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法曹養成検討会(第15回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日時
平成15年2月4日(火)16:00〜17:20

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員) 田中成明座長、井上正仁、今田幸子、加藤新太郎、川野辺充子、川端和治
永井和之、牧野和夫、諸石光煕(敬称略)
(事務局) 大野恒太郎事務局次長、松川忠晴事務局次長、片岡弘参事官

4 議題
(1) 法科大学院の実務家教員の確保について
(2) その他

5 配布資料
資料1  法曹養成検討会(第14回)議事概要
資料2  法科大学院への裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員の派遣に関する法律案(仮称)について(概要)
資料3  法科大学院への裁判官・検察官その他の一般職の国家公務員の教員派遣

6 議事

○田中座長 それでは、所定の時間になりましたので、第15回法曹養成検討会を始めたいと思います。
 本日は前回に引き続きまして、法科大学院への実務家教員の派遣制度について御検討願いたいと思います。この問題につきましては、明後日2月6日に開催される顧問会議の議題として取り上げられる予定になっておりまして、その前に、本検討会におきましても、教員派遣制度に関する立案の基本的な方針を確認しておきたいと考えまして、前回の検討会でお知らせしました日程に加えて本日この検討会を追加させていただいた次第であります。皆さんお忙しいところ御出席いただきまして、ありがとうございます。
 本日の検討会は1時間程度を予定しておりますので、議事進行につきましても、御協力のほど、よろしくお願いいたします。
 まず検討に先立ちまして、事務局から本日の配布資料の確認をお願いしたいと思います。

○片岡参事官 それでは、本日の配布資料の確認をお願いします。
 資料1は、「法曹養成検討会(第14回)議事概要」でございます。
 資料2は、「法科大学院への裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員の派遣に関する法律案(仮称)について(概要)」でございます。
 資料3は、「法科大学院への裁判官・検察官その他の一般職の国家公務員の教員派遣」というものでございます。

○田中座長 ありがとうございました。

(1) 法科大学院の実務家教員の確保について

○田中座長 それでは、本日の議事に入りたいと思います。前回の検討会では、この法科大学院の実務家教員の確保につきまして、日弁連から弁護士の教員の確保に関する準備状況について御説明いただいた後、裁判官、検察官などの派遣について御検討いただいております。そして、裁判官、検察官などを法科大学院に派遣する制度を整備するために、事務局において必要な立案作業を進めていただくことにし、その際、派遣の対象としましては、裁判官や検察官のほかに一般職の国家公務員についても派遣することができるような制度設計にすることが望ましいという意見を出した次第でございます。
 本日は、その後、現在までの立案に関する検討状況などを事務局から説明していただいた上で御議論いただきたいと思います。ではよろしくお願いいたします。

○片岡参事官 それでは法科大学院への教員派遣制度につきまして、現時点における事務局の検討状況等について御説明申し上げます。資料といたしましては、資料2の「法科大学院への裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員の派遣に関する法律案(仮称)について(概要)」という説明資料と、資料3の図を用いた資料を配布させていただきましたので御覧いただきたいと思います。本日は資料2の記載に沿って御説明申し上げます。
 まず「1」の「趣旨」の部分に記載しましたとおり、この派遣制度の趣旨は、「法科大学院における教育の充実を図る観点から、裁判官及び検察官その他の一般職国家公務員を、継続的・安定的に法科大学院の教員として派遣することを可能にするための措置を講ずる」というものであります。
 昨年秋の臨時国会で成立しました法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律、いわゆる連携法では、法科大学院における教育の充実を図ることや法曹である教員を確保することなどが国の責務として規定されているところであり、このような国の責務を果たすためには、裁判官や検察官等を法科大学院の教員として、安定的かつ継続的に派遣することが必要であります。
 しかしながら、前回も御説明申し上げましたとおり、現行制度では国家公務員法等の兼職制限規定等との関係から、現職の裁判官や検察官等を法科大学院の教員として、安定的かつ継続的に派遣することは困難であるため、教員派遣制度を整備するための新たな立法措置が必要となると考えたものであります。
 この点につきましては、衆議院法務委員会における附帯決議でも、「現職の裁判官及び検察官を含む法曹が法科大学院の教員として安定的かつ継続的に参画することを可能にするため、法制面での措置を含めた所要の措置を講ずるよう努めること」などとされたところでございます。
 次に、「2」の「概要」につきまして御説明申し上げます。
 まず派遣の方式につきましては、「①職務を行いつつ、職務とともに法科大学院の教員としての業務を行う方式(いわゆるパートタイム型)及び②職務を行わず、専ら法科大学院の教員としての業務を行う方式(いわゆるフルタイム型)の2つの派遣形式を整備する」という方向で検討しております。
 現在のところ裁判官についてはパートタイム型の派遣方式を考えており、検察官につきましては、主としてフルタイム型の派遣方式を考えております。
 次に派遣の対象につきましては、前回の検討会における御指摘を踏まえ、「裁判官・検察官のみならず、一般職の国家公務員も派遣の対象とする」という方向で検討しております。これは、法科大学院におきましては、高度の専門性を有する法曹を養成するため様々な法律関連分野についての実務的な教育を行うことが予定されており、例えば知的財産権法、租税法、経済法などの分野において、豊富な経験を有する国家公務員が存在し、大学側にもそのような者を派遣してほしいとの要望があることから、一般職の国家公務員も派遣の対象とする方向で検討しているものであります。
 さらに、その次に記載しましたとおり、「派遣は、法科大学院の要請に応じ、派遣される者の同意を得て行われる」という方向で検討しております。すなわち教員派遣は法科大学院の要請に基づくものであり、法科大学院からの要請があった場合にのみ裁判官や検察官等を教員として派遣することになります。
 また、派遣は、派遣される者の同意を得て行われることとしておりますので、派遣に同意する者を十分に確保することができるような制度設計としなければ、法科大学院の要請に応えることができず、国の責務を果たすことができないということになります。 この関係で、その次の記載を御覧ください。
「○派遣される者は、その身分を保有したまま、法科大学院の教員としての業務を行う。
 ○派遣を受けた法科大学院は、派遣された者の報酬等について相応の負担をする。
 ○派遣された者が給与その他の処遇面において不利益を受けることのないようにするため、必要な措置を講ずる。」 という制度設計とすることを検討しております。
 これは教員として派遣された場合に、給与その他の処遇面において、不利益を受けるのであれば、派遣されることに同意する者を十分に確保することができず、法科大学院の要請に応えることができなくなることから、派遣される者については、その身分を保有しつつ処遇面における不利益を受けることがないような制度設計とするというものであります。
 なお、この場合でも派遣される者に対する報酬等につきましては、法科大学院に相応の負担をしていただくということを前提にしております。なお、この相応の負担の内容や具体的な方法につきましては、関係省庁との間で現在協議・検討を行っているところであります。
 この教員派遣制度の関係で参考になる立法例としまして、国際機関等に派遣される一般職の国家公務員の処遇等に関する法律があります。少し御説明申し上げたいと思います。第1条に規定されておりますとおり、この法律は、国際協力等の目的で、国際機関等に派遣される一般職の国家公務員の処遇等について定めるものであります。
 なお、この制度における派遣先となる国際機関等には、外国の大学も含まれているほか、外国にある国際機関のみならず日本国内にある国際機関をも含むという運用がなされております。
 この派遣制度におきましては、第2条第2項に規定されておりますとおり、「任命権者は、前項の規定により職員を派遣する場合には、当該職員の同意を得なければならない」とされております。
 そして第3条では、「派遣された職員は、その派遣の期間中、職員としての身分を保有するが、職務に従事しない」とされ、第5条第1項では、派遣職員には、その派遣の期間中、俸給、扶養手当、調整手当等々の手当のそれぞれ百分の百以内を支給することができると規定されており、派遣される者が経済的な不利益を受けることがないようにするための措置が講じられております。
 更にこの法律の第6条では派遣職員の業務上の災害に対する補償の関係、第7条では共済組合との関係、第9条では派遣職員に関する退職手当の関係、第10条では旅費の支給の関係、第11条では派遣職員の復帰時における処遇の関係等について規定されております。
 このように派遣される者が、給与その他の処遇面において不利益を受けることのないような措置が講じられており、このような措置を講ずることによって派遣に同意する者を確保しようとする制度設計となっております。
 法科大学院への教員派遣制度につきましても、このような立法例をも参考にしながら、検討を進めているところであります。
 現時点の検討状況は以上でございます。よろしくお願いいたします。

