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法曹養成検討会(第14回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日時
平成14年12月20日(金)10:00〜12:15

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員) 田中成明座長、井上正仁、今田幸子、加藤新太郎、川野辺充子、川端和治、 木村孟、ダニエル・フット、永井和之、牧野和夫、諸石光熙(敬称略)
(説明者) 井元義久(日本弁護士連合会副会長)
黒川弘務(法務省司法法制課長)
小池裕(最高裁判所事務総局審議官)
(事務局) 山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、
松川忠晴事務局次長、片岡弘参事官

4 議題
(1) 司法修習生の給費制の在り方について
(2) 法科大学院の実務家教員の確保について

5 配布資料
資料1  法曹養成検討会名簿(平成14年12月16日現在)
資料2  法曹養成検討会(第13回)議事概要
資料3  司法修習生の給費制の在り方について(論点メモ)
資料4  平成15年度予算の編成等に関する建議(抜粋)
資料5  規制改革の推進に関する第2次答申(抜粋)
資料6  学生等に対する国の手当等

6 文部科学省提出資料
資料1  民間団体等による育英奨学事業の概要
資料2  日本育英会の奨学金について
資料3  平成14年度緊急採用奨学金制度の概要
資料4  返還金の回収状況
資料5  育英奨学事業の充実
資料6  特殊法人等整理合理化計画について(日本育英会関係抜粋)
資料7  新たな学生支援機関の在り方について(骨子)
資料8  特定の目的のもとに国費で実施されている奨学金制度

7 議事

○田中座長 まず検討に先立ちまして、本日の検討会も含め、今後の検討会の議事録に発言者名を記載するかどうかについてお諮りしたいと思います。
 この検討会では、これまでは議事録に発言者名は記載しない取扱いにしてきましたが、いわゆる法曹養成関連法が成立し、また、これからは従来とは異なった事項が検討の中心になるのではないかと思います。そこで座長といたしましては、今回から検討会の議事録に発言者名を記載することにして、もし支障が生じた場合にはその時点でまた取扱いについて別途検討することにしてはいかがかと考えておりますけれども、そういう方針でよろしゅうございますでしょうか。

(「はい」と声あり)

○田中座長 それでは、今後はそういった取扱いにすることにさせていただきたいと思います。
 それから、報道関係者の傍聴につきましては、これまでどおり認めるということにしたいと思いますが、これもよろしゅうございますでしょうか。
 それでは、第14回の法曹養成検討会を始めたいと思います。まず検討に先立ちまして、事務局から本日の配布資料の確認をお願いしたいと思います。

○片岡参事官 それでは配布資料の確認をお願いします。
 事務局からの資料としまして資料1から資料6までがございます。資料1は「法曹養成検討会名簿(平成14年12月16日現在)」であります。川野辺委員が東京高等検察庁公判部長になられたということが変更点です。資料2は「法曹養成検討会(第13回)議事概要」であります。資料3は「司法修習生の給費制の在り方について(論点メモ)」と題するものであります。後ほど御説明申し上げます。資料4は「平成15年度予算の編成等に関する建議(抜粋)」というものでございます。資料5は「規制改革の推進に関する第2次答申(抜粋)」でございます。資料6は「学生等に対する国の手当等」でございます。この資料4から資料6につきましても、本日の議題であります「司法修習生の給費制の在り方について」に関する資料でございますので、後ほど御説明を申し上げたいと思います。
 さらに、文部科学省提出資料として資料1から資料8までがございます。これは主として奨学金関係の資料でございます。後ほど事務局の担当者から御説明申し上げたいと思います。
 なお、国民から当事務局に寄せられました意見につきましては、事務局で目録を作成しております。御希望の委員には目録をお渡ししてそれを見ていただいた上で、必要な部分を閲覧していただくこともできますので、御希望の方は事務局までお申し出いただければと思います。

○田中座長 続きまして、本検討会で検討を加えてまいりました、いわゆる法曹養成関連法が去る11月29日に成立し、12月6日に公布されました。皆様方の御協力に感謝申し上げます。
 本日は法曹養成関連法の成立の経緯などにつきまして、事務局から報告をお願いしたいと思います。

○片岡参事官 それではいわゆる法曹養成関連法の概要について御説明申し上げます。
 法曹養成関連法は、去る11月29日参議院本会議において可決・成立し、12月6日に公布され、「法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律」には平成14年法律第139号、「司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律」には平成14年法律第138号という法律番号が入っております。御協力に改めて感謝申し上げたいと思います。
 これらの法律は、9月30日に開催されました法曹養成検討会の後、10月2日の顧問会議、10月9日の本部会合等を経て、10月18日、臨時国会(第155回国会)に提出されました。
 衆議院におきましては、本会議における趣旨説明及び質疑の後、法務委員会における審議、法務委員会と文部科学委員会との連合審査、参考人からの意見聴取・質疑を経て11月12日の本会議において賛成多数で可決されました。
 参議院におきましては、本会議における趣旨説明及び質疑の後、法務委員会における審議、法務委員会と文教科学委員会との連合審査、参考人からの意見聴取・質疑を経て11月29日の本会議において賛成多数で可決され成立いたしました。
 それではまず法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律(以下「連携法」という)について概要を御説明申し上げます。
 第1条は、いわゆる目的規定でありまして、この法律の目的について規定しております。
 第2条では、法曹養成の基本理念を規定しておりますが、前回の検討会でお諮りした案とは多少規定振りが違っております。第1号から第3号までを号建てして書いておりますが、これは顧問会議において一文で書くのは余りにも長過ぎて分かりにくいという御意見をいただき、分かりやすくなるよう工夫したということでございます。
 第3条では、国の責務を規定しております。そのうちこの第3条の第3項では、国の責務として、「法科大学院における法曹である教員の確保及び教員の教育上の能力の向上のために必要な施策を講ずる」ことなどを規定しております。また、第5項では、当検討会や顧問会議での御意見をも踏まえまして、「政府は、法曹養成の基本理念にのっとり、法曹の養成のための施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない」と規定しております。
 第4条は大学の責務に関する規定であります。
 第5条は法科大学院の適格認定等について規定したものであります。今回の学校教育法の一部改正によりまして、大学についての認証評価制度が導入され、特に専門職大学院を置く大学にあっては、政令で定める期間ごとに文部科学大臣が認証した認証評価機関による分野ごとの認証評価を受けることになります。このような学校教育法上の認証評価制度の創設を踏まえまして、法科大学院については、認証評価機関が適格認定を行うことなどを規定したものであります。
 続きまして、第6条では法務大臣と文部科学大臣との関係について規定をしております。
 また、附則の第2条でございますが、いわゆる見直し規定を置いております。「政府は、この法律の施行後10年を経過した場合において、法科大学院における教育、司法試験及び司法修習生の修習の実施状況等を勘案し、法曹の養成に関する制度について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」と規定しております。
 続きまして、司法試験法の一部改正について御説明申し上げます。今回の司法試験法の一部改正は、いわゆる二段ロケット方式と称しまして、2回にわたって改正法が施行されることになります。
 今回の司法試験法改正の主な点は、まず司法試験管理委員会を改組して司法試験委員会を設置すること、次に新しい司法試験を実施し、司法試験予備試験の制度を設けることなどであります。
 また、現在の司法試験で実施されておりますいわゆる合格枠制については、平成16年から廃止することとし、現行司法試験法の第8条第2項及び第3項を削除することとしております。
 まず時間的に先に施行される部分は、第12条以下を中心とする司法試験委員会に関する規定であります。これは平成16年1月1日付で、司法試験管理委員会を改組して司法試験委員会を設置するという趣旨の改正であります。司法試験委員会の所掌事務は第12条第2項に規定されているとおりでございます。
 そして第13条は、司法試験委員会の委員についての規定であります。委員会は委員7人をもって組織し、裁判官、検察官、弁護士及び学識経験を有する者のうちから、法務大臣が任命することとしております。
 また、第15条では、委員会に、司法試験考査委員及び司法試験予備試験考査委員を置くことなどを規定しております。
 続きまして、平成18年から実施される新司法試験の関係について概要を御説明申し上げます。
 まず第1条第3項であります。第1条第3項では、「司法試験は、法科大学院課程における教育及び司法修習生の修習との有機的連携の下に行うものとする」と規定しております。
 そして、第2条第1項では、「司法試験は、短答式(択一式を含む。以下同じ。)及び論文式による筆記の方法により行う」、第2項では「司法試験の合格者の判定は、短答式による筆記試験の合格に必要な成績を得た者につき、短答式による筆記試験及び論文式による筆記試験の成績を総合して行うものとする」と規定しております。これはすべての受験者が短答式試験のみならず論文式試験をも受験することを前提とし、短答式試験の合格に必要な成績を得なかった者については、論文式試験の成績に関係なく不合格とするという趣旨でございます。
 第3条第1項では、短答式試験の試験科目について、公法系科目、民事系科目及び刑事系科目としております。
 第3条第2項では、論文式筆記試験の試験科目として、公法系科目、民事系科目、刑事系科目及び選択科目としております。選択科目は、「専門的な法律の分野に関する科目として法務省で定める科目のうち受験者のあらかじめ選択する1科目」と規定しております。
 次に、新司法試験の受験資格の関係であります。
 第4条第1項の各号は、新司法試験の受験資格について定めております。法科大学院の課程を修了した者、又は司法試験予備試験に合格した者に新司法試験の受験資格が認められることになります。そして、これらのいずれの者についても5年間に3回の受験回数制限が適用されます。すなわち法科大学院の課程を修了した者については、その修了の日後の最初の4月1日から5年を経過するまでの期間、そして司法試験予備試験に合格した者については、その合格の発表の日後の最初の4月1日から5年を経過するまでの期間において、それぞれ3回の範囲内で司法試験を受けることができるということになります。
 また、第2項ですが、新司法試験を受けた者は、その受験に係る受験資格に対応する受験期間、これは5年間のことですが、その5年間においては、他の受験資格に基づいて新司法試験を受けることはできないと規定しております。例えば法科大学院課程を修了した者が、その修了の受験資格に基づいて新司法試験を受験した場合には、その後は予備試験合格の資格をもって新司法試験を受験することはできないということになります。ただし、第2文として、「前項の規定により最後に司法試験を受けた日後の最初の4月1日から2年を経過するまでの期間については、その受験に係る受験資格に対応する受験期間が経過した後であっても、同様とする」と規定しております。この趣旨は、最後に司法試験を受けた日後の最初の4月1日から2年を経過し、かつその受験に係る受験資格に対応する受験期間、すなわち5年間が経過した後には、別の受験資格に基づいて新司法試験を受験することかできるという趣旨でございます。つまり2年間、間があいていること、そして当初の5年間が経過している場合には別の受験資格で新司法試験を受けることができるという意味の規定でございます。
 続きまして、第5条は司法試験予備試験の関係であります。第1項では、司法試験予備試験は、司法試験を受けようとする者が前条第1項第1号、これは法科大学院課程の修了者でございますが、その者と同等の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定することを目的とし、短答式及び論文式による筆記並びに口述の方法により行う、と規定しております。短答式による筆記試験の試験科目は第2項に規定したとおりであります。
 第3項では、論文式による筆記試験は、短答式による筆記試験に合格した者につき、次に掲げる科目について行う、としまして、短答式筆記試験の試験科目に加えて、法律実務基礎科目を試験科目としております。
 第4項では、口述試験は、筆記試験に合格した者について行うこととしまして、法律実務基礎科目について行う、ということにしております。
 最後に附則ですが、これは原始附則などと呼んでおりますが、もともとの司法試験法の附則を今回の改正で整理した結果、原始附則としては1項と2項だけになり、第2項は、いわゆる高等試験司法科試験に合格した者は、この法律による司法試験に合格した者とみなす、と規定しております。
 また、今回の改正法の附則では、改正に伴う経過措置あるいは読替え等を規定しています。時の経過とともにほとんどの条文は、適用がなくなっていくことになります。
 この附則のうち重要な部分について御説明申し上げます。附則の第7条でございますが、これは現行の方式による司法試験、すなわち旧司法試験の併行実施に関する規定でございます。最初の一文目は、「司法試験委員会は、平成18年から平成23年までの間においては、新司法試験を行うほか、従前の司法試験(平成23年においては、平成22年の第2次試験の筆記試験に合格した者に対する口述試験に限る。)を行うものとする」としております。つまり平成22年までは旧司法試験を併行して実施し、23年においては口述試験のみを行うこととしております。
 その関係で、次の附則第8条は、いわゆる移行期間中において新司法試験と旧司法試験が併行して実施されることの関係の規定であります。
 まず第1項では、いわゆる移行期間中、平成18年から平成23年までの各年においては、法務省令で定める手続に従い、あらかじめ選択して出願するところにより、新司法試験又は旧司法試験のいずれか一方のみを受けることができる、としております。
 そして、第2項と第3項は、法科大学院に在学中の者あるいは法科大学院の修了者が旧司法試験をあえて受けた場合に受験回数制限がどうなるかという規定であります。先ほど御説明申し上げましたように、新司法試験については5年間に3回の受験回数制限が適用されるわけでありますが、新司法試験と旧司法試験の双方を受験した場合でも、同じくどちらの受験にも受験回数制限が適用されるということになります。例えば新司法試験を受験した者が、その後、旧司法試験を受験した場合には、当該旧司法試験の受験も3回の受験回数制限の回数に算入されるということになります。
 また、法科大学院課程の在学者又は修了者が旧司法試験を受験し、その後、新司法試験を受験する場合にも、当該旧司法試験の受験は3回の受験回数制限の回数に算入されます。ただし、この第2項では、「当該新司法試験の受験に係る受験資格を得る前の受験については、当該受験資格を得た日前2年間のものに限る」としております。これは法科大学院の修了前の旧司法試験の受験については、当該修了前2年間の受験に限って3回の受験回数制限の回数に算入することとしたものでございます。
 また、附則の第9条では予備試験の実施は平成23年からということを規定しております。
 次に、前回の検討会でも御検討いただき、御意見をいただいた移行期間中の旧司法試験合格者に対する司法修習の関係でありますが、これは附則の第11条第2項の規定が関係してくるわけでございます。
 今回の裁判所法の改正、これは裁判所法第67条第1項の改正ですが、それによりまして、新司法試験の合格者についての司法修習の期間は少なくとも1年間という規定になります。しかし、改正前の規定による現行司法試験やいわゆる移行期間中の旧司法試験に合格した者などが、平成18年4月以降に司法修習生に採用された場合には、その修習については、附則第11条第2項で経過措置を定めております。そのような司法修習生については、「最高裁判所の定めるところにより、同条の規定による改正後の裁判所法第67条第1項の修習において裁判官、検察官又は弁護士としての実務に必要な能力を十全に習得させるため、必要な修習期間の伸長その他の措置を講ずることができる」としています。
 この「必要な修習期間の伸長その他の措置」については、この検討会におきまして、修習期間を1年4か月程度とすることを前提に、さらに法曹三者の間で具体的な実施について検討を進めるということとされたものでございます。
 以上が法律の概要でございますが、これら法曹養成関連法の国会での審議において、衆議院及び参議院の各法務委員会の採決に際しまして附帯決議がなされております。
 以上でございます。

