司法制度改革推進本部顧問会議(第14回)議事録
- 日 時 : 平成15年12月5日(金) 13:30〜15:40
- 場 所 : 永田町庁舎1階第1共用会議室
- 出席者 :
- (顧 問)
佐藤幸治座長、今井敬顧問、奥島孝康顧問、笹森清顧問
(推進本部)
野沢太三副本部長(法務大臣)
(推進本部事務局等)
山崎潮事務局長、菅野和夫労働検討会座長、高橋宏志司法アクセス検討会座長、塩野宏行政訴訟検討会座長、井上正仁裁判員制度・刑事検討会及び公的弁護制度検討会座長、柏木昇国際化検討会座長、中山信弘知的財産訴訟検討会座長代理、山本和彦ADR検討会・仲裁検討会座長代理 他
- 議事次第 :
-
1 開会
2 司法制度改革の状況について
3 自由討議
4 閉会
【佐藤座長】 それでは、ただいまから司法制度改革推進本部顧問会議を開会いたします。
皆様におかれましては、御多用のところ、御出席賜りまして、本当にありがとうございました。厚く御礼申し上げます。
本日は、副本部長の野沢法務大臣にお越しいただいております。野沢法務大臣が、本顧問会議に御出席になられますのは、今回が初めてでございますので、まず野沢法務大臣から御挨拶を賜りたいと思います。また、御出席の顧問の皆様から野沢法務大臣に御挨拶をいただきますとともに、各検討会の座長にも御出席いただいておりますので、御挨拶と、それから検討会の検討状況について御報告をお願いしたいと思っております。
なお、今日は大宅顧問、小島顧問、志村顧問、佐々木顧問、4人の方が所用のため、御欠席でございます。なお、小島顧問からは書面が提出されておりますので、皆様の席上に配布してございます。
各検討会からは、裁判員制度・刑事検討会、公的弁護制度検討会の井上座長、国際化検討会の柏木座長、行政訴訟検討会の塩野座長、労働検討会の菅野座長、司法アクセス検討会の高橋座長、知的財産訴訟検討会の中山座長代理、ADR検討会及び仲裁検討会の山本座長代理に御出席いただいております。本当にありがとうございます。
それでは、早速でございますけど、野澤法務大臣から御挨拶をちょうだいしたいと思います。よろしくお願いします。
【野沢法務大臣】 去る9月22日に、小泉総理から法務大臣の辞令をいただきました野沢太三でございます。併せまして、このたび司法制度改革推進本部の副本部長に就任いたしました。この顧問会議に出席させていただくのは今回が初めてでございますので、御出席の皆様に、これからのお願い方々、一言御挨拶をさせていただきます。
今般の司法制度改革は、司法を国民に身近な存在に変えていくという意味で、我が国の将来にとって大変大事な役割を持つものと認識しています。私は、法務大臣に就任した際にも、小泉総理大臣から、この点について、特に御指示をいただきました。司法制度改革推進本部の副本部長として、また、司法制度を所管する法務大臣としてこのような歴史的な大改革に携わることができ、大変光栄に思うとともに、その責任の重大さを感じているところでございます。
司法制度改革の現状を見ますと、裁判の迅速化に関する法律がこれまで成立いたしましたし、また、従来の法曹養成制度を大幅に変更する法科大学院もおかげさまで来年4月から開校されることになりました。このように、司法制度改革は着実にその成果を上げつつあるところでございます。
しかしながら、今後、国民が全国どこでも法的紛争の解決のために必要な情報やサービスを受けられるようにするための司法ネットの構築、国民が裁判に参加する裁判員制度の導入、知的財産訴訟の充実・迅速化、また、行政訴訟制度の改革などぜひとも実現しなければならない重要な課題がなお山積しております。これらの重要な課題を達成することは容易なことではありませんが、顧問の皆様には、今後とも大所高所に立った御意見をいただけますよう、よろしくお願い申し上げます。
また、本日御出席の各検討会の座長及び座長代理の皆様におかれましても、これらの重要な課題の検討につきまして、なお、一層のお力添えを賜りますようお願い申し上げる次第でございます。一昨年12月に発足したこの司法制度改革推進本部も、既に折返点を過ぎまして、来年11月末の設置期限まで残すところ1年を切りました。まさにこれからが、司法制度改革の正念場に差しかかっておるところでございます。私といたしましても、副本部長として、また法務大臣として、司法制度改革の実現に全力で取組む所存でございますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
以上でございます。
【佐藤座長】 ありがとうございました。
それでは、引き続きまして、顧問の皆様から、野沢法務大臣に御挨拶をいただきますとともに、今後の司法制度改革に向けたお考えなどちょうだいできればと思います。まず、最初に今井顧問お願いします。
【今井顧問】 これからいろいろ議論する問題も含めて申し上げていいですか。
【佐藤座長】 議論の中身については、後でフリートーキングのところでおっしゃっていただければ、と思います。
【今井顧問】 今井でございます。主として産業界の立場からいろいろ意見を申し上げさせていただいております。今大臣からお話がございましたように、司法制度改革は事前規制から事後チェック型の社会への移行という大きな流れの中の最後の仕上げでございますので、私どももいろいろ産業の立場から必要な御意見を申し上げております。ひとつよろしくお願いいたしたいと思います。
【佐藤座長】 それでは、奥島顧問お願いします。
【奥島顧問】 たくさんございますけれども、そうもいかないのでしょうから、2つばかりに絞って最初に申し上げておきたいと思います。1つは、この司法制度の大きな改革の中で一番大事なのは人の育成だというところでございまして、いい司法官、法曹を養成するために、今までのようなシステムとは違った法曹養成のプロセスを大事にするロースクールが発足するということについては大臣御承知のとおりであります。このロースクールが来年4月に一斉に発足するわけでありますけれども、やはりいい教育をしていくためにはそれなりの費用がかかるわけでありまして、そういう意味で、ぜひとも今度の法曹養成については、予算の上で特段のご配慮をいただきたいと思います。さらに私立大学の立場といたしましては、ロースクールの授業料については、普通に私どもが国立大学並みの教育をしようとしますと、 220万円余りかかるのではないかということです。
今度の司法改革もそうでありますけど、全体の改革の趣旨が、言ってしまえば、市場というようなフリー・フェア・グローバルの社会を目指しているわけでありまして、そういう一環としてこの司法制度が新たに見直されているということから考えていきますと、私たちは法曹養成の上でも、ある意味で競争といいますか、フェアな競争が行える基礎というものが財政的にも補償されるべきではないかと思っております。もとより私立大学でありますから、私立大学が国立大学と同じ授業料にしろなんていうような極端なことは申し上げているわけではありません。少なくとも最初に一斉にロースクールが発足するときでありますので、何とか私立大学が自助努力でもって頑張ってやっていけるためには、国立大学との間で、いわゆる私たちはイコール・フィッテングと言っておりますけれども、競争条件をできるだけフェアな競争ができるようなものにしてもらいたい。そういうことで、私立大学に対する授業料の低減のための努力を我々私立大学では思い切りしているわけですけれども、それを後押ししていただけるようなしかるべき財政的な援助をお願い申し上げたいと思っております。
チャップリンも言っておりますように、望ましい社会をつくるためには、「希望と勇気と、そしてサムマネー」というものが必要でありますが、「希望と勇気」は何とか我々も用意できますけど、「サムマネー」も必要でありまして、決してマッチマネーになどと私は申し上げたくはありませんが、「しかるべき金額」であるサムマネーは何とか御用意していただきたいのです。そこで文部科学省で50億円の特例の予算措置を講ずるという方向で頑張っていただいておりますけれども、ぜひともこれについて、法務大臣におかれましても、バックアップしていただきたい。こういうことをお願い申し上げたいと思います。
【野沢法務大臣】 それにつきましては、事務局からも大変心配をして来られましたので、私も早速文部科学大臣のところへ参りまして、是非ひとつお力添えをいただきたいと申し上げました。それから、併せて今後財務大臣、さらには本部長たる総理に直訴しようということで、今考えておりますが、これまでも私学の役割というのは大変重要で、相当額の私学助成というのが既に出ているわけですが、このロースクールといえども、そういった考え方で、私学にも大いに頑張っていただきたいと思っておりますので、お申し越しの趣旨、最善を尽くして頑張ってみたいと思いますので、よろしくお願いします。
