○田中座長 おはようございます。第20回法曹養成検討会を始めたいと思います。
本日は、これまでに引き続きまして、「法科大学院の教育と司法試験等との有機的連携の在り方」と「司法修習生の給費制の在り方」の2つのテーマにつきまして検討をお願いしたいと思います。まず検討に先立ちまして、事務局から本日の配布資料の確認をお願いいたします。
○片岡参事官 それでは、本日の配布資料の確認をお願いいたします。資料1は、法曹養成検討会名簿(平成15年12月8日現在)です。資料2は、法曹養成検討会(第19回)の議事概要です。資料3は、「法科大学院における科目の開設予定状況の調査結果について」です。資料4は、「司法試験に関する意見の整理(案)」です。資料5は、「法科大学院への裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員の派遣に関する法律施行令案(概要)」です。資料6は、「司法修習貸与金(仮称)」という資料です。そのほか、文部科学省提出資料としまして、「平成16年度開設予定の法科大学院の設置認可等について」を配布してございます。確認いただければと思います。以上でございます。
○田中座長 それでは検討に入りたいと思います。まず「法科大学院の教育と司法試験等との有機的連携の在り方について」の検討をお願いしたいと思います。本日は、最初に文部科学省から法科大学院の設置認可の状況につきまして、説明をお伺いすることにしたいと思いますので、よろしくお願いします。
○文部科学省小松主任大学改革官 文部科学省でございます。「平成16年度開設予定の法科大学院の設置認可等について」という資料がございます。これにより御説明させていただきたいと思います。まず「審査の経緯」の前に、2ページ目の(参考)について触れさせていただきたいと思います。法科大学院の設置認可に当たりまして、法令上文部科学大臣が大学設置・学校法人審議会に諮問を行い、その答申結果を尊重して認可をすることといたしておりますけれども、今回で申しますと、主として大学設置分科会というところが中心にこの審査をいたしました。その分科会の下に必要に応じて特別審査会を置き、あるいは分野ごとの専門委員会を置くわけでございますが、今回は法科大学院について特別審査会が置かれ、そこで、順次構想なり、教員なりといったことを審査いたしまして、その結果、大学設置分科会へ戻って、そして答申が行われていくという順序をとったわけでございます。1枚目に戻りまして、6月の末が申請の締切りでございました。この時点で72大学、入学者の定員にいたしまして約5950人という形で申請が上がってまいりました。それを受けまして、7月に大学設置・学校法人審議会に対して文部科学大臣から諮問をいたしました。そして法科大学院特別審査会には、法曹関係者の方々、大学の法律を専門にしていらっしゃる方々、あるいは大学長その他の有識者あるいは企業法務の立場から経済界からも入っていただくなどいたしまして、ここで構想を審査し、その他専門委員会で中身、組織というようなことについて審査を行い、8月から9月にかけまして、いったん審議会で出ている意見を集約し、申請者である各大学にその意見を伝達をいたしまして、必要な修正なり見直しなりといったものの機会を差し上げるような形をとりました。さらに必要に応じて実地審査あるいは面接も行って、その上で各大学としてどのように対応されるかという必要な判断がなされまして、10月15日までに補正をすべきものは補正の書類を大学より提出いただいて、修正されたものをもとに専門委員会で審査をいたしまして、判定案を作成いたしました。この判定案については1つの分野に72の大学が出すという相当膨大な量のものであり、これは新制の大学制度が始まって以来のことでございましたので、答申のほとんど2〜3日前のぎりぎりまで、しばしば土日を返上して審査をしていただきました。その上で答申が出たのが、11月20日から21日でございまして、これを受けて事務手続の上、11月27日に認可をいたしました。認可については、通常ですと事務的に認可証等を大学側に交付いたしますけれども、文部科学大臣から、法科大学院の設置認可証の交付は、司法のとりわけ法曹養成についての司法制度改革における重要性ということにかんがみて、直接大臣からお渡ししたいという強い御意思がございましたので、東京においでをいただきまして、文部科学大臣から直接交付をするというような形をとらせていただいた次第でございます。また、設置認可の結果につきましては、国立が19大学、公立が2大学、私立大学が45大学、合計66大学、入学者定員にいたしまして5,430人が認可をされました。来年4月から受入れ予定でございます。それから不可となりましたのが4校ございまして、保留となりましたものが2校ございます。この保留につきましては、再度補正をして申請をする場合には、明日12月10日を締切りといたしまして補正を受け付け、審議会による判定は1月末に行われるということになる予定でございます。認可された大学の傾向としては、300名ぐらいの入学者定員を持つものから、30名ぐらいのものまで様々なものがあるということでございます。とりあえず、状況を御報告申し上げました。
○田中座長 どうもありがとうございました。ただいまの説明につきまして、御質問がございましたらどうぞ。ございませんでしょうか。それでは、どうもありがとうございました。
○小松主任大学改革官 ありがとうございました。
○田中座長 法科大学院の設置認可につきましては、今、御報告いただきましたように、4校の設置が不可になったわけですが、設置認可された法科大学院につきましても、今後、第三者評価が実施されますので、引き続き教育内容の充実に向けて関係者の御努力をお願いしたいと思っています。それでは、法科大学院における科目の設置状況について、その調査結果につきまして事務局から報告をいただきたいと思います。
○片岡参事官 それでは配布資料3を御覧ください。「法科大学院における科目の開設予定状況の調査結果について(仮集計)」でございます。司法制度改革推進本部事務局では、この10月に新司法試験の選択科目の在り方についての検討の参考とするため、来年4月の法科大学院の設置について認可申請中の72校に対し、①開設を予定している授業科目及びその単位数(平成15年10月15日現在のもの)、②新司法試験の選択科目に関する意見についての調査を実施し、72校から回答を得ました。回答率は100%ということであります。この資料は、その調査結果を仮集計したものでございます。まず、第1の開設を予定している授業科目及びその単位数についての仮集計の結果を御説明申し上げます。調査対象の72校で開設を予定している授業科目については、同一の分野に属するものであっても科目名が異なっている場合が少なくないため、当事務局において分野ごとに分類し、同一の分野に属すると思料される科目については、同一の関連科目として集計いたしました。その概要ですが、まず、基礎法学・隣接科目群及び展開・先端科目群の科目のうち、①知的財産法関連科目及び②労働法関連科目については、ほぼすべての法科大学院(71校以上)で開設予定であるとの回答でした。これに続いて、多くの法科大学院(51校以上)で開設予定であるとの回答があった科目は、③租税法関連科目、④経済法(独占禁止法)関連科目、⑤倒産法関連科目、⑥国際私法・国際取引法関連科目、⑦環境法関連科目、⑧消費者法関連科目及び⑨国際公法関連科目でありました。また、これらの科目につきましては、2単位以下の科目として開設予定であるとの回答が多かったところですが、4単位以上の科目として開設予定であるとの回答を集計しましたところ、回答数が41以上のものは、①国際私法・国際取引法関連科目、②知的財産法関連科目及び③労働法関連科目でした。これに続いて多かったもの(回答数21以上のもの)は、④租税法関連科目、⑤経済法(独占禁止法)関連科目及び⑥倒産法関連科目でありました。その具体的な集計結果につきましては、この資料に記載したとおりであります。このうち、例えば開設予定であるとの回答が多かった科目の中でも、環境法関連科目、消費者法関連科目、国際公法関連科目といった科目につきましては、4単位以上の科目として開設予定であるとの回答は、20以下にとどまるということから、4単位以上の科目として開設予定であるとの回答が多かったものには入ってきておりません。すなわちこれらの科目は2単位程度の科目として開設する法科大学院が多いというような集計結果となっております。なお、(注)に記載しましたように、国際私法・国際取引法関連科目として集計したわけですが、これには「国際私法」、「国際取引法」、「国際民事法」などといった回答も含むものであります。そして、「国際私法」又は「国際取引法」のいずれかのみを開設する、しかもいずれかのみを4単位以上の科目として開設するという回答はいずれも10前後であったのに対しまして、「国際私法」及び「国際取引法」の双方を含む「国際私法・国際取引法関連科目」として集計した場合には、回答数が50を超えたものであります。すなわち「国際私法」2単位、「国際取引法」2単位というように、「国際私法」と「国際取引法」の双方を合算して初めて4単位以上となるという法科大学院が多かったということでございます。次に、第2の新司法試験の選択科目に関する意見でありますが、回答の概要のうち「1 新司法試験における選択科目の在り方(総論)について」の部分は、各法科大学院の意見を分類しまして、同趣旨の意見が多かったものを記載したものです。その下の「2 具体的な選択科目について」では、72校の回答のうち、新司法試験の選択科目について、具体的な科目名を挙げた回答は62でした。そのうち特定の科目(分野)のみに関する意見を述べたものが12でありまして、その12を除いた合計50の回答を集計したところ、そのうちの半数(25)以上から新司法試験の選択科目とすべきであるとの意見が寄せられた科目は、次の7科目であり、知的財産法、労働法、経済法(独占禁止法)、倒産法、国際私法、国際法(国際公法)、租税法(税法)でありました。なお、先ほども御説明申し上げましたとおり、「国際私法」につきましては、「国際取引法」との関係をどのように考えるかという問題がありますが、集計の際の内訳は(注)に記載したとおりであります。また、上記50の回答のうち、科目数の関係ですが、10科目以上の具体的科目名を挙げた回答が13、5科目以上9科目以下の具体的科目名を挙げた回答が33、4科目以下の具体的科目名を挙げた回答は4でございました。また、各法科大学院担当者の具体的な意見の内容について、個々の科目に関する意見を除いた部分の意見を掲載しましたが、せっかくの御意見ですので、すべて、なるべく忠実に掲載させていただきました。この集計結果につきましては、来年1月に設置される司法試験委員会に引き継ぎ、検討の参考としていただきたいと考えているところであります。以上であります。
○田中座長 どうもありがとうございました。御意見は後で伺うことにいたしまして、まず、今の説明につきまして質問がありましたら、その前にお願いいたします。
○永井委員 国際私法の場合は多様な形で置かれているものを国際私法として括ったとのことですが、国際公法の場合は、いろいろな多様な形で置かれているものを必ずしも一括して括らなかったようですけれども、国際公法の場合として、多様な形で置かれている科目としてはどんなものがあったのかお聞かせ下さい。
○片岡参事官 これはむしろ国際公法の数字にカウントしているものですが、例えば国際関係法という名前のものや、国際組織法というものがありました。一方で、また、必ずしも一緒にカウントすることはできないと思いまして除外したものとしましては、国際人権法などがあります。これらをどういうふうに括るかというのはなかなか難しいことであり、事務局の1つの責任において集計させていただいたわけですが、今後、一緒になり得るという分野であるということであれば、もう少し集計の数字が変動するものと思っています。
○川端委員 今の質問に関連して、国際人権法を国際公法関連科目に入れてカウントした場合には、この4単位以上開設している数というのは変わるということになりますか。
○片岡参事官 それほど大きくは変わりません。すなわち国際人権法をカウントして数字が増える場合としては、国際公法は開設してないけど、国際人権法は開設する場合などがありますが、国際的分野を開設している場合には両方が開設されている場合が多いので、あくまで数校増える程度にすぎないのではないかと思われます。
