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司法制度改革推進本部顧問会議(第11回)議事録



日 時 : 平成15年7月1日(火)17時〜19時15分

場 所 : 永田町合同庁舎2階第1会議室

出席者 :
(顧 問)
佐藤幸治座長、大宅映子顧問、奥島孝康顧問、佐々木毅顧問、笹森清顧問、志村尚子顧問

(推進本部)
森山眞弓副本部長(法務大臣)

(事務局等)
山崎事務局長、井上正仁裁判員制度・刑事検討会、公的弁護制度検討会座長 他

議事次第 :
1 開 会
2 司法ネット(仮称)について
3 司法教育について
4 今後の立法課題等に関する検討会における検討状況について
5 閉 会

【佐藤座長】 それでは、ただいまから司法制度改革推進本部顧問会議第11回会合を開会いたします。
 顧問の皆様にはお忙しいところ、本当にどうもありがとうございます。
 今日は、今井顧問、小島顧問は、所用のため御欠席でございます。なお、小島顧問からはペーパーが提出されておりますので、席上に配布させていただいております。
 それから、今日は裁判員制度・刑事検討会及び公的弁護制度検討会の座長であられる、井上先生に御出席いただいております。今日は本当にどうもありがとうございます。
 それでは、議事次第に従いまして、まず、司法ネットについて御協議いただきたいと思います。司法ネットにつきましては、去る6月5日、有識者懇談会が開催されましたけれども、その報告も含めて事務局から資料の説明をお願いします。

【山崎事務局長】 それでは、私の方から有識者懇談会の結果と本日の資料について、御説明を申し上げます。
 資料はお手元の資料番号の1〜3というものでございます。
 ただいま、座長からお話がありましたように、前回の顧問会議での御指摘を受けて、去る6月5日に事務局において、司法ネットに関する有識者懇談会を開催して、地方における、いわゆる司法過疎問題を中心に関係する方々から率直な御意見をお聞かせいただいたところでございます。
 当日は有識者といたしまして、鳥取県の片山善博知事、松本三加弁護士、鈴木晴男司法書士、高峰武熊本日日新聞編集局次長に御参加をいただいたほか、佐藤座長と大宅顧問、奥島顧問、小島顧問、笹森顧問の4名の顧問の方々、森山眞弓副本部長、公的弁護制度検討会の井上正仁座長、司法アクセス検討会の高橋宏志座長に御出席をいただきました。
 片山知事からは、裁判に対する敷居の高さや、あるいはアクセスポイントの不足について、鳥取県の実情を交えた御指摘がされまして、司法ネットの整備によるアクセスポイントの拡大、あるいは弁護士過疎の解消への期待、これが述べられたわけでございます。
 また、松本弁護士からは、北海道の紋別のひまわり基金公設事務所に2年間勤務されました経験を踏まえまして、地方における弁護士のニーズの高さ及びそこで弁護士として活動することの意義が述べられ、政府として弁護士過疎の問題に積極的に取り組むべきであるという意見が述べられたわけでございます。
 次に、鈴木司法書士からは、山形県天童市での法律相談の実情、司法教育の取り組みについて説明があり、地方における相談等の司法のニーズが高い旨の意見が述べられたところでございます。
 更に、高峰編集局次長からは、地方における法律サービスの受け皿の整備は国が取り組むべき問題であり、人を確保することが重要である旨、述べられたわけでございます。
 その後、顧問の方々との意見交換がされまして、地方の実情や法律サービスのニーズを知るのに非常に有益な懇談会になったのではないかというふうに思っております。
 本日は、先ほど申し上げましたけれども、その資料1−3として、有識者懇談会の議事概要をお配りいたしましたので、適宜御参照いただければと思います。
 次に、本日の資料配布の中で、お手元の資料1−1及び1−2、これについて御説明をいたします。
 1−1は、司法制度改革審議会の意見、司法アクセス検討会、公的弁護制度検討会の各検討会の議論等から、司法ネットの整備に関して検討すべきと考えられる事項を記載したものでございます。
 また、1−2の資料は、これらの検討項目について、司法アクセス検討会及び有識者懇談会における主な意見を事務局において要約したものでございます。この1−2につきまして、若干御説明をさせていただきたいと思います。
 「第1 現状分析」の部分でございます。現在、地方自治体、弁護士会、行政機関、ADR機関等が、個別に司法に関する相談窓口を設置しておりますが、一般の人にとって最初にどこに行ったらよいのかということがわからない、相談がばらばらに行われていて、アクセスポイント間の連携が不十分である、アクセスポイントと法律サービスの提供とが十分に連動していない、などの問題点が指摘されておりまして、その解決が課題となっているわけでございます。
 また、民事法律扶助につきましては、自己破産事件等への対応で手一杯であり、他の事件への扶助が十分に行えないなどの問題点が指摘されております。
 更に、司法過疎につきましては、過疎地にも法律サービスのニーズはあり、受け皿がないだけである、弁護士がいない地域において、ヤミ金融や悪徳商法が横行している、こういうような指摘がされております。
 「第2 取り組むべき課題及び解決方法」についてでございます。
 1のアクセスポイントにつきましては、先ほど申し上げた幾つかの問題点を踏まえまして、相談窓口を充実させ、PRをすべきである、ITを利用すべきである、アクセスポイントにおいて、事案を適切に割り振ることが重要である、隣接法律専門職種を活用すべきである、などの意見が出されております。
 法律サービスの提供のうち、民事の問題の主要な論点として、民事法律扶助の問題がございます。現在の法律扶助は資力の乏しい人に対し、事件ごとに民事裁判等の手続の準備や代理等について、支払うべき報酬等の立替払いをするという、いわゆるジュディケア制というものをとっておりますけれども、先ほど申し上げましたとおり、自己破産事件等への対応で手一杯であるということから、スタッフ制の導入や組織の見直しによる効率化を図ることによって、限られた人的、財政的資源を最大限に活用した上で、法律相談や法律扶助を拡充していく必要があるのではないかというような議論がされております。
 法律サービスの提供のうち、刑事の問題といたしましては、公的弁護制度の問題がございます。詳しくは、本日の議題3のうちの公的弁護制度検討会の検討状況についての御説明の際に申し上げますが、司法ネットの関係では、被疑者段階と被告人段階を通じ、一貫した公的弁護を行い、かつ裁判の迅速化や裁判員制度の実施を支えるための制度設計が問題となっております。
 次に、司法過疎への対応については、地方における司法へのニーズに応える形で、弁護士会による、ひまわり基金公設事務所や法律相談センター等の取組、司法書士会による取組などがありますが、これらの自主的な取組には限界があり、何らかの手当てが必要ではないかといった問題提起がされております。
 最後に第3でございますけれども、これらのいろいろな課題について総合的な対策として、必要なサービス提供を行うための仕組みとして、どのようなものが考えられるかという問題でございます。
 資料1−2にもありますように、相談窓口をまとめるような何らかの組織が必要ではないかというような御指摘をいただいているところでございますし、その組織形態についても、いろいろ御意見を頂戴しております。
 本日は、これらの資料を御参考にしていただきまして、御議論いただければと思います。 以上でございます。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。
 有識者懇談会に御出席の顧問の方もお感じになられたことと思いますけれども、私自身も非常にインプレッシブな、有益な懇談会であったというように感じております。ただいまの事務局長の説明に対する御質問も結構ですが、司法ネットに関する御意見を頂戴したいと思います。
 全体を一体的に議論してもいいのですけれども、便宜上、資料1−1にありますように、3つに分けてあります。大まかなところ、この順番で御議論を賜ればというように考えております。そこは、かたく考えているわけではありませんので、前後しても結構でございます。
 まず、現状分析、国民のニーズとこれへの対応につきまして、有識者懇談会の感想なども含めて、御議論いただければと思いますが、いかがでしょうか。
 私は、審議会のときに浜田に視察に行きました。浜田は日弁連の公設事務所が最初に作られたところということですけれども、そのとき御就任の弁護士さんが大変お忙しくしておられたのが印象的で、その印象に基づいて、地方の需要は非常に高いんだということを申し上げてきましたけれども、何せ1か所だったもんですから、何となく迫力がなかったんですけれども、この間の懇談会で、さっき御紹介があったように各地域のお話を伺って、私自身が個人的に想像している以上に地方の法的需要は高いんだということを痛感した次第です。御感想を含めて顧問の方々、いかがでしょうか。
 笹森顧問、どうぞ。

【笹森顧問】 今、佐藤座長や山崎さんの方から説明があったように、この間の有識者会議は非常に有意義だったと評価をしております。
 特に0〜1地区で活躍されている弁護士の方、非常に実態に基づいた話でしたし、片山知事の話もよかった、地方自治体の実情がよくわかったと思います。
 そこで、この顧問会議、あるいは司法制度改革推進会議の各検討部会の進捗状況等を見ますと、外側の方で行われているいろんな具体案の内容の方が先行しているのかなという感じがあります。まず一つ、そこのところ申し上げたいんですが、法務省が独法によるリーガルサービスセンター構想を既にまとめたというふうに承っております。これがこの検討部会の中でどういう影響を与えるのか。
 それからもう一つは、政党の中でも自民党が総合的法律サービスの提供及び司法アクセスポイントの設置に関する中間とりまとめという案を出したというふうに聞いているんですが、これがどういう影響があるのか。
 この間の有識者懇もそうですが、項目だけ申し上げると、ユーザーにとっていかに使い勝手がいいかという視点、是非これは重要視してほしい。まず、このことが1つです。そういうことから言うと、地域住民とのいろんな関わり方があるんですが、とりあえずアクセスできて、安心できるよというものを、まず明確に打ち出すというイメージのつくり方が必要なのではないか。
 そうは言っても、国民、住民が自立をしていかないと、何でもかんでも司法に持ち込んでいくということになれば、弁護士だとか裁判官をいくら増やしても足らないということにもなるわけなので、そういう部分をどう整理をしていくか。そういう意識付けをどうするかということについても、これも明確な考え方とか、そういうものを出していく必要があると思います。
 もう一つは、アクセスの問題からすると、司法の問題も、やはり地方分権的な発想をきちんと持った方がいいのかなというふうに思いますので、ここは片山さんや松本さんが言われておりましたけれども、地方自治体が地域住民に一番密着をしているというその機能と役割を、司法の中にもとり入れていく。つまり、地方自治体がもう少し積極的に前に出るという形をどうつくれるか。
 その上で、地域の人的資源と物的資源の活用をどう図るかということも、予算措置の関係なども含めれば、かなり濃厚に打ち出さなければいけないのかなと、そんなふうに思っています。
 司法ネットについては、これはゼロワンだけの問題ではないんだけれども、IT化も含めて、一時しのぎにならないようにというふうに、是非お願いをしたいと思います。
 地域におけるアクセスポイントの問題なんですけれども、独法が全面に出てきている。これについては意見は分かれるところだと思うんですが、どちらがいいかというのは、これからきちっと決めていただければいいと思うが、下の方の、地域に近くなればなるほど、NPOなどの活用というのが考えられないのか、アメリカでは一部このことが取り入れられているようにも伺っているんですが、そういう問題について、少し検討部会の論議、あるいはそういう内容についてどう取り組んでいくかということについてお考えいただければと思います。

【佐藤座長】 ありがとうございます。
 非常に貴重な御意見いただいたわけですが、独法の構想について、それから自民党の動きにも言及されたんですけれども、事務局の方で何か把握しておられるようなところがありますか。

