- (1) 知的財産戦略本部・権利保護基盤強化に関する専門調査会(第4回)について、内閣官房知的財産戦略推進事務局土井俊一参事官より、配布資料に基づいて知的財産戦略本部・専門調査会(第4回)の議論の概要について説明があった。
- (2) 侵害訴訟と特許無効審判の関係等、知的財産訴訟における専門的知見の導入、侵害行為の立証の容易化のための方策についての検討
- ① 事務局から、資料1に基づいて侵害訴訟と特許無効審判の関係等について説明がされた。その後、次のような質疑応答及び協議がなされた。(○:委員、●:事務局)
- ○ 産業界としては、紛争の一回的解決を図るという観点から、無効審判の遮断と明白性要件の撤廃を提言してきた。ここで提示されたものは、無効審判を請求可能とするが、最も大事な点である明白性要件は撤廃するものであり、その意味では、感謝したい。判断齟齬については、特許庁と裁判所がうまく連携すれば、抑制効果が期待されるのではないか。実務的には、特許無効審判を早期に審理することや、裁判所の裁量により訴訟手続を中止することについて、特段の配慮をお願いしたい。全体としては、この案を支持したい。
○ 紛争の一回的解決を図る方法としては、特許無効審判を速やかに実施し、それを踏まえて侵害訴訟での審理を行う方法と、特許無効審判を遮断する方法の2つがある。後者をとって、侵害訴訟において無効事由が存することで請求を棄却すれば、判断のぶれが生じて紛争の解決能力が低下し、迅速な解決がなされないことを懸念する。運用面では、裁判所における迅速な審理が犠牲にならざるを得ないが、ユーザーがそのような不利益を甘受してもいいということなのか、改めて確認したい。
○ この案は全体としてのメリットはあるので、多少のデメリットについては、受け入れざるを得ない。
○ 我々が主張している紛争の一回的解決とは、裁判所において全てを解決するという意味ではなく、当事者間で実質的に手戻りしないという意味である。この案を支持したい。
○ 現状よりも評価される案だと思う。ホームページ上での判例検索については、検索し易い形でできるだけ早い実現をお願いしたい。進行調整についても、効果が上がることを期待したい。
○ 以前から、乙案がバランスのとれた案であると言ってきており、乙案をベースとしたこの案を支持したい。無効審判の早期審理については、現状でも、早くなってきているが、今後も、審理期間の短縮に努めたい。情報の共有については、裁判所とも連携をとって実効性のある運用に努めたい。
○ 公定力との関係では、今まで傷がなかったところに傷をつけるものであり、大きな懸念があるが、それを含みおいてユーザーが賛成するならば、宜しいのではないか。今回の改正は過渡的なものであり、そのうち、抜本的な改正がなされるのではないか。法文化された後に、この問題を理論的にどう整理するのかは別途検討されることになろう。
- ② 事務局から、資料1に基づいて知的財産訴訟における専門的知見の導入について説明がされた。その後、次のような質疑応答及び協議がなされた。(○:委員、●:事務局)
- ○ 裁判所調査官の給源については、特許庁審査官・審判官、弁理士を中心としてとされているが、民間からの登用は当面は考えないという理解でよいのか。
● 今後の運用として、民間からの登用があり得ないという趣旨ではなく、問題がなかろうということになれば、それもあり得ると思う。
○ 公務員以外の給源については公募という形になるが、弁理士資格者に限るという制限はなく、その時々の情勢で民間からの登用もあり得る。
○ このレジュメに盛り込まれている事項は法律事項になるという理解でよいのか。
● レジュメ全体を通して、大きな文字で記載している事項は、法律事項になるであろうと考えている。
○ 全体としてはこの案に賛同したい。一点、調査官の認識と当事者の認識の共有化については、4頁の注1のように調査官が1(1)〜(3)の権限を行使する場合に限らずに、もう少し広く認識のずれを是正する方策をとるべきではないか。
● ご指摘の点は、この課題についての最大の論点だった。調査官の報告書の開示によって、かえって混乱を招いて審理が遅延するのではないかとの指摘もあり、注1のような形で落ち着いた。懸念はよく理解できるので、今後、運用面で考慮していくことになるのではないか。
- ③ 事務局から、資料1に基づいて侵害行為の立証の容易化のための方策について説明がされた。その後、次のような質疑応答及び協議がなされた。(○:委員、●:事務局)
- ○ 秘密保持命令違反の罰則については、親告罪とすることは考えていないのか。
● 親告罪を念頭に検討している。
○ 公開停止については、どの法律で規定することを考えているのか。不正競争防止法、特許法、実用新案法は対象になり得ると思うが、意匠法、商標法、著作権法についてはどうなのか。著作権であってもプログラムのソースコードに関するものは、公開停止の対象になり得るのではないか。
● どの範囲で立法するのかは大きな問題である。不正競争防止法、特許法、実用新案法については公開停止の対象となり得るというのが、この検討会の主な意見であったと認識している。それ以上に対象を広げると、立法事実がなかなか見つからないということもあり、立法しづらくなるのではないか。ただし、今回立法化しない訴訟類型であっても、憲法で許された範囲内において、公開停止することは可能である。
○ 秘密保持命令の名宛人は自然人とのことだが、当事者が法人の場合は訴訟に関わる者は変わり得る。その場合は、秘密保持命令の発令について追加の手続をとるとの趣旨と理解してよいか。
● ご指摘のとおり。
○ 刑事手続において秘密保持命令を課すことは考えていないのか。
● ここでは民事手続を念頭に議論してきた。刑事手続は考えていない。
○ 秘密保持命令は一般的な形での規定をするのか。
● 秘密保持命令についてはインカメラ手続の整備との関係で議論が進んだという経緯がある。特許法や実用新案法と同じように、意匠法、商標法などにもインカメラ手続の規定があるので、秘密保持命令については、公開停止よりは広い範囲で規定することを考えている。
・ 以上の議論の結果、侵害訴訟と特許無効審判の関係等、知的財産訴訟における専門的知見の導入、侵害行為の立証の容易化のための方策について、事務局から提示された改正の方向性について、委員の意見の一致をみたことから、今後は、この改正の方向性を踏まえ、事務局において、更に立案作業を進めることとなった。