首相官邸 首相官邸 トップページ
首相官邸 文字なし
 トップ会議等一覧司法制度改革推進本部検討会知的財産訴訟検討会

知的財産訴訟検討会(第4回) 議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日 時
平成15年1月31日(金) 13:30 〜17:00

2 場 所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)
伊藤眞座長、阿部一正、荒井寿光、飯村敏明、小野瀬厚、加藤 恒
小林昭寛、櫻井敬子、末吉 亙、中山信弘(敬称略)
(事務局)
古口章事務局次長、近藤昌昭参事官、吉村真幸企画官、滝口尚良参事官補佐
(関係省庁・団体)
法務省、最高裁判所、特許庁、日本弁護士連合会、日本弁理士会

4 議題等
(1)侵害訴訟における無効の判断と無効審判の関係等に関する検討
(2)その他

5 議 事
○伊藤座長 それでは、定刻になりましたので、第4回「知的財産訴訟検討会」を開催させていただきます。御多忙の中、御出席いただきましてありがとうございます。
 前回の検討会でもお諮りしたとおりでございますけれども、今回は侵害訴訟における無効の判断と、無効審判の関係等に関する検討をすることとしたいと思います。
 なお、沢山委員は御欠席でございます。
 それでは検討に入る前に、事務局からお手元の資料の確認をお願いします。

○近藤参事官 それでは、お手元の資料を御確認ください。
 1番目に侵害訴訟における無効の判断と無効審判の関係等に関する現状と課題という、レジュメがございます。
 資料2として、参照条文。
 資料3として、判例タイムズ1032号の抜き刷り、いわゆるキルビー判決が載ってございます。
 資料4として、同判決の最高裁判例解説でございます。
 そのほかに、飯村委員御提出の資料と、櫻井委員御提出の資料、それから日本弁理士会から本日付けで、日本弁理士会提言についての補足説明が前回のヒアリングの補足ということで提出されております。
 最後に、法務省から、メインテーブルのみですが、『法律の広場』の2003年2月号が席上に配布されております。知的財産戦略に向けての特集が組まれているということでございます。
 以上です。

○伊藤座長 それでは、具体的な検討に入りたいと思います。事務局に検討のたたき台になる資料を準備してもらいましたので、まずは、検討の前提となる現状について事務局に説明をしてもらいます。
 具体的には、お手元の資料1の1頁から9頁に記載されています「1 現行の特許紛争処理制度」と、10頁から14頁に記載されております「2 侵害訴訟と無効審判の関係に関する問題点の指摘等」と、15頁の「3 提案されている方策とその長所・短所」の初めの部分について説明をお願いいたします。

○近藤参事官 具体的な論点について御議論いただく前に、まず、資料1の1頁から15頁に基づいて、「1 現行の特許紛争処理制度」「2 侵害訴訟と無効審判の関係に関する問題点の指摘等」について御説明したいと思います。
 まず、資料1の1頁目ですが、ここでは特許権の特質ということが書かれていまして、特許権は特許庁の審査を経て行政処分により発生する権利という特徴があります。
 1頁から2頁にかけて「2)特許付与行為と他の行政行為との関係」ということでございます。本日の議論の前提として、まず、行政行為の公定力とは何かという御説明をいたしたいと思います。
 1頁目の一番下の最高裁判決にも判示されていますように、行政行為は、たとえ違法であっても、その違法が重大かつ明白で当該処分を当然無効ならしめるものと認むべき場合を除いては、適法に取り消されない限り完全にその効力を有するものと解すべきというようにされております。
 2頁をごらんいただきたいと思います。
 この枠囲いの中に記載してある学説においてもほぼ同様の説明がされております。しかし、現在では、この公定力は国民の側から取消訴訟の提起及び裁判所の取消判決がない限り、行政行為は違法であっても事実上通用するという、取消訴訟の排他的管轄の効果としてとらえる考え方が有力のようです。
 この取消訴訟の排他的管轄とは、2頁の真ん中の注にもありますように、ある者が行政行為により形成された法関係または権利義務関係に不服がある場合も、この法関係または権利義務を民事訴訟や当事者訴訟で直接争うことはできず、取消訴訟により行政行為の取消しを求めなければならないという内容です。
 一方、特許法においても、法律を制定するに際し同様の考え方がとられております。すなわち、特許を無効とするためには、無効審判によることとして、直ちに裁判所に対して特許査定の取消しや特許無効の請求をすることはできないこととされております。
 また、無効審決が確定した場合には、特許権が初めから存在しなかったものとみなされますが、逆に言うと、無効審決の確定までは、特許権は適法かつ有効に存続し、対世的に無効とはされないということです。
 3頁の方に参ります。
 「3)特許出願から特許権の設定までの手続の流れ」ということで、手続のフローチャートについては、末尾の別紙1をごらんいただきたいと思います。
 特許法においては、特許権の絶対的な排他的独占権である特質や社会的影響力の大きさを考慮し、特許権の信頼性と法的安定性の観点から、特許要件についての実体的な審査を行った上で特許が付与されるということになっております。
 次に4頁をごらんください。
 特許権は、審査官による実体的な審査を経たのち成立するものですが、瑕疵ある特許が成立する余地があることは否定できません。そうした状況を放置しておくことは、経済活動や技術開発を阻害する恐れがあることから、特許法では特許の成立後に瑕疵ある特許について第三者が争い、特許を取り消すための特許異議の申立て、それから特許を無効とするための無効審判が設けられております。これらの制度の骨子は、以下の表に示してございます。
 ペーパーの末尾の別紙2として、瑕疵ある特許処分を争うのに、特許異議の申立て及び無効審判の手続の骨子を紹介しておりますので、それも参照していただきたいと思います。
 この表では、特に2段目の申立人のところをごらんいただきたいと思うんですが、特許異議では何人も申立て可能となっているのに対して、無効審判では利害関係人のみが請求可能となっております。
 前回の検討会において、特許庁の小林委員の御説明があったように、現在、特許庁ではこれらの2つの制度を整理統合するための法改正作業が進められております。新無効審判制度においては、この申立人のところが、何人も申立てができるように変わる可能性があるということでございます。
 次に5頁から6頁の「5)侵害訴訟と無効審判の関係(キルビー判決以前の状況)」をごらんいただきたいと思いますが、キルビー判決が出される前において、侵害訴訟において特許の有効性に関して争うことについて、判決例や学説の考えはどうであったのかということについて御説明したいと思います。
 特許処分は、公定力のある行政処分であり、これを覆すには、特許処分を無効にするための新たな行政処分としての性質を持つ審決によらなければならないとされ、特許庁と裁判所の権限分配について、特許無効処分も専門的知識、経験を有する特許庁の審判官の審判を経ることが必要であり、司法審査も審決の違法性の有無を判断するのが妥当であるというように従来はされておりました。この結果、侵害訴訟においては、特許権の侵害の有無についてのみ争い、特許の有効性については別途無効審判によるということになっていました。
 しかし、こうした権限分配を前提としつつも、特許発明が全部公知である場合のように、明らかに無効理由がある場合、その結論自体が是とされていたわけではございません。
 詳細は省略いたしますが、次の6頁の裁判例・学説で、限定解釈説、自由技術の抗弁説、技術的範囲確定不能説、当然無効説、権利濫用説というように表にまとめさせていただいておりますが、こういうようなことが工夫されて運用されておりました。
 今回のもので非常に重要なのが、7頁目の「6)キルビー判決」でございますが、侵害訴訟における特許の有効性の判断をめぐる問題について、ただいま説明したような考え方が判例や学説において示されてきたわけです。しかし、平成12年4月に出されたキルビー判決においては、最高裁判所は、特許権は無効審決の確定までは適法かつ有効に存続し、対世的に無効とされるわけではないが、特許の無効審決が確定する以前であっても、特許権侵害訴訟を審理する裁判所は、特許に無効理由が存在することが明らかであるか否かについて判断することができるとしています。
 審理の結果、当該特許に無効理由が存在することが明らかであるときは、その特許権に基づく差止め、損害賠償等の請求は特段の事情がない限り、権利の濫用に当たり許されないと解するのが相当であると判示しました。
 このように考えることの理由として、3点ばかり挙げさせていただきますと、まず、第1番目に無効理由が存在することが明らかな特許に基づき、差止めまたは損害賠償等の請求を容認することは、特許権者に不当な利益を与え、その発明を実施するものに不当な不利益を与えるもので、衡平の理念に反する。
 2つ目として、紛争はできる限り短期間に一つの手続で解決するのが望ましいものであるところ、このような特許権に基づく侵害訴訟において、まず特許庁において無効審判を経由して無効審決が確定しなければ、当該特許に無効理由の存在することをもって特許権の行使に対する防御方法とすることが許されないというようにすることは、特許の対世的な無効までも求める意思のない当事者に無効審判の手続を強いることになり、また、訴訟経済にも反する。
 3番目の理由として、特許法168 条2項は、特許に無効理由が存在することが明らかであって、無効とされることが確実に予見されている場合においてまで訴訟手続を中止すべき旨を規定したものと解することができないという理由が挙げられています。
 これがキルビー判決なんですが、「7)キルビー判決以降の状況」というのを8頁に記載させていただいております。
 キルビー判決以降は、侵害訴訟の実務が大きく変わったといわれております。侵害裁判所において、特許の明らかな無効を理由とする権利濫用の抗弁を主張する事案が急増し、判決において判断された無効理由も公然実施された発明と同一、刊行物記載の発明と同一、先願発明と同一、冒認特許、進歩性欠如等多岐にわたっております。
 また、侵害訴訟で権利濫用の抗弁をするとともに、重複的に特許庁に対し、無効審判の請求がなされるものも多く、そうした重複的な請求がなされる理由として、判断に対世効が欲しい、特許権者に対抗する訴訟戦略、裁判所の明白性の判断基準が不明なため、万全を期して無効審判請求をする等が指摘されております。
 そして、重複的請求に伴う侵害訴訟における特許の有効・無効判断と、無効審判の判断の相違の実態については、前回の検討会での特許庁提出の資料によれば、8頁の表のようになっております。
 8頁の下の方に書いてある①から④すべてに該当する対象案件51件中、判断の相違が認められたものは4件、8%です。また、判断の相違があった事案の具体的な分析の結果については、9頁の注1、注2に示してございます。
 ここでは、その詳細な理由は省略させていただきますが、ケース1では、両方のフォーラムで主張が相違していたため判断が分かれたと。ケース3では、事情変更があったと。ケース4では、キルビー判決によって裁判所が無効であることが明らかとは認められないというように判断したのに対して、特許庁では無効と判断した、言わば、キルビー判決の予定していた範囲内の違いというような形になってございます。
 次に10頁以下の「2 侵害訴訟と無効審判の関係に関する問題点の指摘等」のところですが、まず、「他の審議会において出された意見」をまとめさせていただいております。
 また、12頁のところには、「産業界ユーザーの意見」をまとめさせていただいておりまして、それをまとめますと、14頁のところの枠囲いにありますが、ユーザーの意見を踏まえると3つございまして、侵害訴訟係属中に無効審判が並走する状況は回避すべきではないかと。無効審判を存置するとした場合に、侵害訴訟において特許の有効・無効も判断するべきではないか。その場合に特許無効主張に対する特許権者の防御手段を確保すべきだと。
 このようなことに整理できるのではないかと思います。
 15頁のところですが「3 提案されている方策とその長所・短所」ということも、そのユーザーニーズ等も踏まえた形でまとめますと、1から4番目のようなことになるのかと。この1から4番目に合わせて、次の資料をつくらせていただいているというような関係になっております。
 以上です。

○伊藤座長 今の説明について、御質問やコメントがあればお伺いしたいと思いますけれども、事務局の説明には、裁判の実情に関する部分が多々あったように思います。
 そこで特許裁判の実情を最もよく御存じの飯村委員から、前回の検討会の際に裁判の実情をお話ししたいという御希望がございまして、資料を提出しておられますので、10分から15分程度で飯村委員に裁判の現場の状況、実情などを御紹介していただきたいと思いますが、飯村委員よろしゅうございましょうか。

