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司法制度改革推進本部顧問会議(第12回)議事概要



1 日 時  平成15年7月30日(水) 16:30〜18:00

2 場 所  総理大臣官邸4階大会議室

3 出席者

(顧問)
佐藤幸治座長、今井敬顧問、大宅映子顧問、奥島孝康顧問、笹森清顧問、志村尚子顧問

(推進本部)
小泉純一郎本部長(内閣総理大臣)、福田康夫副本部長(内閣官房長官)、
森山眞弓副本部長(法務大臣)、上野公成本部長補佐(内閣官房副長官)、
古川貞二郎本部長補佐(内閣官房副長官)

(推進本部事務局等)
山崎潮事務局長、高橋宏志司法アクセス検討会座長、
青山善充ADR検討会座長、伊藤眞知的財産訴訟検討会座長他

4 議事次第
(1) 開会
(2) 司法ネット(仮称)について
(3) 内閣総理大臣あいさつ
(4) 今後の立法課題に関する検討会における検討状況等について
(5) 閉会

5 配布資料[PDF形式]
○ 小島顧問提出ペーパー
○ 佐々木顧問提出ペーパー
1 「司法ネット」のイメージ(案)
2 検討会の検討状況
3−1 弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いについて
3−2 弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いに関する議論の概要
4 総合的なADRの制度基盤の整備について(ポイント)
 (冊子) 総合的なADRの制度基盤の整備について(全文)
5 知的財産訴訟検討会の状況について
6 法務省資料

6 会議経過

(1) 司法ネット(仮称)について

ア 司法アクセス検討会における司法ネットに関する検討状況について、高橋座長から資料1に基づいて説明がなされた。

イ 上記説明に関し、概要、以下のような質問・意見があった。

  • 御説明していただいた案に賛成である。司法ネットの整備については、司法を国民の身近なものにするという点において司法改革の根幹をなすものであり、国民の期待も高いのではないか。整備の意義については、効果的に紛争が解決されるのみならず、座長の説明にあったように紛争の発生自体が抑止され、国民の不安が解消されるということもある。ただ、初めから大がかりに全国津々浦々につくるのではなく、国民や地域の司法に対するニーズ等を勘案しながら、必要なところ特に司法過疎地域の対策を中心に進めていくこと、予算はある程度必要だと思うものの、国が大規模な予算をつける前に既存の地方公共団体や弁護士会等の活動を支援していくことが必要ではないか。司法ネットの機能として、訴訟だけではなく法律相談、苦情処理、ADR等を含め包括的・総合的な情報サービスを迅速に提供すること、法律サービスの提供機関の間でたらい回しがされることのないようなネットワークを構築することが期待される。また、利用者の利便性を考え、インターネットを利用することや夜間、休日にも窓口を開くことによって、国民がいつでもどこでも安心して相談できるようにすることが重要である。さらに、座長の説明にあったように、民事的な法律扶助サービスを提供するとともに、刑事事件の公的な弁護サービスの提供も必要だと思う。その際ジュディケア制度に加え、運営主体自らが、弁護士、隣接法律専門職種を雇用することが必要ではないか。また、司法ネットのスタッフの採用に資するよう、法科大学院の学生について、司法ネットで働くことを条件に奨学金制度をつくることや、司法ネットの運営主体が紛争解決機関を評価することによって、機関の間に健全な競争をさせることが必要である。リーガルサービスセンターの運営主体については、運営の透明化が求められること、公的な性格をもつことから、独立行政法人がよいのではないかと思っている。

  • 司法ネットについては、2月の顧問会議での小泉総理の発言を踏まえること、つまり、司法は高嶺の花ではなく、誰にとっても「手を伸ばせば届く存在」にならなければならず、全国あまねく市民が法的な救済を受けられるようにするということが重要であり、説明していただいた司法ネットのイメージについては、これに沿っているのではないかと思う。利用者の観点から、いつでもどこでもサービスを受けられるようにすること、地方自治体が主体的、自律的な役割を果たせるような仕組みとすること、訴訟に関わったときに、ひとまず安心できるように、絶対たらい回しにならないことを基本にしてほしい。運営主体については、財政面の問題も考えなければならないが、現在ある法律扶助協会を独立行政法人化させるだけになると小さなものになってしまうことをも踏まえ、地域参加型のNPOが参加できるようにすることを含め民間団体が自律、自助努力することを前提とし、柔軟な制度でできるようにすること、このような組織に対する公的な資金の投入方法につき検討していただきたい。