○永井委員 そうすると、3年生の科目のほとんどにあてはまることですが、国際公法についていえば、2年のときの公法総合などの形で国際公法の基礎理論的なものを学び、2年次に国際公法の基礎理論をやった上で、3年次に「国際人権法」などの科目が置かれている場合もあると思うのです。それは科目名だけではあまりよく分からないのであって、中身のシラバスなども見ないと分からないのではないかと思います。基礎なしに、多分国際人権法というような科目だけ置くのは体系的カリキュラムの観点からあまり考えられないことなのですけれども。
○片岡参事官 御指摘のように、回答の中に必修科目やあるいはご指摘のように公法総合の方で、国際法などを入れているような場合は、基礎科目の中などに埋没して、国際公法としては統計上はカウントされていません。
○諸石委員 質問ですが、環境法という中に、保安防災法というのでしょうか、高圧ガス保安法、消防法、毒劇法といったものが入っているのでしょうか。また、別個に保安防災法を特別に取り上げているような例もあるのでしょうか。その辺いかがでしょうか。
○片岡参事官 保安防災法というのはなかなか数的には少なかったと思います。ただ、保安防災法とは異なる分野かもしれませんが、消費者法の関係では、例えば製造物責任法など類似の分野と思われるのは消費者法にカウントさせていただきました。今、保安防災法とおっしゃったものは、恐らく大学からのお答え自身の中で既に環境法の中に入れていただいているのかもしれません。
○田中座長 科目名自体は、各法科大学院がいろいろと工夫していらっしゃるので、内容がうまくぴったり当てはまるかどうかの判断が難しい科目も結構あるわけですけれども、大体全般的な傾向としては、こういうものではないかなという感じはいたします。一般に予測されているものとあまりずれはないという感じがいたします。それでは、意見交換の方に入ってもよろしいでしょうか。新しい司法試験につきましては、来年1月に設置される司法試験委員会において検討が加えられることになっておりますので、この検討会で検討していただくのは、今回で最後になるのではないかと思われます。そこで、この検討会としての意見を整理して、司法試験委員会に引き継いでいただくことにしたいと考えまして、本日、「司法試験に関する意見の整理(案)」を、先ほど事務局から説明がありましたように配布させていただいております。この意見の整理(案)は、この検討会でこの問題について何度か意見の交換を行っていただいてきた結果と、今報告がありました法科大学院における科目の開設予定状況の調査報告などを踏まえて、座長として、検討いただくベースとしてはこのようなものになるのではないかというものを、ペーパーに整理させていただいたものでございます。こういった内容でよろしいかどうかということも含めまして、各委員の御意見をお伺いしたいと思います。そこで、まず配布しております「司法試験に関する意見の整理(案)」について説明をさせていただきたいと思いますが、まず第1の新司法試験の選択科目につきましては、これまでの意見と、この法科大学院に対する調査結果を踏まえて整理させていただいたものであります。第2の平成16年度以降の現行司法試験の合格者数につきましても、非常に重要であることから、これまで幾度か御意見を交換していただいたわけですけれども、それを踏まえて整理させていただいたものです。事務局の方で、朗読していただきましょうか。
○片岡参事官 それでは朗読させていただきます。
司法試験に関する意見の整理(案)
第1 新司法試験の選択科目について
1 |
法科大学院における教育と新司法試験との有機的連携を確保するとの観点から、新司法試験の選択科目及びその試験範囲は、法科大学院のカリキュラムや教育内容を踏まえたものでなければならず、新司法試験の選択科目とするには、当該科目が多くの法科大学院において開設されている必要がある。 |
2 |
新司法試験の選択科目は、実務的に重要であり、社会におけるニーズが高まっている分野の科目とすべきである。 |
3 |
新司法試験の選択科目は、その範囲が明確であることが必要であり、教育内容の体系化・標準化が進んでいる科目が望ましい |
4 |
法科大学院の独自性や法曹の多様性にかんがみ、新司法試験の選択科目については、多くの科目(分野)を選択科目とすべきであるが、科目間の公平性についても考慮すべきであり、難易度格差の調整等の措置も必要であると考えられることなどから、具体的な科目数としては、○科目以上[○科目程度]とすることが望ましい。 |
第2 平成16年度以降の現行司法試験の合格者数について
1 |
平成16年度から法科大学院を中核的な教育機関とする新たな法曹養成制度が始まり、平成18年度からは法科大学院修了者を対象とする新司法試験が実施され、5年間に3回までという受験回数制限が課されることになるところ、現行司法試験については、現在の受験者に不当な不利益を与えないようにするとの観点から引き続き実施されるものである。 |
2 |
現行司法試験の年間合格者数は、現在の約1,200名から平成16年度には約1,500名に増加するものと想定されているところ、今後の新規受験者が法科大学院を経由して新司法試験を受験するようになることなどを考慮すれば、平成18年度以降の現行司法試験(旧司法試験)の合格者数については、年間数百名程度[年間○○○名程度以内]とし、毎年漸減させることとしても、現在の受験者に不当な不利益を与えることにはならないものと考えられる。
|
○田中座長 どうもありがとうございました。特にこの案の中で、「○○科目」、「○○名程度」としている部分につきまして、本日委員の御意見をお伺いして、必要な修文を行いたいと考えております。もちろんほかの点についても御意見をいただきまして確定させていただきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
○永井委員 全体の印象なのですが、これだと、受験生の受験しやすさへの配慮というニュアンスがかなり強く感じられるように思われます。ですから、できれば、1と2の順序を変えていただき、「選択科目は、実務的に重要であり、社会におけるニーズが高まっている分野の科目とすべきである」というのが第一にあって、その上で、法科大学院教育との関係で、なるべく多くの法科大学院で置かれているということも考慮する必要がある、というぐらいにトーンダウンしていただいた方が良いように思われます。今の案では、司法試験の科目としてどうかということを判断するにあたって、受験勉強のしやすさを重視するようなニュアンスが強いかなと思います。これは個人的感想ですから、また、人によってとらえ方が違うとは思いますけれども。
○川端委員 今の永井委員の意見に私も賛成でして、2が選択科目の選択の一番の基準でなければいけないと思うのです。しかも、この社会におけるニーズはどんどん変わっておりまして、先ほど開設単位数はそれぞれ少ないという話でしたけれども、消費者法関連科目、環境法関連科目といった科目や、さらに社会保障法関連科目といった分野について、積極的に学んで法曹になる人が増えてほしいというのが社会のニーズの全体の流れなのではないかと思います。現時点では、もともとこういった分野は研究者も少なく、開設しているところは少ないのかもしれませんし、単位数も少ないのかもしれませんけれども、いわばこれから育てていかなければならない科目であるということは大方の賛同を得られるのではないかと思うのです。そういうものを司法試験の選択科目から外してしまうと、これは望ましいことではないのですけれど、学生が積極的にその科目を学ぶという気持ちを結果として阻害してしまうのではないか。そのことによって、本来もっと発展するはずであった、このような新しい科目が発展しなくなってしまうのではないかという心配もありますので、多くの法科大学院で開設している科目とか、4単位以上開設している科目ということにこだわって、選択科目を決めてしまうということは避けるべきではないかと思うのです。もちろんそういうものにある程度の配慮をしなければならないのは、これは司法試験の選択科目ですから当然ですけれども、そこを相当柔軟に考えるという方向を出していただきたいなというのが私の意見です。
○加藤委員 では、川端委員は、何科目以上、何科目程度が適当であるとお考えになりますか。
○川端委員 最低10科目か、12科目程度ぐらいにしていただければ、今言ったのが全部入ってくるのですけれども。
○加藤委員 私も10がよいか12がよいかどうかというのは別として、新しい法曹養成制度が今までの法曹養成とどこが違うかと言うと、多様性を正面から見据えたということだと思うのです。新しい司法試験では面目を一新することが望まれます。それを象徴的なものとして科目を考えるとしたら、選択科目は多い方がいいだろうと思います。また、選択科目にすることによって、社会のニーズにも合致するということでそれぞれの法科大学院がそうした科目を増やしていくというアナウンス効果もあると思います。したがって、アンケートでは2単位科目で開設するとたくさんの法科大学院が回答しているという9科目ぐらいは当初から選択科目にするのが相当ではないかという気がします。その実質的な理由は川端委員と同じです。
○諸石委員 試験科目を現在固定的に決めてしまうというのは非常に難しいだろうから、法律では省令にゆだねている趣旨を踏まえると、将来科目が増えていく可能性があるということを示すため、現在法科大学院で態勢が整っている科目からスタートするけれども、将来はこのような分野の科目も増やしますよというようなことを明示でもできればよいのではないか、という気がいたします。それから、科目の表現なのですが、先ほど国際私法・国際取引法というのがありました。そういう括り方といいますか、試験範囲がわかるような表現をしていただくとよいのではないかと思います。国際私法というと、法例を中心にするイメージもありますが、法科大学院でやろうとしているのはもう少し広いものであろうかと思いますので、この集計でやっていただいたような括り方が実態に合うと思います。先ほど質問しましたように、環境法の中には保安防災法が含まれることになると思うのですが、それを明示する意味から、「環境法・保安防災法」のように、範囲が科目名からイメージが湧くようにしたらどうでしょう。また、ちょっと違うかもしれませんが、例えば、「消費者法・社会保障法」というような括り方もできるのではないかと思います。
○川端委員 今の諸石委員のアイディアは、実は日弁連で討議したときも出ていまして、確かに性格は多少違うけれども、大きな意味では似たような科目を一括りにすることによって、単位数の重みの差で、学生の多くがやさしい科目を選ぶというのを避けられるのではないか。例えば「市民生活分野法」といった広い括りにすれば、消費者法、環境法、社会保障法といった分野も含むことができます。この場合、実際の出題のやり方や採点で非常に技術的に難しい問題がありますが、これがもっともよいアイディアかどうかは分かりませんけれども、1つのアイディアとして御紹介すれば、例えば3科目からそれぞれ2問ずつ6問出題して、うち4問を選ばせるというようにすれば、ある意味で学生が選択科目を選ぶときの自由度は相当広がるのではないか。つまり指定されている3科目の中から、2単位科目を2つ選択できるようにすれば、試験の比重としては、4単位科目と変わらない重さにすることもできるのではないかという意見が出ていましたので、その辺も是非検討していただきたいと思います。
○田中座長 科目数が多いのは望ましいわけですが、あまり多くなると、バラツキが出てきて、どれを選択するかについて偏りが出てくるという問題も考慮しなければならず、多ければ多いほどよいというわけでもないので、そのあたり少し難しいところはあると思います。いろいろな手法はあると思うのですけれども。
○フット委員 その点で、先ほどの川端委員、加藤委員の話を聞いていまして、まさに多様性のことを考えますと、9科目、10科目ぐらいになってもよいのではないかと思います。5科目、6科目ぐらいですと、結局どの法科大学院も必ず開講しなければならないという気持ちになると思いますけれども、もっと多くなれば、例えばこの法科大学院は特に環境法を重視しているというような特色のある法科大学院が出てくるのではないかと思います。少数の選択科目ですと、やはりほとんどの法科大学院がその科目を中心に開設するようなことになるだろうと思いますので、平等性も重要ですけれども、多様性や社会的ニーズに応える観点からも、選択科目は多い方がよいのではないかと思います。
○田中座長 何かございますでしょうか。
