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法曹養成検討会(第10回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日時
平成14年7月19日(金)14:00~16:20

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)
田中成明座長、井上正仁、今田幸子、加藤新太郎、川野辺充子、川端和治、ダニエル・フット、永井和之、牧野和夫、諸石光熙(敬称略)
(説明者)
板東久美子・文部科学省高等教育局高等教育企画課長
福﨑弘・日本技術者教育認定機構事務局長
(事務局)
山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、片岡弘参事官

4 議題
(1) 新司法試験の在り方について(意見の整理)
(2) 法科大学院の第三者評価の実施方法等について

5 配布資料
資料1  法曹養成検討会(第9回)議事概要
資料2  新司法試験の在り方について(意見の整理)(再修文案)
資料3  アメリカ法曹協会(ABA)のロースクール認定の概要
資料4  法科大学院への法曹・法務省の関与(イメージ)

6 説明資料(文部科学省)
  • 大学の質の保証のための新たなシステム
  • 大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について(中央教育審議会答申案)

7 議事
(□:座長、○:委員、■:事務局、●:文部科学省、▲:日本技術者教育認定機構)

□ 所定の時間になりましたので、第10回の「法曹養成検討会」を開会させていただきたいと思います。
 初めに、事務局から本日の配布資料の確認をお願いします。

■ それでは、本日の配布資料の確認をお願いします。
 配布資料は、資料1から4でございます。
 資料1は「法曹養成検討会(第9回)議事概要」でございます。
 資料2は「新司法試験の在り方について(意見の整理)(再修文案)」でございます。
 資料3は「アメリカ法曹協会(ABA)のロースクール認定の概要」であります。
 資料4は「法科大学院への法曹・法務省の関与(イメージ)」という資料でございます。これは現在の与党等における検討の際に使用された資料であります。与党等における検討状況につきましては、本日の検討会の最後の方に御報告させていただきたいと思っております。
 そのほか、本日は文部科学省から御説明いただく際の資料、そして顧問会議で取りまとめられました顧問会議アピール関係の資料もお配りしておりますので、適宜御参照いただければと思います。

□ それでは、本日は検討に先立ちまして、今月5日に開催されました、第5回司法制度改革推進本部顧問会議で取りまとめられました顧問アピールにつきまして、事務局に説明をお願いしたいと思います。

■ それでは、顧問会議アピールについて御説明させていただきたいと存じます。
 7月5日に開催されました顧問会議におきまして、お手元にありますように、「国民一人ひとりが輝く透明で開かれた社会を目指して」と題するアピールが取りまとめられ、司法制度改革推進本部長であります小泉内閣総理大臣に提出されました。
 このアピールは、司法制度改革推進本部令第1条第2項に基づき、顧問会議が司法制度改革推進本部長に意見を述べたものであり、同時に国民に向けたアピールとしての意味も持つものと位置付けられております。
 アピールの内容は、司法制度改革審議会意見の趣旨に従いまして、「21世紀の日本を支える司法の姿」として、「国民にとって身近でわかりやすい司法」「国民にとって頼もしく、公正で力強い司法」「国民にとって利用しやすく、速い手法」の3つの柱を掲げた上で、推進すべき具体的な改革の内容を示したものとなっております。特に、「2年以内に判決がなされるように、制度的基盤の整備や人的基盤の拡充を十分に行う」との目標を掲げた点が注目されております。
 このアピールを受けまして、小泉内閣総理大臣は、「全国どのまちに住む人にも法律サービスを活用できる社会を実現すること」「裁判の結果が必ず2年以内に出るようにすること」などを具体的な目標として改革を進める必要があるとされ、改革に向けた強い決意を述べておられます。本検討会におかれましては、この顧問会議アピール及び総理大臣の発言の趣旨も十分に踏まえていただきまして、今後の検討を進めていただければ幸いに存じます。
 なお、お手元に「司法制度改革」というパンフレットを置かせていただいております。これは司法制度改革の内容につきまして、幅広く国民の皆様に理解を深めていただくために用意させていただいたものでございます。御参照いただくと同時に、是非これを活用したいというお申し出があれば、事務局まで御連絡いただければ幸いに存じます。

(1) 新司法試験の在り方について(意見の整理)

□ どうもありがとうございました。それでは、本日の検討に入りたいと思います。
 本日の最初のテーマは、新しい司法試験の在り方についてであります。前回の検討会では意見の整理の修文案について検討していただきました。本日は、前回の議論を踏まえた修文案をつくりまして、それを資料2として配布しておりますので、事務局にその説明をお願いしたいと思います。

■ 資料2を御覧いただきたいと思います。「新司法試験の在り方について(意見の整理)(再修文案)」というものでございまして、前回の修文案に対する御意見を踏まえまして、更に修文した案であります。修文箇所については下線を引いてございます。
 まず、資料2の2ページの「(注)」の3つ点があるうちの3つ目のところに線を引いてございますが、この部分に括弧書きがあったのを括弧を外したものでございまして、もともとの括弧を外した方がいいという御意見を踏まえまして、括弧なしの文にしたものでございます。
 もう1か所、3ページの「5 新司法試験の実施時期」の「(注)」のところでございます。これは、この文章の末尾の「更に関係機関の協力を得て一層の早期化に努める」という文を組み込んだ関係から、全体を修文したものでございます。読み上げますと、「短答式試験と論文式試験を毎年5月ころに実施し、合格発表の時期は、毎年8月末ないし9月初めころを目指すこととし、更に関係機関の協力を得て一層の早期化に努める。」
 前回の御意見、御議論を踏まえまして、このような修文案を出させていただいたものでございます。本日の修文箇所は以上でございます。

□ どうもありがとうございました。
 ただいま事務局の説明にありましたように、前回の議論を踏まえて修文したものですが、これにつきまして御意見がございましたら御発言願いたいと思います。
 なければ、きょうはたくさん議事がございますので、現時点における意見の整理としては、この資料のとおりということにしたいと思います。

(2) 法科大学院の第三者評価の実施方法等について

□ それでは、引き続きまして、法科大学院の第三者評価の実施方法等についての検討に入りたいと思います。法科大学院の第三者評価につきましては、前回の検討会におきまして、この第三者評価自体が適正かつ実効的に行われることが必要不可欠であるという議論があったわけですけれども、そういった意見を踏まえまして、本日は法科大学院の第三者評価の実施方法等につきまして、各方面から御意見を伺って検討を行いたいと思います。
 議事の進行といたしましては、初めに文部科学省から大学全体の第三者評価制度に関する検討状況について説明をいただいた後で、アメリカのABAによるロースクールの認定、それから日本技術者教育認定機構(JABEE)による技術者教育プログラムの認定について説明をいただき、その後、意見交換を行いたいと思います。
 それでは、文部科学省の方から説明をお願いできますでしょうか。