【事務局長】 まず、法務省云々の話、今日法務省来られておりますけれども、私の方で申し上げます。新聞記事に最近載ってはおりますけれども、具体的に決まったということはございません。今、検討中であるというのが正しいところでございまして、まだ我々の検討会でも、これで行くという方針はまだ固まったわけではないというふうに御理解をいただきたい、今後の検討課題であるということでございます。それが第1点でございます。
 自民党の関係につきましては、これは司法ネットに限らず、司法制度改革の問題につきましては、司法制度調査会が自民党の中にございまして、その中に幾つか小委員会もございますけれども、私どもでやっているものの大部分は同時並行的に自民党としても検討されているということでございまして、これは従来からのやり方であって、これだけが特別なやり方であるというわけではございません。
 例えば、法曹養成の関係につきましても、我々の検討会の検討と、自民党における検討、これが並行して議論を行ってきたということでございますので、その中の一つと我々は理解をしております。
 今後とも、政党の方からの御意見もありますし、それ以外のいろんな御意見もございますので、それもすべて踏まえまして、検討会の方で十分に議論をして結論を出していきたいと思っているところでございます。
 以上でよろしゅうございますか。

【佐藤座長】 自民党の関係は、司法制度改革審議会のときも同じような形だったので、そこはそういうようなものとして、御理解いただければと思いますけれども。
 更に、検討会の検討状況との関係は何か、さっきちょっと触れられたことですけれども、それ以上特に言及することはないですね。

【事務局長】 特段ございません。

【佐藤座長】 先ほどの笹森顧問の御指摘に関連して、ほかの顧問の方々からも率直な御意見をちょうだいしたいと思いますが。
 話は、第1、第2、第3と厳密に分けてもしようがないと思いますので、もうどの辺からでもよろしゅうございますから、どうぞ御自由に御発言いただきたいと思います。
 現状は厳しいものがある、法的需要は非常に顕著なものがあるというところは、もうこれは前提として考えていいのではないかという感じはしますけれども、前回、有識者懇のときに、大宅顧問から、需要を掘り起こすという考え方、表現について少し御意見いただきましたけれども、掘り起こすか掘り起こさないかというのではなくて、現実にあるものにどう対応するかという、むしろそっちの状況ではないかという気もします。関連して何かあったら、大宅顧問どうぞおっしゃってください。

【大宅顧問】 私が言いたいのは、今までの日本の国の運営の在り方として、国民のニーズが沸き上がって、こうしてくださいよという前に、あなたたち要るはずですよといって、いろんなものを過保護・過干渉でやってきたことが、国民の個としての力をそいでいるというのが、私の認識なんです。裁判とか、そういうものへのアクセスの国民のニーズというのは、例えば、学校へ行くとかというのとは、かなり質が違うと私は思っています。
 さっき、笹森さんも間にちょっと挟まれましたけれども、一時、例えばピアノ殺人だとか、上と下で住んでいて音がうるさいとかといって、お互い同士が全然解決ができなくて、すぐそれと言ってどこかへ飛び込むとか、すぐやる課なんというのがあって、とてももてはやされたけれども、本来は個人でやれるところは個人で解決するということがあった上でじゃないと、それを全部根こそぎ、お国で面倒見ますよという話になることを恐れると言っているだけなんですよ。

【佐藤座長】 御趣旨は、私も全く同感です。ただ、前回の懇談会のときも出ましたけれども、片山知事の方から。

【大宅顧問】 これはニーズがあるだろうと、困っている人がどうしたらいいかということをみんなが認知すればいいわけですね、こういうときはこういうところに行ってくださいと。それを、必ず、あまねく常設のものをつくらねばならぬということになると、私はお金のむだ遣いの部分がまた出てくるなと思うんです。だから、例えばキャラバンみたいなものでもいいし、月1回回っていくとか、それこそ今、これだけの情報網が進んでいるんですから、ネットでアクセスすれば少なくともだれかに相談できるという形を提示すれば。

【佐藤座長】 やり方の問題ですね。佐々木顧問、どうぞ。

【佐々木顧問】 私、この前、休んだものですから、大変負い目を感じているんですが、笹森委員が大分お話いただいたという感じが率直なところいたします。
 ただ、笹森さんが言われることの中で、やはり大変大事なのは、1つは自治体の役割というものとのすり合わせが大変重要だろうという点を、特に仕組みづくりのところでは考える必要があるのではないだろうかということであります。
 それと、独立行政法人という形で出ていくというのは、よほど工夫が要るのかなという感じもしないでもありません。大宅委員が言われたような、まさに問題が出てこないとも限らないところがあって、また国が出てきたかと、つまり行政機関としてこれを見るようなことになると、また話が非常にややこしくなる、混乱してくるということがありますので、やはりあくまでもこれは司法ネットであるという点について、そこが私は結構国民との間で意識の面で難しい問題が出てくるのではないだろうかと。
 つまり、そこの誤解をどういうふうに解いていくかという、あるいは誤解に基づく一種のパターナリズムみたいなものが再生産されないようにするためにどうしたらいいのだろうかという辺りが、特に国が関与する場合には、非常に気を付けなければいけない点なので、そういう意味で自治体等々との関係というものをやはり慎重に調整した上で、デザインをすることを是非お願いをしたいということであります。
 そして、また何か非常に、何といいましょうか、これは印象論で恐縮ですが、整然と整備されて、すべて整然と仕組みができてしまったところへ相談に行くというのは、なかなか行きにくいのではないだろうかと。ちょっと雑然とした感じのところで、ファーストストップでとにかく相談に行って、どうしたらいいんだろうかというような感じが本来あるべきなんで、行ったら何か、厄介なことに巻き込まれるんじゃないだろうかというような感じの仕組みの印象がもし持たれるとすれば、何か厳かな感じでどうぞというような感じだと、これはちょっとやはりまた違うのではないだろうかという話にならないように、十分留意されることとは思いますけれども、笹森さんの意見にダブったような発言で恐縮ですが、この前の記録を読ませていただいて、私が感じた点で若干申し上げさせていただきました。

【佐藤座長】 自治体との関係が非常に重要だという御指摘は、私も全く同感で、有識者懇談会のときも申し上げたんですけれども、確かに機構的には司法は国に属するものなんですけれども、地方自治というときに司法抜きの自治というのはいかがなものかという思いがあります。機能の面で、やはり自治の一環として、この司法というものを位置付けることが重要なんじゃないかという気がするわけです。
 こういう司法ネットをつくるとき、是非とも自治体の自発的な関わり方というものを引き出すような、そういう仕組みを考える必要があるという点は、私も全く同感でございます。
 それと、これは最後に大臣からお話いただいたらいいのかもしれませんけども、余り整然と、余りがっちりしたものをつくられると、恐れをなして近づき難くなるという、確かにそういう面もあるかと思うんですね。つくり方として、独法という形がいいのかどうか、独法という形を採用するとしても、どういう組織、中身にするのかという、いろいろな問題があるような気がします。さっき笹森顧問からアメリカのNPOのお話がありましたけれども、あるいはそういうものとの組み合わせもあるのかもしれない。いろいろあり得ると思うんですね。そこはできるだけフレキシブルなものにする必要があるのではないか。これまで日弁連もひまわり基金などでいろいろやっていらっしゃるし、司法書士会も書士会内でいろいろ努力なさっている。そういう努力をもっと引き出すような、そういうやわらかい仕組みというものを考える必要がありはしないか。その辺は、大宅顧問がおっしゃったこととも共通するところだと思いますけれども。
 奥島顧問はいかがですか。有識者懇談会に御出席された感想も含めて。

【奥島顧問】 独法でどんなものができるのか、私も見当がつきませんが、もともと日本の裁判制度自体が高級ホテルの玄関口みたいでありまして、大きく開いているけれども、誰もは入っていかれないというところがあるわけで、いろんな制度というのを整然と整備することはいいわけですけれども、それが気楽に利用できるようなものにしていかなければいけないということは、私もそのとおりだというふうに思っておりまして、いくら制度を整備しても費用が高かったり、立派なこと言わなかったら相手にしてもらえないというようなことでは、いろいろな意味で、先ほど申し上げましたような高級ホテルの玄関口みたいになってしまいかねないというところはあるんだろうと思います。
 でも、私はどちらかというと整然とやっていただいた方がいいんじゃないかかという感じがあります。そういうふうにしなかったら、本当の司法過疎やそのほかの問題に対してはどういう形でもって対応するかということは、お話聞いていても結局ボランティアみたいな形でいつまでもいつまでもやっていても、本格的対応が本当の意味ではできないんじゃないかというふうな思いはいたします。
 ですから、いろんなところでもって、自治医科大学方式ですか、費用は持ちましょうと、その代わり一定の期間過疎地で勤務してくださいというような制度も考えられますけれども、そういうところに意気を感じるような人たちを育てるという、やはりその次の司法教育につながるんじゃないかなという感じがいたします。

【佐藤座長】 自発的な参画といっても、いろんな主体が一緒になってやろうという、それらをひっつけるようなものは必要なんでしょうね。かわるというと強すぎるかもしれませんが。さっき笹森顧問のおっしゃったことで非常に印象的なのは、ユーザーにとって使い勝手がよくて、とりあえずそこに行って相談して安心するといいますか、そういう拠点ですね。我々が病気になったときに、とにかく原因がよくわからなくて心配で、とりあえず近くのお医者さんに行って相談して、これはこういうことだと言われると、まず安心しますね。そこで更に大病院に行かなければいかぬこともあるかもしれないし、いろんなことがあるかもしれませんけれども、とりあえずそこに行くことによって安心できるという拠点みたいなもの、そういう役割は果たさないといかぬことなんじゃないか。余りばらばらであっては、それであっちへ行けこっちへ行けと言われたら、これまたたらい回しみたいになるわけですから、そうならないような仕組みというものは考える必要があるんだろうという気はしますね。
 志村顧問、何かございますか。

【志村顧問】 知識が乏しいんですけれども、今、少しずつ色合いの違った御意見を伺っておりまして、一方では2段階に分けまして、まず一般の人が司法とか何とかというのを聞いたときには、何かうっかり触ると大変なことになりそうだと。
 それから、ものすごくお金がかかりそうだという抵抗があるのではないかと思いますので、まず最初はアクセスですね、そしてその全体を見通して、この人の問題は次にどこへ行ったらいいのかということを助けてあげる。それに一つ重点を置いて、その時点では余りコミットしないでもいい、余りお金がかからないという段階。
 その次の段階はもっと整備されていて、そして必要に応じて、その人がどこかに実際の相談を持っていくと。
 もう一つは、過疎地の対応ということが非常に大事なことではないかと思いますが。

