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仲裁検討会(第13回)議事録

司法制度改革推進本部事務局



1 日 時
平成15年3月6日(木)16:30〜17:30

2 場 所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室(永田町合同庁舎2階)

3 出席者
(委 員)
青山善充(座長)、秋吉仁美、加藤久喜、日下部聡、中村達也、松元俊夫、三木浩一、山本和彦、吉岡桂輔(敬称略)
(事務局)
古口章事務局次長、近藤昌昭参事官、後藤健企画官、内堀宏達参事官補佐

4 議 題
(1) 開会
(2) 仲裁法案要綱(案)及び立案状況について(事務局説明)
(3) その他
(4) 閉会

5 議 事

【開会】

○青山座長 それでは、予定した時刻がまいりましたので、第13回仲裁検討会を開始させていただきます。お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。今日は中野委員と谷口委員が御欠席ということでございます。
 お手元にお配りしてございますのは、現時点での仲裁法案の要綱案、正式版ではございませんけれども、事務局によりますと、仲裁法案につきましては、3月14の閣議決定を目指して、今、準備を進めているということでございます。法案の内容は、この要綱案と同じ内容のものになるということでございます。いよいよ法案が国会に提出される段階までまいりましたのも、これもひとえに各委員のこれまでの熱心な御議論によるところが大であったと思います。改めて御礼申し上げます。
 本日の検討会は、特に具体的な検討事項というものは用意しておりません。そこで、各委員におかれましては、これまでの仲裁検討会における議論を振り返っての御意見や御感想、2番目に、成立が見込まれる仲裁法の解釈や運用上のコメント、3番目に、日本の仲裁の活性化のための御意見、そういうことをお伺いできればと考えております。
 まず、事務局から、前回の検討会以降現在までの経緯及び今後の予定について、簡単に御説明をお願いいたします。

