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法曹養成検討会(第21回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日時
平成16年2月6日(金)13:30〜15:20

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員) 田中成明座長、井上正仁、加藤新太郎、川野辺充子、川端和治、ダニエル・フット、永井和之、牧野和夫、諸石光熙(敬称略)
(説明者) 小松親次郎 文部科学省高等教育局主任大学改革官
大谷晃大  法務省大臣官房司法法制部司法法制課長
小池 裕  最高裁判所事務総局審議官
(事務局) 山崎潮事務局長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、片岡弘参事官

4 議題
(1)司法修習生の給費制の在り方について
(2)その他

5 配布資料
資料1 法曹養成検討会名簿(平成15年12月8日現在)
資料2 法曹養成検討会(第20回)議事概要
資料3 司法修習貸与金(仮称)
資料4 法科大学院への裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員の派遣に関する法律施行令

【文部科学省提出資料】
資料1 法科大学院への財政支援について【平成16年度予算(案)】
資料2 平成16年度開設予定の法科大学院の設置許可等一覧

6 議事

○田中座長 それでは、時間になりましたので、第21回法曹養成検討会を始めさせていただきます。本日は、これまでに引き続きまして、司法修習生の給費制の在り方について、引き続き検討をお願いすることにしたいと思います。まず、検討に先立ちまして、事務局から本日の配布資料の確認をお願いいたします。

○片岡参事官 それでは、配布資料の確認をお願いします。
 資料1は、法曹養成検討会名簿(平成16年2月6日現在)でございます。川野辺委員が秋田地方検察庁検事正になられたという変更でございます。資料2が法曹養成検討会(第20回)議事概要でございます。資料3が、司法修習貸与金(仮称)という資料でございます。前回と同じ資料でございます。資料4が、法科大学院への裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員の派遣に関する法律施行令の条文であります。そのほか、文部科学省提出資料の資料1、資料2がございます。
 以上、御確認ください。

○田中座長 どうもありがとうございました。
 それでは、まず、司法修習生の給費制の問題とも関連するのですけれども、文部科学省から、平成16年度予算案における法科大学院関係の予算につきまして説明をお伺いすることにしたいと思いますので、よろしくお願いします。

○文部科学省小松主任大学改革官 文部科学省高等教育局の小松と申します。
お手元の資料1の「法科大学院への財政支援について【平成16年度予算(案)】」を御覧下さい。概算要求している最中にも説明をいたしましたが、そのときと3本柱の構造は変わっておりません。額については財務省の査定を経て、最終的にこのように落ちついたということで、説明をさせていただきます。
 1つが、機関の運営費助成としての「私学助成」ということで、法科大学院関係につきまして、新規に25億円を計上いたしております。大ざっぱに申しますと、私立の法科大学院の経常費補助として、学生さん1人当たりにしますと約50万円、すなわち50万円以上の授業料引下げ分がカバーできるという額でございます。ちなみに国立の法科大学院の授業料の標準は80万4000円というふうに定めております。このほか、国立大学の授業料の標準が一般的なものが52万円ということになっておりますので、国立法科大学院の授業料と国立大学の他の授業料の間には約1.5倍ほどの開きがございます。
 それから、もう一つの側面、個人補助でございますけれども、これにつきましては、学生個人に対する経済支援ということで、日本学生支援機構、従来の日本育英会でございますが、これを日本学生支援機構に改組して、その奨学金事業で、貸与人員が3500名、事業費総額が68億200万円といたしております。無利子と有利子があるわけですけれども、無利子について13.5億円、有利子については54.5億円ということでございます。特色といたしまして、最大の貸与月額を従来の13万円の上限から17万円と20万円に引き上げ、新設をしたということでございます。なお、3500人というのは、最終的な人数での入学定員が合計すると5590人になりますから、全体としてみると、約6割台ぐらいがそれを支給されることができるようになるというわけでございます。
 それから、3番目が、プロジェクト関係に対する支援ということでございまして、法科大学院等の形成支援経費ということで、これも新規ですが、15億円ほど計上いたしております。こちらの方は、それぞれの法科大学院で教育の内容・方法に関するまとまった優れたプログラムを用意していただくにあたり、これについて、形成期の立ち上がりにしっかりしたものを作りたいといったときに、国公私を問わず手を挙げていただきまして、そのプロジェクトに対して支援をすると、こういうことでございます。したがいまして、機関の経常的運営費と、個人への奨学金という個人助成と、組織的なプロジェクトに対するプロジェクト助成という3本柱で、合計いたしますと約108億円ということになるわけでございます。法科大学院について約108億円の新たな予算措置を講じて出発をするということでございます。
 参考までに、資料2の「平成16年度開設予定の法科大学院の設置認可等一覧」というのがございます。これも少し前に1回お配りいたしましたが、そのときは認可保留になっていた学校が2校ございましたので、66校だったわけですけれども、結果的にはその2校が認可されましたので、合計が国立大学20大学、公立大学2大学、私立大学が46大学です。具体的に申し上げまして、11番の大阪大学と、35番の専修大学で、それぞれ入学定員が100人と60人増えました。合計いたしまして68大学・5590人というのが出発時の規模ということになります。
 説明は以上でございます。

○田中座長 どうもありがとうございました。それでは、只今の説明につきまして、御質問がありましたらどうぞ。

○川端委員 1年目の予算として、これだけ獲得していただき、大変良かったと思うのですけれど、2年目以降はどのようになる見込みかというのがそれぞれの一番気になるところだと思われます。学生が来年は倍になるということですから、資料1の1と2が倍になっていく見通しというものはどういうものなのでしょうか。

○小松主任大学改革官 基本的には、私どもとしては、いわゆる学年進行的に増えていくことについて、でこぼこがあるような形では困ると思っておりますので、現行水準を維持するということになると思います。もちろん厳密に計算してまいりました場合に、それが常に単純に倍々になるかとか、その辺のところはそれぞれ厳密な計算をしなければいけませんが、今おっしゃった基本的な考え方としては、ここで定めた水準がきちんと継続してできるようにしてまいりたいと考えております。

○田中座長 ほかに何かございますでしょうか。2番目の学生個人に対する経済支援について、一応数字の上では有資格者といいますか、それの6割ぐらいになるという話ですが、今の奨学金一般の制度としては、大学院レベルでどれぐらいなのですか。

○小松主任大学改革官 大体4割ぐらいでございますので、そういう意味では、私ども、6割かどうかということよりも、大体我々が把握している範囲で申しますと、奨学金を希望する方にはすべて行き渡るという水準になったということでございます。無利子と有利子をそれぞれ積算しているわけですけれども、実際にどのくらい学生が借りるかということもございますので、それはきちんとカバーできるよう対応していこうと思います。来年度の予算も含めて、要は実績ベースによって伸び縮みはあろうかと思いますが、いずれにしても、こういう個人補助については、蓋を開けてみないと分からないところがございますので、一応今年に関して言えば、希望者すべてが借りることができるような形になるというように御理解いただければと思います。

○田中座長 ほかに何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 この法科大学院関係の予算につきましては、非常に厳しい財政状況の中で、関係者の御努力によりまして、初年度の予算としては、かなり満足のいく内容になったと考えております。先ほど川端委員の指摘もありましたように、この問題は、今後も非常に重要な問題でございますので、文部科学省を始めとしまして、関係機関の皆様方に引き続き御努力をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。文部科学省におかれましては、御説明ありがとうございました。

○小松主任大学改革官 私どもにおきましても、財務当局の御理解を得たことも含めまして、法務省、最高裁判所、その他関係省庁にはいろいろ大変お世話になりました。また、日弁連やここにお集まりの皆様方にもいろいろ御支援をいただきましたので、改めて御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

○田中座長 ありがとうございました。
 それでは、続きまして、司法修習生の給費制の見直しにつきまして、前回、検討会で御了承いただいた方向で、事務局で検討していただいているわけでございますけれども、まず法案の立案作業のスケジュールなどにつきまして、事務局から説明を受けることにしたいと思いますので、よろしくお願いします。

