事務局から、検討会資料8について説明がされ、これについて次のような意見交換がされた。(○:委員、□:座長、●:事務局)
(仲裁手続の進行等について)
○職権鑑定を認めるなら、当事者の一方が鑑定に賛成し、他方が反対した場合にも実施しうることが分かるような規定ぶりにする必要がある。
○鑑定すべき事項の範囲について当事者間に争いが生じたことがある。その意味では職権鑑定の規定が必要と思う。
○書面審理・審問の他、オンライン仲裁の可能性もある。法律に書くのはやや時期尚早かもしれないが、近いうちにそういう可能性も現実味を帯びてくるのではないか。
(証拠調べに関する裁判所の援助)
○東京、大阪両地裁において、平成10年から13年までの間に援助をした事例はない。
○手続引延しの手段として利用されるおそれがあるので、援助が許されるのは仲裁廷が必要と認める場合に限るのがよい。
○裁判所からの嘱託だと提出してもらいやすいことがあるので、調査嘱託等を認める規定があると助かる。
○諸外国では、鑑定人・証人尋問以外の証拠調べも認める国が多い。「しなければならない」でなく「できる」の規定ぶりなので、仲裁廷が援助を申し立てても裁判所が拒否することは理論上ありうると思う。ただ、一般には、仲裁廷が信用できる機関であれば、仲裁廷の判断を信用して、特に拒否すべき事情がなければ援助するであろう。
○援助の必要性を裁判所がいかに判断するかについては、本案の審理内容を裁判所が調べることはないと思う。ただし、仲裁廷は、援助依頼する以上、なぜ仲裁廷ではできないかは説明するだろうから、それが説得的でなければ裁判所は援助しないことになろう。
○第三者が所持する証拠を提出させる規定が必要と思う。
○証拠調べの手続については、裁判所が行うものと、裁判所が証人等に対し出頭を命じ、証拠調べ自体は仲裁廷が行うものの、両方を認めるのがよい。モデル法もそのような趣旨と思う。
○裁判所が行う証拠調べの援助手続は、非訟事件手続法の特則として仲裁法に規定するのがよい。仲裁に必要な証人の尋問につき公開原則が働くのはナンセンスである。
(多数当事者仲裁手続について)
○注文者・請負人間での仲裁手続中に、請負人の工事の瑕疵か設計監理の瑕疵かが問題になる場合、設計監理者を利害関係人として参加させることもある。ただし、設計管理者も含めて仲裁合意が成立していると見てよいかは問題になる。
○どういう規定を置くかは難しいが、参加人を加えての仲裁判断を許す規定が欲しい。
●利害関係人が参加する場合、手続保障を考える必要があるのではないか。
○仲裁判断の拘束力を受ける形で参加するのであれば手続保障が必要である。他方、当事者でない形で参加することについても実務のニーズはあるようなので、その場合は手続保障も与えない代わりに仲裁判断の拘束力も受けないという形で、両方認めてもよいと思う。
(各種の書類の送付、通知等について)
○実務上、送達が困難なことが多く、モデル法3条のようなみなし規定がないと手続が進まない。手続保障は、執行許否手続において、呼出しを受けなかったという抗弁で処理すればよい。
○モデル法と同じでよい。訴訟と異なり、必ず契約当事者間であるから、営業所等を移転する場合は相手方に知らせる義務があると思う。
○民訴法上の送達を排除するとすれば問題がある。必要な場合には民訴法上の送達もできる方がよい。
●「妥当な調査をした後に明らかにならなければ」の認定が仲裁機関によって区々に分かれ、仲裁判断取消しの場面で問題になってくるのではないか。
○むしろ逆で、いい加減な調査で処理したら仲裁判断取消事由に当たるから、仲裁廷は慎重に調査するのが普通ではないか。
(その他)
○近年の諸外国の立法では、仲裁と調停の関係の規定を置く例が増加している。わが国の実務、国民性を考えると必要性は高い。