- 行政訴訟については、これまでほとんど使えないものと考えていたところ、改革への期待が大きい。ところが、原告適格等訴訟要件を含む重要な部分について、まだ合意ができていないような状況にあり、事務局がかなり力をいれて進めてもらわないと間に合わないのではないかと思う。中途半端に終わらさずに改革の趣旨を生かしてやっていただきたい。労働参審制については、中間取りまとめでは、労働関係訴訟の今後の状況、労働審判制度の今後の実績等を踏まえるべきで、将来の重要な問題とされており、論議が頓挫してしまうことを心配している。審議会意見では、労働調停、労働参審制の導入の当否を検討するとあり、労働参審制を導入をしないことについて、その理由や根拠をもう少し明らかにしておく必要があるのではないか。また、仮に時期尚早というなら、いつ、どのように、誰が、どのような形で検討を行うかについて、示していただく必要があるのではないか。労働審判制については、その詳細について詰めきられていないが、労使の十分な意見を聞いていただいて本当に使い勝手のよい制度となるよう、検討願いたい。
(塩野座長から、行政訴訟の検討については、御要望にこたえるべく一生懸命やりたいと思っている。次回の検討会においては、これまでの議論を踏まえ、審議を一歩進めるためのたたき台を事務局の協力を得ながら、座長として提出する段取りになっている旨説明がなされた。)
(山川座長代理から、労働参審制については、かなりの回数にわたって検討を重ねてきたところであるが、なお委員の間で見解の一致がみられていない。中間取りまとめにおいては、労働審判が専門的な知識経験を有する労使が関与する制度設計となっており、その実績等を踏まえるべく、将来の重要な課題と位置付けられている。時間的な制約もあり、今後は、労働審判制度を検討していくことになってはいるが、労働参審制について御意見が出されたことについては、検討会に十分伝える旨説明がなされた。)
- 関心があり、心配しているのが行政訴訟関係である。行政訴訟検討会を応援したい。21世紀の日本の社会の在り方を考え、司法制度を改革しているが、その際、極めて重要なことは、司法制度と行政制度との関係、行政を司法がどのようにチェックするかということである。民主主義の基本は三権分立であるが、日本の場合は圧倒的に行政が強い。司馬遼太郎氏が指摘しているように、日本の政府は、予算の規模、役人の数などを考えると大きくないが、重たい政府である。重たいというのは、企業や個人が活動するときに絶えずお伺いを立てないといけない、チェックされるということである。また、裁量行政なので、司法が判断できず、司法が行政に判断を委ねているところが余りにも大きい。日本の行政の裁量部分、法律で説明がつかないところについて、海外と摩擦が生じている。21世紀の日本の行政が信頼され、よりよき機能を果たし続けるためには、行政自身に自らチェックアンドバランスの仕組みを制度としてしっかり組み込んでいくことが極めて重要であるという視点から、検討していただければと思う。そのことによって、21世紀の日本の社会が活力をもち、世界とのバランスにおいてもよくなり、行政についても、法律で説明がつき、透明性があるということから、国民に支持されるようになるのではないか。
(塩野座長から、外国の行政については、行政処分などをする際、訴訟が提起されることも考えていると感じたことがあったが、日本では、行政処分をしても訴訟が提起されないと考えているのではないか。最近は、随分改まってきたが、それでも裁量行政に対する批判は聞いている。その改善のための手法として行政手続法、情報公開法、個人情報保護法、政策評価法などかなり整備されてきていると思う。しかし、最終的には司法がチェックしなければならず、今回の改革は、日本の行政の透明性・公平性の確保をするための最後の仕上げだと思っている。他方、司法のチェックだけでも駄目であり、情報公開法を上手に使っていただくとか、必要があれば訴訟を提起してもらわないといけないと思う。韓国において、日本の行政訴訟制度の改革について説明すると、日本において行政訴訟が少ないのは制度とは別のところに原因があるのではないかと指摘された。さらに、行政訴訟に習熟された弁護士、裁判官の養成など司法の環境整備も重要であり、その点についてもお願いしたい旨説明がなされた。)
- 脱税については、新聞等で大きなニュースになるが、多くの場合、脱税か節税かは解釈の問題である。司法が強い国においては、司法で争うことになる一方、日本では、行政当局がすべてを解釈し、ほとんどその通りになり、解釈を争うという発想すら今の制度においてはない。
(塩野座長から、闘わない企業等は別として、訴訟をする気がある人に対して武器対等の原則を訴訟に持ち込み、訴訟をしやすく改革しようとしている旨説明がなされた。)
(佐藤座長から、弁護士事務所の法人化や外国法事務弁護士との連携状況のほか、弁護士の専門認定制度や日本の法令の英訳化についての検討会の議論についても紹介していただきたい旨発言がなされた。)
