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仲裁検討会(第3回)議事録

司法制度改革推進本部事務局



1 日時
平成14年4月1日(月) 13:30 〜17:10

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室(永田町合同庁舎2階)

3 出席者
(委 員)
青山善充(座長)、秋吉仁美、櫻井和人、谷口園恵、中野俊一郎、中村達也、本東 信、松元俊夫、三木浩一、吉岡桂輔
(事務局)
山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、近藤昌昭参事官、後藤健企画官、内堀宏達参事官補佐

4 議題等
(1)仲裁の実情紹介
  (a) 建設工事紛争審査会
  (b) 弁護士会仲裁センター
(2)仲裁手続についての検討項目案(その2)
(3)仲裁判断及び仲裁手続の終了についての検討項目案
(4)仲裁判断に対する不服申立てについての検討項目案

5 議事
(□:座長、○:委員、●:事務局)

【開会、事務局次長挨拶】

□ それでは、第3回「仲裁検討会」を開会したいと思います。
 本日は、御多忙の中たくさん御出席いただきまして、ありがとうございました。今日は、○○委員だけが体調を崩されて御欠席ということでございますが、ほかは全員出席していただいております。
 最初に、事務局の次長に就任された、○○次長を御紹介いたします。どうぞよろしくお願いいたします。

● はじめまして、○○と申します。本日、先ほど辞令をいただきまして、本部事務局次長ということで、これから皆さんにいろいろお世話になるということになります。弁護士からの採用ということで、浅学非才でございますけれども、弁護士としての経験や感覚を少しでも司法改革の中で生かすことによって、よりよい司法制度を作ることに多少とも寄与できれば本望と思っております。
 非力ではありますけれども、精一杯努力していきたいと考えております。この仲裁検討会については、今後は基本的に毎回出させていただいて、一緒に議論に加わらせていただくことになると思いますので、是非よろしくお願いしたいと思います。
 本日は、これからいろいろあいさつ回りもございまして、申し訳ありませんけれども、冒頭だけで失礼させていただきます。今後ともよろしくお願いいたします。

□ どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、事前配布資料のほかに、本日席上配布資料もありますので、ちょっと事務局の方からまず、資料の御説明をさせていただきます。

● 「第3回仲裁検討会配布資料目録」というのがお手元にあると思うんですが、それを御覧いただきたいと思います。
 検討会資料の8から10、これは本日御議論いただく資料として、事前に送付しているものです。
 事前送付している資料として、そのほかに○○委員からの提出資料を、後ほど建設工事紛争審査会の実情等の御説明をしていただく際の参考資料として事前送付しております。
 それから、○○委員から提出していただいた「弁護士会の仲裁センターの実状について」これについては、差し替え分を本日机上にお配りしておりますので、そちらの方を御覧いただければというふうに思います。
 そのほかに、本日お配りしたものとして、参考資料9「主要な国内仲裁機関の概要(改訂版)」。
 ○○委員提出資料の本日配布分「『知っていますか?! 建設工事紛争審査会』(パンフレット)」と「中央建設工事紛争審査会における建設工事紛争処理手続の手引」。
 ○○委員のところでは、「仲裁統計年報(全国版)平成12年度版(抜粋)」及び「仲裁事案の実情と有効な活用方法」。
 配布させていただいた資料は以上です。

□ 資料目録にありますのが、今、御説明いただいたものですが、そのほかにお手元に、こういう「仲裁法試案2001年改訂」というものがあります。○○委員、これを簡単に御説明願います。

○ これは、仲裁研究会が1989年に発表した仲裁法試案を見直したものです。近時の立法作業の一助となることを目的としています。

□ どうもありがとうございました。それでは、本日の議題は、先ほど御説明がありましたように、この仲裁検討会資料の8、9、10で、仲裁手続(その2)というものと、仲裁判断と仲裁手続終了の問題、3番目に仲裁判断に対する不服申立て、この3つの資料について、逐次御議論をいただきます。
 それより前に、まず事務局の方から仲裁検討会参考資料9について御説明いただきます。事務局の方からお願いいたします。

● では「仲裁検討会参考資料9」、本日席上でお配りしたものですが、これを御覧いただけますでしょうか。
 この資料は、第1回仲裁検討会で配布いたしました、「主要な国内仲裁機関の概要」の右側に「受理件数」「判断件数」という統計を加えたものでございます。
 統計の年は、平成12年若しくは平成12年度のものでございまして、これは事務局の方で調査した結果を記載させていただいております。
 このうち労働委員会関係につきましては、仲裁というふうにありますが、この内容自体やや特殊性を持っております。
 統計関係については御覧いただくと分かるかと存じます。ただ、平成12年の受理件数でございまして、その年度に必ずしも事件処理が完了しているとは限りません。また、判断件数も、平成12年度に受理したものでなく、それ以前から係属していた分も含まれておりますので、受理件数と判断件数は必ずしも一致しておりませんが、その旨御理解の上御利用ください。
 これによりますと、そこそこの件数もある一方、やはり特に新しく設立されました機関については、まだ実績のないところもありまして、多いところでも年間十数件程度というような感じになっております。
 以上でございます。

□ どうもありがとうございました。何か御質問ありますでしょうか。
 それでは、今日はお手元の議事次第に記載されておりますとおり、まず○○委員から建設工事紛争審査会における仲裁の実情について御説明いただき、次に○○委員から東京弁護士会の仲裁センターにおける仲裁等の実情につきまして、御紹介、御説明いただくということにさせていただきました。
 次回には、国際商事仲裁協会における仲裁の実情につきまして○○委員から、それから、日本海運集会所の仲裁の実情につきましては○○委員から、それぞれ御紹介いただくことにしまして、私どもも勉強をしながら法案を作る準備をしていきたいというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、○○委員と○○委員のレジュメは、既に事前に送付されております。そういう資料を適宜御説明していただければというふうに思います。
 まず、○○委員から、どうぞよろしくお願いいたします。

【建設工事紛争審査会の紛争の実情について】

○ それでは、御説明させていただきます。資料を3種類配っていただいておりますけれども、事前に送付していただきました「建設工事紛争審査会について」というコピーをとじたものがレジュメを兼ねておりますので、それに沿って御説明をさせていただきます。

 建設工事紛争審査会でございますけれども、建設工事の請負契約に関する紛争の簡易・迅速・妥当な解決を行うADR機関でございます。お亡くなりになりました川島武宜先生の大変な御尽力によりまして、昭和31年、建設業法を改正いたしまして、法律に基づく行政型のADR機関ということで設立されております。
 設立の理由といたしましては、3つほどございまして、建設工事の紛争というものは、技術的な判断を要する場合が多い、これが第1点でございます。
 第2点として、瑕疵の問題ですとか、あるいは下請代金の不払というような問題につきましても、迅速な解決が求められるということでございます。
 第3点といたしまして、建設工事の結果、ものができ上がりますし、また元請、下請、継続的な取引関係があるということで、紛争解決後も当事者間の円満な協調関係を必要とする。
 以上、3点を理由として設立されております。

 この建設工事紛争審査会でございますけれども、国土交通省本省に置かれております中央審査会、それから各都道府県にそれぞれ設置されております、都道府県の審査会がございます。その役割分担につきましては、「知っていますか?! 建設工事紛争審査会」のパンフレットを見ていただければと思います。表紙を開けていただきますと、中央審査会と都道府県審査会というふうに申請を受理する主体が分かれております。
 建設業につきましては、建設業法という法律で、許可制を取っておりまして、2以上の都道府県に営業所を設置する場合には国土交通大臣の許可、1つの都道府県内だけに営業所を設置する場合には都道府県知事の許可というふうになっております。この許可制に連動するような形で、中央審査会では大臣許可の建設業者が関係する紛争、あるいは異なる都道府県知事許可業者同士の紛争、これを取り扱うということでございまして、残りは都道府県の審査会で取り扱うというようになっているところでございます。
 ただ、紛争当事者が合意に達しますれば、どの審査会にも申請できるという、合意管轄の規定も別途ございます。

 手続でございますけれども、あっせんと調停と仲裁と3つございまして、いずれも申請時点で申請者が選択して申請するという仕組みになっております。
 紛争処理を行うのは、委員あるいは特別委員ということで、国土交通大臣あるいは都道府県知事が任命した方々にやっていただくということになっております。
 委員と申しますのは、審査会の運営に関することについても御審議いただきますし、個別の紛争処理も担当していただく方々でございます。
 特別委員というのは、専ら紛争処理のみ行う委員でございます。
 いずれも任期2年、非常勤ということでございまして、委員につきましては15名以内、特別委員につきましては特に法律上人数の制限はございません。
 ちなみに中央審査会の場合、現在、委員、特別委員は全部で155名任命させていただいておりまして、うち法律委員が66名、約43%でございます。建築土木などの技術委員が69名、約45%でございます。残りは、行政経験者を始めとする一般委員でございまして20名、約13%という数字になっております。

 紛争処理の状況でございますけれども、レジュメの2ページ目をお開きいただければと思います。平成13年度の数字がまだまとまっておりませんけれども、直近の12年度で申しますと、中央審査会に対する申請はあっせん10件、調停21件、仲裁8件ということで、39件でございます。
 都道府県審査会に対する申請は、あっせん20件、調停118件、仲裁29件ということで、167件でございます。
 合計いたしまして、206件の申請が12年度には上がってきているということでございます。
 この206件という数字は、過去の数字に比べるとちょっと少ない水準でございまして、大体過去の数字を見ますと、全国で年間200〜300件の申請が行われているということでございます。
 うち仲裁でございますけれども、年によって違いますが大体2割程度という実態でございまして、年間で40件から70件ぐらい、大体50件前後、仲裁の申請が上がってきているということでございます。

 3ページをお開きいただければと思います。
 紛争処理申請を類型別に整理したものでございます。(1)が当事者類型でございまして、aとcが個人発注者と請負人の間の紛争でございます。数的には、これがかなり多うございまして、合計で見ていただきますと52%と18%ということで、70%が個人を含む、BtoCの紛争であるということでございます。
 eとfが、元請と下請の業者同士の紛争ということでございまして、BtoBでございますけれども、これが13%と3%ということで、16%でございます。ただ最近、この元請と下請の紛争が増加する傾向にございます。
 工事の種類でございますけれども、建築工事が大体9割方でございますけれども、元請と下請の紛争が増えていることを反映いたしまして、最近、土木、その他の工事でも増加傾向にございます。
 紛争の類型でございますけれども、工事の瑕疵、工事代金の争い、契約解除、下請代金の争い、こういったところが主な紛争の類型でございます。

 次の4ページを御覧いただければと思います。紛争の処理結果の状況でございます。
 平成12年度に終了いたしました件数、全国で254件でございます。まず、あっせん、調停でございますけれども、あっせん、調停が成立したというものが84件でございます。打切りが80件でございます。このほか、取下げというのが25件ございまして、審査会の外で和解が成立して取り下げるという場合も中にはあるようでございまして、おおむね申請されたもののうち5割〜6割ぐらいは解決しているという結果ではないかというふうに思います。
 仲裁でございますけれども、仲裁判断が出たというものが全体で42件でございます。そのうち、当事者間で成立した和解をそのまま仲裁判断にいたしたという、和解的仲裁判断が9件という内数でございます。
 そのほか、期日内和解として14件上がっておりますけれども、これは仲裁手続の期日の中で和解が成立いたしまして、仲裁申請を取り下げたというものでございます。
 その他というものがございますけれども、これは期日外の和解などでございます。期日外で和解が成立して、仲裁申請を取り下げたというようなものでございます。
 そういうことで、仲裁手続のうちかなりの部分、半数近くは和解で解決しているという状況でございます。

 次に仲裁の手続について御説明させていただきます。まず、仲裁合意でございますけれども、手引の方の4ページをお開きいただければと思います。仲裁手続の開始に当たりまして、仲裁合意が必要でございますけれども、ここに掲げております「仲裁合意書」の例でございますが、これは紛争が発生した後で結ぶ仲裁合意の例でございます。しかしながら、実際には紛争が発生した後で仲裁合意が締結されるというのは、極めてまれでございまして、実際にはほとんど請負契約締結時点で仲裁合意が交わされているというものでございます。
 そちらの方の例でございますが、レジュメの方に戻っていただきまして、5ページ目をお開きいただければと思います。「仲裁合意書の例(請負契約締結時点で仲裁合意を行う場合)」というものでございます。ここで例として出しておりますのは、民間連合協定工事請負契約約款という、民間の7つの団体で作っている約款でございます。昔は4団体でございましたので、現在でも四会連合約款というふうに呼ぶことがございます。
 この34条が紛争解決条項でございまして、(1)であっせん又は調停によって解決を図るということがまず書いてございます。言わば調停前置のような形になっておりまして、あっせん又は調停によりまして解決できない場合には、(2)ということで、仲裁合意書に基づいて審査会の仲裁に付することができるという規定になっております。

 仲裁合意書でございますけれども、次の6ページを開けていただければと思います。約款と一体を成すようなものといたしまして、1枚の紙の裏表に6ページと7ページが印刷されております。実際には、約款に基づいてこの仲裁合意書に記名押印するという形で仲裁合意がなされているというのが大変多いわけでございます。
 これは、第1回の検討会で座長からもお話がございましたけれども、昭和55年に最高裁の判決がございまして、その判決で反対意見が付いたということを踏まえまして、仲裁合意をより明確化しようということで、こういう方式になっているものでございます。
 次に手続でございますが、手引の6ページをお開きいただきたいと思います。
 仲裁合意書に基づきまして、申請書が提出されますと、直ちにそれを被申請人の方へ通知いたしまして、約1か月の期間を置きまして答弁書の提出を求めるということになります。その間、仲裁委員の選定の手続を行いますけれども、これは両当事者に仲裁委員の選定のための名簿の写しをお送りいたしまして、審査会の委員、特別委員の中から、両当事者の合意で選んでいただくということをお願いいたします。
 これはレジュメの11ページを御覧いただければと思います。建設業法の条文を付けておりますけれども、上の方に第二十五条の十六という規定がございます。仲裁は、3人の仲裁委員が行うわけでございますけれども、第2項といたしまして、当事者が合意によって選定した者について、会長が指名するということでございます。ただ実際には、なかなか合意による選定というのが行われない場合が多いわけでございまして、ただし書きでそういう場合には審査会の会長が指名するということになっておりますが、実際にはこれがかなり多いということでございます。
 ちなみに、第3項では、仲裁委員のうち少なくとも1人は弁護士となる資格を有するものでなければならないということ、それから第4項で、この法律に別段の定めがある場合を除きまして、仲裁委員を仲裁人とみなして、公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律第八編の規定を適用すると、言わば仲裁法の特別法であるという点を明らかにしているところでございます。

 手続の方でございますけれども、手引の6ページに戻っていただきまして、答弁書が提出されてまいりますと、それを申請人の方へ通知いたしまして、必要に応じて、更に反論書、再答弁書のやり取りをいたします。並行して、先ほどの仲裁委員の指名が完結するということでございます。
 その上で期日を定めまして、両当事者出席の下に審理を行うということでございまして、おおむね1回につき2時間程度かけまして、もっとかかる場合もございますけれども、主張立証の整理、証人尋問、あるいは必要な場合には現地を検証するということもございます。おおむね月1回のペースで審理が行われます。
 そして、仲裁判断に至る場合もございますし、和解が成立して、それを仲裁判断とする、あるいは申請取下げになるという場合があるというのは、先ほど申したとおりでございます。

 あと若干細かいことですが、申請の手数料でございますけれども、手引の8ページを御覧いただければと存じます。申請手数料につきまして、あっせん、調停、仲裁のそれぞれの手続ごとに、請求する事項の価額に応じて決まるという仕組みになっております。例えば幾らということになりますが、このパンフレットの中をちょっと開いていただきますと、申請手数料、金額500万円の場合、金額2000万円の場合、金額5000万円の場合というのがございまして、5000万円の場合には仲裁申請の手数料は36万円ということでございます。
 手数料につきましては、また後ほど○○委員の方からも御説明があろうかと思いますけれども、私どもの方はこの申請時点の手数料一本でございまして、成立の手数料というのはございませんし、期日手数料というのもございません。また、タイムチャージ制を取っているわけでもないということでございます。

 最後に2点ほど、問題点ということで申し上げますと、現在、申請時点で申請者が手続を選んで申請するという仕組みになっておりまして、あっせんなり調停なりから仲裁に移行していくという仕組みになっておりません。ですからあっせん、調停不調の場合に、仲裁をお願いしたいという場合には、一から仲裁申請をし直さないといけないということでございまして、この点については制度的に改善の必要があるというふうに思っております。
 第2点といたしまして、あっせん、調停につきまして、話し合いにそもそも応じるかどうかという応諾の率でございますが、これはほぼ100%でございます。特に調停につきまして、出頭しない場合には10万円以下の過料に処するという、間接強制の規定もございまして、ほぼ皆さん出席されるということになります。
 しかしながら、公害等調整委員会、公害審査会などとは違いまして、あっせん、調停申請には、時効中断効が法律で規定されておりませんので、実務上支障があるということで、これはおそらく仲裁法ではなくて、建設業法なりADR基本法のような場になるかと思いますけれども、立法的な解決が必要だというふうに考えております。
 簡単でございますが、以上でございます。