【奥島顧問】 ありがとうございました。
【佐藤座長】 どうもありがとうございました。それでは、笹森顧問。
【笹森顧問】 笹森でございます。私の方からは2つ申し上げたいと思うのですが、1つは、今回の司法制度改革、これは前に行われておりました司法制度改革審議会の意見書、これを尊重して、その基本理念の具現化をするということを、今日は各検討会の座長の皆さんがおられますので、まず改めてこの場でお願いを申し上げたいと思います。
その上で、大臣も触れられておりましたけれども、まさに終盤に入る、折返点を過ぎました。お言葉の中にありましたように、司法を国民にとって身近なものにするということが何よりも大切なことでありますが、どうしても、そこから論議が逸脱してきているような印象を受ける。そういう意味から言うと、開かれた司法だとか、国民の一人一人が統治客体から統治主体というようなものについて、冒頭申し上げたように、審議会意見書の基本理念、これを具現化をしていくのだということの確認を改めて大臣の前でさせていただければと思うのです。
2つ目は、顧問会議の役割、あるいは位置付けの問題ですが、この顧問会議が設置された冒頭の会議の中でも申し上げたのですけれども、どちらかというと、各検討会の中で論議をされていて、それを追認し承認をしていくというような形では顧問会議の役割は果たせないと思っています。したがって、そこまで行けるかどうかは別にしても、顧問会議が主導的な役割を果たしたいと思っております。言い換えれば、中身的にどうするかということについて、検討会の中でかなり意見対立等が出た場合に、顧問会議の方が、それを全体的にコントロールをしていく。そして顧問会議の方からの意見については、検討会の中で尊重していただきたいということを申し上げたいと思います。
もう一つ申し上げると、迅速化の問題等が具体的にも出ておりまして、そういう意味では、一審の結審を2年以内にという流れをつくったのは、この顧問会議の中で、かなりアピール効果を出そうという皆さんの総意の中で出したものです。これは非常に効果があったと思います。それぞれの検討会の検討状況についても、今、一番心配をしておりますのは、司法制度改革に対する国民の関心といいますか、審議会で意見書をまとめていたときほどの盛り上がりがない。したがって、各内容についてもほとんど認知をされていないというようなことにもなっておりますので、そういうことも含めた顧問会議の役割、これも重要ではないかと思っております。
私自身は冒頭申し上げたように、意見書の具現化、これに向けて、一般的なごく普通の国民の立場に立って意見反映をさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
【野沢法務大臣】 努力してまいりたいと思います。
【佐藤座長】 どうもありがとうございました。最後に私の方から一言御挨拶申し上げたいと思います。内閣の一貫した改革姿勢の下で、改革推進本部の事務局あるいは検討会の関係者の皆様の御努力で、ここまで確かな走りをしてこれたのではないかと思っておりまして、心から感謝申し上げたいと思います。
先ほど大臣もお触れになりましたけど、いよいよ折返点を過ぎまして、マラソンに例えると最後の10キロ、10キロまで来ているのかどうかちょっとわかりませんけれども、その辺まで来ている。最後の10キロが一番しんどいのだそうでございまして、大臣もおっしゃったように、これからが本当の正念場だなというように私自身も思っているところでございます。大臣の強い指導性の下で、立派な完走ができますことをお祈りし、かつ、また大臣によろしくお願い申し上げたいと存じます。
それでは、続きまして、各検討会の座長、座長代理の皆さんからも御挨拶と検討会の検討状況について御報告賜りたいと存じます。資料1の順にお願いしたいと思いますが、最初に、知的財産訴訟検討会の中山座長代理からお願いします。
【中山座長代理】 知的財産訴訟検討会の座長代理をしております中山と申します。東京大学で知的財産法の教授をしております。この検討会は、司法制度改革審議会の意見及び知的財産戦略大綱を踏まえまして、昨年の10月以来、知的財産訴訟のさらなる充実・迅速化を図るために、これまで14回の検討会におきまして、産業界から喫緊の課題とされている各検討項目について検討してまいりました。
なお、資料1には、13回とございますけれど、これは昨日までで13回で、今日の午前中に1回ありましたので、14回でございます。
具体的な検討事項の1つ目は、侵害訴訟と無効審判の関係等に関する検討でございます。
明治以来、特許の有効、無効は、特許庁における無効審判とその審決に対する東京高裁の審決取消訴訟でのみ判断されて、損害賠償等を求める侵害訴訟では争えないとされておりました。しかし、侵害訴訟におきましても、一定の場合には、特許の有効性の判断を認めるという最高裁判決、いわゆるキルビー判決を受けまして、これを立法化し、侵害訴訟の場でも、特許の有効性も判断できるということとして、紛争の合理的、一体的な解決を図ること、また、裁判所と特許庁との間の連絡を密にいたしまして、両者の間の判断齟齬を極力防止すること等を現在検討しております。
2つ目は、専門家の訴訟手続への参加の拡大に関する検討でございます。具体的には裁判所の専門性を強化するという観点から、裁判所の調査官が知的財産に関する訴訟において、当事者に対して直接問を発したり、釈明をしたりすることができるようにその権限を拡大、明確化するとともに、除斥・忌避の規定を設けることによって、手続に関与する調査官の中立性を担保できるようにすることなどについて検討中でございます。
3つ目は、侵害行為の立証の容易化のための方策の検討でございます。知的財産訴訟においては、侵害と主張される行為を行っている侵害者側に証拠が偏在しているという問題があり、訴訟の充実・迅速化化のためには、証拠収集手続の機能を強化する必要があるという指摘がある一方、これらの証拠には営業秘密が含まれていることも多く、そうした点に配慮する必要がございます。そのために、現在、訴訟において営業秘密を含む相手方の証拠等にアクセスする者に対し、秘密保持命令を発令すること、憲法上の裁判公開原則の下において、特に営業秘密が問題となる事件について公開停止の規定を導入することなどについて検討をしております。
4つ目は、知的財産高等裁判所の創設に関する事項でございます。検討会におきましては、国家戦略として、知的財産重視の姿勢を世界に示すために看板を掲げる必要があるという意見がある一方で、どのような理念で司法の根幹にかかわる専門の裁判所を創設するのか。他の専門分野である労働事件や医療関係事件等を取り扱う裁判所についてどう考えるのか。特別の裁判所を創設することで管轄の制度設計いかんにより、現状より使い勝手等の紛争解決機能が低下することや、あるいは地方在住者の司法アクセスに制約が生ずることをどう防止するべきか。著作権や商標権等の事件については、事件の地域性に応じて取り扱う裁判所を変えるという柔軟な取扱いができなくなるのではないかといったような問題につきまして現在議論をしているところでございます。現在は法的に独立をした知的財産高等裁判所を創設する案、あるいは事実上の知的財産高等裁判所を創設する案等につきまして、そのメリット・デメリットを勘案しつつ、そのあるべき姿につきまして検討を進めているところでございます。
以上、知的財産検討会の検討状況を御説明いたしましたけれども、これらの検討事項は、産業界等ユーザーからの要望の強いものでありまして、知的財産が的確かつ迅速に保護されるよう、知的財産訴訟のあるべき姿について結論を取りまとめたいと考えております。
以上でございます。
【佐藤座長】 どうもありがとうございました。
それでは、労働検討会の菅野座長にお願いしたいと思います。
【菅野座長】 労働検討会の座長をいたしております菅野でございます。労働検討会の検討状況について御説明させていただきます。
労働検討会では、司法制度改革審議会意見書で提言されております労働関係事件への総合的な対応強化について検討することとしておりまして、具体的には、第1に、導入すべき労働調停の在り方、第2に、雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者の関与する裁判制度の導入の当否、第3に、労働関係事件固有の訴訟手続の整備の当否、第4に、労働委員会の救済命令に対する司法審査の在り方の4つの検討事項について、これまで30回にわたり検討を行ってきました。