○牧野委員 やり方としまして、まず科目数を制限的に最初に決めて、後で社会のニーズに対応して増やしていくというやり方と、あるいは最初からある程度たくさん用意して、逆に社会的ニーズとかいろいろな実際上の問題を考えて後で減らしていくというやり方、その2つがあると思うのですけれども、今回の改革の趣旨は、先ほど川端委員、加藤委員がおっしゃっていたように、多様な法曹を生み出すということですから、最初に制限してしまうと、選択科目とならなかった科目は、学生も履修しなくなり、勉強しなくなって、最初からその科目が成熟していく芽をつんでしまう可能性が出てくると思うのです。ですから、最初はできるだけ1科目でも多くの科目を選択科目としていただいて、むしろそこから必要な見直しは当然行っていくことになると思うのですが、最初はできるだけ広くするという方向で御検討いただきたいと思います。
○田中座長 様子を見ながら、何らかの見直しを行うことが必要であり、実務的なニーズの問題と、法科大学院における科目の開設状況の両方を見ながら見直していくという趣旨の一文をどこかに入れた方がよいのではないかという御意見がありました。それから、「○科目以上[○科目程度]」という部分は、何科目以上というまとめになるのでしょうか。最初から10科目以上になると、10科目をどう考えるのかという問題が残りますので、「以上」はいくらでも含むから、最小限の科目数だけ示すこととし、このあたりの科目は間違いなく入れてほしいということがわかるような数字にしていただきたいと思うのですけれども。
○川野辺委員 やはり最初から10科目というと、先ほど御紹介のあった調査結果を見ても、受験者数にバラツキが生じてしまって、科目によってはすごく少なくなる可能性が高いと思うのです。そうなると偏差値調整等はするのでしょうけれども、科目間の公平が保ちにくくなりますので、検討会の意見としては「5科目以上」ぐらいにしておいて、あとは司法試験委員会の方にゆだね、そのときそのときの社会的情勢等、法科大学院の教育状況等を見ながら増やしたりしていくような形ではどうでしょうか。「5科目以上」になれば、10科目でも12科目でもよいわけですから、最低ラインとしてそのくらいがよいのではないのでしょうか。
○加藤委員 5科目では、全くメッセージ性がないと思います。そして、この4の書き方ですけれども、「多くの科目(分野)を選択すべきである」と言いながら、公正性の考慮と難易度格差の調整の措置も必要だといっており、この文章は抑制的に働いているのですね。しかし、これらは試験のやり方、評価の方法の問題ですから、どんな科目数にしようと当然に行うことなので、一文に入れるのではなくて、ここの部分は入れるとすれば別項目にするのが相当ではないかと思います。それで、最初のまとめですから、「以上」にしておけばよいと言いますけれども、現実の問題として見ますと、例えば「7科目以上」としたら、7科目からスタートするということになります。そういうことも頭に置いて、それから諸石委員の言われた適宜見直してくださいというメッセージ性を残したとしても、見直しをするというのは実際にはいろいろな事情で非常に難しいということになりますから、最初は7とか8とかというところにしておくとよいと思いますが、いかがでしょうか。
○川端委員 加藤委員の意見に賛成です。昭和36年から平成11年まで法律科目が選択科目にされていた時代は7科目で変わっていないのです。いったん決めればこういうことになるというのは歴史上明らかで、しかも7科目あったものを多様性を求める法科大学院で減らすのもどうかと思います。多様性を強調する新しいニーズに応えた教育をしていただくという意味では、加藤委員の言われるように、7科目以上、できれば8科目以上か、9科目以上にしていただきたいと思います。数字には固執しませんが、あえてメッセージ性を出すとすれば、8科目以上といった科目数にしていただきたいと思います。
○田中座長 加藤委員がおっしゃったように、4の前半部分と後半部分とを切り離して考えるというのも1つの方法だと思いますし、それから科目数は何も書かないと、要するに司法試験については多くの科目を選択科目にすべきであるというだけにしておくというのも1つ考えられると思うのですけれども、データが出ているわけですから、データも何も見ずに意見を言うだけでは意味がないという感じもします。
○諸石委員 先ほど川端委員がおっしゃったように、何らかの複数の設問から選ぶような形で、似たような科目を括ってしまう方法もあります。全体があまり数が多くなるというのは実務的に大変だけれども、一方でできるだけ幅広いところを履修させたいとも思います。そういう観点から言うと、川端委員がおっしゃったようなことが実際上工夫できるのだったら、いくつかの類似科目を括れば、例えば7科目でも中身は相当多いというようなこともあり得るので、科目数を書くとしたら、7か8だということなのでしょうけれども、それだったら、特にこのペーパーに科目数を書かなくてもよいということもあるのかもしれません。
○田中座長 このデータから見れば、最初は、最小限からいうと、5から6ぐらいで、あとは10ぐらいというのが比較的スタートの時点としては無難な感じはするのですけれども、ただ、それで固定されてしまうと困るということも事実だと思います。
○加藤委員 4単位以上の科目として開設予定との回答が多かった倒産法までの6科目は一応当確と考えて、あとは国際性重視ということで、国際公法も入れざるを得ないだろうと考えます。それから、何といっても環境の時代ですから環境法も入れることにすると、8科目となりますので、8科目以上ということでよろしいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○諸石委員 従来の7科目よりは多いということですか。
○片岡参事官 複数の科目について、今ここで挙がっている科目でも一緒にしてよい科目があるというような御発言があったのですが、例えば上位を占めている国際私法・国際取引法、例えばジェネラルな一般的なルールとして2単位でもよいとなると、国際私法という科目と国際取引法という科目として2つの科目にすることも考えられます。でも、それではバランス、ほかの科目とのバランスということであれば、こういうふうに中ポツにして括ることも考えられ、それによって科目数が違ってくるのですね。それで、先ほど御指摘ありましたように、今2単位であっても、将来を考えれば、あるいは試験科目になれば、4単位になるとかなどという考慮もできると思うのですが、この「○科目以上」というところを入れるときに、括ることで4単位ぐらいの公平性というか、範囲のバラツキをなくした上での科目数として挙げるのか、そういう2単位の科目もあるという前提で考えるのかというだけで、結構発想が違うような気がするのですけど、あるいは7まで入れるなら、今までと一緒だから入れなくてもよいというのもあり得ると思いますが、そこは前提を整理していただければと思います。
○諸石委員 類似を括って、なお2単位が試験科目というのは、何かそぐわないような気がするので、できるだけ括ってという方向を出していただいてよいのではないでしょうか。
○川端委員 少なくとも国際公法・国際人権法というのは類似科目で、しかも発展性の方向も示しているので、そのようなメッセージを送れば、これからそのような形で教育を行うところも増えてくるだろうという意味では、非常によいような気がします。あと、環境法を何とか入れたい。そうすると強引に消費者法とくっつけるとか、そういうことになってくるのですが、それが適当かどうかというのは別の考慮が必要だと思います。
○田中座長 科目数そのものより、科目構成にいろいろ工夫をするという文言を加えますか。科目数だけの話でなくて、科目の構成をうまくすれば、多様性を持つし、細分化すれば、科目を増やしてもあまり意味がないというところがありますから。
○片岡参事官 そうしますと、4のところの2行目までを1つにして、「すべきである」のところを「すべきであり」で何かつなげるというような形になるのでしょうか。
○田中座長 「選択すべきであり、科目構成の内容についても考慮すべきである」といった趣旨のことを後ろの方に入れますか。科目間の公平性とか難易度格差の措置の中で、科目内容についての調整をするとか。
○片岡参事官 4の方で、上に書くと積極的な感じがして、下の方で書くと消極的な感じがするような気もいたしますが、いかがでしょう。
○川端委員 そういうことをしても、多くの科目を入れるべきだというメッセージを入れるなら、上の方に入れた方がよいのではないですか。
○田中座長 「多くの科目を選択科目とすべきであり、科目区分とか科目内容についても工夫をすべきである。」とか、何かそのような趣旨の文章を上の方に入れますか。
○片岡参事官 「科目内容についても工夫すべきである。」という文言でよろしいですか。
○諸石委員 それですと、どう工夫するのかわかりにくいので、「類似科目を統合する」というような例示をつけることはできないでしょうか。
○片岡参事官 「類似の科目を統合」という文字を付け加えればよろしいですか。
○田中座長 「統合するなど」ですね。
○片岡参事官 「多くの科目(分野)を選択科目とすべきであり、科目内容についても、類似の科目を統合するなどの工夫をすべきである。」という形になりますでしょうか。
○永井委員 ちょっと言葉遣いとして、科目という言葉の繰り返しになりますので、「多くの科目から出題すべきであり、その出題に当たっての科目群を工夫すべきである」という表現が適切かと思います。
○田中座長 そうすると、文章の2をまず最初に持ってきて、、ここに見直し条項的なものを、例えば「選択科目については必要に応じて適宜見直すべきである」といった趣旨の文言を付け加えることにします。その次はどうなりますか。促進的なものというと、4の一番最初の部分が2番目になりますか。そして、1、3と、4の科目間の公平というようなものは、どちらかというと、抑制的なものになるから、1、3、4の後半を次に持ってくるという形で、よいですか。科目数の部分は以上の表現で趣旨が含まれてるから削除し、後半部分では整理するときの方針を3つぐらい留保をつけるという形でよろしいでしょうか。
○片岡参事官 もう一度確認させていただきます。まず今の2を1にして、1の第2文目として、例えば「選択科目自体は必要に応じて適宜見直すべきである」というような形にいたします。それから、今の4の頭2行を2として、「多くの科目から出題すべきであり、その出題に当たっては、その科目群を工夫すべきである。」ということでしょうか。
○田中座長 「類似科目を統合するなどの工夫をすべきである。」としてください。
○片岡参事官 「その出題に当たっては類似科目を統合するなどの科目群を工夫すべきである。」ですね。
○田中座長 「科目群については、類似科目を統合するなどの工夫をすべきである」ということですか。
○片岡参事官 もう一度確認します。「多くの科目から出題すべきであり、その科目群については、類似科目を統合するなどの工夫をすべきである。」という表現でよろしいのでしょうか。それから、今の1が3になる。今の3が4になる。ということになるのですね。
○田中座長 そして、5として、「科目間の公平についても考慮すべきであり、難易度格差の調整等の措置も必要である。」と。
○フット委員 もう一点、これは日本語の理解の問題ですけれど、「多くの法科大学院」というのは過半数ですか、大多数ですか。どのような意味合いでしょうか。
○永井委員 「多くの法科大学院において開設する必要がある」と言ってしまうと、かなり強い表現になる。「多くの法科大学院で開設されているような事情も考慮すべきである」というぐらいにニュアンスをトーンダウンしていただかないと、過半数以上とか、何十%の法科大学院で開設されてないと選択科目にならないというような理解になると、やはり問題があります。
○田中座長 そうすると、「当該科目の法科大学院における開設状況も考慮すべきである。」という表現ぶりにしましょうか。
○永井委員 それで結構です。
○片岡参事官 「考慮する必要がある」ということでしょうか。
○諸石委員 「多く」はなくてよいですね。
○田中座長 「多く」は要らないと思います。「当該科目の開設状況を考慮する」ということで。
○永井委員 そういうトーンダウンで結構です。
○田中座長 できれば、今の話を踏まえて、事務局の方で修文してもらって、今日中に確認させて下さい。
○片岡参事官 第2の方もお願いします。
○田中座長 第2の方につきましては、これは今までの議論、特に前回の議論を踏まえて、数百人程度と、500人というような意見も出ましたが、そういうまとめでよろしいかどうかということです。
○諸石委員 数百人というのは、日本語としてはどれくらいイメージすることになるのでしょうか。
○田中座長 500〜600人ということも含むのでしょう。
○諸石委員 そうするとちょっと多いような気がします。
