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仲裁検討会(第6回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり


1 日時
平成14年6月11日(火) 13:30〜17:10

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第2会議室

3 出席者
(委員)
青山善充(座長)、秋吉仁美、櫻井和人、谷口園恵、中野俊一郎、中村達也、本東信、松元俊夫、三木浩一、山本和彦、吉岡桂輔(敬称略)

(事務局)

古口章事務局次長、近藤昌昭参事官、後藤健企画官、内堀宏達参事官補佐

4 議題
(1) 仲裁手続について〔その2〕
(2) 判断の作成及び手続の終了について
(3) 仲裁判断に対する不服申立てについて
(4) 仲裁判断の承認及び執行について
(5) 準拠法について
(6) その他について

5 配布資料
検討会資料19:検討事項案その6(第5 仲裁手続について〔その2〕)
検討会資料20:検討事項案その7(第6 判断の作成及び手続の終了について)
検討会資料21:検討事項案その8(第7 仲裁判断に対する不服申立てについて)
検討会資料22:検討事項案その9(第8 仲裁判断の承認及び執行について)
検討会資料23:検討事項案その10(第9 準拠法について)
検討会資料24:検討事項案その11(第10 その他について)
委員提出資料:仲裁法に関する検討項目についての提言(国内消費者保護の観点から)

6 議事(○:委員、□:座長、●:事務局)

 (1) 仲裁手続について〔その2〕

 事務局から、検討会資料19について説明がされ、これについて次のような意見交換がされた。なお、検討事項2(1)については特段の意見は出されなかった。

(1 申立て及び答弁について)

○(1)イは、「認否」、「抗弁」等、かなり訴訟に引きつけた表現をしているが、仲裁は必ずしも証明責任の分配に基づく判断とは限らないので、表現を工夫した方がよい。

(2(2) 期日の通知について)

○実務上、在廷証人をその場で調べる必要性がある場合もある。「当事者に別段の合意がない限り」等の規定がほしい。

(2(3) 当事者が提出した書面等の相手方への送付について)

○当事者の同意を得た上で、各当事者から個別に話を聞いた場合の内容も「陳述」としてすべて相手方に伝えるのは現実的ではない。陳述は含めず、当事者が提出した文書に限るのがよい。

○文書であっても、当事者本人が法律的な整理をしないまま関連事情を書いてくるもののように、話をまとめるためには相手方に送付しない方がよいと思われる文書が出されることもある。運用の余地を残す規定にできないか。

○仲裁手続で提出される資料(文書及び陳述)は、判決と同様の効力を有する判断の基礎となるから、相手に送付すべきである。

○書面の直送(6ページコメント)の適否はケースバイケースなので、当事者の要望によって直送と仲裁廷からの送付とを選べるようにしてほしい。

(3 当事者が申立てや答弁を明らかにしない場合等への対応について)

○(2)は、相手方が認否を明らかにしないことによって申立人の請求を認めたと扱うこともできるとする方がよい。

●(2)は擬制自白を認めないという趣旨であり、訴訟でいう弁論の全趣旨を根拠として申立人の請求が認められると判断できる場合には、そう判断することは妨げられない。

(4 仲裁廷の職権による鑑定について)

○(3)の「申立て又は職権により」は、申立てがあれば必ず鑑定人の出頭を求める趣旨か、それとも仲裁廷の裁量によるのか。

●モデル法の規定は申立てがあれば必ず出頭を求める趣旨と理解している。

(5 証拠調べに関する裁判所の援助について)

○現場としてはなるべく広く援助を認めてほしい。証拠調べの範囲を限定しない考え方がよい。

○民事訴訟法でも、強制力を加えない調査嘱託等を提訴前に認める制度の導入を検討中である。民訴で導入されるなら、仲裁における証拠調べの援助を強制力を伴うものに限るのは、バランスを欠く。

○強制力を働かせるのであれば、申立てが相当かどうか等、裁判所が仲裁廷に介入せざるを得なくなるのではないか。それを考えると強制力のないものは仲裁廷で行う方がよい。

○証拠調べの必要性等につき裁判所が判断しないとすると、資料を入手するために、手近な者を仲裁人に仕立てて仲裁廷から申請するといった濫用的な事態が発生することが懸念される。