(1)司法修習生の給費制の在り方について

○田中座長 どうもありがとうございました。では、ただいまの事務局の説明について質問のある方はどうぞお願いいたします。よろしゅうございますでしょうか。大体既に御検討いただいたことばかりでございますし、時間の関係もございますので、それでは本日の検討に入りたいと思います。
 今後の事務局の立案作業との関係では、論点といたしまして、司法修習生に対する給費制をどうするかという問題があります。この問題についての検討の方針といたしましては、これまでに、法科大学院を含めた法曹養成制度全体を視野に入れつつ、貸与制等の代替措置の導入をも含め給費制の在り方を見直すことについて検討するということを確認しております。
 この問題につきましては、次回以降も引き続き検討を行うことにしたいと考えておりますけれども、本日は給費制の在り方を見直すに際してどのような検討事項があり得るのかということについて、まず委員の方々の認識を共通にした上でこの検討をしていただきたいと思っております。
 また、この問題は法科大学院の学生支援策の在り方などとも関連するところでございますけれども、この点につきましては、次回以降、文部科学省から説明を聞くことにしたいと考えております。本日はこれらの問題につきまして、まず事務局に説明をお願いした上で検討に入りたいと思いますので、よろしくお願いします。

○片岡参事官 それでは、配布資料に基づきまして御説明を申し上げたいと思います。まず資料3を御覧ください。「司法修習生の給費制の在り方について(論点メモ)」という資料でございます。座長の御説明にもありましたように、当検討会におきましては、これまで、司法修習生の給費制の在り方につきまして、法科大学院を含めた法曹養成制度全体を視野に入れつつ貸与制等の代替措置の導入を含め給費制の在り方を見直すことについて検討するとされているところでございます。
 まず法科大学院を含めた法曹養成制度全体を視野に入れるとの趣旨にかんがみますと、司法修習の給費制そのものと併せて法科大学院の学生に対する支援策についても検討することとなるのではないかと考えております。例えばこの論点メモに書きましたように、奨学金、教育ローン、授業料等の負担軽減、新たな支援策の創設などについて考えられるところであります。
 他方、昨今の厳しい経済情勢や財政事情の下では、学生支援策全体における法科大学院ないし専門職大学院の位置付けが問題になろうかと思います。すなわち他の分野の大学院や学部等との関係が問題になろうかと思います。法科大学院だけ特別な措置を講ずることの妥当性あるいはコンセンサスが得られるのかどうか、あるいは法科大学院も含めた専門職大学院について何らかの新たな制度を主として文部科学省に検討をお願いするということになるのか、その辺の御意見あるいは御検討も必要になろうかと思います。
 そして、昨今の状況にかんがみますと、受益と負担の観点、官民の役割分担の関係にも留意する必要があろうかと思います。例えばいわゆる政府系金融機関の改革等が進められているような状況にかんがみますと、そのような政府系金融機関を使った何らかの学生支援策の充実を考えるに際しても、そういう状況の流れと違うことが果たして実現可能かどうかというようなことにも留意する必要があるのではないかと思います。
 そして、司法修習生の給費制の在り方につきましては、このような法科大学院の学生支援策についての検討に併せまして、給費制自体の見直しということを踏まえますと、貸与制への切替え等の代替措置についても、具体的な制度設計としてどのようなものがあり得るのかという検討もしていく必要があるのではないかと考えております。
 続きまして資料4は、「平成15年度予算の編成等に関する建議(抜粋)」でございます。この資料は、平成14年11月20日に、財政制度等審議会の建議として出されたものでございまして、その中から抜粋してございますが、司法制度改革に言及した部分がございます。朗読いたしますと、「司法機能の充実・強化に当たっては、法曹人口の増大や迅速な紛争解決を実現する司法制度改革に係る国民の負担を軽減するため、訴訟手続等に関して制度・運用面の改善を可能な限り行うこと、弁護士報酬の透明化・合理化を図ることなどとともに、既定の予算の見直しを行うことが必要である。既定の予算の見直しについては、例えば、司法修習生手当に関して、各種の公的給与・給付の見直し等を踏まえ、受益と負担の観点等から、早期に給費制は廃止し、貸与制への切替えを行うべきである」との建議がなされております。
 次の資料10は、財政制度等審議会の資料として添付されているものでございます。若干読み上げますと、「司法修習生手当(給費制)の見直しの必要性」「司法修習制度は、国民の権利義務に大きな影響を与える司法を支える法曹を統一的に養成する観点から、給費を支給して実施されているものであるが、
○ 国家公務員の身分を持たない者に対する給与の支給は、極めて異例の取扱い
  (公費の在り方が厳格に問われるようになった今日、説明が困難ではないか)
○ 司法修習は個人が法曹資格を取得するためのものであり、受益と負担の観点からは、必要な経費は修習生が負担するのが筋
○ 現行の給費制は法曹人口が希少であった戦後間もなく導入されたものであるが、法曹人口に係る情勢は大きく変化
  (また、現下の厳しい社会経済情勢や各種の公的給与・給付の見直し等に照らしても妥当といえるのか)」
として、これからの司法試験合格者数の増加についても、数字を掲げてあります。そして、先ほど申し上げましたように、「◎ 司法修習生手当については、各種の公的給与・給付の見直し等も踏まえ、受益と負担の観点等から、できるだけ早期に給費制は廃止し、貸与制への切替えを行うことが適当ではないか。」という資料になってございます。
 その次のページの「(別添)」という資料は、「平成15年度予算の編成等に関する建議」という全体のポイントの概要であります。
 続きまして資料5は「規制改革の推進に関する第2次答申(抜粋)」でございます。これは平成14年12月12日に総合規制改革会議が行った第2次答申でございます。この資料の88ページを御覧ください。
「(5)司法修習の給費制の見直し【平成15年度中に検討・結論】
 司法修習に関しては、法科大学院設立による実務教育の実施を踏まえれば、給費制については、法科大学院を含めた法曹養成制度全体を視野に入れつつ、その廃止を含め見直すべきであり、また、修習期間が1年に短縮されること等に伴い内容についても見直しを行うべきである。」という答申が出されております。
 続きまして、資料6は「学生等に対する国の手当等」という資料でございまして、学生等に対して国から手当等を支給している場合と司法修習生の場合を比較した表でございます。
 まず司法修習生に対する給付の額は、他の制度よりも相当高額となっております。また、例えば防衛医科大学生については、一番下の備考欄に書いてございますように、一定期間内の退官の場合、勤務年数に応じて一定金額を償還することとされていますが、司法修習生の給費については、このような償還の義務がないという点で他の制度と異なっております。
 なお、文部科学省提出資料として、奨学金関連の資料を配布しておりますので、これにつきまして、担当から説明させていただきます。