  • 司法ネットを整備する最初の段階、例えば司法過疎地域などを整備する場合に、財政も含めどの程度の規模のものを想定しているのか。司法ネットに勤務する人は必ずしも法律の専門家である必要はなく、訓練すればよいのではないか。
    (高橋座長から、規模等については、司法アクセス検討会においてこれから鋭意検討する旨発言がなされた。)

    (佐藤座長から、司法ネットについては、おおよそ顧問の間で意見が一致していたが、運営主体については、さらに議論していただく必要があるのではないか。一番大事な中身については、2月の顧問会議において司法を高嶺の花ではなく、国民に手が届くものにするとの総理発言を踏まえ検討を重ね、資料1のイメージのような具体的な姿が出てきたと理解できるのではないか。基準、やり方、運営主体等については、これからなお詰める必要はあると思うが、リーガルサービスセンターが質の高い法的情報・サービスの提供の拠点になって、日弁連、地方公共団体等が努力されてきたものも含め全体が活性化するようなものになっていただきたい、そうしなければならないと考えている。司法ネットについては、市民の自律的な生活を法的に支えるという基本的な理念をまず押さえ、市民にとって利用しやすさを追求することが重要であり、また、自治体にとっても重要な問題として検討していただく必要がある。この司法ネットの問題は、司法改革の行方を決める重要な意味をもっていると思う旨発言があった。)

  • リーガルサービスセンターという名称については、リーガルという言葉が一般的に使われているとは思えず、カタカナをなるべく日本語にしようとしている流れを踏まえ、ぜひとも日本語にしていただきたい。
    (小泉本部長から、リーガルサービスセンターという言葉は国民には全然分からない。司法は高嶺の花のままだ。お年寄りにも子どもにも分かるようによい言葉を考えるべきという旨発言がなされた。)
    (佐藤座長から、名称につき、検討する旨発言があった。)

(2) 法科大学院について

    (佐藤座長から、法科大学院は、来年4月から開校することになっているが、財政支援の問題も含めて克服しなければならない問題が山積している旨発言があった。)

  • 司法改革を担うのは人であり、そのために人を養成しようというのが法科大学院である。今までの司法試験一発主義をやめ、プロセスを重視して、倫理観をもった高度専門職業人、人間味豊かな法曹を育てようということだと思う。私の考えでは、現在日本の国家の仕組みをマーケットという視点から変革しようとしており、新しい法曹養成についてもマーケットという観点、つまり、フリー、フェアー、グローバルという観点から考える必要があるのではないか。法曹を養成する各法科大学院間の競争ができる限りフェアーなものとなる条件をつくっていくことが大事ではないか。人を養成することであるから、よい法科大学院をつくろうとすると、コストがかかり、私立大学の場合には、授業料は200万円を超えると言われている。国立の法科大学院の授業料と全く同じにする程度の私学助成とまでは言わないが、できるかぎり国立大学と対等な競争条件が確保されるよう、国による私学助成について十分配慮していただきたい。
    (佐藤座長から、国立大学と私立大学の格差の是正については、国立大学の授業料の設定の仕方、私学助成の在り方、奨学金など学生個人への支援、国公私立を問わずプログラムに着目して支援するなどいろいろなやり方があり、関係省庁で詰めていただく必要があると思う。法科大学院、法曹の養成ということは、司法改革の根幹をなしているということ、さらに、法科大学院は、今までの文科系の高等教育の在り方を打破する役割も担わされていることから、国として法科大学院を後押ししていただく必要がぜひともあるということを確認したい。政府において、法科大学院に関する財政支援については、その創設に係る法律にも規定されており、別枠というか正確に申し上げると純増ということで、ぜひお願いしたいと思う旨発言があった。)
    (小泉本部長から、その話については、聞いている。気持ちは分かるが、皆が別枠だと言い出すと際限がないので、法科大学院に限らず別枠と言うのはやめてほしいと言っている旨発言がなされた。)