□ どうもありがとうございました。引き続き、○○委員に御説明をいただきまして、その後で御質問をと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【弁護士会仲裁センターの仲裁の実情について】

○ よろしくお願いいたします。
 レジュメに従って、若干補足をさせていただきたいと思います。まず、件数でございます。私が東京弁護士会のセンターに関与しております関係で、まず東京弁護士会の数字を書きましたけれども、お陰様で近年増えてまいりまして、昨年度、2000年度で初めて100件を突破いたしまして、128件。今年は、レジュメにありますとおり、3月18日時点で151件ということでございます。
 それから、全国的な数字でございますけれども、これも本日、「仲裁統計年報(全国版)」というものをお配りいたしまして、平成12年度の数字でございますが、表紙を開けた1枚目ですが、3ページのところに月別・センター別申立件数が書いてあります。これがレジュメに書きました数字でございますけれども、平成9年、10年、11年、12年と合計数字が増えてまいりまして、12年度が874件の申立てということであります。これは、各地にセンターが徐々にできてきておりますし、今後も山梨、福岡、札幌等々に開設が準備されておりますものですから、早晩1000件を超えてくるんではなかろうかというふうに思います。
 件数の広がりについて、一番の問題は、紛争解決に当たる弁護士が、いかにこれのよさを分かって利用する、あるいはPRするということが大事だろうというふうに認識しておりまして、この辺りはなお会内でも努力をしているところでございます。

 次に制度の概要と特色でございます。各センターの仲裁につきまして、それぞれのセンターが仲裁規則を持っておりまして、本日全部をお配りするわけにいきませんので、お配りしておりません。先鞭をつけた第二東京弁護士会の規則を踏まえて、各センターで作っているところでございます。
 ところで、仲裁というのはどれだけの件数があるかということでございますけれども、これにつきましては、平成12年度では解決事件数合計343件のうち仲裁が24件。本来の仲裁判断が11件で、残りの13件は和解内容を仲裁判断としたものであります。
 これは、先ほどの事務局で配られたものの方に出てくるものと同じ数字でございますが、仲裁は少ないということであります。

 手続でございますけれども、普通は一方当事者が申立書の提出をして、センターがこれを受理すると、その段階では仲裁合意がないものがほとんどであります。もともとが法律相談のその先の解決を、弁護士自らやっていこうということであったために、少額事件等を特色にしたところもございますけれども、内容はさまざまでございまして、少額事件を超えたいろんな事件が関わっているというのが実情でございます。
 代理人がどれだけ付いているかということについて、今日は全体の統計はございませんけれども、一般市民が法律相談を受けた後に、弁護士なしにも申し立てられるような工夫がされておりまして、申立書につきましては、所定のものに本人が書き込んでいけばいいような内容になっております。ちなみに、東京弁護士会のデータですけれども、弁護士が双方に付かないというケースが39%ございます。双方に付いているものが25%、約四分の一ぐらいです。片方が36%ということであります。
 全国的には、双方に弁護士が付いているのが13%と、やや率は下がってきております。
 土地管轄は特にないというのは、書いてあるとおりでございます。

 仲裁人でありますけれども、これも当事者が合意によって選択するということになっておるわけでございますけれども、大半は指定がなくて、センターの方で1人の仲裁人を付けるという例が大半でございます。
 全国的にも、合議事件というのは、統計的には解決件数の2.4%程度ということで、ほとんど1人のものが多いということでございます。これは、おそらくは3名選任しますと、いろいろと費用の負担の問題等々があって、それが原因ではなかろうかと思います。

 手続の進行につきましては、ここにるる私が書きましたとおりでございますけれども、なるべく早くやろうということで、大体期日はなるべく3週間以内に入れてほしいということで行っております。場所はほとんど弁護士会館でやっておりますけれども、事情によりまして現地、その他の場所での開催も可能でございます。
 相手方が応諾するという率は、ここにありますとおり大体72%、これは東京弁護士会の例でございます。全国平均で80%ということになっております。これは、なるべく出てきてもらわなければ始まらないということで、必要に応じて事務局、あるいは仲裁人になった方から、何とか出てきて解決しましょうということで呼びかけると効果があるということでございます。

 最初は3回程度のあっせん手続から入ります。ただし、両方が最初から同意すれば、仲裁から入るということもやっております。1回の審理に大体2時間かけるということがございまして、次回期日を入れるのも、早ければ1、2週間後に入れるというようなことをしまして、早期解決を目指しております。
 お陰様で、解決する事件は、大体3回程度、しかも90日以内で解決しているというのが各地のデータで出ております。

 仲裁合意でございますけれども、仲裁合意書のひな形をお持ちすればよかったかなと思っておりますけれども、所定の用紙に、先ほど建設の方で御説明ありましたとおり、裏に規約も入れて、十分仲裁の何たるかを分かった上で、その所定の用紙で合意を取るというふうにしております。

 手続費用も、ここに書きましたとおりで、申立時に申立手数料1万円というのが多うございます。そのほかに、期日手数料を1回5000円という定額制、解決したときに、その解決額に応じた成立手数料という、3本立てが多いわけでございます。
 ちなみに、東京弁護士会の場合のデータは、125万円未満の場合で8%という、ここに書いたとおりのものになっております。
 この成立手数料につきましては、原則は当事者の平等負担ということでありますけれども、事案に応じて決定の中で、また和解の場合にはその和解の中で負担割合を決定するということで、事情によっては減免規定もございます。
 この手数料規定は、弁護士会で若干の違いがありまして、例えば申立手数料、期日手数料は、東京三会で一緒でございますけれども、成立手数料に若干の差がございます。
 また、期日手数料というものが、相手方を呼び出しておいて、お金を払いなさいというのはちょっと評判悪かったりもするんですけれども、中には、例えば埼玉だとか新潟辺りでは、申立手数料を1万2000円として、その代わり第1回期日だけは手数料は取らないという形で、来やすくしているというようなところもございます。

 特色としてはここにまとめたとおりでございます。夜間・休日でやるということも、結構ございます。

 中身でございますけれども、その次の紛争に向くタイプとも絡むわけでございますけれども、必ずしも裁判のようには請求権や法的構成を厳密に要求しない、事案に応じた解決が可能になっております。また、解決自体も近隣紛争、その他親族間のものなど、将来に向けての付随処置を適宜に決めるというようなこともやっております。
 また、関係者につきましても、利害関係人が参加するというようなこともあります。

 執行力につきましては、ここにありますとおり、センターで和解したものにつきましては、調停調書と違って、それ自体執行力がありませんので、いろんな工夫をしておりまして、和解成立と同時に支払うというような方法。あるいはある程度長期にわたる金銭支払の場合には、公正証書にするという方法。最近は、名古屋あたりでやっておりますけれども、即決和解をうまくからめまして、債務の履行をしていくというようなこともやっております。

 仲裁判断書につきましては、東京地方裁判所に寄託しているということでございます。

 あっせん・仲裁に向く紛争のタイプとして、少額な事案をここにるる書きましたけれども、先ほど申し上げました請求権の構成をしにくいようなもの、立証の困難なもの、最初から話し合いで解決を図りたいというようなものも受け付けております。
 例えば、家屋の明渡しを迫られているんだけれども最初から立退料が欲しいとか、そんなようなケースもございます。
 あと不法行為の事件というのが相当多うございまして、中には加害者側の方から適正な賠償額を求めるというケースも結構ございます。
 それから、先ほど言いましたとおり、近隣関係、親族関係についての事案なども、あっせん・仲裁には向いていると思います。

 他の機関との連携ですけれども、これは1999年10月、11月に、東京では東京銀行協会、それから信託銀行協会と提携いたしまして、いわゆるお客様相談所といいましょうか、そういう苦情を持ち込まれたものを、あっせんに適するものについては、協会の方から持ち込むという形で、弁護士会の方と連動しております。
 後ほど述べます盗難通帳の事件などは、結構そういう関係でこちらの方に持ち込まれております。
 その他は、いわゆる民間の中立型の機関ということで、今後各団体との提携、発展は期待できるんではなかろうかと思っております。御案内のとおり、弁理士会との仲裁センターであるとか、住宅紛争審査会などは、既にもう活動しているということでございます。

 若干時間が押しているかもしれませんが、事例を簡単に御紹介させていただきます。仲裁の事例というのは、先ほど言いましたとおり、余り多くございません。銀行協会から持ち込まれた、盗難通帳の事案というのが、立て続けに、例えば東京弁護士会は3件ぐらい持ち込まれました。これは、通帳を紛失した、あるいは盗難されたものが翌日の朝早く、全然関係ない支店で全額引き落とされてしまったという場合に、銀行にも責任があるんじゃないかという形で、なくされた方が銀行相手に申し立てたものが3件ございました。
 結論的には、いずれも仲裁判断をいたしまして、それぞれ銀行の責任を認めまして、それぞれ額は違いますけれども、一番多いのは90%銀行に責任を認めたものもございます。あとは、25%認めたもの、46%認めたものというケースがございます。
 それぞれの銀行の対応であるとか、それからいわゆる印鑑の照合の関係、最近は非常に精巧な印鑑が一夜にしてできてしまうというようなことで、こういう事件が多くなっております。

 その次の破産債権の確定の事例でございます。今日お配りいたしました弁護士研修講座の資料、これは弁護士向けに説明したものでございますが、この中にも大手証券の関連事件ということで出ておりますので、それを参考にしていただいたらと思います。
 要するに、管財人同士の争いのケースで、1つの破産会社が他の破産会社に対して債権届けを出すと、それを管財人がその債権届けを否認した場合に、その確定は本来なら確定訴訟になるわけですけれども、時間がかかること等々でセンターに持ち込まれたわけです。聞いたところによりますと、管財人同士だと、例えば担当の地裁20部(破産部)もどちらかの肩を持つわけにいかないと、そういう意味では、当事者同士が決めるというよりは、公平な第三者である弁護士会で決めてもらうということにメリットがあるということを漏れ承ったことがございます。そういう形で、これも立て続けにありまして、東京弁護士会ではこれのほかにもう一件、やはり管財人同士の裁判が係属いたしまして、それで仲裁判断をしております。第一東京弁護士会にも持ち込まれております。
 その他、今日お配りした弁護士研修講座の中にも幾つか例を引いてございますので、御参照いただければと思います。
 以上でございます。

【質疑応答】

□ どうもありがとうございました。それでは、建築工事紛争審査会と東京弁護士会のあっせん・仲裁センターの事例を、資料で御説明いただきましたけれども、何か御質問があれば。どうぞ、○○委員。

○ ○○委員にお伺いしたいんですが、先ほど申請手数料は最初の分のみというお話がありまして、郵送費用等はまた別というふうに書いてあるようですが、それ以外に審理の途中で、例えば何か検査のようなものを、判断の材料にしようということで、検査を行って費用を負担させるということはあるんでしょうか。

○ そうですね、鑑定ということで鑑定人にお願いすることがございますので、そういう場合にはあらかじめ両当事者の了解を取った上で、通常、費用は折半ということで鑑定をやっております。

□ ほかにいかがですか。どうぞ。

○ ○○委員が先ほどおっしゃった仲裁合意書のひな形を、もし可能であれば次回に出していただければと思います。

○ 分かりました。

□ どうぞよろしくお願いいたします。
 ○○委員、私からちょっと質問させてください。東弁のセンター、弁護士会もそうだと聞きましたけれども、仲裁適格との関係で、離婚だとか、人事訴訟など、仲裁じゃなくて、いろいろあっせんとかに乗っているということですが、その辺の割合はどのぐらいありますでしょうか。

○ 仲裁統計年報の事件ごとの一覧表を後ほどお配りした方がわかりやすいかと思いますけれども、全国の867件のうち、いわゆる家族間の紛争、これは離婚、養育費、相続等々ですが、77件ございまして、1割弱というデータでございます。

□ 分かりました。どうもありがとうございました。
 ほかに何かございますでしょうか。よろしゅうございますか。それでは、お2人の委員の方、本当にありがとうございました。次回、また国際商事仲裁協会と日本海運集会所の仲裁の実情について、よろしくお願いいたします。

【仲裁手続についての検討項目案】

□ それでは、今日は先ほど冒頭に申しましたように、3つの資料について御検討いただくということになっております。
 まず、第1番目の議題が、仲裁手続の(その2)でございます。始めに、この仲裁手続の進行等に関する問題につきまして、事務局の方から御説明をお願いしたいと思います。

【I 仲裁手続の進行等について】

● 仲裁検討会資料8の1ページ目を御覧いただきたいと思います。前回の検討会で触れましたように、仲裁手続の規律は、基本的には当事者が自由に合意をして定めることができますので、法律では手続の基本的な部分を規定すればよいのではないかと考えております。
 そこで、検討対象事項としての手続の節目となる事項として、4点を取り上げてございます。
 1番目として、申立て及び答弁の在り方。
 2番目として、手続は書面審理又は審問、いずれの態様によるものか。
 3番目として、当事者が仲裁手続を懈怠した場合の効果や、その場合に仲裁廷が取るべき措置はどのようなものか。
 4番目として、特に専門的知見が重要となる事件について、鑑定の在り方をどうするかを取り上げております。
 これらの事項について、モデル法のような在り方を採用することができるか、不都合があるとしたらどのような規律が妥当かという点について、一般の民事裁判との違いにも留意しつつ御議論いただきたいというふうに思います。

□ それでは、検討対象事項は4つありますが、この順を追って御議論をお願いしたいと思います。時間の関係もありますので、余り立ち入った議論まではできないかと思いますけれども、どうぞ御意見をおっしゃっていただきたいと思います。
 まず、申立て及び答弁の問題でございますけれども、これについてはいかがでしょうか。モデル法では23条の1項、2項がそうだと思いますけれども、こういうような規定でいいのか、それともどこかおかしいところがあるのかどうかということが中心になるかと思います。何かございますか。
 それでは、先に行きまして、また後で気がついたら戻っていただきたいと思います。

 次は、審理のやり方なんですが、書面審理と審問の選択ですけれども、モデル法は御存じのように原則としては審問期日を開くと、しかし審問をやらなくてもいいという仕組みになっております。これがモデル法の24条でございますけれども、こういうような仕組みでよろしいかどうかということでございます。
 よろしゅうございますか、やり方は当事者が決めればいいということで、書面審理もできる、しかし当事者が是非審問をやってくれと言えば、審問手続をやらなければいけないという仕組みでございます。

 3番目、4番目辺りが、少しずつ複雑になりますが、当事者が懈怠をした場合にどうするかということでございますが、これはモデル法で言いますと25条の(a)、(b)、(c)、この辺が当事者の懈怠の問題を書いてありますが、これは職権探知というようなことにも関係いたしますが、こういうことでいいのかどうかということになると思います。
 何か御意見ありますでしょうか。

 ちょっと先に行きまして、また後で議論させていただきますが、その次が鑑定の在り方というのが問題になります。仲裁廷が、職権で鑑定人を選定するということが許されるかどうかということでございますが、これはコメントに書いてありますように、鑑定以外の証拠調べというようなものについても、どういうことが考えられるのかということについて、御検討をお願いしたいと思います。
 この4つの検討事項のうちでは、この最後の鑑定のところが第1に問題になるのかなという気がいたしますけれども、職権鑑定というのはあり得るかどうかという、そういう具体的なところから。
 国際商事仲裁協会の方から、何か実務の面で。

○ 私どもの実務といたしましては、いわゆる職権鑑定、仲裁人が職権で鑑定人を選任する、あるいは鑑定書を求めるということはございます。ただ、その場合費用をどうするのかという問題は残るんだと思いますが、実務としては少なからず行われております。

□ 費用の点は、どうするんですか。

○ 費用の点は、当事者が負担するということになっております。

□ そうですか、そうするとかなり高額な場合でも、当事者は費用は出せないというようなことはないんでしょうか。鑑定人を頼むのはいやだとか。

○ 実際の例としましては、いずれの当事者からも反対がなかったということで、仲裁人としては当事者に意見を求めて、了解の上で鑑定を任せるということになっております。

□ そうですか、一応了解を取るということですね。分かりました。
 日本海運集会所の方は、どういう。

○ 職権で、仲裁人が鑑定人をお願いするということも、たまにございます。その場合は、仲裁人が要請した証人、鑑定人のために要した費用は、当事者において追加して納付しなければならないと定めておりまして、折半して負担してもらいます。例はあまり多くございません。

