○伊藤座長 それでは定刻でございますので、第7回知的財産訴訟検討会を開催させていただきます。御多忙のところ、朝早くからありがとうございます。
今回は、内閣官房知的財産戦略推進事務局の久貝参事官にお越しいただき、知的財産戦略本部の状況等についてお話しいただくとともに、知的財産訴訟の在り方を検討することにしたいと存じます。
検討に入る前に、櫻井委員の御所属に変更があったようですので、事務局から紹介をお願いします。
○近藤参事官 櫻井委員におかれましては、従前の筑波大学社会学系助教授から学習院大学法学部教授になられましたので、御報告申し上げます。
○伊藤座長 櫻井委員、一言御挨拶いただけますか。
○櫻井委員 どうもありがとうございます。個人的には公務員を早く辞めたかったので。引き続きよろしくお願いします。
○伊藤座長 どうぞよろしくお願いします。
それから、本年度から、事務局の体制にも変更があったように伺っています。これについても、事務局から報告をお願いします。
○近藤参事官 従前の担当に加えて、新たに平瀬補佐と片岡主査が当検討会の担当となりましたので、御紹介いたします。
○平瀬補佐 平瀬と申します。よろしくお願いします。
○片岡主査 片岡と申します。よろしくお願いします。
○伊藤座長 お世話になりますが、どうぞよろしく。
それでは、事務局からお手元の資料の確認をお願いします。
○近藤参事官 それでは、御確認をお願いいたします。
資料1、知的財産戦略推進事務局提出資料でございます。
資料2、「知的財産訴訟の在り方について(その1)−いわゆる『特許裁判所』・『技術系裁判官』に関する検討−」という題を付しております。
資料3、「知的財産訴訟の在り方について(その2)−証拠収集手続の機能強化(日本版ディスカバリー)に関する検討−」と記載されております。
資料4、「司法制度改革審議会における審議概要(2)」、これは法制審議会民事・人事訴訟法部会の参考資料として用いられたものを配布させていただいております。
資料5「知的財産訴訟検討会開催予定(予備日)案」で、12月と1月のものでございます。
それから、荒井委員配布資料。
また、委員の皆様の席上には、第6回検討会の議事録案を配布させていただきました。誠に恐縮でございますが、訂正部分がございましたら、4月23日までに事務局まで御連絡をお願いいたします。
また、第5回検討会の議事録の訂正についてもお願いしておりますが、こちらは18日までにお願いいたします。
更に弁理士会村木氏から「証拠収集手続の機能強化について(意見書)」が提出されております。
加えまして、委員の皆様宛てに東京弁護士会法友会から書籍が届いております。司法制度改革全般についてのものですが、各委員宛てに郵送されておりますので、席上に配布しております。
○伊藤座長 どうもありがとうございました。
それでは、第1回の検討会におきまして、他の知財関係の改革と連携を図っていくべきであるという御意見がありましたが、知的財産戦略本部も発足して、知的財産の創造・保護・活用に関する施策について集中的かつ計画的に推進すると聞いております。この時期に知的財産戦略推進事務局の久貝参事官から知的財産戦略大綱の進捗状況等についてお話しいただくことは、当検討会の検討を進めていくためにも大変有意義だと思われます。
それでは、久貝参事官、よろしくお願いを申し上げます。
○久貝内閣官房知的財産戦略推進事務局参事官 久貝でございます。よろしくお願いいたします。
それでは、お手元の資料に沿って御説明を申し上げます。「『知的財産戦略本部』について」という11枚の紙でございます。
1枚めくっていただきますと、「『知的財産戦略本部』発足までの経緯」というのがございます。御承知のように、昨年2002年2月の通常国会におきまして、小泉総理の施政方針演説におきまして、知的財産立国を目指すという旨の内容の演説がございまして、それを受けまして、3月、知的財産戦略会議が直ちに発足し、そして、この会議によって計5回、それから、こちらにいらっしゃいます中山先生を起草委員長とした起草委員会も非常に多く開いていただきまして、7月に知的財産戦略大綱が決定いたしました。
この大綱に基づきまして、内閣に知的財産基本法準備室ができまして、先の臨時国会におきまして、11月、知的財産基本法が成立いたしました。この基本法に基づきまして、このたび知的財産本部が発足したというわけでございます。
今年の1月にも、総理の方から更に、特許の迅速化、あるいは模倣品の問題、あるいは司法改革など知財立国を目指す課題が提示されたところでございます。
次のページが「『知的財産戦略本部』について」ということで、この3月に基本法に基づいて設置されたものでございます。基本的な仕事はそこにございますように、知的財産推進計画の作成・実施ということが一番大きな仕事でございます。そのほか、関係省庁がそれぞれ実施する知的財産に関する施策の総合調整というものもこの本部において行う。
組織は、本部長を内閣総理大臣といたしまして、副本部長に4名の閣僚、官房長官、科学技術政策担当大臣、文部科学大臣、経済産業大臣ということでございます。更に民間の方から有識者の方10名の方に本部委員に御就任いただいております。阿部総合科学技術議員。安西慶応義塾長など、10名の方でいらっしゃいます。産業界の方からも、角川書店代表の角川さん、三菱電気の野間口さん、それから知財に造詣の深いキャノンの御手洗社長、それから、バイオということでは、バイオベンチャーで大阪大学医学部助教授でいらっしゃる森下さんにもお願いしております。それから、学界の方からは、阿部先生、安西先生のほか、中山先生、川合真紀さんにも研究者の代表ということで来ていただいています。また、弁理士、弁護士で久保利さん、下坂さん、それぞれ専門的な知見を御披露いただこうと思っております。計10名のメンバーでやっていく予定でございます。
次のページは推進事務局でございます。ここのメンバーでおられます荒井さんに事務局長をやっていただいておりまして、現在、次長2名、参事官3名、あと大学、民間企業の出向者、すべて合わせまして今は25名でございます。
それから、本部のメインの仕事は推進計画でございますが、この作成スケジュールが6ページにございます。第1回の本部会合の後、今週金曜日、4月18日に第2回の知的財産戦略本部会合が開かれます。今、有識者本部員の方からの意見発表というのを続けていただいております。
これを受けまして第3回、5月の中旬でございますけれども、第3回の本部会合におきまして、推進計画の骨子というものが議論される予定であります。
そして、6月上旬に推進計画の案を御議論いただいて、7月上旬には推進計画を決定する。こういう形を一応第1回の戦略本部会合において御了解をいただいてあります。
具体的な計画の内容でございますけれども、現在、各委員の御意見も踏まえまして、事務局で計画素案をつくっていくという作業になりますけれども、1つは、昨年大綱ができましたけれども、その後更に、各省庁等の協力もありまして、状況はかなり進展をしてございます。知的財産に関係する法案は今、通常国会で6法案出てございます。関税定率法は既に公布・施行されておりますし、特許法、著作権法の改正もございます。それから、種苗法、民事訴訟法、著作権法の改正も国会で審議が予定されているところでございます。
更に法律以外につきましても、特許に関しましては、迅速化のための戦略計画、あるいは大学におきましては、大学における特許等の知財の一元的な管理ということで、大学の知財本部の設置という議論がございます。こういうことで大変検討課題は多いということで、推進計画におきましても、大綱を更に抜本的に強化する方向で検討をしているところでございます。
7ページにございますように、柱は「創造」「保護」「活用」「人材育成」という4つの柱で整理しようと考えてございます。
8ページに「知的財産の創造」についての諸課題が載せてございます。申し上げたように「大学における知財創出機能の強化」ということで、15年度の予算が25億円ほど確保されまして、全国30程度の大学に知的財産本部が設置されるという見通しでございます。
それから「大学と企業の連携強化」ということがございます。「TLO支援」「大学発ベンチャー支援」こういったものがございます。大学発ベンチャーというのは、450 くらい出ていると思いますけれども、これを目標の1,000 くらいまでということで、このために大学で何をすべきかということでございます。また、いわゆる「バイドール制度」でございますけれども、これも徹底を図っていこうということでございます。
それから、「研究者の処遇向上」というのが大きなテーマでございます。そこにございますように、企業関係におきましても、いろんな訴訟が出ております。職務発明制度の見直し等の問題に対応するために、研究者の空洞化に対処しようということであります。
9ページが「知的財産の保護」でございます。これはまず権利を与えるところでございます。「権利付与の迅速化」というのが一番大きな課題でございますけれども、特許庁におきまして、非常に滞貨がたまっております。この滞貨の解消のための戦略計画を策定中でございます。
それから、分野は特定されますけれども、「医療特許」というのが大きなテーマでございます。昨年12月に総合科学技術会議の知財専門調査会におきまして、レポートが出まして、再生期医療の一部につきまして、特許化の方法で考えるという方向が出て、これを受けて現在特許庁で審査の基準を改訂をし、これを実施するという方向で検討しております。更にこの分野で検討するものはないかというのが今後の課題でございます。
次は「特許裁判所(知財裁判所)」の問題がございます。既に民事訴訟法の改正をやっていただきまして、高裁の専属管轄というのが1つの大きな方向で出ておりますけれども、更に迅速な裁判のためにどういうことが必要かということが今後議論されるというふうに承知しております。技術系の裁判官、あるいは日本版ディスカバリー、こういったものもこちらの知財訴訟検討会の方でも御議論いただけると伺っております。
4番目は「模倣品・海賊版対策」でございます。これは関税定率法が改正されまして、4月1日より施行されております。これで従来対象でなかった特許につきましても、差止めの申立制度というのができたわけでございますけれども、アジア地域からの模倣品の流入ということで、産業界は現地においても大変苦労しておりますし、また、この流入に対しても大変神経をとがらせているわけでございまして、この分野の関心は非常に強うございます。現在の新しい法律改正に加えて、更に必要なものがないかということで、産業界からいろいろな相談が出てくると聞いております。
それから、「世界特許」の問題でございまして、どの国におきましても、特許の出願というのは増加する一途でございます。この負担を軽減するにはどうしたらいいかということで、政府・産業界ともこの方向で進めていくのではないかということで、検討が進んでいくものと思われます。
「3.知的財産の活用」でございます。これは知財をうまく使って産業再生につなげていこうということでございまして、1つは「資金調達における知的財産の活用」ということてございます。従来は土地が担保でございますけれども、現在のような状況では知的財産を使った資金調達というのが出てくるのではないかということでございます。
それから、「知的財産の価値評価方法の開発」ということでございまして、知財に関する取引を確保し、市場をつくろうということでございます。
また、知財を開発し、それを保有している企業の競争力、あるいは価値というものを対外的に示す。これによって投資家との関係をよくしていこうということで、価値評価の開発というのが相当議論になってくると思われます。
また、これに関連しまして、知財の報告書というものも、政府、あるいは産業界において検討される予定であります。
次は「企業における戦略的な知的財産の活用」ということでございます。これは経済産業省の方で今年の1月及び3月に、ここにございます営業秘密、それから知的財産の取得管理、技術流出防止、これについて指針を出しております。これを受けて企業側の今後の対応ということが次の問題となってくるところであります。更にこれ以外のガイドラインが産業界にとって必要かということについて現在検討されていると聞いております。
「映像コンテンツの流通拡大」というのも、知財の活用という点では大きなテーマにしてございます。特に「著作権をめぐる複雑な権利関係の調整」ということでございますけれども、これも特に放送関係につきましては、番組のコンテンツの二次利用、流通の拡大ということは非常に経済界の関心が強い。しかしながら、そういう番組につきまして、著作権の手当てができておりません。権利者との調整が非常に大きなネックになっている。それをどうするかということで、今後、議論が進められるのでないかと思われております。
最後のページは「人材育成」でございます。これは「『法科大学院』における知財教育の強化」「『知財専門職大学院』の設立」でございます。
法科大学院につきましては、来年4月から一部の大学でスタートすると聞いておりますけれども、やはり技術に強い法曹、弁護士の育成のためには、法科大学院はどのようにあるべきかということについて、多くの方が意見をお持ちのようでございます。これについて検討していただけると期待しております。
もう1つは、知財専門職大学の設立でございまして、技術と法律の両方が分かる人材、産業界のニーズにどう応えるかということで、これも大学の一部では御検討されているようですけれども、これをうまい形で全国的に広がるような工夫について御議論いただくということが期待されているわけでございます。
以上、具体的な項目につきましては、これがすべてというわけではございませんで、これ以外にもいろんな検討すべき項目が出てまいると思います。現在、私どもの方ではホームページを通じまして、あるいは主要団体に対してこの計画に盛り込むべき事項について意見を求めておるという状況でございます。こういうものを集約いたしまして、先ほど申し上げたように、5月には骨子という形でまとめて、たたき台を御用意すると考えております。
以上です。
○伊藤座長 久貝参事官、どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明について御意見がおありの方はお願いをしたいと思います。
○櫻井委員 簡単な質問ですが、2点ほどございまして、資料5ページに事務局の紹介で、関係省庁等の出向者から構成されているとありますが、どういう省庁の方々が出向されているのかというのが第1点。
もう1つは、9ページに特許裁判所の話が出ておりますが、これはまた後で議論になるのだろうと思いますけれども、特許裁判所にしましても、技術系裁判官にしましても、つくり方によっては憲法論が出てくるかと思いますが、この点についてどのように認識されておられますか。
○久貝参事官 まず関係省庁でございますけれども、特許関係のテーマが非常に多うございますので経済産業省、それから大学と著作権ということで文部科学省、あと法務省、種苗の農水省、コンテンツで総務省、水際ということで財務省、やはり独禁政策との関係がございますので公正取引委員会、これが現時点での省庁の構成でございます。
2点目の特許裁判所の点でございますけれども、ここで私が申し上げるのははなはだ僣越でございますけれども、むしろ専門家の皆さんが御議論された方がいいと思いますが、憲法論はおそらく終審が最高裁判所であればいいというのが結論ではないかという気がしておりまして、いろんな裁判所があると思いますけれども、最終的に最高裁がきちんとやればいいということで、特許裁判所の設立自身が憲法にどうこうということはないと考えております。
それから、技術系裁判官につきましては、私もこれから勉強したいと思いますけれども、そういう問題がもしあれば考えてみたいと思いますが、どういうステータス、どういう権能を与えるかということが、むしろ憲法に触れないように、問題にならないようにそういう権能を与えたいと考えております。
○伊藤座長 どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
