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知的財産訴訟検討会(第3回) 議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日 時
平成14年12月24日(火) 13:30 〜17:00

2 場 所
司法制度改革推進本部事務局第2会議室

3 出席者
(委 員)
伊藤眞座長、阿部一正、荒井寿光、飯村敏明、小野瀬厚、加藤恒、
小林昭寛、櫻井敬子、沢山博史、末吉亙、中山信弘(敬称略)
(ヒアリング対象者)
吉田稔氏、安川勤氏、村木清司氏、藍谷邦雄氏、小林昭寛氏、定塚誠氏
(事務局)
古口章事務局次長、近藤昌昭参事官、吉村真幸企画官
(関係省庁・団体)
法務省、最高裁判所、特許庁、日本弁護士連合会、日本弁理士会

4 議題等
(1)ヒアリング
・共同カイテック株式会社 代表取締役社長吉田  稔 氏
             同社 特許担当安川  勤 氏
・日本弁理士会 知的財産制度改革推進会議副議長 村木 清司 氏
・日本弁護士連合会 知的財産政策推進本部事務局長藍谷 邦雄 氏
・特許庁 審判部審判企画室長小林 昭寛 氏
・最高裁判所 事務総局行政局第一課長定塚  誠 氏
(2)協 議
・本検討会の今後の進め方
(3)その他

5 議 事

○伊藤座長 それでは、定刻でございますので、第3回の「知的財産訴訟検討会」を開会いたします。年の瀬の御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日の検討会では、初めに日本商工会議所から御推薦いただきましたベンチャー企業の共同カイテック株式会社の吉田社長より、知的財産訴訟に関する御意見等を聞かせていただき、質疑の時間をお取りする予定です。吉田社長におかれましては、御多忙のところ、私どもの検討会のために貴重なお時間を取っていただきまして、心からお礼を申し上げます。
 また、吉田社長の下で知財関係を担当されておられる安川さんも御一緒していただきまして、ありがとうございます。
 その後、引き続きまして、関係機関等から知的財産訴訟の現状、課題、その解決策等につきまして、御発表いただきます。
 まず、日本弁理士会及び日本弁護士連合会の方から、制度利用者の代理人のお立場から話していただき、約15分休憩を取りまして、その後、30分ほど質疑応答を行います。
 その後に、制度運用者のお立場から、特許庁及び裁判所に御説明をお願いしております。両機関の説明終了後、やはり30分程度質疑応答の時間をお取りする予定でございます。
 最後に第1回及び第2回に続きまして、本検討会の検討テーマについて、若干協議の時間をお取りする予定でございます。
 それでは、まず事務局から本日の配布資料の説明をお願いいたします。

○近藤参事官 それでは、本日の配布資料を御説明します。
 まず資料1としまして、共同カイテックの吉田社長から御提出いただいた資料でございます。
 資料2といたしまして、日本弁理士会御提出の資料でございます。
 資料3といたしまして、日本弁護士連合会御提出の資料を配布させていただいております。
 資料4といたしまして、特許庁御提出の資料でございます。
 資料5は、最高裁判所御提出の資料でございます。
 資料6といたしまして、「知的財産訴訟外国法制研究会 メンバー・開催日程」と題したペーパー。それから、第1回目の検討会の議事録を席上に配布しております。
 それから、この4月以降の日程についての検討会開催予定案というものを席上に配布させていただいております。これは一番最後のところに触れたいと思います。資料としては以上です。

○伊藤座長 皆さん、お手元の資料よろしゅうございますか。もし、よろしければ、早速でございますが、ヒアリングに入りたいと存じます。
 まず、日本商工会議所から御推薦いただきました共同カイテック株式会社の吉田社長、安川さんにお願いしたいと存じます。どうぞよろくお願いいたします。

○吉田氏 本日、意見を述べさせていただきます共同カイテック株式会社代表取締役の吉田でございます。よろしくお願いいたします。
 私の方からは、本日、意見陳述するその背景について簡単に御説明させていただいた後、特許担当の安川の方から、具体的な例について意見陳述させていただきたいと思います。 私どもの会社は資本金3,000 万円、従業員230 名の中小企業でございます。事前に配布させていただいた会社案内には、授権資本金1億2,000 万円と書いてございますが、払込みは書いてございません。リクルート用でございますので、実際は3,000 万円でございます。
 私どもでは、建築関係に属します3つの製品グループの製造、販売、施工を行っております。
 1つは、OAフロア、これはここにも入っているかと存じますが、床の中に配線や、配線器具を収納するための特殊な床材でございます。
 2番目がバスダクト、これは大きな建物の電気幹線、電気を配分する特殊な電気幹線です。
 3つ目が、屋上緑化。これは今、東京都も条例で奨励しております屋上緑化の製品でございます。
 いすれも当社の事業方針による3つの条件にかなったものです。私どもの事業方針と申しますのは、1つに、自社で開発した製品を販売する。
 2番目が、自社ブランドで全国、できれば世界に販売したい。そして、シェアNo.1を目指したいというコンセプトの事業を中心にやっております。
 そして、このコンセプトを実行していく上で大切なことは、自社で開発した特徴のある製品、技術を、他社にまねされないように特許で保護するということが非常に重要になってまいります。
 現在、3つの事業部で国内出願の特許、実用新案、意匠の出願中及び登録済みの件数が153 件、外国出願が同じく24か国で22件、合計175 件の出願及び登録済みとなっております。 これらの当社の特許等に対して他社からの侵害による係争が過去10年以内で21件になっております。このうち侵害警告件数が17件、訴訟件数では4件となっております。そして、これらの経験の中から本日意見を述べさせていただきたいということでございます。
 これらのうち、警告の1件を除いてはすべて当社のフロアシステム事業部、いわゆるOAフロアに関するものであります。この背景について御説明させていただきます。
 1980年の半ばくらいから、オフィスの中にパソコン等のOA機器が普及いたしまして、その配線や配線器具を床に収納するという、いわゆるOAフロアが注目を集めてまいりました。当社は1986年にこの業界に参入いたしました。17〜18年前でしょうか。
 そして、当社が自社開発したOAフロア、商品名ネットワーク・フロアというものですが、これはそれまでに日本はもちろん、世界にも例を見ない大変ユニークな構造、機能を持った製品として急速に市場に普及してまいりました。特に既設のビルのリニューアル工事には大変強く、圧倒的なシェアを持つようになっております。官民いずれの実績も大変多くの実績を持っておりまして、霞が関の中央官庁さんのリニューアル工事では50%以上の仕事をやらせていただいております。
 司法関連でも、最高裁始め、各高裁、地裁等でいろいろお使いいただいております。
 また、東京の弁護士会館ビルの中でも、東京第一弁護士会のフロアには私どもの床が使われております。
 このような背景の中、1980年代後半から1990年代にかけて、多くの企業がこの業界に参入し、最盛期は50数社が乱立するような業界になりました。その中で私どもの製品の評判を見聞きした同業他社、多くは大手企業でございますが、同じようなコンセプトの、同じような製品をつくり始めたところから、前述の警告や訴訟が多発するようになったわけでございます。
 私どもはこれらの係争を通じて、日本の工業社会の中での物まねの風潮と言いましょうか、そういったものに憤りを感じるとともに、特許制度、それに関する司法制度にもいささかの意見を持つようになったわけでございます。それらの点につきましては、4つの係争事例をこれから、特許担当の安川の方から御説明し、私どもの意見を述べさせていただきたいと思います。
 それでは、安川の方から御説明させていただきます。

○安川氏 特許担当の安川と申します。よろしくお願いします。
 先ほど説明がありましましたように、レジュメの方なんですが、まず、前置きとしまして、レジュメの簡単な説明をいたします。12ページほどのまとめた資料でございますが、まず最初に表紙と、あと具体的に当社が経験した訴訟の事例、これが4件ほどあります。最後に、その事例における当社の意見とか問題をまとめたものを最後の11ページからなりますが、最後の方にまとめてあります。
 今回の知財検討会の検討項目の1つであります侵害訴訟における無効の判断と無効審判の関係等に関する検討という検討項目が挙げられていると思うんですが、それに今回、当社の訴訟事件が該当するのではないかというふうに考えております。
 先ほど申しましたように、当社の訴訟事例は4件ほどありまして、これらはいずれも同業他社における当社保有権利の侵害事件が発端になっております。
 まず最初の事例1と2は、侵害訴訟の事件であります。事例3と4は、審決取消訴訟の事例です。各事例については、ポイントと当社の問題提起を説明させていただきます。 その後、最後に、先ほど言いました11ページのまとめで、事例1〜4に基づいて、問題点の趣旨、理由、対策案を述べさせていただきます。
 最後に結論としまして、当社の意見を3つ述べさせていただきます。大変恐縮なんですが、この検討資料なんですが、できる限り内容を具体的に記載しましたので、今回、短い時間で全部説明するのは非常に酷なものですから、要点だけ説明させていただきたく、その点は御了承お願いします。後ほど質疑応答があるということなので、具体的な内容については、そのときに恐縮ですが、お願いします。
 本題の方に移らせていただきます。事例についてなんですが、まず2頁目にあります事例1の方ですが、当社の実用新案権をA社が侵害した事件で、当社が侵害警告後、和解に至らず地裁に提訴した事例であります。
 地裁では無効論と侵害論の準備手続が行われ、中間判決で侵害となった事件であります。その後、損害論の準備手続が行われましたが、損害論中に、A社が特許庁へ無効審判を請求し、無効審決が確定されてしまった。このため裁判所は無効を否認していましたが、結局、和解勧告となったという経緯でございます。
 しかし、地裁の侵害認定、無効否認がありましたので、当社としては、納得ができない状況でありまして、結局、高裁の方へ審決取消訴訟を起こした状況です。この際、審決取消訴訟を起こした後、A社の方から和解の提案があり、その和解条件によって、和解となり決着いたしました。
 この事例の問題提起としましては、まず第1に、無効審判が繰り返して行われ、訴訟が長期化した。
 もう一点は、侵害であるにもかかわらず、損害論と無効論若しくは無効審判とは同時審理されまして、審理がちょっと混乱したということであります。
 第3に、地裁で無効否認があったんですが、特許庁の無効審判で具体的、かつ明確な理由づけが余りはっきりしない状態で無効にされてしまったと。
 第4に、被告は損害論における証拠資料を小出しに出しまして、時間稼ぎをして、訴訟を長期化させられた。その時間稼ぎの間に、特許庁の無効審判を請求してきたということでございます。
 第5番目に、結局、裁判所の方から安い和解金で和解勧告がされたということでございます。
 補足としまして、この事例1は、過去にA社以前にX社からも無効審判が起こされておりまして、このときは無効理由なしといった形で有効性が認められておりました。
 結局、トータルで考えますと、裁判所が無効と思えばトータルで3回無効審理が行われているという実態であります。
 訴訟期間は約2年4か月ほどかかりました。訴訟費用は約300 万円以上はかかっております。最終的には和解をしております。
 次に事例2ですが、これは当社の特許権をB社が侵害した事件で、当社が侵害警告後、和解に至らず地裁に提訴した事例でございます。
 地裁では無効論と侵害論の準備手続が行われ、準備手続の最後に裁判官により実質的に侵害が認定されましたが、その際、和解勧告がありました。その際、構成要件にすべて含まれるということで、侵害を認定されたと解釈しておるんですが、無効の可能性も十分あるということを言われ、和解を強く勧められました。
 この事例の問題提起としましては、結局、明確な結論が出ないまま、安い和解金で和解という形になりました。
 2番目に、当初の訴訟代理人が弁理士と弁護士の二人おりまして、訴訟費用が高額となりまして、結局、金銭的なメリットはございませんでした。
 補足としまして、この事例2では、短期間で裁判の審理がされましたが、それだけ早く和解をさせられてしまったというふうにも解釈できるし、訴訟期間は約1年半で、訴訟費用は約500 万程度かかっております。
 最終的には和解しております。
 次に事例3の方なんですが、これは当社の実用新案権をC社が侵害した事件で、当社の侵害警告後、和解に至らず、C社が特許庁へ無効審判請求をし、2回目に無効になった後、当社がその無効審決を不服として、その取消しを求め、高裁へ審決取消訴訟を提訴した事例でございます。
 高裁では、無効理由の蒸し返しになるかどうかということが争点になり、現在、判決を待っている状態です。
 この問題提起としましては、やはり無効理由の繰り返しとか蒸し返しということで侵害事件を長期化しているのではないかというふうに考えております。
 補足としまして、事例3では、現在4年目になっておりまして、まだ決着していませんので、4年以上かかることになります。
 訴訟費用は約100 万以上かかっています。
 最後に事例4ですが、当社の実用新案権をD社が侵害した事件で、当社の侵害警告後、和解に至らずD社が特許庁へ無効審判請求をし、無効理由なしとなったため、D社がその審決を不服として審決取消訴訟を求め、高裁へ審決取消訴訟を提訴して、高裁の判決により特許庁の審決取消ということになりました。これは特許庁へ差戻しのような形になりました。
 その後、特許庁の審決で無効となってしまい、特許庁の無効審決を不服として今度は当社が高裁へ審決取消訴訟を提訴しました。結局は、高裁の判決では無効とされた事件でございます。
 この事例の問題提起としましては、第1に特許庁の無効審判と裁判所の審決取消訴訟の双方がキャッチボールになりまして、決着が長期化した。
 第2に、無効審判の繰り返しになっておりまして、無効審理がどうなっているのかと、進歩性の認定がちょっと不明確ではないかという疑問がありました。
 補足ですが、事例4では、決着に4年かかっており、明らかに無効審理が繰り返され、特許庁と裁判所のキャッチボールになったということが挙げられております。
 訴訟費用は200 万以上かかっております。
 以上の事例1〜4に基づいて、当検討会の検討項目であります「侵害訴訟における無効の判断と無効審判の関係等に関する検討」に関して、当社としましては、3つの意見があります。
 第1に「無効審判制度のあり方」。
 第2に「侵害訴訟における無効審理のあり方」。
 第3に「和解勧告のあり方」。
 まず、無効審判制度の在り方に関してですが、登録後においても、無効審判の繰り返し、蒸し返しで権利が結局つぶされてしまう。これは事例1、事例3、事例4が該当します。その中で、進歩性の認定の判断基準が明確なのかどうか、見直しが必要なのではないかと疑問に思う点も若干あります。
 当社の代理人と私どもで検討しましたところ、余り決定的な引用例はありませんでした。審判官が代わっていたということもあったですが、その点が若干疑問を持っております。
 結局、無効審判を何回繰り返せば、どこまでやれば有効性が認められるのかなという疑問があります。ですから、無効審判の時期とか回数の制限の必要性があるのではないかという疑念もあります。
 第2に、侵害訴訟における無効審理の在り方については、侵害論と無効論、あるいは無効審判請求を同時に審理されているので、審理の混乱と長期化が生じているのではないかと思います。これは事例1が特に当てはまるのではないかと考えております。
 無効については、地裁の裁判官の判断と、特許庁の審判官の判断との食い違い、重複審理、審理の中断等があり、非合理的で審理が長期化し、後味の悪い結末となったように考えています。侵害論と無効論、あるいは無効審判と同時に、しかも、裁判所と特許庁で別々に進行するというのは余りいいやり方ではないのではないかと考えております。基本的に無効論をクリアできなければ、侵害論へ進めないような一本化した何らかの体制を考えた方がいいのではないかという疑問を持っております。
 最後に和解勧告の在り方ですが、裁判所で侵害の認定があったにもかかわらず、無効か有効かの決着がつかないまま、和解勧告で訴訟が終結してしまう。これは事例1と事例2が該当します。基本的に侵害性を認定しているのであれば「被告の侵害得」とならないような、和解金とは別に、被告の方に何らかのペナルティーを課すという考え方もあるのではないかと考えています。
 以上をもちまして、当社の説明とします。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。限られた時間の中で的確にまとめていただきまして、お礼申し上げます。
 では、引き続きまして、ただ今の御説明に対しまして、大体20分程度質疑の時間を取りたいと存じます。どなたからでも結構でございますので、御自由に御質問、御発言をお願いいたします。小林委員、どうぞ。