○事務局 本日は、予算編成作業の関係で、文部科学省の奨学金の担当者が出席できませんでしたので、私から説明させていただきます。次回は御出席いただけると聞いておりますので、詳しい内容についてはまた次回お聞きいただければと思います。
 まず資料1は、「民間団体等による育英奨学事業の概要」というものでございます。奨学金事業につきましては、日本育英会が中心となって行っておりますけれども、それ以外の様々な民間団体の育英奨学事業が行われております。事業主体で見ていただきますと、公益法人、地方公共団体のほか、学校法人自ら実施されている場合もございまして、事業主体数で3,400ほどございます。
 それから、奨学金を受けている学生の数につきましては、毎年度のものですが、民間団体等の奨学金では23万9,212人、全体の3割ぐらいの方は民間の奨学金を受けていらっしゃるということでございます。
 支給総額につきましては、全体で約635億円という規模になっているということでございます。
 それから、資料2でございますが、これは日本育英会が実施する奨学金事業の概要をまとめたものでございます。国による育英奨学金事業は日本育英会が実施しているところであり、大きく分けまして無利子と有利子の2つがございます。無利子の奨学金につきましては、特に優れた学生及び生徒で、経済的理由により著しく修学困難な者に貸与するということになっておりまして、採用に当たりまして一定の学力及び家計の基準が設けられております。
 また、有利子の奨学金につきましては、無利子の場合に比べれると、学力、家計について緩やかな基準が設けられております。
 御承知のとおり、高等教育機関への進学率は年々上昇しておりまして、貸与人員が増加しておりますので、従来ですと無利子が中心の制度でございましたが、平成11年度から有利子奨学金の利用規模を大幅に拡充しております。また、その際に貸与月額の選択制の導入や、学力あるいは家計基準の緩和も図られております。
 それから、有利子の場合の利率でございますが、ここには3%以内と書いてございますが、これは上限でございまして、実際のところ現在は年0.4%ということになっております。それから、在学中は無利子であり、また病気あるいは失職等真にやむを得ない事情により返還が困難になった場合には返還を猶予されるというような制度も取り入れられているところでございます。
 奨学金の返還につきましては、月賦で、又は月賦・半年賦併用のいずれかで、最長20年以内にお返しいただくという制度になってございます。
 続きまして資料3でございますが、これは緊急採用奨学金制度についてまとめたものでございます。昨今の経済状況にかんがみまして、保護者の失職等により、家計が急変した者に対しまして無利子で貸与を行う緊急採用奨学金制度が平成11年度から実施されているところでございます。平成14年度につきましては、貸与予定人員1万人、総額30億円という予算規模でございます。
 それから、次の資料4でございますが、これは奨学金の回収状況をまとめたものでございます。平成13年度の回収状況につきましては、下の表でございますが、無利子・有利子合わせまして、回収すべき1,703億円のうち回収した額は1,347億円で約80%、残りの約20%は未回収ということになっております。
 それから、返還期日の来ていない債権を含めました返還を要する債権額につきましては、上の表になりますが、全体で15,486億円でございますが、そのうちの1,562億円、約10%が延滞債権ということになっております。
 続きまして、資料5でございますけれども、これは平成15年度の概算要求時点での15年度の育英奨学事業の内容でございます。この内容につきましては、これから財務省と折衝し、その結果金額がどうなるかというものでございまして、その点は御理解いただきたいと思います。
 平成15年度の概算要求におきましては、主な改定内容として、無利子の方の奨学金の貸与月額につきまして、大学、大学院に関し月額2,000円の増額を図るということを考えております。それから、無利子・有利子合わせて貸与人員の増員を図りまして、事業全体で見ますと635億円増の5,801億円の事業費、貸与人数については6万9,000人増の86万7,000人ということでございます。
 2枚目の詳しい内訳でございますが、特に関係するところとして、大学院の修士課程につきましては、無利子につきましては2万7,274人、有利子につきましては、2万9,742人という数字を出しております。
 増員の主な部分は学部関係が多くなっているということでございますが、聞いておりますところでは、現状として大学院の修士課程の、特に有利子につきましては、ほぼ希望される方に貸与できているということです。
 それから、その次のページに書いてございますのが、細かいそれぞれの貸与月額の内訳でございます。先ほどお話しましたとおり、無利子貸与につきまして、大学、大学院で2,000円の月額の増加ということを考えております。有利子につきましては、前年と同額でございますけれども、大学院につきましては、5万円から13万円の幅で学生が選択できるというような制度になっております。
 続きまして資料6でございますが、政府の特殊法人等整理合理化計画における日本育英会に関係する部分を抜粋したものでございます。現在政府全体として特殊法人の見直しということを行っておりますが、日本育英会は特殊法人でございますので、現在その一環として見直しが求められているところでございます。日本育英会につきましては、平成12年12月の合理化計画におきまして、廃止した上で、国の学生支援業務と統合し、新たに独立行政法人を設置するということが閣議決定されております。
 これを踏まえまして、文部科学省におきまして、新たな学生支援機関の設立構想に関する検討会議が本年5月に設置されまして、新たに設置される機関の在り方について検討が行われたところでございます。
 その検討の結果が今月公表されまして、その内容が次の資料7、奥島先生が座長を務められた新たな学生支援機関の設立構想に関する検討会議で、今月公表された最終取りまとめの骨子でございます。この中で、提言のポイントは下の方に書いてございますが、奨学金事業につきましては、
「○18歳以上自立型社会の確立を目指し、奨学金事業を充実。
 ○学生の自立を支援する新しい保証システムを導入。返還請求業務は外部委託により合理化、効率化。
 ○優れた業績をあげた大学院生を対象とした卒業時の返還免除制度を導入。
 ○日本人学生の海外留学、専門職大学院に対応した奨学金の在り方を検討。」
というようなことが、提言に挙げられております。
 具体的なことは、この報告に基づきまして、さらに文部科学省でこれから実務的な検討が行われるというふうに承知しております。
 最後、資料8でございますけれども、これは特定の目的の下に国費で実施されている奨学金制度を御参考までに御紹介しているものです。育英会の育英奨学事業は一般的な奨学金制度でございますが、特定の分野の人材養成につきましては、関係各省でそれぞれ実施されている奨学金制度もあるということを紹介させていただきました。ここに御紹介させていただいているのは、防衛庁でされている自衛隊の関係、あるいは法務省の矯正医官の関係、それから看護師等につきましては、厚生労働省の方で、これは県に対する補助事業ですが、育英奨学事業が行われているものを御紹介しております。
 以上、簡単でございますが、奨学金関係の御説明をさせていただきました。

○田中座長 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの事務局の説明につきまして、質問のある方は、御意見も含めてお願いいたします。

○川端委員 育英会の奨学金の有利子対応の方について、これは資格要件が緩やかだと言いましたが、その資格要件に合う人が貸与を申し込めば必ず貸与を受けられるという状況なのでしょうか。

○事務局 私が聞いているところでは、大学院の有利子についてはほぼそれに近い状態になっているとのことです。潜在的に貸与を希望されている方がもっとたくさんいらっしゃる可能性などを考えると正確にそういう状況かどうかは分かりませんが、ほぼそのような状況です。

○永井委員 中央大学では、かなり前まではそうだったのですが、最近このような状況の中で、かなり財政が逼迫してきて、そうではない状況も出てきているという報告を受けています。

○井上委員 奨学金を支給するのに加えて、大学の方には授業料免除の制度がありますが、これについてはなかなか全容が把握しにくいかもしれませんけれど、もし何か資料があれば次回にでもお願いします。
 それと、担当の方がおられないのでお答えが期待できないかもしれませんが、資料7の検討会の提言の「専門職大学院に対応した奨学金の在り方」というのは、一体何を意味しているのか、もしお分かりなら教えていただきたいと思います。

○事務局 この点について、具体的にこうしろということが提言されているわけではなくて、専門職大学院という新しい制度ができるのであるから、奨学金にもそれにふさわしい在り方があるのではないか、そのことについて検討すべきだということが抽象的に提言されているものと思われます。

○井上委員 総論的なものだということですね。

○木村委員 授業料免除については、現状はほとんど留学生が対象になっていると思います。日本人の学生で授業料免除をされている学生は極めて少数ですね。

○井上委員 大学院についてはかなり多いですね。

○木村委員 大学院ではありますが、総額で見れば、圧倒的に留学生の方に使っているという状況だと思います。おっしゃる意味は分かりますが。

○井上委員 学部生の場合には、留学生がそもそも少ないのではないでしょうか。

○木村委員 前に調べたみたのですが、トータルで見ると圧倒的に留学生が使っている。

○川端委員 これもお答えいただけるかどうか、ちょっと分からないのですが、法科大学院の学生に対する支援策について考えるときに、授業料自体を安くする方策を考えるべきではないかという論点が1つあると思うのです。今の国立大学の授業料は安いわけですが、今度独法化するというときに、その授業料はどのような基準で計算されることになるのかということと、もちろん国立大学は国の費用を使っているわけですが、私立大学についても、様々な形で国が補助をして、その結果、授業料が安くなっている部分があると思うのですが、それは一体どの程度で、専門職大学院ができたときにどうなるのかということについて概括的にお聞きしたいのです。

