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法曹養成検討会(第11回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日時
平成14年8月28日(水)14:00〜16:00

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)田中成明座長、井上正仁、今田幸子、加藤新太郎、川野辺充子、川端和治、諸石光熙(敬称略)
(説明者)久保公人・文部科学省高等教育局主任大学改革官
(事務局)山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、片岡弘参事官

4 議題
(1) 関係機関の検討状況等について
(2) 司法試験法の改正について
(3) 司法修習の期間について

5 配布資料
資料1  法曹養成検討会(第10回)議事概要
資料2  司法試験法の改正について(骨子)(案)

6 説明資料(文部科学省)
・ 中央教育審議会答申(平成14年8月5日)

7 議事
   (□:座長、○:委員、■:事務局、●:文部科学省)

□ それでは所定の時刻になりましたので、第11回法曹養成検討会を始めたいと思います。
 まず、検討に先立ちまして、事務局の方から本日の配布資料の確認をお願いいたします。

■ それでは、本日の配布資料の確認をお願いいたします。
 本日の配布資料といたしましては、資料1「法曹養成検討会(第10回)議事概要」、資料2「司法試験法の改正について(骨子)(案)」でございます。そのほか文部科学省の説明資料といたしまして、中央教育審議会の答申(平成14年8月5日)の冊子をお配りしてございます。

(1) 関係機関等の検討状況等について

□ それでは検討に入りたいと思います。
 前回の検討会から本日の間までの状況としましては、8月5日に中教審の答申がまとめられました。本日はその答申のうち、法科大学院に関係する部分を中心に文部科学省から御説明をいただきたいと思います。
 また、7月26日には与党三党の政策責任者会議のプロジェクトチームにおいて、与党三党合意が取りまとめられたということでございますので、その点についても事務局から御紹介いただきたいと思います。
 それでは、まず文部科学省から説明をお願いいたします。

● 文部科学省の方からお配りさせていただいた資料として、中央教育審議会答申とその概要についての1枚紙「法科大学院の設置基準等について」をつけさせていただいていると思います。これに基づきまして簡単に御説明をさせていただきます。
 まず、8月5日に出ました中央教育審議会答申の冊子でございますけれども、前回の検討会では「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について」の案に関して御説明申し上げたと思いますが、私の方からは「法科大学院の設置基準等について」を中心に御説明させていただきたいと思います。
 この1枚紙につきましては、4月に中間報告が出ましたときから、大きく中身は変わってございません。中身といたしましては、この法科大学院を法曹養成に特化した専門職大学院として位置付けるということ、課程の修了要件は3年以上の在学、93単位以上の修得、教育内容については法理論と実務との架橋を強く意識した教育を行う。入学者選抜では、公平性・開放性・多様性を旨として、入試のほか、幅広い分野の学業成績、学業以外の活動実績等を総合的に考慮する。教員につきましては、高度の教育上の指導能力があると認められる者とする。さらに、適格認定については、この法曹養成検討会での議論を踏まえまして、新たに書いているという形でございます。その他といたしまして、連合大学院や奨学金、教育ローン、授業料免除制度等の各種支援制度の充実について記述がなされてございます。
 まず、この中教審答申の冊子に基づいて御説明申し上げますけれども、3つの部会で審議いたしておりましたが、最初に法科大学院を専門職大学院として位置付けるということにつきましては、2番目の「「大学院における高度専門職業人養成について」(答申)」の中で触れられておりまして、ページ数でいきますと34ページから書いてございます。ここで専門職大学院制度を創設しようということ、これは今までの大学院というのが修士課程と博士課程の2種類だったのに対して、プロフェッショナル・ディグリーと申しましょうか、専門職大学院という課程を設けようということでございます。
 想定されております専攻分野につきましては、35ページの「4 専攻分野」の(1)の6、7行目からでございますけれども、経営管理、公衆衛生・医療経営のほかに、法務、知的財産、公共政策、技術経営などの分野で高度専門職業人養成に特化した大学院が構想されている。さらに、将来的にはより広い分野で多様なニーズが増大していくことも想定されるというようなことがまず書いてあるわけでございます。
 具体的に、もう少し法科大学院に限定して御説明させていただきますと、法科大学院の設置基準等につきましては49ページからでございます。これにつきましては、一度、中間まとめのときに御説明させていただいておりますので、変わった点を中心に御説明させていただきたいと思います。
 49ページの「1 はじめに」が4ページにわたってございますけれども、この中では51ページの下から2つ前の段落のところでございますけれども、「大学関係者にあっては、法科大学院での教育が従来の法学教育の単なる延長ではないことを十分に認識し、厳しい自己改革の努力の上に立ち、その個性や特色を生かした法科大学院を設立されるよう、強く期待したい」という言葉が入ったわけでございます。
 53ページの2からが「設置基準関係」になってまいります。53ページの最初のページの部分につきましては、従前は「はじめに」の中に書かれておりましたけれども、明確に取り出してここに書いたということと、それから中身につきましても、どういったことについて基準を設けるかということで、3行目の「例えば」から「教育課程、厳格な成績評価及び修了認定など質の高い充実した教育のための教育方法、実務家教員の参加を不可欠とする教員組織等の教育条件、オープンで公平な入学者選抜について基準を設ける必要がある」とインデックス的に重要な柱を取り出したわけでございます。
 54ページから、具体的にそれぞれ設置基準の中身に入ってまいりますけれども、まず(1)の「課程」につきましては、法科大学院の課程を専門職学位課程と位置付けるということが1点、それから法科大学院修了者の博士課程への進学を認めるということ、その際の在学期間を2年とすることも可能といたしております。①の最後の段落にその辺りを書いております。
 ②では、法科大学院の学位、専門職学位につきましては、「法務博士(専門職)」あるいは「法務博士(専門職学位)」といった名称を使うということにいたしております。
 55ページ、「(2)標準修業年限・修了要件」につきましては、標準修業年限につきましては先ほど申し上げたとおりで大きく変わっておりません。3年ということでございます。56ページの修了要件につきましては、必要在学期間3年以上、それから必要修得単位数93単位以上とすることが適当であるとしております。また、研究指導は修了要件としては必要としておりません。最初の段落の5行目でございますけれども、「修了要件としては研究指導を要しない」ということにいたしております。
 ③の「入学前の既修得単位の認定等」につきましては、ほかの法科大学院ですとか、あるいは別の大学院も含めて、法科大学院に入るまでに修得した単位をどれくらい認定するかということで、これにつきましては、すべて足してあわせて30単位とし、93単位の3分の1までという形にいたしたところでございます。学部の場合は大体半分までは認定できるようになっておりますから、やはり法科大学院の中での教育を重視したような形になったところでございます。
 58ページの「入学者選抜」につきましては、今まで設置基準の中では、そもそも入学者選抜については定められておりません。各大学が入学者選抜を責任を持って行うという観点から、設置基準には具体的な定めがございませんでしたけれども、法科大学院につきましては設置基準の中にできるだけ規定しようということでこちらの方に移したということと、各法科大学院については入学者受入れ方針を明確にする、アドミッション・ポリシーを明確化するということを書いたというところでございます。
 60ページの「教員組織等」につきましては、基礎的な数につきましては大きく変わったところはございませんけれども、62ページの実務家教員につきましては最後の6行が新たに書き変わっております。法科大学院には、実務家が法曹三者のバランスを保ちつつ、教員として関与することが望ましい。さらに弁護士の兼職制限については緩和する方向で立法措置を講ずる旨が閣議決定されているが、さらに現職の裁判官、検察官等の派遣についてはこれを可能とするための所要の措置を講ずる必要があるということを明確に書いたところでございます。
 「④教員の質の確保等」につきましては、教員の研修について義務として位置付けるということとともに、さまざまな内容・方法により継続的に研修を行うこととか、これらについては法科大学院の創設に向けてより早期から実施することが必要であるということが書き加えられたところでございます。
 64ページからの「教育内容・方法等」につきましては大きく変わったところはございませんが、69ページの「第三者評価(適格認定)」につきましては、法曹養成検討会の結論なども踏まえまして新たに書き加えたところがございます。まず基本的に、多元的な評価システム構築の重要性ですとか、法科大学院においては第三者評価(適格認定)を継続的に受けるようにするということですとか、第三者評価の結果を踏まえた措置について具体的に記述したところでございます。特に、69ページの③でございますけれども、全体のスキームを受けまして、「第三者評価機関から適格認定を受けられず設置基準に抵触している疑いがあるなど、必要と認められる場合には、国がその法科大学院の実態について、法令違反状態に陥っていないかどうかを調査し、その結果、法令違反状態が明らかになったものについては、改善勧告、変更命令、認可取消等の措置を講ずることとすることが適当である」と明確に書きまして、これに基づいて必要な法整備を行っていくということにいたしております。
 最後、74ページでございますけれども、法学部教育との関係につきましては、今後、法学部自体の教育の在り方も変わっていくということにつきましては、中間報告から変わっておりませんけれども、74ページの最後の段落の11行については新たに加わったということで、特に最後の7行につきましては、各法科大学院をつくるに当たっての基本的な哲学ということで、大学の先生方に十分な自覚を持ってつくっていただくようにという形で書き加えられたところでございます。以上が簡単でございますが、法科大学院の設置基準等につきましての中教審の答申の概要でございます。

