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仲裁検討会(第2回)議事録司法制度改革推進本部事務局
【開会】
【仲裁合意の承継について(前回の補足)】 □ それでは、今、事務局から御説明がありましたが、仲裁合意の承継につきまして、承継があった場合にどうなるのかということについて、前回私の方から御質問をいたしましたが、早速○○委員の方から資料を提出していただきました。
○ それでは、御説明させていただきます。
□ どうもありがとうございました。いろいろ御疑問や御議論もあるかもしれませんけれども、今日はたくさんの資料がありますので、第二読会の際に御議論をいただきたいというふうに思います。 【仲裁人及び仲裁廷についての検討項目案】 □ それでは、本日は、先ほど事務局から説明がありましたように、3つの資料がありまして、仲裁人及び仲裁廷についての問題、仲裁廷の権限の問題、仲裁手続についての問題、この3つの資料が出ておりますが、最初の仲裁人及び仲裁廷に関する問題について御議論いただきたいと思います。 【I 仲裁人の数について】 □ まず、最初は、仲裁人の人数の問題を取り上げたいと思います。
● Iのところですけれども、仲裁人の人数については、当事者が合意により自由に定めることができると考えられますが、この点に関する合意が存在しない場合の標準的な数について規定を設ける必要が考えられますので、それを何人とするかについて御議論をいただければと思います。
□ 仲裁の人数は(1)(2)(3)と3つの選択肢を提示しておりますけれども、どうぞどなたからでも御自由に御発言をいただけますでしょうか。
○ 一点だけでございます。「(3)仲裁の目的の価額により、1人又は3人とする」という点ですが、実務では、仲裁手続で仲裁人が選定された後、申立ての変更ということで、請求の趣旨の拡張がされることが結構ございます。
□ ○○委員お願いします。 ○ いろいろ御異議があると思いますけれども、私どもは、ここにありますように手続の迅速でありますとか、費用の点を考えると、補充的な規定ではありますけれども、原則は1人という方が、今の日本の実態に合っているのではないかというふうに思っております。
○ 私どもの審査会の場合には、建設業法で仲裁人の数は3人とするというのがはっきり書いてございまして、そのようにやっておりますが、おそらく実態としましては、かなり技術的な紛争が多いものでございますので、法律関係者のほかに技術に詳しい者、あるいは行政的な知見を有する者も含めて、3人ということです。
○ 弁護士会のことも参考のところに出ているとおりでございます。
□ これは、要するに前提としては仲裁人の数は、当事者が合意できるということを前提とした上で、合意がなかった場合にどうするかという問題です。
○ 実務的には、おっしゃるように1人が望ましいケースというのはかなりあるだろうと思います。特に少額の事件に関しては3人の仲裁人ではとても費用がままならない。
□ ほかに御意見ございますでしょうか。 ○ 私は実態がよく分からないところもあるんですけれども、3人に決めておいて、それを1人に変えるというのは、何か軽く見るような感じがあって、なかなかやりにくいんではないかという気がします。
○ 先ほど○○委員のおっしゃったように、おそらく当事者で選ぶということになりますと、やはり1人にまとめるのが難しいだろうと思います。したがって、規定の上では3人の方がよいでしょう。 ○ 補足でございますけれども、私も同じ意見で、結局、アドホック仲裁の場合に問題になるんだろうと思います。仲裁機関を使う場合には、規則がございますので、したがって当事者が合意した規則の中に、仲裁人の数についての取決めが規定されております。
□ 分かりました。今日は、この問題は第一読会ですので、いろいろ御意見を伺うということで、どちらということを決定するわけにはいきません。全体を見ないうちに部分を決めるというのはよくないと思いますので。大体の感触はよろしいですね。
○ まだ未検討ではございますけれども、基本的には一般法と特別法の関係に立つというふうに考えておりますので、あまり今の手続を変える必要は感じておりません。 ○ 実は先週に私が現在担当しております人権擁護法案を国会に提出しておりまして、同じような規定を置いているんですけれども、特段の規定を設けていない部分については、仲裁合意の規定を準用するという形で規定しておりますので、人数について特別法に3人という規定を置けば、当然準用から外れて3人という規定が適用になると思います。 |
【II 仲裁人の資格について】 □ それでは、仲裁人の数の問題は、このくらいにいたしまして、次に「II 仲裁人の資格について」でございます。これも事務局の方から御説明をいただけますでしょうか。 ● 資料5の2ページの末尾から3ページ目を御覧ください。仲裁人の資格について検討すべき事由は、かなりの数に上りますが、アンケート調査の結果では、制限を設けるべきではないという意見が多数でございました。
□ ありがとうございました。仲裁人の資格の問題につきましては、まず、議論を2つに分けて御議論をしていただきたいと思います。
○ これは、仲裁人に対する信頼というのが仲裁の一番の根幹であろうかと思います。
□ その他というのは。 ○ 今、ここにございますように、被保佐人や公権を剥奪された者などです。 □ 分かりました。 ○ ここのところの考え方ですけれども、要するになるべく広い対象範囲で、その問題についてふさわしい仲裁人を入れるという観点からしますと、この規定は、特にモデル法の規定なんかを見ますと、どちらかと言うと、消極的な資格と言いましょうか、およそこういう人は資格者になり得ないと、制限的に解釈する部分を見れば、自然人でなければいけないと、それが最小限度だと思うんです。
○ 必ずしも十分知っているわけではございませんけれども、基本的には○○委員がおっしゃったように私も理解しております。
□ お答えいただけますか。 ○ アンケートのところでは、1つの問題点として指摘がありまして、会として十分検討したわけではありません。
○ よろしいでしょうか。先ほど信頼性の点から考えますと、後見が開始されているようなものは除くべきではないかという御意見もございましたが、私の考えといたしましては、欠格事由につきまして近年の立法では、そのような制限を設けることが真に必要であるかということを非常に慎重に検討いたしまして、できるだけ制限を置かない方向にあるのではないかと理解しておりますので、仲裁法の整備に当たりましても、今までにない欠格事由を置くということには、極めて慎重であるべきではないかというふうに考えております。
□ 少し私の意見を言わせていただいてよろしゅうございますか。
○ はい。 □ そうですか。日本海運集会所の場合も、船価鑑定の場合も自然人でやっているわけですか。 ○ はい。 □ 分かりました。いかがでしょうか。法人が出てきたのは、更生管財人なんかは、当然法人も管財人になれるという規定があるものですから、では仲裁人はどうなのかということから出てきたと思いますが、何か。 ○ 自然人ですけれども、規定の上では、この資料の参考の中にございますように、仲裁法試案の中にある、仲裁契約で法人その他の団体が仲裁人として規定されているときは、その団体は仲裁人を選定する権限を有するといったような注意規定があった方がよいと思います。例えば、本件について紛議が生じたときには、社団法人日本海運集会所の仲裁によるとだけしか書いていない場合、当然、そこの規則によるのですが、それを非常に狭く解して、これは法人だから規定自体が無効であるといったような主張をされては困るわけです。せいぜい注意規定ぐらいかなと思っています。 ○ 今、○○委員がおっしゃったところはもっともで、最低限こういうものがないと、法人が指定された場合に無効になってしまうようなことは避けた方がいいと思います。
□ いかがでしょうか。 ● ○○委員の今の御発言で、少しお聞きしたいんですけれども、法人でもいいということになれば、注意規定的なものはないわけでございますね。 ○ 法人が仲裁人になり得るとすると、そこは多分、可能性は2つあり得て、仲裁合意に法人の名前が書いてあったときに、実は当事者の合意の意思としては、当該法人が指定する者であるという意思解釈ができる場合もあるでしょうし、法人そのものだということもあるでしょう。したがって、その場合には、例えば、当事者の合意がいずれか不明のときには、その団体が仲裁人を選定する権限を有すると推定する旨の規定を置くとか、ちょっと分かりませんけれども、何らかの立法的、技術的な手当ても要るかなと思います。