○片岡参事官 それでは、事務局から法案の立案スケジュールなどの関係について御説明申し上げます。司法修習生の給費制を、例えば貸与制へ移行するというためには、裁判所法の一部改正等が必要となるわけでありますが、そのための所要の法案につきましては、本日のこの検討会で基本的な方針につきまして、仮に結論が得られれば、これから立案作業を行って、この通常国会に提出することも可能という段階にあるわけであります。その関係もございまして、本日、最高裁判所、法務省から御意見をお伺いするということも予定されているわけでございますが、まず立案の関係につきまして、資料3の「司法修習貸与金(仮称)」という資料について御説明を申し上げたいと思います。この資料は、前回の検討会でお示ししたものと同じものでありますが、司法修習生の給費制を貸与制に移行するために必要な法律事項、すなわち法律で定めるべき事項はここに記載した事項に尽きているものと考えております。したがいまして、もう一度この資料をお示しするということでありますが、本日のこの検討会で、ここに記載しております事項について、基本的な方向性が示されて、御了解が得られましたならば、所要の法案を立案して、この通常国会に提出することも可能ではないかと考えております。
 例えばこの資料の1番目の「○」には、「司法修習生は、その修習期間中、国から一定額の貸付けを受けることができるものとする。」と記載しております。この一定額につきましては、抽象的には司法修習に支障が生じないようにするために必要な金額と考えられるわけでありますが、例えば、これを法律で20万円とか固定した金額を定めるということになりますと、その後、額を改定する際にも法律改正が必要になるというような関係になりますから、そのような固定した額を法律で定めるべきかどうかということも考えるべきであろうと思いますし、どういう方法が可能か、法制的な検討を加えたいと思っているところであります。
 同じく2番目の「○」には、貸与金の返還期間につきまして、「一定期間(例えば、10〜20年間)」などと記載しておりますが、この期間につきましても、必ず10年間とか固定した1つの年数を記載するかどうかということも検討すべきであろうと思われますし、むしろ「(繰上げ返済も可能)」と記載しておりますように、そのような制度設計にすることが望ましいと考えております。また、ここに記載しましたように、「無利息とする」ということは法律で規定すべきではないかと考えております。
 3番目の「○」の返還免除でありますが、1つ目の「・」に記載しましたように、「死亡又は精神若しくは身体の障害により返還することができなくなったときは、返還未済額の返還を免除することができるものとする。」という趣旨は法律で定める必要があるものと考えております。2つ目の「・」ですが、その他の返還免除をどのような制度設計とすべきかにつきましては、本日の検討会で結論が得られるということであれば、立案作業は容易になりますので、この通常国会への法案提出ということも考えられるわけであります。端的に言いますと、立案作業の点だけから言えば、この2つ目の「・」のような返還免除制度は一切不要であるということであれば、立案が容易になるということでございます。それはともかくとして、2番目の「・」のような、その他の返還免除制度をどうするかということについて、御意見を頂戴できればと思っております。
 以下、省略しますが、一番下の「○」の「その他(貸付け及び返還に関する手続的事項)」につきましては、最高裁判所の定めや政省令のレベルで定めることになり、必ずしも法律に規定する必要はないものと考えているところであります。
 これまでの検討会で、司法修習専念義務はどう考えるべきかというような御指摘がありました。この点につきましては、前回も申し上げましたとおり、現在の裁判所法にも司法修習専念義務を直接定めた規定はありませんし、これまでの検討会でも繰り返し御意見をいただいておりますとおり、授業料を支払って大学に通学している学生にも学業専念義務があるということでございます。したがいまして、司法修習生の給費制を貸与制に移行した場合でも、貸与制を前提とした司法修習専念義務を観念することができるのではないかと考えております。その具体的な修習専念義務の在り方につきましては、最高裁判所において、具体的な司法修習の内容とともに検討されるべきものと考えておりますが、もちろん、この検討会の委員の御意見につきましては、必要に応じて、最高裁判所にお伝えすることにしたいと考えております。なお、一部にはあくまでも現在の給費制を前提とした司法修習専念義務を維持すべきであるから、その内容が変わるのであれば、貸与制への移行に反対であるという意見もあるようでありますが、この検討会では貸与制への移行を前提として検討を行ってみようという御指摘をいただいておりますので、貸与制を前提とした修習専念義務はどうあるべきかということについて、前向きな御意見を頂戴したいと思っております。いずれにいたしましても、現行法と同様、司法修習専念義務について、法律に直接的な規定を置く必要は必ずしもないのではないかと考えておるところであります。
 以上、御説明申し上げましたが、別の観点から若干付け加えさせていただきます。この通常国会には多数の司法制度改革関連法案を提出することを予定しているところでありますが、それら提出予定法案には、裁判員制度、司法ネット等々、極めて重要な法案が少なからず含まれておりまして、国会の審議日程はかなり厳しいものになることが予想されております。そのような状況の中で、この司法修習生の給費制の見直しに関する法案をこの通常国会に提出したとしましても、日程的な面で非常に懸念があるところでございます。また、法科大学院修了者を対象とする新しい司法修習制度は、平成18年の秋から始まるわけでありますから、時間的なスケジュールだけを考えれば、今年秋の臨時国会あるいは来年の通常国会で法案が成立すれば間に合うわけであります。したがいまして、この通常国会に法案を提出せずに、更に時間をかけて検討していただくという選択肢もあるわけでございます。なお、その場合でも、司法制度改革推進本部の設置期限が本年の11月末までとなっておりますので、本年の夏頃にはこの検討会としての御意見をいただければと考えている次第であります。よろしくお願いいたします。
 以上です。

○田中座長 意見交換は、後ほど法曹三者の御意見を伺った上で行っていただきたいと思いますけれども、まず、只今の説明につきまして、質問がございましたら、この段階でお願いしたいと思います。何か質問はございますでしょうか。

○川端委員 法律事項は、この資料3の程度だというのは分かるのですけれども、具体的な案をいくつか作って、この法律の下で、こういう貸与制にするのだ、ああいう貸与制にするのだという形が見えないと、何か議論しにくいような気もするのですけど、その点はどういうような検討をなさっているのでしょうか。

○片岡参事官 恐らく何を議論の対象にするかの範囲の問題かと思います。例えば、貸与金の額は、いろいろなオプションがあり得ますが、それは法律上書かなくてもいいと考えられるわけです。法律に書くべきかどうかも含めまして、御意見を本日頂戴できればと思っています。それから、返還期間についても、いろいろなオプションがあり得ます。一番の問題は、返還免除はどういうものがあるかということです。免除が一切ないというのであれば、非常に立案作業は簡単ですが、免除の具体例についていろいろ御意見が出て、それらを考えるべきだということであれば、なかなか通常国会には間に合わないかなとも思います。そういう意味で、御指摘のように、もう少し具体的な中身を示すべきではないか、特に免除の2番目の「・」について、本日、必要か不要かの御意見を賜れば、おのずからスケジュール的な結論は出てくるのかなと思っている次第であります。

○川端委員 今の点ですけれども、先ほど貸与制に見合った専念義務というのがあり得るのではないかというお話がありましたよね。その趣旨が、私はよく分からなかったのですけれども、そこをもう少し説明いただけませんでしょうか。

○片岡参事官 貸与制の下での修習専念義務が観念できるのではないかということです。そして、それが観念できないから給費制を維持すべきだという御意見もあろうかということです。

○川端委員 その場合の修習専念義務というのは、今、最高裁が修習生心得などで修習生に指示している、ほかの職業はもちろん学業も兼ねてはいけない、要するに24時間修習生として修習に専念しなさいというレベルと同じなのですか、違うのですか。

○片岡参事官 ですから、そのような給費制を前提とした専念義務ということにこだわるべきものではないのではないかということでございます。

○川端委員 それは分かるのですけれど、その場合、貸与制を前提とした専念義務というのはどのようなものを観念すればいいのかということをお聞きしたいのです。

○片岡参事官 そこは最高裁で、これからの新しい修習、現にもう詰められておられると思いますので、その下でどういう修習義務を観念できるか、最終的には最高裁から御説明をいただくことになろうかと思いますが、もちろんこの検討会の御意見をいただいた上で、およそそういうことが観念できないので給費制を維持するしかないという意見もあり得るかと思いますので、ここであえて、こちらからどうすべきだということは説明しませんが、いずれ、その点は詰める必要があると思っています。

○川野辺委員 1つ関連なんですけれども、今、御説明の中に、給費制から貸与制に移行することを前提にというようなお話がありまして、この資料3に書いてあるような事項について、方向性が示されれば、法案提出に向けて動くようなお話もあったと思うのですけれども、貸与制に移行するかどうかということは、まだ皆さんの合意が得られていないと思うのです。貸与制も選択肢の1つとして考えていきましょうと、その場合に仮に貸与制になるとすれば、こういう問題点があるのではないかということを検討するということだったと思うのですけれども、その辺はいかがでしょうか。

○田中座長 この前は、貸与制に移行するということにして、その場合、その具体的な在り方について、事務局の方で法曹三者と話し合っていただくという話だったと思うので、選択肢の1つにすぎないということではなかったと思います。それよりはもう少し強く言っていたと思います。

○川端委員 私、この前、「とした場合」という文言だと思いますけど、それを強調しておいてくれというふうに最後にお願いしてあります。

○田中座長 検討は貸与制に移った場合という話ですが、ほかの選択肢というのはどういうものを考えていらっしゃるわけですか。

○川端委員 ですから貸与制に移行するとした場合に、こういう具体案がありますという検討は確かにお願いしたと思いますけれども、この検討会で貸与制に移るということを合意したわけではないということではありませんか。

○田中座長 いくつかの選択肢のうちの1つだとおっしゃるのですけれども、ほかにどういう選択肢があるのでしょうか。

○川端委員 移行しないという選択肢がもちろんあるわけですね。

○田中座長 それがあるわけですね。

○川端委員 ええ。

○田中座長 だから、その2つだけということであり、いくつかの進む方向があるというわけではないという話だったと思います。

○川端委員 貸与制の方はいろいろな案があると思うのです。ですから具体案の検討をお願いしたわけで、そういうのがあるのか私確信ありませんけど、「良い貸与制」もあれば、多分これは絶対あるだろうなと思う「悪い貸与制」もあると思います。その検討は確かにお願いしていますけれども、これから貸与制の、例えば返還免除をどうするかということだけが検討の対象だということにはなってなかったと思います。