そして、お手元の資料にありますように、本年8月には、各検討事項について考え得る対応の方向性等を整理した中間取りまとめを行いました。その中では、裁判所における個別労働関係事件についての新たな紛争解決制度として、労働審判制度(仮称)を導入することとされました。この労働審判制度は、調停制度を基礎としつつ、裁判官と雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者が事件について審理し、合議により権利・義務を踏まえつつ事件の内容に即した解決案を決するものとする。3回程度の期日で処理する簡易・迅速な手続とすることを考えております。
この中間取りまとめを踏まえて、さらに検討を進め、このほど、これも資料にありますが、労働審判制度(仮称)の制度設計の骨子について合意がなされたところであります。その概要をこの資料に沿って簡単に御説明いたしますと、まず手続の進行については、個別労働関係紛争について、労働審判の申立てがあった場合には、相手方の意向にかかわらず労働審判手続を進行させ、原則として、調停により解決し又は解決案を定めるものとすることを考えております。
ただし、事案の性質上、解決案を定めることが紛争の迅速かつ適正な解決のために適当でないと認められるときは、解決案を定めずに労働審判手続を終了させることができるものとすることを考えております。
それから、解決案の効力については、解決案に不服のある当事者が一定期間内に異議を申し立てることによって、解決案はその効力を失うものとすることを考えております。 訴訟手続との連携については、労働審判手続と訴訟手続との適切な連携の観点から、連携を図り、訴訟への移行をなるべく円滑で容易なものとする等の観点から、解決案に対して異議が申し立てられた場合には、労働審判の申立てがあったときに訴えの提起があったものとみなすということを考えております。
この場合においては、当該訴えの提起の手数料については、労働審判の申立てについて納めた手数料の額に相当する額は、納めたものとみなすということを考えております。 今後はこの骨子を踏まえて、具体的な制度設計の詳細等について、さらに検討を深めてまいりたいと考えております。
なお、このほか労働検討会では、現在労働委員会の救済命令に対する司法審査の在り方についても検討しておりまして、特に救済命令の取消訴訟における新証拠の提出制限について議論を行っております。この点は、厚生労働省の労働政策審議会においても検討が行われているところでありますが、労働検討会としても、今後意見の集約を図っていきたいと考えております。
以上でございます。
【佐藤座長】 どうもありがとうございました。それでは、司法アクセス検討会の高橋座長にお願いします。
【高橋座長】 司法アクセス検討会の座長の高橋でございます。司法アクセス検討会では、司法ネット及び弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いについて検討を続けております。
初めに司法ネットについて御報告申し上げます。社会が複雑・多様化し、社会経済の構造改革が進む中で司法の役割が大変重要になっているにもかかわらず、現状では司法による紛争解決に至る過程に様々なアクセス障害が生じており、司法的救済を受けることができないままにいわば泣き寝入りをしている国民が少なくないと言われております。そこで司法に対するアクセス障害を解消し、司法制度を国民が利用しやすいものにするという観点から、司法ネットの体制整備について検討を続けてまいりました。
検討会では民事の分野を中心に、現状の問題点の把握に努めるとともに、どのような対策が考えられるのかについて意見交換を行ってまいりました。
そこでの議論に基づいて御報告をいたしますと、まず1として、紛争解決までの道筋を示してもらえるような総合的な相談窓口としてのアクセスポイントが必要であり、アクセスポイントを十分に機能させるために、既存の法律サービス提供団体等との連携・協力を図る必要があること。2として、司法過疎地域においては、住民に実際に法律サービスを提供できる体制を整備する必要があること。3として、資力の十分でない人のアクセス障害を解消するため、民事法律扶助について、業務運営の効率化を図りつつ、その拡充を目指す必要があること。さらに4として、犯罪被害者支援を行う必要があること。こういったことを考えて検討しております。
これらの業務のほかにも、公的刑事弁護制度の整備をも含めまして、国民のだれもが必要とするサービスを手軽に受けることができる体制を整備するためには、民事、刑事の法律サービスを1つの組織が行うのが最適であり、その組織は民間の発想を活用し自主的、効率的に業務を行い、そして国民への説明責任を果たすことのできる組織が望ましいと、このように検討の結果、考えられております。
以上につきましては、7月30日に開催された顧問会議での席上でも御報告させていただき、顧問の皆様からも御意見をいただいた上、事務局においてさらに検討を続けているところであります。12月25日、今月の25日に第22回の司法アクセス検討会を開催する予定でありますが、この22回目におきまして、司法ネット構想の骨格について、さらに検討を深める予定であります。
弁護士報酬の敗訴者負担につきまして、御説明いたします。
従来、この点は、訴訟の種類によって敗訴者負担を導入しない範囲を明らかにするという考え方で検討してまいりました。検討会委員の皆さんの御意見や国民からの御意見募集の結果をも参考とさせていただき、検討を続けてまいったのでございますが、個々の訴訟類型の中で、各委員の意見が一致しなかった部分があったり、個別具体的な事情の下では、一定の訴訟類型に属する訴訟でも別の扱いをする方がいいのではないかという御意見があったり、あるいは制度が複雑になり過ぎることを懸念する声があったりするなど、実際に制度化するとなるとかなり難しいのではないかということが次第に明らかになってまいりました。
そこで検討会委員の方からのご提案で3つほどの考え方、まず当事者の属性で2つのグループに分け、異なる属性の当事者間、例えば法人対個人ということですが、異なる属性の当事者間の訴訟には敗訴者負担を適用しないという考え方。2番目は、原則は各自負担としておき、当事者間に合意があったときにのみ敗訴者負担を適用するという考え方。3番目は、一定の訴額を超える訴訟についてのみ高い方の訴額ということですが、敗訴者負担を適用するという考え方、この3つが示されまして、これらについても検討を進めてまいりました。
しかし、いずれも一長一短があるということなのでありますが、例えば、当事者の属性、法人と個人という分け方なら簡単ですが、適切な属性設定はかなり困難であるとか、一定の訴額ということですが、高い方よりもむしろ低い方に弁護士報酬の敗訴者負担が必要なのではないかといろいろと長短ということで、メリット・デメリットがあるということが分かってまいりました。
その結果、現在では、原則は各自負担にしておき、訴訟提起後に当事者双方の共同の申立てにより敗訴者負担制度を選択できるという考え方を軸に検討を進めているところであります。これまでのところ検討会の場では、訴訟において、当事者双方が弁護士、司法書士等を選任しているという要件も必要ではないかということで検討をしておるところでございますが、ただし、この案に対しましても懸念を表明される委員もおられ、まだ検討会として全委員一致で結論を出したということではありません。この問題につきましても、今月25日の検討会の場で、さらに議論を深めることになっております。
以上であります。
【佐藤座長】 どうもありがとうございました。次に、ADR検討会及び仲裁検討会の山本座長代理にお願いします。
【山本座長代理】 ADR検討会の座長代理と仲裁検討会の委員を務めております山本でございます。まずADR検討会の検討の状況から御説明をさせていただきます。
ADR検討会は、ADRの拡充・活性化の一環として、総合的なADRの制度基盤を整備するという見地から、ADRの利用促進、裁判手続との連携強化のための基本的な枠組みに関する法的措置についての検討をテーマとし、平成14年2月以来、現在まで既に26回開催されております。この間、関係者、関係団体のヒアリング等を通じましてADRの現状を把握するとともに、本年夏にはADRに関する法的措置に係る検討事項全般について中間的な議論の整理をした上、国民からの意見募集を行うなど幅広い意見を伺いながら検討を重ねてまいりました。
我が国においては、裁判所による調停のほか、行政機関、民間団体あるいは弁護士会などを運営主体とする仲裁・調停・あっせんなど多様な形態のADRが存在しておりますが、一部のものを除いては歴史も浅く、ADRをめぐる議論の蓄積も必ずしも十分でなかった面があろうかと思われます。検討会の議論におきましても、非常に多岐にわたる検討項目について、その採否や具体的な制度設計について様々な議論が行われましたが、現時点におきましては、これまでの検討、意見募集の結果等総合的に勘案し、検討会における議論の整理を進めているところであります。