○飯村委員 9ページの「2.知的財産の保護」についてですが、「権利付与の迅速化」とか「医療特許」というように、テーマの中身を記載しているのですが、裁判に関しては、裁判についての問題点と問題解決というような中身ではなく、特許裁判所という箱を挙げられているのはどういうことでしょうか。
○久貝参事官 1つは、もちろん、これまでの裁判所における知財に関する訴訟が非常に迅速化されておりますし、そういう点については私ども承知しておりますけれども、一方におきまして、やはり実態に即した形を取っていくということも、知財立国を目指すというときには、政治的にも非常に重要なことではないか。
それから、2点目に、知財はここでやるんだという、そういう裁判所ができることを産業界も非常に期待しているというところがありまして、今後本部の中でもいろいろ議論いただけると思いますし、こちらでも議論があると思いますけれども、そういう社会的ニーズ、あるいは経済界のニーズを踏まえて、検討課題ということで、特許裁判所を私どもとしては考えているということを書かせていただいております。
○伊藤座長 ほかにいかがでしょう。
○加藤委員 同じく9ページの「知的財産の保護」の中で一番下でございますが、「世界特許」と挙げられてございますけれども、ここで特に挙げられている趣旨は共通化というような意味合いを持っているということでございますか。例えば保護の共通化とか。
○久貝参事官 各国それぞれの法制度がございますので、全く同じということにできるかどうかというのはまた検討の余地があるかと思いますけれども、今、逆に各国別々にされている。もちろん、WIPOもございますけれども、バラバラにやっていくことの問題というのは、出願が各国とも非常に増えておるということで、グローバルな戦略を目指す企業にとっては非常に大きな負担になっているということでございます。
また、そういう出願を受ける主要国、日米欧にとってもその出願を迅速に処理していくというときには、どうしても日米欧で協力をしていかなければけないというニーズもございます。それがどういう形で協力をしていくのか。それが言ってみれば世界特許という方向ではないか。具体的な方法はいろいろあると思いますけれども、日米で始めるという手もあります。いろんな方法があると思います。これは議論をしていただきたいと考えております。
○阿部委員 10ページ「企業における戦略的な知的財産の活用」で、「営業秘密管理指針」「知的財産取得・管理指針」「技術流出防止指針」と書いてあります。大きな企業だと思いますけれども、グループ会社全体の特許を管理するという仕組みの中で、信託の問題を非常に興味を持っているんですが、ここではそういうことも指向しておられるのかどうか。
一方で、資金調達の面でも、信託が機能するのかもしれませんけれども、その辺はどうですか。
○久貝参事官 これは信託そのものを担当しているのは金融庁の信用課でございますけれども、こことも連携、連絡を取っております。今、御指摘のようなグループ会社での特許の範囲という、信託のような方式があれば税制その他にとってもメリットがあるということは聞いておりまして、今後金融庁とよくその辺りを相談したいと思います。金融庁の方は、私の聞いている限りでは、金融制度審議会に議論していただき、できれば法律改正につなげていきたいと考えておられるようです。
その場合に、知財の信託化というのも、だれが信託するのかというときに、おっしゃっている一般事業会社ができるかどうかというのは、更に議論が必要ではないかと思います。
○伊藤座長 ほかによろしいでしょうか。特にこれ以上御質問がないようでしたら、これで質疑応答を終わりにしたいと思います。
久貝参事官、お忙しいところをどうもありがとうございました。
それでは、本日の検討事項の検討に入りたいと思います。
まずは特許裁判所について検討を進めたいと思いますので、事務局から資料1の1ページから16ページに基づいて説明をお願いいたします。
○近藤参事官 それでは、いわゆる「特許裁判所」についてですが、資料1の1ページを御覧ください。
知的財産戦略大綱では、「実質的な『特許裁判所』機能の創出」として、①管轄の集中化、②専門家参加の拡大などの裁判所の人的基盤拡充、③証拠収集手続の拡充などが掲げられているところです。
さらに、司法制度改革審議会意見書では、知的財産権関係事件への総合的な対応強化として、東京・大阪両地方裁判所の専門部を実質的に「特許裁判所」として機能させるために、各種の方策が挙げられています。
また、2ページでございますが、第2回・第3回の当検討会におけるヒアリングでは、控訴裁判所を東京高等裁判所に専属管轄化するべきである等の意見が出されました。
また、荒井委員からは3ページのとおり、知財裁判所を創設、技術系判事を大幅登用すべきであるとの提言がされています。さらには、知的財産国家戦略フォーラムからも、知財高等裁判所を設立し、大法廷制度を導入することが提案されております。
これらの提案を踏まえますと、検討すべき主な論点としては、4ページのとおり、いわゆる「特許裁判所」の創設により期待される効果やその内容ということになろうかと思います。
なお、いわゆる「技術系裁判官」について検討するべき主な論点につきましては、後ほど御説明申し上げます。
5ページの方に移りますが、まず現行法ということですが、憲法は最高裁判所の設置については直接規定しましたが、下級裁判所については、すべて法律の定めるところに委ねています。この点、高等裁判所、地方裁判所及び簡易裁判所は、裁判所法制定当初から設けられていましたが、家庭裁判所は、後に設けられることになりました。
(2)知的財産関連訴訟の管轄ですが、ア)として平成8年の民事訴訟法改正というところです。
特許権等の権利に関する訴えに関する知的財産関連訴訟については、平成8年の民事訴訟法改正において、東京地方裁判所及び大阪地方裁判所においても、競合管轄が認められました。
イ)平成8年の民事訴訟法改正以前ですが、この改正の背景ですが、平成8年の民事訴訟法改正前においては、この種の事件の平均審理期間は、訴訟事件全般のそれよりも相当に長期となっていたと言われています。
6ページのウ) 競合管轄とした趣旨。専属管轄とせずに競合管轄としたのは、原告の便宜を考えたものであると説明されております。
エ)として平成8年の民事訴訟法改正の効果ですが、審理期問短縮等において、大きな効果を上げていると説明されています。
ここで挙がっておりますが、平成10年に東京・大阪22.8か月、19.9か月のものが、15.0か月、18.5か月に短縮されていると書かれています。
指摘されている問題点(産業界の意見)として7ページの下のところにございますが、この改正を経た後の現状に対しては、さまざまな意見が出されておりますが、これをまとめると、「判決の予見可能性の向上のため、控訴審の管轄の東京高等裁判所への集中化を図るべきである」というものであると思われます。
なお、アメリカの状況については、8ページのとおりで、連邦巡回控訴裁判所ができる以前には、控訴裁判所ごとの判例傾向に著しい違いがあったり、例えば特許を無効とする率が、裁判所によって40%から80%というふうに2倍程度の開きがあったと説明されています。これらを統一するためにCAFCを設けたと言われております。
8ページ下の3ですが、先ほど久貝参事官からも御説明がありましたけれども、今国会に提出されている法案がございます。そのうちの1つとして、特許権等に関する訴えの専属管轄化ということで、今国会に民事訴訟法等の一部を改正する法律案というのが提出されております。
そこでは、ア)特許権等に関する訴えの管轄について、第一審の管轄裁判所は、東京地方裁判所及び大阪地方裁判所の専属管轄とし、控訴審の管轄裁判所は、東京高等裁判所の専属管轄とされています。
もっとも、この法律案では、意匠権、商標権の管轄については、これまでの特許権等の訴えの管轄と同様に、第一審の管轄裁判所は、東京地方裁判所及び大阪地方裁判所の競合管轄とされています。
10ページの(2)この改正についての考え方ですが、これらの改正は、地裁、高裁の専門部を実質的に「特許裁判所」として機能させることを図るものであると説明されています。
また、11ページのウ)に5人合議制の導入というのがありますけれども、これもこの法案に盛り込まれています。これは地裁・高裁のいずれにおいても、5人の裁判官の合議体で審理及び裁判をすることが可能となるという法律案です。これの目指すところは、地裁・高裁レベルでの判断の統一も期待されるところにあると説明されております。
11ページの4ですが、家庭裁判所について、どういう経過をたどったのかということについて、11ページから12ページ目について説明をしております。
簡単に申し上げますと、家庭裁判所は、昭和24年から発足し、家事審判法で定める家庭に関する事件、少年法で定める少年の保護事件等についての審判等を行う権限を有する裁判所です。
この家庭裁判所の設立の経緯については、少年の健全な育成、保護と家庭の平和や健全な親族共同生活の維持との問には密接な関係があることから、家事事件と少年事件とを総合的に運営、処理する必要があるとされ、家事審判所と少年審判所を統合して設置されたと説明されています。
次に5に移りますが、以上を踏まえますと、検討の方向性としては、枠囲いで書いてありますが、1番目として、いわゆる「特許裁判所」の創設により期待される効果は何か。提唱されている、いわゆる「特許裁判所」は、民事訴訟法改正により専属管轄化される第一審の東京・大阪両地裁、第二審の東京高裁について、どのような点を補うものなのか。その必要性はどうか。第2番目として、いわゆる「特許裁判所」については、どのような内容のものが想定できるか、を検討すべきこととなろうかと思います。
その具体的な「特許裁判所」の検討の問題ですが、司法制度改革審議会意見書及び知的財産戦略大綱では、実質的な「特許裁判所」機能の創出が提案されており、これらを受けて、今般の民事訴訟法改正では、東京地裁・大阪地裁への専属管轄化等が行われる予定となっているところです。そういたしますと、まず、荒井委員の御提言を念頭に入れた上で、次の点について検討する必要があるのではないかと思われるところです。
すなわち「特許裁判所」の創設の効果と、今回の民事訴訟法等の一部を改正する法律案により専属管轄化が実現した結果もたらされる実質的な「特許裁判所」機能の創出の状況等を検討する必要があると思われます。
それから、13ページのイ)のところですけれども、今回の民事訴訟法の改正では、特許権等に関する訴えについては専属管轄化する一方で、著作権等に係る訴えについては一審を競合管轄としているにとどまっております。
そこで、次の点について検討する必要があると思われます。
1つ目として、具体的には、いわゆる「特許裁判所」の審級を、第一審又は第二審とした場合、侵害訴訟やその他の民事訴訟を取り扱うこととすべきか。
2つ目として、いわゆる「特許裁判所」の審級を第一審とした場合、ある特定の審判を廃止して、特許裁判所で取り扱うとすべきか。また、この審級を第二審とした場合、ある特定の審判を廃止して創設された訴訟の控訴事件を特許裁判所で取り扱うとすべきか。
3つ目として、さらに、いわゆる「特許裁判所」を、三審制のもとでの第二審又は二審制のもとでの第一審とした場合、現在は東京高裁が第一審の専属管轄となっている審決取消訴訟の行政訴訟も取り扱うとすべきか、などが問題になろうかと思われます。
14ページに入りますけれども、「特許裁判所」の審級はどのようになるか。今、審級についても先取りしたところがございますが、最高裁判所を終審とする三審制とするか、いわゆる「特許裁判所」を第一審として最高裁判所を終審とする二審制とするかが問題となろうかと思います。
また、三審制を採った場合に、いわゆる「特許裁判所」を第一審とするか、第二審とするかということが次の問題になってくるかと思われます。
特許裁判所に関しては、二審制にすることは、事案の早期確定というメリットがある反面、当事者の審級の利益が害されることになるというデメリットがあろうかと思います。
それから、「特許裁判所」は第一審か控訴審か又はこれらの双方かという問題がございます。第一審とすると、第一審レベルでの専門的処理体制の向上には資するのですが、判断の統一の目的にはやや遠くなり、これを控訴審とし、その数を例えば東京だけに限定すると、事実上、判断の統一や判断の予測可能性には資することになります。
以上の分析を踏まえると、知的財産関連訴訟の早期確定というニーズをどのように考えるべきか、知的財産関連訴訟の判断の統一のニーズをどのように考えるべきか、「特許裁判所」の利用者の利便をどのように考えるか、などについて、検討する必要があると思われます。
更に、その裁判所をどの地に置くか、この点については、利用者の利便をどのように考えるか。専属管轄とした事件について地方裁判所への移送を認めることが可能か。特に職分管轄が違うというふうにして特許裁判所を構成する場合には、移送を認めることができるのかどうかということは、理論的な観点からも検討する必要があると思われます。
それから、裁判所や裁判官の専門性や構成はどうするか。さらには、調査官の権限拡大の問題等との関連もございます。この点は、後ほど、いわゆる「技術系裁判官」の問題として取り上げたいと思います。
以上がレジュメの説明ですが、一言追加して御説明申し上げたいと思います。
昨日、顧問会議がございました。顧問会議の席上で顧問の方の中から、特許裁判所の創設について前向きに検討すべきではないか、技術系裁判官について、積極的に法科大学院の活用を図っていくべきではないか、証拠収集の拡充について、従前この検討会の論点になっております非公開審理ということについて十分に検討すべきであるという、3点の御意見が顧問の先生から出ましたので、一言御報告を差し上げたいと思います。
○伊藤座長 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの事務局からの説明について御質問、御意見などを伺いたいと思いますが、大変重要な問題でございまして、例えば産業界のお立場の委員の方でこういったことをいろいろお考えになっていると思いますが、私から指名して恐縮ですが、沢山委員、いかがでしょうか。
○沢山委員 特許裁判所というのは、今、近藤さんから御説明のあった東京と大阪の地裁、東京高裁への専属管轄ということが実現したら、それはそれでよしとすべきではないか。それ以上問題を議論する必要性は、もう遠のいたのではないかというのが私の個人的な意見であります。これ以上更に特許裁判所というものをつくる必要はなくて、実質的にその機能を持ったところができておるというふうに判断できるのではないかと思います。
○加藤委員 順番ですので、指名される前に申し上げます。
私としては、特許裁判所設立は必要だと考えております。
まず第1点目に、これは繰り返しになりますが、先ほどの近藤参事官からの御説明にもありましたとおり、やはり判決統一機能、あるいは判決の予見可能性というのは、産業界にとって非常に渇望しているところでございます。特に1つ類似の例を上げて申し上げますと、我々産業界が米国訴訟に非常によく巻き込まれます。そうした場合に、アメリカの係争ではCAFCに非常に重きを置いているという事実を非常に身近に感じます。
つまり、アメリカでは、一審はともかく、CAFCにおいて、いざとなればエンバンクも開いて、そこで判決が統一される。あるいはそこで大法廷にならないにしても、発せられる判決というのは非常に予見可能性が高いという意味では非常に信頼が置かれている。アメリカは何でもいいとは申し上げませんけれども、やはりこの制度は、非常に参考になるのではないかという意味で、同じ意味の大法廷導入をベースとした判決統一機能と予見可能性の点については、特許裁判所を持つべき最大の理由であろうと、第1点として考えております。
それから、第2点目でございます。これは技術立国、知財立国を日本が目指すのであれば、アジアとか他国の例というのは見る必要があるかと思います。アジアで言えば、既に御説明されております韓国、シンガポール、タイで導入されておりますし、先進国ではアメリカは当然のことながらCAFCがある。ドイツでも特許裁判所があるというわけですので、やはり技術立国、知財立国のプレゼンスという意味でも、特許裁判所があることが望ましいと思います。
