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法曹養成検討会(第15回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日時
平成15年2月4日(火)16:00〜17:20

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)
田中成明座長、井上正仁、今田幸子、加藤新太郎、川野辺充子、川端和治、永井和之、牧野和夫、諸石光熙(敬称略)
(事務局)
大野恒太郎事務局次長、松川忠晴事務局次長、片岡弘参事官

4 議題
法科大学院の実務家教員の確保について

5 配布資料
資料1法曹養成検討会(第14回)議事概要
資料2法科大学院への裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員の派遣に関する法律案(仮称)について(概要)
資料3法科大学院への裁判官・検察官その他の一般職の国家公務員の教員派遣

6 議事
(□:座長、○:委員、■:事務局)

(1) 法科大学院の実務家教員の確保について

 事務局から、配布資料2に沿って、法科大学院への裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員の派遣に関する法律案(仮称)(以下「教員派遣法案」という。)の立案の方針について説明がなされた後、次のような質疑応答、意見交換がなされた。

○ 「国際機関等に派遣される一般職の国家公務員の処遇等に関する法律」(以下「国際機関派遣法」という。)の立法趣旨は、派遣される国家公務員の処遇が、派遣される国によって非常にバラツキが出ることが予想されることから、給与水準を日本国内で勤務する場合と比較して維持するようにすることが一番の理由なのではないか。

■ 「国際機関派遣法」については、政策判断としてではなく、法制的な規定振りの例として、ご参考にしていただきたいと考えているものである。

○ 「国と民間企業との間の人事交流に関する法律」(以下「官民交流法」という。)では、共済関係等については、「国際機関派遣法」と同様の手当をしつつ、第2条第3項は「職員を、その身分を保有させたまま、当該職員と民間企業との間で締結した労働契約に基づく業務に従事させる」となっており、給与の保証はしてないと理解してよいか。

■ 御理解のとおりであると思う。なお、「官民交流法」の場合の給与は、派遣先との労働契約によって決まることになっているが、派遣先企業との協議において配慮がなされているものと思われる。

○ 資料2によると、「派遣を受けた法科大学院は、派遣された者の報酬等について相応の負担をする。」、「派遣された者が給与その他の処遇面において不利益を受けることのないようにするため、必要な措置を講ずる。」とあるが、「相応の負担」、「不利益の受けることのないよう」の部分について具体的にはどのようなことを検討しているのか。

■ その点については、検討中であり、各委員からの御意見をお伺いしたい。派遣は、派遣される者の同意を得て行われるものの、教員の確保は国の責務とされており、この2点をどのように実現するかということを踏まえて検討する必要がある。すべての法科大学院がしかるべき給与を払えるのならば、給与面での手当は必要でないが、できないのであれば、給与面の手当がないと十分な数の教員を派遣することができず、その結果、国の責務を果たすことができなくなるおそれがある。

○ 「官民交流法」のように、給料の支払いは法科大学院側となることもあり得るし、「国際機関派遣法」のように、国が100%給与を支払うこともあり得ると思うが、目的は安定的に教員として派遣できるようにすることにあるのではないか。

○ 裁判官がパートタイム型で派遣される場合はどのような勤務形態になるのか。

■ 裁判官には、勤務時間という概念がなく、開廷日が通常固定されていることなどから、非開廷日を活用して法科大学院で教えることなどが考えられる。また、裁判官については、報酬を減額できないという憲法の規定があり、国が報酬等を支払った上で、大学から相応の額を国庫に納付してもらうような制度設計を考えている。

○ 裁判官についても、フルタイムの派遣をできることとするのか。

■ 検討中であるが、裁判官の報酬を減額することは問題があると考えており、裁判官についてはパートタイム型での法科大学院への派遣を考えている。

○ 法科大学院の要請に応じ、派遣されるわけであるが、どの程度派遣されるのか。需要に応じきれない場合はどうなるのか。

■ フルタイム型派遣とパートタイム型派遣とを活用することにより、対応したいと考えている。

○ 派遣する側の派遣形式がフルタイム型であるかパートタイム型であるかということと、受け入れる大学での身分(みなし専任、非常勤など)は直結しないという問題がある。受け入れる大学側の給与水準などを考慮した多様性のある制度にしていただきたい。都会と地方にある大学においては、給与水準が大きく異なっているという事情もある。