○小林委員 私は特許庁から来ているものですから、質問というよりは、若干の説明とコメントをさせていただいた上で、必要であれば御質問もさせていただきたいと思います。
 論点3つの中で「無効審判制度のあり方」「侵害訴訟における無効審理のあり方」「和解勧告のあり方」と3点、最後の方にまとめてございますけれども、私の方から「無効審判制度のあり方」について御提示していただきました問題点について、多少コメントさせていただきたいと思います。
 我々としましても、特に特許制度のユーザーの中に、予見可能性の高い取扱い、一致した取扱いを求める声が非常に強いということは理解しています。これはほかの行政分野に比べて、特許分野では登録によって私権が発生するという特殊性があるので、そういう要請が強いんだろうと理解しています。その観点から我々としましても、審査基準というものをつくりまして、ここで問題になっている進歩性についても同じなんですが、進歩性についての判断の基準というものをつくりまして、これは審判にも一応同じ形で適用されているんですが、そういった形で統一的な判断ができるような努力をしております。まずいところがあればどんどん直していくということかと思いますけれども、そういった努力をしてございます。
 他方で、実はここ数年の動きでございますけれども、進歩性の判断基準について、厳格化の方向にございます。その意味で言いますと、時系列的に見ますと、最初に争った事件と、後の事件とで多少判断基準が違うということが実際にはございます。
 その背景には2点ほど事情があるんですけれども、一点は、制度のユーザーの中からここ数年の間に出てきたことでございますが、特許庁の進歩性の判断の基準が緩過ぎるのではないか。実は、特許出願が非常に多くあるんですけれども、それが1つの原因になってたくさん出すのではないか。当然、自分の特許は取りたく、他人の特許は取らせたくないというのは基本的な使い方だと思いますので、おしなべて言うことは難しいかもしれませんが、制度ユーザーの声を聞きますと、進歩性の判断基準が緩いと、当然こういうものも特許になるということになるわけだから、自分も出すことになるだろうと。そうすると、大量出願を招くんじゃないかという批判がございまして、特許庁としても進歩性の判断基準を若干厳しい目に運用してきているということが1つあります。
 もう一点は、実は特許庁の判断基準というのは、特許庁だけでは決められない部分がございます。審決取消訴訟が東京高裁に出訴されたときに、東京高裁がそのケースについて、どういうような判断を示すかというのも重要な判断の基準になってございます。その観点から最近の流れを見ますと、東京高裁ではここに書いていましたように、いわゆる阻害事由、ある証拠とある証拠を組み合わせようとしたときに、置換可能性がある、代替可能性がある、あるいは組合せ可能性があるというときに、その組合せなり、置換可能性を否定するような積極的な阻害要因がなければ、それは組合せなり、置換が容易だと判断していいんだという趣旨の判決がこの数年出たということもございまして、それを受けて、特許庁の判断基準がそういったものを取り入れて、厳格化の方向に動いてきているという経緯がございます。
 そういった形で最初の事件と次の事件で判断が食い違うという要素は、残念ながら今のところ判断基準が動いている最中ですので、そういったことはあろうかと思います。
 もう一点は、当然のことでございますが、証拠が違うと結論が違うということでございます、無効審判は職権主義を取っておりますので、基本的には当事者の出した証拠だけではなくて、審判官が職権で探知した証拠を使うこともあるんですけれども、基本形は、当事者が出された証拠に基づいて判断をすることになりますので、最初の事件と同じような事件であっても証拠が違うとそれに起因して判断が違ってくるということもあろうかと思います。
 それが判断基準についてのコメントでありますが、もう一点、プレゼンテーションの中では、繰り返しの争いが起きている、繰り返しの無効のチャレンジが起きていることで権利者の立場が非常に不安定なものになるという趣旨の御指摘があります。この点に関しましても、根本的な解決ではないかもしれませんが、今回、実は私どもの方の審議会でも法改正を検討していただいておりまして、その中には1つの審判事件で取り扱える理由・証拠の範囲、今までは最初に出した無効理由や証拠を大きく変えたり追加したりするということがほとんどできない制度設計になっておったんですけれども、それを若干緩和するという議論をしてございます。
 こういたしますと、最初の事件で無効理由がきちんと出せて、その追加の証拠も1つの事件で取り扱えられる余地が増えてくると思いますので、その点では繰り返しの攻撃の緩和の1つの手段になるのではないかと考えております。
 以上でございます。

○安川氏 一応私の方の最低限のお願いというのがあるんですけれども、審判の場合、審決で、レジュメの場合もちらちらと入れてあるんですが、理由づけというのがはっきり書かれていないんです。非常に抽象的な表現だと。定型文がすごく多いんです。具体的な理由づけをできるだけ、例えば裁判所の判決文みたいに、こうこうこういう理由づけだから、進歩性がないと。極めて容易だと判定されるという具体的な理由づけをもう少ししていただければ、私どもも、ほかの会社もそうだと思いますが、納得というのが出てくると思うんです。現状ですと、すごく、審判官にもよると思うんですが、抽象的な表現なので、何でこういう判断をされるんだろうということを思いますので、結局、納得の問題だと思うんです。その点考慮していただければと思います。

○小林委員 御指摘もございましたので、運用をきちっとしていきたいと思っております。○伊藤座長 では、飯村さん、お願いします。

○飯村委員 御説明いただきました侵害訴訟2件について、私の補足説明と意見を申し上げて、その上で感想を頂ければと思います。
 自社での技術開発ということで、その過程で権利者側として侵害訴訟に大きく関与されているということですが、その中でいろいろと感じました点があります。まず2件とも、私は関与しておりませんので、推測に基づく感想です。まず、第1の事例に関して、感想を申し上げますと、平成12年4月に富士通半導体訴訟で、侵害訴訟の中で、特許の有効性を前提として判断できるという判決が出たんですが、この事件が起きたのがその直後で、まだ、プラクティスが十分にねれていない段階での事件だという感じがしております。
 提訴から1年くらいたってから、中間判決とあるんですけれども、この点を担当裁判官に確認しましたら、損害についての審理をするので、被告の方に協力を願いたいということを法廷で発言しただけで、特に中間判決をしたわけではなく、口頭で訴訟指揮をしたということでございました。
 そこで、侵害しているかどうかということを判断した上での訴訟指揮ですが、その前に、被告が設計変更をして、侵害を回避したと書いておられますけれども、独占権の対象になる製品を製造・販売するなというのが訴訟の目的ですので、1年以内という極めて早い時期に、侵害状態が解消されているということで、いずれにしても、ある意味での訴訟での目的が達成されているのではないかと思います。
 ただ、設計変更と言っても、微々たる設計の変更の場合には、権利者側にとっては釈然としない面が残るかもしれませんけれども、いずれにしても、現行商品を変更しているという意味で、訴訟での目的は達成できたのではないかと思います。
 その後、損害論まで入ってということなんですが、無効理由通知が出されて、無効の審決が出たということでございますので、ある意味では将来無効になる確率ないしリスクを権利者の立場、非権利者それぞれの立場で評価した上で、解決を図るということになると思います。
 損害額なんですけれども、それがトータルのセールス額よりかなり低いんだと思うんですが、無効の審決が出た後、その権利が一応生き返るということと、その対象となっている製品が販売されないことと大金が支払われているということで、ある程度の訴訟の効果というのは上がっている事件ではないかと思います。もしかしたらそのプロセスの段階で、いろいろなことがあり、裁判所からの説明も十分に尽くされていないという点もあるかもしれませんが、それはそれとしてある程度の目的を達成したのではないかと思います。
 事例2なんですが、富士通半導体訴訟の判決が出されてから1年後くらいで、東京地裁の方でもプラクティスがある程度固まってきている時期の事件だと思います。その状況下、東京地裁が、被告製品は構成要件を充足しているので、侵害であるけれども、無効の可能性があるというような言及をしたということなんですが、東京地裁が無効の可能性があるということを言った以上、かなり明確な事実認識の下で無効になる可能性が高いことを示唆しているのではないかと思っております。
 ですから、それは代理人が検討され、それで将来、対世的に特許庁レベルで無効になる危険性を評価して、それで和解ということがあり得る解決策かと思います。
 被告の側もその評価を踏まえた上で、和解に臨んだということです。権利が無効となる結果を回避できて、侵害訴訟を起こした結果、確定的に無効になるのを回避できて、それで和解金を受け取ったということで、権利者としてのそれなりの効果が発揮できているのではないかという感想を持っています。
 それについて、もし何か別な、かなり違う感想をお持ちでしたら御意見を伺わせていただきたいと思います。
 あと、事例1〜4まで、結局、1、3、4が無効で、2はこの訴訟経過だと無効の可能性が高いというように思います。私の経験からすると、権利を実際に行使する過程で無効があると思うんです。その中で、事実上、通用している特許査定され特許登録されている権利をどうやって有利に活用するかは、訴訟の起こし方のテクニックの問題なのではないかと思います。

○安川氏 事例1の方なんですが、一応和解のチャンスが2回ほどありまして、1回目というのは裁判所の方から和解案というのが提示されたんです。そのときは、金額が書いていないんですが、一応和解金が提示されたんです。当社で検討したところ、金額としては余り和解のメリットがないということで、高裁の方へ審決取消訴訟をしたんですが、そのときに、被告のA社の方から、逆に何とか和解したいという話になりまして、和解金の上乗せがありましたので、被告の方からの提示なんで、それでは和解しようかという形になった経緯がございます。
 当初の裁判所の方の和解案というのは、当社の方では余り納得してなかった状況なんです。

○伊藤座長 何かございますか。よろしいですか。
 ほかにいかがでしょうか。

○荒井委員 11ページの一番下のところに対策案があり「原則、無効論(無効審判)をクリアしなければ侵害論へ進めない」とすべきとありますが、これは御社が侵害される方だからこう書いてあるんですが、逆のケースというのはあるんですか。お互いに。そのときにも、この方がいいというか、同時進行にならないというのは、どこか一か所でやった方がいいという御趣旨なのか、あるいは審判だけは審判で有効、無効をはっきりして、その上で侵害に行くというのか、どんなことでしょうか。

○安川氏 基本的に同時進行にならないような形にしていただければ、いろいろ考えられると思うんですが、基本的にははっきり有効か無効かとはっきりした段階で権利行使できるような感じの方がいいんじゃないかと私は考えています。

○荒井委員 一応おたくで特許とか、実用新案をもらったときに有効と思っているわけでしょう。それで相手が無効と言ってきたら、まずそれを決着してから、自分で侵害を訴えればいいということになるわけですね。その間は、何年かはあって、その間はライバルの会社のいろんなものを売っているわけですね。それでもいいですか。

○安川氏 やむを得ないことです。

○荒井委員 そのときの裁判所を優先というのはどういう意味なんですか。

○安川氏 裁判所優先というのは、1つの案として、裁判所が一本化した判断をするという考え方もあるかなということです。

○荒井委員 だから、裁判所で無効についても、はっきり白黒を決めてくださいと。

○安川氏 一本化するといろんな方法があると思うんです。そこまで私の方では判断できませんので、裁判所で一本化するのもありますし、有効か無効かはっきりさせてから、それからやるというのもあります。同時にやるというのは時間がかかるし、混乱するんじゃないかと思います。

○荒井委員 要するに、別々のところでやっていると、特許庁と裁判所と両方でやっていると、キャッチボールになったり、そういう趣旨ですね。

○安川氏 はい。

○伊藤座長 それを実現するための手続としては幾つかのことが考えられるということですね。

○安川氏 そこまで具体的には申し上げられません。

○荒井委員 いいとか悪いとかではなくて、お気持ちはよくわかりました。
 もう一点いいですか。

○伊藤座長 時間の関係でなるべく短くお願いします。

○荒井委員 和解勧告の在り方ですが、端的に言うと、今の和解の勧告の金額が少ないというお話がありましたが、それとも進め方が悪いということですか。金額が低いということですか。

○安川氏 両方です。

○吉田氏 それと先ほど飯村委員のおっしゃったような、そこまで言うのは本当にはっきりしたリスクがあるということでおっしゃっているということであるならば、また、考えようがありますが、私どもそこまでなかなか考えられない。だとすると、そう言われてしまうと、私どもの方ではそれに従うしかないのかなという感じで受け止めてしまったということです。

○伊藤座長 飯村委員、お願いします。

○飯村委員 2つの制度を1つにまとめて一元化した場合に、裁判所優先ということなんですが、例えば権利者の側で、権利を狭めてでも権利を生かしたいというニーズは、裁判所に一本化するとなかなかやりづらいと思うんですが、この点はどう考えるんでしょうか。

○安川氏 そこまでは具体的には考えていません。

○伊藤座長 では、どうぞ阿部委員。

○阿部委員 事例の1で、裁判所が侵害だと言った後、無効審判請求を相手がしたと。それで平成14年の5月に特許庁が無効理由通知を発送した翌月に東京地裁が和解勧告を始めた。これは無効理由通知の発送を知って裁判所が和解勧告をしてきたということですか。

○安川氏 無効になるというのがわかったので、和解勧告があったと。

○阿部委員 無効審判請求での議論に出てきた証拠は、東京地裁の方が最初に判断していたときには、わかっていない状態で東京地裁は判断をしていたということなんですか。

○安川氏 基本的には余り変わっていないんです。ほとんど大体、文献は違っていても技術内容はほとんど似たようなものです。

○阿部委員 特許庁の審決に対して不服があれば、また裁判所に行くわけですね。

○近藤参事官 先ほど荒井委員から質問があったことなんですけれども、まとめのところで言いますと、2番目の侵害論と無効との関係の在り方のなんですが、今、大きく意見として、同じ当事者間の争いになっている場合には、裁判所で無効についても判断をした方がいいんじゃないか。無効審判をできなくして、裁判所で無効についての判断をして、侵害についても判断をする。そういうシステムはどうかという提案があるんです。それに対する反論として、侵害訴訟自体が非常に長くなってしまうんじゃないか。
 さらに、ある程度長くなっても1つのフォーラムでやった方がいいですよという意見と、長くなったら困るんじゃないでしょうかという意見があるんです。その点についていかがでしょうか。

○吉田氏 例えば当事者としては、長くなってもというところですね。結構足の長い製品がございますので。
 最後に一言だけよろしいですか。

○伊藤座長 どうぞ。

○吉田氏 今日こうして私ども意見を申し述べさせていただいたんですが、これからも特許庁さん、それから裁判所さんとは、当事者としていろいろあると思いますので、是非今日私どもが申し述べたことについて、私どもが不利になるようなことはないように御配慮よろしくお願いいたします。

○伊藤座長 我々としては感謝こそすれ、そういうことはあり得ないと確信しております。
 吉田社長、安川さん、お忙しいところを大変ありがとうございました。

○伊藤座長 それでは、引き続き制度利用者の代理人のお立場から、日本弁理士会と日本弁護士連合会の方に、それぞれ20分程度御説明を頂きたいと存じます。
 まず、日本弁理士会からは、知的財産制度改革推進会議副議長の村木さんにお願いをいたします。どうぞよろしく。

