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仲裁検討会(第1回)議事録

司法制度改革推進本部事務局



1 日時
平成14年2月5日(火)13:30〜16:30

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第2会議室

3 出席者
(委員)青山善充、秋吉仁美、櫻井和人、谷口園恵、中野俊一郎、中村達也、本東信、松元俊夫、三木浩一、山本和彦、吉岡桂輔(敬称略)
(事務局)山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、近藤昌昭参事官

4 議題
(1)座長の選出について
(2)議事の公開について
(3)司法制度改革審議会の検討状況、意見書等の紹介について
(4)今後の検討スケジュールについて
(5)仲裁法制に関するアンケート結果について
(6)総則的事項についての検討項目案について
(7)仲裁合意についての検討項目案について

5 議事
(□:座長、○:委員、●:事務局)
【開会、事務局長挨拶】

● それでは、予定した時刻がまいりましたので、第1回仲裁検討会を開催したいと思います。
 本日は御多忙のところ御出席いただきまして、ありがとうございます。
 後ほど、当検討会の座長をお決めいただきますが、それまでの間、私が進行役を務めさせていただきます。
 はじめに、司法制度改革推進本部事務局長の○○から御挨拶を申し上げます。

● 事務局長の○○でございます。どうぞよろしくお願いします。
 仲裁検討会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げたいと思います。
 皆様方には、大変御多忙中のところ、この検討会の参加につきまして、御承諾をいただきまして、大変ありがとうございます。心から御礼を申し上げます。

 この司法制度改革推進本部は、皆様御案内のとおり、昨年12月1日に内閣に設置されたわけでございます。司法制度改革審議会の意見の趣旨を踏まえまして、司法制度の改革の基盤の整備を総合的、かつ集中的に推進し、3年以内を目途に関連法案の成立を目指すことになっているわけでございます。
 この具体的な法令案、あるいはその措置がございますけれども、これにつきましては、最終的には私ども事務局が中心になってやらせていただくということになりますけれども、この仲裁検討会を始めといたしまして、主要なテーマごとに10の検討会を設けておりますけれども、それぞれ有識者によります検討会を開催いたしまして、意見交換を行いながら、事務局と一体となって作業を進めるという方式を取らせていただいております。
 したがいまして、そういう会の性格上、皆様方には、審議会の答申のようなまとめをいただくということは予定をしておりません。しかし、立案作業に関しまして、忌憚のない御意見をお聞かせいただいて、立案の内容に反映できるようにしたいと思いますので、是非よろしくお願いいたします。

 仲裁の現行法は、明治23年に制定された大変古いものでございまして、これと公示催告が一体となって現在残っております。現行の民事訴訟法の制定の際、改正作業からも分離されてしまい、そのまま残ってしまったという経緯があるわけです。かねてから仲裁法の整備の必要性が主張されてまいったわけでございますが、とりわけ昨今の経済活動のグローバル化や国境を越えた電子商取引の急速な拡大、こういうものに伴いまして、国際的な民商事紛争を迅速に解決することが極めて重要になってきており、そのための枠組みを設ける必要があるわけでございます。
 世界的に見ましても、UNCITRALにおいて、国際商事仲裁モデル法が採択されておりまして、それ以後、各国で仲裁法の制定や改正が活発に行われているところでございます。
 一方、国内を見ますと、国内でも紛争のタイプが多様化してきておりまして、一般的な裁判手続以外に、事案や当事者の実情に応じた紛争解決が可能となるように、利用しやすい仲裁制度を整備する必要性はますます高まっている現状でございます。

 このような見地から、司法制度改革審議会の意見におきましては、ADRに関する制度基盤の整備の一環といたしまして、国際的動向を見ながら、国際商事仲裁を含め、仲裁法制を早期に整備すべきであるとされたと承知しているところでございます。
 そこで、この仲裁検討会におきましては、現代社会に適合した国際的にも通用する新たな仲裁法制について具体的な検討をお願いいたしまして、早期の整備を是非実現したいと考えているところでございます。
 そのためには、かなりの頻度で検討会を開催するということになろうかと思います。また、個々の課題につきましても、大変難しい問題も多々あり、また、皆様方には、大変お忙しいとは存じますけれども、このような事柄の重要性にかんがみまして、是非御協力をいただけますようよろしくお願い申し上げます。

 簡単ではございますけれども、以上で挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

● 座ったままで失礼しますが、続きまして、議事の運営や公開の在り方につきまして、検討会の参加者の皆様相互に御議論いただきたいと思います。その間、報道関係の方は一旦御退室をお願いします。

【座長の選出について】

 各委員による自己紹介がなされた後、委員の互選により青山委員が座長に選出され、座長の指名により三木委員が座長代理に指名された。

【配布資料の確認】

□ それでは、最初の議題に入ります前に、本日の配布資料について、事務局の方から確認をお願いしたいと思います。

● お手元に「第1回仲裁検討会配付資料目録」というのがございます。これを見ていただきたいんですが、検討会資料の1〜4、それから参考資料の1〜3、これは事前に送付しているものでございます。

 検討会資料1は「仲裁検討会スケジュール案」。
 それから、検討会資料2の「第1回仲裁検討会議事次第」なんですが、差し替え分を本日席上の方にお配りしておりますので、それを御覧いただきたいと思います。
 それから、検討会資料の3、4は、具体的な総則的事項の検討項目及び仲裁合意についての検討項目案を、それぞれ事前に送付しているところで、あとでこれについて具体的な議論に入っていただきたいと思います。

 参考資料の1は「司法制度改革審議会意見書(抜粋)」。
 2は、同じく審議会の議事録(抜粋)。
 3は、国際商事仲裁モデル法(模範法)条文を抜き出したものを事前送付しております。
 4以降は、今日、お手元に配らせていただいたもので、参考資料4は、主要な国の仲裁法とモデル法の影響というものです。その中で二重丸が付いているものがUNCITRAL自体が模範法を採用したと言っているもので、四角の印が付いているものが、上の方の文献でUNCITRALの影響があったと言われている国の法律です。
 そのほか、無印のものが、UNCITRALの影響がないというわけではございませんけれども、そういう形では確認ができなかったというものです。非常にUNCITRALが各国の立法に影響をしているということを示す資料ということでお配りしております。
 参考資料5は、これから見直さなければいけないところがございますので、暫定版ということにさせていただきますが、一番左端にモデル法の条文を置いて、それに対応するニューヨーク条約、それからドイツ法、韓国法、それからイギリス法をそれに対応するような形で置かせていただいております。それによって各国とモデル法の条文との対比が分かるのではないかと思っているところでございます。
 参考資料6は「主要な国内仲裁機関の概要」です。仲裁に関する機関としてどんなものがあるのかという概要をお配りしております。本来であれば統計資料が必要なんですが、ただいま統計の関係については手配している最中ですので、網羅的に調べるのはなかなか難しいんですけれども、2回目か3回目には、代表的なものについては調べてお配りできるのではないかと思っています。
 それから、参考資料7は「仲裁法制に関するアンケート集計結果」というものですが、これについては後ほどまた説明する機会がございますので、その際に言及させていただきたいと思います。

□ 資料はそのとおりありますでしょうか。御確認いただけましたでしょうか。
 それでは、最初の議題といたしまして、当検討会の議事運営に関しまして、議事の傍聴や議事内容の公開の在り方を取り上げます。事務局から御説明をお願いいたします。

【議事の公開について】

 協議の結果、議事の公開について、当面、次の取扱いをすることとなった。

  • 毎回の会議の議事概要及び議事録を作成し、公表する(発言者名は記載しない。)。
  • 報道機関に会場における議事の傍聴を認める。
(報道関係者入室)

【座長挨拶】

□ それでは、これから議論を開始いたしますけれども、最初に御挨拶を申し上げます。
 皆様に御推挙いただきましたので、及ばずながら、私が座長のお役目を引き受けさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。あとは座ってさせていただきます。

 先ほど事務局長の御挨拶にもありましたことでございますけれども、この仲裁検討会に課された任務と言いますのは、司法制度改革審議会の報告書の中でうたわれております、「国際的動向を見つつ、仲裁法制を早期に整備すべきである」という課題に応えることでございます。
 仲裁はADRの中では最も歴史も古く、制度としては確固としたものでございます。しかし、御存じのように、日本の仲裁法は、これも先ほどお話がありましたけれども、明治23年に制定されたまま、つまり民法よりもっと古い法律で今日まで実に110年、3世紀にまたがりまして、ほとんど実質的な改正はなされずに今日に至っておる。その改正の必要性は前から指摘されているところでございます。

 そして、私の知る限り、これまでに2回、法制審議会の場でこの仲裁法の改正に着手すべきかどうかということが問題になったことがございます。最初は、平成元年に民事保全法が成立した後の民事手続法の改正として何を取り上げるかということが議論された時でございます。平成2年でございます。この時は、民事訴訟法と並んで、倒産法と仲裁法も候補に上がりましたけれども、結局、国民のニーズが最も高いのは、民事訴訟法だということで、民事訴訟法の改正が行われたわけでございます。
 2回目のチャンスと言いますのは、その民事訴訟法の全面改正が終わりました平成8年でございます。この際には、次は仲裁法の整備ということが候補に上がったわけでございますけれども、折からの不況の進行に対処するためには、早期に倒産法を整備すべきだということになりまして、ここでも仲裁法の改正は見送られました。私は法制審議会の席上では仲裁法、仲裁法と言ってまいりましたものですから、大変悔しい思いをしたことがございます。
 したがいまして、私の気持ちでは、今度この推進本部の下に仲裁検討会というものができて、仲裁法を整備するということになりましたのは、三度目の正直だという気がいたします。このような役回りになりましたことについても、いささか感慨を禁じ得ません。

 それで、前2回は、取り上げるか否かはともかくとして仲裁法の改正を議論したのは、法制審議会という検討の場でございました。今度はこの推進本部の検討会というところで仲裁法の改正を取り上げるということになりまして、これの意味を私なりに整理して考えました。
 結論的には、2つの理由から、この検討会で行うのが妥当ではないかと思っております。1つは、形式的な理由でございますけれども、これまで仲裁法の改正は法制審議会の民事手続法の関係の部会ですべきであると考えられていた根拠は、何と言っても、仲裁法が民事訴訟法第8編として、民事訴訟法典の中に含まれていたということがあるだろうと思います。平成8年の民事訴訟法の改正で、御存じのように、公示催告手続と共に、民事訴訟法から独立いたしました。したがって、民事訴訟法部会とか、民事手続法部会のようなところでこれをやらなくてもよくなったということになります。
 第2の理由は、これはもっと実質的な理由でありますけれども、法制審議会というところは、やはり法律のプロたる法曹三者が中心になって議論がなされるところでございます。従来の経験からそうでございます。しかし、仲裁手続は常に国家の裁判所と関係する場面だけではありません。むしろ裁判と関係なく、仲裁手続がどんどん進行する場面がたくさんございます。そういう場面で仲裁法の使い勝手がよいものであるためには、法曹ももちろん必要でございますけれども、法曹よりもむしろ仲裁の実務の経験のある専門家に入って、一緒に議論していただいた方がよい。その意味で、私は現在のメンバー構成の検討会というのは、仲裁法審議の場として最もふさわしいと思っております。

 今メンバー構成のことを言いましたけれども、本日、ここにお集まりいただいている委員、あるいは関係機関の方々はいずれも、仲裁法、又は仲裁実務について、深い造詣と経験をお持ちの方ばかりとお見受けいたします。
 また、幸いなことに、仲裁法の立法につきましては、御存じのように、最近国際的にも、あるいは国内的にもそのモデルが提示されておりますので、私といたしましては、各委員の見識と経験、及びこれまでに蓄積された国際的、あるいは国内的なモデルを基礎といたしまして、最も望ましい形の仲裁法を制定して、与えられた任務を果たしたいということに情熱を燃やしております。どうぞよろしく御協力のほどお願いいたします。

 ちょっと長くなって恐縮でございましたが、まず議論の前提といたしまして、仲裁法制の整備に関し、司法制度改革審議会において、どのような議論がされてきたのか、どのような意見をとりまとめてきたのかということを最初に事務局から御紹介いただきたいと思います。

