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法曹養成検討会(第12回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日時
平成14年9月18日(水)15:00〜17:00

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)田中成明座長、井上正仁、今田幸子、加藤新太郎、川野辺充子、川端和治、木村孟、ダニエル・フット、永井和之、牧野和夫(敬称略)
(説明者)小池裕・最高裁判所事務総局審議官
(事務局)山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、片岡弘参事官

4 議題
(1)法曹養成に関する法律について
(2)司法修習の期間について
(3)司法試験法の改正について

5 配布資料
資料1  法曹養成検討会(第11回)議事概要
資料2  法曹養成に関する法律について(立案の方針)(素案)
資料3  司法試験法の改正について(骨子)(案)

6 説明資料(最高裁判所)
・ 新しい司法修習の内容等について

7 議事
 (□:座長、○:委員、■:事務局、●:最高裁判所、▲:文部科学省)

(1) 法曹養成に関する法律について

□ それでは、所定の時刻になりましたので、第12回の法曹養成検討会を始めたいと思います。
 まず、検討に先立ちまして、事務局から本日の配布資料の確認をお願いいたします。

■ それでは、本日の配布資料の確認をお願いいたします。
 配布資料1は「法曹養成検討会(第11回)議事概要」でございます。
 資料2は「法曹養成に関する法律について(立案の方針)(素案)」であります。
 資料3は「司法試験法の改正について(骨子)(案)」でございます。
 前回の骨子案を若干修文したものでございます。そのほか、机上には最高裁の説明資料として、「新しい司法修習の内容等について」というものをお配りしております。
 以上でございます。

□ それでは、引き続き検討に入りたいと思いますけれども、本日はまず法曹養成の理念などを定める法律について、検討を加えることにしたいと思います。この法律につきましては、前回事務局から説明があったとおり、学校教育法と司法試験法などを言わばブリッジする法律ということができるかと思いますが、現時点における立案作業の状況などについて、事務局から説明をお願いします。

■ それでは、配布資料2の「法曹養成に関する法律について(立案の方針)(素案)」を御覧ください。
 この資料は前回、いわゆるブリッジ法として御説明申し上げました法律案につきまして、現時点における立案方針として、検討しているところをお示ししたものであり、具体的な規定振り等につきましては、今後、法制的及び技術的な観点からの検討を更に加えることとしております。
 まず、法律名についてでありますが、上から2つ目の○のところに記載しましたとおり、「法律名については、法曹養成のための法科大学院の教育と司法試験等との有機的連携の確保等に関して規定する法律である旨を示すことを検討する」としております。
 これは司法試験法や学校教育法の改正に加え、この法律を制定する意義を端的に法律名で示そうとする趣旨であります。すなわち、新たな法曹養成制度においては、法務省や文部科学省などのそれぞれの所掌事務を前提としつつも、それらを言わばブリッジした有機的連携を確保することが必要であり、そのためにこの法律を制定するという趣旨を示す法律名とすることを検討しているところであります。
 以下、この法律で規定することを予定しております事項について、1〜7までに記載しております。
 「1 目的」については、
 「○ この法律は、法曹養成の基本理念、法曹養成のための中核的な教育機関としての法科大学院における教育の充実、法科大学院における教育と司法試験及び司法修習との有機的連携の確保に関する事項等の基本となる事項を定めることにより、高度の専門的な能力及び優れた資質を有する多数の法曹の養成を図り、もって司法制度を支える人的体制の充実強化に資することを目的するとの趣旨を規定する」としております。これはこの法律を制定する目的を端的に規定したいと考えたものであります。
 次に「2 基本理念」につきましては、「○ 高度な専門的な法律知識、幅広い教養、国際的視点、豊かな人間性及び職業倫理を備えた多数の法曹が求められていることにかんがみ、法曹養成は、国の機関、大学その他の法曹養成に関係する機関の密接な連携の下に、法曹養成のための中核的な教育機関としての法科大学院において、各法科大学院の創意をもって、入学者の多様性の確保に配慮した公平な入学者選抜を行い、少人数による密度の高い授業により、将来の法曹としての実務に必要な学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を涵養するための理論的かつ実践的な教育を体系的に実施した上で、厳格な成績評価及び修了の認定を行うとともに、このような法科大学院における教育との有機的連携を確保した司法試験及び司法修習を実施することを基本として行われるものとするとの趣旨を規定する」としております。
 これは司法制度改革推進法の規定振りなども参考にしつつ、我が国社会において求められている法曹を養成するためには、法科大学院において充実した教育が行われるとともに、法科大学院における教育との有機的連携を確保した司法試験及び司法修習を実施することが必要であるとの基本理念を明らかにしようとするものであります。
 「3 国の責務」については、
 「○ 国は、法曹養成の基本理念(上記2の基本理念をいう。以下同じ。)にのっとり、法科大学院における教育の充実並びに法科大学院における教育と司法試験及び司法修習との有機的連携を図る責務を有するとの趣旨を規定する。
 ○ 国は、法曹養成が国の機関、大学その他の法曹養成に関係する機関の密接な連携の下に行われることを確保するため、これらの機関の相互の協力の強化に必要な施策を講ずるものとするとの趣旨を規定する。
 ○ 国は、法科大学院において将来の法曹としての実務に必要な学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を涵養するための教育が行われることを確保するため、法科大学院における法曹である教員の確保及び教員の教育上の能力の向上のために必要な施策を講ずるとともに、関係する審議会等における調査審議に法曹である委員を参画させるものとの趣旨を規定する。
 ○ 国は、法科大学院における教育に関する施策を策定・実施するに当たっては、大学における教育の特性に配慮しなければならないとの趣旨を規定する」としております。これは法曹養成の基本理念にのっとって国が所要の施策を講ずる責務を有するとの趣旨を規定しようとするものであります。
 「4 大学の責務」については、
 「○ 大学は、法曹養成の基本理念にのっとり、法科大学院における教育の充実に自主的かつ積極的に努めるものとするとの趣旨を規定する」としております。これは大学の責務について規定する同種の立法例を参考にしつつ、このような規定振りとすることを検討しているものであります。
 「5 法科大学院の適格認定等」については、
 「○ 文部科学大臣は、法科大学院についての評価を行う者に係る認証の基準を定めるときは、その者の定める評価基準であって法科大学院に係るもの(以下「法科大学院評価基準」という。)の内容が法曹養成の基本理念を踏まえたものとなるよう意を用いなければならないとの趣旨を規定する。
 ○ 文部科学大臣の認証を受けた評価機関(以下「認証評価機関」という。)が行う法科大学院についての評価においては、法科大学院の教育研究活動等の状況が法科大学院評価基準に適合しているか否かの認定をしなければならないとの趣旨を規定する。
 ○ 大学は、その設置する法科大学院の教育研究活動等の状況について法科大学院評価基準に適合している旨の認証評価機関の認定(以下「適格認定」という。)を受けるよう、その教育研究水準の向上等に努めなければならないとの趣旨を規定する。
 ○ 文部科学大臣は、法科大学院について評価を行った認証評価機関からその結果の報告を受けたときは、遅滞なく、これを法務大臣に通知するものとするとの趣旨を規定する。
 ○ 文部科学大臣は、大学がその設置する法科大学院の教育研究活動等の状況について適格認定を受けられなかったときは、大学に対し、報告又は資料の提出を求めるものとするとの趣旨を規定する」としております。
 これは今般、改正が予定されております学校教育法の規定振りを前提としつつ、更に学校教育法は、大学一般について規定するものであり、必ずしも適格認定を行うという制度設計にならないことなどをも考慮して、特にこの法律で、法科大学院については適格認定という制度を設けるということを規定することとしたわけであります。
 「6 法務大臣と文部科学大臣との関係」については、
 「○ 法務大臣及び文部科学大臣は、法科大学院における教育の充実及び法科大学院における教育と司法試験との有機的連携の確保を図るため、相互に協力しなければならないとの趣旨を規定する。
 ○ 文部科学大臣は、次に掲げる場合には、あらかじめ、その旨を法務大臣に通知するものとし、この場合において、法務大臣は、文部科学大臣に対し、必要な意見を述べることができるとの趣旨を規定する。
 ・法科大学院に係る設置基準を定め、又はこれを改廃しようとするとき。
 ・法科大学院についての評価を行う者に係る認証の基準を定め、又はこれを改廃しようとするとき。
 ・法科大学院についての評価を行う者を認証し、又はその認証を取り消そうとするとき。
  ○ 法務大臣は、特に必要があると認めるときは、文部科学大臣に対し、法科大学院について、学校教育法に規定する報告若しくは資料の提出、又は同法に規定する改善勧告その他の必要な措置を講ずることを求めることができるとの趣旨を規定する。
 ○ 文部科学大臣は、法科大学院における教育と司法試験との有期的連携を確保するため、必要があると認めるときは、法務大臣に対し、協議を求めることができるとの趣旨を規定する」としております。
 やはり学校教育法の今般の改正を前提としつつ、法科大学院の修了者に司法試験の受験資格が付与されるほか、法科大学院における教育の充実が法曹養成の在り方と密接な関係にあることなどを考慮しまして、法務大臣と文部科学大臣との連携関係を規定したもので、いわゆるブリッジ法を制定する具体的必要性を端的に示す規定と考えております。
 「7 いわゆる見直し条項(附則関係)」については、
 「○ この法律の施行後十年を経過した場合において、法科大学院における教育、司法試験及び司法修習の実施状況等を勘案し、法曹養成に関する制度について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとするとの趣旨を規定する」としております。
 なお、この法律の施行後10年としたのは、この法律が平成15年に施行されるとしましても、司法試験予備試験が実施されるのは平成23年でありまして、それまではいわゆる移行期間であることから、法曹養成制度についての更なる見直しは、その移行期間経過後とすべきであると考えたものであります。
 以上が、現段階における立案作業の状況であります。

□ ありがとうございました。まず、今の事務局の説明について、質問のある方はどうぞ。後で御意見もお伺いしたいと思いますが、まず、御質問がございましたら、お願いします。