○村木氏 弁理士の村木でございます。今、御紹介いただいた会議とともに、現在、日本弁理士会の研修所の所長をしております。その観点からも多少お話をさせていただきたいと思います。
 今日のお話はお手元にお配りしておりますレジュメでお話をいたします。まず第1点目は、知的財産制度が国際的な競争の中にあるわけでございますが、これは司法制度改革推進計画、あるいは知的財産戦略大綱の中である程度の方向が出されています。そして、関係省庁の方で審議されて、ある程度の検討結果が、ある部分では見えてきたというふうに思います。それを日本弁理士会としては尊重しながら、その中で国際的な視点を含めて提案できることがあれば提案をしながら、お話をしたい。これが第1点でございます。
 第2点目は、同じく司法制度改革審議会、あるいは知的財産戦略大綱の中で、弁理士にも侵害訴訟における代理権を、信頼の置ける能力担保措置を認めた上で認めよう、こういうことで動いているわけでございますが、この法律が今年の4月17日に成立しました。
 現在、特許庁と日本弁理士会の中で大枠を詰めておりますが、大体大枠は決まっております。その規模をちょっとお話をしたいと思いますが、来年の5月から9月に能力担保研修を行って、10月くらいに効果確認試験を実施し、早ければ16年の初めに侵害訴訟代理人としての弁理士が登場します。
 その規模は、現在希望者が1,300 人くらいいる予定でございますけれども、講師の都合、その他もございまして、大体850 人が現在能力担保研修を受けるわけでございます。日弁連、あるいは大学の法学部の御協力を得ながら基礎研修、能力担保研修をやりまして、再来年度の初めから訴訟代理の方に弁理士が加わってまいります。
 将来的には1,500 人、2,000 人になっていくと思いますけれども、今日出てまいります専門委員、あるいは調査官に十分に貢献ができると考えています。
 そういうような状態の下で、御説明を申し上げたいと思います。
 まず、最初の「侵害訴訟の無効の判断と無効審判の関係等について」でございますが、私どもは特許が無効か否かの対世効を有する判断は特許庁における無効審判が担当する。
 それから、特許権等の侵害に当たるか否かの問題は、裁判所における訴訟が担当するという現行制度の原則を当面維持することが良いというふうに考えています。
 その上で侵害訴訟におきまして、特許等の無効の抗弁を、例えば法律の中に認め、それを認めるに当たっては、抗弁する者の意向を踏まえて、裁判所が特許等の無効の判断をするかどうかを明らかにする。このような方法が良いというふうに、1つの案として提案をいたしております。
 具体的に申し上げますと、特許権等が無効か否かの対世効を有する判断は、基本的には特許法の規定に基づいた判断であって、日々日常的な業務に携わっている特許庁の審判官がこれを判断するということは欠かせないのではないかと考えます。
 それから、侵害訴訟における特許等の無効の抗弁が、訴訟の迅速かつ合理的解決の観点から、これを認めるべきであり、抗弁をする者が、同時に特許等の無効か否かの対世効を有する判断を求めないのであれば、そのまま裁判所が無効の判断をする。対世効を有する判断を求めるのであれば、無効審判の結果を待つべきであろう、そういうふうに考えています。
 以上のような方法を実現するといたしまして、まず、無効原因を含んだ特許ができるだけ出ない十分な審査を行うことが第1に必要であります。
 それから、無効審判における審理も一層の充実と迅速化を図る。例えば迅速化においては、無効審判において、無効か否かの判断が定まった時点で、できるだけ早く結論とした理由を、当事者に前もって連絡をするということで更に迅速化が図れるのではないかということで、そのような方向の御検討もお願いをしたいと考えるわけでございます。
 それから、裁判所による特許等の無効か否かの判断をする義務は、裁判所調査官、あるいは専門委員、そういう技術的なバックグラウンドを持った専門家が具体的、積極的に関与することがどうしても必要になるというふうに思います。
 また、侵害訴訟において、無効の抗弁がなされた場合には、裁判所が特許は無効か否かについて自ら判断をするのか、あるいは無効審判の結果を待つのか、速やかに決めるようにすべきであると考えています。そのための具体的な方策も検討していく必要があろうかと思います。
 例えば、無効の抗弁をした場合には、無効審判請求について、いつまでに出すというような時間的制限を設けることも検討に値すると考えています。
 今、申し上げたように、無効審判と裁判所における侵害の判断を一応分けて考えるわけですけれども、必ずしもその制度が絶対的に良いということではないかもしれませんので、これからの審判制度なり、社会情勢、そういうものを見ながら将来的に検討する必要があろうかと思っています。
 次に、裁判所調査官、「専門家が裁判官をサポートするための訴訟手続への新たな参加制度について」お話しします。
 2つございまして、1つは、裁判所調査官の問題。2つ目が、専門委員の問題でございます。
 現在調査官の方の問題は、裁判所法57条第2項に、裁判官の命を受けて、事件の審理及び裁判に関して必要な調査をつかさどると書いてあるだけでございまして、それ以上のことは外には見えてまいりません。調査官がいて貢献をされていることはわかりますけれども具体的にどういうふうに貢献しているということをある程度外から見えるようにすることも必要であろうと考えています。これは透明性の問題です。
 更に、特許庁から多く行かれておりますし、技術的なバックグラウンドを持っておられるし、経験もありますので、そのような経験、あるいは技術的な知識が生きるような役割の拡大、強化ということも図られるべきだろうと思います。
 次に「専門委員について」でありますけれども、今回の民事訴訟法の改正の要綱案の中に入っておりますけれども、是非実現をしていただいて、その中で知的財産の専門性にかんがみ、幾つかの点に御留意を頂ければと思います。
 最初が全件に関与するようなシステムにできないかということでございます。知的財産事件は専門性が高いので、すべての事件に専門委員を付けることが必要であるだろうと思います。当事者の同意は不要であって、特に専門性が高いものですから、一見簡単に見えるような発明であっても、専門の立場からの意見の表明が必要になってくるだろうと思います。
 それから、専門委員は論点及び証拠調べ、あるいは和解の際に原則として、専門委員も立ち会わせる。あるいは証人、鑑定人、そのような人に対する発問を許可する。そういう人が必要であり、発問その他を通して、裁判の審理の公正が担保されると考えます。
 それから、専門委員の身分でございますけれども、事件ごとに最も適した専門委員を関与させるためには、広く適任者を募る必要があり、弁理士を含む専門家が通常業務を継続しつつ業務を行うためには、非常勤の裁判所職員という形で透明性、公平性を担保していく必要があるんじゃないかと思います。
 次に「侵害行為の立証の容易化のための方策について」でございます。
 まず「秘匿特権」でございますけれども、「証拠収集の強化の前提として、弁理士/弁護士と依頼者との間で取り交わされた文書その他の情報に対する秘匿特権が認められなければならない」と思います。
 まず弁理士が、依頼者のために作成する文書、電子データ。それから弁理士と依頼者との間で交換される文書、こういうものはまず外部の者に開示する予定であるものではなく、当事者の信頼において秘密にしておこうというものでございます。
 もしこのような文書が依頼者の意思に反して開示されると。これは依頼者にとって不測の事態を招きますし、また、弁理士にとっても非常な支障を来します。
 このような観点から、現在の民事訴訟法220条の規定だけでは十分ではなく、これを具体的な規定をもって定めることが必要であろうかと考えます。
 これはちょっとわかりづろうございまして、いろんなところで説明するんですけれども、なかなか理解されないということで、もう少しかみくだいてお話をします。ちょっと時間がかかりますけれども、申し訳ありません。
 今まではアメリカのディスカバリー制度という観点だけから、これは日本の立法の問題ではないのではないかということがございましたけれども、日本の法律に関しても必要であるということで1、2御説明させていただきます。
 1番目は、まず今回の民事訴訟法の改正要綱案で訴訟提起前の非公開制度を含めた手続が出てまいりますけれども、そういう場合に、220 条そのものが、果たして訴訟提起前における秘匿特権その他に適用があるのかという問題がございます。
 次に、現在の訴訟でありますけれども、220 条の問題でございます。釈迦に説法で恐縮なんでございますけれども、ちょっとお聞きください。
 現在の法律では文書提出義務の適用除外は3つございます。
 1つは、弁護士、弁理士は知り得た事案で、黙秘等の義務が免除されていないものが記載された文書がございます。
 2番目が、技術または職業上の秘密に関する事項で、黙秘の義務が免除されていないものが記載された文書。
 3番目が、専ら文書の所有者の利用に供するための文書。この3つがございます。
 実際に私どもの業務を通じて幾つかの場合がございますけれども、例えば明細書をつくるときに、このあるクレームを書くときに、このクレームは新規性が問題で権利化が難しいかもしれないけれども試みてみたい。あるいは、特許性に欠けるかもしれないが試みてみたい。そういうような文書を依頼者に出したとします。あるいはそういう文書を含めた文書を依頼者に送ったとします。
 また、鑑定的な文書としまして、特許権、それの従来技術、これを対比した書面を依頼者の方に送ったとします。従来技術が公知、特許権も公知である、そういう文書を頭に想定していただくとわかると思います。
 そういたしますと、先ほど申し上げましたような守秘義務の反射効果としての秘匿特権、要するに知り得た事実ということにもなりませんし、あるいは技術、職業上の秘密ということにもなりません。中間的な形になってまいります。現在の判例では、特に依頼者が提出を求めているような場合に、専ら依頼者の用に供するということに該当するかどうかということになろうかと思います。
 ここはイギリス、及びアメリカ、幾つかの国で、信頼性を基礎にした依頼者と代理人の間に交わされた文書、通信、そういうものに対する秘匿特権、言い換えれば、開示する義務が免除されるという制度があります。現在の日本の制度はそういう形ではなくて、依頼者は依頼者、代理人は代理人ということで別個の規定になっています。これを対象を依頼者と代理人の信頼関係に基づく文書、コミュニケーションを保護するという形での保護が特に知的財産権の場合には必要だと考えております。
 そして、これが民事訴訟法の中に入ればいいわけですけれども、具体的に特許法、その他、弁理士法、いずれかのところに加えていただければ、現在あるアメリカでのディスカカバリーの問題、いろんな国でこれから問題になる場合に、秘匿特権の問題は解決していくと考えてございます。
 次に「専属管轄化に伴う問題」について、民訴の問題とは別ですが、お話をしたいと思います。
 戦略大綱の中で、あるいはほかの場で述べられている、実質的な特許裁判所の実現を目指すということに大賛成でございます。現在ある民事訴訟法の要綱案の中で、高裁に関しては甲案乙案あるようでございますけれども、日本弁理士会といたしましては特許を人的にも十分そろっており、経験も豊富な東京高裁に集中するのがいいのではないかと考えています。
 ただ、幾つか問題がございます。専属管轄に伴って例外的に合意管轄の場合、あるいはもしそこに専属にするならば、著しい損害、あるいは遅滞を生じるような場合には移送が可能であるというふうに書いてございますけれども、特に知的財産の場合、東京と大阪だけに送るわけではございませんので、移送を認める場合というのを余り厳しく考えないで緩やかにしていただきたいと考えています。
 それから、どうしても専属管轄ということで移送その他が認められないような場合、特に中小企業、その他でございますけれども、交通費その他、いろんな場合がございますけれども、何らかの救済措置、支援措置が考えられないか検討していただきたいと思います。
 専属管轄化することによる専門性維持あるいは迅速性、その反面で裁判を受ける権利が失われるんじゃないかという問題がございます。こういうことを十分に考慮した上で御検討いただきたいと思います。
 それから、最後でございますが、「税関における特許権等の侵害物品の輸入差止めのための制度の構築」でございます。
 これには幾つか問題がございます。現在、特許権は年に十数万件が登録されております。しかし、税関において差止めの申請が出るのはほんの数件しかございません。事実上行われていないという状況にあるだろうと思います。
 これは幾つかの問題がございまして、1つは、まず法律上の問題がございます。法律の問題は、TRIPSの関係で日本の関税定率法におきましては、商標権、著作権、著作隣接権、これについては差止めの前提となる認定手続を国に対して、言い換えれば税関に対して求めることができると規定しております。しかし、その他の点については、義務的な規定はございません。実務的には情報提供という形でもって自分の権利を侵害されると思われる特許権者等が、情報を税関に出しますけれども、これはいろんな問題と言いましょうか、にせものと違いまして、なかなか発見が難しい。それから、発見されても、果たして特許を侵害しているかどうか。これの認定が非常に難しいという実務上の問題がございます。
 更に発見したとしても、では、だれが、どこで、どのように判断するかという組織的なバックアップがない。これは裁判所の仮処分、あるいは公正取引委員会のように、ある程度権限を持った組織があって始めて動くのではないかと思います。
 米国では、詳しくございませんけれども、ITC、国際貿易委員会というものが随分前から動いておりますけれども、あそこがいいとは言いませんけれども、少なくとも、水際において、特許権等の侵害物品が差し止め得る法制度、それから人の手配というものが必要かと思います。
 最後に、申し上げたいんですけれども、制度だけ作っても人がいなければいけない。人は代理人側と審査、あるいは判断する特許庁や裁判所があります。税関の問題も同じように、だれが侵害であると判断するのかという人の問題がございます。
 その判断をする側の人的な養成、これも実に大変なことであると思います。
 いずれにいたしましても、日本の知的財産制度の発展、日本国の繁栄というものを願いながら、考えている次第でございます。
 以上です。

○伊藤座長 村木さん、どうもありがとうございました。
 それでは、日本弁護士連合会の藍谷さん、よろしくお願いいたします。

○藍谷氏 日本弁護士連合会の藍谷邦雄と申します。日弁連と略しますが、日弁連では知財の戦略会議に対応して、知的財産政策推進本部というものを置きました。ここで今、中心的に知財問題について処理し、検討しております。不肖、私がその事務局長を務めておりますので、今日はその立場で御報告をさせていただきます。
 まず、幾つかの項目について挙げさせていただきました。資料は大きな文字で書いてあるもので、資料3−2というのは後ほど説明しますので、そのときに御覧ください。
 まず、初めに現在の状況についてから簡単に述べますが、まず、訴訟の迅速化という問題です。これは日弁連としましても、民事訴訟法における計画審理、そして、その計画審理による適正かつ迅速な訴訟の実現については、現在、極めて真剣に取り組んでいるつもりであります。これは民事訴訟法の改正要綱が現在中間試案として出されておりますので、これを基に検討しているところです。
 今回はその中でも知的財産の訴訟の迅速化について現況を申し上げます。
 この対策本部の中でいろいろ会員からの意見を求めましたところ、知的財産の訴訟においては、計画審理というのはかなり既に浸透しておりまりして、東京地裁を例に取りますと、おおむね1年程度、大体12か月前後で終結している事例が大半である。その意味では知財訴訟においては裁判所の御努力もあって、迅速化というのは図られているのではないかというのが会員の大体現在持っている感想です。
 現在、弁論終結までは、今言ったような1年内外で終結している事件が大半であると言いましても、判決に至るまでということになりますと、それから更に時間を要しているようです。そこで、訴訟の迅速化とともに、もう一つの要件であります訴訟の充実という2つは、両輪としてお考えいただかなければならない問題だと思います。
 つまり、裁判というのは飽くまで当事者を最終的に納得させるということがない限り、どんなに早い裁判であっても、それは拙速のそしりを免れないものだと思います。
 そこで、現実の訴訟の充実化を図る具体的方策としまして、3つの点を挙げたいと思います。
 まず、1つは、終結から判決までの期間の短縮です。現在、ほとんどの事件が追って指定ということで判決の言渡し期日がなっております。長いものでは終結から1年間、判決までにかかるという事例も会員の中からは報告されております。この点が第1点。
 2番目には、訴訟において当事者の主張を見た段階である程度の時点になったら、裁判所が積極的に争点を明確にして、その争点に合わせた主張を当事者にさせ、その上で判決はその争点を中心に記載するということを励行していただきたい。このことによって、訴訟の迅速化と同時に、訴訟の経済的な負担ということもかなり軽減されるし、かつ、3番目の問題に資するものと思います。
 3番目の内容というのは、判決内容は今、申し上げましたように、争点に即した形での理由を明記すること。これが当事者に対して十分理解・納得できる内容のものであれば、控訴、あるいは上告というものの減少にもつながるでありましょうし、翻っては訴訟の迅速化、あるいは短期結審ということになるのではないかと考えます。
 以上が訴訟の迅速化の状況についての日弁連の意見です。
 次に、侵害訴訟における無効判断と無効審判の関係についての紛争の合理的解決の点についてであります。
 まず、キルビー判決の下で、現在どういう審理の現状があるかということについて会員の報告を基に、若干の点を申し上げます。
 産構審の資料によりますと、キルビー判決以降の特許、実用新案の侵害訴訟において、権利濫用の抗弁と無効審判が並行して行われるものが35件あるとあります。この35件のうち、裁判所と特許庁の結論が矛盾した件は2件しかないという報告になっております。
 ただ、日弁連の会員の中の感想的なものではありますが、つまり、正確なデータを取ったものではありません。感想的なものとしては、この2件よりも更にあるのではないか。特に仮処分で有効とされた上、本訴で無効となったような場合。本訴までの間に無効となった場合ということであるとか、あるいは、勝訴的な和解をした後に、第三者からの無効審判請求による特許が無効になった例というのも挙げられておりました。
 この中でまだまだここでの矛盾というのはあるのではないかと会員の中ではとらえられているようです。
 そこで、まず、このキルビー裁判の目指した紛争の合理的解決の方策に対して、現在の状況を前提にした上では、どういうことを考えられるかということで、2つの要望が挙げられております。
 1つは、明白性要件の要件自体が不明確である。この要件の明確化に努力してほしいということです。これは明白性を判断するのはだれであるかということの議論があるようであります。
 2番目には、侵害裁判と無効審判のダブルトラックを前提にしている現在の状況においては、無効審判の審理を迅速に行うようにしてほしい。これは現在、無効審判の審理はかなり以前に比べれば迅速化というか、早く行われるようになったと聞いておりますけれども、なお一層の御努力をお願いしたい。
 そこで、その後の紛争の合理的解決での方策の要望ですが、先ほど申し上げましたように、当面の問題としては、明白性の要件の明確化、あるいは特許無効審判の迅速化ということはありますが、今後の問題としましては、日弁連の当本部において検討した結果、同一当事者間における紛争の一回的解決を図るべきであるという点については一致しております。
 ただ、中長期的には明白性の要件を撤廃して侵害裁判所において特許の有効性について判断できるという制度設計を行うことが望ましいと思います。ただし、そこから先になりますと、どのような制度にするかということについては、百家争鳴と言いますか、会員一人について1案があるというようなのが現状です。
 先ほど後で説明すると言いました資料3−2は、当本部の中で名前を付した形でその会員弁護士が持っている意見ということを披露させていただきます。その後の制度設計の内容については、今、日弁連の立場として申し上げるものは現在、議論が始まったところでありまして、今後更に多数の議論を展開したいと思いますが、どのような制度にするか、一本化を図るということは、今後かなり難しい状況にあると申し上げておきます。
 次に、専門家のサポートの問題についてです。
 この点につきましては、民事訴訟法の改正要綱の中間試案に対して、日弁連としては、これに対する意見書を上げております。専門委員をつくる。そういう制度を設けるということについては、基本的には賛成しておりますが、先ほどの弁理士会と違うところは、これは通常訴訟においてということですが、当事者の同意を必要とするということを要件として専門委員を関与するようにするということで、意見がまとまっております。
 特にこの知的財産の問題については、両当事者が高度の専門的知見を要する知的財産については、調査官制度の透明性を高め、さらには明確なルールの下に、専門的知見を有するものが、現在の調査官より、より大きな役割が果たせるような専門的制度を志向すべきであるという考えに結論がなっております。
 ところで、現行の調査官制度の問題点でありますが、これについては、3点を挙げることができると思います。まず第1に、その透明性です。代理人の立場から言いますと、調査官が裁判にどのように関与しているのか。これが全く不明であります。関与しているのかいないのか、だれが関与しているのかもわからないということです。
 次には、調査官制度は裁判官との関係でどのように運用されているのかという内容についても、全く代理人には知れてこないというのが現在の状況です。この透明性が今の調査官において、不透明ということは、この調査官制度の現在の一番の問題点であろうと思います。これは先ほどの弁理士会からの指摘と同一の見解であります。
 2番目には、その公平性です。
 現在の調査官のほとんどは特許庁からの出向者であると言われております。1名だけ弁理士出身の方がいると伺っておりますが、特許庁からの出向者が調査官をするという場合に、特に審決取消訴訟の場合には、いわゆる公平性と言いますか、これが実際に損なわれているかどうかというつもりはありません。裁判には前々から言われておりますが、公平らしさというのが世間的と言いますか、市民的には求められるものです。そういう点について、問題があるのではないかという点を指摘しております。
 3番目には専門性です。
 調査官と言ってもその数には限りがありますし、現在の技術的なものは、最先端のものを、この特許の問題等では争うことになりまして、調査官といえども、すべての技術分野に精通しているわけではないのでありまして、専門性というところでどれだけの能力が担保されているというのがあり得るのではないか。そのような理由があるのではないかということを申し上げます。
 次に、知的財産訴訟における専門委員制度への要望を申し上げます。
 この項目での冒頭で申し上げましたように、専門委員制度というものを設けるべきであるということについては、これは積極的な考えを持っているところであります。ただ、どのような制度にするかについては、今後更に検討をお願いしたいと思います。特に先ほど申し上げました調査官のような不透明性というものが必ずクリアされた形の制度にしなければならないということであります。その中で、これは日弁連の意見ではありませんが、会員の意見として紹介しておきたいことがあります。特にこの専門委員を裁判と判決に登用する場合、抜本的には技術専門裁判官の登用という形で、その専門委員自身が判決という形の内容に対して責任を取るような制度にすべきであるということが、ある委員からは有力に主張されていることを紹介しておきたいと思います。
 次に「証拠収集等の手続の拡充」の問題です。
 この問題につきましては、これも民事訴訟制度の改正中間試案において議論されておるところでありまして、日弁連もこれにも十分以前から加わっておるところであります。概略を申し上げますと、この証拠収集手続は、繰り返しと言うか、御存じのことをあえて言うことになるかもしれませんが、訴訟提起前の証拠収集の問題。
 それから、訴訟が始まってからの証拠提出命令等の証拠の提出命令と義務の問題。
 3番目に、提出されるべきとされた証拠の秘密性をどう維持するかという、この3つの問題に考えられるのではないかと思います。ここで申し上げるのは、申し上げました第1の訴訟準備段階における証拠収集手続については、既に民事訴訟法の改正中間試案に対する意見として日弁連は発表しているところでありまして、幾つか取られている、例えば訴訟予告制度、あるいは訴状の予告通知制度、それから訴え提起前における当事者照会。訴え前の文書送付嘱託、調査嘱託、あるいは判定の嘱託、現地調査手続ということについては、日弁連は大方これについては賛成をしているところであります。
 そこで、今回の問題については、その次の段階におきます知財訴訟における証拠収集手続の拡充について申し上げます。
 まず、ここで「侵害方法確定の技術鑑定人制度」ということですが、これは特許法105 条にも損害鑑定人制度というのがあることはもちろん前提ですが、これについて、侵害の判断についてもこのような技術鑑定人制度を導入できないか、こういうことを検討すべきではないかということです。特にこの証拠収集手続の拡充との問題について言いますと、この技術鑑定人に第三者を設け、そこに秘密の守秘義務というものをかなり厳格に負わせるという形で考えるという制度が検討できないかということです。
 2番目には、105 条の正当な理由の要件、これの明確化ということを更に裁判の中で確定していくべきではないかと。営業秘密は正当な理由には当たらないという判決もあるようですし、それが確定したものであるかどうか。さらに、これを正当な理由というなら要件の明確化を図っていただきたいということであります。
 次に、先ほど言った3番目の問題になりますが、「訴訟での営業秘密の漏洩防止及び非公開審理の検討」というところがあります。これは現在のところどのような形でこれを実現していくかについては、まだ、日弁連としても提言し得るものがあるわけではありません。ただ、ここに書きましたようにアメリカのプロテクティブオーダー等の導入ということも検討の1つ素材として十分考えられるべきできないかということです。
 現状としましては、ここに書きました「訴訟指揮権に基づく実務的運用」と、これは飯村判事のところで決定が出されておりました訴訟の運用について、訴訟指揮権に基づいて提出された証拠の取扱いについて、かなり具体的な考え、具体的な方法というものを明記した決定があるように思われております。そういった形で、現在、更に運用をしていくことによって、図られる問題もあるのではないかということであります。
 この証拠収集手続の拡充は、この検討会の中におきましても、日弁連として最も実務的に述べなければならないことでありますが、内容につきましては、更に検討した上で、機会があれば新たな提言を含めて、その検討した結果を御紹介していくように務めたいと思います。
 最後に「その他」の条項になりますが、1番目の「刑事訴訟における営業秘密の漏洩防止についての検討」。これは今回、営業秘密の刑事罰化ということが検討されておりますし、次回通常国会にかかるということになっております。日弁連のこの刑事罰化については、意見をまとめて提言しているところであります。ただ、それを実際にやる場合に、刑事訴訟法においてどのような審理ができるのかというのは、親告罪だから、いやならば申告しなければいいという意見もありますけれども、それだけではないだろうと思います。ただ、この点を検討事項としてこの検討会で上げていただきたいという意見ですが、直ちにこのことが非公開審理について日弁連が積極的であるということを申し上げるものではありません。
 2番目に「水際措置の抜本的見直し」の問題があります。これは先ほど弁理士会もおっしゃっておられましたので、ほぼ同様の意見でありますが、認定について申立権の付与。
 それから、なぜこの認定制度が特許、あるいは実用新案では外れているかということでは、外部的な評価ができないからということが理由のようですが、物件の破壊権限、これが実際にどのように行われるか。具体的なことについてはまだ申し上げられませんが、そのような方法がないとなかなか難しいのか。そこらの点も含めて、考えるべきではないか。
 そして、判断権者に専門的な方を擁していただいて、かつそのような審理のシステムというものを構築する必要があるのではないかと思います。
 それに付加して、不正競争防止法2条1項1号から3号までの類似商標、あるいは模倣品の盗用についても、この水際措置の対象に含めるべきではないかという意見が会員の中からあったことを申し添えておきます。
 3番目の要件の「権利者の倒産時のライセンシーの十分なる保護」であります。
 これは御存じのように、破産法では、その契約の未履行分については解除できるということになっております。そこで、そのような場合にライセンシーをどう保護するかということ、現在破産法の問題として法制審議会で検討されていることは承知しております。ただ、この中では特に知財の問題における特殊性ということは十分に考慮された議論がなされていないかに伺っておりますので、是非ともこの検討会の中で取り上げていただきたいと思います。
 具体的には、ライセンシー保護のために、個別法で手当の必要性ということを言っています。これは対抗要件を何にするか。一例として、借地借家法における建物の存在における借地権が無登記でも対抗できるという制度があるわけですから、知財についても何かそういうものの工夫ができないかということであります。
 そういう点をこの検討会でも検討していただきたい。これは申し上げたように、法制審の破産法部会で検討されていることでありますし、2番目の水際措置の問題については、関税定率法の問題として、財務省で検討されているやには聞いております。しかし、水際措置の問題につきましては、正直に言って我々には見えてこないということがありますので、それにならば、ここでいっそのこと補完的に検討いただきたいというのが日弁連としての意見です。
 以上です。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。

