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仲裁検討会(第3回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日時
平成14年4月1日(月)13:30〜17:10

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委員)
青山善充(座長)、秋吉仁美、櫻井和人、谷口園恵、中野俊一郎、中村達也、本東信、松元俊夫、三木浩一、吉岡桂輔(敬称略)

(事務局)
山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、近藤昌昭参事官、後藤健企画官、内堀宏達参事官補佐

4 議題等
(1)仲裁の実情紹介
  (a)中央建設工事紛争審査会
  (b)弁護士会仲裁センター
(2)仲裁手続についての検討項目案(その2)について
(3)仲裁判断及び仲裁手続の終了についての検討項目案について
(4)仲裁判断に対する不服申立てについての検討項目案について

5 配布資料
検討会資料8:仲裁手続についての検討項目案(その2)
検討会資料9:仲裁判断及び仲裁手続の終了についての検討項目案
検討会資料10:仲裁判断に対する不服申立てについての検討項目案
参考資料9:主要な国内仲裁機関の概要(改訂版)
本東委員提出資料:・建設工事紛争審査会について
・「知っていますか?! 建設工事紛争審査会」(略)
・中央建設工事紛争審査会における建設工事紛争処理手続の手引(略)
吉岡委員提出資料:・弁護士会の仲裁センターの実状について
・仲裁統計年報(全国版)平成12年度版抜粋(略)
・仲裁事案の実情と有効な活用方法(平成12年度春期弁護士研修講座より)(略)

6 議事
(1) 古口次長挨拶
 4月1日付で着任した古口章事務局次長から、挨拶がされた。

(2) 仲裁の実情紹介
 本東委員から中央建設工事紛争審査会の仲裁について、吉岡委員から弁護士会仲裁センターの仲裁について、それぞれ実情紹介がなされた(本東委員提出資料、吉岡委員提出資料)
 各紹介の後、下記の質疑応答がされた。(○:委員、△:紹介者)
 ○建設工事紛争審査会では、申請手数料・郵送料の他に鑑定等で費用を予納させることはあるか。
 △両当事者の了解を事前にとって予納させることはある。

(3) 仲裁手続についての検討項目案(その2)について
 事務局から、検討会資料8について説明がされ、これについて次のような意見交換がされた。(○:委員、□:座長、●:事務局)

(仲裁手続の進行等について)
○職権鑑定を認めるなら、当事者の一方が鑑定に賛成し、他方が反対した場合にも実施しうることが分かるような規定ぶりにする必要がある。
○鑑定すべき事項の範囲について当事者間に争いが生じたことがある。その意味では職権鑑定の規定が必要と思う。
○書面審理・審問の他、オンライン仲裁の可能性もある。法律に書くのはやや時期尚早かもしれないが、近いうちにそういう可能性も現実味を帯びてくるのではないか。

(証拠調べに関する裁判所の援助)
○東京、大阪両地裁において、平成10年から13年までの間に援助をした事例はない。
○手続引延しの手段として利用されるおそれがあるので、援助が許されるのは仲裁廷が必要と認める場合に限るのがよい。
○裁判所からの嘱託だと提出してもらいやすいことがあるので、調査嘱託等を認める規定があると助かる。
○諸外国では、鑑定人・証人尋問以外の証拠調べも認める国が多い。「しなければならない」でなく「できる」の規定ぶりなので、仲裁廷が援助を申し立てても裁判所が拒否することは理論上ありうると思う。ただ、一般には、仲裁廷が信用できる機関であれば、仲裁廷の判断を信用して、特に拒否すべき事情がなければ援助するであろう。
○援助の必要性を裁判所がいかに判断するかについては、本案の審理内容を裁判所が調べることはないと思う。ただし、仲裁廷は、援助依頼する以上、なぜ仲裁廷ではできないかは説明するだろうから、それが説得的でなければ裁判所は援助しないことになろう。
○第三者が所持する証拠を提出させる規定が必要と思う。
○証拠調べの手続については、裁判所が行うものと、裁判所が証人等に対し出頭を命じ、証拠調べ自体は仲裁廷が行うものの、両方を認めるのがよい。モデル法もそのような趣旨と思う。
○裁判所が行う証拠調べの援助手続は、非訟事件手続法の特則として仲裁法に規定するのがよい。仲裁に必要な証人の尋問につき公開原則が働くのはナンセンスである。

