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法曹養成検討会(第22回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日時
平成16年5月18日(火)10:30〜12:25

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)
田中成明座長、井上正仁、今田幸子、加藤新太郎、川野辺充子、川端和治、ダニエル・フット、永井和之、牧野和夫、諸石光熙(敬称略)
(説明者)
杉野 剛  文部科学省高等教育局専門教育課長
小池 裕  最高裁判所事務総局審議官
(事務局)
松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、片岡弘参事官

4 議題
司法修習生の給費制の在り方について

5 配布資料

(座長配布資料)
貸与制に関する検討事項

(事務局配布資料)
資料1 法曹養成検討会名簿(平成16年5月18日現在)
資料2 法曹養成検討会(第21回)議事概要

(文部科学省提出資料)
平成16年度法科大学院入学者選抜実施状況の概要

6 議事

(□:座長、○:委員、■:事務局)

a)文部科学省からの説明
 文部科学省から、平成16年度法科大学院入学者選抜実施状況の概要について、提出資料に基づいて説明がなされた。

b)司法修習生の給費制の在り方についての検討スケジュール

□ 司法修習生の給費制の見直しについては、これまで回数を重ねて議論してきたが、推進本部の設置期限もあり、そろそろ検討会としての基本的な意見の方向性を整理しなければならないと考えている。意見の整理を行うに当たり、少数意見が残った場合には、少数意見を併記する形で意見を整理することもやむを得ないと考えている。意見の整理に向け、座長配布資料をもとに議論を進めていきたい。

■ 推進本部の設置期限は本年11月末までであり、司法修習生の給費制の貸与制への移行については、状況が許せば、この秋にも予想される臨時国会に必要な法案を提出したいと考えている。仮に来年の通常国会に提出する場合であっても、推進本部設置期限までに立案作業の主要な部分を終えておきたいと考えている。
 新しい法曹養成制度の制度設計の最終段階として、司法試験合格者・司法修習生の増加に実効的に対応し、法曹人口の増加を実現するためにも、司法修習生の給費制を見直す必要があると考えている。給費制を維持すべきであるという意見も出されているが、年間3000人の司法試験合格者という当面の目標を達成するためにも見直しが必要であり、特にかつてのように財政問題がボトルネックになることのないような制度設計をすべきであると考えている。この検討会でも給費制の見直しに賛成するという意見が多数であると認識している。
 事務局としては、検討会での検討を踏まえて、今後財政当局を含む関係機関との調整を行った上で、所要の法案を提出したいと考えているが、立案作業に要する時間を考えると、6月ごろまでには、基本的な方向性についての検討会の御意見を頂戴したいと考えている。

c)座長配布資料に基づく各論点に関する具体的な検討

□ これまでの検討会における議論では、給費制の貸与制への移行に賛成する意見が多数意見であると認識している。一方、給費制維持の意見もあるが、いつまでも貸与制に関する検討が進まないのでは困るので、貸与制についての議論を進めていきたい。また、事務局から説明があったとおり、関係機関との調整、立案作業に相当時間がかかることが予想されるところであり、今回と次回6月の検討会で、基本的な方向性について検討会としての意見の整理を行いたいと考えている。

1)貸与制の趣旨(修習専念義務との関係など)について

□ 修習専念義務については、司法修習の本質から導かれ、給費制から導かれるものではないことは、これまでの議論で確認されたところであると理解しているが、最高裁から、補足的な説明をいただきたい。
(最高裁判所)修習に専念すべき義務という文言を定めた規定は法令上はないが、司法修習生が修習を受ける際の規律について、最高裁判所規則(司法修習生に関する規則第2条、第4条、第17条、第18条など)でそれぞれ個別に定められている。このような個別の規律は、①司法修習が、法曹資格を取得するために国が法律で定める職業訓練課程であり、高度の専門的実務能力と職業倫理を備えた質の高い法曹を確保するために必須の臨床教育課程として、その基本的な教育内容を最高裁判所が定め、司法修習を終了しない場合は法曹資格を与えないものとされていることから、司法修習生は提供される教育内容のすべてを履修することが当然に要請され、また、基本的にはすべてのカリキュラムに出席するとともに、カリキュラムを受講する以外の場面でも、これをより咀嚼し身につけるため、常に研鑽に励むよう努めることが期待されていること、②司法修習の中核である実務修習は、臨床教育課程として実際の法律実務活動の中で行われるものであり、司法修習生は指導に当たる法曹とできるだけ同様の姿勢で修習に臨み、専門的実務能力や職業倫理を身につけるとともに、中立公正な立場を保持し、利益相反行為を避けることなどが求められていること、などに由来するものと考えている。すなわち、修習に専念すべき義務は、司法修習の本質や司法修習生の地位から当然に導かれるものであって、こういった抽象的な義務を、最高裁判所規則によって具体化していると理解している。
 新しい法曹養成制度の下でも、司法修習の位置づけや性質・本質は基本的に変わらないものと考えており、したがって、修習に専念すべき義務も基本的に変わらないと考えている。
 最高裁判所としては、給費制は、このような修習に専念すべき義務を経済的側面から支える一つの方策であり、給費制の在り方、貸与制への切替えを検討するに当たっては、修習の効果を上げるために、このような修習に専念すべき義務を経済的側面からサポートするための合理的な代替措置が必要であると考えている。なお、兼職・兼業が原則として禁止され、最高裁判所の許可に係らしめられていることは、貸与制に移行した後も維持すべきであると考えている。

