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司法制度改革推進本部顧問会議(第10回)議事概要



1 日 時  平成15年4月14日(月) 15:30〜17:30

2 場 所  永田町合同庁舎2階第1会議室

3 出席者

(顧問)
佐藤幸治座長、今井敬顧問、大宅映子顧問、奥島孝康顧問、佐々木毅顧問、笹森清顧問、志村尚子顧問

(推進本部)
森山眞弓副本部長(法務大臣)

(推進本部事務局等)
山崎潮事務局長 他

4 議事次第
(1) 開会
(2) 司法制度改革推進計画の進捗状況について
(3) 自由討議
(4) 閉会

5 配布資料[PDF形式]
  1. 司法制度改革関連提出法案
  2. 司法制度改革推進計画に基づく主な措置事項(平成14年度)
    ・ 添付資料
  3. 検討会の検討状況
  4. 司法ネット関係資料
    4−1総合的法律サービス提供の仕組み等に関する司法制度改革審議会意見、司法制度改革推進計画及び小泉総理発言の概要
    4−2司法アクセス検討会
    4−3公的弁護制度検討会

[最高裁判所資料]
  1. 司法制度改革推進計画要綱について(平成15年4月)

[日弁連資料] (工事中)
  1. 日弁連司法制度改革推進計画に基づく主な取組事項 ほか
    6−1 日弁連の司法改革推進計画の進捗状況
    6−2 第10回顧問会議日弁連提出資料等目録
    6−3 日弁連司法制度改革推進計画に基づく主な取組事項(レジメ1)
    6−4 日弁連・弁護士会によるリーガルサービスの実績 [ 1 ] [ 2 ]
    6−5 法律相談センター等設立状況全国地図
    6−6 裁判員ドラマ(チラシ)
    6−7 弁護士・弁護士会による司法教育・法教育(レジメ2)
    6−8 「司法に関する教育の充実を求める決議」1993年日弁連定期総会決議
    6−9 「自由と正義」52巻2号特集法教育所収 中村博論文
    6−10 「リブラ」2003年1月号 特集「未来をになう法教育」 [ 1 ] [ 2 ]
    6−11 各弁護士会の司法教育への取り組み
    6−12 日弁連の法教育の取り組み(提言)
    6−13 日弁連ホームページ・子供ページ

[文部科学省資料]
  1. 法科大学院に関する状況について
    7−1 法科大学院に関する状況について
    7−2 法科大学院に係る設置基準の概要
    7−3 文部科学大臣が第三者評価機関を認証する際の基準(細目)について
    7−4 法科大学院の認証評価機関の認証基準(細目)について
    7−5 法科大学院の設置基準・評価基準について

6 会議経過

(1)(司法制度改革推進計画の進捗状況について)

ア 司法制度改革推進計画の進捗状況について、司法制度改革推進本部事務局(山崎事務局長)、最高裁判所事務総局(小池審議官)及び日本弁護士連合会(大川事務総長)から報告がなされた。また、文部科学省(清水大臣官房審議官)から、法科大学院に関する状況について説明がなされた。

イ 上記報告・説明に関し、概要、以下のような質問・意見があった。

  • 我が国産業の国際競争力の強化のためには、知的財産関係の制度整備が必要である。知的財産訴訟については知的財産訴訟検討会での議論が始まっているが、先日、知的財産戦略本部も活動を開始したところであり、両者が連携を図りながら制度整備を進めていく必要がある。
     東京高裁では専門部が作られたところであるが、一歩進めて、高裁から独立した「知的財産裁判所」というもので、場合によっては大法廷で審理するような形にして、訴訟の迅速性や判決の予見可能性を高めることができないか。
     そのためには、人材養成も大切であり、技術系に強い法曹関係者を法科大学院で積極的に養成するような取組が必要である。
     また、特許裁判における提出資料の取扱いを非公開とするなど、被告からの資料提出を促進することによって迅速化を図ることができないか。
     このように、知的財産訴訟検討会では、裁判所の独立、技術的知識をもった人材の養成、手続の整備を総合的に捉えた検討を進めてもらいたい。
    (事務局から、知的財産訴訟検討会では、知的財産戦略本部との調整を図りつつ、御指摘の点を含め、知的財産に係る訴訟に関するテーマを広く取り上げる形で検討を進めている。また、技術系の法曹関係者の養成に関しては、法科大学院において理系の学生を多数育てていただきたい旨説明がなされた。)
    (文部科学省から、法科大学院への他学部からの採用の割合については、設置基準関係で規定しているところであり、評価機関による評価活動において適切に担保される仕組みとしたい旨説明がなされた。)

