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仲裁検討会(第7回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり


1 日時
平成14年7月8日(月) 13:30〜17:40

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委員)
青山善充(座長)、秋吉仁美、谷口園恵、中野俊一郎、中村達也、本東信、松元俊夫、三木浩一、山本和彦、吉岡桂輔(敬称略)

(事務局)

大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、近藤昌昭参事官、後藤健企画官、内堀宏達参事官補佐

4 議題等
(1) 消費者保護について
(2) 時効中断について
(3) 証拠調べに関する裁判所の援助について
(4) 多数当事者仲裁について
(5) 裁判所の管轄等について

5 配布資料
検討会資料25:検討事項案その12(第11 消費者保護について)
検討会資料26:検討事項案その13(第12 時効中断について)
検討会資料27:検討事項案その14(第13 証拠調べに関する裁判所の援助について)
検討会資料28:検討事項案その15(第14 多数当事者仲裁について)
検討会資料29:検討事項案その16(第15 裁判所の管轄等について)
委員提出資料:建設工事紛争における仲裁合意の実態について

6 議事(○:委員、□:座長、●:事務局)

 (1) 消費者保護について

 事務局から、検討会資料25について説明がされ、○○委員から建設工事紛争における仲裁合意の実態について報告がされ、○○委員から前回提出資料(第6回仲裁検討会 委員提出資料)について説明がされた。
 検討会資料25について次のような意見交換がされた。なお、検討事項5については特段の意見は出されなかった。

(1 消費者と事業者の間の仲裁契約の効力について)

○無効や解除の規定を置くと、仲裁は危険とか、不適切な仲裁が蔓延しているという不審感、警戒感を国として公に認めることになりかねない。そのイメージが定着すると、仲裁全体を萎縮させる効果が生じ、ADRの拡充、活性化にも逆行する。また、仲裁か訴訟かが消費者の意思のみによって左右されるのは事業者の地位を不安定にし、法の下の平等にも反する。

○仲裁契約の効力については、消費者契約における意思表示一般の問題ととらえて消費者契約法等で対処するのが妥当である。消費者保護の問題の論点は(1)消費者が仲裁合意の意味を理解できるか、(2)適切な方式で合意しているか、(3)適切な機関・仲裁人が指定されているかの3点と考えられ、(1)については啓発活動、(2)については約款の指導、(3)については適切な仲裁人の育成等で対処するべきと考える。

○B案には「将来の争いに関するもの」の語がないが、現在の紛争に関する仲裁合意について解除を認める必要はなく、将来紛争に限定すべきであろう。

○契約の効力と方式の制限は、論理的には重畳的に課することもありうるが、諸外国はどちらか一方を課するのが一般であり、方式の制限がよいと思う。また、仲裁契約にのみ無効や解除の規定を置いて不起訴の合意について放置するのは立法的整合性を欠き、一般的消費者保護の立法に委ねるのが規定の整合性を導く。更に、比較法的にも、無効や解除を認める立法はさほどない。

○仲裁が消費者に利益な場合もあるから、一律に無効とするA案は行き過ぎだが、B案は十分検討に値する。消費者が契約時に、将来紛争が生じることまで十分考えている場合は少なく、契約方式の規制のみで対処しきれるかについてはなお慎重な検討が必要であろう。B案のような規定を置いたからといって、国が仲裁を否定的にとらえるとは言えない。

○紛争が起こってみないと十分な判断ができないというのはそのとおりだが、それを前提とするのでは、消費者は契約締結時にきちんと考えなくてよいということになる。司法改革の理念は事前規制社会から事後監視・救済型社会へであるから、およそ契約を締結するときには紛争になった場合のことも頭に置いて契約すべきという前提を採るべきであろう。

○弁護士会の消費者問題対策委員会等はかなり厳しい見方をしており、およそ消費者に仲裁は適用すべきでないの意見もあるし、事前の仲裁合意は無効とすべきとの意見は多い。業者の中にはよろしくない者が出てくるのではないかという懸念が強い。A案かB案かのどちらかがよい。

(2 消費者と事業者の間の仲裁契約の方式について)

○仮に仲裁契約の効力につき何らかの規定を設けるとすれば、方式規制は不要である。効力につき規定を設けない前提のであれば、A案とB案は相互に排斥するものではないので、A案+B案がよい。