逆に言いますと、先ほどの沢山委員との関係なんですけれども、東京高裁に専属管轄化されれば実質的な特許裁判所ではないかという点は、もちろん、1つの方向性としてあろうかとは思います。
一方、実質的に東京高裁が特許裁判所と同等の役割を果たすのならば、実質的に同じ枠があるのならば、なぜそれを特許裁判所としてはいけないのか。むしろインフラと言いますか、周辺の整備は行われているのでありますから、これを特許裁判所とするのは簡単なのではないかという点から、特許裁判所にしたらいかかがというのが第2点目でございます。
第3点目は、今日の別のテーマの方の、技術裁判官の導入、技術判事の導入にも絡むのですけれども、産業界としては、地裁レベルでも技術裁判官の導入を私としては望んでいるのでありますけれども、とりわけ特許裁判所においては、技術裁判官の導入というのが、必須条件という言い方はちょっと強過ぎるかもしれませんけれども、強く要望される点ではないかと思います。ミニマムとして、地裁は仮にないとしても、特許裁判所に技術裁判官のような制度があることは望ましい。その3点から、特許裁判所の導入を希望するものであります。
○阿部委員 経済界では、今、加藤さんのおっしゃったような考え方が議論されております。先週経団連で侃々諤々の議論があったんですけれども、時間の要素とコストの要素を考えなければ、知財裁判所をつくるということは、1つは、知的財産を重視するという非常に象徴的な意味があるということで、そういう意義を達成する1つの手段となり得るのではないかというような議論があると思います。
もちろん、一番の目的は予見可能性、あるいは判例の統一ということですけれども、これは現在議論されている第二審の専属管轄化、それと5人の裁判官による裁判ということで達成できるのではないか。したがって、そこが不十分であるということを根拠に、そうであらなければならない、特許裁判所でなければならないというのは、理由が薄弱になるのかなという気がいたします。
もう一つは、無効審判の機能を裁判所に持っていくと同時に、例の侵害訴訟における一回的解決というものを、組織的にも機能的にもそこで一回解決が図れるという意味では、特許裁判所という入れ物をつくって、無効関係の判断を全部そこで一元的にやるということであれば、全部一遍に解決できるというメリットは考えられると思います。
したがって、時間の要素とコストの要素を無視していいのであれば、将来的にはそういう方向に行くことについては賛成であると思います。
ただ、現実問題として、これの担い手、トレーガがいなければ絵にかいた餅になるのだろうと思います。そこをだれが担うのかということを考えたときに、技術が分かった人がロースクールを出て、きちっとした法曹の資格を得た上で裁判所の担い手になるというのが、一番オーソドックスで、しかも非常に安定した制度になるだろうと考えられます。
その人たちが、今のロースクールの中で技術が分かる裁判官がそもそも出てくるのかどうかということ自体、今のカリキュラムとか司法試験をどうするのかというのがよく分からない状態で、皆さん疑心暗鬼であって、今のままでは出てこないかもしれないという不安がございます。ただ、それは出てくると考えたいと。したがって、むしろ出てくるように制度設計をしてもらいたいと我々は思っています。
したがって、現在の知的財産関係の裁判の専属管轄化を実現することによって、予見可能性、裁判の合理的プロセスというのはある程度担保されるだろうと。その行く末を見た上で、技術の分かるロースクール出身者の法曹が育ってくるという現実を踏まえた上で特許裁判所を議論したらいいのではないかと考えています。
その過渡期に技術裁判官というものを設けて、その担い手にしたらどうかというのは1つ考えられますけれども、それはどういう人がそれになるのか。それから、技術裁判官とは何なのか。つまり、裁判官と同じ権限を持つ者なのか。ただのアドバイザーなのか。あるいは判断権はないんだけれども、合議には参加できるというところまでの資格なのか。判事と同じ資格を与えるということになりますと、先ほど櫻井先生の方からあったように、憲法問題もおそらく絡んでくるのであろうと思います。
更に現在の調査官、これは特許庁から出ているわけですけれども、その調査官でさえ給源が非常に不足しているというか、限定されているという中にあって、技術裁判官の給源をどこに求めるかということになると、お先まっ暗ではないかという気がいたします。それを無理やりだれかを選別してきて、しかも裁判官と同等の立場で議論できるような資格を付与するのかということについて、何か判定制度とか資格制度というものを設けないと、おそらく公正性というのは担保できないのだろうと思います。
したがって、考え方は非常に賛成なんですけれども、これはかなり時間のかかる話なのではないか。たぶん、10年先とか15年先とかいうところで初めて、担い手を含めたところで現実的な問題になり得るのではないかと思っております。
○伊藤座長 それでは、産業界の3人の委員の方に先に御意見を述べていただきましたので、どうぞほかの方、御遠慮なく御発言をお願いいたします。
○末吉委員 日弁連で特許裁判所の問題についてはまだ意見が決まったというわけではないので、あくまで中間の過程を御報告しておきたいと思います。
一部の意見では、デメリットもないし、集中化のメリットであるとか、司法の質的変化のためには前向きに検討した方がいいのではないかという意見もあったのですが、大方の意見は、現況では特許裁判所というのは必要ないのではないかという意見でございました。 それは主に、現在進められている民事訴訟法の改正作業を含めまして、あるいは今後行われる調査官制度の見直しでありますとか、あるいは知財専門委員ということを考えていこうではないかということによって、実質的な特許裁判所というものが達成されることが大事で、基本的にはまずこれで十分なのではないか。
ただ、実質的な特許裁判所には1つ注文が付いていまして、全国サービスのためテレビ会議を活用してもらいたいということです。
特許裁判所になりますと、人事でどういう交流をしていくのかとか、予算の点が心配であるという意見もありました。
あるいは、判断の統一ということでありますが、なかなか判断の統一は実際問題として難しいのではないかという意見。むしろ現況の知財の裁判においては、余り判断の統一ということに走らない方が、例えば中古ソフトの事件でありますとか、並行輸入の問題でありますとか、たまたまでございますが、東京・大阪で意見が食い違う中で、いろんな議論が展開される中で最終的に最高裁判所が判断を下した事例のように、現況ではむしろ意見を分かれて議論を進めた方がよろしいのではないかという意見がありました。
更にCAFCとの対比なんでありますけれども、例えば米国でも独禁法事件に対して抗弁で特許無効の抗弁が提出された場合には、これはCAFCの専属管轄ではないとされていると思うんですが、すべてをCAFCが独占するということでは必ずしもない。先ほどちょっと御紹介がありましたが、CAFCの判断統一の必要性というものも、歴史的に見ていくと、日本が当面しているようなものよりももっともっと大きい判断の食い違いが巡回控訴裁判所にあって、これを前提としているのではないか。日本ではそこまで判断が分かれるということはないのではないか。
更には、CAFCは大変ジャッジもフランクで、判断の統一を保持していくためには、例えば補充意見であるとか、反対意見が公表されるという環境であるとか、日々の活動でもロースクールの教授を勤められたり、あるいはいろんな場でディスカッションに参加されたりして、判断を統一する前提としてそもそもCAFCのジャッジがどういうことを考えておられるかということがかなり明らかにされた上での判断の統一。したがって、一定の判断の統一のためには、裁判官が日常的に自己の見解を示したり、ディスカッションをしたりするような環境の整備も必要なのではないか。まだ、日本はそのような環境にないのではないかとか、いろんな議論が出たのでございますけれども、おおよそそのような意見が、大方でございますけれども、まだ決めたわけではございません。
時間の関係もございまして、現況では特許裁判所についてはそんな議論を日弁連はしております。
○伊藤座長 どうもありがとうございました。御自由に御発言ください。
○中山委員 加藤委員にお伺いしてよろしいですか。判例統一機能を非常に重要視されているわけですけれども、日本の場合、知財裁判所をつくった場合、本当に判例の統一ができるのかどうかということについてお考えをお伺いしたいんですけれども。CAFCの場合は、アメリカにはサーキット・コートがいくつか存在し、その一つに管轄を集中させることができないので、管轄を集中しようと思ったら新しい裁判所をつくるしかないわけだし、その前に関税控訴裁判所があったので、それを転用したということです。したがって、CAFCの扱う事件の中心は、むしろ知的財産以外の事件です。
もう一つ大事な点は、サーキット・コートは法律審なんですね。日本で言うと、審級は違いますが最高裁と事実上似ています。そこの裁判官は事実判断はしないんです。したがって、アンバンク(大法廷)で大勢でやっても審理できるのですけれども、日本の場合は控訴審は事実審です。事実判断まで扱うのに、知的財産裁判所をつくっただけで判例統一ができるか。事実審は、事実によってケースが違いますから、判例統一の意味というのは少ないのではないか。
そういう意味で、もしこれをつくった場合は、第二審の東京高裁を法律審にしないといけないのではないかという感じがするんです。今の末吉先生の話と似ているのですけれども、そういう感じがするのですけれども、そこらはいかがでしょうか。
○加藤委員 産業界としては、その点については、これもまた実質論になると思うのですけれども、事実審かつ法律審の役割を負って、相当程度法律審のウェイトが高くなるものを我々としては期待して、あるいは想定して申し上げております。
○中山委員 法的には期待だけで終わるわけですか。
○加藤委員 それ以上は。
○伊藤座長 法律審的な運用、ないし必要であればそういう方向での制度改正を見据えてという御趣旨ですね。
○加藤委員 とりわけ特許事件について言えば、均等論のようなケースについては、日本では最高裁まで行って、現実に判決が出て、我々産業界は、こういう条件を見ると、均等論が適用され、あるいは適用されないというのは分かるわけです。ただ、均等論の非常に重要なケースについては、確かに最高裁なのかもしれませんけれども、たまたまケースがそこまで行ったからこそ判決が出たんだと思うんですけれども、その一歩手前の特許事件の中では、同じような扱い、非常に法律的に特許法との扱いで、例えば間接侵害をどう扱うかという場合については、最高裁までケースが行ってくれればクリアな判決が出て、産業界としてはありがたいのですけれども、その手前で止まる部分の判断事項というのが相当程度あるのではないかと思っています。そういうときに対しての期待を持っております。
簡単なイメージで言うとそういうことでして、ぴしっと法律的にこうだからというのはなかなか言いづらいんですけれども、産業界にとっての期待というのは、幾つかのそういった判断マターについて、特許裁判所がそこで法的な判断を出してもらえると。我々はそういうことで予見性を持って事業を進められるという期待感が非常にあるということです。
○中山委員 15名の大法廷ですけれども、最高裁の大法廷と同じで、15名でやった場合、審理の促進になるのか、遅延になるのか、その辺の見込みはいかがですか。
○加藤委員 たぶん、15名の合議が行われる事件については相当程度重い案件だろうと当然我々も想定しますので、若干の遅延は我慢するつもりでございます。
○中山委員 それは最高裁で5名でやるのとどうかということです。しかも、15名でやった後に最高裁に行くわけですね。最終審は最高裁ですから、そうすると、裁判の遅延という点で、その見込みとかはどうですか。
○加藤委員 そのくらいのベースになったときの遅延は、やむを得ないというか、覚悟と言った方がいいと思います。
○伊藤座長 従来の法律判断にかかる事件であって、そういう場合でしたら、むしろ先例確立の方の重要性の方がですね。
○加藤委員 優先していくということでございます。
○荒井委員 今の知財裁判所、特許裁判所について、私は、是非つくった方がいいと思っております。
その理由は、前にも申し上げておりますので、だぶるところは省略いたしますが、1つはCAFCの話がございましたが、アメリカでそういう専門裁判所があるということと、やはり、今年の3月にEUで統一特許裁判所をつくるということを決めたというのは非常に大きいことだと思います。EUにおいても非常にいろんな議論があって、特にドイツとか、いろんなところはそういうところでどうだとか、いろんな議論をやってきたわけですが、こういう技術、あるいは知的財産の訴訟の重要性にかんがみて、今年の3月にEUとして統一特許裁判所をつくるということを決めたというのは非常にこれは重いと思っております。
その重いという意味は国際ビジネス、あるいはこういう技術開発の競争はアメリカ、ヨーロッパ、日本と、3つの極が中心になって競争しているわけですが、そういう時に、アメリカとヨーロッパというところで専門裁判所ができたということに対して、日本はいろんな問題があるということでつくっていかないということは、非常にこれから国際競争、技術競争において、司法の面においては非常に遅れを取っていくのではないかと思っております。知的財産、これは非常に国際的なスタンダード、国際感覚が非常に重要だと思います。
そのほかには、さっきも御指摘がありましたけれども、いろんな国ごとに、ドイツにあるとかイギリスにあるとか、あるいはアジアにおいても韓国、タイとかシンガポールにあるとか、個別の国ごとにありますが、やはり経済の3極のアメリカとヨーロッパと2つできて、日本だけはつくらないという判断を、今度は逆にするかどうかという局面になってきたんだと思います。
もう1点は、お手元にお配りした資料で、あるいは法律の方とか、いろんな方には余りよくないかもしれませんが、こういうふうに見られているということは非常に大事だと思います。これは「バイオ特許裁判に関する科学ジャーナリストの見方」ということで、宮田さんという方が書かれたわけですが、ポイントだけ御説明させていただきますと、3ページ目にこの方の略歴が書いてございますが、昭和50年に東大の理学系大学院植物を出た修士の方で、その後日経に入ってずっとバイオを中心としたジャーナリスト活動をされている立派な方でございますが、約25年間、ジャーナリストをやっておられる方で、非常に裁判についても関心を持っておられる方ですが、1ページ目の下のところに「94年に大阪地裁が組替えティッシュ・プラスミノーゲンアクチベータの特許紛争でアメリカの会社の勝訴の判決を下しました。これはわが国が製造業中心の資本主義から、知識資本主義に転換したことを告げる判決でした。均等論を適用して、つまり幅広くクレームを解釈して、強力な特許を認めたものでした。わが国がプロパテント政策に転換、これからは海外特許の効力を小さく刻み、国内産業を保護してきた政策を放棄、知的財産を強力に確保して、わが国の企業にも創造的な研究開発を行うことを誘引する目に見えた最初の変化でした」ということですが、2ページの「記者として何回か、この裁判を傍聴いたしましたが、この歴史の転換点とも言える判決が、果たしてわが国のベスト&ブライテストによって行われたかというと、極めて疑問でした」。
「実に驚愕いたしましたが、裁判の途中で、模造紙に二重螺旋や丸を書いて、そもそも遺伝子とは、プラスミドとはという講義を弁護士や証人が長々と行っていたのです。まるで出来の悪い中学の生物学の授業です。それがしわぶき一つしない、大阪地方裁判所の法廷で真面目に繰り広げられ、裁判官も眉一つ動かさずに聞いている。まさに、漫画です。その場で大声で笑わなかったのは、本当にあっけに取られていたからに過ぎません。
