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仲裁検討会(第5回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり


1 日時
平成14年5月27日(月) 13:30〜17:20

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委員)
青山善充(座長)、櫻井和人、谷口園恵、中野俊一郎、中村達也、本東信、松元俊夫、三木浩一、山本和彦、吉岡桂輔(敬称略)

(事務局)

古口章事務局次長、近藤昌昭参事官、後藤健企画官、内堀宏達参事官補佐

4 議題等
(1) 総則的事項について
(2) 仲裁合意について
(3) 仲裁廷の構成について
(4) 仲裁廷の審理判断権限について
(5) 仲裁手続の進行について

5 配布資料
検討会資料14:検討事項案その1(第1 総則的事項について)
検討会資料15:検討事項案その2(第2 仲裁合意について)
検討会資料15
(追補):
検討事項案その2(追補)(第2 仲裁合意について)
検討会資料16:検討事項案その3(第3 仲裁廷の構成について)
検討会資料17:検討事項案その4(第4 仲裁廷の審理判断権限について)
検討会資料18:検討事項案その5(第5 仲裁手続の進行について)
委員提出資料1:ドイツ民訴法2001年改正の仲裁法関連部分について
委員提出資料2:UNCITRALにおける審議の状況
委員提出資料3:仲裁廷における暫定的措置に執行力を付与することについての意見

6 議事(○:委員、□:座長、●:事務局)

 (1) ドイツ民訴法2001年改正の仲裁法関連部分について

 ○○委員からドイツ民訴法2001年改正の仲裁法関連部分について説明がされた(委員提出資料1)。

 (2) 総則的事項について

 事務局から、検討会資料14について説明がされ、これについて次のような意見交換がされた。なお、検討事項1から3までについては特段の意見は出されなかった。

(4(1) 書面による通知の方法について)

○所在不明だけでなく、不在不送達や受領拒否の場合にも通知の到達をみなす規定が必要。この場合の規定を置かないのであれば、裁判所に援助を求め得るようにする必要がある。

○コメント2点目につき、モデル法は、海外に所在する当事者についても当然に適用されると考えられる。わが国の仲裁法でも同様になろう。

○モデル法には「妥当な調査をした後にも明らかにならなければ」との留保があるが、枠内の記載にはそのニュアンスが出ていない。

(4(2) 異議権の喪失について)

○弁護士のつかない仲裁の場合に弊害が生じないか。また、「知りながら」と規定すると、知っていたか否かが争われる事態が生じうる。

 (3) 仲裁合意についてに

 事務局から、検討会資料15について説明がされ、○○委員から仲裁合意の書面性につきUNCITRALの検討状況が紹介された(委員提出資料2)。
 検討会資料15について次のような意見交換がされた。なお、1(2)、2(1)、(2)、3、4(2)、(3)及び5については特段の意見は出されなかった。

(1(1) 仲裁合意の対象となる紛争の要件(仲裁適格)について)

○仲裁適格の問題は、国家の政策事項等にも関わる。規定を置くのであればそれらに干渉しないよう、広い立場で規定すべき。

○仲裁適格を積極的に規定するのではなく、他の法律に規定がない限り仲裁可能と、広く認めればよい。

○A案のように「他の法律に照らし仲裁による解決ができないとされていない」と規定すると、結局は解釈問題になると思われる。そうであれば、B案のように、処分可能性なり和解可能性なり、イメージしている解釈基準に近いものを書く方がよい。

○「和解」の語は一義的ではなく、B案のように「和解可能性」と規定するとかえって混乱を招くし、「処分可能性」も概念として不明確である。

○仲裁適格が問題となった事件は、紛争解決を遅らせるために仲裁適格をてこにしてごねるケースが多い。入り口(仲裁適格)で絞ると、不当なごね得を増やすことが増えるのではないかと懸念され、仲裁適格は広く認める方がよい。

(2(3) 一方当事者が仲裁合意の存在を主張し、他方当事者がこれを否認しない場合の取扱いについて)

○イの場合に仲裁合意ありとして扱うことにすると、消費者等の本人訴訟の場合に弊害が生じるのではないか。

○しかし、イの場合に仲裁合意を認めることにしないと、訴訟では仲裁合意ありとして訴えが却下され、仲裁では仲裁合意なしと判断され、紛争解決手段を失う場合が生じうる。

○アは仲裁手続続行中でも効果が発生するが、イは、訴え却下判決がされるまで擬制自白は成立しないから、訴訟途中の段階で原告が争わないことを理由として仲裁合意ありとみなす趣旨であればおかしい。イについて規定を置くのであれば、アとは時点が違うことを明確にする必要がある。