○加藤委員 この選択科目については、実証的なところから議論ができているわけですが、平成18年以降の合格者数をどうするかという議論はかなり不確定な要素が多いということを考えなければいけないのではないかと思います。我々の共通認識としては、平成16、17年の現行司法試験の合格者数は1,500人。平成18年度からは新旧両方走っていくことになるので、現行の司法試験については減らすことにし、どの程度減らすのが相当かを議論しています。これは新司法試験の方でどの程度合格者を出すかということと裏腹の問題でもあるわけですが、そのように考えていくと、大きな不確定要素が少なくとも2つはあります。1つは、新司法試験を受験する2年で修了する既習者がどの程度いるのかということです。法科大学院によっては、入学させてから、既修者、未修者を分けるところがありますので、まだ現段階では何人になるかは見通すことができません。その上に厳格な成績評価をしていくという原則がありますから、最終的に平成18年に新司法試験を受験することになる既修者コースの人たちがどの程度の数修了するかも現段階では見通せないということになります。そうなると、平成18年の新司法試験を考えるにあたって、どの程度の既修者コースの入学者数がいるのか、どの程度の受験者数が出てくるかが分からない。その上に、法科大学院でどの程度の質の教育がされるかも分からないわけです。私としてはもちろんよい教育をしてほしいと期待しているのですが、開設時のいろいろな状況を見てみますと、危惧もあります。もちろんよい法科大学院も多いと思いますが、そうでないところもあるのではないかということになりますと、そのことからも初めからある程度の合格者数を決めるということで試験を構想してしまうことが責任のある制度かどうかいま少し考える必要があるのではないかと思います。もう一つ、現行司法試験については、いろいろな事情で法科大学院に進まなくて、こちらの方で法曹資格を得たいという人は必ずいると思います。それ自体は、経過措置を置いて、一定程度救済していくわけですから、制度としても当然織り込み済みなわけです。そうしますと、平成18年にいきなり受験者が半減するとか3分の1になるということはないのだろうと思います。そして、その人たちがどのような力を持っているかも、実は試験をしてみなければ分からないという面があります。そういう意味でもそこは不確定要因だということになるわけですね。そうなってくると、一律にここで何人と、数百人ということを決めてしまうことは、あまりにも不確定要因というものを頭に置かないで、ただ頭の中で考えてそうすると決めることになってしまうということを強く危惧します。そこで、それではどうするのかということですが、そこはそういう不確定要因がある程度固まったところでどうするかを決めることになると思うのです。ですからこの段階では、大きな方向としては、平成18年からは従来の合格者というのは相当程度減りますというところをコンセンサスとして形成しておくというほかないのではないかと思います。前回、500人という数字が出たときに、そういうことを申し上げるべきだったかもしれませんが、今日が最後になってしまうということですので、このような意見を申し上げる次第です。
○田中座長 ただいまの意見に関して何か。
○川端委員 私は今の意見には結論として反対です。1番目に言われた既修者がどれぐらいになって、18年に修了する数がどれぐらいになるか、まだ分からないではないかと言われるのは、確かにそのとおりなんですけど、それは新司法試験の方でどれぐらいの合格者を出すかという問題で、旧司法試験の合格者の枠をこれからどう設定していくのかという問題とは違う問題だと思われます。旧司法試験の枠をこれからどうしていくかということを考える際には、法曹養成制度について、法科大学院を発足させ、プロセスへの養成に切り換えて、法科大学院を経由することを要求するという新しい法曹養成制度に合わせた考え方をしなければいけない。つまり原則としてみんなそっちになるので、本来は、旧司法試験というのはいきなりゼロでもよいはずなのですが、それでは既に受験を開始している人、受験準備をしている人に非常に不利益を与えるので、5年間併存するという措置がとられているわけです。ですから、その人たちに特に不利益にならないような数であれば、それはそれでよいのではないかということです。これから法科大学院に行かないで、新たに旧司法試験の受験勉強を開始することを選択するという人が出ることを想定する必要はないし、それを想定してしまうと、法曹養成制度を切り換えるという趣旨が全く不分明になってしまうわけですから、そういうメッセージを送ることはむしろ非常によくないと思います。ですから、私は前回までのまとめで、ここにまさに理由に書かれているように、こういう形で平成18年度から減らすことが、「現在の受験者に不当な不利益を与えるものではない」という趣旨を明らかにして、これからどうしようかと考えている人には、2つの道があるのではないのですよ、原則として法科大学院を経て法曹になってくださいよというメッセージを送ることが正しいのではないかと思います。
○加藤委員 今のような御意見が、まさに実証性を踏まえてない意見だと思うのです。と言いますのは、特に不利益を与える数ではない数というのが分からないと私は言っているわけです。どうしてそれが500になるのでしょうか。私は、新規参入組まで保証すべきだと言っているわけではないのです。今までに受験を始めてしまった人で、もう一息で受かるという人もいるわけです。そういう人たちで、しかも、前の年の合格者と比べて学力的にはよいという人がいたときに、それがどのような数になるかはこの段階では分からないということです。何で500と言えるのですかと、どこに実証性があるのですかと、その点を申し上げているわけです。
○田中座長 従来の理解としては、1,500人になって2年間続くわけですね。2年間で3,000人まで合格することとし、なおかつそれ以降も数百ぐらい残せば、現行試験の受験者の救済としては十分ではないかということが前回の議論だったのではないかと思います。
○加藤委員 まさにそのところがこれでいいのかという問題提起なのです。司法試験は学力試験ですから、学力面で水準をクリアしていれば、それは合格とすべきでないかと思います。しかし、法科大学院ができますから、従来と全く同じわけにはいかない。ただ、500という数は相当程度よくても落とすことになりはしないかというおそれがあり、最初に数値を決めておくことがどうしてできるのかというのが根本的な疑問なのです。
○田中座長 それは法科大学院制度を発足させて、基幹的な制度とするということの当然の設定だと思いますが。
○加藤委員 ですから、合格者数1,500までいったところを、1,500続けて現行試験を維持すべきであると言っているわけではないのです。合格者数を減らすことは当然織り込み済みにしなければいけないのですが、この時点で具体的な数字は決められないのではないかということなのです。
○田中座長 ただ、その点をあいまいにしていると、前回出たような形でずるずると現行試験を受け続ける人もいるというので、それは不適切ではないかということも、前回の議論の際に確認していると思います。
○加藤委員 それならそれで、法科大学院に行かない新規参入組が来てしまうのが心配であれば、現行試験を受けている人たちがどのようになっていくかをある程度シミュレーションした上で考えるべきではないのでしょうか。現行の人たちは、自分の責任で制度が切り替わるわけではありません。国策としてこうしようということで切り替わるわけです。それで格別の不利益が生じることはできるだけ避けるべきだと思うわけです。現行で既に受けている人たちが、どんな層で、どのぐらいの数がいて、どのぐらいの能力水準の人たちであるかというところが何も分からないのに、どうして500という数字をこの段階で出せるのでしょうか。およそ実証性のない観念的な数字ということにしかなり得ないのではないかという疑問です。
○田中座長 これは制度設計の問題だと思うのです。実証、実証とおっしゃるけれども、制度設計の問題としてどうするかという話なので、今の司法試験を受けている人が従来のやり方で3年間くらい勉強して、その人たちの質が上がっていくという保証も全くないのではないでしょうか。
○加藤委員 政策決定のところは認めますが、特に不利益のないという数がどうして500ということが言えるのかと、そこなのですね。それはそんな実質的な議論をする必要はなく、、ただ、観念的に500をピンポイントで決めればよいという議論は、ただ、初めに500ありきで、そういう数字にしようというだけのことではないでしょうか。これが700でもよいし、300でもよい。何でもよいということにならないでしょうか。
○田中座長 政策決定としては、私はあり得る選択肢だと思うので、前回の議論での取りまとめになったのだと思います。
○加藤委員 前回申し上げるべきだったとは思いますが。政策決定というなら100でもよいですか。
○田中座長 100人はちょっと少ないとは思いますけれども。
○加藤委員 そこはバランスの問題です。そこでバランスの問題を考えるというときに何を考慮しているかですが、それは従来の、既に受け始めている人たちの不利益をどの程度のものとして見るかということだと思います。しかし、それはそれぞれの人が自分の頭で考えているだけで分からないでしょうというのが私の問題意識なのです。分からないのに、その数字を500だというのは、責任のある政策決定といえるかということです。
○山崎局長 そうであるならば、いつ決まるのですか。それを教えてください。事前に決めるのですか、決めないのですか。試験受けてから決めるのですか。
○加藤委員 そうです。試験を受けてからです。何人ぐらい受験者がいて、どういう問題が出て、司法修習に入れることのできる学力はどの程度だというのは科目ごとの試験委員が見るわけでしょう。それでクリアーしているかで決めるべきではないでしょうか。
○山崎局長 どうやってそれぞれの学力を比較するのですか。
○加藤委員 比較ですか。
○山崎局長 こちらとあちら、どちらがよいというのは、ちょっと比較のしようがないと思いますが。
○加藤委員 こちらとあちらというのは。
○山崎局長 新司法試験と現行司法試験です。
○加藤委員 現行の司法試験は現行の司法試験として継続するわけですから、試験委員としては、前の年の合格ラインのイメージというのはあるわけです。
○山崎局長 問題が違うのではないですか。
○加藤委員 それは、およそ試験制度としての根幹を否定することにならないでしょうか。試験委員はある程度、現行の司法試験で司法修習に耐えうる学力レベルについては当然の前提として持っているのではないですか。そこのところと全く同じにすべきであると言っているわけではないのですよ。こういう過渡期ですから不利益を受けるということはあり得る。あり得るけれども、前の年度だったら、相当よいレベルにあるのに、500と決めているために、それを全部だめとしてしまうことが著しい不利益に当たらないと考えることがおかしいのではないかと言っているわけです。
○田中座長 ただ、加藤委員のおっしゃることも1つの考え方ですが、そうすると、この1,200人とか1,500人という数自体も何の実証性も根拠もないという話になるわけで、これだけ、今の司法試験の合格者に問題があると言っているときに、何故今の司法試験の合格者数を引き上げなければならないのかということを考えて頂きたいと思います。
○加藤委員 平成22年までに、3,000人を最低限の目標として徐々に増やしていくというところから設定しているわけですから、当然徐々に増やしていくという必要があるわけです。それで、一定の質を備えた法曹を生み出す必要があるわけですから、プロセスとして考えて、司法修習を終えるときにその質を確保しているということが必要であり、そこでは司法修習の中でもプロセスとしての質の高い教育がされるということが求められますから、一気に司法試験合格者数をバンと上げることは現実問題としては極めて難しいわけです。それを徐々にやっていくということですから、今の1,500が実証性がないと言われても、それは3,000という目標へ1,500からだんだん上げていきますよという話の中での数字ですから、実証性云々の議論が出てくるというのはおかしいのではないでしょうか。
○田中座長 いや、それは同じような問題だと思います。今の司法試験制度をなぜこの新しい司法試験制度に切り換えなければならないのかという問題からつながっていく話なので、あまりこの部分について、どちらの数値を決めるかということだけについて実証性云々と言われても、私はどっちもどっちだと思います。法科大学院に関しても、従来の司法試験受験生よりはレベルの高い学生を送り出せるということも、十分推測としてはあり得るので、この500人とか、数百人云々という話について、従来と比べ少ないといった話にはならないと思うのですけれども。