○事務局 まず国立大学の法人化後の授業料については、まさに現在法案化の作業をしておりますので、その中で具体的に決まっていくと思いますが、その前提となる検討会からいただいた提言の中に、幅は持たせましょう、今は国が一律に授業料を決めていますが、その法人の裁量で一定の幅の中での授業料設定ができるようにしましょうということがあります。その水準が今と比べてどのくらいになるのかということはまだ決まっておりません。
 それから、私学について、現在の制度で申しますと、今でも専門大学院という別の大学院制度がございますが、その専門大学院に対しては、私学助成は特別に出ているものがございますので、幾分かは授業料を安くすることに寄与しているとは思いますが、どの程度それが寄与しているかということについては、文部科学省にお答えいただくことになります。
 ただ、司法制度改革推進本部において昨年行った調査では、かなり高額の授業料を想定しているとの回答がありましたが、おそらくあの回答の中には私学助成がどの程度なされるのかといったことは考慮されずに、割と高めの金額が出ているのではないかと関係者は思っております。

○フット委員 資料2の冒頭に、「優れた学生」という言葉があり、「優れている」ということがどうもそのベースにあるように思われます。また、資料7にも、また同じく「優れた」という言葉が出てきます。「優れた業績をあげた大学院生を対象」にということですが、もちろん分かる範囲で結構ですが、「優れた」というのはどういう意味なのでしょうか。特に資料7の「優れた業績」とは具体的にどのようなことなのでしょうか。

○事務局 「優れた」ということについて、手元に詳しい資料がございませんが、もともと育英奨学事業は経済的な事情で勉学が困難にならないようにという意味で始められたものですが、有利子の奨学金を拡充した段階で、その考え方は大幅に変わっておりまして、無利子はまだ若干高めのハードルがございますが、有利子については、大学院が修了できる程度の業績というのが「優れた」という意味ですので、ほとんどの方が対象になるということでございます。
 それから、資料7の方の新たに提言されている返還免除に当たっての「優れた」という方でございますが、以前ですと、例えば教員になる方については返還を免除するとか、大学院生で研究者になる方は返還を免除するという制度があったのですが、徐々にそういう制度はもうやめましょうということになっていまして、そのかわりにこの導入が提言されていますのは、優れた業績をあげた大学院生への返還免除という制度でございまして、こちらについては、本当に優れた業績というのは、おそらく成績といいますか、修士課程であれば修士論文の出来であるとか、そういうことであろうかと思いますが、こちらは一定のハードルをクリアーした方について免除しましょうということで使われているということです。

○諸石委員 資料7の下の方で、「18歳以上自立型社会の確立を目指し」という意味は、親の資力ということに直接リンクせずに、18歳以上になれば親の経済状態がどうであろうが、自立する者になるのであるから、親の資力要件というものは外していこうという趣旨なのかという点が1点と、それから、返済貸与金の返済免除のときの課税がどうなるのかということ、つまり貸しているときは所得とはならないわけですが、それを無資力で返済不能というのではない状態で返済免除したら、それが一時所得のようなことになるのかどうかについては、いかがでございましょうか。

○事務局 2点目については、文部科学省の担当の方にお伝えして、次回以降にお答えする準備をさせていただきたいと思います。
 1点目の「18歳以上自立型社会」というのは、この提言自体の中でおっしゃっているようなこと、直接経済要件を保護者から学生に移すというようなことの文脈では書かれてはいないのですが、ただ、考え方としては大きくはそういう方向に向かいましょうということだと思いますし、現に大学院の場合は、本人、配偶者の家計で家計要件を見ております。この提言の中でおっしゃっているのは、むしろ連帯保証人とか、保証人が学生ではなかなか探しづらいので、それを新たに保証料を若干払ってもらうことにより保証しやすくしようということを、具体的には「18歳以上自立型社会」の中で提言されているところでございます。

○川端委員 今のに関連してなのですが、この「新しい保証システム」という、2番目の「○」ですが、もう少し具体的にいえばどういうことなのですか。

○事務局 詳しくはまた次回聞いていただければありがたいのですが、学生から一定の保証料を保証機関に払うことによって連帯保証人などを探さなくても借りられるようにしようということでございます。

○川端委員 その場合、この資料を見ると、1割程度と非常に延滞率が高いのですが、それを前提に保証料を決められるととんでもなく高い保証料になるのではないかという気もするのですが、その辺については何かございますか。

○事務局 その辺りの具体的な検討はこれからになると思います。

○田中座長 給費制の方について何か御意見がございますでしょうか。

○川端委員 給費制の在り方について、まず質問ですが、貸与制への切替え等について検討するとのことですが、その場合の貸与制とは一体どの程度の額をどのような形で貸与して、返済はどのようにして、返済免除についてどのようなものを考えるのかという点についてはいかがでしょうか。

○片岡参事官 ただいまの点につきましては、財政当局あるいはその他の関係機関との折衝等もございますので、本検討会の御意見どおりの制度設計になるかどうかについては難しい面もございますが、いずれにせよ、こういうアイディア、こういう考えがあり得るのではないかというような御提言、御意見を頂戴しまして、幅広く関係省庁との交渉といいますか、折衝といいますか、協議といいますか、そういうことの対象としていきたいと考えております。例えば、今お話が出ました返還の免除、そういう制度を導入するのかどうかについても御意見を賜りたいと思います。
 それから、給費制と貸与制といいましても、例えば給料という意味ではないですが、移動の際の旅費等の手当については、残しておかなければならないか、つまり国が手当しなければいけないものについて、どういうものがあるかも含めまして、これは現在司法修習を実施している最高裁判所から次回以降にも御意見あるいは現状を御説明いただいた上で、切り分けといいますか、制度設計をもう少し具体的にしていただいた上で、それと並行して関係機関との協議も行いたいと考えておりますので、是非御意見をいただきたいと思います。

○田中座長 給費制といっても様々なバリエーションがあると思いますし、どの部分を見直すかという問題もあると思いますので、その辺りについて御意見をいただきたいと思いますが、ある程度具体的な案が出てこないと検討することが難しい点もあると思いますので、基本的な方向として、給費制を見直す方向で具体的な案を出して検討していいかどうかという点についてお伺いしたいと思います。

○川端委員 意見ですが、法科大学院という新しい制度を導入して、そこで学生に生ずる経済的負担については制度全体を通じて考えるということについてはやむを得ないと思ったのですが、これは、どうもそういうことは抜きに修習生の給費制だけを直ちに別に見直しを行う、言わば先取りしてしまうという提案ではないかと思うのです。そうすると、法科大学院を経た場合に、全体としてどうなるかということが問題なのに、もし法科大学院の段階での奨学金あるいは教育ローンの充実が将来適切に実行されなかったとすると、救いになったかもしれない最後の修習生の段階での給費制というものが廃止されていれば、更に借金を背負わせるということになってしまうわけです。これは一体のものとして考えないと、本来は合理性がないのではないかという気がどうしてもするわけです。
 それと、もともとこういう非常にお金がかかる教育制度を設けたのは、法曹には一定の資質が必要であって、したがって、ある意味でぜいたくなプロセスを経させ、そして育てるという、そういう考え方からであったと思いますが、それが結果としては、金持ちしか法曹になれないという制度に全体としてなってしまった場合には、これはとんでもないことになるというのは明らかなわけです。司法というのは国のインフラストラクチャーのうちの一番最後の重要な部分で、その公平性に対する、あるいはその正統性に対する国民全体の信頼がなければ機能しない部分だと思うのです。その部分を担っている人が、みんな金持ちだからなれる、あるいは金持ちでなければそういうものを担えないような制度ということになると、長い目で見ると司法の正統性に対する国民の確信というものが基礎から揺らぎ兼ねないという重大な問題が生ずるわけです。
 もちろん法曹資格を得て、それで将来所得を得るという立場にあるわけですから、将来の所得によって十分返済可能な範囲で負担していくという制度はその限りで合理性があると思いますが、ある程度お金を持ってないととてもそこまではたどりつけない、その過程をくぐり抜けられない、あるいは背負った借金を返すためには進路が限られて、非常な高給を払う法律事務所へ行けば返せるけれども、それ以外に行くと返せないということになると、非常な高給を払う法律事務所に行けそうもない人、あるいは行きたくない人は法曹になれないというような制度になってしまうわけで、ここは十分に慎重に考えないといけないと思うのです。国の財政事情の厳しさというのはよく分かりますが、そういう全体的な考慮を抜きにいきなり給費制だけをできるだけ早急に見直して貸与制にしてしまう、貸与制の具体的制度によっても多少は違うのかもしれませんが、そこだけ先取りして、将来更に法科大学院の大きな負担がかかったときにどうなるかわからないまま見切り発車するというのはやはり問題ではないかというのが私の意見です。

○永井委員 私も基本的には同じような意見で、まず基本的な立場としては、先ほどのブリッジ法の3条にもありましたように、この司法改革というか、規制緩和の中での法曹養成ということですから、少なくとも一定期間は特別な施策、国が財政的な施策を講ずることを是非お願いしたいということなのですが、検討に当たっては、法科大学院時代から更に司法試験の受験期間、司法修習期間を通じたトータルの支援策という観点からこの設計図をとらえないと、様々な問題が出てくると思うのです。
 例えば法科大学院時代に奨学金を給付して、卒業したらすぐ返せ、受験時代、修習時代の分も全部返せなどというのは無理な話で、そういったことから考えれば、トータルのシステムとして設計しないと無理だと思うわけですが、その中でもとりわけ私学の立場から言わせていただきますと、現実にはかなり高額の授業料が予想されるわけです。そうすると法科大学院時代にかなり高額な奨学金を、貸与にしろ受けないととても苦しい生活になることが予想されます。
 そういった高額な借金を負った上で、更に受験期、司法修習期間があるわけですから、そういうことを踏まえて修習期間中の給費、貸与ということを検討するべきで、必ずしも給費でなくてはいけないとは言いませんが、そういった場合にはトータルの貸与による支援策というものが、設計図として全体が見えなくてはならないのではないのでしょうか。川端先生がおっしゃったように、給費制について貸与制への切替えのところだけを先取りされては困るというのは、さすがに目のつけどころが違うと思いましたが、それだけを先取りするのはちょっと困るのではないか。当検討会では全体の支援策を設計していくべきではないかと思うのです。

