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司法制度改革推進本部顧問会議(第10回)議事録



日 時 : 平成15年4月14日(月)15時30分〜17時30分

場 所 : 永田町合同庁舎2階第1会議室

出席者 :
(顧 問)
佐藤幸治座長、今井敬顧問、大宅映子顧問、奥島孝康顧問、佐々木毅顧問、笹森清顧問、志村尚子顧問

(推進本部)
森山眞弓副本部長(法務大臣)

(事務局等)
山崎潮事務局長 他

議事次第 :
1 開 会
2 司法制度改革推進計画の進捗状況について
3 自由討議
4 閉 会

【佐藤座長】 それでは、ただいまから第10回の「司法制度改革推進本部顧問会議」会合を開会いたしたいと思います。顧問の皆さんには、本当に御多用のところ御出席賜りましてありがとうございます。小島顧問は本日所用のため御欠席でございます。佐々木顧問は遅れてお見えになると承っております。また、後ほど法務大臣もお見えになるということでございます。
 本日の議題ですけれども、昨年3月に政府の司法制度改革推進計画が閣議決定されまして、これに従ってこの1年間、司法制度改革が進められてまいりました。関係者の皆様の大変な御努力のお陰であると深く感謝しております。本日は司法制度改革推進計画の進捗状況について説明を受けて、御協議いただきます。
 その後でありますけれども、この機会に自由討議をしたいと考えている次第です。
 それでは、まず最初に司法制度改革推進計画の進捗状況について、事務局から資料の説明をお願いします。

【事務局長】 それでは、私の方から御説明させていただきます。本部の方から提出をさせていただいた資料1〜4まで、それ以外に添付資料というもの、これはもっと詳しくしたものでございますが、これも付けさせていただきましたので、適宜御参考にしていただきたいと思います。
 1年間経過をいたしましたので、その関係の進捗状況について御説明いたします。
 まず司法制度改革関連の提出法案でございますけれども、これが資料1に記載されているものでございます。特にこの通常国会には本部の方から4つの法案を提出しておりまして、法務省の方から3つの法案を国会に提出しているというところでございます。このように改革が進んでいることにつきまして、顧問の皆様には改めて感謝を申し上げたいと思います。
 本部から提出しました4つの法案の内容をかいつまんで申し上げます。
 まず裁判の迅速化に関する法律案でございます。第一審の訴訟手続を2年以内のできるだけ短い期間内に終わらせることなどを目標に掲げた上で、充実した手続の実施と、これを支える制度・体制の整備により裁判の迅速化を実現するということにしたものでございます。
 次に2つ目の司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案でございます。裁判所法、民事訴訟法、及び民事訴訟費用等に関する法律の一部改正につきましては、国民の裁判所へのアクセスの拡充を図る観点から、簡易裁判所が取り扱う民事訴訟の価額の上限を現在の90万円から140 万円に引き上げるということにするとともに、必要な範囲で訴えの提起の手数料の引き下げをするというものでございます。
 それから、その中の民事調停法等の一部改正でございます。これはいわゆる非常勤裁判官制度として、弁護士が非常勤の形態で民事調停事件や家事調停事件に関し裁判官と同等の権限を持って調停手続を主宰することができるという制度を創設しようとするものでございます。
 それから、その中の弁護士法の一部改正でございます。
 司法試験に合格しました企業法務等の担当者などに関しまして、弁護士資格の特例を拡充するとともに、弁護士法上の公務就任の制限の撤廃、弁護士の営利業務への従事の制限の緩和、綱紀・懲戒手続の整備など、弁護士制度の改革を行うということを内容とするものでございます。
 その中の外弁法の一部改正でございます。
 国際化時代の法的ニーズに十分に応えるため、外弁による我が国弁護士の雇用や外弁と我が国弁護士との共同事業等を禁止する規定を削除するとともに、必要な事後的弊害防止措置を講ずるというものでございます。
 大きな3つ目は、仲裁法案でございます。
 現行の仲裁法が明治23年に制定されたものでありまして、国際的な潮流に合わなくなったということから、国連の国際商事仲裁模範法、これをモデルといたしまして、新たな仲裁の基本法を制定するというものでございます。
 4つ目が「法科大学院への裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員の派遣に関する法律案」でございます。
 昨年秋の臨時国会で成立いたしました法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律、いわゆる連携法と言っておりますけれども、この趣旨にのっとり、国の責務として、裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員を法科大学院の教員として派遣するための制度を整備するものでございます。これにつきましては、明日衆議院の法務委員会で審議がされる予定でございます。
 次に、その他の主な措置事項について簡単に御説明をいたします。資料2をごらんいただきたいと思います。
 まず民事司法制度の改革に関しましては、裁判所へのアクセスの拡充の項に書かれておりますとおり、法務省において民事法律扶助拡充のための所要の予算措置を講じております。
 また、ADRの拡充・活性化に関しましては、ADRの拡充・活性化関係省庁等連絡会議におきまして、ADRの拡充・活性化のための関係機関等との連携強化に関するアクションプランをとりまとめたところでございます。このプランはADRに対する国民の理解の促進、ADR機関等へのアクセスの向上、ADRの担い手の確保・育成等について、関係省庁等が横断的、重点的に取り組むべき施策を盛り込んだものとなっております。
 次に国際化への対応につきまして、関係省庁においてアジアその他の地域における開発途上国に対する法整備支援が引き続き積極的に推進されているというところでございます。
 法曹人口の拡大に関しましては、推進計画において司法試験合格者を平成14年に1,200 人程度とするとされていることを受けまして、必要な措置が取られたところでございます。
 また、裁判所、検察庁等の人的体制の充実に関しましても、平成14年度、15年度と、裁判官各45名、検察官各39名の増員が図られているとともに、その他の関係職員についても所要の増員措置が講じられているところでございます。
 検察官制度の改革に関しましては、公益的活動を行う民間団体や民間企業に検事を一定期間派遣する制度を導入するとともに、さまざまな形での研修を実施するなど、検察官に求められる資質、能力の向上等を図るための方策が実施されているところでございます。
 次に裁判官制度の改革に関しましては、裁判官の任命手続の見直し、裁判所運営への国民参加につきましては、最高裁において下級裁判所裁判官指名諮問委員会規則、地方裁判所委員会規則、家庭裁判所委員会規則がそれぞれ制定されまして、必要な仕組みの整備に取り組まれているところと承知をしております。
 それから、最高裁裁判官の選任等の在り方につきましては、運用面での措置に関して内閣官房で検討いただきまして、既に閣議後の官房長官記者会見において選考過程、選考理由を明らかにするという改善措置を講じていただいているところでございます。法制面での措置につきましても、添付資料の方にございますけれども、外国の制度の調査をした上で、検討会において検討いたしまして、その結果に基づいて座長が議事整理メモを作成して公表することにし、また、国民審査公報につきましては、審査対象の裁判官に関する情報公開の充実の観点から字数制限を撤廃するなどの見直しの方向性がとりまとめられているところでございます。
 更に司法制度の国民的基盤の確立につきましては、わかりやすい司法の実現のため、法務省において基本法制の整備が引き続き推進されておりますし、司法教育の充実、司法に関する情報公開の推進に関しましても、検察庁等におきまして、さまざまな取り組みがされているところでございます。
 政府におきましては、今後も司法制度改革推進計画に従いまして、司法制度改革に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 今後、法案提出等の措置が予定されている主な項目といたしましては、民事司法制度の改革に関しましては、知的財産権関係事件への総合的な対応強化、労働関係事件への総合的な対応強化、ADRに関する共通的な制度基盤の整備、司法の行政に対するチェック機能の強化などがあります。
 また、刑事司法制度の改革に関しましては、裁判員制度の導入、刑事裁判の充実・迅速化、被疑者・被告人への公的弁護制度の整備などがございます。
 更に小泉総理が顧問会議でのごあいさつの中で触れられました司法ネットの整備につきましても検討を進めていくということが必要となってまいります。
 このように司法制度改革に関しましては、今後も取り組むべき重要課題が山積しているという状況でございます。顧問の皆様方にも引き続き御協力をよろしくお願い申し上げます。
 なお、最後に情報公開の関係について若干御報告を申し上げます。
 検討会の議事録における発言者名の記載について、現在ではすべての検討会において発言者名を記載するという扱いになっているということは前回御報告申し上げたとおりでございます。当初発言者名を記載しない取扱いをしていた5つの検討会について、昨年それぞれの第1回会合の録音テープの開示請求がございまして、私どもとしては不開示決定をしたところでございます。これに対しまして、異議申立てがなされておりましたが、先日情報公開審査会の答申がされまして、これを踏まえまして、本年3月12日付けで不開示決定を変更いたしまして、議事の公開の協議の部分、これを除き開示する旨の決定を行っております。
 以上、御報告を申し上げます。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。これまで既にものすごい数の、内容的にも非常に重要なことが含まれております法案が成立しあるいは提出されている。また、今後重要な課題が更に目白押しに出てくるということでございます。
 この議題に関連しまして、最高裁判所及び日本弁護士連合会から資料が提出されておりますので、こちらについてもそれぞれ御説明いただきたいと思っております。
 まず最初に最高裁からお願いしましょうか。