【佐藤座長】 御趣旨はよくわかります。更にいかがでしょうか、この問題について。
 では時間の関係もありますので、今日の段階では大体こんな形でこの問題を理解するということで、よろしゅうございましょうか。
 1つは、司法へのニーズ、これはもう否定することのできない、非常に顕著な状況であるということです。このことを前提とした上で、第2に、司法のアクセスポイントを中心とする、ある種のネットワークを構築する必要があるということです。
 それは、何と言っても国民が自分の自律的な生活をする上で、法を使える、そういうためのものだと。ですから、それぞれの地域の利用者の側に立って、情報、人、あるいは具体的サービスを有機的に結び付けるようなものである必要があるのではないかと。先ほど、局長からも説明がありましたけれども、ばらばらであっては、どこに行っていいかわからないという問題が残るわけですから、やはり法的な情報、それから人の問題、あるいは具体的なサービスの有機的な結び付きということを考える必要があるのではないかと。
 そして、笹森顧問もおっしゃったことですが、そこに行けば、ひとまず自分の置かれた状況というのはどういう状況であるのかということがわかって、ひとまず安心できる、そういう実質を持ったようなものにする必要はあるだろうというように思われるわけです。
 具体的に、どうやってどういう仕組みをつくるのかという話になりますけれども、これは有識者懇談会のとき、松本弁護士あるいは片山知事などもおっしゃったように思いますが、国が一定の役割を果たさざるを得ない。日弁連も一生懸命やっておられる、司法書士会もやっておられる、自治体は自治体なりにやっているということですけれども、やはり国としてやるべきことはあるのではないかということであります。
 ただ、これは先程来御意見が出ていますように、上からかたいものを整然と下ろすというような形はやはり避けるべきではないかと。国として一定の役割はあるんですけれども、果たさないといかぬわけですけれども、その辺は工夫する必要がある。
 それと関連して、自治体が積極的にこの構想に関わってこれるような仕組みというものを考える必要があるのではないかと。
 そして、それを前提とした上で、更に弁護士会、司法書士会、あるいは関係するいろんな団体が、このアクセスポイントに自発的に関われるような、そういう仕組みを構想する必要がある。
 独法というのが先ほどから出ておりますけれども、独法も1つの方法かもしれません。ただ、独法の方式をとるとしても、どういう方式をとるのか、その組織の中身をどうするのか、地方それぞれとの関係をどうするのか、この辺はまだいろいろこれから詰めて考えてみないといけない問題ではないかと思います。
 先ほど、笹森顧問がNPOのことに言及されましたけれども、NPOとの組み合わせということもあるかもしれない。この辺はこれから利用者の立場に立って、どういうものが利用しやすいのかという観点から、その仕組みをこれから早急に詰める必要がある。まだふわっとした、まとめにはなってないのかもしれませんが、大体こんな考え方でこの問題を担当の機関の方で更に詰めていただくということでどうかなと思うんですけれども。

【事務局長】 わかりました。今日の御議論と、それから7月23日に、私どもの司法アクセス検討会を予定しておりますので、そこでもう一度議論をして、7月30日に顧問会議をまた開かせていただきますけれども、その折にはもう少し具体化できるようなものをお出ししたいということで考えております。ちょっと作業が遅れておりますけれども、なるべく早めにイメージを持っていただかないとと思っております。皆さん議論をしていても、どういうイメージのものかということで大分違っている場合もありますので、そこがイメージできるようなものをなるべくお出ししたいというふうに思っております。

【佐藤座長】 さっき申しましたように、ボランティア的な、自発的な関与は必要なんですけれども、それらを全体的に動かす、最初動かすときには相当なエネルギーが必要なんですね。そのエネルギーの出し方をどう考えるか、その辺はやはり相当工夫していただく必要があるんじゃないかという気がいたします。
 では、この問題はよろしゅうございましょうか。
 なお、今の問題ですけれども、小島顧問がお出しになっているペーパーの中にも、似たような指摘がございます。ITの活用とか、あるいは独立法人についても、余りかたいものはというような御指摘もあるように思います。先ほどの皆さんの御意見、あるいは私が申し上げたことと関連している、似たような面があるかと思います。後でまたごらんいただければ結構かと思います。
 それでは、司法ネットの議論はこの程度にさせていただきまして、続いて司法教育について御議論いただきたいと思います。本日はまず文部科学省、法務省、最高裁、日弁連から順に司法教育に関する検討状況や具体的な取り組み状況について御説明をいただいて、その上で意見を交換したいというように考えます。
 では、まず文部科学省にお願いしたいと思います。この機会に、司法教育のことに限らず、法科大学院に関する設置認可申請の問題、新聞にも出ておりましたけれども、その問題とか、あるいは財政支援の検討の状況などにつきまして、御報告いただければと思います。よろしくお願いします。

【文部科学省金森大臣官房審議官】 文部科学省でございます。
 お手元に「文部科学省資料」というタイトルの付いた表紙の資料をお配りしてございますので、ごらんいただきたいと存じます。
 まず「司法や法に関する教育について」でございますけれども、小・中・高等学校などにおきましては、自ら学び自ら考える力などの生きる力の育成を重視するという視点から、司法や法に関する教育を推進しているところでございまして、児童生徒の発達段階や教科に応じまして、法やきまりの意義、司法の仕組みについて理解させ、それらを自らの生活に生かすとともに、法やきまりに基づいて、よりよい社会の形成に主体的、積極的に関わろうとする態度を育成するような指導を行っているところでございます。
 「2 各教科等における具体的な指導」といたしましては、まず小・中学校の社会科や高等学校の公民科では、日本国憲法の基本原則を始めといたしまして、法の支配や権利・義務の関係など、法や司法に関して幅広く学習をすることといたしております。
 生活科、これは小学校低学年で行われております生活科では、具体的な活動や体験をとおして、きまりやマナーを守ることなどの指導を行っております。
 家庭科では、例えば、家族・家庭と法律など、生活課題を主体的に解決し、家庭生活の充実向上を図る能力と実践的な態度を育てる学習に関わって、法律が取り上げられているところでございます。
 道徳の時間がございますが、ここでは約束やきまり、法の意義を理解させ、それを守ることの大切さを指導することといたしております。
 特別活動といたしましては、学級活動や児童会・生徒会活動がございますが、学級や学校における生活上の諸問題の解決などのために、話し合いなどの活動をいたしているところでございます。
 昨年4月から、新たに総合的な学習の時間というのが小・中・高等学校で設けられました。ここでは具体的な学習活動を各学校の判断で設定することになっておりますので、例えば、司法や法に関する課題についても学習することができるようになっております。
 2ページは、「3 教科書の記述例」でございますけれども、これにつきましては3ページ以下に実際の教科書を添付してございますので、こちらをごらんいただきたいと存じますが、まず3ページでございます。3、4、5ページは同じ中学校の社会科公民的分野の教科書の抜粋でございますけれども、3ページで申しますと、「法を守る裁判所」として、「社会生活と法」というところで法の意義を記述してございます。「司法権と裁判所」「司法権の独立」といった記述もございます。
 3ページの右の上の方には裁判の傍聴についての紹介も、この教科書ではございます。 4ページ、同じ教科書でございますが、「裁判の種類と人権」ということで、「民事裁判と刑事裁判」「裁判と人権保障」「裁判をめぐる問題」などについての記述が見られます。真ん中の上の方には、「司法を身近に」ということで、弁護士会が弁護士を派遣して、模擬裁判を行っている地域もあるというような記述も見られます。
 5ページ、同じ教科書でございますが、「三権分立」や「違憲審査制」などについての記述が見られます。
 6ページは、これは別の会社の中学校の社会科の教科書でございますけれども、「裁判のしくみ」ということで、刑事裁判や民事裁判の流れをイラストでわかりやすく説明したり、あるいは右の下の方でございますけれども、「弁護士と相談したいけれど、どうやって訪ねていいかわからない」とか「裁判費用を払えないときはどうしたらいいの?」というようなQ&Aの形で記述が見られるところでございます。
 以上が、中学校の社会科の教科書。
 7、8ページは、中学校の技術・家庭科の教科書でございます。
 同じ教科書でございますが、7ページの方では「消費者としての自覚をもとう」ということで、「わたしたちの生活と契約」「消費者を取り巻く問題」についての記述が見られます。
 8ページにまいりますと、「クーリング・オフ制度」でございますとか、「消費者の権利と保護」ということで、消費者保護に関する法律などについての紹介が見られるところでございます。
 以上が、司法教育ということについての資料でございます。

【佐藤座長】 併せてお願いします。

【文部科学省小松主任大学改革官】 同じく文部科学省の高等教育局の小松と申しますけれども、本日の機会に、ちょうどたまたま昨日締め切りをいたしました、平成16年度開設予定の大学関係の設置申請の締め切りにつきまして、法科大学院について、これを抜いて速報というような形でまとめましたので、その御紹介をさせていただきたいと思います。
 お手元の文部科学省の資料の続きでございますけれども、「平成16年度開設予定の法科大学院の設置認可申請(計画)」という紙でございます。昨日6時に締め切りをいたしまして、72大学から申請書類の提出がございました。そこに文章でも書いてございますが、そこの整理をいたしまして中旬15日に設置審と呼ばれております、大学設置・学校法人審議会に文部科学大臣から諮問いたしまして、その審査を経て答申、順調にいけば11月に答申を得て、その結果に基づき認可を行うという予定で作業を進めようといたしております。 その認可申請、現時点では、まさに申請の段階でございますが、国立大学が20、公立大学が2、私立大学が50ということで、合計72ということでございます。
 その一連については、別添にしてございますけれども、別添1が小さくて申し訳ありませんが、もう1枚めくっていただきますと、そこに一覧が出ております。現時点で集計ができておりますのは、各大学ないし研究科・専攻名、入学定員、位置、設置者ということでございます。
 極めて簡単ではございますけれども、とりあえずそのような設置申請が出ているということを御報告申し上げます。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。御質問がおありかと思いますけれども、最初に全体の御説明をいただいた上でと思いますので。

【小松改革官】 先ほど、佐藤先生から、財政援助の検討の状況も併せてということでございますので。設置審査にかかりますのは、これからでございますので、それがどのくらい認可されるかとか、そういうことについては、ちょっと担当の事務当局としては差し控えなければいけないわけでございますけれども、いずれにしても、これから概算要求に向けて財政援助等について考えていかなければいけないわけございますが、現状を申し上げますと、これは1つは国・公・私立、全体に関わることでございまして、このうち国立につきましては設置形態をどうするかという議論も含めまして、現在、国会に提出されております、国立大学法人法案が衆議院を通過して参議院に因りますけれども、まさに審議中であると、本日も文教科学委員会で審議をして更に審議をするという状況にございますので、その行方等を見定めて検討しなければいけないということで、その国立大学の学費全体の構造をどうするかということが、更に検討しなければいけない。大変残念ながら、本日の時点で見込み高ということがちょっとまだ申し上げられないような形でございます。
 ただ、いずれにいたしましても、学費の問題は重要な問題として取り組まなければいけないということと、それに関連することで私学助成の仕組みがあるわけですけれども、これらについては何らかの積極的な対応していかなければいけないという方向。
 更には、そうした機関援助的なもの以外に個人補助的なものがございます。これについては奨学金ということになりますけれども、これについてもそれらとの見合いで、つまり学費、あるいは機関補助との見合いで個人補助をどうするかと。これはみんな一体のことでございますので、今のような若干流動的な情勢を抱えておりますけれども、その動きを見ながらできるだけ速やかに検討していきたいという、ちょっと抽象的な御説明で申し訳ございませんが、現時点ではそういうことでございます。

【佐藤座長】 その辺のことは顧問会議で、近い将来また御報告いただくことがあろうかと思いますけれども、現時点の状況はそれとしてわかりました。
 それでは、法務省、お願いします。