【仲裁法案要綱(案)及び立案状況について(事務局説明)】

○近藤参事官 お手元の検討会資料39に、仲裁法案の要綱案を示させていただいております。これを御覧いただきたいと思います。
 もう一つ、参考資料19「仲裁法案要綱(案)とモデル法との対応関係」というものが、左側が要綱案の規定の内容、右側がモデル法の何条に相当するものなのかということを書き出したものでございます。目を通していただければと思います。
 昨年12月にとりまとめられました仲裁検討会としての御意見を踏まえて、事務局において具体的な立案を行ってまいりました。その経緯等について、簡単に御説明したいと思います。
 条文化に当たっては、検討会の御意見を踏まえ、内容及び構成とも、できるだけモデル法に近いものとすることに心がけました。お配りしました参考資料19、先ほど御覧いただいたものですが、モデル法のうち、一部の定義規定、解釈規定等を除き、実質的な規定は、その本質を変容することなく、ほぼすべて採用しております。
 要綱案に沿って御説明しますと、参考資料19を御覧いただければ分かりますように、章立てについては、第一から第八まではモデル法とほとんど同一であって、法案においても、これと同じようにするつもりです。考え方によっては、仲裁人の選任や忌避、仲裁廷の権限に関する事項も仲裁手続の一環として位置づけられるのですが、モデル法との共通性を重視して、狭義の仲裁手続のルールに関する事項と、仲裁手続を主催する仲裁廷の構成や権限の問題とを分離して規定するというモデル法の方式を採用しております。
 また、個々の条文の順序、規定内容についても、合理性の認められる範囲内でできるだけモデル法に近いものにできたのではないかと思っております。
 一方、モデル法が日本の法律とは規定振り、スタイル等がかなり異なっていることや、モデル法には1つの条、1つの項の中に多数の条文が並列されているものが多数あるため、必要な範囲で規定の整序を行っております。このようなアレンジはモデル法の実質を改変するものではなくて、規定の明確化を図るものとして、読みやすくしたものであります。
 具体的なポイントについてですが、検討会での御議論を踏まえて条文化をしております。時間の関係で主要な点に絞って説明をさせていただきます。
 まず第一の「総則」ですけれども、御要望の強かった第一の四「裁判所の関与」、2ページにありますが、この規定自体は設けることを予定しております。裁判所が法律に規定のない事項を取り扱うことがないのは当然であって、規定を設ける必然性はないという考え方もございますが、仲裁法にこのような規定を設けることの意義については各方面の理解を得ることができました。条文化をするということでございます。
 また、現行法は1条で一般的に民事訴訟法を準用しておりますが、仲裁の自律的性格と合致しない点もあることから、4ページの第一の十のところで、裁判所の手続についてのみ民事訴訟法を準用するものというふうに改めております。
 他方、モデル法4条の異議権の放棄については、具体的にこの規定が適用される中心的場面は狭義の仲裁手続の場面と考えられますから、13ページの第五の三の仲裁手続の方に移させていただいております。
 それから、4ページ目のところですが、第一の十二の書面による通知については、モデル法3条と実質的に同一の規定を置く予定です。それに加えて、検討会でも要望の高かった、裁判所においてする送達についても、裁判所が必要と認める場合にこれを行うものとするとして、検討会の御議論を踏まえた形で設けることを予定しております。
 次に、第二の「仲裁合意」についてですが、モデル法と同様の規律に加え、電磁的記録による場合も書面要件を満たすものとする予定です。これによりモデル法の改正に先んじて、電子メール、電子データ交換等による仲裁合意の締結が法律上も可能になるというふうに考えております。
 それから、仲裁合意の独立性については、モデル法は16条の仲裁廷の管轄のところに規定されておりますが、この検討会でも議論されたように、仲裁合意の独立性は、管轄の場面だけでなく、その他の場面でも問題となりうることから、これを独立させて第二の仲裁合意の効力に関する規定の中に設ける予定としております。
 続きまして、第三の「仲裁人」、7ページ以下のところですが、これも検討会の御議論を踏まえて、モデル法11条1項の資格に関する規定を除いて、ほぼモデル法を踏襲しております。
 それから、多数当事者仲裁については、検討会では独立のテーマとして御議論いただきましたが、最終的に、仲裁人の数の決定や選任について規定を設けることとされましたことと、当事者が二人の場合と多数の場合の切り分けを明確にするという観点から、第三の「仲裁人」のところで一緒に規定をしております。例えば、第三の一の3のところ、それから二の4のところが、多数当事者を表しているところです。
 なお、仲裁人の任務の終了事由については、モデル法では15条に定められていますが、同条は、仲裁人が欠けた場合の後任の仲裁人の選任方法についての規定である上、内容も明確さを欠くため、内容を整理した上、独立の項を設ける予定でございます。独立の項を設ける予定というのは、具体的には、検討会で検討していただいたものを土台にして、条文立てとしては考えております。
 第四の「仲裁廷の特別の権限」につきましては、その趣旨はモデル法と同一です。ただし、仲裁合意が無効である場合について、モデル法は、前提問題についての判断又は本案についての仲裁判断のいずれかの方式でするとされていますが、仲裁廷が権限なしと判断した場合には、本案についての判断がされないため、前提問題と位置づけるのは不正確となること、また、仲裁手続の進行が不可能となることから、第四の一の3に記載しておるのですが、仲裁手続の終了決定、21ページに記載している終了決定をするという形にしております。
 第五の「仲裁手続」につきましても、ほぼモデル法を踏襲しております。これに加えて、仲裁手続の開始に関連して時効中断規定を置いております。また、裁判所において実施する証拠調べについては、現行法上規定の内容が明確でなかったため、申立ての要件、認められる証拠調べの範囲、証拠調べの実施の在り方等についての明確化を図っております。
 第六の「仲裁判断及び仲裁手続の終了」につきましても、ほぼモデル法に沿った内容としております。仲裁判断において準拠すべき法の問題は、条文化にはかなり難しい部分があろうと予想しておりましたが、仲裁の特質や実態についての各方面の理解を得ることができて、体裁の面からもモデル法にかなり近い形になっているのではないかと思われます。具体的には、18ページの第六の一のところで、準拠すべき法は当事者の合意により定めることとする、それから、民事上の紛争に最も密接な関係がある国の法令であって、事案に直接適用されるべきものを適用しなければならないということを2項で規定する予定であります。それから、衡平と善により判断するという形のものも残ってございます。
 それから、和解につきましては、検討会での御議論を踏まえて、仲裁廷等による和解の勧試についての規定を設ける予定です。ただ、和解勧試に対する承諾やその撤回は、その重要性から、デフォルトルールとしてですが、書面によることを要するとしております。
 なお、仲裁判断の訂正、解釈及び追加仲裁判断についてのモデル法の規定は、わずか1箇条の中に規律が微妙に異なる3種類の事項が詰め込まれて、大変わかりにくくなっているため、これを3箇条に分離して、規定を整序する予定でございます。
 それから、第七の「仲裁判断の取消し」については、取消原因について、モデル法に沿ったものとしております。規定振りについては多少の変更はあるかと思いますが、いずれもモデル法の趣旨を明確化したものであり、その実質を変ずるものではございません。
 また、仲裁判断の取消しの裁判の審理の在り方、裁判に対する即時抗告、裁判の移送等についても、第七の二から六までに記載されているとおり、検討会における議論を反映したものでございます。
 それから、第八の「仲裁判断の承認及び執行」について、その実質はモデル法と同一です。ただ、仲裁判断の承認に関して、民事訴訟法118条、民事執行法24条に定める外国判決の執行判決の制度をも参酌して、独立の規定を設ける予定でございます。というのは、外国判決の場合には、民事訴訟法においてまず承認について規定があって、執行についてさらに民事執行法上に執行判決の規定がある、それにならったような形の規定振りになっております。モデル法上は、執行決定に相当する部分しか事由が書いていなかったものですから、そこのところは、日本の国内の法制に合わせております。事由についてはモデル法のとおりです。
 それから、第七及び第八については、モデル法の実質を採用することにより、国際的な標準に則った制度となり、日本の仲裁制度がより国際性を帯び、かつ分かりやすいものになると考えております。
 第九の「雑則」につきましては、仲裁人の報酬、仲裁費用の予納及び分担についての規定を置く予定です。基本的には検討会での議論を踏まえたものですが、多少規定を整序していること、それから、費用については、費用について定めない場合は各自負担とすることとするのがデフォルトルールとなるという形になっております。
 第十の「罰則」につきましては、これまで刑法に規定されていた仲裁人に係る贈収賄の規定をそのまま仲裁法に移したものでありますが、国外犯処罰規定を置くという予定です。
 それから、第十一の「施行期日等」についてですが、このうち、二2及び3の、消費者と事業者間の将来紛争についての仲裁合意及び労働者と使用者間の将来の個別労働関係紛争を対象とする仲裁合意の特例に関して、若干御説明したいと思います。
 これらの仲裁合意の位置づけは、検討会でも御議論いただいた結論にのっとり、暫定的措置として、消費者と事業者間の将来紛争の仲裁合意に関しては解除構成を採用し、将来の個別労働関係紛争を対象とする仲裁合意に関しては無効とする予定でございます。なお、消費者と事業者間の将来紛争の仲裁合意につきましては、消費者保護を徹底し、また、未行使の解除権が永続することによる法律関係の不安定さを除去する等の見地から、事業者が仲裁申立てをする場合について、口頭審理を必須のものとし、口頭審理において消費者に対して仲裁制度や解除権についての説明を行った上で、消費者が解除権を放棄する旨の意思を明示しない限り、仲裁合意を解除したものとみなすとしております。消費者が口頭審理に欠席した場合も同様です。
 短期間の作業でしたので、十分ではない部分もあると思いますが、ともかくも、国際的にもモデル法を採用したと言われるのではないかと、今のところ思っております。事務局としましては、法案が早期に成立して、実務で活用されることを祈念しております。