○ 最高裁判所の説明について、抽象的な内容には特段の異論はないが、具体的な専念義務の程度、修習の効果を上げるためにどこまで司法修習生を拘束できるのか、という点についてさらに議論が必要だと考える。例えば、貸与を受けずに、修習の実を十分上げた上でなお余裕のある範囲で、自分の保有する資格を活用して自分の経済的サポートをしたいというニーズも出てくると思うが、これを認めないとすることができるのか。貸与制に移行した場合は、兼職・兼業が許容される程度について、違いが生じて当然ではないかと思う。学生にも勉学の専念義務があるが、試験にパスすればあとはアルバイトをしてもよいというのが実態である。それに比べて、司法修習生に厳しい専念義務を課す必要があるのは確かであるが、貸与制の下で、現在と全く同程度に必要なのかどうかについて、もう少し議論すべきである。

■ 兼職・兼業の問題については、最高裁判所の運用の問題であると思われる。なお、新しい司法修習制度においても、司法修習生から授業料的な費用を徴収せずに、引き続き国が国費を投入して司法修習を実施すべきであるとの前提での御意見であると理解してよろしいか。

□ それはそうであろう。今後も引き続き国費により司法修習を実施するという前提で、貸与制を考えていくことになるのだろう。

○ 先程の御意見は、生活を維持することができるだけの兼業をしながら、十分な修習もこなすことができるという考えなのか。そのような前提であれば、そもそも貸与制も不要ということになるのではないか。また、学生の学業専念義務も、試験さえ受かればよいというものではなく、法科大学院では学業以外のことをしていたらとても身に付かない。

○ 現在、法科大学院には、職業を保持したまま学んでいる学生も相当数いる。そのような中には、給費制であれば、公務員に準ずる者として兼業が禁止されることもやむを得ないが、貸与制の下では、修習の成果を上げるという前提で、これまでの職業を続けながら修習を受けたいという人もいるはずであり、現行のような兼業を原則全面禁止とするほどの専念義務を要求できるのか。貸与制では修習専念義務の程度が変わるのではないか。例えば、医師が週末に1回だけ宿直勤務をすることや、コンサルタント的業務に従事している人が週末に業務をすることなどが考えられる。

○ これまでの議論で、給費制と修習専念義務とが直ちに論理必然に結びつくものではないことについては、意見が一致していると理解している。レベルの高い勉強をしないと修習に耐えられないという、まさに司法修習の本質から修習専念義務が要請され、司法修習生が勉強に時間を使うのは当然であるが、他方、専業主婦の家事や子育て、介護をやめろとまでは言わないはずであり、兼業禁止については、司法修習生としての品位や公正さの保持を考慮しているのではないか。兼業禁止については、今後も、個別的に最高裁判所が判断を行うという仕組みが正しいと考えるが、司法修習生としての品位や公正さにウェイトを置いた運用を最高裁判所にお願いするという意見の整理で足りるのではないか。

□ 兼職・兼業の見直しはあり得ると考えるが、それは給与制だから、あるいは貸与制だからという問題ではないと考えられる。兼職・兼業の問題は、勉学の多忙さという観点だけでなく、司法修習生の公正さや品位との観点も合わせて考えるべきであると考えられるが、許可制は今後も維持されることになるのではないか。