【法務省寺田司法法制部長】 法務省の司法法制部長の寺田でございます。
 法務省検察庁における、今の司法あるいは法に関する教育への取り組み状況について、次に私の方から御説明申し上げます。
 法務省におきましては、法の日がございますが、それを中心にいたしまして、国民の方々に司法の歴史、現状等をおわかりいただくような広報活動を、裁判所、弁護士会とともに、かねてから主催をいたしております。この中には勿論、小・中学校向きのプログラムもございます。
 ただ、本日は、こういうものとは別に、最近の法務省、検察庁が学生を主な対象として、法や司法の在り方を理解していただくために、どのような活動しているかということについて、御説明を申し上げたいと思います。
 検察庁では正義が実現されていく社会を築くためには、国民の方々に刑事司法に対する十分な理解と信頼を持っていただくことが不可欠の基盤であると考えておりまして、そのための活動として、かねてから一部の地方でさまざまな試みをしていたわけでございますが、平成11年度からこれをとりまとめまして、資料にございますとおり、「移動教室プログラム」「出前教室プログラム」「刑事裁判傍聴プログラム」、この3つのやり方でいろいろな試みをしております。
 まず「移動教室プログラム」でございますが、これは、主に小・中学校の生徒さんを対象といたしまして、検察庁を訪れていただいたこれらの方々に庁舎見学や刑事司法、検察官の実際の仕事というものをごらんいただいて、説明や質疑応答を行うというようなものでございます。
 第2の「出前教室プログラム」でございますが、これは、同じく主に小・中学生を対象といたしまして、逆に検察の担当者の方で学校に出向きまして、刑事司法、検察官の仕事などについての説明をし、質疑応答をするというようなものでございます。
 3番目の「刑事裁判傍聴プログラム」でございますが、念頭に置いておりますのは、高校生以上でございまして、検察庁職員が付き添いまして裁判傍聴を行いまして、その前後に刑事司法や検察官の仕事についての説明をし、質疑応答を行うというような内容でございます。
 それぞれのプログラムの実施状況につきましては、資料の次のページをごらんいただくとおわかりのとおりでございまして、昨年度は、全国的に申し上げますと、移動教室プログラムは256 回、2,982 名。出前教室プログラムは25回、4,427 名。刑事裁判傍聴プログラムは20回、202 名の方でございまして、かなり幅広い参加をいただいているわけでございます。
 いずれのプログラムにおきましても、事前に質疑内容を送っていただいて、資料をつくりましたり、いろんな工夫をして対応をいたしておりまして、現に参加された方からは検察の仕事、特に警察との違いというようなものがよくわかったというような評価をいただいております。
 刑事司法についての理解がこれによって深まっていただいていると考えているところでございます。
 なお、これらのプログラムの実施に当たりましては、勿論裁判所ですとか弁護士会というものの御協力、あるいは共同実施というようなことにもなっているわけでございます。
 その次に法務省では、これらにも関連いたしまして、刑事司法手続をよりわかりやすく御理解いただけるように、小学生向けのビデオといたしまして、平成10年に『法と正義の守り手・検察庁』、一般向けのビデオといたしまして平成12年に『被害者とともに』、次いで平成15年に『検察の役割』というものをそれぞれつくりまして、先ほど御説明いたしました移動教室プログラム等で上映する、あるいはビデオについての内容をホームページで御紹介し、あるいは学校や地域団体等への貸し出しを行うというようなことをいたしております。それぞれのビデオは20分ないし25分程度の内容でございまして、全国で貸出数は平成14年度でいいますと58件程度ございます。
 『法と正義の守り手・検察庁』でございますが、これは小学生が電車の中ですりを目撃して、目撃者として捜査公判に関わっていくというような内容のものでございまして、これは比較的小さな子どもにもわかりやすいような形で、易しい言葉を使って検察と警察の違い、それから事情聴取の状況、裁判の状況、裁判はどういうものかというようなことをわかりやすく説明したものでございます。
 このビデオは、移動教室や出前教室プログラム、これは先ほど御説明したとおりでございますが、それを実施する際にしばしば上映されているものでございまして、刑事司法手続の進行についての御理解を得るという目的は果たしているというように考えているわけでございます。
 『被害者とともに』は、帰宅途中に男性から刃物で脅されてハンドバッグを奪われたという女性の被害者を主人公にしたストーリー立てになっておりまして、犯罪被害者が持つ悩み、疑問を取り上げて、それにどのように対処すべきかというようなことの説明があり、検証手続、特に証人尋問がどういうものかということも併せて解説したものでございます。
 『検察の役割』は、殺人事件でございまして、今までの2つよりは、ややレベルの高いものでございますが、刑事手続と民事手続の違い、あるいは捜査から公判までの一連の流れというようなものの御説明、検察の役割等を説明しているわけでございます。
 さて、法務省といたしまして、今後この分野について、どういうことを考えているかでございますが、司法制度改革の推進計画にもございますし、司法制度改革審議会の意見書の趣旨というものもございますので、そういうものも踏まえまして、現在、文部科学省の方と御相談しながら、学校教育等における司法に関する学習の機会をより充実させるための方策を検討するために、新たに研究会を立ち上げようということで準備を行っているところでございます。
 この分野の教育の一層の推進を図るためには、学校現場の実情やニーズを的確に踏まえるとともに、広く関係者の知恵を集めることが重要であると考えておりまして、この研究会では、裁判所、日弁連を含めた法曹関係者ばかりでなく、学者の先生方、教育関係者、有識者等、さまざまな分野の方々にお集まりいただいて、調査・研究をしたいと、このように考えているところでございます。
 今後どういう内容でこの研究会が行われるかにつきましては、勿論研究会御自身で御議論いただくところでございますけれども、文部科学省との連携も非常に重要でございます。
 先ほど御説明もあったとおり、現在でもさまざまな試みがされているわけでございますが、更により実際に社会で生きるためには、どういうことが必要なのかという、生きる力をつけるというような観点から、学校で実際に利用できる教材や教育プログラムをつくるに当たって、どういう事例を出すのがいいのかというようなことも検討して、実際の教育の現場に役立つ方策をまとめると、このようなことが一つのポイントではないかというように考えているところでございます。協議が整えば今月中にも発足させたいと考えております。今後、必要に応じまして、勿論顧問会議の皆様方にも経過等について御報告を申し上げたいと思います。
 以上でございます。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。では、最高裁、お願いします。

【最高裁判所小池審議官】 最高裁の審議官の小池でございます。よろしくお願いいたします。
 私の方から、お手元にございます「最高裁判所資料」に基づきまして、裁判所の行っております司法教育のさまざまな試みにつきまして、その一部を御紹介を申し上げたいと思います。
 裁判所は、これまで小・中学生、高校生、大学生を始めとして、国民の方々に司法制度、裁判制度、あるいは裁判官の仕事などを理解していただくための工夫を行ってきたわけでございます。
 まず、資料の上段にございます「裁判官の講師派遣(出前講義)」、これは平成11年、数年前から実施している新たな試みでございます。裁判官が学校等に出かけまして、裁判官の仕事はどんなものか、体験談を交えて小人数のところで話をするというものでございます。この機会に生徒の皆さんからの質問に対して、現職の裁判官一つひとつ答えるということをやっているわけでございますが、生身の裁判官というのは余り見たこともございませんでしょうし、直接話を聞くということで、随分強い印象を持っていただいているようでございます。平成14年には、全国69の裁判所で行ったところでございます。
 2番目の「模擬裁判・模擬調停」でございますが、これも主に学生さん、それから小・中学生の方を対象にしておりますけれども、そういった生徒さんに裁判官役、弁護士役、検察官役を体験していただく、あるいは場合によっては裁判所の裁判官や職員が実際の模擬裁判をやって、感想を伺うというようなことをやっているわけであります。
 2枚目に「裁判所へ行こう!」というチラシがございますが、これは裁判所の若い職員がつくったものですが、このようなものをホームページに掲載いたしまして、積極的な広報活動をいたしております。昨年は全国68の裁判所で取組が行われまして、約600回実施したわけでございますが、参加希望が非常に多くて、なかなか好評のようでございます。
 1枚目の下段に記載してございます「法廷傍聴・裁判所見学」、これは従来から広く行われているものでございます。最高裁を例に取りますと、昨年でも850の団体の見学・傍聴がございました。
 お手元に「法廷ガイド」と「裁判所ナビ」という資料がございますけれども、こういったパンフレットを配りまして、冒頭に裁判所の職員が説明した上でいろいろ傍聴・見学をしていただいております。
 最近では、法廷傍聴していただいた法廷の審理が終わった後に、担当裁判官が法壇から降りてきて、特に学生さん方に今日やったことはこういうことだよということを説明したり、質問を受けたりする取組も少なくございません。
 従前、裁判所はパンフレットを配る、あるいは裁判の手続等のビデオを貸し出す等を行ってきたわけでありますけれども、最近は出前講義のように、裁判官や裁判所の職員が直接国民の皆さんにお話するというような方法を積極に取り入れる工夫をしております。
 こういったアイデアは各地の実情に応じまして、各地の裁判官、特に若い裁判官や、若い職員が考えて、いろいろPRをしているようでございます。
 前に顧問会議でもございましたけれども、司法教育には、1つには裁判や司法制度の仕組みを理解していただくという面と、もう1つはもっと実際にプラクティカルに紛争にどう対応していくとか、それを予防するにはどうするかを理解していただくという面の二つがございますが、先ほど法務省からのお話にございましたように、私どももその両面から、こういった教育というものに取り組んでまいりたいと思います。
 裁判所は前にも御報告しましたように、地方裁判所、家庭裁判所に委員会をつくりまして、広く国民の方々から御意見を聞くというシステムをつくりましたが、そういった場で御意見をお聞きしながら、司法教育の充実、あるいは裁判所の関与の方法等についても工夫を図ってまいりたいと思います。
 以上でございます。

