参加する、主体的に参加するということですから、裁判官の命を受けての調査・報告をしないという話になるので、そうすると、今いる裁判官は丸腰になるというか、手足と言っては表現が悪いかもしれませんが、サポートしてくれる人がいなくなるというイメージですね。トータルで技術も法律もわかる裁判官がいないという前提ですけれども、そうすると、現実的ではないのではないかというのがあります。
 それから、B案ですけれども、専門委員類似ということになりますと、これは専門委員そのものが創設されるわけですので、何でそれと類似の調査官をつくらなければいけないのかという疑問もありますし、やはり裁判官の立場からすると、透明性とか中立性を確保すると言っても、昨日の晩に何を読んだかとか、今、どういうことを考えてこういうふうになっているのかとか、結局、そういう話をいちいち全部開示しなければいけないのかという話と同じことなので、それをどうして調査官についてだけ透明性、中立性ということを突出した形で要求するのかというところはよくわからないというのがありまして、そうしますと、仕切りとしてはA案で、権限をある程度拡充させていくというのが能率的かなというのと、理想はD案かもわかりませんし、組み合わせということも考えると別の可能性もあるかもしれません。一応そんなイメージを持っています。

○伊藤座長 A案の中でA−1とA−2がありますが、その点は。

○櫻井委員 A−2案くらいがいいかなと思いますけれども、報告内容の当事者への開示というのは、これは前にも申し上げましたように、余り安易にすべきではない話です。基本的には調査官が判決書を書くわけではありませんで、したがって、報告内容が開示された場合に、開示の形態にもよりますけれども、仮に完全に同じだったら裁判官は要らないという話になるのもおかしいですし、違っていたらどうかということになると、それもまた不合理だということで当事者としては耐えられないということになるだろうと思いますので、そこは裁判官がちゃんと飲んだ上で判決を書いていくということで制度設計をしないと、いたずらに紛争を拡大させることになるのではないかという気がいたします。

○伊藤座長 必要であれば、裁判官がある場面で調査官の報告を踏まえた心証を開示すればそれで足りるということですか。

○櫻井委員 基本的にはそうだと思います。

○阿部委員 先ほど加藤委員から意見がありましたけれども、私が所属している日本知的財産協会での議論は、まず技術系裁判官というイメージはこのD案でございます。C案での技術的裁判官ということについては、裁判官と独立に行動するということに関しては、法曹の資格を持っていなければ我々は安心して見ていられないというのが大方の意見でございました。
 技術系裁判官があろうとなかろうと、その裁判官を補佐するという役割はいつでも必要なのではないかと考えていまして、そういう意味ではA案でございます。
 A案につきまして、我々としては調査官にどういう権限を与えるかという側面よりも、調査官が裁判官とどういうコミュニケーションをしているかというところが非常に興味がございまして、そこを何とか情報を開示してほしいという意味なのですけれども、その反面として、例えば期日に立ち会っているとか、それから期日外においてもそこに証拠調べがあるというときにいるというところが重要であろうということで、どちらかと言えば、A−2案の方が望ましいという意見でございました。
 B案はちょっとよくわからなくて、A−2案があればB案は要らないような気がするのですけれども、専門委員類似というのが、専門的知識だけを期待するというのであれば、櫻井委員がおっしゃったように、今回できたような、先ほど定塚さんから説明があったような専門委員がいればそれで足りるということでございます。

○伊藤座長 D案は前提として、具体的にはA−2案の考え方がよろしいのではないかという御意見ですね。

○阿部委員 はい、そうです。それから、当事者への報告内容の開示のところが、「○〜×」と書いてあって、ここはいろんなバリエーションがあるということでよろしいのでしょうか。だとすると、そのバリエーションによってはいろんな考えがあり得るということです。

○沢山委員 私はもともと調査官というのは裁判官の分身だととらえていますので、そういう意味でA−2案で、はっきりしない調査官の権限の拡大をしっかり図ってやればいい。今、阿部委員がこだわっておられた報告内容の当事者開示ですけれども、これは調査官と裁判官との間のコミュニケーションを、裁判の途中で開示してもらう必要はなくて、例えば評議において参考意見に何を述べたか、どういうレポートを裁判官に出したかということを、判決の中で明らかにしていただくという工夫をしていただければいいのではないか。採用しなかった場合にどうするかとか、いろんな議論はあり得ると思いますが、裁判官が調査官のレポートなり参考意見にある程度依拠して判決を書いた場合には、それのオリジナルな形のものを、判決に添付する形でも何でもいいですが、何らかの形で明らかにしていただく方法を考えていければ、途中での開示というのは必要ないと考えます。

○小林委員 まず今、既にロースクールができつつあるということで、将来形やユーザーの強い要望ということを考えたら、これからいろんな工夫が必要であるにしても、D案というのは当然にあり得るだろうと思います。ただ、いつそういうものが実現できるかという問題は別途あると思いますけれども。
 したがいまして、将来形としてD案があり得るという前提で申し上げたいと思います。その場合においても、基本的には今の調査官類似のサポート体制、あるいは専門委員類似の専門体制というのは恐らく必要だろうと思います。仮に不要であれば使わなければよいだけの話ですから、積極的にD案だけにする必要性はないと思いますので、将来形としてD案であるにしても、類似のサポート制度はあるという前提で考えたいと思います。
 では、当面どういうふうにしたらいいかということですが、私としましては、A−2案がいいかと思います。開示の点については後で申し上げたいと思いますが、基本的にはA−2案を支持したいと思います。その理由は、第1には、現行の調査官が実際に行っている業務、これを子細に聞きますと、頻度の差とか、あるいは裁判体に応じて裁判長の訴訟指揮との関係での差はございますけれども、基本的にA−2案で○がついているようなことについては、裁判所内で大なり小なり実現されている部分がある。それを明確化していくというのが一番今の現実に即しているというのが一番重要だと思います。
 他方、ほかの案との関係で比較をいたしますと、例えばA−2案に対してA−1案を見ますと、②の期日に立ち会い所定の権限、例えば説明権とか釈明権だと思いますが、そういうのには×が付いている。③の期日内の釈明というのも×が付いている。それを考えると、必要に応じてできるはずと考えられていることを積極的にできなくするということですから、その点については、若干問題があるという気がいたしますし、それから、A−1案の一番下の⑨のところ、報告内容の当事者への開示というのに×が付いておりますけれども、A−2案が「○〜×」ですので、いろんなバリエーションが考えられるとしても、何らかの形での開示なり反論の機会というのは確保すべしというのが大方のユーザーの意見だと思いますので、その点でもA−1案というのは堅持する必要はないのではないかと思います。
 それから、A−2案とB案との比較で言いますと、B案はコンセプトとして専門委員制度を基準に考えられたものだと思いますけれども、既に専門委員制度が今回の民訴法改正でできたということを考えると、屋上屋を重ねる必要は全然ないのではないかと。もしつくるのであれば、全然違う制度を、調査官が今違う制度として位置づけられているわけですが、そちらの方にしなければ余り意味がないだろうということと、とりわけ④の評議において参考意見を述べるというところに×が付いていますけれども、これまた報告書の形であるとか、あるいは必要に応じて含まれるという形で、今、既に参考意見をインプットしているのが現状でございますので、その点から考えても逆行ということになりかねないので、B案もまた適切ではないと思います。
 それから、C案につきまして、正直申し上げて、ちょっとコンセプトがつかみにくいのですけれども、いわゆる鍵括弧付きの技術裁判官ということを言っているようにも見えるし、あるいはそれとは全然別に、特別陪審的なことを念頭に置いているようにも見えるので、もし、そうだとすると、それなりに非常に詰めなければならないいろんな問題を惹起するような気がしますけれども、とりわけC−2案につきましては、⑤の評決権を有することとのセットなんでしょうが、⑨の報告内容の当事者への開示というのが×になっているわけでございまして、これはまた完全にユーザーニーズに合致するのかどうかというのに疑問がございますし、C−1案もその点では⑨に×が付いていますから、同じことになるのではないかという気がします。
 それから、C−1案、C−2案のような形にしなくても、A−2案ということで権限を明確化して、当然のことながら、裁判長の訴訟指揮に服するということにすれば、十分な機能強化ができるではないかと思いますので、その点からもA−2案が機軸になるのかなと思います。

○荒井委員 私はA−2案でいいのではないかと思っております。それから、D案は、できるだけこういう方向のものを早く実現していただきたいということでございます。

○中山委員 D案は、D案として独立して書いてありますが、これは本当は案ではないですね。司法試験を通って裁判官になるというのは、これは否定しようがない。これは時間がかかるという前提で、多分そういう趣旨だと思います。これは時間はかかるけれども、否定しようがない。そういう前提で考えますと、D案を取っても、当然サポーターは必要でして、学部でバイオテクノロジーを学んだからすべての技術についてサポートは要らないとは考えられないわけです。まして、30年前に生物科学を学んだ人か今はバイオの専門家かと言われると全然わからないので、恐らくD案は、普通の裁判官だけれども、学部のときに理科系を勉強したという程度であって、これは文科系でも一生懸命理科系を勉強した人とそう違わないと思います。したがって、当然サポーターが要るわけですけれども、C案は裁判官に近いものでして、この場合のサポーターは一体どのように付けるのか、裁判官と同じように配置するのか現在の調査官のように配置するのかよくわかりません。調査官だったら専門に従って配置すればいいですけれども、裁判官でしたらどの事件が来るかわからないから、バイオの専門家にコンピュータの事件が来るかもわからない。ほとんどがその人の専門と関係のないようなものが回ってくるわけで、裁判官類似というのは私は好ましくないと思います。
 B案は先ほどから出ているとおり、専門委員がある以上、やってもしようがないという感じがします。そうすると、A−1かA−2に落ち着くのではないか。私はどちらがいいかよくわかりません。これはユーザーの要望と、実際にそれがどの程度できるのか。あるいはコスト、手間、どのくらいかかるかというフィージビリティーの問題と両方がかかわってくるのではないかと思います。

○伊藤座長 そうすると、D案は前提として、それにA−1、またはA−2という考え方を付け加えたらどうかということですね。飯村委員、どうぞ。

○飯村委員 まずD案なんですけれども、将来形として技術的素養を有する者が法曹資格を持ってというイメージを前提としていると思われます。しかし、既に現実には、技術的なバックグラウンドを持った裁判官はおられました。例えば、高裁では杉山裁判官は理科系で、東大で船舶工学を専攻されておられましたし、最近でも大阪地裁の前田裁判官は理科系で、東大で建築学を専攻されていました。理科系の裁判官は現におられるわけです。要するに我々は、法律判断をするわけで、大学を出た時の理科系のバックグラウンドが、具体的な事件でどれだけ理解を深め、適切な判断に役立てられるかということも意味があるかもしれませんが、それよりも、裁判官が適切な判断をしたかどうかの結果が試されているわけであって、そういうことから考えると、別に賛成も反対もしているわけではないのですけれども、理科系だからということで問題が解決するという話ではないと思います。
 いずれにしても、将来形で時間がかかるという話もあるのですけれども、既に20年前から、知財部には理科系の裁判官がおられて、事件を審理していたという意味では、実現していたということは指摘しておきたいと思います。
 それから、案に関してですが、C案、B案に関しては、好ましくないだろうという結論だけを述べさせていただきます。
 それから、A案に関してですが、権限を明らかにするということは、確かに大切だと思いますので、A−1型かA−2型が妥当と思われます。また、それらをミックスした案もあり得ると思っています。一番気になる点は、報告内容の開示でございます。これに関しては、極めて神経を使う微妙な問題があり、それぞれの裁判官が審理を進めていく上において、事件に対する問題点の所在とか、それから結論を導く過程は開示したくないという場合もあります。裁判官は、具体的な事件により、この事件では結論についての理由づけを聞いたり、技術的な裏づけ証拠の存否について聞いたりとか、いろいろ、事件ごとに調査官に発問するためのバリエーションがあるわけですが、それを一律的に開示するということになりますと、かなりいろいろな悪影響を及ぼすと心配しています。紛争解決に当たって妨げになるのではないかと思われます。

○伊藤座長 小野瀬さん、何か御意見ありますか。

○小野瀬委員 当然訴訟の実務で使われるユーザーのニーズというものをよく考慮して考えるべきではないかと思います。今、お話を伺いますとA−2案というのも支持者が多かったとお聞きしましたけれども、それについて私の方から意見はございません。

○近藤参事官 今、皆さんの御意見を伺ったのですけれども、加藤委員から先ほど、将来的にはD案プラスA−1点で、それまでの間としてはC−2案プラスA−1案ということでしたが、A−1案とA−2案との関係ではA−1案がいいというのはどういう理由でしょうか。

○加藤委員 D案しかり、C−2案しかり、裁判官において技術ウェートを高めた制度なわけです。ですから、サポーターという意味では調査官は必ず必要であるというのは確かですけれども、そういった前提に立った場合について、A−2案まで権限を強く拡大する必要はないのではないかというのが理由づけでございます。

○伊藤座長 必要な場合には裁判官が前面に出てということですね。

○加藤委員 そういうことです。

○中山委員 加藤さんの話ですが、D案が実現するまでというか、実効性を持つまで多分10年くらいですか。

○加藤委員 一応そのくらいのことを考えています。

○中山委員 それは、10年間の時限立法にするということですか。私もさっき飯村さんがおっしゃったことと同じなのですが、造船工学出身の裁判官というのは、造船技術の事件が来るなどということは一生に一回あるかどうか知りませんけれども、来たところで造船技術がどれくらい役に立つか。

○加藤委員 理想的にD案は案でなくて、そういうふうになるはずなんですが、D案を置いておきますけれども、10年の期間においては、私自身、産業界で知財に携わっている者として、やはり、ドッグイヤーという言葉があるとおり、ちょっと捨て置けない期間だという認識を持っております。ですから、この10年間が多分、日本にとっても技術の側面から、あるいは知財の側面から勝負の年だと思っておりますので、無策とは申しませんけれども、何らかの措置、時限は好きではございませんけれども、仮に時限立法でもやむを得ないという考え方から、何らかの措置をしてほしいという思いを込めての申し入れでございます。

○中山委員 最後の私の質問は、造船工学とか、建築学を大学で学んだ者が裁判官になると、10年後はそんなに変わりますか。本当にそうお思いですか。

○伊藤座長 それはD案ですか。

○中山委員 D案で10年間は時限立法が必要だということは、10年後には変わっているはずであるということが前提だと思うのですけれども、理科系出身の人がロースクールへ来て、司法試験に受かって裁判官になる。そういう人が一人前の裁判官になるのに仮に10年とした場合に、10年後というのはそんなに変わるのでしょうか。

○加藤委員 何がですか。

○中山委員 加藤さんの要望するような裁判というのは、理科系出身の裁判官が立派に成長すれば実現してくれるとお思いですか。さっきのように造船工学を学部で学んだ人が、10年後にちゃんと加藤さんの要望に沿うような裁判をしてくれるのでしょうか。そうならば、10年間は時限立法で食いつなぐのも理解できるのですけれども、

○加藤委員 少しでもよくなっていると思いますけれども。

○伊藤委員 そもそもオームの法則とは何だというところから教えてもらわなければいけないレベルの人と、そうではなく、自然科学一般について基礎的な素養ができている人とではおのずから違うということも考えられますから、そこは、どの程度かということは別にして、違うことは違うだろうと思います。