具体的には、ADRの健全な発展を図ることによって、民事上の紛争の解決方法を選択する機会の拡充を図るために、ADRに関する基本理念や国の責務等を定めるとともに、ADRの利便性、実効性、信頼性を確保するための特例措置を定めるということが考えられております。この特例措置としては、例えば一定のADRを利用した場合に、時効中断の効力を認めること。当事者がADRによる紛争解決を合意している場合に、一定の要件の下に訴訟手続の中止を認めること、あるいは一定の要件を満たす場合には弁護士でない者によるADRにおける法律事務の取扱いを認めることなどについて検討をしております。
もちろん現在検討している法的措置につきましては、民法を始めとした現行法制との整合性が確保されなければならないものも含まれておりまして、法制的にも難しい問題が少なくないと思われます。これらの点については、今後とも関係方面とも調整を図りながら、十分慎重な検討を行うことが必要であると存じますが、ADR検討会といたしましては、できる限り、ただいま述べましたような方向での整理をいたしたいと考えているところであります。
続きまして、仲裁検討会の検討状況についても御説明をいたしたいと思います。
仲裁検討会は、平成14年2月から、ことしの3月までの間、13回開催されました。検討会においては、まず立案の基本方針として、国連の国際商取引法委員会、通常英語の名称の頭文字をとりまして、UNCITRALと略称されておりますが、この委員会が策定した国際商事仲裁モデル法というものにできるだけ準拠することを確認した後に、個別の論点について議論を重ねまして、検討会として実質的な事項についての立案の方向性を示しました。立案の方向性に基づきまして、事務局が立案した仲裁法案は、7月25日の参議院本会議で可決・成立し、8月1日に、平成15年法律第138号仲裁法として公布されております。
また、この仲裁法は、先ほども述べましたとおり、UNCITRALのモデル法に準拠して立案したものであり、最終的な目標としてUNCITRALの事務局において、日本をモデル法採用国と認めてもらうということがございました。UNCITRAL事務局に採用国として認められますと、国際的にも通用する仲裁法を整備した国として、いわゆるお墨つきが国際的にも得られることとなり、仲裁に関する日本の国際的な地位も高まることが期待されるからであります。既にこの点については、UNCITRALのホームページのモデル法採用国リストというものがあるわけですが、そこに日本が掲載されたと聞いております。
そういうことで、仲裁検討会は当面の検討課題の検討を終えましたので、現在は休会中でございますが、開催の必要が生じた場合には随時開催するということが予定されております。
以上でございます。
【佐藤座長】 どうもありがとうございました。それでは、行政訴訟検討会の塩野座長お願いします。
【塩野座長】 行政訴訟検討会座長の塩野でございます。行政訴訟検討会の検討状況につきまして御説明をいたします。
行政訴訟検討会では、司法制度改革審議会が国民の権利・自由をより実効的に保障する観点から行政訴訟制度を見直す必要があるという意見を述べられたことを受けまして、幅広い論点について検討を行ってまいりました。そして、資料1の3枚目、今の仲裁検討会のすぐ下でございますけれども、そこに記してございますように、本年10月24日の検討会で、今後の検討のためのたたき台ということで、座長の私が事務局と相談いたしまして作成いたしました「行政訴訟制度の見直しのための考え方と問題点の整理」に基づきまして、4つの大きな見直しの視点、つまり救済範囲の拡大、審理充実促進、行政訴訟をより分かりやすく利用しやすくするための仕組み、本案判決前の仮の救済の制度の整備という視点から論点整理を行い、その後の検討会で重要な論点を中心に意見集約に向けた詰めの検討を行っております。
たたき台で方向性をお示ししました審理の充実・促進の中の処分の理由を明らかにする資料の提出という項目、行政訴訟をより分かりやすく利用しやすくするための仕組みというものの中の、被告適格者の見直し、抗告訴訟の管轄裁判所の拡大、出訴期間の延長、出訴期間等の情報提供、こういったものにつきましては、具体化に向けて一通りの検討を終えたところでございます。たたき台で方向性を示した項目のうち、取消訴訟の原告適格の拡大、義務付け訴訟の法定、差止訴訟の法定につきましても具体的な検討が進んでおります。
原告適格の拡大につきましては、実質的に原告適格を拡大するため、原告適格を広く認めるために必要な考慮事項を法定するということでおおむね意見が一致しております。こういった考慮事項を法定するということの趣旨は、国民の利益調整の方法が非常に複雑・多様化している現代の行政にふさわしい考え方として、処分の根拠となる法律の規定ぶりとか、行政実務の運用のみにとらわれないで、関係法令も含む法律の趣旨、目的、あるいは対象となる利益の内容、性質やこれが違法な行政により害される態様、程度も考慮することで、原告適格の判断の基礎となると考えられます行政において考慮されるべき利益、要考慮事項と我々はよく言いますけれども、これが広く認められるようにするものでございます。
また、義務付け訴訟では、例えばですが、公害防止の規制を処分の相手方、直接の相手方でない第三者が求めたり、保育所の入所申請を拒否された場合に入所を認めるように求めるといったようなものなどの例が想定されます。差止訴訟では、規制権限に基づく制裁処分が公表されて、名誉や信用に重大な損害を被るおそれがある場合に事前の差止めを求める、こういったものの例が想定されます。こうした場合に行政が処分をすべきこと、あるいはすべきでないことが裁量の余地なく一義的に定めることが必要であるということ、これが前提になりますけれども、具体的な仕組みについて類型別に検討を進めているところでございます。
そのほか、たたき台では、本案判決前の仮の救済の制度の整備、これは、なお検討すると整理をいたしましたが、これにつきましても検討を進めておりまして、執行停止の要件と執行停止以外の仮の救済制度について具体的な検討が進んでおります。
それから、たたき台では、なお検討するとしたもう一つの項目の確認訴訟による救済の可能性でございます。ここでは実効的な権利救済のために確認訴訟を活用することができるのではないかということを検討しております。過去に行われた実際の事例でも、薬局の開設を登録制から許可制に改めた薬事法の改正が憲法違反であると主張して、登録を受けていれば許可を受けなくても、引き続き薬局を開設できることの確認を求めた訴えを起こすことが認められて、薬事法改正の合憲性について、最高裁大法廷で憲法判断がされた事例もございます。
それから、また、ごみの収集場所をダストボックスに限定した廃棄物処理計画の無効を争いまして、従来の場所でも市がごみを収集する義務の確認を求めた訴訟、こういったものも訴えを提起すること自体認められ、主張の当否について司法判断がなされております。取消訴訟の対象となる行政に限らず多様な行政に対し、実効的な権利救済を図るために確認訴訟が必要であるということで、そこはかなり意見の一致しているところでございますし、また、その中には、我々学者が確認訴訟ということについて、より活用できるようないろいろなアイディアを出してこなかったという反省の念も込められていますけれども、これが必要であるというメッセージを国民にどのように伝えていくかを今検討しているところでございます。
そのほか、たたき台で十分な検討を行う必要があると整理した項目や(注)で言及した項目は、当面の立法課題としては議論が成熟していないと考えられるため、将来課題としての取扱いも含め、その取扱いを議論する必要がある、あるいは慎重に検討する必要がある、こういった整理をしたものでございます。
今後は、このような検討状況を踏まえ、さらに詰めるべき重要な論点を中心に、意見の集約に向けた検討を行うこととしております。
以上でございます。
【佐藤座長】 どうもありがとうございました。
それでは、裁判員制度・刑事検討会及び公的弁護制度検討会の井上座長にお願いします。
【井上座長】 裁判員制度・刑事検討会と公的弁護制度検討会の座長を務めております井上でございます。よろしくお願い申し上げます。
まず、裁判員制度・刑事検討会での検討状況から御説明申し上げますと、御承知のように、この検討会は、3つのテーマを対象に検討しております。1つは、検察審査会制度の機能の拡充、つまり、検察審査会制度の一定の議決に法的拘束力を与えるという方向で関連する制度の整備を行っていくということであります。もう一つは、御承知のように、裁判員制度の導入であります。そして3番目が、刑事裁判の充実・迅速化のための方策ということであります。