○飯村委員 はい。

○伊藤座長 では、お願いいたします。

○飯村委員 事前に配布しました資料の①がレジュメで、②が参考資料になっております。それをごらんいただきながら、簡単に口頭で補足説明したいと思います。
 レジュメの第1の実務の状況の1、2ですが、アラビア数字の1は、富士通半導体最高裁判決、キルビー判決が出されるまでの運用状況と、出された後の運用状況についての変化について書きました。
 現在、侵害訴訟の実務は、富士通半導体訴訟と、均等を認めたボールスプライン訴訟の2つの最高裁判決の枠組みの中で進めております。その1つを形成しております富士通半導体訴訟ですが、これは日本の最高裁判決の中でも珍しく、迅速化のための審理モデルを構築した、あるいは創設した、ある意味では画期的な判決ということが言えるかと思います。
 判決の理由も極めて特徴的で、「迅速」というポイントと、「衡平」というポイントと、それから「手続コスト」というポイントが理由として挙げられております。
 それをレジュメで(1)(2)で書いてございます。スピード審理の観点から、無効の特許権を基礎にした請求について、仮に、棄却できないとすればスピード審理に悪影響をもたらすわけですが、そういうスピード審理に対する障害を解消させたということと、それから衡平の要請の観点がございます。
 ただ、実際にそれまでの下級審の実務を見ていましても、無効理由がある場合に、実務はそれでもなおかつ、無効の特許権に基づく請求を認容した例は、ほとんど少なく、一旦中止をするという取扱いが多かったわけです。
 したがいまして、最高裁判決の意義は、早期に棄却判決することによって、被告の立場を早期に離脱することができるということによる、スピード審理の要請を満たしたということが言えるかと思います。
 最高裁判決の評価についてです。最高裁判決の定立した審理モデルが、なぜ迅速審理を実現できたかということを分析する必要があります。一般論として、訴訟手続の中で、原告の権利を保護するための手続、それから被告の実質的な防御を図るための手続について、原告と被告との双方の立場について、バランスが保たれている場合には、比較的スムーズに事件が進行するのですが、それが歪められている場合には、その歪みが訴訟の無理な進行、無理な審理を引き起こして、審理遅延に結び付くということがあります。
 例えば、最高裁判決の前において、裁判所が、無効理由の存在する特許権に基づく請求について、棄却するということを考えた場合に、無理な限定解釈をしてみたりとか、そういうような判断方法を取っていたので、隠された審理遅延要因があったということでございます。それが、最高裁判決により、解消されたということで、スピード審理に寄与したということが言えると思います。
 しからば、最高裁判決が出された後の実務の変化というのはどうなったかということでございます。すなわち、現在のプラクティスはどうかということですが、最高裁判決が出された後の大方の予測は、こういう審理問題を新たに創設形成するような最高裁判決が出ても、多分伝家の宝刀として残しておくだけで、侵害裁判所が、無効理由を積極的に判断することはないだろうといわれていました。ただ、ユーザーサイドからは、できる限りこれを活用してほしいというような希望がありました。
 結果的には、積極的に運用するような方向に進んだわけです。積極的な運用をするに当たって、迅速審理を実現することに寄与するか否かの観点から分析しますと、メリットとデメリットが存在しました。
 メリットは、迅速審理を実現するという結果に結び付くということです。その反面のデメリットは、①審理が複雑化するということ、②当事者が訂正をすることによって、一旦無効と判断した場合であっても、それが後に生き返るというようなことにより、かえって審理が長期化すること、という問題がありました。これらの問題をどうやって乗り越えるかということが、迅速審理のかぎということでございます。この点の課題解決として、侵害訴訟には、審決取消訴訟とは別個の、独自のユーザーニーズがあるわけですが、そのニーズ、すなわち、特許権侵害からの早期の救済を図るということを徹底することに、解決を見いだしました。当事者責任の徹底、弁論主義の徹底ということで、目前に迫られた、侵害しているかどうかについての解決を徹底的に図るということを優先したわけです。つまり、侵害裁判所は、当事者が主張、立証した限りの資料に基づいて、侵害に必要最小限度で、特許の有効性に関する結論を出すということを徹底したわけです。
 細かいことは省略させていただいて、そういうような運用を図りました。
 その運用を3年、4年続けてみて、幾つかの事柄がわかりました。
 (3)に書いてあることですが、結論としては、1番目に、審理期間の一層の短縮化を図ることができたということがあります。
 それから2番目の点では、侵害訴訟において、被告の多くは、対世的な無効までは望まないということであります。侵害訴訟を起こされ、または侵害しているという指摘を受けた場合に、被告は自分の立場を守るために、その特許権に無効理由がないかどうか、自己責任で、つまり自己のコストで調べるわけですけれども、もとより、一企業の行動ですから、社会全体のために寄与しよういう気持ちでするのではなく、できれば、その成果、すなわち当該特許に無効理由があるという事実を自分だけのものとしておいて、自分だけが特許の傘に入れるという状態にしたいという行動様式を取ることが多いことが、いろいろな実例で示されております。
 3番目の点は、侵害訴訟の紛争解決能力が格段に高まったという点です。裁判所が具体的な紛争解決をするに当たって、法律上の理論は別にしまして、紛争解決に必要なすべての事柄を審理の対象にできるという制度でない限りは、トータルな紛争解決ができないわけです。富士通半導体判決の前ですと、特許の有効性という部分だけは審理の対象外であったわけで、それでは、根本的な解決が図れなかったわけです。
 侵害裁判所で、すべての事項を判断できるということになったために、解決能力向上が格段に向上したということでございます。
 それとともに、事前交渉でも、非権利者の立場を一層有利にしたということです。非権利者が、その特許に無効理由があるということを指摘することによって、和解的解決、当事者の合意による解決ということが図られるということが言えると思います。このように、侵害裁判所が、富士通半導体判決の審理モデルを積極的に運用した効果は、基本的にはプラスの方向で評価できるかと思います。
 次に、そのような運用をしていった場合に、必然的に生ずる問題点に関して、どういう工夫をして、克服しようとしているかという点について「第2 無効理由の存否の審理の実情と工夫」で、続けてお話ししたいと思います。
 その中で、1は省略させていただきます。「2『明らか性』の判断基準」の問題と「3 被告側(非権利者側)の防御負担」の問題であります。
 明らか性に関しては、無効理由が存在するかどうかというのは明白であるけれども、それが明らかであるかどうかという「明らかの判断基準」は、明確ではないという指摘がされております。
 実務で、どういう基準で運用しているかということですけれども、一方では中止の規定もありますので、それとのバランスで考えているわけです。いずれにせよ、富士通半導体最高裁判決で示された枠組みを実施しているわけですから、その判断基準も最高裁判決の判決理由にその答えを見出すということになります。
 その理由としては、判決自身が迅速審理や訴訟コストと、当事者の衡平ということを言っております。したがいまして、迅速審理、訴訟経済、手続経済というのは、仮に、第一審判決で、無効であるとして棄却したり、その反対に無効理由がないとして認容したときに、その後、第一審の判断が覆った場合、二重の負担になるということを、極力避けなければならいないということを基準とすべきです。つまり、最高裁が、迅速審理のために、新しく審理の枠を提示したということですから、その趣旨に反しない限りにおいて、できる限り積極的に実施していくというような基準になろとうかと思われます。
 換言すれば、一審判決の安定性という観点に立って、「明らか性」を見ております。
 次に、仮に、「明らか性」の要件を取っ払った場合に、どうなるかということでございます。現在、裁判所は、被告の抗弁が成立するためには、特許権に無効理由があるというだけでは足りず、それが明らかでなければならないとしているわけです。仮に、明らか性の要件を削除した場合には、どういうことが懸念されるかということを考えてみたいと思います。
 それが、レジュメのイで書いてございます。特許権者が、権利を取得して、折角、活用を図り、侵害訴訟を起こした場合に、侵害裁判所が無効と判断した場合には、棄却するというのは、原・被告間のバランスを欠き、非権利者側が強くなり過ぎる、つまり、権利者側にとって酷になるのではないかという懸念が挙げられると思います。
 審決取消訴訟の場合の訴訟物とは違って、侵害訴訟の中の抗弁は、ありとあらゆる無効理由を一気に提示することができるわけです。現実の事件でも、公知例を20も30も出すということがあるわけですけれども、権利者側は、そのような多くの無効理由について、全部、逐一反論を加えなければ、原告の権利が保護されない、救済されないということになると、権利者と非権利者の新たなアンバランスを呼ぶのではないかという感じがしております。
 そうすると、結局のところ最大の懸念である、侵害訴訟における迅速審理に対して悪影響をもたらすのではないかという感想を持っております。
 次に「3 被告側(非権利者側)の防御負担」ということでございます。
 これは、これからの議論のテーマになるかと思います。富士通半導体最高裁判決で、今までは抗弁にならなかった無効理由について、抗弁になり得るということで、1つ、抗弁を追加したわけです。この状態を翻って考えてみると、非権利者が、侵害訴訟を起こされた場合、対世的な効果を得るために無効審判請求を起こさなければならないし、侵害訴訟で勝つためには、無効理由を出さなければならないわけです。それが二重の負担になるのだという問題があります。
 この点に関しては、侵害訴訟を審理している立場で申し上げますと、それぞれの制度活用のためのユーザーニーズ、それぞれの制度が持っている特徴がいろいろとあるかと思います。被告・非権利者のビヘービアに関係する事柄です。無効審判請求を起こす場合には、審判の過程で、職権主義で無効理由を探索することもあるという面もあります。また、無効理由に関しては、具体的な紛争が背後に控えていなくても、有効性・無効性の判断を求めるということがあります。権利者の立場で言えば、仮に、権利を細くしても、なおかつ有効性を確保して、後日に生かしたいというニーズもありましょうし、逆に、広い権利を確保しておかなければ意味がないということもありましょう。また、特許権の見直し手続においては、ある程度の段階的な手続が制度上、用意されています。そして、無効理由があると判断された場合であっても、訂正するかどうかというチャンスが与えられているということで、きめ細かい見直し過程、権利生成過程が準備されているわけです。
 これに対して、侵害訴訟の場合にはどうかと言うと、被告が現に製造販売している行為が許されるかどうかいうことを中心にして、必要最小限度の判断をすることになりますが、その1つの武器、1つの判断要素として、「無効理由の存在」を問題にします。
 加えて、侵害訴訟においては、先ほど申し上げましたように、①被告は、意外に、原告の特許権を無効にしたくない、事実上のライセンシー的な立場を維持したいという動機もあるということ、②現在の侵害訴訟においては、裁判所は、ほとんど例外なく心証開示をしておりますので、心証開示の結果を待って、製造販売を継続するか否かの事業の見直しをすることを期待できること、③あと、被告が、被告製品と特許権との対比をして、侵害していないことが明らかと判断できた場合には、わざわざ、無効の抗弁を出さないですませる選択をすることができること、などがあります。
 それぞれの制度の活用の仕方、利用者のビヘイビアにより大きく違ってくるということがあるかと思います。
 以上申し上げたとおり、それぞれの制度が並存していることの意義は大きいだろうと思われます。並存していることによって、侵害訴訟がより紛争解決に純化した小回りの利く運用を実現できるということが言えると思います。
 それから、「4 審決・審決取消訴訟の結果と齟齬及び矛盾する主張」という点でございますけれども、多少時間が長くなりましたので、後で意見を述べる際に譲りたいと思います。
 ただ、1点だけ申し上げますと、最高裁富士通半導体判決は、侵害裁判所は、後日の結果と、多少のねじれがあっても、早期に解決すべきであるとしたのではないかと思います。
 侵害訴訟の1審の判断結果と、後日の対世的な結論との間の、ある程度の判断の食い違いについては、上級審で是正されるということになりますので、食い違いが生ずることについて、余り慎重になって、早期の救済を回避するという態度は正しい態度ではないのではないかという感じを持っております。
 以上でございます。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。それから櫻井委員も事前に公定力についての資料を提出されておられますので、櫻井委員からもコメントをいただきたいと存じます。御提出の資料の公定力一般の部分についての御説明をお願いいたします。

○櫻井委員 レジュメと、資料の2頁目辺りを見ながら若干申し上げたいと思います。
 公定力の話というのは、行政法学の中でも神秘であるとか、あるいは秘境であるというように言われている領域でありまして、したがって、私もこれまでなるべくこの論点には近づきたくないということで生きてきたわけでありますけれども、この検討会では1つの主要な論点であろうということで、少し補足とコメントということで申し上げたいと思います。
 事務局の方で作っていただきました資料で基本的な説明はあるんですけれども、まず、第1点といたしまして、田中説と塩野説以下が説明されておりますが、公定力についての説明というのは、実体法的な説明、というのは田中説のことですけれども、適法性の推定と理解するという考え方から、手続法的な取消訴訟の存在そのものに根拠があるというような説明に変化したわけでございまして、こちらは現在の多数説ということになっております。
 田中説は、一種の権威主義と言っていいと思いますけれども、ところが現在はなかなかそういう権威主義が取れませんので、そこで法律に取消訴訟という類型があるということ自体で説明するということです。しかし、これは少し考えればわかるんですけれども、中身がない説明でございまして、両者の間には実は質的な差異があると言うことができると思います。
 問題は、なぜ取消訴訟というものをつくらなければいけないのかということについて、本当はきちんとした説明をしなければいけないのでありますけれども、その点については、戦後の行政法学というのは、明確な答えを出すことができないでいるということであります。それが根本問題の回避ということです。
 その場合に、一応法治主義の維持の便宜であるとか、あるいは紛争の合理的な解決に資するとか、こういうような説明をしているんですけれども、どうも田中説に代わるようなインパクトがあるきちんとした説明ができないまま今日に至っているということが1つです。
 第2点ですけれども、そういうわけで、現在は取消訴訟の排他的管轄の効果として公定力を説明するということになっているんですが、この時点におきまして、とりあえず取消訴訟を経ない間は有効と扱うという言い方をするわけですけれども、そう言ってしまった瞬間に話が分解してしまうのでして、つまり認定手続の問題と、実体法上当該行政処分が有効か無効かという話が分離してくるということになるわけです。
 従前の考え方、伝統的な考え方は、これを分離してはいけないという話でありまして、分析してはいけないと。しかしながら現在の通説では、手続上有効と扱っているだけなんだということになりますと、取消訴訟にのっとっていない場合に、実体法上は違法であってかつ無効であるということが言えるんではないかと考えられてしまうわけです。
 実際に、これは後で出てきますが、取り消しうべき瑕疵の場合に相当する話なんですけれども、法効果に関わらないと説明されるものとして、刑事手続とか、あるいは国家賠償の場合が挙げられます。例えば行政処分としての命令を構成要件とするような罰則の場合に、無罪主張ができるかという問題では、構成要件が違法だということを取消訴訟を経ないで主張することができると考えられておりますし、それから国家賠償の場合も、これも行政処分を理由とするような国家賠償の場合に取消訴訟を経ないで違法性の主張ができるかということが問題なるわけですけれども、刑事手続の場合はデュー・プロセスということで、国家賠償の場合は、しょせんお金の問題であって、法効果に関わらないというような言い方で、法効果に関わらないから別に取消訴訟の排他的管轄は及ばないのであるというような説明をするわけであります。
 しかしながら、これは厳密に言うと、屁理屈でありまして、本当は法効果に関わっているけれども関わらないということにして、ほかの理屈が立つときには、そちらの方で救済してしまうというのが現状でございます。
 もっとも、国家賠償の場合、租税関係の訴訟などの場合には、租税処分の違法を理由とする国家賠償でいきなりお金を請求してしまいますと、租税に関する特殊な取扱いが無意味になってしまいますので、その場合に限っては法効果に関わるんではないかというような便宜的な扱いと言いましょうか、そんなような論点の指摘がございます。それが第2点です。
 第3点ですけれども、これは公定力という言葉の使い方の問題なんですけれども、これは取消訴訟の排他的管轄というふうに言ってしまった瞬間に公定力という言葉は既にそぐわないのでありまして、公定力は実体法的な言葉でありますので、本当は使うのはよろしくないということは、恐らく行政法学者はみんな思っているんだろうと思います。ただ、ずっと使い慣れているというのと、便利なのでつい使ってしまうということでありまして、そうしますと、一定の法現象、これが公定力なんですということで説明概念として使うということはあり得るのでありますけれども、公定力があるからどうのこうのというような形で、法解釈上の道具概念として使うということは、これは使用不能と言った方がよろしいので、あくまでも、「いわゆる公定力」ということで、用語として使っているということだと思います。
 多分、そういうクラシカルな使い方をしているのは、裁判所ぐらいではないかと思っております。
 ただ、公定力は要らないのかということなんですけれども、問題はその先にあるのでありまして、従来行政法で公定力という言葉を使って何を守ろうとしてきたのかというところは検討しなければならないところだろうと思います。
 これが一般的な行政処分ですと、結構難しいかなという感じがしているわけですが、幸か不幸かと言いますか、無効審判の場合は、これはかなり実質的に見て、排他性というものを論拠づける、そういうところが強くあるのではないかというのが私の考えです。
 つまり、レジュメに書きましたように観念的な話ではなくて、無効審判というのは、非常に特徴があって、専門的な判断をするということと、独自の手続を取っているというところに、無効審判の実質的な排他性の論拠というものを見出すことできるだろうと思います。
 独自の手続というのは、無効審判の場合は、一般の行政処分と比べると慎重な手続ということですし、それから民事裁判と比べますと、より職権主義的な手続ということで、そういう意味では特許の有効・無効の判断について、組織構造が適切なものになっているし、かつ審理手続は特殊なものになっているという点で、際立った特徴があるのではないかと考えます。したがって、公定力というものを、特許付与行為については、強く認める理由がかえってあるのではないかということでございます。
 以上でございます。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。ほかに何か御質問、コメント等はございますか。

○櫻井委員 それから、言い忘れたんですけれども、資料の方の2頁目のところなんですけれども、少し揚げ足を取るようで恐縮なんですが、真ん中辺のポツのところの「公定力は」というところですけれども、まず、1点目ですが、最初に「国民の側から」というふうに言っているんですが、これは職権取消もありますから、別に国民の側とは限らないというのが1つ。
 2行目の「事実上通用する」というところなんですが、事実上通用するというのは、なかなか琴線に触れる表現でありまして、そういってはおしまいなんでして、法効果として説明しているので、事実上というのを削除していただきたいということです。
 以上でございます。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。それでは、検討の方に入っていただいた方がいいかと思いますので、侵害訴訟と無効審判の役割分担の在り方についての検討をお願いしたいと思います。
 まず、事務局から資料1の16頁から19頁について説明をお願いします。