○村木氏 1つ言い忘れたので追加したいんですが。

○伊藤座長 どうぞ。

○村木氏 言い忘れてしまいまして、済みません。6ページの(2)のところを忘れてしまいました。「訴えの提起前における証拠収集手続」の中で、「営業秘密は原則して照会対象から除外されている」と記載されています。これではすべて営業秘密に属するということで資料は出てこないということになってしまうのではないかと心配しています。営業秘密であるということで、照会を拒否する場合には裁判所に関与してもらい、インカメラその他の手続によって本当に営業秘密に属するかどうかということを検討していただくことが必要である旨付け加えさせていただきます。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。
 それでは、ただ今の弁理士会、及び日弁連からの説明についての質疑でございますが、質疑に入る前に10分ほど休憩を取りたいと存じます。ただ今3時5分過ぎですので、3時15分に再開したいと思います。

(休  憩)

○伊藤座長 それでは、再開いたします。先ほどのお二方の説明につきまして、30分程度時間を取りたいと思います。どなたからでも結構でございますので、どうぞお願いいたします。飯村委員お願いします。

○飯村委員 弁理士会の意見に関して、確認のために質問したいんですけれども、2ページ、3ページで、侵害訴訟における無効の判断と無効審判の関係等についてですが、1ページ目に書いてある「現行制度の原則を維持し」ということなんですが、その上で特許等の無効の抗弁を認めるというのは、現行制度を何か変えるというような意味合いを持っているんでしょうか。
 それから、現行制度の原則というのは、富士通半導体訴訟で認められているようなことを念頭に置いて書かれているのかということです。
 質問をまとめて言いますと、その中の2ページの2)ですけれども、抗弁をする者が、対世効の判断を求めないのであれば、裁判所が特許等の無効の判断をすべきであり、対世効を有する判断を求めるのであれば無効審判の結果を待つべきであるというのは、具体的には被告が無効審判請求をした場合にはということだと思うんですが、そのときの裁判所は、中止すべきであるということなんでしょうか。そうでなく、やはり対世効の限度でなければ無効の判断を続けていくべきであるということなんでしょうか。
 3ページの(2)の3)の括弧書きところも同じなんですけれども、「例えば、無効の抗弁をした場合における、無効審判請求についての時間的制限を設けることも考慮に値すると思われる」ということは、侵害訴訟の被告が無効審判請求をするのについて時間的制限ということだけを提言されているんでしょうか。その点についてお伺いしたいと思います。

○伊藤座長 では、お願いします。

○村木氏 まず、参考資料の中の紛争処理小委員会でも検討されているように、弁理士会でも最終的に詰まった細かい議論が最終的な段階で出ているわけではなくて、一応提言として申し上げております。
 最初の質問は、キルビー判決がございますけれども、これは権利の濫用の場合と言いましょうか、そういう形でいくわけですけれども、それを更に具体化して無効の抗弁ができるということを具体的な規定として設けてはどうかという提言です。そういう意味では現行の制度を変えると思います。この現行の制度というのは、裁判所は侵害について判断をし特許庁は無効審判を行うという役割を分けるという意味で現在の制度を維持すると申し上げています。
 ただ、無効の抗弁ができるということを明文で規定する必要があるんではないかというふうに考えております。
 それから、2番目の問題、3つも御質問いただいたので、どんどん申して恐縮なんですが、抗弁をする者は、今、既に無効審判をしているか、これからするわけですけれども、それについてどちらをするかということを裁判所が被告に選択を迫る、裁判所だけの無効の抗弁でいくのか、それから対世効を必要とする特許庁の審判までやるのかどうか、そういうことを被告に迫るということです。それについて、いったん無効審判が提起されたら、一応必要的に中止をして審判の結果を待つということでどうかと現在は考えています。
 3番目の疑問点は、いつ出すのか出さないのかわからない場合がありますので、申し立てる場合は、無効審判を出すのか出さないのか、一応期限を切ってそれまでに決めてくださいと被告に選択を促すということです。その上で、裁判所として無効審判請求が出ないのであれば裁判所として判断するということで、一応期限を切ってはどうかという1つの案でございます。

○伊藤座長 それでは、阿部委員からお願いします。

○阿部委員 飯村さんと同じ質問かもしれませんけれども、この対世効を求めるか求めないかというのを当事者の選択に任せて、求めなければ裁判所は自分で判断しなければならないということでしょうか。

○村木氏 そうです。要するに侵害訴訟を起こしますが、そのときに当事者は無効の抗弁をできることにしておいて、その無効の抗弁をするかあるいは特許庁に対して無効審判を起こすか起こさないか、それを決めさせるということです。
 一応特許庁で無効審判をやれば、我々の理解では今までと同じように、だれに対しても効力を持つという対世効を持つということで、無効審判の結果を待つべきであるという1つの案です。1つの意見として提案をしております。

○阿部委員 もし対世効を求めなければ必ず裁判所は有効・無効を判断しなければならないということですね。

○村木氏 はい。無効の抗弁が出れば、裁判所が判断するということです。ただ、その前提として裁判所が無効の判断をするに至る調査官、あるいは専門委員、技術のある裁判官、そういうことが備わっていることが前提になります。

○伊藤座長 よろしいですか。村木さんの御意見の趣旨はわかります。それでは、先に加藤委員、お願いします。

○加藤委員 専属管轄化の問題につきまして、弁理士会の方からは一層の柔軟性が必要だということは考慮するとしても、基本的に東京高裁の専属管轄化に賛成であるという御指摘があったかと思いますが、弁護士連合会としては、この点についていかがなんでございますか。

○藍谷氏 日弁連としましては、まず東京高裁の専属管轄化については反対です。意見としましては、競合管轄を認めるべきであるというのが日弁連の意見です。
 その前提としましては、地裁の管轄についても、大阪東京の2つの地裁に専属化するということについても日弁連としては反対しております。

○加藤委員 その背景をもう少しお聞かせいただけますか。

○藍谷氏 弁護士というのは、やはり実務家ですので、訴訟、つまりこういう知財の問題を扱う弁護士が増え、かつ知財の訴訟が活性化するためには、あらゆる弁護士がこういう訴訟に取り組むということが可能な状態であるべきだと、やはり専属管轄化しますと、どうしても裁判所所在地の弁護士に集中するということが多くなろうかと思います。
 特に現在の状況では、日本では知財訴訟というものはそんなに活発に行われているというふうには現状を認識しておりません。より活発な訴訟、あるいは訴訟内での議論というものが各地で行われて、そういう議論を現在の日本の状況では、そういうものを集積していくべき状況ではないかということがあります。
 特にこれまでも東京、大阪での訴訟の中で、大阪の高裁の方で出された意見が、最高裁の判定を主導したという事例もあるように伺っております。そういうことから見ると、現在ではまだそういう訴訟を活発化し、知財の問題についての議論を行って、そういうベーシックなところを備えていくべきであるということからすれば、単独裁判所への専属管轄化ということは反対であるということです。
 と同時に、もう一つは東京高裁への管轄化については、東京高裁、現在4か部が1か部増えて5か部になるというふうに伺っておりますが、ここで裁判所が別である以上裁判所が統一的な見解をそろって出すというわけではないので、やはり訴訟制度の前提としてそのような判例の統一というものは、最高裁のところで統一を図るしかないのではないかと。
 現状におきましても、最高裁はかなりこの知財の問題についての判例の統一性、キルビー判決に見られるように、かなり積極的であるように理解しているところもあります。特に戦前のような連合部判決でもあれば別ですけれども、現在の制度の中では東京高裁でも予見可能性というものはそんなに図られないのではないかという点もあります。

○伊藤座長 中山委員、どうぞ。

○中山委員 地裁は東京と大阪に集中させることには賛成なんですが、高裁を集中するメリットはどこにあるんですか。

○村木氏 弁理士会の中でもいろんな意見があるんですが、大方の意見としては東京高裁です。その理由は、まず一つはスタッフの問題すなわち侵害訴訟や審決取消訴訟の多くを処理してきた裁判官、調査官の充実、ほかの1つは裁判所の経験あるいは歴史という大きな背景があると思います。そして長期的にはいろんなことが考えられるわけですけれども、とりあえずは、東京高裁に集中するのがいいではないかということです。いろんな理由がありますけれども、一番大きな理由は先の2点にあるというふうに理解をしております。

○中山委員 大阪高裁の充実ではいけないんですか。

○村木氏 もちろん大阪高裁の充実はあり得ると思いますけれども、今、侵害訴訟、審決取消訴訟などのいろんな面で、スタッフ、人員が一番充実しておるのが東京高裁ではないかというふうに理解しておりまして、それを生かしていくべきではないかと考えます。

○藍谷氏 高裁、地裁の問題もありますけれども、地裁の方からまず先に言いますと、まず弁護士が知財の方に精通するには、訴訟を実際に経験しなければだめだということがありまして、そういう意味ではいろんな地方の弁護士がやれるようにすべきだということがあります。
 2番目には、日弁連の議論を言いますと、一番反対が強かったのが単位会として名古屋弁護士会です。ここは名古屋においては、今や大企業になっておりますけれども、トヨタだってベンチャー企業だったし、中部経済圏ということで遠州地方も含めればホンダだってベンチャーだったわけです。つまりそういう地方の産業界における、自分のところが訴訟できないということは、産業界の活性化にもデメリットが生じてくるのではないかというような点を考えますと、そういうようなベンチャー企業が育ち、かつ知財の訴訟としてもその場で行われるという状況というものが望ましいんではないかと。
 そういうことで言えば、東京高裁への集中化ということも、関西圏における知財の問題への取組の希薄化ということを及ぼすんではないかと、それはひいては大阪経済界の地盤低下につながるようなこともあるのではないかいうことも考えられるんではないかと私見的に申し上げます。

○伊藤座長 それでは、小野瀬委員、お願いいたします。

○小野瀬委員 東京高裁の専属管轄化の話が出てまいりましたので、法制審議会の事務局をしている者から、現在の状況を簡単にお話ししたいと思います。
 一審段階では、東京地裁、大阪地裁の方の専属管轄化という方向で法制審の方では議論されております。
 あとは、どういう場合に移送の特例を認めるかということでございますけれども、先ほど合意管轄の場合というお話も少しありましたけれども、当事者双方が合意したから、それだけで東京、大阪以外に移送ができるというような議論では必ずしもないというように理解しております。やはり個別のケースにおいて著しい遅滞、あるいは損害というものが生ずるかどうか、事件についての専門性があるかないかというようなことを含めて、考慮して移送するというような議論がされております。
 東京高裁の問題でございますが、実は法制審議会の部会は、年内に部会の案をとりまとめる予定でございましたけれども、予定がずれ込みまして来年の1月に部会としての案をとりまとめる予定でございます。
 この東京高裁の問題につきましては、現在両案、先ほどお話に出ましたとおり、競合管轄案、すなわち東京地裁の判決に対しては東京高裁、大阪地裁の判決に対しては東京高裁と大阪高裁の両方に控訴することができるという案と、それから東京高裁に専属管轄化する案と両案が議論されている状況でございます。
 この専属管轄化のメリットの話でございますけれども、やはり東京高等裁判所の方に専属管轄化をすれば、人的資源を集中配置できるということで、地裁レベルで東京と大阪にそういった形で事件を集中することによって非常に充実した機能の裁判所にするという、それを同じような発想で、東京高裁に人的資源を集中するということによって、高裁レベルで機能の充実が図られるのではないかといったような議論がなされております。
 そのほかにも、例えば審決取消訴訟が東京高裁に係属しているというような場合には、東京高裁で審理することができるようにすべきであるというような議論もございます。
 そういったことで、まだ法制審議会としてまだ最終的な結論が出ておりませんけれども、そういった両案が現在議論されているという状況でございます。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。それでは、飯村委員、お願いします。

○飯村委員 先ほどの一元化の問題なんですけれども、侵害訴訟の被告が無効審判請求を起こすと、必要的に侵害訴訟が止まってしまうという制度を念頭に入れておられるということとお聞きしました。現行の制度の下で1日も早い救済をという要請に応える趣旨で、富士通半導体訴訟が迅速化、それから訴訟経済の軽減及び効率化という観点から、無効の可能性がある場合でも先に進められるための実務の工夫がされていると思うんです。迅速に紛争を解決することができるようにしたわけです。被告が無効審判請求を起こしさえすれば、審理がそれ以上進められないということを制度として設けるメリット、どうしてそういうことで矛盾を回避しなければいけないのか、というところについて御意見いかがでしょうか。

○伊藤座長 村木さんお願いします。

○村木氏 先ほど申し上げましたように、細かい点は最終的に詰まっておりません。ただ、現在特許庁の方で審判制度をいろいろ改善されておられたり、実際には手続を止めないで特許庁の指導の下で、早く無効審判そのものを終了させる手があり得るんではないかということで、逆に今、飯村委員のおっしゃったことも持ち帰ってまた検討いたしますけれども、最終的に詰まった議論ではございませんけれども、今の特許庁の新しい審判制度に期待をしているということで、早くできるのではないかというふうに考えております。
 今おっしゃったように、無効審判をすることによって、一方的に期間が長びいてしまうことはないかと考えています。