a) 文部科学省からの説明

● お手元に説明資料といたしまして、「大学の質の保証のための新たなシステム」という資料と、「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について」という、今、答申案として議論させていただいておりますものをお配りさせていただいております。主としまして、この2つの資料でお話しさせていただきたいと思います。
 この検討会でも過去に検討の経緯などにつきましてお話しさせていただいたところでございますけれども、4月に中間報告を公表させていただきまして、それについていただきました意見を基に、今、審議会の方で詰めた議論をさせていただいているというところでございます。
 今までもお話し申し上げましたように、大学の設置認可は全体として、より弾力化し、認可の対象についても限定していこうということでございますし、審査の基準につきましても、大学設置基準という法令で規定してあるもの以外に、設置審議会の審査内規といった、審議会として決めているものなどがいろいろあったわけでございますけれども、それらの内容を改めて吟味し、告示以上に整理するということで検討させていただこうという方向でございます。これが設置認可の関係でございます。
 それと併せまして、今度は事後的なチェックシステムあるいは第三者評価のシステムという、大学の設置以後における質の保証のシステムを充実していこうということでございますけれども、その点につきまして、この答申案の本文を御覧いただきたいと思います。
 基本的な考え方については、4ページから記述がございます。4ページの1の(1)で、下線を引いておりますのは、中間報告以後に追加を検討しているものということでございますけれども、追加をしている部分にございますように、各国とも今、大学改革ということで、大学評価をいろいろな形で導入・強化していくという大きな動きがあり、ここに書かれている国以外にも、韓国とかオーストラリアなどを始めといたしまして、大学評価のシステムの整理ということがこの十数年図られてきております。そのような流れも踏まえまして、第三者評価制度の整備を図っていこうということでございます。
 12ページ目から第三者評価制度の大きな枠組みについて書かせていただいているわけでございますけれども、これは、国の認証を受けた認証評価機関が定める評価基準に基づいて評価をする、そういった評価を定期的にすべての大学が受けるというシステムを導入しようということでございます。
 「すべての大学が」ということでございますが、大きく分けて考えますと、13ページにございますけれども、機関別の第三者評価と専門分野別の第三者評価というものがあり得るわけでございます。機関別の第三者評価というのは、大学全体を総合的に、組織体として評価していくものでございますけれども、これにつきましてはすべての大学に定期的に、先ほど申しました認証評価機関による評価を受けていただくというシステムということでございます。
 それから、専門分野別の第三者評価につきましては、法科大学院なども専門分野別の評価の対象ということでございますが、これにつきましては4にございますように、これからお話をお聞きになることになっている日本技術者教育認定機構(JABEE)の場合のように、いろいろな専門分野別の評価がこれから整備・強化されていくということが必要である。しかし、現在の時点ではすべての専門分野でそういった第三者評価機関が立ち上がることは現実的には難しいということでございますので、認証評価機関による評価の義務付けにつきましては、当面、第三者評価が特に必要であり、社会に対して質を保証することが特に強く求められております専門職大学院、これにつきましては現在、別の部会で議論されておりますが、今のビジネススクールなどの専門大学院を発展・拡充した制度として専門職大学院制度を整備し、その中に法科大学院を位置付けようということでございますけれども、この専門職大学院については第三者評価の義務付けを行おうということでございます。将来的にはいろいろな分野で専門分野別の評価が充実するということを期待した上で、当面はそこから導入していきましょうということでございます。
 国が認証します認証評価機関の機関認証基準でございますけれども、これについては14ページの5の(2)に掲げておりますように、大学評価のための適切な基準を定めていること、適切な評価が実施できる体制が整備されていること、定期的に、これが何年くらいのスパンかということもこれから議論を詰めていかなくてはいけない点でございますけれども、定期的に評価を実施すること、評価結果について一般に公表すること、評価結果に対する不服申立て制度を整備していること、このほかにも経営についての安定した基盤を持っていることといったような、一般的な、公的な役割を担う機関としての必要な条件もあろうかと思いますけれども、基本的にはこういった事柄が機関認証基準の大きな柱になってくるものと思われます。
 分野によりまして、更に詳細な定めを置かなくてはいけないというような場合については、そのような事項も盛り込むことも考えられるのではないかと思っております。特に、例えば適切な評価が実施できる体制ということについて、専門職大学院でございますと、それぞれの専門職業分野の関係の団体等からの推薦者を評価体制に含めるといったようなことも含めまして、実際に卒業生が活躍していく分野とのリンクを考えていかなくてはいけないということがあろうかと思いますので、そういった事柄が盛り込まれていくのではないかというふうに思っております。
 それから、評価のための適切な基準につきましても、これも分野によりまして、この点はぜひこういった柱を盛り込むべきだというような事柄があれば、法令で規定していくということになろうかと思います。
 また、どういった機関が認証される可能性があるのかということでございますけれども、これは複数いろいろな機関が出てくる可能性があるということでございます。その中の一つといたしまして、これは機関別評価という点でも専門分野別評価ということでも可能性はあり得るかと思いますけれども、現在、国の機関といたしまして、大学評価・学位授与機構という機関がございます。今、国立大学の評価と、設置者が希望する公立大学の評価を開始しております。これは、まだ平成12年にスタートした機関でございますので、今の段階ではまだ試行的な、段階的な評価を実施しているところでございますけれども、この機構につきましては、発足当時、当分の間は私立大学については評価を行わないということを省令で定めたわけでございます。これについては、当初は国立大学についての評価が、私学に対してもあまねく、同じような基準で画一的に行われることになってしまってはいけないのではないかという私学側の御懸念があり、こういう形になったわけでございますけれども、今回の御審議の過程でも、いろいろな私立大学関係者によるさまざまな評価機関なども現在検討されていると伺っております。これは機関別評価の方でございますけれども、そういった整備の動きがそれぞれあるわけでございまして、この大学評価・学位授与機構についても、選択肢の一つとして私立大学にも道を開いていくべきであるという御意見が出されたところでございます。それで、14ページの6のところの記述を加えさせていただいておりまして、希望する私立大学については同機構による評価を受けることを可能にするということでございます。
 それから、7は認証評価機関に対する支援を考えていく必要があるのではないかということですが、評価には大変お金がかかるという御意見も、現在評価をやっております大学基準協会などから寄せられているところでございまして、希望する認証評価機関に対する支援を検討する必要があるのではないかという御指摘もいただいております。
 それから、8は「国際的な質の保証の情報ネットワーク」というものもこれから整備していく必要があるだろうということで、これが柱になっております。
 それから、評価ということとはちょっと離れるわけでございますが、4章で是正措置についても書かせていただいているところでございます。これについても、中間報告よりも具体的な措置について更に具体的に記述にさせていただいているところでございます。これは、先ほど申し上げたように、設置段階の規制についてはできる限り最小限のものにしていこうということでございますが、現在、設置後には監督が不十分な状態になっているのではないかという御指摘も強くあったところでございまして、国としても適切な是正措置を講じていく必要があるのではないかということでございます。
 現在の規定の中では、大学自体の閉鎖を命じる「閉鎖命令」というものしか私学に対する是正設置としてはございませんが、15ページの(3)にございますように、法令違反の状態にあったときに、こういう改善をしていく必要があるのではないかという勧告をしていく「改善勧告」、こういった改善をすべきであるという命令を出していく「改善命令」、そういった変更もしないという場合につきまして、特定の組織のみ、例えば学部のみとか学科のみといった組織のみを対象としたような認可の取消しを行う「特定組織のみを対象とした認可取消し等の措置」、全体が問題である、あるいはこういったことに対して特定のところだけでは十分な措置ができないといったような場合につきまして、「大学の閉鎖命令」といったことが最終的な手段としてあるわけでございますけれども、こういった改善勧告や変更命令のような新たな措置を設け、認可取消しについても規定を整備させていただき、法令違反状態の大学に対しましての規定の整備、是正措置の整備をさせていただこうということでございます。
 以上が一般的なシステムについての内容でございますけれども、法科大学院部会などでも、法科大学院についての専門分野別評価として考えていくときには、具体的にどういうことが留意点として出てくるのか、そのあたりにつきましても御議論いただいているところでございまして、特に意見書の趣旨を生かした形で、例えば第三者評価で適格認定を受けなかったというような場合など、法令違反状態の疑いがあるというような場合について、先ほど御説明申し上げました是正措置を適切に講じていくということが考えられるのではないかという御意見をいただいているところでございます。