○中山委員 要するに、亀の子にアレルギーを感じるかどうかというぐらいの違いではないかと思います。アレルギーを感じないというのは非常に結構なことかもしれません。それが大事なんだと言えば変わるのではないかという気がするのです。

○加藤委員 今の先生の御指摘よりは、もっとレベルは高いだろうと思っております。D案における裁判官というのが技術系のバックグラウンドを持った裁判官ができたことのことを思えば、亀の甲にアレルギーを感じるかどうかというのではなくて、相当程度の違いは今の技術系ではない裁判官との差異というのはあるはずだと見ております。
 逆に申し上げますと、そのくらいの有意差を持った裁判官でないといけないということではないかと思っております。
 ですから、技術についても法律についても、単なる両方の専門性の組み合わせではなくて、それぞれに高いレベルを持った組み合わせを持ち得る能力を持った裁判官でないと勤まらないはずだと思っております。そういう意味で有意差というのは相当あると思っています。

○中山委員 確かにそれはいいに決まっていると思うのですけれども、理系というのは余りにも細分化しています。あらゆるものが裁判所に来る可能性があるというときに、どうかという話をしているのです。造船工学の出身者のところに造船の事件がたまたま来れば、それは多分有意性はあると思いますけれども。

○加藤委員 あえて言えば、科学技術一般に対する常識のレベルのというのはそれだけ高くなっているものと思っております。ですから、仮に最終専門として造船を選ぼうが、あるいは亀の甲の化学を選ぼうが、やはりそのベースに持っている科学技術一般に対する知識レベルというのは現在上がっていると思っておりますから、その範囲でカバーしていただけるものと思っております。

○近藤参事官 確認ですけれども、レジュメの方の2ページの「現行制度の評価」というところで、上から4つ目の○の「個人的には、裁判所が権利をどのように理解したかについて」は、現在について不安というのはないけれども、より技術の向上が進んだ場合には不安があるという一般的な感覚である。これは私の記憶では、加藤委員の意見。

○加藤委員 私の意見だと思います。

○近藤参事官 それと今の御意見との関係ですけれども、その理解の仕方について整理したいと思うのですけれども、ここのところを単純に見ると、より高度な部分について補充していけば、これからより高度なものがたくさん出てきた場合に、それはなかなかわからないので、より高度な技術について補充していた方がいいという考え方が1つあり得て、それについては先ほどの最高裁の説明では多方面の専門委員なども用意して、それをちゃんとフォローアップしましょうというのが1つあったと思うのです。今の加藤委員の御意見というのは、これとの連続性で考えた場合に、高度なものが出てきて、高度な先端技術についての専門委員のアドバイス等があるということを前提にしても、それをより早く、より確実に裁判官自身が理解をしてもらう。その説明を受けることを前提にして、高度なものをより早く理解をしてもらうという部分のところでC−2案というものが必要だと。そういうふうに理解してよろしいでしょうか。

○加藤委員 世の中は技術進歩していますから、より高度なものが出てくるに私は決まっていると思うのです。ですから、当然サポートは必要ですし、調査官の権限拡大でもいいですし、専門委員の適用でも、もちろんそれは必要なことだと思っています。
 ただ、技術が高度になってくれば、それに対応した法の適用も相当複雑になってくると思っているのです。

○近藤参事官 法の適用がですか。

○加藤委員 例えば特許法が現行のものがあります。そこへ技術が高度化してきた場合について適用することが今までの考え方で果たして済むかどうかという側面も持っていると思っているのです。そこのところに裁判官側の専門家が必要ではないかということです。

○伊藤座長 それを調査官、場合によっては専門委員が補充するけれども、調査官や専門委員によって供給される専門的知見について受容性があって、それをすっと受け止められる資質のある裁判官が望ましいという御趣旨ですね。

○加藤委員 おっしゃるとおりでございます。

○櫻井委員 今、御議論を伺っていて思ったのですけれども、D案で仮に完全無欠な裁判官ができたとしても、でも、サポート等は必要だと。そうだとすると、先ほどのC案も、調査官が技術系裁判官的に活動するとしても、それにサポートが必要な場合があり得るということで、調査官に調査官をつけるという話ですね。そうすると、話はエンドレスになってくるわけで、一体この話は何なのかという気もしてきます。
 もう1つ思っていることは、調査官というのは基本的には黒子的な人として存在していて、裁判官がどういう知見を持っている人であったとしても、それは必要なものであるということになってきますと、抽象的な不安感みたいなものがあるにしても、現時点で具体的な弊害というのは、必ずしも顕在化しているというふうに考えられないというのが1つ。それから、専門委員制度というのが導入されますので、それでかなりの部分がカバーできるということになってくると、本当に権限を拡大する必要があるのだろうかという気がします。そうすると、ミニマムのものとして存在しているということが大事なので、変えないという決断もあるのかなと思ったり、あるいは専門委員、調査官をもう少し自由に活動してもらうことによってある程度多重的に裁判官をサポートしてもらうという安全弁的なものが必要だという発想でいくと、A−1かA−2かということになるだろうと思うのです。
 ただ、いずれにしても、黒子は黒子なので、そこの敷居は越えないという仕組みがいいのかなと思いました。

○伊藤座長 それぞれ御意見を承りまして、D案は別として、A−1とかA−2を支持する御意見というのが多かったという印象はございますけれども、現在の段階でこれを何か1つにとりまとめるというのがちょっと時期が早いように思いますので、それぞれいただいた御意見の内容を踏まえまして、事務局でもう一度整理をしてもらって、また、その段階で議論を続けるということにしたいと思いますが、そういう取り扱いでよろしいでしょうか。
 それでは、先ほどもちょっとお話が出ましたが、その他、具体的な検討といたしまして、「期日における権限に関する具体的方策案」及び「報告内容の当事者への開示方法に関する具体的方策案」につきまして、事務局から資料2の13ページから14ページの説明をお願いいたします。

【その他の具体的検討】

○近藤参事官 資料2の13ページを御覧ください。13ページには「その他の具体的検討」として、「期日における権限に関する具体的方策案」と「報告内容の当事者への開示方法に関する具体的方策案」を掲げております。
 まず「期日における権限に関する具体的方策案」ですが、期日における権限に関する具体的方策案を13ページの上の枠囲いの中に記載しておりますが、先ほど御議論いただいた各案のうちA−2案、B案、C−1案、C−2案のいずれかを取った場合に考えられる案です。甲案としては「口頭弁論や弁論準備等の期日に立ち会い、当事者に釈明を求める」。乙案は「証拠調べの期日に立ち会い、証人、当事者本人又は鑑定人に直接発問する」。丙案は「和解を試みる期日において手続に関与する」。これらの案はいずれかの組み合わせということも考えられるということを前提にして御議論いただきたいと思います。
 それから、先ほど来いろいろ議論の出ていた、報告内容の当事者への開示方法に対する具体的方策案でございますが、A−2案またはB案のいずれかを取った場合に考えられる案かなと思っております。
 報告書の開示についての方策案として、13ページには、イ案からヘ案までを掲げております。
 イ案は、報告書のすべてを当事者に開示し、当事者が意見、反論を述べる機会を設けるものです。これに対して一番下のヘ案は現行と同様に報告書を開示しない案です。これらイ案とヘ案の間に位置づけられる案がロ案からホ案になります。
 具体的にはロ案は、報告書のすべてではなく、技術的部分に限り当事者に開示する。ハ案は、暫定的な中間的報告内容を開示し、当事者が意見・反論を述べる機会を設け、最終的な報告書の内容は非開示とする。ニ案は、事前開示とせず、事後的に判決の理由中で報告書の要旨を開示し、または判決に報告書を添付する。ホ案は、報告書の形式や内容がさまざまであることにかんがみ、開示の方法は裁判所の裁量によってする。
 また、報告書の開示以外の報告内容の開示についての方策案として、ト案からヌ案まで挙げております。具体的にはト案は、専門家が期日に立ち会い、当事者の前で裁判官に対し専門的な知見に基づく意見を陳述するというものです。チ案は、専門家が裁判官に報告する際に、当事者が立ち会う機会を設けるというものです。また、リ案は、期日において専門家が自己の意見を当事者に開示し、専門家と当事者が意見交換する機会を設けるというものです。ヌ案は、ト案からリ案のような機会を設けないというものです。
 これら各案の留意点について、評議の秘密を保持するという関係をどのように考えるのか。また、開示をしてほしいというユーザーニーズをどうするかという点について14ページに記載しておりますので、御議論いただく際にこれらも留意していただければと思います。

○伊藤座長 まず13ページの「[1]【期日における権限に関する具体的方策案】」で、今説明がございましたように、甲、乙、丙という3つの考え方がございます。もちろん、更にその組み合わせで、すべていいという考え方もありましょうし、どれか1つという考え方もありましょうし、そのうちの2つという考え方、組み合わせとしてはいろいろあるかと思いますが、これについて御意見、ないし御質問がございましたら、お伺いをしたいと思います。

○阿部委員 今の「報告書の開示以外の報告内容の開示についての方策案」の中に、「専門家」という言葉が出てきますけれども、これは例えばA−2案で言うと調査官と読み替えるという意味ですか。

○近藤参事官 そういう意味です。

○伊藤座長 甲、乙、丙の案についてはいかがでしょうか。

○小林委員 若干、調査官の実態について調べましたので、その観点から申し上げたいと思います。
 甲案に「口頭弁論や弁論準備等の期日に立ち会い、当事者に釈明を求める」というのがございますが、期日に立ち会うということは実際既に行われておるというか、同席を求められて立ち会うというのがかなりあると聞いています。他方、当事者に直接釈明を求めるということは常に行われているわけではないですが、これも先ほど申し上げたように、一部の裁判体では裁判所の命令によって行うこともあるというのが実態だと思います。
 それから、乙案の「証拠調べの期日に立ち会い、証人、当事者本人又は鑑定人に直接発問する」ですが、証拠調べ自体が余り侵害訴訟では行われていないようですので、頻度は非常に少ないと思いますが、むしろ準備手続の中で、正式な証拠調べではないけれども、検証物等を持ち込んで議論するということはあるようでして、そこに立ち会うということは今でもやっているようですから、正式な証拠調べの場合においても、同じようなことがあってもおかしくないのではないかという感じがします。
 他方、和解というのは、調査官サイドから見ると、和解を試みるために調査なり報告なりを求められているのか、そうではないのかというのは見えないわけですから、和解を試みる期日において手続に関与しているかどうかという実態は、本人からは直ちにわからないという状況がございます。
 それから、和解というのは、大方は、技術的事項というよりは、そうではないことの方が多いような感じもしますので、必ずしも調査官の業務として適しているかどうかはわからないところがあると思いますけれども、仮に和解を試みるに当たって技術的事項の議論が必要なのであれば、その局面においては調査官を活用する余地があるのではないかと思います。
 その意味では、程度の差はありますけれども、これまた裁判長が必要と思えばそれを使えばよいというだけの話でしょうから、甲、乙、丙案余り分けて考える必要はないのではないかという気がします。

○伊藤座長 小林委員からは現実の実務を踏まえて、甲、乙、丙、いずれについても、基本的にはこういう形での関与を認めるということでよろしいのではないかという御意見だと承りましたが、どうぞ、飯村委員。

○飯村委員 小林委員の発言について、甲、乙、丙案に関する実態がそうであるという御説明でしたけれども、既に、第5回の検討会で申し上げたとおり、私自身は、審理に当たり、準備手続に少なくとも第5回の検討会までは、調査官に一度も立ち会ってもらったことはありませんし、証拠調べ期日にも立ち会ってもらったこともないし、鑑定人に直接発問してもらったこともないし、和解を試みる期日の手続に関与してもらったこともありませんでした。
 第5回の検討会の席で試みてみますと発言したので、どういうような違いがあるかということについてデータを取るためにやったことはありますけれども、それまでは行ったことはありませんでした。ですから、実態がそうだからというのは、事実認識として違うのではないかと思います。

○小林委員 事実認識の問題だと思うので、この場で御説明しておいた方がいいと思うのですが、第何回かの検討会の時も口頭で申し上げたのですが、特許庁の方でも正式な案を決めるに当たって、特許庁からかつて裁判所に調査官として派遣されていた人たちで、既に特許庁に戻ってきている人たち、今二十数名在籍していますが、その人たちにアンケートを行いました。もちろん、これは記憶に基づくものですから、完全にパーセントのひとけたまで正しいかどうかは別として、どういう業務が、自分の業務の中でどの程度の頻度を占めているかというのを聞いてみたのですが、その調査対象は東京高裁、大阪高裁、東京地裁、大阪地裁、4つの裁判所全部含んでおりまして、それから、在籍の期間も1期は3年くらいですが、前後いろんな人が行かれていますので、過去10年くらいカバーしております。その中で、先ほど申し上げたとおり、期日に立ち会っているという事実は今でもある。それから、釈明を求めるというのも、これまた常にではないけれども、裁判長の命令によってしたことがある。証拠調べは、先ほど申し上げたとおり、証拠調べ自体が非常に少ないというのは事実だと思いますが、準備手続の中で、正式な証拠調べの形ではなくて関与していることはある。和解については、先ほど申し上げたとおり、件数も少ないと思いますけれども、これもないわけではないという状況でございます。
 飯村判事が調査官を使わないというのはよくわかっていまして、それは何回も申し上げているとおり、裁判長が使いたくなければ使わなければいい制度だと思うのです。調査官を使う義務はないわけですから。一切調査官を使わないのであれば、調査官制度を廃止してしまえばいいわけで、正直なところを申し上げて、その方が特許庁審判部としては助かるのです、厳しい業務状況の中で貴重な人材をはぎ取られているわけですから。そのことをよく考えていただきたいと思います。
 恐らく、調査官がどういう業務をしているかというのが議論のポイントになるだろうと思ったので、わざわざ職員にも苦労をかけて調査をしてみました。その結果が正しくないというのであれば、裁判所の方でもう一回お調べになったらいいのではないかと思います。

○飯村委員 実態の認識に関してですけれども、裁判所の立場から申し上げますと、特許庁の中でも有能なすばらしい方が調査官として来ている、特許庁が身を削るような思いで優秀な方を調査官に出向させているという実態はよくわかっております。組織論としては、裁判所全体で、そのような貴重な人材を、最も有効に使うために工夫に工夫を重ねているというのが実態でございます。
 当事者との期日でのやり取り、当事者の意向がどのようなものであるか、それを裁判官自身がどのように受け止めて、どの点に事件解決の鍵があるのか、裁判官がどのように当事者に説明すれば事件を解決に向かわせることができるのかということは、裁判官自身が自らできることだと思っております。調査官という、貴重な人材をどこで活躍してもらうかは、組織の中で、限られた人材の有効活用のための工夫の一環と理解しています。
 実態認識ですけれども、一般的にどうかということではなく、個別の事件でどういうようなことが行われているのかというのはケース・バイ・ケースでございます。
 例として、私の場合を申し上げましたけれども、実際は、機械的、一律的に立ち会っているということは決してないでしょうということを指摘するために申し上げました。

○伊藤座長 そういうことですので、2人の実態認識に天地の差があるというわけではないと思いますが、それを前提にして、あるべき制度の姿についていかがでしょうか。先ほどの小林委員のお考えはおっしゃったとおりですが、ほかの委員の方。

○阿部委員 実務的には甲案も乙案も丙案も全部あった方がいいし、必要なところでやってもいいと思いますけれども。いずれかの案がだめだというふうにはならない方がいいのではないかと思います。

