首相官邸 首相官邸 トップページ
首相官邸 文字なし
 トップ会議等一覧司法制度改革推進本部検討会仲裁検討会

仲裁検討会(第12回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日時
平成14年12月12日(木)13:30〜16:55

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)青山善充(座長)、秋吉仁美、加藤久喜、中野俊一郎、中村達也、松元俊夫、三木浩一、山本和彦、吉岡桂輔(敬称略)
(事務局)古口 章事務局次長、近藤昌昭参事官、後藤 健企画官、内堀宏達参事官補佐

4 議題
(1) 検討事項案その23(仲裁法制に関するとりまとめについて〔その4〕)
(2) 検討事項案その24(仲裁法制に関するとりまとめについて〔その5〕)
(3) 検討事項案その25(仲裁法制に関するとりまとめについて〔その6〕)

5 配布資料
検討会資料36検討事項案その23(仲裁法制に関するとりまとめについて〔その4〕)
検討会資料37検討事項案その24(仲裁法制に関するとりまとめについて〔その5〕)
検討会資料38検討事項案その25(仲裁法制に関するとりまとめについて〔その6〕)
参考資料17消費者保護の特則(解除権構成)のイメージ図
参考資料18仲裁制度における消費者保護の特則に関する意見(内閣府国民生活局作成)

6 議事(○:委員、□:座長、▲:内閣府国民生活局、●:事務局)

(1) 仲裁法制に関するとりまとめについて〔その4〕

事務局から検討会資料36について説明がされ、これについて次のような意見交換がされた。

(1 書面による通知の在り方について)

○受領拒絶・不在不送達の場合にも、付郵便送達(民訴法107条)のように、送付されたとみなす制度を設けるのはどうか。

□付郵便送達は、裁判所が公権力の行使として差置送達(同法106条)等を試みても送達できなかった場合の規定である。仲裁廷にそこまで強い権限を認められるかが疑問である。

○強制執行等の法的効果に絡んでくるので、みなし規定ではなく、民訴法に基づいた送達ができるようにする必要がある。

○通知はいろいろな効果に結びつくものであり、他の事柄以上に国際標準を意識する必要がある。モデル法と異なる仕組みを作ると、外国の当事者に不安感を与える。

□受領拒絶・不在不送達の場合のみなし規定は、疑義が多く出され、また、モデル法にも規定がない。検討会としては原案の形でまとめることでよいか。

(異論はなかった。)

(2 紛争の仲裁適格について)

○仲裁適格が認められる範囲を現行法より狭める趣旨ではないことを確認したい。「和解をすることができる」の語にした理由を説明されたい。

●「和解」を「処分」と表現しても、仲裁適格の範囲がより明確になるわけでもない。現行法の実質を変えるわけではないので、現行法で用いられている文言を変えるのは適切ではない。

□「和解をすることができる」を広く解釈する現在の解釈論を前提として、原案のとおりとすることでよいか。

(異論はなかった。)

(3 仲裁契約の書面性について)

○UNCITRALの議論が固まらない現時点で口頭引用を取り込むことが難しいことは理解できる。原案の方向性でよい。ただし、口頭引用を書面概念に含まない趣旨ではなく、そこは解釈に委ねる、口頭引用を書面概念に含む余地がある趣旨であることを確認したい。

○仲裁契約の方式は最も国際的な統一が必要な部分である。将来的な希望だが、UNCITRALの議論が固まり、モデル法の改正やニューヨーク条約の解釈宣言がされた場合は、速やかに仲裁法の改正を行ってほしい。

□口頭引用の点を将来の解釈に委ねる趣旨であることを前提として、原案のとおりとすることでよいか。

(異論はなかった。)

(4 妨訴抗弁について)

○「やむを得ない事由」が広がりすぎてはいけないとの懸念は分かるが、ごく例外的な場合に救済される余地を認めてほしい。

□妨訴抗弁を留保した上で本案の答弁をすることは問題なくできるし、信義則上救済されるべき事案は、解釈によって救済されるであろう。原案のとおりとすることでよいか。

(異論はなかった。)

(5 仲裁権限の有無の判断について)