 それから、法令違反状態ということにつきまして、前回もこの検討会で御議論があり、設置基準自体の中身はどうなるのかというお話がございましたが、大学の設置基準というのは主として設置認可の際の基準でございますが、基本的に大学の設置と大学として存続していくための基準ということでございますので、これも法科大学院部会の方で、数量的な基準以外にも、例えば入学者選抜にかかわる事柄の基本的な考え方、それから厳格な成績の評価とか修了認定といったような、法科大学院として存続していく上で必要不可欠な事柄、存続基準にふさわしい事柄についても明確にすべきではないかということの御議論をいただいているところでございます。以上でございます。

□ どうもありがとうございました。ただいまの説明に対する質疑などは後ほど一括して行いたいと思います。

b) アメリカ法曹協会(ABA)のロースクール認定について

□ それでは、続きまして、アメリカ法曹協会(ABA)によるロースクールの認定の概要につきまして、事務局から説明をお願いいたします。

■ ABAのロースクール認定の概要につきましては、配布資料の3を御覧いただきたいと思います。この資料3におきます訳語につきましては仮訳でございますので、その点はご了承いただきたいと思います。
 まず初めに、ABAのロースクール認定の歴史等について簡単に御説明いたしますと、ABA(アメリカ法曹協会)は1878年に設立されました法律家の団体でありまして、メンバーとしては弁護士だけではなく裁判官、検察官、それから法曹資格を有するロースクールの教授等が任意に加入している団体でございます。
 このABAのロースクールの認定は1921年から行われているものでございまして、今年2002年2月現在で認定ロースクールは185校、うち7校は仮認定校ということでございます。
 ロースクールの認定につきましては、資料3の1にありますとおり、法学教育・法曹資格付与部会という部署が担当しております。その概要は資料の1のとおりでございます。まず、ロースクールを実際に訪問して調査・評価を行う現地評価チームというのがございますが、これは6~7人のメンバーからなっておりまして、その内容はロースクール関係者、ディーンと呼ばれるロースクールの学長、それから教授、図書館長、裁判官又は弁護士、更にロースクールの教員でない、大学の運営を担当している者で構成されております。この評価チームは個別の評価ごとに編成されまして、年間40校以上、現地評価が行われているということでございます。
 次に、この現地評価チームからの報告を受けまして、個々のロースクールが認定基準を満たしているかどうか、あるいは設置基準の違反があり、認定を取り消すべき状態になっていないかどうかを判定する機関として、認定委員会が設けられております。認定委員会の委員は約20名、いずれも非常勤であります。その委員構成はロースクール関係者、裁判官、弁護士、そして非法曹と書いてございますが、法曹でもロースクール関係者でもないもの、いわゆる一般の方となっております。うちロースクール関係者は半数を超えてはいけないということになっております。
 さらに、認定委員会の判断を受けまして、仮認定、完全認定、そして認定の取消しの決定を行う組織として、評議会が設けられております。この評議会では認定基準や認定の手続に関する諸規則の制定・改廃等も行いますが、この評議会は認定委員会と同様にいずれも非常勤の約20名の委員から構成されております。その構成も認定委員会と同様でございます。
 常設の事務局的な組織といたしまして、法学教育コンサルタント・オフィスが設けられております。ここには、コンサルタントというオフィスの長をはじめ、弁護士が3人、その他のスタッフから構成されておりまして、専ら認定の運営面を担当しております。
 次に、2ページの「仮認定と完全認定」について御説明いたします。ABAのロースクール認定には、仮認定と完全認定の2種類がございます。仮認定と申しますのは、完全認定に至るまでの仮の認定でありまして、基準といたしましては、認定基準をおおむね、つまり実質的に満たしていること、かつ仮認定を受けた後、3年以内に認定基準を完全に満たすことができる、信頼できる計画を提示していること、これを要件として仮認定が認められます。
 仮認定を申請する前にロースクールとして少なくとも1年間活動していることが必要とされていますが、これはこの仮認定における実際の現地評価の際に1年生と2年生の学生が在学していて、その授業の視察やインタビューなどが可能になるように、ロースクールとして活動してから1年以上たってから仮認定の申請ができるというシステムになっております。
 仮認定の期間中は、完全認定校に比べて綿密な監督と申しますか、モニターが行われておりまして、年次調査票を毎年提出させますとともに現地評価が毎年行われます。なお、この仮認定も認定には違いありませんので、効果は完全認定と同様でありまして、仮認定校の卒業生でも司法試験を受けられるということになります。
 次に、完全認定ですが、これは文字どおり認定基準を完全に満たしており、かつ少なくとも2年間以上仮認定を受けている場合に認められます。完全認定を受けたロースクールにつきましては、年次調査票につきましては同様に毎年提出させますけれども、現地評価につきましては完全認定を受けた3年後、その後は7年ごとに現地評価が行われます。この完全認定が行われた後もこのように定期的に再評価が行われておりまして、これによってロースクールが認定基準を満たし続けているかチェックすることができますし、また法律実務、その他ニーズ等の変化に適応して教育プログラムを適切に対応させていくということも確保されるものであります。
 現地評価につきましては、完全認定校では7年ごとの実施になりますので、その間の期間におけるロースクールの状況を把握するために先ほど御説明いたしました年次調査票を毎年提出させているというふうに考えられます。
 次に、認定のプロセスについて簡単に御説明いたします。3ページを御覧いただきたいと思います。
 認定のプロセスにつきましては、仮認定の場合も完全認定の場合もほぼ同様でございます。まず、申請を受けまして現地評価が行われます。この現地評価は、実際の授業を見たり、あるいは学生、教授等々へのインタビューが可能になるように、通常の授業が行われている期間、学期中に行います。そして、期間も3日間以上行うものとされています。
 この現地評価を行うに当たっての基礎的な資料として、ここにも書いてございます年次調査票、現地評価調査票、それから自己評価報告書、こういったものをロースクールから提出させて評価チームが持参するということになります。
 この現地評価では、授業の視察や図書館やその他の施設の視察、更に大学の学長、ロースクールのディーン、教授、それからそのロースクールをよく知っている裁判官あるいは弁護士等の現地の法曹関係者等、関係者とのインタビューなどが行われております。
 こういった現地での評価をしました後に、この現地評価チームが現地評価報告書を作成いたします。これは現地評価における事実を報告するということでありまして、個々の基準を満たしているかどうかという判断は、この報告書ではなく次の認定委員会で行われることになっております。
 現地評価チームというのは、評価対象ごとに個別に編成される関係で、その基準を満たしているかどうかの判断は認定委員会の方で統一的に行うという趣旨であります。
 次に、認定委員会による判断ですが、この認定委員会では現地評価報告書等の資料の提出を受けまして、ロースクールの代表者が出席して意見を述べることのできるヒアリングを行った後に、基準を満たしているかどうかについて判断を行います。そして、認定に関する意見、この意見はレコメンデーションと言われますが、これを評議会に提出することになります。
 そして、この評議会では認定委員会の意見を踏まえてロースクールを認定するか、あるいは不認定の決定を行います。評議会では、認定委員会の勧告、意見には拘束されませんが、事実の認定については認定委員会の事実認定に拘束されるというふうにされております。
 最終的に、代議員会で、この評議会の決定が確認されることになりまして、認定の効力が生じる、こういう仕組みになっております。
 次に、認定に当たっての主な判断資料について簡単に御説明いたします。
 主な判断資料は4ページの4に書いてあるとおりでございます。各調査票や報告書の主な記載事項はそこに書いてあるとおりですが、いずれの書面もカリキュラムでありますとか、あるいは教授陣、入学者選抜や在学生に関する記載、授業料等、奨学金等の学生支援策、司法試験の結果や卒業時の就職状況、図書館の設備、施設設備、ロースクールの組織運営や財務関係など、ロースクールの活動を広範にカバーする内容となっており、また記載事項も詳細でありまして、かなりそれぞれボリュームのある資料になっております。
 特徴的なものとしましては、(4)の自己評価報告書がございますが、これは各ロースクールでつくるわけですけれども、認定基準によって、定期的に作成し、改訂するものとされております。そこでは、特徴的な事項として、各ロースクールの使命役割、教育プログラムの長所と短所についての評価、プログラムを改善するための目標、実現できていない目標を達成するための手段や方法について記載されているという点に特色がございます。
 最後に、認定結果等の公表について簡単に御説明しますと、資料5ページの5になります。ABAでは、仮認定につきましても、完全認定につきましても同様ですが、認定を受けたロースクールのリストを公表しておりまして、これはインターネットのウェブサイトでも公表されております。
 なお、ABAのロースクールの認定は、認定するか、不認定か、どちらかということでございまして、いわゆる格付けですとか、レーティング、それからランキング、順位付けのようなものはABAとしては行っておりません。ただ、民間のロースクールランキング等は広く行われているところであります。
 認定ロースクールに関する各種の情報も公開されており、主な公表事項は(2)のとおりでございます。また、ABAによる公表とは別に、各ロースクールもロースクールの認定基準上、消費者にとっての基本的な情報を公表するということが義務付けられておりまして、公表事項としては(2)と同様でございます。
 ABAのロースクール認定の概要についてはおおむね以上のとおりでございます。

