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法曹養成検討会(第14回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日時
平成14年12月20日(金)10:00〜12:15

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)
田中成明座長、井上正仁、今田幸子、加藤新太郎、川野辺充子、川端和治、木村孟、ダニエル・フット、永井和之、牧野和夫、諸石光熙(敬称略)
(説明者)
井元義久(日本弁護士連合会副会長)
黒川弘務(法務省司法法制課長)
小池裕(最高裁判所事務総局審議官)
(事務局)
山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、片岡弘参事官

4 議題
(1) 司法修習生の給費制の在り方について
(2) 法科大学院の実務家教員の確保について

5 配布資料
資料1法曹養成検討会名簿(平成14年12月16日現在)
資料2法曹養成検討会(第13回)議事概要
資料3司法修習生の給費制の在り方について(論点メモ)
資料4平成15年度予算の編成等に関する建議(抜粋)
資料5規制改革の推進に関する第2次答申(抜粋)
資料6学生等に対する国の手当等

6 文部科学省提出資料
資料1民間団体等による育英奨学事業の概要
資料2日本育英会の奨学金について
資料3平成14年度緊急採用奨学金制度の概要
資料4返還金の回収状況
資料5育英奨学事業の充実
資料6特殊法人等整理合理化計画について(日本育英会関係抜粋)
資料7新たな学生支援機関の在り方について(骨子)
資料8特定の目的のもとに国費で実施されている奨学金制度

7 議事
(□:座長、○:委員、■:事務局)

議事に先立ち、議事の公開について協議を行い、次のような取扱いとすることとなった。
 ・ 今回から、議事録に発言者名を記載し、支障が生じた場合には、その時点で別途取 扱いを検討する。
 ・ 引き続き、報道機関に会場における議事の傍聴を認める。
 また、事務局から、第155回国会で成立した、法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律(以下「連携法」という。)並びに司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律の成立経過及び概要について説明がなされた。

(1) 司法修習生の給費制の在り方について

 事務局から、配布資料3から6までに沿って、司法修習生の給費制の在り方に関する論点等について説明がなされ、文部科学省提出資料(以下「提出資料」という。)1から8までに沿って、現行の奨学金制度の概要等について説明がなされた後、次のような質疑応答、意見交換がなされた。

○ 日本育英会の有利子奨学金については、貸与の要件を満たす者は、全員貸与を受けられているのか。

■ 現状では、大学院生に対する有利子貸与については、希望者のほぼ全員が貸与を受けていると聞いている。

○ 実際には、必ずしも全員が受けられない状況になってきているのではないか。

○ 授業料の免除等に関する資料を次回提出して欲しい。提出資料7の「専門職大学院に対応した奨学金の在り方」とはどのようなことか。

■ 専門職大学院という新たな制度ができるので、これに対応して、奨学金の在り方を検討するということである。

○ 現在、授業料免除を受けているのは、ほとんどが諸外国からの留学生ではないか。

○ 大学院や文系では、日本人の学生も受けている。

○ 法科大学院の学生支援としては、授業料が高額にならないようにすることが必要であると考えるが、国立大学の独立法人化に伴い、授業料はどのような基準で決定されるのか。また、専門職大学院制度の導入に伴い、私立大学に対する助成はどのようになるのか。

■ 国立大学の独立法人化については、定額ではなく、一定の幅の中で授業料を決定することが提言されており、具体的には今後検討が行われるものと思われる。私立大学については、現在も、専門大学院につき特別の助成制度がある。

○ 提出資料2で貸与の要件とされている「優れた学生」とは、どのような意味か。提出資料7で奨学金の返還免除の要件とされている「優れた業績をあげた大学院生」とは、どのような意味か。

■ 成績優秀でありながら経済的理由により修学困難な者に奨学金を貸与するというのが日本育英会奨学金の元々の考え方であったが、近時の有利子貸与の拡充に伴い、学力基準を緩和しており、実際には大学院を修了できる程度であれば貸与を受けられるような状況になっている。提出資料7の返還免除制度については、優れた論文を書いた学生などを対象に新たに返還免除制度を考えようとするものである。

○ 提出資料7に「18歳以上自立型社会」とあるのは、保護者の資力要件を廃止する趣旨か。また、奨学金の返還免除に対する課税措置はどのようになっているのか。

■ 「18歳以上自立型社会」というのは、そのような方向性を示したものであり、現在も、大学院生については、保護者でなく、本人又は配偶者の資力を要件としている。課税措置の点は、調査したい。

