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法曹養成検討会(第19回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日時
平成15年9月9日(火) 10:30 〜12:35

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第2会議室

3 出席者
(委 員) 田中成明座長、井上正仁、今田幸子、加藤新太郎、川野辺充子、川端和治、ダニエル・フット、永井和之、牧野和夫
(説明者) 法務省 横田希代子大臣官房人事課付
第一勧業信用組合 佐々木正人常務理事
文部科学省 小松親次郎主任大学改革官
日本弁護士連合会 田中清隆副会長
(事務局) 山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、松川忠晴事務局次長、片岡弘参事官

4 議題
(1)法科大学院の教育と司法試験等との有機的連携の在り方について
(2)司法修習生の給費制の在り方について
(3)その他

5 配布資料
資料1 法曹養成検討会(第18回)議事概要
資料2 法科大学院の学生向けの教育ローン(第一勧業信用組合資料)
資料3 韓国・ドイツ・カナダ・フランスの法曹養成制度の概要
資料4 法科大学院派遣法に係る政令について

【法務省提出資料】
 資料 新司法試験実施に係る研究調査会中間報告
【文部科学省提出資料】
 資料 法科大学院への財政支援について(平成16年度概算要求)

6 議事

○田中座長 おはようございます。それでは、時間になりましたので、第19回の「法曹養成検討会」を始めたいと思います。
 本日は「法科大学院の教育と司法試験等との有機的連携の在り方」と、「司法修習生の給費制の在り方」という2つのテーマにつきまして、これまでに引き続いて検討をお願いしたいと思います。
 それでは、まず事務局の方から本日の配布資料の確認をお願いします。

○片岡参事官 それでは、本日の配布資料の確認をお願いいたします。
 事務局からの配布資料といたしましては、資料1としまして「法曹養成検討会(第18回)議事概要」、資料2といたしまして「法科大学院の学生向けの教育ローン」、これは第一勧業信用組合からいただいた資料でございます。資料3としまして、韓国・ドイツ・カナダ・フランスとそれぞれ1枚ずつになっておりますが、法曹養成制度の概要について簡単にまとめさせていただいた資料を配布してございます。資料4といたしまして「法科大学院派遣法に係る政令について」の概要を記載した資料でございます。さらに、法務省提出の資料といたしまして、「新司法試験実施に係る研究調査会中間報告」の本体と、その概要を記載しました2ページの資料を配布してございます。それから文部科学省提出資料といたしまして、「法科大学院への財政支援について(平成16年度概算要求)」という資料を配布してございます。
 以上、御確認ください。

○田中座長 ただいま説明いただいた資料との関係で、第一勧業信用組合の教育ローンに関して、11時ごろから担当の方においでいただいてお話を伺うことになっておりますので、そのころに議題を移らせていただきますので、あらかじめ御了承いただきたいと思います。
 それでは、まず「法科大学院の教育と司法試験等との有機的連携の在り方」につきまして検討に入りたいと思います。
 この関係では、司法試験管理委員会に設置されております、新司法試験実施に係る研究調査会におきまして、7月末に中間報告が取りまとめられたということですので、その中間報告の内容につきまして、説明を受けることにしたいと思います。
 それでは、よろしくお願いいたします。

○横田法務省人事課付 法務省人事課付の横田でございます。司法試験管理委員会の庶務を担当させていただいております関係で御説明させていただきます。
 資料の方は、法務省提出資料として、「新司法試験実施に係る研究調査会中間報告」の本体と、それから2枚紙に基づきまして御説明させていただきます。よろしくお願いいたします。
 この司法試験実施に係る研究調査会、ここでは、「研究調査会」と略させていただきますけれども、これは本年2月に司法試験管理委員会の下に設置されたものでございます。メンバーは、新司法試験の在り方検討グループ、これは7名の方から構成されております。この在り方検討グループと、新司法試験の科目別検討ワーキンググループ、これは科目別に総勢47名の方により構成されておりますけれども、このメンバーにより研究調査を進めていただいたものでございます。このメンバーにつきましては、中間報告の一番最終ページに記載しておりますので、そちらの方を御参照ください。
 研究調査会における検討の経緯といたしましては、2月に全体会議を行いまして、各グループ別に合計40回以上の会合を開催していただきまして、集中的に検討をしていただいております。
 そして、7月28日の全体会議におきまして、この中間報告が取りまとめられたものでございます。8月から意見募集を行っておりまして、この意見募集の結果を基に今後更に検討を進めていただきまして、12月には司法試験管理委員会に対して最終報告を行っていただくという予定になっております。
 続きまして、中間報告の骨子について御説明させていただきます。
 まず、試験実施の在り方につきましては、試験科目ごとに、出題形式、配点、問題数等を多様化する。これは、今までの司法試験が短答式、論文式、どの科目も同じようなパターンの同じような出題、同じような配点で出されておりましたことから、ある程度の多様性を認めようということで、このような指針を出されたものでございます。
 また、試験実施の枠組みといたしましては、試験は5月中旬ころまでに、合格発表は9月初めごろまでに実施する。試験日程は連続する4日間程度ということで取りまとめられております。
 短答式試験の在り方につきましては、幅広い分野から基本的な問題を多数出題することにより、専門的な法律知識及び法的な推論の能力を判定するという方向性が示されており、出題形式及び各問への配点が多様化されます。配点は、公法系、民事系、刑事系への割合を2対3対2とします。従来の科目割でいきますと、公法系は憲法と行政法、民事系は民法、商法、民事訴訟法、刑事系は刑法、刑事訴訟法となるわけでございます。試験時間は、各科目各別に実施いたしますが、3科目合計で5ないし7時間の範囲内ということで、引き続き検討されておるところでございます。問題数は、3科目合計で140 問から200 問程度ということで考えられております。
 続きまして、論文式試験の在り方でございますが、論文式試験につきましては、まず、事例解析能力、論理的思考力、法解釈・適用能力等を十分に見ることを基本として、理論的かつ実践的な能力の判定に意を用いるとの指針が示されております。また、比較的長文の具体的な事例に基づく問題を読ませた上で、現在より長い時間をかけて法的な分析、構成及び論述の能力を試すこととされております。配点は、公法系、民事系、刑事系が2対3対2ということでおおむねまとまっております。問題数は、各科目2問とする方向でまとめられております。科目により、各問の大きさについては、多様な方向で検討されておりますけれども、一応2問とする方向でございます。試験時間は、これは科目によって差がございますが、1科目当たり、4時間から6時間程度というところでございます。また、採点に当たりましては、理論的かつ実践的な能力の判定に意を用いることとされております。
 最後に、短答式試験と論文式試験の総合評価の在り方でございますが、論文式試験の配点の方の比重を短答式試験より重視して大きいものとする。また、その総合評価のためには、適正な答案審査体制を確保することが必要である、との御意見が取りまとめられております。
 また、その他といたしまして、視覚障害者等の障害をお持ちの方に対して、適正な措置が取られるような試験体制の配慮が必要であるという御意見も取りまとめられております。
 大変簡単ではございますが、新司法試験実施に係る研究調査会の中間報告の骨子を御説明させていただきました。

○田中座長 どうもありがとうございました。今、法務省から説明がありましたように、新しい司法試験の実施につきましては、来年1月に設置される司法試験委員会において最終的な検討が行われることになっておりますので、この検討会で、新しい司法試験の具体的な実施方法についてまで議論することはいたしませんが、これまでに引き続きまして、法科大学院の教育との有機的連携の在り方という観点から御意見ございましたら、お伺いすることにしたいと思います。ただいまの法務省の説明に対する質問も含めて御意見がございましたら、どなたからでもどうぞ。

○加藤委員 質問と、それをお聞きして意見を述べたいと思います。11ページの論文式試験の「配点、問題数、試験時間等」の項目のところの枠の中に記載されています一番下のマルのところですが、「答案の量には一定の制限を設ける(例えば、与えられた答案用紙の範囲内で解答することについて、引き続き検討する。)」とありまして、その説明として、12ページに、「論文式試験については、おのずと現行司法試験より解答の分量が増すことが想定されるが、的確な問題点の抽出とそれに対する簡にして要を得た解答の作成が期待されるところから、その量に一定の制限を求めることとし」とあります。この部分の議論がどんなものだったのかについてお聞きしたいと思います。問題意識は、4時間から6時間の試験をやることは、じっくり時間をかけて伸びやかな思考力を判定するという意味で、よい方向であると思いますが、そのことと答案の解答の分量について上限を定めることとは思想的に一貫していないのではないかという気がするものですから、そこのところをお聞きしたいという趣旨です。

○横田人事課付 もちろん、この研究調査会におきましても、現行司法試験や二回試験程度の答案の分量を否定する趣旨の議論がなされたというふうには庶務担当の方では理解してございませんで、現行の司法試験などでは、問題文を読んで、答案構成を十分にしないまますぐに書き出している、単に覚えた知識をそのまま羅列しているような答案が少なからず存在するとの問題意識が委員の方にございまして、答案構成を十分に行って、簡にして要を得た書面を書く能力を試すことも重要であるという観点から、答案の量は無制限とはしないという方向でコンセンサスが得られているという趣旨でのお取りまとめというふうに私どもの方では理解しております。

