第2回配布資料一覧

2002年1月28日

第三者評価(適格認定)基準骨子(案)





 法科大学院に関する第三者評価(適格認定)基準の策定に当たっては、次の各論点が含まれていなければならないものと考える。

第1 第三者評価(適格認定)制度の目的・理念

1 法科大学院は、司法が21世紀のわが国社会において期待される役割を十全に果たすための人的基盤を確立することを目的とし、司法試験、司法修習と連携した基幹的な高度専門教育機関とする。

2 法科大学院における法曹養成教育の在り方は、理論的教育と実務的教育を架橋するものとして、公平性、開放性、多様性を旨としつつ、以下の基本的理念を統合的に実現するものでなければならない。

(1)「法の支配」の直接の担い手であり、「国民の社会生活上の医師」としての役割を期待される法曹に共通して必要とされる専門的資質・能力の習得と、かけがえのない人生を生きる人々の喜びや悲しみに対して深く共感しうる豊かな人間性の涵養、向上を図る。

(2)専門的な法知識を確実に習得させるとともに、それを批判的に検討し、また発展させていく創造的な思考力、あるいは事実に即して具体的な法的問題を解決していくため必要な法的分析能力や法的議論の能力等を育成する。

(3)先端的な法領域について基本的な理解を得させ、また、社会に生起する様々な問題に対して広い関心を持たせ、人間や社会の在り方に関する思索や実際的な見聞、体験を基礎として、法曹としての責任感や倫理観が涵養されるよう努めるとともに、実際に社会への貢献を行うための機会を提供しうるものとする。

3 第三者評価(適格認定)は、各法科大学院によって提供される教育が法曹資格を取得するために要求される最小限の内容と水準を満たすものであることを保証するためにおこなう。

第2 第三者評価(適格認定)基準についての基本原則

1 法科大学院の修了者は、以下の事項を修得していることが要求される。

(1)法曹としての倫理上の責任に関する十分な理解。

(2)法及び法制度の理論、原理、役割に関する十分な理解。

(3)法的調査、法的分析、法的推論、問題解決の技能、口頭及び書面によるコミュニケーションの技能等法曹として必要なその他の基礎的技能に関する十分な理解。

(4)公益的なリーガルサービスの提供を求められる公的な専門家であることの十分な理解。

2 第三者評価(適格認定)により認定された法科大学院の修了者に対して司法試験の受験資格が与えられる。

3 各法科大学院は、最初の認定を含めて一定間隔で、現地調査を含む第三者評価を受けるほか、毎年、質問票による回答、自己評価書、現地調査等により、第三者評価機関に対して情報提供をしなければならない。

4 第三者評価機関は、第三者評価(適格認定)の申請に対して認定を与えまたは与えない権限及びいったん与えた認定を取り消す権限を有する。

第3 法科大学院の組織及び運営等について

1 法科大学院の「教育研究上の基本組織」、「教員組織」、「収容定員」並びに「施設及び設備」は、学校教育法及び大学院設置基準の規定並びにこれらの規定に基づく告示に定める基準に適合していなければならない。ただし、教育研究上適当と認められる場合には、法科大学院に適合して定められた独自の基準に適合していなければならない。

2 法科大学院は、教育プログラムに関する独自の自己評価制度を有していなければならない。

(1)自己評価の内容は、第三者評価基準を反映していなければならない。

(2)自己評価は、定期的に行わなければならない。

(3)自己評価の結果は、第三者評価機関に提出するほか、一般に公表されていなければならない。

3 法科大学院は、独自の運営機関を有し、常勤の長及び教授陣によって運営され、教育方針の決定についての実質的権限を有していなければならない。

4 法科大学院の収入は、すべてその法科大学院のために利用されていなければならない。

5 法科大学院の在籍者数は、原則として収容定員と一致していなければならない。

6 教員に対する報酬が、受講者数等に応じて定められていてはならない。

第4 入学者選抜について


 法科大学院の入学者選抜の評価基準は以下のとおりとする。

1 「公平性、開放性、多様性」の基本理念に忠実に従って、入学試験のほか、学部において学んだ科目とその学業成績、学業以外の活動実績及び社会における活動実績等を総合的に考慮して選抜していること。