【司法制度改革審議会の検討状況、意見書等の紹介について】

● この検討会では、審議会の意見がどうだったのというのが出発点として非常に大切ではないかと思いまして、冒頭で紹介させていただきます。

 仲裁検討会参考資料1を御覧ください。
 ここでは、司法制度改革審議会意見書の抜粋をお手元に配らせていただいております。そこでは、民事司法制度の制度的基盤の整備としては、裁判手続だけではなくて、ADRの拡充、活性化が非常に重要なんだという視点からの意見がまとめられておりまして、8(3)のADRに関する共通的な制度基盤の整備というところで、その枠囲いの○の一番上ですが、「国際的動向を見つつ、仲裁法制(国際商事仲裁を含む。)を早期に整備すべきである」という形でまとめられております。
 本文の枠囲いの下のところを見ますと、「ADRの共通的な制度基盤に関し、まず、仲裁法制については、現在も明治23年制定の法律が、新民事訴訟法制定の際の改正作業から分離され、『公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律』としてそのまま残されており、国際連合国際商取引法委員会における検討等の国際的動向を見つつ、仲裁法制を早期に整備すべきである。その際、経済活動のグローバル化や国境を越えた電子商取引の急速な拡大に伴い、国際的な民商事紛争を迅速に解決することが極めて重要となっていることから、国際商事仲裁に関する法制をも含めて検討すべきである」と記されております。
 意見書では、そのほか国際化という項目でも仲裁法制を整備すべきであるというふうにうたわれているところでありまして、このような観点から、意見書がとりまとめられております。

 それから、仲裁検討会参考資料2ですが、司法制度改革審議会の議事録の中から、仲裁の必要性について、どういう発言があったのかということを抜き出させていただいております。(2)に「仲裁法制の具体的な内容に関する提言」というものがございます。そこで記載されている法務省民事局長、それから、竹下守夫会長代理等の発言内容については、これからの審議についても、非常に参考になるんではないかなと思われますので、お目通ししておいていただければと思います。

 【今後の検討スケジュールについて】

□ それでは、次に今後の検討スケジュールでございますけれども、おおよそどんな見通しになるかということについて、これも事務局から御説明をお願いいたします。

● スケジュールにつきましては、私の方から御説明させていただきます。
 スケジュールの前提といたしまして、検討事項の確認でございますけれども、仲裁検討会資料1というのをお手元にお配りしてございますので、これを御覧いただきたいと思います。

 仲裁検討会資料1は検討会のスケジュール案でございますけれども、この第1回から第4回までの検討事項、これが、これから検討をお願いする主要な事項ということになります。順に読み上げさせていただきますと、総則的事項について、仲裁合意について、仲裁人及び仲裁廷について、仲裁廷の管轄(権限)について、仲裁手続の進行について、仲裁判断、不服申立てについて、更に仲裁判断の承認及び執行に関する問題、全体に関連いたしますけれども、準拠法の問題。その他のもろもろの問題があるということでございます。
 この分類につきましては、いろいろな御意見があろうかと思いますけれども、モデル法を始めとする最近の立法例の章立てなどを参考にしたものでございます。
 ただいま申し上げたように、議論の対象は仲裁手続及びこれに関連する法令全般にわたります。総論から各論まで、大変幅広い検討事項になるわけでございます。
 こうした具体的な検討項目につきましては、別途、更に詳しく検討会の都度、事前に送付したいと思っております。

 そこで、こうした検討を行うためのスケジュールでございます。現段階で実は事務局の方で、司法制度改革全般にわたる推進計画というものを作成中でございます。したがって、これが確定しないと、全体のスケジュールについて確実なことは申し上げられないわけでありますけれども、当面、仲裁法につきましては、平成15年の通常国会に法案を提出するということを視野に入れて立案作業を進めてまいりたいと考えているわけでございます。
 そこから逆算いたしますと、本年の末までには、法律案の内容をおおよそ確定する必要があるということになるわけであります。

 そこで検討会でございますけれども、とりあえず合計10回ほどの開催を予定させていただきまして、7月までに、先ほど御覧いただいた検討会資料1の個々の話題について御検討いただきまして、その後、具体的な立案の内容も含めて御議論をお願いしたい、このように考えております。
 この資料1にありますように、まず、4月まででありますけれども、本日を含めまして4回の検討会を開催いたしまして、先ほど申し上げました検討事項全般にわたって、ひととおり自由な御議論をいただきたいというように考えております。これを「一読」というふうにこの資料では表示してございます。
 その後7月までの間に、2回あるいは3回の検討会を開催いたしまして、これらの事項全般について、再度御検討いただき、議論を深めていただきたいと思います。あるいは、その際に漏れた論点などについても、補充的な御議論をお願いしたいと。これを「二読」と資料では表示しているところであります。
 そして、その後は、それまでの検討の結果を踏まえて、事務局側でたたき台の立案をいたしまして、これを委員の皆様方に御覧いただきまして、このたたき台にまた検討を加え、議論を進めていっていただきたいと考えております。

 具体的スケジュールにつきましては、まだまだ不確定な要素もございますので、折々、必要に応じて話をさせていただきたいと考えます。
 大変タイトなスケジュールでございます。事前にいろいろな御準備をお願いすることもあろうかと思います。御多用中、誠に恐縮でございますけれども、なにとぞよろしくお願いいたします。

□ ただいま事務局から、全体のスケジュールについてお話がございました。平成15年の通常国会に法案を出すことを視野に入れて検討を進める。そのためには、今年末までには、法案の形が見えてこないと困るということから逆算して、今のようなことでございます。
 そこでお手元にございますけれども、第7回までのスケジュールをあらかじめここで御了承いただきたいと思います。ところが、事務局に事前に伺ったところ、4月1日と6月24日というのは、ちょっと御都合の悪い方がございます。そこで4月1日と6月24日は変更させていただきたいと思っておりますが。

○ 4月1日は変更できましたので、私の方は結構でございます。

□ それでは、4月1日の午後1時半は、それでよろしゅうございますか。
 それでは、4月1日の1時半から5時まではそのままにして、6月24日は、○○委員が、国連の方にこの関係で出張されるという予定が急遽入ったということでございますので、6月11日の火曜日の1時半から5時までというスケジュールはいかかでございますでしょうか。

(「結構です」と声あり)

□ よろしゅうございますか。それでは、6月24日に代えて、6月11日火曜日1時半から5時までということにさせていただきたいと思います。
 なお、こういうスケジュールで今後進行させていただきますが、何か急用で出られないということもあるかと思います。その場合には、どうしたらいいのか。何か事務局の方でお考えありますか。

● 仲裁検討会資料1の第6回を変更させていただいて、あとはそのままという形で一応確定をさせていただきたいと思います。ただ、急遽出られなくなったという方がいらっしゃった場合は、その方は何らかの形での発言の機会の保障という意味で、書面で提出をしていただいたり、次回の期日に補足をしていただくということで御了承願いたいと思います。

□ それでは、そういう形でよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、6月24日の分を6月11日に変えるということ以外は、資料1のとおりに確定させていただくことにいたします。
 次に、本日の資料の概要は先ほど説明がございましたけれども、そのうちで仲裁法制に関するアンケートにつきまして、更に事務局の方から御説明をお願いいたします。

【仲裁法制に関するアンケート結果について】

● 仲裁検討会参考資料7というのを御覧いただきたいと思います。
 仲裁法制に関するアンケートを、最近、仲裁に関する論文等を発表された研究者を中心として、また、ユーザーサイドとしての企業、消費者団体等、総数として101名の方にアンケート用紙を発送いたしました。そして、78名の方から回答をいただいております。その結果について、とりまとめをいたしました結果が、その仲裁検討会参考資料7というものでございます。
 今日席上にて配布させていただきますので、今日検討する事項、仲裁合意についてまでを若干詳しめに説明をさせていただいて、あとは簡単に説明をさせていただきたいと思います。

 まず、めくっていただきますと、総則として、「検討の基本的な視点について」として、「模範法をベースとして、我が国の事情、現代の社会経済への対応、UNCITRALにおける近時の検討等に照らし、どの部分について修正、変更等を施すかという観点から議論することはどうか」と、モデル法を土台として検討することはどうかということですが、それはほとんどの方がそういう方向で検討すべきではないかという、賛成意見が非常に多くございました。

 それから「立法形式等について」として、国内仲裁と国際仲裁、民事仲裁と商事仲裁というふうに分類されますが、立法形式を単行法的な形にするのか、民事・商事を分けるのか、国内・国際を分けるのかということについての立法形式について聞いたのが2番目です。
 それについて、国内・国際、民事・商事を問わず統一的な規律にした方がいいのではないかというのが非常に多く63名の回答があったということです。
 反対は少なくて、その他の意見のほうが多かった。その他の意見の中にも、基本的には賛成というふうにとらえるものも多かったように思います。

 次に「仲裁合意」についてですが、「1 仲裁適格(仲裁可能性)について」どのように規定すべきかというものを、4つの肢に分けて、こういう形ではどうかというので提示したアンケート結果です。これは非常に分かれております。
 どういう肢を想定したかと言いますと、1番目に「一定の法律関係についての現在の又は将来生ずべき紛争について仲裁可能性を求めるものとする考え方」。
 2番目として「仲裁による解決が可能である事項に関する一定の法律関係についての現在の又は将来生ずべき紛争について仲裁可能性を認めるものとする考え方」。
 3番目は、ドイツ法を参考にしまして、「すべての財産上の請求が仲裁契約の対象となるとし、非財産上の請求については、当事者が和解することができるものについてのみ仲裁適格を認めるものとする考え方」。
 4番目といたしまして、「当事者が和解をすることができる権利又は法律関係についてのみ仲裁可能性を認めるものとする考え方」。
 この4つの肢に分けて意見を聞いたところ、一番多かったのは、4番目の肢の和解なんですが、意見としてはかなり分かれたという結果になっております。これは本日、後ほど御議論をしていただければと思います。

 それから「仲裁契約の独立性について」が2番目の問立てとしてあります。
 仲裁契約の独立性というのは、主たる契約が無効であり、又は取り消された場合においても、仲裁契約は当然にはその効力を失わないとすること。その人が意思能力がなければ、本体契約と仲裁合意、両方とも無効になるというのは、当然のことなんですが、これはそれぞれの合意について別々に考えるということで、主たる契約が無効だから当然に無効とはしない。これは今の模範法を採用しているところでは、あまり異論のないところだと思います。これについてはやはり賛成が圧倒的に多かったということです。

 次に「仲裁契約の書面性について」ですが、書面によることの要否については、今のニューヨーク条約が、外国仲裁判断の執行について書面を要するという体制にしていることもあると思うんですけれども、これについては賛成が圧倒的です。
 ただ、書面性の内容について、今、UNCITRALの委員会の方で議論されているように、それをどこまで緩和していくのか。特に11ページのイの「電子メール、磁気ディクス等を用いて作成保存された電磁的記録及びこれに準ずる方法により一定の事項を記録したものも書面としての要件を満たすものとすることはどうか」ということについて、今、議論されているところと伺っております。それについても賛成が多かったというふうに結論として出ております。
 ほかの書面性の内容についてのアとかウについては、今のモデル法の中に規定があることでして、それについても賛成が非常に多かったという結果になっております。
 それから、引用についてどのように考えるべきか、これは自由記載とさせていただいたところ、主な意見として資料に記載してあるような意見が出てきているということで、参考にしていただければと思います。
 その中で、若干目を引くものとして、後ろから2つ目のBtoCのような場合について、別に考えるべきではないかという問題提起もあったということは指摘させていただきたいと思います。

 本日、議論するところは、アンケートの内容としてはそこまでの関係でして、ほかのところについては簡単に説明させていただきます。
 「仲裁契約の準拠法について」は規定をすべきであるという意見が多かったんですが、その準拠法の内容をどうするのかについては、いろいろ意見が分かれています。ただ、分かれていると言っても、当事者自治を基本として認めて、その上で合意がなかった場合について、それを日本法にするのか、仲裁地にするのかという形で、争いがあるのかなと思います。

 それから「仲裁締結能力について」、それから「方式」の問題、そういうものについてどうするかということについて、ここのところも準拠法の一環の問題としていろいろ意見があったところです。

 「仲裁可能性について」も、非常に難しい議論がございますので、第4回目のときに十分議論を尽くしていただきたいと思います。

 24ページ目のところでは「仲裁廷の管轄」についてですが、まず、暫定的保全措置について、それを認めるかどうか。それから執行力を付与するかどうかということが議論されております。
 それから、その2つ目の問題として、コンペテンツ・コンペテンツと言われる、仲裁廷自身に仲裁判断の権限があるかどうかということについてのアンケートを記載しております。これについては、不服申立ての手段をどうするのかということについて、むしろ意見が分かれているというところかと承知しております。

 それから、仲裁手続の方の関係については、問題となり得るのは、やはり39ページの「仲裁手続の準拠法について」をどう考えるのかということについて、いろんな意見が分かれているところなので、これについても慎重に議論をしていただいた方がいいのかなというふうに思っております。