【最高裁判所小池審議官】 お手元に最高裁から提出いたしました4月14日付の「司法制度改革推進計画要綱について」と題するレジュメがございます。これに沿って現在の計画要綱の進捗状況について、御報告いたします。
 最高裁では、昨年3月にこの推進計画要綱を定めまして、検討を進めてまいりましたが、その主な措置事項について、お手元の資料に沿って御報告いたします。
 なお、ここに*印が付いたところがございますが、最高裁が行うべき措置には、政府の措置を前提とするものがございまして、言わば最高裁の検討と政府の検討とでは、ややタイムラグが生ずるものがございます。そこで御参考までに、今通常国会に提出された法案との関係で、法案成立後、速やかに最高裁規則を整備する予定があるものを資料に併せて掲げさせていただきました。
 では、かいつまんで御説明申し上げます。
 まず「国民の期待に応える司法制度の構築」の項目でございますが、この民事司法制度改革の中で特に知的財産権関係事件への総合的な対応強化につきましては、平成14年4月、東京高等裁判所に知財専門部を増部する等の措置を講じました。
 また、民事執行制度の強化につきましては、14年4月に執行官の執務態勢を強化するために、総括執行官制度を新たに導入し、あるいは同じく7月に東京・大阪の地方裁判所におきまして、競売物件情報がインターネットで見られるような措置を講じました。
 2ページをごらんいただきまして、裁判所のアクセスの拡充という点でございますが、14年3月に、これまでございました最高裁のホームページに加えまして、全国各地の裁判所のホームページを新しく作りまして、内容も充実させました。
 また、今年に入りまして、3月には、最高裁のホームページにおきまして、これまで最高裁判所の判例集の登載判例を紹介しておりましたけれども、高等裁判所判例集に掲げました判決等の提供も新たに始めました。
 国際化への対応という関係につきましては、法整備支援の推進として、国際協力事業団の実施する法整備支援プロジェクトへの裁判官の派遣等を行っております。
 3ページでございますが、人的体制の充実強化の点でございますが、まず、法曹人口の増加につきまして、今年4月から司法修習生約1,200 人体制での修習を開始いたしました。裁判官等の増員につきましては、先ほど事務局からも御紹介がございましたが、平成14年度は裁判官45人、本年度15年もやはり裁判官45人、併せて所要の書記官、調査官の増員をいたしました。
 それから、法曹養成制度の改革につきましては、一連のプロセスの中の司法修習の在り方などを検討するために、新たに司法修習委員会を設けるための関連規則を制定しました。この5月からはこの委員会が活動し、新しい教育態勢を目指して検討を開始いたします。
 4ページ「裁判官制度の改革」の点でございます。
 まず、給源の多様化・多元化につきましては、判事補に裁判官の職務以外のさまざまな法律家としての経験を積ませる仕組みの整備に関する方針を策定し、また、特例判事補の計画的かつ段階的な解消に向けた方針も策定した次第でございます。
 弁護士任官等に関します日弁連との協議は、ここに掲げてありますように、精力的に進めているところです。
 5ページにまいりまして、裁判官の任命手続の見直しでございます。これも先ほど御紹介ございましたが、最高裁判所の一般規則制定諮問委員会の答申を踏まえまして、下級裁判所裁判官指名諮問委員会を設けることにし、裁判官の選任手続の透明化を図る規則を整備いたしました。この6月には第1回会議を開催する運びでございます。
 裁判官の人事制度の見直しにつきましては、14年7月に有識者より構成されます裁判官の人事評価の在り方に関する研究会から報告書が提出されまして、これに基づきまして、今、検討を進めており、今年中には新たな方針を出したいと考えております。
 裁判所運営への国民参加という点につきましては、裁判所の運営に広く国民の御意見を反映させるための機関として地方裁判所委員会、家庭裁判所委員会を設けることとし、これに関連する規則を整備いたしました。8月からこの新しい制度が動き出す予定でございます。
 司法制度の国民的基盤の確立という点につきましては、先ほども御紹介申し上げましたけれども、その条件整備について裁判所のホームページの充実等を図っているところでございます。
 簡単に裁判所の主な措置事項について御報告いたしましたが、今後も推進本部等と適切な連携を図りながら、司法制度改革の計画的な推進に努めてまいりたいと存じます。
 簡単でございますが、以上でございます。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。
 それでは、引き続いて日弁連にお願いします。

【日本弁護士連合会大川事務総長】 事務総長の大川でございます。よろしくお願い申し上げます。
 お手元に日弁連資料等目録というのをお配りしてありまして、その1枚目が「日弁連司法制度改革推進計画に基づく主な取組事項」とあります。これはやや詳しいものですから、本日お配りいたしました袋の中に、緑色の2枚のペーパーがございます。「日弁連の司法改革推進計画の進捗状況」というペーパーでございます。それに基づきまして、報告をさせていただきます。
 昨年の4月、久保井執行部からバトンを引き継ぎまして、本林執行部がスタートしましたときに、第1の執行方針といたしましたのが、審議会意見書の趣旨に基づく市民の司法の実現を目指すということでございました。これを推進計画に従いまして、積極的に対応していくことでございました。そして、この立法作業に関しましては、国民に開かれた透明なものであることを求めてまいりました。本年1月に、全検討会で議事録顕名化が実現いたしましたが、大変喜ばしいことだと思っております。
 まず、弁護士制度改革、私たち自らの改革課題でございますが、これを審議会意見書の区分けに従いますと、まず、弁護士の在り方をどう改革するかということがございました。この点につきましては、透明化、実効化を図り、説明責任を果たす。そのことによって国民の一層の信頼を得るということを目標にいたしまして、まず、綱紀懲戒制度につきましては、今回の立法作業に先立って多方面にわたる改革に既に着手してまいりました。特に市民から成ります新設の綱紀審査会の設置につきましては、昨年の2月と12月の2回にわたりまして、臨時総会を開催いたしました。そして、この法律が成立をいたしましてから、他の事項とも合わせて本年秋に会則等を定める臨時総会をもう一度開くことを予定しております。
 次に、弁護士会運営の在り方の改革でございますが、会運営に市民の意見を聞く市民委員会の設置を進めております。それ以外には、総会と議事録の公開、それから既に先生方にお配りいたしました弁護士白書の継続的な定期刊行、市民向けホームページの拡充などを既に行っておりますが、これを継続してまいります。
 次に弁護士の活動領域の拡充でございますが、現在の時代状況を反映いたしまして、弁護士が法廷活動以外の分野に急速に進出しつつあります。それに加えまして、このたび弁護士の公務就任、営業等の自由化がされることになりますと、この傾向に拍車がかかろうかと思います。
 こういうことも視野に入れまして、既に弁護士倫理の全面的改正作業を大詰めのところまで進めております。
 弁護士会の国際活動も近年活発になっておりまして、各国の法制度整備支援事業だけ挙げてみましても、カンボジア、ベトナム等、かなりの国に広がっております。
 3つ目に「市民の弁護士へのアクセスの拡充」でございますが、全国各地に法律相談センターの設置をして249 になりました。地裁支部が全国で253 ございますので、あと4か所だけセンターが設置されていないというところまでこぎつけております。
 全国の弁護士会の年間相談件数は、年々4万から5万の増加をしておりまして、一昨年の統計では、約50万件、昨年の統計はまだ出ておりませんが、50万を超えているだろうと思います。
 弁護士がゼロもしくは1の地域を解消いたしますために、弁護士常設型公設事務所を法律相談とは別に設置をすることを計画いたしまして、2000年から取り組み、昨年度8か所設置いたしまして、合計16か所になりました。残りが61か所であります。
 次に、こういう過疎地対策を進めますために、現在、全会員から特別会費を徴収しておりまして、それを使って行っております。その総額は毎年2億円を超えております。
 報酬の透明化、合理化の点につきましては、報酬情報の開示、顧客への説明義務、書面の作成義務等の規則づくりを進めております。報酬基準規定が廃止されますので、市民への何らかの目安づくりが必要になりました。それで公取との協議を重ねまして、全会員のアンケートを基にしました実勢価額の調査結果を示すことで情報提供しようという方向であります。
 弁護士の執務体制の強化でありますが、法律事務所の共同化が急速に進んでおります。1人の事務所の弁護士数は、全体の半分以下になりました。11人以上を擁する事務所の弁護士数比率は11.4%にまでなりました。5年前は100 人を抱える法律事務所は全国どこにもありませんでしたが、現在は5つもできあがっております。
 法人化が進行しておりまして、2002年4月1日から始まり1年間で75件となりました。
 法科大学院関連につきましても、さまざまな領域で取り組みをしておりますが、現在、私たちにとって大きな課題は、日弁連法務研究財団を第三者評価実施機関として立ち上げることができるかどうかという点であります。
 裁判官制度改革につきましては、2001年12月に最高裁との間で弁護士任官推進の合意ができまして、これを基にして新しい制度づくりが急速に全国のブロックで進められました。2002年中に全国8ブロックすべてに適格者推薦委員会を設置することができまして、ここにふるいにかけられた人たちの中で任官した人、あるいはこれから審査を受けようとしている人たちを含めますと、32名を出すことができました。問題はこの数字を毎年毎年維持し増やしていくという課題であります。
 最高裁と非常勤裁判官制度創設に関する協議もできまして、初年度は30名が7庁で執務する予定でございますが、現在、募集手続を始めております。
 最後に、裁判員制度導入の取り組みでございますが、2002年7月に裁判員制度をにらみました刑事司法の具体的制度設計要綱を作成いたしました。そういうのを基にいたしまして、数多くのシンポジウム、研究会を実施いたしましたが、既に全国の33の弁護士会で、模擬裁判劇が実施されました。民間公聴会というのも全国8か所で実施をいたしました。3月末に裁判員ドラマ「裁判員 決めるのはあなた」というドラマができあがりまして、これは大変好評でございます。
 1つは、一般国民に対して裁判員制度とはどういうものなのかということを知らせる意味で貴重であると思いますし、もう一つは、法律家にとりましても、今まで抽象的に議論をしてまいりました裁判員制度を具体的なイメージを持って議論ができるという点で大変いいドラマに仕上がったんじゃないかと自画自賛をしておりますが、この全国上映運動がこれから始まります。既に60か所以上を予定しております。
 以上が日弁連の1年間の取り組みの概要でございます。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。本日は文部科学省からも御出席いただいておりますので、法科大学院に関する状況などについて文部科学省の方から御説明いただきます。