これらのテーマにつきまして、これまで合わせて29回の会合を持ちました。そのうち、昨年12月の第10回会合までの間は、3つの検討テーマにつきまして、新たな制度の骨組みに当たる大きな論点について第一巡目の議論を行ったところであります。その上で、それを踏まえて、事務局の方で、各テーマについて、議論のためのたたき台を準備してもらいまして、本年1月の第11回から9月の第27回までの会合を使いまして、そのたたき台を素材として、より細かな論点を含めまして、相当の時間をかけて、第二巡目の検討を行いました。
そして、その第二巡目の議論を踏まえまして、私が検討会の座長としての立場で、3つのテーマそれぞれにつき、お手元にございますペーパーを作成しまして、今年の10月28日の第28回の会合から、それらを1つの手がかりとして、さらに第三巡目の議論を行ってきているところであります。
念のために申しますと、これらのペーパーは、あくまで検討会におけるこれまでの議論の1つの到達点として、考えられる制度の概要の一例をお示しし、検討会でのさらなる議論の素材とする趣旨で作成したものでありまして、検討会としての案であるというものではございません。
なお、これらのペーパーのうち、裁判員制度に関するものと刑事裁判の充実・迅速化に関するものの内容である各項目の趣旨やそれに関する検討会でのこれまでの議論の要点につきましては、各ペーパーの前の方に入っていると思いますが、検討会で私が行いました説明を文章化したものを配布させていただいております。併せてご参照いただければと存じます。
第3巡目の検討におきましては、まず裁判員制度の導入につきまして、例えば合議体の構成、裁判体を裁判官と裁判員が構成するわけですが、それぞれの人数をどうするのかということや、評議の結論を出すときの評決の要件、裁判員制度の対象をどういう範囲の事件にするのかといったことさらには、一般的には対象事件に含まれるとしても、例えば裁判員に危害が及ぶおそれがあるなど、安心して仕事をしていただけないような場合などには例外とするのかどうか、そうするとして、その要件をどのようなものにすればよいかといったこと、また、裁判員の方の保護や出頭確保等に関する措置といった点を中心に、裁判員制度についてひとわたりの議論を行いました。引き続き、現在、刑事裁判の充実・迅速化について議論を行っているところであります。
これと並行しまして、広く国民各層の方々から御意見を伺うために、昨年9月24日の検討会におきましては、最高裁、法務省、日弁連、警察庁という関係の機関のほか、経済界、労働界、被害者関係の有識者の方々からヒアリングを行いました。また、本年5月16日の検討会では、報道に関連する論点を中心にしまして、日本新聞協会、日本雑誌協会及び日本民間放送連盟からのヒアリングを実施しました。
また、事務局におきましては、昨年8月から10月まで、裁判員制度、刑事裁判の充実・迅速化及び検察審査会制度の3つにつきまして意見募集を実施したほか、本年4月1日から5月31日までは、裁判員制度及び検察審査会制度に関し、また、8月1日から9月1日までは、刑事裁判の充実・迅速化に関し、それぞれたたき台を踏まえた意見募集を行いました。
これらの結果につきましては、事務局で整理の上、検討会で報告していただきましたし、既に御承知だと思いますが、ホームページでも公表されております。
さらに今回、先ほど触れました私名儀のペーパーが示されたことを契機としまして、11月18日から12月17日までの期間、これらについての意見募集を行っているところであります。
今後の予定でありますけれども、刑事裁判の充実・迅速化についての残りの議論及び検察審査会制度に関する議論を12月10日に予定されております第30回の会合で一通り行うことができればと考えております。そして、事務局においては、このような検討会における検討状況を踏まえ、法案の立案作業を進められるものと理解しております。
続きまして、公的弁護制度の検討状況について簡単に御説明申し上げます。
この検討会では、2つのテーマが対象になっております。1つは、公的弁護制度の導入及び整備ということであり、もう一つは、公的付添人制度、これは少年審判制度において、少年に一定範囲で、公的な費用で弁護士等の付添人をつけるかどうか、つけるとして、どういう制度にするのか、といったことについて検討しております。これまでに、合計12回の会合を開いたところであります。
本年2月の第7回までの間は、2つのテーマにつきまして、例えば被疑者に対する公的弁護制度の対象となる事件の範囲をどうするのか。公的弁護制度の担い手である弁護士をどのように確保するのか、公的弁護制度の下での弁護人の選任要件、つまり、貧困なため自ら弁護人を選任できないということに限るのか、それとももう少し広い範囲で認めるのか、その要件はどのようなものとし、それをどのような手続で確認すればよいのかといったこと、また、公的な資金で行う活動ですので、弁護活動の在り方について何らかの定めといいますか、基準のようなものが必要なのかどうか、それを確保するためにどういう仕組みがあり得るのかといったこと、
さらには、一番大きな問題なのですが、こういう公的弁護制度を運営していく主体をどうするのかといったこと、そして、2つ目の公的付添人制度の導入の要否といった点について、一巡目として、大きな論点を中心に、ひとわたり議論を行いました。
その上で、先ほどの裁判員制度・刑事検討会と同じように、事務局で各テーマについての議論のためのたたき台を、それまでの議論を踏まえて準備してもらいまして、本年4月の第8回から本年10月の第12回会合まで、それらを素材として、より細かな論点をも含めて検討を行ってきたところであります。
こちらの方でも、関係機関からのヒアリングを行わせていただきましたし、事務局においても、本年1月から3月まで意見募集を実施し、広く国民各層の方々から貴重な御意見をいただいたところであります。
さらに本年9月1日から3日までの間、地方の実情調査として、北海道の北見と旭川において、非常に有益な調査を行わせていただきました。これらの結果につきましては、検討会での報告に加えまして、ホームページに概要が掲載されております。
今後の予定でありますけれども、今月の24日に開催の第13回の会合におきまして、これまでの議論等を踏まえまして、事務局で作成した新たな制度の骨格案というようなものを示していただいて、それを基に検討を行う予定であります。事務局においては、検討会における検討状況を踏まえ、これを基にして、法案の立案作業を進められるというように承知しているところであります。以上です。
【佐藤座長】 どうもありがとうございました。
最後になりましたが、国際化検討会の柏木座長にお願いします。
【柏木座長】 国際化検討会の座長をしております柏木でございます。国際検討会の検討状況につきまして御説明させていただきます。
国際検討会では、弁護士と外国法事務弁護士との提携・協働の推進、弁護士の国際化への対応強化、法整備支援の推進、その他の検討課題について検討を進めてまいりました。特に弁護士と外国法事務弁護士との提携・協働の推進、すなわち外国法事務弁護士制度の改革につきましては優先的に検討を進めてまいりまして、既にこの点については法改正が行われました。
内容を要約して申し上げますと、外国法事務弁護士による日本の弁護士の雇用及び弁護士との協働事業等に関する規制の緩和等の措置を講じた次第であります。
この措置の結果、外国法事務弁護士による弁護士の雇用が可能となり、また、弁護士又は弁護士法人との協働事業も自由化されることになります。したがって、大幅な制度改正が図られることになりました。そこで日本弁護士連合会における施行準備にある程度時間を要すると見込まれますために、改正法の施行時期は、改正法公布の日から2年を超えない範囲内において政令で定める日からとされております。
また、残りの課題であります弁護士の国際化への対応強化、法整備支援の推進につきましては、関係機関からのヒアリングなどを踏まえ、その在り方等について議論してまいりまして、検討の結果は、前回の顧問会議にて御報告させていただきました議論の整理メモに取りまとめたとおりでございます。この議論の整理メモは、既に司法制度改革推進本部のホームページ等に掲載して、国民への周知を図りながら、関係機関にも提出し国際化等への取組の参考にしていただいております。
なお、議論の整理メモに盛り込まれた意見の中で、司法制度の国際化への基盤整備という観点から、日本の基本的法令等の英訳の作業を推進すべき旨の意見につきましては、前回の顧問会議におきまして、顧問の皆様からかなり大きな関心をお寄せいただきました。社会の国際化が進む中で、我が国の法律情報を海外に発信し有効な法整備支援や法曹の国際化等に役立てていただくことは極めて重要な課題だと思います。関係機関、関係団体において信頼し得る英訳を作成するための取組が早急に進められることを期待しております。以上です。
