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法曹養成検討会(第18回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日時
平成15年7月14日(月)10:30〜12:35

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第2会議室

3 出席者
(委 員)
田中成明座長、井上正仁、今田幸子、加藤新太郎、川野辺充子、川端和治、木村孟、ダニエル・フット、永井和之、牧野和夫、諸石光熙(敬称略)
(事務局)
山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、松川忠晴事務局次長、片岡弘参事官

4 議題
(1)司法修習生の給費制の在り方について
(2)法科大学院の教育と司法試験等との有機的連携の在り方について
(3)その他

5 配布資料
資料1法曹養成検討会(第17回)議事概要
資料2知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画(抄)
資料3実務家の視点による法曹養成制度における知的財産権教育の在り方について中間まとめ

【文部科学省提出資料】
資料 平成16年度開設予定の法科大学院の設置認可申請(計画)状況

6 議事
(□:座長、○:委員、■:事務局、●:説明者)

(1)司法修習生の給費制の在り方について

 司法修習生の給費制の在り方について、事務局の説明の後、以下のような意見交換が行われた。

○ 新たに法科大学院制度が発足し、法科大学院入学から司法修習を終了するまで5年弱かかることになる。司法修習生の給費制の在り方については、新たな法曹養成制度全体の視点から検討する必要があるのではないか。その際、特に国立大学と私立大学のイコール・フッティングの視点を重視していただきたいし、法科大学院の学生については、日本育英会の有利子奨学金の貸与月額の上限を現在の13万円から例えば20万円まで増額することや私学助成を充実させることなど法科大学院に対する財政支援を充実させ、全体として学生の負担を軽減するようにお願いしたい。法科大学院の学生に対する財政支援が小さいままで給費制を廃止することになれば、法曹になる者が経済的理由によって選別されることになってしまう。

○ 法科大学院に関する助成という点については、国立大学と私立大学とで考え方が対立するものではないが、国立大学の役割の一つには、それほど金銭的に余裕のない者にも高等教育を受ける機会を確保するということがあるのではないか。社会人が職を辞めてかなりのリスクの下で、法科大学院への入学を考える上で、授業料や奨学金について関心が極めて高い状況にある。財政支援については、法曹養成制度全体で考えなければならないという意見には賛成である。

○ 特色ある法科大学院の設置を考えている大学には小規模校も多く、そのような法科大学院へも希望者が進学できるように、大学への助成ばかりでなく、個人への支援も必要であると考えている。国立大学と私立大学の授業料に格差がある場合には、私立大学の学生向けに奨学金を増額することも検討していただきたい。

■ 法科大学院、法科大学院の学生への財政支援については、例えば日本育英会の奨学金、私学助成、国民生活金融公庫の教育ローンなどの既存施策の充実について関係機関にも検討していただいているが、国家財政が厳しい状況にある中で、いずれの政策も大規模な財政措置が必要であるなどの問題があり、法科大学院だけ特別な扱いをすることの合理性があるのか、民間にできることは民間に任せるべきではないかという指摘もある。非常に厳しい状況にある。民間金融機関の教育ローンに対して公的保証をする仕組みについては、引き続き時間をかけて検討する必要があると考えている。

○ 法科大学院への財政支援と司法修習生の給費制については、一体として考える必要があるが、司法修習生の修習専念義務との関係があり、司法修習生の給費制については、学生支援とは異なる側面があることを踏まえて検討する必要があるのではないか。

○ 新しい法曹養成制度は、高度な教育課程を経て、世界に太刀打ちできるような専門職を養成する必要があるという国家の政策課題をも踏まえてつくられており、財政についても他の分野よりも優先する理由があるのではないか。法科大学院では、これまでの学部教育とは異なり、双方向的な教育が行われ、学生はその準備のためにほとんど寝食を忘れて準備をすることが想定されており、アルバイトができる時間があるとは考えられず、法科大学院の学生等に対する財政支援が必要である。財政支援について、一つの施策に頼ることが難しいのであれば、それぞれの施策につき充実に努めてもらうことが必要ではないか。日本育英会の奨学金の増額については、ぜひとも実現していただきたいし、国民生活金融公庫の教育ローンについても、ぜひとも充実していただきたい。また、民間企業が独自に教育ローンを実施するとどうしても金利が高くなるので、アメリカの政府保証ローンを参考にして、公的機関が保証することによって民間企業が低利で教育ローンを実施することができるような制度をぜひともつくっていただきたい。司法修習生の給費制の問題については、本人や親の資力によって、法曹になるかなれないかが決まるということにならないような制度を整備すべきであるという観点から考えるべきではないか。日本以外に司法修習のような課程を義務づけている国としてドイツと韓国があるが、ドイツは州によって制度は異なるものの、2000年度時点では、修習専念義務を緩めてアルバイトを認めつつ、給費制を維持するという制度を概ね採用しており、韓国では行政機関の職員と同水準の給与を支給するという制度を採用している。新たな法曹養成制度において司法修習を1年間義務づけることは変わらないこととしたわけであるから、法科大学院、司法修習を通じて支援を与える必要があり、給費制を貸与制に切り替えることについては慎重に考えていただきたい。