○今田委員 先ほどの御意見と同じようなのですが、具体的に給費制を見直すというように問題設定をしたら、かなりテクニカルで具体的な議論になっていくと思うのですが、ここで以前から検討してきたように、大きな司法制度改革の中の法曹養成の改革というようなことから、資料3の論点メモにありますように、法曹養成全体を視野に入れて、養成過程にある学生たち・修習生たちの経済的な支援がどうあるべきかという全体像について、枠組みについて、検討すべきだと思いますが、この司法修習生の給費制の在り方という問題については、ここでも余り議論されてないのではないでしょうか。
 私などのような門外漢にとっては、個々のいろんな問題だとか、こういう課題があると言われて、なるほどということになるわけですが、そういうことについて考えるためにも、全体像というか、そういうことについてのきちんとした議論はしてほしいというのが要望です。
 今、事務局からの御説明にありましたが、奨学金そのものも思想というか、枠組みが大きく変わってきているわけです。それはまさに社会の様々な変化に伴っているのでしょうが、お伺いしている限りでは、そういう変化の中で、この奨学金制度そのものの論理性というか合理性というようなものについてもかなり議論してもいいのかなというような、そういう感じもしますので、改めて法曹養成のための経済的支援について、法科大学院も研修も含めて議論していただいて、その上で、今検討しているような給費制とか奨学金の問題というものが位置付けられるのが望ましいのではないかと思います。

○井上委員 私も、全体を視野に入れて考えるべきで、今以上に経済的条件が厳しくなり優秀な学生が法曹になれないことになってはいけないという、その点では賛成なのですが、ただ、川端委員がおっしゃっていることの論理的な帰結として当然に給費制維持ということになるのかというと、それは違うのではないかと思うのです。給費制というのは、先ほど御紹介があったように、いろいろな歴史的な経緯から生まれた特異な制度であることは間違いなく、例えば医師など、社会的に意義のある他の職種の養成と比べた場合、今の時代に十分説明がつくのか。今あるから維持ということになるのかもしれませんが。私としては、それにこだわらずに、実質的に川端委員がおっしゃったような趣旨が活かせるような制度にできればよいのでないかと思います。
 逆の面を申しますと、今の給費制は、経済的に困っている人については確かにいいのですが、裕福な家庭の子女にまでどうして給費を与えないといけないのか、という問題もあると思うのです。その辺のバランスを考えながら全体を設計していくべきで、その意味から、貸与制への切替えを考えるべではないかということは既に申し上げたとおりです。

○木村委員 何年か前からずっと奨学金に関する様々な議論に参画しているのですが、全体として給費制に対する抵抗は非常に強いですね。しかも、それが財政当局からのプレッシャーよりも、財政学の先生方からの抵抗が非常に強く、結局今のような路線になったのです。それが一つ。
 もう一つ、中教審などでも、法科大学院についての議論がありますが、どうしても一般的な議論としては専門職大学院全体としてとらえられる。そうすると、法科大学院もビジネススクールと同じではないかという議論になってきます。その辺のところを相当考えていかないと制度としてはなかなか定着していかないし、給費制を維持すべきとの主張は認められないでしょう。
 もう一つ、先ほど川端委員がおっしゃった授業料の件ですが、世界的に見ても授業料は上がっているのですね。私、先週パリとロンドンとアメリカへ行ってきましたが、英国などでは今1,000ポンドしか取ってない授業を10倍にしようということを検討しているわけです。アメリカでは今ノースカロライナが一番授業料が安いのですが、残念ながら50%上げなければいけないと言っているわけですから、授業料については、とにかく国際的な趨勢として上げざるを得ない。ただ、それを補完する制度としてどう考えていくのか。法科大学院だけを視野に入れて議論すると逆の面が出てしまうのではないか。ですからもう少し広い視野から議論していく必要があるのではないでしょうか。
 私は以前に、高校生を対象とした奨学金が地方レベルで相当たくさん出ている、大変な額の金が出ているのですね。ですが、地方の先生方に言わせると要るのだということです。現実に調べてみるとそれほどたくさん利用されているわけではないのですが、既得権益のようなものになって、予算として確保されてしまっていると思うのです。その辺にも手つける必要があるのではないかという気がします。

○川端委員 井上委員の意見もよく分かるのですが、問題なのは全体としてどうすべきかということだと思うのです。その場合、お金を持っている人、お金持ちの子ども、そういった人しか法曹になれないという制度に絶対してはいけないということ、これは動かせない前提だと思うのです。そうなってしまえば国全体で一番肝心なところを歪めてしまうということになる。弁護士になる人が多いといっても、将来弁護士任官制度が進めば、それがまた裁判官になるという人が多くなったときに、その候補者がみんな金持ちの子弟ばかりだ、そういう階層しかいないというような制度を今からつくる結果になってしまうわけで、それは絶対避けなければいけない。他の専門職大学院とどこが違うのだという議論については、確かに高度の職業人養成という意味では共通ですから同じですが、他の専門職については、例えば職業における階層制はさほど問題にならないけれども、法曹の世界はそこがちょっと違うというところは押さえておく必要があるのではないかと思うのです。

○田中座長 様々な御意見が出ましたが、この問題の全体像をつかむにつきましては、法曹養成制度だけではなくて、関連するところが非常にたくさんありまして、それぞれのところから、従来の思考パターンに沿った意見が出てきているので、それらを考えあわせていただかなければならず、問題点の整理が必要です。

○加藤委員 私は、司法修習生の関係の予算に関する事務に6年間携わりまして、毎年「どうして修習生に公金を投入するのが合理的か」ということを問われ続けました。これに対しては、「まず法律があります。法律の実質的な根拠は、修習生に安んじて修習に専念させることが質の高い法曹を生み出す源泉であり、かつ有為な人材を吸収するということにもなります。それでは、弁護士はどうか、弁護士も国選弁護を行っており、弁護士がいなければ法廷が成り立たないのです、したがって、公的な職業だと考えて、国家が国費を投入して養成するというのは合理的な根拠があるのです。しかもドイツでも、韓国でも公費で養成していて、日本だけが特異ではありません。」このようなことを説明してきました。
 実際にも修習生は、給与がもらえ安心して修習を受けることができることは大きな効用です。これがないと、修習生は例えば、予備校でアルバイトしたりするわけで、修習がおろそかになることが懸念されます。それではいけないので給費することにしているわけで、これまでは、政策的合理性はあったと言えるのだろうと思うのです。
 これからはどうかということになると、司法試験の合格者の数が増えてきます。しかも圧倒的に数が増えるだけでなく、弁護士さんが法廷外の活動で活躍することになる。そうすると、必ずしも公益でなく私益を追求するための援助活動をして、それで報酬をもらう、そういう層が多くなる集団にどの程度国費を投入すべきか。
 そこで考え方を整理すると、そういう私益を追求するのはビジネススクールの卒業生と同じではないかという木村委員の御意見がありましたが、質的にそんなに違わないのだということになれば、では国費を投入することは今までと違って必ずしも相当ではないという考え方になっていくのだろうと思うのです。それがタックスペイヤーの政策選択として、受益と負担との関係で合理的だということになれば、給費制は廃止せざるを得ないというように整理すべきではないかと思います。
 個人的には、給費制がそれ自体、今の時代で合理的でないと簡単に言われると抵抗があるわけですが、考え方の問題としては、そういうように整理してコンセンサスを形成できればそういう方向で考える。その場合でも代替措置をとることは必須だと思うのです。というのは司法修習は義務教育で、これを通らなければ資格を与えない、という制度ですから、給費制を見直す場合には一定の補完代替措置が必要だと思います。その形としてどのようなものがよいかはじっくり知恵を絞らなければいけないということだろうと思います。

(2)法科大学院の実務家教員の確保について

○田中座長 今までいただいた御議論を踏まえて、事務局の方も様々な関係機関と交渉しなければならないので大変だと思いますが、論点の整理も含めてよろしくお願いします。次回は文部科学省の担当者も来られますので、第一の方の問題点についても検討を行いたいと思いますが、もう一点、法科大学院の実務家教員の確保についての検討に入りたいと思います。
 この問題につきましては、関係各界において検討が進められているものと承知しているわけでございますけれども、本日はまず弁護士教員の確保について、日弁連の取組状況などをお伺いしたいと思います。