○ 国の責務についてですけれども、この1番目の○に「法科大学院における教育の充実」というのが国の責務として入っていますね。これは具体的にはどのようなことを国がするということになるのでしょうか。

■ 一つは、大学に関しては、法令レベルないし省令レベルでは設置基準などというものがございますが、そのような制度面において充実を図るような方策を講じるということが一番であろうと考えております。
 それから、運用面と申しますか、行政面における国の施策として充実のための方策を講ずるということもあろうかと、そういう意味では人的・物的な充実が運用面での中心になろうかと考えております。

□ ほかに何かありますでしょうか。意見も含めてお願いいたします。

○ 今のところですけれども、人的・物的な充実という場合に、国の財政的な問題などもかなりこの中に含まれているということですか。国の責務というのは。

■ 当然、必要な財政措置という意味では含まれています。

○ もう少しその辺りを明確に打ち出すということはできないのですか。

■ それはこの法律の目的、つまり有機的連携の確保を図る、あるいは法曹養成全般の基本理念を踏まえて有機的連携を図るという範囲内で、具体的にどこまで、施策が考えられるか、それに応じてどういう規定振りにするかということだろうと思いますので、大学行政、文部科学行政一般の中で充実という場合と、いわゆるブリッジ法に規定する場合で趣旨が違う部分があると思われます。

○ 「並びに」というところの前と後ろは、前の方でも有機的連携との関係で教育の充実ということなのですか。

■ 教育の充実を図った上で、その教育との連携ということでございます。

○ というのは、今度の司法改革というのは、ある意味では我が国の非常に大きな司法変革の中の、ある意味では一つのインフラ整備のようなもので、そこにおいて人材を供給していくということも大きな問題で、この10年間というのは、多分、その後、10年以上経ったときにはまたいろいろ出てくるでしょうけれども、最初の10年間というのは、かなり大きな変革であり、かつ、一般の学生たちにとってみれば非常に大きな経済的負担も出てくる問題であるから、その10年間の、見直しの前までは、少なくともかなり大幅な国の財政的なてこ入れ等を明文化しておくこともあり得るのではないか。それで10年経ったときに見直すというのはまだ分かるのですが。

■ 御指摘はごもっともでございますが、私どもの理解としましても、今の点については、司法制度改革推進法で既に規定されている部分がありますので、あえてそれとは別に、有機的連携を図る観点から何か具体的な規定を置く必要があろうかという点は検討すべきかもしれません。

○ この検討会の議事概要を読むと、前回も同じような意見が委員の中から出ていて、それを踏まえて今回こういう案が出されたと思っているのですが、その辺りがどこまでここへ具体的に、文言的に反映しているのかというのが少し気になったのです。

○ 今、言われている点は、非常に重要だと思うのです。確かに司法制度改革推進法の第6条に、「必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない」という極めて抽象的な規定はあるのですが、法科大学院そのものについて基本理念を明らかにし、ある程度その内容も明らかにした法案の中に、有機的な連携とか機関相互の協力とか、非常に具体的な措置が幾つか列挙されているのに、財政的措置の規定がないと、何となく司法改革全体では財政措置は必要なのだけれども、法科大学院については、それはあまり必要ないと言っているようにも見えてしまうのです。その部分が法科大学院における教育の充実という極めて抽象的な言葉だけというのでは、現在の財政状況を考えると、不安が残らざるを得ないということになるのではないかと思うのです。これだけ具体的な国の責務を並べて書いているのですから、必要な財政的措置を講ずるという趣旨の規定が要るのではないか。もし、その財政的措置をしなければ、これも既にこの検討会で何度も意見が出ていますけれども、金持ちしか法曹になれない制度になりかねない。
 アメリカの場合、ああいうロースクールのシステムというのは、明らかに、連邦政府保証の教育ローンの制度が極めて充実した形で存在しているというのが一番の下支えになっているわけですから、同じようなシステムを日本に導入するのであれば、この点でも同じように制度を考えていただきたいと思うので、そこをもう少し配慮していただきたいのですが。

○ 私も同じような意見を持っていまして、今回の改革の重要な部分は、選抜から養成へということで、その理念を、理想を実現するためにも、非常に開かれた養成制度というものは最大の要件になるのではないかと思います。
 そういう意味から、特に法科大学院の教育の充実というだけではなくて、せっかくブリッジ法であり、有機的な諸機関の関係というものをルール化した法律なのですから、そういう意味で有機的な連携を図るための国の財政的な責務というものは、この3の中に特記して規定されるというのが必要なことではないかと考えます。

○ 今の点なのですが、財政的措置を講じていただくということは、大学にとっても、新しい法曹養成制度全体をきちんとしたものにするためにも非常に重要なことですし、法科大学院をつくる方としてはありがたいことなのですが、そのことと、このブリッジ法で規定するのが適切かどうかということは違う問題ではないかと思います。全体として法曹養成制度を整備する、そのために必要な財政的措置を講じなければいけないということは、司法制度改革全体について触れられたことで規定されている。それに対して、このブリッジ法というのは、法務省系統と文部科学省系統の仕組みをどのようにうまく調整して動かしていくかという連携について定めるものであり、その連携のためにお金が要るのかというと、必ずしもそうではないと思うのです。制度全体を整備していくためにお金が要るのであり、実質として反対しているわけではないのですが、ここに盛り込むのがいいのかどうかというのはまた別の問題ではないかという感じがするということです。

○ この素案でも1の「目的」に、これは後で国の責務がそれを受ける形になるわけですけれども、「法科大学院における教育の充実」、それから「有機的連携」というのが挙げられているわけです。ですから、これを受けたのがまた同じ法科大学院における教育の充実という抽象的なものにしかなっていないのは、ほかの部分でやたらに具体的に、法曹の審議会への参画まで書いてあるというのに比べると、やはりバランスが取れてないのではないか。そうすると、もう少し踏み込んだ教育の充実のための財政的な措置というものが書かれなければいけないのではないかと私は思います。

■ 御趣旨、あるいは御意見には、全く異論はないわけでございます。事務局側としましては、立案面、立法作業面では法制的な問題がないかという点について若干留保させていただきたいと思います。例えば推進法という法律であれば、推進のために新たな財政措置を講じてこういう制度を整備していくという意味で、財政措置というものは法制的にも書きやすいのですが、このブリッジ法は、こういう基本理念、つまり、法改正がなされればこれから将来にわたってこういう法曹養成制度を理念とするのだという、言わば恒久的な意味合いのある法律でもあるわけで、そこは法制面について更に検討させていただきます。
 立法技術的に若干の疑問はあるということだけ申し添えさせていただきます。

□ 大学の関係者としては、当然希望したいことなのですが、教育の充実には当然そういうものが含まれていると理解した上で、なおかつそれを明文にどう規定するかという問題だと思います。先ほどの委員のおっしゃったブリッジ法の守備範囲の問題と、もう一つ、これはこの検討会でも法曹養成過程全体についての財政支援の問題があるので、司法修習などを含めた全体のことを考えると、ここでそこまではっきり出してしまうのが適当かどうかはちょっと疑問もあります。ただ、教育の充実の中にそういうものも含めていただきたいというのは、当然ですので、その辺りはいろいろ今の御意見を踏まえて、検討していただくということでよろしゅうございますでしょうか。

○ 質問なのですが、幾つかありまして、全部関連しているのですが、5の一番最後の○なのですが、「文部科学大臣は、大学がその設置する法科大学院の教育研究活動等の状況について適格認定を受けられなかったときは、大学に対し、報告又は資料の提出を求めるものとする」ということで、これは義務規定になっているわけですが、先ほどの御説明ですと、学校教育法の一般的な大学評価の方には、そういうものが置かれないので、ここで特に規定したということでしたけれど、その報告又は資料の提出を求めた上で、何をするのかですね。結局は、学校教育法の方の改善勧告とか、場合によっては設置認可を取り消すとか、そういうことに結び付いていくと思うのですが、このブリッジ法と学校教育法との関係はどうなるのかというのが一つです。
 もう一つは、文部科学大臣は評価の結果の報告を受けたときは、遅滞なく法務大臣に通知するとありますけれど、その目的は、恐らく、この後ろの6の三つ目の○の「必要があると認めるときは」「報告若しくは資料の提出、又は同法に規定する改善勧告その他の必要な措置を講ずることを求めることができる」とされている、そこに結び付けようという趣旨だと思うのですが、これは結局、学校教育法の方の資料提出、報告を求めるという措置を促すようなことに結び付けていこうということなのかどうかです。
 また、認証評価機関から結果報告を受けたということは、必ずしも不適格認定の場合に限らないように読めるので、これは非常に質がいいですよという評価の結果についても報告をするということになっているようなのですが、その場合に、法務大臣としては、何に結び付けるのか、法務大臣のどういう行為に結び付いていくのか、ということですが。

■ まず、事務局から説明させていただきます。
 これはその素案の書き振りを御覧になってもお分かりのとおり、まず、学校教育法に定めがあって、それを受けての規定振りになるというところが何か所かございます。例えば先ほどの3ページで、文部科学大臣は評価の結果を受けたときは、これを法務大臣に通知すると書いてありますが、これはその前提としまして、学校教育法に基づいて、評価機関から文部科学大臣に報告があるということを前提にしているということでございます。そういう意味で学校教育法で定められる内容を前提としているものがございます。
 そして、適格認定について、先ほど御説明申し上げましたのは、学校教育法で少なくとも適格認定を義務付ける、あるいは適格認定をすべての大学について制度化するということは行われないだろうということを踏まえまして、この法科大学院については、適格認定という制度を設けるということでございます。
 そして、報告又は資料の提出を求めるものとするということについては、文部科学省の方から御説明があろうかと思いますが、法科大学院については、適格認定を受けられなかったときには、文部科学大臣が義務的に報告又は資料の提出を求めるという規定振りにするということで、学校教育法一般については、これとは違うスキームになるものと聞いております。
 そうしますと、法務大臣と文部科学大臣との関係について、4ページの二つ目の○で、「法務大臣は、特に必要があると認めるときは」として、「学校教育法に規定する報告若しくは資料の提出」と書いております。これはまさに御指摘のとおりでございまして、先ほどの3ページの部分と違って、文部科学大臣が義務的に必ず行うことを前提としたものではありません。学校教育法一般の規定で行われる報告若しくは資料の提出を求めるという、厳密に法律的に言いますと、そういうふうな組立てになってございます。
 もちろん、改善勧告その他は、学校教育法に規定する文部科学大臣の所掌事務であることを前提としてこの規定振りとなってございます。
 適格認定を受けた場合、つまり積極評価を受けた場合も、なぜ通知を受けるのかということですが、これはおよそ適格認定として、認定するかしないかを義務付けるわけですから、認定があったのかなかったのか、それを確認する意味でも、どちらについても、通知をいただくということを考えております。