しかも、更に驚いたのは、長い係争期間中に裁判官が交代すると、この法廷での出来の悪い生物学の授業が繰り替えされていたことです。今日こそ、裁判に進展があると期待して東京から出張して来たのに、また愚行に立ち会わされ、今度は腹が立ちました。そして、国民の最後の拠りどころである裁判所の空洞化を知らされたのです。こんな舞台裏で誕生した判決が、今から思えば歴史的に正しかったのは、単なる歴史の皮肉に過ぎません」。
「90年代半ばからわが国の政府は特許制度改革、そして大学の国立大学法人化など知識資本主義へ移行する基盤整備を進めてきました。裁判制度に関しても、東京と大阪の高裁・地裁に合わせて41人の特許担当の裁判官が配属されているものの、いずれも文科系の出身でバイオなどの先端技術の特許紛争の司法判断をするには不十分です。ころころ任期交代する文系の裁判官でなく、バイオやナノなどと法学のダブルメジャーを持つ専門裁判官の養成に明日から着手しなくてはなりません」。
一番最後で、これも非常にお耳に痛くて済みませんが、「そして、何よりも、理科が嫌いて法学を目指し、寝る間を惜しんで司法試験を突破した秀才たちが、法廷で頭痛を我慢しながら、中学校並のバイオの授業を聞かざるを得ない喜劇をもう繰り返してはならないと思います」。
このジャーナリストの方は科学ジャーナリストとしては立派な方で、もちろん、法律家の方からいっぱい反論があると思いますが、こんなふうに見られているということは非常に大事なことだと思います。司法に対する信頼というものは、法律家の方がいかに理屈を言うよりも、みんながどれだけそういうことに対して信頼するかということかと思いますので、是非パーセプションというか、受け止められ方、国民全体が、やはり裁判が日本で適正に行われて、いいことだという信頼を高める。これが非常に司法制度の機能を高めることではないかと思いますので、あえてお耳に痛いことを御紹介させていただきましたが、今、申し上げた点は、このように見られているということと、それから知的財産の技術、専門性に対してどのように応えていくか。司法の方、法律家の方が応えていくのが時代の要請、課題ではないかと思います。
もちろん、人事の問題、予算の問題、いろいろあるのは承知しておりますが、そういう国際的な要請、国内的な課題に対して、問題点を指摘していくだけではなくて、是非、すばらしい回答、解決案を出していくということがこういう司法制度改革、特にこの検討会に期待されているのではないかと思いますので、是非よろしくお願いしたいと思います。
○飯村委員 意見ではなく、荒井委員に対する質問ですが、特許裁判所、知財裁判所をつくることについての政策的なメリットを挙げておられるのですけれども、特許裁判所の中身について、技術判事などは後で議論しますので、その点を除いて、どのような中身を考えられた上で提案されているのでしょうかというのが第1点です。
民事訴訟法の改正案が実現するという前提で議論していいと思いますが、専属管轄が実現した場合、それと特許裁判所との違いはどこにあるのか。メリット、デメリットについてどういうことを考えておられるのかお聞きしたいのです。
○荒井委員 どういう内容を考えているかですが、いろんな案があると思いますが、一番典型的な例は、知財高等裁判所というものをつくることだと思います。これは東京高等裁判所にある4か部を独立させて、それを知的財産高等裁判所と位置づけするというのが1つの案だと思います。もちろん、それとは別に地裁レベルでつくるとか、いろんな案はあると思いますが、1つの案は、今お話しした案でございます。
そのときのメリットは何かということですが、できるだけここで判例が統一できるように努力工夫をするということで、さっきお話のありましたような大法廷制度を導入するということも1つの道だと思います。やはりビジネスとか技術の競争をやっているときに、できるだけ早くルールがはっきりする。あるものが特許になるのかどうか、あるいはそういうものが特許を侵害しているのかどうかということについてのルールを、ビジネスや技術開発のルールをできるだけ早く安定的に応えるということは、日本の経済のために必要だと思います。
それから、もちろん、構成の仕方はいろいろあると思いますが、1つの案は技術判事というものが入ってきて、今御紹介した、こういうふうに見られているということに対して、特許の裁判は技術的な要素が非常に強いわけですから、技術にも強い人が関与した形でやっていく。もちろん、一人で判決を下すわけではありませんから、法律判事と技術判事との組み合わせによって、法律的におかしな判決が出ないような工夫をしていくということによって、技術にも強い専門的な判断を下していくというメリットが出てくると思います。
3点目は、知的財産についての専門裁判所ができるということの、アメリカにもありヨーロッパにもあり、日本でもきちんとつくって、そして知的財産は大事なものだというPR効果。PRというものは、日本の大学でいろいろ研究開発をしていただく方、会社で技術開発をする方がやっておられる技術開発は、あるいは企業の知財の戦略は大事だというPRが大事だと思います。それから、諸外国に対しても、日本は侵害をされたり、したり、そういうときに適正に判断をしていく体制をつくったという、日本国の仕組みとして、インフラとして、知的財産の一番最後の拠りどころである裁判所にこういうインフラをつくったというPR効果、これは非常に大きいと思っております。
逆にデメリットはほとんとないのではないかと私は思っておりまして、何のデメリットがあるのかというのは、逆の意味で言うと、ほとんどないのではないかと思っております。
○飯村委員 紹介がありました記事ですけれども、簡単に3点だけ感想を述べたいと思います。この記事は、平成15年4月に掲載された記事で、過去の文章ではなく、現在の文章なのですけれども、その内容は、平成6年に言い渡された判決について、さらにその審理についてということですので、平成6年よりずっと以前の事柄ということになると思います。
そこで、第1点ですが、知財訴訟の審理については、御承知のとおり、平成10年から劇的な変化があって、それまで5年、10年もかかっていた事件もありましたが、現在では平均すると1年くらい、最長2年で終了するような審理が実現できています。この記事で紹介されているような審理と、今の審理とは大分違うはずです。審理が変化する前の実例を挙げて、こういうような審理の実情であると信じている方が今おられるから、現状の裁判制度、現状の審理の在り方について、運用の工夫ではなく、制度を変えるべきだということを言うのは、妥当ではないと思っております。
第2点は、この記事で紹介された事件は確かに取り上げるだけの価値のある大きな事件で、正確には、平成6年ではなくて平成8年ですが、後に大阪高裁で均等論を肯定した事件で、最高裁のボールスプライン判決より前に均等論を肯定した先例として、高く評価された事件です。
ただ、その判断内容は、原告が持っている特許権の独占の範囲をどこまで広く認めるかという、専ら法律論を争点とした事案であって、技術の問題を超えた判断枠組みに関する先例だと思っております。つまり、最も法律的な事項が絡んだ事件でした。
第3点目です。これも技術専門家の問題とも絡んでくると思うのですが、裁判官の行う事実認定はどのような手続ですべきか、裁判の場で、事実の存否をどうやって確定するかという問題です。裁判官が判断の基礎となる事実をどのように確定させるかについては当然ながら、手続上の制約があるわけです。客観的な資料による裏付けがされているかどうかを一々、公開の法廷でチェックしていくような作業があるわけです。これは個々の裁判官が、自分が知っているからその手続を省略できるというのではなく、裁判官の予断や偏見を排除する要請から、私的な知識を除いた上で裁判をしていくという基本原則があります。
この記者のようなその道の専門家が見た場合には、確かに、審理がまどろっこしい印象を受けることになると思いますけれども、それは訴訟の構造上やむを得ないわけで、それはたとえ技術の専門家が判断権者になったとしても、このような手続を破るのは適法でないわけです。感想は以上です。
それから、特許裁判所のメリット・デメリットということについての意見です。民訴法の改正で管轄の専属化が実現したことを想定した場合と特許裁判所との比較をしますと、結局のところ、荒井委員が言われたように、現在ある東京の高裁であれば4か部、地裁であれば3か部の知財専門部を独立させるかどうかということになると思います。
独立の程度は、もちろん後で議論すべき事柄だと思いますが、およそ、特許裁判所を設置して、特許裁判所であるということを世界に向けて発信し、ある程度実質を伴った特許裁判所ということになると、その独立の程度は、ただ呼称を変えたということだけでは足りないのではないかと思います。
現在の知財の担い手を考えますと、せいぜい30人から40人の裁判官が行っていますが、これだけ所帯の狭い裁判機能が独立しますと、人の問題、物の問題、金の問題で、結局のところ、どこか既存の組織に依存し、従属するという関係になると思います。
裁判所は、憲法上の要請から、当該法律が憲法に違反するか否かとか、行政が法律に違反するか否かとか、そういうことについてのチェック機能を発揮することが使命として要請されています。
基本的には、裁判官の能力、良心に従って、正しい判断を追求していくことになるわけですけれども、わずか30人か40人の規模で、有能な人材を発掘し、育成するのは、かなり困難が伴うものと思われます。それより、むしろ、一般事件を経験して、その中で、素晴らしい訴訟指揮をし、素晴らしい判断を行える優秀な裁判官を知財分野に振り向ける現在の体制の方が、システムとしては良いことと思われます。
独立の裁判所にして、広く人材を集めるということは、目標としては、いいのですけれども、実際にはなかなか実現しづらいのではないかと思います。
次に、同じ人間が長くいると、確かに経験が豊富になっていい面もあるのですが、長くいられるという期待感があると、どうしても競争関係が成立しないし、長くいた人の発言が強くなってきて、新規な考えに対応できる、新しい判断が実現できないのではないかと思っております。
それから、先ほど来言われているメリットの第2点の判断の統一の点です。判断の統一には、事実認定上の判断の統一、それから訴訟指揮、審理運営方法の統一、それから法律判断の統一、いろいろあると思うのですけれども、そのいずれも、知財裁判所を設けたということによって、統一ということは図れないのではないかと思っています。
また、法的安定性が図れるということなんですけれども、法的安定性については難しい問題があって、アメリカでは、CAFCが発足した後でも、均等の判決については、右に左に大きく揺れ動いたわけです。つまり同じCAFCの中でも180 度動いたわけです。そのような例を挙げるまでもなく、特許裁判所を設けたことによって、各裁判体の判断相互の不統一が是正されるものでもなく、また、特許裁判所自身も、右に左に大きく意見が変わることがあり得ると言えます。しかも、そのような多様性が保証されていることは、何ら、マイナスにはならないと思われます。この点は、強調しておきたいと思います。CAFCの判決においても述べていますが、均等を広く認めると予見可能性が害されるのですが、予見可能性が害されていた方が、かえって、特許を強くして競争を促進するから、十分にメリットがあるという考えを述べております。そういうことも考えますと、予見可能性を高くするという政策自体がいいのかどうかとか、フレキシビリティーを確保するという方がいいのではないかということも、やはり選択肢としては、あり得るわけです。
第3にPR効果ですけれども、やはり看板が変わると、特許裁判所という新しい看板の下で信頼性を高める作業が必要になると思います。しかし、今まで獲得してきた、地道な努力の成果、信頼性を無駄にしない意味においても、むしろ今まで努力をしてきた信頼を大切にする方が妥当であると思います。
最後に、一番大切な事柄ですが、確かに知財立国は大切で重要なことだと思うのですけれども、裁判所の機能は、国家組織の中で行政や政治や国際関係などの緊張の中にあっても、独立して判断ができることの確保というものがあり、その点を考えた上で、議論を進めていくということが大事なのではないかと思っております。
○櫻井委員 今、実務家の方から現実を踏まえた反論があったと思うのですけれども、はしょって申し上げますと、この荒井委員が出された資料ですけれども、この科学ジャーナリストの見方というのを拝見いたしまして、ちょっと驚いたことは、科学ジャーナリストの方というのはこんなにレベルが低いのかなと思いました。
つまり、裁判官のことを中学生並みだと書いてあるんですけれども、特に後半部分ですね。3ページに書いてあるような法律論というか、例えば司法に対する理解であるとか、法律というものがどういうものかとか、それからどうも3ページの2段落目などを見ますと、現在の特許制度というものをちゃんと理解しておられるのだろうかとか、三権分立が人類の英知などと書いてあるんですけれども、本当に三権分立がわかっておっしゃっているのかなという気がしまして、このくらいの制度に対する理解でもって特許裁判所が必要だなどと言われてしまうと、ちょっと困ってしまうな、というのが率直な感想でございまして。こういうふうに見られているというのだって、別に構わないので、大事なことは、そういう幼稚な議論をするのではなくて、実際に裁判所というのはどういうものなのかとか、技術判事の話などがありますけれども、裁判官とはどういうものなのかとか、緻密な議論をしないといけないんで、そういう点では、かえってこういう資料を出されるから足元をすくわれると言いますか、戦略的にもよろしくないのではないかというのが私の感想なんです。あと、いわれのない文系軽視と言いましょうか、そういうところもちょっと気になるところでございます。それが1つです。
ただ、先ほど沢山委員がおっしゃいましたように、実質的に既に知財裁判所機能みたいなものがある、制度改正ができるということを前提にするとすると、確かに、あと看板をかけるか、かけないかだけであるとすれば、PR効果というのはありますから、必ずしも論理的に排斥されるものではないだろうと思います。
1点、これは事務局の方に御質問させていただきたいのですけれども。仮に知財裁判所みたいなものをつくるとしますね。そうすると、資料11ページ以下に家庭裁判所と比較して書いておられるんですけれども、私、勉強不足で家庭裁判所というのもなかなか呑み込めないところがあるんですが、12ページを見ますと、家庭裁判所というのは少年審判所と家事審判所というものがくっ付いて、その時には行政官庁であってというくだりがありますけれども、それを裁判所にしたという経緯がある。現在の家庭裁判所というのは、裁判所法31条の3の第1項を見ますと、審判と調停と裁判をやるということになっていまして、これは結局どういうことなんでしょうか。全部司法権の行使と考えるんですか、それとも行政権も含むのだけれども、裁判所に移管したから司法権だと理解するということなんですか。
○近藤参事官 今は司法権を行使するというふうに考えられているのではないかと思います。非訟事件というのも、行政的な要素というのもたぶんにありますけれども、やはりそれが司法権の中にあると。だから、家事審判事件であっても、それは司法権の中だと通常は理解されていると思います。
○櫻井委員 普通の理解はそうですね。ただ、経緯からすると、行政権的なものを流して、ある種形式論的な定義をしたということになるんですかね。
○近藤参事官 ここで家庭裁判所というのを記載させていただいたのは、家庭裁判所が、憲法に違反するという特別裁判所ではなくて、最高裁判所を頂点として、憲法上の通常裁判所なのですが、特別な裁判所として認められている裁判所としてこういうものがございますということでここに記載させていただいています。
○櫻井委員 それで、知財裁判所について、特許庁の審判機能を持ってくるとしますね。そうすると、それも行政権的なものを司法権に入れるか入れないかという言葉の問題はありますけれども、パラレルに考えてよろしいということになりますか。