○近藤参事官 ここから本論ということなんですが、侵害訴訟と無効審判の役割分担の在り方についてですが、16頁の冒頭の枠囲いの中に示しましたように、A案は無効審判を廃止する。B案、C案は無効審判の存置を前提として、B案では請求可能期限を制限する。C案では、現行制度をそのままにして、両者の進行調整等により対応する。大きく考えると、こういうような3つの考え方があるのではないかというように思われます。
 まず、最初にA案の無効審判の廃止について、いろんな検討の資料を提示させていただいておりますが、今回の検討会では、どういう制度を取った場合、どうなり得るのかというようなことについて、こちらで考えられる案を示しましたので、そこについてシミュレーションをしていただいて、どうなるんだろうかということを議論していただきたいという趣旨で、こういうふうにまとめさせていただいております。
 まず、A案の無効審判を廃止した場合についてなんですが、1番目に特許権等の侵害を巡る紛争と、特許等の有効性を巡る紛争を併せて一回的に解決するということを取った場合に、その場合の一回的な解決の要請というのは、解決の迅速性、判断の矛盾回避、それから応訴・対応負担の軽減、いずれに重点があるのかということをまず確認しておく必要があるのではないかと。このニーズの確認の問題であります。
 2番目は、そのニーズに基づきまして、無効審判を廃止し、侵害訴訟において特許の有効性を判断する考え方の当否を聞くものです。
 3番目は、無効審判を廃止した場合に指摘されている点について、4つばかり列挙させていただいておりますが、aの方では、特許がその性質上広く一般に影響を及ぼすものであることを踏まえて、公益的な観点から、無効審判においては当事者適格を広く認める、新無効審判制度においては、そういう形になるかと思いますが、それとともに職権主義を採用している。利害関係人のみ当事者適格を認める当事者主義をとる民事訴訟と代替できるのかどうかという点が第1点でございます。
 bですが、これは紛争の予防的解決のために、簡易で安価な無効審判の存置は産業界のニーズではなかろうかと。現行の無効審判においては、約六割は侵害訴訟とは独立して提起されている。また、特許庁において現在検討されている異議申立てと無効審判を整理統合した後の制度においては、約九割以上が侵害訴訟とは無関係に提起されるというふうに前回予想を示していただいたところですが、そういうことをどう考えるか。
 cですが、これは特許の有効性について争いがある場合に、いつも裁判によらなければならないとすると、裁判所・当事者の負担が増大しかねないのではないかと。
 dは、侵害訴訟において、裁判所は、特許庁における職権主義に基づく無効審判の審理の成果を利用して、迅速に判決を出すことが可能だというように言われていますが、特許の有効性の判断をすべて裁判所に委ねてしまうと審理期間が長期化してしまうのではないかということです。
 4番目ですが、無効審判を廃止した場合に、特許の有効性について争うための代替的手段を設けるということの当否についてです。
 5番目は、4の代替的手段として、出訴期間の制限のない特許査定取消訴訟というものを創設して、特許権の侵害だけでなく、特許の有効性についてもすべて裁判所で争うことができるようにすべきとの考え方がありますが、この当否についてお聞きしています。
 6番目は、今言ったような取消訴訟みたいなものを考えた場合に、上記の3の論点に加えて指摘されている点について挙げております。
 aとして、行政訴訟と民事訴訟の両者の併合がそもそも可能かと、可能ではない場合には、ダブルトラックとなるだけであって、全然意味がないのではないか。
 bは、取消訴訟の判決は、単に特許庁による特許付与という処分を取り消すだけであるから、特許出願手続を終結させるためには、拒絶査定等の新たな行政処分が別途必要ではないかという理論的な問題です。
 cは、これまでの審判前置の考え方に変更が必要となるが、審判制度の存在意義、他の審判への波及についても考慮する必要がある。
 dについては、取消訴訟における被告は、特許権者、特許庁のいずれが適当か。特許庁が被告となる場合、いつも特許維持のための主張をしなければならないとするのは不自然ではないか。無効審判の場合では、審判請求人の提示した証拠及び職権で探知した証拠に基づいて、審判合議体が特許の有効・無効について自由に判断できるということにしていることとの対比でおかしくないのかということです。
 eは、取消訴訟を認めると、非侵害であることを理由に権利者の請求を棄却できる場合であっても、特許の有効性について更に判断しなければならず、審理期間の長期化につながるのではないかと。
 fは、訂正の問題をどういうように位置づけるべきか。この論点については、後ほど別の観点から議論していただきます。
 それから、B案の無効審判の請求を遮断しようという考え方ですが、その当否を聞くのが一番目です。
 2に記載しているのは、そういう遮断効を認めた場合には、a〜dまで、A案の論点と同じようなことがあり得るのではないかということを指摘させていただいています。
 bは、先ほど御説明した特許庁によって現在検討中の新無効審判の整理ですが、請求人適格が広く認められるということになった場合に、被告人によるダミー請求が可能になってしまう。そうすると、無効審判の請求の機会の制限というのは、実質的に意味がなくなるのではないかという指摘でございます。
 C案ですが、進行調整という考え方について、18頁に(C−1)から(C−4)というふうに掲げさせていただいておりますが、(C−1)案は、仮に無効審判の請求可能時期を制限したとしても、侵害訴訟提起前に被告が無効審判を請求した場合や、訴外第三者による無効審判請求が想定されるから、同一の特許権についての侵害訴訟や無効審判が同時期に裁判所及び特許庁に係属することはあり得ると。そうすると、判断の齟齬防止のためには、手続中止規定を機動的に活用して、必要に応じて手続の進行調整を行うとするという考え方に触れております。
 具体的には、侵害訴訟係属中に無効審判の請求があった場合には、必要に応じて侵害訴訟を中止する、あるいは逆に無効審判を中止するというものです。
 次に侵害訴訟係属中に無効審判の請求があった場合、訴訟と同時係属している無効審判を優先的に処理するという考え方でございます。
 韓国では、民事・刑事上の特許侵害紛争については、警察、検察または裁判所から通報があった場合、または審判請求時に、訴訟関連内容を記載した書面を提出した場合には、職権で優先審理を行うことができ、優先審判を行う旨の決定があったときには、特別の理由がない限り特許庁は3か月以内で無効審判の審決を出さなければならないというようにされているようです。
 次に無効審判との審理の在り方の違いから、このような方策を取っても同一当事者間によって、無効審判と侵害訴訟で異なる結論に至ることがあり得ることをどのように考えるかという論点の指摘です。
 ②のC−2案は、求意見制度・嘱託鑑定制度を導入するというもので、裁判所と特許庁の間の判断齟齬の防止等のために、侵害訴訟において特許が無効であることが明らかであることを理由として、権利濫用の抗弁が提出された場合には、裁判所が特許庁に対して、権利の有効性についての意見・見解を求めることができるとすることはどうかという問題。 ただ、この場合にも異なる結論に至ることがあり得るという問題は残るのではないか。
 ③のC−3案は、情報の共有化を図るものです。侵害論におけるクレーム解釈に関する当事者の主張・証拠や特許無効に関する当事者の主張・証拠に係る情報を裁判所と特許庁において共有できるようにすることよって、侵害訴訟と無効審判において当事者の矛盾したクレーム解釈の主張を回避することができるのではないか。それから証拠の共通化を図ることによって、判断の齟齬を極力回避することができるようにして、ひいては審理内容の充実を図るという考え方です。
 また、訴外第三者によって無効審判が請求されている場合には、侵害訴訟における無効主張とは理由及び証拠が異なる可能性が高く、こうした情報の共有を可能にすることによって、無効審判における職権審理の充実の効果も期待されるという考え方もあります。
 ④のC−4案は、これらをすべて併用してはどうかということです。
 以上です。

○伊藤座長 それでは、この役割分担の在り方について議論をいただきたいと思いますが、御質問、御意見をお聞かせいただきたいと思うところですけれども、この点についても事前に櫻井委員から資料が提出されていますので、まず、櫻井委員からお話をいただければと思います。
 櫻井委員御提出資料の「二 特許付与行為の『公定力』と侵害訴訟における無効主張排除の問題」についてお話をいただけますでしょうか。

○櫻井委員 二のところでございますけれども、ここでは公定力の概念が侵害訴訟における無効主張にどういう影響があるのかということで少し考えてみたいということであります。
 まず、「(1)行政訴訟とのずれ」というところでありますけれども、これは行政訴訟におきまして、瑕疵論であるとか、あるいは有効・無効の話がどういうふうに取り扱われているかということで、釈迦に説法かと思いますけれども、抗告訴訟としまして、一応2つ、取消訴訟と無効等確認訴訟というのがあります。処分の話でいきますと、まず、処分が有効であるという場合は、取消訴訟があると、この場合は取り消しうべき瑕疵を対象にしているわけですけれども、他方で処分が無効の場合につきましては、下の2つでございますけれども、公法上の当事者訴訟と民事訴訟です。
 民事訴訟の方でありますけれども、行政処分の効力が問題になるので、行政事件訴訟法上は争点訴訟というふうに呼んでいるわけですけれども、理論的に言うと、処分が有効な場合は取消訴訟で、無効の場合は2つのうちのどちらか。
 この2つにつきましては、これは立法当時の考えですけれども、訴訟物が公法上のものであれば、公法上の当事者訴訟ですし、私法上のものであれば民事訴訟であるというような整理になっているわけです。
 ですけれども、以下では侵害訴訟は民事訴訟ということですので、取消訴訟と民事訴訟ということでお話し申し上げたいと思います。一応理論的には、処分は有効か無効かどっちかでありますから、これで完結するはずなんですけれども、立法当時は、少数説がございまして、無効等確認訴訟というのが、もう一つ設けられることになりました。これは形式論理から言えば、無効ですから、当然無効ということを前提にしていて、その確認訴訟ということで、瑕疵としては重大明白な瑕疵を念頭に置いているということになるのですが、ただ、本当はそうであればこれは要らないはずなんですけれども、当時、無効であっても特定の訴訟手続を取らなければ無効主張ができないというふうに考えるべきだという考えもございまして、またあるいは表見的通用力というような表現だったり、あるいは宣言無効と言ったりしておりますけれども、ややグレーゾーンみたいなものがあるのではないかということで、理論的には徹底していないんですけれども、取消訴訟だけでなくて、無効等確認訴訟を抗告訴訟の1つとして用意したということになっているわけです。
 そういう前提でまいりますと、無効審判というのを行政訴訟の方からながめてみますと、非常に特殊であるということが言えるかと思うんですが、無効審判の場合は、形成無効という言葉は、一般的かどうかわからないんですけれども、形成無効というふうに言っておきますが、かつ対世効があって、しかし不可争力はないということでございますけれども、形成無効につきまして、行政訴訟から見てますと、まず、最初のポツですけれども、無効審判における瑕疵というのは、これは取消訴訟と無効等確認訴訟の双方の瑕疵を包含しているものだということです。
 それから、行政訴訟の類型論では、むしろ民事訴訟において無効主張するということは当然できるという考えでございまして、瑕疵の認定に当たって行政処分の有効・無効の判断を裁判所がするということが当たり前のことであるという前提でできているわけです。
 そういうところと比較してみますと、無効審判というのは、まず、①ですけれども、当然無効も含めて形成無効扱いしてしまっているというところで、恐らくこの点が当然無効なのに何で民事訴訟で主張できないのかという現在の論点ですけれども、そこに関わってくるのかなというのが1つです。
 ②でございますけれども、観点を変えますと、民事訴訟において、しかも民事訴訟において無効の主張も排除するということで、これは非常に徹底的に単純化されたと書きましたけれども、行政訴訟の方から見ますと、非常に単純明快な無効審判と侵害訴訟の役割分担をつくったということなんだろうと。とにかく有効・無効の話は全部無効審判でやるということで非常にきれいに分かれているなというふうに思った次第です。
 (3)でございますけれども、こういうようなことを前提にしまして、侵害訴訟において無効主張ができるかどうかということを考えてみますと、問題の提起ということでありますけれども、まず、第1番目は、一般論からしますと、当然無効につきましては、これは専門的な判断は要らないと、通常公定力の限界であるということで考えられているわけなんですけれども、公定力プロパーの話でいきますと、特に無効審判に関しては、先ほど申しましたように、専門性と独自の手続があることから、どうも普通の行政処分よりもワンランク上の排他性の要請があるだろうということで、ここはそんなに簡単に乗り越えられても困るという感じがいたします。
 ですから、キルビー判決みたいに、権利濫用ということで抵触しないようにやるというのが1つの知恵かなと思ったんですけれども、もしそれを越えて無効の抗弁を認めるということになると、その点について考える必要があるだろうということが第1点です。
 第2点ですけれども、今、御議論されている侵害訴訟においても無効主張できるようにしましょうということで、それを充実化するということなんですけれども、そういうふうにしてしまいますと、結局、せっかく単純明快につくった解決ルートの2本立ての方式というのが混濁化してしまうということになってしまいまして、それが本当に利用者利便になるのかというのも1つの問題になるということであろうと。
 現にキルビー判決みたいに、権利濫用と言っただけなのに、2つやるのは嫌だとか、あるいは、ずれた判断が出たときどうするかとか、何か話の本筋からするとやや倒錯した不満が出てくるということがあって、そこら辺をどう考えるか、更に進めてしまっていいのかどうかという気はするところなんです。
 それから第3点ですけれども、これは理論的にというよりは、ヒアリングを聞いていて思ったのですが、産業界の方は非常に声が大きくて知力も財力も政治力もあるという感じがして、行政訴訟の原告とはえらい違うなと思いながら聞いたんですけれども、そしてさらに弁護士会と弁理士会の方もそれに乗っかっておっしゃっておられて、全体として声は確かに大きいんですが、おっしゃっていることの内容というのは、制度の根本的なところを変えるほどの重篤な弊害があったかと言うと、それはそうでもないんではないかなという気もいたしました。
 そうしますと、いろいろプラスとマイナス両方あるかと思いますが、特段の根本的な一本化とか、調整は要らないという考えもあるかなというふうに思ったりしました。 もう一つ思ったことは、何と言いますか、せっかく2本のルートがあるということになりますと、問題は、裁判所に流出化するということも1つあるかもしれませんけれども、もう一つは無効審判の在り方です。特許庁の方で解決した方が、よりきれいではないかという感じがしたということでございます。
 以上でございます。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御説明を前提にいたしまして、御質問、御意見がございましたら、どの点からでも結構だと思いますのでお願いいたします。

○村木日本弁理士会知的財産制度改革推進会議副議長 済みません。これに関連して前回の補充をちょっとさせていただければと思います。

○伊藤座長 ただいまのことに関連するところですか、どうぞ。

○村木日本弁理士会知的財産制度改革推進会議副議長 日本弁理士会の村木でございます。今、説明がいろいろございましたけれども、前回日本弁理士会の案を御説明したのが、今回の中でいうC−1の韓国で行われている制度といいましょうか、これに近いものであります。それに前回の検討を併せて、弁理士会のお話をさせていただければと思います。
 前回弁理士会の方で提案したしましたのは、まず、法律の中に無効の抗弁を規定して、裁判所の方で無効の判断、有効性の判断ができるようにする。まず、それが第1点です。
 それから、裁判で侵害訴訟を起こした場合に無効の抗弁が出たとき、被告は裁判所で有効性の判断をするのか、あるいは特許庁に対して無効審判を請求するのかを、その当事者に選択をさせる。ただし選択が余り遅れると長期化するので、その選択時期について一応の制限を設けるということです。
 それから、対世効を求める当事者は特許庁の方に対して無効審判を請求するわけですけれども、そこは先ほどから出ておりますように、早期審理、あるいは早期報告、そういうような短期間で審判の結果を早期に出すというような工夫が必要だろうと思います。
 無効審判が出ますと、審決の結果を裁判所は必要的に待つ、必ずしも訴訟手続全部を中止するということではなく、審決の結果を待つということにして、ただその訴訟が著しい遅滞を生じるような場合には、裁判所は裁量でもって自ら有効性について判断できる。
 そういう形で対世効を必要とする当事者は、無効審判を請求することにし、裁判所の相対効だけでいい当事者は、裁判所において判断を求めることにするという提案です。
 これは、裁判所で有効性の判断をすること、特許庁の無効審判制度を残すことで、この両方の制度を併存しながらダブルトラックにならない工夫ができる思っております。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。それでは、どうぞ委員の皆様から御質問、御意見等をお願いします。
 どうぞ、阿部委員。

○阿部委員 このA案の無効審判を廃止するというのは、特許庁の無効審判を廃止するということであって、無効審判と同じような機能をどこかに確保しようということはどうなんでしょうか、前提になっているんでしょうか。それも全部やめてしまうということなんでしょうか。

○伊藤座長 では、近藤さんお願いします。

○近藤参事官 もちろんそれは無効審判に関して、処分取消の行政訴訟で、特許の有効性について裁判所の方で判断をするというような考え方についてどうだろうかということでございます。

○阿部委員 そうすると、その機能を裁判所が担保するということになるわけですね。ということは、その機能を担うだけの能力があるという前提でしか成立しないということですね。ということは、今すぐにはできない、将来の話であるという議論なんでしょうか。

○伊藤座長 基本的な考え方を示しているだけですから、その先のことは、むしろ御議論いただいた方がいいかと思いますが。

○近藤参事官 資料に基づいて説明しますと、16頁の5番目で、今、特許庁のものを全部廃止した場合には、裁判所で特許査定取消訴訟を創設すると考え方があるということですね。
 それから、その前の4番目のところで代替手段として廃止した場合に、特許の有効性について争うために代替手段を設けるということはどうかと、これはどこかというのを限定をしていなくて、5番目は裁判所と書いていますけれども、裁判所以外に無効審判以外に争うということも考え得るのであれば、それも御議論いただきたいと思います。

○阿部委員 C案の方で、韓国の制度を出されていますけれども、たまたま去年韓国の特許庁に行って、実業界としてヒアリングをしてきたときに、ここにも書いてありますけれども、3か月の間に全部判断してしまうというのは、私は非常に魅力的に思ったものですから、このA案の中のバリエーション4の1つとして、そういうこともあり得るということなんでしょうか。

○近藤参事官 このレジュメのしきりとしては、一応無効審判制度というのを前提にして、並存した場合に、侵害訴訟とそれが並存した場合には、今の無効審判があるということを前提にして、その手続を早くやらなければいけないと、新たな制度をつくるということではなくて早くやるという、それに伴って特則とか、いろんなものがあるのかもしれませんけれども、そんなに抜本的な制度を改正するという案ではないということでC案という形で、レジュメとしては記載させていただいております。
 おっしゃっるように、それがもっと非常に抜本的な迅速処理、優先処理というのは違う発想で考えなければいけないのではないかということで、それを別のものと代替手段として考えべきだということであれば、先ほどのA案の4番のほかの代替措置ということも当然あり得るのかもしれません。