○田中座長 どうもありがとうございました。
 それでは、まず、ただいまの説明につきまして、御意見は後で伺うことにして、御質問がございましたら、まず御質問からお願いいたします。

○川端委員 国際機関等に派遣される一般職の国家公務員の処遇等に関する法律について、ちょっとお伺いしたいのですが、こういう法律がつくられたそもそもの趣旨は、派遣先が様々な国際機関、外国政府の機関その他なので処遇がばらばらで、そういうところへの派遣者を確保するためには、日本国内の給与水準を保障しなければならないということが一番の動機だったと聞いているのですが、それでよろしいのでしょうか。

○片岡参事官 それが一番の動機かどうかという点はともかくでありますが、国際協力という趣旨から、日本の方でも負担をすべきだということで、派遣先によって処遇がばらばらという事実があったかどうか、これはちょっと定かではないのですが、この法律を本日御紹介申し上げた趣旨は、法制的にテクニカルにこういう形もあるということで、政策判断については、これと同じだから法科大学院もこれと同じようにという趣旨ではございませんで、こういう条文の規定振りもあるという趣旨で御紹介申し上げたものでございます。

○川端委員 今の説明のように派遣した場合に不利益を与えないという目的で制定された法律で、国と民間企業との間の人事交流に関する法律がございますね。これと国際機関等への派遣法とを比べると、共済関係で不利益を受けないとか、復職時にもとの地位に戻るように配慮しなければいけないとか、そういうことは同じなのですが、一番大きな違いとして、官民交流法の第2条第3項に、「その身分を保有させたまま」、ここまでは同じなのですが、「当該職員と民間企業との間で締結した労働契約に基づく業務に従事させることをいう」とされていまして、一部給与の保障について、「百分の百以内を支給することができる」というのがない。これは民間企業との契約で決めた賃金を民間企業が払うという趣旨の法律なのですか。

○片岡参事官 御指摘のとおりと理解しております。ただ、そこに人事院規則との関係あるいは任命権者の取決めといいますか、協議が絡んできますので、派遣する先で適正な、適正なといいますか、今の処遇と比べた場合の考慮はなされるということで、派遣先との労働契約関係にあると理解しておりまして、そういう意味では百分の百といった規定はないと理解しております。

○川端委員 この場合、派遣された職員の給与を支払うのは民間側なのですね。それで、本日の(概要)について、先ほど検討中だということでしたので答えられないかもしれませんが、「○」でいうと、概要の5番目、「派遣された者の報酬等について相応の負担をする」というのと、その次の6番目に、「給与その他の処遇面において不利益を受けることのないよう」というのもありますね。これについて、具体的にどのような形にするのかということは、現在検討されているのですか。メニューをいろいろ示していただければ考えやすいのではないかと思うのですが。

○片岡参事官 その点については、現在、具体的なものを検討中で、何かよいお知恵があれば、この検討会でも伺いたいという段階でございます。まず先ほども御説明申し上げましたように、あくまでも法科大学院に派遣される者の同意を得て行うという制度の趣旨と、一方では国の責務として必要な教員を確保して派遣しなければならないという、この二つをどのように結びつけて達成するかということが問題になります。現実的に、一番考慮しなければならないのが、一番下の「給与その他の処遇面において不利益を受けることのないように」ということでございます。
 したがいまして、簡単に言いますと、すべての法科大学院が派遣される者の給与に見合うだけのものを支払うというお約束をしていただければ、少なくとも給与面では、そのような制度は不必要ということにはなろうかと思いますが、すべての法科大学院にそのようなお約束をしていただけるかどうかはなかなか難しいと考えているところでございます。
 難しいといいますのは、画に描いた餅に終わっては、十分な数の教員を派遣することもできないし、あるいは相応の給与を支払うことのできる法科大学院がそろわない結果、違った形での運用をせざるを得ないということになるかもしれませんので、国の責務として、もう少し制度面を整備する必要があるという趣旨でございます。

○川端委員 そうすると、もう少し具体的に言うと、国と民間企業との間の人事交流に関する法律のように、給与の支払元はあくまでも法科大学院というメニューもあるし、それから国際機関等に派遣される一般職の国家公務員の処遇等に関する法律のように、派遣される者の俸給等の百分の百以内を支給することができるという決め方もあり得、両方が検討対象であり、どちらがより安定的な供給ができる制度となるかということから考えるという趣旨ですか。

○片岡参事官 そのとおりでございます。レベルが一段落ちる話かもしれませんが、法科大学院から支払われる報酬と、国が何らかの手当てをするような給与といいますか、そういうものとの関係も問題になろうかと思いますので、その点についても何か工夫なりお知恵がいただければと思います。