【佐藤座長】 ありがとうございました。それでは、日弁連、お願いします。

【日本弁護士連合会鈴木広報室長】 日本弁護士連合会から来ました、弁護士の鈴木です。法教育のことを担当しているものですから、今日発言させていただきます。
 資料は、日弁連の封筒の中に資料が入っていると思います。このようなカラーの資料が入っております。もう一つ、司法シンポジウム、法制度に関するシンポジウムを先月行いましたので、その資料を本日は入れさせていただいております。
 まず表紙をめくっていただいて2ページ目ですが、弁護士・弁護士会はこれまで中学生、高校生だけではなく、広く市民を対象に司法教育を実践してきました。内容としては、消費者問題、家族問題、一般民事問題、司法制度の仕組みなど、多岐にわたっております。
 また、その方法としても講義形式だけではなく、模擬裁判、あるいは法廷傍聴など、創意工夫を凝らして行ってきております。実施する場所も、学校、公民館、ホール、カルチャーセンター、弁護士会館など、バラエティーに富んだことになっております。
 また、呼びかけるという意味もありまして、名前も裁判ウォッチングであるとか、学校へ行こうとか、あるいは出前講義、ホームルームなどという親しみやすいものを利用しております。
 現在、学校の教育の公民科目では不十分な司法制度の紹介や、基本的な法律知識をこのような形で補い、また成人に対しては生涯教育として市民向けの教育活動を行ってきております。
 これらの活動は司法の仕組みを理解してもらい、生活に必要な法律知識をわかりやすく紹介しながら、対話を大切にすることに重点が置かれておりまして、今後も積極的に行っていこうと考えております。
 このような活動を通じて、今、その必要性を認識しておりますのは法教育というものであります。これは知識として法律を教えるということではなくて、自由で公正な民主主義社会で、法の支配を支える市民としての資質を身に付けるための教育というものとして考えております。
 法の役割や原理、あるいは法制度の成り立ちについての知識、それらを応用する技能、更に他人を尊重し、基本的人権を守り、法に従って問題を解決する姿勢を身に付けるためのものとして考えてきております。
 また、年齢に応じた教育内容が工夫できるという面もありますので、アメリカでは幼稚園から成人までを対象に行っていると聞いております。
 更に長年にわたって、アメリカでは弁護士会等が中心になって教材づくり、あるいは法教育に当たる教員の養成を行ってきております。
 先月の先ほど御紹介したシンポジウムでは、アメリカ法曹協会の方をお招きしまして、話をしていただいたのですけれども、法律実務家が法教育に関わっていくことの重要性。更に30年近くかけて今のようなものができたと、日本もこれからですねというようなことが言われております。
 日弁連としては、本林会長の会務執行方針に法教育を掲げておりまして、昨年、法教育に関するワーキンググループを立ち上げ、本年6月には新たに「市民のための法教育委員会」という委員会組織をつくることにしております。
 そして、日本に法教育を根づかせる活動に本格的に取り組むこととしております。このお手元の資料の3ページ目がそれになります。「任務・目的」として「教育方策(法教育)の策定及び実践」「教材の研究・開発」「教育関係者等との情報交換」といったものをこの委員会で行っていこうと考えております。第1回はこれから開催ということになります。
 これから少し、そのシンポジウムのときに紹介しました法教育の授業を少し御紹介しようと思います。お手元の資料4ページからになります。
 まず、小学生に対する授業例として、当日、外部で行った授業なのですが、筑波大学付属の小学校5年生36名に来ていただきまして、大阪弁護士会の石田会員が授業を行いました。
 テーマは「ローラー・ブレードはダメ?!」。ローラー・ブレードというのはローラー・スケートに似たものですが、ローラーが一列に付いたスケート靴ですけれども、かなり子どもたちには人気があるようでして、それがちょっと危険ではないかということで親御さん、あるいは近所の人、警察が取り締まったらどうかという話をするというところで、市会議員、住宅街の住民、子ども、親、警察官という各グループに分かれてもらいまして、そこで議論をしていただく。グループで考えてもらって、それを発表していただくというふうに考えております。
 次の5ページ目ですが、授業の進め方としては、まず事案の説明を行います。そのときにもわからなければ手を挙げてもらって、自由な議論が行われるように雰囲気づくりをしていきます。
 次の「知的道具 考える視点の説明」ということですけれども、単に考えてというのではなくて、こういった視点で考えましょうという視点も明示します。この場合には利益はどうなんだろうか、あるいは不利益はどうなんだろうかというようなことを考える基準にしてほしいという説明をして、グループでの討論に入っていただきました。
 その後、グループで討論した結果をグループの代表者に発表してもらう。更にそのグループ同士の討論を行うという形で進めました。当日はちょっと時間の関係もありまして、意見発表がかなり盛り上がってしまったものですから、最後の討論の辺りは時間がなくなるというようなことになってしまいました。
 しかし、小学校5年生ですが議論は活発にできたと思いますし、また、進め方としても面白いものになったのではないかと思っております。
 続きまして6ページ目、今度は中学校での授業ですが、これは福井県の私立北陸中学校3年生に対して3時間3こま使って行われた授業のものであります。これは福井弁護士会の野坂会員が実践したものであります。この授業のねらいは、1つは社会生活を営む上でのルールの必要性を理解して、ルールを尊重する態度を養う。更にはルールの根底にある公正の理念を理解して、公正さを判断する技能と公正に行動する態度を養う。更にルールの形成過程を理解し、これに主体的に関与する技能と態度を養うということをねらいとして行っております。
 1時間目には「社会生活の中のルール」、ルールにはどんなものがあるのか、それは必要なのか、それを守るというのはどういうことなのかというようなことの話をしております。
 2時間目には「ルールの評価」、ルールを評価することは必要なのか、またよいルールというのはどういうものなのかということを考えてもらう授業を行っております。
 3時間目に、では実際にルール、あるいは問題解決をどうしていくのかということで、シンポジウムではこの3時間目の模様をダイジェストにしたビデオを放映しました。
 この3時間目のディスカッション設例が7ページ目にございます。この北陸中学校、北陸高校は全国でも有数のバスケットボール部のあるところでありまして、そういう意味でバスケットボール部がテーマになっております。
 内容は、キャプテンがいまして、そのキャプテンがレギュラー選手がけがをしたために、ほかの部員から候補を出さなければいけない。そして、その候補者として下にあるような5人の候補者がいる。そういう中で、どれを挙げたらいいのかということを議論してもらうということになっております。
 それを議論する場合に、8ページ目がディスカッションのシートですけれども、各選手がどういう人なのかをまずわかってもらった上で、彼をレギュラーに挙げることの必要性、あるいは彼の能力はどうなのか、適格性はあるのかといったようなものをこういったシートに書き込む作業をグループで行っていただくというふうにしております。
 このようなディスカッションをした上で、発表をしていただくということになっております。このときも3時間目ということもありまして、かなり授業自身は和やかな雰囲気の中で活発な議論が行われたと思っております。今日も時間があればお見せしたいところですけれども、また機会があればと思います。
 9ページ目、以上、2つ授業を御紹介しましたけれども、授業のポイントとしては1つは身近な素材を用いることだろうと思います。自分たちの身近な周りで起きているような出来事を素材に取り上げる。
 更に、考えてくださいと単純に言うのではなくて、考えるための視点、あるいは道具をきちんと用意してあげることだろうと思います。
 もう一つ、これが法教育の面白いところでありますけれども、ただ一つの恐らく正解があるものではないだろうと。なぜ、その結論を出したのかということをみんなにきちんと説明できることが大切だということを強調して議論をした上で、自分の意見を発表していただくということが大事なのではないかと思っております。
 最後に10ページ目になりますが、「今後の活動予定」と書いてありますが、1つは「教材の作成・カリキュラムの策定」というものが急務になっているだろうと考えております。
 更に、日弁連としては今日御紹介したような弁護士による実験的授業を行っていきまして、こうした教育の必要性を広く理解していただきたいと考えております。
 このような教育については、弁護士会もこれからこのような形で企画を進めていきますけれども、今後は先ほどございました法務省からの提案のある研究会においても、積極的に関与させていただきたいと。また、文部科学省には、この教育の必要性を認識していただいて、学校その他の教育現場で、この教育が普及・実践できるように施策を講じていただくよう要望したいと思っております。
 今日はどうもありがとうございました。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。ひとあたり御説明いただきましたけれども、御質問など含めて御意見をちょうだいしたいと思います。いかがでしょう。
 志村顧問、どうぞ。

【志村顧問】 法務省と最高裁判所の御説明で、両方ともこのいろいろな事例、昨年度何回やったかということについて、かなりの参加があったとおっしゃいましたが、私はこの数を見て、これだけ、と思いましたので、意識のずれが大分あるのではないかと思いました。
 最後に、文科省の御説明の資料で、これは不まじめと取られると困るんですが、私はまじめなんですけれども、この78、79ページというところのイラストですが、そこに出てくるいろいろな人物の表情ですね、一番気になりましたのは、左上の取り調べというところで、取り調べられている人がいかにも有罪のような顔をしているということ。それから、その下ですが、裁判官がいかにも強圧的な顔をしていること。これはどうにかならないものでしょうか。
 これは教科書会社がつくったわけですね。

【佐藤座長】 法務省、最高裁、何かコメントがありますでしょうか。

【寺田部長】 私どもも決して多いと思っているわけではございません。むしろ、いろいろな制約があるので、やはり現状ではこういうところに止まっておりますが、これをますます進めていくためにも、もう一段別の工夫が要るのだろうと考えております。

【小池審議官】 私どもも同様で、特に司法制度改革という事柄が起きて、初めて、もう少し司法なり裁判所というものの基盤をちゃんと持たなければいけないという意識で取組を始めているところです。そういう意味で、出発は数年前からですので、まだ数は胸を張ってというものではございませんが、また努力してまいりたいと思っています。

【佐藤座長】 全国の学校に、こういうことをやっているということをインフォームなさっているわけですか。

【小池審議官】 はい。私どもはインターネットのホームページに載せておりまして、御紹介いたしております。

【寺田部長】 法務省も全く同じです。

【佐藤座長】 文科省は何かお答えありますか。

【志村顧問】 お返事をいただこうとは思っておりません。

【佐藤座長】 よろしいでしょうか。ところで、法務省のお話では、研究会がやがてスタートするということですが、どれぐらいで具体化が。

【寺田部長】 最後は司法制度改革の推進の期間がございますので、その期間内には一定の結論が出るというような形で進めていきたいと思っております。

【佐藤座長】 どういう考え方、どういう内容でというのは、まさにこれからということですね。

【寺田部長】 これも先ほど申し上げましたように、基本的には会議自体でいろいろ御議論をいただくことだとは思いますが、現状では若干、制度的な側面の説明が中心となっているような傾向もあるかなと思いますので、今、弁護士会の方でお進めになっておられるような傾向を、より一層やりやすくするための工夫というのが1つのポイントではなかろうかというふうには考えております。

【佐藤座長】 文部科学省も、その研究会には参加されるんですか。

【金森審議官】 法務省の方から御相談をいただきまして、私どもの方も積極的に参加をして、協力をいたしたいと考えております。学校現場でも子どもたちは司法や法の事柄について、経験が少のうございますし、またそれは教員も同じでございますので、いろいろな形で専門家の方に学校に来ていただいたり、また有益な教材などをつくっていただいたりして、大変助かっておりますので、そういう面でも何か効果的なものができるようにということで、一緒になって研究してまいりたいと考えております。

【佐藤座長】 一般的な印象ですが、教科書は仕組みというか、図式みたいな仕組みを教えているだけで、法をどういうように使えるのか、具体的な生活に即しての使い方とか役立て方とか、その辺の生きた法の使い方についての教えが不足しているんじゃないかという思いがあるんですけれども、その辺は、これまでどのように感じてきておられますでしょうか。

【金森審議官】 教科書は主たる教材でございますので、特に社会科や公民の教科書におきましては、司法の仕組みといったようなことが中心に書いてございますけれども、司法や法に関する教育という全体的なことで申しますと、例えば生活科とか家庭科とか道徳とか、そういったところでは単なる知識ではなくて、それが実際に生活の中で生かされるような、そういうものにしていきたいという、いろいろな工夫をしているところでございます。
 また、生徒会や児童会の中で自分たちで自主的にいろいろな学校の中のもめ事などを解決していくというようなことも、そういった教育につながるものではないかと思っております。
 特に昨年の4月から総合的な学習の時間という、学校で何を教えてもいいという時間が小学校で週3時間、中学校でも週2〜3時間できましたので、そういう中で環境とか情報とかをやる学校というのもあると思いますけれども、1つこういう司法教育についても、例えば裁判所に傍聴に行ってみようとか、そういったようなことも時間的にも工夫ができるようになりましたので、できるだけそういう体験的な活動を通して、実際の生活に役立つような、身に付くような、そういう教育がこれからも広がっていけばというふうに念願しております。