○加藤委員 実力をきちんと判定するという前提と答案の分量を制限するという論理とは若干飛躍しているように思います。受験生が「自分はこの問題についてはこれだけのものを書きたい」ということであれば、それは何も制限する必要はないのではないでしょうか。その分量が不相当であれば単に評価が低いということになるだけではないかと思うわけです。
 そう考えるのは、2つ経験がありまして、1つは、今の司法試験は答案の量的制限をしていますが、これは10年ほど前から始めたことで、その前は無制限でした。もっとも、平均的な答案は大体4枚から6枚ぐらいでしたが、8枚とか10枚という答案もありました。私自身の司法試験委員としての経験で言いますと、概して長い答案は、例外はありますけれども、いい答案が多かったように思います。10枚以上書いている答案の中には、大変優れた、その1問だけでほかの科目の失敗をかなりカバーするのではないかというようなものもありました。
 ところが、答案について量的制限をしますと、一定の型を決めて、その中に知識を盛り込むスタイルになるわけで、それ以降、予備校型の手あかのついた表現で、凡庸なロジックを積み上げたものが答案として圧倒的に増え、それでも合格するということになってしまいました。要するに、型にはまるような仕掛けをつくっておいて、受験生に対して「型にはまっている、金太郎飴だ」と言っているという面がなくはなかったように思うわけです。
 新司法試験は、それを思想的にも理論的にも一蹴することが必要です。そうであるとすれば、答案の量的制限はすべきではないと思います。仮に、量的制限をしなくても、長々と書く受験生は多くはありません。大多数の人は要領よく書くことを心がけますから、長大答案の続出を心配する必要はないのではないかと思います。
 もう一つは、二回試験は丸1日時間を与えて量的制限なしで試験を行っています。これも、実は、たくさん書くことのできる人は力があるのですね。語るだけのものがあるから書く。話し言葉では似たような議論をしている人でも、書かせてみると理解の度合いが違うことが本当によくわかります。あなたが適当と考える分量だけ自由に書きなさいと課題を与えると、力量が手に取るようにわかるわけです。そういう経験があるものですから、新司法試験は、そういう形に何とかしてほしい、そのためには、答案の量的制限はしない。そうすることは象徴的意味があると思います。
 ここで危険なのは、実施側は、「余りたくさん書かれるとその後でコピーを取る手間が大変だ」ということから制限するという気持ちになりがちだということです。試験委員も、ものすごく書かれると採点に時間がかかって大変だという気持ちになりがちです。実際には、それほどのことではないわけで、ここは面目を一新する意味で、また、新司法試験の象徴的な意味で、答案の分量制限はなくすことが相当ではないかと思います。

○井上委員 いまの量的制限の問題は、制限する量にもよると思うのです。確かに、現行試験程度の答案の枚数ですと、解答時間が短いということもあって、覚え込んだものをパターン化してそのまま写してしまうということになると思うのですが、逆に無制限ということにした場合に、いい答案もあるとは思うのですけれども、それにも限度があり、長ければいいというものではないように思います。例えば、上告趣意だとかあるいは判決書などについてもいえますけれども、相当といえる分量の範囲内でポイントをつかんで要領よく問題点を抽出して論理を展開するということも1つの能力だと思うのです。そういう視点で評価するということもあっていいのではないか。ですから、結果としては、余り違ってはいないのかもしれないのですけれども、日ごろ論文を読んだりしている者としては、全く無制限というのもいかがなものかと、私は思います。

○加藤委員 その点には異論はありません。仕組みとして答案に量的制限を課すことが思想的におかしくはないかと言っているわけです。それは取り払った上で、しかし、適正な量を書く人が、評価が高いというのがあるべき形ではないかということで、中身としては井上委員と全く同意見です。

○田中座長 司法試験には時間の制限もあるわけですから、量的な制限のみを全面に出した形で検討を進めないようにしていただきたいと思います。
 ほかに何かございますでしょうか。

○川端委員 これからの進め方について、選択科目についてはどういう形で決めるのかということと、それから、現行司法試験と新司法試験の合格者の割合をどう決めていくのかという辺りは何か決まっているものがあるのでしょうか。

○田中座長 その点につきましては、最終的な決定は司法試験委員会に委ねているわけですけれども、それまでの期間は、この検討会で検討したらどうかということで、移行期間中における現行試験の合格者数につきましては、前回も、平成18年度以降は減少させるべきだという意見がありました。選択科目の問題についてもできれば御意見を伺いたいのですけれども、差し当たり、この前も意見が出ました具体的な合格者数について議論した方がよいと思われます。ここで決めるわけではないのですけれども、移行期間中における現行司法試験の合格者数をどうするかは、やはり法科大学院を新しい法曹養成制度の中核的な教育機関とするという基本的な制度設計との関係で、重要な問題だと思いますので、皆さんの御意見を伺い、法務省の担当者の方も来ていらっしゃるので、そういったことも踏まえて今後検討していただくということになりますので、その点につきましては、前回に引き続き、意見がございましたらどうぞ。

○川端委員 私の意見は前回も申し上げたと思いますけれども、新しい制度に切り替えるのだということを明確に表すような試験の在り方を是非考えていただきたいということです。
 要するに、今、受験している人で、相当程度実力があって、本来ならばあと数年で間違いなく合格したという人が救済されるような移行措置が残っていればそれでいいのであって、これから更に新規に現行司法試験の方に参入する人が出るというような形にはしないというのが新しい制度に移る移行措置の在り方の根幹ではないかと思うのです。随分誤解が広がっているようでもありますし、もっとはっきりさせいただきたいというのが私の意見です。

○田中座長 ほかにございますでしょうか。この点は前にも議論になったわけですけれども。

○フット委員 別な点でよろしいですか。選択科目ではなく、融合問題に関する質問があります。
 以前からいろいろと融合問題に関する議論がありましたけれども、結局、そういうような、いわゆる融合問題についての考え方はどうなっていますでしょうか。

○横田人事課付 融合問題につきましては、出題していくべきではないかということで検討が進められたわけでございます。中間報告の10ページでございますが、「第5 論文式試験の在り方、1 出題の在り方」の真ん中の○でございます。融合問題という言葉の定義をしようという試みがあったのですが、やはりいろいろな方によって融合問題ということの中身が少しずつニュアンスと申しましょうか、把握の仕方が異なるということで、「同一科目内で複数の法分野にまたがる問題」というふうに表してございます。これがいわゆる融合問題のこととお考えいただいてよろしいのかとも思うのですが、例えば1つの事例問題で、単に複数の科目にまたがるような問題も融合問題と言うのか、それとも完全にとけ込んでいて、論理的な整合性を必要とされるというか、論理的な展開を行うに当たって複数の法分野を完全に融合させたような考察をしなくてはいけないような問題を言うのかということで、後者の方だと毎年これを出題するのはかなり難しいと考えられます。ただ、実際上生起する問題はいろいろな法分野にまたがっている場合が多いので、そのような法分野にまたがる問題も、適切な問題を考案するよう努めていくという方向でお取りまとめがされたと理解しております。

○片岡参事官 先ほどの移行期間中における現行司法試験の合格者がどうなるかということについて、前回私の方から申し上げた点でございますが、平成16年度と17年度は、まだ法科大学院の修了者が出ていないという段階で合格者を年間1,500 人に増加させるということでございますので、先ほど川端委員から指摘がございましたが、現行司法試験にもう一歩で合格しそうだという人は、かなりこの2年間で合格される。特に法科大学院に行かずに今まで現行司法試験を受け続けていた人はかなりここで合格するのではないかと思われます。
 そうしますと、平成18年度からの司法試験、これは法科大学院修了者が最初に出る年でありますし、その関係で現行司法試験の合格者との兼ね合いということが問題になりますが、前回、私の方から申し上げて、まだ御意見を十分承っていないと承知しておるんですが、その平成18年度には、現行司法試験の合格者が1,500 人からスタートしなくてもいいのではないかということを申し上げました。
 あるいは、最初は何百人からスタートするにしても、平成22年ごろ、移行期間が終了するまでの間に、制度設計としては減少していくイメージと申し上げましたが、そういう考え方でいいのかどうか。その辺の御意見をいただければと思います。

○田中座長 今、片岡参事官がおっしゃいましたように、平成16年度か17年度には、1,500 人まで増やすわけですし、移行期間中も現行司法試験を実施するというのは、現在の司法試験の受験生に不当な不利益を与えないという趣旨でして、現在の学部の学生がその後も法科大学院に進まずに現行司法試験を受けるという形で、現行試験の受験生が増えるということは、本来のこの制度設計の中には入ってなかったというのが共通の理解だと思います。
 そうなりますと、平成18年度以降の現行司法試験の合格者数を一挙に3分の1に減らしても、別に現行司法試験を当分の間存続させるということとは矛盾しないし、法科大学院を中核的な法曹養成機関にするためには、そういう措置に当然なるのではないかというのが、この制度設計をしたときの理解だと思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。

○井上委員 まさにご指摘のとおりで、現行試験を5年間併存するというのは、現在、現行試験の準備をし、受けている人に不当な不利益を与えないため、言わばソフトランディングのための措置であるという理解であったと思います。そういうものですから、その併存期間の間にも、現行試験の合格者については少なくしていき、数の上でも新しい司法試験が根幹になるようにするというイメージを抱いていたことは確かであります。

○田中座長 前回もそういうまとめになったように思うのですけれども。

○永井委員 その場合でも、平成18年度だけは考慮が必要かなと思います。16年、17年、18年の3回くらいの受験の回数の保障ということから言うと。
 もう一つは、法科大学院では18年で受験するのは2年コースですね。その人たちにある程度枠を設けると、その年度だけ法科大学院出身者の合格率が非常によいのだけれども、3年コースの翌年の人はがたっと落ちるというおそれがあるので、、その辺りはバランスを取るためにも、18年の新司法試験と現行試験の配分で、余り現行試験を大幅に減らすというのは、2つの意味で問題がありそうかなという感じがしているのです。

○井上委員 それもそうなのですけれども、平成16、17年度は1,500人まで増やすわけですね。そして、平成19年くらいからは、さらに、かなり思い切って増やしていただいた方がいい。その意味で、18年度の合格率を抑えるという発想よりも、むしろ19年度の合格率を上げる方向でやっていくという方がよいと私は思います。