□ どうもありがとうございました。
 ABAの認定の説明についても、質疑などは後ほど一括してお願いしたいと思います。
 アメリカにおけるロースクールの評価制度につきましては、アメリカのロースクールで実際にこの評価に関係された経験をお持ちの委員がいらっしゃいますので、御説明をお願いしたいと思います。

○ あらかじめ言っておかなければいけないことは、私が経験したのはあくまでも何十年も前に完全認定されたロースクールの7年ごとの現地評価ですので、仮認定の経験は全くありませんし、また、ロースクールによって対応の仕方は大分違うということも指摘しなければならないだろうと思います。ちなみに、他のロースクールの教授と話していましたら、「評価やアクレディテーションなど、何も気にしませんよ」と言っていましたが、この前、そのロースクールの学部長が東京にいらした際には、少なくとも学部長あたりでは随分気にしているようでした。ですから、恐らくその大学ですと、現地評価に対応するスタッフが豊富であって、あるいはスタッフ中心でかなりこの作業をやっているのではないかと思いますけれども、少なくともディーンあたりではこれについて随分気にしているはずです。ただし、トップランクあるいはトップ5のロースクールと大体25位くらいのロースクールや100位以下のロースクールとでは、また関心の程度は随分違うのではないかということも言わなければいけないだろうと思います。
 私の経験に移りますと、まず年次調査票について、教授あたりではあまり気にしていないと言えます。100ページくらい、恐らく添付資料などをあわせますと何百ページもになるのではないかという詳細なアンケート調査結果を毎年ロースクールが提供しています。しかし、教授あたりでは、確かに、自分の過去1年間の教育活動あるいは研究活動などに関するプロフィールを毎年提出していますけれども、これはまさにスタッフとか学部長あたりが集めてABAに提出しているわけです。
 現地評価に移りますと、確かに先ほどの事務局の説明からしますと、主に3日間の現地視察中心というふうに思われるかもしれませんけれども、大学側から見ますと、これは決して短期間のものではありません。むしろ2年間くらいにわたるような作業が続きまして、しかもこれはかなり大変な作業であります。私の場合ですと、実際に現地視察が行われたのは1996年2月ですが、その前々年の94年7月あたりに特別委員会が設けられまして、その年の9月に全教授による研修がありましたけれども、その際にアメリカ法曹協会のコンサルタント・オフィスの副コンサルタントを呼んで、こういった評価プロセスはどういうものであるか、また特に問題となるようなことに関して半日かけて教授全員で議論したわけです。
 ちなみに、先ほどの説明ではコンサルタント・オフィスは運営の面を担当するという話でしたけれども、どうもアメリカサイドからの感覚はかなり違いまして、特に26年間にわたってコンサルタントを務めた人はロースクール評価の神様のようなもので、評価基準の策定などに関しても相当力を持っていました。むしろコンサルタント・オフィスはかなり案をつくったりして、評議会などを指導したりするというのが現状であったと思います。ただし、現在の状況については、一概には言えません。
 また、私の大学のコミッティは教授5名、学部長、準学部長、リサーチ・アシスタント2名からなりましたけれども、学生4名も委員に加わりました。私の大学の一つの特徴はテニュア関係以外の委員会には必ず学生が加わっていることです。
 94年~95年の1学年の間には、主にそのコミッティは幅広く資料を収集して、それをまず分析し、自己評価報告書に向けての最初のドラフトをつくりましたけれども、その1年間に4回ほど全教授による会議を開いたほか、テーマごとに大体2か月に1回くらい、会議を行いまして、教授による議論を行いました。
 95年の秋に入って、現地視察の約4か月前になって、毎週、委員が集まってミーティングを開いて、そこではかなり具体的な作業を行い自己評価報告書の案などを分担して、特に専門分野、例えばクリニックの担当者はクリニックの部分、図書館長が図書館に関する部分などのドラフトをつくって、それを委員全員で議論して、また場合によってはほかの教授あるいはスタッフを呼んでの議論をして、何回も書き直したりしまして、自己評価報告書をまとめました。
 報告書自体は220ページくらいのもので、添付資料などをあわせますと、私の記憶では大きいバインダー3つくらい、このくらいの資料を現地視察チームに事前に送っています。ですから、大学側としては、非常に徹底的な準備を1年半くらいにわたって行いました。
 最後に報告書をまとめる前に、必ず全教授による議論を行う会議を開催することになっています。私の大学の場合は、時間があまりにもかかりまして、結局、全教授による議論は報告書をまとめてから視察チームが来る前に行われましたけれども、それも確か3時間くらいにわたった議論でありました。
 実際に視察チームが来た3日間の間に、これもまた責任分担で、先ほどの事務局からの説明にありましたように、視察チームには教授とかディーンとか裁判官などが入りますけれども、教授でもクリニック担当の教授と伝統的な科目の担当者も必ず入っていますので、ある程度、その責任分担ははっきりしていますけれども、授業の傍聴などは全員がやります。3日間の間に、全員が少なくとも3科目、4科目くらいの授業を見ていますので、全部ではかなりの授業を傍聴しています。また、教授とのインタビュー、スタッフとのインタビュー、大学関係者、学長、副学長などとのインタビューもあり、学長とのインタビューは2日目あたりに行いまして、学長から聞いたことをまた学部長にぶつけたりするということは確かによくあるようです。
 また、視察の間には、あれだけの資料を提供していても、「このところはちょっと抜けているのではないか」「このことに関してもうちょっと資料を見たい」という要求はかなりありましたので、その3日間の間にもかなり資料を集めたりするということもありました。
 視察チームのまとめたレポートを見ますと、先ほどの事務局からの説明にありましたように、これは事実を述べているだけで、別に認定すべきであるかどうかという判断の部分はないわけです。これも40ページくらいのものですが、まずドラフトをまとめてから学部長にまず送って、学部長が読んでコメントする機会も与えられています。ですから、これが最終案になる前に、更にロースクールとの間のやりとりがあって、その際にも、更に委員会などを集めて議論することは多々あります。大体、ロースクール側から見てそういったプロセスであります。
 さらに、私から見た、ABAのロースクール認定制度が有する意義やインパクトに関して、幾つか言及したいと思いますけれども、まず私の大学のロースクールのようなところは、認定が取り消されるという心配は、まず全くないはずです。注意がつくということも考えられないわけでもないのですが、あまり心配はされていませんでした。それでもこれだけ労力をかけていたのはなぜなのかということで、ネガティブな面とポジティブな面があると思います。大学や学長に対する面とか、あるいは学生、応募者に対する面というのはネガティブな面とポジティブな面の両方あると思いますが、一定以下の認定、最低の評価であればそれは大変なことであります。アメリカの場合は学部長は大体任期が5年ですけれども、再任ということもありますので、学部長としては学長による評価が非常に大事ではあります。しかも、こういった第三者評価機関による評価もかなり学長の印象を変えたりすることもありますので、学長の印象、理事会の印象、州立大学の場合には州政府の印象なども非常に重要です。これも直接的なインパクトであると思います。
 学生、志願者、卒業生などがこのような報告書を読んだりすることはまず考えられません。また、公表するといっても、マスメディアなどに取り上げられることはほとんどないのではないかと思いますので、むしろそれは間接的なインパクトで、学生たち、志願者たちが非常に気にしているのは、アメリカの場合はランキングです。そのランキングは、主に「US News&World; Report」という雑誌のランキングが非常に有名ですけれども、また最近、アメリカ法曹協会も毎年、かなり多くの情報などを載せている、ロースクールに関するガイドを出していまして、志願者たちもよく買って読んでいます。また、「US News」もABAの集めた情報をかなり使っていますので、そういう資料収集の面、あるいは年次調査票の資料の公表などは、こういったランキングなどに影響しているはずですし、そういう意味では間接的なインパクトはかなりあるわけです。
 ポジティブな面に移りますと、むしろ適切に批判されるとロースクール側から見て望ましい面もあります。一つの例として、私の大学のロースクールの建物は確かにひどい建物です。ひどいといってもだれも信用しませんけれども、建物はひどいし、このひどい建物は教育のすべての面に悪影響を及ぼしているということで、89年の認定のときに、建物を何とかしなければ次回の認定は危ないかもしれませんというような言葉まで入っていました。ですから、そういう文章はかなりロースクールとして利用しまして、資金や援助の要求のためにかなり使われました。
 また、クリニックに関する問題ですと、クリニック担当者が現地視察チームに入っていますけれども、よくクリニックの問題点などを把握していまして、特に私の大学の場合は、クリニック教授のテニュアの問題などはかなり議論されました。評価報告書にはテニュアを何とかすべきである、現にかなり問題が生じつつあるというような言葉が入っていました。こういう言葉は恐らく学部長としてはあまり見たくはなかったのではないかと思いますけれども、少なくともクリニックの教授と視察チームとのやりとりでは、かなりこれをポイントにしていたのではないか。
 そういう意味では、確かに改善のためのポジティブな面はかなりあります。また、学生などに対しては、非常にいい評価であれば、それもまた「US News」のランキングに間接的に反映されるはずですので、そういうインパクトもあるのではないか。
 ちなみに、教授に対するインパクトは、私の感じでは余りありません。教授たちもよく分かっていることですので、むしろ教授たちに対するインパクトは、次のプロセス全体を見た場合のインパクトだと思います。
 つまり、自己評価をすること自体は大変意義があると私は思っています。その委員会に入っていたのは大変な作業でした。ですけれども、あれだけ委員会で議論して、また教授全員で議論することによって、確かに改善すべき点や問題点がかなり明らかになって、それがまさに改善のきっかけとなったケースはかなりあります。先ほどのクリニックに関する件は一つの例ですけれども、エクスターシシップの在り方、インターンシップの在り方なども徹底的な自己評価によりかなり改善されていたように私は覚えています。
 そこではまず資料の収集自体も、もちろんこれは必ず収集すべきとされている資料が大部分ですけれども、大学によっては恐らくこういうような規定がなければ、だれもまとめないでいるだろうと思います。資料を収集し、次のステップとしては、その資料を分析することがまさに自己評価の過程であります。また、現地視察チームが入りますと、第三者の目で見て、ほかの大学のアイデアなどを提供しながら、こういうふうにすればうまくいくのではないかということも幾つか言われましたので、そういったアイデアの交換などの面も一つの利点だと思います。
 不満の点は、もちろんかなりあります。負担の重さは、特に関係している人にとってはかなりありますし、外から見られたくないのはどこも同じだと思います。ただし、先ほどのランキングなどから考えて、かなり高いランクのロースクールの場合と低いランクのロースクールの場合とはかなり違うのではないかと思います。低いランクのロースクールは、認定が危ないかもしれないという意味でかなり心配するところがあるだろうと思いますけれども、トップの場合はむしろ教育プログラムに相当自信を持っているので、その自信を持ったプログラムに第三者が入ってきて、口を挟んだりすることに対する抵抗をかなり強く感じます。
 これは次の3番目の不満にもまたつながります。つまり、ミニマムスタンダードの名のもとに、あまりにも細かい基準があって、そういう細かい基準がより望ましい教育の妨げになっているのではないかというのは、むしろトップの大学からよく聞く不満です。図書館の書籍については、各種の裁判例を必ず置かなければならないなどとする、かなり具体的なリストもありますけれども、どうも視察チームによっては、何万冊以上でなければいけないというように、数字を使って判断しているようで、データベースの利用が可能になっていた段階でもなかなかこの基準をしばらくの間変更しなかったので、その間に新しくできたロースクールは、確かに本としては持っていませんけれども、これだけ利用しやすいテクノロジーを提供しているのになぜ引っかかるのかという不満などがあり、これなどはまさにその例です。エクスターシシッププログラムは必ず問題となります。エクスターンシッププログラムの質を確保するのは確かに難しい。単なる見学になるのではないかという心配もかなりあり、単なる見学にならないために、非常に厳格な基準になっていますけれども、そういった厳格な基準が、むしろ非常に望ましいエクスターンシップを不可能にしているという不満もありますので、そういったいろいろな面で、ミニマムスタンダードといっても余りにも細かくてイノベーションを妨げているという不満はよく聞きます。
 最後に、確かに先ほどの指摘した利点として、第三者の目で見て、ほかのところでこういうようなアプローチを使ったけれども、これもいいアプローチなのではないかというアイデアの交流の利点があります。しかし、中には余りにも自分の経験にこだわりすぎて、ほかのところの実情がわからないという委員が出てきて、本当にオープンであるかどうかということに関する不満もたまにはあります。以上です。

□ どうもありがとうございました。ABAのロースクール認定の実態について、非常にリアリティのあるお話をいただきありがとうございました。
 この問題につきましては、関心を持って調査していらっしゃいます委員がおられますので、補足的に御発言をお願いしたいと思います。

○ 今まで制度の概略と実際の運用とについては御報告がありましたので、私の方は補足的に申し上げたいと思います。この間、日弁連として、法科大学院の制度にとって一番重要なものは、このアクレディテーションによる質の維持だろうということで、ABAといろいろ連絡を取り合って勉強したり、あるいは資料をつくったりしていますので、そういうことをした者の目で補足させていただきたいと思います。
 1番目に補足したいのは、ABAのアクレディテーションシステムというのは、資料3の1ページの一番下に書いてある、法学教育コンサルタント・オフィス以外は全部プロボノワークであるということです。コンサルタント・オフィスでは、コンサルタントがトップですけれども、この方は本当のプロで、前任者に引き続いて就任した人も、恐らくこれから10年間コンサルタントをやるだろうというふうに言っていました。そういうプロが事務局を支えているわけですけれども、それ以外の現地評価チームも、アクレディテーションコミッティもカウンシルも、すべてプロボノワーク、「報酬はグッドディナーのみである」というふうに言っていましたけれども、そういうことでやられている。これは恐らく費用を抑えるという意味でも、いろいろな人が参加して、アクレディテーションシステムが硬直化しないという意味でも重要なのではないか。
 それと、先ほども紹介がありましたけれども、認定委員会と評議会の構成が、非常にバランスが考えられていまして、ロースクールの関係者はほぼ半数ですけれども、半数にはならないということになっているということと、残りの約半数、過半数部分は、主としてロースクールの卒業生でユーザーというべき立場にいる法曹関係者であるということと、もう一つは非法曹、パブリックという委員が含まれており、この方たちは主にロースクールではない大学の関係者、大学の学長とかそういった方たちのようですけれども、その方たちが入ることによって、教育全体におけるロースクールの突出がバランス良く抑えられるというような役割を果たしているという話をされていました。パブリックというと、日本だと経済界代表とか消費者代表というのを考えるのですが、経済界代表というのは報酬の関係でなかなか参加いただくのは難しい、日本でそういうことができるなら、それはすばらしいことだろうというようなお話をいただきました。
 それと、あと仮認定から正式認定に至る手続が、実はアクレディテーションシステムで一番機能している部分で、1年活動すると仮認定が受けられて、仮認定は5年間有効なのですが、その間に正式認定を受けなければ廃校になってしまう。しかも、仮認定の間は毎年現地評価が入るということで、ある程度の期間をおいて、実際の活動を見ながら、正式に認定するかどうかということを見ていくことによって、非常に質の維持に貢献しているのではないかと思います。この部分は、日本では文部科学省が設置認可という形でやることになりますので、違うスタイルになる。したがって、アクレディテーションシステムの意味もちょっと違ってくるのかなというふうに思います。
 例えば、この間、最短の3年間で正式認定を受けた大学のロースクールなどは、日弁連で見学に行ったら、校舎として廃校になった小学校を使っていて仮認定を受けて、正式認定と同時にきちんとした建物に移ることになっているというような形で、仮認定の間は正式認定の基準には至らないけれども、一応、基準を満たしているものが、いろいろ努力をして正式認定の基準にまで到達して正式認定になっているというシステムであるというところが、非常に重要な点ではないかと思っています。

□ どうもありがとうございました。

c) 日本技術者教育認定制度について

□ それでは、次に日本技術者教育認定機構(JABEE)による技術者教育プログラムの認定につきまして、本日は同機構の事務局長にお越しいただいておりますので、御説明をお願いしたいと思います。