○近藤参事官 無効審判を、特許裁判所ができた場合にそれを移転してくるのかどうかというのは1つの議論だと思うのですけれども、その中でも全部を移転するということではなくて、一部分切り出してということになった場合に、仮に移転してきた場合に、それが行政手続上の問題とは違って、やはり裁判的な形になってくるのではないかと思うのですが、そこはまだ移転するかどうかというのは別の問題があると思うのです。それは移転しなくて、技術裁判官だけが入った形になって、それが特許裁判所ということもあり得ると思うのです。
○櫻井委員 ただ、技術裁判官の中身にもよりますけれども、言うなれば審判官というのは技術裁判官ですね。行政権を行使して、準司法的機能と言っていまして、けれど、準司法的機能ということは、行政権を行使しているという仕切りですね。同じことをやるのに、裁判所に持っていくと、突然司法権になるということになるんですかね。仮にそういうふうに考えるとすると、家庭裁判所は確かに1つのモデルにはなるんですかね。
さっきからドイツの話とかアメリカの話がありましたけれども、前提として司法権の概念が、アメリカとドイツと日本は違いますので、裁判所と言ったからといって、話は全然解決しないので、その点はよくよく検討しないといけないのではないかと思います。
○中山委員 後で言おうかと思ったのですが、荒井委員の資料についてですけれども、私はこのTPA事件に若干関係しましたので、よく知っていますが、この方の意見はかなり偏見に満ちているという感想をもちます。
ただ、個人的な感想は別としましても、荒井さんは、こういうふうに見られているんだということを強調されましたけれども、見られている方が悪いのか、見ている方が悪いのかという問題もあると思います。
アメリカの例でいきますと、CAFCばかりが問題になっていますけれども、これに相当する一審の方は、陪審事件が多いですから、事実判断をしているのは陪審なんです。当事者は、ど素人に分かるように、懇切丁寧に、小学校のレベルから説明しなければいけないというのがアメリカの裁判なんです。
これは、裁判官というのは、後の話で出てきますけれども、素人なんです。裁判官は法律の専門家ですが、法律マター以外では素人というのが前提で、それに説明をするというのが現在のシステムになっていますので、必然的にこうなる。こうなるのを悪意で見ると、ここに提出されたような文書になる。逆に言えば私は、こういう技術の専門家が裁判官になっては困るな、という良い例のようにすら思えます。したがって、この記事を一般論として持ち出すのは不適切ではないかという気がします。
○荒井委員 一言だけ。まずこの資料はいろいろ御指摘ありましたんで、書いた人にはその旨お伝えしておきます。ただ、是非、科学の人と法律の人が、あっちがレベルが低い、こっちが低いとかいうのではなくて、もっと交流する仕組みがものすごく要ると思うんです。そういう点が1つ。
それから、これは古い話というんですが、新しい話の方は、前回お話ししたように今野浩さんという東工大教授の『特許ビジネスはどこへ行くか』というソフトウェアのときにも、1999年の裁判に行ったら、同じような経験をされたということを言っていたということで、決して昔だけではなくて、最近もこういうことは起きていますよということをお伝えしたい。
組織で30人、40人が独立するしないとかいうときに、これは会社でも行政機関でも、大事な仕事をやるときに、大きな組織の中に置いておいた方がいいのか。それとも独立させた方が子会社として専門会社としてとか、そういう議論はあるので、それは是非どっちの方がより効率的にできるかと判断すべきことだと思います。
ただ、判事が長くいると競争関係がなくてマンネリになるというのは、立派な人が判事になっているわけだからそういうことはないと思いますが、短くやっていればどうなっているかというと、今はそういう評価がおかしいのではないかというので、裁判の任官、あるいは再任官の時にもっとチェックしろという議論が出てきているということをあえてお話ししたいのと、もう一つは、競争関係は国際的な競争関係にあるので、どこの判事がどの判決を下したかというのは、世界中で見ているので、競争関係は十分保てるのではないか、競争のチャンスはますますありますから、頑張っていただいたらいいのではないかと思います。
もちろん、緊張して判断していくのは大事なことで、決してぬるま湯のものをつくるんのではないと思いますのは、余りそれ以上言ってもあれなんで、是非いろいろ議論を続けたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○小林委員 2点ほどコメントさせていただきたいと思います。1点は個別論点で、2点目は全体的な論点です。
1点目は、審判制度との関係がここで述べられていまして、それと審級構造というのは関係していると思うのですけれども、審判と裁判との関係の基本構造というのは大きく変える必要はない。むしろ変えない方がよいのではないかと考えます。
それと同時に審級構造、これは審判を一審省略なので一審相当と言ったりしていますが、一審と数えるかどうかは別問題としても、それを含めた審級構造というのも基本的には変えない方がいいのではないかという考え方を取っております。
仮に、審判を廃止して訴訟にすると、審判がなくなって裁判所に機能が移るということを考えればいいのだろうと思いますけれども、そういったことをしたときに幾つか問題が起きると思っています。
1つは、行政審判によらずに訴訟ということになるわけですから、この訴訟をどういうふうに観念するかによるかと思いますけれども、通常は訴訟の方が当事者の方の負担は重いと言われていますので、コスト面とか、そういうことを含めても負荷の状態になるだろうということ。
それから、行政訴訟であれ民事訴訟であれ、行政審判の完全代替というのは非常に難しい部分がある。職権探知主義はその典型ですし、それから、新無効審判では請求人適格を問うていませんから、原告適格をどうするかという問題も出てきます。また、審判の中では行政処分をやっています。特許の訂正であるとか、出願の補正であるとかいうのは全部行政処分ですが、行政処分ができないと、出願人ないしは権利者の防御ができないのですけれども、そういうことを果たして裁判の中でできるのかどうかという問題もある。ですから、代替性の確保も考えなければならない。
あと審級の利益なんですが、仮に審判機能が今で言う高裁レベルになったとすると、実際上、高裁と最高裁しかないわけで、事実審だけで数えると一審しかない。ほかの国でも特許裁判所をつくっている例が幾つもあるのですけれども、その場合に大抵は三審制ですね。審判も合わせて三審とするか、若しくは二審制であれば最高裁が事実審をやっているという形にして、基本的には事実審が2回あるような形で担保しているのが基本形だと思いますので、審級の利益の喪失の観点からも、問題があるのではないかと思います。
それから地裁との関係で言いますと、以前の会合で議論したキルビー判決との関係ということになるかと思いますが、そのときに伺った制度利用者のニーズも、基本的には無効の問題と侵害の問題とが同時に生じた場合のみ調整をすべしということだったと思いまして、それとは無関係に起こる審判、有効・無効の争いについての審判の機能の移管の話まではニーズになっていないということだと思いますし、仮にそれを担保しようとすると、今申し上げたと同じ問題が起きるだろうと思っています。それが1点目でございます。
それから、2点目で全体論的な話ですが、特許高等裁判所に関する議論を伺っていますと、機能論的な話と組織論的な話がごちゃまぜで議論されているように思います。機能論的な観点からいけば、今回民事訴訟法の改正でいろんな新しい機能が付加されて、専属管轄化される。それから、5人合議制も導入されるということ。あるいは、専門委員制度もあるし、調査官の拡大も議論されているということで、裁判所の機能論的にエレメントを個々に見ていけば、これで十分ではないかという議論があるのも理解できます。
他方で、それでは足りないという議論もあって、先ほどの判断の統一機能ということで、更に大法廷制度を導入すべしという議論があるのも分かるんです。その点に関しては、そういう機能を付加していいのかどうかについて、実際上のメリット・デメリットの意見の相違があったように思います。先ほど末吉委員の方から、判断の相違があった方がかえっていいんだという議論がありました。何人かの方も同じことをおっしゃったと思うのですけれども、その点の意見の違いがあるのであれば、そこにまず絞って議論をすべきだと思います。
その点に関して言えば、実は特許庁は訴訟当事者になることがございます。審決取消訴訟の被告になるんです。その観点から見ますと、やはり判断の統一というのがむしろ望ましいと思います。その手法として大法廷制度がいいかどうかは別問題かもしれませんけれども、判断の統一、ないしは予見性があるということは、訴訟当事者の側から言えば望ましいことだろうと思います。
機能論的な話ではなくて、組織論的な話で、いわゆる特許裁判所というのか、正式な特許裁判所とするのかというのは組織論上の話だと思うんですけれども、組織論上の話で、果たして本当にこれをやってデメリットがあるのかというのはよく分からなくて、どなたかがデメリットがあるとおっしゃるのかなと思って聞いていたところ、飯村判事がデメリットありとおっしゃったので、そうなのかもしれません。ただ、40名になるのか、50名になるのかちょっと分かりませんが、小さい組織を独立させることが本当に組織論的にデメリットなのかというと、かなり議論があるだろうと思っています。行政官的な感覚で申し訳ないんですが、普通であれば自分が属する組織が格上げされることを喜ぶ人はいるにしろ、いやがる人はほとんどいないと思うんですけれども、おそらくいろんなインフラを整備していくときに、組織論上の話というのは結構大事だろうと思っています。
裁判所の機能強化をすることに反対の方はたぶんおられないと思うので、その観点から、本当にメリット、デメリットがほかにあるのかどうか、これは機能論、あるいは制度論的な話をしていても、そこの解は得られないと思いますので、むしろ議論するのであれば、法律論ないし制度論の問題ではなくなるのではないかもしれないのですが、メリットがあるということであれば、検討すべきではないかという感じがいたします。
○伊藤座長 それでは、特許裁判所の問題について、異なる方向から、それぞれ説得力ある有益な御意見が出されました。なお、もちろん追加的な御主張や反論というのはあると思いますが、時間の制約がありますので、この問題は本日で打ち切りということではなくて、次の機会に続けて、本日の御議論を踏まえて審議をさせていただきたいと思います。
(休 憩)
○伊藤座長 それでは、いわゆる技術系裁判官につきまして、事務局から資料2の17ページから24ページについて説明をお願いいたします。
○近藤参事官 資料の17ページを御覧ください。現行法として裁判官の任命資格、内閣が任期10年で任命するということのほかに、任命資格に関する説明、それから裁判官の身分保障ということについて記載させていただいています。これらはここで御覧になっていただければ分かると思います。
19ページの(4)の「最近の関連する法改正」、技術系裁判官との関係で重要と思われるのは、平成14年学校教育法の改正、専門職大学院制度の創設及び法科大学院の教育と司法試験等との連携に関する法律が制定されまして、これはいわゆるロースクールですが、平成16年、来年の4月から設置されるということになっております。これによって大学において理学部、工学部等の理科系学部を卒業したものが法科大学院における教育及び新司法試験、新司法修習のプロセスによって、高度の専門的な能力を有する法曹として多数養成されることが期待されると言われております。
それから、19ページの枠囲いのところですが、裁判官に関して指摘されている問題点として、知財協の方からは、技術系裁判官が存在しないということ。それから、バイオインダストリーからは、最低限2人の専門家が審理に参加すべきではないかという意見。松尾和子弁護士からは、裁判所の人的基盤の拡充として、合議体に参加する技術専門員の導入が必要ではないかという指摘がされています。
検討の方向性としては、①から④に記載させていただいております。①裁判官の専門知見の具備はどうあるべきか。②いわゆる「技術系裁判官」に求められる役割はどういうものか。その導入の必要性はどういうものか。③いわゆる「技術系裁判官」はどのようなものか。その位置づけ、求められる素養及びその給源等についてはどう考えるか。④いわゆる「技術系裁判官」をめぐる問題点はどのようなものか。以上が検討しなければいけない課題ではないか。これについては先ほどの特許裁判所の議論の中でもかなりこの辺の観点が出てきていると思いますので、先ほどの議論も踏まえながらまた議論していただきたいと思っております。
(2)(3)(4)は、これを御覧いただけばよろしいかと思います。
これは決して事務局が消極的だというわけではないのですが、問題点はどのようなものかというのが、ほかに比べてページ数が多くなってしまっているというのはちょっと気になっているところですが、その中で①の裁判の本質はどうなのかとか、特許裁判の本質をどう考えるのかというのが一番最初の○になっています。
23ページの2つ目の○のところで、知的財産関連訴訟における法的問題の基礎となる技術的な論点について判断する役割が求められているとした場合、現行の調査官制度や今回の民事訴訟法改正によって導入される専門委員制度の活用との関係をどう考えるか。この辺のところも念頭に置いて議論していただきたいと思います。
それから、その2つ下の○のところで、医療とか建築との関係ではどういうふうに考えるのか。知財というのはどういう特殊性の下で制度設計を考えるのかということについても御意見をいただければと思います。
下から2つ目の○として、給源としてはどういうものが考えられるのかの関係の問題があります。
24ページ目のところでは、いわゆる技術系裁判官というものを考えた場合には、こういう問題点があるのではないかということを○で5つばかり挙げておりますので、これも参考にしていただいた上で議論していただければと思います。
○伊藤座長 それでは、先ほどは産業界の委員の方に先に御発言いただいたのですが、これについても関連をいたしますので、産業界の3人の委員の方ということで、先ほどと同じ順番で、沢山委員、お願いできますか。
○沢山委員 突然の御指名で非常にあせっております。
非常に簡単に申し上げますと、技術系裁判官というものの概念がよく分からない。技術的な素養を持っているだけで裁判官という職責は果たせないだろう。あくまでも裁判官というサンクバイされた形のものを通った人でないと裁判官という任に当たるのはふさわしくない、納得も得られないのではないか。そういう意味で、科学の問題についての専門的な知見を、もちろんインフォームドの状態で判断していただく必要があるわけですから、それについては今まで議論しているように、調査官とか専門委員、こういう裁判官の分身となる方の意見をよく徴していただいて、その上に立って裁判という形での判断を裁判官がしていただくという形が一番納得性を得る、ふさわしいのではないかと思っています。
○加藤委員 すべての特許事件に当てはまるとは言いませんけれども、今後更に増えることが想定される先端技術、バイオとか情報通信の事件を考えた場合に、いくら専門委員が活用されるという前提に立ったとしても、これを法律的、かつ技術的に当該事件の中に当てはめていく技術総括と言ったような役割が、裁判体の中に当てはめていく人材が必要ではないかという意味で、これを私としては、技術裁判官という役割を負わせたらどうかということであります。
したがいまして、法律プラス技術の領域をカバーする人材という意味で、22ページのイメージで言いますと、特許庁審査官、審判官、及び民間から言えば弁護士、弁理士という給源になるのではないかと考えています。
そういった意味で技術裁判官というのは必要であると考えております。なお、憲法問題については別途検討は当然必要かと思っております。