 45ページなんですが、「第7 仲裁判断に対する不服申立て」。それと密接に関係する47ページの「第8 仲裁判断の承認及び執行」。ここでは、その構造自体をどうするのか。現行法では、執行するためには、判決手続によらなければいけない。それがあまりにも重過ぎるのではないかという議論がございます。それを具体的にどういう形にするのかということについては、まだ、はっきりとした形は見えておりませんので、これについても十分議論を尽くしていただく必要があるかなと思っております。

 「その他」のところで、51ページの「2 仲裁と公開について」で、これをアンケートとして聞いた趣旨としては、仲裁の活性化ということがございましたけれども、国内の仲裁がなかなか使われていないというのは、仲裁自体について、どういう判断をしてもらえるかよく分からないという意見があるところなので、それについて、ある一定の限度で公開というものを仕組むというのは考えられるかどうかという趣旨でアンケート調査をしたところです。これについてもいろんな意見があったということを御紹介させていただきたいと思います。
 アンケート結果としては以上です。

□ どうもありがとうございました。今の参考資料7の御説明につきまして、何か御質問ございますでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは、早速、具体的内容についての御議論をいただきたいと思います。事前に御案内をいたしましたとおり、本日は総則的事項と、それから仲裁合意に関する事項について御議論をいただきたいと思います。第1回の仲裁検討会から、いきなりこういう内容に入った議論をするのは恐縮でございますけれども、先ほどのスケジュールの御説明にもありましたように、大変タイトなスケジュールでございますので、なるべく時間を有効的に使わせていただきまして、御議論をいただきたいと思います。
 まず総則的事項ですが、検討会の資料3でございます。これについてまず事務局から御説明をいただきたいと思います。

【総則的事項についての検討項目案について】

● 仲裁検討会資料3を御覧いただきたいと思います。
 「1 検討に当たって参照すべき法令について」というのがございます。ここに書かれておりますように、それから先ほどのアンケート結果にもありますが、仲裁法制の現代化及び国際化を図る見地から、国際連合国際商取引法委員会の国際商事仲裁模範法、モデル法と言われているものですが、それをベースとして、我が国の事情、現代の社会への対応の在り方などを勘案しつつ検討を進めることはどうかということで提案させていただいております。
 現行法として仲裁法があるわけですが、これは明治23年に制定されているもので、これについてはいろんな欠陥があるということを指摘されております関係から、むしろ現行法をベースとして議論を進めるよりは、このモデル法をベースにして議論を進めた方が効率的ではないかという意味でこういう提案をさせていただいております。

 それから「立法形式及び対象とする仲裁の種類について」、一括して御説明したいと思いますけれども、先ほどのアンケート結果でも、統一的な形ではどうかというのがございました。今、御説明したモデル法では、国際商事という形でくくっているんですが、これは、国連の検討された委員会が国際商事のことを扱う委員会ですので、国際商事という形のくくりを取っている。商事については、脚注がございまして、非常に広く対象にしているということもございますので、そういうことからすると、商事・民事を区別するという技術的な困難さ、それから国内・国際を記述する技術的な困難さということもございますが、規定の内容ぶりからすると、それにとらわれないで記述するということでもよろしいんじゃないかと一方で考えられるところです。諸外国の例でもそういうところもかなり多いようです。これについては、コメントのところで書いていますが、一読で最後まで終わってから最終的なことについてまた議論を戻ってくればよろしいかなと思うんですが、この段階でそれぞれの感想的なものもいただければと思います。

□ 今、御提言ありましたように、2つの問題をまず自由討議の形で御意見を賜りたいと思います。
 1つは、立法の方法論と言いますか、何を出発点として立法するかというのが1つ。
 2番目は、立法の形式と対象でございます。この2つは関連もいたしますので、まとめて、御意見のある方はどうぞ自由におっしゃっていただきたいと思います。

○ まず、第1の「検討に当たって参照すべき法令について」ですけれども、冒頭に座長の方から御説明がありましたように、現行の我が国の仲裁法は足掛け3世紀にまたがる、主要国では世界最古と言われている仲裁法でして、内容的にも非常に、現代から見ると維持し難い規定がたくさんあると言われております。
 我が国が当時モデルにしましたドイツでは、既に大幅な改正がなされておりまして、母法国にはもはや存在していないという状態になっております。
 ドイツの改正に当たっては、UNCITRALのモデル法を全面的に採用いたしまして、ドイツ国内でも、これは改正ではなくて、実質は新規立法であるというふうに言われております。
 そうしたことを考えますと、現行法をベースにして、どの条文を手直しするかという形で議論を進めていくのはあまり生産的ではないと思います。むしろモデル法をベースにして、どの部分を採用し、どの部分については修正を加えるかという観点から議論していくということでよろしいのではないかと思います。
 比較法的に見ましても、1985年にモデル法ができて以来、非常に多くの国で仲裁法の改正や、あるいは新規立法としての制定がなされましたけれども、そのほとんどの国がモデル法を採用するか、もしくは強い影響の下に立法を行ってきていることでもあります。

 それから、2番目の「立法の形式及び対象とする仲裁の種類について」というところでございますが、結論から申しますと、国内仲裁と国際仲裁、あるいは商事仲裁と民事仲裁は別法典とするのではなくて、同一の法典で規律をすべきだと考えております。

 ただいま、事務局から御紹介がありましたように、モデル法が国際と商事ということで限定をしておりますのは、UNCITRALという機関がその部分にしか権限を付与されていないという、UNCITRALの制約に基づくものでありまして、それと同じことを我が国の国内の法律で考える必要はないと考えられます。
 また、国内・国際に関して言いますと、現在、UNCITRALでは新たに調停のモデル法をつくっておりまして、この局面でもUNCITRALの権限から国際調停に限るという規定ぶりにせざるを得ないということで議論が進んでいるんですけれども、具体的に国際と国内をどう仕分けるかという議論は紛糾を極めておりまして、国際と国内で明確な線を引くというのが技術的にいかに難しいかということが改めて認識されております。
 更に、無理をして線を引いてみても、現在、世界的には国内仲裁と国際仲裁で、原理原則で、実質的に異なる部分はないと言われておりまして、別な法典をつくるほどに差異がないということが徐々に認識されておりますので、この意味でも別法典をつくる必要はないと考えます。

 ごく一部の技術的な部分について、国内固有の規定を置くという余地はございます。例えば後から議論になるかもしれませんが、消費者保護のような問題を含めまして、国内の産業政策とか労働政策とか競争政策といった、国内固有の事情に基づく政策が反映されるべき部分につきましては、別な規律が必要な部分もないとは言えません。その部分に関しましては、その部分に関する特則を設けるという形で対処は可能かと思います。

 また、商事と民事の関係ですけれども、これもモデル法では先ほど事務局から御説明があったように、フットノートで商事とは何かということが記されておりますけれども、そこには非常に長いページで付表が上がっておりまして、それでもしかし商事と民事の区別が十分ではないという批判がなされております。
 また、モデル法もそうですが、諸外国で商事というときは、我が国の民事のほとんどを含む概念として使われることが多くて、実質的に商事から外れるのは、家庭事件にほぼ限られると言っても過言ではないわけでございます。この家庭事件の部分というのは、仮にこれを議論するとすれば、それは仲裁適格の部分で議論することも可能ですから、その意味でも、区別の必要はあまりないと考えています。

 以上、長々と申しましたが、結論としましては、モデル法を採用し、国内・国際、商事・民事の区別は法典としては設けないということでいかがかと考えます。

□ どうもありがとうございました。どうぞほかの委員の方。

○ 今、○○委員がおっしゃったのとほとんど同じですが、仲裁機関として若干付け加えますと、諸外国から日本の仲裁法はどうなっているのかということをよく聞かれるわけでありまして、仲裁の拡充・活性化という点からいたしますと、やはりこのUNCITRALのモデル法を中心ということで。そして、先ほどおっしゃったことですが、特に消費者保護等で必要があれば、それこそ英国のように、国内の問題について規定すればよいと思います。やはり国際商事仲裁中心のものから入っていただきたいと思っております。

○ 私も全く結論は同じでございます。若干補足的にお話しさせていただきますと、日本の仲裁は、国際実務に携わっている立場から申し上げますと、非常に遅れているという感を持っています。実務もそうですけれども、法律の分野でも、日本の仲裁法というのは、十分な判例の蓄積がないと言って過言ではないと思うんです。
 片や先ほども話しましたように、諸外国の立法を見ますと、イギリスのような非常に伝統のある判例の蓄積のある国は、その判例を基にして、制定法をつくったものというのがあろうかと思いますけれども、そういった一部の国を除いて、仲裁後進国という国は、シンガポールを含めて、このUNCITRALをモデル法として採用しているというのが現状でございます。
 したがいまして、私としては、出発点としては、UNCITRALのモデル法をベースにすべきだろうというふうに考えております。

 特に仲裁と言った場合には、国際仲裁というものが相当部分その対象になるかと思います。したがいまして、この国際仲裁という観点から申し上げますと、やはり外国のユーザーから、外国企業から見まして、理解のしやすい、また予見性のある法律というのは必ず必要であります。
 そういった観点からしますと、やはりまずUNCITRALを採用するということが適当かと思います。もちろん、UNCITRALも1985年につくられたものでございますが、そのまま十数年以上経っておりますから、オーバーホールが必要になるという部分はあろうかと思います。そういっただめな部分はだめな部分で適宜改めていくと。今、UNCITRALの作業部会でも、そういったことが一部されているということでございますが、まずは国際的なスタンダードに我が国の仲裁法を合わせる。そこを出発点として、適宜必要な改正も将来やっていくというスタンスで臨むべきであろうかと思います。

 あと、商事と民事の関係につきましては、これも繰り返しになりますが、その線引きは非常に難しいと。今は個人で、オンラインでショッピングをして、紛争が生じるということは十分あるわけで、そういった、渉外的要素がほとんどないという紛争は皆無に等しいと言っても過言でないような状況だと思いますので、したがって、商事、国際というものは分けない。
 民事の件につきましては、先ほど○○委員がおっしゃられましたような、いわゆる消費者保護という観点から、ドイツのような、消費者保護の部分を特則という形で仲裁法で設けるということは、手当てする必要はあろうかと思います。
 最後に1点なんですが、私が過剰にこだわっている部分かもしれませんが、総則的事項として規定すべき事項として、適用範囲があるかと思います。いわゆる属地主義というのがUNCITRALの立場でございます。したがって、UNCITRALをベースにして議論をしていく場合に、まず属地主義という形を取るのかどうかというところは議論して、取るということであれば、これは総則にどの条文の規定を補足して適用させるか、仲裁地と連結させるかというところは、総則の部分で適用範囲としての規定を設けるべきだと考えております。

□ どうもありがとうございました。ほかにこの点につきまして、いかがでしょうか。

○ UNCITRALをベースにしてという点、あと国内・国際を分けずにやる、これまでの御発言とも全く同意見なんですが、最後に○○委員が言われた、日本が仲裁地の場合にだけ適用するように、総則的事項で適用範囲の規定を議論しておいた方がいいだろうという点ですが、十分考え得るところだろうとは思うんですが、やはり準拠法との関係が一番大きいので、準拠法について議論するときにそこをやって、もし必要だとあれば、後からここに規定を設けることも考えられる。こういうふうにした方がいいんじゃないかと思うんです。

● 規定ぶりの関係は、現在は考えていただかなくても結構かなと思うんです。今、御指摘のように、適用範囲の問題というのは、手続の準拠法との密接不可分な関係がありますので、第4回目の準拠法のところで自由なディスカッションをしていただいて、それが三読あたりになってくると、どういう規定ぶりにするのかというのを具体的に御議論いただくという形で、今のところはイメージとして思っております。
 また、準拠法のところで、○○委員からいろいろ御意見を伺って、そこのところでどうするのかということを議論していただければと思います。

□ ほかにこの2つの問題について御意見はありませんか。

○ 国内仲裁の関係で1、2点話が出ましたけれども、とりあえず参照すべきものとしては、UNCITRALをベースにということでよろしいんじゃないかと思います。レジュメのほうでも、我が国の事情とか、現代社会の多様な在り方等を勘案しつつと配慮されておりますので、後々各項目ごとに検討する中で、先ほど来、○○委員がおっしゃっているように消費者の保護等については私の方も非常に重大な関心は持っておりますけれども、そのあたりに配慮が行くのであれば、検討のやり方としては、これでよろしいのではないかと思います。