▲ 私どもは日本技術者教育認定機構(JABEE)と申しておりますけれども、1999年秋に設立しまして、現在スタートして3年弱になります。今年は大学の技術系で認定を求めたプログラム、学科は、36くらいありました。そういうことで、何とか組織を立ち上げたということと、それからもう一つは、国際的に同等性を確保する、あるいは通用性を確保するという意味で、ワシントンアコードという、世界のこのような技術系のアクレディテーション団体のアコードがございまして、現在、そこへの暫定加盟なのですが、本格加盟し、日本の国際的な通用性を確保することを目指しています。
 したがって、JABEEの目的としては、一つは大学の技術工学教育の改善ということと、もう一つは、国際的に通用する技術者の養成という、時代的なグローバル化の背景もあって、技術系の分野で特に急いで制度を立ち上げたということでございます。
 こういうアクレディテーションのシステムを、私どもはトライ・アンド・エラーをやりながら、何とか世界のシステムに合わせていこうということで進めておりまして、本日は、主としてその辺の実態を御説明させていただくということにします。
 JABEEが認定する教育のプログラムは工学系でございますので、機械だとか、電気だとか、化学だとか、いろいろな専門分野がございます。そういう意味で、JABEEは認定機構ですが、正会員の構成は主としていろいろな専門学協会であり、現在数にして83団体ございます。それから、国際競争力という観点もありまして、大学教育の改善のため、企業57社に賛助会員としてサポートしていただいているという団体でございます。
 したがって、認定のプロセスそのものも、そうした専門学協会が中に入った形をとっております。実際にどういうふうになっているかといいますと、審査担当幹事学協会というものがあり、これは機械なら機械、電気なら電気というところですが、そこである程度、審査員というものを養成して確保しております。そういう人たちがチームをつくって審査をして、その結果がJABEEの中にある認定・審査調整委員会に送られます。これは分野間の調整を行う場所でございます。機械の審査が電気の審査と違ってはまずいわけで、そういう意味の調整委員会でございます。これも主として幹事学協会から約17、8人が集まって調整しております。調整されたものが認定委員会という、認定の可否を審議するところに送られます。一応、認定・審査調整委員会で調整されたものが認定委員会にかけられることになりますが、この認定委員会はある意味で最高の決定機関ということになるかと思います。
 ただし、理事会というものがありまして、理事会が認定委員会の判断を承認するといいますか、認定可否の最終審議・決定を行います。というのは、どこの国もそうなのですが、アピールというプロセスがあります。事実誤認程度であればもっと下の方で調整できるのですが、大きな異議申立てというところまでいきますと、それを受けるところは理事会になりますので、そういう意味で最終的には理事会が公表の前に入っているということです。もちろん、オーケーになればそれはすぐ世界に公表されます。これが世界のプロフェッショナル・エンジニアという資格とつながっていくわけですが、どこどこ大学のどういうプログラムは認定されたプログラムですということが公表されます。認定されなかった場合は一切表に出ません。それに対してアピールが起きた場合、一回だけJABEEの提訴委員会に回るという仕組みにしております。まだ、今はじまったところですから、こちらの実績はありません。
 では、認定というのはどのような中身でやっているのかというところで、これは統一的基準に基づいて審査するということになるわけでございますが、簡単に基準のところあたりから御説明します。
 この基準について御説明する前に、少し説明が要るかと思うのですが、認定というのは機関認定、要するに、大学というものを機関として認定する場合もあります。それから、私どものようにプログラム、プログラムといった場合は教員の問題とか設備の問題も含んで一つの教育のシステムとしてとらえますから、少し違いますし、カリキュラムというと語弊があるのですが、かなりカリキュラムにウエートを置いた、専門教育の中身を認定する場合がございます。
 今、大学評価・学位授与機構や、大学基準協会など、日本でも認定をやろうとしているところがございますけれども、機関認定であったり、あるいは専門教育の認定という形になっております。私どもは私学も国立も全部ひっくるめた形で技術者教育の中身を認定する形をとっておりますから、まず学習・教育目標を設定します。これはいろいろな考え方があり、国によって違いますが、最近は、やはり目標を立てて、大学がそれに合った教育プロセスを開発して、アウトカムズを評価するというやり方です。最近、世界的にそういうふうになってきている。
 日本の大学設置基準などで審査していたのは、例えば大学のファカルティ、教員はどうだ、カリキュラムの中身はこうだ、設備はこうだとかいう意味で、機関認定になるわけです。カナダなどもそういう要素が多いのですが、私どもはアウトカムズ評価という形をとっております。そういう意味で、私どもは基準1として、まず目標を設定してください、それを公開してください、それを自分たちでどう達成するかというプロセスをはっきりしてくださいというやり方です。これが質の保証です。産業界ではPDCAと言っていますが、プラン、ドゥ、チェックというサイクルで改善していく、こういう組立てになっております。
 それでは、目標というのはどうなのか、目標の設定ということが国際的に測定可能かどうかということですが、どのようにして本当に達成度を評価するかという議論がいろいろございますけれども、学習・教育目標に含めるべき事項として挙げられているものは、極めて漠然としております。「(a)地球的視点から多面的に物事を考える能力とその素養」、「(b)技術が自然に及ぼす影響や効果、および技術者が社会に対して負っている責任に関する理解(技術者倫理)」とか、「(c)数学、自然科学および情報技術に関する知識とそれらを応用できる能力」、「(f)日本語による論理的な記述力、口頭発表力、討議等のコミュニケーション能力および国際的に通用するコミュニケーション基礎能力」だとか……。それで、専門分野に関わってくるのは「(d)該当する分野の専門技術に関する知識とそれらを問題解決に応用できる能力」という項目なのです。この(d)を、分野の要件という形で更にブレークダウンした形で、専門に関する内容を、各学協会に分野に応じて追加要件を出していただくことになります。けれども、基本的には、極めて共通的な、非常に教養的というか、ベースになるものが挙げられております。私どもの認定は、学部の認定です。大学院になると少し違ってくると思いますが、これから大学院をどうするかという検討をする必要があります。
 学部教育というのは、大学に入って4年間ですが、最初の2年は東大などでもほとんど教養的なことをやっています。3年生から少し専門的な勉強を始め、ほとんどの大学で、結局、学生は卒業研究くらいに入ったところで、どちらかというと非常に専門的にやるということなので、学部教育というのは、専門へ分化する前段階という位置付けをしております。これが実をいいますと、今の技術者に求められている、世界的な状況です。
 技術者というのは非常にシャープに、昔はすぐ役に立つようにということで、入ったときから専門を教育するということもあった。これは産業界がかなり要求したところもあるのですが、そういうことの反動でしょうか、最近では技術者というのは社会の基盤であり、今の技術者というのは銀行にも行くし、コンサルティングにも行くし、そういう集団的なとらえ方をされていて、イギリスなどもそういうところがございます。そういう意味で、4年生までの学部教育というのは、こういうことをしっかりやってくださいと、その上に専門を大学院で乗せていくという位置付けになってきております。
 そういうことで、基準1については、国際的に大体こういうキーワードというのはかなり共通しております。特に、最近は技術者倫理といっているあたりのことについて、やはりこういう言葉が入ってきております。
 それから、基準2の方は、学習・教育の量に関する基準ですが、技術者というものを定義したとき、技術業といいますか、それをやる人たちには最低これだけは共通に勉強してくださいというのがこの学習・教育の量ということであり、これはプロフェッショナル・コンポーネントと言われているものです。これはいろいろな国によって違います。アメリカだと1年半数学をやりなさいとかいろいろある。カナダなどですと、パーセンテージで数学がどれくらい、ベーシックサイエンスで物理、化学が何%、それから補足的な人文的なものが何%、それからベーシックエンジニアリング、これは専門の基礎、それからベーシックデザインとかあるのですが、共通的に言えることは、かなりプラクティスを重視しているということです。デザインとか、ラボだとか、プロジェクトラーニングだとか、そういう新しい学び方でやることを非常に重視しております。
 私どもでは、こういうことで現在全体で1,800時間以上で、その中で人文科学、社会科学、語学で250時間以上、数学、自然科学、情報技術で250時間以上、専門分野で900時間以上と、大体こういうことで1,800時間をミニマムというふうに出して、一応、プロフェッショナル、技術者という場合は最低これだけはやっているという姿です。
 900時間の中身を各専門学会の方ではもう一つブレークダウンして、機械なら機械のキーワードをある程度入れておりますけれども、ここは例として挙げるくらいで、ビーンカウンティングとよく言うんですが、豆粒を勘定するような、単位が何単位で何時間やったとか、こういうことでチェックするのではありませんよということで、できるだけ大学が自分の目標を達成するために必要なカリキュラムなり、そういうシステムを自由に組めるという、そういう自由度を与えるということが基本にございますので、余りこれは縛るというものではございません。
 あとは入学および学生受け入れについて、これはごく普通に言われているようなことでありまして、財源についても当然のことなのですが、基準5の、目標を立てて、どこまで達成されたかという、達成度評価は非常に難しい。先ほど申し上げましたように、目的のところは非常に漠然とした言葉になっております。例えば、「地球的視点から」と。大学の方は、これをこのまま自分の目標にするわけでございませんで、もう少しブレークダウンして、それぞれの学校が自分の目標をつくらなければいけない。具体的な目標で、かつ測定できるような形の言葉に直すということになっております。
 その辺が実は非常に難しいところでございまして、まだ移行期なものですから、大学の方はどちらかというと試験の点数だとか、その辺に頼りがちということになっておりますけれども、いずれにせよ、評価のやり方というのはオープンに、学生さんが見られる、シラバスにも書いてある、授業の初めに自分がこれを受けるとどこへ達成できるかということが見えるように、こういう達成度というものを公開して、それに従った教育がなけれなければいけないというふうな形をとっております。
