首相官邸 首相官邸 トップページ
首相官邸 文字なし
 トップ会議等一覧司法制度改革推進本部検討会法曹養成検討会

法曹養成検討会(第22回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日時
平成16年5月18日(火)10:30〜12:25

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)田中成明座長、井上正仁、今田幸子、加藤新太郎、川野辺充子、川端和治
ダニエル・フット、永井和之、牧野和夫、諸石光煕
(説明者)杉野 剛 文部科学省高等教育局専門教育課長
小池 裕 最高裁判所事務総局審議官
(事務局)松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、片岡弘参事官

4 議題
司法修習生の給費制の在り方について

5 配布資料
(座長配布資料)
貸与制に関する検討事項

(事務局配布資料)
資料1 法曹養成検討会名簿(平成16年5月18日現在)
資料2 法曹養成検討会(第21回)議事概要

【文部科学省提出資料】
平成16年度法科大学院入学者選抜実施状況の概要

6 議事

○田中座長 おはようございます。それでは、第22回の法曹養成検討会を始めたいと思います。きょうは、これまでに引き続きまして、司法修習生の給費制の在り方につきまして検討をお願いしたいと思います。
 まず、検討に先立ちまして、事務局から本日の配布資料の確認をお願いしたいと思います。

○片岡参事官 おはようございます。それでは、本日の配布資料の確認をお願いします。まず最初に座長配布資料としまして、「貸与制に関する検討事項」というペーパーがございます。
 事務局配布資料といたしまして、資料1が「法曹養成検討会名簿」の最新版でございます。座長が京都大学副学長におなりになったということで変更がございます。資料2が、「第21回法曹養成検討会議事概要」でございます。
 そして文部科学省提出資料といたしまして、「平成16年度法科大学院入学者選抜実施状況の概要」という資料がございます。

○田中座長 次に文部科学省の担当課長が交代されたということでございますので、御挨拶をいただくとともに、法科大学院の入学者選抜実施状況に関する資料についての説明をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。

○文部科学省 杉野専門教育課長 文部科学省の専門教育課長の杉野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 4月に文部科学省の機構改革がございまして、法科大学院の担当が従来の大学課から専門教育課の方に変更となりました。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、資料につきまして簡単に御説明させていただきます。お手元の平成16年度の入学者選抜の実施状況の資料でございますけれども、各大学の御協力をいただきまして、マスコミにも公表したばかりの資料でございます。
 1枚目が全体の概要となっておりまして、志願者数、倍率、あるいは法学既修者・未修者、社会人、学部別といったものの入学者の属性についての概要でございます。具体的には2ページと3ページの資料を使いまして御説明をさせていただければと思います。
 まず総括表でございますけれども、募集人員から右側にずっと志願者数、志願倍率と続いております。縦の列には、国・公・私というふうに分かれておりまして合計欄となっております。最初に合計欄のすぐ隣、募集人員の合計欄でございますけれども、全体68大学で5,590の募集人員のところに対しまして、志願者数として約7万2,800人の志願者がございました。これは各大学ごとで集計をしておりますので、のべの数字でございます。志願倍率を単純に割りますと13倍ということでございました。
 国・公・私の内訳については御覧のとおりでございます。
 二段階選抜を経て受験者数が4万人に絞られ、最終的な合格者数は9,171名という形になり、更に実際の入学者数は、C欄にございますように、5,767人ということになったわけでございます。もともとの募集人員が5,590人でございますので、一番右端にございますように、177人ほど少し多めに入学されたということになります。ちなみに入学者数の内訳でございますけれども、そこに既修・未修コースとなっております。(注)にも書いておきましたように、既修コースというのは、2年コース(短縮コース)で、未修コースは3年コースという形で整理をしておりますけれども、比率は計算いたしますと既修コースが約40%、・未修コースが約60%という比率になっております。
 総括表は以上でございますが、次に二枚目を御覧いただき、まず入学者選抜の実施状況の「1) 社会人・他学部出身者特別選抜の実施状況」と書いてあります。なお、そもそも社会人の定義については、今回、文部科学省の調査票の中ではきちんと定義をしませんで、各大学での御判断に委ねたところでございます。多少定義には幅があるということは御理解いただければと思います。それから、特別選抜については、社会人とか他学部の出身者の方々に特別枠を設けて、選抜方法も若干変えるという形でやることを特別選抜と定義しております。実施大学数は国立と私立で合計11大学ございましたが、最終的に入学者数全体に占める比率としては4.2%ということで、かなり限られた部分での特別選抜の実施という状況でございました。
 2)は、二段階選抜の実施状況ですが、二段階選抜と申しますのは、適性試験とか出願書類といった、いわば書面のみによる選抜、これを第一段階選抜ということにした場合に、その合格者に対して、更に小論文、面接、その他の選抜を二段階目として行うということを指しております。これは実施大学数は、68大学中38大学ということで、過半数の大学で実施されたという形になっておりまして、その募集人員の枠は3,720人であり、もともとの募集人員の枠が5,590でございますので、約67%、つまり募集人員枠の3人に2人は、二段階選抜という形で選ばれてきているという状況でございます。
 それから、3ページ目は実際に入学された方々の状況でございます。社会人の入学状況について、国・公・私それぞれ違いがございますが、合計欄で御覧いただきますと、全入学者に対しまして、2,791人が社会人の方で、比率に直しますと、48.4%、ほぼ半分の方が社会人ということになります。先ほど申し上げましたように、社会人の定義について若干幅がございますけれども、今回の調査では、約半数の方が社会人であったということが言えるという結果になっております。
 それから、出身学部別の入学状況でございますけれども、全体を法学系以外の文系、法学系、理系、その他という形で分類をしてみました。その他というのは、家政とか教育とか芸術などといった分野ということになっておりますけれども、法学系学部を御覧いただきますと、全入学者に占める割合は65.5%というふうになっております。つまり、これも大ざっぱに言えば、3人は2人は法学系学部の方で、それ以外の3人に1人、約35%程度の方が法学系以外の学部の出身であったということになります。新聞等とかで医師の資格を持った方が意外と多かったというような報道も一部ございましたけれども、この場合、理系全体で8.4%という1割に満たない比率でございますけれども、この理系の中に医師の方も含まれているということになろうかと思います。
 全体としては、こういった状況でございまして、そもそも多様なバックグラウンドを持った方を入学させるという法科大学院の思想に対しまして、かなりの社会人、他学部の方が入られているというものと考えておりまして、制度上両者合わせて2割未満のところは公表しなければいけないということになっているわけですけれども、個別の大学の状況を拝見しまして、社会人、他学部合わせて2割未満というところは1校もなかったという状況でございます。
 これを先週マスコミに公表しましたところ、マスコミの方からは、個別大学の状況は公表しないのかという御指摘もいただいたのですけれども、例えば志願倍率、欠員の状況、社会人、他学部の比率など、興味本位にランキングづくりのような形で使用されることも考えられますので、今回はこういう形にとどめさせていただきますということで御説明をさせていただきました。全体の数字としては、こういうことでございますが、大学によってかなりの幅があるということを申し添えさせていただきたいと思います。
 以上でございます。