● 法人でもいいということであれば、法人を指定していれば法人自体が指定されているという。 ○ という解釈があり得る。そういう可能性が出てくると思いまして、そこは確かにおっしゃるとおり、技術的にややこしい問題が出てくるんではないかと思います。 ○ ○○委員に伺います。仮に法人を認めた場合、忌避は法人に対して行うんでしょうか、それとも法人の中で仲裁を担当する自然人に対して行うことなんでしょうか。 ○ 私もその点はよく分かりませんが、おそらく両方に関わってくるんではないかと思います。
○ ルールという形にする限り、積極的に法人はいいと規定している例が、とっさに浮かばないのですが、モデル法を含めて、自然人を想定したと思われる規定があることが多いわけです。代表的には、今申し上げた忌避事由とか、忌避手続に関する規定などは、モデル法を見ても自然人を想定したと思われる規定が置かれている。
□ ○○委員の御質問ですが、私も広くは知らないんですが、自然人に限るという明文の規定はあまりないと思います。
○ 今の座長の御発言に関連してですけれども、先ほど○○委員が挙げられた仲裁法試案の規定ぶりは、私は内容的には、特に大きな異存があるわけではないんですけれども、ただ、仲裁法試案にある2項のような規定を置こうとすると、どうしてもそれを導くために1項を置かないといけない。
□ ○○委員どうぞ。 ○ 私も先ほど来、○○委員、あるいは座長がおっしゃったことと全く同じように考えているんです。
● やはり必要性がまず第一だと思うので、確認させていただきたいんですが、法人を仲裁人にする必要性というのは、特段に今のところ考えられないというふうに伺ってよろしいんでしょうか。 ○ 結構かと思います。 □ よろしゅうございますか。それでは、大体この問題の方向性が出てきたように思います。
○ 私もあくまでも、自然人と書いた場合のことですから。 □ はい、分かりました。 【III 仲裁人の忌避及び退任について 〜1 忌避事由について、2 忌避事由開示義務について〜】 □ 次に仲裁人の忌避及び退任の問題でございますが、事務局から御説明をお願いいたします。 ● 事務局の問題意識としては、資料5のIII の3ページから4ページにお書きしましたとおりです。
□ 今日は、第一読会ですので、自由な観点から御意見をいただければと思います。
○ 忌避事由の点からだけ、もう一つ加えていただきたいと思います。UNCITRALの忌避事由として独立不偏ということ、independenceとimpartialityとの2つがセットで使われております。
○ 私も今の○○委員と同じでございまして、特に英国法で独立を排除したという点です。不偏ということで十分かなと思っております。
● 公正を妨げる事情との関係で、具体的に何か例を挙げて論じた方が論点を議論しやすいんではないかなと思うんですが、裁判官の忌避事由として公正を妨げる事情としてよく議論されるのは、裁判官の娘婿が事件の代理人だった場合に、公正を妨げる事情にならないというふうな形で議論されている。
○ 私もおそらく裁判官の忌避事由よりは広いだろうと、今の事務局の説明と同じような印象を持っています。
○ 今、○○委員の方から御紹介があったのは、民事訴訟法23条の裁判官の除斥事由と非常に共通していると思うんですが、私どもの審査会でも内規で民事訴訟法23条をなぞるような欠格事由と言いますか、これに該当する委員は、担当の委員には任命しないということでやっているんですけれども、民事訴訟法24条の裁判官の忌避の規定なんですが、ここで議論しているのは、23条の除斥ものみ込んで、全部24条の忌避として議論しようとか、そういう話だという理解でよろしいですか。 ○ そうです。 ○ 裁判官との関係で申しますと、なかなか一律には仲裁人と裁判官の関係というのは論じ切れないところがあるんだろうと思います。
○ 若干話が広がるかもしれませんが、私は、今の忌避事由で、不偏だとか、公正を妨げる事情というふうに規定するとして、裁判との違いで一番重要なことは、仲裁においては、仲裁人に就任する者が忌避事由に疑義があると思われる事情を就任時に開示するということ、これが一番基本的で重要なことであると思います。つまり、開示は、忌避事由の存否というのは難しい事案であると思いますけれども、相手方の当事者が忌避するのか、あるいは忌避するという意思表示を示す段階で、当該仲裁人が辞任をするとか、そういった問題を、その段階で解決するわけです。
○ 澤田先生の論文を拝見いたしましても、先ほど○○委員がおっしゃったように、当事者選定の仲裁人のことを考えますと、独立ということはあまり期待しない場合がいいんではないかという御議論はあるかと思いますので、そういう意味では、先ほど○○委員がおっしゃったように、不偏又は独立というよりも、不偏だけでいいのかなとも思うんですけれども、一方ではUNCITRALの模範法が、そもそも当事者が仲裁人を選定して、その上で第三仲裁人を選ぶという規定を書いているということも込みで考えますと、「不偏又は独立」は1つのフレーズとして、そういう仕組みを前提とした意味合いのものとして解釈すればいいのではないかという気もいたしますし、どこまでこの辺は模範法から離れるのがいいのかという問題かなというふうに思います。 □ 忌避事由はそういうことかと思います。
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【III 仲裁人の忌避及び退任について 〜3 忌避手続について〜】 □ 忌避手続です。これが、かなり問題があると考えておりますが、その点は、今日の資料の5で言いますと、5ページに書いてあるところです。
○ 私もよく研究しているわけではないので、正確なことが申し上げられるかどうか分からないんですけれども、三審制も絶対的な要請というわけではありませんから、決定に対する抗告もある程度制限されているものが現にありますので、ここは制限し得るかなと。特に事前に仲裁廷の方で一応決定を経ていますので、制限してもいいのかなと思うんですけれども、特別抗告で憲法の判断が絡むようなときに、特別抗告まで制限するのは、やはり難しいのかなというような気持ちもあるんですけれども、この辺りはむしろ教えていただければと思います。 □ それは大前提だと思います。 ○ モデル法の立場でございますが、忌避された仲裁人が自らの忌避事由を判断するというのは少し奇異に感じるところでございます。
○ ○○委員のおっしゃるお立場は、1つは常設仲裁機関の実務をある程度前提にしての御意見かなという気がいたします。
□ ほかに何か、忌避手続について、よろしゅうございますか。 【III 仲裁人の忌避及び退任について 〜4 忌避以外の退任事由について〜】 □ それでは、次の退任の問題に移りたいと思います。
● 資料5の5ページの下から7ページの(2)までの部分なんですが、退任事由と仲裁人の職務の不能又は懈怠の場合の手続を一括して御議論いただければと存じます。退任が問題となるのは、事後的な資格喪失と仲裁人契約の解除その他の場合があります。
□ 今、御説明がありましたように、退任の問題はかなり難しい問題がいろいろありますが、第一読会ですので、簡単なコメントをいただければというふうに思います。
○ 今、職務の不能又は懈怠であるのか、資格というのが出てきますね。忌避のところでも、3ページの「(1)当事者が合意した資格を有しないこと」というので、さらっと過ぎてしまったわけですけれども、例えば私ども弁護士会の方で考えますと、弁護士会で弁護士を仲裁人に選任した後、たいへん恥ずかしいことだけれども、その弁護士が懲戒か何かで資格を失ったという場合にはどうなるのかとか、これが、ここでいうと職務の不能という形のジャンルに入ってくるのかなという辺りなんです。
□ その場合に、2人の仲裁当事者の一方がそれを言い、相手方は、いや資格を持っている、能力があると言うのであれば、これは忌避の問題です。