▲ それでは、文部科学省の方から、学校教育法の中身との関連を少し説明させていただきますと、今、御質問があった適格認定を受けられなかったときの報告・資料の提出を求めるという規定でございますけれども、これはニ点において学校教育法の特例という形になっております。
 ニ点というのは、まず学校教育法では第三者評価の結果と、この報告・資料の提出は結び付いていないということです。資料の提出というのは、これまでは中教審の方の設置基準違反かどうかの調査でありました関係の事柄についてであります。第三者評価というのは、学校教育法上は認証評価機関が自主的に行うものでございますから、それと設置基準とは連動していない。それにつきまして、ここでは連動させているというのが一つでございます。そういう意味では、適格認定を受けられなかったときには調査に入るということで連動させています。
  もう一つは、学校教育法では、設置基準違反かどうかという調査に入る際には、法令に違反していると認められるときは報告、又は資料の提出を求めることができるということで、法令違反が結果的に明らかな場合ということになるわけですけれども、ここの規定は適格認定を受けられなかったときには、法令違反の蓋然性が高いということで調査に入るということですから、学校教育法上の規定よりは、法令違反という意味合いが必ずしも、悪い判定が客観的に明らかになり、適格認定を受けられないということで、その蓋然性が高いということで、しかも、必ず調査に入って、資料の提出を求めるという意味において、特例規定になってきております。
 それから、もう一つの認証評価機関と文部科学大臣の関係につきましては、一般的な第三者評価の場合には、認証評価機関が評価結果をまず大学に通知します。それを評価機関自ら公表する。そして、文部科学大臣にも報告をするということになりますけれども、学校教育法ではそこまでしか書いていませんので、その結果を法科大学院の場合は法務大臣にも通知するということが特例規定になっております。
 その結果というのはどこまでを示すのかについては、これから詰めていくことだと思いますが、認証評価機関が収集した個別の情報すべてを文部科学大臣が求めるということになりますと、これは結局、文部科学大臣の調査を代行しているということになりますから、あらゆる資料をすべて提出させる形にはならないのではないかと今のところ考えています。これは具体的には、少なくとも適格か不適格であったかという結果は当然といたしまして、それ以上どこまでかという問題については、もう少し検討したいと思います。

□ ありがとうございました。ほかに何かございますでしょうか。

○ 言葉の使い方で、どうも先ほどから読んでいて引っ掛かってしようがないところがあります。3ページの上の○が付いていないところと関係するのですが、「法科大学院評価基準に適合している」という言葉の使い方ですね。これは少し変で、評価基準というのはいろいろなものがあって、例えば、ここは「法科大学院認証基準」という感じですね。評価基準というのはいろいろな機軸がありますから、それにそのまま適合しているかどうかが適格認定には結び付いていかないのではないかと思うのです。これは中教審でもかなり混乱はしているのですが、評価基準に適合しているかどうかという表現は、少ししっくり来ないような気がしますが、どうでしょうか。

■ その下の○で、「法科大学院評価基準に適合している旨の認証評価機関の認定」という制度をつくるということでございます。もちろん、ワーディングが適切かどうかということはあろうかと思いますが、評価基準に適合しているかどうかを認定するという制度をつくるという趣旨でございまして、そういう適合か否かという制度自体もここで法科大学院について創設するということです。

○ 申し上げているのは、3ページの一番上のところに、「認証の基準を定めるときは、その者の定める評価基準であって」とありますが、評価機関はいろんな評価基準を持っているんですね。その中で法科大学院に関わるものといっても、非常に一般的な評価基準が、その下で、その評価基準に適合するとなると、それぞれの評価機関は違う評価基準を持っていますから、言葉として適当でなくなるのではないかという気がするのです。少し工夫が要るのではないかと思います。

■ 検討させてください。今、御指摘の部分で、認証の基準を定めるときはうんぬんという部分がありますので、それとの関係も少し工夫が要ると思いますので、少し検討させていただきます。

○ 「評価基準に適合する」というのは、どうも表現としてはおかしいですね。どうしてこういうことになっているかというと、要するに、「エバリュエーション」と「アクレディテーション」がごちゃごちゃになっているからだと思います。そこのところは仕分けしないといけないのではないでしょうか。中教審でもごちゃごちゃになったのですが、評価と、適格認定は本来違います。そこをうまく切り分けないと、認証機関の問題が出てきたときには多分混乱するのではないかという気がしてしようがないので、少しワーディングについて工夫する必要があるのではないかと思います。

▲ 中教審答申では、一般的な第三者評価は必ずしもアクレディテーションではなく、法科大学院については、これはアクレディテーションを必ず伴うということになっております。それを踏まえて、どういう法令上の表現をするかということが問題になるかと思います。

○ ですから、前者の第三者評価機関のときには、評価機関という言葉がぴったり来るのですが、適格認定のときに評価基準となっていますから、そういう言葉がうまくフィットするかどうかということを私は疑問に思っています。

□ この評価基準は、主としてこの検討会で議論してきたミニマム・スタンダード的なものになるでしょう。

○ そうなのです。それが評価基準という言葉に、ちょっとしっくり来ないのではないかという気がします。

○ それぞれの評価機関がそれぞれの評価機関の定める基準で適格認定を行うという制度であるのでしょうね。

□ それでも、最低限これだけの基準は盛り込んでいただきたいということで議論してきたわけでして、具体的な評価基準にはもっとバリエーションはあるわけですが。

○ もちろん、いろいろな評価機関があって、いろいろな違う評価基準で評価し、適格認定を出すところと出さないところが出るということを前提に、その場合、不適格になった場合には調査が入り、不適格の水準がどの辺にあったかというのをもう一回文部科学省の設置認可基準のレベルに照らし合わせて考えるということなのではないですか。
 だから、今まで議論したミニマム・スタンダードは、ここでいう法科大学院評価基準というのとは違うのだと思います。

□ そういう趣旨ではなくて、今まで議論してきた第三者評価の基準が、設置認可の基準に引き継がれるか、第三者評価の基準に引き継がれるかというのは、少しスキームが変わったので、少しあいまいになってしまっているのです。だから、その辺りをはっきりさせないと、ここで議論してきたものがどういう位置付けになるかということが第三者評価のスキームとの関係ではっきりしない形になってしまいます。

○ それは第三者評価機関の認証の際の基準に入ってくるのではないですか。

○ 3ページの一番上の、前ページから続いている「○」のところですが、認証評価機関を認証するための基準を定めるということは学校教育法で定められるのだと思うのですが、その基準を定めるときは、評価機関が法科大学院の基本理念を踏まえた評価基準を持つように意を用いなければならないとされています。そうすると、評価基準のミニマム・スタンダードのようなものが認証の基準に入ってくるということを意味するのでしょうか。つまり、それぞれの機関が評価基準というものをそれぞれ定めるわけですね。そのときに、こういう評価基準ではとてもだめですよ、これくらいのことは入れてくださいという基準を認証の基準に盛り込むということを意味するのでしょうか。もしそうだとすれば、それがミニマム・スタンダードと言われるものであり、しかし、適格認定を与えるかどうかは、それぞれの認証機関がそれぞれの基準に従って判断するので、ミニマムとは限らないということですね。そういう理解でいいのかどうかですが。

□ 具体的な評価基準は、ミニマム・スタンダード以上のものとなるので、ミニマム・スタンダード自体が目的ということはあり得ないという趣旨なのですが。

○ 認証評価機関の認証の基準の中にそういう評価基準の実体基準みたいなものが入ってくるのかどうか。そういう理解でいいのかを確認したいのです。

□ そうしていただかないと、審議会以降の流れが崩れてしまうところがありますので、その点はきちんとどこかでフォローしてもらわないと困るのです。

○ そうすると、それを文部科学大臣が定めるとなると、ほとんど文部科学省の法科大学院設置基準と同じようなものにならないですか。各認証評価機関が持つべき法科大学院評価基準のミニマムと言ったら、ほとんど設置基準と同じようなものにならないですか。

○ 本当にそうでしょうか。

■ そこはこの検討会で御意見をいただくマターでもあろうかと思います。つまり、設置基準とイコールにすべきだという意見もあろうかと思います。

○ そういうものを念頭に置いてつくられたのかと思ったのです。

□ 議論の流れから言いますと、評価基準の一部分として、ミニマム・スタンダードとして議論したものが、設置認可の方にも広がって検討されたということがありまして、それを踏まえた上でどのように整理するかというのは、今はペンディングになっているのです。それを制度的に整理した上でそれぞれどう区分けして整理していくかという問題がありまして、先ほどの委員がおっしゃる面も、部分的には出てきているのです。認証基準をつくるときにその話が出てくると思いますので、そのときにはっきり分けてもらわないと、先ほどの委員のおっしゃった問題にうまく対応できないところがあると思います。

○ 先ほどの委員がおっしゃっているのは、その先の問題ですね。要するに、一般的な評価基準というのは、別に適格認定をするための基準ではなくて、評価の基準である。それとは別の、適格認定をするかどうかの基準というものをここでは意味しているので、同じ言葉でいいのかどうか、そういう問題でしょう。

○ 全くそのとおりです。評価基準という言葉が本来の意味で使われていないのではないかという気がするのです。現実に中教審でも相当混乱があったことは確かで、いまだに全部読んでみると、少しおかしいなというところがあるのですが、何か考える必要があるんじゃないかと思います。