【佐藤座長】 どうもありがとうございました。本日、法曹養成検討会、法曹制度検討会の座長が御欠席でございますが、その辺も含めて、司法制度改革の現状について、事務局から御説明いただければと思います。よろしくお願いします。
【事務局長】 長くなりますが、あと5分ほどご辛抱いただきたいと思いますが、資料は1、2、4でございます。まず資料2のところから始めさせていただきます。
判事補及び検事の経験の多様化のための弁護士職務経験制度(仮称)についてでございます。この制度につきましては、司法制度改革審議会意見におきまして、裁判官制度の改革及び検察官制度の改革の一環として提言されたものです。法曹制度検討会で検討が進められてきたものでございます。
制度の目的ですが、資料2−1の1にございますとおり、この制度は、判事補及び検事が一定期間、その身分を離れて弁護士となって、その職務を経験することにより、多様かつ豊かな知識及び経験、並びに幅広い見識を培い、裁判官及び検察官としての能力、資質の一層の向上等を図ることを目的とするものであるということでございます。
制度の概要ですけれども、まず、弁護士職務の経験は、これを経験する判事補又は検事の同意を得て、最高裁判所又は法務省と受入先の弁護士事務所との間の取決めに基づいて行われるものでございます。
弁護士の職務を経験する者は、判事補又は検事の身分を離れて裁判所事務官又は法務事務官に任命されまして、その身分を保有したまま、弁護士となりまして、弁護士の職務を行うということでございます。
職務経験の期間ですけれども、原則として2年を超えることができないものとされておりますが、特に必要があると認めるときは3年を超えない範囲で期間を延長することができるということにしております。
弁護士の職務を経験する者は、受入先弁護士事務所に雇用され弁護士の業務に従事をして、給与も受入先事務所から支給されるということになりまして、国からは支給されないということでございます。
この制度につきましては、ただいま御説明いたしましたような方向で、法律案の作成作業を進めてまいりたいと考えておるところでございます。
そのほかの法曹制度検討会の状況につきましては、資料1の5ページの下段の方に当該部分がございます。
続きまして、法曹養成検討会の方ですけれども、これについては、資料1の5枚目、今申し上げました5枚目の上段の方に載っております。この検討会は19回の会合を開催いたしまして、新たな法曹養成制度の在り方に関する検討を行ってまいりました。
新たな法曹養成制度に関する法律案が成立をいたしまして、また、法科大学院につきましては、後ほど文部科学省の方から御説明があると思いますけれども、先ごろ設置認可が行われまして、来春の開校に向けた準備が進められているという状況でございます。また、司法修習生の給費制の在り方等の問題につきまして、引き続き検討を行うこととされています。
次に資料4を御覧いただきたいと思います。医事関係訴訟連絡協議会についてでございます。
これにつきましても、改革審の意見書で、医事関係紛争の予防、事件の適正・迅速な解決を実現していくためには関係機関の協力・連携が不可欠で、今後これを一層強化することが望まれるという指摘がされています。これを受けまして、文部科学省、厚生労働省、最高裁判所と私どもの本部事務局とで協議会を設けまして、平成14年1月から先月まで6回開催されております。この協議の中で、医療関係者が、裁判所の鑑定手続に円滑に協力することができるための環境整備について検討がされました。その主な成果としては2つございまして、まず文部科学省や厚生労働省において、それぞれの管轄する医療機関の会議等におきまして、裁判所が裁判手続に対する協力を依頼する機会を設ける等、医療機関に対し裁判手続に対する協力の周知を図るための措置を講じてもらったということでございます。
2番目に、医療関係者が鑑定等の手続に協力することで、兼職禁止の規定に触れると解されるおそれが生ずることのないように配慮をしてもらい、これまでの運用を一部改善していただいたということでございます。これらの結果、医事関係訴訟の円滑かつ適正な解決に向けた関係機関における協力・連携態勢の強化が図られたところでございます。以上でございます。
【佐藤座長】 どうもありがとうございました。
それでは、引き続きまして、先程来、法科大学院の設置認可についてのお話が出ておりますけれど、文部科学省から、法科大学院の設置認可の状況等について御説明いただきます。よろしくお願いします。
【文部科学省】 失礼いたします。資料3を御覧いただきたいと存じます。
先ごろ法科大学院の設置認可が行われましたので、その状況等について、経過を含め御説明申し上げたいと思います。恐縮ですが、資料3の2枚目の(参考)というところを見ていただきたいと思いますが、文部科学大臣の大学の認可に当たりましては、法令によりまして、大学設置・学校法人審議会に諮問をいたしまして、そこで専門的な審査を行っていただいた後、その答申に沿って認可をするという仕組みになっております。
大学部門、学校法人部門とそれぞれ審査の部分があるわけでございますが、今回の主な部分に当たります大学設置の方につきまして、分科会、そこに図がございますけれども、この分科会の下に必要に応じて専門委員会や特別のトピックスがある場合には特別審査会というものを置く仕組みになっておりますが、法科大学院につきましては、法科大学院特別審査会というものを置きまして、専門家の方々に集まっていただいて審査をし、さらにそれぞれの分野ごとに十分条件が整っているか、先生方の状況等を専門委員会で審査をすると。そして運営委員会にまた持ち上げまして、学校法人審議会で最終的に決めていくと、こういう段取りで進められたわけでございます。
その経過が、恐縮ですが、1枚目に戻っていただきます。6月末に申請を締め切りました。その前に法科大学院の仕組みそのものにつきましては、先ほど来いろいろとお話がございますように、推進本部等を中心に様々な方面に御指導いただきながら、国会での立法を含め立ち上がってきたものでございます。大変各方面から御協力いただいたわけでございますが、それが6月末に申請締め切りとなりまして、7月にそれを受けて文部科学大臣から設置の認可の可否について諮問をいたしました。
法科大学院特別審査会については、法曹関係者、法学部関係者あるいは大学長の有識者、こういう方々から成り立っております。総計27人でございますが、この審査に当たりましても、最高裁、法務省、弁護士会、さらには企業法務の関係から経済界等々様々にご参加をいただきまして審査をしていただきました。8月に一たんそこでの審査を踏まえて、各審議会の中でいろいろ出てきております指摘を整理をいたしまして、各申請者に一旦まとめてお伝えをいたしました。それは8月から9月にかけてでございますが、その結果、さらに補正をしたものを出していただきまして、その補正のチャンスを経たものを申請いたしまして、最終的には11月に答申が出たわけでございます。11月20日、21日でございましたが、ぎりぎりまで土日も返上しての審査をしていただきました。11月27日にこれで認可の手続となりましたが、申請校72大学、入学定員予定 5,950人に対し、認可をされましたのが66大学( 5,430人)、保留になっておりますものが2大学ございますが、これが175人、これは認可される可能性もございますし、不認可になる可能性もございますが、その結果は1月に判明をいたします。不認可が4大学(295人)ということでございました。文部科学大臣からは、司法制度改革の重要性にかんがみ、事務的にではなく、特に自ら認可証を交付したいという指示がございまして、全国に散らばっております大学でございますが、わざわざお越しをいただきまして、独立の大学院大学をつくられました大宮法科大学院への手交を筆頭といたしまして、直接お渡しをさせていただいたということでございます。
資料3の3枚目以降に個別の表が載っております。個別の表の紹介は省略をさせていただきますが、例えば規模の大きいもので申しますと、国立で言えば、東京大学の300人とか、京都大学の200人とか、あるいは100人規模のものもございますし、30人規模、連合大学院というような特色のあるものもございます。私立で申しますと、中央大学の300人や早稲田大学の300人、慶應の260人や明治のように200人といったところが多いところでございますし、同じように非常に規模的には30名というようなところまで様々な特色があるわけでございます。
併せまして判定の不可となったもの、保留となったものを載せてございます。