□ そうですか。建設工事の場合、何かありますか。

○ やはり実際上は、当事者の同意をいただいた上ですべてやっておりますので、当事者の同意がないのに、職権で鑑定を行うということはございません。取扱い的にはさっき○○委員のおっしゃったような方式と同じようなことになると思います。
 実態として、委員の方から鑑定をやったらどうですかというときも、必ず当事者の同意を取って、申立てをもらってからやるという仕組みになっております。

□ 弁護士会の方は、鑑定人に頼むということは、余りないんでしょうね。

○ むしろ専門家を、例えば建築の紛争であれば建築の専門家を、仲裁人の補助者という形で仲裁の一員に入ってもらうわけです。その場合に、1日当たり、例えば東弁ですと3万円の日当を払うとかいうことをやったりしております。
 ですから、ここで言う鑑定人というのとはちょっと違ってしまうのかもしれませんけれども、専門家をあらかじめプールしておいて、そして仲裁人と組んでもらうとか、あるいはそういう人に今度仲裁人になってもらって、仲裁人の報酬でやってもらうということでやっております。

□ 分かりました。職権鑑定というのもあり得るということですかね。費用の問題はとにかく別に考える、そうしないと適正な判断が得られないということですかね。そうすると、このモデル法の26条の1項の(a)で、別段の合意はできるけれども、そうでない限りは仲裁廷が鑑定人を選任できるという書きぶりでよろしいということみたいですね。障害はないということですね。

○ 1点確認をしておきたいんですが、私も基本的にはこういう規定ぶりでいいと考えておりますが、先ほど○○委員がおっしゃったように、実務では一応当事者の意見を聞いて行うことが普通だろうと思いますし、それはもちろん望ましいことだろうと思います。ただ、限界的なことを考えますと、一方の当事者が鑑定に賛成しているけれども、他方は反対しているというケースですね。結論から言うと、職権鑑定を認めるということは、少なくとも双方が反対すれば実施しないけれども、一方の反対では実施することもあり得るということだろうと思いますので、またそれは望ましい、ぎりぎりの場合には必要だと思いますので、それが分かるような規定ぶりにする必要があろうかと考えております。

● 双方が望んでいないときは、やはり鑑定人は選任できないという結論ですか。

○ 26条の「別段の合意をしていない限り」ということから言っても、それを合意というかは別ですけれども、双方が反対すれば別段の合意ありということになると思います。
 ただ、一方が、鑑定されたら負けるから反対するということもあり得ますから、両方が賛成しなければ実施できないということは困る場合が、まれでしょうけれどもあると思います。

○ 今の話で思い出したんですが、建物の瑕疵を巡る紛争で、一方当事者は100か所の瑕疵について鑑定しなければいけない。もう一方の当事者は、20か所しかないと。鑑定事項を巡ってこういう不一致があるということで、どういう内容の鑑定をやるのかについて合意がなかなか成立しないという問題があったことはございますので、そういう場合を考えますと、確かに職権で判断できる仕組みが必要かなという気がいたします。

● どうしても鑑定人の判断をもらわないと仲裁判断ができないけれども鑑定を頼むと費用が高いという場合に、鑑定できなくて仲裁人が判断できないという、仲裁人の懈怠の問題になってしまうのか、鑑定を命じて、鑑定費用を当事者が予納しないからということで仲裁手続を打ち切るというふうな道を設けるのか、その辺のところもちょっと関係するのかなという気がしています。
 実務上のやり方として、無理やり両当事者の反対を押し切って予納せよというのはなかなか言わないと思うんです。一応調整をしながらやっていくと思うんですが、規定の置き方として、どういう形のものがその辺で一番落ち着きがいいのかというのは、今の○○委員の御指摘も踏まえながら、考えさせていただきたいと思います。

○ おっしゃるように、実務的には両当事者が反対する場合には、なかなか仲裁人としても職権鑑定を実施しにくいと思うんですが、規定としてやり得るということを置いておいて、説得材料とかに使えるようにしておかないと、両当事者の合意がなければやれないという規定ぶりでは、いろいろと不自由だと思います。

□ コメントの一番下に書いてある、鑑定以外の証拠調べの具体的な在り方という問題ですけれども、先ほど現場を検証するという話も出ましたし、それから当然書証はあるだろうと思います。それから、証人尋問というのはどのくらいあるのか、その辺のところはどうでしょうか。書証は当然ですね、証人尋問というのは、どのくらいありますか、東弁なんかで証人に来ていただくケースはあるんでしょうか。

○ 東弁ではちょっと証人尋問の例は聞いたことないんですけれども、他会ではあったと思います。

□ そうですか、建設工事なんかどうですか。

○ そうですね、あっせん調停事件ですと、ケース・バイ・ケースということで、証人尋問をやらない場合もかなりございますけれども、仲裁の場合にはほとんど証人尋問をやりますし、現場を見ることもやります。

□ 分かりました。

○ 規則の上で、事実の内容を明らかにするため、当事者の申請の有無に関わらず、仲裁人が証人若しくは鑑定人の任意の出頭を求め尋問することができます。その場合具体的には、契約を結ぶときの仲介に当たった人、船舶関係ですとシップ・ブローカーが関わってまいります。当事者同席の元で行うのが原則ですが、稀に、ブローカーの方は、いろいろ商売上の影響がありますので、当事者の前でしゃべるのはちょっと控えたい、仲裁人の前だけならば話をしてもよいというようなことがあります。そうすると、当事者の申請がなくても、仲裁人がそれを求めるわけです。
 ただ、その証人の証言を採用するときには、当事者に対して示さないと、当事者の知らない事実が理由になってしまうといけませんので、そこは一番神経を使っております。

□ そうですか。それは何か手続があるんですか、当事者は出席しないところで。

○ 仲裁規則は当事者が出席しないところで証人尋問を行うことについてまで規定していません。仲裁人が相談して決めます。

□ 国際商事仲裁協会は、証人を呼ぶことはあるんですね。

○ 当事者申請の証人は呼ぶケースはございます。ただ、仲裁人が職権で証人を呼ぶということはまずないです。
 これに関連して、まず証拠調べとしては検証、現地に行って対象物を見るというような検証はたまにございます。外国に行くとか、現場に行くといった場合はございます。その場合は、当事者の立会いは必ずあります。規則上もそうなっておりますし、現実にも当事者が立ち会っております。

□ 分かりました。

○ 申し訳ございません、先ほどの○○委員の御意見の関係で確認したいんですが、申請はなくて職権で証人を調べるとして、調べた後の発言内容というのは、両当事者にはお知らせになるんですか。

○ 仲裁判断の理由に関わることであれば、当然、判断の前に、当事者に対して証言内容を伝えます。

□ 分かりました。仲裁手続の進行の4つの問題、初めの方はよろしいでしょうか。3番目の当事者の懈怠のところは、どうなんですかね。出頭しない、あるいは書面で回答しないというのを、どう扱うかという問題ですけれども。それは自白だと、擬制自白だというふうにするのか、しないのかという問題ですね。モデル法は、そういうことはしない、手続を進めるということにしているんですけれども、そこは裁判と違うんだということで。

○ 質問なんですけれども、ここの3でお書きになった趣旨は、モデル法と同じで、モデル法の方は別段の合意がない限りとなっておりますので、別段の合意をすれば自白として扱うということができるということを前提に議論するということですか。

□ そういうことですが、そういう前提でいかがでしょうか。

○ モデル法の規定というのは、欠席判決はしないという趣旨ですね。だから、自白として扱うことができるかどうかは、直接は言及していないというふうに私は考えます。

□ そうですか。モデル法の25条の(b)ですね。当事者が答弁をしないというときは、仲裁廷は、「その懈怠をそれによって申立人の主張を認めたものとして扱うことなく、手続を続行しなければならない」。

○ 意味がよく分からないんですが、日本のように擬制自白主義を取っている国は、訴訟の場合ですが、ほとんどありませんので、モデル法参加国の常識から考えると、欠席判決主義−−欠席判決というのは、日本の訴訟実務で慣用的に使われている意味ではなくて、本来の意味ですが−−欠席判決主義は取らないということではないかと。必ずしもはっきりしませんが。

● 25条の(b)の規定を前提にした場合に、手続がどうなるのかということを確認しておきたいんですが。
 これは、被申立人からは何ら主張が出ていないんですが、申立人から一応主張が出ているんで、申立人からの証拠も一応提出させて、反論がないということを確認した上で仲裁判断に至る、そんなように理解してよろしいんでしょうか。

○ そう考えています。公示送達事件の処理のような感じに近いのかと思います。

□ これは実務もそうなんですか。

○ 実務はそのとおりになっています。被申立人が出てこない場合にも、証人を呼んで証拠調べをする場合があります。

□ それは仲裁契約がちゃんとありますからね。
 それでは、ここはよろしいでしょうか。「仲裁手続の進行等について」というのは、よろしいですか。

○ 大して重要ではないかもしれないんですけれども、2の手続のところで、審問か書面かということで決定をして進めるんだということですが、ちょっと早いかもしれませんが、時代ですから、書面審問のほかに、オンラインによる手続の可能性もあります。法律に書くのはやや早いかもしれませんが、近いうちに書面と並んでそういう可能性も現実に起きてくると考えております。

○ 今、○○委員がおっしゃったことは、私どもの仲裁規則では既に取り入れておりまして、遠隔地にいたり病気その他のために出席できない場合には、電話、あるいはテレビ会議を利用する。それから、書面はEメール、FAX等でよいと規定しました。現実にEメールを使用したものもあります。電話やテレビ会議方式はまだ事例がありません。

□ 分かりました。

○ 先ほどの懈怠のところの25条の(b)の言い方からすると「手続を続行しなければならない」ということですね。続行「できる」じゃなくて、「しなければならない」というと、現実の仲裁の場合には、出てこないときには、取下げとか、その段階でそれ以上進まないということの方がむしろ多いと思うんです。

□ 東弁の場合、仲裁契約というのはもともとないわけですから、出てもらわなければそれで打切りになるんじゃないかなと思っているんです。仲裁契約がある場合には、1回出てこなければそれで判断するというのではなくて、更に書面を出せとか、証拠を出せとかいうことで、実体的真実を追求するために手続を続行するということになっているんじゃないかと思うんです。

○ 続行手続は義務的になっているというわけですね。

□ そうですね。それだけで打ち切るというんではなくて、更にやれということでしょうね。

● この、手続を続行しなければならないという意味について教えていただきたいんですが、人訴法の中には次回期日を定めなければならないという規定がございますが、モデル法の趣旨は、自白として直ちに打ち切ってはならず、次の証拠調べ的なものに移らなければいけませんよという意味で、次回期日を指定することになるのかならないのかというのは、これは一応仲裁廷の裁量的なものなんだという理解をしてよろしいんでしょうか。

○ おっしゃるとおりだと私は思います。続行というのは、欠席という事実だけで直ちに結審してはいけないという意味で、そのまま審理を続けて、即日に判断ができるような簡易な事案であれば、即日の判断は許されると思います。

【II 証拠調べに対する司法裁判所の援助について】

□ よろしいですか。それでは、先に進ませていただきまして、「II 証拠調べに関する司法裁判所の援助」というところに入りたいと思います。これについては、まず裁判所の援助ですから、裁判所の実情について、○○委員の方からお願いします。

○ 実情と言いましても、件数程度の御紹介しかできないことになりますけれども、東京、大阪各地裁の最近4年間の件数を確認しましたところ、平成10年から平成13年まで、援助に関してはいずれも0件と聞いております。

□ ありがとうございました。
 それでは、検討事項について事務局の方から御説明いただけますでしょうか。

● 検討対象事項は資料8の3ページに記載したとおりです。特に検討対象事項3の援助の対象となる証拠調べは何かにつきましては、実例が乏しいというか、今の話では最近は例がないということなんで、どのような証拠調べについて、裁判所の協力を求めることができるかについて、必ずしも解釈でも確定していないようですので、実際上の必要性の部分にも留意しつつ、御議論いただき、今後の検討の参考になる御意見をちょうだいしたいと思います。
 併せて、証人及び鑑定人尋問以外の証拠調べも援助の対象となるとした場合、具体的にどのように証拠調べの手続を進めていくことになるのかについても御検討いただきたいと思います。

 また、検討対象事項4の証拠調べの在り方に関して、実際に証人や鑑定人の尋問をどのように行うのがよいのかについて御議論をお願いいたします。実際に心証を形成して判断するのは仲裁廷ですから、本来は仲裁廷が証拠調べをするのがよいとも考えられますが、宣誓や偽証というようなことを課すとすると、裁判所が証拠調べに任ずべきではないかとも思われます。
 この点モデル法は、その文言からは必ずしも明確ではございませんけれども、裁判所自らが証拠調べをすることも、仲裁廷にあてて証拠を提出するよう命じたり、証人として出頭するよう命じたりすることも、双方とも可能としているというふうに言われているところです。

 なお、検討会資料8の4ページ上段のコメントでは、民事訴訟法の規定に基づくのか、あるいは非訟事件手続法10条に基づいてするのかという呈示の仕方をさせていただいておりますが、これは証拠調べの在り方について、議論の素材を提供するという意味で記載したものです。必ずしも立法の規定ぶりと関係する趣旨ではございませんので、念のため申し添えたいと思います。

□ どうもありがとうございました。
 それでは、検討対象事項1から4までを、この順で整理させていただきたいんですが、1の方はだれが裁判所に対して援助の申立てをすることができるかということで、モデル法は仲裁廷自身、又は仲裁廷の許可を得た当事者が援助の申立てをできるということになっていますけれども、当事者の申立てを認める方がいいのかどうか。仲裁廷だけに限った方がいいのかどうかというのはここでは議論になると思います。
 それについていかがでしょうか。何か御意見があれば。

○ 現実には、このような手続を取ることによって引き延ばしを図りたいという当事者がいると思われますので、やはり仲裁廷の許可を前提として、あるいは現在の公催仲裁法のように、仲裁人が必要と認める場合に限ってこのような手続が可能であるという方がよいと思います。

□ 何かほかに御意見ありますか。よろしいですか。
 それでは、援助を求める管轄裁判所というので、これも小さな問題かもしれませんが、仲裁地がある管轄裁判所に行くのか、それとも証人等であればそこへ直接申し立てることができるのかという点は、何か御意見があれば承っておきたいと思いますが、立法マターですので、何か実例があればおっしゃっていただけますか。
 余りないんですよね。では、これは、こういう問題があるということだけ御認識いただければいいかと思います。

 それから、援助の対象となる証拠調べの範囲ですが、証人、鑑定人の尋問については、明文の規定がありますが、その他の証拠調べ、コメントの一番下に書いてあるような文書提出命令とか、調査の嘱託とか、そういうようなことも援助の対象とすべきかどうか。あるいは、すれば便利かどうかということなんですが。

○ 調査嘱託とかいうものは、現実問題としてあった方が助かりますね。議論はあるようですけれども、日本ではまだまだ、裁判所からというと出すけれども、例えば弁護士会での23条照会についても、なかなか限度がありまして、裁判所からお願いできるルートというのは、もし立法上可能なら、できれば欲しいなという感じがします。

□ 3ページのコメントに、現行公催仲裁法の規定ぶりなどに照らし争いがあるとありますが、一体現行法の解釈がどうなのかというのが問題なんです。
 私自身の考え方は、796条の2項という、証人や鑑定人について書いてある規定は、その直前の796条1項を受けた規定で、1項では、仲裁人が必要と認める判断上の行為は、仲裁人自身ができないものは、裁判所に援助を求められるという、この規定を受けているので、証拠調べについては、裁判所に援助を求められると。2項はそのうち特に証人と鑑定人についてだけの規定ではないだろうかと私は読んでいるんですが、これはそういう解釈上の問題と立法マターとはおのずから違いますので、特に調査嘱託などは、今、○○委員もおっしゃったように、もしスムーズにこれが働けば有効な証拠調べ方法だと思いますけれども、もし御意見があれば。

○ 質問させていただけるとありがたいんですけれども、調査嘱託とか送付嘱託とか、結局は任意で提出してもらう形になりますね。今、○○委員から、裁判所がすると違うという、そういう意味ではうれしいお話をいただいたんですけれども、では、裁判所の方が申立てを拝見したときに、どういう事情があったときに調査嘱託しましょうとするのかというところが、ちょっと私自身よく分からないところがありまして。
 これについては、おそらく当事者への文書提出とか、当事者の本人尋問、任意のものはみんなそうだったりするんだと思うんですけれども、それを超えて裁判所が事件について本当に必要なのかどうか判断するんだということになると、そこまでして任意のことを、事実上、裁判所かどうか、やる主体が違うということで、どれほどやる意味があるんだろうか。
 あるいは、過料がある分、第三者に対する文書提出命令とか、証人に対する呼び出しとか、この辺りも仲裁廷からお話があれば、仲裁廷が必要と判断したということだけで裁判所が何でも出すんであれば、余りペナルティーを加えることについての裁判所の判断が行き届いていないような気がいたします。
 逆にそこのところをいろいろ審査するとなりますと、仲裁廷の独自性との関係もあるんでしょうし、本当にどういう場合にこれが必要であって、その場合、裁判所がどういう判断をしたらいいという仕組みとして考えておられるのか、よく伺わせていただかないと、何となく自分の方でもイメージがつかめないところがありまして、その辺りの御議論もお願いできればありがたいと思います。