○田中座長 だから、そういった意味であったら分かりますけれども、1つの選択肢といっても、ほかにいろいろな選択肢があるというのではなくて、結局選択肢は従来の給費制を残すか、何らかの貸与制の方向に移って具体的な案を検討するかというまとめだったと思うのです。いくつかの選択肢があるという理解ではないと思います。今のままでやるのか、それとも貸与制へ移行するかということであって、ほかに、貸与制も何もやめてしまえという意見はなかったと思います。

○片岡参事官 先ほどの説明に関することですが、本日ここでそういう方向につきまして結論が得られれば法案提出が間に合うということでありまして、それ以上の意味はございません。

○田中座長 中身の話になると、これは意見交換になってくると思うので、一応質疑はこれくらいにして、具体的な中身に入ることにしたいと思います。前回の検討会では、法務省からは、返還免除についての考え方を次回までに準備したいということを、黒川課長からお伺いしておりますし、それから、最高裁は、次回には必要な事項について御説明申し上げたいというふうにおっしゃっています。そこで、先ほどの法曹関係者のお二方の委員の発言も踏まえまして、返還免除の在り方も含め、貸与制に関する具体的な制度設計について、全体的に法務省と最高裁の御意見を伺った上で、具体的な意見交換に入りたいと思います。それでは、まず法務省からお願いできますでしょうか。

○法務省大谷司法法制課長 法務省司法法制部司法法制課長の大谷でございます。どうぞよろしくお願いいたします。私は、今回から出席させて頂きますけれども、本日意見を申し上げる機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。時間的な都合で5分程度というような御指示をいただいておりますので、できるだけ手短かにお話ししたいと思います。
 まず御理解いただきたいのは、現段階におきまして、法務省といたしまして、償還免除の前提となる貸与制への移行という問題につきまして、直ちに賛成するという意思決定ができているわけではございません。もちろん先ほど議論にも出ましたように、貸与制への移行というものは、給費制の在り方を検討するに際して1つの有力な選択肢であって、これをまた真剣に検討すべきものだということは認識しております。しかしながら、先ほども若干出ましたけれども、給費制の在り方に関する議論は、修習制度の在り方にかかわるものでありますから、これと関連づけて検討することが不可欠だと考えております。そして、前回、私どもの方から、貸与制に移行するのであれば、どのような立法事実に対応するための制度改革として位置付けているのか、その哲学との関係で償還免除を組み立てるべきだと、こういうようなことを申し上げました。これに若干補足しますと、司法修習制度の意義につきましては、これは何度も出ておりますが、司法試験に合格したが、しかし直ちに実務に就かせることは妥当ではないという政策判断の下に、より質の高い法曹を生み出すために修習義務を課したものであると、このように考えております。このような要請に応えるために、まさに修習生に対し、いわゆる修習専念義務を課しまして、実際問題として、生活費を自ら取得する道を事実上閉ざしております。そして場合によっては、修習生の意思にかかわらず全く生活基盤のない土地での生活を余儀なくさせるなど、多大の経済的な負担を強いております。このように修習生は司法修習のいわば制度的担保として給費を支給される反面、今、申し上げましたように、労働の権利、これを事実上、全面的に制限されました上、修習に伴う有形、無形の負担を余儀なくされているわけでございます。そこで給費制の在り方を検討するに当たっては、今後ともこのような厳しい制約を維持するのかどうかなど、そういった点を始めとして、司法修習の在り方について検討する必要があるのではないかと思っております。その上で、従前の考え方を維持したまま貸与制に移行するのなら、合理的な理由づけが必要でしょうし、そうでなくて、先ほど事務局からありましたように、そういう制約、修習専念義務の在り方がこういうように変わるのだと、そういうことになれば、また、それが理由になるでしょう。そして、そうなった場合に、償還免除を始めとする全体の制度設計の中で、そのような制約が合理的であるといえるかどうか、そういった配慮がまた必要になるかと思います。
 そこで、前回、直接お約束しました償還免除自体の問題ですが、償還免除を行う理由は一体何なのかという考え方によって、その制度設計が恐らく異なってくるのだと思います。いろいろな貸与制度におきまして、償還免除制度がありますが、その趣旨を見ますと、先ほどの事務局からのペーパーにありましたように、1つは債務者の死亡等、そういったことで事実上返済ができないと、そういった場合の救済、こういうことがあります。もう一つは、いろいろ諸制度を見ますと、特定の職務を行う人員を確保する必要性というものがございます。司法修習につきましても、その両者の観点から設計することは可能であろうと思いますが、その特定の職務を行う人員を確保するためというような政策判断から制度設計するとすれば、それは恐らく現在の我が国において、どのような法律家を増加させていく必要があるのかという立法政策の問題にかかわるのではないかと思います。例えば司法ネットの常勤弁護士を増やすべきだという考え方もあり得るでしょう。それから、法律家の地域的な偏在の解消のために、地方で一生懸命仕事をしていただく法律家、こういった者を増やすべきだという考え方もあると思われます。そして、先ほど言った、司法ネットの常勤弁護士、こういったものを突き詰めていきますと、要するに公益に資する法律家の確保ということもまた重要な視点かと思われます。そのような観点からすれば、任官者をここに含めるという考え方もあり得ると思います。
 また、別の切り口から考えてみますと、多様な方面で活躍する法曹をどのように確保していくのかという観点からの検討も重要かと思われます。例えば、通常、企業で法律にかかわる業務を行う、あるいは一般の国家公務員として働く、そういう人は大学を卒業して、すぐに就職して収入を得ることが可能でございます。
 これに対して、今般、ここで給費制を廃止しまして、そして新しいロースクールの下で、新しい法曹養成制度を運用していくという場合は、法曹になろうとする者はまず大学に行き、そこを卒業し、法科大学院を受験して、自費で法科大学院に2年ないし3年通う。そして司法試験を受験する。運良く一回で合格したとしても、更に1年間自費でこの司法修習を行う、こういう制度になります。非常に大変な経済的負担を強いる法曹養成制度になっておりますが、そういうときに、あまり経済的な利益が期待できないという方面の業務、例えばNGOやNPOの関係などいろいろありますけれども、そういったところで活躍しようとする法曹、そういうもののインセンティブをどういうふうに確保するのかというような視点からも検討が必要かと思われます。また、償還免除の問題は、その内容につきまして、トータルな仕組みの中で議論する必要があると思います。その場合、この償還免除の前提となります貸与制の検討に当たりましては、債権管理の問題、あるいは不良債権の問題、こういったことも重要かと思います。
 返済期間を非常に長期にすると、1回あたりの返済額は確かに減るのですけれども、そういたしますと、管理しなければならない債務者の数というものは増加することになります。例えば20年間の返済期限で2500人に貸し付けると、ピークで5万人ということになります。それから5万人をずっと管理していくことになると思います。そして、また不払いが起こった場合には、その都度督促を行い、最終的には1件1件裁判を起こして、それを回収していかなければいけない、こういう問題もございます。また、そもそもそういう不払いをするような者の法曹資格をどうするのかという問題も派生的には出てくるでしょう。そういったように貸与制とした場合でも、無利息とした場合の利息コストの問題、管理・回収のコストの問題などが発生するわけでございます。そして、償還免除ということをそこに加えますと、当然そのコストがまた加わります。そうしたトータルな観点で見た場合に、果たして現行の給費制と比較した場合に、一体どれだけの節約になるのであろうかということをいろいろと検討してみる必要があるのではないかと思っております。そのほか貸与金額、貸与要件についてどうしていくのか、こういった検討も併せて必要であろうかと思います。
 以上、いろいろ述べさせていただきましたけれども、委員の皆様にぜひお願いしたいのは、給費制から貸与制への移行の問題を考えるに当たりましては、単に財政事情という理由だけで結論を出されるのではなくて、司法修習制度の在り方から、今申し上げました貸与金の回収に至るまで、いろいろな角度から検討していただきたいということでございます。確かに国家の財政事情が非常に厳しいことは我々も十分認識しております。国民の負担という観点、あるいは予算の適正な配分、そういったものは極めて重要なファクターとして考慮する必要があると思います。しかしながら、その中で質の高い法曹を養成するための制度として、どのような制度が必要なのか。その中で、国民の負担を可能な限り軽減するためにはどのような制度があり得るのかといった点を是非とも大所高所から御議論いただきたいというのが法務省からの希望でございます。

○田中座長 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、最高裁事務総局からもお願いできますでしょうか。