□ どうもありがとうございました。よろしゅうございますでしょうか。

● 検討の在り方として、こういう方向でいいんじゃないかというのが皆さんの御意見だと思うんですけれども、先ほど出ていた国内の特則的なものと言うか−−消費者保護的なものというのは具体的に出てきたんですけれども−−それについて、もうちょっとイメージ的なものを開陳していただければと思うんです。

○ 一番大きいのは、これも今日のこの後の議論で問題になる仲裁合意の方式、書面、独立性の要件との関係で、消費者と企業との間の取引、いわゆるBtoC取引については、国際商事仲裁の世界の考え方とは必ずしも同じにはいかないだろうと考えております。
 これは仲裁の世界の話を超えて、我が国の議論で言いますと、約款による契約の拘束力のような問題とも密接に結びついてくるわけですけれども、企業の側が一方的に決めた契約の書式の中に仲裁条項も入っている、それを消費者が丸のみの形で合意したということにさせられるというケースがございます。そのような場合には、お互いに契約条項を逐語的に詰め合う国際商取引の世界の話とは、同じ議論は必ずしもできないと考えております。ただ、この問題は、今日この後議論されることですから、これ以上はこの場では差し控えます。

● そのほかに特則的なこういうものは考えられるんじゃないかというのがあったら、項目だけでも出していただければと思います。

○ あと外国の立法例の中には、仲裁廷の人数の問題で、国際仲裁はデフォルト・ルールが3人で国内仲裁は1人という形で規定をした例もございます。ただ、こちらの方は結局、私が冒頭申しました国際仲裁と国内仲裁の線引きをしなければならないということで、個人的にはあまりこういった立法には賛成しておりません。法律としては、3人なり1人なり、どちらかを標準にして、それが不都合な場合には、常設仲裁機関の仲裁規則なり当事者の合意で変更するという形の方が望ましいと思っております。
 先ほど例に挙げました、消費者の関係する仲裁契約の場合は別に扱うというのは、消費者関係の我が国の立法等で一定の定義が既にされておりますので、国際と国内の仕分けのような難しさは少ないと考えます。

○ 消費者も仲裁を1つの紛争解決手段として使うということは十分あり得ると。ただし、日本では仲裁というのはあまりなじみがない。したがいまして、仲裁というものがどういうものだということをよく理解して、納得した上で、仲裁契約を結ぶというのが必要だと思います。
 したがいまして、例えばですけれども、先ほど申しましたドイツの仲裁云々は、書面性に加えて署名性、signature、そちらを要件に加えるということで、仲裁ということを十分納得した上で合意する。合意した後の仲裁手続は、私は、消費者も変わらないんじゃないかと思っております。

□ どうもありがとうございました。今の御議論は少し例外的な消費者というサイドの問題に入ってしまいましたけれども、基本的な問題としては、この場の議論の大勢は、モデル法をベースにする、モデル法を参照としつつ検討をする。そして、単一の国内・国際、外国仲裁、そういうものを含めた意味での単一の法律で統一的に仲裁を律する、そういうものを目指すということで大体意思が統一できたように思います。
 検討資料3のことは、一読としては、これでよろしゅうございますね。
 それでは、ちょっと休憩をいただきまして、休憩後に仲裁検討会資料4の方に入りたいと思います。3時10分に再開させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

(休憩)

【仲裁合意についての検討項目案について 〜1 仲裁合意の成立について〜】

□ それでは、時間でございますので審議を再開したいと思います。
 今度は仲裁合意の問題でございます。資料4でございますけれども、まず、仲裁適格について御議論いただきたいと思います。この点につきまして、まず事務局から御説明をお願いいたします。

● 検討会資料4でございますが、1番目の仲裁適格について、そのコメントにも書きましたように、伝統的には仲裁適格というのは、和解可能性というものを判断指標とするという意見が多く見られましたが、アメリカを中心として、特許、独禁法、証券取引等に関する紛争の仲裁適格が拡大されてきておりまして、これらも仲裁適格が認められる紛争の範囲に含めた形で概念構成をすべきかどうかということが議論されているんではないかと思っております。
 どういうものを仲裁に付するのかということが前提として問題となり得るわけなんで、その点についても、一言触れていただいても結構だと思うんですが、個別具体的な、証券の場合のこういう問題とか、特許の場合のこういう問題とか、個別具体的な問題にあまり入り込み過ぎますと、ここのところは収拾がつかなくなってしまうのかなと思いますので、この辺のさじかげんをよろしくお願いしたいと思います。

□ それでは、これは段落ごとに区切って、少し議論を進めていきたいと思いますが、まず、仲裁適格、これは大変難しい問題でございますが、どなたからでも御自由に発言いただければと思います。

○ 今、事務局がおっしゃいましたし、この検討会資料にも書いてありますように、現在我が国の仲裁法は和解という概念を使って仲裁適格を記述しております。
 また、国際的に見ても、伝統的には和解という概念を使った立法例もある程度あると承知しております。ただ、この和解という概念は、よく分からない概念でして、和解とは何かという解釈を巡って随分争いが生ずることがございます。

 よく物の本とかに書かれている話でも、民法上の和解を言っているのか、訴訟法上の和解を言っているのか、あるいはどちらでもない仲裁法固有の和解があるという議論もありまして、収拾が必ずしもついていない状況だろうと思います。
 また、和解概念自体も万古不変のものかと言いますと、現在、法制審議会の人事訴訟法分科会で議論されておりますところでは、離婚事件とか離縁事件について、現行法では和解が認められておりませんけれども、和解を認めてもいいんじゃないかという議論も有力で、そうした形で法改正がされる可能性も決して少なくはない。

 そうなりますと、和解概念に依拠することは、仲裁適格の規律として、果たして現在の目から見て妥当なのかどうかということに強い疑問を持っております。かえって、和解とは何かということを巡って、無用な紛争が起きる可能性の方が高いのではないかという感すら持っております。
 私、必ずしも最近の外国の立法を広く知っておるわけではございませんけれども、私の理解するところでは、最近の立法は、和解概念によらないで仲裁適格を記述するものが増えているのではないかという気がいたします。そういうことから見て、和解概念は避けるべきであるというふうに考えております。

 もう一つ、別な観点ですけれども、検討会資料にも書かれておりますように、アメリカなどでは、伝統的には特許や証券取引などの分野では仲裁適格が否定されておりましたが最近ではこれを認めるというふうに変わってきております。
 仲裁適格という概念は、アメリカの例でも見られますように、理論的に決するというよりも、その国家や時代によって、どういう政策を取るかという、政策的な判断で決まってくる部分が少なからずございます。
 そうしますと、仲裁法で仲裁適格をあまり狭く規定しますと、そうした政策の自由度に対して、無用な手かせ足かせをはめるということにもなりかねません。
 更に申しますと、仲裁法という手続法規が、例えば特許法が所管します知的財産権政策に口を出すべきものなのかどうか。あるいは独占禁止法が所管する競争政策に口を出すべきものなのかどうか。むしろそういう分野で仲裁適格を認めるかどうかというのは、これは特許法なり独占禁止法の分野で考えるべき問題ではないか、あるいは、それを審議する機関としても、そういうところに専門家が集まった委員会なり審議会なりで議論すべき問題ではないかということもございます。

 そのように考えますと、仲裁法としましては、なるべく仲裁適格の範囲を広く取っておいて、今申しましたような政策的な判断とか将来の判断の変更とかの余地を広く残すというのが望ましいと考えております。
 とりあえず以上です。

□ 何かほかに御意見ございますでしょうか。

○ 私は先ほどのUNCITRALのモデル法をベースにするという観点から申し上げますと、UNCITRALのモデル法は仲裁適格については、ずばり規定はされてはおりませんが、モデル法の1条5項に関連した部分がございます。仲裁適格については、仲裁地国の他の法律が適用されることを妨げないよう規定しております。あと仲裁判断取消事由の中に、紛争の対象となる事項が仲裁地法によって、仲裁で解決することができないという場合を挙げております。したがって、UNCITRALのモデル法の立場を採用するとすれば、適用範囲の問題がありますけれども、仲裁手続の準拠法によって禁じられていない限り仲裁可能性が否定されないというようなことになるんじゃなかろうかと。
 そういう限りにおいては、和解可能性があるとかいろんな概念がございますが、私は実務の観点からしますと、さほど問題になるものでもないんじゃないかなと。確かに独禁法だとか特許の問題はございます。実際に私が担当した事件でも米国特許の権利範囲に属するか属さないかとか、そういった問題が争われた例もありますし、最近の例ですと、EUの競争法によって契約の解除は無効であると主張されてきた場合があります。そういった問題のとらえ方としましては、特許の対世効の問題は特許庁に申立てをすればいいんであって、独禁法でも当該官庁が最終的な判断権を持っているわけなんで、それはそれでやっていただいて、当事者間の紛争を回避するという限りにおいては、仲裁可能性は、そういった分野においてすら否定されることはあまりないんじゃないか。
 ということであれば、あまり積極的に規定せずに、UNCITRALのモデル法あたりの規定だけでも仲裁適格の問題は十分対応できるのではないかと私は思います。

○ 結論的には○○委員、○○委員が今おっしゃったように、広い範囲で仲裁適格をとらえるということには賛成です。
 原則的には、仲裁というのは当事者の合意に基づくADRの一種であるとすれば、その対象が当事者の合意によって解決可能な紛争に限定されるというのは、原則になるんだろうと思います。ただ、当事者の合意による紛争解決を排除するという理由はどこにあるかということを考えてみますと、恐らく広い意味での公益が紛争に関わっているから、当事者間の合意だけでは紛争が処分できないということなんだろうと思います。

 抽象的に紛争が公益に関係すれば、それでもう仲裁ができないというのは、1つの考え方であろうとは思いますけれども、解決策はそれだけではないんではないかと思いまして。抽象的には公益に関係するかもしれないけれども、場合によってはそこで出された具体的な仲裁判断は公益には関係しない、私益のみに関すると。先ほど○○委員の言われたような形で仲裁判断がされるケースというのはあるんだろうというふうに思います。

 もちろん、最終的な仲裁判断が公益に反して、実際に公益を害するような効果を持つ場合には、それは公序に違反するとして取り消され、あるいは執行できないということになる。そういう形でチェックする余地もあるんだろうと思います。

 ですから、まず仲裁適格という入口の段階でチェックしなければならない必然性というものは、必ずしもないんではないか。そういう意味では、和解可能性というのは、原則ではあるんだろうと思いますが、それよりも広い範囲で仲裁適格をとらえるという考え方は十分に成り立ち得るんだろうと。それはモデル法のような書き方になるのかどうかというのはこれからの検討であろうとは思いますけれども、非常に広くとらえるということをベースに考えていくという御意見に賛成であります。

○ 私も今、お三方がおっしゃったように、広くとらえるということに賛成です。当事者が和解することができるということになりますと、争いがあったり、あるいは非常に分かりにくい。立法の趣旨からしますと、やはりユーザーフレンドリーなものにしたいということからしますと、分かりやすくUNCITRALのモデル法のままでもよいと考えています。

□ 私、委員として申し上げますが、UNCITRALのモデル法では、「仲裁による解決が不可能である事項」について仲裁判断をした場合には、34条、35条で不服申立ての対象となるし、執行拒絶事由になるとされています。それでは、どのような紛争が仲裁の対象となるか、仲裁適格があるかについては、1条5項では積極的に規定せず、ただ他の法律が仲裁適格について規定することを妨げないとだけ書いています。しかし、日本で仲裁法を作る場合にこれと同じでよいかどうか。これは要するにモデル法ですから、その国がどうするかということは、それぞれここは自由に変容してもいいということではないかと思っているんです。例えば人事訴訟関係のものを仲裁に持ってきたというような場合に、それを仲裁で受けられるかどうかということは、この規定で十分読み取れるかというと、それでは人事訴訟法の方に何か特別な手当てを取る必要があるかという議論になってくると思うんです。
 ですから、仲裁がどこまでの範囲で受けられるかというのは、和解に親しむかどうかではなくても、例えば処分ができるとか何でもいいんですが、何か一義的な規定が欲しいなと思いますけれども、この辺はどうですかね。