□ おっしゃるとおりだと思います。これは解釈上どうなんですか。

○ 実務は知りませんが、また、実際にどのくらいの例が実施されているのか知りませんが、諸外国の立法例を見ますと、モデル法を準用している国もしていない国も含めて、証人と鑑定人の尋問を更に超えて裁判所が仲裁廷の証拠調べの援助をするという規定は、置いていない国はほとんどない国はないくらい置いていると思います。
 例えば、たまたま私の手元にニュージーランド法がありますが、文書のディスカバリー、質問書、インターロガトリー、あるいは物品の留置、検査、土地や建物へ立ち入って観察や実験をするとか、もろもろの証拠調べの援助を裁判所ができると。
 その場合に、モデル法もそうですけれども、これは、「しなければならない」という規定ぶりではなくて、基本的には「できる」という規定ぶりですから、理論的には、仲裁廷が援助を申し立てても裁判所が拒否することはあり得るだろうと思います。
 ただ、一般的に言われているのは、仲裁廷がちゃんとした仲裁機関のようなところで、信用の置けるところであれば、基本的には仲裁廷、ないし仲裁人の判断を信頼して、特に拒否しなければいけないような事情がない限りは、援助をするんだろうと思います。

○ そうすると、具体的に仲裁廷のいろいろな証拠資料といいますか、それを裁判所の方が審査をするという仕組みを想定しているんでしょうか。

○ 事件内容の審査はしませんから、これこれの事情、具体的には分かりませんが、おそらく文書でこれこれの事情で証拠調べの援助をお願いしたいんで、例えば文書提出命令を出してほしいというのがあると、その裁判所に対する援助依頼書の記載で判断するんだと思います。

□ これは解釈論ですが、現行の796条で必要性と相当性という2つの要件があるんですね。「仲裁人ノ必要ト認ムル判断上ノ行為ニシテ仲裁人ノ為スコトヲ得サルモノハ当事者ノ申立ニ因リ管轄裁判所之ヲ為ス可シ但其申立ヲ相当ト認メタルトキニ限ル」ということですから、仲裁人が証拠調べをするかどうかの必要性は仲裁人の判断です。当事者が申し立てて、裁判所がなるほどそうだなと思えば、それをやると。それは例外規定になっていますが。
 必要性の判断と相当性の判断の2つありまして、裁判所はどこまで援助するかというのは、従来解釈上、判断は非常に分かれていたんですね。ですから実際上も余り使われていないというのが、さっきの統計で○○委員が御説明になったところにも表れているんじゃないかと思うんですが、諸外国の例は、○○委員が言われるように、司法裁判所の協力というのは当然のことだというのが多くの国の扱いだろうと思っています。

○ 繰り返しになるかもしれませんが、実際の事件の審理の内容とか、本案に関する内容とかを裁判所が調べることはないと思います。
 ただ、仲裁廷は裁判所に援助を依頼する以上、なぜ仲裁廷自身ではできないのかという事情は当然説明して援助を求めると思いますので、その説明が説得的でなければ拒否することもあり得ると。しかし、なるほどこれだと援助は要るだろうなということであると、その申立てに従って援助をするというのがおそらく諸外国の例だろうと考えています。私は実際に見たことはございません。

● 今の○○委員の御説明ですと、こういう援助の申立てがあった場合に、通常は申立書にそういう必要性みたいなことが書いてあるんだろうけれども、それだけではまだ十分じゃない、もうちょっとこの点について知りたいということも当然あると思うんです。任意だと言っても、相手方にある程度義務的なものを課して提示させるということなので、この事案だったら普通もっとこういう証拠があるはずなのに、それはどうなんでしょうかと聞いたりするときに、そのやり取りというのは−−法律に書くかどうかは別として−−そういうことは当然あり得るんだろうという前提ですか。

○ 私もそう考えます。

□ ですから、この条文自身は多分鑑定や証人尋問だけじゃなくて、それ以外の証拠調べも含めて、判断上必要な行為について司法裁判所に協力を求め得るということになっているんだろうと思うんです。これを今後どうするかによりますけれども、もし、そういう司法裁判所の援助を定めるとすれば、今、事務局の言われたような細かなことまできちんと書かないと、実際には動かなくなってしまうという感じはありますね。

○ 任意のものを含めるかどうかということはあるんでしょうけれども、そこまで本当に必要な事例というのが本当にあるのかどうか。具体的に今まで実例がないものですから、その辺りの実情をもうちょっと教えていただければありがたいんです。

○ 当事者の一方が相手方に対してこういう書面があるはずだから出してほしいという主張をしましたが、その相手方は出してこない。会社更生法の適用になった会社でしたので、裁判所に保管してある書面の提出について、仲裁人に代わって事務局が裁判所に相談してみましたが、非訟事件だから書類を持つ人の同意が取れないと出せないと言われました。
 事実、相手が主張している書類を出せないということは、それによって不利益を被っても仕方がないのではないかと仲裁人が判断すれば、それほど裁判所の協力を求めて文書まで提出してもらわなくても、大体出ているものでもって片がつくのがほとんどです。
 それで、おっしゃったように0件というのがずっと続いているんじゃないかと思っています。

○ 補足ですけれども、私も当事者が保持している文書といったものの提出命令というのは余り必要ないんじゃないかと思うんです。むしろ必要なのは、第三者の出頭、あるいは第三者が所持する証拠の提出といったものではないかなと感じております。要するに、当事者以外の者という場合に必要じゃないかなと思います。

○ 1つ例があったんですけれども、裁判所にお願いした例ではないんですけれども、遊園地の遊具の設置に瑕疵があって、その遊具を使った人が骨折したということで、それは請負人の責任なのか、遊具の設置の瑕疵なのかということで紛争が上がってきた件がありまして、審理の都合上、病院に保管されているレントゲン写真を取り寄せてほしいという申立てが一方当事者からありまして、それは私どもの方で、その法的根拠はどうなるかということもいろいろ吟味して、とりあえず病院の方にお願いして、任意で出していただいたケースはあったんですが、だめだったら裁判所にお願いしたらという案件がありました。

□ これは必要性も含めて、第二読会でやりたいと思いますが、今日のところはよろしゅうございますか。
 それでは、検討事項の4番目の、証人や鑑定人の尋問、これは明文上も援助を求められる対象になっておりますが、その場合に証人や鑑定人をどの機関が尋問するかという問題ですね。裁判所で尋問をしてもらうのか、あるいは仲裁廷に出て行けという命令だけ出してもらうのか。その辺のところはどういう規定ぶりがいいのか、あるいは両方認めるのかという、この辺感触としてどうなんですかね。

○ よく分かりませんが、モデル法の理解としては、どちらもできるということだろうと思いますので、ちょっとあいまい性が高くなる点は問題ですが、いずれもできるという規定ぶりが1つの有力な選択肢かとは思います。

○ どちらでもできるという規定に積極的に反対するものではなくて、むしろそれでいいのかなと基本的に思うんですが、ただ、そういう規定の意味を考えてみますと、裁判所ができるとすることの意味は、それによって宣誓を命じたり、偽証の制裁を科したりすることができるということにあるんだと思いますが、仲裁人が結局行うことにする場合に、それを直接に行わずに裁判所に一旦援助を求めるということによって、どういう効果が生まれるのか、ちょっと理解できておりませんので、どなたかお分かりの方おられたらお教え願えればと思うんですが。

□ 不出頭に対する制裁だけですね。

○ 英米系の例を見ますと、仲裁人の面前に出頭を命ずる場合も、制裁は裁判所が科すと。

○ 中身の方の制裁は科せないけれども、出頭の制裁が生きてくるわけですね。

□ それから、4ページのコメントの4に、民事訴訟法が適用されるのか、非訟事件手続法の10条なのかということが書いてありますが、この辺のところ、○○委員、何かありますか。

○ よく分からないんですが、卒然と考えますと、非訟事件手続法の規定に基づいて行う、あるいは仲裁法に規定を置いた方がいいかと思いますが、その場合には、非訟事件手続法の特別規定として置くということではないかと思います。
 というのは、やはり裁判所に援助を求めたとしても、仲裁に必要な証人尋問について、公開原則等が働くというのはナンセンスではないかと考えますので。

□ 分かりました。これは具体的な立法マターですから、もう少し先に行って考えるということでよろしいですか。それでは、その「その他」というところの「多数当事者仲裁手続について」、事務局の方からお願いします。

【III その他 〜1 多数当事者仲裁手続について〜】

● 問題点は資料5の中段のコメントに記載したとおりですけれども、非常に難しい問題がありまして、問題となるそれぞれの場合を具体的に取り上げて、妥当な規律を考案するということは、現時点ではなかなか難しいんではないかなと思っております。第一読会では実務的に最も問題となっている点、実務上、あるいは運用上の工夫等では対応できない点などがあるかどうかも含めまして、多数当事者の仲裁の実情について承ることができればと考えております。

□ これは実情をお聞きするということで、もしそういうのがあれば教えていただきたいんですが。

○ 結論から申し上げますと、ございません。ただし、同一の仲裁合意から生じた紛争の多数当事者というのは当然ございます。仲裁合意を締結した者以外の者が仲裁に加わる、仲裁手続の併合といったものはございません。

□ 建設工事紛争の場合はどうなんですかね。

○ コメントの最初のところにも書いていただいておりますけれども、注文者と請負人との間の紛争につきまして、仲裁手続が進行している。瑕疵の問題点としましては、その瑕疵が請負人の工事の瑕疵なのか、あるいは設計監理の瑕疵なのかというのがよく問題になるところでございまして、そういう場合に設計監理者を利害関係人として参加させて、最終的に和解の当事者なり仲裁判断の名宛人とするという場合もございます。その場合に、設計監理者を含めて、仲裁合意が成立していると見ていいのかどうかというのは、事案によりますが、大きな問題でございます。
 1つございました例としましては、注文者と請負人で仲裁手続が進行中に、民事訴訟法の訴訟告知の規定を準用して、設計監理者をこの手続に引っ張り込みたいとして、仲裁告知の申立てというのがなされたことがございまして、そもそもそういう準用というのが現行法制の下であるのかどうかということと、それから設計監理者を含めた仲裁合意があるのかどうか、仲裁合意がなければ告知ということ自体あり得ないだろうと思うんですけれども、それが議論になった事案もありました。まだ手続が進行中でございます。

□ 基本的なことなんですが、先ほど御説明いただいた仲裁合意書の中には、設計監理者が入るようなタイプものもあるんでしょうか。

○ 先ほどお配りした資料、別紙の仲裁合意書には設計監理者が入っておりませんし、設計監理者を含めた仲裁合意書というのは、通常使われておらないと思います。ただ、契約書と約款につきましては、設計監理者も記名押印するという方式になっておりまして、それをどう解釈するかということなんですが、契約書本体に記名押印している以上、約款の紛争解決条項は契約書と一体を成す約款の一部でございますので、設計監理者も含めて仲裁合意は成立しているという解釈もございますし、別紙に書いていない以上、仲裁合意をしていないという解釈もありまして、ケース・バイ・ケースで分かれております。

□ 日本海運集会所は何かありますか。

○ ここにお書きになっていますように、船主、傭船者、更にその先に再傭船者がいるように、複数の契約がつながる場合がございまして、いずれも海運集会所の仲裁によるという合意がある場合もあれば、一部の契約についてはロンドンの仲裁によるという合意がある場合もあります。そういったときにどうするかは規則の上では書き切れませんので、ケース・バイ・ケースで当事者、あるいは当事者の代理人に、一緒にやらないかということで処理するしかないと思っています。

○ 先ほどの破産債権確定のことでお話ししました中で、証券会社とその下にファイナンス会社があったんですが、実は、抵当証券の被害者という人が、親会社に対して裁判を起こしたんです。この破産債権の確定事件は、親会社が子会社に届け出た債権の確定だったんですけれども、その中では、最終的に、親会社に対して裁判を起こしている被害者弁護団の人たちに、利害関係人として入っていただく。その利害関係人が参加という形で仲裁判断の当事者に加わった例がございました。
 ですから、おそらく利害関係人の参加ということはあるんだろうと思うんです。
 それから、仲裁センターの規則の中で、参加手数料というものを決めて、参加人が参加手数料を払うということまで置いているところもあります。おそらくその他の事例においても、親族関係の事案などのケースで利害関係人が生ずるということはあるんだろうと思うんです。
 どういう規定を置くかというのは難しい問題だとは思うんですけれども、少なくともそういう利害関係人が参加する形での仲裁判断も許されるような規定が欲しいなという感じもいたします。

● 今、利害関係人の参加というのが出てきたんですが、当事者A、Bの間の仲裁合意に基づいて、その手続において選任された仲裁人の判断について、利害関係人がそれに対して服しますよということを前提にして参加すると。その場合には、その判断について、その利害関係人にも及ぶと、そのようなイメージなんでしょうか。

○ 利害関係人が単に手続に参加して、仲裁判断の名宛人にならない場合もございますけれども、利害関係人も仲裁判断に服するという合意を明確にいたしまして、そこで新たな仲裁合意をするのか、それとも契約締結時点の仲裁合意の解釈として、その利害関係人も入っているというかと。

● 新たな仲裁合意ということであれば、更に仲裁人の選任の問題も出てくると思うんですが、選任の問題ではなくて、今までの仲裁手続の合意の枠組みで出てきた仲裁判断に服しますよというような形の参加の形式というのはあり得るのではないかという御指摘かなと承ったんですが。

○ 実務上、たくさん例があるわけじゃないんですが、例としてはおっしゃるような、改めて仲裁人の選任手続をすることなく、既に進行している手続をすべて了解した上で、そこに入り込むという感じです。

● やはり当事者としての手続権として、自分で主張したり、証拠を提出したりということについては、保障されるという前提なんでしょうか。

○ そうなんでしょうね。ただ、これは最終段階でそれも含めて解決するということになって、しかも弁護士会が仲裁合意を最後の段階で取ったものですから。
 途中でもしあれば、おっしゃるとおり何らかの書証の提出ですか、そういうことはやらざるを得ないと思います。

● 裁判所の和解で利害関係に参加するというのは、大体和解条項が見えていて、自分はどういう権利義務になるのかということを見ながら参加するかどうかを最終的に決めるわけです。
 手続上の途中での参加というと、また場面として違ってくるんで、その場合については、手続的な保障を考えないと難しいのではないかなという気がしたんです。仲裁判断がある程度固まって、これでどうだろうかと交渉しているような形の、裁判上の和解での利害関係人のようなイメージなんでしょうか。

○ そういうようなイメージでしょうね。

○ 私どもはどちらかというと、そこまで関わる前の段階で、施工の問題なのか設計の問題なのかはっきりさせる必要があるということで入ってくるという形になります。

□ 何か難しい問題になりますね。かなり技術的な問題ですので、第一読会ではこういう問題もあるということで先に進ませていただきたいと思います。
 次は、レジュメの5ページの「各種の書類等の送付、通知等について」ということで、これはかなり実務上重要な問題だろうと思います。まず最初に事務局の方から御説明をお願いできますでしょうか。

【III その他 〜2 各種の書類等の送付、通知等について〜】

● 資料8の5ページ下段から6ページにかけて記載したとおりですが、結局は当事者自治を尊重し、機動的な対応を可能にすべきであると考えられる一方、手続保障とその証明の仕組みをいかに設けるかということが問題になると思います。
 資料にも記載しましたけれども、仲裁判断書の送達の問題についても、ここで併せて御議論いただきたいと思っております。
 若干補足を申し上げますと、6ページ目のコメントにもありますとおり、現行法上は仲裁判断書を送達すべきものとされておりますが、実際上は仲裁廷自身が行うものも、法文上の送達として扱われております。
 制度設計に当たっては、オンライン仲裁が将来普及することも予想され、このような仲裁を阻害することのないようにといった点も配慮していかなければいけないのではないかと思います。

□ 非常に豊富なコメントが書いてありますが、具体的には6ページの下から3行目のところの3つの点について、主として議論していただければと思います。
 3つと言いますのは、モデル法の3条のような規定によるということでいいのかどうかが1つ。
 2番目が、仲裁判断の送達についても、同様な規定にするということでどうなのか。
 3番目は、当事者の住居所、営業所等が不明である場合について、何か特段の配慮をする必要があるかどうかという、この3点が中心になるかと思いますが、いかがでしょうか。
 まず、モデル法3条のような、送付の規定で手続保障としてよいのかどうかという辺りからいかがでしよう。