 この達成度評価というところが、我々が今、非常に苦労しているところでございます。例えば、今、問題となっていますのは、一つの学科で、何々大学、何々学科といったとき、基準5の(4)に、修了生全員がプログラムすべての学習・教育目標を達成すること、これが、結局、プログラムを保証しているわけでございまして、そのプログラムを出た学生はみんな合格ですよという形をとりますから、もしある目標が達成できていない学生がいますと、学科イコールプログラムでやっておりますと留年になってしまうという事態が起きる。特に、私学においては、かなりこの辺が苦しいのですが、学科卒とプログラム卒を分けたのでは非常に分かりにくい。もっと外から見て分かりやすくしてほしいという要望があります。特に今問題になっているのは、私学の場合、今すぐ学科卒イコールプログラム卒としますと、大量の人が落とされるという事態が発生しないとも限らないということです。
 そういうことで、考え方としては、3年生の初めにはそこでコース分けがなされるという形に今はなると考えております。ただ、今言いましたように、プログラムの名前と学科の名前が同じ場合、何々大学機械工学科卒、何々大学機械工学プログラム卒では社会から見たとき全く区別がつかないということになりますから、その辺はプログラムの名前を分けてくださいということにしてあります。
 それと、先ほども少し申しましたように、学生は必ずしも皆さんがエンジニアとして、一生プロフェッショナルな職業につこうと思っているわけではなくて、現在のエンジニアは多くがコンサルティングに行ったり、商社に行ったり、いろいろな先の選択肢があるわけです。そういう意味で、何も成績で振り分けるということではございません。一番悪いのは、4年生になって、成績が悪い人だけをプログラム卒業以外の卒業にして出してしまう、これは一番具合が悪いわけです。3年生のときにきちんと分けて、それはそれぞれの目的が学生さんにあって分かれているという形でやっていただくように、私どもお願いしているということでございます。
 それから、あとは教育界のPDCAで、今まで大学の先生方個人として動いていらしたことを組織として、組織全体の目標を立てて、個々の先生は自分がその目標の何を分担しているかということがクリアになるように、こういうことがはっきりとわかるようにしてくださいということです。そういう自己改善のシステム、点検システムがあり、改善のプロセスができる。それでもって、どんどん自己改善していくということをお願いしているということです。
 これは主として基準がベースになるのですが、その後に審査の手順と方法、これは一つは審査員というものをどう組み込むか、審査員の資格とか、育成をどうするかということで、特に私ども工学系というのは、大きな大学だと1000以上のプログラムがあるものですから、大変な数のプログラムがありまして、それを皆さん受けるとなると……。一応、認定には期限を設けています。常にプログラムは改善していくということもありますので、5年という期限で回していくことになっています。それを審査するためには、1000を5年で回そうとすると年間200くらいはやらなければいけないのですが、200やろうと思うと500~600人の審査員が要るというような計算になってくるわけでございまして、審査員、特に質のいい経験のある審査員をどう育てるかというのは非常に大きな問題になる。今年もアメリカ、カナダ、オーストラリアなど、今世界でやっている審査にオブザーバー参加という形をとって育成しており、国内でも、もちろんいろいろオブザーバー参加もやっております。
 この辺の手順とかマニュアルは大体見ていただければ分かるのではないかと思いますけれども、先ほど言ったそれぞれの基準の審査の仕方について、要するにばらつきが出ないように解説が書いてあります。何をチェックして、こういうところを見て審査してくださいということがずっと細かく解説されております。それから、チームはこういうふうに組んでくださいとか、そのマニュアルも全部できておりまして、大体2泊3日くらいかけてやる審査です。相当ハードスケジュールで全部やるわけです。
 手順の最後の方にプログラム点検書があります。もちろん審査というのは自己点検と現地審査との組合せでやります。自己点検書は大学の方から段ボールいっぱいくらい出てくるんですが、何とか厚さ5センチ、6センチくらいの資料にまとめてくださいということで、一応、ガイドラインに沿った自己点検書が出てきます。それが大学から出てきて、事前にそういうものを十分チェックして、それで今度はそのとおりにやられているかどうかということを現地に行ってチェックする。
 そのときのプログラム点検書には基準の項目が挙がっておりまして、点検経過について、私どもは今CWD--concerned、weakness、deficiencyということで3つの段階で評価しております。これは国際的に大体そういう形でやっています。concernedというのは長期的に5年間先には心配だというような問題がある。weaknessというのは、もう教官が定年で2年先にはドサッと辞めるというようなときには、5年の認定ではなくてこの場合には2年先にもう一回チェックに来ますというようなことを言うわけです。deficiencyといっているのは、これは決定的に具合が悪いというところで、普通、Dがあると認定されないか、あるいは1年先にもう一度チェックしますという形をとられるということです。
 こういうプログラム点検書は、実地審査の前に自己点検書を読んだときに記入するもの、それから実地審査の期間中に記入するもの、最後に大学に対して渡すものなど、いろいろな形があります。あくまでも試行で、審査員もどちらかというとまだ勉強中という形で審査をしたものがあるのですが、例えば、学習教育目標の個別の項目に全部Wがついている場合、恐らくこれに関する目標設定がちゃんとされていないか、あるいは非常に漠然としているということを意味しているのだと思います。そのプログラムの目標がいいか悪いかという議論をしているのではなくて、きちんと目標を設定して、それを公開しているかどうかを審査しているので、ここではあまり中身でCだとかWだということは書く必要は本当はないのですが、試行の段階ではこういう形でやりました。皆さん、目標の設定のところは御苦労されているということが言えるかと思います。
 それから、プログラムをつくってそのアウトカムを評価するわけですから、本当は一回りしないと良かったか悪かったかもよく分からないんですが、プログラムのチェックだとか、システムが回っているかとかいう、そういうところの問題点は大体審査できます。それから、教育組織のところにWとかCが多いというのは、今言ったようなことで、今まで大学というのは組織として一つのシステムをつくっているというよりも、先生方個人の能力で動いていたところがございますが、これからは組織で動いてください、その中での役割分担ですよという形になってきておりますから、この辺がまだ弱いというのは仕方がないかと思います。
 それから、もう一つは、教育評価という問題について、今までは教員評価というのはどちらかというと論文数などの研究評価に偏り過ぎていたと、皆さんそう言っているわけですが、やはり学部教育や大学の先生方の教育に対する評価というものをもっと挙げないといけないということで、そういう教育評価というものがされていますか、されるようなシステムになっていますかということを問うております。
 こうして見ていただくと多くの問題があります。ただ、私ども自身の審査の方法だとか、解説の仕方だとか、こういうものがあやふやで、ばらつきを起こすようでは駄目で、Aさんが審査しても、Bさんが審査しても、出てきた結果を表にして議論するときは、そういう個人の差というのが消えていくということを一番の理想にしておるのでございまして、まだまだマニュアル化が不十分だと思っているところであります。
 それから、「自己点検書作成の手引き」というのがあります。大学側には、このガイドラインに沿って自己点検の書類をつくっていただくことになります。例えば自己点検書の、横軸に基準1の(1)の知識・能力(a)~(h)までが並び、縦軸に大学が独自に立てた当該プログラムの各学習・教育目標が加わりますから、その対応関係をきちんとチェックできるようになっております。あまり漠然とした目標だけでは進まないので、いかに目標をはっきりしていただくかということをチェックするためのシートになっております。
 それから、学習・教育目標に合った評価方法とか評価基準がきちんとつくられているかということを書いていただくことになります。それから、「学習保証時間とその内訳」などもありますし、「各学習・教育目標を達成するために必要な授業科目の流れ」になりますと、一番苦しいところはどういうところかといいますと、私どもが基準1で挙げている知識・能力等にはかなり教養的な要素があるのですが、大学の教養課程を見てみますと、ある意味で、細かい専門分野が決まらないで教養課程にいるわけですね。そうすると、私どもが求めているのは、出口でこういう技術者になりたい、なろうという、あるいはこういう技術者を育てますという大学のプログラムを、その目的に合ったストーリーで、システムを組んでいただくということですから、本当をいうと教養課程の一つひとつの科目についても、土木技術者になるにはこういうことは最低限勉強してほしいという要求を本当は出していかないといけないのですが、そこのところがなかなか教養課程と専門課程との大学の中での別がありますし、それから文系の先生と理系の先生だとか、あるいは理学部と工学部の違い、その辺のまだ縦割り的なところが非常にございまして、今、私どもが言えるのは、最大限こういうシステムを組んでいただくのだから、教養部の先生方にも試験をして点をつけたときに、合格した人、不合格になった人、そのボーダーラインの成績に私どもは非常に興味があるので、試験問題と回答はサンプルを2年間くらいは残してくださいということをお願いしています。今まではそういうことを一切申し上げられなかったし、コミュニケーションもなかなかとれないという状態だったということです。
 最後に一つ、先般、JABEEはワシントンアコードに暫定加盟しました。暫定加盟については全員一致で賛成してくれました。今度は、本当に本格加盟ということで、今、ちょっと言われているのは、一つは制度としての成熟ということです。私どもは、昨年3校を審査して、今年は36校を審査します。今年の36校を終えれば、一応、この制度が大学にも受け入れられたし、スタートしたというふうに認めてもらえるだろうということで考えておりますけれども、去年の3校だけで、今年からもう本格加盟というのはちょっときついかなと思っております。
 もう一つはアカウンタビリティーということと認証という問題があります。認証が特に日本の場合、これから問題になってくると思います。私どもは認定はします。だけど、私ども自身をだれがコントロールするのかといったときに、そのシステムがまだ日本でははっきりしていない。文部科学大臣が指定する団体というような書き方になっているところはあるのですが、そこのところがはっきりと本当に認証になっているかというと問題があるのではないかと思います。
 アメリカではどうなっているかといいますと、アメリカでも大学の自治ということがあるので、何千かの大学が集まって、ACHという団体をつくって、そこがいっぱいある認定団体を認証することになっています。そのガイドラインはきちんとあります。5年に1回ずつ、チェックすることになっています。
 だから、JABEEをつくったところまではいいのですが、それが国全体の中のどういうシステムに組み込むのかというところの整理が、もうひとつ今の日本の場合ははっきりしていないということで、認証がどうなっていますかと言われたときに、日本ではこうですというのが非常に説明しにくい状態になっているということだけ、ちょっとコメントさせていただきます。どうもありがとうございました。