○川端委員 加藤委員の話でも、新規参入者を想定する必要はないと、これはお認めになるわけですよね。そうすると既に受験を開始した人にとっては、これから、3,500人の合格者の枠があるということになります。私はそれが非常に不当に狭い枠だというイメージにはならないと思うのです。
○加藤委員 3,500というのは何年間ですか。
○川端委員 平成16年1,500人、平成17年1,500人、平成18年500人の3年間です。法科大学院へ行かずに今から受験する人についてはそれだけあるわけです。
○田中座長 結構パーセンテージが高くなるわけですね。
○川端委員 そういう不利益というのは、今、1,200しか受かりませんから、来年、再来年と1,500に拡大した年が2年続くことによって、ほぼ吸収されると見て、それほどおかしくはないと思います。もちろん実証性の問題と言ったら、これは非常に難しい問題になってしまうので、それこそ司法試験のデータをとって、どの程度のレベルの人が何年先に受かるようになるか、ならないかといったことを追跡できるのかどうかも分かりませんけれども、そこまでやらなければいけないと思いますけど、今は要するに合格者数の枠でずっとやってきているわけで、これまで500、700、1,000、1,200と増やしてきて、今後1,500に増やす年が2年続いて、さらにその上に500とし、500は次第に減らすということになっていますけれども、さらに5年間続くということになれば不利益はないのではないでしょうか。
○加藤委員 田中座長の言われることも川端委員の言われることも分かりますし、私も500という数字がいけないと言っているわけではないのです。繰り返しになりますけれども、実証的に分からないでしょうと言っているわけです。例えば平成18年の現行司法試験の受験者数が、今の5万人から半減するのでしょうか。仮に半減したとすれば500でよいのかもしれません。それが、4万とか3万というときに、500という数字というのは、著しく不利益ということにならないと言えるのでしょうか。その評価の問題かもしれません。
○田中座長 単に数の問題だけではないと思います。既にある段階から合格者数は増えており、先ほど川端委員がおっしゃったように、今後1,500人、1,500人と採って、なおかつ、まだ数百人残して、それで少しずつ減らしていくとしても、相当数の合格者数の枠が残るわけですね。それで現行試験を現段階で受けている人については、私は相当手厚い救済がなされていると個人的には思うのです。
○加藤委員 今の司法試験の平均合格年齢は、28歳です。受かった人でも平均6回ぐらい受けています。それで、5年間という救済の期間をとっているわけですね。予備校へ通って暗記型の勉強をしてパッと受かる者もいますが、そうでなくて、じっくり勉強して力をつけてくる者もいるわけです。我々は教官の経験から、そういう人もたくさんいることは分かっているわけです。そういう人が制度の切り替えで自分の責任が全然ないところで、何人の中に入るかというメッセージを送れるかどうか、そこのところなんですね。川端委員にお聞きしますが、受験生が例えば半減したということで、500人の合格というのは、これは著しく不利益を課しているということにならないという評価でしょうか。
○川端委員 受験生の数それ自体は、どれぐらいの質、加藤委員の言われるような質の人が相変わらず旧司法試験に残るかという問題と切り離して考えられないので、ただ単に何万人受けているから、500が不公平だという議論はできないと思うのです。恐らく残る人は、自分は既修者コースへ行かなくても、つまり今のまま勉強を続けていて平成18年以前に合格できると思う人で、そういう人は、既修者コースへ行く道を選ばずに、相変わらず現行司法試験を受けるということになると思うのです。つまり少なくとも、本来合格すべき人については、1,500、1,500、500という枠の中で十分吸収できるのではないかというのが普通のイメージなのではないでしょうか。それで、やっぱり、1,500、1,500、500と3年後に合格者枠が減少するコースを選ぶよりは、既修者として学び直して、これから時代の求める新しい法曹になる教育を受けて、新司法試験を受けようという層が、自信の一番ある層の下の層として既修者コースへ転じると考えます。
○加藤委員 私の質問は、5万人いる受験者が半減としたとして、500人の合格者で特に不利益がないという評価ですかという質問です。
○川端委員 それは私はイエスです。今のこういう制度の切り換えで、なおかつ旧司法試験の方に残っている受験者が半減して残っていても、そういう意味では不利益とは言えないと思います。
○加藤委員 分かりました。もう一つ、受験者は半減しますか、どの程度の見込みですか。
○川端委員 それは私には分かりません。
○加藤委員 分からないのに、どうしてそういう議論ができるのかというのが私の根本的な疑問なんです。
○川端委員 私は本来、これから法曹になろうという人で、経済的な問題はこれから重大な問題になりますけど、その問題を抜きにすれば、まともによい法曹になろうと考えている人は、2年以内に合格できないという見通しを持てば、やっぱり法科大学院で履修しようと思うし、今、さらに下の年齢でまだ受験を開始してない人も全員法科大学院に行くだろうと考えていますから、非常に能力のある人が残留することを想定して制度設計する必要は何もないと思います。
○加藤委員 そこは過渡期の救済措置をどう考えるかという問題だと思います。
○田中座長 能力がある人が残留するにしても、私は数百人残せば十分過ぎると考えます。2年間で、1,500人、1,500人と合格し、なおかつ500人も残せば、個人的には多過ぎるくらいだと思っています。
○加藤委員 もともと500人時代が30年の長きにわたり続いたわけですから、私は個人的に500人が少ないと思っているということではないのです。しかし、制度の過渡期の考え方として、合格者の平均年齢が28歳の試験を切り換え、しかも受験資格は法科大学院を出なければ与えないことにするのはそれ自体不利益です。それを5年間かけて救済する制度をとる以上は、どういう数を出していくか、もう少し実質的な考慮をしないと、冷たい切り捨ての運用になりはしないかという危惧なのです。
○田中座長 私はどちらかというと、今の時点で人数を出すのでも遅過ぎると思っており、もっと早い段階で政策的に出すべきだと思ったのですが、これももうタイムリミットではないでしょうか。また、既に前回の数百人というまとめで、今年どうするか迷っている学生に対して、どっちに行くかということについてかなり影響を及ぼしているということなので、政策的に決めれば、そう不利益なく移行できると思うのですが。
○加藤委員 前回言わなかったから、“時期に遅れた抗弁”で却下されても、それはしようがないかもしれません。しかし、先ほどの科目のところは数値を入れないでおいて、ここのところは数値を入れるというのは、しかも片方は実証的に調査していて、片方は観念的に500がよいと決めるところが、釈然としないところです。
○諸石委員 こっちの方は実証的でないというのはおっしゃるとおりだと思います。これは実証のしようのないものだから、その時点で決めるべきだと加藤委員はおっしゃっているので、それは1つの考えだと思うのですけれど。
○加藤委員 一つ付け加えると、その時点でなくて、もう少し不確定要素が固まってきた段階でというように言い直すのが正確です。試験をやってみて、その結果で決めるべきだということには固執しません。
○諸石委員 ただ、共通の認識として、新規参入者が現行司法試験の方へ入ってくるということを前提としたものではなくて、これは過渡期の、法科大学院開設以前からやっていた人の救済なのだから、それから言うと、どこかで見切りをつけ、かつ新規参入は現行司法試験へ行かなくて、新しく受験し始める人、あるいは若干やったぐらいの人は法科大学院の道を行ってくださいというメッセージを出す必要はあると思うのです。ここで数百名程度と言っておかないと、一方でそうでないような、1,500がずっと続くようなことを言って宣伝している人もいると聞きますので、この2年で合格しなければ後はぐっと少なくなりますよというイメージを打ち出しておく必要があるのではないかと思うのです。確かにそれがどうなるのかという実証は難しい。数百というのはかなり幅がある表現ですし、1,000でないというのも確かだと思います。そうすると数百というのは、、確かに実証はできてないけど、ある常識的な予測の中に納まっている表現ではないかと思うのです。
○田中座長 加藤委員のおっしゃることも、実証性云々の話は分かりますけれども、1つ政策的な判断としてこれぐらいの数字を出すことを御了承いただければと思います。
○加藤委員 固執するつもりはありませんが。
○フット委員 あいまいにしてしまえば、結局いつまでたっても不確定要素が解消できないだろうと思います。つまりどちらを選べばよいかということで、やはり旧司法試験の方がよいというようなことですと、5万人があまり減らず、むしろチャンスになってしまいます。今までは1,200でしたけれども、1,500で、しかもかなり優秀な人たちが法科大学院に行くので、むしろ旧試験の方がよいということになってしまうと、結局選択というのか、構造パターンが変わらないことになります。ですから、根本的な制度設計の問題だと思いますけれども、はっきりしたメッセージを今の時点で送らないと、いつまでたっても学生側から見て、どっちがよいのかということも迷ってしまうだろうと思いますので、むしろはっきりしたメッセージを送るべきです。私から見て、今までの競争率から考えますと、3年間で3,500というのは決して不公平だとは思いません。
○永井委員 私は前回慎重意見を述べたのですけれども、そのときには加藤委員に触れていただけなかったのが残念です。ただ、前回の9月10日の検討会の後、新聞報道も大分出ました。それでその後、大学入試センターの方で適性試験の追加の試験をやった。その新聞報道は、ああ、そういうことになるのかと学生に対して非常に強いインパクトを与え、学生の進路をかなり左右しました。法科大学院コースの方へ転身しようと思った多くの学生が適性試験を追加で受験したと思います。また、お金の問題もあるし、それでは自分はもう法科大学院の方には行けないという学生の多くが、転身して就職しようと考えるようになり、今こういう非常に状況がよくないときですけれども、一方では労働市場も中途採用という道も増えてきているので、OBの方たちがかなり尽力しているところです。そういう形でかなり学生が動いてしまったところで、これがまた希望を戻すようなことをすると、学生たちはあまりにも制度の変更の中で困惑してしまうのではないかと思うのです。ですから、前回であったならば、加藤委員の意見に私は賛成したのですけれども、ちょっともう時期に遅れてしまったのではないかなと思うのですけれども。
○加藤委員 大体状況というか、皆さんのお考えが分かりました。数百というのは500〜600という理解ですか。
○田中座長 前回そういうふうなことであったと思います。
○加藤委員 500〜600が頭ですね。それから5年間でどのようにしていくというイメージなのでしょうか。
○田中座長 そこは一応漸減という形でイメージしています。
○加藤委員 漸減というのは100人ぐらいずつ少なくしていくという意味でしょうか。
○田中座長 そこは、まさに加藤委員おっしゃるように、様子を見ながらということになるのではないでしょうか。
○加藤委員 そこは、文中の表現では明確には決めないということでしょうか。
○田中座長 ただ、平成18年に関しては、今、永井委員がおっしゃったように、学生の選択にかなり大きな影響を及ぼし、法科大学院の既修者の認定のポリシーにもかなり影響を及ぼすので、現時点で何らかの数値を入れて出していただければ、全体の制度設計としてはありがたいと思います。
○加藤委員 そういうことであれば理解できます。
○田中座長 年間数百人程度という形で、あとは様子を見ながら漸減ということで、これで御了承いただけますでしょうか。
○片岡参事官 ただいまのところは「年間数百名程度として毎年漸減させる」という文言でよろしいでしょうか。
○田中座長 はい。大分時間も過ぎましたので、次へ進ませていただきます。それでは、今から事務局の方で、元の文案を急いで修文していただいて、これはこの検討会の意見の整理として、司法試験委員会に引き継がしていただきたいと思います。ただ、司法試験の実施主体は司法試験委員会でございますので、ここで意見の整理をしても、もちろんこれを尊重していただくことを期待しているわけですけれども、それが新しく発足する司法試験委員会における検討を拘束するものでないということは御了承いただきたいと思います。それでは、続きまして、法科大学院教員派遣法施行令の件につきまして、事務局から報告を受けることにしたいと思います。