○ 実務的にはこの7ページの上で書いていただいております、当事者の住居所、営業所が不明ということで、郵便が帰ってきてしまうときにどうするかということだと思うんですが、モデル法3条はそういう場合をどのように解決しようとしているのか。公示送達をお願いするかどうかという問題もあるんですが、そういうこととの関係はどのように読んだらよろしいのでしょうか。

□ 今の点、モデル法の3条1項の(a)の2行目から、「もしもこれらのいずれもが、妥当な調査をした後にも明らかにならなければ、書面による通知は、それが書留書状、又は配達をこころみたことの記録を残せるほかの方法で、名宛人の最後に知られていた営業所、常居所、又は郵便受取場所に送られたならば、受領されたものとみなす」と。だから、郵便が帰ってきても、これは最後のところに送ればいいんだというのがモデル法の考え方なんです。
 そういうことで、十分なのかということを今、お聞きしたいということです。

○ 実務から申し上げますと、私どもの扱っているのは、相手が外国人、外国法人というのが多いんですが、送達が非常に難しい場合が結構ございます。したがいまして、こういったみなし規定がなければ仲裁手続が進まないということが十分ございますので、座長がおっしゃられましたようなみなし規定、モデル法で書かれているそういったものが必要かなと感じています。
 ただ、手続保障がありますが、それは執行段階で処理すればよろしいのではないかなと思っております。

□ 執行段階というのはどういうことですか。

○ 仲裁判断の執行段階で、呼び出しを受けなかったということで争う。

○ 私もここはモデル法と同じにすればよろしいのではないかなと思います。裁判所の手続の方も、一旦裁判所と関係を持った以上は、住所を届け出て、変わったら自分でちゃんと届け出ないと不利益を受けることがありますよという思想を取り入れた法律になってきております。ただ、裁判所の場合、最初から一度も着かなかった場合はどうしようもないということで公示送達という制度もありますけれども、仲裁合意がある場合には、最初の時点で一旦仲裁を予想するものがあるわけですから、もう分からなくなったときには、最後に分かったところに送りますということでよろしいのではないかと思います。

○ 私も基本的には○○委員がおっしゃった意見に、細かい点を別にすれば賛成です。訴訟の場合と違って、仲裁合意の当事者間ですから、仲裁合意を結んでおいて、どこかに住所や営業所を移す場合には相手に分かるようにしておく義務があるんだろうと思いますので、それでいいんだろうと思います。

□ 6ページ目の、送達についての裁判所への援助の協力の問題についてはどうでしょうか。送付・送達については、裁判所の協力はないという考え方でしょうか。○○委員のお考えはいかかでしょうか。

○ 詰めていったときに、どうしても必要な場面が残るかどうかまで全部検討できているわけではないのですが、基本的には民事訴訟自体が当事者間での送付をきちんとするように変わってきてもおりますし、仲裁手続もできるだけ自己完結でする方向で考えてみて、どうしても必要な規律が残るのかという目で検討を進めていってはどうかなという考えを持っています。

□ 「現代仲裁法の論点」の中に、日本海運集会所の谷本裕範さんが、「仲裁手続における送達」という論文を書いておられるんですが、実務では裁判所への援助を求めている事例があるということを書いておられますが、今でもそうなんでしょうか。

○ 今はほとんどありません。直接、書留郵便又はクーリエで送っているのが実情でございます。

○ 東京などでは配達証明付きの郵便などでやっているわけですけれども、岡山では、どうもそれでは足りないんじゃないかということで、裁判所の援助を求めて、訴訟法上の送達をしているという報告がなされたんです。
 モデル法もリーズナブルだと思うんですけれども、モデル法のこの規定をするということが、裁判所の送達を排除するという意味なのかどうか、そこの問題だと思うんです。いざというときにはそういうものを残しておいて、それもできるような形の方がよろしいんじゃないかという感じがするんです。それを排除するという意味なんですかね。

○ 例えばどういうときに裁判所の送達があった方がいいというのが想定されるかなんです。

○ 仲裁判断書が送達されて、それが取消訴訟の期間とかいろんな形で、裁判手続とも絡んでくる部分があるものですから、やはりどこか残しておくということも意味があるんじゃないかなという気がするんです。

○ 現在はまさにモデル法3条のような規定がないので、住居所、営業所等不明の場合にはどうするかというのはときどき出てきますので、公示送達をお願いしなければいけないんじゃないかというのが出てくるんです。モデル法3条があれば、公示送達というものを考えなくてもいけるんだということであれば問題は解決するのかなと思うんですが、問題はこの3条の解釈としまして、「配達をこころみたことの記録を残せるほかの方法」というのは一体どういうものなのか。仲裁機関、仲裁人が記録を残せばいいのか、第三者に残してもらわないといけないのか、それが実務上問題かなと思います。

□ 何か裁判所の方で送達についての裁判所の援助、今、仲裁判断書の送達をしなくちゃいけないという規定しかないんですね。それについて、実際に送達ができなかった場合に裁判所の援助を求めていいということなんですが、新しい立法をする場合については、裁判所に何かお考えがあれば。

○ 裁判所ということではなくて、私個人の意見で。先ほど○○委員が言われたのと同じになると思いますし、3条の「最後に知られていた営業所」というのが分からなくなるということは通常ないんでしょうから、むしろ公示送達という重たい手続にするよりは、簡易な形で手続が進行する方がいいのではないかと思います。

□ それでは、この点はまだ第二読会でよろしいですか。

● 「妥当な調査をした後にも明らかにならなければ」というのは、公示送達などのときにも、今は書記官権限になっているんですが、各部によってその判断が区々に分かれていたりして、どの程度まで調査をしなければいけないのか。この点が、仮に3条と同じような規定で手続保障としていいとした場合に、仲裁判断取消しの場面で、かなり多くが問題になり得るのかなという感じがしないではないんです。ちょっと不安があるなというのが率直な意見としてあります。

○ むしろ逆ではないかと。モデル法3条と同じ規定ぶりにするかどうかは別として、それに類似の規定にした場合に、いいかげんな調査で配達事務を仲裁廷が行った場合には、後に仲裁判断取消事由に当たって取り消される可能性があるわけですから、むしろ仲裁廷は、仲裁判断の取消しを恐れて慎重に調査をするのが普通だろうと思います。

【III その他 〜3 その他〜】

□ この辺のところはまだ議論もあるかと思いますが、それは第二読会に回させていただきまして、レジュメの7ページ、「3 その他」「その他仲裁手続に関し、論ずべき事項があるか」というのはいかがでしょうか。

○ この中でまだ議論がされていない問題として、仲裁廷による和解のあっせんとか和解の勧試の規定が必要ではないかなと思っております。たしかUNCITRALの調停モデル法の一応のドラフトとしては、当事者の合意の上、和解のあっせんをすることは認められるという規定だったと思いますけれども、国際仲裁においては今までいろいろ議論がございまして、我が国で行われている仲裁人による和解のあっせんというのは、外国では必ずしも受け入れられていないというのが現状でございますので、それを明文の規定で設けておいていただきたいと思います。

□ この点はいかがでしょうか。

○ 今おっしゃったこととオーバーラップする部分がどのくらいあるのかないのか分かりませんが、近年の諸外国の立法では、仲裁と調停の関係についての規定を置く例が増えてきているわけです。我が国では、弁護士会仲裁に典型的に見られるように、調停から仲裁に移行するとか、あるいは数は少ないかもしれませんが、仲裁から調停に飛ぶこともあり得ますし、あるいは両者の手続を柔軟に使い分けながら手続を進めていくこともありますので、調停との関係は、特に我が国の実務や国民性を考えると、重要性は高いのではないかと考えています。

□ 実務では、仲裁中に和解をあっせんするというのはしばしばございますか。あるいは和解をあっせんする際に、両当事者に和解手続に入ってもいいですかという了承を得てからやっているんでしょうか。その辺のところはいかがですか。

○ 私どもの規則の上では、当事者が希望するか否かを問わずできるようになっておりますけれども、先ほど○○委員がおっしゃったように、諸外国で和解のあっせんと仲裁の手続があいまいだといった批判もあるので、原則は両当事者が和解あっせんしてほしいと言ったような場合に、和解のあっせんをするということをしております。

● ○○委員がおっしゃっているのは、主に調停との関係で、同じ人が調停をやったり仲裁をやったりしてはいけないという話が一方にあって、それとの対比で、仲裁廷において同じ仲裁人が和解勧試ができますよという規定を置いた方がいいのではないかという趣旨と理解してよろしいですか。

○ はい。

● その場合に、今、○○委員から御指摘があったように、調停法では両当事者の合意がある場合に限って、仲裁人が調停もできる、調停人が仲裁人になれるという規定ぶりというのを考えられていると思うんですけれども、その場合に要件として、今、○○委員がおっしゃったように、両当事者が合意をしている場合に限って和解の勧試ができるとした方がいいのか、若しくはそういう要件なしに、仲裁人は両当事者にいつでも和解の勧試をすることができると、裁判所と同じような形で。

○ さっき申し上げたと思うんですが、あくまでも全当事者が了解した上、全当事者が要請を受けてそれに同意すると言った場合に、仲裁人が調停人なり和解のあっせん人として行為できるということでなければならないと思います。
 実際の例としては、私どもでは、特に当事者が選んだ仲裁人がアメリカ人、あるいはイギリス人、いわゆる英米法の人の場合には、調停をやるということはまず考えておられないというのが現状です。
 大陸法の国の人、例えばドイツとかの国籍の方が仲裁人になる場合には、比較的、調停をやるのに抵抗を感じておられない。おそらくは裁判所のアナロジーで考えておられると思います。コモン・ローの国の仲裁人というのは、私どもの実務で少ないケースでございますが、調停というものは全く考えておられない。

□ 分かりました。仲裁手続について、その他、第二読会でこの点はということで議論すべき点はございますでしょうか。

○ 先ほどの多数当事者仲裁のところに戻るんですが、私自身、近年諸外国の例でよくある仲裁手続の併合に関する規定は、我が国では必要ないだろうということをほかでも発言しておりまして、それは今でもそう思っておりますが、他方で、先ほど何人かの委員から話が出ました手続への参加の関係ですね。これは既に複数の仲裁手続が独立に並行していて、それを併合させるというのと違いまして、その手続に第三者が参加していく。これは我が国でも事例が少なくないようですので、何らの規定を積極的に設けるということを考える方がよろしいかと思います。
 そのときに、事務局がおっしゃった手続保障の関係ですが、私も今まで深く考えたことはありませんが、この場で思いますのは、それはやはり効果との関係で、両様あり得るんだろうと思います。
 つまり、手続に参加して、仲裁判断の拘束力を受けるという形で参加していく形を認めてもよいと。その場合には手続保障は与えないといけないだろうと思います。
 他方で、訴訟における補助参加人となぞらえるのがいいのかどうか分かりませんけれども−−補助参加人の場合は参加的効力がありますから−−、要するに当事者ではない形で参加をしてくるという実務のニーズはあるようですので、その場合には、手続保障も与えない代わりに、仲裁判断の拘束力も受けないということの形態も認める。両方認めるということでもいいのではないかという気はするんです。

● 両方認めるとした場合に、効果が及ぶ場合の手続保障の参加の形態について規定しておけば、足りると言えば足りるんでしょうね。

○ そうでしょうけれども、丁寧には、両方の参加があり得るということで、それぞれの規定を、もちろん1か条で項を分けるくらいで結構だと思うんですけれども、置くこともあり得るんじゃないかと思うんです。

□ 分かりました。第二読会で更に詰めたいと思います。
 ほかの点、仲裁手続についての点はよろしゅうございますか。
 それでは、ここで10分間休憩ということで、3時40分から始めるということにさせていただきたいと思います。

(休  憩)

【仲裁判断及び仲裁手続の終了についての検討項目案】

□ それでは、仲裁検討会資料9に入りたいと思います。
 「仲裁判断及び仲裁手続の終了についての検討項目案」で、まず、「仲裁判断書の記載事項について」というところから始めたいと思います。どうぞ事務局お願いします。

【I 仲裁判断書について 〜1 仲裁判断書の記載事項について〜】

● 仲裁に当たっては仲裁判断書の作成を要するということになっておりますけれども、これについては格別御議論はないと思います。
 また、資料にも記載しましたとおり、仲裁判断書の意義や機能からしますと、当事者の表示と主文の記載は必須であって、この点についてもおそらく御異論のないところではないと存じます。
 ここで取り上げましたのは、仲裁判断の理由、判断の年月日及び仲裁地であります。仲裁判断の理由については、モデル法も必要としております。日本の裁判の感覚からしますと、判決に詳細な理由が付されているのはむしろ当然と思われますが、世界的に見ると、必ずしもそうではないと言えますので、モデル法のような考えでよいかどうか御確認したいということです。
 なお、ここでは当事者の申立てと言った、判決では通常記載されている事由は独立して取り上げておりませんが、仲裁判断の主文に対応する申立事項の特定は必要であって、理由を記載する以上、その中で当然触れられるべきではないか、また、申立てが特定され、結論に至った大筋が記載されていれば理由として足りるのではないかと理解しております。
 それから、仲裁判断の年月日についてですが、資料9の1ページの下段から次ページにかけて記載しましたように、その記載にどのような機能を持たせるのかといった観点からの検討が必要ではないかと思われます。
 その際のポイントとしましては、判決と異なり口頭弁論終結という基準時を画する概念が必ずしも当てはまらないこと、言渡し制度のないことといった点に留意する必要があるように思います。
 最後に仲裁地ですが、仲裁地は種々の機能を担うものでありますことから、モデル法と同様に、その記載を要するものとすることでよいかについて、これも御確認をさせていただければと思っております。
 なお、この問題については、記載の要否と裏腹の問題として、記載を欠いた場合の仲裁判断の効力はどうなるのかといった点についても検討が必要かと思われます。

□ この関係はモデル法の31条の2項、3項にあるとおりのことなんですが、理由、仲裁判断の年月日、仲裁地というものについて、御意見をいただければと思います。

○ 当事者の表示、主文、理由、年月日、仲裁地、いずれも必要的記載事項とすることでいいと思います。いずれも仲裁判断書には必須の事項だと考えます。

□ 理由の方はどうですか。

○ 理由につきましては、以前に私も少し御紹介しましたが、このコメントに書かれておりますように、近年では、かつて理由を要求しなかった法制の下でも理由を要求する傾向にあると考えておりまして、かつてのような裁判所への上訴というのは認めないのが常識になっていますが、理由の記載は裁判所の上訴のために必要なのではなくて、当事者の納得と仲裁判断の信頼性の担保という点で必要だと考えますので、理由も必要だと思います。

□ その前提として、当事者が理由は要らないと言えば書く必要はないということですね。

○ はい。

○ ○○委員と全く同意見なんですが、和解に基づいて仲裁判断を下す場合には、その旨は明らかにしておく必要はあるんじゃないかと思います。

□ 和解に基づく仲裁判断であるということだけ言えば、理由は要らないわけですね。それはよろしゅうございますね。

○ 和解に基づいてということを書かなければいけないと考えるか、理由を付さなくていいという合意ととらえて、単に主文だけでいいと考えるかは両様あり得ると思います。

□ これは実務はどういうふうにやっていますか。和解に基づく仲裁判断の場合に、和解に基づくということを書いているんですか。それとも、理由は不要だと書いているんでしょうか。

○ 規則上は和解内容を仲裁判断にする場合には理由を省略することができるということになっています。和解契約書を通常は仲裁判断書に添付して付けますので、実務上、和解に基づく仲裁判断というのは明らかに分かります。

□ 分かりました。

○ 実務上は当事者間で理由の記載を放棄するという合意をしてもらって処理しています。

○ 弁護士会も同じです。あとは年月日の点だけですけれども、センターによって、審理終了の年月日を判断書に書くという扱いのところもございまして、東京弁護士会などはそれを入れるようになっておりまして、もともと第二東京弁護士会では入っていない。地方の方はそれぞれ、入れたりするところもありますし、ないところもあるということです。

□ 先ほどの事務局からの御説明の中にもありましたが、年月日を入れるということの意味はどういうことなんですかね。

○ ケースによっては、どこまでの時点のものを材料にしているかというのは、争いになることがあるんだろうと思うんです。

○ 今の点ですが、仲裁判断の年月日については、ドイツ法のように、せいぜい仲裁判断が言い渡された日とみなす、ここまでが限界だろうと思います。コメントのところにありますような基準時の機能を含ましめるというのは、仲裁判断の年月日にそれを含ませるというのは無理だろうと思います。
 むしろ、今、○○委員から御紹介があったように、手続終了の年月日を記載するのであれば、その時点で基準時の意味を持たせるというのは可能ですし、あるいは解釈上基準日の意味が事実上あると思いますけれども、仲裁判断の年月日というのは、言渡し日とみさなれるということだろうと考えます。