○ 提出資料7の「新しい保証システム」とは、どのようなものか。

■ 貸与を受ける学生が保証機関に一定の保証料を支払う代わりに、保証人を探さなくてもよいようにするものである。

○ その場合には、返還金の延滞率が高いと、保証料が高くなってしまうのではないか。

○ 司法修習生の給費制を貸与制に切り替える場合に、貸与額や返還期間、返還免除等について、どのように考えているのか。

■ 本検討会で御意見をいただいた上で、考えられる制度設計について検討したい。

○ 法曹養成制度全体における負担を検討すべきであり、法科大学院の奨学金等、新制度の全体像が見えないのに、司法修習生の給費制だけ先に見直すことは合理性がないのではないか。金持ちしか法曹になれないシステムとなった場合には、司法に対する国民の信頼が揺らぎかねないので、慎重に検討すべきである。

○ 法科大学院、司法試験の受験期間、司法修習というトータルでの制度設計を検討すべきである。法科大学院の学費は高額化することが予想され、かなりの経済的負担となることを前提として、司法修習生の給費制について考えるべきではないか。

○ 貸与制の技術的な制度設計よりも、養成制度全体における学生・修習生への経済的支援がどのようにあるべきかを検討すべきではないか。

○ 司法修習生の給費制は歴史的経緯のある特異な制度であるが、医師等の養成課程と比較しても、現在は合理的な説明が難しいのではないか。新制度を作る場合に、実質的に、経済的に恵まれない人も法曹になることができるようなシステムとすればよいのではないか。

○ 奨学金制度全体を議論する場合でも、支給型の奨学金には消極的な意見が強い。授業料は全世界的に上昇傾向にある。また、法科大学院だけを対象とするよりも、より広い視野で検討する必要があるのではないか。

○ 司法修習生の給費制は、質の高い法曹を養成するため、修習に専念できるようにする必要があること、弁護士も国選弁護人等公益的な活動に従事する場合もあることなどを理由としているものと考えられ、ドイツや韓国でも給費制が採用されている。しかし、これからは、養成数が大幅に増加することや、弁護士も法廷外や私益的な活動が増えてくることなどを踏まえ、考え方を整理すべきである。給費制を見直すとしても、司法修習を義務として課す以上は、代替措置が必要である。

□ 司法修習生の給費制については、本日の議論を踏まえて、事務局で更に検討してもらいたい。

(2) 法科大学院の実務家教員の確保について

 日本弁護士連合会、事務局、法務省及び最高裁判所から、次のような説明がなされた。

(日本弁護士連合会)日本弁護士連合会では、昨年12月に、法科大学院実務家教員候補者紹介制度を設けているが、候補者名簿の登載者数は本日現在で300名(専任教員となることも可能とする者が129名、非常勤教員を希望する者が171名)である。今後は、教員候補者のネットワーク化を進め、情報交換や意見交換を行うこと、カリキュラムや教材作成の検討グループとの連携を図ること、教員の研修(実務家教員に対する教育手法等の研修、研究者教員に対する実務研修)を行うことについて、取り組みたい。なお、法科大学院で養成すべき「国民の社会生活上の医師」としての法曹は、従前の裁判法曹に限られないのであり、法科大学院修了者の大多数が弁護士となることや、法曹倫理やクリニック、ロイヤリング等の実務基礎科目は弁護士でないと教えられないことなどからすれば、法科大学院の実務家教員は弁護士が中心となるべきである。また、各法科大学院の自主性が尊重されるべきであり、現職の裁判官、検察官が国から給与を支給されて法科大学院に派遣される場合には、法科大学院の理念を損なうことのないように留意すべきであり、派遣される個々の教員が所属組織の意向を離れて教育する自由が尊重されるべきである。また、現職の裁判官、検察官を迎えることは、事実上、補助金をもらうのと同じであり、当該法科大学院だけが有利となることのないように留意する必要がある。

■ 現職の裁判官、検察官を法科大学院の教員として派遣することについては、国家公務員法等との関係で、現行の制度上では困難な問題があり、安定的かつ継続的な派遣のためには新たな立法措置が必要になると考えている。また、派遣を受ける法科大学院側の負担をどのようにするかなどの問題もある。

(法務省)現行制度の下では、夜間や土日などの正規の勤務時間外に法科大学院に行く兼業は可能であるが、勤務時間を継続的に割いて行くことはできないし、検察官の職務にまったく従事せずにフルタイムで法科大学院に行くことは、兼業の概念を超え不可能であり、極めて限られた範囲でしか協力できない。法務省としては、法科大学院側のニーズに可能な範囲で最大限応えたいと考えており、フルタイム又はパートタイムの形態で相当数の現職の検察官を安定的・継続的に派遣していきたい。連携法に定められた国の責務を果たすためには、現職の裁判官、検察官をフルタイム、パートタイムで派遣できるよう、次期通常国会において必要な立法措置を講じていただきたい。なお、裁判官や検察官の身分保障や安定的・継続的派遣の観点から、身分や処遇の面での工夫が必要になると考えている。

