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仲裁検討会(第4回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日 時
平成14年4月22日(月)13:30〜17:35

2 場 所

司法制度改革推進本部事務局第2会議室

3 出席者

(委 員)
青山善充(座長)、秋吉仁美、谷口園恵、中野俊一郎、中村達也、本東信、松元俊夫、三木浩一、山本和彦、吉岡桂輔(敬称略)

(事務局)
古口章事務局次長、近藤昌昭参事官、後藤健企画官、内堀宏達参事官補佐

4 議 題
 (1)仲裁の実情紹介
   (a) (社)国際商事仲裁協会
   (b) (社)日本海運集会所
 (2)仲裁判断の承認及び執行についての検討項目案について
 (3)準拠法についての検討項目案について
 (4)その他の事項についての検討項目案について

5 配布資料

検討会資料11:仲裁判断の承認及び執行についての検討項目案
検討会資料12:準拠法についての検討項目案
検討会資料13:その他の事項についての検討項目案
中村委員提出資料:・国際商事仲裁協会の仲裁の実情について
             ・統計資料
             ・商事仲裁規則 (略)
松元委員提出資料:・TOMAC仲裁の現状
             ・2001年新仲裁規則 (略)
             ・JSEパンフレット (略)
吉岡委員提出資料:仲裁合意書 (略)
○○委員提出資料:ドイツ民訴法における仲裁判断取消手続

6 議 事

 (1) 前回の補足

 吉岡委員から弁護士会仲裁センターの仲裁合意書について補足説明がされた。

 (2) 仲裁の実情紹介

 中村委員から(社)国際商事仲裁協会の仲裁について、松元委員から(社)日本海運集会所の仲裁について、それぞれ実情紹介がなされた(中村委員提出資料、松元委員提出資料)
 各紹介の後、下記の質疑応答がされた。(○:委員、△:紹介者)

○ 国際商事仲裁協会の統計p4にある「金額のない請求」は、具体的にはどのような事案か。

△主に確認を求める事案である。

○海事仲裁はロンドンが多いとの発言があったが、具体的な件数が分かれば教えてほしい。また、海外でなされる仲裁に日本企業がからむ事案はどの程度あるか。

△ロンドンの仲裁件数の統計は見たことがないが、100件処理した仲裁人がいる。また、日本企業同士がロンドンで仲裁をするケースがある。ロンドンでは弁護士費用が仲裁費用に含まれ、勝てば弁護士費用も回収できるという思惑も働いたためのようである。

 (3) ドイツにおける仲裁判断取消手続

 ○○委員からドイツ民訴法における仲裁判断取消手続について説明がされた(○○委員提出資料)。なお、同委員から、レジュメ2ページ8行目の「ZPO1041条1項6号」は1998年改正前の条文である旨の補足説明がなされた。また、他の委員から、ドイツ民訴法1063条1項の「口頭弁論なしに言い渡すことができる」の文言が2001年改正で削除されている旨の指摘があり、この点について調査することとされた。

 (4) 仲裁判断の承認及び執行についての検討項目案について

 事務局から、検討会資料10について説明がされ、これについて次のような意見交換がされた。

(仲裁判断の承認及び執行について)

  • 裁判所に執行判決請求がなされた事案は、東京地裁は平成10年が4件、11年が4件、12年が1件、13年が5件であり、大阪地裁は、平成10年から12年まで0件、13年が1件である。
  • 原則的には、承認・執行拒絶事由は取消事由と同一であるべきであり、ニューヨーク条約とモデル法にならうのがよい。
  • モデル法36条1項(a)がニューヨーク条約5条1項(a)から「その当事者に適用される法令」の語句を除いたのは、ニューヨーク条約の表現では当事者の能力に関して属人法主義を採用したように誤解される可能性があるとの理由によるが、モデル法採用国の多くは、該当条文の立法に当たっては、ニューヨーク条約との整合性を重視して元の文言に戻している。
  • 取消事由を執行許可手続で主張できるかについては、モデル法立法時には議論されていなかったようであり、ドイツの議論を考慮する必要があるのではないか。
  • 承認・執行許可の裁判の申立ての際に仲裁合意書の提出を要求する必要はないのではないか。仲裁合意の成立要件としての書面性を緩和する流れに反する。
  • 承認・執行許可の裁判手続は決定手続がよい。抗弁として取消原因が主張された場合は問題となりうるが、相手方の審問請求権を保障すれば、口頭弁論を開く判決手続でなく決定手続でよい。
  • 決定手続で仕組む場合、執行許可決定が出た後の仲裁判断取消し申立ての可否をどうするかを考える必要がある。
  • モデル法上、執行の裁判とは別に承認の裁判が認められているように読める部分があるが、承認の裁判とはどのようなものかがよくわからない。自動承認が原則で、決定手続を採った場合、承認のみを求められたときには確認の決定をするのか。