(3) 小泉本部長から概要以下のとおり挨拶がなされた。

 今国会では、司法制度改革関連法が七本成立し、とりわけ、裁判の迅速化に関する法律については、関係者の御努力に敬意を表するとともに、迅速な司法の実現が図られるよう、運用面において一層の御尽力を期待する。
 本日、「司法ネット」のイメージが示された。どこに住んでいる市民にとっても、被疑者段階からの弁護など、法律サービスの提供を受けられるような身近で総合的なアクセス窓口が必要であり、そのための体制を新たに整備する必要がある。こうした「司法ネット」の中核となるセンターが担うべき事業内容と既存の関連サービスとの連携や協力のあり方について、その名称も含めて速やかに検討を進めていただきたいと考える。
 犯罪被害者やその家族からは、憤慨に満ちたものも含めて、「捜査や裁判の状況を教えてほしい」、「ぜんぜん教えてくれない」、「裁判に出て加害者に直接問いただしたい」などの声が聞かれる。捜査や刑事裁判における被害者の保護のほか、刑事訴訟以外の分野における損害賠償、名誉の回復、第三者からのプライバシーの保護など、被害者やその家族が、適切な法的支援を受けられる仕組みを作らなくてはいけない。
 民事、刑事、その他各般の分野にわたって被害者の権利が十分に保護されるために、司法ネットでどのような支援ができるのか、皆様のお知恵を拝借したいと思う。

(4) 今後の立法課題に関する検討会における検討状況等について

ア 司法制度改革に関する法案の審議状況等について、司法制度改革推進本部事務局(山崎局長)から説明があった。続いて、司法アクセス検討会における弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いについての検討状況について高橋座長から、ADR検討会の検討状況について青山座長から、知的財産訴訟検討会の検討状況について伊藤座長から、それぞれ関係資料(資料3−1から5)に基づき説明がなされた。

イ 上記報告・説明に関し、概要、以下のような質問・意見があった。

  • 知財高裁については、顧問会議において意見を申し上げた後、日本経団連からも同様の趣旨の提言が行われ、いわゆる知財推進計画においてその在り方も含めて検討することが決まったことをうれしく思っている。日本が技術創造立国で生きていくためには知財重視を鮮明に打ち出す必要があり、日本でも知財高裁ができるということは意味があると思う。専門家の間において多様な意見があると聞いているが、世界で最もすばらしい知財高裁をつくるというような見地から、様々な難しい問題を英知を集めて解決して検討を進めていただきたい。

    (佐藤座長から、知財高裁は、法律審なのか、事実審なのかという点について質問があった。)
    (伊藤座長から、検討会においてはその点について詰めた議論はしていないが、日本の司法制度の構造を変えるということでないなら、現在の高裁を基礎にして考えることになり、アメリカにあるような純然たる法律審にならないのではないかという旨回答がなされた。)

  • その話は、東京高裁に知財裁判部を設けて、知財の裁判を専属にするということか。
    (伊藤座長から、東京高裁に知財関係事件についての専属的な管轄を認めるということは今回通常国会において成立した民事訴訟法の改正で実現することになる。さらにそれを進めていわゆる知財高裁という特別の裁判所をつくるということについて、知財推進計画の記述を前提にして、検討を進めている旨説明がなされた。)

  • 地域レベルにいろいろつくることは困難であるから、集約するということか。そのようなことは問題ではないか。また、知財事件の訴訟手続についても質の高い裁判が実現されることが必要であり、知財のみを扱う裁判官や弁護士によって訴訟を行うということが考えられるが、そのような考え方は現実的か。
    (伊藤座長から、知的財産権といっても例えば著作権や商標権などいろいろな権利があり、顧問と同じ問題意識から、特別な裁判所に管轄を集中するということは当事者の視点からは問題という意見もある旨説明がなされた。)