(柏木座長から、弁護士事務所の法人化の枠組みはできたが、予想ほど進んでいないと聞いている。外国法事務弁護士と日本の弁護士事務所については、今般の法改正によって外国法事務弁護士と日本の弁護士との共同パートナーショップが可能になるところ、日本の弁護士が外国法事務弁護士とも連携をして、グローバルなサービスが向上するのではないかと期待している。専門認定制度については、弁護士の選択がしやすくなると考えられるが、具体的な制度の在り方については議論していない。法令、判例の英訳の問題については、信頼できる英訳が基本法等についてないことにより、例えば、法整備支援や法律ビジネスの国際化などに関して障害になる、なっていると考えられ、必要であるとされた旨説明がなされた。)
(事務局から、外国法事務弁護士との連携については、特定共同事業以外にも事実上協力しているものを含めるとかなりあり、国際化が進んできたと思うものの、世界に比べると遅れている。法律の英訳については、公式の訳はないが、所管省庁が行うことである。確かに大変重要な問題であるが、英訳を難しくしている背景として、例えば、アメリカには物権、債権の区別がないなど外国と法律の概念が違うことがある旨説明があった。)
- 難しい課題だと思うが、それほど進んでいない状況に驚いた。これから世界がグローバル化する中で、すべての分野で重要になると思う。内閣全体の問題として進めていただきたいと思う。外国で出版された本など、すぐに日本で翻訳されるなどできている分野もあり、力を結集すればできないことはないと思う。
(佐藤座長から、法律の英訳については重要なことであると思う。具体的に顧問会議で提言までできるかという旨発言がなされた。)
(森山副本部長から、難しいと聞いていたが、必要性はもっともである。時々英訳を見たことがあり、それほど進んでいないとは思っていなかった。やり方として、正確無比ではなく、おおよそ分かるものでよいので、主な法律については英訳版を作ることが重要なのではないかという旨発言がなされた。)
(事務局から、英語に訳して、使っている法律もあるが、公式の訳はない旨説明があった。)
- 日本人は、どこから突付かれても大丈夫なよう、完璧を求める。文化が違う相手にも分からないといけないと思うから難しい。8割でよいと思えば、日本は随分元気が出る。日本ではこのような理由からこの言葉を使っていると説明ができればよい。
- 弁護士法の一部改正における内閣法制局参事官等の研修の内容は、他の者の研修の内容と異なるのか。
(伊藤座長から、研修内容については、研修を担当する機関が検討することになるが、経験した職によって研修の内容が質的に異なることはないと考えている旨説明がなされた。)
(事務局から、先般成立した改正法によって所定の研修を受けてもらうことになっており、その対象者として内閣法制局参事官等を加えるものである旨説明があった。)
- 司法制度改革、検討会も後半戦に入って、意見対立でデッドロックに乗り上げているものもある。検討会で対立して決められないとき、特に重要案件の場合には、顧問会議において、ある部分につき方向性を示す、座長に入っていただき議論することが必要なのではないか。顧問会議において、改革が進んでいるのかについてチェックする必要があるのではないか。また、裁判の迅速・充実に関して、改革をしようとしている民事訴訟・刑事訴訟の審理のイメージについて資料があれば、顧問会議に示していただきたい。裁判員制度の問題については、かなりの意見対立があるものの、裁判官は3人にすべきという意見が多いと聞いている。しかし、裁判官の数については、国民の裁判への参加に伴って制度を見直しをしていく中で、現状のままということでは改革の方向性と違うのではないか。また、現在の増員の程度では単独事件などに対応できないのではないか。与党では2名という意見も出されているが、私は1名がよいと思っている。裁判員の数については、人数が余り少ないと、多種多様な人を選んでいくという趣旨が実現されないのではないか。外国では10人前後が多いようではないか。顧問会議において、今言ったことを含めて議論してみる、あるいは、おおよその方向性について議論すればよいのではないか。
(佐藤座長から、裁判員制度については、集中審議が行われたところであり、機会を改めて、御報告いただき御議論していただく必要があると思っている旨説明がなされた。)
(事務局から、裁判員制度については、二日間集中審議が行われたが、裁判官、裁判員の人数について両説あって議論が伯仲しているところであり、今の段階では決まっていない。もう少し、検討会において議論していただいて、その上で、顧問会議に報告させていただきたい旨発言があった。)
(佐藤座長から、顧問会議においては、専門的な事柄について議論する場ではないと理解しているが、裁判官の数、裁判員の数等については裁判員制度の骨格の問題であり、検討会において意見の違いがあれば、理由をつけて出していただき、この場で議論していただくことが必要なプロセスだと思っている。行政訴訟についても、行政改革、司法改革にまたがる非常に根本的な問題であるので、又の機会に、制度の骨格部分について、意見の違いなどにつき説明していただき、御議論していただく必要があると思っている旨説明がなされた。)
(塩野座長から、いろいろな意見があり、議論が伯仲しているときに、検討会の状況について顧問会議に報告し、御意見を伺うことはあり得ることであるし、顧問会議の御意見については議論をする上で重要な資料になる。しかし、検討会において、議論をまとめるため十分検討しているところであり、意見が対立しているからといって、顧問会議で決定すると言われても検討会として引き受けられない旨説明がなされた。)