○イは、仲裁合意とみなすかどうかではなく、禁反言の問題ではないか。

(2(4) 仲裁条項を含む文書を引用する場合において)

○現在では、口頭引用のみならず行為による契約の締結その他、書面によらない契約を広く含んで議論されている。国連国際物品売買条約18条(注:売買契約の申込みに応じ、承諾の通知をすることなく物品の発送や代金の支払い等を行う場合)によって日常的に行われている場合も含むので、パブリックコメントの際には、「特定の分野」についてではないことを正確に記載してほしい。

(4(1) 妨訴抗弁の主張時期について)

○A案がよい。B案は、訴訟としてはそれでよいのかも知れないが、仲裁のメリットである迅速性にはそぐわない。一方のごね得によって解決が遅れるのを防ぐため、無制限に訴訟終了まで引っ張れないようにする必要がある。

○請求の趣旨に対する答弁は定型的に行われる場合がよくあるので、A案では厳しい。もっとも、コメントの3点目にあるように、被告の応訴態度や諸事情を考慮して主張の許否を決するとすれば、A案も実際にはB案に近くなるのかも知れない。

○民訴における管轄違いの答弁や仲裁廷に審理権限がない旨の主張の時期とのバランスを考えると、基本的にはA案がよい。

 (4) 仲裁廷の構成について

 事務局から、検討会資料16について説明がされ、次のような意見交換がされた。なお、1、3(1)、4(2)及び6については特段の意見は出されなかった。

(2 仲裁人の資格について)

○A案がよい。仲裁人は自然人に限ると思うが、自然人に限る旨の規定を設けると、団体を仲裁人に指定する合意の扱いが問題となるので、むしろ規定を置かない方がよい。

○パブリックコメントでA案を提示するのなら、法人も仲裁人となりうることを前提としての提示なのか、それとも、仲裁人は自然人に限り、法人を指定したら仲裁合意が無効になりうることを前提としての提示なのかを詰める必要がある。

○仲裁人の忌避、死亡等の規定からすれば、仲裁人は自然人に限るのが当然の前提ではないか。

(3(2) 当事者の合意がない場合の標準的な選任手続について)

○コメントの点につき、実務上は就任の内諾を得てから仲裁人を選定するので、問題にはならないと思われる。

(3(3) 合意された仲裁人選定手続が功を奏しない場合の対応について)

○仲裁人を確保するための「必要な措置」は、モデル法作成過程では、裁判所自ら仲裁人を選定する意味と解釈していたと記憶している。

(4(1) 忌避事由について)

●イの「不偏又は独立」に[ ]のかっこを付したのは、具体的な表現はな検討する趣旨であり、この用語でどうかという趣旨ではない。

(4(3) 忌避手続について)

○コメント2点目につき、忌避申立につき裁判所で判断がなされた場合に、仲裁判断取消手続で再び忌避事由を問題にすることを認めるのはよくない。

□確かに蒸し返しになるが、事務局案は、忌避手続の裁判所への不服申立ては上訴ができないと整理しているので、仲裁判断取消手続を認めないと上訴ができないので、仲裁判断取消手続において再度忌避事由を問題とせざるを得ない。

○忌避事由を仲裁手続中で主張せずに仲裁判断取消の時に初めて主張するのは、信義則に反する。当事者は忌避事由があるときは遅滞なくその旨を相手方に伝達し、それを怠ったときは責問権放棄とするのがよい。

○忌避申立について仲裁廷がした判断に対する不服申立てを所定期間内に「しなければならない」と規定するか、「することができる」と規定するかが問題となる。モデル法は「することができる」と権利の形で規定しており、それでよいと思う。

○「することができる」とすると、忌避申立についての仲裁廷の判断には不服申立てをしないでおいて、終局判断が意に反したら仲裁判断取消手続をおこせばよいということになりかねない。

●コメントの1点目に付き、事務局としては、不服申立を許さない裁判は、仲裁手続の障害となる事項について裁判所が簡易な手続で仲裁手続続行に協力し、仮に仲裁判断が出れば、それ以上協力する意味がないので訴えの利益はなくなり、裁判はしないという形で考えている。