【文部科学省清水審議官】 文部科学省高等局審議官の清水でございます。
 それでは、座らせていただきまして、お手元の資料に沿いまして、法科大学院に関する状況につきまして、御説明をさせていただきます。お手元の資料7−1「法科大学院に関する状況について」を御参照いただきたいと思います。
 まず法科大学院に関連いたしまして、昨年の学校教育法の一部改正、あるいは連携に関する法律等々、関係各省庁等のさまざまな御協力をいただきまして、急ピッチで制度整備に向けて事態が動いている、このように認識しております。
 まず、そこの中で大きく3つの項目がございます。1つは「設置基準及び評価機関認証基準について」ということでございます。お手元の資料7−2(「法科大学院に係る設置基準の概要」)、それから資料7−3(「文部科学大臣が第三者評価機関を認証する際の基準(細目)について」)、資料7−4(「法科大学院の認証評価機関の認証基準(細目)について」)ということで、法科大学院に係る設置基準、あるいは設置基準の概要について、これは既に4月1日に施行させていただいたものであります。
 それと同時に、お手元の資料7−3、及び7−4、第三者評価機関を認証する場合の基準細目、及びその法科大学院の細目ということについては、7−3、7−4で御参照いただければと思いますけれども、早急に制定すべくパブリックコメントをちょうど終えたというふうな状況でございます。
 この点につきまして、お手元の資料で次の資料7−5(「法科大学院の設置基準・評価基準について」)、設置基準と評価基準について、横長の対照した資料をお手元に差し上げているかと思います。ここの観点につきまして、御議論がおありになったということでもございますので、若干御説明させていただきたいと思います。
 設置基準を制定し、今評価認証基準について策定の途上というふうに申し上げたわけでございますが、御案内のように、設置基準は設置に当たって必要となる最低の基準でありますと同時に、これに沿って維持運営すべき基準ということでもあります。
 また、評価基準は、基本的には各評価機関が設置基準の内容を踏まえて作成するというものであり、法科大学院によってはまさにその質の担保、あるいは社会の公表を通じて判断を仰ぐという観点から、連携法により特に適格認定を行うこととされており、評価結果を通じて場合によって改善勧告、是正命令等に至る、そういう意味では設置基準と評価基準というものを1つの関係性を持ったものとして念頭に置きながら考えなければならない。私どもはこのように認識し、また、中央教育審議会におきましても、このような観点から御審議をいただいたところでございます。
 すなわち、1つは、設置基準の策定に当たっては何を意味するかと申しますと、当本部におかれまして、適格認定の基準として検討された内容というものを可能な限り設置基準において明確にする。そして、それは準則主義の考え方に立つということでもあるわけでございますし、また、そこの明確な位置づけの下に、それを認証するための法科大学院に関する評価項目を認証の要件として定める。これは資料7−4を参照いただければと思いますけれども、そういう関係でございます。
 すなわち、当本部におきまして、議論されていたことで申し上げますと、例えば1ページ目の教員組織、これは設置基準なわけでありますが、3ページにおきまして、収容定員の基準・告示と評価の関係。あるいは入学者選抜における多様性確保のための3割以上の努力義務と評価認証の関係。
 あるいは教育課程におきます体系的なカリキュラムの編成と、授業科目をおおづくりな科目として示し、6ページの修了要件との関係では、それぞれの単位数を示すことなくそれぞれの工夫に委ねるという仕組みを取ったもの。
 あるいは4ページの授業を行う学生数についての設置基準、告示の関係の示し方等々であるわけでございます。
 このような全体の関係を含めまして、設置基準との関係について、まさに設置基準の解釈基準的なもの、あるいはより一層の向上のために、まさに認証機関において更にそれに上乗せして、あるいはさまざまな形の創意あるいろいろな法科大学院を目指した評価、活動というものを期待しておるということでございます。
 それでは、2点目の今後のスケジュール関係でございます。お手元の最初の資料にお戻りいただければと思います。
 現在、設置基準について、中間報告も含めて各法科大学院にさまざまな形で考え方の周知の体制を取りました。設置認可関係では6月の末を設置認可申請の締め切りといたしております。7月に諮問いたしまして、具体の審査等を踏まえまして、11月末に認可するというスケジュールで進めておりまして、具体の初年度目の入学者選抜は認可後、それぞれの法科大学院において、募集要綱の実施と同時に、選抜が行われる。したがいまして、12月、1月、あるいは場合によっては2月の初めというのが初年度の形としてはそういう動き方にならざるを得ないのかなと思います。
 また、2年次目につきますと、もう少し学生さんという観点から言えば、余裕あるスケジュールになり得るのではないかということは御留意いただければと思います。
 3点目でございます。
 法科大学院が以上のような設置認可のスケジュールで動くとしますと、16年4月からの学生受け入れに向けて、財政支援をどうするのかというのは、愁眉の私どもにとっての課題であると認識しております。
 まさに改革の理念に沿った法科大学院制度を実現するという部分について、大学院自体に対する機関補助、あるいは学生に対する奨学金等を含めまして、そういう全体としてこの制度が円滑、かつその趣旨が満たされ、実現できるような仕組みというものを私どもとしては、関係機関とも協力しながら、これは具体的に言えば、この夏の概算要求と査定のプロセスを通じて具体化されていくものと認識しておりますが、私どもとしては、これに向けて積極的、かつ全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っておりますので、また、さまざまな形で御支援方をお願いできればと思っております。
 以上でございます。

【佐藤座長】 ありがとうございました。既に改革は大きなうねりとなって動いてきているということがよくわかりましたけれども、なお、いろいろな課題があるということでありまして、ただいまの説明に関連して御質問、御意見をちょうだいしたいと思います。どの点からでもよろしゅうございます。
 今日の議事は、2時間を予定しております。最初の1時間を今の質疑応答、あと1時間を自由討議、そんなことを考えておりますが、必ずしも機械的にやる必要もないかと思います。その辺は適宜判断させていただきます。
 それでは、どの点からでもよろしゅうございますので、どうぞ。

【奥島顧問】 財政支援のところに関連しまして、これは意見ではなくて、どういう状況でやるのかというのをちょっと申し上げておきたいと思いますが、私立大学の方ではイコールフッティングの観点から、これが奨学金でもってバックアップしてもらうということは当然我々も考えておりますけれども、奨学金というのは、何も私立大学に限ったことではございませんので、そういう意味でイコールフッティッングということを考えると、できるだけ競争条件をイコールにしていただく必要があるということで、機関補助についての要請をかなり大きな課題として、私立大学団体連合会としては取り組むことになって、もう既に動いております。
 そういうことで、この財政支援問題については私立大学側で非常に大きな運動の展開を予定しているという状況についてだけ一言コメントしておきます。
 以上です。

【佐藤座長】 この点に関連して、何かございますか。

【今井顧問】 知的財産関係について申し上げたいんですが、この検討会は既に始まっています。それから、先程最高裁から知的財産関係の事件の専門部ができたというお話でございまして、これは我々は非常に期待しているわけでございます。何と言っても、これから日本の産業の国際競争力を強化していくというためには、知的財産関係のいろいろな整備ということが必要です。既に昨年の11月に基本法ができましたし、今年の3月から知的財産の本部ができて活動を開始しています。
 したがいまして、裁判の方もそういう知的財産戦略本部と司法制度改革推進本部と平仄を取って連携を取りながら制度の整理が必要ではないかと考えております。先程の東京高等裁判所を控訴審の専属管轄とするということは、我々非常に評価しているわけですけれども、更に一歩進めて、独立した知的財産裁判所という形にそれができないか。今、4部で16人の裁判官で控訴審をやろうとしているようですけれども、それをさらに高裁から独立させた知的財産裁判所という形にして、場合によったら、裁判官の合議を大法廷ですることで、訴訟の迅速性、判決の予見性をそこで担保できないか。
 したがいまして、非常に専門的な知財の裁判所が、アメリカ、シンガポール、タイには既にできているようですけれども、そういったような非常に専門的な裁判をするということになれば、今後、そのための人的養成もやっていかなければならないということで、技術系の人たち法科大学院でできるだけ積極的に養成していくということが必要になってくるんじゃないか。
 日本では、弁理士の資格を取っておられる弁護士の方が300 人しかいないそうですが、アメリカではパテント・アトーニーという人は2万2,000 人もいて、非常に特許関係のディスピュートの処理というものが迅速に行われるということでありますので、是非そういうことを考えていただきたい。
 もう一つ、特許の裁判が起こったときに、被告側が営業上の秘密だということで資料の提出を拒否できるようになっているわけでございますが、それは非常に裁判の迅速性を損うので、一応非公開の裁判とか、あるいは提出資料の開示を禁止するという形にして、速やかに被告側からも資料が出て、裁判ができるといったようなこと。つまり、裁判所の独立、それから技術的な知識を持った裁判官、弁護士等の養成。それから、今の手続の問題。こういったようなことを総合的に今ある知的財産訴訟検討会の方で進めていただけないかということでございます。
 以上です。

【佐藤座長】 ありがとうございました。先ほど奥島顧問がお出しになった財政支援の話は次にすることにしまして、今井顧問がおっしゃった知的財産関係についてどうでしょうか。推進本部と知的財産戦略本部との連携というようなことをおっしゃいましたが、具体的に事務局から何かありますか。