○青山座長 どうもありがとうございました。
 御質問等がありましたら、承りたいと思います。私、要綱案がこのとおり法案となると申しましたが、まだまだ「規定を整備すること」というようなところもありまして、内容が煮詰まっていない部分があって、事務局としてどこまで答えられるか分かりませんけれども、御質問があれば、どうぞ。

○中村委員 14ページの時効中断の効力のところでございますけれども、これは検討会でずいぶん議論したかと思いますが、時効の中断の効力が発生する時点については、明記しないということでございましょうか。

○近藤参事官 この時効中断の効力のところについては、条文化作業の段階でいろいろと問題点も指摘されて、時効中断に関しては権利確定説と権利行使説の二つの考え方があって、権利確定説的な発想であれば訴状を提出した段階で当然時効が中断するのですが、権利行使説の考え方からすると、行使した権利が特定されなければいけないということがございまして、いつ特定されたのかということが、理論上は問題になりうる。仲裁手続の問題としては、付託行為と、その後に自分の請求を明らかにしなければいけないという、二段階構造になっておりまして、当初の付託行為の段階でどの程度請求が特定されているのかということが理論的には問題になりうると。そこについては、明確な形にはできませんでした。そこは解釈の余地がありうるということになっております。

○中村委員 もう一点だけ。26ページの罰則の贈収賄の規定でございますが、これは、条文上、明文で規定がされるということでよろしいのでございますか。

○近藤参事官 はい。全部明文で規定することを予定しております。

○中村委員 諸外国の仲裁法を見たところ、刑法の規定が仲裁法の中に規定されている例は、私の知る限りないものでございますから、どういうふうに規定されるのかなというのが、素朴な疑問として感じたものでございます。

○青山座長 ほかに御質問がなければ、御意見に移らせていただいてよろしいですか。
 自由討議ということでございます。先ほど少し申しましたけれども、これまでの議論を振り返った御感想や、あるいは仲裁法の解釈や運用に関するコメントや、あるいは仲裁の活性化についての御意見というようなことでもけっこうでございますけれども。
 これはアイウエオ順にということで。今日は最後でございますので、全員、自由に思いの丈をお話しいただきたいということで。私は最後にいたしますので、まず、秋吉委員、お願いいたします。