○仲裁判断が出ても当然には申立ての利益は失われず、裁判所が忌避決定をすることは可能と理解するのが一般と思う。仲裁判断後に忌避申立を認める裁判が出た場合の効果は、将来仲裁判断取消請求がされた際に事実上の拘束力が生じるか、損害賠償請求の前提になるのではないか。

(5 仲裁人の退任(任務終了)について)

○(1)のアとイの関係が判然としない。イbの「仲裁人が任務を怠っていること」はアの解任の理由ではないか。

●アは両当事者の合意による場合、イはその他の場合として区分した趣旨である。

(7 仲裁人の責務等について)

○規定は是非置いてほしい。

○「公平に」職務を行うという規定は妥当ではない。一方当事者によって選定される仲裁人は当事者の利益代表的な場合があり、「公平に」と規定すると利益代表を否定する趣旨に読めてしまう。

○忌避事由の不偏独立は当事者選定仲裁人にも第三仲裁人にもかかる。規定を置く必要はないと思うが、「公平」は当事者選定仲裁人、第三仲裁人とも同じ規制であるはず。

 (5) 仲裁廷の審理判断権限について

 事務局から、検討会資料17について説明がされ、○○委員から仲裁廷による暫定的措置についてUNCITRALの検討状況が紹介され(委員提出資料2)、○○委員から意見書が提出された(委員提出資料3)。
 検討会資料17について次のような意見交換がされた。なお、1(1)から(3)については特段の意見は出されなかった。

(1(4) 仲裁廷の判断についての裁判所に対する不服申立てについて)

○B案がよい。A案がモデル法と同様の規律であることは理解しているが、却下の場合にも裁判所に不服申立てできるとしてよいとの説もある。

○B案の場合に、裁判所の判断が、仲裁廷に審理判断権限があることを確認するという既判力のない決定になると思われるが、そのような制度をわざわざ仕組む意味があるかがやや疑問である。

(2 仲裁廷による暫定的措置について)

○仲裁廷の暫定的措置に執行力を認めるか否かを、論点として提示してほしい。UNCITRALで現在議論されているところであり、世界的に一致して取り組んでいる問題である。UNCITRALの条文案をもとに議論するのが難しければ、ドイツ法が1041条で執行力を認めているので、これをたたき台に議論することは可能である。

○現時点では民事執行が可能という意味での執行力に踏み込むには議論が熟していない。裁判所の保全処分を認めて、仲裁廷の措置は、認めるとしても民事調停前の仮の措置のように、執行力のないものとすべきである。

○執行力があれば便利とは思うが、検討が時間的に間に合わないのであれば、今後の議論に委ねて今回の立法では見送ってもよい。

○ドイツの立法を前提にして、まずは国内仲裁について議論するなら時間的に間に合うのではないか。

 (6) 仲裁手続の進行について

 事務局から、検討会資料18について説明がされ、次のような意見交換がされた。なお、2、4及び6については特段の意見は出されなかった。

(1 仲裁手続における当事者の平等及び主張立証の機会の保障について)

□「十分な」機会は、full opotunityの趣旨ではなく、相当な・合理的なという趣旨である。

(3 職権証拠調べについて)

○職権探知主義は、従前は欧米で反対が強かったが、最近の会議では欧米からの出席者にも賛成者が増えている。

(5(1)(3) 仲裁手続の開始時期、時効中断について)

○機関とアドホックを分けて、機関は提出時にするのが実質的に妥当ではないか。モデル法21条のように手続開始時に時効が中断する旨の規定を置き、手続開始時を申立て時にする合意を認めれば、機関仲裁は開始時点を申立て時にする規則をおけば実現できる。当事者の合意としては手続開始時点の合意にすぎず、時効中断時点を左右するための合意ではないから、公序則には抵触しないのではないか。

●時効の中断時点を当事者意思で動かすことができることを規定することになってしまい、時効の本質論との関係で難しいのではないか。

□第7回に再度検討する。

(5(2) 紛争を仲裁に付する申出について)

○オンライン申し出が急速に普及している。「書面」と規定するのであれば仲裁合意の書面性の要件と同様に、Eメール等を書面とみなす規定が必要だが、そもそも書面による旨の規定を置く必要はない。

○そもそも仲裁の申し出にあたるかどうか分からないものをどう扱うかの問題ではないか。時効中断・請求の特定を考えれば、規定を置くことに意味がある。

 (7) その他

○消費者契約の場合の規律について、まとめて検討する機会を設けてほしい。

●第7回に検討する予定である。

7 次回の予定
次回は6月11日(火)13:30〜17:00に開催される。
(以上)