【事務局長】 今、御指摘のとおり、知的財産戦略本部が立ち上がりまして、そちらと私どもの事項をどういうふうに調整していくかということが必要になってきているという状況でございます。まだ知財戦略本部は立ち上がったばかりで、具体的にはきちっとした決め方はございませんけれども、私どもの知的財産訴訟検討会は昨年から立ち上がっておりまして、訴訟関係のものについては広く検討していこうという形で進めております。御指摘がございました独立した知的財産の裁判所の在り方の問題。それから、営業秘密の保護の仕方、この問題につきましても、私どものこの検討会の検討テーマに入っておりまして、今、検討を続けているという状況でございます。
 それから、もう一つございました技術系の裁判官の問題に関しましては、まさに法科大学院に期待がされているわけでございまして、法学部以外の方々も、法科大学院に入っていただいて、そこで法律を学んでいただいて、両方の能力を持って社会に出ていただくということで、これを是非推進していただきたい。顧問の先生方の中にも学校の方々がおられますので、是非、多数の理科系の人を採っていただいて、それで育てていただきたいと。それの結果を我々も楽しみに待っているところでございます。
 いずれにしましても、知的財産関係の裁判関係につきまして、私ども検討会の方で検討を進めてまいりたいと思っております。

【佐藤座長】 法科大学院の関係については、社会人、他学部出身者を3割入れる。先ほどの説明にありましたように、3割を入れるということはかねて言われてきているところでありまして、この辺がきちっと行われる必要があります。最初にどのくらいの申込者がきてくれるという問題もありますけれども、構造的に少なくとも3割を社会人、他学部から採るようにということを考えてきているわけです。その辺の担保というか、しっかりとその辺が行われていくということについて、文部科学省として何かコメントがありますか。

【文科省】 御手元の資料の3ページをごらんいただければと思いますけれども、法学を履修する課程以外の出身者、社会人が3割以上とするよう努めるということは、設置基準、あるいはそれに沿った告示でもって設置基準関係のところで定めているものでございます。
 そういう意味で、2割に満たない場合は、選抜の実施状況を公表するものとする、これか設置基準関係でございます。私どもといたしましては、まさに評価機関による実際上の評価活動において、その辺りがまさに担保されていくような仕組みとしたいと思っております。
 ただ、努力義務ということではございますけれども、単に努力義務で結果はいいと思ってもらっては困るということでございます。基本的には3割に満たないという状況が恒常的に何らの努力も払われることなく存在するという場合は、それは設置基準違反と言わざるを得ないだろう。少なくともそれぞれの法科大学院がこの制度の趣旨、理念に沿った形に向けて努力をしていただくという意味でございまして、単純に3割を切ったから、2割を切ったから直ちに設置基準違反になるというものではありませんが、やはり努力をしていただく。それは認証評価、あるいは評価の活動の中でそれらを担保していく仕組み、このようなものとして理解しています。

【佐藤座長】 ただいまの説明について何かございませんでしょうか。裁判官とか裁判所の仕組みについては、いろいろな角度から検討する必要があるかと思います。今井顧問のおっしゃった御提言を受けて、いろいろな角度から検討する必要があると思いますので、その辺は戦略本部と推進本部の検討会とが緊密に連携しながら、議論を深めていただければと思います。形としてはいろいろな可能性があると思うんです。
 この点につきましては、このくらいにしまして、先ほど奥島顧問から出された財政支援の話に移りたいと思います。これも私は非常に重要な問題だと理解しておりますけれども、何か顧問の方で御意見ございませんでしょうか。

【佐々木顧問】 この法科大学院というものの成立に至る経緯というものを含めて考えてみますと、これに対するさまざまな形での支援について政府としてかなり責任を持つというメッセージがあってしかるべきではないだろうか。
 つまり、例えばほかのタイプの専門家養成のような大学院と横並びで考えるというわけにはいかない。そういう道義的責任と言いましょうか、道義的な対応が求められるのではないかと考えられるわけであります。
 そこで、奨学金1つを取りましても、具体的にどのようなことが目下検討されているのかということについて、関係者から是非この機会にお話を伺いたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

【佐藤座長】 今の点について、先ほど文部科学省の方からも、是非その辺は配慮していただきたいとありましたけれども、推進本部の事務局の方で、この点について、検討会の議論とか何か述べておくことがありますか。

【事務局長】 今の時点で具体的な御報告するようなものはございません。

【奥島顧問】 簡単にそういうことをやっているということだけを御承知おきくださいという意味で、私はここでそれ以上具体的な御検討をしていただけるとは思っておりませんので、その点については、その程度でいいと思っておりましたが、今、佐々木先生からの御指摘にもありましたので、更に申し上げますと、私どもは今、国立大学が独立法人化するのに伴って、いわば政府全体が目指している市場経済の方向性が独立法人化の裏にもあるんだと考えております。
 そうだとすると、これからの市場経済の中で大学というものは設置者は国であれ、私人であれ、都道府県であれ、その設置者によって公的な支援が異なるというのはおかしいというふうに基本的に考えているわけです。なぜならば、アメリカはそうだからであります。アメリカはむしろ私立大学の方に公的支援が多いという実態があります。
 私たちは、そういう意味では税制においてイコールフッティングを主張しまして、国立大学の場合には、ノンタックスで寄付ができるけれども、私立大学については、今までは課税条件が非常に厳しい。事実上、税金を取られるという方式になっておりましたけれども、一昨年の受託研究の非課税化を始め、昨年の現物給付の場合のみなし贈与所得課税の廃止という形でもって、事実上、国立大学、私立大学の税制についてのイコールフッティングを達成したわけであります。
 その次に私たちは公的助成においても、イコールフッティングを主張しているわけでありますけれども、これは要するに、法科大学院についてはちょうど私たちはイコールフッティングをある意味できちんと主張すべき試金石になると思っているからであります。
 場合によると、これはこれから続々と出てくる専門職大学院についての考え方についての試金石になるのではないかと考えているわけであります。
 そういうわけで私たちは、例えばの話でありますけれども、この奨学金の問題を除きまして、例えば国立大学が授業料が50万円で、私立大学の場合には授業料が200 万円という形の法科大学院の競争状況は余りにも差が大きすぎはしないか。
 例えばの話でありますけれども、学部であれば大体倍くらいの差であるというふうに考えていきますと、どんなに多くても50万円以上の授業料の差が出てくるというのは望ましくないというふうに考えているわけです。
 そういうわけで、現状の差がちっともいいと思っているわけではありませんけれども、少なくとも競争条件としてはその程度に抑えることは考えていただかなければいけない。現状以上に悪くなるというのは、我々としては絶対に承服できないと考えておりまして、そういう点で私立大学連盟では方針を決め、団体連合会でもそれを方針としてもらうことに決まりましたので、それを基にしながら国会に対する対応を我々は始めていくという段階になっているということについて御認識いただき、それについてもしも御意見がいただければお聞かせをいただければと思いますが、別に私どもが今やっていることの御報告でありますので、なくても結構であります。

【佐藤座長】 かなり生々しい話ですが。

【佐々木顧問】 私は今のことについてはコメントする立場にはないですが、例えば奨学金1つ取っても、ただ奨学金を非常に手厚く面倒を見るというだけではなくて、そのサポートを受けた方は、その後、どういう形で司法制度の充実のために貢献するかということを一緒に考慮に入れて制度づくりをするということをやるべきものではないだろうかと思うんです。
 つまり、やらなればいけない仕事はたくさんあるわけでございまして、奨学金はもらった、それで終わりというだけの制度づくりだと恐らく納得が得られないところもあると思う。
 仮に奨学金につきまして、こういう制度をつくるというのであれば、そのときにどのような形で司法改革に御当人が貢献するかということも併せて制度づくりをするようなことも含めて御検討いただければというのが私の本意でございます

【笹森顧問】 奥島先生と佐々木先生の話、それぞれもっともだと思います。特に奨学金の問題、今、先生がおっしゃったとおりなんで、この中で日本育英会がありますね。あそこの場合は今、貸出しをして、返さないでたまっているというのが約1,400 億円くらいあるわけです。要するに、資格を採らせてもらって、そのことを業務としてどう返すかということと、借りたものをどう返済するかという部分を含めて、これは日本育英会とは違うような奨学金制度というのは必要なんじゃないか。
 それから、国立と私立の関係については、今の格差は大き過ぎる。その辺について、もう少しきっちりとできるかできないか。この辺は少し工夫をしていただく必要があるんじゃないか。ただ、前にも、その前のときにも申し上げたんだけれども、いずれにしても、十分な財政措置というのは必要なんだから、このことをきっちりと書く。その上で奨学金制度については、文系も理系も安心して行けるよ。それにはこういう制度があるんだということをアナウンスできるような制度が必要になってくるじゃないかと思います。

【大宅顧問】 奨学金をもらって返さないような人は基本的に無理ですよ。そういう方に法曹の場を担っていただくわけにはいかないでしょう。さっき財政支援というのは何のことなのかといろいろ考えていたんですけれども、例えば中高年失業者に対して、元気にするために中小企業にお金を出したりしましたね。大学がだめだとは言いませんけれども、個人にあくまでも出すべきだと思うんです。そうじゃないと、私たちの願いが本当に質のいい法曹人間がほしいのであって、ちゃんとそこまで行っているか、行っていないかというのは大問題になってしまうので、でも、大体弁護士になったり何かしたら、お金は儲かるんでしょうから、返せるだろうと前提の下にやるわけです。そのチェックというのは必要だと思うんですけれども、あくまで個人単位がいい。日本というのは余りにも個人単位がなさ過ぎるので、そのかわり責任はちゃんと取ってくださいよと。プラス、今、佐々木先生おっしゃったみたいに、よりよい司法に対してコントリビュートするようなということをちゃんと前提にして動き出さないと、お金を欲しい人はいっぱいいるわけでね。