○永井委員 それならいいと思います。というのは、2年コースと3年コースの選択のところで、2年コースに行くと、合格率が50%くらいになるのに、3年コースに行くとぐっと減ってしまうというと、法科大学院の実際の入学者選抜において問題があり得るので、その辺りをある程度バランス取ってと、同じような合格率が18年も19年も確保できるように制度設計してほしいと思います。

○田中座長 どういうふうに配分していくかというのも、法科大学院の立ち上がり状況を見定めなければなりませんが、入学者選抜の段階で2年短縮型入学者をはっきり決める大学もあれば、みんないったん3年型で入学させて、あとで振り分けるということになっている大学もあることから、人数が確定するのはかなりずれ込むのです。現行司法試験の合格者については、やはり18年度からは減らしていくという前提で制度設計をしていただくのがよろしいかと思います。

○永井委員 現行試験の合格者数を平成18年から減らしていくのはいいのですけれども、その場合、法科大学院の2年コースと3年コースのアンバランスが余り出ないようにするということです。
 それから、16、17、18の3回くらいの受験の機会を保障するということから言うと、18年に余り現行試験の合格者数を大幅に減らすというのは問題かなという感じがします。2つの問題点であるから、18年度における配分は慎重にしていただきたい。

○川端委員 私は逆に18年度から現行司法試験の合格者枠を大幅に減らすべきだと思います。つまり、そういうアナウンスをできるだけ早くするべきだと思うのです。そうすれば、これからの法曹教育というのは、法科大学院というプロセスを経て、今までとは違う司法試験、今までとは若干違う能力を試されて法曹になっていく。それを社会が期待しているという新しい制度を発足させることのアナウンスが極めて明確になると思うんです。現行試験は16、17年で1,500人まで合格者を増やすわけですから、平成16年、17年で本来受かるべきほとんどの人は受かっているはずなので、平成18年で、新しい法曹の新司法試験を受けるという枠が、本来受かっているはずの人の残りの分の枠を必要以上認めることによって、道を狭められるというのは、新しい制度の出発としてはやや不合理なんじゃないかと思います。

○井上委員 さきほどのバランス論ですが、平成19年は2年コースの人も3年コースの人も両方入っているのです。ですから、19年以降はずっと同じような状況で、18年だけが特殊な状況なのです。

○田中座長 平成16、17、18年が一緒だという論理は、今、川端委員がおっしゃったように問題があると思うのです。2年短縮型の学生数を見極めながら検討することになるのではないでしょうか。

○永井委員 今の大学4年生が来年から受け出すということになると、平成16、17、18年の3回くらいは受験すると思います。急にここで4年生くらいになってから、これだけお金がかかる法科大学院に行けというのはちょっとかわいそうな気がするので、現行で勉強していくと覚悟を決めている学生には、現行試験の受験を3回くらい保障すべきではないかと思うのです。現行試験の合格者数が平成18年度に大幅に減るというのだったら、事実上受験機会を2回しか与えないということになりかねません。

○田中座長 本来16、17年で合格するという前提なので、そこまで制度設計として考慮するというのは、ちょっと筋が違うように思われます。

○永井委員 しかし、それは学生たちに公示されていないわけですから、自分たちの就職を放棄して司法試験を受験しようと思った4年生たちに3回くらいのチャンスの幅はあってもいい。それが1〜2年間、合格者数が1,500人に増えたからといって16年、17年でよいというものかどうかはちょっと微妙な問題があるのではないかと思います。

○井上委員 3回のチャンスはあると思います。

○永井委員 3回ありますけれども、3回目が形式的に残っているというくらいであれば、ないのと事実上一緒で、ただ、どのくらい減らすかの問題ですけれども。

○田中座長 1,500人に近い形で残していく趣旨ではないと思います。

○片岡参事官 例えば、現在1年間約1,200人を合格させている。それを受験期間を3年保障すると考えれば3,600人ですね。ところが16年、17年度は毎年1,500人ずつ、つまり3,000人合格します。単純計算だと現在の水準に比して600人程度の未合格者が残るという数字になる。そういうオーダーを想定することもできます。

○田中座長 もっとラディカルに減らしてもいいという意見も結構強いと思います。
 それでは、この点につきましては、今のような議論を踏まえて、最終的に司法試験委員会が立ち上がったら、そこで検討していただくということで、また機会があればこの問題について検討していただきたいと思います。

○永井委員 選択科目の方は。

○田中座長 前回の検討会で新しい司法試験の選択科目につきましても、御意見をお伺いしたわけですけれども、この点につきましては、実際に法科大学院でどういった科目が開設されるのかということを確認する必要があります。現在、法科大学院の設置認可の審査が行われているという微妙な時期なのですけれども、可能であれば次の検討会までに、法科大学院における選択科目に関連する科目の開設状況などにつきまして、推進本部事務局、あるいは文部科学省の方で適宜な方法で調査していただいて、その報告をいただいた上で、検討することにしたいと思うのですけれども、そういうことでよろしいでしょうか。前回一応検討したわけですけれども、データがあった方がいいと思うので、そういうことで事務局と文部科学省の方で協議していただくことにしたいと思います。
 次に「司法修習生の給費制の在り方について」に入りたいと思います。この関係につきましては、これまで法科大学院の学生に対する奨学金などの問題について、御意見をお伺いしてきたところですけれども、民間における教育ローンとして、第一勧業信用組合の方で法科大学院の学生を対象とする新しいローンを検討されているそうでございます。
 そこで、本日は第一勧業信用組合の佐々木常務理事においでいただいておりますので、まず、佐々木常務理事から御説明をお伺いすることにしたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。