○最高裁判所小池審議官 審議官の小池でございます。私からは、給費制の大きい意味での見直しというところを中心に御説明申し上げたいと思います。
 基本的な考え方としましては、御案内のように、給費制は、戦後新しい国を築いていく上で、優れた法曹を養成することが非常に重要であるという認識の下に、法曹三者を統一的に養成する司法修習制度の導入と時を同じくして採用されたわけでございます。大学における教育課程に加えて、2年間の専門教育を課すに当たりまして、修習生が安心して修習に専念できるように、先進国の中でも手厚いと言われる給費制が採用されたことにより、非常に幅広い層から多くの裁判官、検察官、弁護士を養成する上で大きな意義を持っていたことはいうまでもございません。裁判所としては、司法修習を運営するという立場からも、また、優れた法曹あるいは裁判官を確保するという立場からも、この制度があることは極めて有益であったと考えているわけでございます。
 他方、御案内のように、今回の司法制度改革におきまして、司法機能の充実・強化が求められる中で、法曹養成について、養成人員の大幅な増加が求められるとともに、その養成の方向についても、法科大学院の設置によりまして、修習前の教育に要する期間が長期化し、その一方で司法修習の期間を1年に短縮することになりました。こうした法曹養成制度の変化に照らしますと、法曹養成のための国の財政負担については、その養成過程全体を含めて国民の理解を得ることができる制度設計がなされることが必要であるということはいうまでもないわけでございます。審議会意見書をひもといてみますと、司法修習について、特に「給費制については、その在り方を検討すべきである」とされているのは、トータルの法曹養成のプロセス全体を見てこの問題を考えていくべきであるという趣旨に解されるわけでございます。裁判所だけでなくて、法曹三者は、このような財政支援によって、広い範囲、いろいろな層から人材を得られることを強く望んでいることは申し上げるまでもないことでございます。審議会では、「将来的には貸与制への切替えや廃止をすべきではないかとの指摘もある」とされているわけでございますが、この検討会におきますこれまでの議論に照らしましても、現在の給費制を見直す必要があり、その方法として貸与制を考えるべきであるという認識があるように思われるわけでございます。私どもとしては、少なくとも、貸与制を導入するという方向が採られた場合に、法曹を志す者が財政的な負担、お金の問題でその道を断念せざるを得ないという事態の生ずることのないような制度が必要であると強く希望するわけでございます。
 もう少し敷衍させていただきますと、先ほど申し上げましたように、我が国の給費制は、ほかの国と比べても手厚いものであったということがいえるわけでございますが、その背景には、法曹養成が非常に重要であるという認識、理解があるとともに、養成人員自体が200人台から始まり長く500人台と限られていたということも1つの理由だったように思います。
 ところが新しい法曹養成制度では、学部を終えた後、2年ないし3年というかなり長期にわたりまして、法科大学院での教育を受けることが必要とされまして、これに要する財政負担とともに、この間の法科大学院の学生に対する経済支援を充実させることが何よりも重要な課題であると言わなければならないわけであります。法曹をなるべく広い層から、お金のある層だけに偏らずに確保するという観点からすると、まず大学あるいは大学院課程への経済支援が十分に行われることが非常に大切だと考えているわけでございます。聞くところによりますと、この法科大学院課程の学生数は、現状で1学年五千数百という数に達しているわけでございますが、先ほどお話がありましたように、幸い奨学金等の制度が導入されるということで、今後もこういった制度が有効に機能していってほしいということを強く希望し、また願うものでございます。
 司法修習生につきましては、今後その数が約3000人になるということを視野に入れて検討されているわけでございますし、先ほど申し上げましたように、修習の期間は1年と短縮されました。期間が短縮されたことによって、個々の人にとっては、経済的負担が軽減されますし、また司法試験という最大の関門をクリアーして、1年後には実務法律家として活動することがほぼ確実であるというような、ゴールが見えている面もあります。他方、先ほど言いましたように、必要となる教育期間が長期化することによって、実際に仕事に就く年齢は一番早くても25〜26歳、多くは20代の後半になると予想されるわけでございまして、社会の一般の例に照らすと、普通ならば経済的な自立が当然求められる世代でございます。また、教育課程が非常に長くなることによって、この課程をこなしていくために、先ほども御指摘がありましたような経済負担を払うわけで、経済的には余裕のない状態になっている人も少なからずいることが想定されるわけでございます。その一方で、臨床教育を中心とした司法修習はこれまで1年半だったものを1年に集約して行うものであり、その臨床過程に専念することがより一層強く求められるという面もございます。
 このようなことを考えますと、現在の給費制度を見直すという御意見が各方面で聞かれ、この検討会でも御指摘があるところでございますが、修習に専念するためには、やはり、給費制が採ってきたものと同じ趣旨に立つ経済支援を講ずる必要性と政策合理性があると考えるわけでございます。その経済支援の方法でございますが、2つの観点があります。1つは、まず司法修習という高度の実務専門教育を無償で提供するということでございます。一部には授業料を取ったらいいという御指摘もあるわけでございますが、やはり授業料と基本教材は無償、そしてまた修習地を移動する経費なども手当てするということが不可欠であります。2つ目は、修習期間中の生活保障ということでございますが、これは先ほど事務局からの説明にもありましたけれども、やはり修習生が確実に修習に専念するために必要な水準の額を貸与することが必要ですし、修習過程が必須のプロセスと規定されていることから、無利息として、返還を始める時期、方法についても一定の配慮をするということが必要不可欠であると考えているわけでございます。
 最高裁判所の基本的な考え方は以上のとおりでございまして、政策的に貸与制に切り替える合理性というのは考え方としてはあり得ると考えているところでございます。ただ、この問題は、私どもとしては、これまで恩恵をこうむってきた立場でございますので、やはり国民的見地から検討するという意味で、検討会において是非深い御議論をいただければと考える次第でございます。
 以上でございます。

○田中座長 どうもありがとうございました。
 日弁連の方から、何か御意見ございますでしょうか。今までどおりでよろしいでしょうか。

○日弁連田中副会長 今、法務省、最高裁からも御説明がありましたので、重複しない範囲で簡潔に申し上げたいと思います。私どもの基本的な考え方は、従来からある程度御説明させていただいておりますので、御理解いただいていることと思います。要するに質の高い法曹を多量に養成することが要請されているわけでございまして、そのためには、国家財政的にも相当の決意を持った御支援をお願いせざるを得ないと思っているわけでございます。この点は、何度も申し上げて恐縮ですが、医師の養成制度にも現れているところでございます。やはり司法制度というものは、もちろん優秀な裁判官、検察官を育て、裁判官、検察官がきちんと機能していただかないといけない、これは当然のことでございますが、弁護士も当然その一翼を担っているわけでございまして、弁護士も優秀でなければ、やはり司法制度というものはうまく機能しないわけで、そういったことを考えて、特に最終的に就く職業によって区別するのではなくて、全体としての法曹の在り方に着目していただきたいと考えております。その点につきましては、教員について返還免除を廃止するような方向にあるということも参考になるものと思うわけでございます。特に現在は法曹養成制度が非常に流動的でございまして、法科大学院の数、司法試験の在り方、あるいは合格者数の変動、こういったものも非常に流動的でございます。修習の給費制の廃止の問題は、修習全体の在り方を検討して、その中で総合的に合理的な制度が決められるべきと考えているところでございます。
 以上でございます。

○田中座長 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの法務省、最高裁事務総局、それから日弁連の説明につきまして御質問がございましたらどうぞ。

○井上委員 よろしいですか。

○田中座長 どうぞ。

○井上委員 法務省も日弁連も言われたのですけれども、修習制度の在り方と密接な関連を有しているということについては、一般的には分かるのですが、具体的に何をおっしゃっているのか、ちょっとよく分からないところがあります。修習によって質の高い法曹を確保するとおっしゃるのですが、これは別に新しい法曹養成制度になっても、従来と趣旨が変わるわけではないと思うのです。1年に短縮したとしても、修習を義務としているわけですから、どうなったら、どういうふうに変わるということなのか、その辺がちょっとよく分からなかったものですから、もう少し御説明いただきたい。それと、日弁連が「今は制度が流動的なので、待つべきだ」という趣旨の発言をされたのですが、今度の法科大学院とか、新たな司法試験制度というのも、いつまで続くか分からない、それがどうなるかを待ってでないと議論できないということなのか、多分そういう趣旨ではないと思うのですが、ちょっとよく分からなかったものですから、その点も補充的に説明をしていただければと思います。

○田中座長 法曹三者それぞれにということですか。

○井上委員 最初のところは主に法務省で、2番目は日弁連の方のおっしゃったことについてです。

○田中座長 ではそれぞれ御説明願います。

○大谷司法法制課長 今回の給費制の在り方を見直すことについては、修習制度の在り方にかかわることであると申し上げました。端的に言えば、先ほど出ました修習専念義務にかかわることです。要するに、現状の司法修習の実態がどうなのかということです。それは先ほども出ましたように、その年代の人は通常自分で働いて、自分で生活費を稼げる、それが通常の形態だと思いますけれども、法曹資格を取得するためには義務的に司法修習を受けなければならず、そのプロセスを経ないと法曹資格を得られない、そういう仕組みになっています。それを自由に、例えば自分で生活費を稼ぎながら修習ができるという、そういう修習の在り方であれば、あえて給与を支給する必要もなければ、ましてや貸与する必要もないということになるのでしょうけれども、ところが、実際は、事実上労働する権利を奪い、なおかつさっきも申しましたように、自分の意思にかかわりなく、これまで生活基盤のない土地へ行かされ、ともかく自分で住まいを見つけて、そこで生活しろというように、有形、無形の経済的な負担を強いるような修習形態をとっているわけです。それはやはり今の司法修習が、そういう形によって運営することがより質の高い法曹を育成するために正しいんだという前提で多分そうなっているのだと思います。そうすると、それだけの負担を強いる以上、当然生活費の面倒をみてやろうというのが、恐らく今の給費制の考え方だと思います。ですから、先ほど、冒頭に事務局からもお話がありましたように、そういった修習の在り方がだんだん変わって修習専念義務がもっと緩やかになってくると、また全然違った考え方になってくるのではないかと、そういう御趣旨で申し上げた次第でございます。