○ 先ほどと少し関連してくるんですが、「ウ 仲裁人の後見等の開始」というのは、これは特段の退任手続を要しない、当然職を失う事由というイメージで掲げられているんではないかと思うんですが、そうだとすると、先ほどの欠格事由のときに述べたのと同様の理由で、私はこれを別に規定することは疑問に思っております。
□ この退任というのは、死亡の場合は当然です。あと、欠格事由が定められていれば、当然失職ですけれども、まだそちらの方は、決まっていません。先ほどの御議論で、成年後見の開始などは、仲裁人の資格喪失事由にしないという方向であるとすれば、これも落ちてくるということになると思います。破産についても同様です。
○ 私も、今の点を踏まえますと、仲裁人の死亡は当然のことだと思います。仲裁人の辞任というのも当然。仲裁人契約の解除というのは、おそらくこれは全当事者の同意でもって解除が一方的にできるんではないかと思いますが、仲裁人契約の解除というのが3つ目です。
● 今の点で、辞任の関係なんですけれども、仲裁人の辞任について何らかの要件が必要かどうかという点を伺いたいんです。正当事由だとか、やむを得ない事由という要件が必要なのか、そういうものは一切必要ではないというのか。 ○ やはり、私は何らかの要件が必要ではないかと思うんです。仲裁人の一方的な契約解除ができるのかどうかというのは、当然イエスと言うわけにはいかないと思うんですけれども。 □ もう一点、私もお聞きしたかったのは、仲裁人契約の解除が何らかの理由がなければいけないのかです。あの仲裁人はもうやめようということで合意すれば、それだけで解除ができるというのもおかしいような気がしますので。 ○ ただ、いろいろ文献等を見ていますと、一方当事者だけではだめですけれども、全当事者が解除したいという場合には、仲裁人が同意しなくても仲裁人契約を解除できるという考え方もあるように思いますが。
□ モデル法の14条1項は、仲裁の職務の不能又は懈怠がある場合に、両当事者が合意すれば仲裁人をやめさせることができるというふうに読めるんですが、これは○○委員、違うんでしょうか。14条1項に「仲裁人が法律上又は事実上その任務を行うことができなくなったか、その他の理由により不当な遅滞なく行為しないときは、仲裁人が辞任するか当事者が任務の終了を合意するならば、仲裁人の任務は終了する」というのは、これは退任の申立てですね。
○ 私も定かではありませんが、英語の原文の方を見てみますと、全体をif節で受けていますから、先生がおっしゃったように、モデル法は、前段の任務不能又は懈怠がある場合に終了を合意するならばという形で仕組んでいると思います。つまり、何も理由なく合意できるという規定ぶりではないと思います。
● 今の関係で、「注解仲裁法」は石川明先生と大内義三先生が書かれているんですが、解除については、仲裁契約について、仲裁人が信頼できないんであれば、両当事者が共同して仲裁人契約を解除することができる。「現代仲裁法の論点」のところでは、上野泰男先生が書かれているようなんですけれども、同じような記載になっております。
○ 実質を考えた場合に、当事者の側から仲裁人を解除するのは、それに近い形でよかろうかと思うんです。仲裁人に対する信頼が失われれば、理由のいかんを問わず解約できてもよい。
□ ある程度議論が出てきたと思いますので、(2)の方の判断手続は、これは○○委員、これは裁判所に行くとおっしゃいましたか。 ○ これは、若干読み方がありますけれども、裁判所に判断を求めることができるという規定があったと思います。 □ そして、上訴ができないということですから、これは忌避の場合と同じですね。
○ 結局、忌避の場合と違って、仲裁人の職務不能や懈怠が問題になっているわけですから、一次的に仲裁人に判断させるわけにはいかないので、結局、裁判所に行かざるを得ないのは当然で、あとは、この場合の手続を適当な字句、上訴を認めないとか、決定手続で仕組むというように、仲裁の迅速性を重視して簡易に仕組むかどうかという点が問題になってくる。 ○ モデル法の規定なんですが、職務不能あるいは懈怠を理由にして一方当事者が申し立てるということはできるんですか。 ○ いずれの当事者もできると。 ○ しかし、これらの事由というのは、前段を受けているとすれば、当事者が任務の終了を合意して初めて終了するわけですね。 ○ ここはthese groundsというのが原文ですが、これが合意まで受けているのか、その前の職務不能と懈怠だけを受けているのかは、英語だけからは分からないんですけれども、前者だけを受けていると読めば、その点は問題はないかと思います。 ○ ここでの御議論は、一方当事者の申し立てによっても職務不能あるいは懈怠を理由として仲裁人を解任できるという可能性があるという御議論というふうに伺っていてよろしいですね。 ○ 確認しますと、解任も裁判所の手続をせずにやる場合は両当事者の合意が要る。
○ 分かりました。 □ よろしゅうございますか。 【IV 仲裁人の権利義務について 〜1 仲裁人の責任について〜】 □ それでは、次の問題に入りたいと思います。次は仲裁人の権利義務という問題です。これも、まず事務局から御説明をお願いします。 ● この点については、モデル法には規定がございませんが、イギリス法を始めとして、規定を置いている立法例もあるようです。理論的には仲裁人契約における善管注意義務によって処理されるものと解されますが、この点を明定することによって、言わば安心して仲裁人になってもらえるというような機能が認められるとも考えられます。規定の要否も含めて自由に御議論いただければと思います。 □ ここでは、仲裁人の行為義務と損害賠償責任という2つの点が書いてありますけれども、これをどうしたらいいのかということで、何かアイデアがあればどうぞ。
○ 私どもの現行の規定にはございません。諸外国にある仲裁機関の仲裁規則を見ますと、仲裁機関も含めて一定の免責規定が置かれているものが見受けられます。 ○ 私どもの仲裁規則は、仲裁機関、事務局も含めて、仲裁人免責を明定しています。 □ どういう内容でしょうか。 ○ 仲裁委員会、仲裁人及び事務局は、仲裁手続及び仲裁判断について一切の民事責任を免除されるというものです。 □ そうですか。国際商事仲裁協会も同じですか。 ○ いえ、私どもは置いておりません。 ○ 弁護士会もそれは置いておりません。むしろ、責任の前提として行為義務と言いますか、何か善管注意義務という一般論なのか、その他のかということですけれども、弁護士会で、少なくとも二弁と東弁では、仲裁人の責務という条項がございまして、先ほどの独立とも関連するんですけれども、仲裁人等は、この規定に従い、独立して事案の究明及び紛争の解決に努め、公正かつ迅速な処理を行わなければならないという条項を入れておりますので、やはり責任は、まず義務の方が前提になるんだろうというふうに思います。
○ 私どもは特段規定は置いていませんけれども、モデル法の規定がないというのは何か事情というか、理由がありますか。どういう考えで規定を置いていないんですか。 ○ 当時の議論は○○委員に伺った方がいいのかもしれませんが、現在検討中の調停モデル法には、たしか調停人の行為義務の規定を置く予定で議論が進んでいたと思いますので、同じUNCITRALだということを考えますと、構成メンバーが多少違っていますが、当時積極的に置かない方がいいという判断がされたんではなくて、推測ですが、ただ単に置かなかったということだろうと思います。したがって、置くことがモデル法に違反するとは考えておりません。