□ どうもありがとうございました。
 それでは、次に与党三党合意につきまして、事務局から紹介していただきます。

■ それでは与党三党合意について簡単に紹介させていただきます。
 自由民主党、公明党及び保守党の「与党政策責任者会議法科大学院等に関するプロジェクトチーム」において去る7月26日にいわゆる「与党三党合意」が取りまとめられました。
 具体的な合意事項のうち、今後の立案作業との関係では、「法科大学院の制度を創設する趣旨を明らかにし、法科大学院の設置及び第三者評価制度を適切に運用するため、その制度の基本理念を定めた特別の法律を制定すること」とされており、この特別の法律の在り方が問題となろうかと思います。
 今般の法曹養成制度の改革は、法科大学院における教育を中核とし、これと司法試験、司法修習とを有機的に連携させたものでなければならないとされておりますが、今後、改正が予定されている学校教育法や司法試験法のみではそれぞれの法律の所掌との関係などもあって、そのような有機的連携等に関する施策の基本理念や関係機関、関係者の責務等について規定することは困難であると思われる点もあることから、本部事務局といたしましても、このような特別の法律の立案作業に着手する必要があろうかと考えております。
 具体的な立案作業についてはこれから着手することになりますが、この特別の法律にどのような内容を盛り込むべきかを現在検討しているところであります。現在のところ、この特別の法律は、法曹養成制度について関係機関や関係者のそれぞれの所掌や責任を前提に、それらをいわばブリッジして連携することを求めるという内容のものになろうかと考えており、仮に「ブリッジ法」などと称することができるかと思います。
 このいわゆるブリッジ法では、そのような法律を制定する目的や関係機関、関係者の連携についての基本理念などを定めた上、例えば法科大学院の制度を所管する文部科学大臣と司法試験の制度を所管する法務大臣との連携の在り方など、学校教育法や司法試験法のみでは規定しきれない部分を規定することになろうかと思われます。
 なお、このブリッジ法につきましては、与党三党の政策責任者会議などとの関係もあり、それらとの調整を十分に図りつつ、立案作業に着手する必要がありますので、次回以降の検討会でさらに具体的な報告をさせていただきたいと考えておるところであります。以上であります。

□ それでは、ただいまの文部科学省と事務局の説明につきまして、質問のある方はどうぞ。

○ 文部科学省の方は、3つの答申を出されているのですが、最初の1番目と2番目はいわば一般的な、法科大学院に限らず、広く適用されるものですね。3番目が法科大学院について特化したものだと思うのですが、これを法令化していくときに、1番目、2番目と3番目の関係についてどのようにお考えなのか伺いたいと思います。恐らく1番目、2番目は学校教育法とかそういうレベルで一般的な制度づくりをされるのだろうと思うのですが、法科大学院についての特別の規定もその中に設けられることになるのか、それともそういった一般的な制度を前提にしながら、法科大学院について特別の事項は下位の法令で対処するということなのか。その辺、まだお決まりでないのかもしれませんが、どういう構図になるのかということをお伺いしたいと思います。

● この問題につきましては、特に第三者評価の問題と、それから普通の大学院と専門職大学院と法科大学院と3層構造になっていますから、それをそれぞれどういう段階で規定していくかというのが今ちょうど検討中で、大分固まりつつあるわけですけれども、基本的に第三者評価については一般の大学全部について義務付けるということが書かれています。今までは自己点検評価をすることが義務付けられておりまして、外部評価もすべて努力するとなっていましたが、第三者評価を義務付けるというのがすべての大学にかかってきて、これは大学としての評価になります。学部が多くあっても、大学全体として評価を受けなさいということになります。
 では、その次に、専門職大学院、高度専門職業人の養成に特化した大学院制度についての第三者評価をどうするか、その中で法科大学院には特別に取り出す部分があるのかというのが今まさに詰めて検討しているところでございまして、専門職大学院と法科大学院については大学全体の評価に加えて、分野別の評価も義務付けることになると思います。
 ただ、その評価のサイクルなどをどの段階で書くのか、それは、普通の一般的な第三者評価と専門職大学院、法科大学院、それぞれごとにサイクルが違うのか、どの段階で規定するかというのは今まさに検討中ですけれども、できれば法律に規定しようと考えております。
 専門職大学院と法科大学院については、専門職大学院ということでカバーできる部分がかなりありますので、それはそれで一括して書いた上で、規定しきれない部分は特別に法科大学院について下位法令、政令、省令で規定する、さらにそこに法務大臣あるいは法曹関係者の参画といったものが出てくれば、今、事務局が言われましたようなブリッジ法の中で規定するものが出てくるのではないか、そういう整理になるかと思います。

○ ちょっと1点。サイクルというのは評価の時期の話なのですか。

● 何年に1回評価を実施するかなどですね。

○ そういうことですね。わかりました。

□ それは対象によって違っても構わないということですか。法科大学院は何年に1回とか、ビジネススクールだったら何年に1回とか。それも画一的に決める必要はあるわけですか。

● そこがまだ具体的に詰めているところなんですが、ただ少なくとも一般の大学全体の評価と専門職大学院とは違ってよいのではないかという感じは持ってはおります。

□ 法科大学院の場合、入学者選抜の問題等を、毎年チェックするということを前提に今まで議論してきたところがありますので、そういうところについてはかなり特殊な位置付けをしないと、一般的に専門職大学院は実はこうなっているからそれに合わせて法科大学院もやりなさいというのでは少し具合が悪いところがあると思われます。

● それは同感ですが、第三者評価は民間の団体が自ら評価基準を決めて評価するということになりますから、法律レベルでどこまで細かく規定できるのかという問題があると思いまして、それは具体的に詰める段階で関係省庁等とも御相談しながら具体化していく必要があると思っております。

□ そこのところは、「私のところは7年に1回です」「私のところは4年に1回です」というようないろいろな評価機関が立ち上がったりすると、具合が悪いので、複数の評価機関を認めるにしても、ある程度、その辺りは枠組みを決めないとやりにくいところがあると思います。

● それはおっしゃるとおりだと思います。

○ 先ほど事務局から、ブリッジ法というようなお話がございましたけれども、そういうところで法曹養成に関する基本理念のようなことについて触れられるのだろうと思われるので、そういう前提で、これから大きい司法といいますか、新しい社会的インフラを整備していくとなれば、人的にもお金の面でも相当の資源投入を国家的にやらなくてはいけないということは当然だろうと思います。
 そういうことを受けまして、経済的な面ではこの中教審の答申にもありますように、奨学金だとか教育ローンだとか、経済的負担が重くなる人たちに対して、国が支援する、真剣に勉強して優秀な成績を上げている人たちに対しては、親が金持ちでないと勉学が続けられないということがないように援助する責務があるとか、あるいは人の面でいいますと、中教審の答申にもありますように、現職の裁判官、検察官の法科大学院への派遣というのは現行制度の中では非常に難しい面があろうかと思います。しかし、これが何らかの形で実現されないと、法科大学院の教育が偏ったものになるということがあろうと思いますので、そういうことについても国なり、国のそれぞれの機関が積極的に協力する責務があるのだと、どこまでそれを具体的に規定できるかは別にしまして、そうした考え方というものをこのブリッジ法の中で頭出しといいますか、何らかの形で規定していただけたら、後々の指針として役立つのではないかと思います。ぜひお願いしたいと思います。

■ 御指摘いただきましたように、最も抽象的といいますか、基本的な理念という意味では、法曹も積極的に協力して、良い後継者、良い法曹を育てるという意味ではまさしく基本理念として規定すべき事項だと思います。さらにそれを具体化する施策の、「頭出し」と御指摘がありましたが、その部分をどこまでこのいわゆるブリッジ法に規定するかどうか、これは立案作業あるいはそれぞれの所掌の法律との関係が出てきますが、一番根本にある、法曹が良い後継者を育てるという意味では、まずスタートラインとしてはそれは確実に基本理念の中に入ると思われますし、それを国がバックアップする施策を講じるということも、これももちろん入ると思われます。その基本理念をどこまで具体的に、あるいは基本理念よりはさらに具体化されて、むしろ各所管の省庁あるいは所管の法律になるのかもしれませんが、基本理念という観点からどこまで規定できるかということがこれからの立案の課題になるかと思っております。

○ 最初に申しました経済的な面というのも、これは予算の制約もあり、こういう中でどこまで規定できるか、具体的に規定することが難しいということは分かりますけれども、そういう精神といいますか、国がそういうものを支援する責務があるということに何らかの形で触れていただけたらありがたいと思います。