今後の予定でございますけれども、1つは、大学側におきましては、これから学生の募集をいたしまして、1月から2月にかけて入学者の選抜を行いまして、4月から学生を受け入れるという予定でございます。
先ほど予算のお話も話題にのぼっておりましたが、これに限らず法曹界の人員派遣等を含め、今後さらに様々な方面に御指導、御支援をいただきながら、法科大学院の発展につながるように尽くしていく必要がございますので、どうぞよろしくお願いいたします。 以上でございます。
【佐藤座長】 どうもありがとうございました。
それでは、野沢法務大臣にお越しいただいていることもありますので、顧問の皆様から、司法制度改革全般について、どのようなテーマでもよろしゅうございますので、大所高所からの御意見をちょうだいできればと思います。また、ただいまの事務局及び文部科学省からの説明等について、御質問があれば、この機会にお願いしたいと思います。
【野沢法務大臣】 文科省に伺いたいのですが、法科大学院でそろそろ募集を始めているところもあると伺っておるのですが、応募状況はいかがでしょう。門前市をなすということなのか、それとも定員そこそこなのか、あるいは足らないところもあるのかという、その辺の感じですね。学校にもよるかもしれませんが。
【文部科学省】 募集そのものにつきましては、認可がおりましてからあと手続を始めておりますので、個別の大学につきましては、まだ、大体こんな状況だろうというところまでいっておらないと思います。まだ始まったばかりでございます。ただ、最終的にどうなるかということについて申し上げますと、この法科大学院につきましては、適性試験というものをその前に受けてから各大学の受験をするわけでございますが、この適性試験につきましては、2つの機関が夏から秋にかけて行っております。1つが日弁連の法務研究財団で行われたものでございます。これは8月に行われましたが、極めて大ざっぱに申しますと、約2万人の受験者がございました。それから、2回行われました大学入試センターの分につきましては、合計をいたしますと、極めて大ざっぱに申し上げますと、3万5,000人の受験者がございました。当然両方受けておられる方もあるかと思いますけれども、これを考えますと、大体物すごく大ざっぱに申しまして、4〜5万人の方が受験をしておられることになります。
ところで現時点での入学定員の認可の予定がおおむね今保留の部分がございますけれども、5,500人内外というふうに考えたといたしますと、相当な倍率になるかと存じます。これが受験日なども重なって受けられないところもございましょうけれども、いくつかにばらつきますので、第1回ということもございまして、概ねとしてみれば極めて関心が高いということは言えるかと存じますけれども、個別の大学の情勢はまだ判明するに至っておられないと、こういうことでございます。
【野沢法務大臣】 今、大筋では10倍近い応募者がありそうだということですね。
【文部科学省】 はい。適性試験の状況から判断をいたしますと、そういう可能性がございます。
【野沢法務大臣】 そうですか。ありがとうございました。
【佐藤座長】 よろしゅうございますか。顧問の方、いかがでしょうか。どうぞ、今井顧問。
【今井顧問】 2つ申し上げたいのですが、1つは、国際化の問題でも出ましたけれども、日本の法文の英訳化の問題であります。この前の会議でも話題になりましたが、各省の所管であるためになかなか一律にいかないというお話がございました。しかし、これから非常にグローバル化が進んで、日本の企業がどんどん外へ出て行き、外国との取引も増えるわけでございますから、やはり日本の法律を英文にして、これを外の人によく理解してもらうことは非常に必要だと思います。この前、座長も英訳をする方向で検討されるとおっしゃったと思いますが、これをぜひ顧問会議の意見として取り上げていただければと思います。
また、知財高裁についてはいろいろと御検討いただいており、今日の日経新聞にも知財高裁に関する記事が載っておりましたが、私どもといたしましては、これから日本が知財立国といいますか、むしろ非常に知財関係を重視していくべきであります。単なる労働集約的な競争ではどうしようもないわけですから。その意味で9番目の独立した知財高裁をつくっていただきたいというのが経済界全体の非常に強い要望であります。そして、判決の内容が充実してきますと、それが1つのスタンダードになって、日本の判決が世界のスタンダードになっていくと思います。これを是非実現するためにも、内容が同じであれば、9番目の高裁として進めていただきたい。これが産業界の要望でございます。
以上でございます。
【佐藤座長】 どうもありがとうございました。英訳のことにつきましては、すぐ後でお諮りしたいと思いますが、知財高裁について、中山座長代理、何かございますか。
【中山座長代理】 知的財産の推進計画以来、おっしゃるとおり、知的財産の専門の高等裁判所を作って欲しいという意見が強いものですから、その方向で検討しておりますし、検討会の趨勢もその方向にあるわけですけれども、ただ、第9番目の独立した特別裁判所を作ったらいいのか、あるいは東京高等裁判所、現在の高裁内に何らかの半独立といいますか、特別な社内カンパニーのようなものを作ってやった方がいいのかという点につきましては、これはどちらの方がより合理的あるいは利便性が高いかという問題がございまして、例えば管轄問題、職分管轄1つとりましても、ちょっと間違いますと、かえって利便性を損なう、あるいは管轄問題で入り口で争って訴訟が長引く等々の弊害はあり得ます。
これは特別裁判所を作るときには常にあるわけですけれど、人の問題とプラスいたしまして、職分管轄の問題というのは一番難しいわけでございまして、そこの問題をどうしたらいいのかというのは現在検討中でございまして、今日の午前中も訴訟法の専門の学者を招いて意見を聴取しておりますし検討をしております。しかし、何らかの意味で、知的財産高等裁判所を作るということは検討課題の趨勢でございます。
以上でございます。
【佐藤座長】 よろしゅうございますか。メリット・デメリット、どちらの方向がいいのかということについては、現在なおいろいろと検討している、そういう状況にあるということでございますね。
【中山座長代理】 はい。
【笹森顧問】 意見と質問も少し入りますが、いくつかお聞きしたいと思います。
まず最初に裁判員制度の問題なのですけれども、座長試案という問題についてちょっと御意見を言いたいと思います。
今日、井上先生もお越しになっておりますが、衆議院選挙のいわば政治的空白期間に座長試案が突然出されたと報道で見ましてびっくりしたのですけれども、意見対立がこの問題については、検討会だけでなくて、かなり世の中の広い範囲の中でも意見の相違がある問題だけに、座長試案の提出のタイミングがいかがだったのかなと、こういうことをまず感じとして申し上げたい。
その上で、内容的な問題なのですが、員数が裁判官3名、市民が4名あるいは5〜6名という、そういう内容になっていると受けとめていますが、もともとがここの問題については、裁判官が1名ないし2名、裁判員が9名以上、あるいは11名といったように、意見もかなり幅が広くありますね。したがって、員数問題というのはどういうふうにとらえるのかということだと思うのですが、司法制度改革審議会の意見書の趣旨からすると、冒頭大臣が触れられた、司法を国民に身近な存在として置くのだということを言った場合に、ここの裁判員制度というのは一番根本の問題になるのではないかと思っています。つまり国民の大きな参加で実質的な司法への参加を担保するのか、ささやかな関与でもってお茶を濁すのかと、こういうことだろうと思いますが、今の状況から言うと、座長試案の数というのは、そのことを全く小さな方向、あるいは今の裁判官に対して、そのままの数でいいではないかと、ちょっと付け足しをして一般的な市民をそこに入れればいいではないか、こんなふうな数になってしまうのではないかというふうに思いますので、もし、この数でやるならば、私はこんな裁判員制度は作らない方がもっとましではないかと率直に思っております。
それから、この顧問会議で、そうは言っても数まで合意するということはできないと思いますが、理念については合わせておく必要がある。数の問題について、これは最終的に来年の11月という最終結論を出すという時間設定もあるのですが、今の状況から言うと、時間がかかってもいいから、でき得れば座長試案を一度白紙に戻していただいて、原点に返って検討を最初からスタートし直していただきたい。と申しますのも、検討会のメンバーが専門家に偏っているというような状況にもなっていますので、一般的な方々の意見がそこでどう反映されるのか、一般的な方がそこに参加しやすいということはどうなのか。そういう問題についてももっともっと議論を広げていかなければいけないだろう。ここの部分については、特に守秘義務の関係、罰則の問題、これはあまりにも厳しすぎますよ。こんなことだったら、やりたくないという人がほとんどだと思うんですね。