○行政ADRや公益法人の仲裁機関ならば第三者に事実上の協力を求めることも可能であろうが、アドホック仲裁の場合にも実効的に証拠収集できるようにすることを考えるのなら、証拠調べ援助の範囲を広く認める方がよい。

 (2) 判断の作成及び手続の終了について

 事務局から、検討会資料20について説明がされ、同資料12ページ(2)の枠内の「仲裁人」を「仲裁廷」に訂正する旨の補足がされた。
 同資料について次のような意見交換がされた。なお、検討事項6(2)については特段の意見は出されなかった。

(1 仲裁判断の基準について)

○「衡平と善」の明示の指定は、機関規則で定めることは可能か。

●可能と思われる。

○当事者が指定した基準に仲裁人が従わなかった場合に、それを理由として仲裁判断を取り消せるかは問題となりうる。ドイツでは、恣意的な法適用でなければ取り消せないという説が多いようだが、異論もある。

(2 複数の仲裁人で構成される仲裁廷の意思決定(評決)の在り方について)

○機関規則で、評決は過半数による旨と、合議体の長が手続を指揮する旨を定めている。

○第三仲裁人が仲裁廷の長になることが多く、手続の指揮の他、書面提出期限延長申請等で急を要するときに単独で決定する。

(3(1) 仲裁手続中に成立した和解の取扱いについて)

○合意内容が公の秩序に反するとまでは言えなくても、仲裁廷として許容しうる枠を超え、仲裁判断書にするのは妥当でない場合が考えられる。モデル法や韓国法のように、仲裁廷に異議がないことを要件とする方がよい。

○その懸念は当事者の合意が真意に基づくかどうかの問題ではないか。当事者が真意に基づいて合意したのなら、和解内容に基づく仲裁判断の作成を仲裁人が拒みうるとする必要はない。

(3(2) 仲裁人による話合いによる解決のあっせんについて)

○当事者の同意がない場合は和解のあっせんはできないとすべきである。規定を置くとすれば、両当事者の同意を要件とするのが望ましい。

○法律で両当事者の同意を要件とした場合に、機関規則で、一方当事者の同意があれば和解を勧めることができると規定できるか。

●機関規則を用いることに双方が同意するのだから、許されるのではないか。

(4(1) 仲裁判断書の記載事項及び仲裁人の署名について)

○仲裁地の記載がない場合は、仲裁機関の主たる事務所所在地を仲裁地とみなす規定がほしい。

(4(2) 仲裁判断書の送付について)

○当事者が仲裁判断書の受領を拒否する場合の扱いを検討する必要がある。

○実務の扱い(当事者に送付する決定書にも仲裁人が署名をし、コピーと表示する等の扱いはしていない)を前提とすれば、法律的にはすべて原本と考えられ、「謄本」を送付するという表現は使いづらいのではないか。

(6(1) 仲裁手続の終結について)

○14ページのコメント2点目につき、相手方が紛争解決について正当な利益を有するかどうかの判断は難しい。相手方の同意だけを要件とするのがよい。

○正当な利益の有無は定型的に判断できると思われ、モデル法の表現でよい。

(7(1) 仲裁判断の訂正(更正)及び解釈(補足説明)について)

○職権での更正には、期間制限は不要ではないか。明らかな誤植等も直せないとすると、執行の際に不都合が生じるおそれがある。

(7(2) 追加の仲裁判断について)

○原案は、職権による追加仲裁判断は規定しない趣旨か。

●その趣旨である。

 (3) 仲裁判断に対する不服申立てについて

 事務局から、検討会資料21について説明がされ、これについて次のような意見交換がされた。

(1 仲裁判断の取消しの裁判について)

○裁判を受ける権利との関係もあり、対審の原則が保障される条項は必要である。他方、公開は、必ずしも必要ではないし、仲裁の本旨に反する。

(2 仲裁判断の取消原因について)