○荒井委員 私も、甲案、乙案、丙案、3つ認めていただいたらいいのではないかと思います。

○中山委員 これは、当然にできる、当然に機能を持つという意味でしょうか。それとも裁判長ができるという意味なのでしょうか、どちらでしょうか。

○近藤参事官 考え方は両様あり得ると思いますけれども、基本的にはA案やB案を前提に、これはA案、B案、C案、そのいずれかを取った場合と書いてありますが、前提とする案の考え方によって、その考え方は違ってくるのではないか。A案、B案というのは、基本的には裁判官をサポートするという考え方ですので、裁判所が判断するときに、これについて立ち会ってほしいというときに立ち会って、C案になってくると、また違った要素が出てくるのではないかと思っております。

○中山委員 A案、B案を取るとすれば、今でも裁判長の判断によってやっているところもあるとすれば、何もしなくたって甲、乙、丙はそのとおりであるということですか。逆に言えば厳格に規律されていないという意味でしょうか。

○近藤参事官 レジュメの一番最後に表で書かせていただいておるのですが、権限としては、命を受けて調査報告を行うという権限しかなくて、そのほかどういうことができるのかということについては、規定としては何もないというのが現状でございます。それが現在、実態として全くされていないのかというと、されている例もあるという小林委員からの御指摘があった場合に、それをされている裁判官は、それはできるという解釈の下でされているのだと思うのです。それはできないと思われている方もいらっしゃると思うのです。その点について権限の明確化を図った方がやりやすくなるのではないかと思っています。

○飯村委員 甲案、乙案、丙案の選択についてですけれども、甲案、乙案に関しては、できるということを確認する意味で、規定を設けること自体は問題はないと思います。丙案に関して、手続に関与するということの意味ですけれども、和解期日においても、当事者が異議を述べなければ、立ち会うということであれば、今でもできないではないと私は思っておりますので、問題ないと思うのです。関与するという意味であるならば、例えば調停部の調停委員のような立場なのかということと、その位置づけは議論しなければいけないと思います。

○近藤参事官 今、飯村委員がおっしゃったのは、和解を試みる期日において手続に関与するという言い方自体が、調査官が一人で和解室に入って、当事者との間で和解をするということでは、イメージとして違いますよということですね。
 そうではなくて、和解の中でも、和解条項を詰めていく上で技術的な事項が問題となったり、例えば禁止する範囲をどうするのか、差し止めの範囲をどうするのか、技術的なものの切り分けの問題が製品の中で問題になってきたりするときに、調査官にそこで立ち会ってもらってその意見を聞きながら調整していくということもあり得ると思います。
 そういうことまで言えば、皆さんの認識としては、技術的な本来的なものについて禁止するという意見ではないようにお聞きしたところで、むしろ御懸念されているのは、いわゆる純粋な和解的なものをやらせるということは違いますよということをおっしゃっているわけですね。

○飯村委員 そういうこともあります。実際に詰めていく過程で、調査官の技術的な専門知識が、和解の期日に立ち会わなければできないということはあり得ないのではないかと認識しております。

○伊藤座長 そういたしますと、この甲、乙、丙につきましては、関与の形態とか、細部については、なお検討する必要があるかと思いますが、基本的な考え方として、例えば和解での手続関与はだめだとか、そういうものは許すべきではないかとか、そういう御意見はないように思いますので、いずれについても、それを認めるという方向で更に検討を進めるということでよろしいでしょうか。

○加藤委員 それで結構でございます。ただ、私の提案はC−2案を言わせてもらった関係上、自動的に甲・乙・丙になるのではないかと思います、念のため。ですから、この点については問題ないと思います。

○伊藤座長 そういたしますと、次の「報告内容の当事者への開示方法に関する具体的方策案」で、イからヌまでございますが、先ほどの議論でも大分それに関連する御意見が出てはおりましたけれども、ここでもう一度御議論をいただきたいと思います。

○近藤参事官 先ほど御議論が随分出ていましたので、それを前提とする形で私の方から口火を切らせていただきたいと思いますが、末吉委員からも中間的な開示ということが考えられるのではないか、ハ案のことをイメージされていたのかなと思うのですが、ハ案の場合だと、中間的な開示をして、その後、調査官の意見が途中で変わったまま、評議に参加した場合などで、意見が全く変わってしまっていたというときに問題はないのでしょうか。

○末吉委員 はい。その点、最初から申し上げますと、私の説明は、報告書の開示については、御指摘のとおりにこのハ案をベースに考えてまいりました。暫定的な中間報告内容を書面で、これは口頭または書面と書いてありますが、書面で、ただし簡潔な記載で構わないので、書面にて開示をいただいて、調査官の判断を示すことで、当事者が意見、反論を述べる機会を設けていただきたい。
 ただし、今、近藤参事官御指摘のとおり、意見・反論を聞いた結果作成した報告書の内容、これは非開示であるということで構わない。

○伊藤座長 暫定的というのは結局手続の途中ということですね。そこで書面で開示する。当事者の一方がそれは到底納得できないという反論をしたり、場合によっては鑑定の申請をするということも想定されているわけですね。

○末吉委員 はい。

○近藤参事官 沢山委員からは、ニ案の、判決理由中での開示か、判決後事後的な形の開示が必要だという御意見だったと思います。その場合に、先ほど沢山委員自身もおっしゃっていましたが、判決としては、例えば甲の勝ちだということで、その判決の理由からすると、結論と違った調査官の意見があったという場合に、判決ではそれを採用していないような意見をそれに付けておくと、負けた方はその意見であれば勝てたかもしれないということで、控訴を誘発してしまう。

○沢山委員 それは付けない。裁判官が認めないもの、加味しないものは添付は要しない。それでわかるんですけれども。

○近藤参事官 とすると、普通は判決理由を書かなければいけない。どういう論理でその人が勝ったのか、技術的なことについて争点になっているから書かなければいけないのですが、それでは足りないでしょうか。そこまで行かれるのであれば。

○沢山委員 足りるでしょうけれども、是非、オリジナルな調査官の報告書を見てみたい。チャンスはそこだけでいい。そこからどう判断するかということが書かれるわけですね。判決理由には、裁判官の頭の中でそれを再構成するなり、再整理して、自分の言葉で書くわけですね。

○近藤参事官 前の時に、調査報告書の実物を持ってきていただいて、皆さんに回覧させていただきましたけれども、多分、あれが後ろに付いているとわからないと思うのです。

○沢山委員 それを少しきれいに書いていただいて。

○阿部委員 質問ですけれども、報告書を添付するといったときには、これはどういう文書になるのですか。判決の一部ですか。

○近藤参事官 そうです。添付文書で判決と一体のもの。

○阿部委員 主文ではないから。

○近藤参事官 主文ではないです。

○阿部委員 理由の一部になるのですか。

○近藤参事官 書き方の問題ですけれども、知財の関係の判決には添付しなければならないという形になって、それをとにかく付けなければならないということになると思うのです。理由の一部になるかならないかということは、むしろ理由の一部に必ずしもなるわけではない。

○阿部委員 報告書が気に入らないから上訴するということは、成立する場合もあるし、しない場合もあると。

○加藤委員 まだこの点について意見を申し上げておりませんでしたので、申し上げたいと思います。
 産業界はユーザーとして、つまり原告か被告のどちらかになる立場でございますし、末吉委員の御発言を見ますと、弁護士として同じユーザー、原告か被告かの同じ仲間うちですので、当然こういった立場にある者は報告内容が見たいのは当たり前でございます。そういった意味でのニーズがあることは間違いないと思います。
 私としても、見ることによって一定の反論をしたい機会は出てくるだろうと、そういった意味のニーズはあるというふうには、当然考えております。
 一方、それでは逆に報告書が開示された場合、本当に大丈夫か、裁判システム全体として本当にいいのかという懸念も、ユーザー側、産業界にもございます。つまり、調査官の自由を縛ることにならないかという懸念がございます。したがって、ニーズとして当然あるのは産業界もその一部を背負っているわけですけれども、むしろここでは、大胆でございますけれども、丙案、つまり報告書を開示しないという案を取ったらいかがかなと考えております。
 ニーズがあるのは当然であります。ただ、全体を見渡した上で、あえて報告書を開示いただかなくていいと。それだけ調査官には責任と重要な役割を持っていただいた上で、信頼するという前提で、むしろ報告書を開示しないということによって、裁判システム全体をスムーズにしていただく方が、結局はトータル・メリットはユーザーである産業界に出てくるのではないかという意見でございます。

○阿部委員 我々は何というか、煮え切らないというか、見ない方がいいということもあるし、よくわからないのです。大半の人は、どういうふうに思っているのか知りたいという感じではあるのです。けれど、今おっしゃったように、これを義務づけると、確かに調査官も自分が言ったことは必ず外に出てしまうということになると、すごく専門的なことは専門委員とか何とかという方がやっているわけですから、そうでない部分のところの報告書というのが外に出てしまうということが、それでいいのかという感じは一方でします。
 ホ案というのは結構魅力的だなとは思っていますけれども、「時期との関係で裁判所の裁量により決する」というのは、これは、しないということも含めて裁量するということですね。

○近藤参事官 ホ案のイメージとしてここで書かせていただいたのは、基本的には1巡目の議論と同じですけれども、争点整理の段階ということについては、それぞれ主張しているものについてどういう主張なのかというのははっきりさせないといけないので、その点の専門性については、かなりきっちりと、両方に開示しながら、むしろ一致させていかなければいけない状況だろうと思いますが、審理がどんどん進んできて、まさに心証に絡んでくるようなものにいては、むしろ開示をしない方がいいという決断もあり得るのではないかということも含めて、「時期の関係で」と使わせていただいております。

○伊藤座長 ほかに御意見いかがでしょうか。

○小林委員 先ほどA−2案と申し上げましたので、現行の調査官制度を機軸にした案だという前提で申し上げますと、A−2案の下での専門家の意見というのは、基本的には参考意見でしかないのです。最終的には裁判官によって決められるということで、調査官は基本的には裁判所の内部機構であり、サポート機関にすぎないということから見ると、調査官の報告書だけを取り立てて特別扱いにするのは、少し整合性が取れないような気がするのが1点であります。
 もう1点は、報告書はいろんな機会に作成されるようですけれども、一番多い典型例はかなり最終段階になって、−−評議というのは何回に分けて行われるのだろうと思いますが−−、最終段階、判決を書こうという事態に近くなってから、報告書が書かれるケースも多い。これは前回メインテーブルに例が回りましたけれども、あの中をパラパラ見ても、それに近い報告書もあったかと思うのですが、そういったようなものもあると思います。
 そうなりますと、それは基本的には評議の資料そのものと言ってもいいものと思いますので、評議は非公開にされて裁判官がある種の圧力を回避できるような規定がある以上、それとの関係で調査官だけが保護を受けられないというのも整合性に欠けるという気がします。その意味で言いますと、イ案というのは賛成し難い。
 ロ案というのも、技術的部分とそうではない部分というのが恐らく切り分けられないだろうと思いますので、この辺りからも取りにくい案だろうと思います。
 ハ案も、基本的には中間報告内容を求めるとすると、恐らく念頭に置いてありますのは、かなり最終段階に近いころになって、心証が固まり始めて、それを開示してほしいということだと思いますので、そうなりますと、先ほど申し上げたことと真正面からバッティングすることになりますので、賛成し難い部分があります。
 それから、ニ案の事後に開示するということですが、これ自体どういう意味があるのか私にはよくわからなくて、ユーザーの方々の意見を伺っていると、要は審理の途中でどこまで合議体が、あるいは調査官が理解しているのか、その後自分としてはどういう手を打てばいいのかということを知りたいがゆえに、開示を求めていると思いますので、事後に開示しても、出訴のための参考にはなるのかもしれませんが、最初の段階で負けたら何も意味がないと思いますので、その点で言うとニ案はニーズに合致していないのではないかという気がします。
 あとはホ案、ヘ案ということになるんですが、ホ案を取った場合、基本的にはイからニに対して申し上げた問題はどのみち残ってしまうわけですから、私としてはヘ案、報告書を開示しないというのがいいかと思います。
 そう申し上げた上で申し上げるのですが、一切、心証を開示しないことが正しいかというと、それは審理の進捗をうまくするという観点から言うと、必ずしもそうではないという気がしておりますので、下の方の四角囲いの中でト案、チ案、リ案、ヌ案とありますが、例えばリ案ということは考え得るのではないかという気がします。
 そうすれば、基本的には専門家が発問なり釈明をするときには、必ず何らかの心証開示を伴わないと、普通は発問できないと思いますので、あるいはもうちょっと積極的に、心証開示もあり得るのかもわかりませんが、その中で当事者には、予測どおり事態が進行しているのかどうかというのがわかるはずですし、当事者が自分で別の攻撃・防御をするということもできることだろうと思いますので、そうすればユーザーの方々が言っているニーズも満足できるし、調査官制度の位置づけにもひびが入らないで済むのではないかという気がします。

○伊藤座長 これは先ほど近藤さんが言われた争点整理の段階のような時に、リ案的な考え方が一番適切だという御意見ですね。
 下の枠囲いの中のト、チ、リ、ヌについても、何か御意見ございますか。

○中山委員 上のでもいいですか。私、裁判官と調査官との関係は知らないものですから、飯村さんにお伺いしたいのですけれども、両者の関係というのは、報告書だけで意思疎通がされているのか。それとも、会話とかメモ的な、いわゆる報告書以外のものでもかなり意思疎通がされているのか。その辺はどうでしょうか。

○飯村委員 私が東京地裁に来た平成10年以降は、新しく転入された調査官に対しては、毎回オリエンテーションを行い、司法機関である裁判所と行政との違いなどを中心に、裁判所のやり方をお伝えしています。例えば、裁判所が具体的事件でどのようにクレーム解釈をしていくか。それを前提として、審理の仕方をどのように進めていくか、その中での専門的、技術的知識がどのように有用なのかということを御説明して、調査官の豊富な技術的な知識がどのように有効に活用できるための協働作業ができるかという観点からオリエンテーションをやっています。
 具体的に事件については、あらゆるケースがありますので、その都度、例えば、裁判長が、事件の中で疑問に感じたときに主任裁判官に確認すべきときは主任裁判官に確認するし、調査官に確認すべきときは調査官に聞きに行ったりとかということで、情報交換を豊かにするようなやり方を努めています。そのような意味では、訴訟は生き物なので、一回で聞くというようなことをすると危険な面もありますので、そういうようなことを心がけています。
 事件は、オン・ザ・ジョブ・トレーニングの最大の材料ですので、若い新任裁判官もそれを活用して技量を伸ばすことができ、また、特許庁からおいでになったり、弁理士から任官された調査官も力量が伸ばせるような、相互の刺激ということを大切にしています。
 その中での協力関係ですので、媒体が調査報告書であるということだけではなく、期日前後のやりとりなどいろいろなやり方により協働関係をつくっているというのが実態でございます。少なくとも私の周辺のやり方はそのような実態です。