○ 実務で、非常に少ないケースですけれども、当事者が仲裁の手続期間を定めている場合に、仲裁判断の日が意味を持ちます。私どもの規則でもそういった規定がございます。
 したがって、仲裁人選定から何か月以内に仲裁判断をしなければならないという規定があるといった場合には、仲裁判断日というのは意味を持ってくると思います。

□ 不服申立期間も関係ありますか。

○ 仲裁判断のですか。

□ 仲裁判断で不服申立てとか、あるいは更正、解釈の申立てとか。

○ これは後から審議される事項だと思いますが、当事者が申し立てる場合、当事者が仲裁判断を受領した日が起算日になると思います。
 それから、仲裁人が職権でする場合には、仲裁判断日というふうになるんだろうと思います。

□ いずれにしても、仲裁判断の年月日というのは書くのが普通なんですけれども、一体それがどういう意味を持つかということは、従来、解釈としても、余りきちんと解釈ができていなかったんじゃないかと思うんです。判決の年月日とちょっと違って、これはもう少し解釈を明らかにするということとして、それから立法では年月日を入れざるを得ないということと、2つの作業が必要になるんじゃないかと思います。

● 先ほど○○委員からの御指摘の、言渡し日時とみなすという機能があり得るんじゃないかということですが、仲裁判断を言い渡さなければいけないということを前提にして、日時については、その日時になされたものとみなされると。そういう構造だと。

○ そういう意味ではありません。言い渡さなくても結構ですが、日時は言渡しの日と同じに扱ってもらえるというだけです。言い渡された場合の言渡し日。

● 言い渡された場合の日時はその日にやったものとみなされると。言い渡さなくてもいいわけですね。

○ 言い渡さなくても、何かで言渡しの日時と連動している場合がどのくらいあるのか知りませんが、仲裁判断それ自体は、適宜の方法で交付すれば足りると考えております。

□ ドイツ法の規定の意味が十分に理解できないんです。ドイツ法の1054条の、仲裁判断が言い渡されたものとみなすとされているという。

○ 私はドイツ法を知りませんので、全く想像ですが、先ほど座長がおっしゃった期間計算とかの関係で意味を持ってくるのかなと思います。

□ 分かりました。仲裁地の方は何か御意見ございますか。仲裁地については書かなくてはいけないと。これは当然ですね。承認執行などの関係もありますから。これはよろしいですね。

● 御議論としては、いずれも必要的記載事項とすべきではないかという御議論があったと承ってよろしいでしょうか。

□ それでよろしいですね。
 それでは、そういうふうにさせていただきまして、次に「仲裁判断書の送達、裁判所への預置等について」ですけれども、これについても事務局から御説明をいただけますか。

【I 仲裁判断書について 〜2 仲裁判断書の送達、裁判所への預置等について〜】

● 送達の問題は先に御議論いただきましたので、ここでは預置制度について議論を集中させていただきたいと思います。
 まず、預置の制度の趣旨としては、資料9の3ページ下段に記載したとおりでして、例えばアドホック仲裁などを想定しますと、預置制度にも合理性が認められるわけですが、仲裁判断の証明といったものを裁判所に預け置くことによって実現しなければならないものかは、再考の余地があるのではと思われます。
 各国の立法例を見ますと、判決の場合と同じように、仲裁判断の登録制を取る国もありますが、純粋に裁判所を仲裁判断書の単なる保管場所とする例は多くないようです。韓国法はこの預置の制度が維持されておりますけれども、日本の仲裁の母国たるドイツ法では、既に預置制度は廃止しております。
 基本的には、仲裁機関、最終的には当事者の責任において、仲裁判断書を保管すべきものとすることも考えられるようですので、そうした場合の利害得失について御教示賜りたいと思います。

□ そういうことでございますが、まず件数をお伺いしましょうか。○○委員から、預置について何か件数があれば。

○ それでは、東京地裁と大阪地裁の実情を確認しておりますので、平成13年で、東京地裁が32件、大阪地裁が6件になります。ちなみに、平成10年から12年も申し上げますと、東京地裁が平成10年が38件、平成11年が46件、平成12年が51件になります。一方、大阪地裁は平成10年が10件、平成11年が9件、平成12年が6件、この程度で推移しております。

□ 分かりました。そういう実情だということなんですが、その預置についてどうするかということでございますが、いかがでしょうか。
 その前提として、預置は裁判所としてはどういうふうに考えているんですか。余分な事務だと考えておられますか。

○ 各国で廃止の例もあるということですし、これが本当に裁判所にあるから役に立ったということがそれほどないのであれば、特別の事情がなければ、廃止の方向で御検討いただいてもいいのではないかと思うんです。

□ これは今までのものは事件として、何か立件するんですか。

○ 全国でどういうふうにやっているのか分かりませんが、私が事実上見てきたところによりますと、表紙を付けまして、いただいた原本と送達関係書類があればそれを付けて、記録庫の中に何冊かありまして、ある程度まとまるとどこか、奥の方へ持っていっているようです。ただ、実際にはどういうふうにやっているのか、詳細までは承知しておりません。

○ その場合に、例えば執行の訴えあるいは取消しの訴えがあったときに、それを取り出して見ることはあるのでしょうか。
 当事者が提出するもので足りるとすれば、この制度はなくてもよいと思っております。

○ 1点だけ、東京地裁の例で結構ですけれども、保管期間は何年ですか。

● 東京地裁の例というよりも、これは最高裁判所規則がありまして、たしか30年じゃなかったかと思うんです(事務局注:事件記録等保存規程別表第一の20の項)。

○ なかなか悩ましいことだと思うんですけれども、東京地裁はたしか21部(執行部)で預かっているんだと思うんです。執行と何らかの関係があるから21部に預けているのかなと私は理解しておったんです。これは廃止してもいいという意見もあるようですけれども、直ちに今やっている制度をやめていいのかなというのが悩ましくて、アドホックの場合に、よく言われているとおり、内容が違うものがあったらどうするとかなくしたらどうするとか。直ちにいいのかどうか、まだ結論は出せない状態です。

□ この3ページのコメントで、預置をしなければ強制執行ができないと書いてあるんですけれども、これは本当にそうなんですかね。

● 現行法上、預置自体が効力規定というふうに規定されているというふうに理解されているんだと思います。
 799条2項で、「仲裁人ノ署名捺印シタル判断ノ正本ハ之ヲ当事者ニ送達シ其原本ハ送達ノ証書ヲ添ヘテ管轄裁判所ニ之ヲ預ケ置ク可シ」と書かれているんですが、これによって始めて効力が生じる、効力規定になっているというふうに通常理解されておりますので、送達が完了した後に預け置く、送達が完了しないと預置ができない。預置がないと、また仲裁判断としての完結ができないというふうに、現行法の解釈ではそう理解されています。

□ 国際商事仲裁協会はそういう理解ですか。

○ 私ども協会の理解としては、必ずしも預け置かないと法的効力が生じないとは考えてはおらなかったんですけれども。

□ 私もむしろそちらの方で、預置が効力発生規定だというのは、どうも国際的に見ると、非常におかしな感じがしますね。

○ ただ、今の少数説などが一人歩きしているのかどうか分かりませんが、私どもで出た仲裁判断で、アメリカの連邦地裁で執行手続を取る際に問題になった判例がございますが、その判決の中で、やはり同じようなことをアメリカの裁判官が述べておられまして、日本では預置がされて始めて法的効力が生じるというふうに判示しておられるんです。このケースでは預け置きができたからよかったんですが、私どもの実務としては、相手方が出てこない場合、先ほどのみなし規定があったと仮にしても、仲裁判断の送達ができない場合というのが全くなくはないと思うんです。相手方がもういないといった場合、名宛人がいないわけで、どういった形を取ったとしても、仲裁判断が戻ってくるということは、全くなくはない。したがって、送達の証書を添えてという形にすると、預置ができないということが起きると思うんです。法的効力の問題と、預置のための送達というものをリンクさせるところは問題かなと思っております。

□ 預け置くことがどれだけのメリットがあるのかどうかということ、それが裁判所にどれだけの負担をさせることになるということを含めて、諸外国で、ドイツなど廃止している国もありますが、そういうことも含めて、今後更に検討するということでよろしゅうございますか。

【I 仲裁判断書について 〜3 仲裁判断の解釈及び変更について〜】
 その次は、「仲裁判断の解釈及び変更について」、一括して御議論いただきたいと思います。裁判所の裁判の場合には、更正決定があり、それから脱漏した場合の追加判決があり、更には変更判決という制度があるんですが、仲裁の場合には、更正とか脱漏した場合の追加というのはあると思いますが、現行法には、仲裁判断を一旦出した後の変更仲裁判断というのはないわけですね。そこで、一体これはどうしたらいいのかというのが問題になると思います。
 事務局の方から御説明いただけますか。

● 仲裁判断についての解釈を示すことにつきましては、その必要性については資料9の4ページ下の方のコメント欄に記載したとおりであります。もっとも、後で補足的な説明をすること自体の当否を論ずる必要性もあるのではないかと思います。また、仲裁判断に不満を持つ当事者が、たびたび解釈を示すように申立てをするといった弊害も考えられると思います。
 これについてモデル法は、両当事者の合意と仲裁廷の承認という2要件をかけてこれを絞っているわけですが、本来は仲裁廷としては、当初の仲裁判断そのもので100%意を尽くすべきが当然とも思われますので、実務上の必要性についての御意見をちょうだいしたいと思います。
 また、仲裁判断の変更については、逆に先に述べたような見地からは変更を認めるべきではないとも考えられますが、現行法上、判決の変更が適法性を担保する見地から認められていることとの関係で、どのように考えるかについても御意見をいただきたいと思います。

□ この関係は、モデル法の33条のような規定でいいのか、直すべきかということも関係すると思いますが、どうぞ御自由に御発言いただければと思います。
 いろいろな問題がありますので、まず、仲裁判断の解釈について、このモデル法33条の1項(b)、当事者の合意があれば、解釈を示すように申し立てることができるという、これを入れるかどうか。判決の場合には、裁判官は弁解せずで解釈などを示すことはあり得ませんけれども、仲裁判断の場合に、こういうことが必要かどうかというあたりからいかがでしょうか。

○ 機関仲裁で経験のあるところであれば、仲裁判断の理由なり、きちんとすることに務めておりますので、解釈ということは問題起きないと思います。かえってそのような余地を残すと、必要ないのにやたらに解釈を求められるということになりはしないかなと思います。
 アドホックの場合はどうかなと思います。

○ 国内の訴訟法の観点から見ると、かなり奇異な感じのする規定ではありますけれども、国際商事仲裁を考えますと、このコメントに書いてあるとおりですけれども、言語の違い等によって解釈が分かれることもありますので、モデル法のように30日程度という、かなり短い期間に限ってのことであれば、モデル法に従う方がいいのかなという気はいたします。

○ 実務上解釈を求められた例というのはほとんどないように思いますけれども、あえてモデル法と違う規定にすることもないだろうなという気もいたしますので、モデル法どおりで。

○ 1点補足しますと、33条1項で、「期間につき別段の合意をしていない限り」ですから、期間に関しては、常設仲裁機関の規則等で短縮等の余地はあるということで、濫用の心配があれば、非常に短い期間に設定することもあり得るかと思います。

● モデル法にあって、国際商事仲裁を考えた場合には当然すべきではないかと、非常によく分かるんですが、逆に言うと、日本の弁護士会の仲裁センターだとか、日本にある仲裁機関でもこういうのを求められたら、国内的、ドメスティックな事件で当事者からこの解釈はどうなんだということを求められた場合には、それもやむなしということでよろしいかどうかについても承っておきたいと思います。

○ これはもちろんほとんど実例もございませんし、考えたことはないんですけれども、ただ、国際的にどうしても必要だということで、では、国内でと言えば、今、○○委員のおっしゃったように、ある程度期間とかで対応できなくはないという感じがします。

○ モデル法からどこまで離れることができるのかによるんですが、モデル法は期間についての同意ができるという規定ぶりですか、この「期間につき」を外せば、事実上、例えば規則で訂正は認めないということはできますので、その辺はちょっと検討の余地があると思います。

□ 今、解釈の問題ですが、次は2つありまして、1つは、誤植等の訂正という問題。これは当事者の申立ても認めますし、モデル法では2項で職権でできるという、いずれも30日なんですが。もう1つは、脱漏した判断を後から追加するという問題がありますが、この訂正の方はいかがでしょうか。誤植、書き損じ、計算の誤り、これについては、これはむしろ裁判から見ると当然だという気もしますので、むしろ30日という期間制限に服する必要があるかどうかという問題にもなるかもしれません。
 そうは言っても、アドホックなどで、いつまでも仲裁人がかかずらうのもいやだということであれば、一定の期間制限というのもあるかもしれませんけれども、その辺のところはいかがでしょうか。

○ 弁護士会では、実際に誤植、訂正の事例はあります。

□ それは期間を何か定めていますか。

○ それは特にありません。

□ これはあり得ることですね。けたを間違えたというのはあり得ることなので、職権上もできないというのもおかしいような感じもしますが。
 期間の方は別にして、追加仲裁判断についてはいかがでしょうか。これは当たり前ですか。モデル法では60日以内と書いてあるんですね。だから、60日を過ぎてしまうと、追加仲裁判断はできないということなんですが、この辺のところはいかがでしょうか。

○ UNCITRALの中には、脱漏については職権による規定がございませんで、訂正についてだけあるということで、ここはほかの例で申し上げますと、イギリスの仲裁法、これは57条に規定がございまして、仲裁判断の誤記・訂正、脱漏の追加的判断ということが両方とも仲裁廷の職権、あるいは当事者の申立てでできるとなっていますので、脱漏に関しても職権でできるという規定に直した方がよろしいかと思います。

□ そうですか。イギリスの場合、60日という期間制限があるんですか。

○ 56日ですか、あるいは当事者が別途合意した期間と。

□ 仲裁判断の変更はどうでしょうかね。変更という意味は、裁判所の変更判決のような意味での変更ですね。

○ これにつきましては、そもそも日本の民事訴訟法にある変更判決の規定自体が極めて異例の規定ですし、これはたしか導入されるときにかなり議論があったと記憶しておりまして、導入後もこれに対する批判の議論もあったと記憶しておりますので、そのことを考えても、このような規定を置くべきではない。

□ ほかに今の点で、よろしいですか。一旦仲裁判断を出して、変更するというのは、実際そういうことがあり得るかどうかですね。もし間違ったら取消しに任せる以外にないということですね、○○委員の考えは。

【II その他】

□ それでは、仲裁判断、あるいは仲裁の終結に関しまして、別に問題点ございますでしょうか。論じておくべき問題があれば御指摘いただきたいと思います。

○ 昔の試案には、仲裁判断の基準という形で、法律に従うという判断の基準の規定がございましたね。今日ちょっといただいた新しい試案は「法」になっているんで、削られたと思うんですけど。私たちはやはり、ある程度裁判よりは、少し軸を現実に合わせて、やや柔軟な解決をすべき要請があるのかなと。もちろん、それは「善と衡平」にまで広げるのは難しいでしょうけれども、モデル法のその部分は議論になっていないものですから、全く議論の余地がないものかどうか、お伺いしたいと思います。

□ これは事務局に伺いたいんですが、どこで扱うべき問題とお考えになっておられますか。

● 一応、次回に議論する「その他」のところで項目としては出そうかと思っているんですが、そこでも余り議論する時間的余裕がなさそうなんで、何かコメント的なものがここでいただければ、「その他」の方からは外すことができればとも思います。

□ 今、○○委員の言われたことに関してでもいいですし、何か御意見ございますでしょうか。

○ これも事務局に伺いたいんですが、余り議論する時間が取れなかった場合、モデル法の規定に従うということでしょうか。

● 基本的にはモデル法の規定に従っていって、そこに対して議論があるところについて議論していただいているという認識でおります。

○ そうすると、モデル法の28条3項には、先ほど○○委員が言及されました善と衡平による解決の可能性に言及されていますが、この点については何か事務局の方でありますでしょうか。

● 善と衡平が、日本法の場合にこういう規定ぶりというものが法制的に規定できるのか、ちょっと日本法の場合に同じような形というのはなかなか難しいのかなと思っています。ただ、枠組みとして、仲裁の枠組みだから、違う枠組みがあっていいんじゃないかということはあり得るのかなという気がしておりますので、その規定ぶりの仕方について検討していかないといけないのかなと思います。

○ 1点、個人的な注文なんですが、日本語にしにくいという問題と同時に、日本語でいい表現であっても、英語にしにくい表現はよくないと思います。仲裁法の場合、国際事件での適用が非常に多いものですから、英語との関係、あるいは英語だけではないかもしれませんが、主要な外国語との関係もお考えいただきたいと思うんです。