○片岡参事官 それでは時間の関係もございますので、手短に報告させていただきます。資料5をご覧ください。いわゆる法科大学院教員派遣法の関係の施行令でございます。1に記載してありますとおり、法科大学院において裁判官が教授等の業務を行った場合に、1日当たり5万円、当該裁判官が判事補である場合には3万円という額を、当該裁判官がその年度に法科大学院において教授等の業務を行った日数で掛けて得た金額としております。なお、取決めで1日未満の単位をもって定められている場合には、8時間を1日として換算するということとしております。そして、その納付金は、1の(2)に記載してございますように、翌年度の6月15日までに国庫に納付しなければならないとしております。2のところは、共済関係の技術的規定を整備したものでございます。詳細は省略させていただきます。3のところですが、附則の関係では、この政令の施行期日も、法の施行の日と同じく、来年の4月1日であります。そして3の(4)ですが、先ほどの5万、3万という基準額を適宜見直すという、いわゆる見直し規定を置くことを考えております。現在、関係機関との最終的な調整を行っているところでありまして、年内に閣議決定を経て、公布することを予定しております。また、先ほどの基準額5万、3万という基準額、あるいは納付の関係につきましては、大学から費用を納めていただくという性質のものでありますことから、意見募集・パブリックコメントを現在行っておりまして、各法科大学院の担当者の方にもその旨をお伝えしたところであります。
○田中座長 この政令につきましては、これまで説明を受けてきたところですけれども、特に共済関係の規定について調整に時間を要したということでございます。また、説明がありましたように、国庫納付金の関係では、納付金が翌年度の6月15日になったため、若干の時間的余裕が生じたわけですけれども、政令の施行に関しましては、来年の4月1日ということですので、できる限り早く公布できることを目指して、最終的な調整を行っていただきたいと思います。これはよろしゅうございますでしょうか。
それでは、司法修習生の給費制の在り方についての検討に入りたいと思います。この問題につきましては、前回の検討会におきまして、事務局の考えを具体的に示した上で検討していただくということになっておりましたので、本日はまず事務局から、前回以降の状況について報告を受けることにしたいと思います。それでは、よろしくお願いいたします。
○片岡参事官 それでは資料6の「司法修習貸与金(仮称)」という資料を御覧ください。この資料は、司法修習生の給費制を貸与制に移行する場合における制度の概要を記載したものであります。まず一番上のところですが、「司法修習生は、その修習期間中、国から一定額の貸付けを受けることができるものとする。」としております。この場合の「一定額」につきましては、司法修習生がアルバイト等の兼業・兼職をしなくても、修習に専念することができるような額とする必要があると考えております。次に、「返還は、修習終了から一定期間(例えば10〜20年間)の年賦(繰り上げ返済も可能)とし、各返還期限の到来までは無利息とする。ただし、正当な理由がなくて返還期限までに返還しなかったときは、返還までの遅延利息を支払わなければならないものとする。」としております。続いて返還免除につきましては、「死亡又は精神若しくは身体の障害により返還することができなくなったときは、返還未済額の返還を免除することができるものとする。」及び「その他(例えば、司法ネットの職務に一定年数以上専従した場合など)」としております。この返還免除の在り方、特に「その他」の部分ですが、これにつきましては、法曹三者から具体的な御意見をいただくに至っていない状況でありますが、本部事務局といたしましては、ここに記載しましたように、司法ネットの職務に一定年数以上専従した場合のほかにも、さらに返還免除の対象とすべき弁護士の範囲をどう考えるべきか、また、裁判官や検察官に任官した者に対する返還免除をどのように考えるべきかについて、皆様の御意見をお伺いした上で、さらに検討を加える必要があると考えております。また、その下にありますように、返還猶予、あるいは旅費の支給についても規定することを検討しております。「その他」の手続的事項につきましては法律で規定する必要がないとは考えておりますが、検討する必要があると考えております。事務局といたしましては、先ほどの返還免除につきましても調整を終えた上で、このような貸与制への切り換えの法案を通常国会に提出したいと考えているところであります。以上であります。
○田中座長 どうもありがとうございました。この司法修習生の給費制の問題につきましては、これまでもたびたびお願いしてきましたように、この検討会としても一定の方向性を示さなければならない時期にきていると思われます。この問題につきましては、法曹三者はいわば受益者の立場にあるわけですから、その立場上、司法修習生の給費制を維持すべきであるという意見が述べられたとしても、よく分かるわけでございますけれども、しかしながら、この問題は、法曹養成について、国民の負担をどのように考えるべきかという問題でして、司法制度改革全体の問題についての国民の視点という観点からどのようにするかということを、この検討会では考慮しながら議論していただかなければならないと思うわけです。そういうことを踏まえた上で、御意見をいただければと思います。
○川野辺委員 前回の取りまとめでは、当然に貸与制になるという趣旨ではなくて、選択肢の1つとして貸与制も視野に入れて制度設計しようということだったと思うのです。ですから私の感覚としては、今回の検討会には、いくつかの案が出て、それをもうちょっと具体的内容のある案が出て、それを比較検討することができるのではないかと考えていたのですけれども、どうも1つの案で、その内容もあまり具体的ではないので、これではちょっと検討しろと言われてもどうなのかなと思っています。返還免除の点についても、具体的に修習生がどのくらいの額の負担を負うようになるのかということが出てこないと、その先にどうも議論が進まないのではないかというような気もいたしますので、もう少し具体的ないくつかの案を出していただくというわけにはいかないのでしょうか。
○田中座長 事務局の方、いかがでしょう。
○片岡参事官 まさにその点をこの検討会の委員からお聞きしたいわけで、額がどれぐらいで、免除としてどういう免除が考えられるかについて委員の意見として述べられ、それを踏まえた上でいくつか制度の案が出てくるというわけでございます。具体的イメージがないのは、この検討会の委員から具体的な意見が述べられてないからという認識を持っておりまして、法務省、最高裁にも任官者免除をいかがお考えかという点については、今すぐにでもお聞きしたいところです。そして、それを踏まえた上で、この検討会で、委員が任官者免除についてご意見を交わして、その調整を行うことが可能であれば、その部分について具体的意見を形成していく問題だと思っております。今の御意見を踏まえますと、今すぐにでも任官者免除について、最高裁と法務省がどうお考えか質問していただきたいと思います。
○田中座長 川野辺委員の意見もありますが、従来の制度をそのまま維持するというのでは、これは我々は検討する必要ないということにもなります。今までの議論から言うと、仮に貸与制とした場合にどういう制度設計ができるかということがやはり議論の中心になるのではないでしょうか。その場合、今、片岡参事官がおっしゃったように、返還免除とか返還猶予の仕組みをパックにしていくということが検討の中心になると思います。あとは従来の制度でどう対応するかというぐらいの選択肢で、具体的に議論するとすれば、貸与制にした上で、免除などの制度設計をどうするかということになるわけですけれども、貸与制についても、いろいろ問題が出ていますし、それから、免除については、なお、さらに意見が対立しているという状況で、事務局としては、こういう骨格を示して、今日御議論いただいて、より具体的な案を示して、さらに検討していただきたいということで、今日は骨格だけを出していただき、今後これにいろいろと肉付けしていく必要があると考えております。法曹三者でも結構でございますし、関係者の方も、何か意見がございましたら、是非御意見をいただきたいと思います。
○川端委員 私個人は、確かに給費制の受益者ですけれども、受益者としての立場から今までこの問題について発言してきたわけではありません。法曹養成の過程を経ることについて、個人的に経済的負担が非常に掛かってしまうということで、法曹となる者の社会的基盤、経済基礎がゆがむような形になっては困るという意味で、経済力に関係なく法曹となれるようにしてほしいという立場から、ずっと意見を申し上げてきたわけです。その関係で言うと、非常に気になるのは、これは直接、貸与制・給費制の問題でないのですけれども、法科大学院に対して、一体どういう財政支援が行われることになるのかということです。東京新聞に11月23日に載っていましたけれども、財務省は22日、来春開設する法科大学院の運営費など、文部科学省が2004年度予算で要求している新たな補助金を認めない方針を明らかにした、というのが報道されているわけですね。前回、私は、文部科学省が16年度の概算要求で私学助成の補助金として50億円、そのほかに形成支援経費として78億円要求されているということを聞いて非常に安心し、喜びもしたのですけれども、それがほとんど認められないという結果になってしまうのでは、これは法科大学院の過程を経るだけで親が1,000万用意しなければいけない、あるいは本人が1,000万の借金を背負わなければいけないということにもなり、そういう人たちが司法修習生になってくるのだということを前提に考えなければいけないことになると思うのですね。まず第一にお聞きしたいのは、この報道が本当なのか。文部科学省が要求している概算要求が、一体どの程度実現することを前提に、我々は貸与制の問題を考えればいいのかということなんですけれども。
○田中座長 では、文部科学省の方から状況を御説明いただければと思います。
○小松主任大学改革官 まず概算要求につきましては、私どもが行っておりまして、その中身は前回御説明したとおりでございます。財政当局との折衝状況は、時期的には大詰めにだんだん差し掛かりつつあるわけですけれども、国家財政の議論と法科大学院に係る司法制度改革の議論というのは、もちろん本来的に対立するわけではないのですけれども、はっきり言えば、がっぷり四つでやり合っているというところでございます。この手のいわゆる観測記事というのはいろいろな思惑で出るので、財務省は極めて厳しいことを申しておりますし、私どもとしては、必要なものは必要であるというスタンスでやっているわけでございますけれども、ここは私どもだけではなくて、実は司法制度改革推進本部にも私どもの大臣とも打合せしていただき、各方面ともいろいろと御議論いただくというような動きをしていただいております。その中で、私どもの折衝で最大限のものを確保したいというふうに考えております。他方、具体的に実際どれだけの額として見ていくかというのは、現時点ではちょっとお答えしにくいのでございますけれども、実際の財政状況の中で、多分折衝の一番最後までもつれ込んでいくことになるのだと思います。要素としては、機関助成としての私学助成、それから今のお話で言いますと、個人の負担である奨学金、そして中身自体については、先程来御説明申し上げている特色ある法科大学院の形成ということがございますが、それを支援していくためのプロジェクトの形成支援という三本柱は、結果はともかくとして、私どもとしては、その三本を堅持して引き続き要求していきたいと、こういう状態でございます。
○田中座長 推進本部の方で何かございますか。
○山崎局長 今、文部科学省の方からも説明がございましたけれども、この法科大学院の問題は、内閣直轄でもやっているわけでございます。そういう意味では予算の枠としては、文部科学省の方でお願いをしておりますけれども、やはり政府全体としての取組であるべきではないかということから、副本部長でございます法務大臣に、副本部長の立場として、今いろいろと折衝を続け、行動をいただいているところでございます。最終的にもう少ししないとどういう状況になるか分からないのですけれども、本部としても最大限の努力をしているという状況でございます。
○小松主任大学改革官 要は、財務省が外部に表明しているスタンスは、新聞報道がなされているとおりでございまして、それに対してどのように折衝していくかということを続けているところでございます。