○ 私も、模範法のように非常に包括的な規定を置くことには心配があります。結局は当事者の合意に基づいて初めてできるわけですから、そうすると、当事者が対象について処分ができるという制約はあるはずで、今おっしゃったような親子関係の身分に関係するようなことは、何らかの基準で排除しなくていけないんだろうと思うわけですけれども、模範法のような包括的な形ですと、では、仲裁に親しむものは何なのかというときの、その判断の基準が非常に不明確になってしまいますので、和解可能性という言葉自体が本当にそれで十分かということにはまだ検討の余地はあるだろうとは思いますけれども、今までも和解可能性というところを基にした上で、解釈によって、特許の場合もこういう場合には認められていただろうとか、調停で話ができるんだから認められるだろうという拠りどころにしながら処分権を認められる範囲に拡張している形で賄っているように思われますので、何かしらの画する基準になるような言葉は残しておくようなことを検討したらいいんじゃないかと思います。

○ 1つは、ドイツ法にあるように、ここに資料として出ていますような「いかなる財産法上の請求も仲裁契約の対象とすることができる」とありますけれども、まずは財産法上の問題に限ってもいいのかなとも思っております。

○ 実際の仲裁の現場を申し上げますと、なるべく広く申立てを受けておりまして−−1つは、私ども弁護士会でやっていることは、全部が全部いきなり仲裁ではないということで、あっせん・仲裁と分けて、途中に和解というのもあるので、広くしているのかと思いますけれども−−ベースとしては、仲裁としてもなるべく広く認めていただくような立法をしていただきたい。これは今までの委員の意見に私も賛成でございます。
 ただし、それがどこまで影響があるのかと。実際には私どもの仲裁で、仲裁判断で離婚とか、そういったものはもちろん例はございません。あとは、和解可能性という言葉でいくのか、あるいは何らか別のふさわしい言葉があるなら検討するかということになると思うんです。確かに今、○○委員がおっしゃったとおり、全く無限定というのはどうかなというのはあるかもしれません。

 もう1つは、御報告ですけれども、例えば実際に扱った中で、人事関係は離婚とか遺産分割等々、申立件数は随分こなしておりまして、やっているということと、中には、ちょっと特殊な例ですけれども、破産関係の債権の確定事件を仲裁判断でやったケースがここのところ2件ございました。

 そういう意味では、仲裁の適格については、広い範囲で認めていただく形にできればと思っております。

○ 今、座長の方から例に出た、訴訟になれば人事訴訟事件になるような事件ですね。それを例に取りましても、先ほどちょっと私申しましたが、今度の人事訴訟手続法の改正で、訴訟上の和解が認められた場合に、それが仲裁に乗らないということは、なかなか理解しにくいところがありますので、人事訴訟だから仲裁適格がないという仕切り方はいかがなものかという気がいたします。
 では、更に進んで、親子の事件はどうか。○○委員は、親子はだめではないかという前提でおっしゃったように伺いましたが、例えば認知を例に取った場合に、当事者間で認知に関する事件を仲裁−−弁護士会なり何でもいいんですが−−仲裁手続に乗せたいというときに、仲裁適格がないと言う必要が果たしてあるのかどうか。

 考えなければいけないことは、仲裁判断が承認執行されるものでなければ仲裁適格がないということになるのかどうか。仲裁の場合、圧倒的多数の事件が承認執行されないで当事者の任意履行で終わっているわけです。
 また、仲裁判断までいかず、途中で和解で終わる事件も少なからずある。仲裁適格がないとなると、そこまでも持っていけないわけですね。将来和解で終わることを見越して仲裁手続に乗せる、例えば認知で和解が成立したら、和解を基に親子間の規律をしてもいいと。執行のようなことを求められた場合に、執行を認めるかどうかというのは、先ほど○○委員がおっしゃったように、執行許否の裁判のところで判断することもできるわけで、仲裁適格を認めるか認めないかというのは、例えば裁判所の援助との関係で言いますと、仲裁人の選定で当事者間に合意ができないときに、裁判所が仲裁人の選定をするという手続が利用できる。これは仲裁適格を認めてやらないと利用できない。しかし、この仲裁は、仲裁判断があった場合に、承認執行のルールには乗らないかもしれない。こういうものでも仲裁適格を認めてよいということに私はしてもいいんではないかと考えています。

● 今、○○委員がおっしゃったのは、本質的な部分と言うか、核心の部分だと思うんです。執行に乗らないものでも、仲裁適格を認めて、仲裁判断まで認めてもいいですよと。そういった場合に、例えば特許であれば、当事者間の効力はあるけれども、第三者効はない。そういうものとして仲裁が利用できるのかどうかということだと思うんです。

 当事者サイドから見た場合に、そういうものとして納得をして、執行できないという可能性があるということを納得をしても使うということであれば、それは当事者の中で完結をすると思うんですが、もしかして執行できるかもしれないと思って使った場合に執行できなかったということになると、その仲裁制度自体の信頼を欠くという可能性はなくはないと思うんです。その辺のところを、どこでどう切り分けていくのか。今までの法制度的に見ると、やはり執行までできることを前提にして、それもできるという担保の上で、仲裁判断を仕組んでいるというのが今までの発想だと思うんですが、それに対して○○委員の方は、そこのところをリンクさせる必要はない、当事者が求めるのは、仲裁判断まででもいいですよと言ったら、それも範囲として広げてもいいんじゃないか、そういう構築の仕方というのはあり得るんじゃないかという御指摘だと思うんです。

 逆に言うと、もしもそういう仕組み方をするとですね、執行までできるものなのか、そうではないのかということについて、当事者が早い段階で分かるような仕組みというのが必要なのかなという感じがするんです。仲裁人も執行までできると思ったんだけれども、執行はできなかったという可能性もあり得ることになるのかなと思うんです。それでいいのかどうかということではないかなという気がします。

□ 議論は仲裁適格の範囲をなるべく広く認めようという点では共通していると思います。それでは、UNCITRALのような、中身がほとんどないような規定ぶりでいいかということについては、議論があります。

 もう一つの問題は、仲裁適格を、非常に入口では広く、だんだん先に行くと狭くなるという仲裁適格というものが理論上考えられるかどうかということだと思うんです。従来の考え方は仲裁適格というのは初めから最後までずっと同じもので、当事者が仮に仲裁適格がないものについて仲裁合意をして、それを間違って仲裁機関が受けてしまっても、他方の当事者が後から、あれは仲裁適格はないということで仲裁不許の訴えというのを起こせば、裁判所は途中で仲裁を許さないということになるはずですし、それから仲裁適格のないものについて仲裁契約が結ばれた場合に、訴訟になって妨訴抗弁を提出しても、妨訴抗弁は成立しないで裁判所はそれを引き受けるということになるでしょうし、承認執行のところも、取消しのところも、終始一貫仲裁適格というものは同じものであるという概念で仲裁法はできていたと思うんです。それをそういうかちっとした仲裁法でなくてもいいじゃないか。もう少し入口は広くて先に行くときちっとするような仲裁適格という概念をつくってもいいんじゃないか。これは非常に新しい斬新な考え方です。しかしこれを、この段階で議論をし出すと非常に大変で、今日は仲裁適格については、まだこれから先に議論がありますので、今のような問題があるということで先に進んでよろしいですか。
 それでは、議論は対立しつつも、そういうふうにさせていただきます。

 それでは、次に仲裁合意の書面性の問題を取り上げたいと思います。これについても事務局から御説明をお願いいたします。

● 仲裁合意の書面性について、2の(1)から(4)までを一括して御議論いただきたいと思います。

 (1)について、一般要件として仲裁合意の書面性が要求されている趣旨が何なのかということをまず確認をさせていただきたいと思います。
 仲裁合意は裁判を受ける権利に重大な制限を加えるものであるため、慎重さを求める必要がある。そういうことから、仲裁合意の内容に対する十分な理解と認識のないまま、これに服することとなる危険を防止するために、書面性を要求したというのが第1点。
 もう1点は、その内容を明確化することによって、後に控えている仲裁手続において、迅速な解決を期するという必要があるための明確性という点が1点。この2つの意義が書面性についてはあるのではないかと思っております。
 書面性をそもそも要求するかどうか自体が議論があり得るところなんですが、先ほどのアンケート結果でも触れましたように、ニューヨーク条約体制に仲裁を乗せる、日本でおこなった仲裁を外国で執行できるというような形に乗せるために、また、模範法の体制に準ずる形にするためには、書面性を要求するということが必要なんではないかというふうに思われます。実務上も書面が作成されているんではないかと思われるんですが、これについては、本日、○○委員の方から資料として「BILL OF LADING」のひな形を提出していただいておりますので、それについては後ほど○○委員の方からも説明をしていただきたいと思っております。

 それから、(2)については、仲裁合意の書面性が必要だということを前提にした場合に、書面として認められるための要件についてどのように考えたらいいかということでございます。
 検討の対象の事項としては、文書による場合、署名又は記名押印を必要とすべきかどうか。先ほど○○委員から若干話が出ていたと思うんですけれども、そういう観点の問題。
 それから、新しい通信手段や、情報の記録伝達媒体について、どのように考えるか。ファクシミリというのはあまり新しくないのかもしれませんが、ファクシミリや電磁的記録によるもの、電子メール、オンライン取引における電子データの送受信、こういうものについて認めるということでいいのかどうか。先ほどの改革審の意見書の表現のことも思い出していただきたいんですけれども、こういう電子商取引においても対応できるようにすることが、改革審の意見書の中では言われておりました。こういうことも視野に入れて検討しなければいけないということかなと思っております。
 この点について、先ほど言った書面性の明確性の問題と、それから慎重さを要求するという問題と、両方の観点から検討していく必要があると思っております。

 それから、(3)なんですが、これは申立人が仲裁を申し立てて、相手方が仲裁合意のあることを争わない場合、あるいは訴訟において被告が仲裁合意の存在を主張し、原告がこれを争わない場合。仲裁合意があるものとしてはどうかというのが問題です。
 これは模範法でこのような場合について仲裁合意があるものとしているので、この点はそれにならったらどうかということです。

 (4)ですが、これは仲裁条項を含む文章を引用して、取引契約等を締結する場合、仲裁合意の成立が認められるための要件について、何か特別に考えることがあるか。先ほどの検討会資料3のところで、模範法にのっとった形でいいけれども、消費者保護的な観点ということで必要だという御意見もございました。まさに引用する場面などにおいて、そういう消費者保護的な観点から何か特則的なものを必要とするかどうかという観点から御議論していただければと思います。

□ それでは、仲裁合意の書面性についてですけれども、○○委員から提出いただいております英文のフォームについて、まず御説明いただけませんでしょうか。

○ これにつきましては、あるいは先ほどの「(4)仲裁条項を含む文書を引用する場合の取扱いについて」などとも関係するかと思います。これはBILL OF LADING、船荷証券でして、署名するのは船会社側、船長のため、For the Masterとあるわけで、一方の当事者のみの署名で流通するものでございます。

 裏の第3条、黄色いマーカーで印をいたしましたけれども、GOVERNING LAW/ARBITRATIONというものを入れてあります。この中に、「Any dispute arising from this Bill of Lading shall be referred to arbitration in Tokyo Maritime Arbitration Commission (TOMAC) of The Japan Shipping Exchange,Inc., in accordance with the Rules of TOMAC and any amendments there to, and the award given by the arbitrators shall be final and binding on both parties.」こういった仲裁約款を入れておりまして、これが実際に使われています。また、米国で外国の裁判管轄約款を無効とした判例がありましたが、連邦最高裁はこの仲裁約款を有効として仲裁でやってよろしいということもありました。船荷証券中の仲裁約款は、模範法7条2項の「両当事者の署名した文書」に関係してくると思います。いずれにしましても、書面というのが、大原則だろうなと思います。

□ それでは、書面性一般と、書面性の緩和と、それから事後的合意、引用という、(1)から(4)まで、どの点からでも結構です。

○ 司法制度改革審議会の意見書で、「国際連合国際商取引法委員会における検討等の国際的動向を見つつ」という指示がされております。実はこの書面性の点につきましては、現在、国際商取引法委員会、UNCITRALで検討が進んでおるテーマでありまして、私は日本政府代表委員として出席しておりますので、御報告する職務上の義務があろうかと思いますので、ごく簡単に御紹介しておきたいと思います。

 書面性をモデル法が要求しているわけですが、取引の実情やテクノロジーの発達によって、厳格な書面性の要件では現在の取引に支障があるということで、その緩和が議論されております。
 議論の当初は、緩和ではなくて、そもそも書面要件の廃止という選択肢もあるのではないかというのが、ごく一部の国から出されましたが、その点につきましては、先ほど事務局がおっしゃったように、ニューヨーク条約が書面性を要求しているということで、書面性をモデル法が廃止しますと、併せてニューヨーク条約も改正しないと整合しない。UNCITRALはニューヨーク条約を所管する機関でもありますから、理論的にはニューヨーク条約の改正もできるんですが、現在、ニューヨーク条約は、百数十か国が批准しているという、私法の分野では最も成功した条約と言われておりまして、これを改正して、再批准を取るのは何十年かかるか分からないということで、それは最初から現実性がないということで却下されました。
 そうしますと、書面要件は残さざるを得ない。しかし、実質的には書面要件の限界まで緩和していくためにどうしたらいいかという点で議論がされております。