○ 法科大学院の学生に対する奨学金制度を検討するに当たっては、司法試験に合格できなかった人の奨学金の返済能力を考える必要があるが、法科大学院の修了者は司法試験にたとえ合格しなくても、身につけた専門的知識を一般企業等で社会的に活用することが可能であることから、返済能力があると考えられ、そのための奨学金制度を積極的につくるという決断をしていただいてもよいのではないか。

○ 新しい法曹養成制度については、国家の政策として始めることになったものであり、重点的に支援する必要はあると思うが、法科大学院の学生等に対する支援については、法曹の社会的ステータスが高いことや高等教育の学費の高額化が世界的な流れであることなどを考慮して議論する必要があるのではないか。予算はいろいろな切り口から確保するしかないのではないか。

○ 法曹は社会的地位も収入も高いという職業であり、将来の返済能力はあるので、将来の収入を担保に法科大学院の学生等が希望すればいろいろな形で学資を借りることができるように制度を整えることが一番重要である。アメリカにおいてもロースクールの学生に対する貸倒れ率は低く、私立の一流のロースクールを修了するときには平均1千万円の借金を背負うことになるといわれているが、ロースクールの修了者はほとんど法曹になることができ、その結果すぐに返せるようになっている。一方、日本においては、法科大学院修了者の司法試験合格率が分からないこともあり、金融機関もリスクの高い融資にならざるを得ない状況になっている。この点に関連するが、新旧司法試験が併存する5年間の現行司法試験の合格者数について勝手な数字を挙げて宣伝している人がいるが、法科大学院制度をつくった趣旨を踏まえると、移行期間中の現行司法試験合格者は順次減っていくものとするのが合理的なのではないか。

○ 新司法試験より現行司法試験の方が有利だという話が一部で流れており、学部の1年生も現行司法試験を目指そうとしているという話を聞く。

○ 現行司法試験の合格者については、移行期間中に減少していき、最後には極めて少数になるという理解でよろしいのか。

□ 多分みなさんそういう理解でいると思う。

○ 司法制度改革審議会意見では、新司法試験が始まったときの旧司法試験の合格者数については触れていない。

■ 平成16年には現行司法試験の合格者数を1,500人程度にすることとされており、現在司法試験を受験している方は平成16、17年に合格し、平成18年には、その残りの現行司法試験組と新司法試験組が併存することになるが、その時点での現行司法試験の合格者数が1,500人とされているわけではなく、むしろ減っていくのだろうと思われる。どのように減少していくのかについては、次回以降、委員の御意見をお伺いしたいと考えている。

○ 司法修習生になれば将来的な返済能力があると考えられ、給費制を維持する必要があるか問われるのではないか。また、司法制度改革の他の課題についても財政措置が必要となることも踏まえて、給費制の在り方を検討する必要があるのではないか。一方、司法修習の特性を踏まえることは必要であり、給費制を廃止するとしても貸与制に切り替えることなどを検討する必要があるのではないか。

(日本弁護士連合会)給費制については、法曹養成制度全体としての財政支援に関する制度設計ができておらず、しっかり検討していただく必要がある。現時点では給費制を維持すべきと考える。

(最高裁判所)給費制というのは、司法修習生が修習に専念するのに効果的な制度であるが、最終的には国民の負担になることを踏まえて考える必要がある。この検討会でよく議論していただきたい。

(法務省)検討会の議論を伺って、検討していきたい。

□ 給費制については、法曹養成制度の全体が決まってから考えるべきであるという御意見も理解できるが、給費制を維持するしかないということでは検討が進まない。給費制について貸与制に切り替えることも含め、法曹養成制度全体における財政支援について検討する必要があるのではないか。

○ 給費制が維持できればより良いが、維持に固執すれば法科大学院の財政支援についての検討が進まないことも考えると、給費制については柔軟に考えることを前提として、法曹養成制度全体の財政支援の在り方について、関係機関と協議していただく必要があるのではないか。

○ いろいろ検討していただく必要があるというのはそのとおりであると思う。給費制の貸与制への切り替えだけを検討するのではなく、ドイツや韓国の現在の状況やカナダの研修弁護士制などについても可能ならば調べていただきたい。

■ 当検討会だけでは結論を出せないところもあるが、司法修習専念義務との関係では、例えば、給費制をかなり減額してでも維持する一方で、アルバイトを認めないというのは現実的ではないし、現在の給費の水準を維持して貸与制に切り替えることの方が現実的ではないかと考えられるが、次回以降更に御意見を伺いたい。

○ 給費制の在り方を検討するに当たっては、司法修習の特性を踏まえる必要はあるが、大学生にも学業専念義務があり、修習専念義務があるから給費を保障しなければならないということにならない。