□ ほかにいかかでしょうか。 ○ 免責規定を法律に置くのか、機関仲裁ばかりではないんですけれども、各機関に置いた方がいいのかとか、そういうことは若干あるんですかね。 ○ 免責に関しては、私は法律に置いた方がいいと思います。 ○ 私はよく分からないんですが、仲裁人だけ免責で、つまり委任契約の一種だとして、それの債務不履行の損害賠償義務を仲裁人について排除するということは、仲裁人になり手がなくなるいうのは実質論としては分かるんですが、理論的にはどういうような根拠になるんでしょうか。 ○ 通常の一番単純な委任の場合は、ある当事者が、ある受任者に委任をするという関係ですが、仲裁の場合は、利害対立している複数の当事者が特定の仲裁人を任用する。委任者自身が必ず複数いて、しかもそれが利害対立している。これがゼロサムゲームの関係で、一方は勝って、必ず一方は負ける関係に立つというところが通常の委任とは違うんだろうと思います。 ○ それはよく分かるんです。しかし、一方当事者を負かしたことは、もちろん直ちに債務不履行にはならないわけで、例えば仲裁手続を長い間放置していたとか、そういうような事情が起きた場合に、それを排除するというのが少し分からないところです。 ● 創設的に免責をするという規定はなかなか難しいと思うんです。仲裁人が下した仲裁判断の内容のみによって責任は負わないとか、仲裁契約の善管注意義務の内容を明確化するような免責的な書きぶりで、仲裁判断の内容に対して不服があっても損害賠償請求はできませんよというふうな規定になるんではないかなと思うんです。置くとすればです。
○ それはあり得ると思いますが、ただ消費者契約法がかぶると思うので、申立人が消費者の場合には、それが果たして効力を生じるかというのは、かなり難しいような気がするんです。完全な責任免除というか。 ○ 私も原則としては、免責規定によって、本来免責されないものを免責されるようにするという創設的な規定を置くという意味ではなくて、仲裁人が安心して仕事をできるような確認的な規定だろうと思います。
【IV 仲裁人の権利義務について 〜2 その他〜】 □ それでは、資料の5では、「その他仲裁人について、論ずべき事項があるか」ということがありますが、これについて何かありますか。資料5全体でも結構ですが、何かありますか。 ○ 仲裁人の守秘義務みたいなものは、どこか別なところで議論なり何なりするのか、あるいは、ここの段階でするのかどうかという問題だけ、ここで少し気になったんですけれども。 □ ここでの問題ですのでどうぞ。 ○ たしか、試案の31条の2項には、仲裁判断の章のところで、評議及び評決について秘密を守る義務というのがあったと思うんです。
□ 分かりました。これは、いずれここでまたどこに置くかという問題があると思います。 ● 公開のところをやるときに、一緒に守秘義務の関係について議論をしたいと思います。 □ よろしゅうございますか。資料5について、ほかに何かございますでしょうか。
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【仲裁廷の管轄(権限)についての検討項目案】 □ それでは時間が参りましたので、再開させていただきます。
【I 仲裁廷の管轄(権限)に関する仲裁廷自身の決定権限について】 □ まず、初めに仲裁廷自身がその権限について自分で判断する権限を持っているかどうかという問題につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。 ● それでは、資料6の1ページから2ページに掛けてを御覧ください。
□ それでは仲裁廷の権限について自己決定権があるかどうかという問題と、今、御説明がありました仲裁廷の決定を最終的なものとする当事者の合意があった場合の有効性の問題と2つに分けまして、最初の、仲裁廷が自らその権限の有無、あるいは範囲について決定することができるということについては、今、御説明がありましたように、大勢は大体できるということでございますけれども、これにつきまして特段御意見ございますでしょうか。
○ 今のは、最終を含めて前段の部分ですね。 □ 第1の問題の前段の部分ですそれでは、この事件については仲裁廷の権限があるということで、自己決定をした場合について争いがあり得る場合に、更に当事者が仲裁人の決定を最終的なものとする合意。これが、「Kompetenz-Kompetenz-Klausel 」というふうに言われている合意ですが、これについてはいかがでしょうか。
○ 今のKompetenz-Kompetenz という考え方は、おそらく世界的に認められた考え方だと思いますけれども、その考え方というのは、私の理解では、仲裁廷に最終的な判断権があって、司法審査に服さないというようなものをKompetenz-Kompetenz というふうには呼んでいないと思うんです。 □ Kompetenz-Kompetenz-Klausel です。 ○ Klausel ですか、失礼しました。モデル法もそうですけれども、諸外国の仲裁を見ましても、仲裁判断の取消事由、あるいは執行拒否事由の中に、仲裁契約が有効ではないというのが入っており、それは強行規定でございますので、当事者は、それを排除することはできない。これはほぼ一致した立法の考え方だと思いますので、したがって最終的な判断権を仲裁廷に委ねるという当事者の合意は認められないと思います。 □ 少し私の説明が十分でなかったかと思いますが、例えば、仲裁契約の書面性が要求されているとして、その書面の有無、従って仲裁人の権限が争われているような場合には、Kompetenz-Kompetenz-Klausel があれば、仲裁人が判断したら、それに任せるというような効力は認めてもいいのかなと思いますが、今、言われた強行法規に関係するような、例えば仲裁適格のない事項について仲裁契約がなされたとして、それを仲裁人が仲裁の権限があるという決定をしたという場合には、Kompetenz-Kompetenz-Klausel があるからといって、裁判所ではなくて、仲裁人の権限になるとすれば、これもおかしいというのは、○○委員のおっしゃるとおりではないかというふうに思いますので、両方の場合があり得るかなというような気もいたしますけれども。どうでしょうか。
○ 合意自体無効だと。 □ それは、確かにそうだと思いますが、例えば仲裁契約の範囲について争いがあるというような場合でも、仲裁人の面前に来ている事件が、仲裁契約の及ぶ範囲かどうかについて争いがあると。それについて仲裁人が、面前に来ている事件は仲裁契約の範囲内だというように仮に判断する。
○ 確かに2ページを読んでも、私はよく分からないので教えてもらいたいんですけれども、第1の仲裁契約があって、今度は第2の仲裁契約があるんですという言い方ですね。
○ 今の○○委員のお話ももっともだと思いまして、多分それは合意の真正ないし消費者保護の問題だろうと思うんです。
□ 一応、両方の考え方があるということでよろしゅうございますか。規定になり得るかどうかは、この問題は特殊な問題でございまして、先に進ませていただきたいと思います。 【I 仲裁廷の管轄(権限)に関する仲裁廷自身の決定権限について 〜2 仲裁廷の管轄(権限)の有無についての判断の時期、方法及びその判断に対する司法審査について】 □ それでは、仲裁廷の権限の有無について、仲裁廷はいつ、どのような形で自分の方が権限があるという判断をするか。あるいは、ないという判断もあるかもしれませんが、それについての司法審査の在り方はどうかという問題を取り上げたいと思います。
● それでは、資料の2ページ以下を御覧ください。
□ それでは、資料6の2ページの2のところについて御議論をいただきますけれども、少し複雑なので、事前にコメントさせていただきたいんですが、この議論に入る前に、仲裁人は無権限であるという抗弁をいつまでに提出すべきかという問題があるはずでございます。
○ 今の(2)と(3)の実質的な違いがよく分かりかねるんですけれども。(2)は中間的な判断の形式が取られたと。(3)の場合には、仲裁で判断したけれども、中間的な仲裁判断の形式が取られなかったということだと思うんですが、中間的な仲裁判断の形式を取らないとしても、仲裁廷が判断した以上、その判断に自ら拘束されるということであれば、(2)と(3)の違いというのは、ほとんどないんではないかなということで、(2)と(3)の実質的な違いというのがどこにあるのか、その辺りを御説明していただきたいと思います。 ● (3)番目の方は、仲裁廷が口頭で告知をするなり、黙示でもいいんですけれども、仲裁権限があるかどうかについての判断を示した場合に、そのときに更に、それに対して直ちに不服申立てを司法裁判所にできるというのが(3)番目の肢として設定させていただいています。
○ 方式の区別はどうあれ、管轄外だ、あるいは仲裁契約の範囲に含まれるという判断をするということであれば、(2)と(3)の違いというのは、実質的にないんではないでしょうか。