【佐藤座長】 佐々木顧問、どうぞ。

【佐々木顧問】 確かに総合的な学習の時間を使って、こういうことを体験的に、あるいは言わば自分でアクティブに参加してやるというようなことができるというのは、大変結構なことなんですけれども、しかし、実際は学校教育の現場では時間が足らなくて、どうにもならないという基本的な問題があるんです。
 だから、そこで皆さん総合的学習もどうしようかというので、いろいろ工夫をされているんだけれども、少なくとも学校教育の感じからすると、やはり授業時間というか、学校でやっている時間数はすごく少なくて、片方では学力の低下何だかんだという話があるわけでしょう。
 それは、やはりなかなか司法だけあれしましょうというような話でやるというのは、安易とは言いませんけれども、ややちょっと難しい問題も私はあるんではないだろうかということで、だから土曜日とかいろんな形で本当は大人と子どもが一緒にやらなければいけないので、これを世代別に輪切りにしてしまうと結局同じレベルの話しかできないということなんですね。
 ですから、私はこの手の話について一番の問題は、同じ世代の人間を集めて教育だってやるということの持っている基本的な限界というのを、もっとやっていただく方でどう考えるかという問題が基本にあると思うんです。違った世代の違った、考えの人間がいるというところから、こういう問題がそもそも出ているわけなんで、それを同じ学年の同じの者を集めてやるということの持っている、ある種の限界という表現は、ほかにしようがないからそうやっているんですけれども、この問題というのは結構司法の問題を考えるときに、本当はベースにある問題ではないだろうかというような形で、余り世代的な輪切り的司法教育というのに、余りとらわれないで何かやる方法というのも、むしろ積極的に、だから同じもの世代の違う人間たちが見て、何かいろんなことが感じられるような仕組みというものを少し考えておくということも、私は必要ではないかと。考えられているんでしょうけれども、なかなか実際やろうとするとそういかないという問題をどうしたらいいのかなというのは、私は一つの課題のような感じを持っております。

【佐藤座長】 学校だけじゃなくて、コミュニティーとの連関というようなことも非常に大事なのかもしれないですね、それぞれの地域の。さっきの話にもつながることですけれども。奥島顧問、どうぞ。

【奥島顧問】 私もこの問題、どうやって教育するのだろうということをよく思うんですけれども、今、佐々木先生言われたように、少ない時間でいろんな知識を与えようとして、皆さんやはり努力されていて、しかも最近ではいろいろの教材等が非常に工夫されてきておりますので、私もそれなりにそれはそれでいいのだろうと思いますが、しかし結局、いろんな知識を与えたいということが、どういうことにつながっていくのかなというふうに考えると、むしろそんなことよりも私はいつもの持論でありますけれども、「知識より感動を、感動より実践を」というふうに言うわけでありますけれども、つまり彼らにモチベーションを与えることが必要なんじゃないかと思うんです。
 要するに、泣き寝入りをしないと、そして、長いものには巻かれないというふうなモチベーションを与えるようなことを、むしろ読み物であったり、あるいは教育の中であったり、そういう努力をしていけば、彼らが自立していけるようなことを考えさせるきっかけを与えるということの方が大事なんではないかと。
 そうすると、彼らはそれなりに法律のことに興味を持って、自分でも読むと思うのです。結局、そういうふうなことをしてみないと、学校で一律にいろんな裁判とか法律の知識を与えようとしても、みんな中途半端で、しかも大体こういう仕組みというものは難しそうに見えますから興味を持たないし、そのことが子どもたちにとって何かのモチベーションづけになるというふうには考えられないという、その辺りを少し工夫してやってみる必要があるのかなというふうに思っておりまして、そういう意味で今、例えば日弁連とかいろんなところで推進されている裁判員制度やなんかについての短い映画、ああいうようなものはなかなか工夫として非常によくできているなというふうなことを思いまして、ああいうのを見たら、学生・生徒や、子どもたちが感動して、そして法律というものはこういうものなんだと、何かちょっと自分で勉強してみようなんていう機会を与えることになるのではないかと。
 私は大学の法学部で教えておりますけれども、法学部の学生だってかなりの学生が全然法律に興味を持っておりませんからね。ですから、私はシドニー・シェルダンの『天使の怒り』を読めと言うんですけれども。それを読むと、法律というのは面白いぞというふうなことを感じさせるからです。
 何かその辺りの工夫というのが、大分なされてきているということを心強く思っておりますが、更にそういうふうに知識というよりも、何か子どもたちに感動を与えるような工夫を、映画みたいなもの、あるいは読み物みたいなもの、いろいろ更に工夫していただければということだけ申し上げます。

【佐藤座長】 ありがとうございます。
 やり方については、確かに今おっしゃったようにいろんな工夫が必要なのかもしれませんね。コミュニティーとの連関もある。今まで、例えば地方の図書館とか公民館とか、ああいうものも使いながら、やり方がいろいろあり得るんじゃないかという気がするんですね。やり方も含めて研究会でお考えいただければと思います。
 それから、司法教育の目的とは一体何なのかということも、やはり根本的に考えてみる必要があるような気も同時にするんですね。下手をすると法曹三者がそれぞれ自分たちをPRするということに終わりかねない。もちろん、PR自体は結構なことです。有識者懇談会で片山知事もおっしゃっていましたけれども、司法はPRが足らない、だから縁遠いんだということをおっしゃったんですけれども、全くそのとおりだと思うんです。だからPRは必要なんですけれども、単なるPRというんじゃなくて、やはり何か理念みたいなものを教えるということが大事だろうと思うんです。立法とか行政でない、司法固有の役割とは一体何なのか、いわゆる司法教育のコアにあるものは何かということですね。
 それは何かというと、なかなか難しいんですけれども、前に申し上げたことがありますけれども、立法、行政というのは基本的にマス、国民一般を対象にするのに対して、司法の場合には個からルールの在り方を見ていくというところがある。それがデュー・プロセス、適性手続の話にもつながってくる。それから、導入されようとしている裁判員制度というのは、やはりそういう適性手続の重要性というのを経験する場でもあるというように思うんですね。司法教育で、この裁判員制度をどのように子どものときから教えるのかというのも非常に重要な問題である感じがするんですね。
 だから、その辺も含めて具体的にどうするかということになりますけれども、せっかく法務省に研究会がつくられるんですから、その研究会で、理念、方法も含めて、是非できるだけ早く結果を出していただきたいというように期待しております。
 この問題はまだいろいろあるのかもしれませんけれども、時間も予定よりちょっとオーバーしていますので、3番目の議題である検討会、特に裁判員制度中心の方に移りたいと思います。
 最初に推進本部の方から検討会の検討状況について簡単に報告していただいて、井上座長のお話に移りたいと思います。

【事務局長】 資料2が検討会の状況でございますので、後ほどお目通しをいただきたいと思います。
 現在の法案の状況と検討会の状況、若干御説明をさせていただきます。
 現在、司法制度改革関連法案といたしまして、当本部から4つの法律案、法務省から3つの法律案を提出させていただいたおります。この中で成立をしましたのは、前に御説明をいたしましたが、法科大学院に教員を派遣する関係の法律、これが5月9日に公布されておりますが、これだけでございまして、あとは全部残っているという状況でございます。 裁判の迅速化に関する法律案、民事訴訟法の一部改正をする法律案、人事訴訟法案、これと一緒でございますけれども、5月13日に衆議院本会議で一部修正の上、可決されております。
 本日、参議院法務委員会において提案理由説明が行われたところでありまして、やっと審議に入っていけるという状況になったわけでございます。
 それ以外に、司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案、これが5月27日に衆議院本会議で一部修正の上、可決されております。
 また、仲裁法案につきましては、6月3日に衆議院本会議で可決をされております。
 この2本の法律案につきまして、参議院において早期に御審議をいただけるということを期待しているところでございます。
 検討会の状況につきましてでございますが、ここに概略が記載されていますので、内容は省略いたしますけれども、後ほど御報告をさせていただきます刑事司法の制度改革、これが来年の非常に大きな課題でございます。また、これとともに民事司法制度の改革というものも来年の課題であり、法案を提出するという予定で進んでいるわけでございます。
 その他の点につきましても大変重要なテーマが多く、課題が目白押しだということでございます。
 本日の検討状況の報告に引き続きまして、次回以降の顧問会議におきましても順次、各検討会の検討状況について御報告をさせていただきたいというふうに思っております。
 また、このような報告、御議論は何回か繰り返してやらせていただくということを考えております。よろしくお願いを申し上げます。
 以上でございます。