【その他】

○秋吉委員 仲裁の実務や世界の動きなどにつきまして、委員の先生方からいろいろ御教示いただきまして、ありがとうございました。
 裁判所におりますと、つい、制度が濫用とか悪用とかされた場合にどう対処するかといった方面に目が向きがちで、そういった意見を多く申し上げたような気がいたしますけれども、こうして立派に制度の骨格ができましたからには、是非、仲裁についてよい運用をしていただいて、さらに仲裁制度が発展するように祈っておるという気持ちでございます。
 これからは、国民の皆さんが、紛争解決を考えるに当たって、この関係の紛争はこのメリットがあるから仲裁にしようとか、この関係の紛争はこういうメリットがあるから裁判手続にしようとか、紛争ごとに多様な選択肢の中から場面に合った解決手段が選択できるような、多彩なメニューというのがそろっていって、その中で仲裁機関の方と裁判所とで、ともに充実させて、制度の仕組みを作り上げていけばいいなと考えております。
 とりとめのない感想になりましたけれども、本当に、どうもありがとうございました。

○青山座長 どうもありがとうございました。それでは、加藤委員、お願いできますか。

○加藤委員 私は実際に仲裁をさせていただいている建設工事紛争審査会を所管する立場にあるのですが、議論の過程で消費者関係の問題が出てきまして、私も力足らずの面もあったのかもしれませんが、十分に御説明できなかったのかなという気が、少ししております。
 今後の話ではございますけれども、仲裁法ができまして、仲裁が十分活用される場面になることを望むわけでございますけれども、そういうふうになる過程におきまして、建設工事紛争審査会ですとか、そういう仲裁が消費者保護という面からも十分機能しているんだということも周知していただきたい。私どももお手伝いさせていただきたいと思いますし、そういう、現に動いている機関、これから動く機関がさらに活発に利用され、発展するように、必要な御支援の方もお願いいたしたいと思っております。
 それから、もう一点でございます。我々はできれば手続法の中にはああいう規定は置かないで、実体法の中で規定を書いていただけたらということも、お話しさせていただきました。今回の結論については、「当分の間」という暫定的措置ということですので、今後、恒久的な法制の検討を行う場面があろうかと思います。そういう際には、消費者の団体の方はもちろんでございますけれども、仲裁に関する識者、実務家も交えた形で、あるべき姿を議論していただきたい、その際には、消費者保護の観点はもちろんでございますけれども、仲裁制度の健全な発展という面にも十分御配慮いただきたいということでございます。
 そういう観点からいたしまして、私どもの建設工事紛争審査会ですとか、実績はまだまだでございますけれども住宅紛争処理機関、そういった、今後の活躍が十分期待されている機関の活動が阻害されたりすることがないように、十分その辺も検討の中で御議論いただいて、あるべき新仲裁法の活性化に向けて、消費者問題についても対応いただけたらと、私としては思う次第でございます。

○青山座長 どうもありがとうございました。それでは、日下部委員。

○日下部委員 青山座長以下、大変な作業で、本当に御苦労様でした。
 経済産業省は、2つやりたいと思っております。この新しい法律を、経済の基本的な仕組みとして根付かせたい。そのために1つ目は、今、経済制度全般が大きく改革する時期で、経済産業省は、なるべく事前型のレギュレーションをやめて事後紛争のうまい処理の方策を充実したい、究極的にはそれが市場機能の活性化につながるという問題意識の中で、一連のいろいろな規制改革の議論をやっているのですが、そうした中で仲裁法の充実やADRの充実は不可欠な要素でありまして、今回の仲裁法の改正が、おそらく第1番目の一里塚であると思っております。したがって、経済システムの改革の一環として、仲裁法の改正ができあがったという点を、要するに政策論としての重要なアイテムであるということを含めて、宣伝をしていきたいというのが1点です。
 2つ目は、実務運用の世界で、経済産業省の関係では日本商事仲裁協会、今年の1月から名称が変わりまして、今まで貿易局が所管していたのですけれども、所管替えになりまして、国際商事仲裁のみならず、国内の仲裁に力を入れようという問題意識になった上で、私の課の方に所管替えが行われたばかりでございます。その同じタイミングで仲裁法が改正されるということでございますので、まずは、国際商事仲裁は日本がなかなか使われないという、国際商事仲裁の空洞化という現象を、この法律を契機に逆転したいなと。これは仲裁協会の方と一緒に、法律の整備はできましたので、あとは、英語でもできるようになるとか、そういうところも含めて、日本の中で国際商事仲裁がこなされるように、いろいろな運用上の工夫をやっていきたいと思っております。
 それから、国内仲裁については、下請法が改正になって、サービス分野まで取り込まれるとか、あるいは競争上の紛争がこれからどんどん増えてゆくとか、おそらくE−コマース、IT関係で新しい紛争が出るとか、いろんな事象が出てくるかと思います。制度が出てきて、この法律がどう活かせるかといった面も含めて、新しい運用の在り方、場の設定ということも考えていきたいと思っております。
 最後にお願いなのですけれども、事務局を努めていただきました古口次長、近藤参事官、おそらく施行までにいろいろとPRされると思うんですね。一緒に組んでやりませんか。
 正直申し上げて、なかなかこれまで経済産業省はこういう仲裁といったことを、予算を使ってシンポジウムをするとか宣伝をするとかいう議論をあまりやってこなかったのですが、是非一度、これを契機に今度やってみたいと思っているのです。商事仲裁協会の方も非常に熱心でございますので、できれば司法制度改革推進本部の事務局も、法案が制定されたあとすぐ解散ということではなくて、そのまま是非、施行の準備とか、施行のPRというところで、一緒に組ませていただければと思っております。是非よろしくお願いしたいと思います。

