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法曹養成検討会(第23回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日時
平成16年6月15日(火)10:30〜11:15

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)田中成明座長、井上正仁、今田幸子、加藤新太郎、川野辺充子、川端和治、木村 孟、ダニエル・フット、牧野和夫(敬称略)
(事務局)山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、片岡弘参事官
4 議題
司法修習生の給費制の在り方について(意見の整理)

5 配布資料
(座長配布資料)
意見の整理(案)

(事務局配布資料)
資料1 法曹養成検討会名簿(平成16年6月15日現在)
資料2 法曹養成検討会(第22回)議事概要

6 議事

○田中座長 おはようございます。それでは、第23回の法曹養成検討会を始めさせていただきます。
 本日は、前回お話しいたしましたように、司法修習生の給費制の在り方につきまして、意見の整理を行うことを予定しております。
 まず検討に先立ちまして、事務局から本日の配布資料の確認をお願いしたいと思います。

○片岡参事官 おはようございます。配布資料の確認をお願いいたします。
 まず座長配布資料といたしまして、「意見の整理(案)」でございます。
 事務局配布資料といたしまして、資料1が「法曹養成検討会名簿」、資料2が「法曹養成検討会(第22回)議事概要」でございます。

○田中座長 それでは、本日の検討に入りたいと思います。本日は司法修習生の給費制の在り方につきまして、この検討会として意見の整理を行うことにしたいと思います。前回、御意見を伺いながら確認させていただいたことを踏まえまして、意見の整理の座長案をお配りしておりますので、それに沿って御意見を頂戴できればと思います。本日はこの意見の整理を行うことだけが議題でございますので、よろしく御協力のほどお願いいたします。意見交換に必要な時間は十分あると思いますので、よろしくお願いします。
 それでは、まず事務局から意見の整理の案を読み上げていただいて、その上で御検討いただきたいと思います。

○片岡参事官 それでは、読み上げさせていただきます。

意見の整理(案)

 新たな法曹養成制度の整備に当たり、司法修習生に対して給与を支給する制度(給費制)に代えて、国が司法修習生に対して貸付金を貸与する制度(貸与制)を平成18年度から導入することとする。貸与制の具体的制度設計については、次の点に留意するものとする。
 1 貸付額については、司法修習生が修習に専念する義務を負うことを考慮した額とすること。
 2 返還は10年程度の年賦等による分割払とし、繰上返還も認めるほか、事情に応じて返還猶予を認めるものとすること。
 3 返還期限が経過するまでは無利息とすること。
 4 具体的な返還免除や返還猶予のあり方については、関係機関の意見をも踏まえつつ、引き続き検討すること。
 5 貸付金に係る国の債権管理、事務処理などについては、アウトソーシングなどによる効率化を図ること。
 6 司法修習生に対して旅費(実務修習地と司法研修所との往復など)を支給するものとすること。
(注)
 場合によって、少数意見を付記する。

○田中座長 この意見を整理するに当たりまして、座長といたしましては、この検討会では貸与制への切替えに賛成する意見が多数であると認識して整理させていただきました。そこで、こういった意見の整理の案をお示ししたわけですけれども、これまでも申し上げましたように、どうしても反対であるという少数意見が残る場合には、少数意見として併記することもあり得るということで前回御了承いただいたとおりでございます。ですから、この整理の案でも、(注)で、「場合によって、少数意見を付記する。」と記載させていただいておりますけれども、まず、この案文の修文などについて御意見をお伺いする前に、給費制を維持すべきてあるという少数意見の委員がおられましたら、少数意見として付記するかどうかということも含めましてお考えを伺っておいた方がいいのではないかと思います。

