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法曹養成検討会(第21回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日時
平成16年2月6日(金)13:30〜15:20

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)
田中成明座長、井上正仁、加藤新太郎、川野辺充子、川端和治、ダニエル・フット、永井和之、牧野和夫、諸石光熙(敬称略)
(説明者)
小松親次郎 文部科学省高等教育局主任大学改革官
大谷晃大   法務省大臣官房司法法制部司法法制課長
小池裕    最高裁判所事務総局審議官
(事務局)
山崎潮事務局長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、片岡弘参事官

4 議題
(1) 司法修習生の給費制の在り方について
(2) その他

5 配布資料
資料1法曹養成検討会名簿(平成16年2月6日現在)
資料2法曹養成検討会(第20回)議事概要
資料3司法修習貸与金(仮称)
資料4法科大学院への裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員の派遣に関する法律施行令

【文部科学省提出資料】
資料1 法科大学院への財政支援について【平成16年度予算(案)】
資料2 平成16年度開設予定の法科大学院の設置認可等一覧

6 議事
(□:座長、○:委員、■:事務局)

(1) 司法修習生の給費制の在り方について

a)文部科学省からの説明

 文部科学省から、資料に基づいて平成16年度予算案における法科大学院への財政支援施策に関する説明がなされるとともに、平成16年度開設予定の法科大学院の最終的な設置認可状況が報告された。

□ 法科大学院関係の予算については、厳しい財政状況の中で、関係者の御尽力により、満足できる内容の財政支援が図られることになったものと考えている。今後ともこの問題は重要な問題であり、引き続き関係各方面の御協力を賜りたい。

b)司法修習生の給費制の在り方についての検討スケジュール

■ 本日、基本的な方針について結論が得られれば、今次通常国会への法案の提出も可能であるが、他方、今次通常国会には裁判員制度など多数の重要な司法制度改革関連法案の提出が予定されており審議日程が厳しくなることが予想される。新しい司法修習は平成18年度から始まることから、時間的なスケジュールだけを考えれば秋の臨時国会あるいは次期通常国会で法案が成立すれば間に合う。ただ、その場合でも、本部の設置期限を考えると、本年夏ころまでには検討会としての考え方を示していただきたい。

○ 貸与制についてもう少し具体的な案をいくつか示してもらわないと議論しにくい。

■ 貸与額や返還免除の条件などについて、具体的な御意見を頂きたい。

○ 貸与制の下での修習専念義務は、現在の修習専念義務と同じものなのか。

■ その点については、最終的には最高裁判所において御検討いただくべきものであるが、貸与制の下でも修習専念義務を観念することができると考えている。

○ 前回までに貸与制へ移行することについて合意したとは認識していない。貸与制への移行を選択肢の一つとして考え、仮に貸与制に移行するならばどのような制度設計が考えられるかという検討をするということではなかったか。

□ 前回の検討会では、貸与制に移行するとした場合の具体的な在り方について事務局と法曹三者でよく話し合っていただく、ということであったと承知している。

○ 貸与制に移行するとした場合の具体案について検討することは了承したが、この検討会で貸与制に移行すること自体を合意したとは認識していない。

□ 貸与制への移行以外に、他の選択肢はあるのか。

○ 貸与制に移行しないという選択肢もあるし、貸与制への全面的移行だけでなくいろいろな案があるだろう。貸与制にしても、返還免除だけが検討対象ではない。

□ 前回の議論では、給費制のままとするか、貸与制に移行する場合の具体的な案を検討するかのいずれかだった。そのほかにいくつも選択肢があるという認識ではなかったと思う。