○日弁連 日弁連の法曹養成担当から、今、座長の方からお話がありましたように、法科大学院の実務家教員の確保について、意見を述べさせていただきたいと思います。
 日弁連は法曹養成に特化した教育関連の法科大学院をより質の高いものにするためにどうすればいいかということについてずっと研究行動を重ねてまいりました。その1つとして昨年(2001年12月)に実務家教員候補者紹介制度というのを立ち上げまして、法科大学院の教員として応募してくれるかというような趣旨の呼びかけを全国の弁護士にいたしました。それが法科大学院実務家教員候補者紹介制度要綱というものでございまして、それに基づいて募集をしたわけです。
 その結果、14年12月20日現在、実務家教員候補者紹介制度の名簿登載の実績は総数300名、そしてそのうちの専任教員で結構だという弁護士が129名、非常勤を希望するという者が171名、こういうような結果になっておりまして、現在この名簿が日弁連の方にございます。今後、また取組をしていくわけでございますが、その今後の取組としましては、大体三つ考えておりまして、一つは教員候補者のネットワーク構想というものを考えております。これは教員候補の内定者の名簿を整理しまして、メーリングリストを立ち上げて、教員候補者が互いに適宜情報交換あるいは意見交換を積極的に行うことができるようなシステムをつくっていくということでございます。これは既に準備をしておりまして、近々実現するような形になってくるのではないかと思います。
 次に教材カリキュラム研究会と教員との連携でございます。これは既に日弁連及び単位弁護士会では、弁護士の有志のメンバーを中心にしましてカリキュラム及び教材作成を積極的に行っております。こうした教材カリキュラム作成チームと教員内定者のネットワーク、これを有機的に連携させまして、各科目の研究会の立ち上げを促すというような方向を考えております。これは各教員候補者がお互いに切磋琢磨しながら、適切に情報交換して、法科大学院における教育内容について研究を深める機会を提供するということが期待されるということでございます。
 既にこの点につきましては、研究会として民事訴訟実務研究会を立ち上げておりまして、この12月には専門職責任の教え方について、全国の担当者が集まりまして意見交換をしたという実績がございます。
 それから三番目は研修でございます。法科大学院の教員には実務家そして研究者という二つの教員の種類がございますが、いずれもこの実務家あるいは研究者の教員の方々に、実務家に対しては教え方というようなもの、研究者に対しては実務家はどういうものであるかというようなことを研修内容にいたしまして研修をしていくというようなことを考えております。
 それから、法曹の教員を派遣することについてはいくつか留意すべき点があるのではないかということを日弁連は考えております。それは、法科大学院では何を目的として、どのような教育をするのかということと、この教員がどうあるべきかということが大きく関連しているのではないかと考えておりまして、そのためにまず法科大学院の理念がどういうものであるかということが1つのポイントになってくるのではないかと考えています。
 法科大学院の理念は言うまでもないことでございますが、各大学の自主性、学問の自由を前提としながら、専門職である法曹を養成するために構想された教育機関であると我々は理解しております。そこでは実務と理論を架橋した教育を行うこととされておりますが、それはまさに法科大学院の教育によって現在の法曹実務がより豊かに発展するということを期待するべきなのだと考えております。したがって、法科大学院ではいわゆる研究だけではなく実務を意識した教育がなされることはもとより、現在の実務に対する批判的な視点を忘れない教育が必要だと考えております。
 また、法科大学院でどのような法曹が養成されるかということでございますが、これは司法制度改革審議会意見書にも書いてありますとおり、社会生活上の医師として様々な法律業務にも専門性を発揮して活躍する多様な法律家を養成するのであって従前の裁判法曹に限らないということでございます。ここのところに留意していかなければいけないと考えています。第一次的には法廷活動のみならず法廷外の活動に強い弁護士の養成機関となることが期待されると考えます。これは先ほど少し議論がございました給費制の問題とも若干関連してまいりますが、例えば法廷外の弁護士を養成しまして、この法廷外で活動する弁護士についても、あくまでも弁護士としての使命、よく言われております弁護士の公益性、これにつきましては我々がきちんと研修して身に付けさせたいというふうに考えておりますので、単に企業に入って高いお給料をもらうというようなことは考えておりません。
 それから、法科大学院の修了者のうち9割程度はそのように法廷内外で広く活動していく弁護士となるのではないかというふうに考えております。したがいまして、法科大学院の教員としては弁護士が実務家教員の中核となるべきだと、そのように考えております。これは法科大学院で開設されるカリキュラムの内容、これを概観してもこのようなことが言えるのではないかと思います。
 カリキュラムの内容につきましては、まず法曹倫理がございますが、この法曹倫理の中にはいわゆる利益相反の問題、依頼者への忠実義務、更に守秘義務等が含まれますが、これが大体法曹倫理の中核となりますので、これはまさしく弁護士倫理である。それから、またカリキュラムの中には法情報調査、あるいは法文書作成、ローヤリング、クリニック等が含まれ、そのような教育がなされるわけでございますから、これらの分野について適切に教育できるというのは弁護士以外にはないだろうと考えております。
 このような教育的な理念を前提として、法科大学院がどのような教育を行うかについては各法科大学院の自主性に委ねられていると思います。したがって、法科大学院が裁判官、検察官の経験のある実務家が担当することのふさわしい科目を開設するため、また、実務家としての経歴を有する教員として採用することを可能とするために、そうした要請に応えられる制度がまず整備されるべきではなかろうかと考えています。
 しかしながら現職の裁判官や検察官に国からの給与の支給あるいは補てん、こういうものを受けさせながら法科大学院の教員に充てる場合には、先ほど言いました法科大学院の理念が損なわれないように細心の注意を払わなければいけない。具体的に申し上げますと、個々の教員が組織を離れてそれぞれの判断で教育内容や方法を決める自由、これがやはり尊重されなければいけないだろう。そうすることによって法科大学院の自主性や学問の自由が阻害されないことが確保されると考えております。
 また、現職の裁判官や検察官を教員として迎えることによって、法科大学院が事実上の補助金を得るような形になる場合がある。そうすることによりほかの法科大学院よりも有利になることにならないような制度設計がなされるべきではなかろうかと考えております。
 ざっと法科大学院教員の件に関しては、以上のとおりでございますが、先ほど給費制の問題が若干議論されておりましたので、日弁連のこれまでの基本的な考え方を一言述べさせていただきます。日弁連といたしましては、この法曹養成過程が法科大学院の教育あるいは研修というような極めて長期間にわたるものであり、しかも、法科大学院の授業料はそう安いものではなく、むしろ高額なものになるということなどもいろいろ考えますと、是非給費制は維持する方向で御検討願いたいというのが日弁連の考えでございますので一言述べさせていただきます。以上でございます。

○田中座長 それでは続きまして、現職の裁判官や検察官を法科大学院の教員として派遣するためにはどういう問題があるかについて、事務局、法務省、最高裁から説明を伺いたいと思います。まず事務局からお願いします。

○片岡参事官 どのような検討が必要かについて概略を申し上げます。
 法科大学院の実務家教員のうち、弁護士である教員の確保につきましては、ただいま日弁連から御説明がありましたとおり、日弁連を中心に相当の準備が進められているものと承知しております。
 他方、現職の裁判官や検察官を法科大学院の教員として派遣することにつきましては、現在の国家公務員法等との関係で、現行の制度上では相当な困難が伴うものと考えられます。
 例えば国家公務員法の第101条第1項では、「職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない」と規定されております。
 したがいまして、勤務時間内に、法科大学院の教員としての職務に従事するためには、この職務専念義務を緩和ないし免除する必要があるというわけであります。
 また、職員が報酬を得まして、いわゆる兼業を行う場合は、同法第104条の許可等の問題も生じてくるということであります。
 検察官につきましては、国家公務員法の規定の適用があることから、例えば平日の昼間に継続的に法科大学院の教員としての職務に従事しようとするためには、この職務専念義務を緩和ないし免除するなどの措置が必要となるわけであります。
 また、裁判官につきましては、裁判所法の規定との関係が問題となりますが、基本的には問題点は同じでありまして、職務専念義務を緩和ないし免除するための措置が必要となるものと考えられます。
 したがって、現職の裁判官や検察官を、安定的かつ継続的に法科大学院の教員として派遣するためには、新たな立法措置が必要となるのではないかと考えております。司法制度改革審議会意見も、「実務家教員の任用を容易にするため、弁護士法や公務員法等に見られる兼職・兼業の制限等について所要の見直し及び整備を行うべきである」と指摘しているところでありますので、当検討会における御意見をも踏まえまして、今後立案作業に向けた検討を行いたいと考えているところであります。
 なお、この問題に関しましては、現職の裁判官や検察官が法科大学院の教員としての職務に従事した場合に、法科大学院から報酬を受け取ることができることとするかどうかという問題があります。例えば法科大学院から報酬を得た場合には、その額だけ給与を減額すればよいという考え方もあり得ようかと思いますが、裁判官につきましては、日本国憲法第80条第2項で、「報酬は、在任中、これを減額することができない」と定められているため、法科大学院の教員としての職務に従事した場合でも、裁判官としての身分を保有する限り、報酬の減額はできないことになります。
 このような給与の問題につきましては、今後関係機関との協議が必要となりますが、現職の裁判官や検察官の派遣を受けた法科大学院において、何の負担もしないというのでは、いわゆる受益者負担等々の観点から問題が生じるという考え方もあろうかと思っております。
 また、法科大学院の実務家教員について考えてみた場合には、裁判官、検察官及び弁護士のほかにも、例えば国税、税金の関係であるとか、金融の関係であるとか、特許をはじめとする知的財産権関係あるいは外務・国際関係、公正取引関係等々の実務の分野において、政策立案や法制面での経験豊富な国家公務員が存在しており、法科大学院の実務家教員として派遣する対象となり得るのではないかとも考えられるところであります。
 この点につきましては、実際のニーズをも踏まえまして、立案の方針を考えたいと思っております。
 以上であります。

○田中座長 どうもありがとうございました。それでは検察官の派遣につきまして、法務省から、裁判官の派遣につきまして、最高裁判所から、それぞれの問題点について御説明いただけますでしょうか。

○法務省 問題点については、既に事務局の方から御説明があったとおりでございまして、現状では、国立大学に対しては併任発令をいただいた上で、検察官が正規の勤務時間を割いて教えに行くということは一応可能ではありますけれども、法科大学院が開校する平成16年4月の時点では、国立大学が法人化されている予定でございますので、そのような方策をとることはできないのではないかと考えております。
 また、現行法制を前提といたしますと、私立大学については、夜間や土日などの正規の勤務時間外に教えに行くという内容の兼業許可を受け、この枠組みの中でいろいろ御協力させていただくことは可能なのですが、今後検察官の正規の勤務時間を継続的に割いていくことを前提として、私立大学に教えに行くこと、これは恐らくできないのではないかと思います。
 また、検察官としての職務には全く従事せずに、フルタイムで法科大学院に常駐するということになると、もはや、先ほど申しました兼業という概念ではとらえきれないために、現行法制の下では全く不可能になってしまいます。
 したがって、何らの立法措置も講じられないといたしますと、個々の検察官が自らの発意によって夜間や土日などの勤務時間外に兼業許可を得て教えに行くなどの方法しか考えられないことになります。こうした方法では、法科大学院側のニーズに十分応えることはできないと見込まれますし、我々として御協力できる範囲は極めて限られたものにならざるを得ません。もちろん法務・検察としては、国の責務の一端をきちんと果たしたいという意欲を持っております。フルタイムでもパートタイムでも、現在の国立、私立を問わず、大学側の求めがありましたら、一定の限度内だとは思いますが、可能な範囲内で相当数の現職の検察官を派遣する用意はしてまいりたいと考えております。
 したがって、ぜひ推進本部、また当検討会におかれましては、現職の裁判官、検察官をフルタイムでもパートタイムでも教員として派遣することができるように必要な立法措置を講じていただきたいと強く希望したいと思います。
 また、来年6月に法科大学院の設置認可申請が予定されておりますので、次期通常国会の早期に法律が成立するように御準備を急いでいただきたいということも併せてお願いしたいと思います。
 なお、立案に向けた検討に当たっては、裁判官、検察官について、厳格な身分保障があることに加え、適任の裁判官、検察官を本人の同意を得て安定的、継続的に教員として派遣することを可能にするためには、平たく言いますと、処遇の低下を招かないような特段の御配慮をいただければ非常にありがたいと思っております。
 以上です。