(外国仲裁判断の承認及び執行について)

  • 内国仲裁判断も外国仲裁判断も、司法裁判所以外が判断をした点では同じだから、一律の規定でよい。
  • 外国仲裁判断には、外国で仲裁判断が取り消された場合の承認・執行等、内国仲裁判断には生じない問題がある。規定として書き分けない場合には、内国仲裁判断については空振りになるという理解でよいか。また、ニューヨーク条約の実質を書いてそれが内国、外国ともに適用されるとすると、ニューヨーク条約の国内履行法ということになるのか。

 (5) 準拠法についての検討項目案について

 事務局から、検討会資料12について説明がされ、これについて次のような意見交換がされた。

(仲裁契約の成否・効力に関する準拠法について)

  • ニューヨーク条約をできるだけ取り込みつつ、ある程度解釈の余地を残すような規定がよい。
  • 契約の準拠法が問題とされる場面は、承認・執行や取消し以外にも様々あり、承認・執行での議論が他の場面でも妥当するかには疑問がある。
  • 比較法的に見て、仲裁契約の準拠法の規定を置く例は少ない。規定が必要かどうかに議論の余地がある。
  • 現在は、当事者の黙示の合意を探求することによって座りのよい解決がされている。当事者の合意を明示の合意のみとする前提のもとに第2順位を仲裁地と規定する明文を置くと、現実に沿わない結論を導きかねない。
  • リングリング・サーカス事件は稀な例であり、実務上問題が生じることはさほどないと思う。

(仲裁契約の方式に関する準拠法について)

  • 契約の方式の準拠法については、法例8条にかかわらず仲裁法の規定によるものとする説(渉外実質法)が簡明でよい。その場合、モデル法1条2項の中に7条2項を書き加える形も考えられる。

(仲裁可能性の準拠法について)

  • 仲裁可能性の準拠法は、個人的には仲裁契約準拠法に基づくのがよいと思うが、明文規定を置くほどの議論の蓄積はないのではないか。
  • モデル法34条は仲裁地法説を採用しており、仲裁地法説がよい。
  • 自説は累積適用説に近いが、立法化することには懐疑的である。議論がまだ熟していない。
  • 実務上は、規定がなくても困ることはないと思う。

(仲裁手続の準拠法について)
  • 仲裁地を当事者の合意で選べるとすれば、仲裁地法説も、準拠法につき当事者の指定を認めるのも、結果としてはほとんど変わらない。当事者自治を認める考えの方がすっきりするとは思うが、適用範囲の明確性等の面は仲裁地法説を支持する論拠になりうる。
  • 抵触法的な意味で手続準拠法を当事者が指定するとの解釈を採らなくても、当事者は他国法を実質法として指定することができるとすればよい。両者の違いは、他国法が指定された場合に、抵触法的な意味で指定した場合は仲裁地法が適用される余地がないが、実質法として指定した場合には仲裁地法の強行規定がかぶってくる点にある。
  • 規定を置くと、無国籍仲裁を認めないことを前提とすることになるのではないか。無国籍仲裁を認めないと立法で宣言することは妥当か。