○飯村委員 無効審判請求を起こすだけで侵害訴訟がそれ以上先に進めないということであれば、無効審判を起こさない被告はいなくなってしまうと思うんです。そこで、少しでも先に進めようということで、富士通半導体判決が出され、ダブルトラックの問題が起きて、それをどうやって解消しようとするのかを今、検討しているのであって、それ以上進めないというのであれば確かに問題は解決されるんですけれども、権利の救済も図れないし、被告も被告の立場から離脱できないし、そういうことで結局問題の解決になってないのではないかという疑問があるものですから、その点でどういうふうにするのかということがテーマじゃないかと思っています。

○村木氏 持ち帰ってよろしゅうございますか。済みませんが、検討中でございますので。

○中山委員 飯村委員のおっしゃった問題は、一番大きい問題だと思うんですけれども、それ以外にも例えば審判の方が先に起きてしまったとか、審判と訴訟と当事者が違っている場合だとか、訂正が入った場合だとかいろんな問題があると思うんですけれども、それは検討されてないんでしょうか。

○村木氏 紛争処理委員会で、そこでも百家争鳴、いろんな意見がございます。ここで私個人の意見は別として、日本弁理士会の意見として十分先生に反論するものを持ち合わせません。申し訳ございません。次回回答いたします。

○伊藤座長 細部については、これから検討されるということで、ただお話の前提は審判制度そのものにかかっているということが前提になっているということですね。
 どうぞ、櫻井委員。

○櫻井委員 今の点はもうちょっとお伺いしたいところもあるんですが、話題を変えまして、裁判官に対する専門家のサポートというお話がございましたけれども、お二方とも調査官と専門委員について触れられたのですが、調査官というのは基本的には裁判の裏方でありまして、それは表に出してない存在ですね。専門委員は、表の舞台で裁判官の補助をするということでありますけれども、この両者、調査官と専門委員の役割分担と言いますか違いと言いますか、どういうふうにお考えになっておられるんでしょうか。

○藍谷氏 調査官と専門委員ですか。

○伊藤座長 調査官と専門委員のあるべき役割分担ということでお答えいただきたいと思います。

○藍谷氏 むしろ専門委員を登用するような形にすれば、知財訴訟における調査官制度というものは極力減らすか廃止するかだと思います。そして専門委員は積極的に公開された形でかかわるという制度にしていかなければいけないだろうということで、具体的な内容についてはまだいろいろな点がありますので、どのような形でそういうものを行うかについては、調査官制度に毛の生えたような問題から、決定的に違うものにするべきだということまで、まだ意見はまとめておりません。

○伊藤座長 どうぞ。

○村木氏 私どもも、調査官という飽くまで裁判所の裁判に役に立つという意味で、裁判官を補助することを目的とする、そういう役割であると理解しています。また、専門委員というのは、裁判所ではなくて当事者にとって技術的な面、あるいは法的な面から見ての問いを発するあるいは意見を言うということで、客観性を裁判に持たせるものであると理解しています。
 その背景には、現在の裁判官の中に技術的なバックグラウンドをどの程度持たれているか、やはり特許というのは技術的に十分背景を持って、十分審議された上で結論が出るという問題だと、そのための補助制度というふうに考えております。一応役割分担はあると考えております。

○伊藤座長 よろしいですか。

○藍谷氏 確かにそれは調査官の現行の裁判所法の限りにおいて調査をするということであれば、それはほかの訴訟のところでもありますから、そういう役割はあるのかもしれませんけれども、少なくとも専門委員ということに焦点を当てて考えるべきではないかと思います。

○櫻井委員 透明性を高めるという意味で調査官が必要なくなるということでしょうか。

○藍谷氏 これは極めて限定するような言い方かもしれませんけれども。

○櫻井委員 でも専門委員には、そういう意味では非常勤というお話がございましたけれども、常勤じゃないわけですね。そうすると調査官が必要悪であるというふうに考えるとちょっと問題があるのかなという気もいたします。

○伊藤座長 必要悪というのか、藍谷さんの御発言は、機能として重複する部分が多いという趣旨ですね。

○藍谷氏 そうです。

○伊藤座長 どうぞ、中山委員。

○中山委員 村木先生に御質問したいんですけれども、秘匿特権、これはアメリカで弁護士並みの扱いを受けたいという目的ならわかるんですけれども、それもあるんでしょうけれども、国内の話をされましたけれども、そうすると弁護士と同じだと思うんですけれども、弁護士会から要求というのはないんですけれども、これはどうして弁理士だけでできるのかということ。

○藍谷氏 むしろない方がいいかもしれませんけれども。

○中山委員 弁護士も必要だということですか。

○村木氏 まず日本経団連、それから日本知財協、こちらの方から両方とも弁護士、弁理士に対して必要だということが出ております。
 私の理解では、米国の場合は、アトーニー制すなわちバーのメンバーになることによって、そういうことが問題視されていないと考えています。もし日本では弁護士や弁理士の守秘義務の反射としての守秘特権を考え、依頼者は”専ら文書の所持者の利用に供するための文書”という別の理由で開示を免除されるという構造でいくと、弁護士も弁理士も全く同じ理由に多分なるだろうと思います。
 そういう意味で、それはアメリカで問題視されていないから日本の弁護士さんは顕在化していないだけで、シチュエーションは全く同じであるというふうに考えております。
 特にさっき申し上げたように、800 人ぐらいの訴訟できる弁理士が出てますので、これが弁護士と同じならば守秘特権をあえて申し上げなくても解決すると思います。ただその根本的なところ、依頼者と代理人との信頼関係、その間で交わされた文書についてどうするのかと、それについて守秘特権を認めるべきではないかというアメリカのような制度がどうしても必要であるというふうに理解しております。
 余りにもアメリカばかり表に出てきますので、何でアメリカの裁判のために日本の法律を変えなければいけないんだという議論がされていますけれども、本当はちょっと違って、要するに守秘特権、秘匿特権を認める対象のやり方が違うんだというところで、そこを日本法においても一度詰めて検討していただきたいというのがお願いでございます。

○中山委員 どうして弁護士会から出ないんでしょうか。

○藍谷氏 弁護士会からこの点をあえてレポートに載せなかったのは、別の場で議論している問題だったものですから、ここの問題の集中した議論ではないので挙げなかったんです。と言いますのは、今この弁護士秘匿特権は、そのベーシックな考え方が世界的に危機にひんしておりまして、特に組織犯罪とマネーロータリングに関するゲートキーパー問題というのがあります。これについて弁護士秘匿特権を剥奪する傾向が世界に出ております。既にEUではEU指令を発して、これを立法化しようということが言われておりますし、カナダでは既に立法化がなされて、それについて弁護士会の訴訟が一審の仮処分等で勝訴して、今は法律は執行停止をして、最高裁での議論を待っているところです。
 現在この問題を大きく主張しているのは、ABAと日弁連です。世界的な会議を開きまして、この問題を主張するということを申し合わせているところです。
 特にこういう知財の問題に関して言えば、アメリカの依頼者が日本の弁護士を雇わなくなるというような傾向を言われているところもありまして、日弁連としてもこの問題はかなりこの制度がよって立った世界的基盤から含めて議論すべきということで、私が今、執行部の方にそういう検討の委員会なりワーキンググループをつくるように提言しているところであります。

○中山委員 弁理士会にお尋ねしますが、専門委員の全件関与、これは本気で考えているんですが。

○村木氏 要するに、原則的に全件関与ということで、知財の重要性から見たときに、全件関与するのが望ましいんではないかということです。会の意見を集約しております。個々人にはそれぞれの意見がございますけれど。

○中山委員 一応全部ですか。

○村木氏 今のところそういう意見が多くを占めているということです。

○中山委員 もし関与したら、弁理士の職域拡大には多いに役立つでしょうけれども、かえって大変なことになるし、お金もかかるし、時間もかかるんじゃないでしょうか。そんなことないですか。

○村木氏 そういうことはあり得るかもしれませんけれども、現在非常に問題視されている知財、特に特許その他について余り簡単だと思われて、どんどん要らないんじゃないかということで、付けないということではなくて、付けるという目標の中で外していくという考え方の方がいいんではないかということです。

○伊藤座長 それでは、阿部委員、恐縮ですがそろそろ時間のあれがありますので、ごく手短にお願いします。

○阿部委員 専門委員の話なんですけれども、知財の訴訟の面における専門家というのは、調査官の充実化というふうに思っていました。そういう議論が知財協では多かったということを御紹介します。
 そのときに、専門委員の役割というのはもうちょっと透明化されなければならぬという話でございまして、5ページで、専門委員が当事者本人とか、いろんな人に発問をするというふうに書いてありますけれども、我々の議論は逆でして、当事者等が専門委員に発問するというところが重要なんではないかというふうに考えたんですけれども、いかがでしょうか。

○村木氏 私どもの議論は、逆に専門委員ということが別途あるわけですから、それが具体的な議論の場に客観性を持たせるために、そういう場が与えられる。それが必要ではないかと考えています。

○伊藤座長 よろしいですか。

○小野瀬委員 一点だけ、専門委員については、何をもって専門委員というふうにイメージされているのかちょっと分からないんですが、少なくとも今、法制審議会で議論されています民事訴訟の一般的な制度としての専門委員というのは、これは飽くまで裁判官のサポートと言いますか、裁判官の専門的な知識を補充するという立場のものを予定しております。発問といいますものも、主張関係ですとか、あるいは人証なんかで出てきた供述の趣旨が不明だという場合に、そういった趣旨を明りょうにするというために発問を認めるというような、まさに裁判所のサポート的な位置づけとしてとらえられております。それが現在の、法制審議会における議論でございます。

○伊藤座長 最後に飯村さん、もし何かございましたらお願いします。

○飯村委員 専門委員に関してのイメージが固定してないんですけれども、ちょっと紹介ということで、東京地裁の知財部で知財専門調停というのを始めたんです。それは、専門分野の各弁理士さんと弁護士さんが専門委員でございまして、当事者の挙動を見ていますと、関与する弁理士さん、専門家が、どういう経歴を持っているのかを全部明らかにしてくださいと。それについて原告側あるいは被告側が駄目だというようなことで、実際にはもう4、5年たつんですけれども、ほとんどどちらかがオーケーを出さないんです。
 私のイメージで言うと、調査官がいる分野における専門委員というのは、調査官でも賄い切れないような特殊な分野で専門委員に活躍していただければと思っているんですけれども、そういう分野ですと往々にして、すごく専門性が高くなって、もうその業界の中では有名人になると思うんです。裁判所が見付け出すのも大変なんですけれども、仮に見付け出せても、なかなか選びにくい問題があるんではないかというふうに思います。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。それでは、そろそろ時間でございますので、この辺りで質疑を終了したいと思います。
 村木さん、藍谷さん、どうもありがとうございました。