(佐藤座長から、検討会については、事務局が立案を進める上で、よい意見を出していただきたい。一方、顧問会議としては、検討会における議論の過程において問題があれば、意見書を忠実に実現する上で、必要なことについて議論して、検討のプロセスに対して意見をしていただくということであり、決定するということではない。しかしながら、顧問会議は本部長である総理、副本部長である法務大臣が出席される場であり、この場での議論はそれなりの意味をもっているとお受けとめいただきたい旨説明がなされた。)
(塩野座長から、対立が少しでも残らないように、検討会においてまとめるというのが座長の役目であると思っており、他の検討会の座長も同様ではないか。意見が対立しているところについては、逐次報告するというのは困るものの、本日のように、重要な場合、必要な場合は御報告させていただく旨説明がなされた。)
(佐藤座長から、それぞれの検討会の座長として一つの意見にまとめたいと考えるのは当然である。しかし、検討会で取りまとめる過程において、基本的な点等について顧問会議に報告していただくことは大事だと考えている旨説明がなされた。)
(佐藤座長から、裁判の充実・迅速化の問題については、ビジュアル化するなど一般の国民に分かりやすいように示す必要があるのではないかとの指摘を受けていたものの、検討会等において、民事訴訟、刑事訴訟、行政訴訟それぞれについて検討されているところであり、考えると申し上げてきた。しかし、民事・刑事の審理の姿が従来とどのように変わっていくのかという点について、具体的な時期まで申し上げることは難しいが、そういう時期にさしかかっているのではないかという認識である。行政訴訟について、審理の充実・迅速を図るために考えていることを紹介していただきたい旨発言がなされた。)
(塩野座長から、行政訴訟の場合には、行政処分をする以上はそれなりの理由があると考えられ、民事訴訟とは、資料の提出の仕方などについても異なるルールを設けるべきではないかと考えている。具体的には、例えば、早い機会に行政側は手持ちの資料を出すような仕組みにすることが必要であると考えている旨説明がなされた。)
(事務局から、迅速化法が成立したことにあわせて、民事訴訟、刑事訴訟、行政訴訟それぞれの手続を変えていくことになっているものの、法案提出、施行の時期については差があり、また、実際の審理の姿については、施行してしばらく経ってからみえてくる状況にある。さらに、最高裁判所の2年ごとの検証を踏まえて手当をしていくことになっており、現在においては、明確な姿をお示しすることは困難である旨説明があった。)
- 司法に関する文化の問題については、アメリカのように何かにつけて訴えるというのもどうかと思うものの、日本のように少ないのもどうか。行政側が情報開示や説明責任を積極的に行うなど努力をしないと文化は変わらないと思われ、そのような努力が必要ではないか。
(佐藤顧問から、日本の状況はアメリカと正反対であり、そのような状況を変えようということで司法改革が始まった。それを変えるためには、どこか一つ制度を変えるというのではなく、法科大学院、裁判員制度など制度全体を変えていく中で、変わるべきところは変わっていただく必要があると思う旨発言がなされた。)
(塩野座長から、行政訴訟事件についても、出訴期間等の教示をすることで概ね一致しており、自分の権利を主張したい方は主張してくださいというメッセージとして考えていただきたい旨説明がなされた。)
- 何か処分をするときに、出訴期間を教示することは当然だと思う。意識のズレというのはかなり大きい。
(塩野座長から、行政訴訟事件法には出訴期間が明示されており、法律の規定さえ見れば国民には明らかになっていると考えるのがむしろ比較法的には一般的で、出訴期間の教示は、比較法的に考えると普遍的な制度ではないと思う旨説明がなされた。)
(佐藤座長から、被告適格についても現在の制度はどうかとも思う。変えられれば、従来と比べ一つの大きな意味をもつだろう。司法というのは、国民にとって身近なものではなく、専門家のためのものといわれてもやむを得ないところがあったのではないかと思う旨説明がなされた。)
- それぞれの検討会で大変な御努力をされて議論されている、我々も議論しているものの、大変重要なテーマについて議論しているので、もしかしたら時間が足らず、時間切れになるかもしれない。しかし、今般の司法制度改革は、新しい立派な社会をどのようにつくるかということであり、時間切れだから止めてしまうというのは許されないのではないか。これから何十年に一回しかこのような本格的な改革はできない。戦略的な時間の使い方が必要だが、万一時間がなくなった場合には、来年の12月以降どうするのかについて、ある時点になれば議論する必要があるのではないか。
(佐藤顧問から、現段階では、3年間でやらなければならないことを全力を上げてやる旨発言がなされた。)
(事務局から、延長することは現在全く考えていない。やれるものは来年すべてをやる。もしもある時点で事態が違ってくれば、そのときに考える旨説明があった。)
- 弁護士法の一部改正法案の概要について顧問会議として了承された。