○ これがブリッジ法に盛り込むべき内容かどうかというのは私もちょっと分からないのですが、この検討会の議論でも、あるいは中教審の法科大学院部会の議論でも、制度の成熟を見ながら柔軟に考え直していこうというような議論が随分あったのです。
 与党三党合意にもそういう趣旨のことが出ているようですが、それをどこか法律の中に組み込んだ形で、必ずやるのだということを明示できないかと思いますので、検討願いたいのです。

■ いろいろな制度をつくるときに、見直し条項というのが本則ではなくて附則に置かれることがあります。この場合、どのような規定振りとするかということになろうかと思いますが、テクニカルな面だけ切り取れば附則の見直し条項という対応も可能かとは思いますので、検討させていただきたいと思います。

○ この中教審の答申の69ページの「(8)第三者評価」の③の「第三者評価(適格認定)の結果を踏まえた措置」というところの中に、「改善勧告、変更命令、認可取消等」というふうに書いてあるのですが、今まで学校教育法上は認可取消という明文規定がなかったというふうに聞いているのですけれども、これから改正して、認可取消もあるということを明記されるという御趣旨なのですか。

● そういう趣旨でございます。今までは変更命令と閉鎖命令の2つしかなくて、かつ変更命令は私立学校には適用がないという状態でした。国立大学については別にそういう規定がなくても変更することができるわけですが、私立大学については閉鎖命令のみで手続規定もなく、実態としては、使えない伝家の宝刀のような規定だったわけです。それを改善勧告から、手続も法定化して実際に機能するようにしようということです。
 ただ、「認可取消」という言葉がどうなるかという問題がありますけれども、閉鎖命令というのは学校全体がなくなるという場合ですから、部分的に、ある学部ですとか、ある特定のカリキュラムがなくなるという場合は認可取消ということになるので、言葉の使い方はあるかと思いますが、この3つのタームについては法令上規定することになると思います。

○ 今の件なのですが、ちょっとよく分からないのですが、国が法科大学院の実態について何かするという規定が書かれているわけですか。具体的にどういうことになるのか、イメージが湧かないのです。
 つまり、文部科学省が委員会なり機関をつくって、そういうものを受け入れるというか、複数の第三者評価機関があって、AとかBとかいろいろつけて、一定以上、基準に著しく違反しているものがあった場合に、ある機関がそこについて調査を行うということですね。その機関は文部科学省の何か調査機関みたいな形の委員会になるのか、機関になるのか、何になるのか。「国が」というふうなこの規定振りだけでどういうことになるのか。もし具体的にそういうことについての検討が進んでいたら、教えていただけると分かりやすいかと思います。

● 文部科学省の行っています大学設置認可のシステムについての全体のイメージなのですが、「国が」と書いてありますけれども、これは文部科学省という行政機関の事務方が行うというわけではないのです。まず、大学をつくる場合には、基準をつくってそれに基づいて設置認可を行いますが、大学の先生方が集まる中教審の部会で基準をつくりまして、それを当てはめて設置認可を審議するのは大学設置審議会で、これもまた大学の先生で構成されている専門分野ごとの委員会でつくる、つくらないを決めます。法科大学院の場合は、そこに法曹関係者、法曹三者と企業関係者を含めて専門家が入って、基準をつくり、設置認可をするということになります。
 設置された法科大学院に対する第三者評価を実施するのは国家機関から離れた民間団体であります。第三者評価機関は一定の基準をつくって文部科学省等で認証するということになると思いますが、第三者評価機関の中の評価メンバーもやはり基本的に法曹関係者、大学の先生で構成されたメンバーになります。評価の結果、これはひどいということになると、適格認定しないというようなことになります。第三者評価機関が行った評価の結果は文部科学省に通知されることになっておりますから、そこから国が実態について調査するということになると思います。この調査というのは資料を収集したりということになるかと思いますが、その資料収集は文部科学大臣に対して大学から資料が来ると思うのですが、具体的にそれが法令違反状態に陥っているかどうかという事柄につきましては、基本的に大学設置審議会、今の設置審に諮ってそこで議論いただいて決めていくという形になるというのが全体のシステムと考えていただけたらと思います。

○ 結論として、勧告、変更も審議会が行うのですか。

● これを行うのは文部科学大臣の名前で行うと思います。

○ 設置審議会が文部大臣に報告するということですね。

● そういうことになると思います。その具体的な手続については、もう少し具体的に検討する必要があると思いますけれども、基本的に設置審議会が第一次的にその辺りを見るということになると思います。そこを全く抜きで文部科学大臣だけが見るということにならないと考えます。

○ 一番最初の私の質問に対して答えてくださったところに出たのですが、大学の質の保証に係る新たなシステムの構築というのは、大学全体について第三者評価という制度を導入していこうということですね。
 そこでは、第三者評価というのは、それぞれの評価機関が独自に定める基準で、大学の質の保証と教育研究活動の改善のために行うものである。そして、12ページに書かれていますけれども、それらの基準に達せず適格認定されなかった場合でも、そのこと自体を理由として国から行政処分を受けることはない。しかし,それとは一応、別個のものとして、14ページで法令違反状態のものについては、文部科学大臣が今言われたような措置を講じるということがあるというふうにされていますね。
 それに対して、69ページの方では、第三者評価機関から適格認定を受けられずに設置基準に抵触している疑いがあるなどの場合には、調査をし、その結果、法令違反状態が明らかになったものについては相応の措置をとるということにされているわけですが、この両者の関係はどうなるのか。違うステップを踏むということなのか、基本的には同じなのか、その辺をもう少し説明していただくと分かりやすいと思います。

● この辺りはもう少し法令の整理をしてみないと明確な違いがどの程度出るか分かりませんけれども、前者の場合は、まず第三者評価機関の評価制度とはリンクされていません。ですから、それは客観的にそういう事実があると認定した場合に発動されるシステムです。
 それに対して69ページの方は、第三者評価機関から適格認定を受けられなかった場合をまずメインに書いて、それについては調査するとなっていますから、ここは大きな違いだと思っています。

○ 前者の場合も、恐らく適格認定が受けられなかったということが事実上のきっかけにはなるかもしれないけれども、制度としてはそう組まれていない。後者の方は、恐らく当然に調査が行われるということですから、システムとしてリンケージが考えられているということなのでしょうか。

● はい。もう一つは、適格認定を行うということについても、法科大学院については適格認定を行うことになりますけれども、ほかの分野について適格認定を行うかどうかは未定でありますし、少なくとも今までの実績では、

○ですとかいうような判定は行っていません。ですから、ひょっとすると、全体を見て「まあまあ結構です」とか「頑張りましょう」とかいうような感じになる可能性もあるわけでございまして、そこはスタート時から違うと言えるかもしれません。

□ 法科大学院の場合は、適格認定によって、法科大学院修了と司法試験の受験資格を結びつけるということで議論してきていますから、最初から一般の話と少し違うところがあると思うので、その辺りはこれまでの議論の流れを踏まえて配慮していただいて、場合によってはこのブリッジ法の方を活用してしかるべき対応をしていただきたいと思います。
 学校教育法の改正もブリッジ法も、今から急いで検討していただくことになると思うのですが、本日はこのくらいでよろしいでしょうか。
 学校教育法の改正とか、事務局から説明がありましたブリッジ法の関係につきましては、次回の検討会で更に具体的な説明をいただくことを予定しております。それを踏まえて、また検討いただきたいと思います。
 本日は時間の関係もありますので、次の論点に移りたいと思います。