○川端委員 法科大学院は自分のところの基準に従って給与を支払い、差額を国が別に補填するというのと、国が派遣される者に俸給をそのまま支払って、法科大学院に自分の相場の給与相当額を国庫に別に納めさせるという、二つのメニューがあると聞いていますが、それは両方ともまだ検討対象なのですか。

○片岡参事官 法科大学院が直接教員に給与を支払うか、あるいは派遣される者は国の責務を果たすために行っているのだから、本来の給与は保証しておいて、その分、受益者負担という観点から法科大学院が国に何らかの負担金を納めるという二つの案があり得ると思いますが、国庫納付させる場合でも、法科大学院が、自分で決めた額だけ納めればいいというわけではないと思うのです。何らかの基準的なもの、相場的なものがあるのではないでしょうか。その点について御意見等、参考となるものをいただければ、更に制度設計を詰めていきたいと思います。

○川端委員 パートタイム型とフルタイム型がありますよね。フルタイム型だとまだ分かりやすいのですが、パートタイム型の場合は、どういうふうにするのですか。

○片岡参事官 特に、先ほど裁判官について申し上げましたが、裁判官については一般の国家公務員と違いまして勤務時間という概念がございません。また、いわゆる開廷日と非開廷日があり、例えば週1日、2日の非開廷日を利用して法科大学院で教える。そのかわり、その裁判官は、24時間365日裁判官なわけですから、土日に仕事をして埋め合わせすれば、本来の裁判官としての職務もできるし、法科大学院の教員としての業務もできるということで、裁判官としての職務を行いながら、文字どおりパートタイム的に法科大学院に行くということになります。
 そして、その場合、これは派遣のスキームそのものから出るというよりも、むしろほかの事情から、例えば裁判官については、憲法上の保障から報酬を減額できないということがありますので、減額できないかわりに、先ほど言いましたように、法科大学院から国庫に相当分を納めてもらうようなことも検討しています。ただ、かなり新しい制度なものですから、そういう制度をうまくつくれるかどうか、まだ詰めを行っているところでございます。

○川端委員 裁判官の場合はそうだとして、例えば検察官の場合だとどうなりますか。パートタイム型の場合の考え方は。

○片岡参事官 これも両方あるとは思うのですが、検察官、一般職を通じまして、裁判官と同じように、つまり本来の給与を減額することなく、そのかわり、法科大学院から納めてもらうという、統一的な制度は考えられないかについても現在検討はしております。

○川端委員 もう一つは、裁判官についてはパートタイム型を考えているというお話でしたが、これは条文上も裁判官についてはフルタイム型の派遣はないという条文にされるおつもりなのか、運用の問題としてそうされるというおつもりなのか。

○片岡参事官 現在、まだ検討中ですが、例えば裁判官についてもフルタイム型の対象とするような制度があればよいのですが、例えば何らかの意味で、本来の給与が減額になるということであれば、裁判官に関する規定振りで問題が出てくることになります。
 一方、検察官についても身分保障の観点からは問題なしとはしないのですが、一般職の国家公務員、検察官の場合は同意があれば、多少の不利益といいますか、給与の減額はあり得るのではないか、そのような制度設計もあり得るのではないかと考えております。そのような意味で、裁判官は、先ほど申し上げたとおり勤務形態が他の国家公務員と異なるという点もありますので、パートタイム型で対応できると、あるいは対応するのが相当であるという考えに基づきまして、給与の実質減額があるということを前提とした制度設計では、ちょっとフルタイム型については規定しにくい、あるいは規定しなくてもいいのではないかと考えております。

○川端委員 それから、法科大学院の要請に応じ、派遣するとのことですが、この要請をどのような形で受けるのかということは、法科大学院側にとっては非常に気になることなのだと思います。何かメニューを決めて、こういう形態があります、どれかにしなさいというのか、それともお宅の法科大学院のカリキュラムの編成上、必要なものはすべて要請を受けますから要請してください、それに柔軟に応じますというのかということについてはどうなのでしょうか。

○片岡参事官 御質問の点についての制度設計は運用にかかわる事項なので余り確たることは申し上げられませんが、例えば要請に応じ、といって、必ず応じなければいけない、10人要請されたら10人派遣するというわけにはいかないと思いますので、抽象的に言うとこういう実務科目を教える教員として一人、あるいは週何回とか何時間というように要請する。あるいはこういう分野の方を、という要請の仕方もありますし、そのようなルールを決めた上で、必要性をお示しいただきながら、要請していただくということになろうかと思います。

○川端委員 供給側は限られるのだと思うのですが、需要が非常に多くて、全部の要請には応じられないということになったときにどうするのかという点、これも微妙な問題ではありますが、非常に実質的な問題として重要だと思うのです。その点についてはどう考えますか。

○片岡参事官 この点については関係機関から、どこまで具体的なお話をお伺いできるかですが、我々としまして、パートタイム型、フルタイム型の二つの派遣形態があり、裁判官の場合はパートタイム型と申し上げましたが、検察官あるいはその他の一般職の国家公務員については、両方用意することによって、派遣できる人間と需要といいますか、お求め、要請に応じて、パートタイム型、フルタイム型を適宜組み合わせることによって対応していただく、場合によってはかなりの部分をパートタイム型で対応するということにもなろうかと思います。あるいはフルタイム型で派遣された人が、ほかの大学でパートタイム型というか、兼任の形で教えるということも考えられますので、フルタイム型とパートタイム型を両方用意しておいた方がよいのではないかと思います。
 裁判官の場合は、逆に今申し上げたいろいろな問題、隘路もあり、また、パートタイム型のみを想定しているということなので、派遣者の数を増やしていただいて、行く時間は週1回か2回でも、行く人を増やしていただくというようなことで対応を考えているところでございますが、もし必要なら、関係機関の方から検討状況について説明をお願いしたいと思います。