○青山座長 どうもありがとうございました。中村委員、お願いいたします。

○中村委員 まず、1年間、いろいろお世話になりまして、ありがとうございました。いろいろと失礼なことばかり申し上げたかと思いますが、この場をお借りしてお詫び申し上げます。また、いろいろと委員の皆様にたくさんの御教示をいただきまして、ありがとうございました。感謝申し上げます。
 私は日本商事仲裁協会に勤務しているということで、今お話もありましたが、日本商事仲裁協会の主な事業は国際商事仲裁でございますので、やはり、国際商事仲裁の活性化という観点から見ますと、今回の法律が、まだ仔細に見ておりませんが、比較表を見る限り、モデル法をほぼ採用した形で作られるであろうと認識しており、まずは、日本もモデル法を採用したというふうになれば、国際商事仲裁の活性化に大きく寄与することになるだろうと思います。したがって、これを契機として、まだまだ日本の国際商事仲裁というのは不振、不振と言われておりますけれども、何とか諸外国に負けずに、アジアの国際商事仲裁センターという地位を目指して努力してまいりたいと思います。
 国際的にはおそらくこの法律が、日本語では分からないということだと思いますので、トランスレーション等が、法律が成立したあとすぐに必要になってくるかと思いますが、そのあたり、どういう形でトランスレーション等が出てくるかというのも、非常に関心を持っております。特にトランスレーション、おそらく公的なものとしては無理なのかもしれませんが、やはり、いち早くトランスレーションを出して、日本もモデル法の内容に沿った形の法律ができたということを、世界に向けて発信すべきであろうと思います。
 先ほどお話が出ましたとおり、やはりPRという面で、国際の方は国際でございますが、国内の方も、仲裁と言いますと、我々は1年間どっぷりとつかって議論しましたので承知しておりますが、一般的には、けんかの仲裁という、どうもよくないイメージがあるやに思います。この法律ができて、民事紛争の、裁判に代わる手続だということを、一般の皆さんにもよく知ってもらうためのPRというものがもっともっと必要だろうと。特に新聞紙面を見ても、最近は、けんかの中に入って仲裁を行ったというたぐいの記事もよく見かけられますので、一般の人は「仲裁」といっても、我々が議論した仲裁というイメージは持っておられないと思いますので、そういったものではない、裁判に代わる有効な紛争解決手段なのだということを周知するためにも、PRをする必要があるだろうと思います。でなければなかなか仲裁というのは使われにくいと思いますので、そういった面で、日本商事仲裁協会でも努力していきたいと思います。

○青山座長 どうもありがとうございました。松元委員、お願いいたします。

○松元委員 1年間、皆様にいろいろお教えいただきまして、ありがとうございました。このような形で新しい法律ができるということは、非常に喜ばしいことで、中村委員がおっしゃったように、モデルローがほぼ採用されたということで、外国に対しても、日本の仲裁法は、1890年のではなくて、モデルローを採用していると言えます。そしてまた、UNCITRALの作業部会で検討された部分も一部取り入れられていますので、モデルローの採用が遅れてもかえってよかったと思っております。
 できることならば、UNCITRALの作業部会はまだまだ積み残しの議論もあるようですから、結論が見えてきたら、まだできないうちからこういうことを言うのはおかしいですけれども、できるだけ改正作業をするようにしていただきたいと思います。日本法の場合は、作ってしまうとあとは全然変えないというのが多いようですから。
 それから、英訳文も必要だと思っております。日本独特の言い回しと言いましょうか、外国人には分からないだろうというので、あえて日本語をローマ字で表現するなどということはやめていただきたい。ちょっと疑義があるけれど、まあ、モデルローのこの言葉でいいかという程度の、試訳みたいなのでやっていただけるとありがたいと思っております。
 シンポジウムについては、任意に行っております国際仲裁連絡協議会という、花水弁護士が座長をしている団体がありますが、10月18日(事務局注:10月16日に変更)に、弁護士会館のクレオ(講堂)で仲裁法のシンポジウムを行うことを計画しています。ひとつはそういう方法もありますし、国内各地でもっとPRが必要です。私も新聞で仲裁という言葉を見るとがっかりするんですね。口論の仲裁に入って刺されたとか何とか。
 やはり、国際仲裁のメッカはロンドン・ニューヨークですし、韓国あたりでも、国際仲裁を年間150件くらいロンドンでやっているそうです。日本も韓国も、もともと大陸法の国ですから、アジアで中心というと、このあたりがもう少ししっかりしなければいけないなという感じを持っております。これからも皆さんと親しくなった機会に、いろいろな面で協力し合って、仲裁を発展できればよいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