(2) 司法試験法の改正について

□ 引き続きまして、司法試験法の改正についての検討に移りたいと思います。
 まず、司法試験法の改正についての骨子案について事務局から説明をお願いします。

■ それでは、資料2「司法試験法の改正について(骨子)(案)」について御説明申し上げます。
 御説明が少し長くなりそうなので、半分ずつくらいに分けて御説明して、途中で御質問等をお受けしたいと考えております。
 この資料は、司法試験法の改正につきまして、当検討会での御意見を踏まえ、その規定振りなどについての法制的な検討内容をも考慮して作成したものであります。
 まず、今般の司法試験法改正の形式につきましては、現行司法試験法の一部改正によることといたしております。例えば、現行司法試験法の第1条第1項及び第2項は改正しないというような方針を考えております。この部分に限って申し上げますと、新司法試験も現行司法試験と同じく司法試験であることには変わりはないわけでありまして、その合格者から司法修習生を採用すると。第1条第2項の裁判所法第66条の試験ということになりますが、そういう位置付けには変わりはないということ、あるいは移行期間中においては、現行司法試験と新司法試験の双方を同じく司法試験として実施する必要があるということなどを考慮しまして、今回の司法試験法の改正は現行司法試験法の一部改正を段階的に行いつつ、移行期間経過後においては司法試験法で新しい制度のみを規定する形になるというような段階的な改正を目指しているものであります。改正の内容につきまして、順次この資料に基づいて御説明申し上げます。
 「1 法科大学院及び司法修習との連携
 司法試験は法科大学院における法曹養成のための教育及び司法修習との有機的連携の下に行うものとする。」
 新司法試験については、このような趣旨の規定を置くことを予定しております。これによりまして、新司法試験については法科大学院におけるカリキュラムや新しい司法修習の内容との連携を図る必要があるということになります。
 次に、新司法試験の内容について御説明申し上げます。
 「2 司法試験の方法・試験科目等
 (1)司法試験は、短答式(択一式を含む。)及び論文式の筆記の方法により行うものとする。
 (2)司法試験の合否は、短答式試験の合否に必要な成績を得た者につき、短答式試験及び論文式試験の成績を総合して判定するものとする。
 (注)短答式試験及び論文式試験を同時期に実施し、受験者全員が両試験を受けるが、短答式試験についてその合格に必要な成績に達しなかった者は不合格とする。」
 これは短答式試験と論文式試験はそれぞれ異なる能力を判定するものであるということを前提とするものでありまして、これまで検討いただきましたように、短答式試験の合格に必要な成績に達しなかった者については、論文式試験の答案を採点しないことができるという趣旨を含むものであります。
 その関係で、その下の(3)と(4)に記載しましたように、短答式試験と論文式試験においては、判定する能力が異なるということをそれぞれ規定することとしました。
 「(3)短答式試験
 裁判官、検察官又は弁護士になろうとする者に必要な専門的な法律知識及び法的な推論の能力を有するかどうかを判定することを目的とするものとする。」
 論文式試験については、
 「(4)論文式試験
 裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な専門的な学識並びに法的な分析、構成及び論述の能力を有するかどうかを判定することを目的とするものとする。」として、短答式試験と論文式試験とでそれぞれ判定する能力が異なるものであるということを規定することとしました。
 また、試験科目についてはここに記載してありますように、短答式試験は「①公法系科目(憲法及び行政法に関する分野の科目)、②民事系科目(民法、商法及び民事訴訟法に関する分野の科目)、及び③刑事系科目(刑法及び刑事訴訟法に関する科目)」とし、論文式試験につきましては「①公法系科目、②民事系科目、③刑事系科目及び④専門的な法律の分野に関する科目として法務省令で定める科目(1科目選択)とする」としております。この④の部分はいわゆる選択科目のことでありまして、基本法と異なるものであるという趣旨を明確にするために「専門的な法律の分野に関する科目」としました。
 「(5)短答式試験及び論文式試験の試験科目については、法務省令により、その全部又は一部について範囲を定めることができるものとする。
 (注)選択科目又は試験科目の範囲を定める法務省令を制定し、又は改廃しようとするときは、司法試験委員会の意見を聴かなければならないものとする。」としております。
 続いて(6)では「司法試験においては、裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を適切に評価する観点から、知識を有するかどうかの判定に偏することなく、理解力、思考力、判断力等の判定に意を用いなければならないものとする。」としました。
 続きまして、「3 司法試験の受験資格」であります。
 「(1)司法試験は、法科大学院を修了した者又は予備試験に合格した者が受けることができるものとする。
 法科大学院の修了者は、当該法科大学院を修了した日以後の最初の4月1日から5年を経過するまでの期間内に限り、3回の範囲内で司法試験を受けることができるものとする。
 予備試験の合格者は、当該予備試験の合格発表の日以後の最初の4月1日から5年を経過するまでの期間内に限り、3回の範囲内で司法試験を受けることができるものとする。」としております。
 これは5年に3回という受験回数制限を課す場合であっても、法科大学院の修了の日や予備試験の合格発表の日が毎年一律ではなくて、年によってずれるようなことがあり得ることから、5年の起算日を4月1日としたものであります。
 このように新司法試験につきましては5年に3回という受験回数制限を設けることとしましたが、法科大学院の在学者や修了者が予備試験を受験するなどして、複数の受験資格を取得することによって、例えば5年に5回、6年に6回、極端にいえば10年に10回とか、そういうように5年に3回という制限を超えて司法試験を受けることができるということになりますと受験回数制限を設けた趣旨が損なわれることになりかねませんので、一たび、司法試験を受験した場合には、その5年間は異なる受験資格では受験することができないこととして、5年に3回という制度の趣旨を徹底するための規定を置くことを考えております。
 すなわち(2)ですが、「法科大学院の修了者又は予備試験の合格者が(1)の期間内に司法試験を受けた場合においては、当該受験に係る受験資格(法科大学院の修了又は予備試験の合格をいう。)以外に他の受験資格を有するときであっても、その期間内は、当該他の受験資格に基づいては司法試験を受けることができないものとする。」としております。
 他方で、この5年に3回の制限にかかった場合には、後に受験資格を再取得しても、再受験を一切認めないこととするのは過度の制限であることから、再受験の制度を設ける必要があると考えられます。
 さらに、この受験回数制限は、現行試験には存在しない制度でありまして、再受験を認める要件を過度に厳しくする場合には、やはりこの受験回数制限の制度自体が不合理な制限であるとの指摘を受けかねないと考えております。
 そこで、受験回数制限にかかった者につきましては、5年に3回の制限を逸脱することがないようにするために必要な限度の制限を加えた上で再受験を認めることとしました。すなわち、(3)ですが、「法科大学院の修了者又は予備試験の合格者が(1)の期間内に司法試験を受けた場合においては、(1)の期間を経過した後であっても、当該受験に係る受験資格に基づく最後の司法試験の受験以後の最初の4月1日から2年を経過するまでの期間内は、司法試験を受けることができないものとする。
 (注)(1)の受験期間・回数制限に該当した場合であっても、(1)の5年の期間を経過し、かつ、最後の司法試験の受験から2年以上経過している場合には、他の受験資格に基づいて司法試験を再度受けることを認めるものである。これにより、受験者は、いずれの5年間においても3回の範囲内で司法試験を受けることが認められる制度設計となる。」としております。
 すなわち、これによりまして、一人の受験者がどの5年をとっても3回の範囲でしか司法試験を受けることができない。なおかつ、その範囲を維持しつつ、ほかに受験資格を取得すれば再受験を認めるという制度でありまして、5年に3回という受験回数制限が過度に制限的なものとならないようにするとともに、5年に3回の制限を逸脱する余地が生じることがないような制度設計としており、今般の受験回数制限が必要最小限の制限であると言うことができることになろうかと思っております。

□ では、ただいまの前半部分についての事務局の報告に対して、質問を含めて御意見がありましたらどうぞ。

○ 今の司法試験法ですと、口述だけ落ちた場合は翌年も受けられるというふうになっていますね。そういうような規定は設けない、つまり単一年度で全部合格しなければいけないという制度にするという趣旨ですか。短答式だけ受かった場合、それは全く1年限りのものにするということなのかということです。

■ 今のイメージとしては、合格発表は1回しかないということでございまして、段階的ではないものですから、そういう段階的な制度ではないということになります。

○ これは意見なのですが、そういうことが法文として良いのかどうかということはまた別の観点から検討が必要かと思いますけれども、現在の第1条を変えないということで、それから骨子の2の(6)というのがあって、これは現行法の第6条の第5項と第5条あるいは第1条と合わせたような規定だと思うのですが、これが更にある。これは新しい司法試験についての規定ということだと思いますけれども、それだとこの骨子の1で有機的連携の下の試験だということが書かれていたとしても、今の司法試験と同じイメージの試験ということになりはしないでしょうか。新しい法曹養成制度において、新しい司法試験というのは今までとは違う発想で行うのだということが司法制度改革審議会の意見書の基本でもあったわけですから、そのイメージが出るような条文をもう少し工夫した方がいいのではないか。
 その意見書を書かれた方が法文を前提として書かれているかどうかちょっと分かりませんけれども、意見書の72ページに「試験の方法及び内容」という項で、「司法修習を施せば、法曹としての活動を始めることが許される程度の知識、思考力、分析力、表現力等を備えているかどうかを判定することを目的とする」という一文があるのですね。こういうのを持って来ることによって、今までの司法試験と違って、改革審議会の意見書で言っているような新しい試験にするのだというイメージを出せないものか。特に今の骨子の2の(6)では今の条文を引いている関係で、「知識を有するかどうかの判定に偏することなく、理解力、思考力、判断力等の判定」うんぬんという書き方をされている。これはやはり知識を有するかどうかの判定がまず第一で、それにばかり偏していないで、理解力、思考力も見なさいという書き方だと思うので、やはり法知識のテストが中心かというイメージを与えかねないと思うのです。
 改革審の意見書の方ですと、知識、思考力、分析力、表現力というのは全く並列に並んでいますから、それは一つの要素だけれども、一つの要素に過ぎないという書き方でもあるわけで、その意味でもこちらの方がベターなのではないか。そうすることによって、今の論点ブロックの丸暗記というような試験対策が有効である試験ではないのだというイメージが出せるのではないかと思うので、その辺御検討いただけるかどうか、ちょっとお伺いします。