【奥島顧問】 議論するつもりはありませんけれども、個人補助と機関補助の問題、非常に難しい問題があって、その思想はよくわかるんです。でも、そこだけを、例えばこれについてだけ個人補助がいいという言い方であればちょっと問題があるわけです。全部を個人補助にされるんだったらアメリカ的でいいと思っております。アメリカの学校はだからこそ、設置者によって補助金を変えないわけです。そういうふうな思想でもってやるんだったら全く問題ありませんけれども、しかし、全体としては機関補助を取りながら、これについてだけは個人補助だというのは、余りにも我々の主張と違い過ぎるものですから、一応異論を。

【佐藤座長】 文部科学省、どうぞ。

【文科省】 財政支援ということで、私の方からも申し上げさせていただきたいと思いますが、基本的に法科大学院を育てるのは私どもは機関補助と個人補助の適切な組み合わせが必要だと思っております。と申しますのは、法科大学院はもともと少人数、そして多様な特色を求める仕組みです。規模の経済が働くシステムではないということです。そういうものを育てようとする制度であるならば、そういうものが育つような機関助成というのは必要だと、これが私どもの考えであります。
 個人補助の問題が、個人補助のみに成立する要件というのは、法科大学院に進学する要件を何らかの統一的な目で絞るシステムで、それが学生の動き方によって、言わば入るということを前提としなければ個人補助では成り立ち得ません。奨学金と機関補助の適切な組み合わせが必要だと思っています。
 それから、奨学金に関してですが、さまざまな奨学金の支援の仕組みというのは、大いにウェルカムです。しかしながら、育英会というのは、ある部分で言えばローンの仕組み、給付制ではありません。ローンです。ローンの仕組みであると同時に、現在の滞納率は約1,400 億、全奨学生の10%、これは期日が到来した債権で、後の一回でも滞納すれば全部到来したものとしてとらえた債権額です。総額で10%という状況でございます。
 それにつきまして、育英会を独法化するのと併せて、言わば債務保証の仕組みを取り入れて従来の奨学金の制度が回るような仕組みを取り入れたいというのが現在法案として出させていただいております。
 それから、機関補助の関係でございますが、奥島先生には失礼でございますけれども、国立大学の法人化の法案は今私ども出しております。この法人化というのは、基本的に、民営化という考え方ではありません。基本的な国立・公立・私立という3つの設置形態が担われる役割というものを置きながら、そういうものの特色が、何というか発展的できるような仕組みとして考えた。したがいまして、国立大学の法人化に当たっては、独立行政法人のスキームの下に公財政投入をいたします。その代わり目標、計画ということについて、主務大臣がきちんと関与していく。事後チェックの仕組み、そういうものと認識しながら、基本的にそういう設置形態において関与支援の在り方は異なることをアメリカと同様に前提としながら、まさにおっしゃるような市場化ではなくて、教育研究の質の評価を巡る競争という中で、その競争的な環境をどうやっていくか、これは私ども課題というふうに認識しております。
 そのためにいろいろな工夫がおっしゃるように必要だろうと思っております。私どももそのためにいろいろお知恵を借りながらやっていきたいと思っておりますので、御容赦をいただきたい。

【奥島顧問】 議論するつもりはありまんが、大きな意味でバックグラウンドはやはり市場化があるからなんです。まあ、これ以上はやめておきます。

【佐々木顧問】 別の観点でありますけれども、法科大学院がどういう大学院になるかは、評価機関の在り方と密接に関係してくると痛感をしております。先ほど今井顧問の方から知的財産権の関係の重要性の御指摘がありましたけれども、入るときに、例えば理科系の学生をどう入れるかということは確かに重要な点だと思いますが、それを実際的にどういう格好でエンカレッジしていくかということになりますと、評価機関の役割が大変私は重要だと思います。先ほど弁護士会の方からも評価機関の設立のお話がありましたけれども、いろいろな団体が評価機関立ち上げに向かって動くということが法科大学院の生存環境というものに影響するところ大だと思いますので、今後いろいろな団体がそれぞれの若干の違った関心に基づいて評価機関をつくるという努力をすることを本部としても、いろいろな形でエンカレッジする、あるいはエンドースするということは非常に必要なことではないかという感想を持ちました。

【志村顧問】 この財政支援の問題については、奥島先生が孤軍奮闘していらっしゃいますので、私も法科大学院をつくろうという野望を全く持っていない私学の関係者としまして、ひとこと。学生に奨学金を出すというのは、優れた教育を法科大学院でやろうという受け手に対する支援でございます。優れた法科大学院、つくられるものがすべてあるレベルをクリアーしているというのでしたら、やはり教育の提供側にも少なくとも競争していけるだけの支援が必要だということになるんではないかと思います。
 勿論、私学に対する国庫補助の問題は、底が深くて、長い歴史があることは十分存じておりますけれども、しかし、他国と比べましても、国の財政投入の差が余りにも大き過ぎるということは私学関係者は皆痛感しているところでございますので、そういう観点もできるだけ配慮していただけたら、全体の法科大学院の質の向上につながるのではないかと思います。

【佐藤座長】 これは議論すると、これだけで今日終わるくらいの内容のある問題だと思います。時間の関係もございますので、この問題はそろそろ区切りにしたいと思いますが、伺っておって、具体的な制度設計の在り方、中身については、いろいろな考え方がおありだということはよくわかりましたけれども、財政支援が必要であるということについては皆さん共通の御認識ではないかと思います。私、中教審の委員として、総会や部会などでこの問題についてよく申したことですけれども、日本は、今まで理系中心、それが悪いというんじゃないけれども、理系に非常に重点がおかれていて、文系の教育については、なおざりにしてきたというと言い過ぎですけれども、やや軽くとらえてきた趣きがあります。
 今回の、教育改革は、高等教育を充実するということを含んでいる。文系、社会運営のソフトに関わる文系について、充実するようこれから本格的に取り組むんだと。それが日本の構造改革の一環をなしている問題であるという認識を持つ必要がある。
 この間出ました中教審の答申、教育基本法に関するものも含めてのさまざまな答申も、そういう考え方に成り立っているというふうに私自身は理解しております。
 その中で、この法科大学院は、言わば文系の教育を充実する先導役のような役割を、好むと好まざるとにかかわらずそういう役割を客観的に担わされている。
 そういう意味で、法科大学院がいよいよこれからスタートしようとするときに、財政支援の問題は避けて通れない、これは理系に比べると余り大したことはないと言うと怒られるんですけれども、総額としては、それ程大きなことではない。法科大学院というのはそういう位置づけにあるということを前提にして、財政支援が必要である。しかし、その具体的な中身については、推進本部及び関係機関で詰めていただく必要があります。顧問会議としても、かねてそのことを強調してきたことであり、ブリッジ法でも財政支援をしなければいけないとうたっているところです。時間的な余裕は余りないのですけれども、具体的な案を是非早急に詰めて、社会にサインを送っていただきたいと思います。その辺のことについては御異論はないことかと思いますが、副本部長である法務大臣が間もなくお見えになると伺っておりますけれども、その辺のことを副本部長に強く申し上げ、顧問会議としてそういう認識であることを本部長である総理大臣に是非ともお伝えいただきたいと思っております。具体的な中身については、機関補助と個人支援とをどのように組み合わせるかなどいろいろあるかと思いますけれども、それは関係機関でやり方を含めて詰めていただくということで、この問題はこの程度でとりまとめさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
 時間が予定より少しオーバーしておりますけれども、先ほどの事務局、それから最高裁、日弁連、文科省の説明、報告に関連して、この機会に特に尋ねておきたいというようなことはございませんでしょうか。よろしゅうございますか。
 では、前半の問題については、以上で終わらせていただきたいと思います。
 続きまして、自由討議の方にまいりたいと思います。
 前回顧問会議の席で司法教育の重要性について申し上げました。本日は主として司法教育という課題について御議論いただきたいと思います。その前に前回の顧問会議で総理大臣から司法ネットの整備を進める必要があるというごあいさつもございましたので、それに関連して事務局の方で何か検討していることがあれば御説明いただければと思います。

【事務局長】 私の方から司法ネット関係の検討会の検討状況という点について、若干の御報告を申し上げたいと思います。
 資料4−1から4−3までですけれども、これに従って御説明をさせていただきます。
 まず冒頭の資料4−1ですが、これは改革審の意見の関連部分でございます。ここに記載されておりますとおり、改革審議会は民事法律扶助の拡充、司法の利用窓口相談、情報提供について具体的な提言を行っているところでございます。これを受けまして、現在司法アクセス検討会におきまして、諸外国の制度などを参考にしまして、司法の利用相談窓口、情報提供の在り方、それから民事法律扶助の拡充の方向性について検討を行ってきたところでございまして、今後、更に具体的な制度設計に向けた検討を続けていくという予定でございます。
 公的弁護制度につきまして、これは4−3に資料がございますが、これも改革審の意見書にも記載されておりますけれども、被疑者に対する公的弁護制度を導入し、被疑者段階と被告人段階を通じ一貫した弁護体制を整備すべきということを提言されているわけでございます。
 これを受けまして、公的弁護制度検討会におきまして、公的弁護制度の具体的な制度設計について検討を行っております。これに関します法案は、平成16年の通常国会に提出をするという予定でございます。
 それらの意見書におきまして、民事法律扶助の運営主体と公的弁護制度の運営主体との関連性も指摘されているところでございまして、この司法アクセス検討会、及び公的弁護制度検討会におきましては、相互の検討状況を踏まえて、検討を進めてまいりたいと考えております。お互いに連携を取りながら進めてまいるということでございます。
 次に司法ネット整備に関する意見募集について御説明を申し上げます。
 当事務局では、今後司法ネットの整備のための具体的な措置について検討していくにつきまして、この課題について国民の皆様方にどのような御意見があるか把握をさせていただく必要があるということから、資料4−1にございますけれども、全国のどの街でもあまねく市民が法的な救済を受けられるような制度の整備に関する御意見を電子メールや郵送の方法によって募集をするということにしたわけでございます。募集期間は3月27日から6月30日までとしております。
 できるだけ多くの国民から御意見がいただけるように本部のホームページのほかに、各種媒体を通じまして、広報に努めたいと考えております。
 司法ネットの整備につきましては、検討会における検討状況、それから意見募集の結果を顧問会議に御報告いたしまして、また、大所高所から御議論をいただきたいと思っております。そういう機会を持ちたいと考えております。
 検討状況は以上のとおりでございます。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。ただいまの説明に関連しまして、この司法ネットについて、御意見、御質問をちょうだいしたいと思います。