c)関係機関からの意見聴取

 貸与制に関する具体的な制度設計に関して、関係機関からの意見聴取が行われた。

(法務省)現段階において、法務省としては、返還免除の前提となる貸与制への移行について、直ちに賛成という意思決定ができているわけではない。貸与制への移行も一つの有力な選択肢であり、真剣に検討すべきものではあるが、給費制の在り方は、司法修習制度の在り方と関連して検討することが不可欠である。貸与制に移行するのであれば、どのような立法事実に対応するための制度改革として位置づけていくのか、その哲学との関係で返還免除を組み立てていくべきである。司法修習制度の意義は、司法試験合格後、直ちに実務に就くことは妥当でないとの政策判断の下に、より質の高い法曹を生み出すために修習を課したものと考えている。このような要請に応えるために、修習生に修習専念義務を課し、生活費を自ら取得する道を閉ざし、場合によっては生活基盤のない土地での生活を強いている。修習生は、司法修習の制度的担保として給費を支給される反面、労働の権利を事実上制限されるなど、修習に伴う有形無形の負担を余儀なくされている。そこで、給費制の在り方を検討するに当たっては、今後ともこれまでの厳しい制約を維持するかどうかを始めとして、司法修習の在り方を検討する必要がある。従前の制約を維持したまま貸与制に移行するのであれば、合理的な理由付けが必要である。そして、返還免除を始めとする全体の制度設計の中で、そのような制約が合理的かどうかの配慮が必要になる。返還免除の趣旨については、債務者の死亡等で返還ができない場合の救済と、特定の職務を行う人材を確保する必要性という2つの趣旨がある。後者の趣旨から制度設計する場合には、現在、我が国においてどのような法律家をどの程度養成するかという立法政策の問題になる。例えば、司法ネットの常勤弁護士を増やしたり、法律家の地域偏在の解消のためなど公益に資する法律家を確保することは重要な視点である。また、そういった観点からすれば、任官者を対象とする考え方もあろう。さらに、多様な方面で活躍する法曹をいかに確保するかという観点からの制度設計も重要である。例えば、NGOなどあまり経済的な利益が期待できない分野で活躍する法曹のインセンティブをどのように確保するかという観点からの検討も必要である。債権管理や不良債権の回収の問題も重要である。返還期間を長くすれば、返済額は減るが、管理すべき債務者が増加する。不払時の督促・回収の問題もある。不払い者の法曹資格をどのように考えるかという問題もある。給費制と比較してどの程度の節約になるかも検討する必要がある。貸与制への移行を検討するに当たっては、単に財政事情という理由だけで結論を出されるのではなく、司法修習制度の在り方から貸与金の回収に至るまで、いろいろな角度から検討していただきたい。たしかに国家の財政状況が非常に厳しいことは十分認識しており、国民の負担や予算の適正な配分も重要であるが、その中で、質の高い法曹を養成するためにどのような制度が必要なのか、国民の負担を可能な限り軽減するためにどのような制度があり得るのか、大所高所から御議論いただきたい。

(最高裁)給費制は、戦後、新しい国を築いていく上で優れた法曹を養成することが重要であるという認識のもとに、法曹三者を統一的に養成する司法修習制度の導入と共に採用された。大学の教育課程に加えて2年間の専門教育を課すに当たって、修習生が安心して修習に専念できるよう、先進国の中でも手厚い給費制が採用されたことにより、幅広い層から多くの法曹を養成する上で大きな意義をもっていた。裁判所としては、司法修習を運営するという立場からも、優れた法曹あるいは裁判官を確保するという立場からも、この制度があることは極めて有益であったと考えている。他方、今回の司法制度改革において司法機能の充実強化が求められる中で、法曹養成については、養成人員の大幅な増加が求められるとともに、法科大学院の設置により修習前の教育期間が長期化し、逆に修習期間が1年と短縮された。こうした制度の変化に照らすと、法曹養成のための国の財政的負担については、養成過程全体を含めて、国民の理解を得ることのできる制度設計がなされることが必要である。意見書において、司法修習について、特に「給費制については、そのあり方を検討すべきである。」とされているのはそのような趣旨と解される。裁判所のみならず、法曹三者は、財政的支援によって広い範囲から法曹の人材を得られることを強く望んでいる。意見書では、「将来的には貸与制への切替や廃止をすべきではないかとの指摘もある」とされ、検討会におけるこれまでの議論に照らしても、現在の給費制を見直す必要がある、その方法として貸与制を考えるべきであるという認識があるように思われるが、貸与制を導入する方法が採られた場合、法曹を志す者が経済的な負担を理由にその道を断念せざるを得ないという事態の生じることのないような制度が必要である。若干敷衍すると、わが国の給費制は他国に比べて手厚いものであったが、その背景には、法曹養成が非常に重要であるという認識・理解があるとともに、養成人員が限られていたことも一つの理由であったように思われる。ところが、新しい法曹養成制度では、学部を終えたのち2年ないし3年という長期にわたり法科大学院での教育を受けることが必要とされることから、法曹をなるべく広い社会層から確保するという観点からすれば、まずこの長期の大学・大学院課程への経済的支援が十分に行われることが大切である。この過程の学生数は現状で5〜6000名に達しているが、幸い奨学金等の制度が導入されるようであり、今後もこういった制度が有効に機能することを希望する。修習生については、今後その数が3000名となることを視野に入れて検討され、期間は1年と短縮された。期間短縮により各人の負担の軽減はあるし、司法試験をクリアしており1年後には実務法律家として稼働することがほぼ確実という面もあるが、他方、前提となる教育期間が長期化することにより、実際に仕事に就く年齢は一番早くても25〜26歳、多くは20代後半になる。社会一般の例に照らすと経済的な自立が当然求められる年代であるが、教育課程の長期化により、この過程をこなすため非常な経済的負担を払っており、経済的に余裕のない状態となっている人も少なからずいることが想定される。その一方で、臨床教育を中心とした司法修習は、これまで1年半であったものが1年に集約され、これに専念することがより一層強く求められる。このようなことを考えると、現在の給費制を見直すとしても、修習に専念するためには、やはり経済的支援を講ずる必要性と政策的合理性があると考えられる。その経済的支援の方法として2つがある。一つ目は、司法修習という高度の実務専門教育を無償で提供することである。授業料・基本教材は無償とし、移動経費も手当てすることが不可欠である。二つ目は、修習期間中の生活保障である。これについては、修習生が確実に修習に専念するために必要な水準の額を貸与することが必要であるし、その修習過程が必須のプロセスとされていることから、無利息とし、返還を始める時期及び方法について一定の配慮をすることが必要不可欠である。貸与制に切り替える政策的な合理性はあり得るが、私どもはこれまで恩恵を受けてきた立場であるので、国民的見地から検討するという意味で、検討会で深い御議論をいただきたい。