○田中座長 どうもありがとうございました。それでは最高裁に御説明をいただきたいと思います。

○最高裁 基本的には、今、事務局、それから法務省から御説明があったところと同様でございます。裁判所といたしましても、法科大学院に期待するところは大きく、実務家教員として現職の裁判官を派遣することは是非とも必要でありますし、そういったことが可能となる制度的枠組みをつくっていただきたいと思っております。
 現職の裁判官が本務以外の職務に就くことについては非常に厳格で、なかなか処し難いものがございまして、例えば、今、兼職で大学等へ行っている場合もあるわけでございますが、それは夜間、あるいは休日に限って、しかも、そういうところに出かけることが本業の裁判官の仕事に影響がない場合という形で、絞りをかけて行っているわけでございます。そういう意味で、平日の日中に行われる講義についての対応は困難ということでございますので、是非それを可能とする枠組みをつくっていただきたい。
 裁判官の場合には、週に何日か裁判の仕事をしながら、法科大学院に何日か行くという形態が比較的採り易いところがございますので、いわゆるみなし専任、あるいは非常勤という形には柔軟に対応できるのではないかと思います。そういった形態での派遣ができるような仕組みを是非つくっていただきたいというふうに考えております。
 冒頭申し上げましたように、法科大学院教育が充実したものになるためには、裁判所もあるいは裁判官もぜひ御協力をしたいと思っておりますので、本部の方でいろいろお考えいただくことになると思いますが、よろしくご配慮のほどお願いしたいと思います。
 以上でございます。

○田中座長 どうもありがとうございました。ただいまの説明について質問及び御意見をお受けしたいのですが、その前に、この問題につきましては、法曹三者と法科大学院協会設立準備会との四者で協議しておりまして、そこで準備会の方から井上委員がちょうどこの問題のワーキンググループに出ていらっしゃいますので、井上委員の方から、今までの御意見を踏まえて、全体的な意見をまずお伺いした上で、御意見、御質問をお受けしたいと思いますので、お願いできますでしょうか。

○井上委員 昨日もその会合がありましたが、これが二回目の会合です。第1回目は、四者プラス文部科学省の方も出ておられますので、実質的には五者ですが、そのそれぞれの立場から、どういうことを話し合っていくべきと考えるかについてすり合わせをしました。昨日の第2回目の会合では、先ほど事務局及び法務省、最高裁から御説明のあったような、現職の裁判官・検察官を法科大学院に派遣するに当たっての現行法令ないし制度上の難点について御説明いただき、問題点を確認しました。また、文部科学省の方から、設置認可のスケジュールとの関係で、どういうことがいつまでに必要かという御説明をいただき、併せて日弁連の方からも、日弁連としては派遣ではないのですが、推薦のような形で体制を整備しているというような説明をいただいております。
 そこで改めて認識したのは、文部科学省のこれまでの通常の設置認可のシステムですと、6月の下旬に設置認可申請をしなければならないのですが、その段階では、特に専任教員について、具体的な名前や担当すべき科目等が明らかにされる必要がある。そうでないと、教員としての資格があるかどうかを担当する教科との適合性も含めて審査できないわけですが、他方、派遣する方では、その段階までに、派遣される裁判官ないし検察官を具体的に確定し、名前を挙げることは難しいので、今までのスケデュールでは非常に難しくなるということです。
 具体的な法科大学院の設置認可申請の手続については、これは文部科学省の方に説明していただいた方がいいと思いますが、まだ関係の会議体で検討中で、具体的にどうなるか分からないのですけれども、今申したように、実務家教員の派遣についてはスキームの整備等に時間がかかるので、それを十分考慮した審査手続にしていただきたいという希望を、その会合でも申し上げたところですし、文部科学省で審査手続について検討している会議体にも法曹三者の方が出ておられますので、当然そういう議論はされるのではないかと期待しています。

○田中座長 どうもありがとうございました。それでは、今までの説明につきまして質問又は御意見のある方、どうぞ。

○諸石委員 今、それぞれ御説明を伺いましたように、現職の裁判官、検察官、国家公務員という身分を持つ方が法科大学院に関与していただくということが必要であり、そのためには、何らかの立法措置が必要であるということはそのとおりだと思っています。それにつきましては、一つはタイミングの問題があり、今、井上委員から御説明がありましたように、もう来春に法科大学院の設置認可の手続が行われることとなり、その際にはどのような実務家教員が来るのかが分からないと認可ができない、一方では、派遣のスキームが決まってないから、派遣者の具体的な名前を出すことはできない。
 そうしますと、そのスキームづくり、法案の提出というのを、先ほど法務省から説明がありましたように、できるだけ急いで行う必要がある。それから、文部科学省の設置認可の方を、そのようなスキームができるということを予定して、実務家教員の具体的な人名だとか内容だとかということについては、しかるべき人が来るということを前提とした認可をするとか、その辺のタイミングに間に合うように是非お願いしたいということが一点目です。
 二点目に、先ほど事務局からもお話がございましたように、専門科目の教員について考えますと、特許庁の審査官、審判官だとか、あるいは国税庁の税務大学校の教員とか、公正取引委員会の職員、そういった専門知識を持つ公務員の方の教育を仰ぐ必要が出てくるということが考えられますので、立法的手当をするときに、裁判官、検察官と併せて、その辺の可能性についても考慮し、その道も開いていただければと思います。
 それから三つ目に、報酬をどうするか。これは裁判官の給料を減額するわけにいかないということであれば、裁判官の給料を払って、法科大学院からの手当といいますか、そういうものを国に戻入をするというような形が一番自然かと思うのです。その際に法科大学院の教員の業務という余計な仕事をするために時間とか調査研究の費用とか、そういうことを要するということを考えて、必ずしも100%戻入でなく、ある程度そのような議論をできるような余地を残すとか、そのようなことも御検討いただければと思います。以上、お願いします。

○田中座長 ありがとうございました。

○川端委員 現職の裁判官、検察官が法科大学院に行けるようにする制度は必要だというのはよく分かるのですが、ただ、私が今まで考えていたのは、非常勤あるいはせいぜい担当科目の負担の程度によってはみなし専任という程度だったのです。今、お伺いしていると、特に法務省サイドでフルタイムの法科大学院専任の検察官というような御構想がおありのようですが、その場合、専ら法科大学院へ出て行って教えるというわけですから、要する他職に転職すればいいだけの話ではないかと思うのです。検察官、裁判官の身分を離れて何年間か法科大学院で教えてまた戻って来る。一種のリボルビング・ドアの対象に法科大学院が入るという制度ではどうして不都合なのかという気がしたのですが、その点はどうなのでしょうか。なぜ身分を保ってフルタイムで行かなければならないのかという説明を聞きたいのですが。

○法務省 法務省として必ずフルタイムとして送り込みたいと考えているわけではありません。各法科大学院からどのようなニーズが上がってくるか、仄聞するところによるとそのようなニーズもあるとのことですので、そのニーズがあったときにきちんと対応できるように、また、個々の検察官から見ると、複数の法科大学院から非常勤的な関わりを求められて兼担すると、当該検察官としては検察官の仕事をおよそできなくなってしまう、そういう場合もありますので、制度としてはフルタイムでもパートタイムでも対応できるような制度をつくっておいた方が、いかなるニーズにも対応できるのではないか。そういう問題意識で、制度設計としては幅広につくっておいていただきたいというお願いをしています。

○川端委員 ですから、私がお聞きしたかったのは、フルタイムだったら、法科大学院の先生になってしまえばいいではないか、どうして検察官という身分をそのまま保っていることが必要なのかということです。

○法務省 実務家でなくなってしまうからです。また、安定的、継続的に新しい、フレッシュな新進気鋭の生の実務を担当している人が法科大学院で教えていけなくなってしまうからです。

○川端委員 そうであれば、任期制にして、3年ごとに行き来するという、つまり、いったん検察官を辞めて法科大学院の先生になって、3年間たったらまた検察官に戻っていく、そういう制度はどうして考えられないのか、そのことを聞きたい。

○井上委員 大学側の立場から言いますと、本人のご意思で辞めて来ていただけるなら、それはそれでけっこうなのですが、できるだけ優秀な適任の方に来ていただきたいと考えていますのに、一度辞めて、法科大学院の任期が終わればまた戻るという形しかないということでは、その方は様々な意味で不利益を受けますので、それを覚悟してまで来てくださいとはなかなか言えない。そうなりますと、相当数の適任の方に教えに来ていただくことが継続的・安定的に保証されないように思います。いわゆる一本釣りで、例えばゼミの学生だった人を泣き落としのようにして、申し訳ないけれど、3年くらい不利益をがまんして来てほしいと、そういうことにならざるを得ない。しかし、そういうのは、システムとして健全な姿ではないと思います。同時に、大学側としては、弁護士さんをも含め実務家教員による実務基礎科目を充実させたいと思っているわけですが、これについて平日のデイタイムに授業が組めないと、学生にとっては非常に大きな負担となり、教育効果上よろしくないと考えられます。
 今のままですと、現職の方に来ていただくとすると、夜間や土曜、あるいは場合によっては日曜にも開講しなければならない。しかし、学生には、平日の夜や週末には、翌日ないし週明けの授業に備えて自分で勉強してほしい。しかも、土日のうちのせめて1日くらいは自由な時間を持って、リフレッシュして翌週の授業に望んでもらいたい。そう考えていますので、夜間や週末に授業を入れるというのは、大学としてはできるだけやりたくないことなのです。

○川端委員 私も平日の昼間に現職の検察官、裁判官が授業を持つ必要があるということは分かりますが、それは多分非常勤で入れるのではないか。

○井上委員 大学の方としては、来てくださればよいのですけれど、出す方としては、非常勤でも、本来の勤務時間中に出すことは容易ではないのでは・・・。

○川端委員 だからそういう制度をつくることには全然反対しない。私が一番疑問なのは、フルタイムだったら、まさにフルタイムで大学の先生をやるわけですから、検察官も裁判官も司法制度改革審議会の意見書で他職経験をするべきだというような提言もあるくらいですから、そのような言わば他職経験の一つとして、フルタイムで大学に行けば何も問題ないのではないかということだけなのですが、それがどうしてできないのか。