【笹森顧問】 大変結構な総理の発言だったと思うんですけれども、単なる事件や判例の紹介、あるいは模擬裁判がインターネットで見られますよという程度のものではどうにもならないと思うんです。そういう意味では基盤整備をしっかりとやってもらわなきゃいけないと思うんですが、IT戦略本部との連携等については、何かこの段階で考えられておられるかどうか。
 もう一つは、全面公開をしていくという場合に、情報提供の場合に、勿論、プライバシーの保護というのは必要なんですけれども、どのくらいの裁判所とか検察庁、弁護士会が、そういった問題についての蓄積管理したものをインターネットを利用して出せるのかとか、こういう問題についてが2つ目。
 もう一つが、司法の分権化の問題から言うと、司法ネットの構築に当たっては地方自治体との関係が非常に重要になってくるんじゃないかと思いますので、そういった自治体が行っているような法律相談窓口との問題の連携だとか、あるいは自治体が行っているものが十分ではない部分について、どういうふうにそれに対して補完・強化をしていくのかどうか。こういった問題についてもこの中で検討する必要があるし、現状の段階がどうなっているのかということをお教えいただきたい。

【奥島顧問】 笹森さんの意見に関連しまして、どうせだったらそれを思い切って徹底的にアンケート調査をやったらどうでしょうかね。つまり、地元のことについては自治体のそういった窓口が一番詳しいわけですから、それでどういう問題があるのかということについて、きちんとアンケート調査をすれば、ハードデータでもってこの問題についてはある程度方向性が出てくるのではないかと思いますので、私は是非ともそういうことをやっていただければと思います。

【事務局長】 IT戦略本部との関係では、今は中身をどういうことにするかというところから進めておりまして、そことの関係は必ずしも意識をして検討しているわけではありません。必要かどうか、検討したいと思っております。
 それから、それぞれの分野で蓄積したデータ等でございますけれども、これについては、まだ具体的に検討は進んでおりませんけれども、出せるものはその中に全部載せてアクセスが十分できるようにということで努力をしていきたいと思っております。
 それから、自治体との関係につきまして、今、奥島顧問の方から御提言がございまして、自治体がどのような意向を持っているか、これをどういう方法でやるか、アンケートをやるか、あるいは直接ヒアリングをするかいろいろな方法はあろうかと思いますけれども、その辺の情報を収集しなければならないということは御指摘のとおりだろうと思います。私どもも何らかの方法でやっていきたいと思っております。

【佐藤座長】 司法ネット、あるいはこれからまた御議論いただきたい司法教育との関連でも、情報の共有と言うか、広範かつ質の高い情報の共有ということが非常に大きな課題だという感じがするんです。そういう意味で、この問題は、本質的にIT戦略とも結び付いているんじゃないかと思います。その辺は連携を取りながら総合的に検討する必要があり、また、そうしていただきたいと事務局の方にもお願いしておきたいと思います。
 それから、自治体の関係、これも非常に大きな事柄です。これからの司法の在り方を考える際に、自治体での法的サービスの現状がどうなっていて、どういう問題があり、どういう要望があるかということを正確に把握するということは非常に重要なことだという感じます。
 司法制度改革審議会でも司法過疎地が大きな問題となりました。私は浜田へ行ったわけですけれども、そこで自治体の関係者とも会い、当時日弁連の公設事務所が開設された直後でございましたが、司法改革に非常に期待しており、住民の法的サービスについての要望が非常に強いんだという話を伺い、実感させられた次第です。この辺、自治体の方々と意見の交換というか、そういう機会を持つ必要があるんじゃないかという感じさえ私はしております。何か関連して御意見をちょうだいできればと思います。

【笹森顧問】 アンケートを取るのは大いに結構だと思います。それは是非事務局の方で工夫していただきたいと思います。今、座長の言われた地方自治体との意見交換の場、これは全体的に言うと、顧問会議は国民の声やニーズがどうなっているのかというのをチェックしながら、意見書との関係について、きっちりいっているのかというのを見ていく場所です。そうなると、法曹三者の意見というのはいつもこの場で聞かさせているんけれども、それ以外の方々の意見というのはほとんど聞かれない。勿論、アンケートが来たものを見ればいいのかということもあるしれない。やはり直接生の声をどう聞くか。そういうことが必要になってくるんじゃないかと思います。
 そういう意味では、ここの顧問がかなり関係しているんですが、司法制度改革国民会議からの意見書なども具体的にはこの場でどういう紹介をされているのかというのもないわけだから、そういう部分も含めて、あわゆる層の人たちのというところを少し工夫していただいて、そういうヒアリングをするという機会も是非工夫していただければと思います。

【佐々木顧問】 ちょっと思い付き的な話で恐縮なんですが、ネットの活動はどういうインフラをつくるか、まだ具体的なイメージはないんですけれども、例えば今度法科大学院があちこちにできると、これは地域的なバランスも考えてできるということになりますと、こういった学生たちを含めた組織をどういうふうにそれぞれの地域でうまく組み込んでいくか。それはお互いの、いろいろな意味での勉強ということにもなろうかと思いますので、そういったアクターも少し念頭に入れる余地があるのではないかと思います。

【佐藤座長】 先ほどの日弁連からの報告ですが、公設事務所創設に努力して、今16か所ですか。日弁連も非常に御苦労され、努力されてきているわけですけれども、日弁連始めいろいろなところの努力と、それをうまくオーガナイズするというか、それぞれの特徴を引き出せるような仕組み、堅いものでなくてもいいと思うんですけれども、そういうサポート、推進するような何かを考える必要があるのかもしれないという気もするんです。それが具体的にどんな形なのかは、これから御議論いただいたらいいと思うんですが。日弁連もあり、佐々木顧問がおっしゃった法科大学院もある。法科大学院は、これは全国適正配置ということを推進しなければいけないものですから、法科大学院のそれぞれの地域における役割をどうやってうまく引き出すかということでもあろうと思うんです。その辺をうまくオーガナイスするような、動かすような工夫は必要かなという感じがしております。その辺についてこうやったらいいんじゃないかという御提案があれば、この機会に是非伺っておきたいと思います。今日はいろいろな考え方、思いつきでも結構でございますので、おっしゃっていただいて、詰めの段階は詰めの段階でまたお諮りしたいと思いますけれども、いかがでしょう。
 また、この課題に戻っていただいて結構でございますので、司法教育に関連しても御意見をちょうだいできればと思います。この間の中教審の答申の中で、教育基本法の改正に関連してですけれども、新たな公共性というものを1つの柱として考える必要がある、そして、教育振興基本計画を策定する根拠規定を教育基本法に設ける必要があるということが指摘されています。そして、その基本計画の例として、司法教育の充実と言いますか、これから司法教育をきちんとやる、やらなければいけないということがうたわれています。これは文科省とも関係してくる話かと思いますが、司法教育の現実はどうか、中学とか高校の、公民ないし、政治経済の教育の現状はどうなっているのか。どういう問題があるのか。今後はこういう内容の教育をする必要があるんじゃないかとか、その辺も含めて率直な御意見をちょうだいできればと思います。

【佐々木顧問】 大変難しいテーマだと思います。政治教育と司法教育は非常にこの国では難しいと私は思っております。私も教科書に関わっている立場の者から言いますと、こういう紛争的問題状況を教材化するということは非常に難しい。政治も紛争ばかりではないと思いますけれども、やや紛争的状況と関わっておりますが、どちらかというと、この国ではとかくみんな仲よくしましょうという教育が受け入れられやすいし、多分、学校教育も平和なうちにそうした方がいいだろうということがありますので、実際にいろいろな問題に直面したときにどうするかという、ある意味での基本的な自分が生きていくための手段をどうするかということについては、なかなかすっきり入らないか、入れるのが非常に難しいという大前提を頭に置かなければいけないので、どちらかというと、機構の話、制度の話で終わってしまう。せいぜい司法改革推進会議ができたということを1行書いて終わるという、これが高校の社会科の公民の教科書などもそんなような感じになって、これからは司法人口が増えるとか、大事になるとか、いろいろな行政改革の並びでという解説はあるんでしょうけれども、やはり自分の問題として自己教育とつなげていくということが非常に難しいのではないか。そして問題にぶつかったときに、どうしようかという形になってしまって、ある意味では遅すぎるということもあり得るので、これをどういうふうな形でうまく、よその話ではなくて、自分が生活していく上で、ある種必要な1つのスキルとして消化していくというか、非常に難しい。つまり問題は一種の社会感覚というものに関わるものですから、大人の方は教えやすいのかもしれないけれども、子どもや人生経験が非常に少ない人たちにそれを教えていくというのは、ある種の1つのケースをいろいろ出して勉強してやってみましょうということで幾つか広がっていく余地は私もあろうかと思いますけれども、何か司法教育という重々しいもので出てきてしまうと、何かすぐ違ったものに化けてしまうような気がして、1つこなさないと、特に中学校くらいまでもそうだと思うんです。なかなかこれは難しい。私は正直言ってどうしたらいいのかについて、解がないと思う。そういう感想がありますので、ほかの顧問の方からむしろ教えていただければと思います。