○田中座長 どうもありがとうございました。ただ今の御説明について、何か御質問はございますでしょうか。特にないようですので、御説明ありがとうございました。
 それでは、本日の検討に入りたいと思います。司法修習生の給費制の在り方につきましては、これまでこの検討会でも相当な時間をかけて検討してきたわけでございます。この検討会における検討の経過を振り返ってみますと、この問題につきましては、最初は平成14年5月に開催された第7回法曹養成検討会で検討を始めまして、その年の12月の第14回検討会で、主たるテーマとして検討を加えたところです。さらに、平成15年2月12日の第16回検討会から、本年の2月6日の第21回検討会まで、6回連続してこの問題を中心テーマの一つとして検討してきております。
 このように、司法修習生の給費制の問題につきましては、回数を重ねて検討をしてきたわけですが、これまでのところ、まだ検討会としての意見の整理を行っていないという状況にあります。そして、司法修習生の給費制の見直しについて、この検討会としての意見を示せないまま推進本部の設置期限切れを迎えるということは避けなければならないということは、繰り返し申し上げてきたところでございます。その設置期限が本年の11月末とされておりますので、基本的な方向性につきましては、そろそろこの検討会として意見の整理をしなければならない時期に来ていると考えております。
 前回の検討会では、座長の責任上、こういった検討会の意見の整理を行うに当たって、少数意見が残るようであるならば、そういった少数意見を併記する形で意見を整理することもやむを得ないという考えを示させていただいたわけです。
 本日はそういった意見の整理に向けまして、お手元に「貸与制に関する検討事項」という書面を配布しておりまして、今までかなり議論していただいている問題もあるのですけれども、意見を整理する上で、集中的に検討をお願いしたいと思います。
 まず、立案作業のスケジュールなどの関係で、事務局から、これから意見の整理を行うに当たっての前提となる補足的な説明がございましたら、よろしくお願いいたします。

○片岡参事官 立案作業のスケジュール等との関係でまず説明させていただきます。
 司法制度改革推進本部の設置期限は、本年11月末までということになっておりまして、この給費制の見直し、具体的には貸与制への移行に関する法案につきまして、状況が許すのであれば、今年の秋に予想される臨時国会に必要な法案を提出したいと考えているところであります。また、仮に臨時国会ではなく、来年の通常国会に法案を提出するという場合でも、本部の設置期限までに立案作業の主要部分を終えておきたいと考えているところであります。
 法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度を整備するに当たり、その制度設計の最終段階としまして、やはり審議会意見の指摘するように、今後における司法試験合格者及び司法修習生の大幅な増加に実効的に対応して法曹人口の増加を実現するためには、給費制の見直しが必要であると考えております。この点につきましては、給費制を維持すべきであるという御意見も出されているところでありますが、年間3,000人の司法修習生の受け入れ態勢を構築して法曹人口増加についての当面の目標を達成するためにも、給費制を見直す必要があると考えておりまして、特にかつてのように司法修習生の受入れ態勢が、法曹人口増加のボトルネックとなることのないような制度設計とすべきであると考えております。
 この検討会でも貸与制への移行に賛成の趣旨の御意見が多数であったものと理解しておりまして、事務局としても従来から申し上げておりますとおり、所要の法案を国会に提出したいと考えているところであります。
 なお、今後、具体的な制度設計について、財政当局を始めとする関係機関との調整が必要となるわけですが、その立案作業等に要する時間を考えれば、遅くとも6月頃には基本的な方向性について、この検討会としての御意見、御指摘をいただいた上で、事務局において、その御意見を踏まえまして、関係機関等との調整や立案作業を進めたいと考えているところでございます。
 以上でございます。

○田中座長 私といたしましても、これまでの検討会ではいろいろ温度差はございますけれども、貸与制への切り替えに賛成する意見の方が多数であったというように認識しております。賛成意見につきましては、やはり司法試験の合格者数を3,000人まで当面増やすという目標が設定されているわけでありまして、その実現のためにも貸与制に切り替えることはやむを得ないのではないか、という意見が多く出ていたわけでございます。
 それに対して、給費制を維持すべきであるという御意見もあるわけでございますけれども、前回もお話ししましたとおり、いつまでも貸与制に関する検討が進まないということでは困りますので、貸与制の切り替えに前向きな委員の意見を中心に検討を進め、少数意見が残る場合には、この意見の整理の中で、少数意見として併記することもあり得るということを前回お話ししたわけです。
 そして、設置期限の問題のみならず、この問題に関しては、関係各機関と調整したりするために立案作業に相当時間がかかると予測されますので、できましたら、今日と次回6月に予定している検討会の2回の検討会で基本的な方向性につきまして、検討会としての意見の整理を行いたいというように考えておりますので、御協力の程よろしくお願いいたします。
 それでは、お配りしている座長配布資料に沿って順次御意見を伺って、検討していきたいと思います。まず最初は貸与制の趣旨、特に、今まで度々議論になりました修習専念義務との関係が中心になるわけですが、これにつきまして、これまでの検討会では、修習専念義務は司法修習という制度の本質的な要素として導かれるものであって、給費制だから修習専念義務が出てくるものではない、逆に言えば、給費制でなければ修習専念義務が導き出されないということではない、ということは前回の議論で確認されたことではないかと思うわけです。
 その上で、修習専念義務を担保する手段として貸与制を考えることもできるという意見があったわけですけれども、修習専念義務の問題について、最高裁の事務総局の方で、これまでの議論を踏まえまして、何か補足的な説明をお願いできますでしょうか。

○最高裁判所 小池審議官 最高裁の審議官の小池でございます。貸与制へ移行した際に修習専念義務はどうなるかについて、この検討会で議論されてきたわけですが、概括的に申し上げますと、最高裁の考え方は、今、座長がおっしゃられたところと同様でございます。少し敷衍して申し上げますと、司法修習生には修習に専念すべき義務があると抽象的に言われているわけでありますけれども、「修習に専念すべき義務」という文言を直接定めた法令上の規定はございません。実際上は、司法修習生が修習をどういう規律で受けるべきであるかということについて、最高裁規則等に定められているわけであります。
 具体的にいくつか申し上げますと、特に、司法修習生に関する規則には、司法修習生は最高裁判所の許可を受けなければ兼職・兼業ができないという趣旨の定めがございます。それから、司法修習については、「高い識見と円満な常識を養い、法律に関する理論と実務を身につけ、裁判官、検察官又は弁護士にふさわしい品位と能力を備えるように努めなければならない」こととされております。また、品位を辱める行状があったとき、修習の態度が著しく不真面目なとき、成績不良で修習の見込みがないときなどの事由があると認めるときには、最高裁判所は司法修習生を罷免することができることとされております。
 このような個別の規律が規則で定められているわけでありますけれども、これは次のようなことに由来するものであると考えております。
 前回申し上げましたところもございますが、まず一つには、司法修習が法曹資格を取得するための国が法律で定める職業訓練課程であり、高度の専門的実務能力と職業倫理を備えた質の高い法曹を確保するために必須の臨床教育課程として、その基本的内容を最高裁判所が定め、そして司法修習生が修習を修了しない場合には法曹資格を与えないこととされている点であります。こういうことからしますと、司法修習生は、修習課程で用意されております教育内容すべてを履修することが本来的に要請されており、これをきちんと履修しないと法曹としての資格を付与するべきではないという仕組みになっておりまして、基本的にはすべての修習のカリキュラムに出席し、修習期間中は、予定されたカリキュラム以外の時間であっても、もちろん合理的な範囲内で、カリキュラムを十分咀嚼し、身につけるよう、また自らの資質を向上するよう努めることが必然的に求められているわけであります。
 それから、二つ目には、司法修習、特に司法修習の中核をなし修習を特徴づけている実務修習は、臨床教育課程として実際の法律実務活動の中で、あるいはこれを通じて行われるものでございますので、司法修習生は、指導に当たる法律家、法曹とできるだけ同様の姿勢で法律実務の修習に努め、その専門的な実務能力を涵養するとともに法律家と同様の職業倫理の修得に努めることが期待され、また、それが重要となっている点です。もとより実務法曹は、個別具体的な事件の処理に直接携わりますので、その使命を果たすために、それぞれの立場では、中立性・公正性という立場を保持し、利益相反行為を避けることが求められているわけでございまして、司法修習生についても、その修習を効果的に行うため法曹の活動を間近で体験・経験する機会が与えられることから、実務法曹と同様の姿勢で修習に専念してほしいということが求められているといえるわけであります。
 このようなことからしますと、修習に専念すべき義務というのは、繰り返しになりますけれども、法曹資格取得のための教育課程として制度上必須とされている修習の性質、本質、あるいは司法修習生の地位から当然に導かれるものであり、このような抽象的な義務を具体化するものとして、先ほど申し上げましたような兼業・兼職の原則的禁止を始めとする個別の規律が定められていると考えられるわけでございます。
 新しい法曹養成制度の下におきましても、この修習の性質、あるいは制度上の位置付けというものは基本的に変わらないであろうと思います。そうだとすると、修習に専念すべき義務については、新しい制度の下でも基本的に変わらないと考えられます。
 給費制というのは、今申し上げましたような修習に専念すべき義務を経済的側面から支える一つの方策として位置付けられるものでございますので、裁判所としましても、その給費制の在り方あるいは貸与制への切替えを検討するに当たっては、修習効果を上げるために、このような修習に専念すべき義務を経済的側面からサポートするための合理的な代替措置が必要であると考えているわけであります。
 なお、兼業・兼職が特に問題にされることが多いわけでありますが、これを原則として禁止し、最高裁判所の許可に係らしめているという枠組みは、貸与制に移行した場合にも基本的には維持すべき問題であろうと考えております。
 概括的には、以上のとおりでございます。