○田中座長 御意見も含めてお願いして、必要があれば、また関係者から御意見をお伺いしたいと思います。

○永井委員 派遣元の方にいろいろな形があり得るということは分かるのですが、それを受け入れる大学の方からみると、パートタイム型であるか、フルタイム型であるかは必ずしも受入先の方の身分とは直結しないわけですよね。例えばフルタイム型で来られる方でも、ある意味では客員的に扱うこともあり得るでしょうし、またパートタイム型でもそのパートの度合いによっては、例えば今度の設置基準の客員教授のみなし専任の方に該当するかもしれないし、更には普通の全くの専任ではなくて、例えば特任とか、現在、教員もいろいろ分化しておりますので、その中に入る人もいる。パートタイム型でそちらが送られても、こちらでは普通の専任の方の基準に入る人もいることになりますので、先ほど大学側にも相応の負担をさせるとおっしゃいましたが、普通の専任、特任、客員、みなし専任の客員、それから兼任的な客員、非常勤とかいろいろあるわけですが、その区分によって相応の負担の額が違ってくるのでしょうか。又は、一人派遣を受けると定額的にいくらと決まるのか、いろいろな考え方があり得ると思います。相応というと、ある意味では大学側がその受け入れた者が就任した教員の待遇によって、負担金を支払えばよいのではないかと思っていたのですが、そうではないとすると、率直に申し上げて、東京の私立大学と地方私大では給与水準が全然違うわけです。それを定額的に一律的に額を定められたのでは、地方私大などでは受け入れるということは相当の負担増になります。ある意味で、この制度は言わば各法科大学院に対する一種の国からの財政支援の一環として、法科大学院の教育の充実のため絶えず実務家を循環させるなど、そういう非常に意義のあるシステムだと思うので、それがとれなくなり、いわばそこに格差が出るというのはおかしいのではないでしょうか。各受入先の法科大学院の給与体系等に従って相応の負担をするということが本来は望まれているのではないかと思います。派遣先の方の論理も分かりますが、受入先のそのような多様性も考慮したシステム設計をしていただかなければならないのではないかと思うのです。

○片岡参事官 かなり運用面に関する事項に近い話ですが、御指摘のとおりかと思います。それにあえて加えさせていただくとすれば、派遣される者の、それまで支給されてきた給与が相応の負担額の算定に際し、当然比較の対象になりますし、派遣先でどのような位置付けをされるかにもよります。例えば相当上位の官職を占める公務員が大学内では、助教授とか、あえてランクを下げることによって差額が大きくなるなど、要は給与を出し惜しみした法科大学院が得をするような制度では問題があります。

○永井委員 大学側も、そんな失礼なことはしないのではないでしょうか。むしろ地位に応じた対応をするのが普通だと思います。

○片岡参事官 私どもが現在考えておりますのは、法科大学院から要請があり、その次に最高裁判所あるいは任命権者と取決めをしていただくことになりますが、取決めをするに当たっては、そこで協議なりが行われ、そういう意味での相応の負担というものが決まっていくのだろうということです。
 派遣される者が不利益を受けることがないように、国のバックアップが定額なり一定割合あることを踏まえて報酬を決めるというような低値安定になることは考えておりませんので、あくまでも法科大学院と最高裁判所又は任命権者とのお話が前提になるのではないかと思います。

○川端委員 そこが問題になっている部分だと思うのですが、要するに教員の派遣を受けると、一種の国庫補助を受けた形になる。もともとどうやらただで来てくれるという噂が広まったという経緯がありますが、そうなると派遣を受けるところは国庫補助を受けたことになるし、うちは要らないというところは、国庫補助を受けてないということになって、そちらの面での不公平感というか、もらった方が得だというような気分が広がるというおそれもあるのですが、その辺についてはどうなのですか。

○片岡参事官 その辺についてはむしろ御意見をお伺いしたいところですが、我々が考えているのは、派遣される者に不利益がないように、その者に何らかのバックアップをしようと考えているわけで、それをあえて国庫補助であって、しかも国庫補助を法科大学院にしてはいけないという御議論であれば、御意見を伺いたいと思いますが、国庫補助と結びつけて気にされるようなものかどうかということについては、ちょっと私は答えに困るというのが正直な感想です。

○田中座長 かなりの大学は既に自前でいろいろ努力しているわけですから、そういうところが不利益を受けるということのないように配慮をする必要はあるとは思いますので、個人個人の派遣される方に対する配慮と、それから大学の中で一生懸命努力しているところが割を食うことがないように配慮して制度を設計する必要はあると思います。

○諸石委員 要請、派遣のやり方をどうイメージしたらいいのでしょうか。つまり、法科大学院と任命権者が契約をするというときの任命権者とは、例えば裁判官だったら最高裁であり、検察官だったら法務省ということになるのですか。あるいはそれぞれの所属する地方裁判所とか何々地検とかということになるのでしょうか。多分全国的、一元的に派遣の要請を受け付けられるのではないかと想像するのですが、例えば最高裁でそういう窓口をつくったら、法務省でも窓口をつくる。あるいは各弁護士会でも、この制度の話ではないかもしれませんが、窓口をつくり、そこへ法科大学院が要請をして人選等をする。そういうイメージでよろしいのでしょうか。
 もう一つ、既に各法科大学院がいろんな努力をしているようですが、いわゆる一本釣りというと言葉は悪いかもしれませんが、個別に話をつけてきて、その上でこの制度にのせるということも、このような場合も任命権者の承諾などがもちろん必要になるのでしょうが、そういう方法もあるのでしょうか。具体的な運用のイメージをどう考えたらいいのでしょうか。
 先ほど、国が派遣される者の給与を全額支払っておいて、法科大学院が国に戻入するのと、法科大学院が派遣される者に給与を支払って国が別に支給するのとが、両方あり得るとおっしゃったのですが、その後者の場合に、例えば年金だとか労災補償だとか、いろいろなそういう附帯的なところで不利益を被ることはないのでしょうか。国が派遣される者の給与を全額支払っていて、法科大学院が国に戻入するのだったら、本人の処遇は全く変わらない。附帯的なところも変わらないのでしょうが、国と法科大学院の両方から給与の支給を受ける方式のときに、何か不利になることはないのだろうかということが心配なのですが、その辺については、いかがでしょうか。

○田中座長 まず派遣の仕組みをどのように考えていらっしゃるか、法務省と最高裁の方から御説明いただいて、その後、最後の御質問については事務局にお答えいただきたいと思います。

○法務省 私どもの方で非公式に多数の大学関係者からお話を承っておりますが、各大学ともそれぞれの御準備、カリキュラムや教員の編成その他、確固たる御要請にはなっておりませんが、特に実務関連科目について、裁判官あるいは検察官を派遣してほしいという御要請は多々あります。ただ、勤務形態については、いわゆるフルタイム型、常勤的なものについて希望されている方々、また非常勤的なものについて要請されている方々もあり、まちまちな状態です。
 常勤的な関わりを求めて来られる大学の方々の御事情もまだ、本当にフルタイム型が必要なのかどうかなど、詰めたお話はまだ伺っておりませんが、いずれにしても、多数の方々から公式の御依頼があった場合には、各大学の機会均等や、地域的なバランスに差異が生じないような考え方で対応していきたいと思っております。