  • 弁護士報酬の敗訴者負担について、審議会意見で導入する方向でまとめた趣旨は、司法アクセスの向上のためか、それとも負担の公平ということか。そして、本制度を導入する合理的な範囲及び敗訴者に負担させるべき額については、いくら合理的な範囲と額であっても、訴訟の萎縮あるいは回避をもたらすものなのか、もたらさないということで審議会意見になったのか。
    (佐藤座長から、審議会意見は、訴訟を回避さぜる得なかった当事者にも、負担の公平を図ることによって、訴訟を利用しやすくすること、一定の要件のもとに弁護士報酬の一部を訴訟に必要な費用とみなして敗訴者に負担させることができることとしつつ、この制度の設計に当たっては、不当に訴えの提起を萎縮させないように、一律に導入することなく、敗訴者負担を導入しない訴訟の範囲及びその取扱いの在り方について検討すべきとしている。負担の公平を図りながら、アクセスを容易にするという考えが根底にあり、負担の公平という見地から、負担させるか否かということ、どの程度の額を負担させるかということを判断していただきつつ、ある類型の訴訟については、敗訴者負担制度を導入しないことにして、不当に訴訟を萎縮させることのないようにするという二段構えになっている旨説明があった。)
    (高橋座長から、検討会においては、アクセス、負担の公平、民事訴訟法の原則などいろいろな観点から、多角的に検討している旨説明がなされた。)

  • いずれにしても、不合理な負担によって不当な結果が生じないというようなきめの細かい配慮が必要ではないか。
    (佐藤座長から、御指摘のような配慮は必要であり、そのような点については柔軟に考えるということが審議会意見書の趣旨であると思う旨発言があった。)

    (佐藤座長から、資料4の特例的事項の主な論点について確認があった。)
    (青山座長から、特例的事項として、例えば和解が成立した場合に強制執行を認める効力を与えるということについては、強い消極意見がある一方、ADRの利用に時効中断効を付与することについては、積極意見が多いという相違もみられる旨説明がなされた。)

  • 裁判員制度については、本部長に日本弁護士連合会が作成したビデオを見ていただきたい。また、国民に迷惑をかけるのではないかとか、小さな形でよいのではないかという意見を聞くが、観客民主主義を改めるべきではないか。制度設計については、意見書の趣旨にのっとって、どのように国民が裁判にかかわるかということを検討すべきではないか。
    (佐藤座長から、裁判員制度については、意見書の趣旨にのっとって行われるべきであること、社会秩序の維持について国民自身に真剣に考えていただく必要があること、いろいろ難しい問題があるものの、国際的水準からもふさわしいものを導入する必要があることなどを踏まえ、検討会において検討が進められるものと理解している旨発言があった。)

  • 裁判員制度については、裁判員が裁判官といっしょに審理するとなると、日本の社会においては、裁判員は数が少ないと意見を言いにくいのではないか。
    (佐藤座長から、その点については、重要な課題であるが、審議会意見書においては裁判員が主体的に、実質的に関与することが重要であると指摘されていること、人数の問題についてはむしろ裁判員の数が少ない方がよいという意見や、他方外国の例を参考にすべきだという意見もあることを踏まえ、検討会で議論してほしい旨発言がなされた。)

(5) 森山副本部長から概要以下のとおり挨拶がなされた。

 大変活発な御議論をいただき感謝する。平成13年の12月に、3年間の時限組織として発足した司法制度改革推進本部も、折り返し地点を通過し、既に、残り半分に入っている。この間、皆様のおかげでいろいろな法律が成立したものの、これから、裁判員制度、ADR、知的財産等大変なテーマが残っており、引き続き、顧問の皆様には、御指導・御鞭撻をよろしくお願いしたいと思っている。

以 上
文責:司法制度改革推進本部事務局
注)速報のため、事後修正の可能性あり