【佐藤座長】 私も、今佐々木顧問がおっしゃったことと同じような感じをもっています。私もかつては高校の政治経済を書いたことがありますし、現在は中学の教科書の編集者みたいになっているんですけれども、要するに、今の教科書というのは、国会・内閣・裁判所、あるいはそれらの関係がどうなっているかという図式を教えているんです。自分が生きていく上で困ったときにだれに相談し、だれのアドバイスを得てどうやったらいいのかというようなことについてはほとんど触れてないんです。こうした図式は中学生の生活にとっては全然関係がないというか実感できないのでして、しかし、暗記すれば試験では役に立つといった感じになっているんじゃないかなと思うんです。
 自分が生きていく上で困った問題に直面したときにどうすればいいのかという辺りところ、社会の仕組みだとか、そういうことを教えるということが、言葉は堅いですけれども、司法教育の1つの内容かなと思います。
 もう一つは、裁判員制度との関係です。いよいよ裁判員制度が導入されます。この裁判員制度というのは国民の一般的な義務ないし責務になるわけでして、社会の秩序の形成に関わる責務があるんだということを中学くらいの段階からある程度教える。社会の秩序は人ごとではなくて、自分自身の問題であるということを教える必要も非常に強いんじゃないか。
 このように、自分自身の問題、それから社会の在り方に自分が関与せざるを得ないという両面についての教育というか、そういうことが必要ではないかという感じを私個人としては持っているわけです。

【笹森顧問】 教育だとかいうことはよくわからない、専門家でもないんて、感じで言うと、一般的な今までの日本の社会にあった概念というのはちょっと変えなきゃならないのかと思うんです。裁判ざたは起こしたくない。新聞ざたになっては困るよと。その代わりにいろいろな生活だとか、そういう部分にいてはお上のさた次第と。それではないんだと。やはり民主主義の世の中になった個人個人がどう尊重されるのか。それには決め事とかルールを守らなきゃいけない。しかし、個人尊重が行き過ぎてしまうと、いろいろな社会の決め事とぶつかる。そこにこういう司法がどういう役割をするのか。先ほど言われたように、生きる力というのは、教育審議会でもいろいろやられているようですが、そのためのルール、決め事に対して日本としてどう守っていって、それによって生きることがどう保障されるのかという部分がもう少し概念的に出てくればいいのかなと。これにはかなり専門的なレベルが必要なんで、相当突っ込んだ意見交換をやってカリキュラムをつくってもらうと。学校の現場ではそういうことが必要ではないか。
 今、佐藤座長が言われたように、これから裁判員制度が導入されてくるということになれば、社会人教育というのはものすごく必要です。今まで学校で習っていないんですから、そこのところになると地域の問題も含めて、いろいろなレベルの人たちにやらなければならない。これは2つあるんだけれども、1つは企業の中というのは非常に大きいと思うんです。これは経済に対しても働く。
 もう一つは、地域社会をこれからうんとそういうところに活用していくということになると、かなり今、実効的には薄れていると思うんだけれども、公民館制度というのはきっちりそれぞれのエリアにあるわけです。そこには老若男女全部いるわけです。生活を主体にしながら、そういう決め事、ルールをどう守って、それに参加するのかということも考える必要があるんじゃないかと、思い付きで恐縮ですが、こんなふうに思っています。

【佐藤座長】 さっき佐々木顧問がおっしゃったように、例えば中学、高校の公民とか政治経済の教科書の内容をどういう観点からつくることになるのか、これはまさに文科省に関係してくる話であります。けれども、一法務省だけの問題ではなくて、文科省とかいろいろなところに関係してくる話だろうと思うんですが、文科省として何かでありますか。

【文科省】 担当ではございませんので、その辺りにつきまして、教科書のあれにつきまして、御要請があれば準備して報告させていただければと思います。

【大宅顧問】 教育というのは全部学校というのは間違いだし、学校というのは教科書だというのも間違いだと思うんです。すべて教えることは教科書に書かねばならないことはないし、教育基本法に全部書いていなければいけないというのはすごく私はおかしいと思うんです。社会全体が大きな法律というものに関して、どう認識しているかというのは余りにもちょっとあれですね。
 意見書に書いてありますように、受け身ではなくて、一人ひとりが主体的にこの国を運営するということをやっていかなければいけないわけです。絶対それが必要だと思うんですけれども、過去何十年かの教育の場ではけんかしてはいけません。みんなで一緒で違う意見を言ったら絶対損なんだから、よけいなことを言ったら足を引っ張られる。
 この間ある大学の先生がグループで学生が研究発表みたいなものをしましたね。違う意見、何か欠陥があったらそれを言えと言ったら、いや、私はそんなことは言えない。彼は親友だから、彼の言った意見をけなしたりはできない。そこまで行っているわけです。
 議論イコールけんかという発想で、過去は少なくとも動いている。今度、個人と個人が対立すると、ほとんど個人の紛争処理能力がないんです。だから、上の人のピアノがうるさいと言っては、直接は行かないで、すぐ役所か何かへ訴え出てしまうと。だから、一番最初に個人の能力というか、少なくともぼやのうちは個人で消していただかないと、全部しりぬぐいをやっていたら大変です。いわゆる司法教育ということではなくても、幾らでもできる。本当は個人が一人ひとりが人ごとではなくてやるんだというのがあって、後、本当にこんがらがったら法律。
 私前から何度も行っているんですけれども、法律というのは客観的尺度だと私は思っているんですけれども、客観的ではないわけです。ゴムみたいに解釈と言って動くわけです。そこが私にわからない。私にわからないんだから、多分小学生には絶対わからないと思うんです。
 憲法だって、戦力はこれを保持しないと書いてあるじゃないですか。どうしてそれがずっと存続して変えもしないであるわけですか。
 道に車を止めて違反ですというんなら、全部取っていってほしいんです。機能していないから、私はやはり日本国は法治国家ではないと。これから法治国家にするとしたら、かなりいろいろなことをやらないと難しいんじゃないかと思っているんです。

【佐藤座長】 かなり本質的な話ですね。

【奥島顧問】 私は法律は杓子定規じゃなきゃいけないと基本的には考えるんです。そうじゃなかったら、だれかに対しては合法だけれども、だれかに対してはそれは違法だと言われたらたまったものじゃありません。そういう意味で大宅さんのおっしゃることはよくわかりますが、しかし実際には杓子定規じゃ困るんですよね。

【佐藤座長】 大宅顧問のおっしゃった教科書がすべてではないというのは、私もそのとおりだと思います。けれども、考えるきっかけみたいなもの、大事なものは、さっき申し上げたような図式ではなくて、生きていく上での知恵というか、そういうものは教える必要があるのではないか。今までだと地域社会があって、だれか顔役がいて、いろいろ相談する相手があったのかもしれませんけれども、だんだんそういうのがなくなってきた。各個人が抱える困った問題をだれに相談したらいいのか、どこへ行けば傷が深くならないで済まされるのか、そういう知恵みたいなものを、小さいときから身につけさせる、身につくようエンカレッジしてやる、それは必要なんだろうと思うんです。
 審議会のときにアメリカに視察に行きましたが、陪審裁判などを小学生、中学生くらいが見学しているんです。実際にどういう過程で陪審員が選ばれ、どういうことになっているか、裁判所を見学したりそういうことを小学校、中学校のころからやっているわけです。裁判所も子どもたちのためにそういういろいろな機会をつくっている。
 「司法教育」というのは確かに堅い言葉で、大それたものがどんと来るんじゃないかという感じはあるんですけれども、そうではなくて、基本的には一人ひとりが生きる知恵を与えるようなものではないかという感じなんです。

【大宅顧問】 社会見学をせよと言ったら、大変なことなんですか。私などは簡単にやればいいじゃと思うけれども、そうはいかないんですね。

【笹森顧問】 今は小学生は消防署とかに行っているんですよ。

【大宅顧問】 国会は行っていますか。

【笹森顧問】 国会を見に行って政治がわかるかというと、これはちょっと。

【佐藤座長】 今の裁判所では難しい言葉がやりとりされているわけですから、今の裁判所に小学生、中学生がいって、興味を持てというのは—一般論としては、何か反論があったらおっしゃっていただきたいんですけれども—ちょっと難しいと思います。既に陪審制が採用されている国とは、ちょっと事情を異にしているかもしれません。けれども、これから裁判員制度を導入するわけです。もっと司法を国民の身近にしようという基本的な考え方に立っているわけですから、少しその辺は事情が変わってくるんじゃないかという感じがするんですけれども。

【最高裁】 実情を御紹介しますと、裁判所には、小学校、中学校から、これは地方裁判所を含めてですが、かなりの方が見学にいらっしゃいます。特に、司法制度改革が進んでいる最中ということで、現場の裁判官も随分工夫しております。裁判は確かに難しい用語が多いので、特に小学生などにはわかりづらいと思うんですが、法廷が終わりますと、裁判官が今日やったことは何なのかということについて、当事者が退席した後に壇上から下りて説明したりという工夫も各地で始めております。
 私どもとしては、そういう小さな積み重ねを続けていきますし、これから裁判員制度が入ってくるということになってきますと、もう少しシステマティックに考えていく必要があると思っております。