2 全ての出願者に、法的知識ではなく法科大学院における教育課程を十分に修了する能力を評価するための試験として、判断力、思考力、分析力、表現力等の資質を試す統一的な適性試験を行っていること。

3 自大学出身者を優先せず、また寄付の有無若しくはその額を考慮していないこと。

4 学部における専門分野を問わず多様な人材を受け入れ、社会で活動する者に積極的に門戸を解放していること。

5 法学未修者の選抜において、法律科目試験を実施していないこと。

第5 在学期間について

1 標準修業年限は3年とする。

2 在学期間を3年以下とすることを認める(法学既修者の選抜)に当たって、プロフェッショナル法学教育の1年次カリキュラムを修了した者と同等の能力を備えていることを、厳格かつ公平に判定していなければならない。

3 在学期間の短縮は、法科大学院が健全に発展するまでの過渡的制度であり、各法科大学院において、法学既修者は5割を超えることがあってはならない。法科大学院は、通常の入学者と法学既修者としての入学者における適性試験成績の分布状況を、一般に公表していなければならない。

4 課程の修了要件は、3年以上在学し、80単位以上100単位未満の単位取得とする。法学既修者については、1年以下(30単位以下)を短縮することができる(2年以上在学での修了)ものとする。

※夜間制・通信制その他のパートタイム学生についても、適切な在学年限その他の基準を定める。

第6 教育プログラムについて

1 法曹として備えるべき資質・能力を育成するために、法理論教育を中心としつつ実務教育の導入部分をも併せて実施することとし、実務との架橋を強く意識した教育を行わなければならず、そのために必要な授業科目を開設し、体系的に教育課程を編成しなければならない。

2 教育課程の編成にあたっては、法科大学院の修了者が法曹資格を取得し、法曹実務家として効果的かつ責任をもって職務を遂行するために必要とされる倫理観、法の理論及び原理や、法的調査、法的分析、法的推論、問題解決の技能、口頭及び書面によるコミュニケーション等の実務的技能が涵養されるよう必要な措置が講じられていなければならない。

3 法科大学院の教育課程は、学校教育法及び大学院設置基準の規定並びにこれらの規定に基づく告示に定める基準に適合していなければならないものとするほか、次の(1)から(5)までに定める授業科目が教育上の目的に応じて適当と認められる単位数以上開設されていなければならない。

(1)法律基本科目群
(a)公法系科目(憲法または行政法の分野に関する科目をいう。以下同じ。)
(b)民事系科目(民法、商法または民事訴訟法の分野に関する科目をいう。以下同じ。)
(c)刑事系科目(刑法または刑事訴訟法の分野に関する科目をいう。以下同じ。)
(2)実務基礎科目群
法曹倫理、法情報調査、要件事実と事実認定の基礎、法文書作成、模擬裁判、ロイヤリング、クリニック、エクスターンシップなど
(3)基礎法学・学際科目群
基礎法学、外国法、法と政治学・法と経済学など
(4)選択科目群
労働法、経済法、税法、知的財産法、国際取引法、環境法など
(5)学問的水準を有する論文の作成

4 教育課程の編成に当たっては、法曹資格を有する専任または非常勤の教員によって監督されるクリニック、エクスターンシップにおいて、できうる限り「生きた」事件に接する機会が与えられていなければならない。その際、公益的活動(プロボノ)を経験させるよう配慮されていなければならない。

第7 教育方法について

1 法科大学院における教育方法は、学校教育法及び大学院設置基準の規定並びにこれらの規定に基づく告示に定める基準に適合していなければならないものとするほか、次の措置が講じられていなければならない。