(多数当事者仲裁手続について)
○注文者・請負人間での仲裁手続中に、請負人の工事の瑕疵か設計監理の瑕疵かが問題になる場合、設計監理者を利害関係人として参加させることもある。ただし、設計管理者も含めて仲裁合意が成立していると見てよいかは問題になる。
○どういう規定を置くかは難しいが、参加人を加えての仲裁判断を許す規定が欲しい。
●利害関係人が参加する場合、手続保障を考える必要があるのではないか。
○仲裁判断の拘束力を受ける形で参加するのであれば手続保障が必要である。他方、当事者でない形で参加することについても実務のニーズはあるようなので、その場合は手続保障も与えない代わりに仲裁判断の拘束力も受けないという形で、両方認めてもよいと思う。

(各種の書類の送付、通知等について)
○実務上、送達が困難なことが多く、モデル法3条のようなみなし規定がないと手続が進まない。手続保障は、執行許否手続において、呼出しを受けなかったという抗弁で処理すればよい。
○モデル法と同じでよい。訴訟と異なり、必ず契約当事者間であるから、営業所等を移転する場合は相手方に知らせる義務があると思う。
○民訴法上の送達を排除するとすれば問題がある。必要な場合には民訴法上の送達もできる方がよい。
●「妥当な調査をした後に明らかにならなければ」の認定が仲裁機関によって区々に分かれ、仲裁判断取消しの場面で問題になってくるのではないか。
○むしろ逆で、いい加減な調査で処理したら仲裁判断取消事由に当たるから、仲裁廷は慎重に調査するのが普通ではないか。

(その他)
○近年の諸外国の立法では、仲裁と調停の関係の規定を置く例が増加している。わが国の実務、国民性を考えると必要性は高い。

(4) 仲裁判断及び仲裁手続の終了についての検討項目案について

 事務局から、検討会資料9について説明がされ、これについて次のような意見交換がされた。

(仲裁判断書の記載事項について)
○理由、仲裁判断日、仲裁地は、いずれも必要的とすることでよい。理由の記載は当事者の納得と仲裁判断の信頼性確保のために必要である。
○仲裁判断日と基準時については、手続終了の年月日を記載するのなら、そこに基準時の意味が生じうると思うが、判断日は、ドイツ法のように、仲裁判断のなされた日とみなすのが限界であり、基準時の機能を含ませるのは無理ではないか。

(仲裁判断書の送達、裁判所への預置について)
○裁判所への預置件数は、東京地裁は平成10年38件、11年46件、12年51件、13年32件、大阪地裁は10年10件、11年9件、12年6件、13年6件である。
○預置については、他国で廃止した例もあるようだし、裁判所にあるから役に立ったという例がなければ廃止の方向で検討してよいのではないか。
○複数の判断書の記載が異なったり、判断書を紛失したりすることもありうるため、アドホック仲裁の場合にも預置を廃止して大丈夫かにやや不安がある。
○預置を仲裁判断の効力発生要件と解すると、仲裁判断の送達がどうやってもできず、送達の証書を得られなくて預置できない場合が考えられるので、法的効力の問題と預置のための送達をリンクさせるのは問題がある。

(仲裁判断の解釈及び変更について)
○仲裁判断の解釈を示す措置については、機関仲裁で経験のあるところであれば、必要ない。規定を置くと、必要ないときまで申立てを濫用されるおそれがある。ただ、アドホック仲裁の場合は必要になるかもしれない。
○国際仲裁で、言語の違い等で解釈が必要なことも考えられる。モデル法にならった方がよい。濫用のおそれがあれば、申立期間を短縮することは可能であるし、モデル法からどこまで離れられるかにもよるが、33条1項柱書きの「期間につき」をはずせば、常設仲裁機関規則等で申立てを認めない規定を置く余地も考えられる。
○仲裁判断の変更については、民訴法にある変更判決の規定が極めて異例であるし、同規定の導入のときにかなり議論があったと記憶している。このような規定は置くべきでないと思う。

(その他)
○仲裁判断の基準につき、仲裁法試案の旧版では「法律に従う」との規定だが、「法律」では狭すぎるように思う。ある程度裁判よりは現実に軸を合わせて柔軟に解決すべき要請もあると思う。「法」に従うの方がよいのではないか。
●モデル法のように「善と衡平」という文言をそのまま用いることができるかについては、なお検討が必要と思われる。