● そこは、違いがないと思うんですが、独立の不服申立てを許すかどうかという観点から、あまり意味がない、ただ遅延だけを目的としているんではないかというふうに思われるような、仲裁権限がないという申立ての多発が考えられた場合に、そういうことについては、口頭で仲裁権限ありと言うことで終わらせてしまうということが考えられないかということが(2)です。 ○ 質問があるんですが、(2)と(3)のどちらがモデル法の16条3項に近いというおつもりで、お作りになっているんでしょうか。 ● そこのところは、かなり微妙なところがあるようなんですけれども、当初こちら側で考えていたのは、中間的な判断の形式まではモデル法は要求していなくて、口頭による告知でもいいのかなと。そこの通知というのは、noticeという言葉を使っているようですので、口頭による告知でもいいことを前提にしているのかなと考えていました。
○ 原案というのは、独立不服申立てをしなかったら、あとは仲裁判断取消しの訴えでは争えなくなると。 ● あとは、仲裁判断取消しの訴えで争うしかないと。 ○ 後で取消しの訴えはできるわけですか。独立の不服申立てをやってもいいし、後から争ってもいいと。そうしたら、選択権を持っているという理解ですね。 ● (2)の場合であっても、そこのところはどういう手続の組み方をするのかという問題があるんでしょうけれども、例えば、司法裁判所に対する不服申立ての方法を決定手続で仕組むというような形にした場合には、同じことについて取消しの訴えというのが後であり得るというのは十分あり得るんではないかと。 ○ ただ、1回独立の不服申立てをしてそこで判断が出れば、もう取消しの訴えはできなくなる。 ● そこは両様あり得るんではないかと思います。 ○ (2)と(3)があまり違わないというお話が出ていたんですけれども、もし裁判所に不服申立てがあったときに、何を対象とするかということから考えますと、やはり(2)と(3)では大きく違いまして、仲裁契約合意がきちんとあると黙示で認めて審理は進めていきますという、事実上、訴訟指揮における心証開示みたいなものと、きちんと仲裁廷として何か判断を確定的に出していただいたというのとでは大きく違うと思うんです。
□ そこで、今の○○委員と○○委員と○○委員から質問があったんですが、私も同じような疑問を感じて、(1)(2)のほかに(3)の選択肢というのがあるかなという気もしているんです。○○委員の質問の、モデル法はどれかと言いますと、私は(2)の選択肢ではないかと思っているんですが、これはモデル法の読み方がどうなのか、まずお伺いしたいんですが。
○ 今のでかなり理解が深まったんですが、今、座長がおっしゃられました不許の訴えはおそらくあると思うんです。
○ いろんな案件があるということを考えますと、最後まで引っ張っていって仲裁判断の中で判断するという場合もあるかと思いますし、あるいは先決問題として早目に片付けてしまって、不服申立てした上で、中に入って実体審理していくという場合もあろうかと思います。どちらも許すような法律の方が基本的にいいのかなというふうに思います。
□ これは、口頭は考えていないと思うんです。 ○ そうすると、(3)は排除しているという理解でよろしいでしょうか。 □ 最終判断でもできるということは当然なんだけれども、その問題についてはなるべく早く判断を下せということだと思うんです。その場合の判断は、中間判断ですべきであって、口頭でやるものではないということです。 ○ 先ほどお話に出た、仲裁不許の問題というのを仮定するとしたら、それは模範法にはない手続を入れるということになりますでしょうか。 □ はい。
○ 私もよく分からないんですが、お話を伺っていると、あくまで意見ですが、やはり(2)に近いのかなという気が、読んでいてしました。
□ 本案訴訟を起こしても足りるんですが、それでは仲裁手続は当然には止められない。不許の訴えは判決の内容だと思うんです。つまり、仲裁人にはその権限がないことを確認する、あるいは、仲裁手続を進行させてはならないというような命令を書くことができるか、という問題です。 ○ 先生がおっしゃるように、不許の訴え自体の性格についての争いというか、議論がよく分からないわけです。判決の種類としても、確認判決なのか、形成判決なのかという点も含めて、おっしゃるように結局不許の訴えに何を盛り込むかによって、独自に置く意味があるか、ないかは決まってくると思うんですが、形成的な効力を認めるならばともかく、確認的な効力なんだとすれば、必要ないかなという気がいたします。 □ 先ほど○○委員が指摘された点は、いかがでしょうか。仮にオプションの(2)を取るとしますと、中間仲裁判断で権限があるということに対して不服申立てをして、裁判所もそれを認めたと。最終仲裁判断に対して、取消訴訟でその点を蒸し返すとか、あるいは、執行判決許否理由でその点をもう一度蒸し返すということができることにするのかどうかという点ですね。 ● 今の議論の中で、第一点として、(2)の肢を採って、不服申立てについて判決手続を採用する場合には、そこに既判力が働きますので、それに反する判断はできないということは間違いないと思います。
□ これは中間仲裁判断に対する不服申立手続が決定手続だという前提で御議論をいただけますか。 ○ これは○○委員の方がお詳しいと思うんですが、国際裁判管轄の判断について中間判決したときの問題と同じような問題があると思うんです。
○ 今おっしゃった点は、例えばそういう議論になると思いますが、おそらくこういうことだろうと思うんです。
□ ○○委員、何かこの点について。 ○ 基本的には裁判所の判断に対する上訴は、それを認める必要はないと思っているんですが、今の細かい点については、よく分かりません。 ○ 今、UNCITRALのモデル法は、独立した不服申立てをするとしても、それは遅滞なくやらなければいけないという義務を課している。義務を課すとすれば、やはり1回限りというのが通常の考え方だと思うんです。
● モデル法自体でも、不服申立ては上訴ができないということになっているわけです。それとの関係で、モデル法自体で取消しの訴えの関係がどうなのかというのは、どういうふうに理解されているんでしょうか。 ○ 取消しの訴えの方が、上訴ができないということはないと思うんです。
□ この問題は当然、全体の中で細部まで考えなければいけないものですから、今日はこのぐらいにしておきます。 |
【II 暫定的保全措置について】 □ それでは、もう一つ、仲裁廷の権限で一番大きな問題が、暫定的保全措置という問題でございます。
● 仲裁廷の暫定的保全措置の問題ですが、これは比喩的に申しますと、裁判所における保全処分に相当するものでございます。と申しましても、両者の内容ですとか、効力というのは必ずしも同じではありません。いずれにしましても、資料の検討対象事項といたしまして、1から5まで記載しましたように、多数の難しい問題がございます。
□ これは、かなり大きな問題で、ホットイシューになっている問題でもありますので、ある程度時間を掛けたいと思いますが、それに先立ちまして、先ほどから名前が出ておりますように、○○委員は、この問題で先のUNCITRALの作業部会に出席されたというふうに聞いておりますので、まず、○○委員から作業部会の議論の内容、あるいは結果について簡単に御報告いただけますでしょうか。 ○ 実は私は昨日までUNCITRALの作業部会に出ておって、帰ったきたばかりなんですが、昨日が全体で5回目の作業部会でした。そのうち、1回は調停モデル法のみの議論に絞った作業部会がありましたので、都合4回の作業部会で仲裁廷の暫定的保全措置の問題は議論されてきております。
□ どうもありがとうございました。それでは、御議論をいただきたいと思いますが、要するに資料の6の5ページに書いてありますように、仲裁廷において暫定的保全措置を認めるとしても、どんな措置を考えるのか。