○ ドイツの法曹養成制度では、州によって制度が違うが、司法修習生のアルバイトを一部容認している。日本で、最高裁判所規則を変えずに、最高裁判所の裁量、運用に委ねることとすれば、現行の枠組みと何も変わらないのではないか。修習の実があがっていて、更に余裕のある人にどのように対応するのか。ドイツのような制度が導入されてもよいのではないか。

○ 修習専念義務が司法修習の本質から導き出されることはこれまでの議論のとおりであり、兼業許可については、修習への支障の有無を個別に判断して認めるということにすぎず、貸与制と関連する議論ではない。許可の基準を立てるにしても、結局、個々人の状況を判断した上で、許可を判断するということにならざるを得ない。

○ 貸与制への移行では、必要のない者は貸与を受けないという点が最大の変更点である。余裕がある場合には兼業を許可して欲しいという司法修習生のニーズはあるはずであり、修習専念義務を害さない兼職・兼業の許可基準について、検討会で何らかの見解を示すべきではないか。

○ 具体的な兼業の許可基準の問題については、貸与制そのものの検討とは別に、最高裁判所に検討していただくのがよいのではないか。

□ 最高裁判所に司法修習委員会が設けられているので、そこで検討していただくのがよいと思う。
(最高裁)この検討会で原則的な枠組みを議論していただければ、司法修習委員会の意見を聴くなどして検討したい。

□ 国立大学でも法人化に伴い、兼業の在り方の見直しについて検討を進めているところであるが、あくまで教育研究を行う大学教官にふさわしいか否かを十分留意していくことで、議論を進めている。司法修習生の兼職・兼業の具体的な見直しの問題は、給費制か貸与制という問題とは直接関係しないと考える。

○ 現在の兼業許可の運用とまったく変わらないのでは問題がある。代替手段のある人にまで貸与を強制することはおかしいのであって、貸与制では、このような検討すべき問題が出てくることを意見として付加したい。

□ 貸与制と修習専念義務との関係についての原則的な考え方には、異論はないものと考える。

2)貸付額(上限額)、3)返還期間・返還方法、4)利息について

■ これらの各項目について、どのような視点に基づいて制度設計を行うべきかという基本的な考え方について御意見をいただきたい。例えば、貸付額の設定に当たっては、修習専念義務を考慮して生計費を相当分カバーする額とするべきかどうか、返還期間をどうするか、年賦による分割払い、繰上償還、返還猶予の在り方、利息の在り方などについても御意見を伺いたい。

○ 司法修習生への給与の月額は現在月々約20万円強とのことであるが、このほか支給されている期末手当などを含むと月平均でどのような額になるのか。

■ 家族の有無等による個人差があるが、司法修習生への給費は公務員の給与にならった形で支給されており、期末手当を含めると年収300万円を超え、すべての手当を含めると月平均で30万円(年収360万円)を超える場合もある。家計に必要な額に関する統計ではこれより低い額が示されている場合もあり、貸与額の設定に当たっては、どこまで合理的な説明ができるかという問題があるが、家庭のある司法修習生にも対応できるような制度とすることを目指したい。

□ 貸与額は、修習専念義務を考慮した額ということになろう。貸与額には段階を設けていくのか。

■ 貸与額に段階を設けることは考えられるが、扶養家族がある場合を高くするような制度にすると、単身者への貸与額が低くなるという面もある。シンプルな制度とするのが相当ではないかとは思っている。

○ 司法修習生の立場から言えば、貸与額はいくらあってもよいのだろうが、現行の給費制に代わるものだとすると、当然、従前の給費の額が参考になるのだろう。家族等の個別事情に応じた配慮等が必要であり、今後の事務局による財政当局等との協議・調整に期待するところである。返還期間は10年程度とし、繰上返還も認め、また、無利息で貸与するということであれば、良い制度になると思う。

○ 法科大学院には社会人が多く、現行給費制の平均月額30万円を下回るような貸与上限額を設定した場合は、制度の合理性がなくなるのではないか。

○ アメリカでは、ロースクールを卒業した時点で、学部及びロースクールで相当の借金を抱えている場合があり、これを直ぐ返還するというのは、非常に大変である。日本でも、法科大学院時代に奨学金を受けているような場合には、司法修習期間中の返還の猶予ができればよいが、それが無理である場合には、その返還についても、貸与額の中で考慮する必要があるのではないか。
(文部科学省)現在、日本学生支援機構の奨学金については、一般的に、卒業後一律に返還することになっているが、大学院等に在学している場合等のほかに、様々な事情で返還ができない場合、申請により最大5年間、返還を猶予する制度がある。具体的には、災害や病気その他経済的に返還が困難となった場合等がこれに該当するが、個々の経済的状況を個別に判断して対応している。司法修習生となった場合についても、個別に判断する仕組みは同様であり、また、仮に貸与制に移行した場合でも同様のことになると考えられる。