■ 立案作業の途中経過も含めて申し上げますと、(6)の前に(3)とか(4)で、短答式ではこのような能力を判定する、論文式ではこのような能力を判定するというふうに書いておりまして、それぞれこのような能力を判定する、しかも短答式と論文式は違う能力を判定する、これに尽きるのではないか。すなわち、(6)のように、現在の司法試験法第6条第5項のような規定は必要ない、削除すべきではないかというふうにも考えまして、法制的に検討し、あるいは内閣法制局とも協議したところ、現行の第6条第5項は、要は「知識を有するかどうかの判定に偏することなく」というところに意義があると、そういう試験方法についてこのような注意書きといいますか、趣旨を置くことに意味があると、そして、この新司法試験でもその点に意味があるのであれば残すべきであるということで、この部分を残しました。
 これは意見書と同じような表現ができるかどうかはテクニカルな点もあるのですが、ともかくどのような観点から判定するかということと、それから理解力、思考力、判断力というワーディングでこのような規定振りを考えたということで、むしろ短答式、論文式あるいは司法試験はこういう試験にすべきだという趣旨の規定でこれを置くものではなくて、「知識を有するかどうかの判定に偏することなく」という注意的な規定が今後も必要であるいうことで、これを置いたものであって、それはあえて要らないということであれば、この項自体を削除するということもあり得るのかもしれないのですが、そこは政策的な面も絡む、あるいは姿勢的な面も絡むので、御意見をいただきたいと思います。

○ 現行司法試験も新司法試験も司法試験であれば、それを法文上、どういうふうに規定するのか、ちょっと見当がつかないのです。例えば、ブリッジ法の対象になる司法試験というのは新司法試験だけであって、現行司法試験はその対象外なのだろうと思うのですが、そうすると司法試験1、2とするのか、例えば新司法試験を開始しても、現行は経過措置みたいなものに落としてしまうのか。いずれ、時の変遷とともに法律の規定も変わっていくのでしょうけれども、とりあえずスタート時に「現行」とか「新」とかいう言葉がなじむのかどうかということはいかがでございましょう。

■ 今の点でございますが、司法試験法については、平成23年を過ぎますと司法試験という場合は新司法試験を指すのだということで、その時点で法文上、「新」と書いてあることはないと思います。
 そうしますと、移行期間で両方ある場合に、司法修習生の採用の前提となる司法試験はどちらかと言われたら、これは両方である。そうしますと、23年以降の司法試験あるいは司法試験の合格者という場合、何を指すかというと、あえて旧といいますか、現行の司法試験に受かった人もその司法試験に合格したものとみなすという規定を置くのかと思います。途中は、今、御指摘があったように、附則等であえて「以下、旧試験という。」などという言い方をして、非常に複雑なことをやっていかないといけないということ、これはまだ非常にテクニカルに難しい点であるので、まだまだ詰めている段階ですが、司法修習生の採用については、司法試験の合格者を採用するということであって、どちらも司法試験ということに変わりはないという前提で考えざるを得ないのかなと思っています。

○ 応募用紙から何から「司法試験(旧)」とか、例えばそういうイメージになるわけですか。

■ どうなるか、改正前の規定による試験の願書というような形になるか、それは分かりません。
 先ほどの御指摘の関連でいいますと、例えば移行期間中の現行司法試験については現行法第6条第5項の「知識を有するかどうかの判定に偏することなく」は適用されます。新司法試験については、この条文は適用されないので、同じ趣旨の条文として今お示ししている(6)のような条文が要るかどうかという問題になろうかと思います。

○ 新旧以外に何か格好いい呼び名はないのでしょうか。司法試験というのは上位概念で、その下に2つの種類の司法試験があるという場合に、23年までは旧だ、新だというのはどうも。何か概念を分けるというとかえってまたややこしくなるんでしょうかね。第1種、第2種というと、これはまた何の意味かと思うでしょうし。

■ 法改正ですから、改正前の法律あるいは規定というのは、旧何々法という略称が多いわけです。もちろん、試験の場合は必ずしもそうではないという御意見もあろうかと思うのですが、あまり形容詞をつけても呼びにくいのかと思います。

○ 旧司法試験という言い方に落ち着くだろうということでいいわけですね。

■ そうですね。テクニカルには、それが一番多く用いられている例かとは思っております。

○ 先ほどの委員の指摘された点に関連してですが、現行司法試験法の定めを見ますと、第二次試験で判定するのは、裁判官、検察官又は弁護士に必要な学識及びその応用能力を有するかどうか、なのですね。したがって、第6条第5項で「知識を有するかどうかの判定に偏することなく、理解力、推理力、判断力等の判定に意を用いなければならない」と、両方で全体的にどういう力を見て、どういう観点で評価、判定しなさいということが分かるようになっているわけです。
 それにつきまして、この改正法の骨子によると、短答式と論文式のそれぞれで見る力、どこを判定するかを書き分けてクリヤーにしているわけですね。短答式では専門的な法律知識と法的な推論の能力を有するかどうかと、知識と推論の力は並列的に挙げられていますし、また論文式も専門的な学識、法的な分析、構成、論述とそれぞれ並列的に挙げられているわけですから、むしろ旧来の第6条第5項のような、「知識に偏することなく理解力、推理力、判断力等の判定に意を用いなければならない」という定めは、先ほど委員の御指摘とは逆の意味で、むしろこれをなくす方が整合的ではないかという感じもするわけです。
 そこで、事務局が言われたように、これもなくすことも視野に入れ得るということであれば、その点も含めて検討していただくことも十分考えられるのでないでしょうか。

■ 確かに現行司法試験でも短答式試験で知識のようなものを見ているし、今回の新司法試験でも短答式試験を実施することは変わりはないにもかかわらず、現行規定の第6条第5項で置かれている、あるいはこの(6)もそうですが、あえてこういうものを置く意味はあるのではないかという御意見も当然あるかと思います。知識に偏りがちな試験になるかもしれないので、そうではないようにしようという注意規定というか、そういう方針を定める規定というのがあえて必要かどうかということに尽きるのではないかという気はしています。

○ 私はどちらも成り立つと思うのですが、現行の規定でも要するに何を判定するかというのと、判定するときに何に意を用いるかということを書き分けているわけですね。それで、後者の方は意味を持っているはずなので、それが十分生きた試験になっているかどうかはまた評価があるところだと思うのですが、そういう意味では規定しておいて、その点に十分注意してもらうという意味はあるのではないかという気はするのです。
 要するに、実質的な基準として何に焦点を当てるのかということと、実施というか、判定の方法において、そういうところに意を用いると。この2段階で徹底するためにそういう規定を置いておく。そうすると、新しい意味付けとしてはあるのではないかという気もするのです。

○ それはそのとおりかもしれませんけれども、今のこの条文で今の試験が行われているという現実があるわけで、そうすると、そういうイメージを引きずったワーディングではないワーディングの方がいいのではないかというのが私の意見です。

□ この現行の司法試験法の規定は当初からあったわけですか。それとも途中で挿入されたのですか。

○ 問題をつくったり、採点している方としては、意を用いているわけです。ところが、そのような工夫では追いかけられないような現実が先行していて、その趣旨どおりにはなかなか結果としてはなっていないというだけで、趣旨は委員にはかなり意識されていると思うのですが。

■ 歴史的にみれば、大体理由が分かるような気がしますが、短答式試験を導入したときにこの規定を加えたということです。昭和33年です。

□ 新しく、2年経過したら再度受験できるという期間の問題が初めて出てきたのですが、その辺りはよろしいでしょうか。

○ 技術的な問題だと思いますけれども、どのコースをとっても5年で3回だというのは非常にフェアで、単純な発想なので、それを書くといろいろ難しいけれども、そういうことなのだと思うと、これが一番合理的なのではないかと思います。

■ 骨子の2(6)については、次回までにもう一度、検討したいと思います。ただ、先ほど申しましたように、知識を有するかどうかに偏することなくという、ワーディングはともかく、そういう思いがあるということ、それが全体の今度の改正法の中で規定を置くのが適切かどうかも含めまして、もう一回御報告申し上げたいと思います。