○事前合意に限らず、紛争発生後の仲裁合意の場合も、方式の規制は必要である。

○仮に1の内容規制でB案を採ると、解除されうる合意について、仲裁契約締結時に事業者に説明義務を課するまでの必要性はないのではないか。C案の注にあるような、審理に先立っての説明送付は是非とも必要であり、仲裁廷が説明書を送って、消費者に解除権を行使するかどうか判断する機会を与えることは重要である。仲裁廷から呼出しがあるのがクーリングオフの起点で、そこで解除権行使を考えるイメージなので、最初の段階で業者に更に手厚く説明させる必要はないと思われる。

(3 書面による通知の方法について)

○内容規制、方式規制との関係はどうなるのか。もし内容規制を置くのであれば、欠席の場合の解除権行使の可否に関係するが、欠席の場合でも解除できるとすれば、この規定は不要である。もし方式規制を置くとすれば、その思想の根本は、消費者といえども、約款の一条項としてではなく、仲裁合意だけ取り出して理解させれば理解できるというのが前提だから、3の規定は不要となるのが論理的帰結であろう。

○相手方住所不明のときの公示送達は、実際は書類を裁判所の掲示板に貼るだけであり、その手続を採ることにどれだけの意味があるかが疑問である。裁判所が公示送達の判断をする場合と同様の要件の審査を仲裁廷に義務づけ、それを調査しても所在不明の場合は送達があったとみなしてよいと思う。

○消費者保護としては、仲裁契約の方式でカバーすれば十分である。通知について消費者と事業者を別に扱う根拠が不明であるし、諸外国の例もない。

○不服申立期間の追完を認める途をどこまで与えるかによるだろう。オンライン仲裁の場合には通知方法の簡易化を認めないと不都合なので(16ページコメント2)、その点は検討されたい。

(4 国際的な要素を含む消費者仲裁について)

○国際民訴の平面で消費者保護をどう図るかは新しい問題で、定説はない。A案は密接関連性の要件に含みがあるが、日本にいる消費者には日本法の保護を及ぼすものと思われる。通常の債権契約については、準拠法にかかわらず消費者の常居所地の法律の保護を奪えないという考えが国際的にも強くなっている。国際裁判管轄にも似たような傾向があり、常居所地に管轄を認め、管轄合意も制限する考えが強い。効力面の話とリンクするが、1でA案又はB案を採るのであれば、4のA案が有力な選択肢となる。ただし、契約準拠法が外国法でその方が消費者に有利な場合にどうするかという問題がある。B案は、公序によって不当な結果を排斥するという、従前のオーソドックスな考え方である。議論が成熟していないので、現在の日本の国際私法のシステムとの調和を考えてB案とするのも穏当であるが、公序の判断はケースバイケースなので、明確かつ安定した消費者保護を図れるかにやや疑問がある。

○消費者保護が立法趣旨なら、密接関連云々の規定は置かずに、日本の仲裁法で仲裁契約の方式について規制を置き、日本法が準拠法に指定されるのであればこのような方式しか受け付けないという態度を出せば十分と考える。外国法が準拠法に指定され、日本の裁判所で妨訴抗弁が問題になった場合は、日本法の立法趣旨に鑑みて法例33条の公序規定で外国規定を排除することが可能であろう。あるいは、ドイツにならい、方式についても仲裁地法を基準とすることも考えられる。

○ドイツ、イギリスのように約款規制の一般法で規制するのが一般的である。仲裁法で仲裁契約だけ規制すると、実体契約と仲裁契約で適用法が分離することにもなりかねない。

 (2) 時効中断について

 事務局から、検討会資料26について説明がされ、これについて次のような意見交換がされた。

○A案のただし書より、B案の「別段の合意」で対処する方がわかりやすい。

○利用者にわかりやすいのがよい。ほとんどが機関仲裁であり、申立書を仲裁機関に提出すれば裁判と同じように時効が中断するというのが利用者にとってわかりやすいと思う。

○仲裁機関に提出した時に時効中断効を認めるのがよい。仲裁は訴権が剥奪されるから、訴訟と同じ保護が必要である。

○「裁判上の請求とみなす」と言わなくても、時効中断と言えば足りるのではないか。調停等の他のADRとの平仄もある。

○民法153条の催告との関係で、催告の効力を活かすとすれば「裁判上の請求とみなす」の規定があった方がよいのではないか。

○書面に限るかどうか(2ページコメント)については、なるべく限らない方向がよい。オンライン仲裁も出てくるし、訴え提起ですら書面によらなくてもよい方策がいろいろ検討されていると聞いている。これから立法するのに書面に限定するのは妥当でない。