○中山委員 それを前提にしますと、報告書だけを開示するというシステムはどの程度意味があるのでしょうか。余り意味がないのでしょうか。

○飯村委員 ケース・バイ・ケースなので、一概には言えないのですけれども、多くの事件では、先行的に、仮に当事者が主張した場合にどのような判断になるか、今後出てくる証拠も予測しなから調査報告を受けてということもやっていますので、その過程に関する文書媒体は、当事者に対して誤解を与える要素が多いと思います。
 現在の裁判所は、既に出された証拠から、当事者が持っているはずの証拠としてどういう手持ちのものがあり得るとか、そういうものも予測しながら、早目早目に当事者に心証を伝えて、それで解決を促すというやり方もやっていますが、その点で確かに、訴訟解決には意味のある報告ではありますが、かえって誤解を与えて紛争を拡大する危険性が多いものもあるのではないかと思います。

○中山委員 例えば、情報公開法ができると、記録して残すのはどうでもいいものが多く、重要なものは正式の文書ではないものに流れてしまうという傾向があるわけですけれども、報告書を公開するとなると、何か弊害というものが現れてくる可能性はあるでしょうか。口頭の方に移ってしまうとか、そういう危険性はあるのでしょうか。

○飯村委員 既に申し上げたとおり、隠すとか、不要なものだけを書面にするとか、そういう弊害を伴うこともあり得るのですが、そういうような開示方法を全く念頭に置かなくても、最近の調査報告書は、少なくとも、私が関与する事件では、今ご説明したようなやり方でつくられますので、必ず弊害があると思います。

○中山委員 私は報告書では隠蔽は余りないと思いますけれども、公表するとなると、きれいなものを出さないといけない。さっき沢山委員がおっしゃった、きれいなものを出してくれという話ですけれども、きれいなものを出すのはかなり大変です。判決文と同じとは言いませんけれども、それに似たものを出すと、かなり労力がかかるので、結局、それを回避しようという動きが出てくるかどうか、それを聞きたかったわけです。

○飯村委員 調査報告があえてマニュアル化されて、どういう内容とか、どういう文体か、当事者の主張を正確に要約すべきかどうかとか、そういうことについてはすべて、審理をしている裁判官の理解力とか進行状況を見ながら書いていますので、読み方によってはかなりラフな報告書になっているのが現状です。公開を前提にすると、きれいに書きたいという気持がより強くなって、作業量が加重になり、事件そのものの解決に向かわない弊害はあり得ると思われます。お化粧するというか、当事者向けに書き出すというようなことで労力が増すという負担はばかにならないのではないかと思います。

○伊藤座長 それでは、この点につきましても、まだ結論に至るのはやや早いように思いますので、事務局に更に本日の御意見を踏まえて検討をしてもらいたいと思います。

○阿部委員 すみません。最後の四角ですが、リの案が担保されれば、報告書の開示についてはそうこだわりません。

○伊藤座長 つまり、上の枠囲いのヘの案と下のリの案を組み合わせればという御趣旨ですね。

○阿部委員 それでもいいと。

○伊藤座長 それでは、もう少し続けさせていただきますが、「権限の範囲に関する具体的方策案」、専門委員としてどのようなものを活用すべきか、給源の問題、それから専門委員との関係はどうあるべきかということに関する具体的な方策案について、15ページから16ページについての説明をお願いします。

○近藤参事官 レジュメの15ページ、16ページを見ていただきたいと思います。15ページは権限の範囲に関する具体的な方策案として、①期日において当事者に対する求釈明が認められた場合。②期日外において当事者に対する求釈明が認められた場合。③期日において、証人、当事者本人及び鑑定人に対する発問が認められた場合。④裁判の評議に対して参考意見を述べることが認められた場合のそれぞれで、その範囲はどうあるべきかということを尋ねております。
 権限の範囲としては、aからeを挙げておりまして、それぞれ専門技術的な事項についてaからeまで、どういう範囲のものなのかという候補を挙げさせていただいております。 また、3−2について、仮にC−2案のように、技術等の専門家が裁判の評議に参加し、評決権を有することを認めた場合、その範囲について何らかの制限を設けるべきかどうかということについてお尋ねをしております。
 16ページの「専門家としてどのような者を活用すべきか(給源)」ですが、これは第5回検討会において、新たな調査官の給源として御議論いただいた際には、16ページの上の枠囲いの中に書いてありますように、特許等の審査、審判の実務経験が豊富な特許庁審査官、審判官、技術等に詳しい弁理士、弁護士、企業の知財部員、研究所の技術者、企業の技術者等、幅広く活用するという意見でほとんど一致していたのではないかと考えております。このようなことでよいかということの確認をさせていただきたいと思っております。
 それから「専門委員との関係はどうあるべきか」ということについても同様でして、ここでは前記AからC案の専門家は、技術的知見及び特許法等に関する知識を有し、原則として審理に関与する。それから、今回の民訴法で導入された専門委員は、技術、特に新たな専門家では対応が困難な専門性の高い技術的な知見を有し、必要に応じて審理に関与する。こういう組み合わせの意見が多かったように思っておりますので、こういうことについてどうお考えなのか、再度御意見を伺いたいということでございます。

○伊藤座長 それでは、まず15ページの「権限の範囲に関する具体的方策案」で、これは前提とする案を何にするかという違いがございますけれども、それぞれの案に基づいたときには、ここはaからdにあるような形で何らかの限定をするか。それともeにあるように、関連事項全般に及ぶという考え方がいいのかという点。
 それから、C−2案を前提としたときの権限の範囲、この辺りについて何か御意見ございますでしょうか。

○荒井委員 この理解はabcdeとだんだん広くなっていくということですか。

○近藤参事官 そうです。アルファベットのabcdeというのはだんだん広くなっていくということです。

○荒井委員 私は15ページは、eの関連事項全般に及ぶのでいいのではないかと思います。

○伊藤座長 ほかにいかがでしょうか。

○加藤委員 一応C−2案を前提に考えさせていただきますので、技術的事項を扱う技術系裁判官ということでございますので、少なくともaからdは含むことになります。eをどうしようかということが出てくると思いますけれども、これは下の3−2にも関わりますけれども、技術的事項と法律的事項をすぱっと切れないだろうということですから、eを積極的に外す理由はないということですので、結果としてはaからeを含むということになるのではないかと思います。
 ついでに3−2、今、少し申し上げましたけれども、何らの制限を設けるべきかというのは、C−2案を取った場合、技術的事項だけにするかどうかということでございますが、主体は当然技術的論点について判断するというものでございますけれども、法律的事項は除くということを明確にすることは困難でございますから、あえてこの制限を付ける必要はないという前提に立ってC−2案を言っております。

○伊藤座長 そうすると、上の方としてはeの考え方で、下の方については、要するに裁判体を構成する裁判官としての権限を行使するということですね。特に技術的事項についてその判断に限定するという趣旨ではないと。
 ほかにいかがでしょうか。

○阿部委員 aからdまでは権限の中に入れた方がいいと思いますけれども、eを入れたときに、何かよけいなことをしゃべったり何かして、かえって混乱させるとか、そういうところはちょっと心配なんですけれども、それをうまく外す法技術があれば、そういうのができればその方がいいとは思います。

○中山委員 今の点、C案を取らなければ、「裁判官の命を受けて」で処理できないですか。C−2案を取った場合、確かにおっしゃるとおりいろいろよけいなことがあるかもしれませんが。

○小野瀬委員 今の関連ですけれども、専門委員の発問などの場合ですと、「裁判長の許可を得て」という形になっていますし、司法委員もそういう形になっていますので、これは今後の技術的な細かい話かもしれませんけれども、C案を取らなければ、発問とか、釈明をする場合に、裁判長の関与という点はどうするかという点も含めて考える必要があると思います。

○伊藤座長 関連事項全般に及ぶという前提で、あとは手続の仕組みとして、おっしゃるような問題が生じないような仕組みを考えるという御意見として理解してよろしいでしょうか。

○阿部委員 裁判官の指揮の下にやるということであれば、全部eでいいです。

○近藤参事官 3−2については、加藤委員からしか意見が出なかったのですけれども、この3−2の問題点とか、技術的な配慮という問題がもちろんありますけれども、あと、損害賠償額の額の算定の問題とか、純法律的なことまでもC−2案の場合だとそこを認めていいのかどうかということが個人的にはあり得て、先ほどの加藤委員の御発言としては、裁判官とするということで一歩踏み越えているところがあるから、そこについても何ら制限しなくてもいいだろうという御意見だったと承りました。

○伊藤座長 それでは、あと、専門家としてどのような者を活用すべきかという給源の問題、それから、専門委員との関係はどうあるべきか。これはそれぞれについて、一応案という形で、今までの議論をふまえた考え方を示しておりますけれども、こういう考え方でよろしいでしょうか。あるいは何か御意見がございましたら。

○末吉委員 給源はこの議案のとおりでよろしいと思います。
 専門委員との関係ですが、ほぼこのとおりでよろしいのですけれども、専門委員のところに括弧書きがございますね。本当に専門性の高い技術においては、専門家でも意見の相違がある場合があって、本当にそういうところを専門委員で担っていいかどうかをもう少し慎重に検討する方がよろしいのではないかと考えます。本当に最先端の技術というのは、専門家は何人かしかいなくて、場合によるとその専門家同士意見が食い違っているところがあろうかと思うのです。そういうところまで専門委員で処理しようとすると、ちょっとそれは行き過ぎではないかという意味で、慎重な検討が要るのではないか。

○近藤参事官 そこで言われている、専門性の高いところについて専門委員で処理していいかどうかというのは、今、対象として頭の中で考えられているのは、鑑定を使った方がよろしいのではないかという御趣旨ですか。

○末吉委員 あるいは当事者同士が鑑定書を出し合ってやった方がいいのかもしれないです。

○近藤参事官 主にここで書かせていただいているのは、A案からC案の調査官的な専門家と、それと専門委員との対比において、どのように切り分けた形で考えたらいいのか。それだけを限定して記載しているものですが、それが前提であれば、基本的にはこれでもよろしいですか。

○末吉委員 よろしいのですが、ここで言う専門性の高い技術というのはもう少し大事にする必要があると思います。

○伊藤座長 専門委員制度の運用についての御意見ということで承ります。
 それでは、特にこの点ほかに御意見がなければ、一応[4][5]はここに掲げてあるような案の考え方で今後の検討を進めるということにさせていただきます。
 それでは、ここで10分ほど休憩を取らせていただいて、45分くらいから再開したいと存じます。

(休  憩)

○伊藤座長 それでは、再開させていただきます。

○阿部委員 さっきの給源のところで1点確認しておきたいのですけれども、これは企業の知財部員とか、企業関係者もいっぱい入っているのです。私はそれでいいと思うのですけれども、除斥・忌避・回避の規定がきちんと適用されるという前提であれば、それでいいと思うのですが、これまで○×の意味が、考えられ得るとか、考えにくいとか言っていますが、除斥・忌避・回避の規定が外されたら、全く違う意見になってしまう。

○伊藤座長 では、そういう御趣旨で理解していきたいと思います。
 それでは、知的財産裁判所に関する検討に移りたいと存じます。
 既に本年4月の第7回検討会において御議論いただきました、特許裁判所に関する第2巡目の検討ということになります。事務局から資料3の18ページまでの説明をお願いします。