○伊藤座長 では、小林委員からお願いします。

○小林委員 今、阿部委員が最後に御質問されたところと、先ほど櫻井委員が一番末尾でおっしゃったことに関して、若干コメントさせていただきたいと思うんですが、多分櫻井委員が最後におっしゃった特許庁の無効審判の改善というのも必要であるし、それでもかなり十分ではないかとおっしゃったことと、韓国の優先審判というのと関連しているんだろうと想像するんですけれども、我々としても無効審判を非常に急ぐように基本的にはしています。
 それから、取り分け無効審判の場合は2つありまして、いわゆる侵害系の無効審判と独立系の無効審判があるんですが、侵害系の無効審判については、更に迅速にやるようにということで運用はしています。
 ただ、3か月という数字がどういう意味を持つかということなんですが、現行無効審判というのは、まず冒頭、権利者に60日、2か月の答弁期間を与えている実務を取っております。そうしますと、請求しただけで実は3か月のほとんどが過ぎてしまうというふうなことなんですが、極端に言いますと、さほど両当事者から意見を聞かないで判断をしろと言われれば、それは何とでもなるんだろうと思うんです。
 ただ、それが本当にいいのかどうか。取り分け侵害訴訟との関係で急ぐということでしょうから、侵害訴訟の帰趨に大きな影響を与えるということであるとすると、この3か月という数字が本当にいいのかどうかということは一つ検討しておく必要があると思います。それが1点です。
 もう一点は、今の実態なんですけれども、どういう時期に無効審判が請求されているかというのも考えなければならないわけでして、実際には侵害訴訟のかなり末期の方になって、無効審判が請求されることが多いんです。これは、侵害訴訟の方の審理の進行にもよるんだと思うんですが、最初から侵害だといって訴えられたときに、直ちに権利の有効性について争うのであれば、これは同時に無効審判が請求されても十分な時間があるんです。侵害訴訟が終結するときまでに、無効審判の審決を間に合わせるように運用すればいいだけですから、それは可能なんですけれども、実際を見てみますと、侵害論がもう終わって、損害論に行こうとするぐらいに無効審判を請求する。これはどういうことかと言うと、侵害論で負けそうになっているということですから、これは侵害だとほぼ言われていることに近い状況になってから、では本当は権利は有効ではないのではないかということで無効審判を請求してくるという事案がかなり多いんです。
 そうしますと、そもそも用意ドンでスタートしたときに時点が違うわけですから、これはどう頑張っても、幾ら早くやっても侵害訴訟の方が早く終結してしまう例が多いんです。
 その典型例が4件の中で1件あったわけですが、侵害訴訟の方では有効との前提で損害賠償を命じたと、その後に無効審決が出たというのが4件のうちの1件です。
 それから、この4件の中には入ってございませんが、調査をした後に出た案件ですが、例のアルゼ事件です。84億の賠償請求が認められた事案ですけれども、これはその後に特許庁が無効審決を出しました、昨年の末でございますけれども。これも全くその事例でしてかなり末期になってから請求されたものというような事案でございます。
 したがいまして、かなり運用を工夫しないと限界がある。もちろん、努力はするんですが、そもそもその前提として、侵害訴訟の進行と、それから無効審判の進行というものがきちんとリンクしていないと、やはり実際には実現できないという面があるということだと思います。

○伊藤座長 それでは、荒井委員、お願いします。

○荒井委員 まず、そもそもこの議論が始まったのは、一番冒頭のタイトルにありますが、侵害訴訟における無効の判断、裁判所の判断と、それから特許庁、行政庁の無効審判の関係がそれぞれ二本で並列しているから、キャッチボールになっているのではないかということで、今、御指摘がありましたアルゼ事件のように、84億という非常に大きいことについても、その後で特許庁の方から無効になったりするということは、社会的に見ると非常に権利問題については不安定になるんではないかと、あるいはその間裁判所の方も御苦労されたわけですし、それから特許庁は特許庁で一生懸命やるというようなことで、国家的にも大変な時間と労力をかけているんではないかと、そんなところから出てきているんだと思いますので、基本的にはやはり制度を一本にするということ、紛争の一回的解決のためには制度の改善が要るのではないかと思います。
 そんな前提でございますが、結論から申し上げれば、16頁に書いてあるA案、無効審判の廃止について、16頁の下に書いてあります5番の代替手段としての特許査定取消訴訟、こういうようなものをつくるという基本的な方向で考えたらどうかと私は思います。
 もちろん、そのためにはさっき御指摘がありましたように、そのための体制はどうするのかという問題がありますので、そういう体制ももちろん整備するという前提のお話でございまして、全体としてこういうものの紛争解決処理能力、これは全体として日本中が高めなければいかぬわけですから、どういう形で高めるかと、それはもう高まりませんという前提だと、この話は全部止まってしまうんですが、高めるためには法的な制度の整備が要るわけですし、それからマンパワー、人的な、専門的な人が、どういうふうにどういう部署に行ったらいいのかということも必要だと思いますので、そういうことも含めて、制度面、それから体制面での整備をやっていく前提での話でございます。

○伊藤座長 いかがでしょうか。荒井委員からはA案を前提にして制度設計を工夫すべきだという御発言がございましたが。

○中山委員 確認をよろしいですか。

○伊藤座長 どうぞ、中山委員。

○中山委員 16頁の5で、新しい訴訟をつくるという話ですけれども、これは要するに普通の抗告訴訟で期間がないという、それだけの違いですか。

○伊藤座長 事務局の方はいかがですか、近藤さんお願いします。5番の出訴期間の制限のない取消訴訟は、出訴期間という制限のないことは特別であって、ほかは通常の抗告訴訟と同じ制度設計かということです。

○近藤参事官 1つ考えられるのは、今、おっしゃるような形の行政訴訟というのは想定できるんではないかということで提案させていただいております。ほかにまた別の切り口というのがあるのであれば、またそれも議論していただければと思います。

○中山委員 特許の特殊性は余りないから、一般の行政訴訟の方にシフトするということでしょうか。

○近藤参事官 はい。

○中山委員 わかりました。

○伊藤座長 どうぞ。

○近藤参事官 このレジュメの11頁のところで、紛争処理小委員会の報告書というのを挙げさせていただいているんですが、ここでは問題点として判断の相違と、権利者の対応負担の増加ということが指摘されているわけです。
 それで、荒井委員に少しお伺いしたいんですけれども、このほかにもどれかニーズがあるのかもしれないけれども、どのニーズが一番必要なのかということはどうなんでしょうか。

○荒井委員 これは当然、早く、しかも食い違いがなく、それから当事者が負担なくというのは、プライオリティーをおくものか、3つとも、あるいは幾つかの複数のものも解決することもあるのではないかなと思っているんです。

○近藤参事官 そうすると、迅速と判断の相違と権利者の対応負担の増加と3つともあって、それについてもいずれもと。

○荒井委員 特に、今、問題なっているのは、迅速性、要するにトータルの争いごとが起きてから、裁判所に行って、それからしばらくしてさっきの話だと今度は特許庁に行って、また特許庁に行ってからこっちに来てあっちに行ってというキャッチボール現象みたいなことが起きてきて、トータルでもめごとに時間がかかっているというのがあると思うんです。国の判断が。
 それから特許庁の方で言っているのと、それから裁判所で言っているのが一緒になるかどうかというのは、制度の一本化。中でもやはり大きい点は、トータルで特に知的財産、経済的にもだんだん価値が高くなっていますから、しかも早く決めていくことが大事ということですので、私自身は、もちろんその中で同時解決は可能だと思いますが、やはり国全体として迅速に解決ということが一番大事ではないかなと思います。

○伊藤座長 どうぞ、飯村委員。

○飯村委員 将来どういう制度をつくるかということについて、今、荒井委員のおっしゃったことと、現在の無効審判制度の枠内で考えていく現状の制度と、具体的にどの点が違うかは、必ずしもよくわかりません。それはそれとして、あっち行ったり、こっち行ったりという状況というのは、最高裁富士通半導体判決の前においては、裁判所自身の権限が、100 %なかったがために、特許が無効であるという資料があっても、侵害裁判所が無効であることを前提とした判断が出せなかったという問題があったのですが、最高裁判決は、そのような不都合を解消させるための判決だと思われます。すなわち、最高裁判決によって、特許庁に行かなくても、裁判所限りで結論が出せるルートが1つ創設されたわけです。
 そうなると、あっち行ったりこっち行ったりということを解消しなければならない必要性が、低下したのではないかということも考えられるのですが、その点についてはいかがお考えでしょうか。

○荒井委員 それは、次に出てくる明らかな範囲の問題とも関係してくるのではないかと思いますが、これはそういう点もはっきりしてきて、あっち行ったりこっち行ったりしなくなった状態になっていればいいんですが、まだまだそこまでいっていないんではないかという判断です。

○飯村委員 一般的に申し上げて、特許庁の無効審判では、自らが発見した無効事由で無効にすることもできるという制度があり、他方、当事者主義の原則が支配する裁判所の制度があるわけで、その制度の制約の中で結論が出された場合、それが結果として違っていくのは、ことの性質上、自然のように感じるわけです。その制度の特質も含めて、やはり国家全体の制度としてまずいとお考えでしょうか。

○伊藤座長 荒井委員、よろしいですか、もしあれでしたらどうぞ御発言ください。

○荒井委員 済みません、こっちの国家機関と、あっちの国家機関の判断が食い違うというのはまずいわけで、できるだけ統一している方が好ましいということだと思います。

○飯村委員 議論を続けていいですか。

○伊藤座長 どうぞお続けください。

○飯村委員 侵害訴訟において、具体的な紛争解決をするに当たって、当事者は、いろいろなカードを切ることができる制度になっていた場合に、それでも、当事者によっては、それぞれの思惑から、カードを切らない場合もあり得るわけです。侵害裁判所がカードを切らない当事者を負かせるのは、手続上むしろ当然であって、そういうことが、迅速審理に寄与しているわけです。民事紛争の解決については、いろいろな制度設計があり得るわけですが、現行制度は、一定の価値判断を前提として、弁論主義とか当事者主義を採用しているわけです。
 そうだとすると、無効審判、審決取消訴訟の結果と民事訴訟の結果とは、仮に、表面的には、異なる結論が出る場合があっても、審理の中身を見れば、確かに違って当然であって、食い違いが生ずることが何らおかしくないと思うんです。それでも、やはりおかしいということなんでしょうか。

○伊藤座長 別に飯村委員の御意見として承るということでも結構ですが、荒井委員、もし何かございましたら、どうぞ。

○荒井委員 もちろん言ってもいいですけれども、ほかの皆様に。

○伊藤座長 そうですか、それではどうぞ。

○飯村委員 繰り返しになりますが、職権主義の下での無効判断と、当事者主義での無効判断は、同じであるべきということですか。

○荒井委員 そうです。

○伊藤座長 では、小林委員お願いします。

○小林委員 先ほど荒井委員から御発言があった、解決の迅速性、それから判断の矛盾回避、それから応訴負担ないしは対応負担の軽減というふうに、このペーパーにも3点載っていますが、その3点の解消と言うか、ニーズを満たす制度設計をしていくということは、当然のことだと思っていまして、後から恐らく制度ユーザーの方からも御発言があるんだろうと思いますが、従来からそういうことは言われているし、大きなニーズだろうと考えます。
 ただ、このニーズについて考えたときに、まず、判断の矛盾回避と、それから応訴負担ないしは対応負担の軽減、この2つの観点に関しては、明らかにルートが2つあることに起因する問題であります。1つであればそういう問題が生じないわけです。判断の矛盾というのも生じないし、それから対応負担の問題というのも当然生じないということですから、少なくともこの後二者の判断の矛盾回避、それから対応負担の軽減、このニーズにつきましては、侵害問題と有効性の問題が同時に争いになった場合だけしか解決すべき問題としては出てこないということでございます。その観点から申し上げますと、前回私どもの方から紹介させていただきましたけれども、今の無効審判の方から見ますと、侵害系の無効審判と独立系の無効審判というのがあって、独立系の無効審判の方がはるかに多いという状況ですので、侵害系の無効審判のところに着目して制度の改正を図っていく、あるいは運用の改善を図っていくというのがあるだろうと思います。
 もう一点、解決の迅速性ということでございますが、これは侵害問題と有効問題が同時に係属した場合であっても、あるいは有効性の問題だけが無効審判の中で問題になった場合であっても当然解決しなければならない課題だと考えております。
 その観点から、我々は無効審判の在り方を反省するというところもあるわけですけれども、では逆に無効審判を廃止して、それを特許査定取消訴訟という構造に変えたと、もちろんそれは組織論的な変更も伴うんだろうと思うんですが、そういうことだけで、いわゆる独立系の無効の争いについて解決の迅速性が図れるかということになるんだろうと思うんです。この辺につきましては、1つの検討の選択肢にすぎないので、いろんな条件が欠けていますから、評価はなかなか難しいと思うんですけれども、一般的に言って、行政審判の方が簡便な手続でできるという形で制度設計されていますから、きちんと運用が図れれば、訴訟という形態よりは、審判の形態の方が迅速性という観点からいけば、多分有利性があるんだろうと思います。
 仮にそれが実現できていないとすると、我々の責任になるのかもしれませんが、そういったことになるんだろうと思います。
 したがいまして、まとめて申し上げますと、A案、B案、C案というふうにここに並べた3つの中でどれを選択するかと言われれば、B案ないしはC案ということを前提に検討をしていくべきではないかと考えております。

○伊藤座長 どうぞ、加藤委員お願いします。

○加藤委員 産業界のユーザーの立場から発言させていただきます。
 まず、A案の無効審判の廃止については、小林委員の指摘にもありましたとおり、ユーザー側から見た場合、独立系の無効主張というのは、侵害訴訟の侵害系とは別にあり得ると言いますか、そちらの方が多数だと思いますので、簡易な手段で特許を無効にできる手続が用意されてないと、我々ユーザーとしてはやはり困ると思います。
 したがって、A案というか、無効審判の廃止というのは、産業界から素直に見た場合、ちょっとどうなのかなと。もちろん、代替手段がどうなるかにもよる話ですけれども、現行は無効審判には相当程度産業界はなじんでおりますので、これがぱっとなくなって新しい手段に行った場合については、少しネガティブだろうなというふうに考えます。
 B案の無効審判請求の遮断というのは、1つ有り得る点かと思ったんですけれども、これもまた素直に考えてみますと、改正が予定されているところの新無効審判によれば、何人も無効審判を請求できますので、当事者を遮断したところで、ダミーかダミーではないか別にして、全く別途の無効審判が同時に発生することは、だれが考えても有り得るだろうなと思いますので、根本解決にはならない。
 したがって、B案も採用するには中途半端ではないかと、本来の目的のダブルトラックを遮断するという目的からして、それを達成できないのではないかというふうに考えております。
 C案がいいのかどうかというのは、少し置いておいて、飯村委員の方から明白性についての御説明があったので、それについて産業界としてコメントを申し上げますと、現在の明白性をもう少し産業界にとって、どの程度ならば侵害訴訟の中で判断してもらえるのか、もう少しこれが明確になると、産業界にとってもわざわざ、ダミーではないですけれども、ダブルトラックをつくって無効審判を請求するというのは、控えるのではないかと私自身は素直に感じております。
 実務の積み上げの中で、判例の中から見ていくべきものだとは思いますけれども、ほかの意見書の中を見ましても、明白性の要件がもう少し明らかにならないかと、これが産業界を見て、素直にこの程度ならば判断してもらえるという確信が持てるならば、わざわざ無効審判をダブルトラックでかけたりはしないと思います。
 その点について、私自身は、産業界の立場から見て、工夫の余地があるのではないかというふうに考えております。

○伊藤座長 どうぞ、阿部委員。

○阿部委員 私も一方の産業界の代表の役目をしておりますが、知的財産協会でも、今、加藤さんがおっしゃったような感じでございまして、無効審判制度そのものについて、さっとなくなることについては、非常に皆さん不安を抱いております。一方で一回的に解決してくれと言っている中で、少し矛盾したような感じではあるんですけれども。
 B案につきましても、これは当事者の請求可能時期を制限するということですね、これについて第三者の請求時期を制限する、あるいは無効審判そのものの請求期間を2年とか3年とかに制限するというバリエーションもあるのかなというふうに思います。
 今、我々が思っていますのが、B案がいいのか、C案がいいのかというところでいろいろ意見が分かれていまして、そこが現実に迷っているところだということを申し上げたいと思います。