○田中座長 どうもありがとうございました。
 それでは、貸与制と修習専念義務との関係をどういうふうに考えるべきかにつきまして、貸与制の具体的な内容、仕組みを検討する上で、どのように考えればよいかという点につきまして、これまでもかなり御意見をいただいているわけでございますけれども、この段階で御意見がございましたら、よろしくお願いいたします。
 今まで出てきている議論で、特に付け加えたり差し引いたりすることはございませんでしょうか。基本的には司法修習という制度から本質的に導かれるものであって、そのような議論を踏まえて貸与制の在り方も検討すべきであるということで具体的な論点の検討に入ってよろしいでしょうか。

○川端委員 抽象的には、今言われたような内容についてはそれほど異論はないのですが、問題は具体的な専念義務の程度ですね。つまり修習の効果を上げるために、一体どこまで修習生を拘束できるのかということが議論されなければいけないと思うのです。修習生に関する規則でも、許可を受ければ兼業・兼職があり得るということを認めているわけで、絶対禁止しなければ修習はできない、効果は上がらないということを言っているわけではないのです。
 ただ、現状ではほとんど全面禁止という運用をしています。最高裁の今のお話ですと、貸与制に変わっても合理的な経済的サポートの代替措置があれば、今の運用を変える必要はないというお考えのように聞こえたのですが、貸与制にした場合、当然貸与を強制するわけにはいきませんから、貸与を受けなくて、でも自分はこのような資格があるから、修習の実を十分に上げた上で、なお余裕がある部分があれば、それで自分の経済的なサポートを図りたいと申し出てくる人を、それはだめだと言えるのかどうか。今は兼業・兼職はだめだと言っているわけですけれども、その違いというのが出てくるのか、出てこないのかというのが、修習専念義務についてこれまで議論してきた中心的な問題ではないかと思うのです。私はそこは違いが出てこなければおかしいのではないかと思っているのですが、具体的な中身の問題ですので、抽象的な議論としては、今お話したようなことが問題にならなければならないのではないかと思っています。

○田中座長 今おっしゃったのは、要するに兼業・兼職の原則禁止は全体的には問題ないが、具体的な運用や中身については、貸与制か給費制かで当然に変わってくるかどうかは分からないですが、しかるべき見直しは要るのだということでよろしいでしょうか。

○川端委員 はい。抽象的には修習の実を上げるために専念しなさいということは、これは当然だと思いますけれども、問題は具体的な程度で、要するに学生に「勉学の専念義務がある」というときには、「試験でパスするだけの勉強をしていれば、あとはアルバイトに行ってもいいですよ」というのが実質的な現状ですね。ただ、司法修習生は学生よりもっとはるかに強い専念義務を必要とする課程であるというのは確かなわけですから、それが現在と全く変わらない程度に必要なのか、それとも経済的な代替措置がいわば本人に債務を負わせるという形になることから、ゆとりのある人は、例えば自分で自分の資格を活かしてお金を稼いで借金はしないという選択肢を認めるようなこともあり得るのか、それが認められないのかどうかということはもう少し議論した方がいいのではないかと思います。

○片岡参事官 今、川端委員のおっしゃった論点が確かに存在することはそのとおりでございまして、最高裁の運用面の問題ということであれば、今後の最高裁の方での御検討に向け、この検討会の意見としてお伝えするということはあり得ると思います。
 ただ、一点、今後のいろいろな各関係機関との調整の中で問題になり得ることがありまして、確認をしておきたいのですが、今議論している新しい司法修習の下においても、授業料は取らないということでこの検討会の意見としてよろしいかということです。貸与制に切り替わるのでアルバイトをしてもいいじゃないかという前に、多額の国費・財政を投じて司法修習制度を国が維持・運営しているという実情があるわけでございまして、修習生が3,000人になったという場合には、給費制を貸与制に切り替えたとしても、更に修習の維持の関係で数十億円程度の純増の財政措置をお願いすることが必要になってくるわけです。その場合、受益者負担というような観点から、授業料を徴収するということが必要ではないかという御指摘も現にございまして、この検討会の意見としては、国が引き続き国費をもって運営すべきであり、授業料を取るような学生のような制度ということではなく、引き続きその司法修習の根本は維持するということでよろしいでしょうか。そもそも論で恐縮なのですが、その前提の上での貸与制あるいは兼職という御議論ということでよろしゅうございますか。

○田中座長 それはそうですね。司法修習制度を維持するために相応の国費が投入されているのだという前提で貸与の在り方も考えていくということで、それはそれでよろしいですね。それから貸与制に切り替えるときに、給与と違って貸与だから、借りないかも分からないし、その場合、借りなくて済む理由として、司法修習の専念義務に反しないような兼業・兼職で収入を得るというような場合などについて、必要な検討を加えるということになるのでしょうか。

○井上委員 川端委員がおっしゃっているのも、まだ抽象論にとどまっていて、川端委員としてはどうお考えなのかうかがいたいのですけれども、生活を維持できるだけの職業に就くことを認めても、司法修習生としての十分な修習を身につけるだけの時間を確保できるとお考えなのかどうなのか。そこまで踏み込んだ具体的な議論でないと、意味がないと思うのです。
 もう一つ、前提として、大学について誤解があるようですけれども、試験さえ通ればいい程度の専念義務だというのは全く間違っていまして、そういうことは望ましいとは考えられていません。特に今、法科大学院については、そのようなことをしていたのではとても身につかない、厳しいカリキュラムになっています。そういうふうに大学では専念義務の度合を高めているのに、修習の方を大学での学業に近づけて専念する時間を削れるではないかという議論をするのはおかしいように思うのと、もう一つは、川端委員のようなお考えですと、貸与制すら正当化できるのかが疑問になるように思われます。「自分で稼ぐ時間が十分あるじゃないか、そうであるならば国に頼らず自分で稼いでください」と言われると思うのです。そうではなくて、全面かどうかは別として、多くの時間を修習に注がないといけないということで初めて貸与する理由が出てくることになるはずです。貸与するにも国費を投入するわけですから、そこがちょっと矛盾してこないかという感じがするのです。