 その中で、細かいことは申しませんが、(2)に挙がっております電磁的記録につきましては、それを書面とみなすという点については、全く争いのないところでありまして、あとはどういう文言でこれを認めていくかという技術的な議論が残っているだけという状態です。

 それから、(3)の事後的合意の点につきましては、これは現行のモデル法に既にある内容ですので、これについて異論を唱える意見は全くありません。

 それから(4)の仲裁条項を含む文書の引用につきましても、引用が更に書面でなされる場合については、現行のモデル法にありますので、我が国がもしモデル法を採用するとしたら、この点についても、これを承認しないという選択肢は考えにくいというふうに思います。
 現在、議論されているのは、この仲裁条項を含む文書を更に口頭で引用した場合についても、緩和していいのではないかというあたりに議論が集中しているということでございます。

 1点、検討会資料4の3ページの(2)のaで、「署名又は記名(押印)を必要とすべきか」という項目の立て方は、いささかミスリーディングではないかと思います。モデル法では、署名がある文書については、それだけで争いなく書面要件は満たしているというのであって、では、署名がなかったら書面要件は満たさないかということは全然言っておりませんし、現にモデル法の中で署名が考えられないものについても、広く書面要件を認めていますので、署名というのは、これがあれば全く問題がないという形で挙げられているだけであって、署名がなければ書面要件を満たさないという議論は、今のところ存在しないのではないかと理解しております。
 以上です。

□ ほかにいかがでしょうか。

○ 私は今のモデル法7条2項を採用するということでよろしいかと思います。我が国は口頭による仲裁合意も認めているわけなんですが、国際的には書面化、書面を要件とし、ただしそれを緩和する。緩和して、できる限り口頭に近いものにする。ですから、日本の現在のポジションとUNCITRALの動きが全然矛盾するものではないということですので、したがって、7条2項、更にはオーラル・リファレンスをどうするかという問題は残りますが、7条2項をそのまま条文として使うということでよろしいのではないかと思います。

○ 質問でございますが、今、○○委員から御報告があった口頭まで緩和するかということが議論されている件なんですが、そこまで緩和がいってしまった場合のニューヨーク条約との関係についてはどういった手順になっていくんでしょうか。

○ ニューヨーク条約につきましては、先ほど申しましたように、これを改正はできないのですが、ただし、モデル法の改正と同時に、ニューヨーク条約の解釈に関するUNCITRALの公式宣言を出す予定です。その中で、モデル法が書面と認めているものは、ニューヨーク条約においても書面として解釈すると宣言される予定です。
 これは、宣言自体に各国の裁判所を拘束する力は直接的にはございませんけれども、UNCITRALの公式宣言ですから、基本的には各国の裁判所はそれに従って解釈をしてくれるだろうということで、ニューヨーク条約改正との調和を図るということです。

○ そこで言われている口頭の合意への緩和というのは、何らかの条件をかぶせた口頭の合意ですか。

○ 口頭による引用につきましては、一部反対する国もありまして、この点を盛り込むかどうかについては、最終決定がついておりません。なぜ、この口頭による合意というような、書面性から見ると、表面的には矛盾するような提案がなされているかということですが、これは一部の取引において、既にそういう実務が行われている。具体的にはサルベージ契約などがそうであると聞いておりますし、あと先物取引などでもあるという話も一部聞いております。
 この点につきましては、お名前を挙げて恐縮ですが、前者のサルベージ契約につきましては○○委員の方が御専門だと思いますので、もしよろしければ御紹介いただければと思います。

○ 今、○○委員がおっしゃったサルベージ契約について申し上げますと、船舶が海上で座礁し、あるいは衝突したような場合に、他の船舶に救助を求めますが、救助の内容を取り決めるのがサルベージ契約(救助契約)です。わが国内外に救助専門の会社があり、その会社と、被救助船、つまり座礁した船の所有者との間でファックスのやりとりをして、どのフォームに拠るかを合意するのが普通です。フォームというのは、イギリスのLloyd's Open Formや海運集会所の救助契約書などがあるのですが、印刷された定型フォームのどれに拠るかを合意します。どのフォームにも仲裁約款が入っていますから、救助料の算定その他、当該救助に関する争いは、その仲裁約款に従って解決できるわけです。通常は会社同士でファックスを交換した後、現場で双方の船長が救助契約書にサインしますが、危険が切迫していて、口頭でどの書式に拠ると合意して、作業を始めるような場合が稀にあるようですから、そのような場合を考えて「口頭による引用」と言っているものと思われます。口頭による引用をするのは非常に特殊な場合だと思います。

□ 御存じのように、日本の民事訴訟法は、管轄については書面を要求している。しかし、仲裁契約については、書面を全然要求していないわけです。ひと昔前からも、仲裁合意についても書面を要求しろとずっと言われ続けてきたんですが、今の○○委員のお話を聞くと、日本の仲裁法は時代の先端を行っていたのかなという気もしないわけでもない。

 今の御議論は、大体仲裁契約、仲裁合意については、書面性があるのは原則だと。それはもうニューヨーク条約との関係でもそういうふうにする。ただ、それを特殊な場合には緩和せざるを得ないので、立法に当たってどういう文言にするかというところで考えるということでよろしゅうございますか。

○ 今の○○委員のお話は、国内仲裁から見ると別世界の出来事のようでして。
 私ども弁護士会の仲裁合意を申し上げますと、まず日本においてはまだまだ契約書ということ自体があまり活用されておりません。もっと言えば、仲裁ということ自体むしろ知らない国民が多いわけです。私どもの仲裁センターをつくったときから、これはやはり仲裁合意というのは一番の根本のものでありますので、恐らく各センターそうだと思うんですけれども、センターで用意した所定の用紙に記名、捺印もしくは署名をしていただく。それも、ただいただければいいという問題ではなくて、仲裁がどういうものかということをきちんと説明した上でやりましょうと。幸いなことに当初から書面性が要求されていないものですから、あっせん等々の手続の中で、仲裁人自ら、仲裁というのはこういうものですよということをきちんと説明して、理解を得た上で、合意を取るという扱いにしております。

 国内的に見ますと、ここでも資料に書いてありますけれども、十分な理解と認識というのがないと、後々仲裁判断についていろいろと問題が出てくるとなっても、かえって問題だと思いますので、私どもとすれば、書面は当然の前提でありますけれども、なお、書面として認められる範囲はどこまで緩和するかについては、やはり国内については、今言ったようなことは十分配慮されるべきだと思います。もちろん、消費者の問題もそうですけれども、個人間でいろいろ扱う場合においても、当然そういうことは必要ではないかと思います。

 今申し上げました、どこの段階で取るかという時期の問題も1つあろうかと思います。一応問題提起として。

○ 今のことですが、書面性を緩和するときに、どういう文言を工夫するかということをおっしゃいましたが、書面性の問題に関しては、文言に関しても、日本独自の規定を設けるというのは問題がございます。

 冒頭申しましたように、UNCITRALのモデル法には、それを必ずしも丸のみせずに日本なりに多少修正していい部分とか、あるいはモデル法にない規定で追加していい部分というのはもちろんございますけれども、この書面性の部分に関しましては、先ほど申しましたように、ニューヨーク条約と連動させますので、モデル法の文言をいじくりますと、ニューヨーク条約の解釈宣言に乗らなくなりますので、そうすると、国際商取引上の契約が極めて不安定になります。
 日本は仲裁が少ないと言われておりますけれども、これは仲裁手続が日本で行われるのが少ないだけでありまして、仲裁契約は日本の企業は日々大量に結んでおりまして、これが全部危険にさらされるということは、是非とも避けなければいけないということで、この書面要件に関しましては、条文の文言とか規定ぶりを含めて、UNCITRALに可及的に従う必要があろうと私は考えております。

□  それは今、検討中なんでしょう。

○ これはおそらく今年の前半に結論が出ると思いますが、出なかった場合には従いようがございませんから、そのときは別途考えなければいけませんけれども、ほぼ結論が出ようかと思います。

□ よろしゅうございますか。

 次に(3)の「事後的合意」のところで。仲裁を申し立てた、これは仲裁だということを知っていて申し立てたと。相手方もある程度応じていたら、それはもう仲裁合意が黙示的に成立すると。この点は最高裁の判例もありますから、異論はないところだと思いますが、4ページの後段の方「訴訟において、被告が仲裁合意の存在を主張し、原告がこれを争わない場合は、仲裁合意があるとする」という場合、この効果はどういうことなんですか。それによって新たに仲裁合意が成立するということですか。仲裁合意が本当にあればいいんですが、仲裁合意の存在、被告の方が成立を主張する。原告もそれを放置しておくと、仲裁合意があるものとする、これはUNCITRALの条文はどこにあるんですか。どういう効果を生じるのか。

○ 7条2項ですね。

○ 恐らくこれが関連する部分は、「交換された申立書、及び答弁書であって、その中で一方の当事者が合意の存在を主張し、他の当事者によって否認されていないもの」という部分だと思います。

□ これは、場面は仲裁手続の中で主張されているんですか。それとも、裁判手続の中で主張されているんですか。

○ 仲裁手続だと思います。

□ そうですよね。この検討項目案の4ページの(3)の後段は、これは訴訟の場面ですね。これはUNCITRALには規定がない事項じゃないかという気もいたしますけれども。

○ 私もそう思います。これは事務局の方であえて違う提案をされたのかどうか、私も伺いたいと思います。

□ これは何か根拠は。

● 後段の場合でも、訴訟において、そういう仲裁合意があるとして、妨訴抗弁が認められると、訴訟の途がなくなるわけなんで、その場合に仲裁合意があったものとして以後取り扱われるという考え方でないと一貫しないのではないか。裁判を受ける権利自体が否定されてしまっているという事態ですので、その場合にどうかということです。

□ これは規定を置こうというんですか。規定を置くという前提ですか。

● 規定を置くかどうかは別にして、この場合どうなのかということについて確認をしていただきたいと思います。

□ これは恐らく解釈問題としては、対立する考え方があり得る問題だろうと思うんです。その訴訟限りで妨訴抗弁が成立するにすぎないのか、それとも、仲裁契約がなくても、仲裁契約があると主張して、相手方が欠席して黙っているという場合に、それで仲裁契約が成立するということになって、あとは仲裁でしか行けないということになるのか。そこのところはどうでしょうか。

○ その場合は、訴えが却下されてしまえば、仲裁合意があったものとして、既判力が生じるかどうか。訴え却下判決と既判力の問題はあると思いますが、普通は生じると考えるのか。

□ その場合、書面が何もなくてもそういうことになるというわけですね。

○ その場合に、(3)では、簡単に書いているせいで、主張し争わないと書いていますが、モデル法に引き寄せて−−モデル法は仲裁の場合ですが−−これに引き寄せて訴訟の場面でこれを読むとすると、通常、訴状と答弁書というような、書面でということが前提なのかなとも思いますが。

□ 仲裁手続の中で相手方が仲裁契約がないのに黙って応じて、済んでしまった。それで仲裁契約が成立するということは、これはいいと思うんです。その手続で、仲裁手続で判断が受けられる。訴訟の場合、ここまで前提として規定を置かなくちゃいけないかどうかという点は、若干の御意見があるところだと思いますので、細かな点ですから、次回また詰めていただきたい。今日はこのくらいにしたいと思います。

 それから、引用文書の扱いにつきましては、先ほど若干御議論いただきました。これはいかがでしょうか。

○ ○○委員がおっしゃったように、非常に特殊な場面を想定した議論で、特に(4)に書いてあるそのものではなくて、先ほど私が御紹介しました、現在UNCITRALで議論されている口頭引用の場合は、すべての契約に当てはまる議論ではないというのは確かです。

 ただ、その部分を外しますと、日本の船舶が沈みかけているときに、これは無線とか口頭でサルベージを要請せざるを得ないんですけれども、そのときにトラブルを生じますので、仮にUNCITRALでこの部分が通ったとしますと、海運立国である日本としましては、なかなかこれを入れないと、現在の実務に支障を来すおそれがあります。

 ただ、規定のつくり方は今、分かりませんが、国内の消費者絡みの取引のような場合には、それが適用されるということには必ずしもならないと思いますので、そういうものを排除するような規定を置くということは十分に考えられると思います。