○伊藤座長 わかりました。ほかの委員の方はいかがでしょうか。
 どうでしょうか、A案の支持の御意見もありますし、B案ないしC案がよいという御意見もあって、それぞれ説得的な根拠を示していただいて、今の段階ですぐにこれについて何か決着を付けるということは、やや性急な感じがいたしますし、時間の制約もございますから、今日は一通りそれぞれの方から、御自分が信じるところの御意見をいただいたということで、継続して議論をさせていただくということでよろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

○伊藤座長 それでは、ここで15分ほど休憩をとらせていただきます。

(休 憩)

○伊藤座長 それでは、再開させていただきます。続いて、侵害訴訟における特許の有効性に関する主張、判断の在り方について検討をしていきたいと思います。
 まず、事務局からお手元から資料1の20〜24頁についての説明をお願いします。

○近藤参事官 明白性の要否ということが論点なんですが、これは先ほどもちょっと議論が出ましたけれども、これについて要すると要しないという2つのA案、B案ということで示させていただきました。
 A案のニーズとしては、紛争の一回的解決ということです。特許の有効性と、抵触可能性という一連の問題を同一の場で争うことを可能とするべきである。審理期間が部分的に長期化したとしても、紛争の一回的解決による最終的な解決までの期間を短縮すべきだというような考え方です。
 B案のニーズとしては、明白性の要件は無効審判制度の並存を前提とする限り、判断齟齬を防止する安全弁として必要なのではないかという考え方です。明白性の要件は、裁判所で判断できるものは判断するというメルクマールであって、有効性判断の範囲の拡大は、裁判所の負担増大、侵害訴訟の審理期間の大幅な長期化の懸念があるんではないかと。
 次にこれらの案の論点について、次のように整理できるんではないかと。
 A案については、まず1番目に侵害訴訟における有効性の判断の範囲を拡大しても、侵害訴訟の当事者でない第三者からの無効審判請求が可能である以上は、特許権者にとっては一回的解決にならないんじゃないかという批判をどう考えるか。
 2番目として、有効性判断の範囲の拡大は、侵害訴訟の審理期間の大幅な長期化をもたらすとの批判をどう考えるか。
 審理期間が長期化すればするほど、特許権者が受ける不利益は拡大するとの批判をどう考えるか。
 他方、B案については、裁判所の明白性の判断基準が不明なため、安全を見越して無効審判請求せざるを得ず、その結果、紛争の一回的解決というユーザーニーズに応えるものではないという批判についてどう考えるか。
 仮に明白性の要件を撤廃した場合に、侵害訴訟において特許無効等の主張・判断を認めるための法律構成の各案についての検討ということで、21頁に記載させていただいております。
 侵害訴訟において、特許無効の主張・判断を認めるための法律構成の各案については、21頁の冒頭の枠内のA、B、C。
 (A案)特許無効の抗弁を認める。
 (B案)権利濫用の抗弁を特許無効が「明らか」でない場合にも認める。
 (C案)侵害訴訟が提起された場合に反訴(行政訴訟)の形で特許の有効性を争えるようにする。
 という3つの案を示させていただいていております。
 かいつまんで説明しますと、A案についての論点としては、①として侵害訴訟において特許無効の抗弁を認める考えの当否。
 ②として、仮に特許無効の抗弁を認めるとした場合、特許を無効にすべき審決が確定したときは、特許権は初めから存在しなかったものとみなす特許法125 条との関係をどのように考えるか。
 ③は、無効審判を経なければ特許の有効性を判断できないとする議論、特にこの※印にありますけれども、公定力の議論をどう考えるか。
 また、対世効のある無効審判の審決と異なって、相対効しかない侵害訴訟の判決で、同一の特許の有効性を巡る紛争を将来にわたって防止することが可能かどうか。
 ④として、特許権ないし特許制度の特徴を踏まえ、特許権の侵害訴訟においては、行政処分の公定力を他の行政行為と必ずしも同列にとらえる必要はないとする考え方について挙げております。
 aとしては、他の行政行為と異なって、特許とは特許権という財産権を付与するという特殊性に着目して、異なる扱い方を正当化するという考え方です。
 bとしては、特許処分を形成行為ではなく、公証行為ないし確認行為ととらえることによって、公定力の問題をクリアしようとする考え方。
 cとして、特許出願発明の審査では、ひとまず刊行物調査に公知資料が見あたらないとの暫定的な状態において特許を与えているにすぎないという、審査の実態に着目して、付与された特許自体が適法なものであるという一応推定するだけの基盤が欠けているという考え方。
 dとして、特許権設定行為が形式的な意味における行政行為であるとしても、その実質は特許法の要件該当性を審理する司法作用であるという点では、一般の行政行為とは異なるとする考え方。
 ⑤は、行政事件訴訟法の争点訴訟を侵害訴訟における特許の有効性の争いに類推的に適用することで特許無効を侵害訴訟の枠組みの中で争えるようにすることの考え方について、どのように考えるかということです。
 注記しておりますが、争点訴訟とは、私法上の法律関係に関する訴訟で、行政行為の存否または効力の有無が争点となっている場合の争い方のことを言っております。
 B案の権利濫用の抗弁についての論点としては、キルビー判決を更に拡大して、明白性を要件としないで、無効理由が存在すると認められる場合にも、権利濫用の抗弁を認め、特許権者等の権利の行使を認めないこととする考え方の当否ということです。
 ②では、更に民事訴訟である侵害訴訟において、特許査定という行政処分を無効と判断することの問題点を回避するために、侵害訴訟における無効主張を特許権の消滅事由としての抗弁として認めるのではなく、特許権の行使障害事由としての抗弁として考えることについて、どのように考えるのか。また、一応有効な特許権という権利がありながら、その訴訟上の権利行使を阻止する抗弁として認められる余地があるかという点を挙げております。
 ③は、キルビー判決における明らか要件の目的をどのように考えるかということです。
 ④は、キルビー判決においては、権利濫用の判断について主観的な事情、加害の意思を要件とすることなく、無効理由の存否という客観的な利益衡量によることとされております。また、キルビー判決における明白性の要件を課したのは、単に特許登録要件を欠くというだけで、権限ある行政庁の判断を経ることなく特許権の行使を許さないとした場合の特許権者の不利益を考慮したものとされることを踏まえ、政策的な視点から紛争の一回的解決等の制度利用者の利益を、キルビー判決において考慮された特許権者の不利益に優先させて、明白性の要件を撤廃するという考え方についてお聞きするものです。
 なお、(注)には、最高裁判所判例解説に示された、キルビー判決における明白性の要件についての説明を御紹介しております。
 ⑤は、明白性の要件を課すことによって、特許が無効であることについて通常のレベルに心証に達したとしても、特許が有効であるとの前提で裁判官が判断しなければけならないということ自体、キルビー判決の依拠する衡平の観点からみて問題であるとする考え方をどう考えるかというものです。
 ⑥は、無効審判制度の並存を前提とした場合、特許庁の無効審判における判断と、侵害訴訟における無効判断を齟齬を防止する安全弁として、この明らか要件は必要であり、有効性判断の範囲を拡大すべきではないという批判をどう考えるかというものです。
 また、その際、判断齟齬というユーザーの不利益、一回的解決とユーザーの利益はどちらを優先させるべきかについてどう考えるかということです。
 ⑦では、明白性要件を外した場合、特許処分の公定力との関係で問題が生ずるのではないかという考え方について。
 また、⑧では、キルビー判決において示された「特段の事情がある場合」については、どう考えるかということを尋ねております。
 C案、反訴の論点ですが、まず特許取消訴訟等の反訴という形で行政訴訟の枠組みの中で特許処分に是非を争えることとする考え方について、これがいいかどうかということのお尋ねです。
 ②として、その場合の論点を掲げております。
 まずaは、民事訴訟である侵害訴訟と、行政訴訟と位置づけられた反訴との併合は可能なのか。可能でないとすると、結局ダブルトラックとなるだけであって、別途無効審判を請求することと差がないのではないかと。紛争の一回的解決の要請に応えられないのではないかということです。
 bは、特許取消の判決は、単に行政庁による特許付与という処分を取り消すだけであるから、特許出願手続を終結させるためには、拒絶査定等の新たな行政処分が別に必要になるんではないかという点です。
 cは、通常の行政事件において、取消訴訟の出訴期間に制限が設けられており、それを超えた場合は、行政処分の無効しか争えないことをどのように考えるかという点です。
 dは、審判制度の存在意義、他の審判、例えば拒絶査定不服審判等への波及について配慮することが必要ではないか。
 eは、反訴における被告について尋ねています。
 fは、取消訴訟を認めると、非侵害であることを理由に、権利者の請求を棄却できる場合であっても、特許の有効性について更に判断しなけばならず、審理期間の長期化につながるとの考え方をどのように考えるか。
 また、24頁の最後には、カからケとして、明白性要件を維持した場合の法律構成案の論点について、ただいま御説明した内容を引用する形で指摘させていただいております。以上です。

○伊藤座長 それでは、議論の順序といたしまして、まず資料1の20頁の明白性の要否そのものについて、皆様の御意見、感想、あるいは場合によれば御質問などをお伺いすることができればと思います。
 明白性要件についての法律構成の問題は、また後ほど議論をしていただきますので、まず明白性要件の要否そのものについて御意見等をお願いしたいと存じます。どなたからでも結構です。
 どうぞ、阿部委員。

○阿部委員 我々としては、一回的に解決してくれというふうに言っているわけですから、なるべく明白性の要件というのは外してほしいという結論になります。

○伊藤座長 わかりました。どうぞ、荒井委員。

○荒井委員 今回は意見が一致したんですが、要するに、明白というのは漢字で書いたときは明白のように見えるんですが、現実問題こういう特許というか技術的な問題について、特にこういう訴訟とかもめごとが起きているときに、明白か明白でないかというのはまた一番もめごとになりますから、さっきお話ありましたように、キルビー特許でダブルトラックの弊害の問題を相当解決する道を開いていただいたんですが、あとはやはり不安定な状況をなくて、基本的にここで書いているようなA案ですか、広く争えるという形の方がはっきりしていいと思います。
 明白というのは、字で書けば明らかで白いんですけれども、全然実態には明らかでもなくて白くもないのが現実だと思っております。

○伊藤座長 わかりました。どうぞ御自由に御発言ください。

○阿部委員 裁判所、現在、非常に積極的に対応していただいていると思うんですけれども、この明白性というのは、訴訟の現場ではやはり大分気にされて判断されているんでしょうか。

○伊藤座長 では、飯村委員お願いします。

○飯村委員 富士通半導体最高裁判決が出された後に、裁判官で協議したということではなく、それぞれの裁判体が、最高裁判決を分析して、実際の事件で、どこまで確信を持てた場合に原告の請求を棄却するかを判断した結果、現在のプラクティスが形成されたと思います。
 初期の段階には、裁判所自らが、いろいろな場所で、どういう基準で判断しているかを説明したこともありました。現状は、ほぼ、一般的な説明のとおりに事件を処理してきたと思われます。
 要するに、無効理由の種類、性質によって、差が生ずるということです。具体的にいいますと、裁判所が、無効判断をするに当たって、その基礎となる事実を直接、確認できるような場合、例えば、裁判所が、冒認出願かどうか、公然実施をしたかどうかを証人調べで確認したような場合には、裁判所が、「無効理由が存在する」と判断したことが、ほぼイコール「無効理由が存在することが明らかである」ということになるでしょう。特許発明と先行技術の同一性、新規性についても、場合によっては、「明らか性」の幅が狭いと解する余地もあるかと思います。これに対して、進歩性の基礎事実の採否、価値評価については、「無効理由が存在する」にプラスして、「それが明らかであること」を要求していると思います。一応の傾向をご説明しました。
 ところで、問題の所在は、そのようなことではありません。
 特許というものは、最初は、出願人が目一杯、広い範囲で取得しようとします。そのため、形式的には、無効理由が存在してしまいますが、そのような無効理由の多くは、後日、減縮して、生き延びることができます。侵害裁判所が、口頭弁論終結時において、審理した事実関係を前提に、無効理由の存否を判断しようとすると、今、申し上げた関係で、形式的には、仮に訂正しさえすれば生き延びると思われるような「無効理由」が、数多く存在し、しかも、それが「明らかである」ことがあります。
 したがって、侵害裁判所は、形式的に判断すると、原告の請求を棄却せざるを得ないことになります。しかし、そういう場合のすべてにおいて、侵害裁判所が、明らかな無効理由があるということで、一旦棄却するというのは、今の特許庁のプラクティス、高裁のプラクティス、出願人のビヘイビア等を前提にしたときに妥当かどうか、考えなければなりません。
 このような観点から、結論を申し上げますと、「無効理由の存在が明らかである」という判断基準については、侵害裁判の中で、安定した解決を図ることができるのかどうかという基準で審理、判断がされているということだと思われます。

○伊藤座長 阿部委員、よろしいですか。

○阿部委員 はい。

○伊藤座長 どうぞ、ほかの委員の方。櫻井委員には、先ほど公定力について御説明をお願いしましたが、具体的な問題についても御議論を頂戴できればありがたいと思いますが。

○櫻井委員 私は基本的に、先ほど申し上げましたように、2つの解決のルートがあるという、この単純明快さというのはとても大事なことであるというふうに思っておりまして、したがって明白性の要件というのは、その限りにおいて必要であると、あった方がよりいいというふうに思います。
 ついでに申し上げますと、さっき話に戻ってしまうんですが、16頁のA案、B案、C案とございますけれども、D案として現行制度維持というのを入れていただきたいと思います。つまり、別にその説がいいということでは必ずしもないんですけれども、その点も視野に入れた上で、改正しなければならない必然性も必ずしもないんじゃないかという気もしまして、その点を申し上げたいと思います。

○伊藤座長 どうぞ、中山委員。

○中山委員 明白性の問題は一応別として、無効に関することは全部侵害裁判所で判断するということになりますと、先ほど飯村委員がおっしゃった、20も30もいろんなものが出てきたときにはどういうするかという問題があります。それを除きましても、審判でやっていることを訴訟でやらなければいけないわけですから、恐らく訴訟の方にも審判に相当するような人の配置等が必要になってきます。それが将来仮にできたとしても、中止をして審判に戻して審理するのと、それほど審理の早さが違うのでしょうか。いずれどこかで同じようなことを行わなければなりませんが、侵害訴訟の場でやる方が早いのか、あるいは審判に戻してやるのが早いのか。私は審判を合理化すれば、訴訟という重たい手続よりもその方が早くなるんではないかという気がするんですけれども、いかがでしょうか。

○伊藤座長 その辺りはどうでしょうか、ユーザーの側、あるいは制度の運用の側から、委員の方で何か御発言があればと思いますが、どうぞ小林委員。

○小林委員 裁判所の方の審理負担、あるいは権利者側の負担の話とか、あるいは特許庁の運用の話とか、幾つか論点があると思うんですが、先ほど飯村委員がペーパーで御説明された中で、今、中山先生もお話しされていましたが、権利者側の負担増大という議論が出ていました。明らか性の要件を削除すると、公知例が20も30も出たときに、逐一反論を加えなければならないので負担になるという話が出ていたんですが、少し理解ができなかったんです。今の現状では、どのみち被告側は無効審判を請求できるわけですから、無効審判を請求されて公知例が20も30も持ち出されれば、当然のことながら逐一反論しなければならない状況は全く変わらないわけですから、この問題は訴訟で明らか性の要件を削除するかどうかという問題ではないんではないかという気がしました。
 要は、権利者側の負担という観点では、そもそも有効性について争う制度を設けていることによる問題で、それは結局のところ瑕疵がある特許が存在し得るという前提であれば、やむを得ない危険負担ではないかなという感じがいたします。
 もう一点、これまた飯村委員のペーパーの中に書かれているんですけれども、侵害裁判所が明らかな無効理由がないとして認容した場合において後に無効審決が確定したときは、救済手段があるということですね。これは上級審での是正であったり、場合によっては判決が確定した後に再審ということもあるのかもしれませんが、法的な救済手段が用意されているということと、実際の実案件において、その当事者が困った事態にならないということとは少し違うのであろうと考えます。
 その点で言うと、何度も言うようですが、特許庁にも責任があるのかもしれませんが、例えば典型的にアルゼ事件のような事態、これはキルビー判決が予定している事態だと思います。明らかには無効ではないと裁判所に言われつつ、無効審判を請求してみたら、結果的に無効審決が出たという事件ですので、キルビー判決が予定している案件だと思います。これが、今、両方とも東京高裁の方に行っていますので、確かに上級審で是正が図れるんだろうと思います。審決が間違っているのかもしれませんし、判決が間違っているのかもしれませんが、いずれにしろ是正が図られるんであろうと思いますけれども、そもそもこうした事態が生じること自体が問題ではないかという指摘がされているわけですから、それに対してどう答えるかの答えにはなっていないので、我々はそこに答える必要があるのではないかと思います。
 もちろん、その答えが、無視できる問題であると、大した問題ではないという答えかもしれませんけれども、いずれにしてもそれについては答える必要があるのではないかと思います。
 3点目に、無効審判の運用ですが、これは再三申し上げますように、無効審判の運用はいろいろと改善すべきところがたくさんありまして、早くすることは当然のことながら計画しております。しかし、これも再三申し上げますように、どうしても出発点が違いますので、その点は訴訟とのリンクを図らなければ、特許庁だけの努力ではどうしようもない部分があるということでございます。

