<資料1・7頁から8頁のA案・B案・C案・D案に関して>
○弁護士会では、C案が多数の意見であった。当事者に見せると秘密がもれる。D案については意見が分かれ、その専門家については、適切な者がいないのではないかとの意見があった。
○B案を推奨したい。最終的には裁判所が判断するとしても、申立人側が、営業秘密の特性や技術の難易度・重要度等を考えて、提示を受けるべき人の範囲について意見を言えるのでフレキシビリティが高くなる。基本的には訴訟代理人だけで足りることが多いと思うが、それだけでは不十分で、高度な技術が問題になるようなケースでは、第一級の技術者を立ち会わせなければいけないこともありうるのでフレキシビリティの高いB案がよい。
○B案がよい。インカメラ審理における裁判所の判断には不服を申し立てられるのか。
●独立の不服申立ては認められないと思われるが、文書提出命令の申立てについての決定に対しての不服申立てはある。
●B案において、証拠として提出された文書についてもA案の③と同様の秘密保持命令を課すことが考えられるが、これについてはどうか。
○営業秘密が争点の大部分となるようなケースでは、証拠として提出された文書についてもA案の③と同様の秘密保持命令を課すとすることがよい。
○A案③について、秘密保持命令を出して違反した者には罰則を課すという案はこれでよいと思うが、これは検察官が訴追して公開法廷で裁判をすることになるのか。その場合、そこで営業秘密が出てしまうと考えてよいか。
●営業秘密を出していいかどうかについては、例えば親告罪にする等、工夫の仕方がありうると思う。
○刑事訴追について、たしかに検察官が公開の法廷で立証することにより秘密が漏れてしまうかもしれないが、裁判所が秘密保持命令を出していて、この違反が外形的にわかるような場合であれば、第三者に秘密がわかるような形での立証を避けることができるように思う。その意味で威嚇要素はあると思う。
○正当理由の判断における利益衡量の要件を挙げているが、これは現行の実務に変更を来すと考えてよいか。
●委員から正当理由を書き下すような意見を頂いていたので①から④のように検討したが、書き下すことが難しいし、わかりづらくなるのではないかと思っている。
○特許法105条に正当理由とあることと民訴法の特則であることとの整合性及び立法の趣旨から、営業秘密であるということだけでは正当理由にならない。特許権侵害訴訟でいえば、侵害しているかどうかだけを見て判断している。非常に細かい話をすると、侵害かどうかだけで判断してよいかどうかわからなくなる。実際には事件がきてみないとわからないところもある。また余り細かく立法するとわかりにくくなる。
●現行の実務では、正当理由の判断について、侵害かどうかを一つの指針として判断していることは、第6回にも御紹介いただいたが、他方で、産業界からの意見にもあるように、侵害しているかどうかの判断をインカメラでなく、訴訟の場面で問題にするようにしてほしいというのが、ここでの問題意識であったと思う。したがって、侵害かどうかを基準にして正当理由を書き下すことも難しい。
○現行の実務の運用では、営業秘密は正当理由に当たらないようにしていると聞いたことがあるが、そうであれば、現行実務はA案に近いものになるのではないか。
○A案は、正当理由から営業秘密を除外することを宣言するものであり、現行の実務は、営業秘密であれば提出を拒めるというのが民訴法にあり、この特則だから、営業秘密があればそれだけで提出を拒めるものではないといっている。したがってA案と現行実務には大きな違いがある。
○被告の独自技術に関する書面が文書提出命令の問題となる場合、現行の実務では、裁判官が非侵害の心証を抱くと、文書は出ないことになり営業秘密は守られるが、仮にこの実務が変わってくると、侵害していないような場合でも被告は独自技術を提出しなければならないことになり、独自技術にかかる営業秘密が守られないことになるが、産業界はそれでよいのか。
○この話は9頁②に書かれている、その訴訟においてその文書の提出を必要とする事情に、侵害かどうかの判断も含まれるということである。それ以外の要素も含めて比較衡量するということになるので、①から④の要素が正しいかどうかは別にして、正当理由が②の要素だけで決まるわけではないということは正しいことだと思う。