○川端委員 それでは、少数意見を付記していただきたいという立場から申し上げます。 すでにいろいろ議論しましたので、それを繰り返す必要はないかと思いますけれども、給費制を維持するべきであるという立場は、昨日の日本弁護士連合会会長の緊急声明に極めて端的な形で要約されていると思います。
 私の考え方としては、今までの給費制というのは、厳しい修習専念義務を課す一方で、その生活を保障するという形で、法曹資格を、貧富の差を問わず広く開き、多様な人材を育ててきたという歴史的な使命を果たしてきたという事実があるのではないかと思います。とりわけこのような制度は法曹、特に弁護士の公共性を制度的に担保する役割を果たしてきました。私自身もそうですけれども、やはり職業生活上、税金で養成されたという意識、それを何らかの形で国民に返さなければならないという意識がありまして、多くの弁護士が現在も国選弁護あるいは法律扶助といった、ビジネスとしては全く成り立っていない分野の仕事に従事しているという事実があるわけです。
 しかも、法科大学院制度という新しい制度ができたわけですけれども、この一つの問題点というのは、経済的負担がどうしても大きくなるという問題でありまして、法科大学院を終えた後、さらに給費制でない形で修習をしなければならないということになりますと、法曹養成の過程におけるトータルの負担は非常に大きくなるということではないかと思います。
 先週の土曜日の東京新聞の報道にも、法科大学院の学生が給費制が廃止されるというニュースを聞いて、既に1000万円の預金を取り崩して法科大学院へ進む準備をしたけれども、それでは足りなくなるとか、これでは経済的に非常に苦しくなるというようなことを学生などが述べているということが報道されております。
 やはりそういう声を考えると、今、厳しい財政事情とはいえ、給費制をやめて貸与制に切り替えるとうことには、なお問題があるのではないかと思うわけです。ぜひ、このような少数意見がこの検討会であったということを、取りまとめに残していただきたいと思います。

○田中座長 ありがとうございました。

○川野辺委員 貸与制への導入については賛成というわけにはいかないのですけれども、財政的な理由で貸与制を導入しなければいけないということは理解はできますので、私としては、少数意見として付記することは希望はしません。ただ、様々な意見があったことでもありますので、今後、貸与制の具体的仕組みとか修習専念義務との関係とか、償還免除の関係とか、そういうことについては慎重に御検討をお願いしたいということでございます。

○田中座長 ほかに少数意見として記載してほしいという御意見の方は、いらっしゃいますでしょうか。形式の問題としては、例えば「川端委員は・・・○○の少数意見を述べた」というような形でよろしいでしょうか。

○川端委員 形式は座長にお任せいたします。私が申し上げている実質的な中身が記載されれば結構です。

○田中座長 議事録を見れば、どなたがどういう御意見を言われたかは分かるわけですから、形の上ではそれでよろしいですね。川端委員から少数意見が出されたということは最後に(注)として付記することにさせていただきたいと思います。
 それでは、この意見の整理の案につきまして、多数意見としてはこのような内容であったのではないかと思うのですけれども、こういった整理につきまして御意見がございましたら、よろしくお願いいたします。

○川野辺委員 貸与制について、「平成18年度から導入することとする。」と書いてあるのですけれども、平成18年度は新しい司法試験が始まる年ですので、一つの区切りではあると思うのですが、平成18年度からというと4月からという趣旨ですか。

○田中座長 ええ。

○川野辺委員 そうすると17年度の旧司法試験の合格者も18年度の修習から貸与制になるということでしょうか。

○田中座長 その点につきましては、前回も事務局から説明があったように、旧試験合格者と新試験合格者の仕分けをどうするかについては、少し技術的な詰めをする必要があるというので、原則として18年度から導入するという整理になったと思います。

○川野辺委員 18年度はまだ3000人にはなってないわけですから、財政的な理由を考えれば、もう少し後であってもいいのではないかという気もしまして、ここに「18年度から」ということを書くのはどうかなというような気もしているのですけれども、3000人になるのは平成22年ぐらいでしょうか。それはまだはっきりしてないのでしょうか。

○田中座長 それは別に決まっているわけではありません。

○川野辺委員 ですから、そういう将来的な事情もいろいろあると思いますので、18年度に導入するということについては、もう少し柔軟に考えてもいいのではないかという気がしているのですけれども、いかがでしょうか。

○田中座長 前回、平成18年度に移行するということについては、技術的な問題はあるけれども、移行するならばこの時期であろうということで、特に御異論なかったと理解して、このように整理させていただいたのですが。

○川端委員 私は、平成18年度というのは告知期間の点で問題があるという意見を申し上げて、確か永井委員からだったと思いますけれども、今、法科大学院へ来ている学生は既に覚悟して来ているというような御意見があったかと思います。しかし、先ほど御紹介した東京新聞を見ますと、必ずしも今法科大学院で1期生になっている人たちというのは、そういうことを前提として進学しているわけではないという記事になっておりまして、やはり、告知期間という問題はもう少し考えていただいた方がよろしいのではないかと思います。ですから、今の川野辺委員が言われたように、18年度に必ずしもこだわる必要はないのではないかという点については賛成したいと思います。