□ ただいまの委員がこの検討会の比較的早い段階でおっしゃった形で、少し議論の前提が変わってしまっているところがあるので、それを制度的にどう手当てして今後具体化していくかという問題が残っていることは事実なので、その辺りは文部科学省と法務省の方で整理していただきたいと思います。

▲ そこは学校教育法の条文で、これも同時に書き分けできるのかという法律上の問題と、それから、今おっしゃったこの評価基準については、ここの条文でミニマム基準を定めるということを意味するのかどうかということですが、まだ整理してみないと違ったものになるのかどうか分かりません。今の理解としては、ここでそこまで具体的に義務付けたものではないと私どもは理解しております。

○ ほかのところですが、4ページの「法務大臣は、特に必要があると認めるときは」ということなのですが、これは文部科学大臣からの報告とは全く別個に、法務大臣が全く独自のいろいろな情報網から、必要だと思った場合に、文部科学大臣にこういったようなことを求めるということまで意味をしているのかどうか。

■ 今の質問には、そうですとしか答えようがないのです。法務大臣が、大学から直接情報を取るとか、第三者評価機関から直接情報をもらうという契機をつくってもいいのではないかということも考えたわけですが、法務省というのはそのような教育を調査する権限もないし、機関でもないということで、契機をつかんだとすれば、このようなアクションを起こすことができるという程度の条文にとどめているという趣旨です。

○ どのような事情があって、どのようにするかというのは、まだここでははっきりしていない。ただ、そのような必要があるときもあるだろうということですか。

■ 今の規定振りではそうです。そのような事態も発生することもあるであろうと。発生しないとは言えない。

○ なしとは言えない。

□ 一点質問なのですが、これも多分学校教育法との関連だと思うのですが、今まで法科大学院について評価するのは、教育活動だけを議論していて、研究活動をメインに議論したことはないのですが、個人的には研究と教育は一体のものだから、分けて評価するのはおかしいと思いますので、これでいいと思うのですが、これはやはり学校教育法の規定を受けて、5のところだけが「法科大学院の研究教育活動等」と、研究教育を挙げてきて、あとは教育だけしか出てこないという点が少し気になったのですが、それは法制的な問題なのですか。

■ 適格認定については学校教育法を受けた規定振りにする予定でございます。学校教育法では多分「教育研究活動」ということになると思います。

▲ 学校教育法では、一般的な大学別の第三者評価という大きな評価と、専門職大学院についての第三者評価があります。法科大学院は専門職大学院でございますので、大学全体の教育研究を目的とする評価とは別に、その教育研究活動の状況について評価を行うというのが学校教育法の規定になると思います。それをそのまま受けることになると思います。

□ 教育プログラムだけの評価をするというのは余り考えていらっしゃらないということですね。大学サイドとしては、法科大学院というのは、研究と教育を一体的にやるものだと考えたいと思うのですが。

○ 世界的に見ると適格認定というのは教育だけですね。研究などを入れて適格認定をすることなどは私に言わせれば絶対にできないです。これは気を付けた方がいいです。中教審もそこのところは整理しきれてなかったのです。適格認定の対象は世界的に見ても教育だけです。今JABEEがしているのは本当に教育だけです。ただ、教育を見ていれば研究は分かるのです。教育を徹底的に審査するということだと思います。研究まで入れて、先生方一人ひとりまで評価して、それを適格認定できるのかという気がします。教育はできると思うのです。

○ その問題ともう一つ、専門職大学院の場合は研究指導を要求しないこととしており、教育活動にかなり特化しているので、そこが「教育研究活動」と整合するのかという問題があると思います。これはテクニカルな問題ですけれども、恐らく座長が疑問にされたのはそちらの方ですね。

□ そうですね。大学としては一体的にやりたいのですが、評価を受けることについて、法科大学院としては研究教育全部について評価を受けるかもしれないけれども、法科大学院の第三者評価として、今まで少なくとも我々は教育だけの評価という形で議論してきたので、少しプラスα的なものが加わったという気がしたのでお伺いしたのです。

▲ 今おっしゃられた形で教育研究活動を適格認定するというのは全く考えていないのですが、教育課程と教育内容とか、あるいは問題が教員組織となりますと、教育研究組織として一体になっていますから、法令上、それを見るとなると、「教育研究活動」のようにならざるを得ないかもしれないのです。もう少しそこは検討をさせていただきたいと思います。基本的には見るのは教育部分というのが基本的な理解だと思います。

□ 教員組織を第三者評価で見るか、設置認可で見るか、両方絡ませていくと、研究も絡んでいくような気もするのですが、新しい制度だから、いろいろとやっていくと、こういう問題が出てくると思います。私は別に教育と研究を切り離してやるべきだという趣旨ではありません。教員に関しては、研究をベースにした教育というのが大学の在り方だと思っているから、特に異論があるわけではないのです。
 ほかに何かありますでしょうか。
 それでは、時間の関係もありますので、この法律は今日初めて出てきたわけですし、今からあちこちと折衝して、具体的に詰めていただくようになると思いますけれども、次回の検討会で更に検討していただくことを予定しております。基本的な立案の方針といたしましては、事務局から説明のあった方向で今指摘されたような問題点を踏まえながら進めていただくということにしてよろしゅうございますでしょうか。
 それでは、この問題につきましては、ここまでにいたしまして、次の論点に移りたいと思います。

(2) 司法修習の期間について

□ 次は司法修習の期間についての検討に入りたいと思います。具体的にはこの秋に予定されております司法試験法及び学校教育法の改正、それから今御議論いただきました法曹養成の理念などを定めた法律の制定と併せて、裁判所法のこの点に関する改正を行うかどうかという問題でありますけれども、この点につきましては、まず最高裁の方から検討状況について説明をお願いしたいと思います。