○佐々木第一勧業信用組合常務理事 ただいま御紹介いただきました第一勧業信用組合の佐々木でございます。本日は司法制度改革推進本部の法曹養成検討会にお招きいただきまして、私どもの開発いたしました法科大学院生専用ローンを御説明させていただく機会を得ましたことを感謝いたしております。
 私ども第一勧業信用組合は銀行系の信用組合として設立いたしまして、既に38年の業歴を持ちまして、地域金融機関として定着、自立をしておりまして、営業区域は東京都一円ということになっております。
 このたび、これから説明させていただきます法科大学院生の専用ローンを開発いたしましたけれども、現在の商業金融ではコマーシャルベースに乗りにくい学生向けのローンということでございますので、さまざまな工夫を加えた上での特定者に対する個別・手づくり型のローンとなりますことから、逆に私どものような小回りの利く金融機関にふさわしい商品であると基本的に考えております。
 まず、私どもが法科大学院生専用ローンを開発したきっかけは、第一東京弁護士会の副会長の先生から法科大学院に関する概要をお聞きする機会を得まして、その中で新しい法曹養成制度の下、教育機会の均等を図り、明日の法曹志望者が経済的負担の重さゆえに法科大学院進学を断念することのないよう、法科大学院の学生に対する経済支援が不可欠であるという熱い思いをお聞きいたしまして、私自身も本年2月12日に開催されました日本弁護士連合会の財政支援のシンポジウムに参加し、学生の方々の生の声もうかがいまして、学生の専用ローンに対するニーズは相当高く、金融機関としても何らかの対応ができるのではないかと実感したことにございます。
 また、私どもの経営ビジョンは、小規模事業金融と個人金融の専門金融機関になるということになっておりますが、この観点からも、今回の法科大学院に進学する学生向けの新たなローンの開発を考えたということでございます。
 ローンの対象先は難関の法科大学院の入試を合格した将来ある大学院生とはいえ、経済的には生活力が必ずしも十分でない学生さんであることから、開発には苦労がございましたが、工夫を重ね、関係各位の御協力も得て、開発したものでございます。
 まず、このローンの商品コンセプトは次の3点に集約されます。
 1つ目は、新しい法曹養成制度の下で、学生のローン需要に的確に応えるということでございます。新司法試験においては新たに創設される法科大学院の修了者が受験の有資格者となりますが、その大学院生は4年間の学部を修了後に更に2年間ないし3年間の専門的就学をするということになりまして、経済的負担も強いられますことから、学費及び生活費も含めた資金需要に的確に応える金額を目指したということが1つでございます。
 2つ目は、地域金融機関として、社会的貢献度が極めて高い新型ローンであるということでございます。新制度下において、法曹界を志す地域の学生が経済的負担ゆえに勉学の機会を放棄することのないように、つまり、法曹養成教育の機会均等を支援するために、地域金融機関としての独自の役割を発揮できるのではないかということでございます。
 3つ目は、融資対象者が特定されますので、金融機関のリスクも総合的に低減させることが可能であるということでございます。このローンは、不特定多数を対象とした一般の消費者ローンとは異なりまして、融資対象者は提携法科大学院の入学者に限定され、当該提携法科大学院からの在学中の就学状況のモニタリング等を通しまして、総合的にリスク低減が可能になるということでございます。
 それでは、商品の内容について、その概略を説明させていただきます。お手元の資料の「第一勧信法科大学院生専用ローン商品概要」と記載してある部分を御覧下さい。
 このローンの開発で特に工夫いたしましたのは、ほとんど資力や保証のない学生さんから、これらがある程度備わった学生さんまで、学生さんの経済背景・状況に応じまして、きめ細かな方式を採用したという点と、貸出形態を、法科大学院に就学時には極度型ローンということで必要資金の弾力的な借入を可能といたしまして、その後、司法試験合格後は一般の証書借入方式による約定返済の設定型に切り替えるという2段階の借入方式を実現させた点です。金利も、法科大学院に就学中の金利と、司法試験合格後は更に引き下げるという2段階方式にした点にございます。
 それでは、商品のポイントを6つの点に絞って申し上げたいと思います。
 1番目は、借入人が大学院生本人であるということです。20歳以上であれば収入は問いません。
 本ローンは、大学院生御本人に融資するローンというところが特徴です。従来の一般的な教育ローンは学生の親権者に対して御融資を行うというローンでございますので、ここが基本的に違うところでございます。
 このローンは、不特定多数に対する販売を目的とした従来のローンの考え方とは異なり、新しい商品開発コンセプトに従いまして、ある程度リスクを低減した、特定少数に対するローンという位置づけをいたしました。すなわち、法科大学院の修了者には、不幸にして新しい司法試験に合格できなくても、専門職の学位が与えられるなど、将来有望な人材であるというところに着目いたしまして、大学院生本人に貸し付けるローンにしている点が特徴です。
 2番目は、入学金とか授業料のみならず、生活費に対応する型も用意したというところが特徴になります。学費等の専用型では、融資の使い道を入学金や年間授業料、及び大学院施設利用料等に限定し、御融資金額は600 万円以下ということに設計してございます。
 融資の実行は法科大学院在学中の3年間、これは法学未修者の場合ですが、1年で毎年一回必要な金額だけを御融資いたします。
 融資形態、貸出形態は、極度型ローンということで、一定の貸出の枠を作った中で毎年見直していくという考え方です。毎年極度金額を増額する方法で対応いたします。すなわち、在学中から新司法試験合格までは元金の返済は発生いたしません。ただし、御本人が希望する場合は、いつでもお借入金の全部又は一部を返済することが可能としております。
 最終的な進路が決定いたしまして、将来の収入が確定するという時点で極度型のローンから一般の証書借入方式による約定返済設定型に切り替えるという2段階借入方式を実現しております。
 この切替え時期でございますが、当検討会でも議論されている司法修習生の給費制について、もし、給費制が廃止されるということになれば、私どもは切替え時期を司法修習期間終了後に切替えることになるものと考えております。
 それから、生活費対応型では、御融資の使い道を年間授業料などに加えて、生活費として年間60万の定額まで利用可能といたしました。御融資金額は1,300 万円以下です。御融資の実行は法科大学院在学中の3年間と、法科大学院修了後新司法試験合格まで最大5年間といたしまして、毎年一回必要な金額を御融資するという設計にしてございます。
 生活費への対応につきましては、私ども組織内部の検討でも、収入のない学生に生活費まで対応することはいかがなものかとの議論が白熱したところでございますが、法科大学院の教育カリキュラムを考えますと、法科大学院生は寝食を忘れて勉学しないと追いつかない内容であり、とてもアルバイトなどできる状態ではないものと判断いたしまして、学費だけの対応では不十分であるとの結論に達しました。
 そこで向学心のあまり借り過ぎと言いましょうか、モラルハザードを防ぐために、生活費は年間60万円の定額制を採用したものでございます。
 3番目は、全体として特別の低金利になっております。更に条件によって金利が優遇されるよう工夫しております。御覧のように、商品概要のところでは、基準金利を4%と設定して、これを上下に場合によって分けるという考え方をしております。
 学生に融資するローンでございますので、将来の返済が無理なく進められるように、一般の消費者ローンと比べて特別の低金利といたしました。ちなみに一般の消費者ローンの中の教育ローンの金利は、安いものでも大体5〜6 %となっています。高いものですと9%を超えてございます。
 更に資力十分な保証人の保証、担保の御提供がある場合には、金利が優遇される体系となっております。
 また、司法試験合格後は更に金利を低減しております。また、もし、個別の法科大学院の保証が得られるならば、金利を更に低下させるという設計にしてございます。
 4番目は、無担保の場合、すなわち保証人がいない場合にも融資の道が開かれています。連帯保証人の保証を原則お願いいたしますけれども、保証人がいない方でもお借入れが可能なローンといたしました。つまり、担保もない、保証人もいない。しかも学生である方に融資できるというところが4番目の大きな特徴でございます。
 保証人がいない方のために、金融機関は保証会社の保証というものを用意するわけですけれども、これにつきましては、残念ながら、実績のない法科大学院制度に対する理解というものがなかなか保証会社から得られませんが、かなり御努力いただきまして、保証金額は融資額の一部ではございますが、保証が付くということになっております。
 私たちは、新司法試験における合格率、それから法科大学院在学中や修了後5年間の新司法試験への挑戦期間中のデフォルトリスクなどを、可変係数を用いたリスク算定モデルにより、徹底したリスク分析を行いまして、また、私どものコスト負担で団体生命保険の加入を組み込むことで死亡リスクも排除いたしまして、結果として融資金額1,300 万円までのワイドなローンが実現できたということでございます。
 5番目は、法科大学院との提携商品であるというところが特徴でございます。収入のない大学院生に御融資するローンですので、定期的に最低限必要な程度の就学状況を確認させていただく必要があり、個別の大学院との提携が前提となっております。このローンの最大のリスクは、法科大学院の在学中に法科大学院の講義内容についていけず、進路を変更し、退学するケースにあると考えております。
 また、司法試験合格前に進路変更、退学をした場合には、速やかに一括返済するということを条件としてございますが、実際にはその学生の就職が決まった段階で本人の実情に合わせた分割返済を想定いたしております。
 この条件は学生が安易な進路変更を行わないよう、注意喚起のために付加したものでございます。
 6番目は、法科大学院生の就学特性を反映いたしまして、個別の手づくり型のローンになっているということでございます。これは、これまで御説明いたしましたように、在学中の利用極度額の設定、司法試験挑戦中の利用極度額の見直し、合格後の返済条件設定の御相談など、御本人の実情に合わせた対話型のローンになっているということでございます。このような学生の状況に応じたきめこまかなローン対応は、ホールセールを主体とする都市銀行とは意を異にいたしまして、また、収益性のみを追及した「選別融資型」ではなくて、融資機会の公平性を原則とした信用組合ならではの商品設計であると自負しております。
 商品のポイントは以上6点御説明申し上げましたけれども、この法科大学院生専用ローンの新聞報道以来、法曹を目指しておられる学生御本人、あるいは社会人の皆様、そして、各法科大学院の設置準備担当の方々から多数のお問合せをいただいているところでございます。
 私どもは冒頭申し上げましたように、対象地域が東京都内となっておりますので、目下都内の複数の法科大学院との提携を具体的に進めているというところでございますが、本ローンが法曹を目指す学生に歓迎され、また、提携する各大学院の御理解が得られますことを願っているところでございます。
 以上、御説明申し上げました。

○田中座長 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御説明につきまして、御質問などありましたらどうぞ。

○永井委員 保証会社の保証を必要とする場合に、学生個人の利用料・費用はどれくらいかかるのですか。

○佐々木常務理事 これは資料の表の金利の欄を見ていただきたいと思うのですけれども、例えば①から⑤まで書いていますが、先ほど申し上げました定収のない本人に収入の十分な連帯保証人が付く場合、つまり、父兄等がそこそこの収入があるということを想定しているわけですけれども、その場合が4%になります。
 一方、保証会社の保証が付く場合、上の1番と2番、つまり、②は定収のない本人に収入の不十分な保証人が付く場合には金利を4%より高く設定します。

○永井委員 要するに、金利の差額にその費用も含んでいるということですか。

○佐々木常務理事 金利の差額に含んでいると考えていただきたいと思います。

○永井委員 別に保証料取るわけではなしに、含まれているわけですね。それから、団体信用生命保険の加入を原則とするとされていますが、その学生の負担はどのくらいですか。

○佐々木常務理事 私ども信用組合としての組織負担で団体信用生命保険料を払います。

○井上委員 法科大学院の保証がある場合には利率が更に低率になると言われましたが、この表に書かれている率よりも更に低率になるということですね。その利率はどのくらいになるのですか。

○佐々木常務理事 これは個別に検討させていただくことになろうかと思います。複数の法科大学院の開設準備担当者の方とお話ししていますと、大学院の方も、一律に保証することには躊躇があるようでございまして、まだ具体的には決まっておりません。私どもといたしましても、冒頭に説明しましたように、学生本人に対するローンという考え方は一般的には金融機関では例外的というか、皆無であり、そこのところが大きな特徴ではないかと思っております。

○井上委員 法科大学院との提携を前提としているということなのですが、提携をした場合、法科大学院としてはどのような義務なり負担を負うことになるのですか。

○佐々木常務理事 今申し上げた保証は別に求めておりません。2年間もしくは3年間の就学中にきちっと大学院のカリキュラムについていって、進級がきちっとなされているのかどうかというところは最低限押さえる必要がございますので、融資するときに学生から承諾をいただきまして、そして大学院から1年ごとに、細かい内容は結構ですけれども、きちっと就学、進級できているかどうかという確認をいただくことにしています。

○井上委員 法科大学院としては、学生がきちんと勉強して進学できているかについて報告をするということですか。

○佐々木常務理事 それだけでございます。それ以上のものは何も求めておりません。それでないと、学生御本人が実際には法科大学院を退学したにもかかわらず、2年目になりましたから、また追加で100万貸してくださいと言われても、なかなかチェックできませんので、大学院との提携になっています。

○永井委員 法科大学院修了後司法試験に合格しないで就職した場合も一括返済ですか。

○佐々木常務理事 法科大学院修了後たとえ司法試験に合格しなくても、必ずそれだけの勉学をされた方ですから、それなりの社会生活の道を進まれると思うのです。そこで、一括ではなくて、対話型として、長期的になるのかもしれませんが、その後の収入に応じて返済条件をお決めして、返済をしていただくということを考えております。一般の教育ローンですと、教育ローンという形で定型的に内容が決まっておりまして、選択の余地、弾力性がないわけです。したがって、そういう条件に合致しないと一括返済してくださいということになりますけれども、それは避けるという考え方でございます。