d) 質疑応答・意見交換

□ どうもありがとうございました。委員の方や文部科学省にはまた出席していただく機会があると思いますので、主として今の技術者教育プログラムの認定についての説明に関する御質問をまずお受けして、ABAの関係についてはまた引き続き御検討いただくということでよろしゅうございますでしょうか。
 それでは、今のJABEEのシステムを中心に御質問がありましたら、それをまず先行させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○ 今のJABEEの御説明、大変興味深く伺ったのですが、特に私が興味を持ったのは「達成度評価」ということでございます。自己点検書作成については、プログラムの修了生全員が目標を達成しているという根拠を示して証明しなくてはいけない。この辺が実際に本当に生きた評価になるかどうかの決め手だろうと思うのですが、それが実現できているものなのかどうかということをお伺いしたいと思います。
 ABAについては、実際の達成度評価が現実になされているのか、それが例えば7年に1度の評価だとか、その辺で大丈夫なのだろうかとか、その辺についてお伺いできればと思います。

▲ 具体的な名前を出すわけにはいかないのですが、ある私学で、非常に目標は立派に書いていらっしゃるのですが、それでは「学生さんの目標達成はどうですか」とずっと遡って成績を調べると、35点の人が修了生に入っていたということで大問題になりました。それは過去にあった話なのですが、それから今言ったようにクラス分けの問題になったのですね、特に私学の場合は。
 それは何も35点だから悪いということではなくて、ボーダーラインの試験をやったその問題の成績の分布があって、ボーダーはここですといった場合に、そのときの問題と回答を見て、本当に35点の人は35点であって、これは常識的に見て不合格だということで、審査員は問題点を指摘するのですね。そうして、大学の方は、35点の人ははっきりと外さざるを得ないと、要するに、JABEEの全員合格というわけにいかなかったのですね。
 そういうことをやっていまして、この達成度評価というのは、大学自身が保証するわけですから、大学自身がちゃんとやっているということが証明されないといけないですね。だから、審査員はその大学がやっている審査の基準なり、判定の仕方が理に適っていて、もっともだと思えば、それでいいという形をとっているのですが、審査員にとって、それがおかしいなということになると、疑問点について厳しく追及されますから、大学の方としては、本当に学生を全員合格させていいのか、落とさなくてもいいのかということで大変悩んでいらっしゃいますね。

○ アメリカの場合は、視察チームによる評価と、ロースクールが毎年提出する年次調査票とは関連というのか、達成度に関して両面があろうかと思います。特に、アメリカの場合、アメリカ法曹協会の基準でアウトプットを評価することに関して、委員会の方でもアウトプットは何なのかというのは。
 ですけれども、むしろ問題にしているのは司法試験の合格率と就職率、確か卒業6カ月後の時点における就職率が主な基準になっています。しかも、「US News」とか、そういうランキングシステムでは同じ基準を使っており、学生にとって非常に関心のあることですので、そういう意味では割合はっきりしています。評価システムによって確保されているというよりも、むしろランキングと学生、応募者の選択ということでかなり影響があるのではないかと思います。
 視察チームの場合は、まず授業を傍聴して、また学生とのインタビューなどで、教育方法についてはかなりチェックしていますし、実際にどういう試験を行っているかなど、何人かの教授に聞いて、もう既に大体アメリカのロースクールはインターネットを通じて、試験問題などを調べることができますけれども、また教授にも聞いて見せてもらったり、答案を見せてもらったりすることは確かにあります。
 ただし、授業の傍聴でどのくらいのことを学生に要求しているのか、学生がどのくらい解答できているかというようなことは、確かにちゃんとチェックしています。しかし、それで達成度が本当に判断できるかどうかということに関しては、むしろ司法試験の合格率、就職率の方が重要な基準になっているのではないかと思います。

▲ 今の問題については私たちも議論したんです。それで、達成度はどの時点で測るべきなのかと。アメリカのABETは卒業して2年先くらいまでやっていますから、卒業生調査をやったり、企業の意見を聞いたりしていますが、これが一つのループなのですね。
 ところが、日本の場合は、私どももまだスタートしたばかりですから、今は卒業時点の成績を見ましょうということで、現在はそうしています。将来は、恐らくおっしゃるように、卒業した人が社会に出てどうだったかというところまで含めたサーベイをしなくてはいけないだろうと思います。

○ 大変勉強になりました。
 素朴な疑問ですけれども、日本の大学の工学系学科が1,000くらいあると言われましたが、現実には偏差値に大変なばらつきがあって、偏差値が60台の学科からと50に満たないくらいの学科があるわけです。そうすると立派な教育をしても、出てくる人たちの質は、現実問題で言えば相当に差があるのではないかと思うわけですが、そこら辺は、例えば、偏差値50くらいの人にいい教育をして、出る時もやはり偏差値50くらいのレベルでアウトプットをすればこれはクリアするということなのでしょうか。

▲ それはいいのですが、国際的なレベルというところで、やはりエンジニアで、国際通用性ということを言っていますから、日本の大学を出てエンジニアになった人がアメリカに行ってプロフェッショナル・エンジニアの資格をとって、アメリカのプラント会社で働くということが起きてきたときに、どうかという問題があります。カナダもものすごく敏感です、外国からいっぱい人が入ってきますから。日本が容易に認めて、ドサッとカナダに就職に来られたのでは困るという目で見ているのです。
 だから、今、おっしゃったことについて言うと、デコボコはあるでしょう。学校によっては、例えば言い方は悪いけれども、ある学校にとってはもう入ってくる生徒がいいと、入ったときからいいところがあって、むしろダウンしている場合もあるくらいだということだと思います。だけれども、私学の学校の先生の話は、私たちはどれだけ付加価値を付けるかと。子どもはとんでもないのが入ってきますけれども、親が何とかしてくれというので私たちは努力して付加価値を付けていると。付加価値を付けるのはいいのですが、どこかに国際的なエンジニアとしてのスタンダードなり、ミニマムのレベルがあるでしょう、これをどうするかということですが、今のところは実は、先生は書けないとおっしゃるのです。大学も書けない。だけど、審査側、審査員はやっているうちに、収束してくるはずだと、一つの常識としてこのレベルというのはあるという、そういう期待があります。
 もう一つは、実はモニタリングビジットといって、毎年海外の審査員を呼ぶのです。私もこの間、カナダに行ってきましたけれども、ワシントンアコードの場合、彼らの審査員も我々の中にオブザーバーとして入って見てくれる。そこで、ある程度、国の違いとか、ばらつき、分野についての違いや学校の違いは、審査員は学内の人間だけではなく、産業界の人もいるから、極端にミニマムが低いというときは認定されない。
 だから、システムをちゃんとつくっているかという話と、レベルがちゃんと確保されているか、その2点で判断されると思います。

□ ほかにございますでしょうか。

○ 審査員となる人はどういう人ですか。

▲ 結果からいうとほとんど大学の教授と産業界の部長以上が入っています。
 だけれども、資格の要件は、1泊2日の研修会に参加すること、先ほど御説明したいろいろなマニュアルに精通しているということですね。それと、オブザーバー参加なり、実地審査で訓練しているということです。
 特に、私どもの審査長というのは非常に大きな役割をしますから、審査長についてはできるだけ海外のアメリカだとかカナダとかそういうところに行って、海外の審査にも立ち会っていただいて勉強していただく、今はそういう段階でございます。

○ 実施審査の場合は、審査員何人くらいのチームですか。

▲ 審査長一人に対して今はプラス2~4人、大体3人ですね。更にオブザーバーが2人くらい入るんですけど、一番多くても5人です。それを基準にしております。

□ ほかに何かございますでしょうか。

○ 日本の場合はこういう認定システムというのは形骸化して、何でもかんでも認定する方向に進んでしまうと言われていて、第三者評価をやってもあまり意味がない、そこがアメリカやヨーロッパとの違いだという話をよく聞くのですが、JABEEのシステムの場合はどうなんでしょうか。先ほど試行的な審査をしたという説明がありましたが、審査の結果はきちんと認定に反映するのでしょうか。

▲ これはあくまで試行でして、試行の目的は、今言ったツールをこれで制度として使えるかということをチェックするのが第1の目標でやったのですが、大学の方は予備審査的に理解されていました。
 アメリカでも、認定は1930年代からやっていますし、カナダにも40年以上の歴史がありますから、ある意味では審査員も慣れているし、大学の方も大体慣れているところがありまして、新しい大学ができたり、新しいプログラムをやるところがスタートするときでも、事前にある程度結果が予想できるらしいのです。手を挙げるのは自由なのですが、プログラムがまだきちんとしていないのではないかというときには申請を取り下げていただくというような形で、不認定をする前にそういう形で救済するということをやっているから、実際の合格率は90%以上を達成しているのです。
 カナダにこの間行ってきたのですが、学生が減り出した学科は認定されませんでした。特に古い学科で、地方にある場合など、カナダの場合、お金の問題もありますし、非常に広い国ですから、小さいプロヴィンスをどうするかという問題があります。それで、学生がどんどん減ってきて、ノーティスをかけて1年たっても結局改善されなかった、ほかの学科とお金の問題もありますし、どう併合するかということをいろいろ検討したけれども、駄目だったというケースがありました。
 だから、学生が減るとか、先生が集まらないとか、こういうのは不認定となる決定的な要因ですね。

□ JABEEの事務局長にはご多忙のところ、どうもありがとうございました。
 文部科学省の説明を受けて、法科大学院の第三者評価の実施方法などについて御意見があったり、御質問があれば、時間の許す限り、お受けしたいと思います。
 私から、一つ質問があるのですが、先ほどの委員の説明にもあったのですが、仮認定から完全認定のスキームが、日本の場合どういうことになるのか、もし文部科学省の方で何か検討していらっしゃることがありましたら、お伺いしたいと思います。法科大学院が一斉に立ち上がった後、しばらくどうするのかという話について、どこで検討することになるのでしょうか。

● 仮認定という制度を取り入れるかどうかというのは、それぞれの分野なり、それぞれの機関で検討されることではないかと思います。一般的なスキームとして、必ず○×をつける認定という形を取り入れなければいけないということではないということでございます。
 例えば、評価の仕方についてもいろいろ御議論があり、最初はいわばアメリカのアクレディテーション的なものだけを想定した議論からスタートしたわけでございますけれども、必ずしも○×というよりは、一定の設定した目標に照らして、先ほど達成度という問題がございましたけれども、そういうものを見て、不十分だとか、そういう評価の仕方を結果として公表していく、そういった評価の在り方もあるのではないかと思います。
 アメリカの場合は、特に会員として認定して、会員校にするかどうかというような、自分たちの仲間に入れるかどうかというような判定が一般的なアクレディテーションのスタートでございますけれども、そういう形の評価ばかりではないのではないか、少し幅を持たせるべきではないかという議論もございます。それから更に仮認定とか本認定とか、そういうような仕組み自体をどう考えるかということについても、それはそれぞれの評価機関の評価のシステムをどういうふうに組み立てるかという話だろうと思います。