(日弁連)質の高い法曹を多数養成することが求められており、そのためには、相当の決意をもった国家財政の支援をお願いしたい。裁判官、検察官のみならず、弁護士も司法制度の一翼を担っているわけであり、弁護士も優秀でなければ司法制度は機能しない。職業による区別ではなく、法曹全体の在り方に着目していただきたい。その点については、教員に対する返還免除が廃止される方向にあることも参考になる。特に、現在、法曹養成制度は流動的であり、法科大学院の帰趨、司法試験の在り方、あるいは合格者数も非常に流動的である。給費制の問題については、修習全体の在り方を検討する中で合理的な制度が決定されるべきである。

d)検討

 関係機関からの説明の後、次のような質疑応答、意見交換がなされた。

○ 法務省及び日弁連から、「修習の在り方と密接に関連する」という発言があったが、もう少し説明されたい。修習により質の高い法曹を確保するということは、新たな法曹養成制度においても変わるものではない。また、日弁連は、法曹養成制度が流動的であるとおっしゃるが、その意味を補充して説明していただきたい。

(法務省)修習の在り方が変わり修習専念義務がもっと緩やかになれば、給費制の在り方も違った考え方になってくるであろう、という意味で申し上げた。

(日弁連)意見書にある「新たな法曹養成制度全体の中での司法修習の位置づけを考慮しつつ、その在り方を検討すべきである。」ということを、私なりに申し上げた。司法試験の在り方や合格者数等の変動を見極めるべきだ、という趣旨である。

○ 修習期間の短縮により、修習専念義務を高めてより凝縮した修習を行う必要がある。最高裁は、貸与制の下での修習専念義務をどのように考えているのか。

(最高裁)修習専念義務の問題は、今後じっくり検討する必要があると考えているが、2点だけ指摘しておきたい。一つは、修習専念義務の中身は何かということである。きちんと授業に出ることや兼職しないことなど一つ一つについて、給費制の場合と、貸与制の場合をそれぞれ検討していく必要があろう。もう一つは、修習専念義務はどこから生じてくるのか、ということである。修習専念義務は、法曹養成においては臨床課程を踏むべきであるということに淵源があり、それをきちんと支えるために、給費制とするのか貸与制とするのか、という関係にあり、給費制から修習専念義務が生じてくるのではない。いろいろな観点から検討した後、考え方を御報告したい。

□ 今次通常国会には多数の司法制度改革関連法案が提出される予定であり、審議日程が非常に厳しいということである。また、新しい司法修習は平成18年度から実施されることから、スケジュールだけを考えると、給費制の見直しはもう少し時間をかけて検討することも考えられる。しかし、本部の設置期限は本年11月末であり、設置期間内に基本的な方針は決定しておかなければならない。