○仲裁廷が権限なしと判断した場合も、明らかに仲裁手続をする意思がない場合は別だが、仲裁廷自身が悩んだあげくに権限なしと判断した場合等、裁判所が仲裁権限ありと判断すれば仲裁廷は仲裁手続を行う場合もあるのではないか。

●従前、数回にわたって議論したが、UNCITRALにおいてもモデル法制定時にその点の議論がされたことを踏まえると、仲裁権限なしの場合は不服申立てを認めない方がいいのではないかとの意見が多かった。また、仲裁判断取消しの手続に比較しても、簡易・迅速な手続とされていることも考えるべきだと思う。

○モデル法を踏襲すべきとの意見は理解できるが、仲裁権限なしの場合に、仲裁判断後に仲裁判断が取り消されると、仲裁廷に負担がかかる。早期に解決できる仕組みが必要ではないか。仲裁契約存在確認の訴えをすることによって仲裁権限の有無を確定させることは可能か。

●確認の利益があれば当然可能である。

□原案のとおりとすることでよいか。

(異論はなかった。)

(6 時効の中断について)

●不合理な時期を手続開始時とする合意がされる例は希有と思われること、ドイツ法(民法)はそのような場合を解釈に委ねていることから、不合理な時期の合意を解釈に委ね、単純化した案を提示する。

○当事者間の合意で、仲裁手続開始日に時効が中断すると決めた場合は、その時点で時効中断効を認めてよいか。また、その場合に、相手方が仲裁申立書を受け取らなかった場合はどうなるか。

●1点目については、そのとおりである。2点目については、訴え取下げや訴え却下の場合に時効中断効が生じないのと同様に、時効中断効が遡及的に消滅することになろう。

○「当事者間に別段の合意」には仲裁機関の規則は含まれるか。

□その仲裁機関の規則に従う旨を当事者が合意しているので、含まれる。

○時効期間満了直前に裁判外の催告をし、その後6か月以内に仲裁申立てをする場合があり得る。仲裁手続の開始を「裁判上の請求とみなす」と書くとか、民法153条に「仲裁手続の開始」と書くとかして、裁判外の催告の後6か月以内に仲裁手続を開始した場合の時効中断について疑義がないようにしてほしい。

●実質は確保できると思う。

□方向性としては原案を承認する、立法化の際は民法の時効中断効が生じなかったときの手当てとワンセットで考える、条文の規定ぶりは、法制的な問題もあるので事務局に任せるということでよいか。

(異論はなかった。)

(7(1) 裁判所の証拠調べの援助について〜即時抗告について〜)

○原案を前提にすると、裁判所はどのような資料に基づいて、どういう場合に援助をし、どういう場合に援助申立てを却下することになるのか。

●証拠調べの必要性の判断は仲裁廷の判断を前提とし、裁判所は申立ての適法性を判断する。もっとも、立証事項に比して明らかに多すぎる証人・長すぎる尋問時間のような場合は、権利濫用としてはねることができる。

○第三者が所持する資料を入手するためだけに、仲裁契約があるかのように装って仲裁人をかたって援助を申し立てるようなケースも考えられる。濫用的、不当な申立ては援助しないことができる旨を明文で規定できないか。一般条項としての権利濫用として解釈に委ねるより、明文の方が使いやすい。

○それは民事訴訟でも起こりうるケースである。民訴法に規定がないのに仲裁法にだけ規定を置く理由はない。また、証拠調べの援助は多くの国がモデル法どおりの規律としており、日本だけ異なる規律にすると海外の当事者の不信感を招き、国際協調の観点からも問題がある。

○今のケースのような懸念は理解できるし、そのような場合に証拠調べの援助をすべきでないことは当然である。しかし、一般条項を規定するのは法制的にも難しいであろうし、解釈によって十分対応可能と思われる。

○濫用的な申立ての却下を明定できないのなら、民訴法2条のような、当事者・仲裁廷の誠実義務を明定できないか。

○諸外国の例でも、援助申立てまでは仲裁法が規律するが、具体的な援助の手続は裁判法で規律している。民訴法2条の信義則は適用されると解してよいのではないか。仲裁法に置くべき規律ではない。

○暴力団からされた援助申立て等、濫用的な申立てで、却下する際に適切な証拠を摘示するのが難しい場合もあり得る。そこを柔軟に判断すべきと期待されると、即時抗告に結び付けるのはいかがなものか。