○田中座長 今御説明がありましたように、法科大学院の学生本人に対する新しいタイプのローンですし、保証人があれば利率は低くなるということです。
 それから、大学との提携が前提になっているようです。これは大学にとってもきちんと教育する上でプラスになる面もあるわけでして、今後の検討のために非常に参考になるのではないかと思われます。将来的には単独の法科大学院だけではなくて、複数の法科大学院が共同して、あるいは東京以外の地域についてもいろいろ考えられるのではないかと思いますので、引き続き関係者への情報提供をお願いしたいと思います。
 本日はお忙しいところどうもありがとうございました。

(第一勧業信用組合佐々木常務理事退室)

○田中座長 それでは、引き続きまして、文部科学省から法科大学院に関する来年度予算の概算要求の概要につきまして、説明をお願いすることにしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○小松文部科学省主任大学改革官 文部科学省の小松と申します。この機会に来年度の概算要求に向けましての私どもの対応について概要を御説明申し上げます。お手元にカラーの1枚紙があるかと思いますけれども、大きく分けると3点ほどあるわけでございます。
 1つは、大学そのものの立ち上がりに対してどう支援するかということであります。国立については補助金という形を取りませんので、かかる費用と、学生あるいは公費の負担の割合について、ある種リーズナブルなところに設定できればと考えているわけです。法科大学院については、司法制度改革という国家挙げての大改革の中で、72校から現在申請が出ておりますけれども、それだけの数のものが同じタイミングで、同じ分野について設置を申請するということは実は明治以来初めてのことでございまして、私どもとしても、その中で司法制度改革の趣旨にのっとった形で、学生がちゃんと学ぶ機会を保障され、かつ、それぞれ国公私立という性格の違いはありますが、中身の質やその特色を見て、自分の行きたいところが選べるという条件を整える必要があるということが根本思想でございます。
 それを考えまして、私学助成につきましては、16年度、50億円の新規の要求をいたしております。これは私学助成ですから、授業料引き下げ分に充てるなど、使い道を決めているわけではありませんけれども、考え方はそこが中心になっており、国立の法科大学院における授業料の標準額を一応私ども要求上78万円と算定しておりまして、国立との間で競争ができる範囲に私学の授業料が定まるようなことを含めた形で算定いたしまして、50億円ということにいたしているわけでございます。
 国立の法科大学院についての我々の考え方は、実際にかかる費用と公費あるいは学生の負担の割合等を勘案いたしまして、この後者が従来の国立大学の学生の場合とそれほど変わらないような形に設定をいたしております。
 このようにして、学費の方が決まってまいりますけれども、学生個人によって生活条件が異なってまいりますので、日本学生支援機構、従来の日本育英会でございますけれども、育英会の育英奨学事業というものの充実によって、学生個人に対する保障・支援を行うわけでございます。これが貸与人員を4,800 人と算定いたしておりますのは、借りたい人は借りられるように学生数に対する貸与率を8割とした結果です。また、従来ですと、有利子の奨学金の上限月額は13万円としておりましたが、それに加えてさらに4万円、7万円増額できるようにして、月額17万円、20万円、年間にいたしますと240万円まで奨学金を借りることができるよう設定をいたしました。奨学金について合計いたしますと無利子と有利子、それぞれオプションがあるようにしており85億円ということになります。
 これらによって就学条件等は一応支援が整うような要求になると思っておりますが、他方、法科大学院の司法制度改革における位置づけ、あるいは国際的な通用性ということから考えますと、標準的なものをきちっと整えていただくというほかに、各大学において様々な特色であるとか、先進的な部分というのを開発していただかなくてはならないわけです。この点については、国民に対する司法サービスの面でどういう資質の人を養成するのか、あるいは学生がどのような特色のある教育サービスが受けられるのかということになりますので、これは国公私立という違いとは余り関係がないものですから、一種のグラント型の予算で、それぞれの各大学で教育内容、方法を特に充実し、特色ある取組みを行うというものについてのプロジェクト支援を国公私を問わずにコンペ方式で行うというものを78億円要求しております。
 ①と③においては、たまたま78という数字が並んでおりますが、連動性はございませんので念のため申し上げます。
 合計をいたしますと、一般会計部分が約150 億円の要求ということになっております。もちろん、年末の査定に向けまして、さまざまな要素を見なから文部科学省としてきちっとした額を確保していきたいと思っております。この件につきましては、これ以外にも従来からの標準的な私学助成があったり、あるいは最高裁、法務省からは、それぞれ現職の裁判官・検察官の派遣等での御協力をいただくところであり、全体を含めて推進本部の方でいろいろと働きかけを行っていただいたりしており、各関係機関が密接に連携して推進しているわけでございます。
 その中で文部科学省として法科大学院の部分について、このような概算要求をまとめさせていただきました。皆様に御協力いただいたお陰ということでございます。
 以上、御報告させていただきます。

○田中座長 どうもありがとうございました。ただいまの文部科学省の説明につきまして、質問がございましたらどうぞ。
 1番目の私学助成50億円というのは、次年度になって学生が倍になると100億円に増えていくということでしょうか。

○小松主任大学改革官 細かい計算をしますと、比率はいろいろ違ってきますけれども、基本的には学年進行で増加することになると考えております。

○田中座長 これまでの検討会でのいろいろな御意見、要求をかなり反映していただいた概算要求になっておりまして、そのとおり実現すれば誠にありがたいです。この数字はあくまでも概算要求の段階でございまして、一定の流れの中でこれだけの概算要求をしていただいているわけでございまして、実現すると決まったわけではありませんので、これから年末に向けて、もちろん、文部科学省、推進本部事務局にも頑張っていただかなければならないわけですけれども、それ以外の関係の各方面の方々にも御努力、御理解いただいて進めていく必要があるということでございます。
 いろいろな説明の内容について、これで果たして十分なのかどうか、国立大学についていえば、いろいろ意見もあると思いますけれども、とにかくこの概算要求の実現に向けて引き続き努力をしていただきたいと思います。

○小松主任大学改革官 この検討会を始め、推進本部においては、本当にいろいろとありがとうございました。頑張らせていただきますので、何卒よろしくお願いいたします。

○田中座長 では、続きまして、日弁連から法曹養成検討会の運営についての要望と、司法修習給費制の堅持を求める決議の採択につきまして、説明をお伺いすることにしたいと思います。