□ それでは、時間の関係もありますので、骨子案の後半部分について事務局から説明をお願いしたいと思います。

■ 続きまして、予備試験以下の関係でございます。
 4の「予備試験」というところです。
 「4 予備試験
 (1)司法試験を受けようとする者が法科大学院修了者と同等の学識、能力及び法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定することを目的とするものとする。
 (2)予備試験は、短答式及び論文式による筆記並びに口述の方法により行うものとする。」としております。
 予備試験は、法科大学院修了者と同等の能力等を判定する試験として、短答式試験、論文式試験、口述試験を段階的に実施することとしております。すなわち(3)以下ですが、
 「(3)短答式試験
 試験科目は、①憲法、②行政法、③民法、④商法、⑤民事訴訟法、⑥刑法、⑦刑事訴訟及び⑧一般教養科目とする。
 (4)論文式試験
 短答式試験に合格した者について行うものとする。
 試験科目は、短答式試験の科目及び法律実務基礎科目(法律に関する実務の基礎的素養(法律に関する実務の経験により修得されるものを含む。)に関する科目)とする。
 (5)口述試験
 筆記試験に合格した者について行うものとする。
 法的な推論、分析及び構成に基づいて弁論をする能力を有するかどうかの判定に意を用いるものとする。
 試験科目は、法律実務基礎科目とする。」としております。
 このように、予備試験においては基本法科目や一般教養科目のほかに、論文式試験と口述試験で法律実務基礎科目を設けて、法律の実務に関する基礎的素養を判定することとしております。特に口述試験におきましては、法律実務基礎科目のみを試験科目としておりますが、これは口述試験では法律的な知識を確認することを主たる目的とするものではなくて、受験者一人一回当たりの口述試験に時間をかけるなどして、受験者の基礎的素養を判定しようという趣旨でございます。
 なお(6)にありますように、「短答式試験、論文式試験及び口述試験の試験科目については、法務省令により、その全部又は一部について範囲を定めることができるものとする。
 (注)試験科目の範囲を定める法務省令を制定し、又は改廃しようとするときは、司法試験委員会の意見を聴かなければならないものとする。」としております。
 また、次の「5 合格の取消し等」につきましては、不正受験者に対する受験の禁止措置や合格の取消し等について、最近の立法令を参考にして規定振りを整理することとしました。朗読は省略いたしますが、(2)にありますとおり、不正受験者に対する受験禁止期間を最長で5年としており、他の国家資格試験の多くで定められております3年という期間よりも長い期間を定めております。
 続いて、司法試験管理委員会を改組した新しい委員会の関係について説明いたします。
 「6 司法試験委員会
 (1)設置(改組)
 司法試験管理委員会を改組し、司法試験委員会(以下「委員会」という。)を設置するものとする。
 (2)所掌事務
 委員会の所掌事務は、①司法試験及び予備試験を行うこと、②法務大臣の諮問に応じて司法試験及び予備試験の実施に関する重要事項を調査審議すること、③上記②の重要事項に関し法務大臣に意見を述べること、及び④その他法律によりその権限に属させられた事項を処理することとする。
 (3)委員構成
 委員は、裁判官、検察官、弁護士及び学識経験を有する者のうちから、法務大臣が任命するものとする。
 委員の任期は2年とし、再任されることができるものとする。
 (注)学識経験を有する者には、法科大学院関係者を含むものとする。
 (4)司法試験考査委員等
 委員会に、司法試験における問題の作成及び採点並びに合格者の判定を行わせるため、司法試験考査委員を置き、予備試験における問題の作成及び採点並びに合格者の判定を行わせるため、司法試験予備試験考査委員(以下「予備試験考査委員」という。)を置くものとする。
 司法試験考査委員及び予備試験考査委員は、委員会の推薦に基づき、当該試験を行うについて必要な学識経験を有する者のうちから、法務大臣が試験ごとに任命するものとする。」としております。
 このように、司法試験委員会につきましては、司法試験及び予備試験の実施主体であるのみならず、法科大学院関係者等の学識経験者も参加して、重要事項を調査審議し、法務大臣に意見を述べるなどの審議会的な事務も所掌することから、他の国家資格試験を実施する審議会や委員会と同様、いわゆる国家行政組織法第8条の機関として設置することを予定しております。
 なお、司法試験委員会の委員の人数につきましては、現在、関係機関と調整中であります。
 さらに「7 その他」としまして、「(1)この法律に定めるもののほか、司法試験及び予備試験に関し必要な事項は、法務省令で定めることとする。
 (2)いわゆる合格枠制に関する現行司法試験法第8条第2項及び第3項は、削除するものとする。」としております。
 これは、いわゆる受験回数の少ない者を一部優先的に合格させるという合格枠制を廃止するという趣旨でございます。
 そのほか、今般の司法試験法改正の附則で規定する施行期日や経過措置等との関係について説明いたします。
 「8 経過措置(附則関係)
 (1)実施時期等
 司法試験管理委員会は、平成16年1月1日をもって、司法試験委員会に改組するものとする。
 新司法試験は、平成18年から実施するものとする。
 予備試験は、平成23年から実施するものとする。
 現行司法試験は、平成22年まで実施するものとする(平成22年に実施される現行司法試験の論文式試験に合格し、口述試験に不合格となった者については、平成23年に現行司法試験の口述試験を実施するものとする。)。
 (2)同一年における新司法試験と現行司法試験の重複受験の制限
 平成18年から平成23年までの間は、受験者は、同一年においては、あらかじめ選択するところによって、新司法試験又は現行司法試験のいずれかのみを受けることができるものとする。」としております。
 一つ飛ばしまして(4)ですが、「(4)現行司法試験のみを受ける場合
 平成18年以降において現行司法試験のみを受ける者については、3回を超えて現行司法試験を受けることができるものとする。」
 これは、現行司法試験には受験回数制限が設けられていないこととの均衡などを考慮したものであります。
 最後に、その上の(3)について説明いたします。
 「(3)法科大学院の在学生又は修了者が現行司法試験を受けた場合
 法科大学院の在学生又は修了者が現行司法試験を受けた場合においては、当該修了の日以後の最初の4月1日から5年を経過するまでの期間内に限り、現行司法試験(法科大学院の修了前に受けた現行司法試験については、その修了前の2年間に受けたものに限る。)を受けた回数を含めて3回の範囲内で新司法試験を受けることができるものとする。
 (注)法科大学院の在学者又は修了者が現行司法試験を受けた場合に、これを受験回数制限の対象として算入する(法科大学院の修了前の受験については、修了前2年間の受験のみを算入する)ものである。」としております。
 法科大学院の在学生が現行司法試験を受験することについては、これを禁止すべきであるとの意見もあったところですが、法科大学院の在学生が現行司法試験を受験するということは望ましくないとは言えるものの、現行司法試験については受験資格が制限されていないということや、試験の受験申込みをした者が全国のどの法科大学院にも在学していないという事実を確認することは事実上不可能であると考えられることなどから、法科大学院の在学生が現行司法試験を受験した場合には、3回の受験回数制限にカウントされるというリスクを伴うということとしたものであります。
 なお、この回数制限にカウントされるのは、法科大学院の修了前の2年間に受けたものに限ることとして、それ以前、例えば法科大学院に入学する前における現行司法試験の受験については受験回数制限にカウントしないこととしております。
 簡単に申しますと、法科大学院に行きながら、現行司法試験を受けることによって、そして法科大学院の修了後は新司法試験を受けるということによって、5年3回の制限を実質的に逸脱するようなことを防ぐとともに、法科大学院に進学した者、あるいは修了した者については新司法試験の方を受けてもらおうという、そういう趣旨の規定でございます。以上でございます。

□ どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの事務局の説明に対して、質問も含めて御意見のある方はどうぞ。

○ 確認なのですが、新司法試験では第一次試験はなくなるということでよろしいのでしょうか。

■ 予備試験という、これは司法試験の外にあるというか、前提になるわけですが、予備試験はございますが、新司法試験の中に第一次試験を置くということはないということです。

○ 現在、大学卒でない人は第一次試験に合格すれば司法試験の第二次試験を受験できるわけですね。予備試験での教養というのはそれを意識されたのかと思ったのです。つまり、これは予備試験は大学を、教養課程を修了していなくても受けられると、そういう趣旨でよろしいわけでございますね。

■ はい、そういう制度設計でございます。

○ 前と同じ質問ですが、今度は段階的なので、そういうこともあり得るかという気もするのですが、予備試験を段階を追って、何年もかけて合格するということは想定されているのか、それともしていないのかという点はどうなんでしょうか。

■ 口述に不合格となった場合には翌年もう一回口述から受けられるというようなことは、しておりません。法科大学院修了者と同等の能力を判定するということは、短答式、論文式それぞれの場面において判定するということで、そういう趣旨からするともう一回来年口述だけ受けられるという制度に整合性があるかという点も考えまして、現行司法試験のような規定は置かないという判断をしております。

○ 少し趣旨を、確認させてください。
 5ページの(3)の、法科大学院修了前における現行司法試験の受験については、その修了前の2年間に受けたものに限り受験回数としてカウントする、法科大学院に入る前のはカウントしないということのようでしたが、例えば在学期間が長い場合はどうなのですか。

■ 「修了前2年間に受けた」ということで、在学とかそういうことは書いてございません。と申しますのは、いろいろな考慮があるわけですが、一つ、法科大学院の入学試験を受けた年に、実はその入学試験を受ける前に現行司法試験の短答式を受けて不合格となり、それで一念発起して、法科大学院の入試を受けて次の年に入学した人が、法科大学院在学中にも2回、現行司法試験を受けたという場合に、特に2年コースの場合、法科大学院入学前に受けたものまでカウントすると、法科大学院を出ても新司法試験が一回も受けられないということにもなりますので、2年の在学期間というコースがあるということも前提にしますと、ちょっと酷ではないかということがあります。
 それから、では3年コースはどうするかを考えた場合に、やはり3年コースの1年目に受けたら、それは3回の中にカウントするという御意見もあろうかと思うのですが、やはりそこは同じ問題で、在学していたかどうか、また在学していなかったことの証明という関係で、事実上チェックが無理になる、あるいは非常にチェックが困難になる、したがって一律に振り返って2年をカウントしようという考え方です。
 そして、本試験の方の再受験、敗者復活のような制度も、2年、間を空けていれば、次の新たな資格で再受験を認めるという制度になっており、2年空けるという要素も、その均衡等も考慮しまして、2年間空けていればいいという考え方です。
 結論からいいますと、法科大学院の在学中に現行司法試験を受けていても、修了後に一回は司法試験は受けられるという、そういうふうな制度になろうかと思います。