○青山座長 どうもありがとうございました。それでは、三木委員、お願いいたします。

○三木委員 世の中の動きがきわめて早い中で、今後思わぬ形で仲裁というものが必要になるということが、いつ出てきてもおかしくないという状況にあろうかと思います。もれ伺うところによりますと、携帯電話とかインターネットのような、最近の電気通信の分野における様々なトラブルについて、仲裁を利用して効果的な紛争解決ができないかというような声も最近一部にあがっているように聞いております。そのような場合には、匿名による情報発信をした者の通信の秘密の保護と、他方で、その情報によって損害を受けた者の利益の調和といったものを考えなければいけないわけですが、裁判では一方の当事者が匿名によって手続を進めるといったことは困難でありますので、仲裁というADRを利用して紛争解決を図るというような道も、場合によっては模索されていく可能性があるのではないかと思います。
 今回の立法で消費者と事業者との間の紛争に関する暫定的な規定が置かれたわけですが、これから条文の最後の文言の詰めの作業があると思いますが、事務局におかれましては、そうした新しいニーズの芽をつぶさない形で、慎重な文言の選択を行っていただければと思っております。
 先ほど来ほかの委員の方からも話が出ておりますように、仲裁法案要綱は、我が国の立法上の様々な技術的制約の中で、事務局の御努力によりまして、かなりモデル法に近い形になるのではないかと思われます。その点では事務局の御努力に心から敬意を表したいと思います。今年も5月と秋にUNCITRALの仲裁作業部会が予定されておりますが、そのような場、それ以外の場も含めて、機会がありましたら、日本の新しい仲裁法が、モデル法に沿った形でできあがる予定だということは、なるべくPRに努めたいと考えております。
 1年間、どうもありがとうございました。

○青山座長 ありがとうございました。それでは、山本委員、お願いいたします。

○山本委員 まず最初に、このようなきわめて大部な法案の要綱案を、これだけの短期間の議論の中で完成したということは、各委員の御努力、特に事務局の大変な、昼夜を分かたぬ御努力があったものということについて、敬意を表したいと思います。
 それとともに、おそらくそのような作業が可能であったのは、これまで仲裁法の分野において学界、実務界の双方からの十分な議論の積み重ねがあったことによるものだろうと思います。そういう先人の御努力の中でこういう作業が可能であったのだろうと思います。
 規定の中身についても、先ほど来御意見がありますように、基本的にUNCITRALのモデル法の中身を相当程度忠実に反映したものになっているということにも敬意を表したいと思います。私自身がかつて関与したUNCITRALのモデル法としては、国際倒産に関するモデル法があります。それも現在、外国倒産手続の承認援助法をはじめとして、日本法に採用されておりますが、その時の議論をもれ承る限りにおいては、UNCITRAL等で議論された内容を日本法に採用していただくについて各方面の御理解を得ることは、大変困難な作業であるということを承知しておりますので、今回の事務局の御努力も、おそらく大変なものがあったのではないかと推察いたします。その中で、このような形で要綱案をまとめられたということに敬意を表したいと思う次第であります。
 具体的な中身に細かく立ち入ることは適当ではないと思いますが、1点だけ申し上げたいのは、やはり、消費者と事業者間の仲裁合意の問題でございます。この点については、率直に申し上げて、従来、学会における議論なども、私も含めて、必ずしも十分でないところがあったのではないかと思います。しかも、この点が昨年の夏以降、様々な点で大きな問題になったこともあり、そして、この検討会の議論も各委員の意見がかなり分かれて、大枠、どういう制度を採用するかという議論に相当の時間が割かれ、最終段階でこういう、いわゆる解除構成というものになったということもあり、細かな制度の詰めというものは必ずしも十分でなかったという面があったことは否めないのではないかと思います。
 ただ、この点については、経過措置ということで、将来、しかるべき場所において再び御議論がなされることを前提としたものと思いますので、先ほど来PRというお話もありましたが、仲裁法制に対する国民の理解というものを深めていきながら、そして、この当面の経過措置の運用を見守りながら、やがて将来そういう議論がされていくのだろうと思いますので、その議論の中で、よりよい解決策が採られることを期待したいと思っております。
 最後に、個人的な感想ですが、私自身は生来不勉強なもので、仲裁法というものについて十分な勉強をしてこなかったものですから、この1年あまりの間、この検討会での御議論で、各委員の御意見をお伺いして、大変勉強になったところであります。今後は、これを無駄にしないで、仲裁法制の将来の進展に少しでも寄与できるように精進してまいりたいと思っております。