○阿部委員 特許裁判において技術の側面を補わないと公正で迅速な裁判ができないというところから問題点は始まっていると思います。その、技術系の人が参加する形態としては、今の調査官のように言われたら相談に乗るということなのか、いわゆる評議というものに参加するということなのか、更に評議及び判決にも参加するという、3つのパターンが考えられるのではないかと思います。
現在の調査官の数を増やして、機能はそのままにして、調査官の数を増やすことによって現在の不足しているところを補えるのか。更に評議にまで参加するというところまでやらないと、うまく需要に応じられないのかどうか。それから、判決にまで参加しないとだめなのかということを考えた場合に、よく分からないのですけれども、ある意味で評議に参加するというところまでいった方がいいのではないかという感じでおります。
そこは今の調査官制度をもう少し変えて、言われたことについてただ相談に乗るというだけではなくて、もう少し組織的に関わっていくということがあるのではないか。この間、飯村さんの方からの話で、余りずっと付いていられるとかえって邪魔になるというふうに私は受け取ったのですけれども、そこはもう少し工夫すればそういうことはなくなるのではないかと思います。
技術には技術一般というのはなくて、それぞれの技術者はそれぞれの専門の領域で何らかの教育なり実務を経験してきた人を言うのではないかと思いますので、技術が裁判に貢献するというのは、専門分野においての貢献だと思われます。裁判は最終的には法律にのっとって、いいとか悪いとか、あるいは責任があるとかないとかということの判断ですから、そこへ行くまでのプロセスが重要なのであろうということです。
そういう意味で、判決にまで参加する必要は全くないし、そこに参加させようとすると、資格の問題が出てきて、それで厄介であるし、逆に、参加した人のよしあしについて判断される方がいろいろ詮索しないといけない。さっきのフォーラム・ショッピングではないですけれども、ジャッジのメンバーのショッピングというのがそのうちに起きてくるのではないかなという感じがいたします。
本当は、判断する人にそれなりの技術的な素養があればいいということだろうと思います。おそらくそれをねらってロースクールというのもでき上がっているのだろうと思います。したがって、我々が一番関心のあるのは、技術の素養がある人が本当に法曹の資格を取れる制度にしてくれと、なってほしいということなんだと、私自身そう思っています。
今はロースクールにはたぶん入れるでしよう。卒業もできるのではないかと思いますけれども、卒業した後、試験に受かるかどうかというのは、今の司法試験の延長で考えると、その試験に技術科目を入れるとか、一般科学史とかそういうものを入れるとか、何かげたでもはかせないとそういうことはできないのではないかと思います。
本来ならば、法学部などというのはやめてしまって、それぞれ何か社会科学、あるいは人文科学、技術、そういうものを培った人が、更に法律で自分の身を立てたいという人がそこで資格を取るということになれば、そういう関係がもっとスムーズに行くのでないかなと。ちょっと問題が違いますけれども、技術裁判官に関してはそういう考えでおります。
○伊藤座長 ありがとうございました。では、どうぞほかの委員の方も御自由に発言してください。
○櫻井委員 技術判事につきましては、どんなイメージをするかによるのですけれども、それを考えるには、やはり憲法上裁判官という概念があって、裁判官というのは法の支配の担い手として存在しているわけですので、それが一体どういうものなのかということを検討することなしには結論は出ないであろう。それが最高裁であろうと下級審であろうと、当然前提にしている裁判官像というものがあるはずなんです。
そういうことで考えると、非常に簡単に言えば、日本国憲法はアメリカ型の憲法ですから、ルール・オブ・ローの最終的な拠りどころは裁判官であるという位置づけでありますので、そうしますと、裁判官というのは最低限、法的な素養があるということは当然の前提でありまして、その法的な前提というのは、何も職業裁判官に限られるものではないというのは、現行法でもそうなっておりますけれど、広い意味での法とか正義とか公正とか、大体みんな同じ意味で使うわけですけれども、そういうものだろうと思います。
ですから、技術判事については、やや逆転した議論がなされているかと思いますけれども、法的な素養を外すことはできないし、法的素養のない者に裁判官というふうに名称を付けるとすると、憲法違反の恐れが出てくる。そこは行政組織との関係で、例えば資料ですと、21ページに荒井委員の御提言がありまして、要件として、22ページに大学の理学とか工学とかが書いてあるんですけれども、これをいきなりということになりますと、とんでもないことになると言わざるを得ないと思います。ただ、これが特許庁の方のように行政官の場合ですと、憲法論をクリアできる可能性があるので、おそらく検討の余地があるだろうと思います。これは先ほど申し上げた、裁判所というのは行政権を行使する場合も実はあるということにできるかどうか。そのことに気がつくかどうかと言ってもいいかもしれませんけれども、そういう問題と関係しているわけです。
もう一つは、今までの議論で欠けているなと思っている視点がありまして、特許の話というのは、人間社会における技術というものを社会においてどう扱うかという話だと思うのですけれども、そうすると、あらゆるテクノロジーというのが社会的に認知されないといけない。どんなに先端的ですぐれたものであろうと、専門的なものであろうとです。
そういうことになりますと、それを判断するのが裁判官なんですけれども、裁判官は法律の形で一般化された社会通念というか、制度化された社会通念というものを解釈・適用しまして、これを認知する認知しないという最終的な決断をしているのだろうと思うのです。
実は知財に関して専門的な判断ができるということも大事ですけれども、それだけではなくて、ここの検討会の言葉で言えば素人、裁判官は専門家で、技術の専門家ではないというだけのことですけれども、そういう一般意思を代弁しているわけですから、そういう意味でかえって素人裁判官というのは重要であるということも一方では言えるのではないか。行政法をやっておりますと、政策立案の場面では大体工学の先生と闘っていくことが多いのですけれども、技術優先だけでは全然政策にならないのですけれども、そういうことはなかなか技術の方はお分かりにならないので、残念ながら法治国家でありますので、そこはきちんと認知できるようなものが必要だと。
そういう意味でも、技術判事的なものを入れるにしましても、ベースは素人的な人もまさに重要だし、国家戦略として、余りお金にはつながらないかもしれませんけれども、人間社会としては重要だというふうに思っております。
あと1点蛇足なんですけれども、実は法の支配というのは、これは私個人的にここ数年気がついたのですけれども、私だけではないと思いますが、実は日本人というのは、法の支配というのは言葉が簡単なんでみんな簡単に使うんです。論文集の表題とか、法の支配とやたらと使ったりするのですけれども、どうも日本人は法の支配というものを、学問の世界でもそうですけれども、ちゃんと理解していなかったということにようやく最近気がついてきたという状況があろうかと思います。たぶん、法の支配というのは、私たちが思っているよりももっとダイナミックだし、もっと乱暴なものだし、今まで私の世代というのは、私は芦部憲法学で育った世代ですけれども、芦部先生を含めて、どうもよく分かっていなかったのではないか。我が国では、明治憲法以来の大陸的な法治国家というものがすごく根付いていまして、法の支配というのがぽんと入ってきたんですけれども、どうも法の支配をずっと法治主義的に理解してきたのではないか、とある人が言っていて、まさにそのとおりだなと思ったのです。
最近のアメリカのいろんな動きなどを見ておりましても、あれが法の支配だと正当化されることになりますと、これは我々が理解していた法の支配とは全然違う、少なくとも逸脱する性格を持っているものなのではないかと思っていまして、そういう意味では、一体日本国憲法が言っている法の支配とは何なのかというのは大問題で、そういう検討も本当は必要なのかと思っております。
○中山委員 裁判官というのはどういう人がなるかという問題だと思いますけれども、ここで言っている技術裁判官がどういうものか分かりません。究極的には他の普通の裁判官と同じ地位を与えられた裁判官を考えているだろうと思うのですけれども、私の感じでは、裁判官というのは、法以外の点においてはむしろ素人でなければいけない。これは知財だけの話ではないわけでして、医療も建築の事件も出てきますけれども、では、医療過誤は医者が裁判官をやるべきかとか、あるいは、文系でもデリバティブを使った金融商品などは私などは全く理解できないし、裁判官もすぐには理解できないはずなんですが、金融のプロが裁判官になるのか。法律についてはプロだけれども、裁判官は他のことについては素人にならざるを得ないという宿命を負っています。これは技術裁判官が入ったって同じはずです。これはバイオ法廷とかこれはナノ法廷とか細分化すれば別ですけれども、技術的な素養を持っていたって、バイオは全然分からない人はいっぱいいるわけです。
やはり、技術についての素人である裁判官に対して、十分説得力ある主張をするというのが当事者の義務だと思います。
仮に専門家である、その技術に詳しい裁判官がいたって、普通の法律裁判官もいるんですから、そこの裁判官に対して説明しないといけないので、結局説明しないといけないわけです。
むしろプロであるがゆえの先見・予見と言いますか、そういうものを持っている可能性もあるわけです。最終的には、裁判とは規範を扱うものだと思う。単なる事実判断を扱うものではなくて、規範を扱うものだと思うのです。
したがって、サポート体制、これは完備しないといけないし、まだそれは十分だとは思いませんし、裁判官をいかにしてサポートするかという体制、これは検討しないといけないですけれども、最終的な合議で評決権を持つ裁判官というのは、やはり、法律裁判官という言葉があるかどうかは分かりませんけれども、技術裁判官と対比した意味での法律裁判官でなければいけないという感じがします。これは知財だけではなくて、すべての裁判について同じだろうと思います。
○荒井委員 私は技術系判事をつくったらいいと思っておりますが、今のお話の関係で言えば、もちろん、裁判官は法的素養は大事と言うのですが、もちろん、技術の専門家の人も、任命する際にはしかるべく研修をする、トレーニングをするということで、法的素養の部分はきちんと担保するということが、任命に当たっても、あるいは任命の後の研修でやることによって可能ではないかと思います。
逆に言うと、法的素養だけでほかは素人がいいというのは、何とかなく国民の感じからすると非常に不思議な感じがするわけでして、裁判へ行ったら法的な素養もあるけれども、あるいは今度の技術判事の場合には、技術的素養もあるという人も入って技術的な問題はやってくれるということが、国民からすると納得できると思います。
憲法論はどうやって読むのか分かりませんが、たぶん、ここの問題に書いてあるのは、裁判を受ける権利というのは法曹資格を有する人の裁判権によるものだけだというふうに果たして読むべきものなのかと疑問に思います。合議制であれば、もちろん、全体としてはそういう法的な判断が間違いないようにしなければいけないわけですが、ただ、全体として、国民は納得する判決を出してもらうのが大事なわけで、法曹の資格は最高裁に行けば要らないということだけ見ても何となく不思議な気がするわけでして、もちろん、法曹資格を有している方は法律の専門家ということで尊敬を受け、信頼を得ると思いますが、ただ、何でこんな議論が始まっているかというと、そもそもそういう方だけで、小さな司法でやってきたことに対して国民との間に非常にギャップを生じてきているということがこういう問題の発端だと思いますし、司法制度改革も是非国民が期待できる司法になってほしいというのは、法律だけは詳しいけれども、ほかは素人ですからということでは困りますよという声が出てきて、いろんな工夫をするというのがこの議論ではないかと思います。
あと、本来の姿は、さっき阿部さんからもお話がありましたけれども、技術の素養のある人がロースクールを出てきちんと判事になるというのはいいと思うのですが、国際競争が非常に激しくなっている時に、いつできるのかということが、逆の意味で日本にとっても時間との競争をやっていると思うのです。
今、日本では司法試験の合格者が1,200 人、中国は司法試験の合格者は2万4,000 人、アメリカは4万8,000 人というのが最近の数字。10年後には日本は3,000 人になりますと言っているのですが、果たして日本がこういうペースでやっていて、まさに国際的に今法の支配が問題になって、WTOの交渉とかいろんな交渉をやっているわけで、そういう本当に法の支配が国際的に求められている時に、特にこういう特許という、本質的に国際性のあるものについては、相当これは工夫していかないと、日本が、国内の法の支配であって、国際的な法の支配から外れているのではないかという危惧を持っておりますので、是非、その工夫する手段として、技術系裁判官というものをつくるのが必要ではないかと私は思っております。
○中山委員 国民とのギャップがあるとすれば、それを埋める方法は、プロを入れるのではなくて、むしろアメリカみたいに素人を入れないとギャップは埋まらないのではないか。アメリカの制度を真似しろと言っているわけではないのですが、アメリカの場合は、どんな難しい技術系の問題だって、読み書きもできないような人ですら陪審になって事実認定をしているわけです。それはなぜか。それはギャップをなくすということで、ギャップをなくすという目的なら、むしろプロは入れてはいけない。素人を入れるということになると思うのです。それが1点です。
もう1点は、プロをこれで集めることができるかと先ほどから議論になっていますけれども、技術というのは細分化していて、TPAのプロはナノテクは分からないという話になってくるわけです。しょせんプロを集めることは無理ではないかという点も含むわけです。
○荒井委員 今の点だけ。ギャップを埋めるには2つやり方があると思うのです。素人の陪審員的なものでギャップを埋めるやり方と、裁判をしていただく裁判官の方がそういうふうにキャパシティーが広がっていくというのと、両方の組み合わせで初めてギャップが埋まるのであって、どっちが1本に頼るのは私はよくないと思います。
もう1点は、プロはいずれにしても集まらないというのは、お話のとおりかもしれませんが、まさに法的素養と同じように、技術的素養というのがあるのではないかと思います。ですから、そういう技術的感覚のある判事がいて、そこをサポートする本当にその分野に詳しい専門委員、そういう組み合わせをやることによって強くなっていくということではないかと私は思っております。
○小林委員 今の御議論、中山先生と荒井委員の議論に対して1点と、全体的なことに関して2点言わせていただきます。
納得できる判断を下すために、専門性の問題が議論されているわけですが、たぶん、ほかの国を見ても、幾つかやり方があると思います。
先ほど中山先生がおっしゃった陪審はアメリカの地裁を主に念頭に置いていると思いますけれども、あれがなぜ特許の裁判において機能するかというと、アメリカには大量の分厚い層のパテント・アトーニーがいるから、パテント・アトーニーが当事者側に立って懇切丁寧に説明する。わかりやすく説明するという構造があるからうまく機能しているのだと思います。それも1つのやり方だと思います。
アメリカには別のやり方もあって、CAFCには、もともと技術系のバックグラウンドを持ったダブルメジャーのロイヤーたちがたくさんいます。それがジャッジの半分くらいいて、そういう形で処理をするということもできる。