○田中日弁連副会長 日弁連の担当の副会長の田中清隆でございます。
 今、御紹介いただきましたように、当連合会といたしましては、7月29日付けで「法曹養成検討会の運営について」、8月22日付けで「司法修習給費制の堅持を求める決議」を出していることでもありますので、御説明をさせていただきたいと思います。
 給費制につきまして、司法制度改革審議会の意見書では、修習生に対する給与の支給、給費制と申しますけれども、これにつきましては、将来的には貸与制への切替えや廃止をすべきではないかとの指摘もあり、新たな法曹養成制度全体の中での司法修習の位置付けを考慮しつつ、その在り方を検討すべきであるとしておるところでございます。
 すなわち、給費制の廃止、あるいは貸与制への切替えと言いますのは、緊急の課題ではなく、将来的な検討課題として、それも全体的な合意ではなく、1つの意見として紹介されているにとどまるものでございます。
 また、その在り方の検討につきましては、単に財政的な観点からだけではなくて、あくまでも新たな法曹養成制度全体の中での司法修習の位置付けを見定めて行うべきものとされているわけでございます。
 そこで現在の法曹養成制度を巡る情勢を見てみますと、法科大学院のスタートを目前にしながらも、なお、極めて流動的でございます。新しい司法試験のことも、本日御紹介されましたが、そういった新しい司法試験、あるいは新しい司法修習についての検討もまだ始まったばかりでございます。
 すなわち、新たな法曹養成制度の全体像も、その中での司法修習の位置付けも、いまだ明確には定まってはおりません。
 また、日弁連といたしましては、かねてから法科大学院に対する経済支援の状況を見定めることが先決であるというふうに申し上げてまいりました。この点、先ほども御説明ありましたように、概算要求の内容は明らかになりましたけれども、これはあくまで概算要求ベースでございまして、最終的に予算がどうなるのか。更に上乗せをという御意見もございましたから、これは極めて予断を許さないところがございます。
 また、法科大学院の完成年度である平成18年度までに、次年度と同様の予算措置が得られるかどうかということも決して明らかになってはおりません。
 このような状況の中で、直ちに給費制の廃止を打ち出すということは、財政的な配慮のみを優先させて、新たな法曹養成制度全体の中での司法修習の位置付けを考慮して検討すべきとした改革審意見書の趣旨に反するのではないかとの疑問を禁じ得ないのでございます。もし、財政上の見地から、修習生の増員に対する配慮をするということが必要であるといたしましても、他方では修習期間が1年6か月から1年というふうに、3分の2に短縮されます。そうしますと、給費金額の見直しをすれば、全体としての金額の増加を抑えることはできますから、そうすると、給費制を維持することも可能であると考えるわけでございます。まずこの検討をしていただいてから、それでもなお維持できないということになったときに、初めて貸与制への切替えが検討されるべきであろうと思われ、それが順序ではないかと考えるところでございます。
 給費制の廃止と貸与制への切替えにつきましては、このような時期尚早であるという意見に加えまして、根本的な問題がございます。まず第一点といたしまして、貸与制に切り替えた場合には、世界的にも例を見ないほどの経済的な負担の大きい法曹養成制度になってしまうということでございます。法科大学院で3年間、卒業後、司法試験を受けて研修所に入所するまで7か月、修習生として1年間、通算いたしますと、4年7か月の長きにわたって学費と生活費を全部借入金で賄うといたしますと、研修所を卒業した時点でこれはあくまで試算でございますが、1,500万円を超える借金を抱えることになってしまいます。これでは最初から法曹になる道を断念せざるを得ないという人も出てくるのではないでしょうか。また、最初は高い志を持って、法曹の道に進みましても、結果として借入金返済のために高収入を目指さざるを得ないということになりまして、人権擁護活動や公益活動の面から遠ざかってしまう人も出てくるのではないかということが非常に懸念されるところでございます。これがまず第一点です。
 第二点は、弁護士の公益的活動についてでございます。既に昨年の検討会でも触れておりますので、今回は司法修習のことを中心に申し上げます。司法修習の現場におきましては、指導弁護士というのがございます。あるいは修習を担当する修習委員、あるいは司法研修所の教官、こういった立場におきまして、弁護士志望者に対してばかりではなくて、裁判官や検察官の養成につきましても、全国で数千人規模の弁護士がほとんど無償で多大な時間と労力をかけて、情熱を持って取り組んでおるところでございます。このことは、ほんの一例でございますけれども、後継者養成の点ばかりではなく、弁護士に課せられた使命は重く、かつ多方面に及んでいるわけでございます。国選弁護や当番弁護、それから民事法律扶助、過疎地対策、都市型公設事務所、更に現在具体的に検討されておりますリーガル・サービス・センター、あいは被疑者公的弁護など、ますます公益的活動の比重は増してまいります。こうした活動の源泉になっておりますのは、我々、司法修習生の時代に皆さんの税金で育てていただいたという感謝の気持ちであります。この給費制というのは、まさに弁護士の公益活動の心のふるさととなっているわけでございます。
 以上の点に加えまして、次に新しい視点として2点申し上げたいと思います。
 1つは、医師の研修医制度の改善との関係でございます。従来司法修習につきましては、なぜ法曹養成だけが有給なのかという議論もございました。しかし、平成16年度からは医師の養成課程の大改革が実施されることになっております。その主な内容は、従来任意でございました研修医制度を義務化して、研修プログラムを充実させる。研修専念義務を課して、アルバイトを原則禁止する。その反面として、国費をもって研修医一人当たり月30万円程度の給与が支給されるように、研修医の研修機関に補助金を出すということであります。もちろん、医師と法律家では制度が違いますから、厳密な対比は困難な面もございます。しかしながら、モラルの低下を防ぎ、その質を高めるためには、担い手の養成が決定的に重要であり、一定期間研修に専念させる必要がある、また、その養成が国家的責務であり、養成課程に国費を投入することが不可欠であるということにつきまして、考え方として共通するものがあるのではないかと考えております。なお、この医師の研修医制度の検討に際しましては、研修医に対する貸与制ということは検討なされておりません。
 最後に外国の司法修習制度との比較でございます。ここにドイツ、韓国の給費制という資料も出ております。御覧いただきたいと思いますが、日弁連はドイツ、韓国の調査をいたしました。日本と同じように修習を義務づけているドイツと韓国では、ドイツでは、司法インフラの整備と位置付けまして、国家的責務であるという伝統により、韓国では同じく司法インフラの整備であるという理由に加えて、国際競争力の強化を図るという目的から、いずれも給費制を維持しております。ドイツでは州によって異なりますけれども、約1万人の修習生に対して、2年間の修習を行い、給費額は1人平均月額15万円。それから、人口が日本の約3分の1であります韓国でも、年間約1,000 人の修習生に対して、2年間の修習を行いまして、給費額は1人月額約26万円に相当する給与を支給しております。金額は購買力平価換算を行いましたので、若干の誤差があるかもしれません。
 韓国には現地調査もいたしました。一部には廃止の議論もございます。しかしながら、それはごく少数意見にとどまりまして、大法院を始め、一貫して給費制を合理性あるものと考えております。
 特に注意すべきことは、司法研修院というところでは、修習生の数の急増に伴いまして、修習過程を官中心の判検事養成から、民中心の弁護士養成教育にはっきり転換しております。しかしながら、その段階で給費制が廃止される見通しは現在のところ全くありません。
 司法修習制度を採用しているこれらの国の状況は、我が国においても、大いに参考にすべきであると思う次第でございます。
 なお、給費制を廃止し、貸与制に切り替えるという点につきましては、これとセットになりまして、裁判官、検察官に任官した者のみに対して、当然に返済を免除するという制度、すなわち官だけに実質的に給費制を維持するという議論がございます。しかし、このような制度になりますと、法曹三者の統一・公正・平等の理念に基づく司法修習を変容させ、官民格差を生じさせるとともに、弁護士任官などによりまして、裁判官等への給源を多様化・多元化したいという意見書の趣旨にも逆行することになってしまうわけでございます。
 以上の理由によりまして、司法修習生に対する給費制の廃止、及び貸与制への切替えにつきましては、強く反対し、あくまで給費制の堅持をお願いしたいというのが日弁連の意見でございます。
 以上でございます。

○田中座長 日弁連の御意見は前回も分かったのですけれども、書面ではこの法曹養成検討会の運営についても指摘しておられ、前回の取りまとめの仕方がおかしいというような内容のものですけれども、これはどのような根拠に基づいているのですか。

○田中副会長 検討会の運営についての御意見を申し上げて、非常に僣越なところがあって、これは日弁連としてのこの問題についての関心の高さの反面というふうにお許しいただきたいのですが、私どもといたしましては、前回も傍聴させていただきまして、今日もメモが出ておりますけれども、全体として給費制の廃止についての議論が必ずしも十分でない中で、要するに、全体の経済的支援の振興を図るために、この問題を先に検討すべきだという議論が先行したように思っております。それはむしろ全体としての議論が逆であろうかと考えます。
 それから、内容的にも、給費制そのものについて、例えば川端委員からドイツ、韓国の状況についての調査の検討なども提案がありましたけれども、それについてほとんど触れられていないということも含めて、私どもの目から見ますと、この問題の重要性に比べて、少し検討が十分ではなかったというふうに感じておった次第でございます。

○田中座長 いちいち細かく反論するのもよろしくないと思うんですけれども、前回の検討会において、当日の議論内容を踏まえて、最後に取りまとめたことについて、委員の方々から特に異論はなく、それで取りまとめているということでございます。委員の方がおっしゃるのであれば、それはまだ納得できるのですけれども、外部の関係機関から、意見が違うというだけで、取りまとめの方法について、情報の提供の仕方に問題があるとか実質的な審議がないとかいろいろおっしゃられるということについては、座長としては非常に遺憾な気がいたします。御意見が違うということは十分承知しておりまして、それを配慮して検討しなければならぬということも承知しておりますけれども、議事の進行の在り方についてまでいろいろおっしゃられるということについては、いかがなものかと考えております。

○田中副会長 先ほど申し上げましたように、日弁連としての問題についての重大な関心の深さということで、御理解いただければありがたいと思っております。

○田中座長 御意見は今伺ったとおりでございますので、そういう御意見だということは従来から承知しておりまして、それを踏まえて検討しているわけです。
 先ほど触れられました韓国、ドイツにつきましても、決して無視したわけではなく、その点につきまして、本日事務局の方から資料を配布しております。この資料については、時間の関係がありますので、今、問題になっております給費制に関係するところだけ、御説明いただけますでしょうか。

○片岡参事官 事務局からの配布資料3としてお配りしております。時間の関係もありますので、若干の説明にとどめさせていただきたいと思います。
 日弁連の方から、ただいま韓国、ドイツのみの資料が出されまして、その2つの国についてのみ説明がございましたが、その両国は割愛させていただきまして、事務局の資料としましては、カナダ、フランスも付け加えておりますので、カナダ、フランスについて御説明させていただきます。
 カナダの制度でございますが、給費に相当する部分、「オンタリオ州の例」というところでございますが、「①スキル課程(第1期)」、「③実体法・手続法課程(第3期)」、これは講義・座学に相当する部分でございます。これは修習生に相当する人が、授業料を支払っているということでございます。
 そして「②実務修習(第2期)」の部分、これは約10か月ございますが、法律事務所に就職しまして、その修習先から給与の支給を受けます。中には政府機関や裁判所等に就職して、実務修習を行う者もいますが、その場合も、修習先から給与の支給を受けるということでございます。なお、この就職先が座学の部分の授業料を負担するということも事実上あるというふうに聞いております。ブリティッシュコロンビア州の場合も、座学・講義部分については授業料を受講者が支払います。そして実務修習については、修習先の弁護士事務所、あるいは政府機関等から給与の支払を受けるという制度になってございます。
 次にフランスでございますが、司法官の養成と弁護士の養成の研修所が違っております。司法官の方は、公務員の身分を有して、報酬の支給を受けるということになってございますが、弁護士の方は弁護士研修所の入学に際して入学金に相当するものを支払い、その間は報酬手当の支給がないことになります。ただ、奨学金制度があるようでございます。
 カナダ、フランスについてのみ説明させていただきました。