 (3) 証拠調べに関する裁判所の援助について

 事務局から、検討会資料27について説明がされ、これについて次のような意見交換がされた。

(1 援助の請求権者について)

○モデル法と同様に、許可を得た当事者にも申立権を認めるべきである。例えば一方当事者が日本人、他方当事者がアメリカ人、仲裁人がフランス人、仲裁地が日本、手続法日本法の国際仲裁を考えると、日本の裁判所に共助を求める手続をフランス人の仲裁人にさせるのは負担が大きい。当事者が勝手に申し立てるのでは手続が混乱するが、仲裁廷が許可するのなら仲裁廷自身が申し立てるのと同じだから、日本法を熟知している当事者が申し立てる道は残す必要がある。

●当事者申立てだと、必ずしも仲裁廷が証拠調べの必要性を吟味せずに、当事者が言うから許可する場合が増えないかが懸念される。なるべくそういう余地を狭めて、裁判所は証拠調べの必要性の判断はせずに適法要件の審査に純化した方が、システムとしてはうまく動くと思われるが、どうか。

○仲裁廷にとって、裁判所に援助を求めるなどやりたくないのが普通で、軽々に許可を与えることはないと思う。

○モデル法と異なる規律をする合理的な理由はないのではないか。

(2 対象となる証拠調べの範囲について)

○諸外国は証拠調べの範囲を限定していない。制限的立法を置くことによってわが国の仲裁法のイメージを損なうおそれもあり、慎重に検討すべきである。

○A案では証拠調べをし得ない場合が生じ、真実発見能力が欠けてしまい、確定判決と同一の効力を有する紛争解決手段として不都合である。B案は仲裁廷がなし得るか否かで区分しており、理論的には成立しうるとは思う。C案では仲裁廷でも裁判所でも証拠調べをなし得る場面が出てくるが、C案を採ったとしても、調査嘱託・送付嘱託・鑑定は公法上の義務を課する以上仲裁廷にはできないと考えるので、実質的にはB案とC案はそれほど違わないと考える。

○援助を行うための要件(後記3)は、裁判所は実質に踏み込んでの必要性判断はできないだろうから、どうしてもA案又はB案的な判断しかできないと思われる。とすれば、証拠調べの範囲で必要性を絞る必要がある。B案か、あるいはB案では不明確であればA案も考え得る。

○仲裁廷にとっては、裁判所に援助を求めるのは自らの存在意義を損なうことであり、インセンティブはわかないはずである。そういう現実において、あえて日本だけが諸外国と異なる規定を置くのは、望ましいとは思えない。

(3 裁判所が援助を行うための要件について)

○B案の濫用的申立ての審査は、解釈で論じる余地はあるが、わざわざ規定を置くのは疑問である。諸外国の立法例もないと思われる。

○他の制度では、裁判所が関与するのは、強制力を伴う措置や、人権に関わる場面である。強制力の可否や人権侵害のおそれなどを後見的に判断する趣旨であれば理解できるが、そうでないのであれば、何故仲裁に関与するかが疑問である。

○実務上は、裁判所に依頼すると時間がかかるので、当事者が望まない。

(4 裁判所の決定に対する不服申立てについて)

○仲裁廷等が必要不可欠な証拠と考えたのに却下されることも想定され、即時抗告程度の再度の審査は意味があるのではないか。

○裁判所の高度の裁量に属すると思うので、不服申立制度は不要である。

(5 援助に係る証拠調べの在り方について)

○援助の申立ては仲裁廷が行うから発問権者は仲裁廷とも考えられるが、発問権を有するのは当事者か仲裁人か。

●仲裁廷の証拠調べに代わる尋問なので、仲裁手続の当事者が発問権を有することを考えている。

(6 仲裁廷が行う証拠調べへの援助について)

○需要があるなら必要かもしれないが、理論的には、仲裁廷の面前での証拠調べには裁判所は責任を負えない立場にある。仲裁廷で侮辱的な質問がされる場合等も想定されうるが、その場合に過料の制裁をもって出頭を命じてよいかは疑問である。また、出頭義務と証言義務は連続しており、仲裁廷が証言拒絶権を認めるのであれば、出頭を強制する意味がない。慎重に考えるべきである。

