○ いろいろな議論をしたことで,マスコミにも大々的に取り上げられ,それによって国民の知的財産制度に対する意識の高揚を図ることができた。知的財産高等裁判所についても,今回のような結果になったので,職分管轄の問題が生じることもなく,非常に結構な改正になったと思う。ただ,これだけマスコミに取り上げられたため,上滑りになることが心配である。今後も引き続き努力をしていただきたい。
○ 実務家にとっては,できた法律の運営,運用に協力していくことがきわめて重要である。すぐに使い勝手のいいものにするのは難しいかもしれないが,できるだけ合理的で,審理に資する制度になるように来年4月1日の施行に向けて協力したい。
○ 会社の中でも改正内容の勉強会を行っているが,ダイナミックに変わっており結構だという意見がほとんどである。今後,知的財産に関する問題がスピーディに解決されることを期待する。
○ 知的財産の分野では,産業界のパワーをうまく受けとめて上手に制度に活かしているように感じた。他方,行政事件訴訟については今後も引き続き検討するようであるが,企業活動の桎梏になっているのは行政規制であるのに,純粋に公益に関わる制度は,産業界があまり関心をもっていないため,ダイナミズムにやや欠けているところがある。ぜひ産業界にも関心をもっていただいて後ろから押していただきたい。
○ 今回の改正はどの論点も議論が多かったので,当初はどうなるかと思っていたが,いろいろな意見が出され,結果として制度ユーザーのニーズにこたえるものになったことは,特許庁としてもうれしく思っている。今後の運用も重要であるので,例えば,侵害訴訟と無効審判との連携について,裁判所と協力しつつ円滑に運用していきたい。また,侵害訴訟の係属中に請求された無効審判については請求から9か月を目標に早期に審理するように運用していきたい。
○ 大変すばらしい改正法が成立したことをうれしく思っている。一番大事なことは,この場で行われた議論が,改正された後,現場で活かされることだと思う。例えば,無効主張の関係の規定や,営業秘密の保護の関係の規定が,現場で正しく活かされることが大事であるので,皆様の支援をお願いしたい。
○ すべての論点について,満足いくような意見が出され,それが法律に反映されたことを有り難く思っている。司法制度改革審議会の意見書に盛り込まれた民事訴訟の改正等とあいまって知的財産の訴訟関係が改善されたことは,訴訟制度を運用する立場の者として望ましいことと思う。今後は,それぞれの論点について趣旨を無にしないような形で発展させて運用していきたい。法律の施行はまだであるが,すでに実務では改正内容をふまえた進め方をしている。制度を運用していくと問題に当たることが多いが,それを乗り越えて,できる限り,迅速性,透明性及び技術的専門性のすべてを満たすような知的財産訴訟にしていきたい。
○ この検討会で検討された結果が全会一致で可決されたことは非常に画期的なことである。ここで真剣に議論されたことが立法府を含め各方面で高く理解,評価されたということである。知的財産高等裁判所が創設されたことは非常に画期的である。これが,権限拡大された裁判所調査官や,今年の4月から施行された専門委員とあわせて,人事や予算の面でも立派な裁判所になることを期待したい。営業秘密の保護強化や紛争の実効的解決についても新しい制度を活用して,知財の特性に応じた,適切な訴訟運営によって充実した審理がなされることを期待したい。
○ この検討会でしっかりした議論が真剣になされた結果として,合理的な制度ができたように思う。今回の改正について,この2か月間,社内の10か所の工場,研究所,営業所をまわって説明をした。一番影響が大きいのは,証拠収集手続の拡充の点だと感じている。今回の制度がうまく運用されることを期待したい。裁判所の訴訟指揮や特許庁の行政手続において,力を入れてわかりやすい指導をしていただきたい。
○ 裁判所調査官の権限が明確化され拡大されたことはよいことであるが,他方,従来から問題視されていた手続の透明性がこの改正で解決されたかどうかについては疑問がある。この点,当事者の忌避権で十分であるというような意見もあるが,これについても疑問がある。また専門委員に課されている厳しい要件を裁判所調査官にも何らかの形で課すべきどうかについても,解釈論等で考えていかなければならないように思う。秘密保持命令や証拠収集手続については,これらが問題となるのは必ずしも知的財産訴訟に限ることではなく,民事訴訟一般において問題になりうることであるので,今後考えていきたい。
○ 知的財産の分野では,権利取得でも国際的に問題を考えるし,裁判についてもどこの国で裁判をするかということを考える。従って各国の裁判所の競争状態がより強くなると思われる。日本の裁判制度を外国と同じものにする必要はないが,諸外国の裁判制度についての検討が今後ますます重要になってくるように思う。
○ 外国法制研究について,これまでこの分野では断片的には調査,研究されていたが今回のようにまとまった形で総合的に調査,研究されたことは初めてのように思う。今回の二つの法律が落ち着きのよいところにまとまったことは基礎的作業を担当した者として大変喜ばしいことである。法科大学院においても,多数の人が,将来,知的財産に関する仕事に就きたいと言っており,すそのが広がっているように感じている。
○ 今回の改正内容をみると,アメリカやイギリスの制度と比較して,似ている点と似ていない点があり,我が国の制度としてきちんと機能させる観点から慎重な検討がされたように推察される。私も裁判所調査官の関与のしかたの透明性については若干の疑問がある。事案や関与のしかたは千差万別であるので,制度とするのは適切でないかもしれないが,今後の運用の中で透明性を可及的に高めるようなガイドラインができることを期待したい。
○ 知的財産高等裁判所設置法については,日本の司法制度と連続性のある形で,しかもバランスよく,ニーズにもこたえているように思う。米国では,CAFCについて,設置後20年ということで学者の間で議論がされているが,最近では肯定的な評価が多いようである。日本の知的財産高等裁判所についても,10年後,20年後にも肯定的な評価になることを期待したい。紛争の実効的解決については,今後の解釈についても研究もしていきたい。
○ 今回の改革は,民事手続法一般においても非常に大きな意味があるように思う。例えば,秘密保持命令については,5年前であれば,学者の間の議論はあったが,制度として日本で実現することを予測した人は少なかったように思う。新しい制度や手続をつくる場合,我が国では乗り越えなければいけない多くの問題があるが,今回,可能になったということは,立場を超えて社会の共通認識となっていることが前提になっているように思う。今回の改正は,検討会委員の御尽力,外国法制研究会研究員の御協力のうえに実現できたものと思う。新しい制度が合理的な形で運用されていくために理論家としての視点から様々な提言をしていくための研究を行っていきたい。