○ また達成度評価についてお伺いしたいのですが、日本のこの制度で文部科学省が今お考えになっている、この第三者機関の評価は、現実に大学へ行って、答案だとか論文を見て、達成度のレベルをチェックして、それで不合格にしなくても結構なのですが、それを公表するというようなことがイメージされているのか、あるいはそこまではちょっと無理だろうと、外形的に教員の数か何かそういう形で評価するのか、教育の成果、その中身に立ち入ったところまでの評価がされるだろうとイメージされているのか、いかがでございましょうか。

● もちろん第三者評価のねらいというのは、むしろ教育の質的なもの、教育の中身などを含めまして、そういう質的なものを評価するのに一番そういう仕組みがふさわしいのではないかと思います。つまり、国は設置認可のときにはそういうものは見えないだろうし、国が以後もそういうことをチェックするのは適当ではないのではないかというところがございますので、今、御指摘のような、どういった成績評価をしているか、あるいは教育の質を高めるためにどういうふうなことをやっているか、そういうことを現実に実地に行って見ていただく、そういうことは基本的なやり方の中に入ってくるものだろうと思います。少なくとも、書類か何かで外形的に見て、それでおしまいというのではないということでございます。

○ もう一つ、どなたにお伺いするのが適当なのか分かりませんが、そういう法科大学院の民間の第三者評価機関が複数できてくるという予測は立っているんでしょうか。

● 法科大学院についてはよく分かりません。それ以外の先ほど機関別評価と申しましたけれども、こちらは複数の機関が認証を申請することが確実に想定されております。

○ 第三者評価と法令違反状態との関係なのですが、どうなるのでしょうか。

● システムとしては、制度的にはつながっておりません。つまり、不適格認定を受けたから、それで例えば取消しをしますとか、そういう処分を必ずしますということではありません。

○ そうなのですね。

● ただ、例えば不適格認定を受けたということになれば、どういった原因でそうなっているのか、例えば、教員の数が足りていないとか、そういった問題であれば、設置基準の違反の問題が起きてくることはあり得るわけでございますので、その場合、調査を行い、文部科学省が先ほど申し上げました是正勧告など、そういった一定の措置を講じる、又は講じることを検討するきっかけになるといいますか、契機になる可能性はあるのではないでしょうか。
 特に、法科大学院の場合には、すべての機関について、そういう評価が定期的に、それもかなりしっかりした評価が出てくるわけでございますので。

○ そうしたら、設置認可だけでこういう図にするのではなくて、第三者評価機関からのフィードバックで、例えばものすごく評価結果が低い大学の場合には、この設置基準の権限に基づいて調査をして、取消しという枠組みがこの中にある方が全体の枠組みとしてはわかりやすいですね。

● 一般的なスキームとしては、ここにありますように、設置基準に違反しているかどうかを見るきっかけはいろいろあろうかと思います。例えば第三者評価の結果が出てくる場合もあると思いますし、そうでなくても、いろいろな形でその事実が明らかになってくるという場合もあると思います。

○ 認可の取消しというプロセスがあればいいということですか。分かりました。

○ その点については、この前の中教審の法科大学院部会でも少し議論が出たところで、その両者の関係をどうするかですが、ほかのソースから法令違反の疑いをお持ちになって文部科学省の方で調査をするということは当然あるとして、第三者評価との結びつきについては特に審議会意見でも強くうたわれているところですので、第三者評価の結果として適格認定が得られないとか、取り消されたということになれば、それは法令違反の疑いを生じさせるのではないか、それと調査の開始とを結び付けるような形は考えられないかという御意見も出たところでです。最終的にどういう表現にするのかは別として、そこのところが実質的にはつながっており、とにかく調査をし、法令違反の有無について確認をして、法令違反があれば取り消すという形を取るのが望ましいのではないかという意見が出たところです。
 ただ、その場合、第三者評価といってもいろいろな評価機関があり、法科大学院の質の維持・向上を目指してかなり高いスタンダードを立てた場合、それを満たさないと直ちに適格認定を与えないということにはならないのかもしれませんけれども、基準や評価にバラツキがあるときに、不適格だからといって直ぐに法令違反と言えるかどうか、その辺がちょっと難しいので、ワンクッション置くことが必要だという、そういうお考えだろうとは思うのですが。

○ 公表制度はどういう制度とするお考えでしょうか。つまり、評価結果を公表するというのは、評価結果は大体どういうイメージですか。あるいはどこまで情報を公表する感じですか。

● 先ほどのJABEEのお話のように、適格を認定されたと、それだけを公表するというケースもあるかもしれませんし、それから、今、大学評価・学位授与機構がやっておりますように、かなり詳しく中身の評価を公表すると。つまり、結果としての○×とか、あるいはABCDとかいうだけでなく、どういう点についてどういう意見、見解を示しているのかということについて、かなりいろいろな点について細かく公表しておりますけれども、これは評価機関によって公表の仕方はいろいろあり得るのだと思いますが、そこのところは一律に決めるということはなかなかできないのかなと思います。
 ただ、法科大学院についてどういう形の公表の在り方が望ましいのかという問題はあろうかと思いますけれども、いずれにしろ、全体のシステムとしては何らかの形でそういった評価結果を公表していただくとして、そのやり方は一律にこういう形でなければということでは、なかなか決め切れないのかなという感じはしております。

□ この問題については、まだいろいろ検討しなければいけないところがありますけれども、秋以降、もっと論点を詰めていただきたいと思いますので、本日はこの程度にしたいと思います。
 最後に、法科大学院の第三者評価のスキームにつきましては、先日、第5回の顧問会議で検討されましたほか、与党においても検討が加えられているとのことですので、この状況などにつきまして、事務局から報告させていただきたいと思います。

■ それでは、簡単に御報告申し上げます。
 まず、7月5日に開催されました第5回顧問会議の状況について御報告いたします。
 顧問会議では、座長に御出席いただきまして、法曹養成検討会における検討状況について御説明いただいた後、顧問による意見交換が行われました。そのうち、第三者評価と司法試験の受験資格との関係については、前回のこの検討会でお示しした第3案、つまり主務大臣が認証した複数の第三者評価機関が法科大学院の第三者評価を行うこととした上で、設置認可が取り消されない限りは法科大学院の修了者に司法試験の受験資格が認められるというスキームでありますが、その第3案を基本とする方向性について、特段の異論は出されず、司法制度改革審議会意見の趣旨に沿うものであると積極的に賛成する御意見も出されました。
 その上で、前回のこの検討会での議論と同様に、第三者評価において法科大学院の質を厳格に評価する必要があり、第三者評価の運用に当たっては、その実効性を確保するための方策を検討することが重要であるという御指摘が出されました。その関係で、本日の議論は顧問会議との関係でも大変参考になると思いますし、今後も当検討会で更に御検討いただく必要があろうかと思います。
 続きまして、与党における議論の状況について簡単に御報告させていただきます。
 まず、自由民主党では、司法制度調査会の下に法曹養成制度を検討するための小委員会が設置され、これまで合計17回の会合が開催されております。法科大学院の第三者評価と司法試験の受験資格との関係につきましては、やはり本検討会の第3案と同様のスキームとすることに賛成する意見が多数であるものと承知しておりますが、法科大学院の設置認可や第三者評価に関しては、法務省あるいは法曹関係者が実質的に関与するスキームとすべきであるとの意見が出されておりまして、そのような意見を踏まえまして、本日、資料4として配布しておりますが、資料4のイメージ図にあるような案が検討されております。
 しかしながら、このイメージ図に記載しました案につきましては、今後、法制的な観点からの検討も必要になりますので、与党での議論あるいは法制面での検討を踏まえた上で、可能であれば次回検討会で改めて御報告申し上げたいと考えております。
 この案の要点は、審議会あるいは法科大学院の教育あるいは第三者評価機関に、法曹関係者が実際にメンバーとして参画するということ、それから学校教育を所管する文部科学省の認可あるいは改善の関係の措置、認証等に法務省あるいは法務大臣から意見を述べることができるというようなスキームを基本として考えられておりまして、自由民主党の方ではこのようなスキームを今検討されておられるというところでございます。
 また、与党3党におきましては、与党政策責任者会議法科大学院等に関するプロジェクトチームが設置されまして、法科大学院の第三者評価を始めとする主要な論点につきまして、与党間の協議が開始されたという状況にございます。このあたりの状況につきましては、今月末までの国会開会期間中に何らかの動きあるいは取りまとめ等の動きがあるものと承知しておりますので、また次回検討会あるいはその前に、御報告する点等が出ましたら、適宜な形で御報告申し上げたいと思っております。

□ どうもありがとうございました。顧問会議では、特に、口述試験をなぜやらないのかということと、第三者評価と設置認可の関係をどうするのかということについて意見が出ました。
 今の事務局からの御報告について御質問などありますでしょうか。この図は別のところで出ている資料でございまして、本検討会の資料ではない、ということで御理解いただきたいと思います。
 本検討会でこの図について検討したということではございません。この問題については次回以降あらためて検討していただきたいと思います。

8 今後の予定

□ それでは、予定の時間も大分過ぎましたので、本日はこれまでにしたいと思います。次回は8月28日午後2時から、場所は本日と同じくこの会議室です。
 次回は、これまでに引き続きまして、事務局から立案作業の上で生じた問題点について報告を受けた後、更に検討を進めたいと思います。なお、次回検討会までの間に、与党における検討などにつきまして、動きがあるという予測がされていますけれども、この点につきましては、夏期休暇中でございますが、事務局の方から各委員に適宜御連絡させていただくということにしたいと思いますので、その節はよろしくお願いいたします。
 それでは、本日の議事はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。