○伊藤座長 それでは、今度は制度の運用者という立場で、特許庁と裁判所の方にそれぞれ20分程度お願いしたいと思います。
 まず、特許庁から小林委員、お願いします。

○小林委員 小林でございます。お手元に資料の束がございます。クリップを外していただきますと、資料1〜資料5までございます。大部なものですから、意味のわかるところは割愛をさせていただきます。
 最初の資料1と資料2は、まず今、審判制度、審決取消訴訟、あるいは訴訟の制度が、どういうふうな構造になっているのか、取り分け審判のところは御存じない方が多いかもしれないので、おさらいの意味でポンチ絵にいたしました。またその中に件数が書いてございますけれども、どういう制度改正を考えるにしましても、どういった規模の運用状況になるんだろうということは常に念頭に置いておかないといけないと思いますので、そういった定量的な感触を持っていただくために件数を入れてございます。
 まず資料1なんですが、これは特許分野だけなんですが、ほぼほかの3法、すなわち実用新案とか商標、意匠につきましてもかなり類似している部分がございますので、特許分野についてだけ審判と訴訟の手続フローを書いてございます。
 一番左側上でございますが、特許の出願は現在年間44万件ございます。審査請求という制度もございまして、出願したものの審査請求をしないというふうに決心するものもございますので、審査請求というアクションを起こしたものについてのみ審査をすることになるんですが、それが年間25万件ございます。
 審査を経ますと、審査の結果、拒絶査定というものと、下の方の特許査定とに分かれます。拒絶査定というのは、特許にしないという審査官の決定でございます。特許査定というのは、特許を与えるという旨の審査官の決定でございますが、これが基本的には権利の発生、登録につながります。
 一番上のフローを見てみますと、拒絶査定に対しては、審判部において拒絶査定不服審判という不服申立の審判がございます。この件数規模が各国に比べて、日本は異常に多いんですけれども、拒絶査定8万件のうち2万件不服が申し立てられます。
 その次が審決に対する不服ということで、東京高裁に審決取消訴訟がされるんですが、これは60件ございます。したがって、2万件が60件に絞られていますから、この点では審判のスクリーニング機能というのは非常によく機能していることがわかります。もちろんその審決取消訴訟に対する最高裁への上告ということもあります。
 ちなみに、審決が取り消されますと、点線でフィードバックされていますが、審判部に事件が戻って、もう一度審判をするという構造になっております。
 下の方ですが、特許査定ののち権利が発生した場合に、審判の手続がどうなっているかといいますと、権利の有効性についての争いというものがございます。これは具体的には今、2点ございまして、特許異議申立てというのがございます。これは権利を付与した直後に異議を申し立てるという構成の争い方でございます。それとは別に、権利が発生して消滅した以降も、いつでも請求できる無効審判という制度もございます。この2つが基本的に特許の権利の有効性について争う手続です。
 それ以外に特殊なのは、訂正審判というのがございまして、権利が付与された後に、権利の内容を変更するための手続がございます。これは権利の広さを減縮する一方ですので広がることはないんですが、一部に無効理由があったときにもう一度行政処分を申し立てて、権利の設定をし直すというふうな制度がございます。
 注目していただきたいのは、異議申立てと無効審判で、今4,000 件と283 件ですから、ほぼ4,300 件が権利が発生した後の争いということになっております。ちなみに、今、ストックで有効な特許というのは100 万件以上ございますから、100 万件以上ある中で年間四千数百件が争いになるというふうにイメージしていただければ結構かと思います。
 異議申立てと無効審判のそれぞれに対しまして、高裁に決定取消訴訟ないしは審決取消訴訟というのが出ます。それぞれ161 件、156 件ですから、権利が付与された後の争いについては、行政訴訟は三百数十件、訂正のものも合わせても三百数十件という規模になっています。これは特許の分野だけでございます。
 更に下半分でございますが、民事訴訟系で言えば侵害の有無というのがありまして、これは各地裁、東京と大阪の専属管轄になるのかもしれませんが、各地裁で侵害訴訟というのがありまして、特許分野では153 件程度でございます。それに対して、控訴審と上告審があるということになります。
 以上が、主立った特許分野に関しての審判、あるいは訴訟の手続なんですけれども、次の資料を見ていただくとわかりますように、今、「異議申立てと無効審判の統合・一本化」ということで、その2つの制度につきまして、今回、産業構造審議会の紛争処理小委員会を開催しまして、改善の方法について議論していただいております。この報告書につきましては、1か月程度のパブリックコメント募集期間がつい先ごろ終了したところでございまして、この方向で改正の検討をしているところでございますが、今の資料1との関係でポイントになりますのは、資料2の1.だけです。要は「異議申立てと無効審判の統合・一本化」という答申案が出ておりまして、この方向で検討しております。
 具体的には、資料2の真ん中の表に書いてありますけれども、異議申立てと無効審判、どちらも権利の有効性について判断をする制度という点ではほとんど変わりがない。にもかかわらず、両制度が並存していることによるデメリットというのが出てきておりますので、それを一本化するということです。
 その際、無効審判の方が制度的な枠組みは広いので、無効審判の枠組みをもう一度多少広げてあげることによって、現在の異議申立ての機能を吸収するという考え方で、新無効審判制度を考えています。何人も請求可能、ただし権利帰属に関する無効理由は利害関係人のみということで、現行無効審判は利害関係人のみでございますが、その部分の改正を施すことによって、異議申立てのニーズを吸収するという考え方で新無効審判への改正を検討しております。
 そのときに、先ほど申し上げた4,000 件と283 件がどうなるかというと、今のところの見積りですけれども、ほぼ全体で2,000 件ぐらいに収れんするであろうというふうに思っています。
 したがいまして、現行法よりも簡素化ということになるんですけれども、それでも依然として2,000 件ほどの権利の有効性の争いが毎年生じることになるだろうというふうに考えております。
 改正の概要については、興味深いとは思いますが、若干割愛しまして、資料3に飛んでいただきます。資料3は2つに分かれておりまして、本文と図1、2、3というふうに2つに分かれています。
 図1を見ながら御説明したいと思います。図1は、侵害訴訟と無効審判の重複と言いますか、それがどういう状況になっているのかというのを、キルビー判決が出た後、昨月ぐらいまで、2年7か月間の判決を分析したものでございます。一番上の四角、①、②、③、④というふうに書いてある部分のグラフですが、これが全体で270 件、侵害訴訟の判決が2年7か月間に出ています。
 上の①、②の部分、これが権利濫用の抗弁があったものでございますが、これが40%でございます。グラフには書いてなくて本文の方に書いてあるんですけれども、キルビー判決が出た直後の1年間と、その後の1年間を時系列的に見てみますと、最初の1年間は26%だったものが、次の1年間には49%になっております。2年7か月を平均すると40%です。このことからわかりますのは、権利濫用の抗弁というのは、キルビー判決直後から時を追うにしたがって、かなりの程度利用の頻度が高まっている。浸透してきているということが一つわかります。
 更にこの①、②、③、④の中身を検討しますと、先ほど権利濫用の抗弁ありとした40%のうち、権利濫用の抗弁だけをしたものというのが7%あります。
 ②の権利濫用の抗弁と無効審判の双方を請求したもの、これが89件、33%分ございます。
 この②の部分が、ユーザーヒアリングでも言われました、権利濫用の抗弁と無効審判の請求と両方をしなければいけないので対応負担の問題がありますとか、あるいは判断の齟齬があるんではないかというような問題が生じるのが、この②の部分だということができます。
 下半分の③、④ですが、これは権利濫用の抗弁がされていないケースです。取り分け③につきましては、権利濫用の抗弁がされない代わりに、無効審判の請求のみがされたというケースでございます。この点につきましては、判断の齟齬に関しては基本的には問題がない事案なんです。なぜかと言いますと、権利濫用の抗弁がございませんから、裁判所と特許庁との間で有効性についての判断の問題が生じることはない。ただし、侵害訴訟に対応しながら無効審判の請求をしているという観点でいきますと、いわゆる対応負担の問題というのは生じ得る部分というのが③でございます。
 ④につきましては、双方ともされていないケースで、権利の有効性については一切争っていないというケースですから、侵害問題だけが判断されるという部分ということになります。
 その下の四角は、取下げ、和解になったケースなんですけれども、判決の分析ができないものですから、詳細の内訳はわからないんですけれども、右半分と左半分だけの内訳はわかります。すなわち無効審判の請求があったものとなかったものの内訳だけは正確にわかりますので、それを調べてみたところ、39対61ということで、若干無効審判の請求があったものが多いというふうな形になっております。
 それが上の2つのグラフからわかることでございます。今、申し上げたのは侵害訴訟から見たときの有効性の争いがどうなっているかということなんですけれども、もう一つ下の網掛け部分の⑤、⑥について御説明したいと思います。これは無効審判事件から見たときの侵害の争いがどうなっているかということを表すグラフでございます。すなわち、特に2年7か月間に侵害の争いが存在しない状態で、事前予防的に出された無効審判、いわゆる独立系の無効審判と呼んでいるんですけれども、独立系無効審判がどの程度あるかというのが⑤の部分です。563 件、これは今の無効審判の61%に相当します。そうしますと、逆に残りの39%はどこかと言いますと、上の図の②、③、②’、③’の部分が侵害訴訟とともに出された無効審判、いわゆる侵害訴訟系の無効審判というふうに呼んでおりますけれども、それが39%です。したがって、ほぼ6:4の割合で独立系の無効審判の方が多いということがわかります。
 更に、先ほど今回の改正で異議申立てと無効審判の統合・一本化を計画していると申し上げました。それが年間2,000 件くらいだと申し上げました。その部分を図に表したのが⑥の部分です。点線で囲ってございます。
 これは2年7か月の数字ですから、その2,000 件を2年7か月分に換算して計算しますと、この増加分は4,252 件ございます。これは全体で言いますと、⑤と⑥を合わせたものが93%、グラフの中で言いますと、11%と82%を足した数字になりますから、93%に相当します。残りの7%が②、③、②´、③´に相当する部分になります。
 どういうことかというと、改正後の姿におきましては、独立系の無効審判が90数%、7%が侵害ともに起こる無効審判ということになります。そういった大体の規模になると考えていいかと思います。
 こういう背景があるものですから、前回の会合でユーザーからのヒアリングをしたときに、侵害訴訟とともに起こる無効審判での有効性の争いということと、事前に、あるいは独立に起こす無効審判というものを峻別して考えるべしという議論が出たのはこういう背景もあるということでございます。
 次の図でございますけれども、資料3の図2です。これは何を言っているのかと言いますと、これはキルビーの権利濫用の抗弁、これは抗弁でございますから、必ず判断を示さなければならないというわけではないということで、実際に権利濫用の抗弁が申し立てられて、しかもそれに対して有効・無効の判断を示さなかったもの、あるいは示したものという内訳がどうなっているかということを示す図でございます。
 上半分は権利濫用の抗弁がないとされた先ほどの40%という数字でございますが、その中で網掛け部分は、それぞれ有効又は無効と判断したものでございます。網掛けがない③⑥という部分が判断しなかったものでございます。この判断しなかった理由のほとんどのものは、そもそも権利範囲に入っていないので非侵害になる、したがって、侵害訴訟における非侵害という判決がすぐに書けるので、有効・無効については判断する必要がないということで判断をしなかったものでございます。
 したがいまして、キルビー判決の抗弁というやり方で見ますと、ある種合理的な面がありますのは、必ず有効無効についての決着を付ける必要がない。そうしなくて、侵害かどうかの紛争の解決だけに着目をすれば良いという意味ではかなり合理的な面があるというのがここでわかります。
 他方、逆に言いますと、侵害訴訟で有効・無効の判断を求めても、必ずしも判断してもらえないケースがあるということとの裏腹だろうと思います。
 最後の図3でございますけれども、これは判断の相違ということについて、ユーザーからもいろいろ指摘を受けておりますので、調べてみたものでございますけれども、特許庁の無効審判の審決と、裁判所でのキルビーに基づく有効性の判断、両者が出そろった案件というのが今の時点で51件ほどあります。51件の内訳を調べてみたのが、図3の表でございます。網掛けの部分が相違した部分でございます。特許庁が有効と判断して、裁判所が無効、無効というのはキルビーにおける無効理由が存在することが明らかという基準でございますが、それでもって無効と判断したのが3件ございます。
 その逆に、特許庁が無効と判断して裁判所が有効と判断したのが1件。この3件の部分は本来であれば少ないはずなんです。なぜかと言いますと、明らかに無効理由が存在するという基準で侵害裁判所では判断をされているわけですから、その判断基準で無効であるとされたもので、特許庁が無効でないとするというケースは本来少ないはずなんですが、実は3件あります。
 ただ、中身を見てみますと、下に細かく書いてありますが、中身を見てみますと、判断基準自体が違ったのは少なくて、主張が違うとか、あるいは途中で事情変更が生じたというケースが多いんですけれども、この3件がございます。
 それから、1件、特許庁が無効、裁判所が有効としたものがありますが、これはある種自然なケースでして、明らかに無効理由が存在するという基準で考えたときに、特許庁ではどっち付かずではなくて無効だと判断することは十分あり得るわけですから、1件というのはあり得るケースではございます。
 ただ、これから言えますのは、巷間言われているほど判断の相違はないということです。ちなみに行政訴訟系ですと、審判の結論と審決取消訴訟の結論とが食い違うケースというのは25%ございます。
 侵害訴訟ですと、第一審と第二審の判断の相違率は18%になります。この3件と1件を足して51件で割りますと、8%ですから、25%、あるいは18%に対する8%というのは、必ずしも判断の相違の率としては高いというわけではないということが言えます。 もう一点言えますのは、明らかに無効理由が存在するという規範の下に置いても、なお判断がそれほど違っていないわけですから、実際上明らかに無効理由が存在するということの本当の意味はどの辺にあるのだろうという疑問も生じるということだろうと思います。
 本文に戻っていただきまして、3ページのところですが、産構審の紛争処理小委員会で本件につきまして審議をしていただいた結果を御紹介してございます。
 まず「裁判所と特許庁の連携について」でございますが、先ほどの議論にも出ました進行調整、取り分け侵害訴訟あるいは無効審判を必要的中止にすることについて検討していただいていたんですけれども、訴訟の進行妨害になりかねないのではないかとか、あるいは訴訟経済上好ましくない、あるいは、侵害訴訟の末期に無効審判が請求されて、無効審判を先にするとなると、非常に訴訟の決着が遅くなってしまうとか、あるいは全面的に必要的中止をすると、訴外第三者の無効審判まで急がなければならなくならないかとかいった議論が出されまして、こういった案は益が少ないという意見が大勢を占めております。したがいまして、今、できる手としては、進捗状況に関する情報の共有を裁判所と特許庁との間で進めることによって、現行の裁量的中止規定、これを活用するなどの機動的対応を図ったらどうかという点が小委員会での結論になってございます。
 情報の共有に関しましては、権利の有効性に関する特許庁の見解を、求意見制度あるいは嘱託鑑定制度のような形で侵害裁判所に対してインプットできるような制度を考えたらどうかという検討もされたんですけれども、いわゆる求意見制度とか嘱託鑑定制度では特許庁自身が無効審判のように当事者の言い分をきちんと聞いて判断するという手続になっておりませんので、その点でもかなりの不十分さがあるのではないかということが指摘されました。
 そうなりますと無効審判との間で、特許庁内で判断の相違が起きかねないという問題があるんではないかということで、更に慎重に検討すべきという結果が出てございます。
 それから「侵害訴訟における当事者の主張立証情報の入手」ですが、これも前回会合でユーザー・サイドが言っていたことですけれども、侵害訴訟におきましては、クレーム解釈に関する主張が、裁判所と特許庁の無効審判との間で食い違うことがよくあります。侵害訴訟では権利者は当然クレーム解釈を広く主張します。相手方はその逆です。
 それから、無効審判の場では、無効にならないためには権利は小さい方がいいので、権利のクレーム解釈をできるだけ小さく権利者は主張して、無効審判請求人はその逆です。
 そういう形で両当事者の間で、侵害訴訟の場と無効審判の場でクレーム解釈の主張が完全に裏腹の関係になるということがよくあります。こういう状況において、単に判断結果の統計データだけを見て、判断の相違はないと済ませられないのでないかという指摘が出されました。
 そのときの議論では、無効審判の方で職権でもって、当事者に侵害訴訟におけるクレーム解釈の主張を質すとか、あるいは職権探知機能を使って裁判所での審理のやり取りを特許庁が調べることができるようにしたらいいんじゃないかという議論が出ておりました。
 他方、それを超えた有効性判断の在り方につきましては、4ページの②に書いてあるんですけれども、意見がほとんど収れんしませんでした。2点ございますけれども、そもそも現状をどう評価するか。今の状態でよしとするか。あるいはこれでも問題ありとするかという現状の評価につきまして、まっ二つに意見が分かれております。
 では、それを前提として、侵害訴訟における有効性判断の在り方、例えば無効理由が存在することが明らかでない場合も含めて全件について判断するかとか、そういった議論と、それから現在のキルビー判決の状況の方が迅速性にも資するし、いいバランスなんだという立場ということで、まっ二つに分かれておりましたので、その場での結論は出ていないという状況になっております。
 それから、一番最後の5ページでございますが、「行政審判と民事訴訟の違い」と書いておきました。表になってございます。無効審判は、いわゆる準司法的な位置づけということで一審省略がされているという説明がされているんですけれども、やはり行政審判ですから、簡便・安価・迅速というものを旨にして制度設計をされておりますので、民事訴訟である侵害訴訟とはかなり違いがございます。
 したがいまして、前回ユーザーの方が言われていたように、侵害の争いが生じた局面での有効性判断と、侵害の争いが生じていない局面での有効性判断との切り分けというように、ある種二面性を持ったニーズというのが出てきているというのがこの辺からも伺えるということです。
 もう一点は、仮にこれを整理しようとした場合には、着目すべきところは、侵害訴訟が起きたときの有効性判断をどうするかということなんですが、その際には無効審判の代替可能性と言うんでしょうか、無効審判が今担っている機能をどの程度代替すれば、無効審判を遮断してもいいのか。それができないとすれば両立するのか。両立させようとしたら、どうしてもダブルトラックの問題は解消し切れないですから、それでよしとするのか。あるいはそこに目をつぶった上で完全に整理し切るのかという観点から検討する必要があるだろうと思います。
 時間がなくなってしまったんですけれども、資料4だけ御説明したいと思います。
 先ほどから調査官の議論が出ておりますが、今の背景事情や特許庁がどういう人を送っているかというのがそこに書いてございます。ただ、1ページの3.に書いてございますように、調査官制度につきましては、裁判所法57条に「裁判官の命を受けて、事件の審理及び裁判に関して必要な調査を掌る」とあるだけです。
 したがって、氏名の公表とか、除斥・忌避の規定の適用もございません。
 それから、専門委員制度の方で論じられているような関与の範囲ですとか、あるいは権限と義務に関する詳細な規定というものは一切置かれておりません。こういうことが多分ユーザーから見たときの問題点として写っているんだろうと思います。
 その観点で次のページを見ますと、ユーザーの意見・提言ということで、これは見るときに意識しておかなければいけませんのは、先ほども議論の混乱が見られましたが、調査官制度と専門委員制度というのは、今、別途検討されています。知財の分野においてはもともと調査官制度がございます。その関係で、専門委員制度と調査官制度をどう区別するのか。あるいは両者一体のものとして取り扱うのかというところも明確に意識しておかないといけないと思います。
 その点では、ユーザーの意見というのは、ある種の一般論だと思いますけれども、そこに書かれたようなことが指摘されております。要は3点だと思っていまして、1つ目は、この分野においては、技術及び法律両分野の専門性を持った裁判所の体制にするべきであり、その一手法として、専門委員なり調査官というのがあるんではないかというのが一点。
 2点目は、したがって、深い関与を求める声が非常に強いということ。
 3点目としては、透明性、中立性、公平性。除斥・忌避の規定とか氏名公開とか、反論機会の確保とかいろいろあると思いますが、そういった透明性、中立性、公平性の担保措置に対する要求が非常に強いこと。その3点がニーズだろうと考えております。
 以上でございます。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。
 それでは、次に最高裁判所事務総局行政局第一課長の定塚様から御説明をお願いいたします。