● それでは、お手元に「新しい司法修習の内容等について」というレジュメと資料がニつございますので、それに基づいて御説明申し上げたいと思います。
 裁判所は当検討会の第7回で、新しい司法修習についての基本的な考え方を述べさせていただきました。その後、当検討会におきまして、この修習の期間につきましては、全体としての法曹養成期間の長期化、あるいは法科大学院の実務教育や法曹資格取得後の継続教育との役割分担等を考慮して、修習の期間を1年程度に短縮する方向で具体的内容を検討するという方向性が示されたわけでございます。
 最高裁は、平成18年にも予定されます新司法試験合格者の受け入れに向けて修習の具体的な内容について検討を進めているところでございます。もっとも次に述べますような事情があるということを御考慮いただきたいと思います。現在、こういった法曹養成制度の全般にわたって、制度設計の検討が進行中でございまして、なお、流動的な要素が多い状況にあります。したがいまして、司法修習の具体的内容の詳細な点については、この修習に先行する教育課程の内容、とりわけ法科大学院における教育内容等を踏まえた多角的な検討が必要だろうと考えております。
 また、審議会意見書の提言に基づきまして、裁判所としましては、司法研修所の管理、運営につきまして、法曹三者の協働関係を一層強化するとともに、法科大学院関係者、あるいは外部の有識者の声を反映させる仕組みを設けることも考えてございます。このような態勢を活用しながら、新しい司法修習の充実を図るためにより具体的な制度設計を進めてまいりたいと考えているわけでございます。
 本日は、このような事情等を考慮しながら、修習の期間を1年程度とすることを想定して、修習の内容等について御説明したいと思います。
  2ページ以下でございますが、まず、修習の構成について。これは資料1を御覧いただきたいと思います。先の検討会でも申し上げましたように、新しい司法修習におきしまては、法曹の職域が拡大していく可能性を踏まえまして、法科大学院での教育や継続教育との役割分担に配慮しながら、法廷活動以外の活動分野も視野に入れた幅広い法曹の活動に共通して必要とされる基本的な能力、標語風に言いますと「基本的なスキルとマインド」の養成に焦点を絞った教育を行うことを考えてございます。
 そして、新しい修習の内容につきましては、法科大学院での教育を前提にして、生きた事件の運用を体験的に学ぶいわゆる実務修習を中核として位置付け、そして実務修習と司法研修所で行います集合修習とを有機的に連関させる構成を考えているわけでございます。これを図示したのが資料1でございます。
 まず、この新しい修習の構成では、各実務庁会における分野別の実務修習から開始して、まず修習生が生きた事件に直接接し、そして、そのような中で実践的実地教育を行うということを考えています。分野別実務修習は、弁護、検察、民事裁判、刑事裁判の4つの分野について行うことを考えています。これは、現在の実務修習の枠組みと同様であるわけでございますが、従来のこの修習の枠組みは、極めて効果的な教育方法でありますし、教育実績もございますので、新しい実務修習においても基本的な枠組みとしたいと考えております。
 その期間につきましては、資料1にありますように、各分野2か月ずつ合計8か月ということを考えています。その分野別の実務修習を終えた後に、各実務庁会において総合型実務修習を行うということを考えています。これは、前回も少し申し上げましたけれども、こういった分野別実務修習を深め、また、これを補うために、修習生の希望、志望あるいは修習実績等を踏まえまして、さまざまな形で法曹の実務を総合的、選択的に体験していくプログラムでございます。その期間につきましては、おおむね2か月というふうに想定していまして、資料1にありますように、同時期に実施する2か月の集合修習と交互に組み合せて実施することを考えています。
 また、分野別実務修習のほかに、司法研修所におきまして集合修習を行うことを考えています。集合修習は、分野別修習での実務の体験を理論的、体系的に整理して法律実務家としての基盤を強化することがまず第一の主眼でございます。
 また、実際上、分野別実務修習では、実際に経験する事件等にばらつきがあることは否めませんので、どうしても標準的な法律実務を広く教えるという必要がございます。こういった点も考慮する必要があります。
 集合修習では、今申し上げましたような観点から、司法研修所教官が精選された、ある意味では標準的な事件を取り扱った教材に基づきまして、体系的で汎用性のある実務教育を行う課程を考えています。その期間は2か月と考え、先ほど申し上げましたように、総合型実務修習と組み合わせて実施することを考えています。
 次に4ページでございます。「新しい実務修習」についてでありますけれども、今、構造的な構成については申し上げましたが、まず新しい司法修習では、分野別修習から開始し、その後、総合型実務修習と集合修習を交互に組み合わせて行う。そして、分野別実務修習は、各実務庁会におきまして、実際の事件処理の中で現役の弁護士、検察官、裁判官が個別的、実践的な指導を行う。これを通じて修習生に実務的な知識、技能等を修得させるものであります。
 先ほど申し上げましたように、この手法と内容は、現行の実務修習と同様のものでございますけれども、これはほかの国におきましても、法律実務家養成の手法として採られているものでございまして、新しい司法修習にふさわしい改良を重ねていきたいと考えております。
 また、この分野別実務修習においても、事件処理に当たって、法曹に要請される最も重要な能力、あるいは技能であります法的分析、事実認定の能力の養成に重点を置いた指導を行うこととしたいと思います。法廷実務における技術的な事項に関する教育は、法曹資格取得後の継続教育にゆだね、エッセンスの部分に重点を置いた指導を行いたいと考えています。
 ただ、こういった分野別実務修習の更に具体的な教育内容、手法、さらに実務庁会におけます受入れ態勢の工夫などにつきましては、今後、現に実務修習を担当している法曹関係者の協力を得まして、更に検討していく必要があるわけでございますが、現段階で分野別の実務修習の期間が各2か月、合計8か月に仮に短縮されたとしても、十分に目指すべき教育効果は達成できるものと考えています。
 それから、総合型実務修習というのは、その基本的考え方は先ほど述べたとおりでございますが、その内容につきましては、5ページの下の方に書いてありますように、2つのパターン、タイプを考えています。
 一つは、分野別実務修習を補完するもの、もう一つは分野別実務修習では体験できなかった分野を修習するものであり、このような修習メニューの中から司法修習生が主体的に選択して組み合わせて修習計画を立てるということを考えています。
 例えば、Aに挙げました分野別実務修習を補完するものにつきましては、分野別実務修習でもう少しやっておきたかったということについて、弁護士事務所、検察庁、裁判所において特定の事件の進行経過や処理に沿った断続的あるいは集中的な形で修習を行うことが考えられますし、もう一つ、分野別実務修習で体験できなかった分野という点につきましては、例えば、裁判所の関係で言いますと、民事保全、破産、行政等の分野、あるいは渉外事務所、企業法務、公的機関における法務等の分野の修習などが考えられるわけであります。ニ番目のタイプにつきましては、修習生が、法曹としての多様な活動の素地を得るのにふさわしい分野について自ら修習先を選定あるいは開拓することができるようにしたいと考えております。
 この総合型実務修習を行うことによって、新しい修習にふさわしい教育内容の多様性が得られるとともに、司法修習生の多数が弁護士になることに対応して、この期間で弁護士実務により比重を置いた実務修習を行うことも可能になるわけであります。ただ、これは新しい試みでございますので、この修習の具体的内容や実施方法については、更に引き続き関係者と検討してまいりたいと考えています。
 次に、集合修習でございますが、大まかなところは6ページの枠の中に書いてあるとおりでございますが、更に補足いたしますと、集合修習は、分野別修習において各分野を一通り体験した後に、先ほど言いましたように、こうした体験を整理して、体系的で汎用性のある能力を身に付けさせることを主眼とし、併せて、教育のばらつきを補正していくものでございます。今般、プロセスとしての法曹養成制度が構築される中で、法科大学院において実務を視野に入れた法理論教育が行われることなどを踏まえまして、前期修習を行わないこととするなど、集合修習の基本的な枠組みを変えることにしたわけであります。
 新しい集合修習におきましては、今後、法曹が法廷活動以外の分野においても幅広く活動することを視野に入れまして、これらの法曹の活動に共通して必要とされる基本的な実務能力の養成に重点を置いた教育を行うことを考えています。その方法、内容等につきましては、民事弁護、刑事弁護、検察、民事裁判、刑事裁判を基本科目として、70人程度のクラス編成で経験豊かな弁護士、検察官、裁判官である教官が指導する体制を考えています。
 各基本科目とも司法修習生全員が既に8か月の実務修習を経験していることを前提として、生きた素材をベースとした教材による起案を行い、これに対する講評、あるいは教官と司法修習生との討論、ディスカッションを行う教育方法を基本としたいと考えております。
 そして、ここで法的思考能力、分析能力、事実認定能力、表現能力などの実務能力を修得することに焦点を絞ったカリキュラムを編成したいと考えております。ここでは、事件をベースとした教材を使いますので、フィックスされていない、いわば事実関係がまだ確定していない中で、法的思考あるいは事実認定の力を養うという教育にしたいと考えています。
 このような教育の内容は、現在の後期集合修習の組立てを参考として、そのノウハウ等を活用して実施することになると考えていますが、民法、刑法といった伝統的な基本法に関する法的紛争の解決に役立つだけでなく、専門的、先端的な領域における法的紛争の解決等にも応用され得るよう、その内容を検討していきたいと思います。
 また、できる限り、先ほど申し上げました基本科目間の融合を図り、連携を強化したいと考えております。例としては、8ページ中ほどに掲げたようなことを考えているわけでございます。
 そして、このような集合修習における内容、手法等については、今後、司法研修所教官等の協力を得て検討していく必要があるわけでございますが、仮に、司法修習の期間が1年程度に短縮されたとしても、また、短縮された集合修習の期間が2か月程度となったとしても、新しい修習が目指す教育効果を十分に達成できるものと考えております。
 次に、新司法試験実施後の移行措置期間における司法修習の在り方について御説明したいと思います。
 新しい司法修習は、今申し上げましたように、法科大学院における教育の成果等を受けて実施することになりますが、当検討会でも御議論がございましたように、法科大学院の教育内容はこれから発展していくという段階にあると思われます。このようなことからしますと、その新しい司法修習を実効的に実施するためには、移行措置期間におきましては、当面、修習の開始に当たり、実務修習に向けた何らかの導入教育を実施することとしたいと考えております。
 ところで、平成18年から、新司法試験が実施される一方、平成22年までは現行の司法試験が併行して実施されることとされております。この移行措置期間におきましては、新しい司法修習と、現行の司法修習が開始時期を異にしながら、修習期間が大きく重なりつつ並行して実行されることになります。これを示したものが資料2でございます。
 ここに図示しましたように、青い色の従来型の修習、それから白いものが新しいタイプでございますが、ある年度を取って並べてみますと、次の年度との間で青い従来型のもの同士が重なるところがございますし、また、白いものとの重なりがある。そしてまた、実務修習同士の重なり、集合修習同士の重なりというものがございまして、その総数の重なりと実務修習の重なりをα、β、γという形で表記したのが右側の重なりの図でございます。
 移行措置期間における司法試験の合格者の推移は、現段階では明らかではございませんが、両試験についての今までの検討の経緯からいたしますと、両司法修習の養成者数、司法修習生の合計数が短期間に急速に増加することが予想されるわけであります。
 そのため、移行措置期間における司法修習は、教育指導の内容と、教育指導の態勢の両面から、実施上の課題に直面することになるわけでございます。特に、集合修習、実務修習に関する限られた教育指導態勢の中で、司法修習生の教育的な素地の違いに対応して、同時期に異なる教育指導を本来どおりの形で行うことは、実際上なかなか困難でございまして、かえって全体としての教育効果を損なう恐れも強いと言わざるを得ないのではないかと思います。
 新しい司法修習においては、先ほども述べましたように、三つのパターンの修習を組み合わせて実施することを考えてございますが、このような状況がございますので、移行措置期間におきましては、今述べましたような修習の重なりをできるだけ避けるとともに、実務庁会の教育指導上の負担を軽減するための、いわば暫定的な措置を工夫する必要があると考えております。
 また、現行司法修習の期間につきましては、現在、1年6か月とされております。前期集合修習を3か月、実務修習を12か月、後期集合修習を3か月という構成は、従来さまざまな角度から検討された合理的なシステムとなっていることは言うまでもございません。しかし、この移行措置期間におきましては、今述べましたような異例な事態が生じますので、限られた教育指導態勢の中で、現実的な次善策を講ずることがむしろ必要であり合理性があると考えられるわけであり、現行の司法修習期間を短縮する等の特例措置についても考える必要があると思います。
 こういった修習のサイクルにしますと、例えば、その期間を1年程度に短縮することができますと、その重なりという点では、円滑な実施が考えられるわけであります。ただ、このような特例措置を講ずる場合には、もとより現行司法修習を受ける人には教育上の補完措置を講ずる必要があると考えている次第であります。
 駆け足で申し上げましたが、新しい修習の内容については、現段階でこのように考えております。
 以上でございます。

□ ありがとうございました。
 ただいまの最高裁の説明につきまして、法務省及び日弁連の方から何か意見等はございますでしょうか。
(法務省) ただいまの最高裁の御説明の内容の要点については事前に法務省とも御協議いただいたところでありまして、もちろん、内容的に特段の異議はありません。
 御説明の中にもありましたように、制度設計の細部については今後更に法曹三者で十分協議を続けて詰めてまいりたいと思いますし、また、事務局の方の立案作業についても御協力させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
(日弁連) 日弁連も最高裁と協議を続けておりますけれども、現段階でまだ結論が出ておりませんので、次回の9月30日の検討会で意見を申し上げたいと思います。

