第1回配布資料一覧
仲裁検討会参考資料2
仲裁合意についての検討項目案
〈 仲 裁 関 係 〉
(1) ADR・仲裁の必要性について
- 【第4回(H11.10.5) 松尾龍彦説明者(司法評論家・元NHK解説委員)】
- 紛争解決の手段として、裁判外の処理、いわゆるADRを拡充することが大事だと思います。複雑多様な紛争を早い時間で費用も安くて解決を図ろうとするこの紛争解決手段を選択する傾向が、今後より一層強まることが予想されます。訴訟による解決が適当な場合もあるでしょうが、調停や仲裁といった裁判外の解決処理を利用するニーズは増えるでありましょうし、すでに民事調停や家事調停、弁護士会による仲裁などが広く市民に利用されております。
- 【第7回(H11.11.24) 米沢進説明者(元共同通信社論説委員)】
- 仲裁のようなものが日本の中で非常によちよち歩きです。これもやらないと、訴訟自体が日本から逃げていくという状況が既に生まれておりますけれども、そういうことがこれからの大きな問題だと思いました。
- 仲裁制度についても、法制審議会で既にこれをどうしようかという議論がされているように聞いております。今、倒産法の方が優先していますから、仲裁法の改正問題は少し横に置かれているようでありますが、これもそう時間を置かずに可能ではないかと思います。それは当然に経済界などからも要望が出ていることですから、そのことは進めていっていただきたいと思います。
- 【第21回(H12.6.2) 竹下守夫会長代理発言】
- 国際商事仲裁の分野は、これから非常に重要な意味を持ってくると思いますので、是非この審議会としてもそれをバックアップすることを、考えるべきではないかと思っております。
(2) 仲裁法制の具体的内容に関する提言について
- 【第22回(H12.6.13) 細川清説明者(法務省民事局長)】
- ADRの関係では、やらなければいけないのは、現在の仲裁手続の法律が、昔のままになっておりまして、条文が非常に少ないので意味が分からないところとか、あるいは仲裁人が2人なのですが、2人で意見が分かれると仲裁ができなくなることになっているとか、仲裁人の選任の忌避を判決手続でするとか、いろいろ問題があります。
それからまた、国際的な仲裁を見ても、国際取引に関する仲裁のフォーラムが東京にはない、シンガポールとかそっちでされているという問題もあります。ですから、これは今、国連の国際商取引法委員会で、この問題を取り上げているのですが、それと併せて、仲裁法制を整備しなければならないというふうに考えているところでございます。
- 【第52回(H13.3.19) 竹下守夫会長代理説明(ADR勉強会の報告)】
- 「ADRの利用促進、裁判手続との連携強化のための制度整備」ということでございますが、これのポイントとして申し上げることができますのは、現在、UNCITRALにおいて作業が進行中でございますが、そういう国際的な動向を見ながら、国際商事仲裁を含む仲裁法制を早期に整備すべきである。さらに、ADRの利用促進、裁判手続との連携強化のための基本的な枠組みを規定する法律の制定をも視野に入れた総合的な検討を行う必要がある。その際、例えば、ADRの申立てに時効中断の効力あるいは時効停止の効力を付与すべきではないか、あるいは、執行力の付与を認めるべきではないか、法律扶助の対象とするべきではないか等の、いろいろな問題が出されておりますが、そのための条件整備をする必要がある。それから、ADRの全部又は一部について、裁判手続を利用したり、逆に裁判手続で部分的にADRを活用するという手続整備等を具体的に検討すべきであるということが言われました。
- これまで裁判所が行う民事調停、家事調停についてはその機関、手続、効力などを定める法律ができ上がっておりますが、仲裁法制は、非常に古い形のものが残っているだけでございますので、そういった国内の仲裁法制、さらに国際仲裁法制というものの整備を迅速に行う必要がある。先ほど申しましたようにUNCITRAL等の国際的な動向も踏まえて、可能な限り早急に着手すべきであるということが指摘されました。
- 【第52回(H13.3.19) 藤田耕三委員発言】
- 時効期間満了が迫っている事件について、時効中断の規定がないものですから、ADRに持っていきにくい。あるいは、紛争が解決した場合でも、執行の問題が残っておりまして、和解ですと、金銭請求の場合には、公正証書をつくったらどうかとか、あるいは和解が成立しても、和解と同じ内容の仲裁判断をするというようなことをやっております。それは執行のことをにらんでのことです。ただ、仲裁判断ですと、さらに執行判決を貰うということになりますので、訴訟を起こさなければならない。これも相当な負担でありますから、検討課題でありますけれども、決定手続で執行を認可するというような簡易な執行力の付与を考えてはどうかというようなことを内部で議論しております。
(3) 仲裁法制をめぐる条件整備について
- 【第19回(H12.5.16) 高木剛委員意見】
- わが国では、例えば裁判所の調停制度がADRの代表のように言われるようになっているが、半面で、民間ADRが育たなかったという状況がある。最近「町の裁判所」として弁護士会による仲裁センターが注目を集めているが、仲裁を含む民間のADRがもっと発展し、仲裁センターの数が増加していくようサポート体制を強化すべきである。
- 【第31回(H12.9.18) 高木剛委員説明】