○ その点は私も全くそのとおりだと思います。先ほど座長は管轄合意と仲裁合意との関連性を述べられたと思いますが、合意管轄については、御承知のように、民事訴訟法改正の中で、もちろん、消費者契約に限られてはおりませんけれども、基本的には専属的合意管轄の効力を否定する、裁判所が裁量移送できる規定を新たに設けたわけです。
 また、私の承知している限りでは、ハーグの国際裁判管轄条約の交渉の中でも、消費者に関しては、合意管轄の効力を基本的には否定するという立場が取られていると承知しておりますので、ここは消費者という形で区切るかどうかということ、あるいは先ほど○○委員が言われたように、もう少し広く国内の問題について区切るか、その区切り方はあるかと思いますけれども、何らかの形で、ドイツ法の規定がいいのかどうか分かりませんけれども、措置を考えていく必要があるのではないかと思います。

● 質問なんですけれども、(2)のaの「文書による場合、署名又は記名(押印)を必要とすべきか」ということと引用との関係をちょっとお伺いしたいと思うんです。
 ドイツ法の、参考資料5でいくと、第2章−5の1031条の第5項で「営業活動とみなすことのできない目的のために行為している者が、仲裁契約の基礎にある法律行為に関与している場合には、その仲裁契約は、当事者の自署がなされている書面において記載されていなければならない」、これは先ほど○○委員の指摘された消費者保護の関係で自署が要るんだと。こういうような規定を設けた場合の引用との関係なんですが、自署のための何らかの規定があれば、引用の場合について、あえて更に規定の必要性はないのかどうかというのが第1点。

 第2点として、先ほどの電子メールなどの関係で、オンライン・ショッピングの中でも、仲裁合意というものがあり得る可能性があって、アグリーというところをクリックしていかないと商品が買えないという場合もあり得ると思うんです。
 アメリカからウィスキーを買うときに、その仲裁地とか仲裁機関というのがニューヨークになる。日本でそのウィスキーを1本買ったという場合に、仲裁地としてはアメリカのAAAか何かになっているという場合に何らかの規定というものが必要あるのかないのか。その辺の関係も含めて御意見が伺えればと思います。

□ 非常に具体的な問題ですが、何か。

○ 今の後ろの方のに関連すると思うんですけれども、普通の民事訴訟手続でも合意管轄の合意が争われるということがありまして、多分、仲裁合意というのはこれと似ているけれども、更に裁判を受ける権利に関わるからもっと重大だという事態だと思うんです。消費者が約款の後ろの方の条項の中に書いてある合意管轄のところまで詳しく見た上で、法的に問題になったときにどういう効果が生じるかも分かった上で契約書の署名をしているという例というのは、非常に少ないんだろうと思うんです。実際には、みんなこの書類で署名しているんだったら多分間違いないんだろうというくらいの感覚で署名をして、後で問題が起こったときに、これはこんな意味だったのかということだと思うんです。
 そうすると、実際に合意管轄の合意があったかということが争われたときに、この条項のところに何か、この管轄で構いませんというようなことをちゃんと意識して読んだ上で納得したんだなというものがあれば、消費者の人もその場面で意識して読むだろうし、後でそれが問題になったときに、判断するときにも便利だということは感じるんです。

 それからいきますと、体裁はともかくとしまして、その条項について、やはり消費者が経済的に対等でない形で契約をしたかもしれないという疑いがある場合には、その条項を意識したということの、何か残るようなものが欲しい。
 それとさっきのアグリーというのが入っているというのであれば、一応そこまで見たんだろうということになってきますので、私もこういう規定が、消費者に関してはあった方がいいと思います。この法律の中に入れる必要があるかどうかということは別問題ですけれども。

 それに関しては、署名ということにこだわるのではなくて、何かそこを見たということがはっきり分かるようなものが残されていればいいんじゃないか、こんなように思います。

□ 建設工事紛争審査会の約款について、何かありますか。

○ 建設工事の請負契約につきましては、国土交通省のつくっている約款と、それから民間の団体でつくっている約款とございまして、どちらかというと、民間団体でつくっている約款の方が使われておるんですけれども、紛争の解決条項は同じでございます。先ほど○○委員から御紹介がありましたのと同様に、これらの約款の1条項に紛争解決条項というのが入っておりまして、紛争が生じた場合には、あっせん・調停、あるいは仲裁で解決するとなっております。従来はそれだけだったものですから、約款を添付して契約書に記名押印してあっても、本当に仲裁合意があるのかどうか、先ほど○○委員の方から御指摘ありましたように、我が国において仲裁はまだ一般的に広く用いられていないため、疑義のある場合がありました。このため、最高裁の判決で、少数意見として、約款における仲裁合意の規定の在り方についてかなり厳しい御意見をいただいたという経緯がございます。このため、それ以降は、仲裁合意をより明確に行うため、この約款とセットになった形で、別紙の形で、仲裁合意書という1枚の紙を添付いたしまして、契約書と約款と仲裁合意書がセットで契約書になるという方式にしております。

 なお、これは消費者保護というだけではございませんで、B to Cの契約に限らず、B to Bの契約の場合にも、同じような形で仲裁合意を明確に行うということにしております。

□ 今おっしゃった形で、昭和55年でしたか、最高裁で宮城県の建設工事紛争審査会の扱った事件について、その合意の有効性が争われた事件で、最高裁の多数意見は、有効だとしたわけですが、中村治朗裁判官は、さっき○○委員が言われたように、消費者の方は見ないでサインした可能性もある、というようなことも含めて、少数意見を述べられたんです。それを機会に、今のように建設工事紛争審査会の扱うような事件の背後にあります四会連合約款の建設工事請負契約は、請負契約と仲裁合意の2枚にして、もちろんワンセットになっているんですけれども、とにかく署名を2つする書式に変わっている。それは今、○○委員が言われたことと同じ考え方なんです。それ以降、そういう紛争は、私の知る限り、建設工事紛争審査会ではない。それは消費者の意思を確認する1つの有効な手段であることは間違いないと思います。

 最初の問題をどうぞ。

○ 考えたことがない問題なので、思いつきのようなことを申しますが、ドイツ法1031条5項のように当事者の自署を要求するというのと、他の文書に書かれている仲裁条項のようなものを引用することとの関係ですが、考え方によっては、いかに当事者に自署を要求しても、自署をする書面には、引用されている仲裁条項は出ていないと。そうすると、自署だけでは当事者の保護にならないんじゃないかという考え方もあり得ると思います。
 しかし他方、そういうことにしますと、自署を要求する書面の中に、引用すべき仲裁条項をずらっと書き込むことになるわけです。書き込んでいたら、当事者はそれを見て納得して自署をするかと言われたら、それも非現実的な話かもしれないです。
 ドイツ法は、私、その点を詳しく勉強しておりませんので、間違っているかもしれませんが、自署を要求する規定と別に、書面の引用の規定は設けているわけです。消費者の保護との関係では、自署の要件が満たされれば、恐らくその自署された書面の中に引用があっても、それは有効な仲裁合意になるという前提で規定がつくられているんだろうと思います。

 結局、消費者の保護と言っても、引用を禁止すれば保護になるんだったら、私もそういう立法もあると思いますが、仲裁の約款というのは実に長ったらしく、専門的な文章でして、引用ではなくて、契約書に書き込めば保護になるとも思いにくいので、この点はドイツ法のような仕組みでいいのではないかと思っております。

□ いろいろ難しい問題も議論がされましたけれども、仲裁合意について、書面性を要求しつつ、どういう形でその緩和を図るかということは、UNCITRALのモデル法の今後の動向を見ながら、それに沿う形の立法を考えていかざるを得ないと思います。それから、2つの引用の問題、それから、黙示の仲裁合意の成立の問題も、大体こういうようなものじゃないかと思っております。
 次は、仲裁合意の効力という問題に入りたいと思います。これについてまず御説明をお願いいたします。

【仲裁合意についての検討項目案について 〜2 仲裁合意の効力について〜】

● まず1つ目として、妨訴抗弁の問題でございます。
 妨訴抗弁は先ほど内容については御説明しましたが、司法裁判所に訴訟が提起され、被告から妨訴抗弁として仲裁合意があるんだと主張された場合、司法裁判所として、どういう措置を取るべきかという、ドイツや韓国のように訴え却下ということでいいのかどうかということについてが第1点。

 それから、妨訴抗弁の提出時期について、これはそれほど議論はないのかなと。もしも議論があれば、意見を言っていただきたいと思いますが、模範法と同じような形の規定ということでよろしいのではないかということです。

□ それでは、妨訴抗弁につきまして、効果と提出時期、これは一緒に御議論いただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。要するに、却下なのか、停止なのか、仲裁付託命令みたいなものと考えるか、選択肢としてはそのくらいでございます。
 これは何か裁判所の方でお考えありますか。

○ 裁判手続の側から見ましたら、訴え却下であれば、そこでその事件は一旦終了するわけですが、訴訟手続の中止ということになりますと、事件番号が付いたままの事件が倉庫にずっと眠っているという非常に管理の悪い状態が続いてしまいますので、端的に訴え却下という形で整理して問題がないのであれば、それが最も望ましいのではないかと思います。

○ 却下がだめだという議論は、恐らく時効の問題だったと思うんです。結局、却下で訴訟判決が出たため、それから仲裁に持っていったら、もう時効が成立していたという場合に手立てをどうするかという観点から、そこを詰めればいいかと思います。

○ 私も今手を挙げたのは同じことで、時効の点は、○○委員、どうお考えなのかとちょっと伺おうかと思って手を挙げました。

○ 時効の中断のところは、先ほどいただいた資料を見た限りでは、ADR全体について議論することも予定されているかのような項目立てだったように理解しているんですが、こちらでもやるわけなんですか。むしろ事務局にお尋ねしたいんですが。

○ 逆で、訴え提起が先行するケースですから。

○ ただ、それは却下して、一旦終わってしまって、今度は仲裁手続をやっていたことによる時効中断とみなしにするかという問題。

● 鋭意検討するようにします。

□ 却下する時間が遅れれば、その間に時効が完成してしまう。そちらの問題です。

○ 仲裁手続中ではなくて。却下を延々と争ってですか。

□ はい。そのような場合、何かつなげられる手段があるかというようなことになると、ADR全体ではなくて、むしろこちらの問題かなと。

○ 私の乏しい実務経験に照らす限りでは、仲裁合意についての判断で、何年もかかって争うというイメージはあまりなく、書面性の要件等の仲裁合意の要件を満たしているかが、今回きちんと手続が整備されていけば、そこの手続が長期化して、そこで時効が成立してしまうという事態は、あまり念頭に置かなくてもいいのかという印象を受けます。

□ 分かりました。

○ 実務ではございます。具体的に数年争って、仲裁を申し立てても、もう時効が成立していたというのはあります。それは実務上は、仲裁も同時に申立てをしておくということで手当てできなくはないと思います。

□ いずれにしても、時効の問題はじっくり考えないといけないですね。

 妨訴抗弁の提出時期については、本案について弁論するまでというのが従来の考え方ですけれども、それに異論がございますか。

○ 本案について弁論するまでというのがいつまでを言うのかとか、なかなか難しい問題があるんです。例えば答弁書で請求の趣旨に対しては答弁して、請求原因に対する認否は次回に行うと答弁して、次回の準備書面で抗弁として仲裁合意を主張して、それが認められた例があったと思います。たしかその点、判例はいろいろとあるようなんで、もし規定を設けるんだったら、それもちょっと意識しておかないといけないのかという感じがしますし、逆にそれはもう設けないで、一般論でもって対処するか、その辺があるのかということで。

□ 分かりました。

 それでは、次に「仲裁合意の効力の及ぶ人的範囲」という問題について入りたいと思います。

● 仲裁合意の効力の及ぶ人的範囲の問題というのは、あまり議論がされていないのかと思うんですが、仲裁合意は先ほど言いましたように、裁判を受ける権利の放棄であるということの観点からとらえますと、それが承継されていくんだろうかというのが率直な疑問として私自身としてはあるんです。
 ただ、物の本などを見ますと、例えば民事訴訟法の菊井=村松によれば、不起訴合意に関してなんですが、一般承継は当然認められる、それから、特定承継についても、権利と一体となっている場合には認められる、ただ、物権だとか手形とかいう場合については、権利の内容自体が固有のものがあるので、それは引き継ぎませんという考え方のようです。
 管轄の合意とか、不起訴合意と同じような形で仲裁合意も考えられるのではないかと議論はされていまして、仲裁に関しても、そこに記載されているのと同じような下級審の判例が現にございます。
 そのように考えますと、当事者の死亡や、法人を同じに考えていいのかというのはまた問題だと思うんですけれども、合併等の包括承継の場合に、仲裁合意というのは当然引き継ぐという前提で、特定承継の場合は不可分と認められる場合には引き継いで、例外的に引き継がないという考え方でいいのかどうかということについて、私もよく分からないものですから、御意見を伺いたいと思います。