○ これも先ほどの御質問と似たような話になるのですが、予備試験については、与党三党合意で、特に、「予備試験には受験資格を設けないこと」も含めて「予備試験のあり方について更に検討すること。」とされています。この点については、いろいろこの検討会でも議論して、私も意見を申し上げたところなのですが、実際にどうなるかという問題があります。現状ではあのような意見の取りまとめになるとしても、実施状況を見て、特に予備試験の側に経済的に裕福で、社会経験のない人が殺到するというような事態になった場合にどうするのかというようなことも含めて、再検討の必要は、やはりあると思うのです。
 先ほど、附則にそういうものが入るのだという御説明でしたけれども、そういう規定を設けるお考えはないのかどうかという点はいかがでございましょうか。

■ 抽象的に、テクニカルな問題として申し上げますと、附則の見直し条項ということはもちろんあり得るわけであります。
 ただ、この場合、予備試験を見直すというのは、司法試験の中で見直すのか、法曹養成制度というものの中で見直すのか、そして予備試験のみを見直すのか、あるいは予備試験を含めた法曹養成制度のプロセスといいますか、特に司法試験の前後、法科大学院との関係を見直すのかというと、やはりブリッジ法の見直し規定の方が守備範囲は広いと思います。
 そして、あと、少しテクニカルな問題ですが、予備試験が始まるのが平成23年でありまして、普通、見直し条項は何年後に見直す、あるいは何年以内にということになりますが、予備試験のみ取り出した場合には、例えば、新司法試験法の施行から20年後に見直すというような規定にせざるを得ないかもしれません。やはり趣旨からしましても、ブリッジ法の方に置くのが自然というか、ふさわしいかと思いますが、ブリッジ法の立案もまだまだこれからなものですから、ちょっとその辺の事情を御理解いただければと思います。

○ 今、おっしゃった予備試験の受験資格の問題なのですが、社会的経験を有することを要件とすべきとの御意見もありますがどうも技術的にも難しいし、与党三党合意でも、いろいろな御意見があるということだと思います。
 そうすると、入り口で制限するのではなくて、試験の中身を工夫して、社会的経験を積んだ人が合格するような試験にするという方をやはり目指すべきだと思います。
 それからいいますと、この骨子案が「法律に関する実務の基礎的素養(法律に関する実務の経験により修得されるものを含む。)」とし、あるいは口述試験は法律実務基礎科目だけにするというふうなところに、そのような工夫といいますか、そのような意図が出ているのではないかと私は理解しているのですが。

□ それはこの検討会での意見を踏まえて、こういう形になったのですが、まさにただいまの委員が以前におっしゃった趣旨を何とかして入れたということです。

■ 具体的には、前も申し上げましたように、法科大学院において、実務基礎科目として教えられる内容のものと同等ということですから、それが一番参考になろうかと思います。
 ただ、括弧として「法律に関する実務の経験により修得されるものを含む」という書き振りになった趣旨は、法科大学院に行っていなくとも、実務の経験があれば修得できるというものですよという意味です。語尾が難しいのですが、法制的に検討したところ、「含む」が一番いいのではないかということです。実務の経験により修得されたものだけをいうとなれば、今度は法科大学院における教育内容と離れることになりますので、これは法科大学院でコンパクトに得られるけれども、ある程度以上の期間の実務の経験によっても得られるという趣旨でこのような規定振りになったということでございます。

□ 口述試験に関しても、今回、法律実務基礎科目に限定するという表現になっているのですが、それはよろしゅうございますでしょうか。

■ 先ほどの現行司法試験を在学生が受けた場合の措置については、お諮りするのは本日初めてなので、御確認というか、御了解を得たいと思っております。
 つまり、先ほども御説明申し上げましたように、禁止するのが筋という御意見もございます。一方、そうは言っても現行司法試験はもともとだれでも受けられたはずだという意見もあるのですが、いずれにせよ、これはかなり政策的な経過規定でありまして、現行司法試験を在学生が受けた場合は修了してもかなり制限を受けるということになります。もし御異論あるいは御意見がございましたら、この機会にお伺いしたいと思います。

□ 先ほどの委員がおっしゃったことに少し関係するのですが、法科大学院在学中に現行司法試験を2回受けて受からなかったというので、2年間留年して修了し、新司法試験の受験資格を取得した場合、修了後すぐに3回受けられるという可能性はあり得ますね。

○ そういう留年を認めるかどうかということの方が大きな問題だと思いますね。厳正な成績評価の問題で、そういうことを認めてよいのかどうかだと思います。

■ 立案作業の関係で、ポリシーとしてはこれでよろしいかをお諮りしたいと思います。

○ 結構だと思います。

○ 違う問題について質問してよろしいですか。
 司法試験委員会についてちょっと質問したいのですが、(2)の所掌事務の、②と③の関係なのですが、②では諮問に応じて調査審議するとし、③では上記②の重要事項に関し意見を述べるとなっていますね。ということは、諮問がない限り、この委員会は意見を述べられないという仕組みになるということなのでしょうか。

■ 規定振りはまだ整理中ですが、「実施に関する重要事項」と書きましたので、実施するのはそもそも委員会なわけですから、恐らく実施に関する限度では委員会自身が実施主体でありますから、そうするとそれ自体は具体的な諮問を必要とせず、つまり、新たな政策決定部分以外は意見を述べることができるのではないかと思われます。
 つまり、実施主体として、実施に関する事項については意見を述べるということで、これは読めるのではないかと考えております。

○ 確認なのですが、そうすると「上記②の重要事項」のこの「上記②」というのは、「法務大臣の諮問に応じて」というところは受けていない、「司法試験及び予備試験の実施に関する重要事項」というのは、「上記②の重要事項」だと、こういうことなのですか。

■ 実質は、今の委員の御指摘どおりと思いますが、更に法制的な検討をさせていただきます。

○ それは委員会の性質という点からということですね。

■ はい。法制的な検討ということで、実質は実施主体ですから、自ら意見を述べるのは当たり前なものですから。

○ 司法試験委員会の構成について書かれているのですが、大体、どのくらいの規模のものを考えておられるのか。それと、具体的な数字というのはまだ詰められていないのかもしれませんが、いわゆる法曹三者とそれ以外の人とのバランスはどういうものとしてイメージされているのか、その2つについてお教えいただきたいのですが。

■ 一般的な審議会等の考えからいいますと、裁判官、検察官、弁護士といういわゆる法曹三者、関係者といいますか、そういうものが過半数にならないようにする必要があるのではないかと思われます。そうしますと、例えば、法曹三者1人ずつの3人と、学識経験者4人で、7人というところが考えられるのではないかと思っております。
 ただ、過半数ルールが適当かどうかは分かりませんが、一応、こういった規定振りとしますと、やはり「及び」の前が3なら、後ろが4かというのが一般的イメージとしては考えられるというところです。
 これは、先ほど申し上げましたとおり、関係機関との調整が必要でありまして、ペンディングになってございます。

□ ほかに何かございますでしょうか。

○ (4)で考査委員が合格者の判定を行うと書かれていますね。今、司法試験管理委員が、3人集まって合格者を判定しているのですが、それは今度はこの司法試験委員会ではやらないということなのですか。

■ 現行法の第8条第1項を御覧いただければわかると思いますが、「司法試験の合格者は司法試験考査委員の合議によつて定める」ということで、要は実際にこの人を合格させるかどうかは考査委員の合議によって定めるということで、それを引き継ごうという発想でございます。
 ただ、今回やはり考査委員が何をやるかといいますと、問題の作成、採点、当然今やっている業務とそれに合格者の判定ということになろうかと思います。今、御指摘の点については、例えば短答と論文をどのような比重で総合して評価するかというような、合格者決定のポリシーに関することは委員会の所掌かと考えております。

○ これも形式的なことですけれども、司法試験の合格証書は試験を実施する委員会の委員長が発行するわけですか。

■ そういう例もあろうかと思いますが、例えば法務大臣という名前で可能かどうかも少し検討させていただきたいと思います。

○ 今までしたら、司法試験管理委員長でしたね。考査委員が合格を決めるけれども、試験を実施する主体が発行するのかと思っただけなのですが。

■ この仕組みでいきましても、合格の決定を行うのは委員会かと思います。考査委員というのは事実行為といいますか、この人は合格というだけであって、その作業を受けて決定する権限は委員会にあるものと考えております。