○伊藤座長 では、どうぞ、末吉委員お願いします。

○末吉委員 先ほどの無効審判の論点にしましても、今の明白性の要件の要否につきましても、まだ日本弁護士連合会ではいろいろ議論がありまして、全部の説があるんです。
 今の明白性の要否の問題で、特に代理人の立場として、もちろん削除すべきだという意見もあるし、存続するべきだという意見もあります。ただ、その中で、特に代理人の立場で一番強いと私が感じている意見は、もう少し要件が明確にならないかと。確かに明らかというのは、わかったようでわからないところがあって、つまり代理人としてもどういうふうにこの要件を理解して活動したらいいかという意味では、悩んでいる弁護士も結構たくさんいて、特に廃止するべきだという意見の中のかなりの部分は、なかなか要件が明確にできないのであれば、むしろ削除した方がいいのではないかという意見もあろうかと思いますので、明らか要件という中身をどうするかと、存続するとしてもですね、その点も御検討いただけたら大変ありがたいという意見です。

○伊藤座長 その点について、何か具体的に議論はされていないんですか。

○末吉委員 まだ具体的にはないです。

○伊藤座長 どうぞ、加藤委員。

○加藤委員 その点につきましては、先ほど私も申し上げたとおり、もう少し明白性がわかりやすくなってくれると、ユーザー側としては、最初の段階で侵害訴訟の中で無効主張をずばっとやるか、あるいはあいまいだから、無効審判の方で争うか決めやすいという面は確かにあるんだと思っています。それがユーザー側の感触なのではないかと思います。
 ですから、極めて微妙な判断基準であろうなというのは、もちろん理解しておるんですが、もう少しクリアになると、ユーザー側もそれに従った道の分け方を整理して取り組めるのではないかなというふうに感じております。

○伊藤座長 どうぞ、飯村委員。

○飯村委員 今、お聞きしました明白性をできる限りわかりやすくというのは、重要なご意見だと思われますので、できる限り、審理の場面や判決理由を書く際に反映させたいと思っております。
 今、付け加えますと、無効理由は、抗弁として出されていても、抗弁の中の1つであって、非侵害の場合には判断しないままにしたりします。また、訴訟において、原告も、無効とされる危険性を重視すると、特許請求の範囲の解釈を狭く主張したり、無効の危険性をあまり重視しない場合には、特許請求の範囲の解釈を広く主張したりして、いろいろと、訴訟上の駆け引きもありますので、必ずしも、一般化して、論じられない要素も含まれます。
 そういう問題もありますが、一切の事情を総合してみても、「明白性」の判断要素をすっきりさせられれば、もちろんいいんですが、個々の事例では、当事者側の作戦、状況を見ながら態度を決めるということで、明白性の内容を「判決理由」で示せないという事情もあります。そういうことも併せて申し上げます。
 それから小林委員が言われましたが、20、30の無効理由が出された場合に、権利者側で逐一反論をしなければならない負担というのは、結局のところ、無効審判請求が制限されていないので、無効審判請求で提起された場合には、権利者負担としては同じではないかという問題は、確かに、一般論的にはそのとおりだと思います。ただし、侵害裁判には、仮処分もあり、権利者側は一日も早い救済を求めて、仮処分をかけたりしますし、本訴も急ぐ状況があります。
 その中で、非権利者が、苦し紛れの無効理由の抗弁も含めて、攪乱する意図で、数限りなく無効理由を主張した場合に、その中で、無効の抗弁が当たっている場合もないわけではないので、審理の過程で全部反論しない限りは救済が求められない状況になってしまいます。侵害訴訟の中での救済が図れないということになると、権利者側にとって酷なケースも生じてくるのではないかなというような感想があったものですから、それでレジュメでそういう例を指摘させていただきました。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。どうぞ近藤さん。

○近藤参事官 小林委員に、今の関係で質問したいんですけれども、審理方法として、審判の方は職権主義ですね。そうすると今、弁論主義を取っている侵害訴訟で主張されていることについてすべて当事者が対応して、それについて証拠があるかないかというのを全部調べなければいけないという当事者主義構造と、審判の場合の職権主義構造と若干違っていると思うんですけれども、その点は違うという認識でよろしいんでしょうか。

○小林委員 おっしゃるとおりです。その点はそうだと思います。ただ、おっしゃるとおり当事者の主張が下手だから必ずしも無効になるとか、そういうのがないのが職権主義の一種の利点かと思いますけれども、実際には、やはり権利者は心配ですから、当然反論はするんです。反論が下手であっても、結果としてそれでもって無効になることはないというだけであって、やはり審判の方で反論するという点でいけば負担になるのは同じだろうと思います。
 ただ、今の飯村委員の説明で別途理解をしたのは、無効審判が請求されていたとして、そちらの方の反論も当然するんでしょうけれども、それとは別に、例えば仮処分の申請をされているようなときには、特許が有効であることを前提に、あるいは明らかに無効ではないということを前提に救済が与えられるという局面があるというのは理解しました。

○伊藤座長 どうぞ。

○近藤参事官 阿部委員に少しお伺いしたいんですが、先ほど冒頭で明白性の要件を撤廃した方がよろしいのではないかと、また、20、30の抗弁が出てきた場合、審理が長期化するのではないかという問題点も指摘されているんですけれども、ある程度その点については長期化しても、トータルとして考えた場合には、同じではないかという御意見だということでしょうか。

○阿部委員 前に丸島さんとか、あるいは知財協の中でも、我々の議論ではそういうものが大方の意見でございました。

○伊藤座長 ただいまの御発言を伺っていますと、撤廃するという考え方、それから維持するという考え方、更に維持するにしても、しかし明白性を更に明確な要件として検討すべきだと、おおざっぱに分けると3つぐらいの御意見が出ているかと思いますが、この点についても引き続き議論をするということでよろしいでしょうか。飯村委員からは先ほど明白性の要件について更に御検討いただけるというような御発言がございましたので、またそれも踏まえまして引き続き議論をするということで、次の予定に移らせていただきたいと思います。
 そこで先ほど御説明いただいた資料1のところですが、21頁と24頁に明白性の要件を撤廃した場合と、それを維持した場合について、それぞれどういう法律構成があり得るのかと、法律構成の案の御説明がございましたけれども、この点につきまして、どなたからでも結構ですので、御質問あるいは御意見をちょうだいできればと思います。
 どうぞ、櫻井委員。

○櫻井委員 質問なんですけれども、2点ございまして、1つは22頁の方の⑤に争点訴訟の話が出てくるんですが、これは類推適用と書いてあるんですが、私は直接適用かなと思っていたんですが、どうして類推適用なのかということです。

○伊藤座長 どうぞ、近藤さん。

○近藤参事官 争点訴訟は、今は余り利用されていなくて、その1つの理由としては、判断についての効力等が一切ないということが1つの理由です。
 あと、手続上の問題とか、行政庁なんかを参加させることができるというところがメリットなのではないかといわれている気がいたします。
 その辺についてどういう仕組みを取るか、判決の効力が問題だとか、行政庁をそのまま参加させるかどうかというようなことをどういうふうに考えるかということとの関係で、仕組み方によるんだと思いますけれども、今、利用されていない同じ争点訴訟でいいということであれば適用ということもある得るんだと思いますけれども、そこのところをある程度モディファイすると、必ずしも今までの議論の中で特許庁を被告としなければいけないかどうかということについても、まだ詰まっていないんではないかなという感じがいたしております。

○櫻井委員 それは全く同感なんですけれども、そうですか。だから、条文としては直接適用も可能だけれども、制度としては別途ちゃんとつくらなければいけないということですね。
 2点目なんですけれども、これは中山先生にお尋ねしたらいいのかもしれないんですが、私はかねてから疑問に思っていまして、21頁の④のところのaです。
 他の行政行為と異なる、特許が財産権を付与するという特殊性があるということで、これは東京大学の大渕先生ですか、この前ジュリストの論文を拝見しましたけれども、非常に強調されておられるんですが、何がどう特殊なのか私はよく理解できなんですが、これはどういうことなんでしょうか。
 行政処分で権利を付与するようなものというのは、別に特許に限らず結構いろいろありまして、鉱業権だけでなく、漁業権であるとか、採石権であるとか、ダム使用権とか、法律だって結構あって、別に特殊ではないと思うんです。
 それから、行政行為の裁量性が余りないんだという言い方もされていますが、しかし別に裁量性のない行政というのは、むしろ普通でありまして、警察許可なんかも裁量がないのが普通ですから、別にそんなに特殊じゃないのではないかと思っていますが。

○伊藤座長 御指名がありましたので、中山委員、お願いします。

○中山委員 鉱業権等はありますが、所有権と同じような完全な私権としての財産権を設定する行政処分というのは、ほかにないと思います。したがって、この争いというのは、衣は行政法の衣を被っていても、実態は民と民の争いだと思います。どちらの方を重んずるかということにすぎないんですけれども、少なくとも、特許の登録を抹消するということは別論ですが、当事者間の話でしたら、一般の行政法は若干異なった考慮をしてもよいのではないか、簡単に言ってしまえばそういうことなんです。
 しかしその場合でも、行政法の要請を無視することは難しいので、最高裁は権利濫用という法理を間に噛ませたと思うのです。それはそれで理由があるんですけれども、ただ普通、権利濫用というのは権利があって、権利の行使をけしからぬ方法でやったときに用いる法理です。
 キルビー判決の場合は、根っこが腐っているから行使の方法に関係なく、全部濫用だと、言ってみれば定型的権利濫用とでもいえるものです。これは恐らくきちんとした抗弁として成熟するまでの間の橋渡し的な意味ではないかと思っているんです。
 ここで書かれているものは、私の書いたそのものではないのであれですけれども、基本的には完全な私権の設定を行政庁が行政処分を行うという、そこが違うんではないかと。

○櫻井委員 もう一点お伺いしていいですか。

○伊藤座長 どうぞ、櫻井委員。

○櫻井委員 どうして完全な私権だというふうにおっしゃるのかというのが、またもう一つわからなくて、大渕先生もチャンポンに使っておられるんですけれども、財産権、要するに物権だということと、私権だということはラインが別ですから、これは全然違う話です。物権であることは確かだと思います。しかし、物権であるとしても、私権的な性質ないし公権的な性質が混在するという議論は当然できるわけですから、どうして完全な私権としての財産権を設定する行為だというのが所与の前提になっているのか。

○中山委員 それは恐らく実体的にそうなっているとしか言いようがないので。

○櫻井委員 しかし、産業政策上の観点から権利を設定しているんですよね。

○中山委員 産業政策にいったら、日本全体が発展すればいいという非常に大きな話ですが、出来上がったものは、所有権に似た私権だと思います。
 もっと言ってしまえば、情報に関する財としての権利を、これには特許権も含まれますが、一般の私法体系の中に入れるべきであると考えています。民法は、所有権の対象を物と規定しています。本来でしたらそこに情報も入るべきですが、情報の特殊性から、あるいは歴史的経緯から、入っていないだけだと考えています。したがって、元来が物に対する権利とパラレルに捉えるべきものですが、たまたま技術情報の特殊性から、権利の発生に行政処分が絡んでいるだけで、行政処分によって出来上がった権利は私権と考えています。本来であれば、民法の中の物権法の横に情報法というのがあってもいいと、そういう位置づけをしていますが、これ以上詳しくは時間がかかってしまいますけれども、そういう意味で完全な私権だと。

○櫻井委員 もう一点だけ、憲法の29条の財産権というのは、中核は土地所有権ですね、それと知的財産権というものを同列に分類するのは、少しおかしいんではないかと前から思っているんですけれども。

○中山委員 憲法で保障する財産権と。

○櫻井委員 29条の文言上は別に排除していないんですけれども、しかし歴史的には石川先生の論文なんかもあるところですけれども、土地所有権、それが憲法上の権利、だからもちろん法律で物権法定主義で特許権なら特許権をつくったということになると、当然入ってくるように思われるけれども、本当は入ってはいけないのではないかというところもあって、その辺りはどうかなというふうに疑問に思っているんです。

○中山委員 私は、情報に関する財産権、特許権もその一つですが、当然憲法29条の射程範囲と思いますし、したがって既に存在している特許権を、勝手に法律で消してしまうかとか、遡及的につぶしてしまおうというのは、なかなか難しいと思います。もっと細かい点でも、例えば出願公開制度導入の際に、既に出願してしまったものは、出願公告まで秘密に保たれるという既得権があり、後の立法で出願公開をすることは憲法上許されるのかということが問題となり、ドイツで違憲判決が出たものだから、日本もそれにならって、憲法上の問題があるからと言うので、既出願のものには適用しないという法改正をしたことがあります。
 歴史的な経緯は別にして、現代社会においては、以上のように考えざるを得ないと思います。

○伊藤座長 急に学問的な、アカデミックな雰囲気の議論になりましたが、それも前提にして、本題の法律構成について、ほかにどうぞ御意見をおっしゃってください。今の御議論はありがとうございました。
 どうぞ、近藤さん。

○近藤参事官 ここで示させていただいている法律構成の各案というのは、先ほど言った明白性の要否ということの実質をどうするのかが決まらないことは、当然決まらない問題ではあるんですが、それを考える上でも、法律構成としてどんなようなことをアイデアとして考え得るというようなことを示していただければ、また議論しやすいかなというふうに思って、こういう形で、少し細かいところに入ってしまって申し訳ないんですけれども、何かアイデアとして、むしろこういう考え方もいいんではないかというような新しい発想なんかがあれば、また違った形で議論ができ得るのかなということで、こういう形で出させていただきました。

○伊藤座長 どうぞ、阿部委員。

○阿部委員 これは、前の弁理士会の方がここで御報告されたときに、無効の特許はこれを行使してはいけないというような実体法をどこかに設けるというようなことをお考えなんですか。

○近藤参事官 A案ですね、A案としてはそういう抗弁事実のような法律案を設けるということが1つあり得るんではないかと思います。
 B案の場合だと、これは法律の規定で設けるかどうかというのは権利濫用ですので、通常は規定として設けるということには、なかなか難しい問題もあり得るという感じがしておりますが、それでもなおかつ設けるということもあり得ると思います。

○末吉委員 B案の場合は、立法しないんですか。

○近藤参事官 両方あり得るんだと思います。

○末吉委員 済みません、釈迦に説法ですが、それじゃ改正にならないですね。私は、B案というのは、条文の体裁は難しいものだと思いますが、権利濫用の抗弁というので、特許法なら特許法の中に権利濫用の抗弁の要件を書かないと、機能しないのではないかと思ったんですが。

○近藤参事官 十分そういうことはあり得ると。

○末吉委員 そういうご趣旨ですよね、基本には。

○近藤参事官 そういうことはあり得ると。

○吉村企画官 そのほか、キルビー判決でも特段の事情というのが示されておりますので、そういったこともより明らかに書き込んでいくといった立法も考えられるかなということで、割と柔軟にいろいろと姿は考えられるのではないかと思っております。