○ 平成18年度から新しい司法修習が発足する時点で、給費制についても新しい制度をスタートしなければならないのか。平成18年度の法曹人口も分からない。

□ もう少しゆっくり検討せよ、というご趣旨の発言なのか。

○ 本部が解散する前に目途をつけたいということは理解できるが、平成18年度に貸与制に移行しなければならないというのか。

□ 本部設置期限内に方向性を出したいということである。

○ 修習専念義務の根拠が給費制と関わっているのか、掘り下げた議論をしておく必要がある。給費制だから修習専念義務が発生するという考え方には賛成できない。

○ 現状に比べて修習期間が短縮されるから、24時間修習に専念しなければならない。それを保障しようとすれば、給費制が一番好ましいことは明らかである。

○ それでは、今までの修習専念義務と給費制の関係はどうなっていたのか。

○ 司法修習生は公務員に類似した身分を与えられ、給与も与えられるから、命ぜられた修習地で、24時間修習に専念せよ、ということである。その効用として、法曹になる経済的コストを下げて広い範囲から人材を集めることができたし、国民の税金で養成されるということで、修習を真面目に行うように指導できた。このように、給費制は、修習生に強い修習専念義務を課す根拠となり得たのである。それを廃止するということであれば、より強い修習専念義務を求めることはできないのではないか。

○ 法曹を志望する者は、プロフェッションとしての高度な専門知識と技能を身につけなければならず、そのような法曹養成を法科大学院と司法修習とで担うことになる。そうなると、司法修習生には、論理必然的に、その持てる時間をすべて高度の専門知識と技能の修得に用いるべき義務が発生する。それを安んじて実現できるようにするために、現在は給費制がとられている。いわば、給費制は、修習専念義務をうまく作動させるための手段的な措置である。したがって、給費制でなくても、他にこれと等価値の代替措置が講じられればよい。

○ 貸与制は、給費制と完全に等価値ではない。

○ 修習期間中は24時間専念すべきであり、そこに影響が出るようであれば等価値とは言えないだろうが、どのような意味で影響があるのか。貸与制ではたしかに返済義務を生じるが、返済は修習期間ではなく将来のことである。

○ 貸与制にした場合、司法研修所や実務修習に行っている間に修習以外のことをしてはいけないという義務は課せても、それ以外のときまで一切就労できないといえるのか。貸与を受けず、現在持っている他の資格を使って土日にアルバイトをして生計を立てたい、というようなケースも出てくるのではないか。

○ 24時間の修習専念義務を課さないと国民の前に出して恥ずかしくない程度の法曹にはなれないとすれば、そのような義務を課すことも合理的である。どこまでの修習専念義務が必要かつ相当なのか、という議論が必要である。

○ 新たな法曹養成制度においては、法科大学院修了後の最後の1年は、今までに比べてはるかに重みがあるから、よほど合理性のある制度設計をする必要がある。

○ 法科大学院の段階を含めた法曹養成制度全体での負担が増える中で、その最後の部分だけ給費制にしなければならないという理由はない。修習は確かに義務づけであるが、不必要なことを義務づけているわけではない。プロの法律家としてのサービスを国民に提供するのにふさわしい資格を身につけるために必要な制度なのであり、見方によっては、修習生はその対価を払うべきだ、という考え方すらあり得る。それを免除された上、さらに生活費まですべて国が丸抱えすることで筋が通るのか。かなり密度の濃い専念義務が課される以上、生活費をどうするかという問題は当然あるが、生活費は、大都市と地方とで多少の差はあるとしても、どこにいて、どのような立場にいようともかかるものであり、自分で支払うべきものである。しかし、修習により生活の糧を事実上奪われ、あるいは困難になるので、それをどのように担保するのか、ということである。したがって、修習専念義務から当然に給費制ということにはつながらない。給費制に代わる生活費の担保方法があれば、安心して修習に専念できる。生活費はどこにいようとどのような立場であろうとかかるのであるから、後で返してもらう、という考え方もあり得る。

○ 給費制は、必要条件ではなく十分条件である。したがって、まず、給費制を変えるという側から具体的な案を提示して頂きたい。法曹養成制度において、医師のインターン制度の失敗を繰り返してはならない。貸与制への移行によりコストがかかることも含めて、具体的に検討しなければならない。

□ 貸与制に移行するとした場合の具体的な制度設計を更に検討し、給費制を維持するか貸与制に移行するかを議論することになるのだろう。

○ 法律事項だけを検討しても制度の全体像がよく分からない。管理回収を含めた制度の全体像を事務局から提示していただきたい。

■ 事務局から案が提示されないから検討できない、したがって給費制維持だ、という御発言は、検討会の責任放棄につながる御発言である。

○ 法律事項だけ合意できればよいというのではなく、制度の全体像について検討しなければならないと申し上げているのである。私は給費制に満足しているので、自ら貸与制の具体案を提示する必要性を感じていない。