  • 法科大学院への財政支援については、奨学金による支援に加え、イコールフッティングの観点から、国立大学と私立大学の競争条件を近づけるため、機関補助についての検討が必要である。
     国立大学が独立行政法人となり、政府全体として市場経済化が目指されていると考えられる中で、設置者の違いによって大学に対する公的な支援が異なるのはおかしい。私立大学の立場からは、これまで税制におけるイコールフッティングを主張し、事実上これを達成したところであるが、次は公的助成についても、同様の主張を展開していこうとしている段階にある。
     例えば、授業料に関して、国立大学と私立大学の間で、現状の学部における差以上に大きな開きが出てくるのは望ましいことではなく、少なくとも現状程度の競争条件を担保することが必要である。

  • 法科大学院制度の創設に至るこれまでの経緯を考えると、他の専門職の養成課程と横並びということではなく、政府は特別に責任を持って様々な形での支援策を示していくべきではないか。例えば、奨学金制度についてみると、ただ手厚くするだけではなく、奨学金を受けた後に司法制度への貢献を促すようなことなども視野に入れた制度設計が必要である。

  • 奨学金の問題に関しては、借りたものをどのように返済すべきかという点を含めた制度設計が必要である。また、国立大学と私立大学の格差が大きすぎるという点は確かにあり、いずれにしても、十分な財政措置が必要であることには違いない。
     その上で、奨学金制度については、法科大学院へ安心して行けるということを文系・理系双方の学生に知らせることができるようにする必要がある。

  • 奨学金を返済しないような人に法曹の場を担っていただくわけにはいかない。
     また、奨学金は大学に対して支給するのではなく、あくまでも個人単位で適格性をチェックした上で、支給することを前提とすべきではないか。

  • 補助制度のあり方として、制度全体を個人補助とするのであればよいが、部分的に個人補助とすることには問題がある。

    (文部科学省から、法科大学院を育てていくためには、機関補助と個人補助の適切な組み合わせが必要である。奨学金の仕組みには様々なものがあり得るが、例えば、育英会では債務保証の仕組みを取り入れることとして、独立行政法人化のための法案の中に盛り込んでいる。
     また、大学のイコールフッティングについての議論があったが、国立大学については、独立行政法人化されても、目標・計画に対しては主務大臣が関与することとしており、国立・公立・私立の各設置形態について、それぞれの担う役割をより発展させていく仕組みとして考えている。今後は、評価をめぐる競争をどのように導いていくかということが重要な課題である旨説明がなされた。)

  • 法科大学院がどのようなものになるかという点に関しては、評価機関の役割が重要である。様々な団体が評価機関の立ち上げに向かって動き出すことが、法科大学院の生存関係に大きな影響を与えることになるだろう。推進本部としても、そのような方向に誘導していってもらいたい。

  • 奨学金制度と併せて、教育を提供する側に対しても、少なくとも競争していけるだけの支援が必要である。他国と比べても、国立大学と私立大学の間で国の財政投入の差が大きすぎる面があることには配慮していただく必要がある。

    (佐藤座長から、我が国の教育はこれまで理系が中心で、文系はやや軽んじられていた部分がある。今般の教育改革においても、文系に本格的に取り組むべきとする方向にある中で、法科大学院は文系教育の充実の先導役を担っているといえる。
     具体的な制度設計の内容については、推進本部をはじめ関係機関で早急に検討していただくこととしたいが、顧問会議としては、財政支援が必要であることで一致したことを法務大臣に申し上げ、本部長である総理大臣に是非とも伝えていただくこととしたい旨発言がなされた。)

(2)(自由討議)

ア 山崎事務局長から、司法ネットの整備に関する検討状況及び国民への意見募集の実施について説明がなされた。

イ 上記説明に関し、概要、以下のような質問・意見があった。

  • 司法ネットの整備については、単なる判例や事例の紹介などがインターネットで閲覧できるようにするというだけでなく、基盤整備をしっかりとやらなければならない。
     事務局に対して、①IT戦略本部との連携はとっているのか、②裁判所や弁護士会等の蓄積管理している情報をどの程度提供できるのか、③地方自治体との関係が重要であり、これらで行われている法律相談の現状を把握し、連携を検討する必要があるのではないかという点について質問したい。

  • 上記の質問③と関連して、地方自治体に対して、地元でどのような問題を抱えているかといった点についてのアンケート調査などを実施していく必要があるのではないか。
    (事務局から、①現時点では、IT戦略本部との関係についてまでは検討が進んでいない。②蓄積された情報の取扱いについて、具体的な検討は進んでいないが、なるべく多くの情報を提供できるようにしていきたいと考えている。③地方自治体の意向について、何らかの方法で情報収集する必要があると考えている旨説明がなされた。)
    (佐藤座長から、司法教育との関連でも情報の共有化は重要な課題であり、司法ネットの整備は本質的にITと結びついているので、IT戦略本部との連携も含めて検討を進めてもらいたい。
     また、地方自治体による公的サービスの現状や問題点を把握することは重要であり、地方自治体の方々との意見交換の機会を持つことなども検討する必要がある旨発言があった。)