○ これまでは公務員の給与体系にならって給与が支給されていたものが、貸与制に移行した場合、賃金体系がなくなるが、扶養手当等については、どのような枠組みになるのか。

■ 修習に専念する上で生活に必要な額ということになり、その意味では、扶養手当相当分については説明しやすいのではないかと考えている。

○ 手当相当額という形でなくて、このような条件がある場合には、この程度の額の貸与を受けられるというような形になるのであろうか。

■ 単身の場合の貸与額が極端に減ることのないようにするためにも、なるべくシンプルな制度設計を考えていきたい。

□ 今後は、事務局が関係機関と調整することが中心になると考えるが、基本的な考え方としては、貸付額については、修習専念義務を確保することを考慮した額とし、現行の支給額とのかねあいを考慮して設定する必要があるということになろう。貸与期間については、10年程度が適当であるという意見もあったが、いずれにしても、一定の返還年数を定めた上で、年賦による分割払い、繰上返還もあり得るという理解でよろしいか。利息については、返還が遅延しない限り無利息とするのが適当であるということでよいだろうか。

○ 事務的な問題だが、債権管理はどのように行うのか。

■ 国の債権管理のスキームに則って対応していくことになると考えられる。

5)返還免除、6)返還猶予について

○ 返還免除については、何のために免除を行うのかという問題がある。つまり、経済的観点から、収入が期待できない分野で活動する法曹に対して免除を行うということなのか、それとも人材の配分のための政策的誘導のインセンティブとして免除を行うのかによって、大きく分かれると思う。公益的な活動に従事する者に対して返還を免除するという場合も、中身はいろいろであり、公務に従事するから直ちに返還を免除するというのであれば、反対である。公務に従事する方が弁護士となるのに比べて収入が低いとはあながち言えず、経済的な事情から免除する理由は乏しいと考える。また、裁判官任官志望者が採用予定人員を上回る現状では、わざわざそのような制度を設けてまで任官を誘導する必要はない。
 非常に低い収入しか見込まれない公益的な業務もあり、必要な人材を配置するために何らかの制度を設けるということは考えられるが、それ以外の分野で、一般的な返還免除制度は不要である。もっとも、そのような公益的な業務についても、どのように線引きをするかという難しい問題がある。むしろ、そのような困難な問題を抱えるのであれば、返還免除は一切なしとするのがよいのでないか。

□ 司法ネットの業務に従事する法曹については、どのように考えるのか。

○ 司法ネットに勤務するといっても、具体的な構想がまだはっきりしておらず、大部分は任期制で、収入が低いのも短期間にとどまると思われる。また、裁判官や検察官が司法ネットに配属される場合には、これに配慮すべき理由は乏しいのではないか。

○ 公益的な職務とは、私的な利益の追求が制限されている分野という意味であると理解すべきである。多様な法曹人材を育成することが期待されており、線引きは確かに難しいが、そのような公益に資する分野に携わる法曹人材の育成をサポートする制度設計をすべきである。裁判官、検察官という特定の職務に人材を誘導するための制度ではなく、私的な利益を追求しにくい分野への人材養成のための制度として考えるべきである。

○ 今の意見に賛成である。線引きが難しいから返還免除制度をやめるべきだというのは極論であると思う。司法ネットについても、個々の法曹の犠牲的精神に頼るのは現実論として無理がある。法律扶助や公的弁護の実施のために、若い法曹もキャリアを積んだ法曹も相当数必要になるのであって、また、良質なサービスを提供するためにも良い人材を確保・配置することが必要であり、返還免除制度は一切検討しないというのは、乱暴ではないか。

○ 兼業許可と同様に、最高裁判所が貸与金の返還を減免することができるものとした上で、今後の社会情勢等に応じて最高裁判所が判断するという余地を残しておいたらどうか。