□ それでは、続きまして、事務局の方から法制的な面を中心に補足説明をお願いしたいと思います。

■ 先ほどもお話がありましたとおり、この秋の臨時国会には、司法試験法の改正案に加えまして、文部科学省から学校教育法の改正案が提出されることが予定されているほか、いわゆるブリッジ法、すなわち法科大学院の教育と司法試験及び司法修習との有機的連携の確保等に関する法律案を提出することを予定しております。
 そこで、事務局といたしましては、これらと合わせて、この秋の臨時国会に司法修習期間の短縮についての裁判所法改正案を提出したいと考えているところであります。具体的には、裁判所法第67条第1項において、司法修習の期間につき、「少なくとも1年6か月間」としている規定を「少なくとも1年間」と改正する法案をこの秋の臨時国会に提出したいということであります。
 また、いわゆる移行期間中における現行司法試験合格者の司法修習の期間につきましては、この裁判所法改正の附則に経過措置として規定するかどうかという問題であると考えております。例えば、本則で司法修習の期間を少なくとも1年間と改正した場合でも、附則において現行司法試験合格者の司法修習についての経過措置として異なる期間を定めることも可能でありますが、そのような経過措置を定めない場合には、現行司法試験合格者の司法修習についても、少なくとも1年間とする本則の規定が適用されるという関係にあります。
 なお、当然のことでありますが、移行期間中における現行司法試験合格者の修習期間について、1年を超えるような期間とするためには、実務庁や司法研修所における司法修習生の受入れが可能であることが前提となります。したがいまして、実務庁や司法研修所の受入れが困難であるということであれば、司法試験合格者の増加に対応するため、現行司法試験合格者の司法修習についても特段の経過措置を定めず、すなわち1年とせざるを得ないということも考慮すべきではないかと考えております。以上であります。

□ ただいまの関係機関及び事務局の説明について御質問や御意見がございましたらどうぞ。

○ 総合型実務修習について少しお伺いしたいのですが、これは一体どこで行うのですか。各地でやるのですか。

● 原則として、最初に配属されました実務庁会で行うことを考えております。

○ そうすると、そこで配属された修習生にとってみて、自分の将来のキャリア・デザインがそこの修習地、例えば、ある県のある所在地では、全くそのようなものは周りにないようなところにいる場合は、自分のキャリア・デザインに全然結び付かない地域で総合型実務修習を受けなければならなくなるのですね。
 ところが、東京などにいればいろいろな将来のデザインに沿ったいろいろな選択肢が非常に広く存在するということから、どこの修習地に配属されるかによって非常に大きな不公平感が出てくるという問題があると思うのですが、それはどのように解消していくべきだとお考えですか。

● 分野別実務修習でも類似の問題点がないわけではありませんけれども、確かに、御指摘のような点は、いろいろ考慮してまいりたいと思っております。ですので、配属された実務庁会以外のところに出掛けて、総合型修習を行うことも視野に入れて検討してまいりたいと思いますが、ただ、こういった場合には、どのような手当をしていくかなど、いろいろな問題もございますので、更に検討してまいりたいと思っております。

○ それに絡んでもう一点質問したいのですが、そのような場合、その修習生が行き先を自分で開拓するのか、または与えられた中から選ぶのか、どちらになるのでしょうか。もし、自分で開拓しなければいけないということならば、いろいろな関係を持っている修習生は非常にいいですけれども、そうではない者にとってみると、今、大学でもインターシップとかいろいろやっているのですが、それを自ら学生が開拓する、今度の場合修習生ですけれども、開拓するというのは非常に困難だと思うのです。しかも地方にいて、どこかにコンタクトをとって行き先を開拓するというのは非常に難しくなるという意味では二重のハンディを負うのではないかと思うのですが、その辺りはどう考えるのですか。

● そういう事情はあろうかと思いますけれども、制度設計の詳細にわたる点もかなりございますので、この点については今後法曹三者の協議や外部の方の御意見も伺う仕組みなども踏まえながら、検討してまいりたいと思っております。

○ 今の委員の御指摘には、いろいろなインプリケーションがあると思うのですが、一つ考えなければならないのは、こういう制度改革でどのような法曹を生み出そうとしているのかというところです。それには多様な目的があるわけですが、例えば、弁護士について、いわゆるゼロ・ワン地域がまだたくさんあるので、そういうところに法曹有資格者が行き渡るようにするということも目的の一つにあるわけです。ただいまの委員の御指摘ですと、そうではなくて、都会志向の法曹を養成しようというニュアンスを感じます。
 それはともかくとして、個々的にそういうミスマッチをできるだけ回避するやり方はなくはないのです。例えば、配属地の希望をある程度かなえるような形で地方に配属する人と都会地に配属する人を振り分けることは技術的にはできなくはない。しかし、現実問題として多くの修習生が大都会を希望するとすれば、それにも限界があるでしょう。
 それから、この総合型修習は、かなり今までの発想とは違ったものだと思うのです。今までは、こういう法曹に育てようということで、言わばセットされた修習をして、それをきちんとこなして力を付けてください、そうすれば一人前に育ちますよということでした。これに対して、総合型修習は、どういう法曹に育つかは、自分で決める、自分でこういう法曹になりたいと、主体的、自律的に意図するところを描いて行うものだと思います。

○ ですから、自己キャリア・デザインで、自分がどういうものをやりたいと、例えば、国際的な公務員にもなりたいとか、いろいろな形が今後は出てくると思うのです。そういった場合に、非常に遠いところに修習配置されて、その自己キャリア・デザインを実現するための総合型実務修習の修習先を自分で選択することになると、配置された場所によっては非常にハンディが出てくることになるのではないでしょうか。私が言っているのは、自発的な自分のキャリア・デザインにとって、いろいろな多様な法曹がいろいろなところで輩出されていくということの中での総合型実務修習だと思うのですが、それを、修習地の地域内に限定したのでは、そのような目的が達成できないのではないかということなのです。

○ そこはおっしゃるとおりです。それは本当はそんなに難しくはなく、必要ならば旅費を出せばいいという話なのかもしれません。しかし、他方で、受入れ先をあてがいぶちで与えるのか、自力で開拓するのかという問題が出てきますね。

○ そういうことです。大学でもインターシップがはやっていますけれども、全く同じ問題があります。

○ 新しい制度ですから。

○ それから、同じように、大学に来たインターシップの枠でも争奪戦になるのですね。はっきり言うと、修習生でも同じようなことになると思うのです。もし最高裁がこういういろいろな話がありますよと修習生に告知すると、そこに枠をオーバーしたアプライが来る、それで申込みが来た場合にこれをくじで選ぶのか、それまでの成績で選ぶのか、またはその人のキャリア・デザインを出させて、その内容によって審査して選ぶのか、いろいろあると思うのですが、そういう意味では、修習生の中で、不公平感が出てくる可能性が非常に強い問題があるということだけは御注意をしていただきたいと思います。

○ ただ、競争社会の法曹というのはそういうものではないでしょうか。

○ だから、修習地によってハンディを負うことになるのであれば競争社会も何もないでしょう。

○ ですから、どこの修習地になるかの決め方をどうするかというところから議論をしていく必要があると思うのです。

○ それも成績で決めるのだというならそれは競争の原理かもしれないけれども。

○ そこのところは、メニューをつくれば、どうしても限界が出てくると思います。その中で、ただいまの委員が指摘されたような点を十分配慮した制度設計をしていただくということしかないのだろうと思いますが、少し質問してよろしいですか。
 違う問題なのですが、一点は、集合修習の目的ないし目標のところで、いろいろな能力の開発というようなことが書いてあり、7ページの(2)に三つ挙げておられるのですが、1番目と3番目はちょっとどうかなと思います。それ自体は正しいと思うのですが、事実認定能力というのはロースクールできちっとした形で教育するというのは、将来は別として、すぐにはなかなか難しいと思いますので、これはいいのですが、1番目の法的思考、分析能力を養成するということと、3番目の説得的表現能力を養成するということは、まさにロースクールの教育目標、理念として掲げているところでありまして、これをまた集合修習で養成するということになると、両者の関係はどうなるのか、ロースクールの教育というのはどういう意味を持つのだという疑問も出てきかねません。ロースクールの教育を受けた人に対する、そのことを踏まえた上での集合修習であるはずですので、その御趣旨を御説明願えればと思います。
 もう一つは、移行期間のことで、現行司法試験に受かった人に対しても、思い切って修習期間を1年に縮めてしまえば、その重なりが少なくなるというふうに言われたのですが、例えば、この資料2の表で、どこがどのように重なりが少なくなるのか。その点をもう少し具体的に御説明いただければ、分かりやすくなると思いますので。

● まず最初の点でありますが、これは法科大学院で法的思考能力、分析能力、あるいは表現能力といったものを教育していただいて、それを更に実務の中で磨いていくということになります。
 例えば、8ページの(3)の基本科目間の融合、連携のところで少し例を挙げてあります。例えば、ある事件の記録を基に、最初は当事者の立場でのフィックスされていない資料を与えていく。この事実なり証拠なりで仮説を立て、一番説得力のあるような主張構成を考えるという実務家としての思考能力を磨く。そして、もう少し証拠などを追加し、今度は、判断者の立場で、第三の仮説を立てるのではなくて、原告や被告が立てた仮説の中で、どのようにそれを論理立てて説明していくかということを検討させることが考えられます。恐らく大学で判例等をベースにしたときには、フィックスされた事実を基にいろいろ議論されることが多いように思われますし、あるいはまた別の教育の仕方もあるかと思いますが、御指摘の部分は、やや誤解を生ずるような書き方になっているかもしれません。要は司法修習において、生きた素材をベースとして一種ダイナミックなトレーニングを行いたいということで、法科大学院で是非その基礎の部分を築いていただければ更に良い教育ができると、まさに連携をもってやりたいということでございます。
 それから、修習の重なりについては、1枚だけの図でお分かりになりにくいのかもしれませんが、資料2を御覧いただきますと、端的に言いますと、現行司法修習の方を1年にいたしますと、ブルーの短冊同士の重なり、白い短冊との重なりが少なくなってきます。今の段階ですと、集合の部分が重なっております。白と青とそれぞれが1年ということで、ブルーの短冊の下辺が上の方に上がりますと、まず集合の重なりがなくなります。また、ブルーの短冊が上に引き上がることによって、白い短冊と、青い短冊との実務の重なりも明らかに少なくなるのがお分かりいただけるのではないかと思います。

○ いずれにしろ、重なりが全くなくなるわけではないのですね。

● なくなるわけではありません。その重なる部分が少なくなる。特に、集合と集合というところが重なりますと、ニつの異なる期の修習生を一挙に司法研修所で受け入れるというのが物理的に困難になる、人的態勢、物的態勢の面で非常に困難になるということです。