○田中座長 そうしますと、川野辺委員の意見は修文の意見ですか、それとも補足意見として、そういうことを付け加えるということなのでしょうか。

○川野辺委員 皆さんどうなのかなと確認の意味でお尋ねしました。前回、18年度で合意ができたというようにはちょっと私は理解してなかったものですから。

○田中座長 前回、技術的な問題があることは認識していたのですけれども、18年度からということ自体については最終的には特に異論はなかったので、こういう形でまとめました。川端委員は少数意見として付記するということですが、もし川野辺委員が希望されるのであれば、補足意見として付記しましょうか。

○川野辺委員 そこまでは結構です。

○加藤委員 その点についての私の理解を述べますと、平成18年4月に修習生として採用される人と新司法試験合格で秋に採用される人と両グループがあるわけですけれども、18年度から貸与制に移行するということは、4月から移行するということに決めているわけではないと思います。新司法試験で入ってくる秋採用のグループから移行するということにすると、それは、制度の切り替え時期としても明確ではないかと思います。どこかの時期で切り替えるとすればそこかなと思っています。
 したがって、平成17年度までに現行司法試験に受かって、平成18年の4月に採用される人は、おそらく給費制の対象となり、新試験合格者は貸与制の対象となるという仕切りが、制度の切り替えの理解の点でもいいのかなと思います。それを技術的な問題だと表現されていると理解しているわけですけれども、そういうことですね。

○田中座長 はい。3000人になったら移行するということでは、全く不確定になってしまって、それでは立案作業はできないと思いますので、切り替えるならば新制度のスタートする18年というのが原則になるのではないかということだったと思います。

○川端委員 少数意見になってしまったので、多分貸与制が実現するだろうということを前提に、もう一つだけ意見を申し上げたいのですけれども、返還免除や返還猶予のあり方、これは今後検討するということになっておりまして、もちろんその際にいろいろ意見を述べたいと思いますけれども、この在り方によっては、非常に修習制度全体が歪む可能性があります。せっかく戦後50年培ってきた法曹三者の一体感を崩すような結果にもなりかねないと思いますので、これは日弁連会長の緊急声明にもありますけれども、ぜひその点は十分配慮した検討を進めていただきたいと思いますので、一言申し上げます。

○田中座長 返還免除と返還猶予については、後で御議論いただこうと思っています。少数意見、多数意見ということを問わずに、引き続き検討するということにしていますが、今おっしゃったような、検討するに当たって留意していただきたい点なども、御意見をいただきたいと思います。
 ほかにございますでしょうか。本日、御欠席の諸石委員と永井委員からも書面で御意見が届いておりますので、事務局から要点を紹介いただけますでしょうか。

○片岡参事官 永井委員、諸石委員から書面で御意見をいただいております。この意見の整理の取りまとめ、修文自体については座長に御一任申し上げるということであります。
 そして、永井委員からは、財政事情ということで貸与制へ移行することは理解できるが、ただ、今後のあるいは将来的に見直し等が行われる際には、もう一度給費制を含めて検討することも除外しないと考えている旨の御意見をいただいております。
 諸石委員からは、平成18年から貸与制を導入するということはやむを得ない、そして、返還は10年程度の年賦等とするということであります。さらに、この問題はこれまでも何度も検討を重ねてきたところであるので、本日の検討会で意見を集約して、早急に財政当局との折衝等の調整を進めていただくことを希望するという御意見が寄せられております。

○田中座長 ただいまの永井委員と諸石委員の意見を踏まえて、何か御意見がございますでしょうか。
 ほかに御意見がないようでしたら、先ほどの川端委員の少数意見を付記した形で、事務局の方でこの意見の整理の文章を修文する作業をしていただくということでよろしゅうございますでしょうか。
 それでは、意見の整理の書面の修文にしばらく時間がかかると思いますので、その間、先ほど川端委員から御指摘がございました、返還免除、返還猶予について御意見を伺って、今後の折衝、立案の参考にしていただければと思います。前回の検討会では、返還免除については、具体的な制度設計が困難であるということから、返還不能の場合を除いては免除を設けなくてもよいのではないかという意見がありましたけれども、それに対して、返還免除の要件を工夫して政策的に有意義な返還免除制度を設けるべきだという意見もございました。
 また、川端委員のような意見もあるわけでございまして、これらの点につきまして、本日、さらに御意見をいただきまして、それを今後の検討の参考にしていただきたいと思うのですけれども、前回までの意見を踏まえて何かございますでしょうか。