● その点はいろいろと○○委員に教えていただきたいと思います。
 先ほどの○○委員の御意見と、モデル法の28条1項のところの規定ぶり、そこについての何かしらの規定ぶりを別に考えた方がいいという御意見なんでしょうか。

○ どうするのかなと。たまたま今日いただいた試案の方では「法」となっていまして、昔の試案では「法律」となっていたんです。「法律」というとちょっと狭いかなと。今、○○委員がおっしゃった翻訳とかの場合、「法律」よりは「法」の方がまだしもいいかなという、全く個人的な印象です。

□ 分かりました。仲裁判断の基準は、多分裁判所が適用されるような法律ではなくて、もうちょっと広い意味でという、ただ、それを法律というか、実態からいうと法であり、あるいは善と衡平、思い切って法制用語として使えれば、それが一番英語に直すのに直しやすいんですが、それがどうなるかというのはこれからの問題だろうと思います。
 この検討会資料9の問題は、よろしゅうございますか。

【仲裁判断に対する不服申立てについての検討項目案】

□ それでは、検討会資料10、これは本日最後のテーマで「仲裁判断に対する不服申立てについての検討項目案」でございます。

□ 最初に「仲裁判断の取消裁判の制度について」てございますが、これにつきまして、まず、この実情を○○委員の方から簡単に御紹介いただけますでしょうか。

○ また件数で御紹介させていただきます。
 東京地裁は平成10年から平成13年まで、合計3件になります。内訳としては、平成10年、11年、13年が各1件、平成12年が0件ということになっております。
 大阪地裁の方は、平成10年から平成13年まで、いずれも0件と聞いております。

□ 分かりました。取消しの訴えというのは余りないということですね。
 それでは、まず、取消原因について議論していただきたいと思います。事務局の方からお願いいたします。

【I 仲裁判断の取消裁判の制度について 〜1 仲裁判断の取消原因について〜】

● 取消原因について確認的にお伺いしたいということなんですが、ニューヨーク条約が締結されておりますので、その5条の拒絶事由と同じように定める。モデル法もそういう形になっておりますので、そういう形にすることはどうかということで、多分、そういう御意見は多いと思うんですが、確認をさせていただきたいということが第1点です。
 コメントの2ページ上の方のところで、執行拒絶事由と判断取消原因とをパラレルに規定するという形で表現させていただきましたけれども、この意味なんですが、仲裁判断の承認執行裁判と、判断取消原因とを同じものということで、リンクさせるということではどうだろうかということです。
 これに対して、オランダ仲裁法では両者をリンクさせていませんで、執行許可については、公序良俗違反の有無のみを審査するものとされています。
 なお、民事裁判の場合の判決の再審事由に当たるもの、例えば証人が虚偽の証言をした場合などについて、別個に考える必要があるかどうか。あるいはモデル法34条に定める事由に含ませて考えることができるかといった点についても、併せて御検討いただければと思います。

□ これは第一読会ですので、個々の事由について、細かく検討するということよりは、全体としてニューヨーク条約やモデル法の考え方がどうかという大きな問題で今日は御議論いただきたいと思います。
 ○○委員、この点はいかがでしょうか。

○ 今日お配りいただきました仲裁法試案の改訂を検討するときにも、共通の理解としては、執行の事由と取消事由というのは全くパラレルに考えるということでした。おそらく異論はなかったと思います。
 この間いただきましたNBLの座談会ではちょっと議論になっていたようですが、338条の8号、これは私どもとしては全然考えていませんで、これでいきますと、どういう事件を念頭に置いたらいいのかということをむしろお教えいただきたいと思います。

□ 判決が基礎としたほかの裁判が取り消されたということが再審事由になるというのが民事訴訟法の338条の8号の規定なんですが、ちょっと細かな問題ですが、これはどうなんでしょうかね。仲裁の場合、こういうことが必要なのかどうか。

● 例えば特許の侵害訴訟の損害賠償請求があって、後に審決取消訴訟の判決で、その特許が無効であったという判断が確定した場合、そうすると、侵害の前提としての特許が無効になってしまうという場合が考えられるのではないかと思います。

□ そういう場合を想定して、取消事由の中にそういうものを含めるかどうかですね。それはほかの例えば、公序などではカバーできないのかどうかですね。

○ 座談会のときには、公序ではカバーできないのではないかという前提でその話題が出たんですが、ここから先は私も経験はないですが、モデル法で言うと34条2項の(a)号の(iii)の「仲裁付託の条項で予見されていないか、その範囲内にない紛争」ということで、今、事務局が挙げられたような例は、解釈で賄える余地があるのではないかと思います。

□ 取消事由は大体モデル法やニューヨーク条約などをずっと並べておいて、今のところだけ、日本の338条8号の再審事由だけを持ってくるというのは、格好としては非常におかしいんですね。

○ それと、日本もニューヨーク条約を批准しておりますので、外国仲裁判断の承認執行の局面では、ニューヨーク条約に従わざるを得ませんので、国内と外国仲裁判断とで、承認執行の事由を違えるのかという話になる。

● 今の議論を整理したいと思うんですが、再審事由のうちの8号以外のものについては、公序に含ましめて解釈できるんではないかという整理があって、他方で、8号については公序の要件でカバーするのはなかなか難しいのではないか。そうすると、他の条項で読めるかということで、今、○○委員からモデル法34条2項の(a)の(iii)のところで読み込むこともできるのではないかという御意見だと思うんです。
 ○○委員からは、ニューヨーク条約、モデル法の条項の中で再審事由の方も解釈できるという形を取らないと、外国仲裁判断の承認執行との関係でも非常に不都合が生じるから、そういう解釈を取ったらどうだろうかという非常に前向きな御提案だと承ったんです。委員の皆さんもそういう形で御理解できるのであれば、再審事由というのはすべてこの中に取り込めて、とけ込んでいると言って構わないかどうかということです。

□ 具体的に34条の2項の(a)(iii)というのはかなり難しいような気もいたします。むしろ思い切って、再審事由というのは裁判所の中の裁判と裁判との関係のことなんで、仲裁と裁判は別の世界だと割り切ってしまうということも1つですね。そういうこともあり得るかということですね。

○ 7号の場合ですけれども、趣旨は公序に入れていくというのはよろしいかと思うんですが、別の考え方としては、証人が虚偽の証言をしたということによって当事者の手続的な防御が十分にできなかったというふうにとらえれば、2号の(a)という考えもあると思います。

○ 関連は薄いんですが、今の特許権の問題であれば、私どもが扱っているケースには、外国特許の侵害だとか、外国特許に基づく損害賠償請求という事案が少なからずございます。したがって、今の8号だと、外国特許が外国の当該官庁の行政処分で権利が失効したという場合には適用されないわけですね。そこがカバーし切れないという問題は残ります。

□ ○○委員のような解釈だったらそれも全部カバーするということですね。

● ○○委員が2項の(a)の(iii)でいいんじゃないかという御指摘をされたんですが、○○委員はどうですか。

○ 私はよくこれを読み込んでいないんで、今はコメントできないんですが、2項(a)の(iii)ですね。もしこのモデル法でいくとすれば、○○委員がおっしゃられた(iii)しかおそらくないんだろうと、私も今の段階では思います。

□ これは細かい問題ですので、第二読会では今のようなことも含めて議論していただきたいと思います。時間の関係もあって申し訳ないんですが、少し先に進ませていただきます。

【I 仲裁判断の取消裁判の制度について 〜2 仲裁判断取消しの裁判の種類等について〜】

□ 次は「仲裁判断取消しの裁判の種類等について」、事務局からまず説明をお願いいたします。

● 資料10の3ページ中段辺りに記載されたとおりでありますが、現行法では仲裁判断取消しの訴えによるとされています。慎重さを期するために、それが妥当ではないかという意見も考えられます。
 他方、仮に仲裁判断の承認執行の裁判を決定手続によるものとした場合に、同じ取消原因が、承認及び執行の裁判では決定によって判断され、仲裁判断取消しの裁判では判決によって判断されることになり、多少制度として落ち着きがよろしくないような感じもいたします。
 実務的な観点も含めて、どういう方向性がいいかということを御議論いただきたいと思います。

□ これは判決か決定手続かという意味での問題ですけれども、これはいかがでしょうか。
 これは比較法的には○○委員の方から御説明いただけますか。

○ 比較法というほどたくさん知りませんが、我が国の母法であるドイツ法は、仲裁判断取消しの裁判を含めてオール決定主義を取ったと理解しておりますので、ドイツにならった我が国でも、決定手続でいいのではないかと思います。
 ただ、ドイツの場合に、決定手続であっても、一定の場合に口頭弁論を開く必要がある場合というのはありますので、それはあり得るかと思いますけれども、裁判形式、あるいは裁判手続形式としては決定手続で問題ないと思います。

□ 仲裁判断の執行をする際の日本法もドイツもかつてそうだったんですが、執行判決という判決手続を取っています。取消しの方は取消しの訴えと、これも判決手続を取っていたということで、どちらも判決手続です。
 これに対して非常に立法上、執行判決の方はもっと簡単に強制執行できるように決定にすべきだということで批判が非常に強かったんです。
 ところが、取消しの方は、一応仲裁判断をした以上、それを取り消すというのに果たして決定手続でいいかのという問題があって、ドイツの方は、今のところにいくまでは、取消しについては判決手続だということでいたわけですが、98年の改正でオール決定主義に転換したという経緯がありますので、ここもどうするかということになると思います。

● 座談会の中でも議論させていただいているんですが、一方で、取消しの事由として仲裁合意がないという形で、そこは取消原因として問題になるんですが、その仲裁合意があるかないかということについて、訴訟手続で確定しなくていいかどうかについては、是非御意見を承りたいと思います。

○ 座談会でも言ったかもしれませんが、仲裁合意の有無というのは、訴訟で言えば、訴訟要件に当たる部分だろうと思います。つまり、本案そのものの判断ではないわけですから。訴訟要件的な判断を判決手続でしなければならないとまでは言えないと考えています。つまり、決定手続でもよろしいと考えます。

□ 要するに、仲裁契約があるかどうかは、裁判を受ける権利の放棄につながるかどうか。だから、決定主義で簡単に審理していいかどうかという問題ですね。

○ どういうアナロジーで考えるのがいいのか難しいんですが、訴訟上の和解が成立したと一応されて、手続が終わる。しかし、一方当事者が和解には瑕疵があったというので、期日指定の申立てをするというケースを考えますと、これは和解の成立が認められると裁判を受ける権利が奪われるという関係に立つんですけれども、そのときに和解の瑕疵の有無、これは詐欺取消しのようなものも含めてかなり実質的な判断をすることがあるんですが、それは期日指定の申立ての手続の中で行われますので、決定手続だろうと思いますので、そのアナロジーが正しいとすれば、現行法の訴訟における立場とも抵触しないと思います。

□ いかがでしょうか。裁判の形式として、最近は民事保全からどんどん決定手続というのが入ってきて、決定手続の中でどうやって当事者の裁判を受ける権利というか、手続保障を尽くすかということで、日本の立法も動いてきていると思います。
 そういう意味から見ても、オール決定主義というのも1つの行き方ではありますけれども、今言ったような問題もあるので、そこに本当に踏み切っていいのかどうかということだろうと思います。

● 仲裁判断が出る前に、仲裁合意がないと思っている当事者が、仲裁合意不存在確認訴訟を裁判所に提示することは妨げられないと思うんです。そうすると、そこで一応裁判上で仲裁合意があるかどうかということについて既判力で確定する道がないわけではない。だから、判断の取消しについては決定手続でもいいんじゃないかというような立論が成り立つのかということについても、御議論いただければと思います。

○ 全然理論的ではなくて、自信がないんですけど、次に出てくる執行許否のところは、実務的には決定手続にした方がいいんじゃないかなという感じがするんです。早期執行ということを考えてですね。
 一方、取消しの方は、片方が決定ならば、決定でなければいけないのかという構造の問題は私もよく分からないんですけれども、唯一の不服申立てという形で取消しがあって、今の判決手続も完全に捨てていいのかというのは、悩ましいというか、慎重に最終的に判断するという余地があるのではないかなという感じがします。

○ 先ほど言いましたように、ドイツは従来取消しの方は判決だったのを決定に改めたのが98年改正です。台湾は、これも比較的近年の立法ですが、すべて非訟事件としていますので、これもオール決定主義です。そういう動向を考えますと、少ない例ですけれども、決定の潮流があるといえるのではないかと思います。

○ ドイツはオール決定主義ということの中身だと思うんですけれども、取消しが申し立てられた場合には口頭弁論が必要になるわけですね。同じように、執行手続の中でも取消原因が主張された場合には、口頭弁論を必ず開かなければいけないと書いてありますので、そうすると、問題提起されましたような裁判を受ける権利というのはクリアーできるんじゃないかと思っています。

○ 私も、口頭弁論の点は、多少考慮する余地があるかと思っています。

● 決定手続を取る1つのメリットとして、公開なのか非公開なのかということも1つのメリットになるのかなと思うんですが、どんな言いがかり的な取消事由であっても、取消事由を主張された場合には公開になる。もしも決定手続とした場合に、それはそれでよろしいんでしょうかね。それについてもまた議論があり得るかなという気がしたんですが。

□ 口頭弁論を開いた場合に、その口頭弁論が非公開というのはあり得るんですか。

○ 非常に難しいと思うんですが−−立法ですから、そういう規定が組めるのかどうか、なお、検討の余地があると思うんですけれども−−、従来の常識で考えると、口頭弁論を開けばその手続は公開というのが普通の発想だと思うんです。したがって、オール決定主義を取って、かつ、○○委員がおっしゃったドイツの例のように、口頭弁論の権利も一方で保障する場合には、仲裁のメリットの1つである公開の点はその限りで破られることになる。しかし、それでも決定手続ですから、上訴その他の点で迅速であることは間違いないですから、決定のもう一つの大きな要素である迅速性の要請はある程度保障されるという関係だろうと思います。

□ ○○委員、もし可能ならば、取消事由が主張されて口頭弁論になるという場合の口頭弁論というのは、普通の意味の公開の口頭弁論なのか、仲裁だから別なのがあるのか、ちょっとお調べいただくと大変ありがたいんですが。

○ 今はこの条文を見る限りは例外的な規定はありませんので、今おっしゃったところかと思いますが、調べてみます。

【I 仲裁判断の取消裁判の制度について 〜3 裁判所の判断の態様について〜】

□ これはよろしいでしょうか。
 それでは、次は取消事由があるとされた場合の裁判、取消しと言いっぱなしでいいのか。それとも何かそれに別の裁判を付加するのか、これも事務局からまず御説明願います。

● 裁判所が仲裁判断に取消原因があると判断して、これを取消しするだけだとしますと、紛争は残ったままになります。そこで立法例によっては、例えばドイツ法のように仲裁廷への差戻しをすることができるとするものもあり、モデル法も、仲裁廷に手続再開の機会を与えるため、手続を停止することができるとしているところです。
 そこで、仲裁判断取消しの裁判において、これらに類する何らかの措置を設けることができるかについて御議論をいただきたいと思います。

□ これはいかがでしょうか。ドイツ法は、取り消して、また仲裁廷でやっていいと。モデル法は、取消しの裁判をしないで、中止しておいて、もう一度仲裁廷に事件を戻すという2つの方法を考えているんですが、そういうことを考える必要があるかどうかというのがここでの問題です。

○ 私は基本的にドイツ法のやり方がいいんじゃないかと考えているんですが、ここでは2つの問題を区別して考えていくべきではないかと思っております。
 つまり、まず手続の停止、ステイを認めるかどうかという問題では、手続をとりあえず止めておくというのが中途半端になりますし、裁判所としても、いつまで止めておいたらいいかよく分からないということもあるでしょうから、できればやめた方がいいんじゃないかと、個人的にはそういうふうに思っております。
 そうすると、停止せずに取消しをしてしまうということになりますと、その後にどうなるのか。つまり、元の仲裁人がもう一度仲裁手続を始めるのか、それとも今度は当事者が裁判所に持っていっていいのかという問題に、次はなってくる。
 そこで、ここはどうも比較法的に見て考え方は分かれるようで、当事者はその場合には裁判所に行っていいんだというように割り切ってしまう構成もあるようですが、仲裁合意をした当事者の意思をできるだけ斟酌するというと、もう一度仲裁契約は復活すると考えた方がいいんじゃないか。
 そう考えるとすると、今度は元の仲裁人にやらせるか、それとも新たに仲裁人を選任させるのかという問題になってくる。この辺は政策的な判断になってくるんだろうと思いますけれども、今のところ思いますのは、基本的には仲裁人の任務としては、一旦仲裁判断に達したことによって、それで既に終わっていると考えれば、当事者としてはもう一度新たに仲裁人を選任し直すのが筋であろうと。ただし、当事者の方が、それではこれまでの審理が無駄になってしまうのでよろしくない、もっと早くやりたいということであれば、合意をして、従前の仲裁人にやらせると、こういうふうに考えてよろしいんじゃないかと思います。(事務局注:第4回仲裁検討会において、同委員から、発言内容の補足・修正がされた。第4回仲裁検討会○○委員提出資料6項参照)