○コメントの3点目につき、UNCITRALでは裁量を前提として議論されている。

●承認・執行にも取消しにも裁量を認めると、取り消されないが執行もできない仲裁判断が出てくるおそれがある。仲裁手続の違法が仲裁判断に影響を及ぼした等の要件をかぶせて取消義務を生じさせる形もありうると思われる。

○モデル法もニューヨーク条約も、なるべく仲裁判断を生かす方向で考えている。仲裁判断を失効させる方向への逸脱はよくないのではないか。

(3 仲裁判断取消しの裁判の申立期間について)

○取消申立期間を長くすることは、取消しの余地を拡大する方向への逸脱であり、望ましくない。

(4 仲裁判断の取消しの裁判の申立てを受けた裁判所のとりうる措置について)

○モデル法に合わせればA案だが、現実に差し戻した裁判例は見たことがない。事実上はC案が採用されていると思う。

○A案でよい。補正できるような瑕疵の場合に、裁判手続を1か月程度中止してその間に補正する機会を与え、補正されればそれを前提に判断するという仕組みは、それほど奇異ではない。

 (4) 仲裁判断の承認及び執行について

 事務局から、検討会資料22について説明がされ、これについて次のような意見交換がされた。なお、検討事項2及び3については特段の意見は出されなかった。

(1 仲裁判断の承認及び執行の要件について)

○当事者の能力(モデル法36条1項(a)(i))の書きぶりは、モデル法制定後に法改正した国も、ニューヨーク条約の書きぶりに合わせる国が多いので、ニューヨーク条約に合わせるのがよい。

(4 外国仲裁判断の承認及び執行について)

○日本は、ニューヨーク条約批准時に1条2項による留保の宣言をしているが、留保宣言との関係はどうなるのか。

□仲裁法でこのように規定すれば、条約の規定にかかわらず、どこの国でされた仲裁判断でも承認・執行することになる。

 (5) 準拠法について

 事務局から、検討会資料23について説明がされ、これについて次のような意見交換がされた。なお、検討事項2及び4については特段の意見は出されず、検討事項3については、仲裁判断の取消、承認・執行の局面につきモデル法及びニューヨーク条約にならった規定を置くことには異論はなく、妨訴抗弁の場面での規律については意見が分かれた。

(1 仲裁契約の準拠法について)

○黙示の意思を含めるとすると、第1基準の黙示の合意に仲裁地法は入らないのか、入るとすると第1基準に入る仲裁地と第2基準に入る仲裁地はどういう関係になるのか等、複雑な問題が出てくる。きれいに解決できないのなら、規定を置かない方がよい。

 (6) その他について

 事務局から、検討会資料24について説明がされ、これについて次のような意見交換がされた。

(1 仲裁費用及び仲裁人の報酬について)

○仲裁機関は仲裁費用及び報酬について独自の規定を置いており、原案のような規定ができても実務に支障は生じない。

○(1)ウにつき、中間判断をはずす必要があるか。実例があるわけではないが、中間判断で決めておいた方がよい場合もあるかも知れない。

○仲裁人の報酬は合理的な額でなければならないという規定は、お手盛り防止の見地から必要である。合理的な額か否かに争いがあったとき司法審査の対象にするかは争いがありうる。

○予納の規定は必要である。予納がなければ手続を停止しうること及び両当事者の連帯債務とする旨の規定を置くべきである。

○仲裁判断書作成後に発生する判断書送付費用を想定して(1)イの「額が定まっていないもの」という規定を置く必要はない。かえって分かりづらくなる。

(2 仲裁の非公開性について)

○仲裁の非公開性を、デフォルトルールとして法律で規定する必要はない。

○公開の概念は一般公開、関係人公開等、多義的であり、規定を置くとかえって混乱を招くおそれがあるし、比較法的にも例がなく、何のための規定かとの疑義を招きかねない。

(3 仲裁手続に関する罰則規定について)

○原案にほぼ賛成である。(1)の国外犯処罰の規定は必要である。

○仲裁人に対する義務・処罰の規定だけでなく、バランス上、責任解除の規定も置くべきである。

7 次回の予定

次回は7月8日(月)13:30〜17:00に開催される。

(以上)