○川端委員 私の意見は前回申し上げたとおり、単に公益的な仕事に就けば免除するというような基準では合理性はないだろうということです。したがって、その職務が非常に公益性が高くて、そちらに誘導する必要はあるのだけれども、経済的に恵まれないので、したがって免除するというような考え方ができるのであれば、制度として設計することは考えられなくもないということなのです。一番問題になっている司法ネットについてはそうではないかという意見があることは私も理解できないわけではありません。ただ、なぜ司法ネットだけなのかと言われたときに、なかなか難しい問題もあるだろうというところで、この辺は実際に司法ネットの具体的な制度がどうなって、そこに必要な人材が手配できるかどうか、それについて返還猶予なり免除がインセンティブとして効力があるのか、あるいはそれが相当なものとして承認されるような制度になるのかということも含めて慎重に検討しなければならないということです。
 日弁連会長の緊急声明にあるように、任官者に免除するというような制度については、これは法曹養成制度の根幹を揺るがす、つまり任官者についてだけ給費制を維持するのと実質的に同じことになるわけですから、そういう制度を導入することについては強く反対するということでございます。

○牧野委員 返還免除のやり方としてオール・オア・ナッシングで、今まで皆さん議論されていたようなのですけれども、例えば一部免除ですとか、どういう一部にするかというような考え方もあると思います。そういった観点からも御検討いただければと思いますし、あと職務の公益性とかだけではなくて、法科大学院で随分採用しているように、成績優秀者を対象にするとか、そういった方法もあり得るのではないかと思いますので、その辺も含めて検討すべきではないかと思います。具体的には、私自身もまだ案としてはありません。

○田中座長 成績優秀者というのはどこの成績優秀者なのでしょうか。

○牧野委員 司法修習においてということになるかと思います。

○今田委員 インセンティブとして免除制度というのは効果があるのだろうということなのでしょうけれども、私が前から申し上げているのは、今回の改革の大きな哲学というのは、多様な法曹人を育てて、多様な任務に従事する法曹人を質量ともに充実させるという趣旨でして、具体的にそれは3000人という規模の法曹を育てるということでまず実現されるわけです。それが本当に成熟した制度になっていく仕組みをつくらなければいけない。第一に法科大学院がそういう多様な人材を育成するという役割をきちんと担うという状況がまず一方にあって、さらに、そうして育った法曹が多様な分野、役割へと配分されるという制度になっていくということだと思います。
 昨今は、そういう仕組みは市場原理でうまく運営されるという考え方が優勢のようですが、競争とか市場原理だけではうまく実現できないという危惧もあるわけです。一方では経済的にも恵まれ、地位や権力もある法曹の役割と、他方では、収入や権力と無縁な役割もある。法曹の役割の中に、結果として、階層化が生れることは否定できないだろうと思うのです。
 すべての法曹の役割は同じように重要なわけで、多様な法曹を育てる制度として成熟させるために、いろいろインセンティブも含めた仕組みを用意することが非常に重要なのではないかと思います。特に弁護士に対して、社会的に我々のような部外者も大変期待するものが多いわけでして、いろんな地域や社会の様々なところの紛争に、有益なサポーターとしての役割を担ってもらいたいというのもあるわけです。市場の競争の中でうまく充足されていけば、それはいいわけですけれども、必ずしもそうではないようなところも非常に懸念されるということもあって、インセンティブとして免除制度をうまく使った方がよいと思うのです。制度の歪みを生じさせる根幹にかかわる問題であると川端委員は言われているのかもしれませんが、私はそういう根幹にかかわるような議論をしたいわけではなくて、この制度を充実した成熟した制度としていくには、免除制度を残していただきたいと思うのです。
 そして、川端委員と一致する点ですけれども、やはり知恵を出して、良いインセンティブの制度となるように知恵を出し合うということにどうしてもこだわるということで、あえてもう一度最後に意見を申し上げたいと思います。

○片岡参事官 同じような話を前から申し上げているのですが、調整に当たる我々といたしましては、特に法曹三者の間で意見が合わないとなりますと、なかなか調整が難しいのですが、ここは制度設計を考える中で、こういう免除制度も考えてほしいということについて、できれば法曹三者の大勢の意見が一致した上で、調整の機会を与えていただければ非常にやりやすいのです。なかなか法曹三者の中での調整が難しいということであれば、事務局として、方向というのも打ち出しにくい、非常に難しい立場にあることを御理解いただきたい、と思っておりますので、よろしくお願いいたします。