□ 取消原因が何かによって随分違うと思うんです。そもそも仲裁契約が無効だとか、仲裁適格の範囲外のことだったら、取り消してそれでおしまいで、裁判所でやってもらう以外にない。
 しかし、手続が不公正であったとか、当事者の手続保障を十分尽くしていなかったとか、そういう手続上の瑕疵であれば、取り消したという場合に、仲裁手続をもう一度やり直せという可能性と、もう一つは、さっき○○委員が、他の立法例もあるという中で言われたんですが、一度とにかく仲裁契約をやった以上は、その仲裁契約は言わば使い切った、だから、もう当事者としては仲裁契約がなくなった状態なので後は裁判所に行くという考え方と、いろいろな可能性があるんですが、日本法は今までそれについて何の規定もなかったものですから、解釈が、取り消された後どうなるかというのが大議論があったんです。ここを今度は何とか詰めていかないと、また、同じような解釈論が積み重なるだけだと思いますので、方向性としてどうしたらいいかということについてお考えを聞かせていただきたいということです。
 ○○委員、何か。

○ 今、○○委員がおっしゃった御意見に基本的に賛成で、ドイツ法のつくり方を見ますと、当然ですけれども、常に取り消して差し戻す必要があるわけではなくて、適当と認める場合に、しかも、当事者の意思に基づいて取消し・差戻しということもできるんだということですから、差戻しが妥当でないと裁判所が判断する場合には、取り消して、あとは裁判に委ねるという道も選べるでしょうし、また、その方が妥当だというときは差し戻した方が、本来の仲裁合意の趣旨が生かせる事件については望ましいんだろうと思います。
 その後に、当事者の方で、やはりこうなっては仲裁はいやだと両者が思った場合には、当事者は仲裁の終結合意がいつでもできますので、それでよろしいし、一方、当事者がまだ仲裁でやりたいと思っている場合には、もともと仲裁合意が結ばれた事件なわけですから、仲裁の道を開いてやる方がいいんだろうと思います。

□ 何かほかにお考えありますか。

○ 関連性は薄いんですが、今も議論がありましたが、仲裁契約が無効になった場合と、仲裁契約が有効な場合の2つがあるんだろうと思うんです。取消しの原因が仲裁契約が無効だということであれば、当然仲裁契約はないわけですから、したがって、もう仲裁の申立てはあり得ない。残りの、モデル法で言えば34条の2項の(a)の(i)は、仲裁契約の有効性に関わる問題を扱っていますけれども、それ以外の事由は、仲裁契約は有効だけれども、仲裁人の管轄権が欠如しているとか、そういった問題ですね。したがって、それは仲裁契約は残るんだという理解をしております。
 したがって、問題のとらえ方としては、仲裁契約が有効であって、ほかの問題をもって仲裁判断が取り消される場合と前者の場合とは違うんだと思います。また、UNCITRALのモデル法ですと、裁判所が差戻しすることができるということですから、そこでもって判断する裁量を認めているんだと理解しております。

□ ほかに何かありますか。

● 仲裁を差し戻すという判決なり決定なりが、どういう効力を有するか、だれに対して効力を有するかということを教えていただきたいと思います。仲裁廷に対して差し戻し、もう一回審理しなさいと言った場合に、仲裁廷がそれに従わなかった場合に、どういう効果を発生させるのかということですね。
 要するに、仲裁判断そのものが無効だということが確定するというだけであれば、その後当事者はそれを前提にして、裁判に行くのか仲裁を続けるのかということを考えると思うんですけれども、仲裁廷に対する差戻しを認める場合には一定の仲裁廷に対する覊束力というものを何か考えるのでしょうか。また、その場合の効果はどういうふうに考えればよろしいんでしょうか。

○ よく分かりませんけれども、1つは、裁判所のように組織上の上下関係にないですから、覊束力という考えは無理だろうと思います。その場合、何があるかというと、ここから先はこの場での考えですが、取り消したということで、仲裁判断における瑕疵に関する判断については既判力が生じるんだろうと思います。ただ、仲裁廷というのは既判力を受けるのかと言われると、これはよく分からない。普通に考えれば、受けないのかもしれない。つまり、仲裁判断の取消訴訟の当事者ではないという意味では受けないのかもしれない。
 ただ、これは規定の仕組み方によって判決効の拡張の規定を置くことも考えられなくはないし、少なくとも当事者が既判力を受けるとすれば、事実上あとの仲裁手続において、それが事実として働くことにはなろうかと思います。
 さっきの、停止か、取消し・差戻しかという話に関して言いますと、○○委員がおっしゃったように、停止というのは、その間当事者の立場が不安定になるという問題もありますが、それと並んで私が停止より取消しの方がいいと思うもう一つの理由は、停止だと裁判所が仲裁判断のどこに瑕疵があると考えているかということを、当事者なり仲裁廷にどういう形で示すのかということがよく分からないわけです。停止決定という制度を作って、その決定書の理由として示すのか。しかし、それは今の御質問の関係でいくと手続上の決定ですから、効力を生じて何の意味があるのかと。取消しですと、取り消した裁判の判決理由の中で、それが主文と合わさって一定の効力を持つということになるかと思います。

□ これはドイツ法のことですから、これも○○委員に、口頭弁論の場合の非公開かどうかというのと同じように、ドイツ法の差し戻すというのが一体どういう意味なのか、ちょっと第二読会までに宿題として調べていただけますでしょうか。

○ 分かりました。

● 当事者として、取り消された判断でどちらかが勝つという判断を示されているわけです。もう一回同じ仲裁人に判断をしてもらいますといった場合に、負けを言われた当事者としては非常に懸念をするんじゃないかなという気もするんですが、その点について余り問題はないんでしょうか。仲裁判断のために差し戻されて、審理や証拠調べか何かをしなければいけない場合に、一旦あの仲裁人とは何か相性が悪いと思ってしまっているのかなと。裁判所の場合は、地裁に差し戻されても、同じ裁判官が判断するのではなくて、違う裁判官が担当するというように通常なっていますが、今、差戻しの場合には同じ仲裁人がやるという前提での御議論かと思うんですけれども、そこについては全然懸念はないんでしょうか。

○ 差し戻された場合には当事者がもう一度やり直す、これを原則にするべきだとおもいます。おっしゃられたような問題があるので、同じ仲裁人にやらせるというのは、よほどの場合であろうと思います。よほどの場合というのはどういう場合かというと、これまでの手続結果を無駄にしたくない。できるだけ迅速に判断に行き着きたいというのであれば、そういう合意をすることも自由だろうと。そうでない限りは、新たに選び直した方がよろしいのではないか。

● それまでに集められていた判断資料というのは、また初めから集め直すというのが原則になるんですか。そうするんだとすれば、仲裁合意が消尽してしまって、当事者が新たに仲裁合意をしたいんだったら新たに仲裁合意をすればよいということと余り変わらないような感じがするんですが。

○ 私は、そうであれば取消しと実質的に効果が同じだと思うんです。

○ 取消しの理由によりますけれども、例えば公序違反が問題とされると。勝ち負けの判断は変わらないけれども、仲裁判断の内容を変えれば適法になるという場合に、仲裁人を変えて負けた方に仕切り直しを認めるのが妥当なのかということもありますので、常に仲裁人を一から選び直せるという○○委員の御意見にもにわかに賛同し難い。

□ 分かりました。大変難しい問題で、本来、これは第二読会でやるべき問題かもしれませんが。

● レジュメの方には記載されていないんですが、この点について差戻しを規定しておりますドイツ法の1059条第5項。第1回の仲裁検討会でお渡ししました参考資料の5で、第7章の4枚目にありますが、「仲裁判断の取消は、その効果が不明の場合には、訴訟物について仲裁契約を復活させる効果を有する」とありますので、ドイツ法のような仕組みを設ける場合には、仲裁契約の復活という実体的な効果との関連でいろいろ考える必要があるのかなと思います。仲裁契約が復活するということになりますと、当事者間では、当初の仲裁契約の定めに従って、再び仲裁を行うとなって、ただ、それは実体法上の義務かと思われますので、それに仲裁裁判所が拘束されるのかというのはまた別かもしれませんが、ドイツ法のような仕組みの場合には、このような規定の要否等も併せて検討する必要があるのかなと思います。

【I 仲裁判断の取消裁判の制度について 〜4 取消しの裁判の申立期間について〜】

□ 第二読会では、この点も詰めて考えるということにいたしましょう。
 時間が大分押しておりますので、次の問題に入りたいと思います。「取消しの裁判の申立期間について」、これも事務局からまず説明をお願いいたします。

● 事務局の問題意識としては、資料10の5ページの中段以降に記載したとおりでありまして、法律関係の早期安定の見地からは、裁判提起の期間を比較的短期に限定する必要があると思います。
 他方、そのようにした場合、期間経過後に取消事由が発覚した場合に何らかの配慮をする必要がないかについて検討しておく必要があると思われますので、その点について御議論をいただければと存じます。

□ 取消しの訴えになるのか、取消しの申立てになるのか、そういうものに期間制限を付すかどうかという問題ですね。モデル法は、受領してから3か月を経過するときはできないということになっているんですが、こういうことでいいのかどうか。日本の現行法は期間制限は一切ないですね。

● 執行判決が確定した後は制限があります。

□ 執行判決が確定した後はできないということだけですか。

○ 短期間に法律関係を確定してしまうということに十分意味があると思いますので、3か月という期間制限でよろしいんじゃないかと思います。ここはドイツの立法例を見てきたんですけれども、例外的なケースでは3か月を超えた場合に取消しが問題になることがあるかもしれない。しかし、その場合には損害賠償を認めてやればいいんじゃないかということが書いてありまして、そこは随分割り切った判断をしているんだなというふうに、ちょっと読み方が間違っているかもしれませんけれども、読みました。

□ 不変期間ですから、追完の可能性はもちろんあるわけでしょうね。追完の可能性があり、それもできないというようになれば損害賠償と割り切るというのも1つの考え方ですね。

○ 執行宣言の後で取消しの申立てができるかどうかという点も考えておく必要があるのではないかと思います。モデル法だと、それは書いていないわけですから、規定としては入れておくべきではないかなと個人的には思いました。

□ 今のドイツ法の解釈について、取消しを3か月の間に申し立てなかった人間が、相手方から執行の申立てが来た場合に、その拒絶理由として取消事由を主張することも、3か月過ぎてしまうとできなくなるんでしょうか。

○ それはできないという趣旨だと思います。

○ これを期間にすることの必要性を国際仲裁から見ますと、考え方はいろいろありますけれども、仲裁判断が仲裁地国で取り消された場合には、執行地国でニューヨーク条約5条の適用によって、執行されないとするのが大半の解釈だと思うんです。
 したがって、そうなると、結局執行地国の裁判所で仲裁地国の取消手続がいつ終わるのか分からないという状態は外すべきだろうと思います。そういう点からも3か月の早期確定というのは必要だと思います。

● 先ほどの○○委員の御発言は、一応3か月としておいて、不変期間としての追完は認めるという前提なんですか、それも認めないという前提なんでしょうか。

○ 私は認めないという前提です。

● 不変期間としての追完も認めない。3か月限りだと。

○ 事務局の考えておられる追完の事由は、それはどんな事由を想定しておられるんですか。

● その国で戦争が勃発してしまったとかで、どうしても手続を取る余裕がない。大地震があったとか。

○ 要するに、民事訴訟で言われる不変期間の追完事由とイコールと考えておられるんですか。

● そうです。そういう場合もだめですよというのは厳しいかなと。

○ それはしかし、民事訴訟もそうですけれども、基本的には解釈の問題ですから、不変期間の定めと言っても、実際に裁判になれば両様に解釈される余地がある。

● 条文がないとなかなか難しくなる。それを準用するかどうかとか、類推適用するかという議論はあり得るのかもしれません。

○ 民事訴訟法と同じような追完の規定を置くと。

● それもだめだというのは厳しいかなと思ったんですが。

○ これはよく考えていないんですが、仲裁判断の取消しというのは、訴訟で言うとこれは再審に近いわけですね。ですから、再審の場合、期間制限があったら追完はできないですね。できるんですか。解釈はあるんですか。不変期間の追完規定が適用されるんですか。

□ 不変期間であれば追完は当然なんです。

○ 1項は不変期間ですから、1項の方は追完はできる。2項は追完はできない。1項は明示的に不変期間と言っています。
 そうすると、30日の不変期間は追完はできるけれども、2項の5年はどうしようもない。期間が5年と長いですからね。その間に戦争状態などが継続し続けるということはない。

□ ほかに何か。

○ 民事訴訟法に規定があって、仲裁法に規定がないとしますと、むしろこれはことさら外したんだと解釈されるだろうと思いますので、今、事務局のおっしゃったような事例等を考えますと、やはり追完の規定は入れておいて、その中身で判断していく方が妥当な結論が図れるんじゃないかという気がしました。

□ ほかにいかがですか。○○委員の考えは、期間は30日とか、あるいは3か月とか、どの辺ですか。

○ この辺りは実情がよく分かりませんが、3か月でも。

□ それはモデル法ですね。

○ この辺り、取消しまでの緊急性の必要は、こちらサイドからはよく分かりませんので、むしろ妥当な線は、実務で担当しておられる方に教えていただければと思います。

□ 3か月もあれば大丈夫だということでしょうかね。

○ 3か月というのは意外と早いんです。相続の放棄なども、3か月であわてて家裁に延期を求めるとかね。現実問題として、弁護士も依頼を受けてそれから着手するというので、時間がどうしてもかかりますから、例えばこの追完の1週間というのはこれは厳しいと。感覚としてそんな感じがします。国際的にも3か月というのがインターナショナルだとなれば、これは余り勝手なことはできないかもしれませんが。逆に追完の期間とか何らかの別の手当てということになるのかもしれません。

● 1点だけよろしいですか。先ほど○○委員が、承認執行の手続においても、取消事由の申立期間が過ぎている場合には、取消事由の主張ができないとおっしゃったと思うんですけれども、私はこれはできるのが前提なのかというふうに今までは思っていたんですが。一般的には取消しの申立期間を過ぎたら、承認許否の裁判においても、取消事由の主張ができないと解するのが通常なんでしょうか。

○ 一般的な解釈はないと思います。単なる個人的な意見を申し上げただけです(事務局注:第4回仲裁検討会において、同委員から、発言内容の補足・修正がなされた。第4回仲裁検討会○○委員提出資料3項第4段落参照)。

□ 解説書はどのように書いてありますかね。モデル法の解釈で、取消訴訟を3か月以内に起こさなかった。取消しはもうできなくなった。しかし、相手方から強制執行の申立てが来たときに、その中で抗弁として取消事由があるということは言えるのか言えないのかというのが今の問題です。

○ 調べていませんけれども、可能だと私は理解しておりました。取消しの訴えをしない場合がありますから。

□ そうでないと、危ないなと思った方が強制執行をずっと待って、3か月経ってから、やおら強制執行をするとそのまま通ってしまうということになりますね。私も、それはちょっとおかしいかなという気もするんです。

○ 取消しの訴えは、あくまでも積極的に仲裁判断を取り消すという行為で、それをするしないは自由ですね。したがって、あとは執行の段階で防御するというのは当然認められるわけなんで、そこで取消事由を抗弁として出すというのは当然できると私は理解しているんです。

□ 両方の考え方があると思うんで、モデル法の解釈を確かめていただけますか。○○委員が一番詳しいと思いますので。
 あとほかに今日御議論いただくべきところはありますでしょうか。事務局の方は何かありますでしょうか。よろしいですか。

【閉会、次回の予定】

□ それでは、非常に時間を急いで、非常に内容の濃い議論をいただきましたけれども、今日のところはこれで終了させていただきたいと思います。
 なお、事務局の方から連絡事項があります。

● まず、次回は4月22日月曜日、午後1時30分からでございます。資料は1週間前にお手元に届くようにしたいと思います。
 なお、本日も若干遅れておりますが、次回はもうちょっと時間がかかると思いますので、5時半くらいまでは時間を取っておいていただければと思います。よろしくお願いしたいと思います。
 それから、次回に9月以降の日程について調整させていただきたいと存じますので、次回期日には、日程の調整ができますように御準備をいただければと思います。
 それから、席上に司法制度改革推進計画をお配りいたしました。お陰様で推進計画が閣議決定されまして、仲裁法制については、当初予定のとおり15年通常国会を目指して検討するということになっております。皆様御多忙で大変だとは思いますが、このペースを維持させていただきたいと思いますので、ご協力のほどよろしくお願いいたしたいと思います。

□ それでは、本日は時間を超過いたしまして申し訳ございませんでしたけれども、ありがとうございました。また次回よろしくお願いいたします。