○川端委員 今、井上委員の言われる意見は非常によく分わかります。法科大学院では、今、学生は睡眠時間4時間で頑張っているという例をあちこちから聞くのですけど、ただ、今度の法科大学院の制度では、職業を維持したまま法科大学院で学んでいるという人が結構いるわけです。その人たちは、もし今までの給費制だと、確かに一種の公務員的なものなのだから、職業をやめて修習に専念するのは仕方がないと思うかもしれませんけれども、貸与制であれば、法科大学院で職業を持ったまま学業を終えて成果を上げ、修習の場合は時間の制約がきつくなるだろうと思いますけれども、そのまま職業を続けたいという人が出ても、これは不思議はないと思うのです。今のように原則禁止というのを及ばさなければならないほどの専念義務を新しい司法修習について本当に要求できるのかというのが私の根本的な疑問です。具体的には、例えばお医者さんをしている方が週末に1回あるいは週日にも1回程度宿直をするというような兼業とか、あるいはコンサルタント的な仕事をしている人が週末にそのような業務で収入を得るというような状態について、修習生としてはそういうのを認めてはいけない、代替措置としては貸与制があるからそれでいいのだ、と本当に言えるかどうかがちょっと疑問なわけです。
 確かに専念義務はありますし、法科大学院を見れば、大学とは比べものにならない勉学の程度が要求されているというのははっきりしていますし、修習生はより厳しくなるだろうと思いますけれども、でも、それは100%ということは原理的にあり得ないので、そもそも貸与を受けずに可能な範囲で自分で兼業・兼職をしたいという人も原則禁止にするような今の最高裁の運用と同じようなレベルの運用を続ける必要はないのではないかと思うのです。
 しかし、そうなると、井上委員が鋭く指摘されているように、貸与制というものをわざわざ用意する必要もないのではないか、さらに経済的代替措置がどうして要るのかということになってきてしまって、これはこれで非常に大問題になるかもしれません。給費制だったら、簡単に、「余計なことを考えないで専念しなさい」と言えたのが、貸与制になる場合にはその程度が変わってこざるを得ないのではないかと思われます。それで本当にいいのかというのが私の疑問です。

○諸石委員 先ほどの最高裁の御説明に対しては、川端委員も原則論としてはそのとおりだとおっしゃったわけです。その意味から言うと、修習専念義務と給与、貸与の別とが論理必然的に結びつくものではないということについては大方一致しているのだと思います。専念義務というものがレベルの高い勉強、それに集中してやらないと間に合いませんよということは、一方の結果から判断をして、そういう手抜きをしてたら、当然修習に耐えられないだろうから、そういうことで、合理的な説明はつくと思います。
 一方で、兼職禁止について、そっちの勉強の方に時間を注ぎなさいということからいえば、専業主婦が家事をやるのはやめなさいとか、子育てはやめなさい、介護はやめなさいとか、そういうことはあまり言えないわけです。それは、兼業禁止というのは、修習生としての公正さの外観、品位だとか、そういう方に比重がある。もちろんフル勤務は到底だめであるということは言えると思うのです。
 ですから兼業については、最高裁の許可で個別に判断するというのが正しいのだと思います。ただ、その基準として、もう少し見直して、どれくらい忙しいかということもさることながら、公正さの外観を損ねないかとか、品位を害さないかとか、そっちの方に重点を置いた運用をしていただくということをお願いできれば、それで足るのではないかと思います。

○田中座長 そういった意味で、従来の兼業・兼職の許可のルールをそのまま維持するというわけでなくて、見直していくというのは、給与制を維持しても、貸与制に切り替えても、どちらにしろ必要な面があると思うので、それはそれでやっていただくということで、具体的な制度の仕組みとの関係で、今の問題点、忙しさという点だけではなくて、修習ということの公正さとか品位の問題とも兼ね合わせて考えるという意味で、原則的に許可制ということになるのではないでしょうか。

○川端委員 ドイツでは修習生にアルバイトを認めている州があります。州によって制度が違い、一律に認めている州と成績優秀者だけにアルバイトを認めている州と、それからアルバイト先も裁判所に限っている州などいろいろあってなかなかおもしろい制度だと思うのです。日本では、今の規則を全く変える必要なく、あとはただ最高裁の具体的な裁量だけだというのでは、制度の枠組みとしては、貸与制に変わり新しい修習に変わったことによって、修習の実が上がっていて、なお、余裕のある人に対する対応が変わりますよという形にはならないので、私は何らかの、ドイツのような制度までいかなくても、それに近いようなものが導入されてもいいのではないかという気もするのですけれども。

○井上委員 そこはどうかなという感じがします。基本的には専念義務というのは、これまで川端委員も同意されたように、制度の本質から出てくるものであるわけで、諸石委員が言われたような面もあると同時に、時間的な集中度というか、どれだけ割けるのかという問題もあると思うのです。ですから原則としては、そういう支障がないかどうかを個別に判断するということにならざるを得ないので、それは貸与制に切り替えるから、より具体的な基準が必要になるという話ではないと思うのです。そこはちょっと論理が飛んでいて、そこに無理にくっつけて別のことを言おうとされているような気がします。
 結局、基準を立てるとしても、個別の内容によるのだろうと思うのです。そうすると、最終的には最高裁の許可にかからしめるということにならざるを得ない、そういう問題ではないかと思います。

○川端委員 最終的に許可にかからしめるという制度になるだろうというのは私もそうだと思うのですけれども、こういう場合は駄目で、こういう場合には認めてもいいという許可の基準、ドイツのように成績優秀者というのも考え方としてあるかもしれませんが、それが全くなしで、新しい経済的代替措置に移行するのだとすると、今までと全く運用基準が変わらないということになるわけです。しかし、もともと給与制から貸与制に切り替わったときの一番大きな変化としては、強制的に借りるよう強いることはできないだろうということがあるわけで、そうすると、今までは給費制ですから、そんな余計なことは考えないで専念していればよかったのが、貸与制ということならば、時間に余裕がある場合には兼業・兼職を許可してほしいという具体的な要求が出てき得るのだろうと思うのです。現に法科大学院に今学んでいる人たちの資格とか、職業とかを見ると、そういう要求はありそうだと思いますので、やはり、貸与制に移行するのを契機に、修習専念義務を害さない兼業・兼職の在り方というのを、検討会で議論して定めておく必要があるのではないかという感じがするのです。

○諸石委員 議論が貸与制か給与制かの大前提としての議論から、具体的な兼業許可の基準といいますか、許可の在り方に局限されてきたのであれば、ほかにも議題がたくさんあるようですから、この問題はまた最高裁でもお考えいただいて、別の問題として、後でお示しいただいたらどうでしょうか。

○田中座長 これは最高裁だけで決めるわけでなくて、司法修習に関しては委員会を設置してその在り方を検討しているわけですから、そこで今御指摘があった点を踏まえて検討していただくことになるのでしょうか。

○小池審議官 兼業・兼職の許可をどのようにしていくかというのはかなり個別の問題にはなると思いますので、この検討会で原則的な枠組みを議論していただき、司法修習委員会等の意見を聴いて考えていくことになると思います。現在の議論としては、修習期間も短くなっておりますし、先ほど井上委員もおっしゃいましたように、国費を投入しているから、修習に専念するという考え方もありますけれども、修習という臨床教育の趣旨からすると、この貴重な1年という実務法曹が個別指導する修習期間を実りあるものとしてもらいたいし、そのために貸与制というところをしっかりした仕組みにしてほしいと思います。ただ、そうはいっても、一定の年齢層にはかなり経済的に苦しい人もいるかもしれませんので、その辺りは十分考えて、個別に対応していくことになるのだろうと思います。給費か貸与かというよりは、そういう問題、あるいは世の中全体の兼業の考え方がどうなるかという観点から考えていく問題だろうと考えております。

○田中座長 兼業・兼職の具体的な許可基準の問題だと思うので、貸与か給費かにかかわらず、当然出てくる話だと思います。国立大学も法人化しましたから、兼業・兼職の見直しを検討しているのですけれども、別に法人化したから、当然に見直さなければならないというものではなくて、教育・研究に携わる者にふさわしい兼業・兼職の在り方はどのようなものかという形の見直しだと思いますから、同様に、ちょっとこの問題は切り離して、今、御指摘のような点があることは十分留意するということで、原則論としては一応御了解いただいているということでよろしいでしょうか。