○ 集合修習の重なりがなくなるが、実務庁での重なりは残る。ただし、量は3分の2になる。少なくとも青と青が重なることはなくなるということでしょうか。

● そういうことでございます。理屈はなかなか難しいところがあるのですが、制度を改革していくときに、移行期を5年置いたわけですから、こういう事態が生ずることは、ある程度予測された、ビルトインされたものでありそういうものとして特例措置を講ずる必要があるのではなかろうかという問題提起でございます。

○ その移行期の問題ですけれども、もし現行司法修習の期間を1年間に短縮した中で、教育内容をどういうふうに連関させるかちょっと分かりませんけれども、1年でできてしまうと、ロースクールを前提にした1年の修習と同じことができてしまうのであったら、ロースクールは一体何だったのかということになりかねないので、その辺をきちんと理論的に説明できるようにしないと、実際に修習を担当する最高裁としての苦労は分かりますけれども、ただ、重なるから大変だから、移行期だから経過措置としてこれでいいだろうというのは、ちょっとおっしゃるとおり理論的に問題があるということは御認識のようですけれども、いかがなものでしょうか。

○ 確かに御指摘の問題点はあるのですが、新しいロースクールによる教育というのは、研修所の教育のある部分だけを担うのではなくて、前段階として全体を変えようという話ですから、説明できないわけではないと思うのです。要するに、ロースクールでは研修所で教えていることと同じことをやるわけではない。同じことをやるとすれば、現行司法試験合格者につき修習期間が短くなる説明がつかなくなるわけですが。

○ 要するに、現行司法試験に合格して修習を受ける人は、現在は一人前の法曹として出すためには1年6か月の修習が必要だということでカリキュラムが組まれているわけです。これはある程度合理化できる部分がないわけではないだろうと、工夫もできるだろうとは思いますけれども、その工夫の結果が、ロースクールを修了して、新司法試験に合格して受ける修習期間と全く同じだということになると、例えば、実務基礎科目を現行司法試験組は受けていない、ロースクール組は最初は単位数は少ないけれども受けているし、恐らく一流校であれば最初から9単位以上受けさせるだろうと思うのですが、その違いが、全然反映されない、その後の修習制度の違いに反映されないということになって、やはり何かおかしいのではないかということになるのではないのでしょうか。

○ 違いがあることは確かですが、養成の仕方全体が全く違うわけです。その到達度だとか、目指しているところも違うと思うのです。だから、単純にこちらが1年、つまり半年カットするのなら、その部分だけ少なくなるからおかしいといった話ではなくて、むしろ現行司法試験を前提にした場合に、今、1年半で合理的だと考えられているのが、それを更に1年にするということが、合理的と評価できる範囲内に入っているかどうか、そのことがむしろ問題なので、新しいものとの単純な比較では決まらないのではないか、そういう趣旨で申し上げたのですが。

● この問題は考えるのが難しいのですが、旧司法試験合格者と新司法試験合格者の教育的なバックグラウンドのどこが違うのかが一番のポイントだと思うのです。それは、新司法試験の合格者は法科大学院で実務に関する基礎的なところを学んでくるが、旧司法試験合格者はそうではないという点にあるのではないかと思うわけです。ですので、現行の修習の期間を短縮するときに、前期の集合修習を取り払ってしまうというような短縮の方法というのは、これは合理性がないと思うのです。やはり前期の修習はきちんと行うのがよいのではないかと思われます。それから、実務で学ぶというのは、法科大学院でどれだけ実務的なことを取り入れてくださるかという点とも関係しますが、最初の立ち上がりのところでは、これから助走期間ですので、その部分は余り差がないということになる。
 それで、今まで現行の司法修習は前期を3か月行っていますが仮に1年に短縮しますと、考えられるのは2か月の前期修習、8か月の実務修習、仕上げとしての2か月の後期修習となります。では、その2か月の前期修習というものを、今、3か月受けている人たちと、どれだけ近づけた内容にできるかというところが、恐らく制度設計上考えるべきことだと思います。
 いろいろ考えてきますと、今、司法研修所では、1日に1限を100 分授業で3限教えているのですが、それを仮に90分授業で4限やるとなりますと、授業時間はトータルで60分延び、1日3限だったのを4限できるということになるのです。そうすると、いわば同じ期間で多くの授業ができるということになる。あとは1限当たり10分間短くなったところは、教官の腕の見せどころということになるのですね。ただ、これはもちろん机上でそう考えていることで、教官の負担が多いということもありましょうが、こういった、いわばビルトインされた5年間については、やはりそこは知恵を出して考えていく必要があるだろうと思います。恐らく、集合修習の場合は重なりがないことが何より教育の質を保つということになるのですが、実務修習の方では、同じ期間に大変たくさんの修習生がいるということになるとこれは大変です。
 例えば、資料2の「ある年度」というところが平成18年度とかという段階ですと、現行司法試験の合格者が1,500 人ぐらいいるわけですから、大体短冊のスケールというものがある程度想像できるわけです。現在1,000 人から1,200 人に修習生を増やそうというときも、現に実務庁会の方では、いろいろ工夫が要る状態でございますので、近未来に修習生の人数が非常にふくらんだときには、実務の方はなかなか大変でございます。
 そういう構造的な問題があるということをいろいろ議論をして問題提起をしているということでございます。

○ 修習に行く前に、現行司法試験組は秋に、11月ごろに司法試験の合格発表がありますね。そして4月から修習開始ですね。その間に法科大学院で、特定の科目を履修させておくということを、司法研修所に入所させる条件にするということはあり得ないですか。まあ、法科大学院が受けるかどうかは分かりませんが。

○ お金はどうするのですか。

○ お金は各出身大学が責任を取るということでいかがでしょうか。

● 例えば、司法試験の合格発表をなるべく早くしてあげて、そして、入所が決まったら、課題、宿題を出して、研修所に入った最初の授業に、一応頭を温めて入って来てもらうということも補完措置としては考えられると思います。

○ 大学なども、指定校推薦の場合は、半年前に合格が決まってしまうので、そういう課題を出してレポートを何回か出させて添削するということを行っています。同じようなことかも分かりませんけれども、何か入る前に少しあった方がいいかもしれませんね。

○ 法科大学院の修了単位数の議論をしたときに、詰め込みで教育してしまっては、本人が自分で考えて、それで学ぶという時間が足りなくなるということで、結局93単位という単位数になったわけですね。今、3限行っているのを4限行うというと、計算上はみんなつじつまが合うように見えて、実はそれだと修習生が今よりもっと受け身になって、きちんと消化できない、あるいは自発的に取り組む契機が与えられない、そういう形になる部分が、やはり危険性としてあるわけで、単純にほとんど同じ時間だと、時間数を増やせば効果は同じだというのはちょっとどうかなというのが一つ気になります。それで、私自身の経験から言っても、前期の間に起案をいろいろ教えられますけれども、それは、即日起案とか自宅起案とかいろいろあって、要するに、自分で記録を読んで書く、時間がたっぷり取ってあったわけです。それが前期修習の教育効果を非常に上げていたはずで、詰め込めばいいというものではないという気がどうしてもするのですね。
 それと、入学前の補完措置ですけれども、これは今実は弁護士会が事前研修ということで自主的な研修をやろうと呼びかけているのですが、やはりそういう形だと、受ける方もなかなか本気になってくれないので、弁護士会がいろいろ苦労している割にはそれほど効果が上がっているようにも見えないということになっています。入所前に何か課題を与えてやらせるというのもそれは一つの手段だと思いますけれども、それに余り期待することもできないのではないかという気がやはりするのですね。
 それで、最高裁の御苦心というのは非常によく分かるのですが、集合修習が絶対に重なってはいけないのか、そこに何か工夫ができるのではないかという問題もありそうな気もします。その意味で前期修習を、今より縮めて2か月にすることがどうしても必要なのかどうかというのも、やはり考えていただかないと、この移行期間で、旧司法試験の合格者というのは結構な数になるので、あるまとまりの部分が、あの人たちは十分な修習を受けていないというような言われ方をするようになりかねないと思うのですね。それで、やはりそこは慎重な上にも慎重に、今、1年6か月かかっていますが、1年6か月に縮めるのでも大騒動だったわけですから、そこをよく考えて、もう一工夫していただきたいと思うのですが。

○ ただいまの委員の御発言、そこの部分は分かったような気もするのですが、そうすると、現行試験組については修習期間を縮めない方がいいという御意見なのですか。

○ いや、縮めない方がいいとは言いません。縮めることは可能だろうし、やむを得ないだろうとは思います。ただ、同じ期間までとにかく縮めないと集合修習が重なるからだめなのだという前提で話をされると、非常に引っかかるものを感じました。

○ しかし、縮めるとすれば、どこかをカットせざるを得ないわけです。そうすると、実務修習なのか、前期か後期の集合修習なのか、全部等しく削るのかと、そういう選択肢になると思うのですが、現実論として、どこかを縮めていかざるを得ないでしょう。それはそれとして、いずれの案についても、もう一つ私が心配するのは、実務庁会のことなのです。実務修習というのは審議会意見でも、やはり絶対に必要である、それにはそれだけの意義があるという前提に立っているし、私もそう思うのですが、その場合に、余りに修習生が重なり過ぎると、結局すべて広く薄くになってしまって、新司法試験組に対する修習も実をなさないのではないかと思うのです。本当に受け入れ可能な限度はどの辺なのかということは、やはり理論的ではないかもしれないのですが、非常に重要な要素になってくると思うのですね。その辺で、余り重なり過ぎるのはどうかという感じがするのですが。

○ それはよく分かります。ただ、今の修習生の配属数から言うと、弁護士会だけを取ってみれば、東京が極めて負担が軽い状態で、受け入れていることは明らかなんですね。ですから、弁護修習に関しては、東京には恐らくまだ相当な余裕があるということだと思います。