○ 現実には、仲裁廷による保全措置という経験はありませんが、具体的に言えば、船舶の仮差押えなどが迅速に行える方がよいと思います。実際に海運関係で言いますと、シンガポールや香港のような英国法系の国は、対物訴訟によって簡単に押さえることもよくあるということは経験しておりますけれども、それ以上のことはございません。 □ ○○委員何かございますか。 ○ 特にこれは経験がございませんでした。 □ ○○委員何か。 ○ 1、2例ございます。1つは、技術ライセンス契約での、ライセンサーとライセンシーの紛争です。契約の解約が有効かどうかという争いで、ライセンシーの方が、ライセンサーに対して、いわゆる実施権の継続的な行使を認めないということなんですが、それがいわゆる保全処分という形で仲裁廷に対して申し立てるというものがございます。いわゆる現状維持というようなものがございます。 □ ほかに何かございますか。 ○ 実務ということですと、国際商事仲裁の世界では、かなり頻繁に行われているということで、裁判所の出す保全措置のほとんどのタイプについて、かなりの頻度で世界的に出されているというふうな報告を聞いております。 □ 要件論はいかがでしょうか。実体的要件、それから手続的要件の2と3の問題でございますけれども。 ○ どんな措置のイメージなのかというのが、いまひとつつかみ切れないものですから。例えば、一般の仮差押えするというような、財産を保全する、あるいは妨害を排除する。あるいは、仮の地位を定める、いろいろなものがあるんです。それは全部、いわゆる保全処分で認められているような仲裁の暫定措置の中に持ち込むという前提だという理解でいいでしょうか。 ○ 私どもも、これはよく分からなくて、特に仮差押えのようなものまで認められるのかという点は疑念があったんですけれども、今回、各国の政府代表に確認してまいりましたが、日本の母法国であるドイツや、近い法制を取っているオーストリー等を含めて、すべて仮差押え、それから仮の地位を定める仮処分のようなもの、係争物仮処分のようなものすべてできるということで全く疑念がないというのが各国の意見でした。 ○ 例えば、仲裁の相手に対して命ずるということと、更にそれを超えて、第三者に対してもできるかという議論があったと思うんですけれども。 ○ ただし、裁判所の場合と違うのは、仲裁契約の当事者しか仲裁人の判断に拘束されませんから、第三者を直接的に拘束するような保全措置はできないということ、これも争いないと思います。 ○ もちろん、登記などもだめだということなんでしょうね。 ○ その点が、若干日本の中で検討したときも、○○委員とかとも議論して、そういうのが認められるのかということを日本側では議論したんですが、それは執行の問題だと。結局、仲裁廷が命じても、当事者が任意に従わなければ、最後は裁判所を通じた執行の問題になると。そのときに、執行を申し立てて、当否なり何なりを裁判所が認めれば、それは構わないという当否の問題。あるいは、執行機関を使えるかどうかという問題も含めて、それは執行の問題であって、その国の立法で執行を認めれば可能であるということです。 □ 今のイメージについては、今日お配りいただきました参考の(4)のところです。第1案、第2案とありますが、第1案は、(a)が現状維持的な措置、(b)が資産確保のために必要な措置、(c)が将来の妨害を予防するために被告の行為を抑止するような措置というふうに、第1案は3つに分けてあります。
● 今の仮差押えなんかの関係なんですけれども、仲裁の効力というのは、当事者間の仲裁合意が基礎なので、保全についても当事者間同士の合意に基礎があるんだと思うんです。
○ まず、前者の銀行預金の方ですが、2つ問題がありまして、1つは当事者に銀行預金の引出し等を禁ずるということはできるわけです。それは、間接的に銀行預金を凍結しますけれども、これは第三者に対する命令ではないというのが一点。
○ 裁判所の保全措置のほかに、こういうものがもし認められるというのがあれば、どんな場面があるのか。
○ 現実には、先生がおっしゃるように、当事者に一定の作為又は不作為を命ずるというものが多いように聞いております。
○ 先ほどの原理的なところですが、両当事者の合意に基づいているから登記を伴う処分、あるいは第三者に対して効力を伴う処分ができないんではないかというのは、ア・プリオリには言えないような気がするんです。もちろん、最終的な仲裁判断が出た場合には、それに基づいて執行する場合には差押えができるわけですし、仲裁判断というのは、当事者の合意に基づいていくわけですが、しかしそういうのはできるわけです。
○ 私も過去に書いたものの中には、間接強制的なものしかだめではないかというようなニュアンスのものを書いたこともあるんですが、私もだんだん考えを改めてきまして、特に日本の立法の仕組みに近い国の議論とかも聞いてみると、原理的にできないことはない。裁判所ができることは、原理的にはすべてできると。望ましいかどうかはまた別として、そういうことなんだろうと、今は考えております。 □ 私も自信がないものですから、今まで言わなかったんですけれども、建設仲裁の委員をやったときに、建物の不等沈下事件というのがありまして、現場の部屋の中に行って、ピンポン玉を置きますと、ころころ転がる。不等沈下は、基礎工事を十分にしなかった建設業者の責任なのか、そちらの方に重い物を置き過ぎているからなのか争いになったんですが、どうも原因は分からない。しかし、放っておくとますます傾いてくる。とりあえず、これ以上傾けないような措置をやれというのを言ったことがあるんです。それが暫定措置として言ったのかどうかは分からないけれども、とにかく業者はつっかえ棒をして暫定的に、これ以上傾かないようにしておいて、その費用をどちらで持つかということでボーリングして鑑定してみたら、やはり基礎が十分ではなかったというのが分かりまして、その費用も含めて建設業者にやり直せということを言ったことはありました。
○ 私も同じような印象を持っておりまして、以前、民事保全手続を担当しておりましたときでも、例えば建設工事差止めの仮処分というような、今おっしゃったような工事そのものの関係でよくございますけれども、そういうときに、とりあえずこれ以上建物を建てないでくれということを裁判所から、何ら強制力はないんですが、事実上申し上げるということがよくございます。
○ 私も保全を担当しておりますと、やはりどこまでどういう執行ができるのかという、限界の分からない申立てというのにたくさん遭いまして、普通の訴訟と違いまして、現在の危険を避けるために、必要かつ適切な範囲で、いろいろなバラエティーに富んだ処分を申し立てられてくるわけです。
○ 今の御発言で、誤解があるのかもしれませんが、万国共通の保全措置の執行手続をつくろうという議論ではありません。
○ 1つ実務的なことで申し上げるのを忘れていましたけれども、実際に保全措置を求められたわけではないんですが、例えば法人格否認の法理とも関係するかと思いますが、多くの先進国の船会社が、パナマ、リベリア、ホンジュラスその他に会社を作りまして、そこが1隻だけ船舶を持っているという場合です。その場合に、仮にパナマ籍の会社が負けても、既に船舶が売られてしまうと、執行しても何も取れるものがないというケースがたびたびあります。
○ すみませんが、○○委員の方から、先ほど御紹介があった、たしか香港とおっしゃったと思いますが、その船の仮差押えがよく使われると聞いたと思うんですが、私ども国内のことしか知らない者がイメージする民事保全処分と違って、どう便利なのか、執行までのところを含めてもう少し御紹介いただけるとありがたいんですが。 ○ そもそも、日本で船舶の仮差押えというケースが非常に少ないので、裁判所によりまして、あまり経験のないところでは、まず裁判官の審尋の段階で非常に時間を取ってします。時間を取っている間に船は出ていってしまいますので実効性がない。
○ その場合、その後、現実に仮差押えとしての執行がございますね。やはりそれは日本に持ってくるというイメージでよろしいんでしょうか。 ○ 執行は、向こうで行います。 ○ 向こうでできる場合の話なんですね。 ○ はい。 ○ 今の○○委員の話に関連しますけれども、しばしばあるケースで、押さえるべきものが−−銀行預金でも資産でもいいんですが−−双方にまたがっている場合がありまして、仲裁廷で1本保全命令を出すと、1本の命令で日本でも執行できるし、香港でもできるし、台湾でもできるというときに、同じ命令で台湾も香港もできるので、そのときに各国の裁判所に対する保全処分の申立ては面倒でしょうからということがあると思います。 ○ 承認と執行の申立てをする方が、まだしも。 ○ 各国の承認手続がどうなっているかにもよるんですけれども、ほとんどの国は承認手続の方が簡単なので。