○川端委員 原則論という話になると、今と全く運用が変わらないような形でやるということになった場合に、自分で代替できる手段がある人についてまで貸与を強制するということはおかしいのであって、それは当然貸与制が具体的にどうなのかという話につながっていくと思うのです。その意味で給費制ならば問題ないけど、貸与制の場合はもっと検討しなければならない事項が出てくるのではないかということだけ最後に付け加えさせていただきます。

○田中座長 はい。結局、給費制を続けても同じ問題が出てくると思うのですけれども、原則的なことについては、特に御異論はないようでございますので、次の貸与額、返還期間・返還方法、利息、こういった具体的な事項について、今、問題になったような点も踏まえまして、御意見をお伺いしたいと思います。この問題は結構細かい問題もいろいろあって、詰めなければならない問題がいろいろあるわけですけれども、ここでは基本的にどういった考え方に基づいて制度設計をすべきかということを中心に、委員の御意見をお伺いできたらと思います。事務局から最初に補足的な説明がございましたら説明して下さい。

○片岡参事官 若干補足説明させていただきます。この貸付額とか返還期間あるいは利息も含めまして、いずれも財政当局を始めとします関係機関との調整が必要になるわけでありますが、基本的に、どういう考え方、視点に基づいて制度設計をすべきであるかということについて御意見を頂戴したいと考えております。例えば貸付額(上限額)と書きましたが、この上限額すなわち希望すればここまで借りられるという額につきましては、先ほどから話が出ていますように、兼職・兼業をしない、他から収入がないという人を念頭において、そういう人の修習専念義務を考慮して、つまり具体的に言えば、生計費・生活費を相当程度考慮して、それをカバーできる額を設定すべきであるという考え方でよろしいかどうか、ということでございまして、もう少しほかに考え方があるかどうかについて御意見を賜りたいと思います。
 また、返還期間、方法につきましても、例えば10年というような一定の年数を定めた上で、年賦等の分割払いというような基本の方向を決めた上で、返還猶予などを適宜活用するというようなことが考えられないかと思っております。その場合、当然繰上げ償還も可能にしたいと考えているところであります。利息につきましては返還期限までは無利息とするということで関係機関と調整したいと考えておりまして、それでよろしいかどうかというようなことをお伺いしたいと思います。基本的なお考えを、あるいは御指摘をいただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

○田中座長 今、事務局の方から説明がありました点も参考にしていただきながら、2)、3)、4)に関して御意見がございましたら、よろしくお願いいたします。

○川端委員 質問ですけど、よろしいですか。

○田中座長 はい。

○川端委員 修習生の給与額について、期末手当を含めた場合にはいくらになるのでしょうか。

○片岡参事官 いろいろ家族の有無等で個人差がありますが、扶養手当等のほかに、特に期末手当がその計算上大きい額になるかと思っています。これは公務員の給与制度とリンクしているというか、同じ制度になってございますので、現在のところ期末手当が年3.0カ月、勤勉手当というのが1.4カ月となっております。ただ、詳しい説明は省略いたしますが、勤勉手当が修習生に払われるのはおかしいのではないかという指摘がありまして、当然貸与額を決める上でも、自動的に今の額ということにはならずに、見直されるだろうと思っています。そうしますと勤勉手当を除くと、年収で300万円ぐらい、月で25万万円くらいの計算になるのではないかとは思っておりますが、どこまで合理的な積み上げ、説明ができるかが問題になります。これからは、法科大学院を経由するため、修習生の年齢も高くなるので、制度設計として、やはり家庭のある人にも対応できる制度にしていきたいと思っております。

○田中座長 額としては、先程来議論されている修習専念義務を考慮して額を決めていくということになると思うのですけれども、いくつかの段階に分けたりすることは制度設計としては考えられるわけですか。

○片岡参事官 扶養家族のある人に手厚くするために、そのような人には貸付額を高くするというと、そうではない人は低くなるということにもなるものですから、もう少しシンプルな制度は考えられないかと思っておりますが、いずれにしましても、財政当局とのこれからの調整が必要になると考えているところでございます。
 今、お話がありましたほかに、別の意味で、例えばある上限額を設けて、10万円刻み、5万円刻みとし、必要な限度で借りていただくというような制度を考えたいと思います。

○諸石委員 修習生の側からいえば、いくらでも多ければ良いのでしょうけれど、財政当局も、従来の給費制から変わるということを考えますと、従来の修習生に対する給付が一つの基準になる。その辺、今おっしゃったように、個別事情を細かく配慮するとプラスマイナスがあって、その辺は一種交渉事項といいますか、事務局の方でそういう趣旨をふまえて適正な額を財務当局に要求していただければいいのではないかと思います。返還期限がベース10年で、特別な事情があれば延長があり、繰上げ返済もあり、通常に返還する場合は無利息であると、こういうことであれば非常に良い制度だと思います。そういうことで、事務局に御努力をお願いできればと思います。

○田中座長 ほかに何か、このような点に留意すべきであるとか、このような制度設計の可能性を検討すべきであるということがございましたらお願いします。

○川端委員 経済的な支援としての代替措置だということだと、特に法科大学院の学生に社会人の割合が多いということを考えると、現在勤勉手当も含めれば月30万円という給与が現に支給されているわけですから、これを下回るような限度額が設定されるというのはちょっとおかしいのではないか。もしそれを下回らなければならないということだと、今の制度より合理性がなくなってくるのではないでしょうか。

○田中座長 修習専念義務の問題と現在の司法修習生に対して支給されている額というようなことですが、ほかにそういう目安といいますか、留意事項はございますでしょうか。○フット委員 これはアメリカのことを考えますと、ロースクールを出た時点で、既に学部時代、またはロースクール時代の借金などを抱えている人ですと、それをすぐに返還を開始しなければならないとしますと、相当な額になることがあります。ですから今度は日本の制度でも、そういった法科大学院時代の、例えば日本育英会からの借金などに関して、修習期間中は返還猶予ができないのでしょうか。

○田中座長 ロースクール時代の奨学金の返還について、文部科学省より御説明いただけますか。

○杉野専門教育課長 日本育英会はこの度「日本学生支援機構」という名前にこの4月から変わりましたけれども、日本学生支援機構の奨学金の貸与を受けた方は、司法修習生だけではなく一般的に大学を卒業しますと、一律に必ず返還をお願いするということになるわけなのですけれども、その場合、学部の学生が大学院に進学してまだ勉強を続けている場合等のほか様々な事情で返還ができない場合に、申請を受けて個別に返還猶予という仕組みが現在もございます。一般的には災害の被害を受けたとか、病気になられたとか、その他経済的に返還が困難となった場合とか、要するに収入がないのだというような個別のケースについて、個別に申請をしていただいて、返還猶予とするかどうかを判断するという形になっております。
 司法修習生につきましても、現在も同様の考え方になっておりまして、あくまで個別に申請書を出していただいて、個別に判断をするということになるわけですけれども、仮に貸与制に移行した場合であっても、この扱いは変わらないと思われます。個々の方々に申請書を出していただいて、収入がなくても十分に返還できる方もいらっしゃるでしょうから、個別に審査をして猶予をするということになると考えております。

○田中座長 どうもありがとうございました。

○永井委員 法科大学院の学生についての奨学金の申込み状況というのはどうなっているのでしょうか。

○井上委員 これから集計されるのではないでしょうか。

○田中座長 申請は受け付けているのですね。

○井上委員 各大学で今申請を受け付けて、希望を出す段階だろうと思います。

○永井委員 思ったより申込みがやや少ないという印象です。ただ、あくまで途中なので、最終的なところは分からないです。

○田中座長 文部科学省の方で、何かございますか。

○杉野専門教育課長 お尋ねの件についてはまだデータが整理できてないようでございます。

○今田委員 給費制を貸与制への転換するにあたって、兼業も、兼職もしない、国費で生計費が充当されるという、その基本的な考え方はそのまま踏襲したという理解でおります。これまでの給費制では、基本給、扶養手当があり、勤勉手当まであるというような、公務員の給与制度の賃金体系に準拠していたわけですけれども、今度の貸与制の場合には、依拠する賃金体系はそれではないわけで、上限はいくらというのがあるのですけれども、依拠する枠組みは基本的にはどう考えられているのでしょうか。