(1)一の授業科目について同時に授業を行う学生数は、教育効果を十分あげられるような適当な少人数(法律基本科目群については50人程度以下、実務基礎科目については30人程度以下、クリニック、エクスターンシップ等の臨床科目については10人程度以下)としていること。

(2)授業は、教員と学生との間及び学生相互の間での討論、事例研究、調査、現場実習その他適切な方法を通じるなどして、専門的な法知識を確実に修得させるとともに法曹として必要な批判的検討能力、創造的思考力、法的分析能力、法的議論の能力等を育成するために適切な方法によることを基本としていること。

(3)授業の方法に応じ、当該授業の教育効果を十分にあげられるよう、授業時間外における学修等を充実させるため、自習室や深夜まで開館している独自の図書館や模擬法廷などの施設を設けたり、コンピュータやマルチメディア教材などの情報機器や参考図書等を充実するなど、設備・方策が講じられていること。

(4)第6の3(2)に掲げる授業科目(実務基礎科目群)については、法曹養成のための実践的な教育を行うよう、実務の経験を有する教員による事例研究、討論、クリニック、エクスターンシップその他の適切な方法による授業が行われていること。

(5)授業の履修単位は、15時間の授業と30時間の予復習を行うことで1単位と認定するものとされていること。

2 実務基礎科目は、5年以上(専門職責任科目は10年以上)の弁護士経験を有する弁護士が少なくとも1名以上加わった教員チームにより実施されていなければならないものとする。

第8 教員組織について

1 法科大学院において最低限必要な専任教員数は12人とし、専任教員1人当たりの学生の収容定員数は15人以下とする。必要専任教員のうち2割以上は実務家教員でなければならない。
※法科大学院設置後6年間は、専任教員の3分の1以内について、学部あるいは他の大学院との兼担を認める。

2 専任教員については、兼担授業、他大学授業を含めて、1学年12単位を超えて授業を負担していてはならない。

3 法科大学院の教員の適格性は、教育実績、授業能力、実務経験等を総合的に考慮して判定していなければならない。

第9 成績評価について

1 法科大学院の成績については、学生が在学期間中その課程の履修に専念できるよう、授業方法・計画・成績評価方法が明示されていなければならない。

2 法科大学院における成績評価、進級認定及び修了認定は、客観的かつ厳格に実施されていなければならない。

第10 修了認定について

 法科大学院の修了認定のための要件は、次のすべてを満たすこととされていなければならない。

1 大学院設置基準に定める修了の要件を満たしたこと。

2 次の(1)から(4)までに定める授業科目につきそれぞれ(1)から(4)までに定める単位数以上を修得したこと。ただし、3年以下の在学期間での修了を認める場合にあっては、(1)の(a)から(c)までに定める授業科目についてそれぞれ(a)から(c)までの括弧内に定める単位数以上並びに(2)ないし(4)に定める授業科目についてそれぞれ(2)ないし(4)に定める単位数以上を修得したこと。

(1)法律基本科目群
  (a)公法系科目4単位(0単位)
  (b)民事系科目24単位(4単位)
  (c)刑事系科目8単位(2単位)
(2)実務基礎科目群10単位
(3)基礎法学・学際科目群2単位
(4)論文作成2単位

第11 奨学金、教育ローン、授業料免除制度等の各種支援制度

 法科大学院においては、奨学金、教育ローン、授業料免除制度などの各種の支援制度を充実する方策が具体的に整備されていなければならない。

第12 情報の公表について

 法科大学院については、組織及び運営方法、教員組織、収容定員、施設及び設備、入学者選抜、在学期間、教育課程、教育方法、成績評価、修了認定、奨学金制度その他の重要な事項を公表するために必要な措置が講じられていなければならない。

第13 その他の事項について

 第三者評価(適格認定)基準に盛り込むべきその他の事項についても引き続き検討するが、関係者の自発的創意による法科大学院の公平性、開放性、多様性の確保等を妨げることのないよう留意する。なお、第三者評価(適格認定)基準は、法科大学院がより法曹養成に特化した実践的教育機関に発展するよう随時見直すものとする。