(5) 仲裁判断に対する不服申立てについての検討項目案について

事務局から、検討会資料10について説明がされ、これについて次のような意見交換がされた。

(仲裁判断の取消原因について)
○仲裁判断取消しの訴えは、東京地裁では平成10年1件、11年1件、12年0件、13年1件、大阪地裁では平成10年から13年までいずれも0件である。
○民訴法338条8号に相当するのはどのような事案か。
●特許侵害による損害賠償の事案で、仲裁判断後に特許無効の判断が確定したために侵害の前提を欠くことになるという例が考えられるのではないか。
○民訴法338条8号の事案はモデル法34条2項(a)(iii)の解釈で賄う余地があるのではないか。
○(a)(iii)の解釈に含めるのは難しいのではないか。

(仲裁判断取消しの裁判の種類について)
○ドイツにならって日本でも決定手続でよいのではないか。裁判を受ける権利に関わるとはいうが、訴訟上の和解が成立した後、一方が和解の瑕疵を主張して期日指定申立てをするケースの場合、和解成立が認定されると訴権が奪われるが、その認定は期日指定申立ての手続で決定で行われる。そのアナロジーでよいとすれば、現行法の訴訟における立場とも抵触しない。
●仲裁合意不存在確認訴訟の提起は妨げられないと解され、仲裁合意の効力を既判力をもって確定する手段があるから、仲裁判断取消しの裁判は決定手続でよいという立論は成り立つか。
○執行許否の手続は、迅速性を考えると決定手続の方がよいが、取消しは、唯一の不服申立手続であり、今までの判決手続を完全に捨ててよいのかは悩ましい。慎重に判断することを認める余地があるのではないか。
○ドイツでは、取消事由が主張される場合は口頭弁論を義務づけている。
●どんな些細な取消事由の主張でも公開になるのがよいのかどうか。
○従来の常識では口頭弁論イコール公開であり、仲裁のメリットである非公開はその限度で破られるが、仲裁のもう一つのメリットである迅速性については、決定手続を採れば上訴その他の点でメリットがある。

(裁判所の判断の態様について)
○手続停止の措置は、手続が中途半端になるから不具合である。手続を取り消した場合に、仲裁手続に戻るか裁判所への提訴を許すかについては、仲裁契約を締結した当事者の意思を考えれば、仲裁契約が復活すると考える方がよい。その場合に元の仲裁人に判断させるかについては、政策的判断になろうが、仲裁人の義務は仲裁判断によって終了したと考えれば、新たな仲裁人を選任するのが筋である。当事者の合意によって元の仲裁人に依頼することはあろう。
○新たな仲裁人の選任を認めると、負けた側に仕切り直しを認めることになって妥当でないのではないか。
○手続の停止は、当事者の立場も不安定になるし、仲裁判断のどこに瑕疵があると裁判所が考えるかをどういう形で当事者に示すかが問題となる。
○仲裁契約が無効とされる場合と、仲裁契約は有効であるが他の取消原因がある場合で、結論が異なるのではないか。仲裁契約が無効という場合であれば仲裁への差戻しはあり得ないが、それ以外の事由による仲裁判断取消しの場合は仲裁契約が残ると理解している。
●仲裁廷への差戻しを命じる裁判に仲裁廷が従わなかったらどういう効果が生じるのか。覊束力はあるのか。
○仲裁廷と裁判所は組織的上下関係にはないから、覊束力を認めるのは無理であり、仲裁判断における瑕疵に関する判断についての既判力が生じると思う。もっとも、仲裁廷に既判力の効力が及ぶのかと言われると、普通に考えれば及ばない。ただ、判決効拡張の規定を作ることも考えられなくもないし、当事者が拘束されれば、後の仲裁手続において判決の効力が事実上働くことにはなろう。

(取消しの裁判の申立期間について)
○モデル法のとおりでよい。短期間に法律関係を確定させることには十分意味がある。ドイツでは、3か月を経過した後に紛争が生じた場合は損害賠償で賄えばよいという議論のようである。
○執行宣言の後にも取消裁判を申し立てることができるかは検討する必要がある。
○取消の申立てを3か月以内にしなかった場合、執行許否手続における抗弁としての主張はできるのか。
○不変期間としての追完を認める規定が必要ではないか。

7 次回の予定
 次回(4月22日(月)13:30〜17:00)は、(社)国際商事仲裁協会及び(社)日本海運集会所からの実情紹介の後、仲裁判断の承認及び執行、準拠法、その他について議論することとなった。

(以上)