□ もし、執行力を認めるとすれば、おそらく判断という形で取らなければニューヨーク条約にも乗れませんし、35条にも乗れないから、中間仲裁判断という形で出てくる。
○ ○○委員が、私の言いたいことをすべていってくださったんですけれども、最後の点に限って言うと、一方的審尋との関係です。これをどうとらえるのかということです。
□ どうもありがとうございました。
【仲裁手続についての検討項目案(その1)】 □ 次の問題は、資料の7の仲裁手続に関する問題の(その1)ですけれども、仲裁手続に関する基本的な視点の問題と、仲裁地の問題と、時効中断との関係で仲裁手続の開始というような問題の3つの問題がありますので、まず、事務局の方から御説明をいただけますでしょうか。 |
【I 仲裁手続に関する基本的な視点について、II 仲裁地についての当事者の指定権及び補充規定について】 ● まず、「I 仲裁手続に関する基本的な視点について」と、「II 仲裁地についての当事者の指定権及び補充規定について」というのを一括して御議論をいただきたいと思います。
□ Iには、仲裁についての基本権、仲裁手続に関する当事者の合意、職権探知という3つの問題が入っております。
○ 個人的には、これは一種の訓示的な規定ですので、あってもなくてもさほどの差はないと思っておりますが、現にモデル法にありまして、各国がモデル法を採用する場合にも、この規定を落としている例はほとんど見たことがありませんので、日本が落とすと、あえて平等な処遇を求めないというふうな誤解を招くやもしれませんので、特に異論がなければいいという程度に考えております。 □ ほかに、この点で、どうぞ。 ○ 私も、これを一般論として異論はないんですけれども、ただ少し面白いなと思ったのは、イギリスの仲裁法ですかね、迅速と言うか、不必要な遅滞を防ぐというのがございますね。モデル法の「十分な立証」と言うと、何かスピードと言いましょうか、遅滞との問題で、迅速というのは何か程度、区分があってもいいのかなという感じがするんですけれども、いかがでしょうか。 ○ 「十分」は、おっしゃるとおり、現在、直接的な改正のスケジュールには挙がっておりませんけれども、改正した方がいいという一般的な列挙には実は挙がっておりまして、これは仲裁の本質に反するんではないかと。つまり、迅速性と背馳するんではないかという議論は実はございます。
□ ほかに何か。 ○ 確かに今おっしゃられました、イギリスの仲裁は「合理的な」に変えているということです。 □ 分かりました。それでは、仲裁手続をどう進めるかについて、当事者の合意を認めるという2の点はいかがでしょうか。当事者の合意がなければ、仲裁廷の規定に反しない限り裁量によって手続の準則を定めて手続を進めることができるということですが、これは大体このような形でよろしゅうございますでしょうか。 ○ 1つ御質問ですけれども、この法律の規定に反しない限りというのは、あくまでも強行規定という意味ですか。そうではなくて、任意規定も含めて全部ということですか。 □ そういうことですね。 ● いや、これは強行規定です。 □ いや、当事者は強行規定に反してはいけない。当事者が合意する場合には、仲裁法の任意規定に反することはできますね。 ○ はい。 □ それは、いいんですが、当事者が合意しない場合に、仲裁廷が従わなければいけないのは、やはり強行規定はもちろん、任意規定も含めて仲裁法の規定に反したらいけないんではないかと、そういうふうに思いますけれども。 ○ モデル法の19条の1項で、この法律の規定に反しない限りという項ですけれども。 ○ おっしゃるように、1項の規定に反しない限りというのと、2項の規定に反しない限りとは、同じ文言を使っていますけれども、おそらく意味が違っていて、2項は、座長がおっしゃるような趣旨のあれですし、1項は○○委員がおっしゃるような趣旨ではないかと、私は思うんですけれども。 □ 当事者が合意するわけですから、それは任意規定を排除しても当然だと思います。
○ もちろん、原文はそうだと思います。 □ 何か、この点でありますか。
○ 先ほども申しましたけれども、確かにここに書かれているように、仲裁というのが、訴訟に比べて職権性の高い手続であるというふうに一般的に認識されていると思いますし、実際にもそういう運用が多いのではないかと思います。
○ 私も全く同じ印象を持っていまして、民事訴訟の弁論主義の説明を−−最近ではいわゆる本質説という説明が有力なんだろうと思うんですが−−対象となっている目的権利関係が当事者の処分を許すものであるというところから導かれるという説明であるとすれば、仲裁適格から通常はそういうことが言えるんだろうと思いますので、先ほどの専門性だけから説明するというのは、なかなか難しいのかなという印象を持っていまして。ただ、明示的に弁論主義によるということを言わなければいけないかというと、それはそんなことはないかなというふうに思いまして、当事者が合意すれば、もちろんそれでいいと思いますし、合意がない場合でも、それは仲裁廷の判断に任せるということで、明文規定は特に置かないということでよろしいのではないかという印象は受けます。 ● 鑑定人の選任についてはいかがですか。 ○ 鑑定人の選定については、民事訴訟自体でもいろんな議論があるところでありまして。 □ 常設仲裁機関は、鑑定人を職権で選定することを認めていますか。 ○ 実務としては、当然のこととしてやっています。 □ しかし、費用は当事者が持つわけですしょう。 ○ 持ちます。仲裁廷が必要と認めた場合に、自ら鑑定人を選ぶということをやっています。 □ 建設工事紛争審査会は。 ○ 私どもの場合には、実務としてはすべて当事者の同意を取った上で、費用負担の問題もありますので、当事者に負担させます。 ○ 今のただし書きの、当事者が反対した場合は別だと思いますけれども、通常はそういった場合は反対していませんので。 ● 職権でやる証拠調べというのは、鑑定の他にも何かございますか。実務上、よくやることは。 ○ 鑑定人を呼ぶまではいかずに、鑑定書を取るということはあるようです。
○ 私どもの実務では、職権の証拠調べと言いますか、当事者が出した証拠だけでは不十分な場合に、こういう図面を出してくださいとか、写真を出してくださいとか、そういう依頼といいますか、指示を仲裁人が出すということが割とよくあると思います。 ○ 同じことですけれども、弁護士会の場合には、職権といいましょうか、例えば交通事故では現場を、検証でなくても見に行くとか。例えば建築の瑕疵の問題なんかでも、専門家で補助者になっている者とか、そういう方と現場を見ていく。あるいは、必要に応じて意見を出してもらう。
○ 少し教えていただきたいんですが、仲裁人にもよるんですが、私どもの実務では割と職権探知というのを重視しているように思うんですけれども、仮にこういう規定がないとどうなるんだろうということと、仮に規定を置く場合に、各国の立法に比べて、どれぐらいユニークかという、その辺を少し教えていただきたいと思います。 ● 規定ぶりのことは、全然よく分からないんですが、鑑定人について規定をすべきかどうかというのは、先ほど来出ているように、費用負担の問題がどうしても出てくるんだと思います。
○ 鑑定ではなくて、職権探知主義にして。 ● 費用負担の問題として、費用負担が発生する場合に、仲裁廷の方で費用の負担の予納を命じることができるような、そういう規定が、一般的な規定として必要になってくるんではないかなという気がしてるんですが。 ○ それは、分かるんですけれども、すみません、議論がはっきりしなくて。
● 職権探知でですか。 ○ ええ。 ● 仲裁の関係であるかどうかというのは、私もよく分かりません。 □ これは、ドイツ法から来ていますから、ドイツ法は、ここの規定はどうなりましたかね。 ○ 置いていないと思います。 □ 建設仲裁は、多分直接当事者が言わなくても、事務局から電話をして、区役所ならば区役所の建築許可証明か何かをよこせと言えば、関係の図面は出てくるでしょう。あれは、まさに職権探知だと思うんです。当事者にこれを出してくださいという代わりに電話一本で済ますことができる。それが、職権探知を取らないとすると、それはできるのか、できないのかということになると思うんです。