○片岡参事官 今、御指摘いただいた点が、一つは頑張らないといけない点であり、一つは非常に危惧される点で、例えば一番難しいと思っていますのは、先ほど言いました貸付額の中で、勤勉手当分まで貸付額に入れて今までと同じレベルを確保したいというのは、それだけの説明では難しいと考えられます。実際にこれだけ、つまり川端委員も御指摘のように、とにかくこれだけ生活に必要なのだという説明が必要になってくると思います。そういう意味では、扶養手当分はかなり説明はしやすいのかなとは思っています。そのほか、いろんな要素がございまして、特にこれは私も詳しいことは分かりませんが、公務員としての処遇部分ですが、これは今後は要らないのではないかと言われる可能性もありまして、そうすると修習に専念するには、これだけは必要ですという説明が重要になります。

○今田委員 「手当」という言葉でなくて、例えばこういう条件の方はいくらまで借りられますよと、そういう規定の仕方になるということでしょうか。

○片岡参事官 それもあり得ると思いますが、独身の人に対する貸与額が低くなるという可能性もあり、それは今の修習生に支払われている給費との兼ね合いでどうかということで、いろいろな統計等に基づいて、どういう制度設計がよいか、なるべくシンプルな制度がよいとも思いますし、考えていきたいと思っています。

○田中座長 いかがでございますでしょうか。そうしますと、この点につきましては、これから事務局が関係機関といろいろ調整折衝していただくことが中心になると思うのですけれども、基本的な考え方としては、まず貸付額(上限)については、修習専念義務ということを考慮すべきであるということになると思いますし、それから、現在の司法修習生に対して給与として支払われている額との兼ね合いということも十分御配慮いただきたいというふうなことが基本的な考え方になると思います。
 それから、返還の期間・返還方法につきましては、諸石委員から10年という御提案もございましたけれども、一応10年などの一定の年数を定めた上で、これは年賦等の分割払いということになり、そして繰上げ償還ももちろん可能だというようなことでして、そういった形で意見の整理をしてよろしいでしょうか。利息はこれは遅れない限り無利息というのでよろしいでしょうか。
 その程度にして、あとは事務局にいろいろ技術的な問題を詰めていただくということにしたいと思います。

○川端委員 これも技術的な問題なのですけれども、債権管理はどのようにされるということになるのですか。どこが実際に負担を負うかというのは実質的には重要だと思うのですけれども。

○片岡参事官 従前から川端委員に御指摘いただいておりますが、基本的には国の債権管理制度の中でやっていくことになります。ただ、アウトソーシングの方法が何か可能かを考えることになると思います。

○田中座長 次に5)、6)に記載しました返還免除、返還猶予ですが、これまでの議論では、この検討会でも、公益的な活動に従事する者については、返還免除制度を検討すべきであるという御意見もあったわけでございますけれども、この点につきましては、どのような意見の整理にさせていただいたらよろしいでしょうか。従来、公益的な活動に従事する者については、返還免除制度を検討してはどうかというような御意見が出ていたのですけれども、この点につきまして、特に積極的、消極的な御意見等がございましたら、どうぞ。

○川端委員 返還免除の制度について、原理的に何のために行うのかという問題だと思うのです。修習に専念するためには貸与を受けなければいけなくなりますと、これからの法曹の多様性ということを考えると、返済が非常に苦しくなるという場合にも返還を必ず求めるとすると、端的に言えば、法曹全体がより収入の多い分野に集中してしまうという弊害が出るから、やっぱり返還が苦しくなるような人に対しては免除すべきだという、そういう経済的な必要性で貫くのか、それとも、人材の配分やある政策誘導のインセンティブとしてこの免除制を使うのかというのが、大きな分かれ目ではないかという気がするんです。
 公益的な活動に従事する人に対し返還免除をするというのは、公益的な活動というものの中身はいろいろですけれども、端的に公務に従事する人は公益的な活動に従事しているのだから、そういう人たちに免除すべきだというのは、私としては、それは現在の状況では理由がないのではないかと思っております。それは一つは、経済的な問題ですけれども、法曹三者の中で、生涯の所得を比べた場合に、公益的な分野に行った人は低くて、弁護士になった人は高いというような状況になっているわけでは現在でもないわけです。特にこれから弁護士になる人については、収入の上下の幅がますます制度上大きくなるだろうということが予想されておりまして、平均的に言えば、むしろ裁判官、検察官になった人の方が、平均的な弁護士よりも経済的には生涯通して見れば恵まれる状況になるのではないかというのが、現状から見た予想ではないかと思うわけです。
 そうすると、経済的な理由で公益的分野に行く人を優遇する必要はないし、また、現在の司法修習生の志望状況を見ても、裁判官になりたいという人が予定人員よりはるかに多いというような状況からも、わざわざそういう制度を設けてまで裁判官へと人材を誘導しなければならないという状況もないと思います。要するに、非常に低い収入しか見込まれない公益的な仕事というのがあって、そこに、でも必要だから人員を確保するために何らかの特別な制度をつくるという考え方はあり得ると思いますけれども、そういうものを除けば、一般的な返還免除の制度は要らないのではないかと思います。
 もう一つ先に問題があって、では、そういうものをきちんと定義できるのかということになると、これはなかなか難しくて、いろいろ議論していくとよくわからない状況になっているので、これはもっと検討しなければいけないかもしれませんけれども、ある意味で、そういう面倒な問題を抱えるよりは、返還免除制というのは現時点では不要で、貸与制で借りたものは返していただくという一本の制度でよいのではないかというのが私の考えです。

○田中座長 今まで出てきた意見の中には、司法ネットでの勤務などの意見があったのですが、そういうのはどうですか。公務そのものへの従事とはちょっと性質が違うと思うのですけれども。

○川端委員 司法ネットでの勤務といっても、具体的にどのような形になって、誰がどのような形で行くのかということがまだいま一つはっきりしてないということと、司法ネットにずっと一生いるわけではなくて、ある意味で任期制で行く人が大部分であるということを考えると、在任中一定の期間収入がある程度低くなるということはあっても、それはあくまで一時的な問題ではないかと思います。特に裁判官、検察官が司法ネットに配属される場合に、それまでわざわざ返還免除の対象とするまでの必要があるのか疑問です。もちろん、さっき言ったように、司法ネットだけではなく、弁護士会の公設事務所も含め、普通の経済的な利害からいえばあまり恵まれない分野ではあるが、しかし絶対弁護士が必要な分野に従事していて現に収入が低くなってしまういう人が、従事している間の返還の猶予なり免除を受けるというのは、検討の余地があると思いますけど、それは現実的には非常に難しいと思います。どういう人を免除の対象にするかというのを区分けするのは非常に難しい、そういう私の認識です。