○田中座長 窓口はどうされるのですか。

○法務省 窓口は、法務省に特別の部内的なチームとして、法科大学院の設立準備支援の事務局のようなもの、部内的な呼び名ですが、そういうものをつくっております。私どもの方にお問い合わせいただければ、そこにもつなげますし、直接お問い合わせいただいても差し支えないと思います。

○最高裁 この派遣のスキームがどうなるかは、今まさに御議論いただいているところなのですが、統一の窓口を最高裁につくった方がよかろうということで、最高裁の審議官室に「法科大学院設立支援プロジェクト・チーム」をつくりまして、各大学の御要望をまずお聞きして対応を考えていこうと考えております。

○田中座長 日弁連については前回お伺いしました。

○諸石委員 直接候補者と話をつけて、その窓口へお願いするということもあり得るのでしょうか。

○最高裁 裁判所の方は、フルタイム形態のものはOB中心になるのではないかと考えております。と申しますのは、現在、法学部や大学院で現に教鞭をとっている、あるいはこれからとることになりそうだという元裁判官は約100名おります。毎年裁判官を退官する人の大体2割ぐらいは大学関係で第二の人生を歩む場合が多うございます。現役の裁判官については、まだこれはスキームがどうなるか、これからですが、非常勤形態で、みなし専任の形と純粋な非常勤の形により、特に地方の場合にはなかなかOBの数もございませんので、地方についてはそのような形を主力に考えてはどうかと思います。
 そういう意味で、私どもは、現役の裁判官の派遣を念頭に置いておりますので、一本釣りといっても、派遣される人の仕事の調整をしなければならず、一本釣りというわけにはいきません。最高裁の方にそういうお話をしていただいて、その裁判官のいる裁判所の仕事に支障が生じることがないよう、どのように配置なり、仕事なりの内部調整をするかということを考慮しつつ対応を考えさせていただくという運びになるのではないかと考えております。

○川端委員 裁判官の身分を保ったままフルタイム型で派遣するという選択肢というかメニューをつくっていただかなくてもいいということなのですか。それともそれもあって差し支えないからつくってもいいということなのでしょうか。後で意見を申し上げますが、この点は私にとって重要な部分になりますので、最高裁としてはそれがなくてもいいということなのかどうかということをお伺いしたいのですが。

○最高裁 スキームは多様で、選択肢はたくさんあった方がいいのですが、あとは法制的にどう検討していくかということでございますので、まさにこれは現在御検討をいただいていると考えています。

○片岡参事官 先ほど派遣される者の年金等について不利益はないのかとの御指摘がありましたが、国家公務員としての身分を保有することによって不利益が解消できる部分はあるわけです。それから、個別の法令の適用について、派遣先の職務を公務とみなすという国際機関等への派遣スキームと同様に、条文を一個一個置いていくという方法でも不利益を解消することはできます。問題は、給与についてでありますが、フルタイム型であってもパートタイム型であっても、給与はそのまま100%国から支給することにして、受益者負担の観点から、法科大学院が相当な額を国に納めるということでいいのではないかというお考えがあることも念頭に置いているわけですが、ただ、フルタイム型で派遣される場合に、派遣された先の法科大学院から受ける報酬ですべて賄うのが理想といいますか、あるべきといいますか、まずは取決め等に基づいて法科大学院に報酬を支払っていただいた上で、派遣される者が不利益を受けることのないようなバックアップとして、何がしか国が考えるというものではないかと考えておりまして、どちらかというと、フルタイム型の場合は先に100%の処遇保障ありきではないと、そういう考えをとりつつあるということです。

○田中座長 先ほど永井委員がおっしゃったことに関連するのですが、国立大学も法人化の問題を抱えておりまして、国家公務員を教員として受け入れるとき、どのような形になるかということが非常に不透明になりますので、制度設計のときにその点についても十分配慮していただく必要があると思います。

○加藤委員 この資料2に書かれた制度について、この検討会でどのような議論をすべきかということにかかわるわけですが、振り返ってみますと、新しい法曹養成システム構築のための議論を重ねて、いくつかの法律が制定されて、ようやくここまで来たなと、こういう感じを持っています。
 特に連携法で実務家を法科大学院に派遣すること、法科大学院の教育の充実のために協力することは国の責務になったわけですから、それを具体化すると、この資料2のような派遣の枠組みになるということは一つの具体的な形だと思いますし、今、質問とお答えを聞いていまして、一応合理的なものというように考えられます。安定的・継続的にバランスよく法曹三者、弁護士はこの法律による派遣の対象ではありませんが、裁判官、検察官、行政官が、バランスよく法科大学院の教育に参画することをスムーズにするために、このような派遣の枠組み、このような法律をつくってもらうことは必要であると考えますので、この検討会としては、そのように合意したという方向でよいのではないかと思います。