○ 私が職権探知と申し上げたのは、講学上、いわゆる職権探知でありまして、自白に拘束されるかとか、当事者の主張にない事実を認定できるかという問題を主として念頭に置いて申し上げたもので、職権証拠調べの規定を置くかどうかというのは、これとはまた別の問題で、一応行政事件訴訟法とかによっても、弁論主義を取りながら、職権証拠調べの規定を置いている法制がありますので、それはまた別の問題として考えていただく。そこは概念を明確にして議論をする必要があるかなと思います。 □ 弁論主義の3つのテーゼのことを中心に言われたわけですね。 ○ そうです。 □ これは、よろしゅうございますか。
【III 仲裁手続の開始等について】 □ 先を急いですみませんが、最後の問題はかなり重要な「III 仲裁手続の開始等について」、事務局からお願いいたします。 ● 予定の時刻を少し過ぎているんですが、この問題をよろしくお願いしたいと思います。
□ それでは、今の問題について自由に御議論をいただきたいと思います。
○ まず、仲裁手続の開始に関する規定に関しては、モデル法21条の規定がありまして、特段の事由がない限り、こういう規定はモデル法にならって、特に外す理由がない限りは置くべきだろうと思います。
○ 実務的に言いますと、やはり時効の問題は是非規定を置いていただきたいというふうに思います。
□ 個人的に申しますと、○○委員のようなお考えが今、多数説の考え方ではないと思います。開始の規定を置いて、開始に連動させて時効中断というきれいな形なんですが、今、○○委員がおっしゃったように、時効というのは、権利の上に眠らないという、権利を行使したことによって時効が中断するということからしますと、仲裁の申立てをすれば足りるのではないか。仲裁の申立てをしたけれども、仲裁人が選任されない、相手方に送達されないと言っているうちに消滅時効が完成してしまうというのは少しおかしいのではないか。
○ 私はこれは申立て時というので時効の中断効が働くということにしないと、送達だといつになるか分かりませんから、自分で時効の中断が設定できないというのは、債権者にとって非常に不利益ですので、これは見直すべきだと思います。
○ 当時の議論はつまびらかには知りませんが、現在の議論から類推しますと、○○委員がおっしゃったように、開始時点を置いたのは、最低限これを置いておいて、あとは各国の時効規定と連動させるという意味があったんだろうと思います。
□ ○○委員、中断の方で何かありますか。 ○ 集会所の規則では、仲裁の申立てが受理された日は、仲裁手続を開始した日とみなすとしておりますので、その日をもって当然、時効が中断するものと考えております。 □ そういう規定があるわけですね。 ○ 先ほど言い忘れましたが、私どもの協会の手続ですと、手続開始日というのは、申立書を協会に提出した日になります。 □ 開始日等の規定を置くと、それはどうなるんですか。モデル法ですと、相手方が受領した日という。 ○ 失礼しました、当事者間に別段の合意がない限りということです。それは任意規定でございますので、当事者は自由に時期を決められるということです。 ● 時効中断の関係なんですが、申立日で、申立書が提出されたときに開始日であるというのは分かったんですが、時効の中断をそこでするという解釈は。 ○ そこはまた別の議論だと思うんです。 ● 時効中断時点というのはいつですか。 ○ 今の議論の中では、少なくとも申立てを、要するに仲裁の申立てをするという行為が行われた時点です。仲裁の申立人が仲裁の手続を取ったと。判例もそう書いてあります。だから、その日付をどうするかというのは問題ありますけれども、申立てを受領した日というのはいつになるか分かりません。また、送達できないということもございますので、したがって、申立人サイドで時効中断が決定できる日でないと。 ● 立法上のことではなくて、実務上として、中断の日というのはいつをとらえられているんでしょうか。 ○ 私どもとしては、法律に規定がありませんので、何とも言えませんけれども、手続開始日は申立書の提出日になっておりますので、それが認められるとすれば、時効の中断は申立書が協会に提出された時点で時効が中断すると解釈されるであろうと。 ○ 先ほど申しましたとおり、私どもも同様です。実際には申立ての時に、当事者に、もしかしたら時効が援用されるかもしれませんよとリマインドすることはありますけれども、その程度です。
○ 私どもは機関仲裁としては、申立て時点で時効中断にしていただけるとありがたいと思います。アドホック仲裁の場合に、どういう解釈をしたらいいのか、ちょっと分かりません。 ○ 例えば現行法の労働基準法とかはそうですね。機関仲裁とかで、しかもしっかりした仲裁機関の場合だとそれで問題ないし、それが望ましいんだろうと思っているんですが、ただ、場合によっては、仲裁機関によっては送達が非常に遅れて、相手方が知るのは何か月も先になってしまうということがもしあるとすると、それで果たして申立ての時点で時効中断を認めていいのかどうかということは、やや問題があり得る場合があるかなと思っていまして、原案のような受領したときを原則とするかどうかというと、やや疑問はありますけれども、そういったような懸念も若干あり得るということは、考えていただければと思います。 ● 時効中断の時期の問題に移っているんですけれども、時期について、ここにいらっしゃる方は、錚々たる機関から来ていらっしゃる方なんで、ここの議論を中心に、仲裁法の規定を考えるというのもどうかなという感じがありまして、やはりアドホック仲裁も含めた形でどういうふうにカバーできるのかという前提で議論していただきたいと思います。なお、今の議論だと、申立て時でいいのではないかということですが、アドホックの場合、申立て自体がないものですから、そこのところはまだペンディングということにさせていただきたいと思います。これからそれについては検討したいと思います。
○ 時効との関係は先ほど述べたとおりなのですが、もう一点、これはそういう規定を置くか否かにも関わってきますが、仲裁人あるいは仲裁関係者の秘密保持義務を定めた場合に、その義務の発生時点となるということだろうと思います。これは現在の調停モデル法で、調停の開始時点と終了の時点の規定をどちらも置くことにしているんですけれども、先ほど申しましたように、時効は各国の国内法の差が大き過ぎるので落としたと。それでもなお開始時点、終了時点の規定は残すという最大の意味は、秘密保持義務の発生時点と終了時点を定めるという意味であるという議論でことは進んでおりますので、そういう規定を置くのであれば意味があろうかと思います。
□ ほかに何か仲裁手続開始の時点で、何か効果に結び付くようなことはあるんでしょうか。私が考えたのは、例えば審理期間を1年以内に仲裁判断をしてほしいということを当事者が合意した場合、1年というのはどこから起算するかといえば、開始の時点から起算するということであれば意味が出てくる。ただ、1年以内の仲裁、仲裁審理期間の契約、そういう契約を許すかどうか。それが拘束力を持つかということもありますけれども、だから、開始の時点が時効の中断と切り離しても独自のものがあり得るんじゃないかと思います。 【閉会、次回の予定】 □ それでは、時間が20分ほど超過してたいへん恐縮でございました。かなりたいへんな御議論のある資料をまじめに準備してきていただき、たいへんだったと思います。今日の検討会はこれで終わりますが、事務局から何かございますか。 ● 次回は仲裁手続の第2回目と、仲裁判断、及びこれに対する不服申立てについて御議論いただきたいと思います。資料については、事前に送付させていただきます。
□ 今度の資料はいつごろに送付できますか。 ● 1週間くらい前にはお手元に届くようにしたいと思います。 □ 議事録の方はどんなふうになりますか。 ● 議事録は、前回のときも実質的な議論があったんで、反訳ができたのが遅かったものですから、今回、更に内容が詰まっていますので、次回までには間に合わないかもしれません。 □ 前回の議事録は四十何ページあります。多分今日の議事録は60ページを超えるのではないかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
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