○田中座長 この点に関して御意見はいかがでしょうか。

○今田委員 公的な職務というのは、私的な利益を追求することが制限されている、そういう意味での「公益性が高い」という言葉遣いの方がいいのではないかと思います。多様な法曹人が就く役割には、私的利益を追求しづらいような役割もあり、極端に言えば、経済的に恵まれないような職務にも非常に多様な法曹人が確保されていくことがこれからは期待されているわけです。
 そういう意味からいえば、この大改革は、そうしたことを十全に行えるような制度設計にするということが必要です。川端委員は区分けが難しいというふうにおっしゃいますが、そのような人材の確保をもサポートしていくことができるような制度設計を、例え難しくても検討する必要があると思います。そういう制度による支えがあってこそ多様な人材を十分に育てて確保していける。それによって制度として完成するのだろうと思います。この際、非常に曖昧ですっきりしないから貸与制でというのではなく、もう少し知恵なり工夫をしていってもよいのではないかと思います。そういう意味では、この新しい改革をうまく動かすための一つの手段のような制度として、返還免除という仕組みをうまく制度設計のために使うように知恵を出すことが考えられる。すっきりしないから要らない、全面放棄というのも、正直言っていかがかと思います。私はここで何らかの工夫はした方がいいのではないかと申し上げる次第です。
 ただ、何度も指摘されていますが、裁判官、検察官という特定の職務に人を誘導するためにそういう制度が使われるというようなことではないと思います。あくまでも私的な利益を追求しづらい分野に十分人材をリクルートするという、そういう制度としてうまく制度設計できないかということなのです。

○井上委員 私も今おっしゃったことに基本的には賛成です。ただちょっと川端委員のおっしゃっているのは極論のような気がするのです。特に司法ネットのことなどを考えた場合に、任期制で短期的に少し犠牲を払ってでもやってくれる人はいるだろうというお考えは、現実論として適切ではないように思います。そこには若い人もいれば、キャリアを積んだ人もいて、良い仕事をしていくということでないと、公的弁護にしろ法律扶助にしろ、有効に支えていけないと思うのです。良質なサービスを提供するためには良い人を採らないといけないのであり、今までのように犠牲的精神でというイメージだけでやっていると、現実には、全国に何百という相当の数の人が必要なわけで、うまくはいかない。一切そういうことは考えなくていいというのは、ちょっと極論ではないかという感じがします。

○永井委員 私も同じように、先ほどの兼職の許可と同じように、今後もどのように動くか分からないわけだから、一応、最高裁が減免することができるというような抽象的な方向性は残しておいた方が良いと思います。ただ、具体的にどのような場合に減免ができるかというのは、今後の司法制度の改革を具現化していく場合、また、国民がそういうものを利用する開放性などを確保するための必要性など、抽象的な文言にはなるだろうけれども、そのような余地を規定上は残しておいた方がよいのではないかなと思います。ここで全く減免をなくしてしまうのは問題ではないかと思います。

○片岡参事官 法制的には、恐らく要件を法律に書いた上で、その要件に当てはまるときに返還を免除するか、免除できるかということになると思います。検討会の御意見として、そういう免除制度を検討すべきである、ということはもちろん大いにこれはあっていいわけですけれど、法律上何も要件も定めずに免除制度をつくるということは難しいと思っております。
 また、今の御議論の中で、返還免除制度を設けるべきではないかというような貴重な御意見は非常にありがたいと思っておりますが、これまでの関係機関の意見をお伺いしている現状を申し上げますと、総論としては同じような意見は多いのですが、ただ、具体的になりますと、それぞれの免除対象ごとに意見が異なっておりまして、例えば司法ネットのいわゆるスタッフ弁護士となった者に返還免除を設けることはいいけれども、判・検事の任官者の返還免除は反対であるというような意見もあるなど、どのような対象について返還免除を設けるべきかということにつきまして、関係機関の間で意見が厳しく対立しているという状況にありまして、このままでは調整ができないのではないかと心配している状況にあり、調整に当たる者として非常に悩んでいるというのが現状でございます。

○田中座長 経済的な理由から返還できなくなった場合に免除したり、猶予したりするという点については、御異論はないと思うので、政策的な観点からの返還免除をどうするかということが論点になると思います。これは川端委員のようにややこしいからやめておけという御意見もありますけれども、もう少し検討を続けていただくということでいかがでしょうか。

○井上委員 私も、今の座長のまとめで良いと思うのです。せっかくそういう余地もありそうなときに、原理としてこのようなものは認めるべきではないという議論はちょっとどうかなと思います。要件の設定の仕方が難しいということは分かるのですが、知恵を絞っていって、合理的な理由のあるものは免除していくという制度設計の方が全体としては良いと思うのです。

○川端委員 私も、本当に免除が必要な人に免除ができるという区分けができるのであれば別に反対しないのですが、そのときの要件として、経済的により恵まれない職業であるということと、それからそういう分野に法曹が配置されることが、社会全体にとって極めて必要で何らかのインセンティブを与えなければならない状況にあるというような、そのような要件化ができるのであれば、私としても別にそれに反対するつもりはないのですけれども、いろいろ議論してみると、それが非常に難しいと思います。

○井上委員 それは、法曹三者の間で議論しているから難しいということなのではないでしょうか。今言われた2番目の点は、法曹の頭数さえ確保すればいいのだという発想では貧困だと思うのです。やはり良質の、優れた法曹にそういう分野にも進出してもらう、そのためのインセンティブにするという政策的な使い方があっても良いのではないかと思います。

○諸石委員 要件の決め方が難しいというのは、今、事務局からもお伺いして、なるほどそうかと思うのです。川端委員は、要件の決め方が難しいからいっそのことやめてしまえ、ということですが、何かその辺が合理的に決められるのであれば良い制度であるということについては、恐らく皆さん御異論はないのだろうから、やめてしまうより、何かそういう合理的基準をつくる努力を続けるべきではないかと思います。

○田中座長 具体的にどのようにするかとなると、法曹三者の意見が対立しているようですが、社会的にも納得を得られるような基準をつくるということについて、今の段階でやめてしまうというのはまだ少し早いのではないかという感じがするので、もう少し広く議論をしていただければ、納得のできる理由ならば免除制度があってもよいという理解は十分得られると思うのですが。

○片岡参事官 若干補足いたしますが、スケジュール的な面で、先ほど6月には御意見をいただきたいということを申し上げましたが、このいわばオプションとしての返還免除は、どちらかというと、タイミングという意味では、6月にすべて決定できなくとも、最終段階までに調整することができないかと考えているところでございます。

○田中座長 法曹三者だけで話して、法曹三者に都合のいいような仕組みだけではなく、あくまで社会的に納得の得られる仕組みでないといけないと思うのですけれども、そういうこともありまして、今、事務局から説明がありましたように、基本的なスキームさえつくっておけば、ぎりぎりまで免除制度について検討する余地もあるということなので、そのあたりの整理でよろしいでしょうか。
 では、ちょっと急がせていただきますけれども、次の旅費の支給の問題です。これは貸与制に移行する場合でも、実務修習地と司法研修所との往復などの旅費を支給するという方向で、これは関係機関と調整を行っていただくということでよろしいでしょうか。必要ないという御意見は無いですね。
 次に、前から少し議論あったのですけれども、もう一つ、大きな問題として、貸与制に切り替えるといたしまして、いつの時点から切り替えるのが適切かということについて御意見をお伺いしたいと思うのですけれども、これも事務的、技術的な問題もあると思いますので、まず事務局から説明いただけますか。

○片岡参事官 まず基本的には新たな法曹養成制度を整備し、その中で、法曹人口の大幅な増加を実現するために、現在よりも多数の司法修習生の受け入れ態勢を整備するというような趣旨から考えますと、新司法試験合格者に対する新しい司法修習が始まる平成18年度から貸与制に移行するのが合理的であると考えております。ただ、その場合でも、経過措置としての現行司法試験組が残ります。具体的には恐らく今後も毎年4月から始まる司法修習が残るということが一つの問題として残ります。ただ、貸与制に移行する趣旨の大きな一つとして、受け入れ態勢の整備、新しい法曹養成制度の整備のためということを考えますと、経過措置としての現行司法試験組についてもやはり貸与制に移行すべきであると考えております。実際問題としまして、仮に現行司法試験組については給費制が維持されるということになれば、法科大学院に行かずに現行試験を受け続けようということにもなりかねないということで、制度設計としてもいかがかということになると思います。ただし、新司法試験の合格者の修習が始まる18年秋より前に、2年ほど現行司法試験組の修習があるわけですが、それについてどうすべきかという問題が残りまして、御意見もその点も含めましてお伺いできればと思っております。