○青山座長 どうもありがとうございました。吉岡委員、お願いいたします。

○吉岡委員 私は国内の、弁護士会の仲裁の経験からこの検討会に参加させていただきまして、おかげさまで、1年何か月か、大変視野が広がったという感じがいたしますけれども、もともと国際商事の分野、あるいはモデル法の分野についての研究が進んでいたものでございますから、当初は追いつくのが大変でして、果たして役に立てるかなと思っておりました。
 国際も商事も国内も民事も、すべて対象とする法律を作るということになったために、いろいろと苦労した面もあったのだろうと思います。途中で、消費者問題が起きたときには、別の法律にした方がいいのではないかというような声も、内部では一部に出たこともありますけれども、しかし結果的には、一本の法律としてまとまったことは、大変よかったのではないかと思います。消費者問題については、夏以来、激論になったわけでありますけれども、これはやはり、国際的なモデル法等の世界と、国内の諸事情、とりわけ消費者問題を扱っている弁護士の生の体験その他から出てくるものとのギャップをどうやって埋めるかという、大変難しい作業だったと思いますけれども、結論としては、当分の間ということで、最終的に全会一致でああいうふうになったということは、大変私としては感動的な感じを持っております。
 今後、弁護士会の仲裁としては、この法律をさらに生かして、発展に寄与していきたいと思っておりますが、当面は各会の規則を、この法律に基づいて整備していく、とりわけデフォルトルールとの関係についても早急に整備する必要があると思っております。例えば、今まで仲裁判断書に仲裁地という記載はしていませんけれども、早速そういうのも書かなければいけないとか、細かいことを言えば、大変な作業もあるだろうと思います。
 いずれにせよ、今後、国内仲裁について、第二東京弁護士会から始まったこの制度は、10年以上、それなりに発展しておりますから、さらにこれを、裁判手続と並び立つ制度になるように、今後とも活性化を図っていきたいと思っております。
 最後になりますけれども、ここでいろんな、他の各機関の方々とも一緒に勉強してきたわけでございますので、今後は各機関どうしの連携等の面からも、発展していくことを願いたいと思っております。

○青山座長 どうもありがとうございました。いろいろ御意見が出ましたけれども、事務局の方で何か答えられること、あるいは何か御感想のようなものがあれば、お願いしたいと思います。