■ 国の債権であることから、法律上、何の要件もなく減免できるものすることは相当でないと考えられる。

□ 経済的理由からやむを得ない場合には返還を免除又は猶予するという点に異論はないと思うが、更に政策的な観点からどのようにすべきかという問題については、もう少し議論をすべきであると考える。

○ 制度設計としては、更に検討して、合理的な場合には返還を免除するとするのがよいのではないか。

○ 先程、返還免除は一切設けるべきでないと述べたが、経済的により恵まれない分野に進んだ者であることと、そのような分野で法曹が活動することが社会全体にとって必要であり、そのために何らかのインセンティブを与える必要があるということを要件とすることができるのであれば、反対はしない。

○ 優れた法曹がそのような分野に進出するための制度設計という発想が必要である。

○ 要件の決め方が難しいからいっそのことやめてしまえと言うのではなく、やはり、何か合理的な決め方ができれば、返還免除制度を設けてもよいということではないか。合理的な基準を検討するための努力をすればよいのではないか。

□ 返還免除については、経済的に恵まれない分野への対応、社会的な人材誘導のニーズへの対応として、あり得るところと考えられる。現段階で返還免除をやめるというのは、まだ結論としては早いのではないか。

■ 返還免除については、貸与制のオプション的な位置付けであり、貸与制自体の検討より多少遅れても、調整ができれば立案していきたいと考えている。

7)旅費の支給について

□ 旅費については、司法研修所と実務修習地との間の移動の旅費等を支給するものとするという意見の整理でよいか。
 (委員から異論は述べられなかった。)

8)貸与制への移行時期について

■ 新しい司法修習がスタートする平成18年度から移行するのが合理的ではないかと考えている。その場合、現行司法試験合格者の司法修習が並行して行われるが、新たな法曹養成制度における司法修習生の増加への対応等という貸与制移行の趣旨からすれば、現行司法試験組と新司法試験組との区別なく、双方とも貸与制に移行すべきであると考えられる。

○ 現行司法試験組と新司法試験組とで、アプリオリに取扱いを区別する理由はないのではないか。

■ 貸与制に切り替える以上は、その後は、現行司法試験組も含めて貸与制に移行するのが合理的であろうと考える。

○ 法曹人口が増えて、財政負担の問題が現実化する段階、具体的には、2年後に新しい司法修習がスタートする段階が、貸与制に移行するタイミングであると考えている。

○ 移行への告知期間の問題がある。現在、法科大学院で学んでいる学生は、給費制の司法修習が残ることを前提に生活設計をして、法科大学院に進学してきているのではないか。平成18年から貸与制に移行する場合には、これらの者の給費制に対する期待を裏切ることになり、告知として不十分ではないか。

○ 法科大学院の学生は、給費制を前提として進学してきたのではなく、むしろ、いずれ給費制はなくなると覚悟している者が多いように理解している。

□ 私も同様の印象である。

○ 告知期間の問題は確かにあるが、司法試験合格者数が1500人から3000人に増える中で、合格者数によって移行時期を決めるのでは、いったいどこで線引きをすればよいかよく分からない。結局は、新制度の発足に伴い一律に移行するというのが一番はっきりしているのではないか。

■ 給費制については、一部に来年度から廃止すべきという意見もあるが、御指摘のように周知期間の問題から困難であると考えている。制度の切替えという趣旨からいって、平成18年度からというのが合理的ではないかと考えられる。

○ 平成17年度からの移行が困難であることの理由として、今の周知期間の問題についてもしっかり説明していくべきである。

○ 現行司法修習との併存期間中は従来どおり給費制として、貸与制移行の告知をしっかりするという考え方もあるのではないか。

○ 新しい制度への切替えであるので、その時点で線を引くのはやむを得ないものと考える。

□ 来年か、平成18年度か、5年後かの3つぐらいしか選択肢はなく、その中で、平成18年度から移行するという方向で考えることでよろしいか。また、平成17年度については、告知の問題もあり、現行給費制を維持するという方向で配慮する。
 本日の議論やこれまでの意見を踏まえ、本検討会の大勢としては、貸与制への移行に賛成であるという前提で、基本的な考え方について、意見の整理をさせていただきたい。次回は、意見の整理の案を示して、改めて御意見をうかがいたいと考えている。なお、これまでも申し上げたように、少数意見が残る場合には、これを併記することとしたい。

7 今後の予定

 次回の検討会(6月15日(火)10:30〜)は、本日に引き続き、司法修習生の給費制の在り方などについて検討することとなった。

(以上)