○民事訴訟においても、濫用的な申立てだから判断しないということにはならない。仲裁は訴訟と同様に終局的に判断を行うから、訴訟と同じだけの証拠調べの機会が必要である。

□即時抗告は認める。要件の明確化については、実質については異論はないと思われるが、明文を置くか否かは、法制的な問題もあるので、事務局の検討に委ねるということで、原案のとおりとすることでよいか。

(異論はなかった。)

(7(2) 裁判所の証拠調べの援助について〜海外からの援助申立てについて〜)

○外国の仲裁廷からの援助申立てを認めない理由は何か。

●日本の裁判所は日本の税金で成り立っている。外国の私人からの申立てを無限定に共助してよいのかに疑問がある。また、他の規律でも、外国から直接日本の裁判所に申立てを認めるものはない。

○議論の実益はないのではないか。仲裁手続を実際に行っている場所が外国でも、仲裁地を日本と定めれば、援助申立てを受理せざるを得ない。規定を置かず、解釈に委ねれば足りる。

○日本に証人・証拠物がある点で日本と関連性があるから、援助申立てを認めてもおかしくないのではないか。

●外国からの申立てを援助しないという明文を置く趣旨ではない。モデル法1条(2)項のように仲裁法は仲裁地が日本国内にある場合に適用する趣旨の規定を置き、仲裁地が外国にある場合については解釈に委ねる趣旨である。

□外国からの援助申立てを認める旨の明文を置かないことでよいか。

(異論はなかった。)

(8 仲裁判断の預置について)

○従前、任意的預置を主張してきたが、廃止説が多数ということであれば、こだわらない。

□仲裁判断の預置は廃止することでよいか。

(異論はなかった。)

(9 仲裁契約の方式の準拠法について)

○原案は、仲裁地が日本以外にある場合にどこの国の法が適用されるかは解釈の問題であり、解釈の結果として日本法が適用される余地は封じていないとの理解でよいか。

●そのとおりである。

□渉外実質法とすると、モデル法が仲裁契約の書面性を広げるよう改正されたときに改正モデル法に則った契約を日本で認められないおそれがあるので、解釈の余地を残すよう、規定を置かずに抵触法的処理をすることにする。この方向でよいか。

(異論はなかった。)

(10 裁判所の管轄について)

●仲裁判断の取消し及び承認・執行にのみ裁量移送を認める趣旨は、両者が共に提起された場合に判断の統一を図る点にある。この点が、他の援助申立てと質的に異なる。

○モデル法5条のような、裁判所の関与範囲を規定する条文は置くのか。

●似たような規定は置きたいと考えている。

□原案のとおりとすることでよいか。

(異論はなかった。)

(11 多数当事者仲裁について)

●仲裁廷のうち少数の仲裁人のみが併合・参加に反対した場合の仲裁人契約の帰趨に疑義が生じたため、従前の事務局案と異なり、必要性の高い仲裁人選任のみを規定する案とした。

○仲裁人の数及び仲裁人の選定について手当てするとの理解でよいか。

□そのとおりである。

□原案の方向性でよいか。

(異論はなかった。)

(2) 仲裁法制に関するとりまとめについて〔その6〕

事務局から検討会資料38について説明がされ、これについて次のような意見交換がされた。

○現在有効に締結されている仲裁契約の効力はどうなるのか。

●実質的には、新法施行前に締結した仲裁合意の効力には影響しないことになると思うが、就業規則・労働協約等の関係もあり、規定の具体的な内容は今後の立法化の際に検討したい。

□方向性としては原案のとおりでよいか。

(異論はなかった。)

(3) 仲裁法制に関するとりまとめについて〔その5〕

事務局から検討会資料37について説明がされ、内閣府国民生活局から参考資料18に基づく説明がされた。
これについて次のような意見交換がされた。

○仲裁法に暫定的措置が置かれた場合、その後の検討はどうなるのか。

▲どのような仲裁機関ができるかとセットで考えざるを得ない。また、ADR検討会における調停についての検討、国民生活審議会における消費者保護の見直し等をふまえ、将来的に仲裁がどういう役割を担うかを見て考えないといけないので、現時点では何とも言えない。仲裁法ができてしばらく経たないと難しいのではないか。