(最高裁判所)事務局、法務省からの説明と同様であるが、裁判所としても、法科大学院の教育の充実のため、現職の裁判官派遣に協力したいと考えており、そのための制度的な枠組みを作っていただきたい。現行法の下では、平日の夕方や土日で、裁判官の職務に支障のない範囲で派遣できるにすぎない。法科大学院のニーズに対応した派遣形態をとることができるような制度にしていただきたい。

○ 実務家教員の派遣については、法科大学院協会設立準備会と法曹三者、文部科学省担当者による検討が進められており、実務家を法科大学院に派遣するための仕組みを早期に整備する必要があるという点で認識が一致している。現行制度上の問題点や法科大学院の設置認可の手続についての説明を受けたが、実務家教員については、派遣のスキーム作りを踏まえて設置認可手続を柔軟に取り扱って欲しいという要望が出されている。

○ 現職の裁判官、検察官等が法科大学院の教員として参加する必要があり、そのための立法措置を早期に講じていただきたい。設置認可手続についても、派遣制度ができることを前提に検討していただきたい。法科大学院の専門的な科目では、特許庁、国税庁、公正取引委員会等に勤務する公務員の協力も必要であり、立法措置においては、裁判官、検察官とともに、一般の国家公務員の派遣も可能となるよう検討していただきたい。給与の問題については、裁判官の報酬を減額できないのであれば、法科大学院からの給与分を国庫に戻入することが合理的ではないか。

○ フルタイムで派遣する場合は、裁判官や検察官の身分を離れればよいのではないか。

(法務省)法科大学院からフルタイムでの派遣のニーズもあるようなので、制度としては、多様なニーズに対応できるようにしていただきたい。検察官の身分を離れて派遣する場合には、安定的・継続的に派遣することが難しくなる。

○ 本人の意思で裁判官、検察官を辞めて来ていただけるのであればそれでよいが、一度身分を離れることに伴う不利益が大きく、大学側としても、それを覚悟して来て欲しいとは言い難い。身分を離れる場合には、安定的・継続的に来ていただくことが難しくなると思う。また、平日夜間や土日に実務基礎科目の授業を行うことになると、学生も大変なのではないか。日本弁護士連合会は、実務家教員は弁護士が中心となるべきであると説明したが、そのような基準を設けることは、大学としては応じられない。また、大学の自治、学問の自由については大学の責任と思っている。大学にはいろいろな意見の教員がおり、現職の裁判官、検察官がカリキュラム等に意見を述べたからといって、法科大学院の教育が歪められるとは思っていない。

(日本弁護士連合会)実務家教員は弁護士が中心となることを基準化することまでは求めていない。現職の裁判官、検察官が国から給与の支給を受けて法科大学院で教育を行う場合には、所属組織に遠慮したり、所属組織の考えを押しつけるような教育を行うのではないかという問題である。

□ 大学の立場からすれば、今のような発言は問題のある発言であると思う。

○ 弁護士も、弁護士会や日本弁護士連合会に所属している点は同じであり、弁護士を辞めて法科大学院に行かなければならないということになるのではないか。日本弁護士連合会が指摘する問題は杞憂であり、かつ、やや言い過ぎではないか。

○ 安定的な派遣のためには、裁判官や検察官の本務におけるキャリア形成を維持することを前提としてシステムを作るべきではないか。

○ 大学側としては、実務の先端にいる実務家を継続的に受け入れることのできる制度としていただきたい。裁判官、検察官以外の公務員についても、専門的な選択科目の教員としてのニーズが強いと思うが、そのために派遣のスキーム作りが遅くなるようであれば、裁判官、検察官の派遣制度を先行させることも考えられるのではないか。

□ 本日説明があったように、現職の裁判官、検察官を法科大学院に安定的・継続的に派遣するためには、現行法上は問題があると考える。事務局において、関係機関と調整の上、必要な立案について検討していただきたい。なお、その際、本日も意見が出たように、一般職の国家公務員も派遣することが可能となる派遣スキームとすることが望ましいので、その点についても検討していただきたい。

○ 本日の議題とは直接関連しないが、新司法試験の選択科目や試験内容のイメージがはっきりしないと、法科大学院のカリキュラムの具体的な検討も進まないのではないかと思う。また、法学部以外からも多様な人材を誘引するためには、法学以外の分野の修得が無駄にならないような内容の新司法試験となることを示す必要があると思うので、新司法試験の選択科目等について、早期に検討していただきたい。

■ 新司法試験の選択科目は最終的には司法試験委員会の意見を聴いた上で決定されるものであり、本検討会で決定するものではないが、そのような前提の上で、社会的ニーズや実務的教育といった観点から関係者等から説明を受けることは考えられる。座長とも相談して検討したい。

8 今後の予定
 次回は、今回に引き続き、司法修習生の給費制の在り方等について検討することとなった。
 また、次回以降の検討会は、次の日程で開催することとなった。
  第15回  平成15年2月12日(水) 10:30〜12:30
  第16回  平成15年3月19日(水) 10:30〜12:30

(以上)