○川端委員 ただいまの御意見とほぼ同じでありながら少々違うところがあるのですが、法科大学院は国がこれから発展させていくのだということでこのような仕組みをつくることに意義があるということについては私も全く同意見なのですが、いくつか問題があるのではないかという気がどうしてもいたします。
 一つは、裁判官については、フルタイム型は法律上規定しないということになれば、全部解消してしまう問題ではあるのですが、裁判官が憲法上の特別の地位を有しており、特に報酬についても保障されているのは、裁判をするからなのです。裁判官の身分保障とは、裁判をする立場、そういう身分にあるということを守るための規定なわけで、逆に言えば、裁判をしない裁判官というのは憲法上おかしい存在になってしまうのではないのでしょうか。それを正面から規定するような法律をあえてつくる必要があるのかどうか、ということを考えると、フルタイム型で身分を保障した派遣ということを考える必要はないのではないかと考えます。
 今までも裁判官をお辞めになって大学の教員になって、その際、実際問題として給料は大幅ダウンという方はたくさんいらっしゃったわけです。辞めて完全に大学に移る場合だけでなく、一時期何年か大学で教員としての業務を行い、また裁判所へ戻ってくるということに対する人事政策上の配慮があれば、今までよりも自由に大学に行けますから、裁判官が一時裁判官の身分を離れて大学教員に専念して、その間、今まで自分が行ってきた実務を理論面で振り返って業績をまとめるとか、あるいは実務の改善策を考えるとかというような仕事をすることは有益だと思います。もちろんそのまま教員になってもいいですし、戻る道が保障されていれば、また裁判所に戻っていくということでもいいと思います。
 その間、一時的に裁判官の身分を離れたことによる不利益はできるだけ少ない方がよいでしょうから、そういう方のために何らかの制度をつくることは、それはそれでよいのではないかと思います。
 ただ、現実に例えば預金保険機構に派遣された判事補の方は、派遣されていた期間が判事補としての経験期間にならないので、その期間の分だけ判事になれる期間が遅れるわけです。その判事になることが遅れたことによる生涯賃金への影響は非常に大きいと思うのですが、それでも他職経験として、預金保険機構のようなところへ行って社会経験を積むことが自分の裁判官としてのキャリアにとって非常にプラスだと思うから志願して行かれているということだと思います。
 そういう実例があるわけですし、裁判官というのは特別な身分なのだから、身分を保ったまま裁判はしないというような制度を考える必要はないし、今まではそういう場合は、辞めてその組織に行くことが自分のキャリアにとってプラスになるからということで現に行かれているのだから、それを踏襲すればいいのではないかと思います。
 それから、そのほかの一般職の国家公務員、検察官については、この制度について大きな異存はないのですが、タイプとしては、国と民間企業との間の人事交流に関する法律型であるべきではないのか、こちらの方が今考えている制度によりふさわしいのではないかという気がします。
 したがって、まず法科大学院から給料を支払い、差額の補填については別途考慮することとすべきであると考えます。先週、2月1日に京都大学で開催されたシンポジウム「法科大学院における実務基礎科目の教育」で法務省の法科大学院開設支援法務・検察連絡協議会事務局長は、派遣された法科大学院の家風に染まるべきだとおっしゃっていましたが、そうだとすれば、給料もそこから支給される方がよいのではないかということがありますので、そのタイプの方が私はよいのではないかと思います。
 ただ、その場合も、検察官がどのような形で行くのかということについて、特に地方の場合、捜査・公判をやりながら法科大学院にパートタイムで行くのは非常に難しいという事情は、先週のシンポジウムで私も何となく納得しましたので、身分として捜査・公判から切り離された法科大学院専任担当検察官にはなるということは考えられると思いますが、どこかの法科大学院の専任になるということは、特に地方の場合は必要ないだろうと考えます。つまり刑事訴訟実務という科目を考えても、2単位の科目ですし、どこかの法科大学院のフルタイムの専任教員になった場合に他に何を教えるのでしょうか。そうすると、みなし専任プラス非常勤をいくつか掛け持ちというのが、その人だけでやるか、あるいはほかの研究者教員なり、ほかの法曹三者と協力してやるかはいろいろでしょうが、需要に一番ぴったり合うのではないでしょうか。
 これは運用の問題になってしまうかもしれませんが、そういう制度が本当に必要なのかということを考えて制度設計していけばよいのではないかと思います。検察官についても他職経験が必要だということは言われているわけですから、身分を離れて専任教員になることは、その機会にもなるだろうということも考えるべきです。
 もう一つ、検察官で心配なのは、法務省が文科省の中教審と設置審議会でみなし専任をダブルでやるという制度を認めてくれということを言われておりまして、私も緊急避難的にはしようがないと思っていたのですが、よく考えてみると、みなし専任という制度は、本当は専任ではないが、専任教員の最低基準を確保する関係で、例外的にそれを緩めてみなしてあげましょうという制度なので、その同じ制度を2つの法科大学院が利用し合うというのはおかしいわけです。一人の教員についてそれが利用できるのは一校であるべきで、そうでないと専任教員の数を確保して教育の水準を保とうとした趣旨と違うのではないでしょうか。
 もう一つは、みなし専任が二つだと一体どちらの家風にその検察官はお染まりになるのですか、ジキルとハイドのようなことができるのですかということにもなるので、その必要が本当にあるのかということについては、現時点では私は疑問に思っています。それを前提とした、つまりみなし専任はダブルでは認めないということを前提とした制度設計でよいのではないかと思います。
 とりあえず、この制度について、私の意見を申し上げました。

○諸石委員 今の御意見を伺って、ああ、なるほど、そういうこともあるのかなと思った点も多々あるわけですが、例えば裁判官というのは、裁判をやるから裁判官であって、裁判をやってないなら裁判官の身分を離れるべきだということですが、例えば最高裁事務総長という方は、裁判官の身分は持っておられないのでしょうか。あるいは、今まで司法研修所の専任教官になる場合は、裁判はされていないと思うのですが、そのとき、身分を離れて行っているのでしょうか。
 もし、そうでないのだとしたら、今まで何十年もそうしていて、日弁連はそれについてどうして文句を言わなかったのかということがよく分からないのですが。

○川端委員 それについては前から疑問があった問題ですが、ただ、裁判所の組織内にはとどまっているわけです。例えば法務省に行くことになれば、裁判官の身分を離れて充て検というのでしたか、裁判官の身分を離れて検察官になる。ほかの国家機関に行く場合もそうだと思います。裁判官という身分のまま行くわけではないのです。
 民間に行くとなると非公務員になってしまう、そのような制度で今まで来ているわけで、その意味では、今までの趣旨と一貫させるには、裁判官の身分を保ったままのフルタイム型の制度を認める必要はないと言えるのではないかと思います。