○ 検討会の役割を誤解されていないか。検討会は政策を決める機関ではない。政策を決めるのは本部である。検討会は事務局案の作成に協力するためのものである。

○ 本検討会では、修習専念義務や兼職制限は司法修習の本質から生じるものであることを確認してよいと思う。

□ 給費制でなければ修習専念義務が生じないということではないということは一致している。

○ 個人が自らのキャリアアップのために法曹になると考えれば、一時的に生活費を貸与しておき、キャリアアップした後に返済するという政策判断もあり得る。国の法曹養成政策として、給費制だけというわけではない。例えば、給費制に貸与制を加える政策もあり得ると思う。

□ 同じ議論の繰り返しである。一部に異論のあることは承知しているが、近い将来、貸与制に移行するのもやむを得ないとの認識の委員が多いとすると、貸与制への移行を前提に、ある程度具体的な制度設計を示して議論を詰めていかねばならない。

○ 貸与制を検討した上で、やはり給費制の方がよい、ということはあり得るのか。

□ 最後まで給費制がよいとおっしゃる委員がおられた、ということで意見の整理をすることになるのではないか。

○ 座長のアプローチについて全く異論はない。司法試験合格者が3000人となる時代において、給費制はとても持たない。3000人をやめるか、給費を減らして修習専念義務も確保できなくなるか、給費制を見直すかという選択肢しかない。

○ この議論はずいぶん長らく続けてきた。他の高度な専門職業に就く人や国家に有益な職業に就く人の養成とのバランスを考えた場合には、法科大学院への財政支援に一定のメドがついたし、今度は給費制も維持しよう、というのは虫が良すぎる。いつまでもそもそも論で反対しているだけでよいのか。

○ アメリカでは、学費が高く、3年で1000万円近い借金をする場合もある。その借金を早く返すために営利活動に走る弁護士がおり、倫理的にも問題がある。したがって、法曹志望者の経済的負担はできる限り少なくしないと、法曹となった後、公益的な仕事に就く人が少なくなってしまう。ただ、給費制にも問題があるので、一部を給費制とし一部を貸与制とするなど中間的な案は考えられないか。

○ その案は、貸与制における返還免除と同趣旨のものではないだろうか。むしろ、公益的な仕事に就いたり法曹過疎地で活動する法曹にインセンティブを与える制度設計をすべきである。その点について、法曹三者が具体的な意見を述べず、入口で議論したくないというのであれば、そのような具体案について議論できない。どのような制度であれば先ほど指摘された弊害を除去できるか、検討を急ぐべきである。

○ その御意見に全面的に賛成である。一部を貸与制とし一部を給費制とする案には賛成できない。資産がある者に対してなぜ給費を払うのか。貸与制とした上で返還免除を考えるべきである。その際、どこに重点をおいて免除するかの議論が必要である。先ほどアメリカの学費と弊害の問題が指摘されたが、日本の法曹養成制度全体の在り方としてどの程度返還しなければならないことにするかも考える必要がある。なお、アメリカでは、ビジネスに走って早く借金を返済しようとする人もいるが、検察官になって給料を得ながら、キャリアアップした後に違う道に進む人もいる。

○ ただ今の返還猶予・返還免除に関する議論に賛成である。一定の仕事に従事する人材の適正配置という観点からの制度を仕組んでおくことは、制度として賢明である。なお、司法過疎地や司法ネットで活躍する人のほか、法科大学院の教員を確保するためにも必要かもしれない。前向きに、また建設的にアイデアを出し合いたい。

□ 結局、2人以外の委員は、貸与制への移行を前提にして、返還免除その他の具体的な内容を詰めるべきだという御意見である。

○ 現時点で貸与制へ移行することを取りまとめられることには賛成できない。

□ そのような御意見の委員もいらっしゃるということを認識した上で、検討を進めざるをえない。

○ 貸与制と給費制とを併用する方法には、政策面から疑義がある。

□ 給費制の見直しについては、事務局から、今回の検討会において意見がまとまるのであれば今次通常国会に法案を提出したいという考え方が示されたが、ただ今の議論を踏まえると、もう少し時間をかけて検討する必要があると思われる。しかし、推進本部の設置期限が本年11月末とされているので、当検討会として、基本的な方向性、具体的な方向性を示さずに時間切れになることは許されない。できる限り早く、貸与制の具体的な制度設計についての検討に入らせていただきたい。検討に当たっては、法曹三者にも御協力願いたい。

(2)その他

最後に、資料4に基づいて、昨年12月に公布された法科大学院派遣法施行令の概要に関する説明が行われた。

7 今後の予定

 次回の検討会は、本日に引き続き、司法修習生の給費制の在り方などについて検討することとなった。
 日時については、日程調整の上、おって決定することとされた。

(以上)