□ 日本育英会の奨学金の貸与額の増額や私立大学の授業料を抑制するような財政支援によって、学生が希望する法科大学院へ進学することができるようにする必要があり、事務局はその実現に向けて関係機関に働きかけていただきたい。
 給費制について、現在のまま維持するということでは、法曹養成制度全体の財政支援についての関係機関との検討や調整が進まないので、この検討会では、貸与制への移行という選択肢も含めて柔軟に検討するということで、事務局において更に検討していただくこととしたい。

(2)法科大学院の教育と司法試験等との有機的連携の在り方について

 法科大学院の教育と司法試験との有機的連携の在り方についての検討の参考とするため、実務家による研究会が私的な見解として取りまとめた「実務家の視点による法曹養成制度における知的財産権教育の在り方 中間取りまとめ」について、牧野委員及び齋藤憲道・松下電器産業株式会社法務本部法務グループ・マネージャーによる説明と質疑応答、意見交換が行われた。

○ 中間取りまとめの想定するカリキュラム案では、かなりの負担となるため、たとえ知的財産法が司法試験の選択科目とされたとしても、他の選択科目とのバランスから、学生が避けてしまうのではないか。また、基本科目へのしわ寄せも懸念されるのではないか。全体のバランスが肝要である。

□ 公法、刑事法などと選択科目のボリュームのバランスも問題になるのではないか。

○ 各法科大学院は、既に設置認可申請を行っている状況であり、この中間取りまとめの趣旨を活かそうとすると、カリキュラムの見直しが必要になる可能性がある。

■ この中間取りまとめにも記載しているとおり、この中間とりまとめは10年後、20年後を見据えた理想像を示したものであり、今すぐ実現することが困難な内容も含まれているものと承知している。このカリキュラム・イメージのとおりに法科大学院の知的財産法のカリキュラムを編成する必要があるというものでは全くない。

○ カリキュラム案は、専門性を高めるものとして魅力的なものと考えられる。ただ、現実問題として、これだけボリュームのあるカリキュラムを実施する場合、これを教えるのに必要な教員をどうやって確保するのか、その点にも言及された方がよかったのではないか。選択科目については、多様性の観点から、ある程度の数の科目が必要であると考える。一方で、同じ科目が多くの法科大学院で履修できる体制になっていることも重要である。

○ 実務家のニーズから見れば、このカリキュラム案の趣旨は非常に良いと思うが、内容的にはまだ不十分である。理工系学部出身の人材を誘引する制度が特に重要であり、例えば、司法試験で理工系のバックグラウンドを有する者が有利になるような出題とすることは考えられないか。また、このような知的財産に特化した法科大学院は全国中にある必要はなく、10校程度でよいのではないかと思う。司法試験の選択科目については、2単位程度の履修では歯の立たないようなものとする必要がある。

○ 知的財産法関連科目の中には必修と考えているものもあるようだが、これは単位取得を選択科目の受験資格とするかのように受けとられるのではないか。

○ 選択科目で知的財産法を選択した場合には、企業等に採用される際に、よりよい評価を得られることになるのではないか。

● 他学部、特に理工系学部出身で法律知識を有する優秀な人材に対する企業のニーズは極めて高い。

○ この中間取りまとめは、今後の選択科目の在り方を考える際のたたき台ともなり得るものであり、非常に参考になると思う。選択科目の意義は2点あり、各法科大学院において開設される教科の多様性を確保することと、養成される法曹の専門性を高めることであり、この2つの意義を併存させることができるか、十分に検討することが重要である。この中間取りまとめは、専門性を重視すべきとの御意見であると認識している。

○ 知的財産に重点を置いた法科大学院と知的財産専門職大学院の関係や役割分担について、どのように考えるのか。

● この中間取りまとめは、あくまでも訴訟等の法的紛争解決に重点をおき、法曹の養成を目指しているものである。知的財産の分野における人材については、ニーズが大きく、知的財産専門職大学院のようなものがつくられたとしても、法科大学院とのオーバーラップ等の点で特段の問題はないと考える。

○ 20年、30年後というが、弁護士と弁理士の役割分担も変わる可能性があり、その点も踏まえて、十分検討するべきではないか。

○ 法科大学院を出れば司法試験に合格しなくても活躍する場が与えられるようにしておくことが重要である。弁護士資格は企業法務にとっては必要不可欠なものではなく、資格を有していればよりよいという程度のものであり、むしろ法科大学院での教育の質が担保されていれば、官庁や企業の採用のニーズがあるのではないか。

(3) その他

 事務局から、法科大学院への裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員の派遣に関する法律に基づく政令の立案に関する説明があった。

□ 裁判官に係る国庫納付金の金額の部分については、勤務日数など実際の裁判官の業務量等を踏まえつつ、関係者だけでなく社会的にみて妥当な額となるようにしていただきたい。共済関係の政令については、派遣制度の趣旨を踏まえ、派遣される者ができるかぎり不利益にならないように関係機関と調整の上、立案していただきたい。

7 今後の予定

 次回(9月9日 10:30〜12:30)は、本日に引き続き、司法修習生の給費制の在り方、法科大学院の教育と司法試験等との有機的連携の在り方などについて検討することとなった。

(以上)