○ 法科大学院への教員派遣制度は、一種の国庫補助となるものであり、派遣を受ける大学と受けない大学とで不公平となるのではないか。

■ 運用面にわたる点もあると思うが、御指摘の点については留意したい。

□ かなりの大学が自前で準備を進めており、努力している大学が損になるようなことにならないようにしていただきたい。

○ 大学に派遣する場合の具体的な手続のイメージを教えていただきたい。例えば、裁判官の派遣を希望する大学は、最高裁に要請するのか、地方の裁判所に要請するのか。
また、大学が裁判官と個別に交渉をしてから、その裁判官の派遣を要請することもできるのか。

(法務省) 大学は、現在教員編成など法科大学院の開設に向けて準備している段階であると思われるが、実務関連科目を中心にフルタイム、パートタイムなど様々な形態での検察官の派遣の相談を受けている。法務省内にそのための部署(法科大学院開設支援法務・検察連絡協議会事務局)を設けている。派遣先については、地域格差・大学格差が出ないようにしていきたい。

(最高裁判所) 当事務総局審議官室に統一的な窓口を設け、各大学からの要望をお聞きしているところである。裁判官については、現在でも約100名の裁判官OB、また毎年退官者の2割が大学に勤務しており、フルタイム型については、裁判官OBを中心に対応することが可能であると考えている。現職の裁判官については、パートタイム型を中心に対応することを検討しているが、大学が個別の裁判官と交渉しても、職務の割り振り等について調整することが必要であり、その裁判官が直ちに法科大学院で教員として勤務することを保証するのは困難ではないかと考えている。

○ 最高裁判所はフルタイム型の派遣は必要ないと考えているのか。

(最高裁判所) 派遣形態の選択肢は多様であった方がよいと考えているが、法制的な面からも検討する必要があると考えている。

□ 国立大学が独立法人化することも考慮して制度設計をしていただきたい。

○ 本日事務局から示された立案の方針は、いわゆる連携法にある法科大学院における法曹である教員を確保するという国の責務を具体化したものであり、裁判官等を継続的・安定的に法科大学院の教員として派遣することを可能とする合理的なものと考えられるので、この検討会においては、この方向で立案作業を進めていただくということでよいのではないか。

○ 法科大学院が実務家教員を確保することができるよう、国が支援する仕組みは必要であると思うが、いくつか問題点を指摘しておきたい。裁判官は裁判をするという職務の特殊性から憲法で身分保障がされていると考えられ、裁判官の身分を保有したままフルタイム型で派遣することを正面から規定する法律をつくることは問題なのではないか。現に裁判官を辞めて、大学で教員として活躍されている方や裁判官の身分を離れて民間で勤務した方もおり、身分を離れたことによって、不利益とならないような措置を講ずればよいのではないか。検察官等についても、派遣された大学の校風に馴染むことが適当と考えられ、そのためにも教員として派遣される者には法科大学院からのみ給与が支払われるようにすべきではないか。また、複数の法科大学院で「みなし専任教員」としてカウントすることができるようにすべきであるという主張もあるが、「みなし専任教員」の趣旨から考えると、不適当ではないか。

○  大学側にとっては、法曹三者がバランスよく法科大学院に参画することができるようにしていただきたい。パートタイム型で足りるのではないかという意見もあるが、設置基準の実務家の必要数はあくまでも最低限であって、フルタイム型も含めた多様なメニューがあった方がよいのではないか。また、実務家の中には、実務関連科目以外についても教員として適当な方がいると考えている。「みなし専任教員」のダブルカウントの問題については、この制度をつくる以上は、受け入れる法科大学院が判断するのが適当なのではないか。

○ 新しい法曹養成制度を成功させるためには、継続的かつ相当数の派遣が可能となるような制度をつくる必要がある。

○ 安定的・継続的に適任者を派遣できるようにすることが一番の問題ではないか。派遣される者に不利益があっては、制度としてワークしないのではないか。法科大学院の教員となることが、裁判官や検察官等のキャリア形成の一環として組み込まれることも大切なのではないか。

○ 知的財産権など特色ある法科大学院をつくることが多様な法曹を養成するために必要であり、法科大学院への教員派遣制度が法科大学院の教育をサポートするという本来の趣旨から考えると、派遣される教員候補の所属、専門分野、経験年数など大枠の希望を法科大学院から出すことができるような、法科大学院にとって利用しやすい制度になるよう検討していただきたい。

○ 法曹三者と法科大学院協会準備会の打合せにおいては、法科大学院側が大枠の希望を言うことができるような制度にする方向で検討が進められていると聞いている。

□ 基本的には、資料2の立案方針の方向としつつ、本日出た意見をも踏まえて、事務局において引き続き立案作業を進めていただきたい。

7 今後の予定

次回は、今回に引き続き、法科大学院の実務家教員の確保等について検討することとなった。

(以上)