○田中座長 それでは、先ほど来の日弁連の御意見も踏まえまして、司法修習生の給費制の問題につきまして御意見をお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○川端委員 私ばかり発言しているので、気が引けるんですけれども、この問題を考えるときに、一番根本に置いて考えなければいけないのは、司法修習も新しい司法修習ということになって、今までの司法修習とは性格が変わるということだと思うんです。そのとらえ方が非常に重要だと思うんです。
 最高裁の説明によると、新司法修習は法曹三者全部に必要なコモンベーシックとしてのスキルとマインドを養成するものとなります。今までのような判決起案とか、あるいは起訴状の起案というような、そういう言わば任官した後に必要になるスキルの先取り部分のような修習はやめるということです。
 これは、何を意味するかといいますと、要するにこの司法改革の目的として、今までの日本の国の在り方が行政中心であったのを、これからは規制緩和社会に合わせて、司法が透明なルールで事後規制をする。そういう国の形に変える。そのためには、その制度を担う大量の人が必要になるので、新しい法曹養成制度が必要である。法科大学院で理論と実務の架橋の教育を受けた後、司法試験を受けていただいて、その後やはり裁判所が主導して、法曹三者に必要なスキルを教える必要がある。そういう形でこれからの日本の司法を担う人材を養成する。そのことによって、新しい日本の姿を作るのだという改革だったと思うのです。
 ということは、今までの司法修習と違って、これからの司法修習というのは、やはりまさに日本社会のインフラストラクチュアそのもの、こういう位置付けを与えられたというとに理論的にはなるのではないか。
 そうなると、今までの日本で公共投資というと、高速道路とか、新幹線とか、空港とか、そういうハード中心のものだったのと同じく、あるいはそれに代わって法曹養成全体に国の財政的な資金が十分につぎ込まれなければならないということに理屈上なるのではないかというのが一つです。
 もう一つは、今までの司法修習というのは、戦前の司法官試補の基本的な構造に弁護士の修習を足した形で、今日御紹介のあった形で言えば、フランスの制度の中に弁護士の修習が乗っかったような形だったわけです。そこでは、任官する人は言わば任官後の技術の研修をそこで受けているので、それは給与が支給されて当然だということになっておりましたけれども、絶えず、では弁護士に何で給与を支給するのだという議論が起こりました。でも、これからの修習はそうではなくて、そういう任官後の研修分の先取りはない、これを除外した、本当に法曹三者に共通なコアとしてのスキルとマインドを裁判所が行うという形であります。そこに裁判実務というものがコアとして想定されているのは明らかだと思うのですけれども、そういう形でやるんですから、これは法曹三者のどれになろうとも、扱いを変える理由はなくなったというふうに見るべきではないかというのがもう一つです。
 もちろん、理屈から言えばほかの制度もあり得たわけで、現に司法制度改革審議会の議論の最中は、1999年に私が第二東京弁護士会の責任者としてとりまとめた、要するにカナダ型に転換してはどうかという提案もありました。これだと財政負担はなくなるという制度です。
 それから、もう一つ、もっとアメリカ型に徹底して、ロースクールで実務教育もやっていいのではないかという提案もありました。これも財政負担という面ではなくなるという制度だったのですけれども、その両方は退けられて、やはり裁判所がそういう意味での法曹三者のコアのスキルとマインドを教育する、そういうものが必要だということで、司法研修所が残されたわけです。そのことは、やはりこれからの制度設計に当たっては十分に考えなければならない事項ではないかということです。
 それともう一つ、これはちょっと次元が違うんですけれども、私が前から言っている実質的な経済的負担の問題です。この問題についても、文部科学省の概算要求というのが出て、非常にすばらしいものと私自身評価しますけれども、ただこれはあくまでも概算要求でしかないというのが大変残念なところでして、財務省が一体どう扱うのかというのは、非常に心配です。もしこの文部科学省の要求がこの通り実現されないとすると、日弁連が言っているように、とんでもない費用負担のかかる制度に転換してしまうわけです。そのときには、私が前回申し上げたとおり、この司法修習の際にどういう負担があるのかというのが、言わばラクダの背中の上に乗せられる最後の1本のワラになってしまうかもしれないわけです。ですから、そこはよく見極めなければいけない。ということは、やはりそういう実質的な配慮からいっても、全体として制度がどうなっていくのか、特に文部科学省の概算要求がどう扱われるのかというのをよくよく見た上でないと、やはり修習生の給費制の問題は安易に扱えないのではないかというふうに思います。

○井上委員 御発言をもう少し短くしていただきたいと思います。限られた時間の中で、みんなで議論しないといけませんので。
 川端委員が最初に言われたことは、私の理解とはずいぶん違っています。今の司法修習制度が任官ということを前提にして、任官者を養成することを基本にしているから給与を払っているのであり、そこに弁護士修習を加えたものだと言われたのですが、それは、今から50年ほど前に統一修習というものが実現したときの考え方とは違うのではないか。弁護士会の関係者の方が、そういうことをおっしゃっていいのか、という感じを持ちました。
 むしろ、今の修習制度も何らかの公的な性格を持つ法曹というものを育てていくためにあるので、給費を出しているのだ、という受け止め方を、私などはしてきたのです。
 それともう一つは、今回、修習の内容が変わっていくとして、その趣旨ですが、起案をさせないことに仮になるとしても、それは、任官を前提にした修習ではないからということではなく、むしろ、基本的な文章の書き方とかは法科大学院できちんとやってくるだろうから、後はオン・ザ・ジョブで、それぞれの職種に合わせた技能を身に付ければいい、そういう考え方から、修習期間が1年に縮まることもあり、そういう変更を検討なさっているのではないかと思うのです。そうであるのに、そのことをとらえて、基本思想あるいは哲学が変わったかのように言われるのは、言い過ぎだろうと思います。
 確かに、後者の点、つまり全体として見ないといけないということは、そのとおりであり、さきほどの文部科学省からのお話も、まだこれからどうなるか分からないというところがあって、それとの見合いということはあるのですけれども、この給費制を廃止するとか貸与制に変えるということを条件にして、そういう予算を増やしてもらおうという議論を今まで我々はしてきたわけでは決してなく、全体の中でそういうものも考えていこうということであったわけです。ですから、さきほどの日弁連の御説明については、そこのところはちょっと誤解をされているのではないかと思います。貸与制に変えることを先に議論しないと補助とかも増やせないのだと、そういう議論をしてきたつもりはありません。しかし、全体としてお金がかかっていく、そういう中で給費制というものを本当に維持できるのだろうか。そういう問題も含めて検討しようということであって、別に廃止するとか貸与制にすべきだというふうに決めたわけでもなく、1つの選択肢として検討していきましょうということだと思うのです。
 さらに一つ大きな視点として、今回司法制度改革全体として、例えば私の関係するものでも、公的弁護だとか裁判員制度だとか、かなり多額のお金がかかるわけですが、国の財政全体の中で、どのようにプライオリティーをつけて一連の改革を実現していくか、そういう問題の1つだと思うわけです。
 そういった全体の中で、給費制をずっと死守しますということが本当に言えるのかどうか、また、それが適切なのかどうかという視点が大事なのではないかと思っております。

○今田委員 結論からということになりますけれども、一般の国民的な常識という観点からいいますと、やはり今、井上委員がおっしゃったように、政府全体で財政問題を抱えている状況での大改革の中で、給費制の維持というのは、やはり難しいのではないかと思います。貸与制への切替えもやむなし、という意見を今持っております。
 もちろん、経済的な負担の心配もなく、研修の間、十分な学習をして、立派な法曹に育っていくという制度がすばらしいわけで、それが可能であれば何も反対することはないと思います。けれども、やはり今回の改革は、直接的な問題としては修習生が量的に増えるということと、新たに法科大学院の学生への経済的な支援というものが付加されたわけです。プロセスとして養成する、そのプロセス全体へ、厳しい財政の中での経済的な資源を効率的・合理的に配分するという観点で考えた場合、恐らくここでの前の議論もそうだったと思うのですけれども、この給費制の維持ということが合理的な選択であるというふうには、なかなか思いづらいと思います。そういう意味からいえば、貸与制というものへこの際切り替えるということもやむなしかと思います。
 これからの法曹というのは、今、川端委員がおっしゃったように、非常に多様な人材を養成し、そういう多様な法曹としての役割に分かれるという制度をきちっとつくり上げなければいけない。そういうふうに考えますと、必ずしも任官だけではなくて、公益的な役割を担い、専ら公益に奉仕し、私的な利益というものを追求するということについては、かなり制限を受けるような活動など地域の新しいサポーターとして、様々な紛争で困っている国民のニーズに対応するような法曹、弁護士が育ってきてくれるということが、とても今回の改革の意義として大きいと考えます。
 一方では、経済成長の先端をいって、私的な利益が追求できることが、弁護士の魅力となり、法曹界に優秀な人材を集めるということにもなるわけですから、そういう私的な利益を追求できるような弁護士の養成もあるわけで、そういう意味で非常に幅広い法曹の養成がこの改革の根幹であると思います。裁判官、検察官だけではなくて、弁護士の任務においても、そうした公益性の高く、私的な制限を比較的受けるであろうような、そういうコースを選択した人に対しては、貸与返還を一定猶予するという、それである程度の期間そうした役割を担った場合に返還免除というような制度というのが、今回の改革の観点からいうと合理的ではないかと思います。あくまでもここで給費制を死守するという議論を立てるということは、どうも国民的なコンセンサスを得られないのではないかというのが私の考えです。

○川野辺委員 給費制を維持できない状況にあるということはよく分かるわけですけれども、それでは、貸与制に移行すればすべてうまくいくのかという点について、ちょっとビジョンが示されてないという感じがします。
 先ほど日弁連の方から御説明がありましたように、法曹になる段階で約1,500万円の負担を持って法曹になるということについては、やはり問題ないではないと思われます。この計算がどの程度根拠があるのかよく分かりませんけれども、貸与制になった場合にこういう貸与制の方法もあるし、こういう貸与制の形態もある、こういう形態を取ればいろんな面でうまくいくのではないかというような、そういう見通しが示されていないというか、その辺まで踏み込んだ議論がこれまでなされてこなかったように思うので、貸与制に移行した場合、現実にどのようになるのかというところを、もう少しここで議論した方がいいのではないかという気がいたします。