○フット委員 こうした制度設計を考えますと、どうしても思い浮かんでくるのはアメリカのロースクールで行っているLoan Repayment Assistance Program で、これは免除ではなく、援助というべきものですけれども、これは一律のものではなくて、むしろ各ロースクールが個別につくっている制度であります。条件はロースクールによって大分違いますけれども、ほとんどのところでは、二大原則は同じであると私は理解していまして、つまり一つは公益であることと、もう一つは低所得であるということです。何が低所得であるかなどという基準もいろいろあり得るだろうと思いますけれども、イメージとしては一般任官者には、特別なインセンティブは必要があるとは私には思えませんし、アメリカの制度でも一般任官者にはこういう制度を設けていませんけれども、特にインセンティブが必要であるリーガルエイド、それこそショッキングなぐらい所得の低い人です。どうしてもインセンティブが必要であり、かつ社会的な価値のある公益の両要素を、具体的な基準の内容はともかくとしまして、そういった二大原則を設けた方がいいのではないかと思います。

○田中座長 ありがとうございました。公益性とか低所得とか言えば、法科大学院の教員もそこに該当するという気がいたしますけれども、そこまでは、大学の教員一般とのバランスがあって、以前、木村委員から御指摘があったように、大学の教員一般はほとんど免除は認められないという厳しい状態があるので、法科大学院の教員だけ優遇するというのは大学の中で難しいということであったと思います。

○木村委員 私、法曹界の具体的な事情がよく分かりませんので、どういう場合に返還免除すべきか、返還猶予をすべきかということについてよく分かりませんが、ここで全部放棄してしまうというのは非常にもったいないと思うのです。といいますのは、奨学金のことにずっと関わっているもので、ここ20年ぐらいの変遷を見ていますと、例えば、今度、日本学生支援機構になりましたけれども、育英会の奨学金も返還免除はほとんどなくなったということで、ここで適切な制度をつくって、もちろん多様な法曹をつくるということなのですけれども、制度の構築をぜひ検討する必要があるのではないかと思います。
 それから、ここのところ、世界の大学改革について調べているのですけれども、日本は圧倒的に奨学金が少ないんですね。アメリカだと大体学部の5割の学生が奨学金、もちろん返すんですけれども、もらっている。英国もほとんど半分に今増額しているんですね。そういうことから言うと、日本は奨学金のシステムそのものが極めて貧しい国でありますから、この辺は今度頑張るということが私は必要ではないかと思います。

○田中座長 ほかにございますでしょうか。

○井上委員 今、木村先生がおっしゃったことに賛成ですし、前にも申し上げましたが、可能であるなら免除制度を導入した方がいいと思います。実質的な要件をうまくつくっていくというのは大事なので、さっき川端委員が「司法ネットだけを対象とするのはおかしいのではないか、司法ネットは本当にそうなのか」とおっしゃいましたが、そこは当てはめの問題なので、実質的にみんなが合意できるような要件で免除という制度を残すというか、そういうものが設けられれば有益ではないかと思います。

○田中座長 返還免除とか返還猶予の具体的な制度設計につきましては、これから関係機関との調整と法制面での検討が必要になると思いますので、本日の御意見を踏まえて、政策的に法曹関係者以外にも納得していただけるような有意義な観点からの返還免除制などが検討できれば、それが望ましいのではないかということでございますので、事務局を中心に引き続き検討していただくことにして、法曹三者と協力して御検討いただけますでしょうか。
 意見の整理の書面ができたようでございますので、確認いただきたいと思います。

(「意見の整理」配布)

○田中座長 意見の整理の部分はそのままでして、「(少数意見)」のところに、先ほど御了解いただきましたように、「川端委員は、『給費制は、厳しい専念義務の下での充実した修習の基盤となり、また公益的活動を支える使命感醸成の効果をもたらしているのであり、経済的事情から法曹への道を断念する志望者が出ることを防ぐためにも、なおこれを堅持すべきである。』との少数意見を述べた。」という文章を付記していますが、これでよろしゅうございますでしょうか。

(「はい」と声あり)

○田中座長 ありがとうございます。
 それでは、本日の検討会はこれで終了させていただきたいと思います。次回の検討会ですけれども、これはおって御連絡を差し上げることにしたいと思います。