○産業界としては、証拠を出す方に重きを置きたいと考えている。またC案に対する意見として、訴訟代理人に任せておけないということを言っているわけではなく、代理人から自信がないと言われることがあるのでそれではまかないきれないと考えている。
○A案は営業秘密の保護が手薄になるので、B、C、D案の方が優れていると思う。またフレキシビリティの面からB案がよい。またB案の注2についても必要。第三者の専門家については、調査官は現行でもインカメラに入っていると思うが、専門委員は入れるかどうかクリアではない。これについては制度利用者からの賛同がなければあえて入れる必要はないと思う。
○産業界としては、被告の立場に立たされた場合に営業秘密を出すことになる懸念もあるが、営業秘密を出すことで非侵害を立証しやすくなるはずである。そのために秘密保持義務を含めたプロテクションをかけてほしい。
○B案が、C案の訴訟代理人やD案の専門家を立ち会わせる場合もありうるのであれば、この案がよい。また誰を立ち会わせるかについては、裁判所の判断にゆだねるということでよい。
○B案がフレキシビリティがありよいと思う。C案で、原則として訴訟代理人が立ち会うこととして、裁判所が裁量でその他開示を受けられる者を決められるとすることも考えられる。正当理由の比較衡量の要素についてはもう少し検討したい。
○専門家については、B案の中で、両当事者が立ち会うところに、さらに必要な場合に専門家を立ち会わせるとすることがよい。
○これはクリティカルな論点ではないと思うので、ユーザーがやりたい方向でやってみればいい。ただ、議論を聞いていると原告側に偏っていると思う。秘密保持命令については実効性に問題があると思うし、罰則についてどの程度のものを考えるかという問題もある。制度については同じような目的を達するのであれば、できるだけ単純な方がよい。裁判所を信頼しないと紛争は絶対に解決しない。その意味で裁判所に対する不信を払拭する方策を考えればよい。裁判官のそばに相談できる人がいればかなりの問題は解決できるはず。秘密保持命令を受けて刑罰の威嚇のもとで生きていくというのもどうか。こだわりはないが、B案とD案は質的に違うし、達成される目的も余り変わらないと思うので、混ぜない方がよい。達成度が同じでコストがかからないのがD案であり、コストはかかるが当事者にとって頑張ったと感じられるのがB案だと思う。
○秘密保持命令は日本では余り機能しないと思うのでA案はよくない。ある程度、裁判所に裁量を与えるべきと思う。当事者が見たくないということもあるはずである。またD案をプラスしてもよい。当事者が見たくないというときに弁護士だけでは不安なので、場合によっては裁判所の裁量で他の専門家を立ち会わせるという道を残しておいてもおかしくない。その意味でB案がよい。D案のイメージは何らかの専門知識をもった第三者というもの。第三者を入れるための資格や手続については改めて考えなければならない。
○B案がよい。
・ 以上の議論の結果、B案を支持する意見が多く、さらにB案に加えて専門家を立ち会わせうるとする案を支持する意見もあったので、これらの意見を中心に、更に事務局で議論を整理することとなった。
<秘密保持義務が存続する期間について>
○弁護士会ではロー2案が妥当と考える意見が多数であった。ただし秘密保持義務を取り消す制度が必要。
○ロー2案がよいと思うが、期間が不安定になるという不安がある。そこで、ロー1案により一定期間の秘密保持命令をかけて、この期間の終了時に依然として営業秘密の要件を満たしているときは、延長命令をするという考えもありうる。
●ロー2案で取消制度を採用した場合、秘密保持命令を課された者は、秘密管理性が失われたことを知ることができないので、取消しを申し立てることができず、なお問題が残るのではないか。
○そもそも営業秘密は他人が知ることができないものなので仕方がない。これをクリアにするためには一定期間にするとか裁判所が定めるしかない。ロー2案がよいと思うが、問題は、営業秘密でなくなったときに第三者はすぐにその秘密を使えることになるが、秘密保持義務を課されている者は、義務を取り消すための手続が必要になることである。
○営業秘密を管理する本人に管理の一環として期間の延長を請求させるようにした方が考え方として整合性が取れていると思う。
○第三者に対しては何もしないでも営業秘密として守られているのに、秘密保持義務を課していた相手にだけはわざわざ延長手続をしないと営業秘密を利用されてしまうとするとアンバランスが生じるのではないか。