【「知的財産裁判所」に関する検討】

○近藤参事官 資料3の「『知的財産裁判所』に関する検討」を御覧ください。
 1ページから3ページまで、「第7回の知的財産訴訟検討会における議論の概要」をまとめております。まず1ページは、第7回の検討会資料でお示しした検討の方向性を記載しています。なお、第7回検討会では、特許裁判所という用語を用いておりましたが、知的財産戦略本部におきまして、知的財産訴訟を専門的に取り扱う高等裁判所として、知的財産高等裁判所の呼称を用いましたので、平仄を取るため、「特許裁判所」という文言を、第7回での議論を御紹介するところ以外は「知的財産裁判所」という文言に変更しております。
 1ページの「2 委員から出された意見」ですが、1ページの下半分から3ページまで、第7回検討会における委員の皆様の御意見を紹介しております。知的財産裁判所の創設につきましては、積極的な御意見と慎重な御意見がありました。
 積極的な御意見といたしましては、例えば1ページの2つ目の○の、「大法廷の導入を前提に判決の統一を図り予見可能性を高める。タイ、韓国、シンガポール、アメリカ、ドイツにならい、技術立国・知財立国のプレゼンスの意味で必要である。技術系裁判官を導入する基盤とする」という3つの理由から特許裁判所の設立が必要であるという意見や、2ページ目の下の2つ目の○にありますように、「アメリカにCAFCのような専門裁判所があること、また、今年3月にEUにおいて、特許裁判所を作ることを決めたことは非常に重いことである。国際ビジネスにおいて、アメリカ、EU、日本が中心となるべきところ、日本だけ特許裁判所をつくらないのは、司法で遅れをとることになる。」「知的財産の技術専門性に司法がどのように応えていくかが時代の要請であり課題である」という御意見。「特許裁判所の内容は、例えば、知財高等裁判所をつくること、これは現在の東京高裁の4か部を独立にするイメージ」。「メリットは、判例統一の工夫がなされることや大法廷制度を導入することにより、ビジネスや技術開発のルールが明確になることである。また、1つの案は、技術系裁判官と法律の裁判官の組み合わせによりおかしな判決が出ないようにすること、大学や企業の研究開発に対して日本の司法インフラをPRすることなどである。逆にデメリットはほとんどない」というような御意見でございました。
 これに対して慎重な御意見としましては、例えば1ページに戻りますが、1つ目の○にあります「今回の民訴法改正による東京地裁、大阪地裁、東京高裁への専属管轄化で実質的に特許裁判所の機能を持っているので十分である」のように、知的財産裁判所は不要であるという御意見がございました。
 また、アメリカのCAFCに関する御意見としましては、例えば1ページ目の一番下の○にありますように、「アメリカのCAFCとの対比においても、例えば独禁法事件において、特許無効の抗弁が出されてもCAFCの専属管轄にならないように、すべてをCAFCで扱うわけではない。また、歴史的にもアメリカの裁判は、日本よりもっと大きな不統一があったが、今の日本はそこまでひどくない。またCAFCの判断統一の理由の一つには、ジャッジがフランクであることがあり、補充意見、反対意見が公表されるし、裁判官がロースクール等で日常的に考えを示し、意見交換しているが、日本はそこまでの環境整備がなされていないので、環境整備が必要である」という御意見。3ページの1つ目の○にありますように、「知的財産に関する裁判官は少なく、広く人材を集めることが実現できればいいが、実際は難しいだろう。また同じ人が長く同じ部門にいると経験は豊富になるが、競争関係がなくなる。CAFCの判断の統一についても、CAFCが発足してから均等の判断が右に左に動いているのが実情。予見可能性がない方が模倣者が出てこないという政策論もあったようである。PR効果については、信用を勝ち得ていく地道な努力の方が大切である」という御意見がございました。
 続きまして、4ページ目から11ページ目までですが、これは「『知的財産裁判所』に関する第8回検討会の概要」をまとめてございます。
 まず1番目の諸外国の対比ですが、まず、1で、知的財産訴訟外国法制研究会の報告等に基づきまして、アメリカ、イングランド、ドイツ、韓国における、いわゆる知的財産裁判所の概要を紹介しております。
 まずアメリカですが、アメリカにおける、いわゆる『知的財産裁判所』としては、連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)が挙げられる。CAFCは、著作権や商標権以外の知的財産関連事件の第2審として専属管轄を有する。しかし、これからの第1審は各州にある通常の連邦地方裁判所である。CAFCにおける特許権等の事件(特許権等に関する侵害訴訟の控訴事件及び審決取消訴訟)の割合は、全事件のおよそ3割程度である。CAFCの事件のその他7割は、国際貿易委員会、国際取引裁判所、能力主義人事制度保障委員会、契約不服審判所、退役軍人上訴裁判所、上院倫理委員会等の判決や決定に対する上訴等である。CAFCの裁判官には、法曹資格が必要である。
 次にイングランドですが、イングランドにおける、いわゆる『知的財産裁判所』としては、パテンツ・コートとパテンツ・カウンティ・コートが挙げられる。パテンツ・コートは特許及び登録意匠に関する事件を扱い、侵害訴訟の第一審及び特許庁長官の決定に対する不服申立てを受理する。しかし、パテンツ・コートは、高等法院の中の衡平法部の中にある一部門である。パテンツ・カウンティ・コートは、特許関係で簡易迅速な手続をとる裁判所として設置されたものであるが、特許庁長官の決定に対する上訴事件は扱わない。パテンツ・コート及びパテンツ・カウンティ・コートの裁判官は法曹資格が必要である。
 次にドイツですが、ドイツにおける、いわゆる『知的財産裁判所』としては、連邦特許裁判所が挙げられる。ここでは、特許権等事件のうち、特許庁の特許無効手続等の決定に対する上訴を取り扱う。しかし、連邦特許裁判所は、特許庁の審判部が独立したものであり、特許権等の侵害事件訴訟事件は通常の連邦地方裁判所等の管轄である。通常の連邦地方裁判所等では、職業裁判官からなる裁判体により審理され、連邦特許裁判所では、法律系構成員(裁判官)と技術系構成員からなる裁判体により審理される。こういった報告がなされました。
 なお、報告はありませんでしたが、文献からの御紹介として、韓国を紹介しております。韓国におけるいわゆる知的財産裁判所としては、特許法院が挙げられます。ここでは、特許権等事件のうち、審決取消訴訟を扱っております。しかし、特許権等の侵害訴訟事件は、通常の地方裁判所の管轄でありまして、特許法院の裁判官は職業裁判官であるといった内容です。
 続きまして、「2 外国法制研究会の報告」ですが、ただいま説明しました点につき、若干補充させていただきますと、例えばアメリカですが、この5ページでは、CAFCの成立の背景を紹介しております。
 CAFCの設立の背景としては、訴訟件数の増加に伴って、連邦裁判所における判決において、1つの法解釈を巡っても巡回区ごとの連邦裁判所間の間で一致しないという、言わば抵触の事態が生じ、本来、このような事態を解決する機能が期待されているはずの連邦最高裁は日本とは異なって裁量的に受理するという、サーシオレイライという制度を取っておりますので、そのような対応ができず、結果として、合衆国内全体としての法解釈の統一性が取れないという不確実な状態が存在していました。このため、いわゆるフォーラムショッピングが日常化するという事態を招いておりました。
 また、これらの問題と併せて、訴訟の遅延も問題視されておりました。このため、巡回区ごとの法解釈の抵触を解消した統一性の確保、連邦最高裁への上告の増加の緩和を目的として、新たな裁判機構の創設の必要性が認識されるようになり、連邦政府は、連邦控訴裁判所制度改革委員会を創設し、長年にわたって調査研究を行った結果、最終的には国際貿易委員会や農務省、商務省といった他の行政組織における行政決定に対する再審理についての管轄を含めた裁判所として、現在のCAFCが設立されたということです。
 6ページ目では、CAFCを巡る議論を紹介しております。外国法制研究会報告書によりますと、CAFCの設立のための議論は、ほぼ10年にわたってなされたわけですが、その当初から特定分野についての控訴事件を専属的に審理するための裁判組織の必要性という視点は、それほど存在しているものではなかったとのことです。むしろそのような、いわゆる特別裁判所の意義についても相当の議論を尽くした上で、委員会の報告書では、解決策として、特別裁判所の創設は望ましくないという否定的な結論を導いているとのことです。
 その1つの理由としては、特別裁判所においては、裁判官の視野が極めて狭いものになってしまうことが懸念されていまして、その他、裁判官が自らの政策的見解を判決に反映させる可能性があり得ること、地域ごとの差異についての視点が薄まること、裁判官の任用に際して特定の利益団体の影響を受ける可能性があることといったことが挙げられています。
 また、これらの議論と併せてフォーラムショッピングへの対応という観点から議論され、委員会としては、結局、このような特許についての控訴事件についての特別裁判所を特段設ける必要性はないとの結論に至ったとのことです。
 なお、今後の検討ではこのようなCAFCの設立の経緯をも踏まえて御議論いただければと思います。
 6ページ目で、更にCAFCの扱う事件とCAFCの裁判官について紹介しております。
 7ページから8ページにかけては、イングランドに関する報告書の抜粋を記載しております。
 8ページから9ページにかけては、ドイツに関する報告書の抜粋を記載しております。連邦特許裁判所の設立の経緯ですが、連邦特許裁判所の管轄である特許の無効手続・抗告手続については、1961年以前、特許庁の抗告部と無効部が管轄しておりました。特許庁の出願拒絶決定等の決定に対する不服申立ては、特許庁抗告部が最終審でしたが、公権力による権利の侵害に対する裁判所への不服申立てを保障する憲法との関係が問題となりまして、連邦行政最高裁判所は、ドイツ特許庁はボン基本法の意味における裁判所ではなく、その抗告部の決定は行政行為であり、行政裁判所において取り消し得るものであると判決しました。この判決を受けて、1961年にボン基本法の改正を伴った上で、連邦特許裁判所という連邦裁判所を新設し、従前は特許庁内の機構であった抗告部、無効部を、法律裁判官を構成員とする新設裁判所に改組するという大改革がなされました。
 9ページから10ページにかけては、韓国の特許法院について紹介しています。特許法院の設立ですが、韓国では、特許審判は、司法部ではなく行政部に設置された特許庁の審判所及び抗告審判所で、裁判官の資格を持っていない審判官の審理により判断されていました。しかし、憲法上国民に保障された裁判官による裁判を受ける権利を侵害しているという疑問が提起されていました。憲法裁判所も憲法に反するとの決定を言い渡したため、1998年、大法院と政府は、違憲の問題を解消すること及び特許事件などの専門性や特殊性を考慮して、裁判官が判断する高等裁判所級の特許法院を設立したとのことでございます。
 10ページから11ページにかけては、EUにおける超国家的な特許庁によって付与された特許についての裁判所制度について御紹介しております。この裁判制度の試みは、これまで存在しなかった欧州特許権という超国家的な特許権を創設することに伴って、それを付与する機関である欧州特許庁と、特許についての共同体特許裁判所ないし欧州特許裁判所という超国家的な機関を創設しようという構想であって、現在議論されている知財高等裁判所は、これまでも存在する知的財産権に関するシステムのうち、知的財産権の重要性から従来の裁判所のシステムを改革しようというもので、その目的、機能等、大いに異なる点に十分注意を要するとされております。
 先ほど申し上げましたように、今後の検討においては、このような諸外国における制度の設立の経緯をも踏まえて御議論いただければと思います。
 続きまして、12ページから18ページまでは、知的財産裁判所に関する意見を紹介しております。
 まず、先ほど御説明しました知的財産の創造、保護、及び活用に関する推進計画のうち、知的財産高等裁判所の創設に関する部分を抜粋記載してございます。本推進計画では、知的財産高等裁判所の創設につき、必要な法案を2004年の通常国会に提出することを目指し、その在り方を含めて必要な検討を行うとされております。
 本検討会におきましては、今後この推進計画にしたがって、知的財産裁判所に関する検討を進めていくことになるということです。
 次に、自由民主党においてとりまとめられた知的財産戦略推進計画の策定に向けた提言の抜粋を記載しております。本提言では、内外に知財重視という国家政策を明確にする観点から、9つ目の高等裁判所として知的財産高等裁判所を創設するために、必要な法案を2004年の通常国会に提出することを目指し、知的財産高等裁判所の在り方について必要な検討を行うとされております。
 続いて、パブリック・コメント等で寄せられた関係団体の意見を御紹介しております。ここでは知的財産高等裁判所の創設につき、積極意見と消極意見の両論がございまして、積極意見は日本経済団体連合会産業技術委員会知的財産部会、日本知的財産協会、日本製薬工業協会知的財産委員会、バイオインダストリー協会知的財産権分科会、日本弁理士から出されました。意見の理由といたしましては、裁判例の統一機能を通じて判決の予見可能性が確保される、知的財産立国に向けた我が国の姿勢を内外に示すことができる、知的財産に関する国民意識の向上にも資するなどが挙げられております。
 消極意見は、日本弁護士連合会から出されまして、その理由としましては、今回の民訴法改正によって、世界最新鋭の事実上の知財高裁が設立されることになること、法律上の知財高裁とし、著作権等の事件についても取り扱うこととすると、地方在住者にとっての裁判を受ける権利を損なうことになるおそれがあること、裁判官の視野が狭くなることなどが挙げられております。
 続いて、16ページですが、知的財産戦略本部における有識者本部員の意見を紹介しています。有識者本部員のうち久保利本部員、下坂本部員、野間口本部員、御手洗本部員から積極的な御意見が出されているほか、中山本部員から、知的財産の有する特殊性をも考慮しつつ、統一の取れた制度の構築が重要であるとの御意見が出されております。

○伊藤座長 ただいまの18ページまでの部分についての事務局からの説明に関して、何か御質問はございますか。

○櫻井委員 知財のEUの仕組み、詳しくは知らないですが、EUについて超国家的だということを盛んにおっしゃっておられますけれども、EUそのものの行政機構は、超国家的というよりは国家連合的なもので、むしろ国内法との連関性が非常に強いというのが私の基本的な認識なので、その点注意していただきたいと思います。多分、裁判制度もそういう意味では国内的な制度と連関があるのではないかと思います。

○近藤参事官 特許権について、今までの特許権というのを束ねた各国の特許権というものは、どこかに申請すると、申請した国の特許権が与えられるというのが現在もあって、それにプラスして今年の3月3日の理事会決議で決定されたのは、欧州全体の特許権というものをつくりましょうと。そのための付与機関と、そのための審査する裁判所というのをつくっていきましょうということが基本的に言われまして、そこで言われている欧州特許権というのは、各国の特許権から離れた新たな特許権というのをこれからつくっていきましょうということで、超国家的な、今までなかったものをこれから制度設計していきましょうということではないかと理解しております。

○櫻井委員 限定して使われるなら結構ですけれども、しかし、どうしてそういう仕組みがあるのかというと、由来しているのは国家の主権だというところから来るのであって、その辺の説明を本当に切り離していけるかどうかというのは、これは一考を要するところだと思います。

○小林委員 櫻井委員のおっしゃるのが基本形なのかもしれませんが、だからこそこれは特殊なんだと思うのです。今、近藤参事官から御説明があったように、EU全体に共通して効力を有する、−−欧州特許というのは、今までの特許と区別がつかないので、共同体特許と呼んでいると思うのですが−−、共同体特許権というものを創設するために、EU法規、この場合はEU規則になると思いますが、それをつくる。その中には権利設定の段階も、権利付与後の訴訟も含まれていて、訴訟の段階について言えば、EU共同体裁判所というのを創設する。EU共同体裁判所というのは、共同体特許についての専属管轄を有するという決めになっていますので、その意味で言いますと、極めて超国家的な仕組みだと言えると思うのです。それは既に商標と意匠では既に成立をしていますけれども、特許の場合には、逆に各国の利害があるがゆえに、すなわち主権の剥奪の問題に対してセンシティブであるがゆえに今まで実現していなかったという状況があったと思います。それが今回実現するということですので、そういう意味で言うと、工業所有権以外の世界とは違う世界ができつつあるというのが今の状況だと思います。

○伊藤座長 ほかに何か御質問ございますか。
 それでは、19ページから最後までのところについて説明をお願いいたします。

○近藤参事官 19ページから最終ページまで、委員の意見を踏まえた検討として、第7回の検討会における知的財産裁判所の創設の要否に関する委員の意見をまとめるとともに、必要説に立って、知的財産裁判所を創設するとした場合の検討事項と、知的財産裁判所を創設するとした場合の具体的方策案についての検討事項について示しております。
 19ページから20ページにあります、知的財産裁判所を創設するとした場合の検討事項ですが、大きく分けて3つの検討事項を示しております。
 1つ目は、知的財産裁判所においてどのような事件を扱うのか。すなわち知的財産裁判所においても東京高等裁判所、東京地方裁判所及び大阪地方裁判所の知的財産権専門部と同様に、知的財産権訴訟のすべてをその専属管轄とするのか、それとも、今回の民訴法の改正のように、特許権等に関する訴えのみを専属管轄とし、著作権等に関する訴えについては競合管轄とするのかということです。それと、現在は東京高等裁判所が第一審の専属管轄になっている審決取消訴訟の行政訴訟も取り扱うとすべきかという点です。
 2つ目は、知的財産裁判所の審級は一審か二審かという点です。これに関連して、知的財産裁判所を設けた場合、無効審判など、ある特定の審判を廃止することとすべきかどうかという点もお示ししております。無効審判の廃止については、第1論点での御議論の際には、反対する意見が強かったように受け止めておりますが、この点はいかがか、確認したいと思っております。
 3つ目は、知的財産裁判所をどの地に置くかという点です、これに関連して、知的財産裁判所の専属管轄とした事件について、地方裁判所や高等裁判所への移送を認めることは可能か。仮に移送を認めるとして、その要件はどう考えたらよいかなどの点もお示ししています。
 それから、21ページで、知的財産戦略本部の推進計画をも踏まえて、知的財産裁判所を創設するとした場合の具体的方策案を示しております。
 12ページから18ページにかけて御紹介しておりますとおり、知的財産裁判所に関する具体的な意見としては、東京に知的財産高等裁判所を設け、知的財産関連訴訟を控訴審段階で専属的に取り扱うという案です。
 21ページから最終ページにかけて、この具体的方策案についての検討事項をお示ししています。本日の御協議においても、21ページ以降の知財高裁に関して中心的に意見交換をしていただければと思っております。
 21ページの(1)で、荒井委員等の当検討会における提言等を参考に、この案のメリットをまとめています。まず、このメリットについてどのように考えるのかという点があります。
 ここでは、知的財産高等裁判所のイメージを固める意味でも、形、すなわち看板だけなのか、技術判事の導入も前提とするのかなどについても御検討いただければと思います。
 また、22ページですが、(2)では、知的財産高等裁判所の創設に当たって検討すべき問題点についてまとめています。
 まずアの今回の民訴法改正による専属管轄化により期待される効果については、控訴審の管轄裁判所を東京高等裁判所の専属管轄とすることで、特許事件等の処理は、東京高等裁判所に一元的に集約され、これにより同高等裁判所の専門部が実質的に控訴審の知的財産高等裁判所として機能することになるものと期待されているため、別途、知的財産高等裁判所を設置する必要性を認められないという考え方についてどう考えるかという点。専属管轄化された東京高等裁判所知財部の5人合議部の構成はどのようなものが望ましいか。必要に応じて東京高等裁判所のすべての知財部の意見を反映させるために、どういう姿が望ましいかという点。更に、1つのたたき台ということですが、判断の早期統一のため、東京高等裁判所内で物理関係、機械関係、化学関係、電気関係、それぞれの事件を特定の裁判部に集中させる集中部制についてどのように考えられるか。それから、特許庁との連携強化のため、特許庁の部門別に、東京高等裁判所の部を対応させて、連絡調整をより容易にすることについてどう考えるかという点を示しております。
 次に、先ほども御議論いただいたところですが、知的財産裁判所との関係で、調査官制度の見直しや、知財専門の専門委員についてどう考えるかという点を示しています。
 ウですけれども、知的財産高等裁判所の裁判官の人事の面での問題点については、独立の裁判所を設けて、仮に裁判官の人事異動が知的財産に固定化された場合、知的財産以外の分野の見識を広げることが少なくなるということについてどう考えるか。知的財産高等裁判所の裁判官の考え方が硬直化するのではないかという懸念についてどう考えるかという点や、独立の裁判所を設けた場合、知的財産関連訴訟事件の増加に柔軟な対応ができなくなるという弊害はないかという点を示しております。
 22ページから23ページにかけて、判断の統一の問題について、CAFCと異なり、日本の下級審は事実審であり、合議体構成員全員が個別の証拠評価を含めて合議して、事実認定を行う必要があることから、知的財産高等裁判所を設け、全判事参加による大法廷制度を導入しても、実際上うまく働かず、かえって審理に時間を要する結果となり、控訴審段階での判断の統一が可能か疑問であるという考え方についてどう考えるかという点。それから、下級審では多様な判断が出て、最高裁で判断が統一された方がよいという考え方についてどう考えるか。これを早期に統一することは逆の考えを締め出すことになり、かえって知的財産の保護に反することが考えられるかどうかという点。東京高裁における5人合議制の運用により、事実上、高裁レベルの判断に統一が期待できるとする考え方についてどう考えるかという点を示しています。
 最後のオ、「その他考えられる裁判所の専門的処理体制の強化方策案としてはどのようなものがあるか」という点。その一例として、枠内に記載したとおり、専門的処理体制の充実を図るために5人合議制の着実な運用、多数規模の知的財産専門の専門委員の導入、知的財産関連訴訟専門の裁判官の専門性を強化するための各種研修等、一定の措置を図るという案をお示ししています。
 なお、本日の具体案の議論におきましては、ただいま御説明いたしました検討事項につきまして、具体案との関連で論点の絞り込みができればと考えております。