【佐藤座長】 どうもありがとうございます。それでは、裁判員制度を中心に井上座長のお話をうかがいたいと思います。

【井上座長】 井上でございます。時間も押しておりますので、手短かに御報告させていただきたいと存じます。
 お手元に資料が配付されておりますが、資料3−1から3−4までが裁判員制度・刑事検討会に関するものでございまして、資料4−1から4−4までが公的弁護制度検討会に関するものでございます。
 まず、裁判員制度・刑事検討会の検討状況から御説明申し上げます。
 この検討会では御承知だと思いますが、3つのテーマを検討の対象としております。
 1つ目が裁判員制度の導入、2つ目が刑事裁判の充実・迅速化のための方策、3つ目が検察審査会制度の機能の拡充でございます。
 これらにつきまして、これまでに21回の会合をもってきました。その状況につきましては、資料3−1の別添1というところで表になっておりますが、昨年の12月の第10回会合までは、検討テーマのうちまず検察審査会制度、次に裁判員制度、そして刑事裁判の充実・迅速化と、こういう順序で新たな制度の骨組みに当たる大きな論点についての議論を、一辺り行いました。
 今年に入りまして、第11回会合からは、それらの議論を踏まえまして、事務局に作成してもらいました議論のためのたたき台、これは資料3−2から3−4としてお配りしておりますけれども、それを素材としてより細かな論点も含めた第2ラウンドの議論というべきものを、現在まで行ってきているところであります。
 検討会での議論は、手続上のやや技術的な論点を含めまして、極めて多岐にわたっておりまして、この場ですべてを御紹介することはできませんし、余り意味がないかとも思われますので、特に重要と思われる論点に絞って、ごくかいつまんで御紹介したいと存じます。
 たたき台の内容自体も、やや入り組んでおりますので、その項目のみを抜き出した目次のようなものを資料3−1の別添2から4として差し上げております。それらを適宜ごらんいただきながら、お聞き願えればと存じます。
 まず、裁判員制度につきましては、これは別添3に項目が掲げられておりますけれども、この項目のうち、主要な論点の一つは、申すまでもなく、1の「(1)裁判官と裁判員の人数」でございます。
 このうち、裁判官の人数につきましては、3人とするのが適当であるという意見と、3人より少なくてよいとする意見の二通りの意見が主に述べられております。
 このうち、前者の意見は、裁判員制度の趣旨というものは裁判官と裁判員の知識・経験を合わせて、両方で共同しながらよりよい裁判を実現することにあるということと、重大な事件では法律判断も重要であるので、裁判官の数を現在の合議体より減らす理由はないのではないかということを主な理由とするものであります。
 これに対して、後の方の、少なくてもいいんじゃないかという意見は、裁判員の加わる新たな裁判体では、現状の裁判官のみによる合議体の構成を必ずしも前提にする必要はないのではないかということを主たる理由にするものであります。
 一方、裁判員の人数につきましては、裁判員の人数は裁判官と同数程度が望ましいという意見と、11人くらいを基本とすべきだという意見、両者の中間といってはおかしいですが、5〜6人とすべきであるという意見。そういった意見などが示されております。
 裁判員の人数は裁判官と同数程度が適切だという意見は、裁判体の構成員全員によって証拠を十分検討し密度の濃い評議を行い、結論だけでなく、実質的な、きちんとした理由づけを伴った判決を導くためには、全体を余り大きな人数にしない方がいい、大きな人数にすべきではないということなどを理由としております。
 これに対して、裁判員の人数を多くすべきであるという意見は、国民的基盤の確立ということのためには、国民が裁判を担っていることが法制上も明らかな制度とすべきであるといったことや、人数が多い方が裁判員が主体性を発揮しやすいと思われるといったことなどを理由としております。
 次に1の「(4)対象事件」につきましては、国民が参加を実感できる程度の数が必要であるといった理由から、法定合議事件、つまり、必ず3人の裁判官の合議体で裁判しなければならないとされている事件、これは、原則として死刑や無期、又は短期1年以上の懲役・禁固に当たる罪に係る事件ですが、そういうものとすべきであるという意見があります。
 これに対して、制度の定着のためには、当初は対象事件を絞るべきであるということから、法定合議事件であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪、つまり被害者が亡くなっている、そういった罪を基本とすべきであるという意見もあります。
 さらには、むしろ基本とするのは、死刑あるいは無期といった非常に重い刑に当たる罪に係る事件を対象とすべきであり、ただ、それだけで、例えば傷害致死といった、被害者が亡くなっている事件などが含まれないので、そういう故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた罪、法定合議事件であって故意の犯罪行為によって被害者を死亡させたような罪をも併せて対象とすべきであるといった意見などが示されているところであります。
 2の「裁判員等の選任」に関する論点の中では、いろいろな議論がありますけれども、例えば「(2)欠格事由」として、心身の故障のため裁判員の職務の遂行に支障があるということを欠格事由とすべきであるという意見と、そういうものを欠格事由とすべきではないという意見、この両様の意見が述べられるなどしております。
 4の「公判手続等」につきましては、裁判員の負担を軽減しつつ、その裁判員が実質的に関与できるように、迅速でかつわかりやすい審理が行われるようにする必要がある。これは一致した基本的な認識でありますけれども、そういう認識に立ちまして、証拠調べ手続の在り方等について議論が行われております。
 例えば、公判廷で心証形成ができるように書証に依存しない証拠調べが可能となるような方策を考えるべきであるといった意見を始めとして、制度上の手当、あるいは運用上の工夫について、さまざまな意見が述べられております。
 途中、ちょっと省略させていただきまして、8の「裁判員の保護等」につきましては、裁判員等の個人情報の保護のために必要な措置をとるといったことに加えまして、「(2)裁判員等に対する接触の規制」ということをめぐりまして、現に裁判員を務めている人に対する接触を禁止すべきであるとした上で、更に過去に裁判員であった者に対する接触も一定の範囲で禁止すべきであるという意見と、裁判員であった、既に裁判員の職務を終わった人に対する接触は禁止すべきではないという意見、あるいは、それはメディア側の自制に期待すべきではないかという意見などが述べられているところであります。
 「(3)裁判の公正を妨げる行為の禁止」につきましても、こういう公正を妨げる行為を禁止するということは当然であり、宣言すること自体に意味があるという意見と、この点についてもメディアが自主ルールを作成すれば問題は相当程度回避されるので、規制は不要であるという意見などが述べられております。
 「(4)出頭の確保」、裁判員の出頭を確保するための方策ということでちょっとかたい言葉ですので、しかられるかもしれませんが、とにかく裁判員の方に出てきていただくための方策につきましては、この職務を行うために必要な範囲で休業とすることができる制度についても、積極的に検討すべきであるといった意見などが述べられているところであります。
 次に、刑事裁判の充実・迅速化についてですけれども、これは資料3−1の別添4の資料に目次が示されております。
 このテーマにつきましては、まだ実は第2ラウンドの議論の最中でありまして、「8 争点の確認等」というところまでしか議論しておりませんけれども、「1 準備手続の目的等」については、特に裁判員制度の対象事件におきましては、公判前に具体的な審理計画を立てて、審理に要する見込み時間をはっきりさせるということがやはり不可欠であるから、必ず準備手続を行うこととすべきであるといった意見などが示されております。
 その準備手続でどういうことが行われるかにつきましては、資料3−4のたたき台の方の2ページの2の(3)というところに、細かいのですけれども、こういったことが行われるという想定が示されておりますが、そのために3以下にありますように、両当事者の間で主張の明示や証拠の開示が行われるということが考えられております。
 まず、3の(1)及び(2)のとおり、検察官が証拠によって証明しようとする事実を記載した書面を提示する。また、そのために用いようとする証拠を被告人側に開示するものとする。これらについては、ほぼ認識が一致しておりますが、それに続いた(3)のそれ以外の証拠の開示につきましては、主に二通りの考え方がありまして、一つは、検察官が請求する証拠の証明力、信用性だとか、どの程度証明力があるのかといったことですが、それを判断するのに重要な一定類型の証拠を開示対象とするのが適切であるという意見と、その一定の類型に該当する証拠は原則的に開示するとした上で、検察官が持っている証拠のリストを開示することとすべきであるといった意見などが示されております。
 続いて、4の「被告人側による主張の明示」につきましては、争点整理を事前に効果的に行うためには、弁護人だけでなく被告人にも主張の明示義務を負わせるべきであるという意見と、弁護人に義務を課すだけで十分であるという意見などが示されております。
 こういうふうにして、いずれにしろ弁護側の主張が明らかにされますと、5によりまして、更にそれに関連する証拠が検察官から開示される。このように、主張の提示と証拠開示が重ねられていくことによって、争点が整理され絞られていく。こういう仕組みが考えられているわけですが、その過程において、例えば証拠を開示することの要否等について争いが生じたときには、7によりまして、裁判所が裁定するという手続も考えられており、それについても議論がなされているところです。
 以上の準備手続の効果に関する8の「争点の確認等」という項目につきましては、準備手続において明らかにされなかった主張を公判ですることを原則として制限する規定を設けた方がいいのではないかという意見と、そういう規定を設けなくても時期に遅れたといいますか、主張すべき時期を逸したような主張は制限できるのではないかと意見、あるいは、せめて公判での新たな証拠調べ請求は原則として制限すべきではないかという意見と、制限しなくても、そういう新たな請求があった場合には、なぜ準備手続で請求しなかったかの理由を説明する義務を負わせれば足りるのではないかという意見、さらに、そういう規制を設けなくても不誠実な請求は却下されることになるので、それで十分ではないかといった意見が述べられているところであります。
 今後は今月更に2回の会合が予定されておりまして、連日的開廷などの刑事裁判の充実・迅速化に関するその他の論点につき、引き続き議論を行うことにしております。
 資料3の1の別添2の検察審査会の機能の拡充につきましては、起訴相当の議決に法的拘束力を与えるという辺はほぼ一致しているところですけれども、ただその手続の慎重を期すために、検察審査会の議決のようなものがあった場合にも、検察官に一旦再考の機会を与えるべきではないかという意見と、それは不要だとする意見の両様の意見が示されているところですし、また例えば、こういう事件が公判に行った場合にだれが公訴の維持に当たるのか、だれが起訴状を書くのか、そういった点についても、指定弁護士が行うべきだという意見と、やはり検察官が行うべきだという意見の両様の意見が述べられているところです。
 この検討会のこれから先の予定としましては、今、申し上げましたように、今月中に第2ラウンドの一通りの議論を終えまして、夏休みを挟みまして9月に1日半の集中審議、前の審議会のときも2日半やってえらい思いをしたのですが、こちらの検討会でも1日半の集中審議を行うこととし、それを含めまして延べ4日にわたる会合を持ち、第2ラウンドで大きく意見が分かれた論点を中心におさらいの議論を行う。そして、それを踏まえまして、新たな制度の骨格案のようなものを事務局で作成してもらい、それを基に、10月以降、更に議論をするということを考えております。
 ちょっと時間がなくなってきましたので、もう一つの方はごく手短にさせていただきます。公的弁護制度の検討会の方ですけれども、資料4−1の別添1に示されていますように、これまで10回の会合を開催いたしております。こちらの方も、第1ラウンド、第2ラウンドと段階を踏み、第6回まで第1ラウンドの議論をし、第7回には、関係機関からヒアリングを実施いたしましたし、これに加えまして、国民の皆様から意見募集を行ったところであります。
 それらを踏まえまして、事務局に資料4−2、4−3のような議論のたたき台を作成してもらいまして、第8回の会合以後、それらを素材として議論を進めてきているところであります。
 ごくごく簡単に、4−2の「公的弁護制度(1)」における主要な論点を御紹介しますと、1つは対象事件をどうするのかということで、被疑者が身柄拘束された場合を念頭に置くということについては、ほぼ異論のないところなのですが、それを更に罪名によって限定するのかどうかということが1つの議論の焦点でありまして、弁護士の対応能力や国の財政負担、あるいは国民の理解といった観点から議論が行われているところであります。
 また被疑者に対する選任要件の在り方ですが、例えば貧困要件というものをかけた場合に、その貧困という場合の基準をどうするのかとか、あるいは貧困でないけれども自らは弁護人が選べないといった場合にどうするのか、そういった要件の在り方や、その審査をどうするのか、あるいは、選任の始期を逮捕された直後とするのか、それとも勾留の段階にするのか。こういった点について議論が行われているところであります。
 資料の4−3の「(2)」の方での主要な論点としましては、公的弁護制度の下での弁護活動の在り方として、一方で弁護活動が自主的で独立のものでなければならない。それを確保するとともに、他方で、弁護活動の水準や適正さをいかに確保するのか、これは非常に難しい問題ですけれども、そういった点が主要な論点であります。また、運営主体がどういうものであるべきかにつきましては、意見書では、公正中立な機関であり、透明性があり、説明責任を果たせるようなものでなければならない、といったことを言っているわけで、それを踏まえるのは勿論ですが、それとともに、現在、政府の方で推進しております行政改革の動向をも踏まえつつ、どういう組織形態が適当であるのかを考えておりまして、ここのところも大きな問題でございます。
 なお、この運営主体につきましては、民事法律扶助の運営主体との関連ということも意見書では触れられておりますほか、先ほど御議論がありました司法ネット構想についても、この司法ネットと公的弁護の運営主体との関係ということも十分考慮しながら、今後、検討を進めていかなければならないというふうに考えているところであります。
 もう一つ、公的付添人制度、これは少年審判に付された少年にも公的な費用により付添人を付けるべきではないかということで、意見書では検討課題とされておりますが、こちらの方は資料4−4に主要な論点を記載しておりますけれども、次の第11回の会合でたたき台が示され、議論を行う予定にしております。
 今後、この検討会についても、更に何回か検討会を開催して、議論をしなければならない点があると思われますので、次回の検討会で今後の進め方について議論をすることにいたしております。
 まだ私だけの感じですけれども、秋以降も少なくとも数回は検討会を行う必要があるのではなかろうかというふうに考えているところであります。ちょっと時間が押した中で駆け足で申し訳ございませんでしたが、報告とさせていただきます。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。
 時間が7時なんですけれども、ちょっと延長してよろしゅうございますか。10分ぐらいまではよろしゅうございますか。
 ただいま井上座長から御報告をいただきましたが、論点は非常に多岐にわたっておりますし、更に専門技術的な面もありますけれども、特にこの裁判員制度は今般の司法改革の最も大きな柱の1つでございますので、顧問の方々もこの辺については御関心が強いかと思います。
 裁判員制度以外の論点にもわたってよろしゅうございますけれども、どうぞ御意見、御質問をちょうだいできればと思います。
 20分ちょっとの御報告を受けて、御質問どうですかと言われても、戸惑われるところあるかもしれませんけれども、御関心の最も強いところでよろしゅうございますので、どうぞ。
 これから9月に入って、集中審議ですね。それに向けて、こういう方向でこういう点を注意してほしいというようなことも含めて、どうぞ。