○田中座長 日弁連の方、どうぞ。

○田中副会長 先ほど御質問のありました点については、これは、誤解があったかもしれませんが、審議会意見書にありますように、新たな法曹養成制度全体の中での司法修習の位置付けを考慮しつつ、その在り方を検討すべきであるということを、私は私なりの言葉に替えて申し上げたわけでございまして、要するに司法修習の位置付けが、今後の法科大学院の在り方、あるいは司法試験の在り方、合格者数の変動等によっていろいろ変動し得る可能性もあるので、その辺を見極める必要があるのではないかという趣旨で申し上げたところです。

○田中座長 意見交換に入ってもよろしいでしょうか。

○川端委員 最高裁の方にお伺いしたいのですが、修習期間が1年に短縮された関係で、むしろ専念義務を高めて、凝縮した修習が必要になってくるのではないかとも思えるのですけれども、先ほどから貸与制を前提とした専念義務というのがあり得るのだという話も出ているので、最高裁としてはその辺はどうお考えになっているのか、ちょっとお聞かせ願いたいのです。

○小池審議官 この専念義務の問題については、今後じっくり考えなければいけないと思いますけれども、2点だけ御指摘申し上げたいと思います。1つは修習専念義務として非常に包括的な形で言われているのですけれども、その中身が何なのか、つまり、きちんと講義に出ること、あるいは兼職をしないことといったような中身を一つ一つ見て、それがどのようになるのかを考えていく必要があると考えます。修習の実効性を上げるためには、どういう義務がどこまで必要かということを考える必要があると思います。そういう意味では、給費の場合と貸与の場合、あるいは今回修習が変わってきたところで、若干の変動はあるかもしれません。それから、もう一点は、概念をどのように捉えるかということと修習をきちんとやらなければいけないということが、どこから生まれてくるかということだと思います。法曹というものは、人の権利義務を取り扱う、一種お医者さんのような面もあるわけでございますが、法曹になるためのプロセスとして、臨床課程というものはぜひ踏んでもらわなければ困りますし、各国のシステムを見ても、そういうプロセスが用意されています。淵源はそういうところにあるのであって、あとは、臨床課程をきちんとするために、どういう貸与にするのか、給費なのか、それを支えるものがどうなるのかという関係にあるので、給費からストレートに専念義務が出てくるのではなくて、もっと違うところに淵源があるのではないかということを御指摘申し上げたいと思います。いわゆる専念義務の中身については、いろいろな観点から考えなければいけませんので、もう少し検討した上で、御報告したいと思っております。

○田中座長 専念義務の話というのは、具体的な制度設計の議論としていろいろ御意見をお伺いしたいと思うのですけれども、ほかに質問はよろしいでしょうか。
 先ほど事務局からも説明がございましたように、この通常国会には多数の司法制度改革関連法案が提出される予定でありまして、国会審議の日程が非常に厳しいということであります。また、法科大学院修了者を対象とする新しい司法修習は、平成18年度から始まるわけですから、スケジュールだけを考えてみますと、司法修習生の給費制の見直しにつきましては、もう少し時間をかけて検討するということも考えられるわけです。しかし、この司法制度改革推進本部の設置期限自体が今年の11月末までとされておりますので、この通常国会に、先ほど事務局から説明がありましたように、条件が整って、法案を提出できれば、それに越したことはないわけですけれども、仮にそれが難しいといたしましても、この本部の設置期間内に基本的な方針は決定しておかなければならないのではないかと考えております。ですから、これまで度々申し上げてきましたし、議論もしたところでございますけれども、司法修習生の給費制の見直しについて、この検討会としての基本的な方向性を示さないまま推進本部の設置期限切れを迎えることは、ちょっと具合が悪いと考えておりますので、そういうことを前提にした上で御検討、御意見の交換をお願いいたします。先ほどの専念義務の中身も含めて、御意見の交換をよろしくお願いします。

○川野辺委員 今、平成18年に新しい司法修習制度が始まるからというようなお話があったと思うのですけれども、平成18年に法科大学院の卒業生が出るということは確かなのですが、その時点で給費制にするか、貸与制にするかということについても、新しい制度でスタートしなければいけないということなのでしょうか。分配する人数も分かりませんし。

○田中座長 もっとゆっくりやったらいいという趣旨ですか。

○川野辺委員 だから、18年を目途にやらなければいけないというのはちょっとどうなのかなと思います。ただ、司法制度改革推進本部が解散するから、それまでに目途をつけたいということは分かるのですけれども、18年度を目途に貸与制に移行させなければいけないというようなことなのでしょうか。

○田中座長 新しい制度が始まるのはその時点からだというので、本部設置期間内に方向を出したいということです。それをいつから切り替えるかというのは、これから御検討いただきたいと思います。ただ、そのときまでオープンにしておけというのは具合が悪いということでございます。時期もいろいろと想定されるところです。

○加藤委員 法曹三者の意見を聞きますと、弁護士会は反対、法務省は慎重、裁判所は柔軟という分布ですけれども、私は別に利益代表のつもりはないので、自由な議論をさせてもらいます。川端委員が気にしておられる修習専念義務の根拠が給費制とどの程度かかわっているかというところは、掘り下げた議論をしておく必要があると思います。そこで川端委員にお聞きしたいのは、給費制があるから修習専念義務が導かれるという御理解なのかどうかということです。もしそういう御理解であるなら、それはいかがなものか、という意見を続けて述べたいと思います。

○川端委員 私は、逆だと思うのです。修習、特に新しい修習というのは、我々の頃は2年でしたけれど、1年半に短縮したものを、さらに1年にして、しかも社会生活上の医師という、今までの法曹よりももっといろいろな意味で広い分野の教養を持っていて、しかも人間性も豊かな人たちが、日本で法の支配を徹底させるために大量に養成されなければいけないということのうちの臨床部分を1年間でやろうということで、それぞれの実務修習期間も2カ月という極めて短い時間に短縮されますから、それこそ本当に、これからは24時間専念しなければ期待に応えられるような修習にならないと思うのです。それを保障しようとしたら、給費制が一番いいのはやっぱり明らかではないかと思うのです。

○井上委員 それでは今までの専念義務は、どこから出てきていたのですか。これまで、専念義務と給費制の関係はどうなっていたのでしょう。川端委員のお考えでいけば、新たな制度になるので給費制が必要あるいは合理的だという意見になってしまうように思われますが。

○川端委員 ですから、今までよりも、その意味では、専念義務が高められるわけですから、むしろ給費制が一番合理的であり、その度合いが増したという状況で、何で貸与制に切り替える合理性があるのか、というのが私の意見です。

○井上委員 出発点についてはお答えになっていないのではないですか。

○川端委員 ですから、出発点について言えば、それは修習生に対しては、あなた方は公務員に類似した身分を与えられて、給料も与えられるのだから、修習地は最高裁の命じるところへ行き、そこで24時間修習に専念しなさい、ということで維持されてきた制度であるということです。それが、その結果として、効用としては、いわば修習生の間は給料をもらえるわけですから、生活の負担を心配しなくていいということで、法曹になるための経済的コストを下げたし、その意味で広い人材も確保することができた。また、修習生に対しては、「あなた方は国民の税金で生活しているのだから、まじめに修習しなさい」ということが言えたという制度だと思うのです。それは、修習生に対して、いわば強い修習義務を課すために使えた、その根拠となり得た制度だということができると思うのです。それをなくしてしまって、今よりもっと強い修習を求めることはできないでしょう、というのが私の言っていることです。

○加藤委員 整理すると、給費制が、修習専念義務のいわば実質的な根拠であるということでしょうか。

○川端委員 実質的な根拠があったということです。

○加藤委員 そういうことですね。

○川端委員 ええ。

○加藤委員 これからも給費制が実質的な根拠であり続ける必要があるということですか。

○川端委員 これからは、よりその必要は高まるのではないでしょうかということです。専念義務を高めなくてもいいというのであれば、代わりのいい制度として、本当にまかなえるものがあるのですかということです。

○加藤委員 私の意見は、修習専念義務の根拠について、川端委員とは考え方を異にしています。最近、私はリーガル・プロフェッション論や法曹倫理のことを必要に迫られて勉強しているのですが、いろいろ文献を読むと、プロフェッションは、高度な専門的知識と技能を備えて、高い職業倫理を持つということが属性であり、これは必要不可欠なものであると言われております。
 そうすると、法曹はプロフェッションの1つの典型ですから、高度な専門知識、技能を身につけなければいけない。国民としては、そういう法曹を養成してもらわなければ困るという切実な期待、要請があるわけです。そして、そういう法曹養成プロセスを法科大学院と修習システムで担っていくということです。司法修習システムは、その最後のところにありますから、まさにそういう高い法律知識、技能を備えた法曹を養成することを目的としていて、かつ、そこへ入る人はそのようになることを志望して来る人たちです。そうであると、論理必然的に司法修習の期間を有効に過ごさなければいけない。持てる時間をすべて高い知識と技能の修得に用いるべきであるという義務が原理的に発生するのではないかと思われるわけです。それでは、それが安んじて実現できるためには、何が必要なのかといえば、それはとりもなおさず経済的な支援です。それを今は給費制という形でやっているわけです。このように、給費制は、修習専念義務をうまく作動させるための手段的な措置であるという位置付けが正確ではないかと思います。そうであるとすれば、給費制でなくても、ほかに代替的で等価値の措置が講じられれば、それはそれで1つの制度としては成り立ちます。それが貸与制であっても、給費制と同じように安んじて修習をしていけるというものになれば、1つの制度設計としてはあり得るものではないかと考えるのですが、いかがでしょうか。