○伊藤座長 それでは、今説明がございました19ページ以降の内容につきまして、特に知的財産高等裁判所の考え方につきまして、御意見をいただきたいと思います。どなたからでも結構ですので、お願いいたします。

○飯村委員 少し長くなりますけれども、意見を述べたいと思います。
 趣旨が理解されにくいと思いまして、検討課題と意見ということで、まとめさせていただきました。
 推進計画の中で、知財高等裁判所の創設について、在り方を含めて必要な検討を行うという文言でございます。その趣旨とするところは、迅速な裁判、ユーザーニーズに応え得る裁判を目指すという意味で、究極的な目的についてはもちろんのこと、私が考えていることとと全く同じですけれども、やはりいろいろな点で指摘すべき問題点があると思いますので、その辺を、時間をお借りして、あらかじめ述べたいと思います。
 私自身は、あくまでも現実に裁判を行っている立場からの意見と感想ということでございます。すべて個人的な意見です。念のためですけれども、実務家裁判官として、知的財産権事件を扱って、実際に紛争を解決している立場として述べるのであって、決して反対のための意見ということではなく、現状の紹介と知財高裁のよりよい在り方に関して述べたいという考えからでの意見です。司法の根幹にも関わる重要な問題でもあるので、その点を踏まえて申し上げたいと思っています。
 私自身は、知財紛争の迅速な解決のために、毎日毎日やり方を変革しているので、現状に問題があれば、その点を変えることは全く異論はないので、特に知財高裁ができることに対して、反対するインセンティブが全くない立場でございますので、そういうことを前提にお聞きいただければと思います。
 現状の紹介からですが、まず、知財裁判所の意味ですけれども、知財裁判所を創設すると裁判のスピードが早くなるということに直結するのではなく、基本的には司法制度、裁判システムの問題だと思っています。まず、知財重視ということとの関係ですが、今まで、自分自身の携わっていた経験から見て、知財の世界くらい、知財に関わっている人間の関心の深さと、知財に関わっていない人間の関心の浅さというものが乖離した世界はないと思っています。要するに、知財に関与していない人間が近づき難い雰囲気があると思います。
 ところで、現在の裁判所の状況ですけれども、今、徐々によい状況に進んでいると思います。若い意欲のある裁判官が進んで手を挙げて、自分も知財を担当したいという希望も出しますし、また、若くはなく、一般民事事件の経験の豊かな裁判官も是非知財をやってみたいという興味を持っているわけです。
 これは何に由来するかというと、優秀なゼネラリスト裁判官がたくさん手を挙げてきている。新規参入者が増えているという状況です。これはいまだかつて見なかったようなすばらしい状況です。ところが、別な裁判体系、紛争解決システムをつくって、その在り方いかんによりますと、当然のことながら一般民事裁判とは別物ということになって、一般の裁判官の関心は薄れることが予想されます。これは一見すると、人事ローテーションで幾らでもカバーできるように思われることかもしれません。しかし、現在は、通常部の裁判官と知財裁判官の懇親とか意思疎通とか、意見交換とか、相互の切磋琢磨とか、共通の法律問題点に関する共同研究とか、そういう相互刺激がされ、はじめて、いきなり知財の裁判といっても、抵抗なく受け入れられていたわけですが、そのような一般の裁判官の関心が次第に失われていくということも予想されますので、その点は注意しなければならないと思っています。
 確かに、知財を担当する裁判官は、スペシャリストで固めた方がよいという意見もあると思います。この点は、一般事件の進め方から得られる工夫を素早く応用する能力が失われるというデメリットなどと比較しながら、これから時間をかけて議論をしたいところだと思います。
 現在の東京高裁の知財部の裁判官を見ますと、知財に関しての長い経験を持った専門裁判官も配置されていますが、それ以外に通常事件の分野で私が最も尊敬している優秀で実績をあげられた裁判官が、通常部から来られておられるわけで、知的財産権事件に関する新たな審理方法の試みも、そういう方を中心に新たに提言されてきて、それが新しい原動力になってきております。そのような芽は是非大切にしていきたいと思っております。
 いましばらくすると、現実の事件の審理や印刷物で、より具体的に、そのような審理の工夫がアウトプットとして出てくると思いますし、もしかしたら余り外に宣伝するということもないのかと思いますが、新しい審理の仕方は、かなり内外に強いインパクトを与えるのではないかと思っています。
 今は、このような重要な時期ですが、そのような時期に、いきなり特別な職分管轄を前提とした特別裁判所を設立するという意見に関しては、それはそれとしてあるのかと思いますけれども、その在り方のいかんによっては、やはり司法の根幹に関わる問題と、紛争解決のシステムの問題で、現に様々に動いている時期であるだけに、いろいろと問題があり得ると思われますし、紛争解決システムであるだけに、一旦決めてしまうと後戻りはできないという性質のものだけに、やはり慎重な検討が必要だと思っております。
 第2に、裁判官の視野の問題ですけれども、これは重要な問題になるポイントです。これもやはり時間をかけて議論すべきだと思いますけれども、裁判官の視野と、それから変革に対するダイナミズムが大切だと思っています。
 細かいことは省略するとして、一番懸念されるのは、知財裁判所に特化した特別な裁判所を設けますと、裁判官の視野が極めて狭いものになって、村社会の中の文化の一員としてしか判断できなくなって、適切な判断ができなくなる危険性があります。のみならず、従来の意見、プラクティスをなかなか変えようとしない点に問題が出てくるだろうと思っています。民事訴訟にしても行政訴訟においても、その知財訴訟部分だけに精通していても、およそ適切な解決が図れるものではないし、民事訴訟が5年くらいですごく変わりましたし、行政訴訟も現在、著しく変わっていますので、そういうものから刺激を受けて、臨機応変に対応できる態勢を作っていくということが必要になるのではないかと思っています。これは、紛争解決に関与する人間が、頭で分かっていても、なかなか実現できるものではありません。
 最近の知財の判決を見ますと、判決書の形式においても内容においても、だれも予想できないほどのダイナミズムで変化しているのですが、私の感想では、これは具体的な事件を念頭に置いた感想ですが、そのダイナミズムの原動力は、旧来からの専門裁判官ではなく、多様な経験を持った新しい裁判官が入ることによって、想像力豊かな発想で法律論や運用論が形成されているのではないかと思っています。
 第3に、通常裁判所との相互関係ですけれども、これは極めて神経を使う事柄です。歴史的に見ると、特別裁判所の設立というのは、通常裁判所の機能や運用に限界や根元的な問題点が出てきたときに生ずる制度論だと思っています。
 本来は、現在あるものの体制強化を図っていって、今、御紹介したような通常裁判所の充実を優先させて、考えていくべきことであります。今、問題点があろうと思いますが、そのような今抱えている問題点は、名前を変えたからといって解決できないので、そのような問題については、どこに問題があるかの問題の所在を分析、検討して、それをどうしたら解決できるかという、問題に対する解決を徹底的に議論していくべきであろうと思っています。組織論についての意見に移りたいと思います。実際に特別裁判所ができると、確かに通常の裁判所と別な意味で利便があると思います。ただ、組織論、組織を作ることによって、陥りやすい落とし穴というか、問題点もあるわけです。実際に組織が作られ、人が配置されると、その利点が、仮に大した利点でもないような場合であっても、誇張されたり、あるいは客観的に評価しにくくなるという問題があると思います。組織における人間の行動として、バランス感覚を失う危険性のある一番の原因は、組織の中の自分の立場ということを念頭において判断するからだと思います。その意味では、より望ましい組織論としては、柔軟な形にすることであって、例えば、通常裁判所の中のより機動的な特別部というような制度の創設だと思われます。一番重要なことは、組織あるいは職務分担において、人や設備の相互補完関係が成立するような在り方、人同士の競争関係の成立が一番大事なことだと思われます。一旦創設してしまうと、その組織を守ろうとしたり、恒常化しようとしたり、肥大化しようとする危険性があるので、その点を注意しながらということになると思います。
 この点で、ほかにも懸念材料がありまして、同じような専門性が要求される訴訟類型としては、労働事件もあるし、租税事件もあるしということで、そういうものについて、それぞれの分野の真の問題の所在を解明することをしないで、特別裁判所ということで答えを求めることは、よほど注意しながら検討しなければいけないと思っています。
 第4に、職務管轄における混乱という点です。一番大きな問題点は、職分管轄の問題です。我が国では、特別裁判所を設けたという経験がありません。土地管轄については慣れ親しんできました。事件を移送することによって、もし、間違えた土地管轄に事件が提訴された場合には、移送することによって解決されました。例えば、どこかの裁判所から事件が移送され、その移送された裁判所が東京高等裁判所であれば、東京高等裁判所のどの部が担当しても違法という問題は起きませんでした。ところが、特別裁判所において特別な類型の事件を扱わせるべきであるという制度目的のために特別な裁判所を設けることになりますと、その瞬間に、通常事件を扱う裁判所と特別事件を扱う特別裁判所との間の職分管轄の問題が生じてきます。ところで、今までどうしていたかと言いますと、事務分配規程は、比較的柔軟に作られており、専門部を設けている東京高裁においても、どうせ同じ裁判所がやるので、特許に係る事件は専門部であるというような規定ぶりであって、厳密な区別をしていませんでした。
 例えば、契約の目的物に知的財産権があったり、相続の目的物の中の1つに知的財産権があったり、会社の営業譲渡の中に知的財産権があったりという場合に、譲渡が争いになるような事件があっても、そのような事件が審理の途中で化けてきて、契約関係だけが問題であると思っていたら特許権侵害訴訟になってきたりした場合、通常部であろうと、特別部であろうと、どちらでやってもそれほど問題がなかったのです。一旦職分管轄を決めて、特別な特別裁判所ということになると、果てしない管轄問題が生じてきて、せっかく作っても、裁判所のエネルギーの大半をそちらに割かれてしまうことになるのではないかと懸念しています。
 しかも、知的財産の外延というのが必ずしも明らかでなく、形成過程のキャラクターに関する事件とか、パブリシティーに関する事件とか、生成される過程の権利、利益をどう扱うかということについても問題になると思います。特に、知財の周辺の問題は、裁判所が、独占権を与えることによる権利者側の利益と一般人の不利益のバランスによって判断する性質のものですので、そのような問題についても、関与の余地がある制度は是非とも残るような余地を持つことが大切だと思いますが、特別な職分管轄の裁判所については、そのような柔軟性が活用できる余地がなくなるのではないかと心配しています。
 また、不正競争防止法の請求の問題点も少なくないと思われます。訴状の記載を見て、一般の不法行為訴訟なのか、不正競争防止法上の訴訟なのかは判別がつかないことが多いのです。「不正に」と一言記載があるだけで知財事件になってしまったりということが、実際にはあり得るわけです。事件を審理して、裁判官から心証を開示された後に、不利益な心証を伝えられた当事者が、裁判所を変更する目的で、不正競争防止法上の請求を、一言を付け加えるだけで追加するのは、やはり、見逃せない問題点があるように思われます。結局のところ、ユーザーのニーズにそぐわないことになってしまうので、やはり初めての試みをするのであれば、在り方に関して、このような点についての慎重な議論というのは必要だと思います。
 最後ですが、著作権事件や不正競争防止法上の問題点ですが、これは従来から言われていることを重ねて申し上げることになります。著作権や不正競争事件というのは、訴額の低いものもありますし、当事者は地元で扱ってほしい地域密着型の事件もあるわけでございます。これは東京に所在する知財高裁の管轄とすることが、結局のところユーザー・ニーズにそぐわない結果になるのではないかという懸念を有しています。他方、著作権事件や不正競争に関しては、知財高裁から除いてしまうということになると、それも、重要な事件も入っておりますので、今の民事訴訟法改正法の下よりもある意味では大きく後退するという意味合いもあるので、その点の悩ましさというか、その点の問題点というのもあるかと思います。
 一人で長く話してしまいましたが、この点、細かい論議をさせていただきたいと思います。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの飯村委員の御意見も含めまして、どうぞ他の方からお願いいたします。