○定塚氏 行政局の第一課長の定塚でございます。よろしくお願いいたします。
 本日はこのような機会を与えていただきまして、ありがとうございました。
 裁判所といたしましては、皆様に裁判所の実情を知っていただきまして、ユーザー・ニーズにこたえるいい制度ができればなと思っております。
 先般、新聞でも取り上げられましたけれども、私どもはまな板のコイでございまして、コイが物をしゃべったり、包丁を持ってはいけないと言われておりますけれども、言葉で想いを伝えないと、コイの心は伝わらない。昔から恋心というのはなかなか伝わらないということでございますので、今日はちょっと言葉で説明させていただきたいと思っております。
 また、コイは盲目などと申しますけれども、私どもはしっかり目を開いて、耳も大きく開いて、ユーザー・ニーズの把握に努めてまいりたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。
 訴訟というものは非常にデリケートな生き物でございまして、ちゃんとよく面倒を見てあげると、まっすぐに効率的にどんどん進んでくれる。しかしながら、放置したり、扱いを間違ったりすると、すねて動かなくなったり、暴れたり、崖から落ちたりするという特殊性を持っております。同じ生き物でも、食べ物とか、生態とか全部違っておる。例えば貸金訴訟と労働事件は同じように扱うと、これはどちらかが破綻するという特色がございます。
 特許事件につきましても、侵害訴訟と審決取消訴訟ではやり方が大きく異なるということがございまして、それぞれの訴訟に応じたデリケートな生き物に沿う形で訴訟というものは運営し、制度は設計していかなければならないのかなと思っておるわけでございます。
 もちろん、我々はこれからどんどん改善していかなければならないと思っておりますけれども、是非生き物である知財訴訟の実態、生態をよく御覧いただいて、十分御理解いただいた上で、知財訴訟という生き物が、決して崖から落ちたり、動かなくなったりしないようにお願いしたいと思っておるわけでございます。
 前置きはそのくらいにいたしまして、お手元にお配りいたしました資料に基づいて御説明させていただきたいと思います。
 最初の5−1という資料でございますが、これは知的財産権が侵害されたということで差止め、あるいは損害賠償を求める侵害訴訟の第一審についての新受、平均審理期間をまとめたものでございます。
 下の棒グラフの赤い棒が新受件数、青い棒が既済件数、平成14年度のものは7月末までのもので、今年度末を推測したものでございます。
 これで見ますと、おおむね赤い新受件数は右肩上がりで推移しております。ここ5、6年は600 件前後で高値安定ということでございます。
 青い既済件数は平成10年、11年ころから急激に伸びておりまして、新受件数を大幅に上回っております。
 また、赤い折れ線グラフは平均審理期間でございますが、これは今年の7月現在、平成5年ころまでの30か月から半減するに至っておるわけでございます。これは後で御説明する裁判所の人的、物的資源の集中的投入、そして、東京地裁、大阪地裁の審理方式の大幅改善、更に先ほど日弁連の藍谷先生からおほめを頂いたから申し上げるわけじゃありませんけれども、そのような訴訟の改善に非常に協力していただいている末吉弁護士や、企業の方々の御努力の賜物ではないかと思っておるわけでございます。
 次のページを御覧いただければと思っています。
 これは控訴審の新受・既済件数と、平均審理期間を示したものでございます。新受・既済件数ともに右肩上がりで推移しています。平均審理期間は、本年は10か月を切るところまで短縮してきています。
 次のページを御覧いただければと思います。
 5−3ということでございますが、これは特許庁の審決に不服がある場合に、東京高裁に対して提起する審決取消訴訟、これの新受件数、既済件数、平均審理期間を示したものでございます。
 これは、審決の数が増加したことなどの原因によりまして、新受件数が大幅に増加傾向にあります。平成5年が200 件を切っておるわけでございますが、今年の予測は600 件を上回るという状況でございます。これは平均審理期間は約一年というところまで短縮されてきておるところでございます。
 次のページを御覧いただきますと、これは侵害物件の製造とか、あるいは販売を仮に差し止めるという仮処分事件の新受件数、既済件数、平均審理期間を示したものでございます。ここ1〜2年ほどは平均4.5 か月という迅速な審理が行われておりまして、商品サイクルが短くなっている今日では、不法な侵害を急いで止めるというために機能しているというふうに思っております。
 ここまでが、一応知財訴訟の概況ということであります。
 次に、ここから後ですが、東京、大阪の裁判所にどういうふうに管轄集中とか、体制整備をしておるのか、あるいはそこの審理状況はどういうふうになっているのかということを御説明させていただきたいと思います。
 5−5でございます。これは、平成10年に施行されました民事訴訟法の改正によりまして、特許権、実用新案権などの事件が地元の裁判所だけではなくて、東日本は東京、西日本は大阪というふうに訴訟を提起できることになりました。これによりまして、全国どこの事件でも東京と大阪での専門的な審理判断を受けられるようになっており、現在では、特許と実用新案で約9割の事件が東京、大阪に集中するところまで来ております。
 1ページめくっていただきますと、東京、大阪はそのような状況を受けて、今、どういうふうな専門的処理体制を組んでいるかということでございます。
 東京地裁を見ていただきますと、平成9年は知的財産権部というのは、裁判官1か部8人体制、調査官5人体制でございました。現在では、3か部の15人体制ということで、調査官も7人に増員させていただいております。大阪も裁判官が3人から5人、東京高裁は裁判官が3か部10人から4か部16人というふうに増加しております。
 そのほかに、大阪高裁が集中部ということで、知的財産権訴訟を集中的に処理しております。合計数が41名ということになっております。41名というと、少し少ないというふうに思うかもしれませんが、実は、東京、大阪に次ぐ、第三の裁判所である横浜地方裁判所は、今、13階建てで日本大通りに面してきれいに建て直しができておりますが、その13階建ての横浜地裁の民事部、これが40人を少し下回るということでございますので、横浜地裁、あるいは名古屋地裁もそれよりも若干下回っておりますので、横浜、名古屋よりもある意味では大きい特許の専門的な処理体制ができ上がっておるというような状況でございます。
 次に資料の5−7を御覧いただければと思います。
 では、東京、大阪ではどういうふうに審理期間が減っておるのかということを見ていただきますと、左の青い棒が東京、真ん中の紫が大阪、右側の黄色のものに比べまして、3分の2、半分というような審理期間で特許事件の審理が終わっているという状況でございます。
 1ページめくっていただきますと、5−8でございますが、これは先ほど来、お話も多少出てきておりますけれども、来年度の通常国会に提出予定の民事訴訟法の改正でこのようなことが行われているという予定だと聞いております。
 これは、まず、東京地裁、大阪地裁に専属管轄制度、特許、実用新案など難しい事件につきましては専属管轄と。
 更に、意匠とか商標、著作権、不正競争、これにつきましては競合管轄ということで、地元の裁判所でも起こせるけれども、東京、大阪の専門的な判断をもらいたいという場合には、東京、大阪でも起こせるというような競合管轄制度になります。これによりまして、東京、大阪の裁判というものを受けることができるようになるということでございます。
 なお、下の方に、先ほど来若干お話がありました専門委員制度というのが書いてありますけれども、これは、いずれ法務省の小野瀬委員の方から御説明があるかと思いますけれども、基本的にこれも来年度の民訴法改正で導入されるのではないかというふうに考えております。
 知財事件では、調査官が必ずしも得意ではないヒトゲノムとか、あるいは医療、医薬の関係、それからコンピュータ・プログラムの関係、こういうものでは非常に活用されるのではないかというふうに私どもは思っております。
 それでは、東京、大阪では一体どんな審理が行われているのかということで、後ろに参考資料というものが1〜3ありまして、これは雑誌に発表された論稿でございますが、提出させていただきました。
 お正月休みの読み物、年賀状書きの合間に寝っ転がって御覧いただければ有り難いなというふうに思っております。
 簡単に申し上げますと、東京地裁では、当事者の事前準備の充実。これは飯村委員が盛んに行われているところでございますけれども、インセンティブシステム、裁判にもインセンティブという考え方を入れようと。訴訟で早く資料を出して、早く主張を出せば、裁判所にいい裁判をもらえると、遅く後出しをするようなところは、どんどん負けていくという当事者の事前準備の充実、あるいは当事者と裁判所の共同作業による審理計画の策定と実施。
 それから、先ほど来も出ていますけれども、裁判所が心証をできるだけ早期に開示することによりまして、紛争を究極的解決に向けて早期に解決するようにする。積極的に裁判所が関与していくというようなことなどを柱とするものでございます。これは参考資料1と参考資料3に記載している内容でございます。
 間に挟まれました参考資料の2というものがございまして、少し見にくいと思いますが、一番後ろに実は審理モデルという縦長の表が提示されています。これは大阪地裁方式でございまして、大阪地裁では、各口頭弁論期日や準備期日に何をやりますと、原告は何をやっていただきますと、被告は何をやっていただきますということをあらかじめ訴訟の最初の段階で配布いたします。基本的にこれに基づいてやっていけば、1年ぐらいで終わるというようなことで、大阪でも非常に工夫をして審理短縮に努めています。
 これを御覧になっていただきますと、裁判所がデリケートな訴訟をどういうふうに扱っているかということが、御覧になっていただければなというふうに思っております。
 続きまして、先ほどの資料の5−9を御覧になっていただきまして、これは以前にマスコミなどで、我が国の訴訟が外国に比べて非常に劣っておるので、どんどん訴訟が外国に流れていってしまう。これを訴訟の空洞化というふうに言えるということで報道されたことがございました。
 そこで、そんなことがあってはいかぬということで、裁判所も実態調査を行ってみたんですが、①②③と、報道された9件のうち8件がアメリカの市場で差し止めたい、侵害されているのは、アメリカだということなので、日本では侵害されていなくて、アメリカで侵害されているからアメリカを止めたい、そういうときにはアメリカで訴えると、だからアメリカで訴えなんだというのが8件ございました。
 重複していますけれども、あとの7件は、日本ではクロスライセンス契約がある。あるいは、そもそも我が国の特許権が成立していないということで、日本では訴訟提起の余地がなかった、これが7件でございます。
 3番目、これはアメリカの方が高い金が早く取れるという可能性があるので、被告を困らせてやるということもありまして、アメリカで訴訟を起こすと、あるいは陪審裁判になると、どんな金額になるかわからないから、不確定要素があるから早く和解できると、こういうのを利用しようということで、アメリカで訴えたものが1件ございます。
 こういう調査した結果から申しますと、空洞化と言われますと、私どももびっくりするわけでございますけれども、是非ともその内容とかを実証的に分析していただいて、そして対策、対応策をこの検討会でも御検討いただきたいというふうに思っております。
 次の5−10でございますが、これは『判例タイムス』で取り上げました座談会の様子でございます。中山教授にも御参加していただいている座談会でございますが、ここで熊倉弁護士、あるいは近藤弁護士、いずれも知財の専門的な弁護士でいらっしゃいますが、司法の空洞化というのはミスリーディングだということが言われておりますので、御参考までに付けさせていただきました。
 更に、次の5−11というものでございますが、これは今年行いましたジュリストの座談会でございます。これも中山先生に御参加していただいているわけでございますが、ここで弁護士の片山さんが、最近は日本の訴訟が早くなって、ほぼ1年で結果がわかると、一般的に言えば、アメリカよりも日本の訴訟の方がずっと早くなっているというような御指摘を頂いているので、手前みそで非常に恥ずかしいことでございますけれども付けさせていただいております。
 以上が空洞化の問題についてでございます。
 最後に個別論点につきまして、簡単にお話しさせていただければというふうに思います。
 先ほど申し上げましたように、まな板の上のコイでございますので、こうしたらいいとか、ああしたらいいなんていうことを申し上げるつもりはございませんで、こんなふうな論点があるんではないか、あるいはこういうような実情があるので、そういうのを踏まえて御議論願いたいと、そういう視点を提供するものでございます。
 まず、侵害訴訟と無効審判の一元化の問題でございます。これは確かに一元化になれば大変便利なんだろうなと。ですから、ユーザーの皆様方が、これは是非実現すべきだというのも非常によくわかるところでございますが、他方で、負の部分、マイナスの部分、陰の部分というのがございます。そちらにつきましてどういうふうに処理していくのか、どういうふうに考えていくのか、そのトータルのバランスの中で制度設計というものを考えていっていただければなというふうに思っているわけでございます。
 1つは、審理期間の長期化でございまして、もう1つは訂正審判の問題でございます。あるいは訂正請求の問題でございます。もちろん、取消訴訟の排他的管轄をどうするかというような法律的なこともございますけれども、それは学者の先生方にお願いするとして、我々実務を行っている者からすると、今の2点をどういうふうに考えていけばいいのかなというふうに思っております。
 審理期間の長期化というのが非常にわかりにくいということがございましたので、資料の5−12ということでまとめてみました。これは全くのイメージ図でございます。
 現在の侵害訴訟を一番上の図というふうにいたしますと、まず、2つの要因で長くなっていくのかなというのがございます。
 1つは、明白な無効の判断から無効の判断に変わるということになって延長するんだと。例えば、先行する公知技術があることが論文等で判明すれば、これは明らかに無効であるというふうにすぐわかるということだと思います。しかしながら、その進歩性の判断とか、その時代の当業者が容易に想到できたかどうかというような判断というのは、必ずしも明らかではないと、それをがっちりやるのかどうかというところが問題になるんだと思います。
 現行においては、そういう場合には、明らかな無効とは言えないと、権利濫用とまでは言えないということで、侵害訴訟をどんどん進めていくということができたわけでございます。
 そこで、これを取るということになりますと、実務感覚、これは東京等の裁判官に聞いたところでは、半年ないし1年程度延びるんではないかというふうに言っておられます。
 第2番目、こちらの方は、無効審判がなくなって、特許庁の無効審判の代わりを裁判所が全部するということになる、これによる審理期間の延長でございます。
 結局、今までは特許庁が職権主義で、たくさんの資料を集めてこられて、それを裁判所の方に頂いて、そして早めに明らかな無効かどうかを判断するということが可能であったわけでございますが、特許庁で行われる無効審判の過程がなくなってしまうということになりますと、裁判所があれを当事者にお願いして、あんな資料ないかな、こんな主張ないのということで当事者主義で少しずつ資料を集めていくという作業を行うことになる。無効審判がなくなることによって、その分裁判所が肩代わりをするということになりまして、この期間が相当程度延びるだろうということでございます。
 ただ、裁判所は、これだからこの制度は困るということではございません。我々はトラウマのように侵害訴訟が早くなければいかんと、商品サイクルが短いんだから、とにかく1年を目指せということで、先ほどの論稿にもありますけれども、飯村裁判長ほかは、血のにじむような努力をして1年ぐらいまでにもってきたわけでございます。これが、また2年、3年まで延びてもいいということで、ユーザーさんの方で御決断いただくのであれば、裁判所は、そういう制度というのはもちろん可能でございまして、一元化というのは裁判所はできないと反対するわけではありません。是非、負の部分、陰の部分ということも考慮に入れた上で制度設計をしていただければ有り難いなというふうに思っておるところでございます。
 また、訂正の問題も非常に厄介な問題でございまして、我が国では訂正というのは非常にいい制度というふうに思われているんだと思います。ただ、これが訴訟の中に入ってきますと、侵害だと言って訴える、そうすると無効の抗弁というのが出てくる。無効の抗弁が出てきて、無効審判が行われますと、通常無効審判の過程では、クレームを少し小さくして訂正しますと、こういう訂正請求が行われるわけですが、裁判の過程でそれが行われる、無効の抗弁が出てきた段階で、原告がそれでは訂正しますと言ったときに裁判所はどうすればいいのか。訂正というのは、新しい特許を認めるという作用なので、これは特許庁で行う作業だと思います。実際上、裁判所は、一つの技術的な思想が明確になっているかどうかと、新しい思想なのかどうかというような判断がなかなかしにくいということがございますので、特許庁でしていただくことになる。
 仮にそうしますと、裁判所は訂正の再抗弁が出た段階で、訴訟をストップさせて、訂正の結果がどうなっていくのか、これをずっと待っていなければいけないという仕組みになるのかなというふうに思います。
 仮にそうではないとすると、訂正というものは訴訟の過程ではさせないと、訂正は一定の期間しか入れないと、何かこういう仕組みをつくっていくのかなというふうに思っております。
 これは、訂正制度というものに対して、どういうふうに今後やっていくのかという大きな問題にかかわるのかなというふうに思っておりますので、この辺りのところも十分御配慮いただいた上で検討していただければ有り難いかなというふうに思っております。
 専門家の活用というのも論点になっておりますけれども、この点につきましては、調査官制度の現状、あるいは今後導入予定の専門委員制度も十分に御検討いただいた上で制度設計をしていただければというふうに思っております。
 調査官は他国にはない、我が国の冠たる制度でございまして、隣にいらっしゃるから言うわけではございませんが、特許庁からえりすぐりの方々、非常に中立・公正であり、優秀な方々が20人、それから弁理士会がいらっしゃるから言うわけではありませんけれども、この4月から一人、非常に優秀な方に来ていただいているというような状況でございます。
 常勤の裁判所職員でございまして、朝、おはようと言ってあいさつをして、これは裁判官の会話ですけれども、昨日の夜記録を読んだけれども、3つ争点があったけれども、1つ目と3つ目はいいな、もう2つ目の争点でがっちりやろうと、この2つ目の争点だけについて報告書を書いてという形で行うと、そういう依頼もたくさんあります。
 そうしますと、完全に心証というものが出てくるわけです。もうこの論点に絞っているなと、これがまさに常勤の裁判所の職員であるから、そういう信頼関係の下でやっていけるという制度でございます。これが、外の方から来ていただいてやるということになれば、そういうこともなかなかうまくいかないかもしれませんし、あるいは透明化ということになったときに、今と同じようなやり方ができるかという問題もあると思います。
 このように、現在、調査官制度というものがどういうふうに行われているかということを是非御理解いただいた上で、実証的な議論をしていただければ有り難いというふうに思っております。
 これらの点も含めまして、現在の知的財産権訴訟の実務というものを是非ビビッドに御理解いただく機会というのを、次回以降に少し時間をちょうだいして、飯村委員の方から実情を御紹介させていただければ有り難いというふうに思っております。
 裁判所といたしましては、是非ユーザーニーズにこたえる良い制度ができるように、今後とも資料提供を含めまして、全面的に協力してまいりたいというふうに思っております。是非とも、皆さんのいい知恵を集めて、決して生き物である知的財産訴訟を殺してしまうことがないように、実務の現状を踏まえた、実証的な検討をしていただきまして、知財訴訟が、21世紀の国際戦略として目的地に向かって生き生きと走ることができるよう、すばらしい仕組みができるようにお願いしたいというふうに思っております。
 以上でございます。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。それでは、時間の制約がございますので、暫時お二人の御説明についての質疑をお願いしたいと思います。
 どうぞ、櫻井委員。

○櫻井委員 大変興味深いお話を頂いて、ありがとうございました。
 特に小林さんにお尋ねしたいんですけれども、今、無効の判断を侵害訴訟でどうやるかということを考えたときに、ストレートに無効ということになってしまうと、また少し難しい問題が出てくると思うんですが、明らな無効を判断するという場合には、先ほど行政審判の代替性ということをおっしゃいましたが、実際にはどのぐらいの手続が必要だとお考えになっているのかということをお伺いしたいと思います。
 と言いますのは、先ほどの弁護士会の方もおっしゃっておられたんですが、明らかに無効かどうかということがわからないというのは、これは私は実体要件の話ではなくて、手続の話だろうと思うんです。その場合に特に特許庁の人に出てきてもらって、その判断がきちんとできれば一番いいと思うんですけれども、訴訟参加をしたらどうかとか、あるいは紛争処理小委員会の方で求意見制度というような御意見もあったかと思いますが、そのときに「明らか無効」かどうかについて特許庁が判断をすると、仮決定とも言えるかもしれませんけれども、そういうことをするときの手間暇と言いましょうか、どのぐらいの審理期間、あるいは手続をかけるとわかるんだろうということをおたずねしたいと思います。

○小林委員 済みません、侵害訴訟の方では、有効性の判断を我々がしているわけではないので、侵害訴訟の方のお話はわからないんですけれども、無効審判につきましては、直近の数字で言うと、請求から審決まで、今、若干短くなっていますので、13か月ぐらいだと思います。
 他方、実は、まだまだ改善の余地がありまして、その中でかかっている期間は3つあるんですけれども、若干お恥ずかしい話ですが、いわゆる事務処理期間です、これが意外とかかる。
 それから、当事者がボールを持っている期間、すなわち応答期間です、これが非常に長くて、訴訟では大抵は1か月ごとぐらいに期日を入れていくんですけれども、無効審判の場合には、通常の国内のユーザーでも60日すなわち2か月程度です。外国人は6か月ですけれども、そういった当事者がボールを持っている期間というのがございます。その残りが実体審理の期間でして、審判官合議体が判断をしたり、審決を書いたり、アクションを起こしたりしている期間なんです。そういうふうに考えますと、13か月という数字も実はまだまだ改善の余地があるというふうに考えていまして、そこをきれいにした後で、無効審判を特許庁の審判官がやったときにどのぐらいの期間でできるかといいますと、今よりは改善するだろうと思っています。
 それから今回の改正に関係して、運用の改善もいろいろ計画しておりますので、多少の改善になるだろうと思っています。それが一点です。
 では、それと同じことが、侵害訴訟で起きるのかどうかということは、訴訟の方の事情がわからないので何ともお答えしようがないんですけれども、紛争処理小委員会で議論が出たときには、いわゆる求意見制度ないしは嘱託鑑定制度というのを強力に主張される方々もおられたんです。ただ、それをやると、手続的にうまくつながらないんではないか。すなわち、無効審判であれば、当事者の攻撃、防御が尽くされた上で判断もできるし、そこに特許庁が関与しているわけですから、直接意見を聞くこともできる。だけれども、求意見制度とか嘱託鑑定制度という形で、そもそも訴訟で資料収集されて、それだけを見せられて判断を出すということで本当にうまくいくのかどうか、そういうふうな意味での問題指摘があったということでございます。
 その結果、余りうまくいかないんじゃないかという声が多かったというのが一点ございます。
 それから、幾つかの議論が絡まっているかと思うんですけれども、明らかに無効理由が存在するかどうかということと、無効審判でやっている判断との違いというのは、これは我々も片方しかやっていませんのでよくわからないんですけれども、そもそも無効理由が存在するのが明らかというのは何を意味しているのかということについて、多分いろんな議論があるんだろうと思うんです。
 これは否定されている議論なのかもしれませんけれども、権利濫用の抗弁と引っかけて、明らかに無効と言えないと権利濫用とまでは言えないだろうとおっしゃる方もいます。ただ、それに対しては、御承知のとおり、権利濫用ということと明白性というのは何の関係もなくて、客観的にやればいいんだという方もいらっしゃるので、そうではないのかもしれません。
 また、重大かつ明白な無効と言うんですか、そういうものと引っかけて言っただけであって、余り意味がないんだというふうにおっしゃる方もあります。さらには明らかにというのは、裁判官の心証の程度を表しているのであって、その程度の蓋然性を持って心証が形成できれば無効だという基準で心証が形成されたもので、そういう事案であれば無効だと取り扱っていいんだという趣旨なんですと説明される方がおられる。
 さらには、安全弁ですと、要するに侵害訴訟の有効性判断と無効審判との判断が食い違うことを防止するために、安全弁として区別を付けておくというふうにおっしゃる方もおられる。
 我々にも実はよくわからないんです。であるからこそ、実はユーザーの方から、あれは一体何なのかということと、仮に自分が決められない基準で判断されているのであれば、その基準がわからない以上、両方に請求せざるを得ない、権利濫用抗弁も出すし、無効審判も相変わらず出しますと、そういう行動を取らざるを得ないという話も出てきているだろうと思うんです。その辺のところは、我々サイドからもよくわからない点がありますので、侵害訴訟の方で無効審判と同じことをやったら何が起きるかと、あるいは何があれば同じことができるかというのは、むしろ裁判所からの検討がないと我々からはわかりにくいという気がいたします。