○田中座長 年度を決めたとしても、現行司法試験の合格者と新しい司法試験の合格者との関係をどうするかという問題があると思うのですが、そのあたりを含めまして御意見をいただければと思います。

○諸石委員 現行司法試験合格者と新司法試験合格者とア・プリオリに何か扱いを違える理由があるのですか。ある一定の時期からで、それが4月か10月かで、そこらの差があって調整をどうするか、これは分かるのですけど、新司法試験は貸与制で、現行司法試験は2009年か2010年までの間は別だという何か積極的な理由があるのですか。

○片岡参事官 私どもとしては、それは特段の理由はないとは考えております。ただし、そう言ってしまうと、いったい経過期間というのはいつからなのかと、来年からなのかという、いろいろな問題も派生してまいりまして、どのタイミングでどう切り替えるかが問題となります。そして、今、申し上げましたように、切り替えた以上は、現行司法試験組も新司法試験組と同じく貸与制に移行するのであろうとは考えております。ただ、タイミングの問題が若干あるかなと思っております。

○諸石委員 それは法曹人口が増えて、国家の財政負担も増えるということが現実化する時期ということで、今直ちにじゃないという整理で、2年後のどこかからということに当然なるのだろうなと思っていたのですけれど。

○川端委員 私は告知期間の問題があるような気がするのです。というのは、新しい法曹養成制度を制度設計したとき、司法修習は残すということを決めたわけですが、司法修習を残すという意味は、みんなのイメージとしては、まさに今の司法修習が、期間は短くなるけれども、給費制の司法修習制度が残るのだというイメージだったのではないかと思うのです。ですから法科大学院に今来ている人も、現時点では自分が修習生になるときは給与をもらえるということを前提に生活設計しているという可能性があるので、ここでいきなりそれが変わるということになると、やっぱり告知期間としてちょっと問題があるのではないか。実はもう修習生は給費制ではありませんよと、貸与制になりますよというのがはっきりしたときに、例えば法科大学院の学資をどうするか、授業料の用意をどうするかということを併せて、終わってから修習生になるまで、修習生になってから法曹になるまで、全体をどのように準備して臨もうかということをはじめて考えるわけで、平成18年からということは、今、法科大学院に行っている人についても、いわば給費制に対する期待を裏切って貸与制にしてしまうということになってしまうので、ちょっと告知期間としては不十分ではないかという気がするのですけれども。

○井上委員 川端委員のおっしゃる前提は本当にそうなのでしょうか。そう言えるのでしょうか。

○田中座長 私も、学生は当然給費制は見直されるものだという前提の認識のようで、学生を見ている限りは川端委員がおっしゃったような認識はそんなに一般的ではないと思うのですけれども。

○永井委員 うちの大学でも多くの学生は同じような認識だと思います。アンケートをとったわけではないですから詳細は分かりませんけれども、もう給費制はなくなるだろうという覚悟はしているような感じはしますけれども。

○川端委員 それはでも事実の問題ですから。

○永井委員 どちらか分からないです。ただ、昨年受かった学生は、運が良かったと言っていました。

○井上委員 もちろん川端委員がおっしゃったような面もあるとは思うのです。いきなり、来年からと言われたら、それは生活設計が立たないということはあると思うのですけれど、制度の切り替わりですから、どこかで線を引かざるを得ないと思うのです。やはり新しい制度に切り替わるときか、もうそれは単純に合格者数で3,000人になったときか、こういう選択肢しかないと思うんですね。合格者数で3,000人になったときに何か質的に切り替えるだけの理由があるのかというと、2,500人、2,800人となったときと比しても非常に線を引きにくい。その意味で、新制度に切り替わるときに一律にというのが、一番線の引き方としてははっきりしているのではないかという感じはします。

○片岡参事官 繰り返しになりますが、一部にはもう来年度から貸与制へ移行せよと、給費制を見直せというような意見、御指摘もあるわけでございまして、つまり、もう法科大学院が始まっていまして、もう来年度の修習生から経過措置に入って、そこから貸与制でいいのではないかという御指摘もあるわけです。そこで川端委員が言われたように、そこはさすがに問題ではないかというようなことを関係機関との折衝等で申し上げていくかどうか、もう少し御意見をいただければと思います。

○田中座長 平成17年度の現行司法試験の合格者などに対してから適用するかどうかという問題ですか。

○片岡参事官 と申しますのは、新聞等で貸与制への移行がもう決定したみたいなことが報道されたりしていますので、それは告知だけの問題ではなく、新しい修習がいつから始まるということの制度設計の理屈の面といいますか、趣旨の面からくるのが平成18年からの切替えではないかと思っているわけでございます。

○諸石委員 その理屈に川端委員がおっしゃったことを使うのは大いに結構だと思います。

○川端委員 ただ、そうすると、今年と来年、現行試験で合格する人が、平成18年に新司法修習を始めた人と併存することになりますが、もしこっち側の方が、給費制が残っているのだったら、その併存期間中は新しい人も給費制を残すのだ。それだったら、今から告知期間という意味でも十分ではないか。つまり前にそろえるのではなくて、後ろにそろえればいいのではないかという考え方も合理性があると思うのですけれども。

○片岡参事官 といいますか、これはタイミングの問題で、それならいっそのこと来年から貸与制にした方が平等ではないか、併存が一番気になるのであれば、早い時期から貸与制にしてしまうのがよいという考え方も出てきます。

○川端委員 私が言ったのは、基本は告知期間の問題で、それで現行試験組が残るのだとすれば、それに合わせればいいのではないかと。

○井上委員 告知期間という意味では、そのように合わせなければならない理由はないと思います。

○川端委員 併存という制度が奇妙な制度になるという意味です。

○井上委員 そこは、制度の切り替えのときなのでやむを得ないと思うのです。

○田中座長 最初からか、5年後か、平成18年かという三つぐらいの選択肢しかないと思いますが、平成18年をベースに考えるということでいかがでしょうか。告知の問題も、平成17年度の現行司法試験の合格者については、そういうことも配慮しながら検討するというようなことで、よろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

○田中座長 そのほか、今までいただいた御意見以外で、何かございますでしょうか。貸与制の具体的な制度設計とか、あるいは意見の整理をする上で、この点には特に留意すべきであるという点がございましたら御意見をお願いします。
 ほかにないようですが、きょう御意見をいただいた委員もありますし、従来から意見をおっしゃった方も、いろいろ意見を聞いたけれども、別に従来の見解を変える必要はないという方もいらっしゃると思うのですけれども、大勢としては貸与制に移行することは、賛成だという前提で意見の整理をさせていただきたいと思います。意見を整理する段階で、微妙な点については、個別的に意見を確認させていただくところもあるかもしれませんが、今までの議論を踏まえて意見の整理案を示して、改めて御意見を伺うということにしたいと思います。
 次回お示しした上で、どうしても反対だという少数意見が残った場合には、前回もお話ししましたように、本検討会は意思決定機関ではないので、基本的には意見の整理をするということでございまして、他の検討会では意見の整理を座長がして、それで検討を終えているという事例もございますので、具体的にどのような方法でそのような少数意見を併記するかという問題もございますけれども、少数意見として給費制を維持すべきであるという意見があったというような記載が一つ考えられます。そのような整理の仕方でよろしゅうございますでしょうか。少数意見が残った場合には、それを明記させていただきますので、そういう形で整理させていただきたいと思います。
 事務局もよろしいでしょうか。

○片岡参事官 はい。

○田中座長 それでは本日はどうもありがとうございました。次回の検討会は、6月15日(火曜日)、同じく午前10時半から、場所もこの会議室を予定しております。