○井上委員 裁判官は特別の地位で、憲法上も身分も保障されているからフルタイム型は必要がないと川端委員は言われました。しかし、それは必要がないのでなくて、そういう地位とそういう形でフルタイム型で派遣することが矛盾しないかどうか、適合するかどうかという問題で、そこは意見が分かれるところだと思います。必要性から言うと、我々受け手の方としては、いろいろな形で法曹三者ともバランスいい形でコミットしていただきたいということが我々の願いなのです。
 それに対し、パートタイム型で足りるではないかということだと思うのですが、しかしコミットの度合いによっては、パートタイム型といいながらほとんどフルタイム型に近い形のコミットをしていいただきたいという需要もあるのです。先ほど実務関連科目だけを念頭に置かれましたが、大学の既存の教員の側も必ずしも十分手が足りているわけではなく、また実務家の中には、我々から見て、ある程度と言ったら失礼ですが、ある程度基本科目を担当するのに適任の方もおられて、そういう人は基本科目を担当されてもおかしくない。それは川端委員も年来おっしゃっていたことではないかと思うのです。
 ですから必要性についての実情がよくお分かりになっていないのではないかということが一つと、もう一つ、裁判官について、パートタイム型であっても、法科大学院に勤務している間は、川端委員が言われる狭い意味での裁判官の職務は行っていないわけです。フルタイム型であろうとパートタイム型であろうとその部分は変わらないはずなのです。ですから、身分を保有しながら、法科大学院で教えていただくということは、教えているということが、本来の裁判官の職務と必ずしも矛盾しない、そういう特別な仕事なのだというふうに捉えていただかないと、川端委員のような根本的な疑念を持たれると、およそ身分を離れるということでないとおかしくなるはずなのです。
 もう一つ、検察官についてフルタイム型が必要でないと言われましたが、それぞれの大学によって検察官の必要数が違っていますし、かなりの人数の実務家教員をお迎えしたいと考えているところには、例えばフルタイム型で教授会の構成員にもなっていただくというときに、構成メンバーのバランスをとりたいと考えているところもあるわけです。そういうときに困るのではないでしょうか。また、議論の前提として、必要最低数だけを数えられていると思うのです。例えば少ないところは一人でよいではないかというように。ところがもう少し実務家の方に深く関与していただいた方がよいと考えるところは必要最低数以上採ってもよいわけです。これについても年来、むしろ弁護士会の方などが、大学人だけに任せてよいのかと主張されていたわけで、そういうことを考えると、むしろ多様なメニューがあった方がよいのではないかと思うのです。
 最後にみなし専任のダブルカウントの話ですが、みなし専任というものも、十分専任であるという制度設計をした以上、みなしというのは非常に特殊な制度であって、できるだけない方がよいという発想には立たない方がよいということと、2つのロースクールに属すると家風がそれぞれ矛盾するではないかということは、各ロースクールが判断することであって、ほかのロースクールのみなし専任の人に、うちに来てもらったら、うちの家風を乱すと考えるところはそういう人を採らなければよいので、そういう道を統一的に閉ざすのはおかしいと思うのです。
 そういうことで、かなりの部分について、川端委員の意見には反対です。

○永井委員 私も今回の派遣のシステムというものは、この司法改革をある意味では成功させるということを第一に考えていくならば、今、井上委員がおっしゃったように、おそらく今回は継続的にかなり大量の裁判官、検察官が派遣されることになり、しかもそれが循環しなければならない。そのような循環システムとして機能するような、そういう制度設計とするということを第一に考えていただきたいので、裁判官の身分がどうのといっても、今、井上委員がおっしゃったようにいろいろな考え方があるわけで、そこの細かいところで議論をして、この制度が十分働かなくなるようなことは、日弁連にも避けてほしいということを要望したいと思います。

○川端委員 私の意見は日弁連の意見とは違うのですが、パートタイム型とフルタイム型との間には、パートタイム型であっても裁判を現にしている以上は、その人の身分が保障されなければいけないという絶対の要請があるのと、フルタイム型になってしまえば、大学の先生なのであり、大学の先生として身分を保障すればよいではないかという、非常に大きな違いがあると思います。それを同一視するというのは、裁判官に特別の身分保障がされている趣旨と合わないのではないかと私は思います。
 それから、いろいろな形態で派遣できる方がよいというのは、私もそれはそうだと思います。それから、みなし専任というのは、いわばやむを得ず取り入れた制度ですが、弁護士はほとんどみなし専任でいくわけですから、みなし専任それ自体が悪だということを申し上げているわけではありません。二つの学校が一人の人をみなし専任としてカウントするというのは、もともとの制度の趣旨から言うと、非常におかしい制度にならざるを得ないのではないかということです。
 実際問題としても、メニューとしてはみなし専任プラス非常勤をいくつかという形で、法務省が求める、ある特定の人が法科大学院の教育という業務のみに従事しているという状態は実現できるし、どこの専任でもなければ、全部非常勤で、どこにも籍がないという状態でもないということでもその要求は十分満足できると思いますので、これは運用の問題ですが、法務省にはそこを考えていただきたいということです。
 私も、この制度について、全体としてはよいと申し上げているわけで、国と民間企業の間の人事交流に関する法律でも、共済組合や復帰後の人事等の面で不利益を受けないことについて、国際機関への派遣法と同じようなシステムがある。そういったものについてはこの制度にも恐らく必要だろうし、立法すべきだと思います。
 ただ、そういう制度をつくる場合でも、裁判官が、身分を保ったままフルタイムで法科大学院へ行くというようなことは今までしたことがないわけですから、そういう新しい制度をつくるまでの必要はないだろうということを特に申し上げたいのです。

○諸石委員 今までなかったということについては、そもそも今までは法科大学院がなかったのだからそうだろうと思うのですが、川端委員のおっしゃることは、私はもう一つ理解しかねるのです。裁判をしない裁判官は裁判官とは言わないのだということですが、しかし、裁判所の組織の枠内におれば、裁判をしなくても裁判官として認めてやろう、だから今まで何十年も文句を言わずにそれは認めてきたということですね。
 また、パートタイム型については、そのときには裁判官の身分を保持しながら、裁判以外のことをすることになるが、それ以外のときに裁判をしていたらよいだろう、しかし全部裁判以外のことにかかりきる場合は駄目で、かつ、その裁判官が裁判所のコントロールから出たら駄目だと、こういうことなのでしょうが、どうしてそういうことになるのかがもう一つ分かりにくい。裁判官というのは裁判だけをやっておればよいので、法曹の後継者を育成するなどということは法曹の責務ではないと、こう言うのであれば分かりますが、裁判をしない裁判官というのも現にあるし、あってもよいのではないでしょうか。その裁判官がどこの組織に入っていようが、フルタイム型だろうがパートタイム型だろうが、五十歩百歩というか、似たようなもので、せっかく新しい制度をこうしてつくって、法曹三者を含めて全面的に支援して育てていこうというときに、いちいち目くじらを立てる必要があるのか、そこまで言わなくてもよいのではないかという気がするのです。