○川端委員 そうすると、それがどうなるかは結局予算が決まるまで分からないと、そういうことですね。そうだとすると、我々が今議論しようとしている貸与制が適当なのかどうか、あるいは貸与制が適当だとしてどういう中身であるべきか。あるいは給費制を一部でも残すべきかというような議論の前提となるべき、修習生が法科大学院を経たことによってどのような経済的負担を負ってくるのかという部分の相当大きな部分が未確定なまま議論をしろと言われているような気がするのですけれども、もう少しその推移を待つということは不可能なんでしょうか。
○山崎局長 待つというのはどういうことでしょうか。
○川端委員 法科大学院に対する財政支援がどうなるかがはっきりすれば、その関係で、今非常に高い授業料を掲げている私立大学が授業料を下げるということもあるし、あるいは今は公的援助を期待して授業料を下げていたが、補助が期待できないということになって授業料を上げることがあるかもしれない。そういう、修習生になる人の経済状態がどうなるか、法科大学院というプロセスを経ることによって、どのような経済的負担をすることになるかという全体像が、予算が決まらなければ分からないということになりませんかということです。そうだとすれば、予算が決まった後で、こういう議論を最終的にしなければいけないのではないかということです。
○今田委員 今の川端委員のご意見は少しおかしいのではないかと思います。法科大学院の期間にどのくらいお金がかかって、経済的負担がどの程度かが分からなければ、議論できないというのはおかしいのではないでしようか。というのは、この度の制度改革の要点は、プロセスとしての養成にあると思いますので、全プロセスの費用を、どのように合理的に配分するかが重要であり、法科大学院での負担も修習生の負担も、ともに包括的に議論すべきものであると思います。
○川端委員 いや、そっちからでも同じことだと思うんですよ。
○今田委員 財源に制限があるわけですから、全過程にどのように配分するのが合理的なのか、いろいろと知恵を出すべきだと思います。奨学金だけでなく、法科大学院への財政支援や研究プロジェクトへの支援など、多様な支援プログラムがあるのではないでしようか。そういう観点からいえば、給費制の維持は、全体のバランスからみて、あまりに手厚いという印象があります。もちろん、人数が増えることから、それによる負担増が、給費制維持を困難にしていることもありますが。いずれにせよ、貸与制への転換の議論に踏み込まないと、法科大学院の支援について適切なメッセージを出せないのではないかと思います。だから、法科大学院の予算がはっきりしないのでは給費制は議論できないというスタンスは生産的ではないと思います。
○川端委員 確かにおっしゃる趣旨は分かるのですけど、ここで、法科大学院には当然適切な財政支援があるだろうということを前提にして、こっち側の資源配分としては貸与制でよいというのを決めた後で、いや、やっぱり財務省はゼロ査定でした、ということになりはしないかということが、私が先程申し上げた趣旨です。私は法曹養成の全過程を通じて、法曹になろうとする者個人に不当な負担を与えてはいけない、そのことによって法曹像がゆがむことがあってはいけないということだけを申し上げているのであって、議論をする際に、今のように財務省が一銭も出さないと言っている状態で、こっち側でも借金を背負えばいいでしょうという議論をするのはいかがかと、そういうことを申し上げているのです。
○木村委員 私はずっとエンジニアリングの世界で生きてきたのですが、今議論になっている法曹養成の財政支援に関する問題は相当気をつけないと、世の中の反発を相当招くことになると思います。今、川端委員が、法曹養成の過程でゆがみがあってはいけないということをおっしゃいましたが、確かに弁護士や判事、検事のような方は社会的ステータスが高いかもしれませんが、我が国が科学技術立国として、サイエンティストやエンジニアを育てていく必要があるということと同じような位置付けになると私は思っています。国立大学は授業料が安いから良いと言えるかも知れませんが、私大からもたくさんの修士や博士が出ています。この人たちは法曹の卵と同じように考えられるべきですが貸与制の奨学金の返済をしなければいけません。それがいいと私は申し上げているのではなく、日本は本当に嘆かわしい状況にあるのです。しかし、この場での議論では、その辺まできちんと考えておかないと反発を招くと思います。工学分野では、私も随分給費制にすべきだと頑張ってきたのですが、刀折れ矢尽きて貸与制となってしまいました。ですから、ここでの議論は、ほかの分野の議論も踏まえないとまずいことになるのではないかと思います。
○フット委員 給費制と法科大学院のローン制度などの財政支援は理論上は別問題ですけれども、どうしてもリンクして議論されているものです。法科大学院の財政支援を譲歩してもらわないと給費制は手放さないということでは、恐らく財務省あたりでは、もしもローンなどの財政支援を認めた場合に、それでも給費制は手放さない、ということも心配しているのは当然だと思います。私は何か月か前にこういう話題が出たときに、もしも法科大学院の援助などについて充実した制度ができれば給費制を考え直してもいい、あるいは貸与制に切り換えてもいいということについて、、何となく暗黙の了解があったような気がします。それがこの前の段階では、何となくローンなどの財政支援制度ができ上がっていきそうだという話になった途端、いや給費制も維持であるという主張が出てきたのではないかと思います。それは、お互いに同時に動かないとなかなか動けないのではないかと思いますけれども、切り離して考えますと、むしろ貸与制に切り換えていかないと、将来3,000人になった時点で、給費制は今までの予算だけでは3分の1ぐらいの給費になってしまって、とてもそれだけでは足りないだろうと思います。かも、給費制を維持するために、3,000人とするのは難しい、そこまでは人数を増やせない、というような議論も出てくるかもしれないということを、私は危惧しています。ですから、むしろ貸与制に切り換えて返還免除の制度などの方をポイントにした方が、今後の制度設計としてはより妥当なアプローチなのではないかと思います。ちなみに返還免除では、司法ネットや民間などのこともいろいろと考えられますが、あるいは別なアプローチとして所得ベースで考えるのはどうでしょうか。アメリカの教育ローンの一種としては、所得はいくらか以下の人ですと免除になるというような制度もありますけれども、払える人ならちゃんと払ってもらう。せっかく弁護士になっても払えない人というのは、それは司法ネットに参加していくなどというような制度設計も1つの考えられるアプローチなのではないかと思います。
○田中座長 私も、先ほど木村委員がおっしゃったのと同じ意見でして、大学の教員は、昔は返還免除でしたが、今は全部返還しているという現状にあります。
○木村委員 返還免除制度についても気をつけないと、反発を招くと思います。
○田中座長 それは非常に難しいことです。例えば返還免除については、法科大学院の教員になった場合などは免除してほしいという話になると思うのですが、そういう話はなかなか難しい。法科大学院だけ考えていると、内部では分かるのですけれども、他の大学院や他の学部を見渡すと、法科大学院に対する補助だけでなくて、司法修習生の補助に関しての反応も結構あるので、そのあたりは難しい感じがしております。
○今田委員 利害関係者の方は、お話しづらいと思いますので、関係者でない私から、免除の制度について、意見を申し上げたいと思います。確かに、時代の流れは、自己責任、自己負担を重視して、特権的なものは排除という方向にあると思います。けれども、この免除制度の意味を考えると、残すべきではないかと思います。この免除制度は、公平性という観点から、経済的に厳しい人を支援するという機能と、もう一つは、人材のアロケーションの機能という、二つの趣旨を担っていると理解しています。そういうことからいうと、猶予、免除は、今回の多様な法曹人材の養成という制度設計の基本理念からみて、有効に機能させることが必要なのではないかと考えます。そうした制度を無くしてしまっては、改革が目指すことが実現できるのか。確かに、免除の制度を無くした方が、すっきりする面はあると思います。しかし、この改革の目的は、多様な法曹人材を育成して、多様な法曹への期待や要求に応えることにあるわけで、そうだとすると、いろんな課題を担う役割に、法曹人材が縦横にアロケートされることが重要になる。そういう観点からいうと、法曹人として養成された人たちは、例えば、弁護活動などにおいて経済的にあまり恵まれないような、私的利害を追求し難い公的な役割を担う人もいれば、一方では、高い収入を得る分野もあって、いろんな分野に配置されていくので、経済的な面でいうと、多様であると思われます。したがって、いろんな分野に支障なく配置されることが重要になるわけで、そのために、この制度は有効に使われるべきだと思います。もちろん、合理性というか納得性が必要であり、知恵を出して、よい制度にすれば不当な反発を招かなくて済むのではないでしようか。私的利益を追求し難い、公的な役割を担う法曹の場合には、返還猶予、そして一定期間の後に免除というような制度設計が、納得性の観点から、望ましいのではないでしようか。
○諸石委員 貸与制もあり得べしというまでには随分議論してきて、前回の集約までは、貸与制に決めたわけではないとしても、流れとしてはそういうことで、予算折衝の中で、こちらが踏み込まないと文部科学省としてもやりにくいということもありましょうし、これは約束できないということは分かりますけれども、そういう努力をしていただいて、それが功を奏するという期待のもとにというか、それが決まるまでは、これは決められないと言っていたら、やはり話が進まないのではないかと思いますので、これはこの検討会としては踏み込んで、貸与制で結構ですと、こういうことを明らかにすべきだと思います。それから、その場合の返還免除ということについて、確かに任官者がすべて一律に返還されるということが、最近のいろいろな動きからして、なかなか国民的支持を得られないということもその通りだと思います。一方で、そういう免除は要らないのかというと、全部要らないというと本当にそうなのかという感じもしますし、今回の貸与制との関係では、地方の弁護活動の問題があります。地方に法科大学院を作ることがどれだけできるのか、仮に作っても、その卒業生が地方に居つくとは限らないわけです。そうすると、地方というものが1つのキーワードであったと思うので、そのインセンティブとして、返済免除ということ、あるいは公益性ということで特別に公益性の高い職務に就く人、それから所得という切り口もあるかもしれません。何かそういうものを工夫して、1つの積極的なイメージとして、そういう返還免除制度をつくっていきたいなと、そう思います。
○田中座長 ありがとうございました。スケジュールの問題は、事務局、いかがでしょうか。
○片岡参事官 以前から御説明している点でもありますが、補足して説明申し上げます。司法制度改革推進本部の設置期限が来年の11月末となっております。そして、また、現在の法律で、いわゆる給費制がとられていることから、司法修習生の給費制を維持するか、あるいは貸与制へ移行するかという点について、方向性が示されないまま推移して、設置期限を迎えてしまうということになれば、これは時間切れによって給費制が維持されるという関係にあります。この検討会は、法曹養成制度についての法曹三者以外の立場、あるいは国民的視点に立った改革のための御意見を伺うのにふさわしい検討の場として機能してきたものと考えております。そしてまた、この給費制の問題はまさにこの検討会において検討していただくのにふわさしいテーマであると考えております。そして現在の状況ですが、先程から申し上げていますように、事務局といたしましては、貸与制へ移行する法案を通常国会にも提出したいと考えて、そのための作業は進めているのに対して、法曹三者は貸与制への移行に反対あるいは態度を明確にしないという状況にあります。特に任官者免除についてどう考えているか、任官者だけに限らず免除制度についてどう考えているのかについて、具体的な御意見が伺えないまま推移している状況であります。このような状況にあって、事務局としましては、設置期限との関係もあり、司法修習生の給費制を維持するのか、貸与制に移行するのもやむを得ないのか、その方向性について、当検討会の御意見を早急にお伺いしたいと希望している次第であります。