○川端委員 本当に等価値のものであればそうでしょうけど、でも経済的に言えば、貸与制の場合は返さなければいけないわけですから、全員免除するというならともかく、それが完全に等価値のものではあり得ないと思うのです。ですから、先ほどから言われているように、貸与制を前提とした専念義務、修習の在り方を考えなければならないと言われているのは、給費制でいわば100%修習専念を要求できたものが、貸与制では返済義務を負わせることとの関係でそうはならないだろうということを暗に言っているわけであって、完全に等価値である貸与制というのは、全員に返済免除する貸与制しかないのではないでしょうか。

○井上委員 そこは、論理が飛んでいると思います。つまり、貸与制を前提にした場合、専念義務も当然今までのものとは異なってくるということではないと思うのです。今と同じような専念義務を課せるのかどうかも含めて、検討しましょうということであろうと思うのです。それと、返さなければならないから等価値でないと言われましたが、返済義務を負うという意味では確かに等価値ではないのですけれども、修習に専念できるかできないかという点で違ってくるのでしょうか。加藤委員もおっしゃっていたように、一番重要な点は、修習期間中は修習に専念してもらいたいということであり、そこに影響が出てくるようだったら等価値じゃないということになるだろうと思うのですけれど、そこは変わらないのではないですか。返済義務を負うのは、貸与ですから当然なのですけれども、返済しないといけないのは将来のことであって修習期間中ではないのですから、修習専念義務にどういう影響があるのかですね。返さなければならないと怯えながら生活しないといけなくなる、ということなのでしょうか。そして、返さないといけないから、どこかにこっそりアルバイトに行くのじゃないかと、そういうことですか。

○川端委員 貸与制にした場合、例えば研修所、あるいは実務修習先に行っている時間にほかのことはできないという義務は課せても、それ以外の時にまで、一切就労できないということが本当に言えるのかどうか疑問です。それと貸与なんか受けたくはないという人もいます。月々20万円もらって、将来返済するよりも、現在、例えば土曜、日曜に、今持っている資格、例えばお医者さんが今後修習生になるというのは現実の問題として十分あるわけですから、アルバイトに行けば月40万、50万楽に稼げるので、それで妻子を養いますという修習生も出てくるわけでしょう。そうすると、じゃあ、そういうことでいいのか。土曜、日曜はフリーですよということでいいのだという前提であれば、確かに貸与制にしたって、そこで必要十分な専念義務は課し得るのではないかという議論は出てくるとは思います。でも、今と同じというのでは、一切修習以外の活動はだめだということになるのです。

○井上委員 前提として、今と同じような週7日、1日24時間完全拘束というのは、必要にして欠くべからざるものだというふうに、それを不動の前提にされているようですけれども、そこはそうなのでしょうか。本当にそんなことを強いることができるのでしょうか。もし、それくらい専念しないと、高い質の、国民の前に出して恥ずかしくない程度の法曹としての素養は身につけられないということであれば、それが修習の目的なのですから、24時間専念義務を課すということだって合理的だと思うのです。ひるがえっていえば休憩する時間まで含めてまるまる拘束しているのは、本当に正当性があるか、という話になると思います。

○川端委員 それは貸与制にした場合には、土曜、日曜はアルバイトなどをやっていいということを前提にしましょうということでしょうか。

○井上委員 前提として、加藤委員がおっしゃったように、どこまでの専念義務が本当に必要かつ相当なのかという議論があってしかるべきだと思います。それを24時間全部拘束しているのが当然だという前提で議論しているから、議論が空回りするのだと思います。

○川端委員 私は、今年ある法科大学院の夜間の社会人コースの面接をやりまして、新しい制度で、今まで法曹に全然なってこなかったような医師とか公認会計士とか、理系の博士号や修士号を持っている人、特許庁の職員、審判官、それから大企業の法務担当者などがたくさんいらっしゃって、みんなすばらしい人でした。年齢が30歳、40歳を越えているという人が非常に多くて、3年法科大学院の教育課程を経させて、更に司法試験を受け、ここで半年かかって、更に修習を1年課すということの最後の1年間の重みは、今までの20代の人たちに1年課すという重みよりははるかに重いと思います。それはよほど合理性のある制度でなければ、恐らく制度として持たなくなるだろうという感じを持ったのです。ある意味で1年間、本当の意味で、臨床の修習を凝縮した形で経てもらう。しかも、その間の経済的負担はないということならば、国家として、そういう修習を経ていないとちゃんとした日本の法曹とはいえないのだという制度を続けることはできるでしょう。そこを変えたときにそれがどうなるのかという問題をよく考えないと、給与分貸すのだからいいじゃないのという簡単な議論はできないなと思っているのです。ですから、先ほども言いましたように、お医者さん、あるいは公認会計士、国家公務員で特許庁で審判官の仕事をしているというような人が、これから法科大学院の学生になり、司法修習生にもなってくるのだということも踏まえて、この1年間を本当に意味のあるものにし、かつ、それが不要な負担と思われないような制度を考えなければいけない。私は、現在の給費制維持は、その意味では問題ないと思いますけれども、貸与制に変える場合には、先ほど言ったように、いい貸与制があるかもしれないし、はっきり言って悪い貸与制もあるでしょうから、安易に、大して変わらない、負担は後で返せばいいのだから、とりあえず生活できればよい、というような簡単な考え方で決めていいのかということを申し上げているのです。

○加藤委員 その議論は分かりやすいと思います。では、「いい貸与制」というものはどういうものですか。それを披露していただいたら、議論が更に深まるのではないでしょうか。

○川端委員 ですから、私はいい貸与制があるということは確信できないので、いい貸与制はこういうものだということを提示される方が示してほしいと言っているのです。

○井上委員 法科大学院にいろいろな方が来られていて、大変だという面があることはよく承知しています。ただ、負担が増えるというのは、法科大学院の時代も含めての全体的な負担が増えるということであって、その負担をどういうふうに支えてあげようかということだと思うのです。後ろの修習のところだけ、給与じゃないといけないという理由がどうもまだよく分からないのです。
 修習は、確かに、法務省の大谷課長も言われたように、義務付けではあるのですが、そうですけれども、不必要なことを押しつけているというのではなく、国民の前にプロの法律家として出してサービスをしてもらうのにふさわしい資格を身につけるために必要な制度であるわけです。それは、そういうものを身につけなければ、このような特別の職業に就けないということであって、その当人にとって利益でもあるわけです。さっき最高裁の小池審議官も言われたことですけれども、そういうことを教えてもらっているのだから本来対価を払わなければならないかもしれない。それを免除された上に、更に生活費まで全部丸抱えということで、筋が通るのかどうかということが一つ、もう一つは、確かにその間は働けない、24時間かどうかは別として、かなり密度の濃い専念義務を課すわけで、それにより生活ができなくなるのをどうするのかという問題はあるだろう。そこをどうやって担保するかということは、みんな前提にして議論していることなのですけれども、生活費というのは、割り切って言えば、どこにいようと、どういう立場にいようとかかるものであり、それは本来、自分が払うべきものです。しかし、生活の糧というか、手段が事実上奪われている、あるいは非常に困難だという状況に置かれるので、それをどうやって担保しましょうかという話だと思うのです。従って、そこから当然に給与ということには論理的にはならないはずで、それに代わるような担保の仕方があればいいわけです。その期間は安心して修習に専念できるように生活を支えてあげます、しかし、それにかかった費用は、どこにいようと食べていかないといけないわけですから、それは後で払ってもらいますよという考え方だってあり得ると思うのです。そのときに資産があれば、借りなくてもいいですよという人がいても、むろんいい。また、修習地が、どこかに強制的に決められて、そこで生活していかないといけないということですが、それは経済的な問題なのでしょうか。どこにいても基本的な生活費はかかるわけで、もちろん大都市かそうでないかの差はあるとしても、基本的には変わらないことではないのかという感じがするのです。ですから、専念義務から、いきなり給与ということにはならないと私は思います。

○川端委員 私は必要条件の話をしているのではなくて、給費だったら十分条件でしょうということを言っているだけなんです。ですから、そこから変えるという側に、これで十分であるという具体的な制度をまず提示していただきたいということです。それから、医師の養成課程で犯した失敗を繰り返すようなことをしてはいけないと思うのです。現在の医療不信は、実は医学教育、医師の養成課程に問題があって、特に研修医制度に矛盾があったということで、今度わざわざ国費を投入して、アルバイトをしなくてもやっていけるだけの給与を払うようにしました。そういう事態が一方にありながら、せっかく直接給与を払うといういい制度があるのを、どうしてもやめなければならないというほどの事態なのかどうか。そういう事態だとして、先ほど法務省も言っていましたけれども、給費制をやめて貸与制にすれば、逆にコストがかかる部分もあるので、そこにかかってくるコストとのバランスで、そこまでした方がやっぱりいいということになるのかどうかという点も、これも具体的に検討しなければいけないと思うのです。そういう意味で、検討はまだなされていない、残っているということではないかと思うのです。私は、だから給費制であれば、そういう意味で問題ないでしょうということを申し上げておりますから、いや、そうでなくても大丈夫だという方が、今言われたような点で、貸与制でも問題がなくて、かつ国家財政上も負担は非常に軽減するという具体案をぜひ作って示していただきたいと思います。それについて、私はまた意見を申し上げたいと思っております。