【井上座長】 駆け足だったものですから、お分かりにくかったかもしれません。申し訳ございませんでした。

【佐藤座長】 技術的、専門的なものに入っていけばいくほど、段々話が細かくなって、まとめるのはなかなか大変かもしれませんけれども。

【井上座長】 そうですね。ただ、かなり具体的な枠組みの中で議論をしませんと、一層まとまらないと思いますので、かなり細かな議論もしておりますけれども、そこで止まるのではなく、そこから大きな制度の骨格はどうあるべきかというところになるだけ戻るように、そっちの方向で議論を持っていこうと、私としては考えているところです。

【佐藤座長】 佐々木顧問、どうぞ。

【佐々木顧問】 質問ですけれども、この意見募集をやられたわけですね。それで、今の裁判員制度及び検察審査会の制度も今年の春に意見募集をして、842 件の意見が寄せられたというふうに書いてあるんですね。集計の上、推進本部のホームページに近日中に公表の予定ということのようなんですが、どういう方向があったんですか。

【井上座長】 これは一言ではとても申し上げられません。両様といいますか、二元論では片付かないような意見の分布ですね。その意味ではかなり健全な意見分布かなというふうに思っています。例えば裁判員制度についても、真っ向から反対であるという御意見もあれば、これでは手ぬるいので、もっと国民の関与の度合を増やせという御意見まで、非常に幅広い御意見がありました。

【佐々木顧問】 それは何か具体的なイメージを示して意見を聞いたんですか。それとも一般的に聞いたと。

【井上座長】 たたき台を示して意見を求めました。そのたたき台自体、ごらんいただくように、意見が分かれているところについては、幾つかの考えられる典型的な案を示していますので、それをご覧になると、ちょっと戸惑われるかもしれませんけれども。
 御意見の中身は、ちょっとどうかなといったものや、趣旨がよくわからないものもありましたけれども、非常に真摯に考えて率直な御意見を述べられているものも多くありましたので、読むと非常に面白いというのは失礼なのですけれども、有益な結果だったと思います。

【佐藤座長】 志村顧問、どうぞ。

【志村顧問】 裁判員制度の資料3−1の別添3でございますが、一番上の裁判官と裁判員の人数について御説明いただいたんですけれども、日本の場合は裁判官と裁判員が一緒に決定するというふうに前、伺ったと思うんですが、その場合に裁判員の数が裁判官よりも多いというのは、どういう考え方、そして決定はそれぞれのグループごとに多数を、というんでしょうか。それとも全体ひっくるめてだと裁判官が数で負けてしまうことがあり得ますね。

【井上座長】 前者につきましては、先ほど申し上げましたとおり、裁判員がせっかく加わるのであるから、相当数加わるのが制度の在り方としていいのではないかということと、もう一つは、率直に言いますと、裁判官は何といっても専門家であるので、裁判員がある程度以上の数いないと主体性を発揮できないのではないかという考え方によるものです。
 むろんそれに対しては、そうではないのではないか。むしろ、全体としての規模がある程度まででないと詰めた議論ができないし、かえって無責任になるのではないかという意見もあるところです。
 評決の方法につきましては、これも最終的にどうというふうに意見が一致しているわけではありません。おっしゃるように2グループに分けてそれぞれ別に行うということも、理論的にはあり得る制度なのですけれども、審議会意見書が、両方がバックグラウンドは違うのですけれども、一緒の場でコミュニケーションを取りながら協同して事実認定も行い、刑の決定も行うことにすべきだということを言っていますので、その趣旨からすると、やはり一緒に評議をし、一緒に評決するというのが自然なのではないかなという、余り断定的なことを言いますと検討会に帰るとしかられるかもしれませんけれども、大方の方はそういう感じを持っておられるのではないかというふうに思います。

【志村顧問】 ちょっと追加ですが、裁判官と裁判員が役割分担をして、アメリカの陪審員制度なんかそうですね、というのはどうして否定されたのですか。

【井上座長】 これは佐藤座長にご説明いただいた方がよいかもしれませんが、審議会の議論では、それも一つの在り方なのですけれども、現在の裁判官による裁判の持っているいいところに加えて、国民の健全な社会常識を反映させていく。そのことによって、プラスの面が生じてくるのではないか。その意味でバックグラウンドは違うのですけれども、やはり別々に仕事をするのではなく、一緒の場でコミュニケーションを取りながら協同して、結論を導いていくという形がいいのではないかというのが、多くの委員の基本的な発想というか考え方であったと思います。
 ただ、今、検討しているところでは、そういう考え方を基にしながらも、例えば法律問題の判断ですとか、あるいは訴訟手続上のいろいろな判断についてまで裁判員に加わっていただく必要があるのか、あるいは適切かという議論がありまして、そこは基本的には裁判官に任せていいのではないか、その範囲等についてはなお意見が分かれていますけれども、大体そういう方向で議論が進んでいます。

【佐藤座長】 まず、こういう形でスタートしてみようじゃないかということなんですね。将来のことは将来、あるいはアメリカ的なものになるかもしれないが、まずはこういう形でスタートしてみようと。従来、陪審法があって停止されたわけですね。停止状態にあるわけです。それを戦後50年以上たって、これからやろうということですから、まずやりやすい、国民の理解を得やすい形でスタートしようじゃないか。そういうことでできたのが、この裁判員制度で、趣旨は井上座長と同じだと思います。
 やはり、裁判官の数、裁判員の数の辺りが一番の問題ですかね。

【井上座長】 勿論、そこは意見が大きく分かれているところですし、マスコミの方々を含め、世間からも注目されている最大の争点の一つではあるのですけれども、そこも大事ですけれども、私自身としては、裁判員の方にせっかく参加していただくのですから、参加しやすい、また参加して意味のある参加の在り方、それは数だけの問題ではなく、審理の在り方とか、評議や、いろんなところに参加される場合の仕組みの問題、そういうことを合わせて考えていかなければいけないと思っております。数だけになりますと、非常に図式的な議論になってしまうものですから、そういったほかの面をも含めて総合的に御議論していただきたいというふうに、常々申し上げているところです。

【佐藤座長】 審議会の意見書も言っているように、国民が主体的・実質的に参加するということですね。そうするとやはり参加した人が主体的・実質的に参加したという意識をまず持っていただけるようなことであるべきだと思うんですね。
 そして、更に一般の国民から見ても、この制度はそういうものであるというように受け取ってもらう必要がある。国民自らの問題だというように受け取ってもらう制度になってほしいというのが審議会の心だというように。私がそういうこと言っていいのかどうかわからないんですけれども。

【井上座長】 佐藤先生と私だけで話していますと、ちょっとサクラのような議論になってしまっていけないのですけれども。

【佐藤座長】 これまで新聞やいろんなところで、国民主権との関係がどうかということがよく議論されていると報じられていますけれども、国民主権といってもいろんな意味がありますから、意味の取り方によっては随分違った結論になるわけで、国民主権という大きな言葉でこの問題を論ずるというのは、必ずしも正確ではないというように思います。
 しかし、他方、その根底にあるものはというと、やはり従来、刑事裁判、あるいは社会の秩序というのは、お上のやること、お上と言ったら怒られるかもしれませんが、少なくとも他人事、国民にとっては自分たちの問題でないと思われてきた、それを変えようということなんですね。国民が自分自身の問題だと思うようになる、そういう方向に変えよう、秩序は自分たちがつくっていくものなんだというように変えようとしているところがあるわけで、その意味では国民主権の理念とつながっているという言い方もできないわけではない。
 これ以上のことは言いませんけれども、この2点、審議会の意見書をいろいろ御議論いただいてまとめた立場として、この2点は非常に大事な点かと考えております。

【井上座長】 国民主権ということとの関連については、今おっしゃられたように、非常に難しい問題があり、審議会の意見書も非常に慎重なものの言い方をしているのですけれども、私も、司法権も国民の主権に源を持っているといいますか、その付託を受けているものであることは間違いないと思います。
 その意味で、国民の方々ご自身が責任の分担をしていただいて、司法にも参加していただくということは、司法にとってもいいことですし、また、それを通じて国民の方々が、司法も自分たちのものであり、責任も分担しているのだという自覚を更に強めていっていただくということが望ましい方向である。それは審議会でも一致したとらえ方であったのじゃないかというふうに思っております。

【佐藤座長】 何か、更に御質問、御意見ございませんか。
 よろしゅうございますか。10分と言いましたけれどもオーバーしてしまいました。今日は3つのテーマで、どれもこれも何か消化不良と言ったら何ですけれども、生煮えのところもあったかもしれませんが、一辺り御議論いただきました。特に井上座長にはお忙しいところ御出席いただいて本当にありがとうございました。いよいよこれから山場で大変御苦労が多いことかと思いますけれども、よろしくお願いいたします。
 それでは、大臣にお言葉をちょうだいできればと思います。

【森山法務大臣】 いろいろ話盛りだくさんで聞かせていただきまして、誠に御苦労様でございました。まず、司法ネットの話がございまして、私、この前の有識者懇談会も傍聴させていただきまして、大変勉強になったわけでございますが、その関係でちょっと座長からもおっしゃられましたように、運営のやり方が非常に難しいなというふうに思っております。確かに、現に既に日弁連とか市町村とか大学の法律相談所とか、いろんなところがやっていただいているのも確かでございますので、せっかく自主的にやっていただいているそういうものが元気が出て、更に普及していくようにということが本当は望ましいわけですから、余り政府が自ら立派なものを作って、さあどうだというのは余り感心しないと私も思っております。
 ですから、うまい方法を考えなければいけないなということで、まさにそこが一番の問題じゃないかなと思っておりますが。
 そのほか今、司法教育についてもそれぞれの役所から話がございまして、これもみんなこれからの話でございますので、いろいろ工夫していただいているようですが、更に協力して、よりよいものにしていただきたいというふうに考えます。
 また、今、井上先生が御紹介いただきましたこれからの課題というのは、まさにこれからの課題でございまして、特に裁判員の問題は世間が大いに注目しているところでございますので、今、幾つかの論点をお話しくださいましたけれども、それらを集中議論、集中審議などしていただきまして、整理していただいて、よりよい結論が出ていただければ大変ありがたいというふうに思っております。
 本当に今日は長時間ありがとうございました。

【佐藤座長】 ありがとうございました。事務局の方から何か。

【事務局長】 次回についてでございますが、既に御連絡はしておりますけれども、7月30日に総理大臣官邸の方で行いたいと思います。また詳細については、追って御連絡をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

【佐藤座長】 では、以上でございます。どうもありがとうございました。

(以上)