○近藤参事官 この仲裁検討会なのですが、今御挨拶をいただいて、今日これで全部終わったという雰囲気があるのですが、仲裁検討会としては、今後、ADRの方のことで何か問題があった場合に、開かせていただくこともあり得るという含みを残しまして。当面は開催は予定はしませんけれど、仲裁検討会としては、引き続き置いておくということにしたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○青山座長 そういうことでよろしゅうございますか。では、そういうことで。
 それでは、私からも、少しコメントをさせていただきたいと思います。もう既に各委員の方が言い尽くされたことでございますので、あまり言うことはございませんけれども、振り返ってみますと、昨年の2月5日でしたか、第1回がありまして、ちょうど13か月で13回の会議をやったということでございます。最近の法律の成立はスピード化されておりますけれども、しかし、全部でおそらく50条を超える、これだけの法律を1年間でやり遂げたというのは、今までに例がなかったのではないだろうか、少なくとも私の経験では初めてでございます。これはもちろん、UNCITRALモデル法という手本があり、仲裁研究会試案というものもあったわけではございますけれども、そして、私は当初座長を引き受けてくれと言われたときには、こういうものがあるのだから1年間あればできるというふうに思っていたのですが、やってみますと、途中では、これはとても1年間では難しいのではないかと思った時期もあります。
 最初はこの検討会は議事録を公開する際に顕名にしないということで始まりました。これは、お互いに自由な発言を妨げられると困るということがあったわけですけれども、議論が進んでゆく間に、お互いに気心も分かりまして、そういう変な発言をするという危惧も全くなくなって、顕名にしても自由な発言ができるという確信を得ましたので、それではということで、顕名にして、今日に至っているわけでございます。
 この検討会の中身から見ますと、前にも言いましたけれども、各検討会の議事録の中で、たぶん毎回一番分厚い議事録を作り続けてきたのではないかと思っております。そのくらい、内容が豊富な会議を13回してきたと思います。御意見の中にもありましたけれども、やはり1つの山場は、消費者仲裁のところをどう作るかということでございまして、特に、建設工事紛争審査会のように、消費者との間の紛争を着実に解決している機関もあるということから、どういう形にするかということをかなり苦慮したわけですけれども、最終的には、本文は本文として、附則の中に、消費者仲裁は、当分の間、将来のものについては解除構成にするという形で、何とか落ち着きました。これはおそらく双方にとって、まだ不満が残る解決であったと思いますけれども、それは別の場での検討に委ねて、仲裁検討会としてはこれが精一杯であったと、私としては思っております。
 1年間でこういうものができたということは、やはりなんといっても委員の方々が本当に、日本の仲裁を何とかしなければいけないという熱意と使命感に燃えて、毎回、調査もよくやっていただきましたし、お調べになった上で、いろいろな見解や資料をお出しいただいて、ここまで来たということと、委員の意見を聞きながら、何とかまとめ上げるための原案を作ってくれた事務局の方々には本当に頭が下がる思いでございます。
 この要綱案はやはりまだ要綱案でございまして、「・・・・すること」の「こと」を取ればすぐ条文になるものもありますけれども、中身がまだ決まっていないものもある。これは我々の議論を十分に踏まえた上で条文の姿にするべく、事務局が各方面と協議をしているということで、今日はお許しいただきたいと思っております。
 これからの作業は、これをきちんとした法案の形にして国会に提出していただいて、それを通過させるのがこれからの第1番の課題でございますが、2番目の課題は、使いやすい仲裁法ができたということをPRするとともに、それを実務に定着させていくということ、それからそのために仲裁人の育成、なり手を作り上げていかなければいけない、それは法律を作るのとは別の努力をしなければならないと思っております。さらに、改正のための手続ということにも触れられましたが、私も全くそうだと思いまして、これを不磨の大典のようなことにしたのではまずいので、今の仲裁法は1890年にできて、113年経つわけですが、やはり、5年とか10年の期間で見直すということをしていかないと、世の中の動きについてゆけない、だから、改正はどんどんやっていくようにしていただきたい。そのためには、所管官庁がどこなのかということも検討していただくということになるだろうと思います。
 1年1か月にわたって御協力いただいた各委員、事務局の皆さんに感謝したいと思います。どうもありがとうございました。
 古口次長、どうぞ。

○古口次長 本当に、大変な分量の作業をやっていただいてきたのだなと思っております。私自身は、毎回事前に全部読んでくること自身が相当大変な資料で、この場で必死に聞いて必死になって頭の中を回転させることの繰り返しで、ずいぶんたくさん勉強させられました。13回という数だけではなくて、毎回毎回の作業量がきっと、11の検討会がございますけれども、11の検討会の中で一番たくさんの時間をかけて皆さんが作業をし、かつ議論をしていただいたということになると思います。きっと、何よりもそれを支えたのが、いい仲裁法を作ろうという皆さんの思いだったのではないかと思います。
 確かに今後ともやることはございますが、我々ができることはどこまでかという問題はあるとは思いますけれども、こういう歴史の場面に遭遇させていただいた者として、引き続き仲裁に関心を持ち、個人的にも、そういうことも含めて、やれることをやっていきたいと思っております。
 是非今後ともよろしくお願いいたします。

○青山座長 事務局から、もう一つ資料がございますので、その説明をお願いいたします。

○近藤参事官 お手元に「行政機関の保有する情報の公開に関する法律18条の規定に基づく諮問について(答申)」というものを置かせていただいていると思います。本検討会の第1回の会合の内容を記録した録音テープに対する情報公開請求に対して、情報公開審査会の答申がなされたというのがこの答申でございます。
 以前にもお知らせしましたが、本検討会の第1回の会合の内容を記録した録音テープについての不開示決定に関し、異議申立てが行われ、当本部からの諮問により情報公開審査会で審議中であったところ、本年2月7日付けで、議事の公開の協議の部分は不開示が妥当であるが、その他の部分は開示すべきであるという答申がなされました。詳細につきましては、御参考に答申をお手元にお配りさせていただきましたので、御参照ください。
 事務局といたしましては、答申の内容を踏まえて今後適切に対処してまいりたいと考えております。

【閉会】

○青山座長 この件に関しまして、何か質問等ございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、検討会自身が今日解散するわけではない、先ほど、ADRがらみで、検討会自身は続くという御説明でしたけれども、作業としては一段落といいますか、大部分終わったということでございますので、本当に、1年間の長きにわたり、大変御苦労様でございました。
 また招集することはあるわけですか。

○近藤参事官 あり得ます。

○青山座長 ということでございますので、それまではしばらく待機ということでございます。
 本当に、どうもありがとうございました。

(以 上)