【佐藤座長】 ほかに何かいかがでしょうか。
 座長ばかりしゃっべっているのは申し訳ないんですけれども、今まで司法について中学や高校などでそう立ちいって教えなかったのは事実だと思うんです。日本の社会というのは圧倒的に立法・行政中心でした。立法・行政というのは、要するにマスを対象にしているものだと思うんです。それに対して司法というのは、個別的な事情に応じたて相談に応ずる、最終的に裁判に行きますけれども、個別的な事情に即したサービスということなので、立法や行政とはかなり違う性質をもともと持っているんだろうと思います。
 そういう司法がこれから日本でこういうように役立つ、司法とはそういう性質のもので、それが我々の身近になって、日常の生活に役に立っていくんだ、ということをもう少し前面に出していくべきではないか。そのことがまさに総理がいつも言っておられる日本の社会の構造改革、構造転換に関わっていることじゃないかという気がしてしようがないんです。
 司法は個別的なんです。今まで図式だけでやっておったというのは、結局はマスのレベルでとらえてきたんではないかという感じがしてならないんです。

【今井顧問】 司法そのものを身近なものにするということは、アクセスの問題です。これからだんだん規制改革をやっていきますから、司法のお世話になる人が増えてくることになります。これは、そういう一連の流れの中で進めていくべき課題であると思います。しかし、裁判員制度は、それとは異なるものであり、日本で初めての試みでしょう。

【佐藤座長】 昔は陪審はあったんです。

【今井顧問】 あったけれども、裁判官が結論を覆すことができたなど、運用の点で諸外国と異なっていたと聞いています。一方、アメリカでは西部が発展する過程で自治で全部やってきたわけでしょう。日本はそういう自治による司法の習慣が全くないわけで、そこに、戦前の陪審制度より踏み込んだ裁判員制度を持ち込むわけですから、これは極めて難しい問題だと思います。私らが昔、旧制高校生の頃は全寮制で自治で寮を運営しており、何か問題起こした学生があれば寮の内部で陪審員を任命して、処分を決めていました。退寮処分にすれば全寮制が原則ですから、自動的に退校になったわけです。完全にそういう自治をやっていました。大体年かっこうからいくと、15から18くらいのときにそういうふうにやっているわけです。
 裁判員制度を導入するとしたらある程度物心が付いた高校生くらいのところで、自治でものごとを律することを訓練させるということが必要ではないですか。これは学校で知識として裁判員制度ができましたと言ったってみんなぴんと来ないですよ。この裁判員ということは、国民が自分で決めるということだから、自治の精神がなければ、幾ら教えたってだめです。恐らく高校くらいから始めないといけません。小学生では、まだ理解できないわけです。

【佐藤座長】 小学生に裁判員制度そのものがどうだと言ってもわからないと思いますけれども。

【今井顧問】 基本は自治の精神ですから。

【佐藤座長】 小学生の段階だって、ある種の自分たちのルールの意識はある。ルールを守っていくのにどうするかという問題意識は既にそれなりに小学校でも、もちろん中学校でもあると思うんです。それをどういうふうに引き出し、顕在化させていくかということについてもうちょっと意識的に努力していく。いきなり中学になってすぐ自立するとか、高校生になった途端に自立するというものではなくて、やはり一連の長い過程だろうという感じがするんです。教え方と言いますか、問題の理解のさせ方はそれぞれの年齢に応じてあると思いますけれども、やはり連続しているんじゃないかという感じは私個人としてとは持つんですけれども。
 陪審制度は、昭和3年から18年まで実際にやり、戦争中ということもあってやめて、戦後はなかったわけです。その長いブランクのあとでこれから裁判員制度を導入するわけですから、導入するについても、相当国民の理解を得るための、努力が必要ではないか。先ほど日弁連で作られた俳優の方が入ったビデオについてのお話がありましたが、相当国民に徹底してPRというか、趣旨を理解してもらう努力が必要だろうと思います。

【今井顧問】 裁判員制度の教育というのは、自治の思想と関係していますから小学校の段階で教えることは難しいと私は思います。

【佐藤座長】 それはこだわっていません。教え方はいろいろありうるのではないかと思っているだけです。

【今井顧問】 そういうことがわからない年代に無理に説明してもわかってもらいないと思います。

【佐藤座長】 陪審制は大正時代につくられ、5年くらいの周知期間を置いて、ものすごい予算を使って周知徹底したんです。今はそういう時代ではないかもしれない。もっと短期間にできるかもしれません。いずれ今年の後半に裁判員制度、さっきも事務局から説明がありましたけれども、検討会での検討を通じて具体的に出てきます。ここでも御議論いただく重要なテーマの1つだと考えています。

【佐々木顧問】 先ほどの教育内容について、指導要領もその点少し配慮していただく必要がある。どうしても民主政治の問題は、いつも行政の問題となって翻訳されて出てくるような指導要領になっているんです。それではちょっと話がまずい。小学校で政治を書こうとすると、必ずハコモノをつくるというのが政治の話になるんです。それは非常に図式的に言うと、そういう例をやらないとだめであるかのごとく、規制は何となくそういうのがある。
 やはり民主制度の問題の扱いを規制緩和するということをやれば、司法の問題もその中にある種の形で私は入ってくる余地はもうちょっと広がるのではないか。そのレベルで工夫していただく余地はあるのかなと。それはまさに狭い世界の話で恐縮なんですが、そういう感じはしております。

【佐藤座長】 ありがとうございます。もう25分になりました。今日はそろそろ終わりにしなければならないかなという気がいたしますが、今日、司法ネットの話も、司法教育の話も、入り口での議論だったと思います。今日の御議論も踏まえて、そう遠くない時期に、具体的に例えば司法ネットはこういう形でこういう方向はどうかということをお示しする機会もあるかと思います。
 その前段階として、先ほどから出ていますように、自治体の方々の、勿論、自治体の方々に限る必要はありませんけれども、自治体の方々の御意見を聞くとか、そういう機会も場合によってはつくる必要があるかなという感じもしております。
 今日は非常に有益なお話をちょうだいしてありがとうございました。

【笹森顧問】 2つだけ。1つは、顧問会議の開催の間があきましたね。本部長は今日は欠席なんだけれども、本部長が欠席でも、検討会の進展状況を見ていると、開催をきっちりやった方がいいんじゃないかと思いますので、定例的な開催も含めて、皆さんお忙しい方だから、容易じゃないとは思うけれども、お願いをしたいと思います。
 2つ目は、意見書の関係と実際に検討会の方で検討されている内容と若干ずれてきたんじゃないか。何回も申し上げているんだけれども、あの意見書はかなり凝縮をして方向性をきっちり出したはずなんです。ところが、その趣旨を少し曲げるような内容になってきているのかなというふうに懸念されているので、特に裁判員制度の中では意見書に国民の一人ひとりが統治客体から統治主体へという言葉を使っているところが、そこのところの解釈まで変えようかという感じも聞こえてくるので、意見書を尊重するという立場の中で検討会が諮られるように是非お願いをしておきたいと思います。

【佐藤座長】 会議のことにつきましては、御趣旨はよくわかりましたので、その辺は今後の運営の仕方として考えていきたいと思います。
 今、例に挙げられた裁判員制度の問題も、いずれこの会議に検討会の検討状況の報告をいただいて、御議論いただく機会が出てくるかと思いますので、そういうように進めさせていただきたいと思います。
 大臣、今日の御議論で、法科大学院の立ち上げについて、学生を支援するのか、機関を支援するのか、いろいろあるけれども、財政的な支援が是非とも必要であるということになりました。具体的な方法については今後関係機関で詰めていただくとして、財政支援が必要なことについては、これは私が勝手に言っていいのかどうか知りませんが、強いコンセンサス、共通の認識があったということをお伝えしておきたいと思います。

【法務大臣】 わかりました。

【佐藤座長】 それでは、今日はどうもありがとうございました。この程度で閉会にしたいと思いますが、副本部長の方からお願いします。

【法務大臣】 初めの半分くらい私欠席いたしまして、大変失礼いたしました。法務省はいろいろな改革にぶつかっておりまして、今日は行刑改革の会議の最初の日だったものですから、大変遅くなりまして、申し訳ありません。
 しかし、司法ネット、あるいは司法教育についての御議論を聞かせていただきまして、大変御熱心ないろいろな御意見を拝聴し、有益だったと思います。
 私も司法教育については、多少関心がございまして、今、いろいろなお話を伺って、ああ、そうかなと思ったんでございますが、やはり一般の人たちによくわかってもらうには、漫画とかテレビとか、そういうところにタイミングを見計って、適当なやり方でやっていったらいいんじゃないか。特に裁判員制度ができまして、その問題について知ってもらうのには、そういう方法も時には必要ではないかなと思います。
 先般、日弁連のおつくりになった大変素敵な映画を拝見いたしまして、あれで私も大変目が開かれた気がいたします。やはりああいうものは目で見て、教えてもらうのがわかりやすいなとつくづく感心したわけでございます。
 あれは結論が出たわけじゃないものですから、しようがないんですけれども、日弁連としての大変いい試みでございまして、大変よかったと思いますが、これから各方面でそれぞれのお立場で、また、この結論が出れば政府の方でもこういうやり方で、こういうふうに動いていくものなんですということを国民にしつこいくらい教えていかなければいけないんじゃないかなと思いました。
 若い子どもや中学生、高校生のことを考えると、漫画なども必要ではないかというのが私の感覚でございました。
 大変いろいろお世話になりまして、誠にありがとうございます。今日は自由討議ということであったそうでございまして、中身の大変盛りだくさんなよいお話を承りありがたく、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。最後に事務局から今後の日程について。

【事務局長】 今後の日程につきましては、今日の御議論も踏まえまして、どのような設定にしていくかについては、座長とよく御相談をさせていただいて、また御連絡をするというふうにしたいと思いますので、御理解を賜りたいと思います。
 どうもありがとうございました。

【志村顧問】 日弁連の映画を拝見する機会はありますでしょうか。

【法務大臣】 この間読売ホールでやりますからという御案内をいただいて、伺いました。石坂浩二さんとか、素敵な俳優が出てきました。

【佐藤座長】 本日はどうもありがとうございました。

(以上)