○井上委員 理論的にそうだというトーンで最初お話になっていたので、それはそうではないでしょうと申し上げたのです。政策論として、お金の問題とか、どっちが合理的かと、そういうレベルの問題だというのは、そのとおりだと思います。

○田中座長 ということは、この前と同じように貸与制に移った場合の具体的な……。

○川端委員 とした場合です。

○田中座長 とした場合、具体的な制度設計をどうするかということを更に検討して、それで今の制度を維持するか、それに移るかという議論をするということですね。

○川端委員 そうですね。それと事務局の方で、法律事項はこれだけだ、これだけだとおっしゃいますけれども、法律事項だけ見たのでは制度は見えないので、具体的な問題、例えば、こういう法律では金額を書かない方がいいのかどうか、法律事項にしない方がいいのかどうかというのは、これは1つ議論があるところであり、ここが自由に変えられるような貸与制がいいのかどうかというのは1つの論点だと思います。それはともかくとして、その全体像、法律に定める事項はこれだけであるが、管理、回収のところまで含めて、実質はこうなるということについて、一応我々で検討して最終的に、この法律でいいでしょうということを言わなければいけないのではないかと思いますので、そこの御提示をぜひお願いしたいと思います。

○片岡参事官 前回、前々回あたり、あるいはもっと前からかもしれませんが、事務局から案が提示されてないから検討できない、だから給費制維持だ、というトーンが若干あります。私は、これは検討会の責任放棄につながる御発言ではないかと思います。第1回の検討会のときに、私が論点整理を出しただけで、事務局主導のとんでもない進行だと言われたことがありました。それなのに、今度は、事務局から案が出ないから何にも検討できないという、一部委員の御発言ですが、事務局はいろいろな案をお示しすることはできます。お示しはできると思いますが、理論的な御指摘、あるいは根本問題の御指摘についてもう少し検討会で検討していただいて、その上で事務局が案を提示すべきだというなら分かります。そして、それらの御意見に従えば、こんな額、こんな返済方法、こんな法律の規定振りということはお示しできると思うのですが、根本問題も事務局から示されず、具体的ないくつかの案も示されず、何にも示されないから、検討会では検討できないというのは、事務局側としても非常に困ったところです。

○川端委員 私は、そういう趣旨で申し上げたのではなくて、法律事項だけを合意できれば、貸与制への移行を合意できるはずだというトーンで言われたから、そうじゃないでしょう、制度全体について、我々は検討し、合意しなければならないでしょうということを申し上げているのです。ですから、別に事務局が提示されなくても、最高裁が、例えば最も合理的と考える貸与制案を提示されてもいいわけですし、あるいは井上委員が、こういう案ならば文句ないだろうというのをお考えになって提示してもいいと思います。ただ、私は給費制で満足しておりますので、自分の方から貸与制の具体案を提示する必要を感じてないというだけです。

○井上委員 検討会の役割について誤解があるのではないかと思います。ほかの検討会とは大分トーンが違う御発言がありますが、検討会というのは、そういうことを決める機関ではないはずで、どうするかというのは、あくまで本部が決めることなのです。他の検討会も、そういうことでやってきています。事務局の方で案を作られるのに我々が協力するということなので、最終的には本部の責任なのです。我々が認めなければ何も変えられないということではないということは、御承知になっておいた方がいいと思います。

○永井委員 ちょっと確認させてほしいのです。ここの検討会では、専念義務というか、具体的には就職制限ですか、それは今回の制度設計だけでなくて、今までもそうでしょうけれども、修習のいわば本質的なところから来る兼職禁止というか、専念義務であるということを確認しておくことはよろしいのですね。私もそういうふうに思いますので。

○井上委員 具体的な中身は別として、それはそれでよろしいと思います。

○田中座長 給費制でなければ専念義務は出てこないという理解ではないと思います。

○永井委員 その点については、ここでは一致できるのではないかと考えます。それから、もう一つは、今回のこの法曹養成の検討の中で、基本的には個人のいわばキャリアアップというか、キャリアデザインとして、法曹養成を点から線へ考えてきたというのが原則であったのかなと認識しています。そういった意味では、例えば個人が自分のキャリアアップとして法曹になる場合、先ほどいろいろな職業の方がもう一度ロースクールに入って、司法試験に受かって修習へ行くというのも1つのキャリアアップだと考えれば、そういったときに、先ほど言ったような修習専念義務があるということで、いろいろな生活の問題があるとなれば、その間の一時的な生活費はある意味では貸与しておいて、それで後ほどキャリアアップによって報酬等も上がるのでしょうから、そのときに自分の責任で返していくというような政策もあり得ることです。むしろ、国の法曹養成に対する政策としては、ある意味では貸与制もあり得るということで、多分皆さん一致しているのではないかと思います。いわば養成政策が給費だけというわけではないのだろうと思います。そういう意味では貸与制も検討の枠の中にあるということだろうと思うのです。
 それから、もう一つ、給費制という問題も、例えば年配の方や家族を持った方が来られた場合、あの給費の金額では相当生活が苦しいというか、実際はできない場合が多いということでは、現行の給費制でもあり得ることであって、今までの給費制プラス貸与制ということも考えられます。貸与制を加味する給費制だって検討の余地があり得るだろうと思うのです。もう一つ、貸与制だって、今言ったようなことから言えば、一定の国の政策としての給付プラス貸与制だってあるのではないかというようにいろいろな幅はあると思うので、そういったところで、従来の考え方、ここでは個人責任ということがかなり強く出ていたので、例えば貸与制への移行という方向が決定されていないとしても、ここでは多分8:2とか、7:3ぐらいで、貸与制ということを重点に、法曹養成システムを検討してきたのではないかなという気はするのです。ただ、おっしゃるように、どうも最高裁の方も、具体的な内容については、そこらあたりの詰めができてないと、これを引き受けられても、十分な受け皿ができてないとなれば、もう少し議論をしていくことが必要なのかなと思います。

○田中座長 同じような議論を何度も何度も繰り返しているわけですけれども、一部の委員と法曹三者の一部に、異論があることは承知していますが、近い将来、貸与制に移行することもやむを得ないという認識が多いようだとすると、異論は異論としてあっても、そういう貸与制に移るという前提で、ある程度具体的な制度設計を示して、それで十分だということをおっしゃる方々と議論を詰めていくということをしないと、1つの選択肢だからという話でいつまでも議論していても、制度の具体的な設計もできないし、話も進まないという感じがするのです。そういうことで、異論があることは十分承知していますけれども、貸与制に移行するという前提で、どういうことが考えられるかということをもう少し詰めて検討するということでいかがでしょうか。

○川端委員 それは検討した上で、やっぱり給費制の方がいいということもあり得るということですか。そこは全部カットして、とにかく作業をするということですか。

○田中座長 ここは意見の整理しかやらないわけですから、そういう方がおれば、最後までこういうことをおっしゃる委員がいましたということで意見を整理せざるを得ないと思います。最後まで何も示さないというわけにはいかないと思いますので、現行制度で十分だとおっしゃる方は、現行制度で十分であるという意見をおっしゃっていただいて、そういう意見もあったと整理し、しかし、大勢はやむを得ないということで、具体的にこういう制度設計が考えられるということを整理すれば、それも1つの方向性になると思うので、そういう形にしないと、いつまでも同じ議論を繰り返しているだけでは、いかがでしょうか。具体的にどういう免除だったらいいかというようなことはだれも言い出しにくいという話であり、そのあたりの議論も詰めて、具体的に川端委員がおっしゃるような「いい貸与制」とはどういうものかということを検討するということではいかがでしょうか。

○フット委員 もちろん座長の提示したアプローチには全く異論はありません。先ほどから聞いていまして、給費制なら問題ないという発言がありましたが、専念義務の観点から考えれば問題ないのかもしれませんけれども、司法試験合格者数3000人時代を考えた場合は、給費制はそもそももたないと私は理解しています。もたないということであるとすれば、結局合格者3000人をやめるか、それとも給費制を低い額に下げて、結局専念義務も維持できなくなってしまうか、あるいは給費制自体を見直さなければならないか、その3つの選択肢しかないように思います。給費制のままで問題がないという発言は専念義務だけに限定した発言なのではないかと思っています。

○諸石委員 この議論は、随分長らくやって、ここまできた中身は、今、フット委員がおっしゃったように、司法試験合格者数3000人になって、給費をして、しかも法科大学院というプロセスとしての法曹養成全体に対して、国家的支援も財政的に対応していく中で、法律関係者にとっては、いくら手厚くても手厚い方がいいわけであり、そのことに反対はないでしょうけれども、ほかの高度専門職業に就く人、それぞれ国家社会に有益な仕事をする人、その養成とのバランスを考えたときに、そこまでのことが言えるのかというのが今までの議論だったと思うのです。その中で、確かにまだ方向が決まったわけではないけれども、そういう流れの中で、我々がそれに対応する用意ができてないと、結局プロセスとしての法曹養成ということが危なくなるという危機意識といいますか、問題意識の中でここまで議論してきたのであって、ほかの助成や奨学金貸与とか、そうしたものがほぼ目途がついたから、もう一度ここで給費制も維持で頑張ろうというのは、ちょっと虫がよすぎるのではないか、そんな気がします。そうでなければ現実的にどうすべきなのかということを議論すべきで、かつ、ある一定の期限までに方向を出しておくべきであれば、具体的なアプローチをどうするのかということが重要です。そもそも論でいつまでたっても反対だと言っているだけで済むならば結構なのですが。