○手続を取らないでも、秘密保持義務から解放される方がよい。その場合は不正競争防止法の三要件で判断すればよい。
○第三者からわかるのは営業秘密の三要件のうち非公知性の有無だけなので問題ではないか。
●刑罰を前提にすると明確性が必要である。秘密保持命令の位置づけを、不正競争防止法と同様の考え方で刑罰を課すとするのか、裁判所の命令違反ということで刑罰を課すのかについても検討する必要がある。
・以上の議論の結果をふまえて、更に事務局で法制的な検討も含めて議論を整理することとなった。
○弁護士会としては、13頁の枠囲いの案でよいという意見である。ただし、③において再び公衆を入廷させたあと、営業秘密の保護に差し障りのない範囲で知らしめる手続があった方がよいという意見であった。
事例としては、職務発明の訴訟において、発明に至る経緯や発明に対する企業と発明者の貢献を認定する手続で、証人尋問を経験したが、場合によっては営業秘密にかかわってくることもあるので、非公開審理が実現すればかなり助かると思う。
○人事訴訟法では類似の制度ができており、一定の限定があるが、これと比較したときに、営業秘密の場合、およそ営業秘密に当たるものであれば全部について非公開審理が要求されるものか、営業秘密の中でも特に限定するなり、類型化できる性質のものかどうか。
○経団連のアンケートでは、どのような営業秘密が訴訟において開示されると困るかということについて、大きく3つの意見があった。一点目は製造ノウハウ、2点目は退職者が営業秘密を持ち出して競争会社に持ち出されたような場合、3点目は損害賠償請求において請求金額を立証するために譲渡数量×特許権者の利益額という算定式を使おうとする場合の自らの利益額について、開示されると困るという意見であった。1番目、2番目のような技術的な営業秘密であって、会社の存立にかかわる、あるいは事業に多大な影響を受けるような場合に非公開にすべきではないかと思う。
●これまでの意見を聞いて、特許の侵害訴訟や不正競争防止法において、営業秘密が問題となることが多いということはわかったが、職務発明については、訴訟類型として問題となることが多いと言えるのかどうか。例えば文書の形で提出して文書に閲覧制限をかけることで対応できるのではないか。
○職務発明の補償金請求事件は、その時点まで内々でやっていたことをすべて暴くという面がある。類型とまで言えるかどうかわからないが、交渉経緯があるので、書証だけでしのぐのは困難である。
○産業界に聞きたいが、非公開審理を必要とする手続としては、人証と書証で違いがあるのか。
○各ケースを十分に具体的に検討できていないので、現段階では意見を控えさせてほしい。場合によっては、書証の場合も非公開が必要になることがありうるかもしれない。検討させてほしい。
○人事訴訟法でも当事者尋問等の場面で類型的に必要になるとして、それを念頭においた規定を置いている。それ以外の場面で公開停止ができないという趣旨ではなく、そこで公開停止をするかどうかは憲法82条の解釈でやることになる。ここでは類型的に予想されるものについて、憲法の規定のもとで要件と手続を明確にするという趣旨である。
●書証の場合にも問題になりうることがあるかどうかという観点ではなく、類型的に問題になることが多いことから特別に規定を設けた方がいいかどうかという観点から検討してほしい。
○ここで考える類型は、規定をつくるときの要件のことか、それとも訴訟類型のことか。例えば閲覧制限のような考え方、営業秘密が尋問の中で発問等されるということだけでは足りないのか。
●13頁の(1)の2つめの○と(2)の最後の○にそれぞれで類型のことを書いているようにそれぞれで問題になると考えている。
○(1)の類型としては、人事訴訟の議論では、どういう場面で非公開審理が求められるのか、具体的に、夫婦間の著しい異常な性生活といった事例を考えて、これを要件化するために抽象的に表現していくと、私生活であって公開の法廷で陳述することによって社会生活に著しい支障が生じるおそれがあるというように要件立てにつなげていった。(2)の訴訟類型については、憲法論との関係で公の秩序とどのように結びつくのかが問題になる。人事訴訟は身分関係の形成と確認という人事訴訟という特有の性質で切り出すことができるということになった。ここでも憲法論との関係で公の秩序との関係についても考える必要がある。
・ 以上の議論の結果、更に事務局で議論を整理し、引き続き議論することとなった。