○伊藤座長 どうぞ、小林委員。

○小林委員 質問なんですけれども、B案は特許権の行使障害事由としての抗弁というふうに位置づけてB案に整理して、A案でいう、いわゆる特許無効の抗弁、これも何かいろいろ多義的に使われているように思いますが、特許無効の抗弁というのは、そもそも特許権がない、ないしは無効であるということを主張して、それが認められるとそういう効果が出るという抗弁だというふうに整理しているということですね。

○近藤参事官 そうです。ここの中では、そういう形で整理させていただいております。

○小林委員 そうすると、公定力とか、対世効の議論はA案については出てくるけれども、B案については基本的にはその議論は出てこないという理解でよろしいんでしょうか。

○近藤参事官 はい。

○伊藤座長 どうぞ、小野瀬委員。

○小野瀬委員 質問なんですけれども、B案で権利濫用に当たるかどうかについて考慮すべき事情というのが、最高裁判例が前提としている事情と変わっていないということになりますと、B案のような方法でこの明白性要件を撤廃するというのは、最高裁判例との関係をどのように考えるのでしょうか。今、こういうような明白性がある場合に権利濫用であると認めるという最高裁の判例があるんですね。にもかかわらず、明白性の要件を撤廃するという説明はどういうふうにされるのかと思いまして。

○伊藤座長 近藤さんお願いします。

○近藤参事官 今の実態として明白性の問題まで踏み込んでいるか、踏み込んでいないのかという議論も一方でありまして、判断の齟齬の度合いがどの程度なのかということの議論との関係で、そうすると、そこで最高裁判例で言っている明白性というものが、どういう要件なのかという解釈の仕方、説明の仕方によって、今、小野瀬委員がおっしゃった説明も変わってくるんだろうと思います。そこについてどういうふうに説明をしていくのかというのは、まだ事務局の方で整理をしているわけでは全くございませんので、先ほどA案、B案の仕分けとして、小林委員からも指摘がありましたように、今のところ事務局で考えているのは、B案というのは、阻止の抗弁で公定力との関係は余り問題にならないというような形の整理ができ得るのかなと。
 最高裁の判決との関係で、それを一歩進めるということになる可能性の方が強いんだと思うんですが、そうではなくて、それは同じことを言っているんだという解釈の余地が全くないのかというふうに言われた場合に、それは説明の仕方として、全くないかどうかということについても、まだ確定的な意見を持っているわけではないということです。

○伊藤座長 どうぞ、吉村さん。

○吉村企画官 そこで、今、小野瀬委員の御指摘がありましたキルビーの関係で、同じかどうかということになりますと、24頁の方のカのところの明確性の要件を維持した場合に、権利濫用の抗弁を認めるというB案でございますが、そうなるとこれがキルビー判決と全く同じではないかと、そうすると、その立法は意味があるのかという御指摘そのものになるのかなということで議論のたたき台として提案させていただきました。

○伊藤座長 飯村委員、何か御発言がございますか。

○飯村委員 法律的なテクニックは別にして、A案とB案の違いがよくわからないんですが。イの場合は明白性を撤廃した場合ですので、立法すると今までの最高裁判例の枠組みからは変更することになって、要件が変わってくるわけで、そのための立法の必要性があるということはわかります。
 条文化する場合に、A案である場合と、B案である場合とのワーディングの違いとか、それがどういう効果と結びつくかについての分析ができていません。当然再抗弁の場合をどういうふうに把握するかという点も問題になってくると思われます。そこまで考えていくと、まだ細かい分析ができていないので、意見は言えないということになります。
 全部無効と一部無効の問題について、意見の述べたいと思います。
 例えば、一部無効があった場合でも、一部無効があったからといって、そこを除外するのか、また、被告製品が公知技術そのものから成り立っている場合や公知技術から容易に想到できる技術から成り立っている場合に、自由技術の抗弁を認めるのかどうかという点についても、判例実務上、一致しているわけではありません。
 仮に、「明らか性」の要件を除外してしまった場合には、侵害裁判所に対して、全部無効と認定判断した場合には棄却できるという権限を与えたことになりますので、しからば、今まで、実務上の一致を見なかった論点である「一部無効が存在した場合にどうするか」という難問に対しても、影響を与えることになります。そのような関係でどうなるのかというのを、我々は、まだ十分に分析し尽くしていないので、十分に検討した上で意見の述べたいと思っております。

○伊藤座長 ほかにいかがでしょうか。末吉委員、先ほど明白性要件の要否については、いろいろ弁護士会で意見が分かれているという御発言がありましたが、こちらの法律構成の方についても、やはりいろんな意見がありますか。

○末吉委員 済みません、そこまでまだ議論が進んでおりません。ちょっとよろしいですか。

○伊藤座長 どうぞ。

○末吉委員 先ほど飯村委員からいろいろ御指摘いただきまして、要は、明らか要件というのは単純ではないと言いますか、恐らく代理人の立場から、「一言で言うと難しいから明らかではない」というような単純なものではないということは、多分実務感覚の中で、例えば訂正の可能性とか、いろんな多岐にわたる論点を裁判所においていろいろ考慮される中で使われる要件だろうとの忖度は一応しているんだと思います。
 ただ、条文に落とすのはかなり難しいということもわかってはいるんだと思います。ですから、いろいろと御議論いただくということに意味があると思いますし、恐らくそういうことを前提に制度設計で、条文に書いていくときにどうなるのかというのが、この特許無効の抗弁にするのか、権利濫用の抗弁とするのかの問題だと思います。
 それで、今、飯村委員も御指摘されたとおり、違いは一体何なのかということも含めて持ち帰って議論してみたいと思います。

○伊藤座長 是非お願いしたいと思います。

○末吉委員 質問よろしいでしょうか。

○伊藤座長 どうぞ。

○末吉委員 櫻井先生に伺いたいんですが、先生の説に立った場合、まさに21頁のA案なんですけれども、済みません、また確認になって恐縮なんですが、公定力の関係で、どういうふうにクリアできるかということについては、先生の御説だとどういう説明になると理解すればいいんでしょうか。

○櫻井委員 私の説と言うよりか、学界の多数説ということで申し上げますと、現在は公定力というのは中身がないので、法律を変えればよろしいわけでして、ですからこういう場合に特許無効の抗弁ができますということになりますと、その限りにおいて公定力の範囲が減縮するということになる。だから、無効審判制度が宗旨替えといいますか、そういうことになるということで、形式論としては完結するということです。

○末吉委員 そうすると特段の支障として考える必要はないという理解でいいですね。

○櫻井委員 政策的な決断だと思います。

○末吉委員 ありがとうございました。

○伊藤座長 どうぞ、中山委員。

○中山委員 21頁の一番上のAの特許無効の抗弁を認めるとありますけれども、色々な種類の抗弁があると思います。すべての特許無効事由を抗弁として言えるという考え方もありえます。そうではなくて、むしろ学説などで多いのは、私もそうなんですけれども、これは特許を消すとか消さないという話ではなくて、要するにさっきの権利濫用と実質は同じであり、どのようなことを特許無効の抗弁の中に認めるかというのは、それ自体が別の問題だという考えと両方あり得ると思います。
 さっきの櫻井さんの質問の続きなんですけれども、財産権を付与するという財産権の意味なんですけれども、私が考えたのは、主として譲渡、相続、差押え、担保化と、これが認められるというものを完全な私権と考えているわけです。
 そうすると、鉱業法をここで引くのは余り適当でない、つまりそういうものは例がないということを強調したかったわけです。
 その意味では、行政処分によって発生する特許権も行政処分がない著作権も同じであり、たまたま行政処分というのは、何かの必要があってやっているにすぎない、便宜上やっているにすぎないという、こういう話なんです。

○櫻井委員 だけど先生、公権と言われているものも、基本的には譲渡可能ですし、法律が禁止していなければ差押えも可能であるということになっていますから、私権だというふうに、なぜ頑張られるのか。

○中山委員 所有権と同じにしたいというだけの話で。

○櫻井委員 所有権と違うと見るかどうかですか。

○中山委員 そうですね。元来がパンデクテンの体系の中にはいっていてもおかしくないものであると考えています。

○伊藤座長 それでは、この点もいろいろ御議論、御意見を頂きましたが、やはり先ほどの御発言にもあったように、特許無効の抗弁と、権利濫用の抗弁というものの実質的な違いがどこにあるのか、そういった点についてもう少し詰めて考えた上で議論を続けた方がいいように思いますので、ここは今日の御意見を踏まえて、事務局でもう少しそれぞれの考え方の基本的な違いと、それから実際に訴訟でそれぞれの主張がされる具体的な場面における違いといったものを整理をした上で、次の機会に議論を続けてお願いしたいと思います。
 それでは、引き続きまして、侵害訴訟における特許無効の主張に対する権利者の防御手段について御検討いただきたいと思います。
 まず、事務局から資料1の25頁から26頁について説明をお願いします。

○近藤参事官 25頁をごらんください。
 侵害訴訟における特許無効の主張に対する権利者の防御手段については、25頁の冒頭の枠囲いにお示ししたように、A案として、侵害裁判所において訂正等の手続をできるようにする。B案として現行どおり特許庁において訂正審判を請求することで対応するとの2つの案が考えられています。
 以下、各案の論点について御説明したいと思います。
 A案については、まず、1で侵害訴訟の中で権利者の防御手段、例えば訂正または特許権の一部放棄等を確保することの当否について伺っております。
 2は、その場合に指摘されている論点について挙げております。aは、減縮されたクレーム、訂正ないし一部放棄ということですが、それに基づいて特許無効の判断が回避された場合に、別の訴訟において権利者が減縮前の元のクレームに基づく主張を行うことを防止すべきであるという考え方が必要ではないかと。
 訴訟手続の中で行われる特許の訂正ないし一部放棄の対世効をどのように担保したらよいかというものです。
 bは、訂正審判の請求及び特許権の放棄と同様、専用実施権者、質権者または35条1項、77条4項、78条1項の規定による通常実施権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限ることが必要かどうかということでございます。
 cは、特許権の一部放棄を認める場合、請求項ごとの放棄しか認めていない特許法185 条との関係整理が必要かどうか。
 dは、訂正は職権主義の手続構造を前提とした行政行為でありまして、当事者主義を前提とする民事訴訟の枠に適合しないのではないかというものでございます。
 B案については、1で特許庁に訂正審判を請求することにより、特許権者の防御手段を確保することの当否を尋ねております。
 2は、その場合の手当として、現行の訂正審判において、早期に結論を得るようにしてはどうかということです。
 ウは、その他の考慮事項としまして、特許の無効の主張に対する権利者の防御手段の行使に対する時期的・回数制限を設けることについて、相反する考え方を紹介しております。 aは、クレームの範囲がいつまでも確定せず訴訟が長期化することを防ぐために、権利者の防御手段の行使に時期的・回数制限を設けることが必要ではないかというものであります。
 bは、侵害論との関係でクレームを減縮する訂正にはおのずと限界があること、上級審での自判が可能であること等を踏まえると、そうした制限を設けなくてもよいのではないかというものです。

○伊藤座長 それでは、ただいまからの事務局の説明を踏まえまして、どの点からでも結構ですので、御意見、御質問をお願いしたいと思います。どうぞ加藤委員。

○加藤委員 私としては、訂正の考え方につきましては基本的にはB案、すなわちA案に書いてあるような問題点をクリアするのは極めて難しいと考えますので、特許庁における現状の訂正審判を利用することがいいのではないかと考えます。
 ただし、その場合、迅速化の趣旨にのっとった上で、訂正審判の優先審理というものを、侵害訴訟の中で発生した訂正の必要性については、訂正審判をかけた上で特許庁の方に優先的に、訂正を許すか許すないかを御判断いただければ、かなりの面が解決できるのではないかと考えております。

○伊藤座長 加藤委員からB案を基本にして、その上で手続の合理化を図るべきだという御意見がございましたが、ほかにいかがでしょうか
 どうぞ、阿部委員。

○阿部委員 このB案というのは、抗弁として訂正を言ったときの話ですよね。それで、抗弁として成立するかどうか、裁判所が判断しないで、訂正の申し出があったら一回中止して特許庁で判断して、それで戻してやるということになるわけですか。

○近藤参事官 はい、基本的にB案は現行の考え方ということでございます。

○阿部委員 現行通りということですか。

○伊藤座長 どうぞ、中山委員。

○中山委員 侵害裁判所において訂正をするというのは、これは至難の技で、おっしゃいましたようにこれを回避することはまずできないと思います。しかし、では現行通りでいいかというと、手直しは幾らでもあり得ると思います。これは産業構造審議会の知的財産政策部会でも議論されておりますし、Bを基本として、かつA案で生ずるような問題点がないように何か工夫を加えるということが必要ではないかと思います。

○伊藤座長 ほかの委員の方は、いかがでしょうか。B案を基本とするという考え方がお二人の委員から述べられておりますが。

○阿部委員 私もB案で行かないと難しいんじゃないかと思います。ただ、中山先生がおっしゃるように、何かもう一工夫が要るなと。

○伊藤座長 どうぞ、小林委員。

○小林委員 特許庁の方で制度の運用者側の観点から、2点ほど申し上げます。
 1点は、侵害訴訟と同時係属して、例えば権利無効の抗弁が出て、それに対するさらなる抗弁として訂正審判が特許庁に請求されるという事態が結構ありまして、それについては基本的に優先審理をすることにしています。
 非常に運用的な障害があるものですから、その辺のところももう少し改善しようとしておりまして、かなりの程度を短縮することが可能かと思っています。
 と言いますのは、これは基本的に特許権者だけの手続ですから、特許権者と特許庁しかないという世界ですから、相手方がいませんので、その点で言いますと無効審判と違って短縮化というのはかなり図りやすいということがあるかと思います。それが1点です。
 ただ、2点目として、侵害訴訟と無効審判が同時係属したときのことを考えておかないといけないんです。と言いますのは、ちょっと無効審判と訂正の説明になってしまうんですけれども、無効審判が特許庁に係属しているときには、訂正審判を請求することができないんです。これは新無効審判でも同じなんですけれども、それはなぜかと言いますと、無効審判と別に訂正審判というのが起きてしまいますと、無効審判を途中で止めて、訂正審判を処理をして、その結論に応じて無効審判をまた再開してというようなことをしなければならない。これは実は平成5年よりも前の制度はそうだったんですが、そうするとそもそも訂正審判が認められなかったときに、今度それに対する出訴が起こり得る。それで審決が確定した後にまた無効審判に戻ってくるという、ある種の庁内キャッチボールというのが起こり得るので、それを改善しようということで、訂正審判を認めないことにしたのが平成5年の改正なんです。それは今でも同じなんです。
 その代わりに、無効審判の中で訂正の請求という別の概念の手続を設けまして、無効審判請求人が無効理由を出した、それに対する権利者の防御として、権利者は特許の訂正の請求というものができるというふうに整理をいたしました。
 では、この訂正の請求と訂正審判というのは、何が違うかということなんですが、基本的にはどちらも確定すれば特許が、元からそのように、訂正されていたような形で特許が与えられたものとみなされるという点では同じでございます。ただ、効果の発生時期が違いまして、訂正審判の場合には特許権者だけの手続ですから、審判官がその訂正でよいと認めて、認容の審決を書くとその場で確定します。訂正の効果がその場で発生いたします。
 ところが、無効審判の場合には、訂正の請求をしただけではもちろんその効果は発生せず、それから訂正の認容の審決を書いただけでも実は発生しない。なぜかと言いますと、無効審判の中ですから、無効審判の審決自体が確定しないと訂正の効果が生じないんです。ということは、相手方、すなわち無効審判請求人が争って例えば出訴をするというようなことになると、その間ずっと訂正は宙ぶらりんのまま、確定しないままということになります。
 したがって、侵害訴訟が起きて訂正審判が起こされた場合と、侵害訴訟が起きて、同時に無効審判が係属していた場合では、権利者の防御のやり方がかなり違ってくるということですし、それから、訂正がいつ確定するかが相当違いますので、侵害訴訟の方をどの特許に基づくフレームで判断するのかが相当違ってくるというような問題点はあろうかと思います。

○伊藤座長 どうぞ、加藤委員。

○加藤委員 単純にB案で訂正審判、特許庁へ行けばいいじゃないかと申し上げましたけれども、ただいま小林委員の御指摘にありましたように、この場合原告権利者が訂正審判をかけた場合、では被告側に再抗弁、訂正に対する防御の道を許さないでいいのかどうかというのは議論していただかないといけないポイントかと思います。
 したがって、先ほどの小林委員の御説明の中で言えば、訂正請求ならば無効審判の中ですから、権利者がかけた訂正案に対して、無効審判請求人はおかしいというのは言えるわけですけれども、単純な特許庁対権利者の間の訂正審判ですと、この場合の被告はかやの外に置かれてしまうわけですから、また訂正に対する抗弁の機会を失ってしまうという点がありますので、その点はやはり慎重な検討が必要かと思います。