○ 大丈夫ですか、そう言って。

○ それは地方会の方から東京はもっと受け入れろということを言われていますから、多分、大丈夫だと思うのですが。

○ 実務修習の重なりということが問題になっているわけですが、結局は、ある一定の実務庁会で重なるのがまずいということになると思うのですね。例えば、検察修習なら検察修習で旧試験組と新試験組が重なったら大変だということになって、その重なった場合に、特に旧試験合格者の修習期間が今までどおりだとすると、旧試験合格者の3か月の修習と、それから新試験合格者の2か月の修習と、違うメニューを同時並行的にこなすなどということはとても難しいと思うので、それは避けてほしい。それで、実務修習を削るとなると、2か月半などとしてもしようがないわけで、結局2か月に削らざるを得ず、8か月になる。そうなるともう、集合修習を2か月として、結局、1年に削るということが一番妥当なのではないか。それがいろいろな意味でも、旧試験合格者の司法修習期間が重ならなくなるし、集合修習も重ならなくなるし、ある一定の実務庁会で、並行的に2か月メニューと3か月メニューをこなすということもなくなるということで、減らすとすれば、1年に減らすしかないのではないかという気が私はしています。
 それからもう一点、新しい司法修習の構成の関係なのですが、修習生の側から見まして、お願いしたいことがあります。分野別実務修習8か月、これを実務庁会でやる。そして、集合修習は研修所でやる。また、総合型実務修習で実務庁会の方に帰るということになると、住居はどうなのか、8か月、2か月、2か月とそんなにうまく下宿先が見つかるとも思えないので、この辺の手当ては寮を増やすなり何なりということで、修習生に負担のかからない形で、お金の上でも心理的な面でも負担のかからないようなことを想定してやっていただきたいというのが希望でございます。

○ 弁護士会では、弁護実務修習について、最低でも3か月は要るという議論が非常に強いのです。ですから、2、2、2、3という組み合せもあり得るのではないか。弁護修習の場合は、その特性から言って、ある事務所に修習生が来るわけですから、その修習生が2か月いようが3か月いようがほとんど変わりません。今、弁護士会での合同修習というのをある程度やっていますけれども、その関係で言うと確かに2か月と2か月の方が組みやすいかもしれませんけれども、2か月と3か月の組合せが不可能ということは弁護士会の場合は特にないですね。ですから、旧司法試験組の修習についても弁護修習を3か月にするということは不可能なのかどうかということと、前期はやはり3か月要るのではないかということ辺りを中心に、もう少し考えていただきたい。それについては弁護士会としても、本当にそういうことが可能なのかどうかというのは真剣に検討すると思っています。

● 移行期の修習期間をどうするかは法律事項ですので、今申し上げましたようなことをお考えの上で検討会において決めていただいて、中味の設計をどうしていくかということは、先ほど申し上げましたように法曹三者で更に相談したり、あるいは外部の方の御意見を聞きながら検討していきたいと思います。
 幸い、新しい司法修習のスタートは平成18年でございますが、私どもとしては、来年の今ごろには、移行期も含めて、もっと具体的な実施方法を外部の方の御意見も伺って考えていく態勢は取りたいと思っております。
 移行期の問題にちょっと戻りますと、これはやはり制度の端境期にどのようにするのかということで、ある意味でテクニカルな問題であり、ある意味で政策判断の問題でありまして、そもそもの両修習の理念から積み上げていく議論というよりは、態勢上の問題を頭に入れて議論しなければいけない問題ではないかと思います。
 それで、現行司法修習はどうあるべきかということは、前回の司法試験法改正のときにも大変議論しまして、また、今回の審議会の中で修習不要論というのも随分ありましたけれども、裁判所としては修習は必要であるということを主張してきたわけで、思い入れとしては人後に落ちる訳ではありません。
 ただ、今までこの制度を動かしてきた者として、志はよしとしても、やはり自分の手勢と装備の中でどのようにやっていくかと、思いだけ走っても実際それを担ってくれる人たちに過度の負担をかけることをするのが組織として責任がある対応なのかという問題と考えております。
 この辺はまさに、検討会で御議論いただいて、指針を示していただければ、私どもとしてはそれを粛々として実現していくという問題であろうと思っております。

□ この問題についてはまだいろいろ論点があると思いますけれども、今日出ましたような点につきまして、御苦労ですが、更に御検討いただきまして、法曹養成制度の全体的な姿を示すために、この秋に予定されている司法試験法の改正、学校教育法の改正、それからブリッジ法と併せてやはり司法修習の期間を短縮する裁判所法の改正も行うべきではないかと考えられますので、この方向で事務局においても立案作業を進めていただくことにしたいと思います。
 そうは言いましても、移行期間中の経過措置につきましては、今、議論になりましたように、いろいろ難しい問題がございますので、この点は事務局におきまして、更に関係機関と協議していただいて、次回の検討会で最終的な御報告をいただいた上で作業を進めるべきであり、積み残しはすべきではないと思いますので、大変ですけれども、よろしくお願いいたします。

(3) 司法試験法の改正について

□ それでは引き続きまして、時間が大分少なくなったのですが、司法試験法改正についての立案作業の状況について事務局から説明をお願いします。

■ 配布資料3の「司法試験法の改正について(骨子)(案)」を御覧ください。これは前回の資料を若干修文したものでございます。
 司法試験法の改正につきましては、前回御説明申し上げましたとおりでありますが、前回の検討会での御意見をも踏まえまして、法制的に更なる検討を加えているところであります。その修文部分について御説明申し上げます。
 まず、前回の検討会では、この資料の1ページの一番下の「(6)」の部分について御指摘がありました。修文はしてございませんが、「(6)」は「司法試験においては、裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を適切に評価する観点から、知識を有するかどうかの判定に偏することなく、理解力、思考力、判断力等の判定に意を用いなければならないものとする」という趣旨の規定を置くという骨子の案をお示ししましたところ、この部分について削除も含めて修文を検討すべきであるとの御意見をいただいたところであります。
 この点につきまして、現在関係機関との間で調整中であります。まず今回の改正では、短答式試験と論文式試験の成績を総合して最終的な合否を判定することとしておりますが、その際には、従前の御議論にございましたように、論文式試験の成績により比重を置いて合否を判定するということから、そのことを確認的に明らかにする意味でも、このような規定が必要ではないかとも考えられるところであります。
 また、このような趣旨の規定を置くことにより、司法試験は単なる受験技術的なものによって取得できる知識のみでは対応できないものであるという趣旨を明確にすることができるという御意見も強くあって、現在、具体的な規定振りについて、関係機関との間で調整中であります。この点につきましては、本日は更なる御意見を承った上で、更に調整を進めて次回検討会で御報告申し上げることにしたいと考えております。
 次に3ページの「5 合格の取消し等」を御覧ください。二重線で削除した部分がありますが、「(2)」のところで「司法試験委員会は、(1)による処分を受けた者に対し、」としていた部分を削除しております。これは「(1)」の合格取消し等の処分を受けなくても、「(2)」の受験禁止の処分をする必要が生じる場合もあると考えたからであります。例えば、司法試験に不合格となった後に、実は不正受験をしていたということが判明したような場合には、「(1)」の合格取消しの処分等を受けていないわけですが、その場合でも受験禁止の処分をする必要が生じるということもあろうかと考えられるために、当該部分を削除の上、「(1)」と「(2)」を合体するという方向で検討しているものであります。
 続きまして、4ページ「(2) 所掌事務」をごらんください。
 これは司法試験委員会の所掌事務のうち、「③」の部分につきまして「司法試験及び予備試験の実施に関する重要事項に関し法務大臣に意見を述べること」との案文としたものであります。これによりまして、法務大臣の諮問を必ずしも受けなくても、司法試験委員会が法務大臣に意見を述べるという規定振りとなります。この点も含めまして、いずれの事項につきましても、更に関係機関と協議しあるいは法制的に検討を加えているところであります。今後、具体的な規定振りについては、この資料の表現から若干の変更が生じることもあり得ることを御理解いただきたいと思います。
 また、附則の関係では、新法の施行後も現行司法試験を実施する関係などから、経過措置に関する規定が技術的にかなり困難を要する作業となっており、現在も鋭意細部にわたって立案作業を進めているところであります。全体といたしまして、基本的な立案方針につきましては、前回の検討会で御説明申し上げたとおりでありまして、現在は更に詰めの作業を行っているという状況にあります。
 以上であります。

□ ありがとうございました。それでは、ただいまの事務局の説明に対する質問も含めて御意見をお願いします。

○ ちょっと技術的な質問なのですが、3ページの「5」で消して縮めたところなのですが、これは、(1)と(2)を「又は」でつないでも、前段の部分に加えて、後ろの「5年以内の期間を定めて受けることができないものとすることができる」という、法技術的にはそういうことですね。要するに、前は「(1)」の処分をした上で、「(2)」の処分を情状によりすることかできるとなっていた、それはそのまま残るということですね、「又は」でつないでも。択一ではないということですね。

■ はい。

○ もう一つは、後ろの「司法試験又は」は、法令の用語法では「司法試験若しくは」ではないでしょうか。

■ つまり、消した部分の関係でまだ修正漏れがあるということですね。

○ はい。

□ ほかにありますでしょうか。この司法試験法の改正につきましては、全体としてこの前の検討会の検討内容を踏まえていると考えられますので、事務局において、先ほど説明いただいた点について、更に立案作業の詰めを行っていただいて、次回、説明していただくということでよろしゅうございますでしょうか。

○ 弁護士会の方で検討会の議事録が非顕名になっている検討会について、もう一度それを再検討してほしいという要望があります。聞き及ぶところによれば、それをもう一度相談してみようということになっている検討会もあるということです。この法曹養成検討会の今までの議事録の内容を見ても、特に顕名にできないようなものは何もなかったと思います。これからはもっとなくなるだろうと思いますので、この点をもう一度検討だけはしていただきたいと思います。

□ 分かりました。ほかにありますか。なければ、本日の検討はここまでにしたいと思います。

8 今後の予定等

□ 次回は9月30日、月曜日、午後2時から、場所は本日と同じこの会議室で行います。次回も本日に引き続きまして、立案作業の状況などについて報告を受けた上で、検討を加えたいと思います。
 次回は一応区切りを付けていただかなければならないと考えておりますので、よろしくお願いします。
 本日はどうもありがとうございました。