○井上委員 問題はあるけれど、その問題は軽いと思っておられるのではないでしょうか。

○川端委員 そうです。

○井上委員 それは少し現実離れしているのではないかと思うのです。

○田中座長 他職経験のカテゴリーに入れて検討するというのも一つの方法ではあり得ると思いますし、一番簡単なのは、法科大学院の教員の給与をもっと上げて、検事とか判事よりも、こちらへ来た方が有利だというシステムをつくることだとも思いますので、様々な議論があると思います。

○井上委員 日弁連の方に質問があるのですけれど、先ほどおっしゃったことで、実務家教員は弁護士が中核でなければならないということの意味ですが、そういうことを一つの基準とするべきだということまで意味しているのかどうかですね。そこまで意味しているとすれば、大学側としては、それにはちょっと応じかねるということを言わざるを得ないのです。
 もう一つ、大学の自治や学問の自由への影響について心配していただくのはありがたいのですけれど、現役の裁判官と検察官が教員として法科大学院に加わることには細心の注意が必要だと言われましたね。この「細心の注意」というのはどういうことを意味しておられるのか。大学の自治とか学問の自由というものは、心配していただくまでもなく、大学人が自らの自覚と責任の下に維持していくべきものであります。むろん、大学には様々な考え方の人がいますから、違う意見もあるとは思うのですが、現役の裁判官、検察官の方が来られて、例えばカリキュラムの編成について意見を言われるということによって自治が侵されるとか、教育体系が歪められるというふうには、私などは思えません。大学教員の中にも様々な考え方の人がおりますが、相互に自由に議論をして、その結果として、おかしい考え方は大体淘汰され、バランスのとれた教育体系をつくってきたと自負していますので、そこまで言われるのは少々言い過ぎではないかと思うのです。

○日弁連 日弁連はあくまで基準を決めろということは言っているわけでなくて、そういう配慮をしてもらいたいということを申し上げているだけです。
 それから、もう一つは、大学の自治とおっしゃいましたが、井上委員にそうおっしゃっていただけるので非常に心強いのですが、ただ、大学の自治というところまでは日弁連は言っていなくて、要するに自主性、教育の自主性ということを申し上げているわけです。
 先ほど少し触れましたが、検察官、裁判官が国から給料をもらいながら教育をするということになってくるとどうしてもそこに遠慮が出てくるのではないか。とりあえず組織の人間ですから、組織の人間として、組織が後ろにいるということで遠慮するのではないか、そういうことがあってはならない。あくまで法科大学院の教育というのは、教員が自主的に教育をすべきであって、組織の考え方をそこへ押しつけるというような教育はなされてはならない、こういう趣旨でございます。
 以上でございます。

○井上委員 遠慮というのは、誰が遠慮するのですか。

○日弁連 教員がです。

○井上委員 派遣元の意向を慮ってということですか。

○日弁連 そうです。

○田中座長 それはちょっと、大学側としても問題発言だと思うのですが。

○日弁連 そういうことがなければ、我々は。

○田中座長 そういうことがなければということをおっしゃることも、大学としてはかなり異論のあるところでございまして、そういう発言があるということは、大学としてはかなり深刻に考える話でして、対応の仕方を考えざるを得ないと思います。

○川野辺委員 本当に全くの杞憂にすぎないと思いますし、それをおっしゃるのであれば、弁護士さんも各単位会の弁護士会に所属し日弁連に所属しているわけですから、日弁連の指揮監督下にあるわけで、弁護士としての資格をなくした上で参加しなければならないということにもなり得るわけですから、それは全くの杞憂だと思います。
 司法研修所の教官については、検事、裁判官の身分のまま行っているわけで、それでも何か偏向教育が行われているようなことは全くないですし、そんなことは考えも及ばないことですので、その辺はちょっと言い過ぎではないかと思います。

○今田委員 私は門外漢なのですが、安定的に法科大学院にそのような実務家を供給することを可能とするためには、むしろ裁判官、検事、弁護士の方たちの本務におけるキャリアというものの保証というか、一貫性というか、そういう視点は基本的に押さえた上で派遣なり労働力が供給されるというシステムをつくらないと、法科大学院の仕事が付随的な、余分なといいますか、エクストラジョブのような、エクストラキャリアのような形になると、結局安定的に人材を供給するという制度や仕組みが安定的に構築されないということになるのだろうと思いますので、個人的な志向がどうかという問題ではなくて、仕組みとして、むしろ判事、検事、弁護士の方たちの本務のキャリアを侵さない、きちんとキャリア形成が行っていける、その中の一環として、法科大学院での教育というようなものが位置付けられるというような、そういう制度設計が望ましいのではないかと思います。

○永井委員 そういう送り手の方の考慮も大事でしょうが、受け手の側が、多様な、まさに本当に実務の先端にいる人たちを絶えず継続的に受け入れられるというようなシステムを構築することを是非考慮に入れてほしいと思います。
 それから、もう一方で、先ほど事務局の参事官の方から説明がありましたように、それは何も裁判官、検察官だけでなくて、もっと一般的に広く、そのほか専門的な行政職にいる人についても、ある意味で選択科目との関連において、大学側においてかなり要望が出てくると思いますので、それも是非検討の課題の中に入れていただきたい。
 ただ、余り幅を広げることによって、立案作業が遅くなって設置認可申請に間に合わないというようなことになるならば、二段階ぐらいに分けて、行政官については2年目以降か、3年目以降に入れるという形で、まずは裁判官、検察官の制度を早急につくってほしいというのが、法科大学院の全国的なかなり強い要望なのではないか。それがないと全国に展開されている法科大学院の中ではかなり問題が出てくるのではないか。大手の東京にあるような大学については、実際にほとんど実務家教員の確保についての準備は終わっているような段階でしょうか、そうでもないですか。

○井上委員 そうでもないです。

○永井委員 失礼いたしました。こういう制度は絶対に必要になるので、是非早急にお願いします。

○田中座長 国立大学の法人化と時期が重なっておりまして、制度的な対応が非常に難しく、あちこちの所管が重なる問題でございます。事務局や関係機関から説明がありましたとおり、現職の裁判官及び検察官を法科大学院の教員として安定的、継続的に派遣するためには現行の国家公務員法等の規定を前提にするといろいろ問題があることは周知の事実だと思います。この点につきましては、審議会の意見書におきましても、所要の見直し及び整備を行うべきであるとされているところでありますので、今後事務局におきまして、本日の意見を踏まえまして、関係機関との調整を進めて必要な立案作業について検討していただくことにしたいと思います。
 その場合、何人かの委員の方がおっしゃいましたように、一般職の国家公務員の中にも政策立案や法制面での経験が豊富な職員もいらっしゃるわけですから、そういった職員についても、必要に応じて法科大学院の教員として派遣することができるようなスキームにした方が望ましいのではないかと思われますので、派遣の対象を裁判官と検察官だけに限らず幅広く検討していただくという方向で進めていただければと思います。それでよろしゅうございますか。

○諸石委員 時間が超過していますので手短かに申しますが、司法試験の選択科目につきましては、法務省令で定めるということで、その中身がどういうものになるかということはまだよく見えてこないわけです。
 一方で、各大学において法科大学院設置認可申請に向けて準備をし、その中で先端隣接科目というような形で司法試験の選択科目に連なる学科をどうつくっていくかということについて検討を進めておられると思います。そうした観点から申しますと、選択科目にどのようなものが入るのか、司法試験の試験のやり方というのは具体的にどのようなものになるのかというイメージが見えてこないと、法科大学院のそういう科目のつくり方が非常に難しいのではないか。特に法曹の多様性、法科大学院の多様性ということを申しますと、法学部以外から相当数の学生が法科大学院に来るというようにしよう、例えば技術系の学生を誘引しようと思うと、例えば知的財産権法については技術的なバックグラウンドが必要であるとか有用であるということで、別の分野の法律以外の勉強が無駄にならない、そういう司法試験であるということを示さないと、技術系の有為な学生を引っ張って来るということは難しいのではないか。
 したがって、例えば知的財産であれば、化学、電気、機械というふうないくつかの技術分野、そうした知識を前提とした試験がされるのだというイメージが出せないか。あるいは租税法については、会計の知識、そういったものが活きてくるということになると経営学部の学生を引っ張ることができるのではないか。
 そのようなことを考えますと、この選択科目の具体的な科目名と試験のイメージ、特に法律以外のバックグラウンドがどう役立ってくるのかということをある程度早い時期に示していけたらと思っています。これはこの検討会で議論すべきことなのか、あるいは文部科学省の方で議論すべきことなのかよく知りませんが、いずれにしましても、選択科目の対象についての議論をできるだけ早めに具体的にやっていただければという要望でございます。

○田中座長 司法試験科目自体はともかくとしまして、法科大学院の教育内容の問題については、ここで検討することになると思いますが、そういうことも含めて、ほかにも例えば実務基礎教育科目などについてもまだ検討している問題がございますし、そういうものを含めてしかるべきときに、今、諸石委員がおっしゃったことについて検討する機会を設ける必要があると私自身は思っています。

○片岡参事官 座長のおっしゃるとおりですが、司法試験の選択科目は最終的な決定は、司法試験委員会の意見を聞いた上で、平成16年1月以降に出されるわけですが、当然その決定に際しまして、法科大学院のカリキュラムもそうですが、社会的ニーズを踏まえるということ、そして司法試験の具体的な出題でも、実務的な教育を受けていることを前提に各科目の出題がされるということでございますので、決定権はあくまでこの検討会にはないという前提を確認し、その前提に立ちつつ、社会的ニーズでどういう分野があるか、あるいは実務的な教育について、知的財産や税務の分野における実務教育というのはこういうものではないか、あるいは現場の実務の面から要望される御意見、あるいは現在の検討状況を何らかの形で、しかるべき方からお伺いすることはあり得ると思いますし、実務基礎科目については、既にお聞きするところでは検討が進んでいるということであり、タイミングを見て、そういうお話をお聞きすることもあり得ると思っておりますので、座長とまた進行についてお諮りしたいと思います。

○田中座長 それで諸石委員、よろしいでしょうか。

○諸石委員 はい。

○田中座長 ほかに何かないでしょうか。
 それでは、本日の検討はここまでにしたいと思います。次回の検討会は、引き続き司法修習生の給費制の問題などについて検討会を行いたいと思います。
 本日はどうもありがとうございました。