○牧野委員 諸石委員のお話もよく分かるのですけれども、1つ心配しておりますのが、純粋な貸与制ということになりますと、当然学生のローン負担が増えるということになります。例えばアメリカの場合ですと、学費が非常に高い。日本に比べると1.5倍ぐらいだと思います。そうしますと、3年間で1000万ぐらいのローンができてしまう。それで、できるだけローンを早く返そうということで、営利的な職業に就く。実はアメリカの法曹の問題で倫理的な問題もいろいろあるわけですけれども、そういう営利に走るということで、倫理的にも問題が出てくる法曹が多くなるということです。これは私の個人的意見なのですけれども、できるだけ負担は少なくすべきであるというのが、考え方としてあると思います。確かに多様な法曹をいろいろな層から集めるという点は非常に大事なのですけれども、法曹になった後、公益的な仕事に行く人も少なくなってしまうかもしれません。ただ、給費制でいいかという問題もあると思います。その中間といいますか、先ほど永井委員のほうからもありましたけれども、ミックスして、一部給費制・一部貸与制、そのようなものもあり得るのかなという気がいたしております。

○諸石委員 今、牧野委員がおっしゃった一部給費制というのは、言葉を替えて言えば、返済免除と同じではないかと思うのです。そういう公益的な仕事に就く、あるいは法曹過疎のところで公益を主として頑張ってもらう、そういう法曹に対して何らかのインセンティブを与えるような制度設計をすべきではないか、そういう議論というのはあり得ると思います。それについて、まだ法曹三者から、具体的な意見がなくて、入り口のところでとどまっていて、今、牧野委員がおっしゃったようなことの議論に入れないのではないか。どういう形であれば、そうした弊害除去といいますか、そういったものを助成する制度設計があり得るかということの検討を急ぎ、それらを含めて議論すべきではないかと思います。

○井上委員 私も、今おっしゃった意見に全面的に賛成です。ただ、その前にお二方がおっしゃった、一部給費・一部貸与というのはちょっとおかしいと思います。というのは、その額は要りませんという人もいるはずであり、自分の資産があるから、あるいは親が養ってくれるからというのに何で給与が与えられるのかという、その辺が考え方としては違ってくる話なので、むしろ今おっしゃったように、免除のところで考えていくべきだろうと思います。そして、そのところでは、法務省の方が言われたように、どういうところに重点を置いて免除というのを考えていくのか、その議論はしないといけないと思うのです。それともう一つ、アメリカの場合に、非常に授業料が高額になっていますので、今言われたような弊害もあると指摘されているのですが、日本の法科大学院と修習の時代の生活費を含めて、もしお金を低利子で借りた場合に、どれくらい返還しないといけないのかということを、もうちょっと日本のベースで考えてみて、無理なくというか、あまり過酷なことを強いることなく、返済できるのかどうかということは、それとして計算していかなければならないと思うのです。アメリカの場合は、そういうふうにビジネスの方で稼いで早く返そうという人がいるのと同時に、最初、例えば検察官になって、10年くらいそこで実績を上げた上でキャリアアップして、また違うところに行くというようなこともあり得ますので、ある方向にだけ行くという前提で物を考えるのはいかがかと思います。

○加藤委員 今まで出てきています返還猶予・免除についての方向性の議論は賛成です。一定のセクションの仕事に従事する人材の適正な配置について、政策的に誘導する制度をビルト・インしておいた方が賢明ではないかと思います。これまで諸石委員が言われてきているように、司法過疎をなくすための過疎地の公設弁護士事務所、司法へのアクセスバリアを低くするために設立される司法ネットの業務に携わる人、あるいはまた、法科大学院の教員になる者についても、政策的に誘導して、質、量とも豊かな有資格の教員を抱える法科大学院に早くするために、そうした者について免除することを考えていく必要があるように思います。固定的に考えることなく知恵を出し合って、そこら辺はどのような姿が良いのか前向きに建設的にアイディアを出し合うべきであると考えます。

○田中座長 返還免除や返還猶予の話に乗ると、何となく貸与制に移行するという前提の話になるから、そういう話に乗りたくないという方もいるようですけれども、そういうスタンスで受けとられると話が進まないので、川端委員と川野辺委員は慎重意見ですけど、ほかの方々は、貸与制の移行を前提として返還免除その他の具体的なことをもっと詰めるべきだということだと思うのですが、それについても異論がありますか。

○川端委員 ですから、「いい貸与制」があり得るかどうかという意味で、返還免除をどうするかということまで含めて検討するということは当然2つの間のチョイスですから、それでいいのではないかと思いますけれども、今の段階で、「もう給費はやめた、貸与へ移行するのだ」ということで、ここで取りまとめられるということについては、私としてはそれはもっと先にというか、もっと慎重に検討してほしいということを申し上げます。

○田中座長 そういう委員もいらっしゃるということを認識した上で、検討を先に進めるということにならざるを得ないと思います。

○永井委員 私はこだわらないですけど、国の政策で法曹養成を行うという面からするならば、政策面からの貸与もあるし給費もある。その間の給費プラス貸与も政策としてはあり得るのではないかと思います。所得が高いからそういうものを与える対象にならないということにはならないのではないかなと思います。

○井上委員 私は、前提となっている政策面で疑義があるということです。

○田中座長 先ほど事務局からは、今回の検討会でまとまるならば、この通常国会にも法案を提出したいという考えも示されましたけれども、これは今の皆さん方の御意見や法曹関係者の御意見などを踏まえまして、もう少し時間をかけて検討する必要があるのではないかと思います。しかし、これも先ほど申し上げましたとおり、この推進本部の設置期限が今年の11月までとされておりますので、司法修習生の給費制の見直しについては、この検討会として基本的な方向性、しかも、かなり具体的な方向性を示さずに時間切れになるということは許されないと考えますので、できるだけ早く具体的な制度設計につきまして、委員の方々あるいは関係者の方々についても、事務局を中心に意見を聞いていただいて、川端委員のおっしゃる「良い貸与制」とはどういうものかというような具体的な制度設計に入らせていただきたいと思うのですけれども、よろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

○田中座長 では、そういうことで、この話に乗ったから貸与制に切り替えるという前提ではございませんので、具体的にこういうことがあり得る、こういうことがあるという知恵を出していただいて検討することに法曹三者の方々も御協力のほどよろしくお願いいたします。
 それでは、最後に法科大学院教員派遣法の施行令が昨年末に公布されましたので、事務局から報告を受けることにしたいと思います。

○片岡参事官 資料4をご覧ください。「法科大学院への裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員の派遣に関する法律施行令」の条文であります。おかげさまをもちまして、本政令は、昨年の12月25日に公布になり、本年4月1日から施行されることとなりました。ほとんどが共済関係等の技術的な規定であります。第2条は、「法科大学院において裁判官が行う教授等の業務に係る国庫納付金の金額及び納付の手続」であります。これまでの検討会で御報告申し上げましたとおり、国庫納付金の金額は一日当たり五万円、当該裁判官が判事補である場合にあっては三万円に、当該裁判官が当該法科大学院において教授等の業務を行った日数を乗じて得た額とするとされております。その第2項ですが、ここで納付期限について規定しております。国庫納付金は、歳入徴収官の発する納入告知書によって、翌年度の6月15日までに国庫に納付しなければならないということになってございます。以下、第3条以下は、なかなか難しい条文になっております。基本的な考え方としまして、派遣先の法科大学院が国立大学である場合、公立大学である場合、私立大学である場合のいずれかによって共済組合関係法令の適用関係が異なってくるため、必要となる技術的な読替え、適用関係を定めております。そして、第8条では二以上の法科大学院において教授等の業務を行うものとして派遣された場合、つまり、いわゆる複数校派遣の場合に、共済関係は一体どうなるのかということで非常に複雑な手当てが必要になっておりまして、その関係の読替え等の規定を置いたものでございます。
 また、最後の附則第4項では、国庫納付金の基準となる額、基準額について、先ほどの5万円、3万円ですが、これについて見直し条項を置いております。法科大学院における教授等の業務に係る報酬等の実情等を勘案し、適宜、見直しのための措置を加えるというような見直し条項を置いたということでございます。技術的な視点もございました関係で予定よりも遅れましたが、おかげさまをもちまして、公布に至りました。御報告申し上げます。ありがとうございました。

○田中座長 この政令につきましては、これまでの検討会でも報告を受けてきたところですけれども、ただいま説明がありましたように、共済関係などは技術的な問題があって、なかなか大学でもよく分からなくて困っているところもあると聞いております。何か質問がございますでしょうか。
 特に御質問がなければ、本日の検討会はここまでにしたいと思います。次回の検討会の日時につきましては、おって御連絡を申し上げたいと思います。
 本日はどうもありがとうございました。