ヨーロッパに目を転じてみれば、ドイツのように、ここで論じられている技術裁判官というようなものを持っている国もある。そうではない国もある。それから、日本で言う調査官制度のようなものを持っている国もあるということで、たぶんいろんなやり方があるのだろうと思うのです。そのどれが一番適しているのかということを議論する必要があるのであって、一部分だけ取り出して論じるのでは、なかなかうまい解決ができないのではないかという気がします。
第2に、これは質問になるのですけれども、憲法論との関係で21ページから22ページに①と②というふうに書かれていて、①は当然今後何年か経ってから実現するであろう法科大学院を出た人ということですから、当然であるとして、②について、いわゆる技術系の知識だけで足りるかということに対しては、およそ裁判をするということになれば、法律的素養がなくていいはずはないわけで、これは当然そうだと思うのですけれども、それがどの程度であれば憲法との関係で抵触が生じないのかということについては、何ら検討されていないように思います。その点について、結論を先取りするという意味ではございませんけれども、検討する必要があるのではないかと思います。
3点目は、23ページの一番下から最後のページにかけて、これは調査官制度のことを考えるについても若干関係すると思うので、その点ちょっとコメントさせていただきますと、24ページの一番上に、技術が日進月歩なので技術裁判官という形で固定化するとまずい問題が生じないかという議論がされているんですが、これがもしそうだとすると、調査官も同じでして、調査官としてかなり年次の高い人が、現在、裁判所に派遣されていますけれども、仮にそういう人が長い間いたりすると、技術進歩に対応できないのではないかという疑問と同じだと思うのです。
更にさかのぼれば、そもそも特許庁に長いこといる審査官、審判官は役に立たないと言っているのと等しいのですが、実際にはその逆でして、技術の進歩というのは日進月歩ですが、積み重ねですから、これは民間企業であれ役所であれ同じだと思いますけれども、自然科学の分野で次々と知識を蓄積しないような人はいないのです。そうしなければ仕事ができませんから。その点で言うと、任期の長いとか、短いということは余り関係がないのではないかという気がします。
○飯村委員 世界各国、それぞれの国の実情、歴史的、社会的な背景があった上で、いろいろな制度が設けられているわけですが、仮に、技術裁判官や、技術の専門家を入れた方がいいということを考える立場ですと、そういうモデルがあるから我が国にもそれと同じ制度を設けようという意見が出され、逆の立場だと、別のモデルを前提に、意見を述べるということになります。
このような議論をする場合、よくアメリカが引き合いに出されます。アメリカでは、事実認定をするのは、原則第一審です。第一審の場合は、裁判官は、カレンダー・システムの下で、どんな事件でもこなさざるを得ないわけで、今日刑事事件をやったかと思うと、翌日には特許事件をやるというように、およそ、専門裁判官という発想はありません。
それでも裁判官が判断できるのは、当事者のプレゼンテーション能力、調査能力という裏付けが基礎にあるわけです。パテント・アトーニーの話が出ましたけれども、ひとり特許の分野に限らず、特許以外の分野でも、調査精度を高めるために費やされるコストは、日本とは比べものにならない実態があります。1件にかける裁判官と当事者側の負担量の比率というのを考えますと、仮に日本で1対3だとすれば、アメリカでは1対20とか30とか50とか、そのくらいの違いがあるかと思います。そういう制度的な前提を全く抜きにして議論すると、事の本質を誤るのではないかと思います。CAFCでは、確かに技術系のバックグラウンドを持ったパテント・アトーニーから裁判官に任官された裁判官がおられます。ただ、CAFCは、純然たる法律審であって、12人の裁判官と数名のシニア・ジャッジ、それを補佐するロークラークは40名を超えているわけで、裁判官を支える組織はあるわけですから、そのような事実の違いをふまえて議論をすべきであると思います。
日本の場合に、理想を言えば裁判官の負担量を軽減させて、当事者責任主義の徹底、つまり、当事者の調査能力やプレゼンテーション能力を高めて、それなりの客観性の高い裏付けのある事実を前提として、法の解釈、適用を中心にした審理ができるよう、本来の裁判の理想に近づける方向に持っていくような仕組みにするのが一番かと思います。
そのような理由から、ある技術的専門分野についてはよく知っているという者が判断すると、一見、話が早いような印象を与えますが、特殊な技術に関与したという経験で特殊な知識を持った者が、一般的に妥当する法理が何かという、法的な解釈、適用問題を判断するというのは、ふさわしくないと思います。法律の解釈、適用について、誰が判断するかという問題については、一般的な知識経験だけを持っているにすぎない人間が、一般的な知識経験をもとに判断するという意味で、そのような制度こそが妥当であろうと思います。
次に、裁判体の構成員の一人に、法律的知識、経験を持たない技術の専門家が入った場合にどうかということについてです。我が国の憲法の下では、裁判官の独立性は保証されていて、通常の組織のように、組織上判断する権限を持つ者のみが判断して、その他の者はそれに従うということはなく、常に、合議体の意思決定をすることになります。そこで、法律の素養がない者が、同等の立場で合議に参加するということができるのかどうか、つまり、3人の合議体の意思形成が本当にできるかどうかはすごく難しい話だと思います。2人の裁判官の意見が対立したときに、キャスティングボウトを握るのが、3人目の技術裁判官というのは、やはり不安があります。
それぞれの裁判官が責任を持たされて、ペーパーを作成して合議して、裁判官それぞれが、法律的な争点について、対案をいくつも作成して合議をすることになりますが、そのような中に、技術だけはプロですという方が合議に参加して裁判体の意思決定をするのは、独立の裁判官から構成される裁判体のイメージとは大分違うように思います。行政組織では、基礎的な情報をもとにトップが決めて、その後、それぞれ得意分野の知識経験を有する者がまとめるということがあり得ると思いますが、裁判体の場合は、そういう話とは異なります。
また、仮処分等について、技術裁判官一人で事件進行をするということも考えられますが、そのような場合には、技術者が、たった一人で法律判断をせざるを得なくなるので、やはり、裁判の信頼性、信用に影響が出ると思われます。
中国の例が挙がりましたが、中国では、つい最近まで、法曹資格を持っていなくとも裁判官になれたのですが、制度を変えて、司法試験を合格しない限り裁判官になれない制度になりました。今までは、原告と被告の弁護士だけが法律上の争点を理解し、一人、裁判所だけが法律上の争点を知らないままに、審理が進められていたという批判もありました。完全に独立した地位と権限を有する裁判官について、法律上のトレーニング、素養を持っていない者が入るということについては、裁判、知財立国の信用性の点で問題があるのではないかと思います。
最後に今の日本の裁判所、裁判官の技術的な素養に関する認識についてですが、先ほど挙げられましたジャーナリストの書かれた記事では結局、高校レベルで、技術がわからなくなって、技術の失格者がしょうがなくて司法試験を頑張って受かり、そのような者が裁判官になったという基本的な認識を前提としておられるようですけれども、知財裁判官の中にも理科系の出身者というのは現実におられて、つい最近まででも東京地裁にも、東京高裁にも理科系出身者がおられて、また、今年の3月までは、大阪地裁にも理科系の出身者、技術系のバックグラウンドを持った裁判官もおられましたし、さらに、少し前には、東京高裁に理科系出身の裁判官がおられて、裁判長もされました。そういう実態を全く確認もされず、完全に無視して、法律を専攻して法曹を選んだ者は判断失格者のような言い方をされるのは、フェアではないという感じがします。
○末吉委員 一言だけ。技術系裁判官につきましては、日弁連でも今、議論している途中ですけれども、基本的には必要性はないのではないかというのが大方の意見でございました。ただし、技術系のバックグラウンドのある法曹資格者の創出というのは、大変結構なことで、大いにロースクールには期待をしたい。
個人的には、先ほど阿部委員がおっしゃいましたが、ちょっと心配をしておりまして、顧問会議でどういう議論がなされたか、是非ロースクールで技術系裁判官を創出するというのは、もっともっと議論いただきたいというのは、私も個人的にそう思っていますので、よろしくお願いします。
○伊藤座長 それでは、この点についても、それぞれ異なった角度からの御意見がありまして、なお、まだ、議論が尽きていないと思います。これも今後継続することにいたしまして、恐縮ですが、次の議題に移りたいと思います。
証拠収集手続の機能強化、いわゆる日本版ディスカバリーについての議論をお願いしたいと思います。
資料3の1ページから12ページについて事務局から説明をお願いします。
○近藤参事官 資料3ですが、まず、知財戦略大綱の営業秘密の保護という観点からの収集方法の更なる機能強化ということが言われていることについて指摘させていただいて、次に第2回、第3回の経済界からヒアリングの結果、どういうことが言われていたのかということについて、ここにまとめさせていただいております。
次の2ページ目から、現行法上、どういう制度が証拠を収集する手段としてあり得るのかということについて、文書提出命令、調査嘱託、当事者照会、それから検証物提示命令というようなことが現行法上ありますと。内容についてはもう御存じだと思いますし、内容を見ていただければ分かりますので、省略させていただきたいと思います。
そのほかに、弁護士法23条の2の、いわゆる23条照会ということも、現実の訴訟においても活用されているところです。
次の3ページ目の(2)のところですが、これも知財戦略大綱との関連もございますので、証拠収集方法の拡充ということですけれども、訴え提起前に提訴予告通知をした場合に、一定の証拠収集のための処分をすることができるという民事訴訟法の改正案が今国会に提出されております。具体的にどういうことができるのかということについて、4ページ目のところに書いてございますけれども、文書の送付嘱託、5ページ目になりますが、調査嘱託、それから専門的な知識を有する者の意見陳述を嘱託すること。それから執行官に対して物の形状、占有関係について現況調査命令をすること。それから、当事者同士で文書のやりとりをするということも含まれますが、そういうことが、新たに提訴前にすることができる。これは計画審理というのが同時に法案として提出されているのですが、事前に当事者同士でどういう証拠があるのかということを準備をして、計画審理をやりやすくして、なるべく早目に民事訴訟を審理しましょうということの一環として提案されているところでございます。
それから、5ページに「(3)外国法」としてどういうものが証拠収集としてあるか。これは概略で、5月の時点で外国法制の内容についての研究結果について報告できると思いますので、概略程度ということで理解していただきたいのですが、アメリカではディスクロージャーで、この中にも3種類ございまして、冒頭の当然開示と、それから専門家証言の当然開示とトライアル前の当然開示。それからディスカバリーと言われるもの。ディスカバリーと言われるものにもいろんなものがあるんですが、証言録取を中心として、質問書とか文書提出及び土地の立入り、身体及び精神検査という証拠の開示ができる。
イギリスでは、更なる情報提供の要求とか文書の開示及び閲覧、証言録取、証人に対する文書提出命令、インジャンクション。
ドイツでは、この中では特に重要だと思われるのは独立証拠調べで、これが1つのヒントになって本国会に提出された提訴予告通知前の証拠収集処分ということにつながっているということでございます。
フランスでは、レフェレというものがございます。
6ページの下の方の「各界の意見」というところで、どのような意見があるのかということにいて指摘させていただいております。これも事前に御覧いただいているのではないかと思いますので、省略させていただきます。
「具体的方策案」というところで、検討の方向性の内容の、侵害訴訟における証拠収集手続はどうあるべきか、どういうことを考えたらいいのかということで、観点としては、先ほど言った提訴予告通知との関係で証拠収集が拡充されたこととの関係で、今般の改正を経た民事訴訟法に何を補うものなのか。それから、知財検討会での検討に係る証拠収集手続の拡充に加えて、どういうものが必要なのか。営業秘密を保護しながら、訴訟手続内で、なるべく証拠が出やすいようにしようということが第6回の検討会の課題でございました。そういうことを踏まえながら、御意見をいただきたいと思っております。
この2つの考え方というのは、先ほど各国の例を示していますが、英米法系の考え方というのは、基本的には自己に有利であるか不利であるかを問わず、手持ちの文書を相手方に開示して、閲覧させて、正しい裁判をするということが基本的な考え方で、大陸法系の考え方というのは、何人も自己に不利益な証拠を相手方に与えるということは課されていないんだと。ベースにはそういう考え方があって、それがちょっとずつ変わってきていると思うのですけれども、そういう観点からの考え方があり得ると思っております。
こういうことを踏まえて、具体的な証拠収集手段の範囲というのがA案からC案で、攻撃防御方法に関連する一切の事項にするのか、主張している侵害行為を立証するために必要な証拠に限定するのか。それよりも更に限定をしていくのかという選択肢というのは、対象物としてあり得るだろうと思います。
それから、次の8ページの②の、証拠収集手段の方法はどうあるべきかということについては、A案としては、訴訟提起前の文書提出命令を申し立てられるという形のことを考えた方がいいのではないか。
B案としては、訴訟提起前に中立な第三者である鑑定人、又は執行官等による調査手続を設けるということは考えられる。
C案は、今認められている当事者照会制度というものを、何らか、罰則とか真実擬制等によって強化していくということが考えれる。
D案は、アメリカの制度を前提にして、提訴前の供述録取制度ということを導入したらどうか。
E案は、ディスクロージャー制度というものを導入して、当然に相手方に証拠を開示するという義務を課するということだと思います。
それから、F案は、今ある文書提出命令の形で、文書提出義務の範囲を拡大する。これは第6回でも営業秘密との関係で議論されているところとの関係で重なっている部分です。
G案は、今般の民事訴訟法の改正案というのが出されていますが、その結果を検証してから、更に拡充するどうかを決めるべきではないかというのがG案です。このような意見を出させていただいております。
あと民事訴訟法の改正案について、検証するというところとも関連するのですけれども、後ほど最高裁の方に一言、現在の民事訴訟法規則等の検討状況などについても御発表いただければと思います。
○伊藤座長 よろしいですか。それでは、今事務局から最後に言及がございましたが、最高裁判所において、証拠収集手続の拡充に関する民事訴訟規則を検討していると承っておりますので、その検討状況等につきまして、最高裁の担当の方から一言御発言お願いできますでしょうか。
○定塚最高裁事務総局行政局第一課長 それでは、御指名でございますので、今の提訴予告通知制度等についての状況を御報告いたします。
この7ページにも知財協の要望というのがございますけれども、法制審議会でもディスカバリーの問題というのは、随分議論されまして、その弊害というのも随分出てまいりまして、その後、いろいろな点から産業界の要望などを承った上でこういう提訴予告通知制度というのができたという状況でございます。今まさに国会で審議中という状況でございまして、国会の審議が終わり次第、規則制定に向けて検討し、秋には規則制定諮問委員会を開くことを予定しております。
専門委員制度も含めまして、法制審議会でいい制度をつくろうということでできましたものにつきましては、ユーザーの方々のニーズを十分に把握した上で、どんどん使えるように規則を整備していきたいということでございます。
