ア 山崎事務局長から、司法ネットの整備に関する検討状況及び国民への意見募集の実施について説明がなされた。
イ 上記説明に関し、概要、以下のような質問・意見があった。
- 司法ネットの整備については、単なる判例や事例の紹介などがインターネットで閲覧できるようにするというだけでなく、基盤整備をしっかりとやらなければならない。
事務局に対して、①IT戦略本部との連携はとっているのか、②裁判所や弁護士会等の蓄積管理している情報をどの程度提供できるのか、③地方自治体との関係が重要であり、これらで行われている法律相談の現状を把握し、連携を検討する必要があるのではないかという点について質問したい。
- 上記の質問③と関連して、地方自治体に対して、地元でどのような問題を抱えているかといった点についてのアンケート調査などを実施していく必要があるのではないか。
(事務局から、①現時点では、IT戦略本部との関係についてまでは検討が進んでいない。②蓄積された情報の取扱いについて、具体的な検討は進んでいないが、なるべく多くの情報を提供できるようにしていきたいと考えている。③地方自治体の意向について、何らかの方法で情報収集する必要があると考えている旨説明がなされた。)
(佐藤座長から、司法教育との関連でも情報の共有化は重要な課題であり、司法ネットの整備は本質的にITと結びついているので、IT戦略本部との連携も含めて検討を進めてもらいたい。
また、地方自治体による公的サービスの現状や問題点を把握することは重要であり、地方自治体の方々との意見交換の機会を持つことなども検討する必要がある旨発言があった。)
- 顧問会議は、国民のニーズを踏まえて司法制度改革の推進状況をチェックしていく場であるから、法曹三者以外にも、司法改革国民会議なども含めてあらゆる人々の声を聞いていくような工夫が必要である。
- 法科大学院が各地に設置され、学生を含めた組織作りがどのように行われていくかということも念頭に入れる必要がある。
(佐藤座長から、弁護士会による公設事務所の設置の努力や法科大学院の地域における役割などをサポートしながら、それぞれの特徴が引き出せるように調和を図っていく工夫を考える必要がある旨発言があった。)
ウ 続いて、司法教育について、概要、以下のような意見があった。
- 司法教育というと機構・制度の解説が中心となりがちであり、問題が起きた場合にどのような手段が取りうるかといった、生活していく上で必要な技術を紹介するという形で自己教育につなげていくことは難しいということを前提としなければならない。
これは社会感覚にも関わる問題であり、今後の拡がりの余地はあると思うが、重々しいものとして捉えると違った方向に進んでいくおそれもあるので、人生経験の少ない若い人々に教えていくには工夫が必要である。
(佐藤座長から、現在の教科書は図式の教育が中心であり、自分に困ったことが起こったときに誰に相談すべきかということは教えていない。生きていく上でトラブルに直面したときにどうするかを教えるのが司法教育の内容であるべきであろう。
また今後、裁判員制度への参加が国民の義務となることなどを考えると、社会秩序の形成に関わる責務があるということを、中学校くらいから教えていく必要があるのではないかという旨発言があった。)
- これまでの我が国の社会における概念を変える問題であり、個人尊重の下でルールを守らなければならないということと、生きることがどのように保証されるかということとの関係の中で、司法がどのように活用されるかという観点が重要である。そのためには、学校の現場で相当つっこんだ意見交換を行ってカリキュラムを作っていただく必要があるのではないか。
また、裁判員制度を導入することになれば、社会人教育が重要となってくるので、公民館制度なども視野に入れた地域社会の活用が必要ではないか。
- 教育がすべて教科書によって学校で教えられるものである必要はないはずであり、社会全体としてどのように法律というものを認識し、一人一人がこの国を運営していくかということが重要である。これまでの社会には、個人間で紛争を解決する能力に欠けていたところであり、個人がきちんと対応するという視点が重要なのではないか。
例えば、裁判所に行って勉強するというのはどうか。
(佐藤座長から、教科書がすべてではないという点は御指摘のとおりであるが、子供のころから生きていく上での知恵を授けていくということは重要である。
これまでの教育は、マスを対象とする立法・行政が中心であり、個別事情に即したサービスを行う司法についてはあまり教えてこなかった。今後は、このようなサービスが身近なところで役に立っているということを教育する場をつくっていくことが我が国社会の構造改革にもつながるものと考えられる旨発言があった。)
(最高裁判所から、現在でも、児童・生徒が裁判所を見学できるような工夫は行っている。今後、裁判員制度が導入されることになると、さらに整備していく必要があると思われる旨説明がなされた。)
- アメリカのように私的自治の精神という土壌がないところに、裁判員制度を持ち込んでいくには難しいものがある。ある程度理解力のついた高校くらいのところで、自治の精神というものから教えていく必要があるのではないか。
(佐藤座長から、裁判員制度について国民の理解を得るには相当な努力が必要であるというのは御指摘のとおりであり、小学校・中学校でも、ルールを決めて守っていくというような問題意識を教えていくことはできるので、一連の長い課程を経て理解させる必要があるのではないかという旨発言があった。)
- これまでの教育の場では、民主政治全体が行政の問題として取り上げられてきたが、指導要領その他における扱いを工夫することによって、司法の観点をより導入することはできるのではないか。
エ 佐藤座長から、今後さらに、地方自治体の意見を聞いたり、具体的な形を説明する機会を設ける必要があると考えている旨発言があった。
オ 佐藤座長から森山副本部長に対して、法科大学院への財政支援について、具体的な支援の方法は関係機関で詰めていく必要があるものの、顧問会議の場では、財政支援を是非とも考える必要があるという強いコンセンサスがあった旨伝えられた。