 それから、破産手続に関しては、仲裁契約に拘束されるか、拘束されないかということについて意見が分かれていまして、更に権利行使する場面に応じて、破産者に由来する場合については仲裁合意に拘束されるけれども、債権者に由来する否認権行使のような場合については承継されないという考え方もあるようです。
 これについてもどういう形の整理の仕方をするのが一番合理的なのかというのがよく分からないところなので、教えていただければと思います。

 それから、第三者が紛争に係る権利や財産を差し押さえた場合についても、これは当然に及びますよということを前提にして注解などでは書かれているんですが、そういう考え方でいいのかどうか。これは一括して何かヒントになるようなことについて教えていただければと思います。
 よろしくお願いします。

□ これは、こちらから指名させていただいて、○○委員、承継のところを、従来どういうふうに考えられてきたのか。あるいは民訴の原則から考えるとどうなるのか、ちょっとレクチャーしていただけますか。

○ レクチャーというようなあれはないんですが、私自身は、菊井=村松に書かれているような考え方で基本的にはいいんじゃないかという理解を持っています。
 だから、先ほど来言われているように、仲裁合意がある契約なり権利というのは、一種その分の訴権が欠損したような権利であって、極端に言えば、自然債務のようなものであると。自然債務は解決の方法がないわけですが、それに準じて考えるとすると、特定承継の場合であっても、あるいは差押えの場合であっても、基本的には権利関係は承継されるということでいいのではないか。

 ただ、物権と書かれているように、物権は物権法定主義というものがありますし、手形上の権利については、権利内容の定形性というものが法定されているわけですから、これらについては原則的には承継しない。あるいは債権譲渡についても、異議なき承諾があるような場合は別なのかもしれませんし、そのあたり多少例外の余地はあるんだろうと思っております。

 破産の場合も、基本的には私は同じというふうに考えていいんじゃないかと。ただ、破産法59条や会社更生法103条、双方未履行を双務契約として解除できるかどうかということは、これはかなり議論があるようですけれども、私自身は解除できてもいいんじゃないかと。訴訟か仲裁かの選択権を管財人に与えてもいいんじゃないかというふうには思っておりますけれども、ここはやや違う考え方だと思いますけれども、否認権については、そもそも否認権について仲裁合意が成立している事態というのはどういう場合を想定しているんですか。

● 仲裁合意が拘束力があると、否認権の訴訟が提起できるのかどうか。

○ 当該契約、否認される契約について。

● そうです。破産者が第三者と契約をしている。破産者が行った仲裁合意について、管財人がそれに拘束されるとすると、訴訟としての否認権の行使ができないんじゃないか。

○ しかし、否認権というのは、当該契約を攻撃するわけですよね。

□ その契約について、傭船契約について紛争が生じた場合には、仲裁で解決するということになっていて、船会社が倒産したと。

○ その傭船契約を否認するわけですよね。

□ そうです。

○ 契約したら、攻撃対象にしているにもかかわらず、契約内容に拘束されるというのは、ちょっと。

● 攻撃対象にできるかどうかということ自体が。

○ 分離可能性がありますからね。

○ 更に考えてみたいと思います。

○ 仲裁手続中に特定承継の問題が発生した場合を想定しますと、その点に関して新たな争いが生じて手続が長引くおそれがあります。したがって、学説上の争いがあるままにせず、立法上の手当てをしておくべきだと思います。

□ 仲裁契約をした当事者の地位を他人に譲渡すれば、もう仲裁契約の拘束から逃れるということでは困ると思うんです。だから、そこのところを仲裁契約上の拘束力というのを、どの範囲まで及ぼしていっていいのか。包括承継だったらもちろん問題がないんですが、特定承継の場合は、私が今言いました件も、それで本当にいいのかどうかということがここでの問題なんです。

○ こだわるようで申しわけありませんが、今、座長が包括承継は問題ないとおっしゃいまして、一般承継に関しては異論はないと。○○委員も、特定承継の話だけされて、一般承継は異論がないことを前提に話されたと思いますけれども、私はそこもちょっと疑問がありまして、裁判を受ける権利というのは、基本的人権だとすると、一身専属権という余地がないのか。つまり、被相続人が相続人の裁判を受ける権利の放棄をできるのかという問題が全くないんでしょうか。

○ それは契約の合意の第三者効という観点から言うのか、私のように、そもそも、例えば自然債務だとすれば、相続で承継した人が訴え提起できないのは当然なわけです、債権を承継した人は。そういうふうに考えるのかという、考え方の違い。確かにいろいろな考え方はあるんだろうなと思います。

○ 特定承継の方は及ぼしても、分かった上でそれを買い受けるなり、譲り受けるなりするわけですから、いいんですけれども、包括承継の場合は、被相続人が裁判を受ける権利を放棄したからといって、当然に相続人がそれを継がなきゃいけないかどうか、やや疑問があるんです。

□ こういうことじゃないですか。裁判を受ける権利の放棄と言っても、一般的に放棄するわけではなくて、この法律関係で、この契約についての紛争は将来仲裁でやりましょうという意味での、非常に限定された趣旨の契約なり法律関係について、裁判ではない紛争解決方法でやりましょうというものですから。仲裁合意は絶対的な訴権の喪失ではないんです。相手方が抗弁さえ出さなければそのまま裁判になるわけですから。それは私は一身専属的なものだという程のことはないのではないかと思っています。

○ 私どもの実務でも、やはり包括承継の場合には、権利義務が一括して引き継がれている、仲裁合意もすべて承継されているというふうに考えていまして、あまり問題意識は持っていません。

 特定承継の場合には、ときどき問題になりますが、単なる債権譲渡であって仲裁合意は承継されていないのか、それとも契約上の地位が一括移転していて、仲裁合意も含まれて移転しているのかは、ケース・バイ・ケースで判断するのかなというのが今の実務でございます。

□ こういうケースを聞きたいんですが、建設工事請負紛争の中で、建物を建てた。2、3年経って、建物が傾いてきたというようなことがありますね。これは建物の瑕疵だということで争われた。しかし、その間に当初契約した人が建物を譲渡したというと、譲り受けた人と、建設会社との間の紛争について、この当初の仲裁合意が拘束をするという扱いなのか。それとも、それは裁判でやれという扱いなのか。どういうふうになっているんでしょうか。特定承継です。

○ 仲裁合意を認めた具体の事例があるかどうか、調べてみたいと思います。

□ これはかなりあると思うんです。建設工事紛争審査会ではたくさんの事件をやっていますから、途中で契約の当事者に特定承継があったというケースはあると思うんですが、ちょっとお調べいただけますか。

○ はい。調べてみます。

○ あと、先ほどの破産管財人の否認権の問題です。非常に難しい問題で、私もまだ全然検討してはいないんですが、この場合に管財人の否認権というのは、ちょっと何か別なんじゃないかなという感じがするんです。
 もう一つは、先ほどの議論に戻りますけれども、管財人は本来否認権を訴訟でしないといけないのに、仲裁でなければできないと。そこは仲裁の適格性の問題と結局リフレインするという感じになってきますね。
 1つのおもしろい問題だと思うんですけれども、直観的には別なんじゃないか。破産手続自体によって新たに権利行使するようなことであるとか、あるいは破産管財人の立場についていろんな議論がありますけれども、何かそんな感じがするんです。理論的ではありませんので、すみません。

□ この問題は恐らく仲裁法の中に規定するかどうかということが問題で、しかし、しない場合でも、前提として我々としてはどう考えておくかということで、今、事務局から問題が提起されたんだと思いますが、このくらいでよろしいですか。
 それでは、大変申し訳ないんですが、先に進ませていただきまして、今度は「その他」です。「仲裁合意の分離可能性について」です。

【仲裁合意についての検討項目案について 〜3 その他〜】

● 「仲裁合意の分離可能性について」は、アンケートの結果等からすれば、ほぼ異論がないのかなというふうに思いますが、もしも異論がございましたら、これについて御意見を伺いたい。

 併せて、仲裁合意に関して、他に論すべき点があるかどうかということについても一括して御意見を承れればと思います。

□ いかがでしょうか。

○ 他に論ずべき点というので、検討会の守備範囲と言いましょうか、ADR基本法の検討会の方で検討すべき問題と、それぞれどちらの方で。先ほども時効の問題が出ましたけれども、時効と引っくるめて、盛んにADRはADRの方で議論していまして。そのあたり、今の段階でもし分かることがありましたら、お教えいただくと、こちらも検討するのに助かるかと思うんですが。

● 今はまだ一読の段階で、ADRの方もそうだと思うんですけれども、ADRの1つが仲裁という関係でございますので、そのところが、どちらでどういう仕分けをしていくのかというのは、今の段階では何とも言えないところでして、それぞれ検討していく段階で、具体的な法案の姿みたいなものが見えてきた段階で、どちらに規定すべきなのかということも具体的に見えてくると思うんです。
 この検討会の場にはADRと兼ねていただいている委員の方もいらっしゃいますので、その辺のところの意見調整は密接に取っていきたいと思っております。

○ 今のお話に関係して、司法制度改革審議会の意見書の中で述べられているように、例えばADRの全部又は一部について裁判手続を利用したり、また逆に裁判手続の中で一部にADRを利用する、両手続の移行を円滑にするということになりますと、仲裁手続についても、その手続をどう裁判手続とリンクさせるか、という議論が出てくると思うんですが、これもADR基本法の方でおやりになるということになるんでしょうか。

● まだ、何を、どういう形でやるのかということ自体に、明確にお答えできるような段階ではないのかなと思います。今はもうちょっと全体像として、どういうことが問題になるのかという、問題点についていろいろ議論をしていただくという段階ですので、そういうものを踏まえて、徐々に骨格を明らかにしていきたいと思います。

□ 今分かっていることは、仲裁法は、とにかく仲裁法制として整備すべきである。これは非常にはっきりしている。ADRの方は、ADR基本法の制定を視野において検討を進めるということで、どの範囲はADRとして、どういうものをつくるか。今日顔合わせの序論的な議論をしただけでございまして、まだ進んでいないわけです。
 今の御質問では、私は仲裁については、多分、仲裁で独自の議論をして、そして、こちらでこういうふうにするということをしていただければ、それはそれで構わないのではないか。これはADRの方だから、向こうの顔を立てて、そっちで検討してくれというのではなくて、仲裁法として最も望ましいものは何であるかという御議論をどんどんしていただいて構わないのではないだろうかと思っております。

 よろしゅうございますか。分離可能性の問題はいかがでしょうか。

○ これを認めるということで、まず問題ないと私自身は考えております。

□ よろしゅうございますか。これは最高裁の判例もありますから、特に御異論はないんではないかと思います。
 それでは、途中で私時間を間違いまして、今日は5時までやっていいのかと思いましたら、そうじゃなくて、4時半までの時間をいただいていただけでございまして、大変恐縮いたしました。

 本日の議事はこれにて終了させていただきます。御熱心に第1回から内容に入って、白熱した議論を展開していただきまして、どうもありがとうございました。
 御了解を得ておきたいことがございます。本日の検討会の模様につきまして、午前中に行われたADRの検討会の模様と合わせまして、実は私、ADR検討会の方も座長を言いつかりまして、両方合わせまして、記者レクを行わせていただきたいと思います。仲裁の方もADRの方も、なるべく国民的視野に立って御理解いただいて、進めていかなくちゃいけないということを考えておりますので、私の方から適宜記者レクを行わせていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 事務局の方から何かございますか。

● 連絡事項なんですが、次回は、先ほど確認させていただいたように、3月11日月曜日、1時30分から5時まで、検討事項としては「仲裁人及び仲裁廷について」「仲裁廷の管轄(権限)について」「仲裁手続の進行について」ということを対象として議論をしていただければと思います。
 それから、本日お配りしました参考資料3のモデル法の条文と、それから仲裁法制比較表については、毎回参照していただくことになると思いますので、お手数ですが、御持参いただければと思っております。よろしくお願いします。

□ 重い資料でございますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 ほかに何かございますでしょうか。
 それでは、本日の会議はこれにて終了することにいたします。どうもありがとうございました。