- 裁判外の紛争解決という面も、こういう委員の皆さんは、ある部分、あるいは相当の部分で担っておられます。ADRについては、…新民訴の施行で旧法の第8編というのは切り離されたんだそうですけれども、この仲裁に関する法律、これは今検討が少し中断されておるんですか、そういう状況のようですけれども、この中でやはり準司法手続も含めたADRへの国民参加といったことを促すような、そういう趣旨も是非この法律に書き込んでいただく方がいいのではないかと思っています。
(参考) 仲裁等に関する国会審議(抜粋)
- 【第145回 衆院法務委員会 H11.3.30 伊藤眞参考人(東京大学教授)】
- 裁判所制度は基本的には納税者の負担によって維持されているわけでございますので、当事者の自己責任の原則を考えましても、裁判所以外の第三者機関によって解決可能な紛争につきましては、仲裁でございますとか各種の準司法機関による解決などをできる限り期待すべきものと思います。そういったいわゆる裁判外の紛争解決手続による解決が期待されない事件につきましては、裁判所が厳格な手続によって事実を認定し、判決の形で法を適用して解決をするということになるわけでございます。
このように考えますと、仲裁制度の強化でございますとか、公正中立的な立場から紛争の解決に当たることができる準司法機関の拡充が喫緊の課題ではないかと信ずる次第でございます。
- 裁判外の紛争解決機関、機構としてはいろいろなものがございます。例えば、これは場所としては裁判所で行われているわけでございますが、民事調停、家事調停というのも、合意に基づく解決という意味では一種の裁判外紛争手続だというふうに思います。それから、仲裁はもちろんそうでございますし、その他、行政機関や民間の第三者機関が行っておりますもの、こういったものもすべてそこに入ってくるかと思います。
ただ、御承知のように、例えば仲裁一つをとりましても、仲裁の根拠法となっておりますのは我が国で大変古い法律でございまして、現代の求められているような仲裁のよるべき法として適当かどうか、このあたりも大いに検討をしなければならない問題があるかと思いますし、そういった手続のいわば近代化、現代化を通じて、こういったものについて、より多くの紛争がそこで解決をされるような方向に持っていかなければならないというのが基本的な認識でございます。
- 【第145回 衆院法務委員会 H11.3.31 保岡興治委員(自民党)】
- ビッグバンで日本が国際化して、どんどん取引も外国と通じなきゃならない、交流していかなきゃならないという中で、裁判が遅い、わかりにくい、あるいは裁判を終えた後の執行も時間がかかる、こういうことでは、法があって法なきがごときそしりを免れない。あるいは仲裁センターなども、欧米はもちろん充実しておるように聞いておりますが、アジアですらシンガポールとかあるいはオーストラリアとかいろいろなところでどんどん優秀な仲裁機関ができていく。日本はそういう仲裁機関というものの整備も非常に立ちおくれているというようなこともあります。
こういうことになると、日本は国際社会で競い合って元気のいい国になろう、すばらしい知恵と工夫を生み出す国になろう、こう言っても、なかなかそれがかなわない。それはもう喫緊の課題で、待ったなしで、制度改革も十年、二十年で進めるというようなものではない。この変化とスピードについていける改革が必要だ。
そういう意味で、非常にこの司法改革は喫緊のテーマを私たちに与えていると思われますが、いかがでございましょうか。
- 【第145回 参院法務委員会 H11.5.18 小島武司参考人(中央大学教授)】
- それからもう一つ、第二に、これを通じて、司法がややもすれば硬直な基準を使用して退嬰的になりやすいというものが、合意を中核とするADRの新しいフレッシュな感覚に基づくより豊かな正義が常に法というものを新鮮に活性化していき、豊かなよりレスポンシブルなものにしていく、そういう機能があるのではないかと思います。
そういう意味で、ADRの進展というのは積極的な意味があるのではないか。そういう意味で、我が国の従来伝統的に盛んに行われてきました調停なども本当の意味で生かしていくべきであろうと思いますし、新たに仲裁、とりわけ国際仲裁の活性化というのが大きい意味、深い意味を持っているのではないかと思います。
- 【第145回 参院法務委員会 H11.5.25 田中直毅参考人(21世紀政策研究所理事長)】
- 現在、裁判回避という問題がビジネスの先端分野で起きております。それは、例えば知的所有権のような分野において当事者間で紛争が起きた場合に裁判制度を通じて公開していくのにはなじまない、研究開発型のものについてはそれになじまないものがあるわけですが、これは仲裁人を指定しまして仲裁制度に移行するという形で、日本の裁判あるいは日本という場所における仲裁が回避されて、ほかの例えば米国に移るというようなことが起きております。これは、全体として我が国における非常に高度な複雑な問題で生じています紛争処理手続に残念ながら問題がある。したがって、我が国のインフラストラクチャー、基盤というものを使わずに他に完備した制度があれば他でこれに代替するということが現実に起きているわけでして、このことについての危機感もかなり高じているというのが現状かと思います。
- 【第150回 衆院法務委員会司法制度改革審議会に関する小委員会 H12.11.08 竹下守夫(司法制度改革審議会会長代理)】
- (国際取引紛争等について英米が優位に立っており、日本の司法が利用されないのではないかとの意見に関する答弁)
私どもの審議会といたしましては、それでは御指摘の問題にどう対応するのかと申しますと、一つは人の面でございますが、もう一つ直接の問題としては、やはり国際仲裁というものにつきまして日本の制度が十分でないというので、この点については早急に整備をする必要があるだろうというふうに考えているところでございます。