○櫻井委員 私は知財の検討会で始めて知財の世界に入ったのですが、噂ではいろんなことが聞こえていたのですが、なるほどすさまじいところでありまして、現代の行政の抱えている1つの大きな課題は、いわゆる市民というか、素人さんと言いますか、行政の外側にいる人たちの声をどうやって吸い上げていくのかというのが非常に大きな課題としてあって、それぞれの省庁がそれぞれのやり方で工夫をしていますけれども、知財の世界というのはすごく素人さんの声が大きいなというのが実感で、それは反面で言うと、専門家の存在意義というのが過少に評価され過ぎているのではないかと私が一般的に感じているところで、そういう意味では、慎重な議論をした方がいいなというところが多々ございます。
 結構いろいろ、ヒアリングなども聞きましたし、産業界の委員の方の意見も含めてですが、個別的に言うと、ちょっとどうかなという意見も結構あります。素人くさい話が何でいけないかというと、結局、自分で自分の言っていることがよくわかっていないのではないかと思うところがありまして、一本化の話もそうですし、知財裁判所の話もそういうところがあって、私は利害関係を持っていませんので、やってみて失敗してもそれでも別に構わないですけれども、しかし、欠陥がわかっているのに何も最初から妙な制度をつくる必要もないという感じがするわけです。
 推進計画でとても奇妙に思いますのは、私は知財に関しては、専門裁判所みたいなものをつくるというのは、それなりに理由のあるところなのかなと思っているわけです。専門裁判所をつくるという場合は、非常に似たような事件が大量に存在しているとか、非常に際立った特徴を持った訴訟の構造を持っているとか、何か特徴があって、専門裁判所というのはつくる必要がある。現在、専属管轄などがあるということを見ますと、専門裁判所的なやり方というのは理論的にも十分あり得るだろうとは考えているわけです。ただ、先ほどの素人的な話で言いますと、推進計画で知的財産高等裁判所の創設というところから入っておられて、高裁から入っているというのは何なのかと思っていまして、およそ考えられない順番なのです。
 要するに、専門裁判所をつくるのであれば、まず第一審です。地裁が先で、地裁の話があって、もうちょっと必要だから二審でもつくりましょうというのがごくごく当たり前の発想でありまして、それが地裁を全部ネグっちゃって、高等裁判所をいきなりつくりましょうというのは、親亀と子亀がひっくり返ったみたいな話で、私からすると、戦略本部にはまっとうな法律家が入っているのか、入っているとして、その意見をちゃんと聞いていたら、こういう案がどうして出てくるのだろうかというのを、第三者としては非常に奇妙に思うし、それが最終的にチェックされないまま計画になってしまうというのは一体どういう議論をしているのかと思っていまして、これは思いつきでないのでしたら、どうして高裁なのかというのはきちんと説明をしていただきたいと思います。
 もう一つは、専門裁判所をつくるという場合には、この場合は、知財関係、特許について言えば、無効審判と審決取消訴訟があって、そこがまさに特許を専門的に取り扱うべきルートなわけです。侵害訴訟は民事訴訟でありますから、そういう意味でも、行政訴訟のルートをほったらかしたままで、知財専門の高等裁判所をつくりましょうというのは、これも何というか、名前だけあっても実が全然伴っていないと思っていまして、そういう意味でも専門裁判所としての名に値しないと言いますか、その辺のところをどう考えているのかということで、もしお考えがあるのであれば、関係者の方2人おられますので、是非御返答いただきたいなと思うわけです。
 もう一つだけ言いますと、この間、沢山委員でしたか、フラッグを立てる、旗を立てるということですけれども、申し訳ないですけれども、思いつき的に言うのであればそれはあるかもしれませんけれども、国家の政策としてやるときに、旗を立てればいいという、そういう話では絶対ないわけでして、旗を立てるのであれば、それにふさわしい実質がなければとても恥ずかしいことだし、そんなことはあり得ないと思うのです。やはり高裁のところに民事訴訟と行政訴訟的な両方を入れるのであれば、ちゃんと両者の関係をどうするのか、融合形態があるのなら融合形態をちゃんと考えなければいけませんし、そういうところを全部ほったらかしておいて、知財高裁という看板をかけてもほとんど何の意味もないことで、かえって混乱を来しますし、紛争解決のルートとしても、非常に奇妙なことがいろいろ起きてくると思います。この点についても私も第三者的な、国民の一人としての感想ですけれども、お答えをいただきたいと思います。

○伊藤座長 なぜ高裁かということにつきましては、冒頭御紹介のありました民事訴訟法の改正で第一審段階における専属管轄化、そのことが前提になっているのと、判例の事実上の統一ということが頭にあると思いますけれども、何か今の櫻井委員の御発言に関連して御発言がありましたらお願いします。

○小林委員 私は素人なのか専門家なのか、どっちの立場に見るかによって素人か専門家か違うと思うのですが、一般的に特別裁判所は地裁からだというのは、知財以外の特別裁判所を私は知らないものですから、よくわからなかったんですけれども、CAFCは成り立ちがちょっと違うのかもしれませんが、フォーラムショッピングという理由があって、CAFCは、あれを特別裁判所というかはまた別かもしれませんが、ある種の特別裁判所のようになっているわけですね。
 それから、ドイツの特許裁判所も先ほど紹介があったように、これも成り立ちが違うのだろうと思いますけれども、審判部が改組されたものですから、地裁とは言いにくい部分だと思います。そのすぐ上は最高裁になってしまいます。いろいろあると思いますけれども、多分事情に応じて成り立ちと言いますか、でき上がりの構造が違うと思うのです。
 では、日本ではと考えたときに、今回の民訴法改正で、地裁については2つあるにもかかわらず、東京高裁に専属管轄化された1つの理由は、キルビー判決が1つあると思うのですけれども、審決取消訴訟の場合と侵害訴訟の場合とで同一の特許について2つの事件がばらばらに控訴される。審判に対する出訴と地裁に対する控訴という形になるのですけれども、そういったことが起きたときに、同じ特許権について、片や行政訴訟で片や民事訴訟という違いがあるにしても、同じような判決が欲しいという議論があって、それが1つの理由となってきたと思うのです。
 そういうことは恐らくほかの行政の分野では生じないのではないかと思いますから、あるいは少なくとも顕在化しないのではないかという気がするものですから、もしそうだとすると、この分野に特有の考え方を取る理由もあるのではないかと思うんです。仮にないとしたら、何で民訴法改正をしたのかというのが私にはわからなくなってくるのです。
 要は、ほかの常識はここの常識ではないということがあり得るのではないかと思いますから、逆に知財についてこうやるのが常識外れと見えるのであれば、なぜそういうふうに見えるのかということから考えて、知財ではやはり特殊性があるのではないかというところを検討してみるべきではないかという気がします。

○櫻井委員 ただ、ある行政活動について、違法性の判断が民事訴訟と行政訴訟の両方に係属し得るというのは、これは行政訴訟の分野ではむしろ普通にあることで、国家賠償がありますし、行政訴訟があって、行政訴訟は御存じのとおり全然機能していないものですから、結局余り問題にならないというだけのことだと思いますので、これは普遍的な問題で、国賠と行政訴訟をどういうふうにからめたらいいのかということは、違う判断ということもあり得るところですので、そこは同じベースはあるのだろうと思います。

○小林委員 今おっしゃったことは、理屈の面が普遍的でしょうということをおっしゃっているだけだと思うのです。なぜこの分野において問題が顕在化するのかということと、なぜ顕在化した問題を解決するためにわざわざ民訴法まで改正したのかというところの答えにはなっていないのです。

○櫻井委員 私の理解は、知的財産の場合は、行政判断とか、もしくは裁判所に対する期待というのが非常に強くあって、そこがまさに私的紛争か、経済分野というか、生き馬の目を抜くような話とはこういう話なのだろうと思いながら伺っているわけですけれども、いずれにしても、それは、量的な差異にとどまるのであって、質的な差異ではないと思います。

○伊藤座長 櫻井委員の御意見は、知財高裁という制度の創設に関していろいろ問題があるという御意見ですので、むしろそれぞれの方にそれぞれの立場から考え方に関する積極、消極の御意見をいただいた方がいいかと思いますので、どうぞお願いいたします。

○近藤参事官 前提として、知財高裁を創設するということを前提としている場合でも、今、皆さんの議論の中で申し上げてきましたけれども、そういう形が大事なのだ、機能ということは余りなくて、形が大事なんだということをベースにしておっしゃっている方と、そうではなくて、機能的なものもくっ付いて大事なんだとおっしゃっている方の両方いらっしゃる。機能的なものというのは、早期の判断統一というのが1つですし、もう1つは技術裁判官の基盤になると。これが両方一緒か、それぞれ別なのかわかりませんけれども、そういうふうに実質を伴うものとして知財高裁が必要だという方と、実質は今回の民訴法改正である程度できたので、そうではなくて、先ほどフラッグだと言いましたけれども、どういう意味で必要なのかということも、前提として意見を言っていただいた方が議論しやすいと思います。

○伊藤座長 今の近藤さんの発言も踏まえて、是非率直な在り方についての御意見をお願いしたいと思います。

○阿部委員 高等裁判所の段階だけで特別裁判所をつくることは、余り不自然なことではないのではないかと思うのです。行政機関、特に準司法機関のようなものの判断に対しての不服の審査については、高等裁判所でやるケースが、独禁法とかたくさんある。それは恐らく全部がそうかわかりませんけれども、非常に特異だとか特殊だとか、あるいは技能的なものであるとかいうものが底辺にあって、それを判断するには、ある専門的な機能を集中させたところでやった方が合理的な判断ができると思います。
 現に審決取消訴訟が高等裁判所に専属管轄になっているわけで、それはその思想が反映されたものであろうというふうに思います。
 侵害裁判の方は損害賠償とくっ付いていますから、一審では、特許そのものの争いというよりも、でき上がった特許を侵害したかどうかということだから、それは普通の裁判所でやって、それに対する不服申立てのときには、もう少し専門家が判断した方がより高度な判断ができるだろうということで高裁が扱うのがふさわしいだろうと私は思いまして、余り不自然という感じはしていない。
 今回、たまたま地裁のレベルで専属管轄になっていたものを引き受けたわけですから、それこそ更に専門化していた方がより合理的ではないかと思うのです。余り理屈にはなっていないかもしれませんが。
 したがって、国家として、そういう仕組みをちゃんと持っているということを国民に知らせるというか、もちろん、機能もきちっと充実しているという前提で、そういう実態がある方が、より、合理的な解決を求めるという意識が高揚するのではないかと思うのです。

○中山委員 なぜ高裁かというと、私は答えは看板しかないと思っています。知財が特殊であって、審理を促進し、かつ正確な判断をするために特別裁判所が必要であるという判断をすれば、私は地裁を議論しないで、それは順番としてはおかしいと思っていますけれども、戦略会議はそういう雰囲気ではなく、結果としては私は看板だけだと思っています。それはそれとして、一応こういう方針が出た以上はつくるという方向に向かっていくのだろうと思いますけれども。
 あと、なぜ高裁かというのは、恐らくアメリカのCAFCの真似でしょう。CAFC、アメリカは高裁だけやったわけです。それは当たり前で、陪審制度のあるアメリカで、第一審を全部ワシントンに持っていくということはできないのは当たり前なので、一審は手を付けられない。しかも、日本と違って高等裁判所はめちゃくちゃにばらばらなので、統一したというのはわかるのです。しかも、CAFCが扱っているのは特許だけではない。特許は少しで、ほかにも多くの仕事をしています。現在日本で議論されている知財高裁とは全然違うわけですけれども、アメリカがいいという考え方が強いようです。戦略大綱でもCAFCを参考にしてと書いてありますので、あれだということでやったと思います。しかし、本当はCAFCに限らず、18ページにあるとおり、これは私が戦略本部で述べた言葉ですけれども、知財裁判所と名前が付いても、各国によって存在理由、機能、管轄、実効性が全部違うので、外国のことはあまり参考にならない。特にドイツや韓国などは、これは日本の審判を持っていったみたいな裁判所です。日本だって審決取消訴訟だけだったら、特別裁判所をつくったって、法的にはそれほど大きな問題はない。視野が狭くなるというのはありますけれども、今、飯村裁判官がおっしゃった問題は半分くらいなくなります。ただ、侵害まで入れてしまうと非常に大きな問題が起きてくるだろうと思います。
 しかし、つくることはすでに方針が出ていると思うのですけれども、それにいたしましても、飯村裁判官のおっしゃったことというのは非常に大事な問題で、それを十分議論していかなければいけないだろうという気がします。今まではこういう議論をしていないのですね。ほとんどこういう議論をしていなくて、時間が非常に大切だと言われていますので、全部これを飛ばして、とにかくつくるんだと、政治決着と言うとしかられますけれども、そういう意見だったということになりましたけれども、少なくともこの場はプロの集まりですから、いろいろ細かい問題を詰めていく必要はあるわけです。

○沢山委員 櫻井委員の意見、十分理解できないところもあるのですけれども、今のように私は中山委員と同じで、看板だけだと。でも、それではいけないというのが櫻井委員の御意見で、そんな簡単なことでこういう国家戦略を決めていいのかと、そう言われたら我々としてはどうしようもないわけで、国家戦略を考えていただくところでもう一回やり直していただくか、櫻井先生から何か御提案をいただくか、どっちかしかない。
 もう一つ、櫻井委員の意見でわからないのは、我々は民訴法の改正とそう差がないと理解しているのですけれども、そもそも民訴法改正がよろしくないという御意見なのかという点なんですけれども。これは是非お伺いしたいのです。それとは全然違う問題を言われているのですかね。

○櫻井委員 私は事実上管轄を集中していくというような話と、知財高等裁判所の創設を図りましょうというスローガンの間に、質的な違いがあるという考えです。

○沢山委員 ですから、飯村委員からプレゼンテーションがあったように、例えば職分管轄だとか、非常に難しい問題がたくさんあるだろうと思いますけれども、どこに差があるんですかね。特別裁判所をつくるということが問題だと言われているんですね、櫻井先生の御意見は。スローガンだけじゃいけないと言われているのですか。

○櫻井委員 スローガンだけでもそれは構いませんよ、意味がありませんからね。別に有害でなければよろしいのではないかと思いますし、現在の制度を前提にするのであれば、看板で、それでみんなが満足するのなら、そういう決着もあり得るだろうと思います。
 ただ問題は、そういう知財特有の訴訟制度を考えるというのであれば、それはまず地裁から考えるのが普通の考え方だというのが1つ。
 それと、行政訴訟ルート、特に無効審判の話というのは、これは最高裁の見解は違うと思いますが、広い意味での裁判所なんです。そこのルートとの整合性と言いますか、そこのところを議論しないで、そっちをほったらかして民事訴訟のところだけ専門化したって意味がないのではないかということです。看板にしても、看板と実質が乖離するという問題や、著作権の話とか周辺領域の扱いという問題もあります。

○阿部委員 やっと議論の中身がよくわかってきました。要するに、東京高等裁判所に専属管轄化する、機能を集中するということをやってきたと思いますけれども、そういうことをやることについては、余り反対はなかったと思います。いろいろ議論はありましたけれども、そこはコンセンサスが得られてそうなったのだろうと。
 そうなってしまったからには、そこを1つのまとまった単位として機能させるように、看板というか、名前を付けましょうということで、特に差し支えがあるような話ではなくて、そういう看板をかけることによって、いろいろ期待できるというのが1つの理屈ではないかと思います。

○小野瀬委員 民訴法の関係がいろいろ出てきましたので、何で高裁だけなのかというのは、先ほども中山委員がおっしゃられたことで、ほとんど繰り返しになってしまいますが、特許権等に関する訴訟事件の審理の充実・迅速化を図るというのが今回の専属管轄化の趣旨でございますので、そういう点で、地裁について充実・迅速化を図る必要があれば、当然控訴審についても充実・迅速化を図る必要があろうと。そういう充実・迅速化を図るという一般的な理念を追求するという意味で、地裁も高裁もというふうにしているわけでございます。
 知的財産裁判所を創設する場合に、どの審級レベルでそれをつくるかどうかというのは、まさにこの知的財産裁判所をつくる趣旨、どういう目的でやるかということによるのだろうと思います。
 そういう点で19ページの一番上のところに、「判断の高裁レベルでの早期統一」とか「プレゼンス」という言葉がありますから、そこは民事訴訟法との関連というよりも、知的財産裁判所をどういう趣旨でつくっていくかというところの議論で考えていくべきことではないかと思います。