○田中座長 そういうことでございまして、この検討会としても方向性は出ているということもできると思うのですけれども、出さないまま議論して検討を先送りしていると、結局は時間切れとなってしまって、この検討会の責任の問題もあります。いろいろと諸般の状況等を組み合わせて検討する必要があるということはよく分かるわけですけれども、通常国会に関連法案を提出したいという事務局の意向も十分理解できるところです。貸与制について、先ほど諸石委員のおっしゃったような方向で検討できればありがたいわけですけれども、ただ、返還免除につきましても、今、事務局からも説明がありましたように、法曹三者の意見が一致していないというような状況でございまして、このまま推移していると、本当に具体的な案を全然示せないまま様子を見ているということで終わりかねないので、これまでより踏み込んで、できれば、諸石委員がおっしゃったような形で、貸与制に切り換えるのもやむを得ないとした場合、どういう制度設計が考えられるのかということで、もう少し具体案を出して御議論いただくことにして、その際、法曹三者からも、先ほど指摘のありました返還免除の点につきまして、積極的に御意見をいただくという形で検討するということはいかがでしょうか。
○川端委員 その場合、先ほどの説明ですと、修習専念義務、すなわちアルバイトは許さないという前提を維持するということなのでしょうか。それともう一つ、今、修習生は、修習受入れ側の都合で全国に配置されておりまして、全然出身地とも何とも関係ないところにいきなり配置される制度になっているわけです。これは給与をもらえるから当然だということでやっているわけですけれども、その制度を例えばどうするのかということ。それと、ここには何も書かれていませんけれども、一体どの機関が貸付けをして、債権の管理はどうして、取立てはどうするのかというような問題についてもさらに検討が必要な気がするのですけれども、具体案をお示しいただけるのかどうかというような点について、どうなのですか。
○田中座長 そのあたりも検討してよければ、どんどん詰めて検討したいと思います。修習専念義務と言われますけれども、大学でも授業料を取っていても、勉学専念義務というのを学生に課しているので、給与を払っているから専念義務が生じるというものでは必ずしもないと思います。
○川端委員 もちろん因果関係の問題は別ですけれども。でも、今非常に厳格な専念義務を課していて、また事実上専念しなければいけないような、特に前期修習、後期修習の間は厳しいカリキュラムになっていますよね。貸与制ということになって、しかも貸与を受けるか受けないかは任意だということにすると、勤務時間だけは出て、試験は受けなさい、でも、その間に貸与を受けるかあるいはアルバイトするか、それはあなたの自由ですよ、という制度に切り替わる、その程度の専念義務、つまり学生だってアルバイト自由だというのと同じレベルの専念義務になってしまうのではないかという気がするのですけれども、司法修習生というのは非常に特殊な身分なので、制度設計上、それでよいのかということは真剣に議論しなければいけないところだと思うのです。だから、その問題をきちんと詰めていただきたいと思うのです。
○田中座長 ということは、詰めてもいいということですね。
○川端委員 それでよい制度になるかどうかを検討しましょうということで、仮に貸与制にするとしたら、こういう案になりますよということを事務局にお示しいただくのはいいのです。つまりこんな抽象的な案では、今言ったような問題も何も分からないまま結論を出すということは不可能です。
○片岡参事官 今の点につきましては、例えば修習専念義務とおっしゃいますけれども、今の法律のどこに書いてあるのかといいますと、1つの考えとしては給与を支給するから専念義務があるのだという、端的な議論であると思います。他方で、必ずしもそう考えなくても、兼職、兼業は禁止し、では生活はどうするかということで貸与制があるというような考えもあると思います。いろいろと論点を大きくされますが、我々事務局としては、法律の立案に何が必要か、何が法律事項かが重要です。法律事項以外のもので、例えば債権管理の具体的在り方は法律事項ではなく、実際どこが担当するのかという問題であれば、そこはこの法律の立案とは別のものとして検討の土俵が違うものとして議論・検討していただくこともあり得ると思います。全部が片づかないと結論が出ないというのは、ちょっと事務局としても検討しづらい御意見ではないかと思っています。
○田中座長 意見を伺った限りでは、法曹三者を除くというわけにはいかないと思うのです。それぞれの意見をおっしゃるのはよく分かるわけですが、積極的にそういう方向が望ましいというわけではないと思うのです。ただ、もう少し広い比較考量の中で法曹養成制度全体の中で考えていくとなると、貸与制への移行を合理的な選択肢として組み入れて、そういう方向にするのはやむを得ないということで、今おっしゃったような細かな問題点、返還免除の仕組みなどについて、もう少し詳しく検討を加えないと時間切れになってしまうということもございます。もう少し詳しく検討をするということを御了解いただければありがたいのですけれども。慎重論があることは十分踏まえておりますが。
○川野辺委員 それでいいと言えばいいのですけれども、一番ひっかかるのは、法科大学院と司法修習を通じて、奨学金と司法修習の間の貸与金を含めて修習生がどのくらいの額の負債を負うことになるかというのがもう一つ分からないのです。一度日弁連の方から、1人1,500万円という話が出たわけですけれども、その額がどのくらいなのか。それから、返還していく場合に1カ月にどのくらいの額のお金を返済していかなければいけないのか。それが普通に法曹として仕事をしていく中で、返還可能なお金なのか。この案の中には返還期限到来までは無利息とする、と書いてありますけれども、財務省の態度がよく分かりませんので、本当に無利息になるのかどうかということも分からないわけです。その辺の負担の具体的イメージがつかめないというのが、私が積極的に貸与制への移行ということを肯定できない理由の1つだと思います。あまりに大きな負担を持って法曹になるということになりますと、新しい修習では前期修習もなくなって、それで各地方に分散されるということですから、今でさえ、前期修習が始まる前に、大手の渉外事務所などがあらかじめ内定をして修習をさせているわけで、そのような状況が助長されるのではないか。そうなると、今回の司法制度改革の、また法曹人口を飛躍的に増やすという目的の1つである、あまりもうからない分野に弁護士としてやっていくという人たちを育てる土壌ができないのではないか。その問題は、単に償還免除だけ認めればいいという問題ではないように思うのです。ということで、具体的な数字といっても、なかなか分からないのかもしれませんけれども、大体どんな負担になって、どういうふうに返済していけばいいのだというようなところがもうちょっと分からないのかなという気がするのですけれども。
○片岡参事官 簡単に言いますと、法科大学院時代から、月20万円まで借りれる制度になったとして、計算することは可能ですが、今の御意見で重要な点は、全く借りないゼロの人もいる、それから数百万円の人もいる、それから、恐らく1,000万円近い人もいる、そのような段階がある中で、仮に一律給費制維持という御意見があるとすれば、ちょっと無謀な議論ではないかと感じました。
○川野辺委員 だから全面的に給費制を維持しろと言っているわけではもちろんないわけで、その辺を教えてほしいということなんです。
○田中座長 ですから、貸与制もやむを得ないという形でいろいろ制度設計をしたけれども、やっぱりこれはうまくいかないというのが分かれば、それはそれとして検討の余地があると思うのです。
○川野辺委員 その辺の議論をもう少し深めたいのです。
○田中座長 それは、今から制度を変えれば、いろいろと問題点は出てくると思います。ただ、従来のように、議論をするにも貸与制という方向で検討すること自体について法曹三者の方から協議に応じていただけないという状況では、事務局としても動きようがないのです。法曹三者の方からも御協力いただくとなれば、法科大学院段階から、具体的にどのぐらいのお金がかかって、返還の免除などと組み合わせていけば、それなりに合理的な制度になるといった具体的な制度設計の中での選択肢というような議論にしていただかないと、従来どおり給費制を続けるか、貸与制への移行を検討するかどうかという選択肢の議論を続けていくと、タイムリミットになってしまうので、もう一歩進めて、諸般の事情から見てやむを得ないとして、どういう制度設計が考えられるかということを検討していただくということを御了解いただきたいと思うのです。
○川端委員 「として」というところが非常に重要だと思うので、是非そこを落とさないようにしていただきたいと思います。
○田中座長 前回よりは少し方向性が出たと理解させていただきたいと思います。
○法務省 国民のためにある法務省でございます。受益者では決してございません。法務省として、先ほど座長から御下命がございましたので、返還免除についての私どもの考え方を次回までに準備したいと思います。他方で従来から協議に応じていただけないということを何度も言われているのですが、私どもとしては協議には何度も応じているつもりです。返還免除に対する考え方を組み立てるにしても、そもそも今回貸与制というのは1つの有力な政策判断の選択肢だとは思いますが、立法ですから、どういう考え方に基づいて、どういう立法事実に対応するための制度改革として位置付け、その哲学との関係で、返還免除についても納得性といいますか、合理性といいますか、今田委員から御指摘があったようなことについて、国民に対して説明ができないと、責任ある制度設計ができないのではないかと考えております。その前提となる考え方について、従来から御説明いただきたいと申し上げているのですが、今のところは、お金がないからという程度の御説明しかいただいてないので、また、次回に向けて、私どもとしても国民のために建設的な協議をしていきたいと思います。
○田中座長 最高裁や日弁連は何かございますでしょうか。
○最高裁 この問題は内部で検討しておりますし、本部事務局ともお話は重ねておりますが、法曹三者の立場と国民の視点という関係もありますし、もう一つは、司法と行政との関係で、今の予算の仕組みが縦割りになっておりますので、検討に当たってなかなか難しいところがあり、私ども法曹三者の立場から考えますと、いささか収縮した議論になりがちではあるのです。この検討会の場で、もう少し広い観点で御議論いただきたいということを申し上げているのはそういう趣旨でございます。今、法務省からもお話がありましたが、ここで議論されたこと、あるいは資料6に掲げられていることにつきましては、私どもとしても多角的に検討しておりますので、次回までに事務局とも十分御連絡とりながら、必要なところについては御説明申し上げたいと思います。
○日弁連 私ども日弁連といたしましても、今日の議論がいきなり返済免除から始まったということで非常に戸惑っておるわけでございまして、やはり今お話がありましたように、本当にいい修習をやる、いい法曹を育てるという観点からどういう制度が望ましいか。いきなり返済免除というところからの議論ではなかろうと思います。それから、修習専念義務の関係でも、大学生と同程度の修習専念義務ということで本当にいい法曹になるのか、いろいろないい人材が本当にうまく配置できるのか、そこら辺のところを、これからきちんと詰めていかないと、誤ることになると懸念しております。以上でございます。
○田中座長 どうもありがとうございました。
○諸石委員 今おっしゃったのは、それぞれ非常にもっともな御意見だと思いますが、すべてがきちんと分からないと踏み込めないのかというと、新しい法曹養成制度については、今まで分からないままに踏み込んできたことばかりであります。法曹三者の意見が一致するのがもちろん望ましいし、そのように努力すべきだと思いますけど、この司法改革そのものが法曹三者の合意だけでは埒が明かないというところから始まったという経緯もございますし、どこかで決心をしないと、予算の折衝も難しいし、時間的な制約もあるということだったら、いつまででも議論して、すべての問題点をクリアーしないと決められないということでは難しいのではないかと思います。次回ということであれば、次回に方向づけができるようなことでお願いをしたいと思います。
○田中座長 それでよろしゅうございますでしょうか。先ほどの司法試験に関する意見の整理につきまして、委員の方々の御意見を踏まえまして、修文したものを手元に配布させていただきましたけれども、こういう修文の内容で司法試験委員会に引き継ぐということにしてよろしゅうございますでしょうか。
(「結構です」と声あり)
○田中座長 それでは、これで本日の検討会は終わらせていただきます。次回の検討会は年明けの2月6日午後1時30分から予定しておりますので、どうかよろしくお願いします。