○片岡参事官 ただいまの、例えば貸与制への移行、修習生の給費制を貸与制に移行するという点につきましては、日弁連の方から、本日だけではなくて、給費制を維持すべきであるという意見が繰り返し述べられているわけでありますが、最高裁判所及び法務省からは、これまで明確な意見が述べられていません。
 したがいまして、法曹三者の中で貸与制への移行を検討していただいている機関というのは存在しませんで、本部事務局のみが現状では貸与制への移行を検討せざるを得ないという状況であると考えております。
 その中で、具体的な案が示されないから何とも言えないということであれば、事務局の案を御提示して御検討いただくしかなく、法曹三者のコンセンサスを待っていたのでは、かつての司法制度改革がそうであったように、全く改革が進まない。特にこの問題は、本部設置期限が経過して本部がなくなりますと、法曹三者のコンセンサスを得られないままでは、一体どこで改革の論議をされるのか、その点も心配でございます。
 いずれにしましても、この本部設置期間中に、この問題について、将来的に、あるいはすぐにでも貸与制への移行があり得べしなのか、そういう点も含めまして議論は尽くしておくべきだと考えておりますので、引き続き最高裁、法務省、日弁連も貸与制への移行も視野に入れて検討するというこの検討会の今までの方向を御理解いただいた上で、具体的な制度設計の話合いに応じていただきたいと考えているところでございます。

○田中座長 この貸与制の問題は、我々から見れば、法曹三者とも基本的には受益者でして、先ほど今田委員がおっしゃったように、社会的な理解、国民的な理解を得るという観点から、今、日弁連がおっしゃっているような議論がどの程度社会的に通用するのか、例えば、費用がたくさんかかるとおっしゃっていますけれども、大学の研究者になるとなれば、これぐらいの費用は皆それぞれ自己負担で、研究者、学者になっているわけで、法曹だけ取り出して云々と言われても、どの程度国民の納得が得られるのかという問題もございます。先ほど川端委員とか井上委員もおっしゃったように、やはり法科大学院の問題とか、公的弁護とか、司法ネットとか、裁判員とか、いろいろなことで、最終的にはみんな費用がかかることは間違いないので、全体の中でこの給費制の問題をどうするべきかという問題であり、前回取りまとめたような方向で具体的に検討すべきだと考えます。今、川野辺委員がおっしゃったように、貸与制のビジョンがないといっても、貸与制を選択肢として入れるということまでは、これはもう1年ぐらい前に御了解いただいているわけですが、それについて実際上話が進まないという状況であります。先ほど文部科学省から示された概算要求なども、前回この検討会で一定の取りまとめをしたから、こういうことが動き始めているわけでして、やはり一定のタイムスケジュールの中で、全体を見極めながら検討を進めていかざるを得ないと考えます。そういう構造的な問題と同時にやはりタイムスケジュールの問題もありますので、話合いも議論もできないままで時間切れというのは非常に困ると思います。事務局の方では、このスケジュールの問題については、どのようにお考えですか。

○片岡参事官 ただいま本部設置期間中に議論を尽くしていただくべきだと申し上げましたが、今後司法試験合格者、司法修習生の増加が図られる中で、給費制を維持することについては極めて困難な問題が存在すると考えております。
 一方で、法科大学院の学生に対する財政支援、特に文部科学省の予算要求というものの初年度の結論が、この年末までに出るわけでございます。
 また、次期通常国会におきましては、司法制度改革といたしまして、被疑者段階の公的弁護、あるいは司法ネットというようなもの、裁判員制度などのように、近い将来相当規模の財政措置が必要と思われる事項について、国会等で御審議いただくわけでございます。
 このような状況にありますので、事務局の作業スケジュールとしましては、司法修習生の給費制を貸与制に移行するための法案を、次の通常国会に提出するべく準備を行いたいと考えております。もちろん、先ほど申し上げましたように、関係機関にも話合いに応じていただいた上で、具体的制度設計をして話を詰めていく、あるいはこの検討会で御議論いただくということが大前提でございますが、スケジュールとしましては、次の通常国会に向けて準備を行いたいと考えているところでございます。

○田中座長 今の事務局の説明も踏まえまして、先ほど川野辺委員から御意見がありましたように、貸与制のビジョンを示して、全体の中でこういうこともあり得るのだという検討をするためには、やはり事務局の方で前回の取りまとめを踏まえて具体的に検討していただいて、その案が本当に適切なのかどうなのかということを、この場で検討していただくというふうにしないといけないと思います。もちろん事務局から出てきた案が、国民的な観点から見てもちょっと問題だということであれば、ここで意見を入れて修正していただくこともありますし、何といっても最終的には国会で決まることになるわけですけれども、そういうことについて検討会で意見がまとまらないから先送りだというのは、いかがなものかと思います。
 そういうことで、具体的に検討を進めてよろしゅうございますでしょうか。当然そうなるという趣旨ではなくて、この前も話しましたように、いろいろな選択肢の1つとしては、そういうことも視野に入れてトータルな設計をしなければなりませんし、ほかの案件に影響を及ぼしていくということになりますと、やはり検討会の姿勢としてはいかがかと思いますので、事務局の方で具体的に案を検討していただいて、その具体的な検討の内容の当否についてここで更に議論をいただくということに段階を進めるという形でよろしゅうございますでしょうか。
 事務局の方で、法曹三者に相談に乗っていただけるのかどうか分からないという説明がありましたけれども、法曹三者の方もそれぞれお立場は分かりますけれども、事務局の方からの相談には乗っていただいて、社会的な納得の得られるような案ができるように御協力いただければと思います。
 この問題につきましては、また引き続き検討させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、最後に法科大学院の教員派遣法の関係政令の立案につきまして、前回に引き続いて事務局から説明をお願いしたいと思います。

○片岡参事官 それでは、事務局からの配布資料4をごらんください。「法科大学院派遣法に係る政令について」という資料でございます。
 この点につきましては、前回も御説明申し上げましたが、まず1としまして「裁判官が法科大学院において教授等の業務を行った場合における法科大学院設置者の国庫納付金について」、これは国庫納付金の金額、あるいは手続を政令で定めるということになっておりますが、その(注)という部分にございますように、国庫納付金の金額は、「基準額×裁判官が法科大学院において教授等の業務を行った日数」によって算定することになります。基本的には、日額いくらというような基準額を定めまして、その実際の業務を行った日数を乗じて算定するということでございます。
 この基準額につきましては、法科大学院の他の教員、特に実務家教員のベースで日額を考えたいと思っております。例えば、前回も申し上げましたが、5万円とすれば、年間260日実働とするとして、年額1,300万円ぐらいの水準の業務というような説明ができるかと思います。この日額につきましては、今、財政当局と折衝しているという状況でございまして、一応私どもも5万円前後というところで折衝しておりますが、まだ確定には至ってないということでございます。
 それから、2以下は共済関係の特例の関係で、極めて技術的なもので、詳細な説明は省略いたしますが、国立大学に行く場合は国家公務員共済組合、公立大学に行く場合は地方公務員等共済組合、それから私立大学に行く場合は私立学校教職員共済組合ということで、これまで入っていた国家公務員共済組合との調整が必要になりますので、非常に技術的に複雑な条文が必要になってきます。その上に、いわゆる複数の法科大学院に派遣される場合もございますので、複数の場合一体どう調整するのかということで、非常にテクニカルな問題に悩んでいるところでございます。
 この政令につきまして、関係機関との調整を終えて、10月には公布、あるいは条文という形でお示しできればと考えております。
 もう一点ですが、法科大学院派遣法に係る人事院規則についてでございます。法科大学院派遣法は、一部、政令とともに人事院規則にも委任している事項がございます。主として派遣の手続的な関係でございます。実際の実務では非常に重要になってくると思いますが、今、人事院規則ということで、最終的な詰めを行っているところでございます。特にいわゆる派遣給の関係でございますが、法律では百分の五十以内ということを規定したわけでございますが、例えば「派遣給は法科大学院の報酬等と派遣前の給与との差額を超えないこと」などをクリアーに規定していただくことになっております。つまり、もらい過ぎないようにと、国からは支給し過ぎということがないようにということ、あるいは、教授の確保が必要だという場合の要件についても、人事院規則で定めていただくことになっております。
 これにつきましては、準備手続が10月1日以降行われるということでございますので、少なくとも準備手続に係る部分につきましては、10月の早い時期、できれば10月1日ころに公布していただくということをお願いしている次第でございます。
 同じく裁判官の派遣の関係で、基本的には同じ発想で、今、最高裁の方で最高裁規則の立案作業をされておられると承知しております。裁判官につきましては、減給、あるいは派遣給というのはございませんで、主として手続的な部分になるということでございます。
 以上、政令、人事院規則、最高裁規則につきまして、ただいま作業中であり、10月頃には公布になるということを御承知置きいただければと思います。

○田中座長 ただいまの事務局の説明につきまして、質問や御意見がございましたらどうぞ。特にございませんでしょうか。これは、こういうものができたら各大学などには周知徹底していただけるのでしょうか。

○片岡参事官 そういう場がございましたら事前に、あるいは事後的にもお呼びいただければ説明に上がります。

○田中座長 ほかにございますでしょうか。法科大学院の設置認可や教員派遣の手続は、間もなく開始されることになるわけですけれども、前回も申し上げましたように、この政令案につきましては、実務家教員派遣制度が円滑に運用されるような内容になることに努めていただきたいと思います。
 ただ、国立大学は今、法人化に向けて動いていますので、なかなか対応しにくいところがあると思うのですが、その辺りも視野に入れて御検討いただけたらと思います。
 それでは、予定していた時間になりましたので、本日の検討会はこれで終わらせていただきたいと思います。
 次回の検討会の日程でございますけれども、これは調整の上、おって御連絡申し上げることにしたいと思います。
 本日は、どうもありがとうございました。