○今田委員 枠組みができて、実行上それを実現するための具体的なレベルではいろいろなプランなり案が出てきて、それぞれに問題が出てくるということはある程度予想するわけですが、一応ここでは大原則ということについて議論するという、そういう前提に立った場合、この資料にありますように、これはこの大改革の最後の締めのような議論であり、安定的・継続的に適切な実務教育が行える適切な人材を選別し送り込むという、このシステムをどう制度的につくるかということ、これが最大の問題なので、個々の細かい問題は適切に処理するという、そういうスタンスが重要なのだろうと思うのです。
 裁判官や検察官が、この実務教育を行うポストにつくことによって何らかの不利益を被るような制度ならば、これは全くなし得ないわけですから、それを最大の準拠点として、うまく知恵を出し合ってこの制度をつくるということが重要なのだろうと、改めていろいろな問題が指摘される中で思った次第です。
 重要なのは、裁判官や検察官がこのポストにつくということが、彼ら自身のキャリア形成の一環として組み込まれるということなのだろうと思うのです。何か特殊な責務とか、エキストラジョブとか、そういう位置付けであれば、この案はうまく成功しないのでしょうから、そういう観点から、弁護士の場合もそうだと思うのですが、彼らの大きなキャリア形成の観点から、このポストというものをどのように位置付けるか、それをうまくやるための制度設計ということが一つ。
 もう一つは、送り込む大学の方について、現在、大学もいろいろなポストが多様化した就業形態というか、そのような方向になっているので、現在、改革の過程にあると思うのですが、実務教育を行うという、法科大学院の中でのこのポストの在り方というのが、どうもお話を伺っていると分かりにくい。いろいろな形態があるのではないかというようなお話なのですが、今申し上げたように実務教育というのは、これまでの法学部の教員の教育とは異なる新しい形態になるのですから、そういう意味からいえば、そのような実務教育を行う人たちを大学側がどういう形で受け入れて、改革の趣旨に合うような実りのある実務教育をやっていただくためにはどういう制度が一番合っているのか、そういう教育的な視点から、この制度について、いろいろ難しい実態上の問題はあろうとは思うのですが、議論をしていただいたら、もう少し分かりやすかったのではないかというのが私の感想です。

○牧野委員 確かに派遣される場合の身分というものも大事なことは大事なのですが、各法科大学院の方で、こういう実務、こういう経歴、こういうバックグラウンドを持った裁判官に是非来ていただきたいというような、法科大学院側のニーズといいますか、それにできる限り応ずれば、法科大学院制度全体がよい方向に向かっていくと思います。特に今回法科大学院の制度をつくって法曹を増やすという目的の一つとして、多様な法曹、特に知的財産ですとか国際取引、そういう特殊な分野に特化した法曹を養成するという観点からしますと、例えば知財に強い法科大学院をつくりたいという場合に、こういうバックグラウンドを持った、あるいはこういうポジションに今いらっしゃる裁判官の方、公務員の方、具体的にこういう方がほしいという要請は当然あると思うのです。
 ですから、そういうものにできるだけ応じていただけるような仕組みといいますか、一番よいのは、ここまで言ってよいかどうか分からないのですが、名簿のようなものを出していただければ、法科大学院の方では、この方がよいと選ぶことが可能になります。先ほど諸石委員からお話があった、事前に話をして、合意をした上で、この制度にのせるという方法が一番よいのでしょうが、そういうつてのない法科大学院もたくさんあると思いますので、そういう法科大学院側からの要請に応じた、利用しやすい制度という観点から考えていただければと思うのです。その観点からすれば、特にフルタイム型でという必要もないかもしれませんし、ひょっとしたらパートタイム型だけでも需要は全部満たせるかもしれませんが、いろいろなタイプは用意しておく必要があると思います。ただ、制度設計としては難しいと思いますが。

○井上委員 先ほど法務省、裁判所の方から窓口の御紹介があって、私も法科大学院協会の設立準備会の方で、法曹三者の方々と教員派遣の問題について話し合うワーキングに出ているものですから多少の知識は持っていますが、その窓口の方では、各法科大学院のニーズを聞いていただけるということです。ただ、当然ニーズに応じて出していただけるというわけでは必ずしもないとは思うのですが、こういうニーズがあり、こういう形態で、自分の方はフルタイムがほしい、パートでほしい、パートとしても、どのぐらいの授業負担で何を教えてほしいんだと、こういうことには相談に乗っていただけるということですので、恐らくそういう中で調整していくのではないかと思います。
 先ほどの受け入れる方の処遇の面では、フルタイム型の方はできるだけ通常のフルタイムと同じ、他のフルタイムの教員と全く同じ扱いにするという考え方もあれば、多少の違いはあるけれども、基本としては同じとするという考え方もあります。少なくともみなし専任までは、設置基準等で、カリキュラム等の教育を中心にした運営に実質的に参加するということになっていますので、それを基本に各大学は考えているはずです。私の周囲に関する限りは、フルタイム型の方は他の教員と全く変わらない形で参加していただきますし、みなし専任の方にはカリキュラムを中心に、あるいは単位の認定とか、そういうことには全く同等に参加していただくことを考えています。
 田中座長が言われたように、今大学も流動期なので、今までですと、完全な常勤かそれに近い形か本当のパートしかなかったのですが、その中間的な形態でもう少し実質的な関与の度合いも処遇も手厚いが、しかしフルタイムではないというものもあった方がよいのではないかということで、そういうことも含めて各大学とも検討していると思います。

○田中座長 いろいろ御意見をいただきましたが、基本的な点はこういう方向で検討しているというのが、いわゆる連携法の趣旨を実現するために必要でして、今いろいろ御指摘いただいたような問題点もございますし、パートにしろ、フルタイムにしろ、井上委員がおっしゃったほかにも、公立と私立ではフルタイムの理解が異なっているところがありまして、とにかく大枠が決まらないと次の議論が進みませんので、一応本日の意見を踏まえていただいて、教員派遣に関する方向については、基本的には事務局から説明があった方向で進めていただくということにしてよろしゅうございますでしょうか。

○川端委員 ちょっと質問なのですが、具体的な条文をつくられますよね。それはまたここにかかるのですか、それともかからないのですか。

○片岡参事官 法案の確定的な条文という形では閣議決定がなされるまではお示しできないとは思います。

○川端委員 条文に近いものも示されないのですか。

○片岡参事官 検討会の日取り等の関係もありますので、本日御説明した趣旨で、御了解いただければ作業を進めたいと思います。場合によっては適宜御説明に伺うこともあり得るという前提で御了解いただければと思います。

○田中座長 その辺りは適宜、各委員の方々に御相談しながら進めさせていただくということで、また、本日いろいろ御指摘いただいた問題点を踏まえながら、それに沿えるような仕方で対応していただくことにしたいと思います。
 次回の検討会は、2月12日午前10時半から、場所は本日と同じこの会議室を予定しております。次回は奨学金制度につきまして、文部科学省の担当者の方から御説明いただくということと、それから関係者の間で法科大学院における実務基礎教育の在り方についての検討が進められておりますので、その問題につきまして、神戸大学の磯村保法学部長から説明を受けたいというように考えております。
 さらに本日、御議論いただきました教員派遣制度につきましても、進展がありましたら、事務局から説明を受けるということにしたいと思います。
 どうもありがとうございました。