  • 顧問会議は、国民のニーズを踏まえて司法制度改革の推進状況をチェックしていく場であるから、法曹三者以外にも、司法改革国民会議なども含めてあらゆる人々の声を聞いていくような工夫が必要である。

  • 法科大学院が各地に設置され、学生を含めた組織作りがどのように行われていくかということも念頭に入れる必要がある。
    (佐藤座長から、弁護士会による公設事務所の設置の努力や法科大学院の地域における役割などをサポートしながら、それぞれの特徴が引き出せるように調和を図っていく工夫を考える必要がある旨発言があった。)

ウ 続いて、司法教育について、概要、以下のような意見があった。

  • 司法教育というと機構・制度の解説が中心となりがちであり、問題が起きた場合にどのような手段が取りうるかといった、生活していく上で必要な技術を紹介するという形で自己教育につなげていくことは難しいということを前提としなければならない。
     これは社会感覚にも関わる問題であり、今後の拡がりの余地はあると思うが、重々しいものとして捉えると違った方向に進んでいくおそれもあるので、人生経験の少ない若い人々に教えていくには工夫が必要である。
    (佐藤座長から、現在の教科書は図式の教育が中心であり、自分に困ったことが起こったときに誰に相談すべきかということは教えていない。生きていく上でトラブルに直面したときにどうするかを教えるのが司法教育の内容であるべきであろう。
     また今後、裁判員制度への参加が国民の義務となることなどを考えると、社会秩序の形成に関わる責務があるということを、中学校くらいから教えていく必要があるのではないかという旨発言があった。)

  • これまでの我が国の社会における概念を変える問題であり、個人尊重の下でルールを守らなければならないということと、生きることがどのように保証されるかということとの関係の中で、司法がどのように活用されるかという観点が重要である。そのためには、学校の現場で相当つっこんだ意見交換を行ってカリキュラムを作っていただく必要があるのではないか。
     また、裁判員制度を導入することになれば、社会人教育が重要となってくるので、公民館制度なども視野に入れた地域社会の活用が必要ではないか。

  • 教育がすべて教科書によって学校で教えられるものである必要はないはずであり、社会全体としてどのように法律というものを認識し、一人一人がこの国を運営していくかということが重要である。これまでの社会には、個人間で紛争を解決する能力に欠けていたところであり、個人がきちんと対応するという視点が重要なのではないか。
     例えば、裁判所に行って勉強するというのはどうか。
    (佐藤座長から、教科書がすべてではないという点は御指摘のとおりであるが、子供のころから生きていく上での知恵を授けていくということは重要である。
     これまでの教育は、マスを対象とする立法・行政が中心であり、個別事情に即したサービスを行う司法についてはあまり教えてこなかった。今後は、このようなサービスが身近なところで役に立っているということを教育する場をつくっていくことが我が国社会の構造改革にもつながるものと考えられる旨発言があった。)
    (最高裁判所から、現在でも、児童・生徒が裁判所を見学できるような工夫は行っている。今後、裁判員制度が導入されることになると、さらに整備していく必要があると思われる旨説明がなされた。)

  • アメリカのように私的自治の精神という土壌がないところに、裁判員制度を持ち込んでいくには難しいものがある。ある程度理解力のついた高校くらいのところで、自治の精神というものから教えていく必要があるのではないか。
    (佐藤座長から、裁判員制度について国民の理解を得るには相当な努力が必要であるというのは御指摘のとおりであり、小学校・中学校でも、ルールを決めて守っていくというような問題意識を教えていくことはできるので、一連の長い課程を経て理解させる必要があるのではないかという旨発言があった。)

  • これまでの教育の場では、民主政治全体が行政の問題として取り上げられてきたが、指導要領その他における扱いを工夫することによって、司法の観点をより導入することはできるのではないか。

エ 佐藤座長から、今後さらに、地方自治体の意見を聞いたり、具体的な形を説明する機会を設ける必要があると考えている旨発言があった。

オ 佐藤座長から森山副本部長に対して、法科大学院への財政支援について、具体的な支援の方法は関係機関で詰めていく必要があるものの、顧問会議の場では、財政支援を是非とも考える必要があるという強いコンセンサスがあった旨伝えられた。   

(3) 森山副本部長から、概要、以下のとおり挨拶がなされた。
 本日は、司法ネットの整備や司法教育について熱心な御議論をいただき感謝する。
 一般の人々に司法への理解を深めるには、漫画やテレビなどの活用も重要であり、先般、裁判員制度に関して日弁連が製作された映画も大変よい試みであった。今後、各方面での結論が出れば、政府としても国民への理解を十分に深めていかなければならないと考えている。
 今後ともよろしくお願いしたい。

以 上
文責:司法制度改革推進本部事務局
注)速報のため、事後修正の可能性あり