○消費者が仲裁を望んだ場合、Ⅰ案では仲裁を選べないが、それは消費者の利益を害するのではないか。

▲紛争発生後に再度仲裁契約を締結すればよい。問題があるのは事業者が嫌がる場合だが、その場合は事業者はその後は事前の仲裁契約を締結しなくなるだろうから、問題が生じるのはその1回限りである。

○事前に仲裁契約を締結していても、事業者は、個別の事案ごとの判断で、自分にやましい点があると思えば、専門家のいる仲裁を避けて裁判に持ち込もうとする。その後の新たな契約の時は、今度はきちんとしようと思い、事前の仲裁契約を締結する。事前の仲裁契約の効力を認めないと、このように、消費者の言い分が認められるべきときこそ事業者に逃げられてしまう。

○消費者の選択肢としては、II案の方が広い。II案は、消費者が訴訟を選べば訴訟に行くし、仲裁を選べば必ず仲裁になる。Ⅰ案の場合は、消費者が仲裁を選んでも必ず仲裁になるとは限らない。
また、熟慮の機会の保障については、原案は、あらかじめ説明書を送付した後、仲裁廷で再度説明をする仕組みである。それでもなお不足というのなら、仲裁廷で説明を受けて判断できなければ留保の機会を与えることは考えられる。しかし、熟慮の機会を与えた結果は尊重すべきとするのが21世紀の日本のあるべき姿であろう。
もっとも、この検討会には消費者代表がいないので、最終結論は消費者代表が参加する場での議論に委ねる趣旨で、暫定的措置とすることとし、この検討会としての結論はII案がよい。

○紛争発生前と紛争発生後では、仲裁と訴訟のどちらを選択するかの動機が異なる。紛争の内容によって、仲裁では不利と思えば訴訟に逃げられる。Ⅰ案では消費者も選択できるが、事業者も選択できる。II案は消費者は選択できるが事業者はできない。また、そもそも、Ⅰ案をとればII案とかなり違う結果になるのかも疑わしい。紛争が発生して仲裁手続がされると、紛争発生後の仲裁契約が黙示的に締結されたと解釈されることになろう。

○EU指令は、消費者だから保護するのではなく、何が不合理な契約かを抽出する努力をしている。この検討会の結論としては、時間の制約もあるので、II案でやむを得ないが、将来的にもII案がベストだと考えているわけではない。

○紛争発生後の仲裁契約についても方式規制は必要ではないか。また、仲裁判断書の送達については、所在不明の場合のみなし送達について消費者の特則を設ける必要はないか。

○紛争発生後の合意の場合は、消費者の意識も紛争発生前とは異なる。

○消費者紛争でも、多額の紛争で海外で執行されることも考えられる。モデル法や条約と異なる方式を定めると、海外で執行できなくなるから、軽々に違う方式を定めるべきではない。

○個別労働関係紛争と消費者紛争で構成を異にする理由は何か。

□1点目は、労働契約は継続的契約であり、紛争発生後であっても雇われている限りは自由に解除の意思を表明できない場合が想定されるので、解除権を認めても選択権が保証されることにならない。これに対し、消費者紛争は通常は1回限りの紛争である。
2点目は、労働紛争についてはまだ仲裁機関がないが、消費者紛争については既に仲裁のケースがあり、評価を得ている仲裁機関もある。現在健全に育っている仲裁機関の芽を摘む構成は妥当ではない。
3点目は、労働紛争の仲裁については判例がないが、消費者紛争については、将来の仲裁契約を有効とした最高裁判決があり、それを尊重する必要がある。
この検討会に消費者代表がいないのは事実だが、だからこそ9月にはヒアリングを行い、その後も消費者から多数の意見を頂戴し、今日も、消費者から寄せられた意見を各委員に配布して検討している。この姿勢は消費者にも理解していただけるものと思う。

○労働と同様に、消費者紛争についても、新法施行前の仲裁合意を有効とする経過措置を検討してほしい。

▲消費者が仲裁を利用できるようになることは歓迎する。利用状況を踏まえて制度設計をしたい。

□検討会の意見としてはII案でまとまったということでよいか。

(異論はなかった。)

(4) 次回の予定

 次回は、2月13日(木)に行われる(開始時刻は未定)。

(以上)