○現実に利用されることは少ないと思うが、実務からすると、裁判所で証拠調べというのは考えにくい。利用するとすれば、強制力を得て仲裁廷で証拠調べをするケースであろう。

○仲裁廷への出頭を命じる規定は英米法系の国では置かれており、特に問題も生じていない。大陸法系の国では規定を置く例は少ないが、規定がないからといって仲裁廷への出頭を命じることができないとは思われない。ドイツなどに例がないか調べたらどうか。

○英米法系が仲裁廷への出頭を認めるのは、法制全体の問題とも絡むのではないか。英米法系では法廷侮辱罪が広く認められているが、仲裁廷が極めて不適切な尋問等をした場合に、裁判所が仲裁廷にcontemptをかけることがありうるとも考えられ、その点も含めて調べてほしい。

(7 援助に係る証拠調べの費用について)

○仮に当事者に援助申立権を認めた場合は、当事者が申し立てた場合は当事者が納付義務者になるのか。

●そう考えている。

○このような規定を置く必要はあるのか。

●枠内の記載通りの規律とするのであれば、現行の法令のままで対処可能である。これと異なる規律とするのであれば、規定を置く必要がある。

(8 援助に係る証拠調べの結果の取扱いについて)

○証拠調べの結果は裁判所が嘱託者に返すのではないか。当事者が介在しないと返っていかないのか。

●裁判所から嘱託者に返す仕組みも考えられ、韓国法はそのような扱いにしているが、事務局案はそのような仕組みを採っていない。

 (4) 多数当事者仲裁について

 事務局から、検討会資料28について説明がされ、これについて次のような意見交換がされた。なお、検討事項3については特段の意見は出されなかった。

(1 多数当事者仲裁が認められるための要件について)

○(2)は、「参加」というが、その者に仲裁判断の効力を及ぼすと思われ、参加する者との間に仲裁合意が必要ではないか。とすれば、参加人でなく当事者そのもので、(3)の追加的併合と位置づけるべきではないか。参加の概念をたてる合理性がないように思われる。

●(3)は既に2つの事件が進んでいて仲裁廷も2つある場合、(2)は仲裁は1つだけ進んでいる場合を典型例として想定した。(2)における参加の実質は御指摘のとおりであり、「当事者として参加」と表現するかどうかは検討したい。

○当事者の合意と仲裁廷の了解が要件なら、法で規定しなくても併合できる。オランダのように当事者の合意がなくても一定の要件があれば併合を認めると仕組むのでなければ規定を置く意味はない。

○確かに運用でも併合できると思うが、基本パターンがあれば運用しやすいので、事務局案のような規定を置く意味がないとはいえない。

(2 多数当事者仲裁における仲裁廷の構成について)

○1につき規定を置く必要がないと考えるので、ここも規定不要と考える。

(5) 裁判所の管轄等について

 事務局から、検討会資料29について説明がされ、これについて次のような意見交換がされた。

(1 事物管轄について)

○裁判所がどのような事務を行うかが決まってから、地裁がよいか簡裁がよいかを考えるべきである。高裁に管轄権を認める必要はないであろう。

(2 土地管轄等について)

○証拠調べの援助については、仲裁地が日本で仲裁人がイギリス人の場合と、仲裁地がロンドンで仲裁人日本人の場合を考えると、外国の仲裁廷であろうが日本の仲裁廷であろうが、区別する理由はない。ドイツ法のように、仲裁地の如何を問わず証拠方法所在地の裁判所に直接求めるのが、迅速でよい。

○仲裁地が外国で証人が日本にいる場合、仲裁地のある外国の裁判所が日本にいる証人の尋問の援助申立てを受け付けないと、仲裁廷が証拠調べをなしえない場合が生じる。穴が開かないような法制が必要であろう。

●土地管轄は任意管轄としてよいのではないかと考えるが、どうか。(特段の意見は出されなかった)

7 次回の予定等

 (1) パブリックコメントについて

 事務局から、今回までの検討の結果を基に、座長と相談のうえ、事務局で中間とりまとめ案を作成し、各委員に諮ったうえ、8月上旬から9月中旬にかけて、パブリックコメントを募集する予定である旨の説明がされた。

 (2) 次回開催日の変更について

 次回開催日は、予定していた10月17日(木)から、10月22日(火)13:30〜17:00に変更された。
 (3) 次回以降の予定について
 次回からは、パブリックコメントの結果を基にして、更に検討を深める予定である。

(以上)