○伊藤座長 どうもありがとうございました。それでは、証拠収集手続の機能強化、いわゆる日本版ディスカバリーについて、御質問、御意見をお願いいたします。
○加藤委員 私としては、この11ページのF案、文書提出義務の範囲を拡大するというものをベースとして、これにのっとったところでいいのではないかと思っております。
我々としても証拠収集の困難さを緩和することは、産業界、ユーザーとして当然、十分な必要性を感じているところでございます。
一方、いろんな国にディスカバリーはあるのですけれども、とりわけ米国のディスカバリー制度と比較した場合においては、これは米国流のディスカバリー制度というのは、当事者によるディスカバリー制度の負荷を考慮した、言ってみれば早期和解システムのようなものではないかというふうに、産業界としては、実態としてそう感じております。
日本では、この検討会を通じていろいろ御発言もありましたとおり、裁判所の早期審理は相当程度進んできておりますし、また、実際、中においても適切な心証開示等も行われて、適切な和解への導入も行われているように思いますので、私自身の経験からもそのように感じますので、米国流の導入は必要ないと思っております。
したがいまして、今、最高裁の方からも御説明がありました提訴前予告通知制度、あるいは文書提出義務の拡充、この文書提出義務の拡充については、相当程度の拡充は必要だと思っておりますが、これが満たされる限りにおいては、ディスカバリーは必要ないというのが意見でございます。
○阿部委員 ちょっとお尋ねしたいのは、F案の「文書提出義務の範囲を拡大する」というのは、これは訴訟提起後の文書提出命令の範囲を拡大するということですか。
○近藤参事官 そういうことでございます。
○阿部委員 要するに、訴訟提起後の文書提出義務の範囲を拡大するというのは、営業秘密だからといって断れないという意味で、それも出しなさいということであれば、私どもはそういうふうに主張しておりますので、大いに賛成でございます。
裁判になる前にも何らかの証拠を保全する、あるいは相手に対して証拠を出させるところまで、照会とか、ある意味での文書提出命令みたいなものがあったらなというふうに、実務上そういう感じはいたします。
というのは、そういうふうに持っていくと、その時点で相手がまいったと言う可能性が十分あるのが実情ではないかと思います。したがって、それを言うためにはA案、B案、C案、どれを言っていいかちょっとよく分かりませんけれども。
○伊藤座長 A案になるのでしょうか。
○阿部委員 範囲が同じかどうかは問題ですけれども、我々の仲間でいろいろ議論したときに、アメリカ式のディスクロージャーも必要だというふうに極端な意見を言う人もいないわけではなくて、それくらい今の裁判の中で証拠はなかなか出てきにくいという実態があるということで、そういうことを言っているわけです。たぶん、制度そのものは、導入すれば濫用というか、マイナス効果の方が大きいだろうということで、アメリカ式のディスクロージャーの制度というのは好ましくないというのが我々の意見です。
○沢山委員 F案でいいと思います。①の方は、必要な証拠の範囲というのは、侵害しているかどうかという部分と、損害、逆に言えば利益をどのくらい上げたかという部分の2つでほとんどカバーされるのではないかと思いますので、B案に少し言葉を補っていただければ、①の方はそれでいいのでないかという感じがしています。
○阿部委員 先ほどのA案の話ですけれども、イ号の特定のためというのと、侵害の立証のためと、たぶん考え方は2つあると思うのです。ですから、今はイ号を手に入れたいという方があれですので、この場合はイ号を特定するための範囲での文書提出命令という趣旨です。
○近藤参事官 A案を採った場合に、よく分からないところがあるのですが、訴訟提起前に訴状が出ておらず、まだ訴訟物というのが明らかではなくて、請求原因もはっきりしていないとすると、イ号物件というものがちゃんと明らかになっているか否かというのは、随分動き得る可能性があり得ると思うのです。
そういう中で何か強制的に、こういう訴え提起をする予定だから、こういう文書を出せ、ああいう文書を出せと言われた場合にも、それに対して応答していくのですか。
○阿部委員 まず、ある程度特定しなければいけないですから、予告通知の中である程度言うということがまず必要だと思うんです。
それから、出さなかったことに対するサンクションをどうするかという問題だろうと思います。そこは例えば過料みたいなものが考えられますけれども、出さなかったということに対する裁判官の心証があとで期待できるということでもいいのかなという気はいたします。
○末吉委員 ここまで余り時間がなくて細かい議論ができていないのですが、ただ1つ、米国型のディスカバリーまでは要らないということでは意見が一致していて、意見としては、当事者の事案解明義務は規定すべきではないかという意見があるのですが、大方は基本的には民事訴訟法の改正動向を踏まえて、運用を見極めて、再度検討すべきではないかとの議論があったところです。
○伊藤座長 これで言うとG案、あるいはこれに近い考え方ですね。
○末吉委員 もう1つ、文書提出命令に違反した場合の制裁をもう少し検討する必要があるのではないかというのが有力な意見であります。
○伊藤座長 それは提訴後の話ですね。
○近藤参事官 それは具体的に、もっと厳しくするようにということですか。
○末吉委員 厳しくする方向でなければ、なかなか実効性がないという意見であります。検討の過程で申し訳ありません。
○伊藤座長 具体的にはもうちょっと詳しく御説明いただいた方がいいかと思いますが、それはいずれお願いいたします。
○村木氏 本日、意見書を提出してございますが、その中には2つのポイントがあります。1つは、今、出ました訴え提起前の証拠収集についてでございます。具体例を出してございますが、ペットボトルの製造工程についての裁判、詳しく御説明する時間がありませんので省略いたしますが、ペットボトルを作る行程(・方法)の特許が侵害されたかどうかという問題です。これは、一次製品と二次製品をこしらえて、最終的にこういう壜、皆さんの前にあるペットボトルの形にする、そういう特許でございます。実際に証拠保全の話でいきますと、あらかじめ証拠を保全しておかなければならない場合ということになっていますが、継続して事業を行っている場合には、それにはたぶん当てはまらないことになります。それから、生産方法の推定の場合に、出願の時点でこのものがあったかなかったかということが問題になります。このペットボトルの作り方はブロー方法といいまして、最初に型をこしらえて、これは熱に弱いものですから、一旦加熱しまして、収縮させます。その後にもう一回この形(ペットボトルの形)に成形する。ですから、一次製品と最終製品とがほぼ同じ形をしています。
ほぼ同じ形でできてきますので、ちょっと見たのではまず分からない。一次製品と最終製品は、形は同じものなんだけれども、最終製品は熱による収縮は起きない。そういう製造方法です。
ただ、出願の時点で知られていなかったかと言えるかというと、そういう壜体(ペットボトル)はあるわけですから、たぶんそれは満たさない。そういう特許を考えた場合に、今回の民事訴訟法の改正、訴訟提起前の証拠収集方法だけではたぶんうまくいかないのではないかと思います。そういう意味で先ほど出ましたF案、更にそういう具体的なケースを踏まえて、今の民事訴訟法、改正民事訴訟法で十分かどうかを、さらに検討していただきたいというのが1つです。
もう1つの点は、アメリカのディスカバリーで必ず問題になってくるのが、弁理士、弁護士と依頼者とのアトーニー・クライアント・プリビレッジの問題です。証拠収集方法が容易化していきますと、あらゆる証拠を出さないといけないということで、権利の抵触に関するものも出すようになってきます。ここで2番目の問題として申し上げたかったのは、1つは、イギリスのコピーライト・リライト・パテント・アクトという中には、具体的にアトーニー・クライアント・プリビレッジに関することが280 条の中に書いてあります。これはわざわざイギリスのパテント・エージェントのために立法したわけですけれども、そういうものが具体的に立法されている。それから、国際会議をやったときに、いくつかの国では、依頼者と代理人との間のやりとりについては、秘匿特権、要するに代理人も出さなくていい、依頼者である本人も出さなくていい、そういう特権が認められていますが、あなたの国ではそういうことが認められていますかということが非常に大きな問題になります。これはアメリカのような大きなマーケットでディスカバリー制度があって、その制度に対応できる制度が各国にあるのかということが大きな問題になっているわけです。
今日申し上げたかったのは、この問題は、経団連、それから知財協、この両方の代表の方が、弁理士、弁護士と依頼者間の秘匿特権を認めるべきである、特に知財訴訟においてはそういう制度を認めるべきであるという提案をされておられるのですが、具体的にどこにもそういうものが、文章上出てこない、ディスカッションもされていない。というのは、たぶん、現行法で十分カバーされているので必要がないと考えられていると思われるのですけれども、ここは知財訴訟検討会の場ですので、国内だけではなくて、世界的にそういうことが出てきた場合、なおかつディスカバリーというものが入り込むかもしれないという場合、必ずその問題が出てくるので、今回議論をしておくべきと考えます次第です。
申し上げたいのは、安心して依頼者が代理人に相談に来られる。それは常に保護されて、開示義務が課されていない、そういう制度を、是非ここで取り上げていただきたい。特に外国法制研究会がございますので、外国でどういうふうにやっているのか。日本でもそれを議論しておく必要があるのではないかということを提案させていただきたい。
○伊藤座長 分かりました。ただいまの御発言の前半部分はF案のような考え方で、後半部分については、プリビレッジと言いますか、秘匿特権についてここで検討をしてはいかがかという御意見でございますね。
○村木氏 はい。
○近藤参事官 私の方から質問ですが、現行法上、民事訴訟法の220 条にあるのは、文書提出命令の問題であれば、この4号の2、所持者の利用に供するための文書ということで、広く今言ったクライアントの関係の通信とか、そういうものを広く含んで、弁護士、弁理士だけではなくて、ほかの士業の人とか、士業以外に消費者の相談員の方とか、そういう方たちもすべてそういうもので保護していくというのか日本の構造だと思うのです。アメリカなどで、プリビレッジという形で保護している法制もありますけれども、法制自体全然違って、日本ではそうやって保護されていて、アメリカの関係で違う法制になっているから不安であるというようにも聞こえるのですが、その点はどうでしょうか。
○村木氏 そういう点もなくはないですが、というより、知財訴訟検討会ということもあるし、知財における紛争、知財における侵害関係、知財における依頼者と代理人の関係はどうなるか。それが訴訟の場においてはどうなるのかということを検討しておくことが必要であると申し上げたくて。今おっしゃった場合も、たぶん大多数はそうであると思いますが、所持者の利用に供するための文書も具体的には内容を規定されていない。ですから、依頼人にしても、今の規定だけでは不安を感じるということでございます。そこを一度、知財における特殊性があるのではないかということで、議論していただくことを希望します。
○伊藤座長 そうしますと、今の後半部分の、秘匿特権についての検討をしてほしいという御要請の部分につきましては、どういう形でそれを取り上げることができるかどうかを含めまして検討課題とするかどうかについて、恐縮ですが座長代理の中山さんと私にお任せいただけますでしょうか。委員の方、その点それでよろしいでしょうか。
○加藤委員 基本的には、是非取り上げる方向で前向きに御検討いただきたいということを一言発言いたします。
○伊藤座長 そのほかいかがでしょうか。日本版ディスカバリー、なお御意見、御質問があればお願いいたします。
そういたしますと、これも具体的な考え方として、F案、その他のお考えが出されておりますけれども、なお議論する余地が残されていると思いますので、今後、継続するということで次の予定に移らせていただきます。
そこで、本日の議論で一応、当検討会の検討事項につきましては、おおまかな検討はひとわたり行われたということになろうかと思います。そこで、これまでの検討結果を踏まえて、いわゆるパブリックコメントの手続を行ってはどうかと考えております。詳細については事務局に検討してもらっておりますので、その手続などについて説明をお願いいたします。
○近藤参事官 この知財訴訟検討会では昨年10月の立上げ以来、司法制度改革審議会の意見及び知的財産戦略大綱を踏まえ、知的財産関連訴訟の充実・迅速化の観点から、皆様にいろいろな検討をお願いしておりましたが、今後の検討での審議を更に深めていくために、これまで皆様に御意見、御議論をいただいた検討会における具体的な方策案や、これに対する委員の皆様の御意見等を広く御紹介して、各方面から御意見を募ってはどうかと考えております。
具体的には来月、5月から約1か月の間、司法制度改革推進本部事務局のホームページほかの媒体においてパブリックコメントを求めて、寄せられた御意見については、6月の検討会で委員の皆様に御紹介させていただくということを予定しております。
○伊藤座長 パブリックコメントの手続、一般の方の意見を伺うという意味で重要な意味があると考えておりますが、ただいまの事務局からの説明につきまして、何か御質問、御意見等ございますか。
それでは、そういうことで進めさせていただいてよろしいでしょうか。
○荒井委員 何か具体的なものを聞くんですか。それとも単に知財訴訟の在り方という一般的な聞き方になるんですか。
○近藤参事官 今考えておりますのは、今までの検討会の資料がございまして、資料は膨大ですけれども、その中での具体的な方策について聞いているところがございます。そこをまず切り出して、そこについて意見をくださいと。それの理解のために、我々が検討した検討会の資料、プラスこの検討会で出た意見等を踏まえ、こんな意見が出ましたということを付加して、その説明をした上で、それについて意見を聞くという形です。
○荒井委員 結構です。
○伊藤座長 それでは、そのような形で進めさせていただきます。
続きまして、3月20日に外国法制研究会が開催されましたので、その報告と本検討会の予備日の案内、これを事務局にお願いいたします。
○近藤参事官 ただいま座長から御紹介ありましたとおり、3月20日に第4回知的財産訴訟外国法制研究会が開催されました。研究会では事前に各メンバーが作成した報告書の素案に基づいて、侵害訴訟における無効の判断と無効審判の関係等について調査発表が行われ、活発な意見交換がされました。
次回の検討会での発表に向けた準備をするため、5月9日再度研究会を開催することとなりました。
また、従前から委員の皆さんにお願いした日程調整の結果、12月と1月に当検討会の予備日を設定させていただきました。お手元の資料5のとおりとなっております。12月は12月15日月曜日1時半から5時。1月は1月26日月曜日1時半から5時というふうになっております。
○伊藤座長 ただいまの点、よろしいでしょうか。
それでは、これをもちまして、第7回知的財産訴訟検討会を閉会させていただきますが、次回の本検討会の日程について事務局から連絡がございます。
○近藤参事官 次回、第8回の本検討会は5月20日火曜日、午後1時半から午後5時まで、同じこの会議室で開催を予定しております。次回は知的財産訴訟外国法制研究会の研究員をお呼びして、研究結果の報告をしていただく予定ですので、よろしく御参集ください。
また、事前に御連絡差し上げたとおり、5月20日は別途検討会終了後に懇親会を予定しておりますので、御参加いただける方はよろしくお願いいたします。
今日は長い時間ありがとうございました。
○伊藤座長 では、どうもありがとうございました。またどうぞ次回よろしくお願いいたします。