○伊藤座長 先ほど来、看板という表現がいいのかわかりませんけれども、そういうのが主たる目的であるという御意見が多いようですが、先ほどの飯村さんのお話を伺っていると、もちろん、いろいろ問題はあるけれども、しかし、やはり看板だけではなくて、それに特化した裁判官によって構成される特別裁判所というものの実質の意味は、それはそれで1つの意味としてあるのではないかと私は伺って、そのことから生じてくる問題というのは別にあるけれどもとおっしゃったのですけれども、そういう意味でいくと、必ずしも看板だけの話というふうに割り切っていいのかなというふうに私は伺っておりましたが。

○荒井委員 知的財産高等裁判所の関係で、機能として非常にいろいろ経済界とかいろんな方面から、是非日本の司法が知的財産についてしっかり裁判機能をますます発揮してほしいという要望が非常に強いということがまずベースにあると思うのです。今の制度でものすごくみんな幸せで、何も変える必要がないということなら、こんな議論は出ていないわけで、もちろん、司法制度改革全体の議論がありますが、中でもいろいろ国際競争をやったり、技術開発の競争をやっている観点からすると、非常に司法が大事だという期待感の表れだと思いますし、そのときには、機能はできるだけ大きくなってほしいということで、早期判断、あるいは技術的にもしっかり判断してほしいということだと思いますが、もちろん、では現状ではどこまでできるかということで、それがここ数年間、民事訴訟法の改正でいつも議論しながら一歩一歩進んできて、実態に応じ、あるいは各方面での蓄積によって進んできているということだと思います。
 民事訴訟法改正も今回初めて出されたわけではなくて、数年前からいろいろ先生方の御苦労でここまで来ているわけで、少しずつ集中する。それに伴って実態も、あるいは原告、被告になる方がそれぞれ対応をやってきてということだと思いますので、今の段階で言えば、今回の民事訴訟法の改正が今の日本の中における実態面におけるコンセンサスではないかと思います。
 そういうことですから、今回の民事訴訟法の改正以上に一歩機能を、それが事実上の高裁という形で表現されることもありますが、それが今の段階でのコンセンサスだと思いますので、それを前提に、後は集中してやることによって受けるメリット、同時にアナウンスメント効果というか、そういうことをやるということは非常に意味は大きいと思います。
 事実上の知財高裁ができるわけですから、それと同じような機能で、それがアナウンスメント効果が出るようなことになる。あるいはそれに伴って、集中することに伴うメリット。もちろん、それに伴うデメリットをなくすようにする努力はしていかなければいけないという御指摘はそのとおりだと思いますので、デメリットは何かということだと思いますが、特に人材の関係で言われるわけですが、これは問題に当たってしまうかもしれませんが、いろいろ今、裁判官に対する期待、あるいは法曹界に対する期待が、いろんな人が入ってほしいということで、法科大学院とか、いろんな議論があって、新しく入る方がどんどん入ってきたり、いろんな機能の人が入ってほしいということ、それからOJTと言うとしかられるかもしれないが、入った後もいろんなことで、任官の時、あるいは再任官の時にどうするという議論がなされているわけで、そういうものの一環でも、全体の裁判官がますます機能を発揮してもらうための仕組みの中で、こういう知財の裁判官の方がどういう形でやっていただくかということだと思います。
 知財高等裁判所が必要だと言っている人も、決して、最初からそこで採用して、生涯そこに勤めてもらうということで言っているのではないと思います。これは最高裁の判事が任用されてからというのとちょっと違っていて、普通の高裁と同じように、人事の方も、地裁でいろんな方面で視野を広くやっていただいた方、そういう中で適任の方にやっていただくということだと思いますので、人事のところが何か、そこだけで採用して、生涯そこだけという感じですが、これはまだそこまで決まっているわけではないのですが、そうではなくて、視野の広いのと、専門性を両立させるような仕組み、それが個人なのかチームとしてやるかということだと思いますが、そこは人事の仕組みによって可能ではないかと思います。
 もう1点、人事の関係で、専門的にそこばかりやっていればなるというのは、これはどこの組織にも同じ問題がありまして、科学技術の分野にしても、もっと流動化を増やせという議論がなされているのと同じ問題でございますが、特にこの知的財産の場合には、非常に国際性が強いというのが、案件の特色ではないかと思います。ほかの案件以上に非常に国際性が強いものですから、視野も狭くやっていれば、アメリカの裁判官に比べてどうだとか、ほかに比べてどうだという、そういうことで企業の方はずっと見ている。あるいは弁護士の方も見たり、学者の方も見ているはずですから、そういう問題。それから、技術進歩がものすごくありますので、どんどん変わっていくというスピードが速いので、視野が狭くなっていては社会の期待に応えられないのではないかということだと思います。そういうことを人事の関係ではコメントさせていただきたいと思います。
 それから、著作権とか不正競争防止法、この話は民事訴訟法の改正の時にいろいろ議論が出てきて、今の段階では現在の民事訴訟法の改正のところがいいのではないかと思います。将来また非常に著作権の中身も変わってきたり、技術的なものが変わってきたりして、更に集中する問題が出てくれば別ですが、現時点においては、現在の民事訴訟法の改正されたものの管轄がいいのではないかと思います。
 結論的に申し上げれば、もちろん、場所については、東京高裁に集中されるわけですから、場所は東京ということで、事実上の知財高裁の部分を、法律上も知財高裁にしていただくというのがいいと思いますし、案件が増えてきたときにはどうするかという問題はありますが、そのときには当然体制を整備していただくということで、こういう問題も解決するのではないかと思います。
 ちょっと長くなりましたけれども、そういう期待が非常に強いということでございますので、是非そういう期待に司法面で応えていただくのがいいのではないかと思います。

○中山委員 今の荒井さんの説明だと、看板は別として、改正された東京への集中とどこが違うのでしょうか。
 あと職分管轄、私はこれが一番問題だと思っているのです。これはどうでしょうか。

○荒井委員 管轄の内容は、今の表現で言えば看板を変えるということがいいのではないかと思います。ですから、今回の改正された民事訴訟法に基づくものをそのまま維持するというか、スライドするということがいいと。

○中山委員 飯村先生がさっきおっしゃった問題は、同じ東京高裁ならどこへ入ったっていいけれども、これはそうはいかないでしょう。私が心配しているのは、入り口でもめてしまって、かえって訴訟が長くなってしまう、従来より悪くなるケースもあるのではないかと心配しているのです。

○荒井委員 そこは、全体の案件のうちどのくらいそういうことが起こり得る話かということ。
 それから、そういうものの判断にどのくらい時間をかけるかということだと思いますので、全体についてルールをできるだけはっきりして、そういうときには早く判断するということをすれば、実態上の弊害は少なくて済むのではないかと思っております。

○近藤参事官 今の看板の議論だということで、確認したいのですが、一番最初に出されたときに9つの提言という知財立国のものでは、技術判事ということの導入が前提だと。最近の7月9日の朝日新聞のインタビューなどでも、専門性を高めなければいけないということをおっしゃっているわけですが、専門性を高めるという実質ではなくて、知財高裁は看板の問題だと、そういう理解だということでよろしいですか。

○荒井委員 去年、私が9つの提言をした時と、今回、7月8日で、それまでの中でいろんな方の御意見をお聞きして、知財本部の方でああいう決定がなされたものですから、それを受ければ看板だと思います。
 ということで、現時点において、技術判事というか、いろいろ議論がございましたけれども、今の段階でそれを一緒に導入する必要はないということで、調査官の機能の拡大とか、専門委員の活用ということでいいのではないか。
 そのことによって、専門性が高まる。それから、集中すること。あるいはいろいろ裁判官自身の専門性の問題と同時に、いろいろサポートすることについて、世界中の判例とか、技術的なサポート体制とか、集中してやることによって、専門性が高まっていくのではないかと思っています。

○近藤参事官 「現時点においては」という前提を付けていらしたのですが、将来的にはそういうことも検討するということを別にして、現時点においては、看板として知財高裁が必要だと考えているという理解ですか。

○荒井委員 そうです。

○近藤参事官 先ほど飯村委員が言った職分管轄の問題ですけれども、知財高裁として、先ほど櫻井委員がおっしゃったことと関連しますけれども、専属管轄化するということと、特別な裁判所をつくる。その特別裁判所というのは、この事項を扱う裁判所をつくりますということが特別裁判所の意義なので、そうすると、その事項というのは職分管轄ということになると思うのです。そうすると、逆に言うと、そこは通常裁判所の管轄がないのです。だから、著作権や、不正競争防止法で競合するということは、専門裁判所をつくった以上はできないということになって、切り分けるしかないということで、それでいいかどうかということを決断しなければいけない問題というのが1つあると思うのです。
 それから、今度の改正法でも「特許に関する事件」という形で非常にあいまいになっていて、特許に関する事件だとすれば、特許に関するリース料の不払いの問題なども特許に関する事件で、東京高裁に提訴できるわけですけれども、それは全然専門性がなければ大阪に移送するということはできるわけですね。
 でも、今回、そういうような形で、同じ切り分けで「特許に関する事件」と言った場合、全く専門性がないものも、すべてが東京高裁一本化になってしまって非常に不都合が生じてしまう。今、そういう割とあいまいな概念でももっているのは、専属管轄だからこそ、移送という制度はほかの裁判所でも管轄があることを前提にして移送ということで処理できるからそれでできるわけなんですが、その事件を扱うという職分管轄を認める特別裁判所をつくった場合には移送はできなくなってしまうのではないかという問題の指摘が、先ほど飯村判事からあったのだと思います。そのことについてどう考えるかというのは、仮に看板だけであるということにすると、現状を変えないから看板をかければいいじゃないかということについて、現状は変わってしまうという、そこまで行ってもいいのかどうかということだと思うのです。その辺についても御議論をいただければと思います。

○中山委員 日本の知財裁判所に限らず、世界中、アメリカがCAFCをつくる時もそうでしたけれども、特別裁判所をつくる時には、必ず職分管轄と視野の問題、この2つか大激論になるのですけれども、ほとんどその議論をしていないものですから、一体どうなってしまうのかという疑問が出てくる。議論は大いにしないといけないと思います。

○伊藤座長 全く新しいことを考えるものですから、今回、人事訴訟を家庭裁判所の職分管轄にした、ああいう場合は、請求を見て、こういう請求はというふうにやるのですけれども、今回はなかなか、金銭請求と言っても、一体争点は何なのかという実質を見なければいけないという問題がありますので、そこは在り方の関係で一体どういう合理的な扱いができるのかというのを、いずれにしても議論をしていかないといけないので、なかなか今日この場で決着がつくような問題ではないと思いますが、しかし、問題点があるということだけ皆さんの共通の認識にしておいていただければと思います。

○飯村委員 知財高裁をつくるに当たって、看板効果があるという意義、シンボルになることにより知財立国という効果があるという意義自体はまさにそうだと思います。ただし、知財立国の表明であるから裁判の内容を一切変えないタイプの知財高裁でよいとしても、知財高裁をつくるということによって、必然的に生ずる問題点というのはいろいろあるわけです。それが何かということに関する問題の所在の解明と、それをどうやって克服するかというのをもう少し慎重に議論したいと思います。
 それから、看板以外の内容に関して、今、近藤さんから確認されて、例えば技術系裁判官が含まれるかどうかということに関して、それはないという言い方もなさいましたけれども、技術系裁判官でなく、ほかに何か考えられることがあれば、それのメリット、デメリット、それも項目を挙げた上で慎重な議論を図っていくべきだと思います。

○加藤委員 職分管轄については、問題があるのは産業界も当然認識しております。したがって、こういう特別裁判所ができて、そこでやってくれるかどうかわからないようなケースも出てくるかもしれないと思っていますけれども、我々の主たるニーズのポイントは、純粋な特許侵害事件です。ですから、これは当然特別裁判所たる知財高裁ができたとして、そこで一括して扱ってくれるはずだと思っておりますので、ニーズの相当部分は満足されるものだと思っていますので、周辺については、多少時間がかかってもやむを得ないと産業界としては考えています。
 それから、機能論については、看板が主体かもしれませんけれども、知財高裁で早期の判断統一なり判決の予見性が高まれば、恐らく産業界はそれを尊重するようになるだろうという期待的機能をここでは思っているという点を指摘しておきたいと思います。

○飯村委員 今の加藤委員の意見ですけれども、純粋な特許事件以外は通常裁判所がやるということでしょうか。

○加藤委員 そこは十分議論していただきたいですけれども、時間がかかってしまっても、通常裁判所の方にその部分だけ分離されたとしても、それは産業界としてはやむを得ないと考えるという意味です。

○飯村委員 分離されて、通常裁判所がやってもやむを得ないのではなく、どちらがやるかがあらかじめ決まっているのが、職分管轄を決めて、その裁判所に担当させるという特別裁判所の機能なのですが、純粋ではない特許事件は通常裁判所がやるということを認めておられる議論でしょうか。

○加藤委員 特許の侵害部分については、この高等裁判所でやるという前提はそのように考えております。

○伊藤座長 そこは一応問題点の認識を今共有したという段階ですから、技術的にどういう解決があり得るかも含めて今後議論しましょう。

○近藤参事官 問題点の1つに、看板論ということで今、議論がされていまして、知財高裁ができれば、それが看板として内外に対して、日本が知財に非常に取り組んでいるというイメージだと。その前提自体がそれでいいのかどうかということについても確認をしなければいけないと思います。
 それは、アメリカのCAFCの時に議論されて、結局、特別裁判所ということについては見送られて否定されたわけです。それを1982年、否定されたものについて、日本が今度採用するということになった場合に、特にアメリカから見た場合に、日本は進んでいるというふうに見られるのかどうかというのが私はちょっと気になるところなので、そこがメインだということだとすれば、それについて確認をしておかなければいけないのかなという気がしております。

○伊藤座長 よろしいですか。それでは、これはなかなか難しいところで、御意見が尽きないと思いますが、関連する問題が1つだけございまして、例の無効審判の廃止の件ですが、これまでの御意見を伺っていますと、無効審判を廃止するということについては消極の御意見が多かったように思いますので、知財高裁の問題を今後議論していく場合に、一応、無効審判の廃止ということについては、それについて消極であることを前提にして、議論を進めていってよろしいですか。

○飯村委員 侵害訴訟と無効審判の一元化の問題は、まだ議論する機会があると思いますので、その機会に改めて意見を述べたいと思います。我々は、長年苦労して、侵害訴訟の中で、より広い、より質の高い紛争解決機能を実現するように図ってきましたし、そのような方向を目指して制度設計をしたいと思っています。その中で、新無効審判制度において、いつまででも、だれでもできるという制度が望ましいかどうかということについての議論の場をもう一回設けていただければと思います。

○阿部委員 全く同じです。無効審判を廃止するという話だったら、今度は地裁を含めたところの知的財産裁判所を考えるべきだと私は思っています。無効審判は残すことにしたからこそ、知財高裁という議論が成り立つと思います。

○伊藤座長 それでは、今出ました御意見を前提にして、知的財産裁判所の問題について、更に事務局で検討をして、お諮りをすることとしたいと存じます。他に特にございませんようでしたら、これで第10回の知的財産訴訟検討会を閉会させていただきます。
 次回の日程につきましては、事務局からお願いします。

○近藤参事官 本日は時間を過ぎまして、申し訳ございません。次回、第11回の本検討会は9月4日木曜日、午後1時半から5時まで、侵害行為の立証の容易化のための方策についての2巡目の検討を、同じくこの会議室で予定しておりますので、よろしく御参集のほどお願いいたします。

○伊藤座長 どうも長時間ありがとうございました。

(以 上)