○伊藤座長 では、飯村委員、どうぞ。

○飯村委員 今の小林委員の御説明に補足させていただきたいと思います。冒頭お話ししました、侵害訴訟の迅速審理というのは、権利者側に与えられた武器と、非権利者側に与えられた武器のバランスが取れているのがもっとも望ましくて、それが歪んでいると、裁判所や当事者が、その点の是正を図ろうとして迅速性が失われるというお話をしました。この問題は何かと深刻な問題で、訂正審判請求は特許庁に係属している間は認めないんですが、それが東京高裁に出訴された瞬間に訂正審判請求が認められるという制度になっています。この点は末吉先生の方から詳しい御説明があると思うんですけれども、権利者は審決取消訴訟まで待って、それから訂正審判請求ということを選ぶこともあるものですから、侵害訴訟でもそれの最後まで認めてないと最終的な判断はできないということで遅れてしまういうことがあります。

○伊藤座長 末吉委員、お名前が出ましたが、何か補足していただくことはありますか。

○末吉委員 弁護士会の中でA案の強力な主張者がいて、恐らくA案は御指摘のとおりいろいろ難しい問題があるんですが、小林委員、飯村委員の御指摘のとおり、B案にもいろいろ検討するべき必要があるので、A案も軽々にそんなに早く手放す必要はなくて、並行して検討した方が私はいいのかと思っていたんですが、ユーザーサイドからA案はもうだめだみたいなことを言われたので、恐らくそういう御趣旨ではないのかと思いまして、A案、B案の中で他の考慮すべき事項も踏まえつつ、一番いい姿を探っていくという方向には変わりはないのかなと思って伺っていたのですが、いかがでしょうか。

○伊藤座長 わかりました。そうしますと、結論だけ言えばB案を取らざるを得ないと言いますか、B案が合理的だということですが、しかしそれは何も現行制度がいいという趣旨ではなくて、それを踏まえても検討すべき点がかなり多いと。その場合には、当然A案の考え方の基礎になっている点も考慮しなければいけないというふうに承りましたので、そのような方向で事務局で更にB案を前提にした場合、どういう改善の方策が考えられるのか、それはA案の論者が言っているような点をどれだけ解決できるのか、そういうことで検討していただくということでいかがでしょうか。

○阿部委員 ちょっと補足で、我々がB案でと言っているのは、1つはやはり裁判所の席で細かい補正の話をするということが、余りにもみんな現実的に頭の中で考えられないんですね。そういう意味でB案だということで。

○伊藤座長 わかりました。
 それでは、引き続きまして、その合理的解決の観点から考慮すべき論点について検討いただきたいと思います。
 まず、事務局から資料1の26頁について説明をお願いします。

○近藤参事官 26頁をごらんください。「その他紛争の合理的解決の観点から考慮すべき論点」として、侵害訴訟における無効判断の効力がどうあるべきかという点があろうかと思います。この点については、26頁の枠囲いにありますように。
 (A案)制度上対世効を担保する。
 (B案)相対効とする。
 この2案があると思います。以下、両案の論点について御説明いたします。
 A案については、まず侵害裁判所における無効判断に対して、無効審判の審決のような対世的効力を持たせるべきであるという考え方の当否をお尋ねしております。仮に、侵害訴訟における無効判断に対世効を持たせることとする場合に指摘されている論点としては、具体的にはAとして、これまで当事者主義の民事訴訟の中で対世効は認められておらず、これを認めるために職権主義を採用する必要があるのではないかということ。
 Bとして、その場合職権証拠調べの訴訟手続の制約上、行政訴訟と同様に、自白法則の適用もなく、その結果として侵害訴訟における立証事項が増加・繁雑化するんではないか。それに和解もできないということにはならないか。
 Cといたしまして、その場合職権による証拠の探索の必要性、立証内容の厳格化等とあいまって、審理が長期化することにならないかという点でございます。
 あとB案の相対効のことについては、まず侵害裁判所の無効判断に対して、対世効を持たせないこととする考え方の当否をお尋ねしております。
 次に、実質上の対世効を確保することの当否についてお伺いしているところです。
 以上です。

○伊藤座長 それでは、この点につきましても、現在の考え方を変えて、A案のような対世効の考え方を採用するという案と、それからそうではなくて相対効のままでいくというような考え方がございますが、どの点でも御質問・御意見をお願いします。
 どうぞ、中山委員。

○中山委員 質問ですけれども、これは無効判断の効力だけですね。無効とした場合の話だけですね。

○近藤参事官 そうです。

○中山委員 無効でないということは、もちろん初めからそうですね。

○近藤参事官 前提としては、そういう無効の判断の場合ということです。

○中山委員 それは対世効というのは、特許登録を消してしまういう意味の対世効。

○近藤参事官 そこまで行くかどうかというところも1つの論点になるのかと思います。

○中山委員 アメリカ的な対世効、対世効と言いますか、原則として次の訴訟を起こせないという意味にとどまる場合もあり得るわけですね。

○近藤参事官 そうです。

○中山委員 わかりました。

○伊藤座長 どうぞ、阿部委員。

○阿部委員 対世効が欲しければ、当事者が先ほどの特許庁を裁判所に呼び込んで、インクルードして、それで特許庁の手続をしてもらうという考えもあろうかと思いますけれども。

○近藤参事官 それは、どういう御意見でしょうか。それの方がいいだろうという御意見でしょうか。

○阿部委員 どうしても対世効が欲しいというときには、そういう方法もありますという選択肢もあったらいいなと思っています。

○伊藤座長 したがって、侵害訴訟に限って言えば、それ自体における判断に対世効を認めるということは、合理性がないというお考えですか。

○阿部委員 そこまで必要ではないと思います。

○伊藤座長 どうぞ、荒井委員。

○荒井委員 B案、これは相対効とすると。ただ、2つ目のポツに書いてありますように、訴外第三者のアクセスを容易にする。実質上の対世効を確保するというのがいいんじゃないかと思います。

○伊藤座長 どうぞ、加藤委員。

○加藤委員 同じくユーザーサイドから、可能ならば、相対効ですけれども、実質的に対世効が確保できれば、ユーザーとしては多くの場面で困らないですむのかなという感じはいたします。ただ、特に小林委員にお尋ねしたいんですけれども、これ特許原簿等への記録は可能でございますか。どういう書き方にするのかもあろうかと思うですけれども、

○伊藤座長 小林委員。

○小林委員 原簿にどういうものを登録したらいいかという観点から余り細かく検討してないので、確実な答えにはならないかと思うんですが、公示機能が必要だというだけであれば、原簿登録でなくてもいろんな手はあり得るのかなという気がします。
 どの道、これは実質上の対世効ということで、本当は対世効じゃないんでしょうから、原簿までいじる必要があるのかどうかというのはよくわかりません。

○加藤委員 例えば、特許公報を使うとか、そういうことですね。

○小林委員 はい。

○伊藤座長 飯村委員。

○飯村委員 対世効、相対効の問題を議論する前提として、侵害訴訟における無効判断というものが、どういう効力を持っているかということについて考えを述べさせていただきたいと思います。これは最高裁判決もないところですから、私自身の考えをまとめたということでございます。
 レジュメの最後の4番のところです。
 侵害裁判所が無効理由が明らかであるとして棄却した場合は、侵害訴訟における判断ですので、既判力が及ぶことは当然です。原告と被告の間で、その請求を棄却した主文について、既判力が生じます。その既判力の内容は、特許権に基づいて具体的な被告製品について、口頭弁論終結時における不作為を求める請求、すなわち差止請求権は存在しなかったという内容です。原告の請求が、損害賠償請求でであれば、損害賠償請求権がなかったということが確定します。
 したがって、審決・審決取消訴訟で、無効理由がないという判断が出され、確定した場合に、どうなるかという問題です。審決の性質上、当該特許権について、すべての無効理由が存在しないという判断がなされるわけではありません。審決の無効理由が、侵害訴訟の無効理由と同一かどうかも問題となり、実を言うと具体的な事件では、同一の無効理由かどうか、よくわからない場合が多いのですが、いずれにせよ、審決や審決取消訴訟で、その無効理由がないという判断がされても、棄却した侵害訴訟の結論に影響を与えないというのが我々の考え方です。ただ、この点は、最高裁の判決があるわけではありません。
 逆に、(2)の場合というのは、もっとわからない話で、侵害裁判所が、判決理由で書くかどうかは別にして、無効理由がないとして認容してしまった後に、当該特許の無効が確定した場合には、侵害訴訟での認容判決の効力が覆されるのかどうか、覆されると考えた場合に再審事由になるのか、それとも再審を待たずに不当利得請求ができるかは、難しい問題です。判例がないからわかりません。信じられているのは、無効が対世的に確定することにより、認容の判断は覆されることになり、再審事由にはなるだろうということでございます。
 特に(1)のように、無効理由があるとして棄却した場合に、その判決の理由中の判断について、何らかの効力というのを生じさせるのが妥当であるのかどうか。
 その場合には、もし妥当であり、それを実現するためには、どういう審理が必要で、どういう判決理由を書かなければならないか、その場合に、無効理由一つ一つの特定をどうするのかということまで立入って考えていかないと、なかなかこの問題について結論が出ないのではないかと思っています。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ、中山委員。

○中山委員 アメリカの場合の無効の意味ですが、それ以降は権利者は原則として訴訟できないというだけです。これはエストッペル的な発想から来ていると思います。無効と言われても相対効しかないから、本来は次の訴訟が起こせるはずですが、そうするとディスカバリー等で訴訟に金がものすごくかかるので、原告特許権者は大企業で、相手は小さい企業のような場合は、小さい企業の方は訴訟費用がもたない。したがって、最後まで行けば負けるかもしれないけれども、次々と訴訟を起こし、有利な条件で和解に持ち込むということがあり得る、現にあったようなんです。
 したがって、エストッペルの法理を用いて、1回無効と言われたらもう次から訴えを提起できませんと言わざるを得なかったと思うんですけれども、我が国の場合、まだキルビー判決が定着してから間がないのでよくわかりませんけれども、無効と言われて次々と起こしていくとか、そういう弊害というのはあるんでしょうか。

○伊藤座長 どうぞ、飯村委員。

○飯村委員 説明を1つカットしたんですが、次々に起こす事例に関連する事柄です。結局のところ既判力で遮断されているのは、事実審の口頭弁論終結時における、原告の被告に対する、その時点を基準に将来に向けた不作為請求権の存否と過去の損害賠償請求権の存否です。
 したがって、口頭弁論終結時より後に、事実が続いている場合には、もう一度起こすというのは、既判力には反してないわけです。観念的には次々に起こすということがあり得るんです。しかし、その場合にどうなのかということなんですが、実際には、裁判所によって、拒絶されますので、あまり、例がないだろと思います。

○中山委員 ここで問題となるのは、次々と違う人を相手に無効といわれた特許をもとに侵害訴訟を提起するということです。

○飯村委員 次々に違う人に対しての場合は、結局さみだれ式に訴訟を起こしていることは、情報交換によりわかると思うんです。

○中山委員 これは無効だと言われても、なおかつ頑張って第2、第3の被告に対して訴えるという、そういう弊害がアメリカであったようなんですけれども、日本で考えられるでしょうかという。同じ人なら、今飯村判事が言われたとおりですが。

○飯村委員 現実にはありますけれども、結局1つ判断していて、その証拠が出ればすぐに結論を出してしまうから、余り弊害はないと思います。

○中山委員 そうすると、B案の特許原簿に登録されるのか別として、実際は前の判決で、事実上の拘束力と言いますか、事実上前の判断に従うということが多いから余り弊害はないという話でしょうか。

○飯村委員 多分弊害はないんではないかと思います。

○伊藤座長 どうぞ、加藤委員。

○加藤委員 もし判決までいけば第三者は見られるんですが、裁判所が無効という判断を出した後和解に至った場合は見れませんね。そういう場合についても弊害がないと考えてよろしいですか。我々産業界として、それを気にするんですが。
 一応裁判所が基本的に心証開示か何かで無効ですと言われた後、何らかの和解が仮に成立した場合見えませんからね。
 判決に行ってしまえば、第三者は判決文は見れますけれども、そういったことはあり得ないと言ってしまえばそれまでなんですけれども、機会としては和解もあり得る話かと思いますけれども。

○飯村委員 世界中、訴訟において和解で解決するというのはあり得ると思います。その和解、あるいは手続の内容がすべて第三者にわかる状況ではないと思いますし、和解文言も、もちろん当事者が守秘義務を課せられていれば、第三者がアクセスする方法はないわけです。ですから国家機関が関与して、裁判所が心証を抱いたとしても、それは当事者がどういう選択を選ぶかということとの関係で、裁判所も、当事者の考えに沿った解決方法を提示します。それは利用できないし、利用すべきではないんではないかという印象を持っています。

○加藤委員 なるほど。

○近藤参事官 今の5番目の論点として、前提として判決を前提に御議論いただいたんですが、今、加藤委員から和解の場合どうなのかというまた新たな御指摘があったんだというふうに思います。和解の場合について、今、飯村委員から御指摘があったように、同列には、論じられない点があって、和解の場での裁判所の認定というのが、まずそもそもそれをどういうふうに認定するのかということが前提にならないと、それはまた事実上の対世効とかそういうことの基礎は全くないことになるのかなと。それからまた別に考えていかなければないけないのかなというふうに、今、御議論を伺っていて思いました。

○伊藤座長 それでは、いかがでしょうか。ちょっと和解の話は別に考えなければいけないというふうに、今、近藤さんおっしゃったとおりですから、判決に関しては対世効そのものを侵害訴訟において正面から認めるべきだという御意見はなかったように思います。相対効を前提として、しかしなおかつ事実上対世効の必要性が言われているような要請に応えるような、そういう措置についての検討が望ましいということでよろしければ、事務局にはそういう方向で今後検討してもらいたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○伊藤座長 ありがとうございました。それでは、続きまして、去る1月28日に外国法制研究会が開催されましたので、その報告を事務局にお願いします。

○近藤参事官 ただいま座長から御紹介がありましたとおり、今週の火曜日に第2回「知的財産訴訟外国法制検討会」が開催されました。研究会では、事前に各メンバーが作成した報告書の素案に基づいて、諸外国における知的財産訴訟において専門家を訴訟手続に参加させる制度等について調査発表が行われ、活発な意見交換が行われました。

○伊藤座長 今の点について、何か御質問とかございますか。

○阿部委員 資料はないんですか。

○近藤参事官 資料はまとめた段階で、こちらの方に5月ごろ皆さんに配布させていただくとともに、内容についてそこで報告させていただくということを考えております。今はまだそれを練っている途中でございますので、申し訳ないですが。

○伊藤座長 よろしいでしょうか。
 そういたしますと、若干本来の予定時間よりやや余裕がございますが、特に何か御発言ございますか。
 どうぞ。

○村木日本弁理士会知的財産制度改革推進会議副議長 議論を拝聴いたしまして、大変難しい問題だと理解をしています。私ども弁理士会は、日々無効審判、訂正審判、審決取消訴訟というようなことをやっております。そういう中で、侵害訴訟に至る紛争というのはそんなに多くなくて、無効審判も内在的には必ず裏に紛争があります。
 そういうような状態の中で、申し上げたいのは、今日の議論はまだ十分詰まっておりませんので、我々もこれから検討していかなければいけないということで、その検討した議論について我々も一つの当事者といいましょうか、関係者として今後提案させていただきたいということを申し上げたいと思います。
 次回、そういうような検討したデータを出させていただいて、検討の資料に使っていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○伊藤座長 ありがとうございました。確かに承りました。それでは、特にほかに御発言がなければ、これをもちまして第4回「知的財産訴訟検討会」を閉会させていただきますが、次回の日時につきまして事務局から御連絡を差し上げます。

○近藤参事官 第5回の検討会は、2月28日金曜日、午後1時30分から5時まで、同じくこの会議室での開催を予定しておりますので、よろしく御参集ください。
 本日は、どうもありがとうございました。

○伊藤座長 どうも御苦労様でございました。