 (6) その他の事項についての検討項目案について

 事務局から、検討会資料13について説明がされ、これについて次のような意見交換がされた。
(仲裁手続の公開について)
  • 守秘義務の問題と、審問を第三者に公開しないこととは、分けて議論すべきである。
  • デフォルトルールとして非公開性を規定すると、消費者対企業の紛争で、消費者は公開を求め、企業は非公開を求めた場合などに問題が生じるおそれがある。仲裁人の判断に委ねることにすれば足りるのではないか。
  • 規定を置くまでもなく、手続非公開は当然と思っている。
  • 公開を特色とし、予測可能性や審理の透明性を売りにする仲裁機関が出てくることを排斥する必要はない。
  • 公開禁止規定を置くと、仲裁人が関与させてもよいと考えた関係者を関与させることも禁止されるのかを考える必要がある。
  • 当事者の合意の有無を問わずに「相当と認めるときは公開できる」とするのは問題である。
  • 傍聴を認められた者は守秘義務を負うのか、傍聴して得た情報を再伝達してよいのかはどう考えるか。
  • 常設仲裁機関規則で定めれば別だが、法律で当事者に守秘義務を負わせるのは、言論の自由との関係で難しいのではないか。
(仲裁判断の公開について)
  • 手続の公開と判断内容の公開は別であり、判断の公開は広めに考えてよいと思う。仲裁判断の公開は、先例としての価値があり、仲裁に対する一般の理解・信頼にも寄与する。行政ADRは、相当と認めるときは公開することもできると理解していると思われ、公開禁止規定を置くと、規定を置いていない行政ADRに影響が及ぶのではないか。
  • 仲裁判断の内容については、研究目的のための開示は認めている。開示には有益な面もあるので、実務と乖離しないような規定にしてほしい。
(仲裁費用及び仲裁人の報酬について)
  • 近年モデル法を採用した国は、ほぼ例外なくこの点の規定を設けている。ニーズは高いと思われ、規定を設ける必要があると考える。
  • 仲裁費用は当事者間の負担割合の問題、仲裁人の報酬は仲裁人と当事者との間の問題であるが、一緒に規定してよいか。
  • 仲裁人に予納請求権を認め、当事者が連帯債務を負い、当事者が予納しない場合は仲裁人が手続を終了・停止することができることまで規定する必要があると思う。そこまで規定しておけば、仲裁人の報酬も他の費用と変わらない。
  • 外国の当事者から、弁護士費用の請求ができないのかと聞かれることがよくある。額が大きいから、国際仲裁では関心が高い。
  • リーガルフィーが費用に含まれないことも、仲裁が日本から逃げている一つの原因と思う。もっとも、弁護士費用を無制限に負担させるという制度ではないようである。
  • 弁護士費用の問題は、訴訟における敗訴者負担の問題とも絡み、デリケートな面がある。国内仲裁では代理人がつかないケースも多い。
(裁判所の管轄について)
  • 仲裁はもともと当事者間の合意に基づく制度であるから、管轄の面でも、公益に反しない限り合意管轄を認めてよい。
  • 仲裁地を原則とすべきと思うが、仲裁人が決まらないと仲裁地が決まらないことがあるので、仲裁人選定の場面では別個の考慮が必要となる。証拠調べは証人等の所在地も管轄裁判所になると思う。
  • 証拠調べの場面では、簡裁にも管轄を認めた方が便宜なこともあり得なくはない。
  • 外国の仲裁廷から直接日本の裁判所が依頼を受けるのか、民訴条約が適用されて国際司法共助のルートで依頼を受けるのか。
  • 仲裁地が外国にあり、仲裁手続が外国法に基づいて行われている場合に関し、証人尋問だけ日本の裁判所に援助を求められるとすると、それまでに行われた手続を理解するのが大変で、かえって仲裁の円滑な進行に反することになりかねない。このような場合に日本の裁判所が援助する必要性はどの程度あるのか。
(仲裁に関する期間について)
  • 仲裁人選任期間の規定は必要と思うが、紛争がいつ発生するかは分からないから仲裁付託期間の規定は不要である。また、事案によって判断までに時間がかかるものもあるから、仲裁判断までの期間の規定も不要である。
  • 仲裁判断までの期間については、手続進行を待ってほしいと当事者から要望されることもあるので、規定があると不都合が生じる。
(仲裁手続に関する罰則規定について)
  • 国際仲裁の重要性から考えて、贈賄・収賄とも国外犯処罰規定を置くべきである。国際倒産手続については、管財人等の贈収賄につき、最近の立法で国外犯処罰規定を置いた。国外で活動することが予定される点で国際仲裁の仲裁人も同じであろう。
  • 秘密漏示罪は、民訴法の証言拒絶権と表裏の関係に立つのではないか。
  • 秘密漏示への対応については、仲裁の公開とも関連するから、慎重に検討すべきである。
(その他)
  • 仲裁人の免責規定について議論が必要である。
  • 消費者保護との関係も議論が必要である。

7 8月以降の検討スケジュールについて

検討会の日程として
     平成14年10月17日(木)13:30〜
            11月 7日(木)13:30〜
            12月12日(木)13:30〜
     平成15年 2月13日(木)13:30〜(予定)
  が指定された。
   なお、事務局から、状況が整えば8月から9月にかけてパブリックコメントを行うことを考えている旨説明された。

8 次回の予定

   次回から3回にわたり、全般的事項について再度議論することとされた。
   次回は5月27日(月)13:30〜17:00に開催される。

(以上)