○伊藤座長 その先の議論は、また小林委員も構成員ですから、御一緒に考えていただければと思います。
 では、先に加藤委員お願いします。

○加藤委員 最高裁の定塚課長にお伺いしたいんですが、コメントも含めてでございます。資料5−7に、これは東京と大阪地裁、ほかの地裁の審理期間の比較でございますが、コメントを申し上げますが、特に我々産業界の訴訟実務にも関与している者は、東京、大阪のスキルアップをとらまえて、アメリカのバージニア・ロケット・ドケットに対する新幹線ドケットという言い方をさせていただいて、その意味で敬意を表しているわけでございます。
 ただ、先ほど地裁への競合管轄が認められたゆえ、現在90%が両地裁に集中していると。そうしますと、表5−7に示す東京、大阪以外で長くなっているところが与える影響というのは、余り大きくないということでございますね。

○定塚氏 件数という意味ではそうです。

○加藤委員 もう一つ確認させていただきたいのは、我々ユーザーから見ても、非常に早くなった方が有り難いんですけれども、本当にこれ以上縮まるのかという素朴な質問がございます。
 仮に先ほど御指摘があった、侵害訴訟の中で、原則無効判断をされると、当然感覚としては6か月から1年延びてくるだろうという推測をおっしゃられたかと思います。それを前提にした上で、大体専属管轄を入れて、おおむね2年以内というのは見通しがつくんでございましょうか。約束してくださいとか、そういうあれではなくて、感覚的にユーザーから見て、今日の冒頭のヒアリングにもありましたとおり、やはり多少長くなっても、産業界は恐らく1つの土俵の中で判断してほしいというのがベースにあると思うんです。その場合、期間的におおむね専属管轄が達成されたとして、2年程度で結論が得られるのかという、その辺の感覚的なところでよろしいんですけれども、お教え願えると有り難いんですが。

○定塚氏 まず、これ以上短縮できるかということですけれども、そちらの方はよろしいんですね、そちらもですね。

○加藤委員 そうです。

○定塚氏 それにつきまして、先ほどお話しさせていただいた、参考の1と3にも随分書いてあるんですが、飯村裁判長ほか、東京地裁では、ラフジャスティスはやめようと、これはこれからの知財訴訟についての行動指針になって、企業に行動指針を提示するようないい裁判を提示しようと、その中で一番合理性がある短縮化としてはどこができるだろうかと、こういう視点でスタートラインがございます。
 そういうことで、今の合理化というのを更に推し進めていくと、今度はラフジャスティスになる懸念というのが出てくるというふうに思っております。
 例えば、仮処分でございますと、今、4.5 か月でできています。先ほどは仮処分と本訴で違いが出てくるじゃないかという御指摘もございますけれども、仮処分というのは、疎明というところで、一応確からしいのであれば止めようと、保証金積みまして止めようという制度でございます。ある意味では、本訴に比べると、ラフジャスティスを行っているというような部分があるわけで、心証の程度が低くても一定の結論を出してしまって行ってみようという制度を持っているわけでございます。
 これが本訴の方で仮に行われるようになるとすれば、それはかなり行動指針としては、危いものが出てくるのかなということでございますので、行動指針になるに足りるいい基準を提出するには、これは後で飯村委員の方からお話しいただいた方がいいのかもしれませんけれども、1年というのが基本的には1つの目安ではないかということでございます。
 それから、一元化した場合にどれぐらい延びるところでとどまるのかと。これはまさにどういう制度設計を仕組んでいくのかということだと思います。無効審判の過程というものを全くなくしてしまうのか、あるいは先ほど少し御質問がございましたけれども、私の聞くところでは、韓国では優先審判制度というのがあって、3か月ぐらいで特許庁が有効、無効の判断をする。侵害訴訟になって、無効という抗弁が出てくれば、あるいは明らかな無効でもいいんですけれども、抗弁が出てきた段階で、特許庁にお願いをすると、特許庁が3か月でぱっといろんな判断をしてくれて、資料もちゃんとしたのが出てくると。もし、こういうような仕組みを考えるのであれば、それは多分それほど延びないでできることになるのかもしれません。
 あるいは、どんな事件でも無効判断してくださいというのではなくて、まさに先ほど小林さんの方からも御指摘がありましたけれども、もう侵害ではないことは明らかですというような場合まで、無効を判断させるのではなくて、そういうのはどんどん侵害訴訟で終わらせてもらえるというような仕組みをつくるか、つくらないか、これでも随分違ってくると思います。
 ですから、どういう制度設計をするかによって大きく変わってくると思うんですが、先ほどの私どものイメージ図というのであると、明らかを取ることによって、半年とか1年たってしまうし、審判制度をただやめてしまえば、先ほどの小林さんの話ですと、13か月ですか、私どもの表では14.3か月という数値を入れさせていただいておりますけれども、それぐらいの期間というものが延びてしまうということを1つの例として出させていただいております。
 これは、制度設計いかんによっていろいろ変わり得るところだとは思います。

○伊藤座長 先に飯村さん、手を挙げられましたね。

○飯村委員 小林委員に対する質問なんですけれども、フローの件数が入っている図ですが、特許庁の関係ではないので数字を控えてないかもしれませんが、審決取消訴訟が最高裁に行く事件というのは、年間何件ぐらいあるか御存じでしょうか。

○小林委員 数年に1件ないしは、そんな程度のものだと思います。拒絶査定不服審判に対する審決取消訴訟については被告は特許庁長官なんです。特許庁長官が被告になって最高裁まで行くケースというのは、2〜3年に1件だと記憶しています。
 他方、当事者が争う無効審判の場合には、審決取消訴訟は、審判当事者同士が訴訟当事者になっていますから、そのケースにおいて上告しているケースは、それより多い数があるんではないかと思います。

○飯村委員 本格的な質問なんですけれども、毎年、特許査定があるのは11万件で、審判係属するのが、異議申立てで4000件、それから無効審判では数百件ということなんですが、スクリーニングというような意味合いで考えた場合に、11万件の中で、必要性が生じたときには必ず無効審判請求が起きていますので、その場合には究極的な解決ということを考えて審判をされるのか、大量の事件で、行政庁で限られた人材をどの事件に有効に判断するかという問題かと思うんですけれども、そういう要素というのはあるのかどうか。特に一番上の拒絶査定の不服審判の場合は2万件というような、かなり大きい数字になるわけですけれども、そういう要素があるのかどうか、という点が質問の一点です。
 それから、もう一つは少し観点が違うんですが、法律による行政の原理の実現ということと関連するんですが、審査、審判について、その後、司法チェックが入ってくるわけですが、その中の法律判断について、個別の事件であれば拘束力とか、いろんなことがあり得ると思うんですが、審査基準等に触れた裁判例、それから法律論に触れた裁判例について、裁判所が判断した事項についての事後チェックというのがどの範囲で、それからどういうカテゴリーの事件についてなされているのかということに関連して、審決取消訴訟、その中でも当事者系の事件ではどうか。
 それから、侵害訴訟の中で有効性、無効性を判断して、その中に法律判断が含まれている場合に、それの基準を見直すのかどうか、そのことについては何らかの対応が取られているんでしょうか、その辺についてお聞きしたいと思います。

○小林委員 異議ないし無効審判に、ある種のスクリーニング機能なり、あるいは行政としての判断の一次的な対応、そういった観点で考えているかどうかという点については、そういうふうな位置づけで見ているわけではなくて、取り分け無効審判ないしは異議申立てというのは、権利が既に設定された後の話でして、かつ、大方は侵害訴訟でないにしても、権利を行使したり活用しようとしている局面で争いも起きて請求されているという部分ですので、その点は、ある種優先的に行うとともに、内容については、できるだけ上で引っかからないようにということを大前提として運用がされています。
 他方、拒絶査定不服審判2万件というのは多い数でございます。こちらの方は若干違うところでもあります。と申しますのは、審査の続審と位置づけられていて、例えば出願内容の補正というのが実は拒絶査定不服審判では可能です。
 その意味で言いますと、出願に対する審査手続の続審的な機能もありますから、ある種裁判に行く前の行政庁の中でのスクリーニングと言いますか、そういうふうな考え方もあるような感じはします。
 ただ、それがないからと言って、こちらを片手間でやっていいということは当然意味しないわけですけれども、もともとそこは位置づけが違うのかなというふうに思っています。
 2点目の御質問は、判決の中での判断について、審判部ないしは審査部で行っている判断基準に対しての影響力をどう考えるかということだと思うんですけれども、基本的には、審決取消訴訟の拘束力は、その事件限りということが基本的なことだろうと思っているんですけれども、ただ、そうは言っても、審決取消訴訟は東京高裁専属管轄になっていますから、同じ種類の事件が上がれば同じ判断が繰り返されるということは当然想定されるわけです。
 ですから、我々としても必ずしも同様の判決が複数件繰り返された場合ではない場合であっても、特許庁の考え方を改めるべき視点が示されていれば、1件だけ判決例が出た場合でも、審査基準や運用を改めるということはあります。今までもそういうことはありました。
 逆に運用を変えたところを否定されて元のものに戻したということも、あることでございます。
 そういったことがあるのはどういう場合かというと、メインには拒絶査定不服審判に対する審決取消訴訟、これが多分一番多いと思います。
 次に多いのが、異議申立てに対する決定取消訴訟の場合です。なぜかと言いますと、その両者は特許庁長官が被告になっていますので、その意味では特許庁がそこで主張したにもかかわらず、それを含めて違う考え方の判断を示されたということで、我々としては、より重く受け止めるということでございます。
 他方、無効審判の審決取消訴訟につきましては、先ほども申し上げましたけれども、審判の両当事者が訴訟の両当事者になって、特許庁長官が一切かまないので、我々の意見を言う場所もないし、あるいはそれに対して判断がされたかどうかすらもわからないという状況ですので、その点では、ある種のウォッチングというのは難しいと思っています。
 それが、侵害訴訟に対する判断の場合には、更にそうだと思っていまして、侵害訴訟の中で有効性の判断がされるのは、ここ2年と少しの話ですし、まだそれほど判決理由がないということもあるわけでございますけれども、当事者しか拘束しない前提で示された有効、無効の判断に際して特許法と特許権について判断が示されたという場合に、それをどの程度見るべきかというのは、まだ議論の余地があるかと思います。その辺のところは、きちんとフォローとしてそのとおりにやるという実務はまだ組み立てられていないと思います。

○飯村委員 法律解釈の統一性は、最高裁で統一されるわけですね。審決取消訴訟の特許庁長官が当事者になっている事件は、不利な法律判断に関しては上告して、最終的に統一機能になるんですが、当事者系、あるいは侵害訴訟に関して、特にそういう面で困るというようなケースがあるのでしょうか。

○小林委員 むしろ逆でして、拒絶査定不服審判とか異議に対する取消訴訟の場合には、長官が被告になるわけです。時には特許庁が上告することも実はありますので、その点では十分問題意識を持っています。他方、それが当事者同士の間で行われた場合でも、影響はあると考えているんですけれども、無効審判に対する審決取消訴訟は特許庁長官が被告にならない構図になっていますから、その点で実は資料4−2の方に書いておいたんですけれども、新しい無効審判制度におきましては、特許庁長官は被告にもならないし、訴訟参加もしないんですけれども、求意見制度あるいは意見陳述制度ですね。これによってある種の関与ができるような形にしようということを考えています。

○伊藤座長 よろしいでしょうか、また議論はいずれ続けていただくことにして、では最後に荒井委員お願いします。

○荒井委員 さっき裁判所、あるいは特許庁の裁判の審判の時間が短くなってきたということで、大変な御努力をされているわけですから、本当にそれは心から敬意を表したいと思いますが、ただ、この議論は、余り直観的に何か月か何か月がいいとかというよりも、是非実際に裁判をするときに、1件当たり何時間裁判官の方がかけておられるか、あるいは何人日というか、そういう分析をしていただくとマンパワーを増やせば、むしろそういうことは解決するのか、あるいは制度を改定するのかということになってくると思いますので、是非、1件当たりにどれぐらいの時間をかけているか、ただ、待っている時間が長いのは結構あると思うんです。だから、待ち時間の問題なのか、本当に裁判官の方の意見を処理するには、このぐらいの時間をかけないと、ラフジャッジになってしまいますという、ミニマムと言うか、こういうのがあると思いますので、何人日というか、何時間というのをいろいろ分析していただくと、いい制度設計ができるんじゃないかと思いますので、希望いたします。

○伊藤座長 定塚さん、その点またお話しいただく機会があると思いますが、とりあえず、今の段階で何か御発言があれば。

○定塚氏 非常に有益な御示唆だと思いますので、ただ、その期日間に弁護士さんの手持ちの時間とか、あるいは弁護士さんから企業に行っている時間があります。今までも外国本社の事件とか、外国の当事者の事件とどうしても少しずつ長くかかっているという傾向もございまして、この辺り私どもの調査で十分にできない部分というのもあるのかなと思っておりますので、その辺りまた弁護士会なりとも御相談させていただきながら、できる範囲でやりたいと思っております。

○伊藤座長 それでは、大変恐縮ですが、時間が迫っておりますので、小林委員はもちろんですが、裁判所にもこれからいろんなところで御発言を頂くことになろうかと思いますので、本日は、この程度にしたいと思います。

 引き続きまして、本検討会の今後の進め方について、御協議をお願いしたいと思います。
 これまで本検討会の進め方に関しまして、委員の皆様にいろいろ御議論いただきまして、知的財産の保護強化の観点から、有益な御意見を頂きました。これまでの御発言を見てまいりますと、委員の皆様からは知的財産の保護に関して積極的な姿勢をお示ししていただいたというふうに認識しております。
 そこで、検討事項につきまして、既に2回御議論いただいておりますが、私といたしましては、これまでのヒアリングの結果とか、前回までの委員の意見を踏まえまして、知的財産戦略大綱で示された3つの論点につきましては、産業界からの強いニーズもございますし、すぐに検討を行う必要があると、これは委員の間の共通の認識ではないかと思っております。そこで、次回以降協議に入ることにいたしまして、来年の1月から3月までの3期日に関しては、この3つの論点について、第1の論点から順に1期日ずつ具体的検討を行うこととしたいと思います。
 また、委員より御提言いただいた3つの論点以外の論点につきましては、4月以降に知的財産訴訟の在り方を議論する期日を設け、その場で議論を行っていただいてはどうかと考えております。このような進め方でよろしいかどうか伺いたいと思いますが、前回、御意見を伺えなかった委員から、お考えを伺うということで、阿部委員いかがでございましょうか。

○阿部委員 前回欠席しまして、私の考えはペーパーで出させていただきましたが、考え方は今の伊藤座長の考えと同じでございまして、発散するといけませんので、やるべきことは最初にやって、それから順にやっていただくということだと思います。

○伊藤座長 ありがとうございます。ほかの委員の方、ただ今私が申しましたような進め方でよろしいかどうか、いかがでしょうか。
 どうぞ、荒井委員。

○荒井委員 重ねてで済みませんみませんが、今日の外部の方の意見の中にも、弁理士会、弁護士会もいろいろ3点以外にもございましたので、是非4月以降もきちんとした時間を取っていただくことを希望いたします。

○伊藤座長 わかりました。それでは、先ほど申し上げたような形で進めさせていただきたいと存じます。
 では、次回の予定及び第1回外国法制研究会の結果につきまして、事務局から説明をお願いいたします。

○近藤参事官 次回の検討会は、1月31日金曜日1時半から5時の予定で、当推進本部事務局第1会議室において、ただ今お示しいただきましたように、侵害訴訟における無効判断と無効審判の関係等について御議論いただければと考えております。
 今、座長の方から一言ございましたけれども、去る12月6日金曜日に当推進本部事務局の会議室におきまして、第1回の外国法制研究会が開催されました。
 伊藤座長と中山座長代理から御推薦いただいた研究会のメンバーについては、既に御案内を差し上げているところでありますが、知財関係のメンバーとして、東京大学大渕教授、大阪大学茶園助教授、筑波大学平嶋助教授。
 民訴関係のメンバーとしては、東北大学菱田助教授、一橋大学杉山助手に御参加いただきました。
 第1回の研究会におきましては、メンバーの皆さんに自己紹介の後、今後の調査の進め方等について、活発な御協議を頂きました。
 研究会での調査結果については、来年のしかるべきタイミングで当検討会において御報告を申し上げる予定でございます。
 以上です。

○伊藤座長 ほかに何か特に御発言はございますか、よろしいでしょうか。
 それでは、本日の検討会は、これで終了いたします。どうも長時間ありがとうございました。