□ ほかにございますでしょうか。
 なければ、若干、新しくつけ加わったところもございますけれども、基本的にはこれまでの検討内容を踏まえた司法試験法の改正になっております。ただ、引き続き、立案作業の中で検討する必要がある事項があると思いますので、その点につきましては事務局において更に検討していただいて、次回の検討会で報告をいただいて、また検討していただくことにしたいと思います。

(3) 司法修習の期間について

□ 次に、司法修習期間の問題につきましては、これまでの検討会におきましては1年程度に短縮する方向で関係機関において引き続き検討していただくことにしておりましたが、この点について事務局の立案作業との関係はどうなっておりますでしょうか。

■ 司法修習期間の短縮の問題について若干御説明と御報告あるいはお諮りしたいと思っております。
 新司法試験実施後における司法修習の期間につきましては、これまで当検討会におきまして、1年程度に短縮する方向で検討するということとされておりました。事務局における立案作業との関係では、修習期間について少なくとも1年6か月間と規定している現在の裁判所法第67条第1項の規定を改正するかどうかという点が問題となります。
 本日、御説明申し上げましたとおり、この秋の臨時国会に向けて、司法試験法の改正に加えまして、法科大学院における教育と司法試験及び司法修習との有機的連携の確保等について規定する、いわゆるブリッジ法を立案するということを予定しておりますことから、これらとあわせて司法修習に関する事項のうち、法律で規定されている司法修習の期間という点についても、法改正を行うのが適切ではないかと考えられるところであります。
 また、裁判所法改正を行った場合でも、平成18年から平成22年ころまでのいわゆる移行期間中における司法修習の期間については、司法修習の期間を少なくとも1年間とするような法改正の趣旨を踏まえつつ、修習の方法を工夫した上で、柔軟に運用することが可能ではないかと考えているところではあります。
 そのような点も考慮しつつ、この秋の臨時国会に向けて、裁判所法の改正について、立案作業に着手したいと考えているところではありますが、法曹関係者の検討状況あるいは当検討会での御意見を踏まえまして、先ほど申し上げましたように、司法試験法あるいはブリッジ法と一緒に改正案を提出するのか、あるいは司法修習期間についての裁判所法の改正をもう少し先に延ばすのか、その点について御検討あるいは関係者の御意見を伺えればと考えているところでございます。

□ この点については、これまでも何度か御議論いただいたわけでございますけれども、今の事務局の報告に対する質問も含めて御意見がありましたら、お願いいたします。

○ この秋の国会に司法試験法、ブリッジ法を提出して、その一連のものである裁判所法を出さないという理由がちょっとよく分からないといいますか、検討状況がまだ詰まっていないということだったら、急ぎ、検討を詰めなくてはいけないわけですけれども、その意味では十分検討はして、それが望ましいかどうかはそれぞれ意見はあっても、「1年以上」ということであればやむを得ないのではないかと思います。少なくともそういう了解には達しているのではないかと思うのです。それからしたら、これだけを後送りするという格別の理由はないと思うのです。

■ 法改正を行うとして、司法修習の期間をどうするか、1年程度に短縮するという方向になっているというところまでは、法改正するに際しては説明ができるのですが、1年程度といいますか、1年以上としたときに、中身をどうするかという点について、この場では法曹関係者の検討を待とうということにしておったと思うのですが、その検討状況がなかなかいただけない部分もまだあります。もちろん、先ほどの委員がおっしゃったように、来月までに詰めてもらうというお願いをすることも可能かとは思いますが、現実的に可能かどうかという点もございます。
 1年程度に短縮するという当検討会の御趣旨を踏まえまして、関係機関において検討中であるということから、それをいま少しお待ち申し上げるというのも考えられるということであります。
 ただ、1年に短縮するという法改正をしても修習内容の検討はできることはできるのではないかとも考えられ、9月にあと1回、2回、検討会が入っていますので、そのときに関係機関からこの段階での御意見をいただくことにするということも本日の検討会の御意見としてあり得るのかということでございます。

○ いずれにせよ、説明をするときに、どちらの方が分かっていただきやすいかという話で、法科大学院制度をつくり、司法試験も変えると、そのときに、三位一体であるはずの司法修習がどうなるのかというところがないと、全体がやはり完成しない。どうなっているのだという疑問をやはり抱かれると思うのですね。そちらの方が主になるのか、いや、1年にするのだと言ったけれども、今言われたように、中身はどうなるのだといったときに、中身が詰まっていないで説明できるのかと、そのどちらなのかという話だろうと思うのです。
 いずれにせよ、それはもう時間の問題だろうと思うのです。それを今度に間に合うような形で中身もある程度概要がわかるような形に盛り込めるかどうか、そういう話かという気はするのです。
 もし待つとしても、それはかなりはっきり、いつまでに検討して結論を出しますということでないと、ちょっと説明がつかないのではないかという感じがします。

□ いかがでしょうか。

○ 出す場合には、1年ではなくて「少なくとも1年」という書き方になるのですか。

■ そこはちょっと留保させていただきたいと思います。例えば「1年6か月を超えない範囲で何々で定める期間」とか、あるいは「1年を下回らない範囲で」とか、いろいろな決め方はあろうかと思うのですが、ただいずれにせよ、そのような言い方をする前提としても、大まかなカリキュラムといいますか、司法修習の内容が詰まっていないと、白紙委任はできないと思います。
 ある程度余裕を持たせる法改正もテクニカルには可能かもしれませんが、それは例えば移行期間中は少し余裕が欲しいとか、何らかの合理性がないと無理だと思いますので、一番やりやすいのは、スパッと1年あるいは1年何か月でいくということであれば、「少なくとも」というのも要らないくらいの法改正ができれば、一番楽なわけですが、そこは法制的に検討する余地はあろうかと思われます。

○ 修習の中身ということもありましょうけれども、これだけ法改正を行って、修習についてだけ積み残しというのがどうも何かみっともない気がしますので、もしそれを詰める、秋の法改正までに詰める必要があるんだったら、これは至急詰めなくてはいけないし、あるいは内容と期間とは切り離す、あるいは1年という前提の中で、これから内容を詰めていけるということであれば、これはこれで法案を提出できるのではないでしょうか。
 その辺、いろいろ御検討いただければいいと思いますけれども、この話だけまだ決まっていませんから積み残しますというのは、少し見識がないような気がするのです。

■ 修習の問題、これは一体だと理解しておりますが、それでも、修習生の給費制の問題は残るのです。
 中身が決まらないで御理解を得るというのは修習期間の短縮についても、難しいので、そこはどれだけ成熟度をもって詰まるかということいかんによって決まってくるということでございます。

□ 確かに中身の問題はございますけれども、1年程度に短縮しようというのも大体コンセンサスとしてはあるわけで、今、事務局がおっしゃったように、確かに給費制の問題は別になりますが、修習期間の短縮は、できればパックにした方が説明はしやすいと思います。

■ 本部事務局の立案担当者の立場としましては、これまでの司法改革の流れがございまして、法曹三者のコンセンサスが得られないから改革ができないということは通らない話でありまして、そういう法曹三者でまとまらない部分を審議会のような形式あるいはこの検討会のような形式で、法曹三者以外のお知恵も借りて、改革を進めようということでありますので、中身が詰まらないのはコンセンサスが得られないからだというと、コンセンサスができるまで法改正はずっとできないということになり、そのようなロジックは通らないと思います。
 そうしますと、先ほど御意見もありましたように、いつまでに決めると。法曹三者と担当者にお任せするにしても、合意が得られないから改革ができないというのは困ります。しかし、現状認識としては決してそういうことではなくて、法曹三者、それぞれ熱心にお話ししながらまとめる方向で進んでいると理解しております。
 したがって、9月にもう一回関係機関の御意見を伺えればと思っております。

□ これは、最高裁が直接的には関係していらっしゃるわけですね。
(最高裁判所) 私どもは意見を申し上げる用意はございます。またそれぞれ連絡をとってございますので、そういうものを踏まえて、そういう機会を与えていただければと考えております。

□ 関係機関それぞれから意見をいただきますか。

■ 日程的に、9月18日は少しきついという関係機関もございまして、9月30日まで最終的な御意見というか、お考えを説明していただく機会が延びる機関もあるように聞いております。

□ では、この点につきましては関係機関それぞれに御意見を伺うこととします。期間についてはある程度のコンセンサスがあるわけですから、それに沿った中身をつくっていただいて、できるだけパックにして改正法案を出すように準備を進めていただいたらと思いますので、よろしくお願いいたします。
 ほかに何かございますでしょうか。
 なければ、本日の検討会はここまでにさせていただきたいと思います。

8 今後の予定

□ 次回の検討会ですけれども、先ほど事務局から紹介がありましたように、この司法試験法のほかにいわゆるブリッジ法についても立案するという方向になりましたことから、9月の検討会を1回追加して開催することにしたいと思います。次回は9月18日(水)午後3時から、場所は本日と同じくこの会議室で行いたいと思います。次回も本日に引き続きまして、司法試験法の関係のほか、いわゆるブリッジ法につきまして、立案作業の状況などを報告いただいた上で検討したいと思います。
 本日はどうもありがとうございました。