したがって、そういう問題について、私はもう少し配慮をした中身になるような、その上で、さらにまた参加をしやすくする。数については、なぜ、裁判員を入れなければいけないのか。神学論争するつもりは全くありませんけれども、この必要性について、意見書の趣旨は是非生かしていただきたい。小島顧問のメモが出されておりますけれども、そういうような観点で書かれているのではないかと、今、読まさせていただきました。
それから、労働検討会の部分です。菅野先生のお話の中にありましたけれども、具体的設計の問題について、確か前々回の顧問会議だったと思いますが、意見を申し上げた経過があります。これは言わずもがなのことでありますけれども、年間 100万件もあると言われている個別労使紛争の迅速、有効な解決手段として期待される制度、労働審判というのはそういうものだと思います。これは座長をはじめ大変な努力で敬意を表したいと思うのですが、ここの審判手続等の具体的な制度設計に当たって、関係者の意見を十分踏まえた内容になっていくように努力をお願いをしたい。制度が十分に機能するためにはマンパワーが非常に重要になります。そういう意味で、労働審判員の研修制度について、ここの部分については、予算措置を含めて十分な配慮をしていくべきだろうということを申し上げておきたいと思います。
それから、行政訴訟検討会の問題ですが、前回も意見交換させていただきました。これは今の状況から言うと、さらに大きな改革に向けた方向づけをしていただく必要があるのかなと、こういうふうに思っています。ここではつい最近、新東京国際空港の成田訴訟の問題が出ましたね。いろんな社説の中で書かれていたのですが、特に朝日の夕刊の社説の中に、この顧問会議が設置をされた冒頭に小泉総理の方から言われた「思い出の事件を裁く最高裁」という戦後さながらの長期裁判だと、こういうことになっています。ここは中身をよく見ていきますと、行政訴訟が今まで持っている問題点というものについて極めて大きな指摘がされているという内容になっておりますので、できれば、いろいろ長く申し上げたい部分もあるのですが、ここの社説の部分の意味合いを受けとめていただいて、「さらに大きな改革に向かっての方向性」を付けていただければと思います。 それから、司法アクセス検討会の問題なのですが、これは労働事件には敗訴者負担制度の導入はしないでいただきたいというのが私の意見です。検討が進められているようですけれども、労働事件については、導入すべきではないという意見がかなり多いだろうと私どもは受けとめておりまして、そういう意味では労働事件関係者の意見を十分に聞いていただいて、導入の方向については、これは是非そうならないように、ここは併せて消費者訴訟の分についても同じような扱いをしていただければと思います。
それから、ADR検討会なのですが、ADRについては、消費者、労働者が被害を被ることのないような慎重な対応という部分も是非お願いをしておきたいと思います。前々回だったですか、小泉総理自身もADRという言葉自体、何だかよく分からないなと、この会議の中でも言われていたのですが、日本では外国に比べるとまだまだこの問題については言葉の解釈も含めて発展途上だろうと思っているのですけれども、実質的にあまりない中で、様々な法的な効力を与えるというのはもうちょっと慎重であるべきではないかと思っております。そういう意味では、法的知識が十分でない場合が多いわけですから、不適切なADRを主宰できるような法改正にならぬよう慎重に慎重を期すべきだろうと思います。
それから、法曹養成検討会の部分について、ここは法科大学院の問題もそれだけ希望者があるのは非常に歓迎すべきで喜ばしいことなのですが、法曹人材をどう育成、増強していくかということを考えた場合に、弁護士の数も増員が当然必要になってくるのですが、当然それに見合う裁判官、検察官も増員しなければいけないだろう。ここの部分については、法曹人材の増強は法曹三者の部分について、それぞれの増員をきっちりと計画的にやっていくと。そうなってくると、法科大学院についても、軌道に乗るまでは財政支援が必要だと思いますし、それぞれの分野の増員の問題についても、極めて大きな予算措置を講じなければならない。これが欠けていくと、人だけが、該当者が出ても、そこに登用するという道が開けないわけですから、これについては、今日、大臣がお見えになっていますので、政府の方の大きな踏み込みをお願いしたい。
最後に国際化への問題、これは今井委員が触れられたものと全く同じでありまして、前回、あれだけの話の中でやりますよというような方向になっていったと思いますので、これについては、翻訳事業の推進とそのための体制整備、これをすぐに打ち出していただいて、こんなことは別に検討会のことを待たなくてもできるわけですから、直ちに着手するということについての確認を顧問会議としてしていただいて指示をしていただければと思います。
【佐藤座長】 どうもありがとうございました。どうぞ、奥島顧問。
【奥島顧問】 時間がないようでありますので、簡単に申し上げたいと思います。私は新しい制度を入れるときには、渋々入れたというのではその制度の将来がどうも危ぶまれると思います。やるのだったら、その制度をうまく生かしていくような方向で考えていこうというような、そういう姿勢か必要なのではないか。もちろん細かい議論をしますと、それぞれの議論がそういう形で一律にうまくいくわけではないことは分かっておりますが、ただ、いやいや入れたのだというのを国民に印象づけるような、そういう制度改革はやらない方がいいと思うのです。そのあたりを考えていただいて、ぜひとも裁判員制度の場合は、フランス、イタリア並みに3倍程度の人数を裁判官と裁判員との間の比率でお考えいただけないかというようなことも思っております。
また、ADRについても、どうも最近お聞きするところでは大分後退したイメージであり、そんなことだったらやらない方がいいのではないかと思うぐらいな感じも持っておりまして、そのあたりでも、どうせ入れるのであれば、ぜひともこれが社会の潤滑油として動けるような、そういう形でしっかりとしたものにしていただくようにお願いしたいと思うわけであります。
ですから逆に言いますと、知的財産訴訟の場合については、これを作るのであれば、私はほかにも作らなければいけない専門裁判所がたくさん出てくるのではないかと思います。そういうことよりも、事実上こういった機能を持った裁判所制度を整備していただくことが必要なのではないかと思っておりまして、そういう意味で制度設計をされる場合には、できるだけ新しい制度を採るのであれば、その制度の本来持っている意味合いができるだけ生きるように、そして、また、それを入れるのだったら横並びで、ほかのことについても全部お考えいただけるようにしていただきたいと思うのです。ということになりますと、結局、東京高裁の中のあるセクションを事実上の知財高等裁判所として整備していただけるということで、この制度についてはいいのではないかと思っておりますので、その点だけちょっとコメントさせていただきます。
【佐藤座長】 ありがとうございました。いくつかの論点が出てまいりました。まず最初に、今井顧問が、先ほど、それから、今、笹森顧問も触れられましたけど、法令等の外国訳について、前回、顧問会議として何らかの取りまとめをしたいということを申しましたけど、今日の御意見も踏まえて、顧問会議として、こういう議論をして、こういうことになりましたということを明確にする上でペーパーとして残しておいたらいいかと思っております。こんな文章はいかがかというように、少し今考えているのですけれども、読ませていただいてよろしゅうございますか。それでは、まず、これから入りたいと思います。「グローバル化する世界で,わが国の法令等が容易かつ正確に理解されることはきわめて重要である。これまで個別的需要に応じて,関係機関・関係団体において法令等の外国語訳が試みられてきたところであるが,今後は,関係機関・関係団体と協働しつつ,迅速かつ正確な外国語訳が行われるような体制整備を検討すべきである。」。簡単な文章ですけれども、こういうことで、我々としてこの問題について、こういう結論に至ったということでペーパーで残しておきたいと思いますけど、よろしゅうございますか。
(「はい」と声あり)
【佐藤座長】 それから、次でございますが、これも奥島顧問始め他の方もお触れになりましたけど、予算・定員についてでございます。特に法科大学院につきましては財政支援の話が法律でも書かれていることでございますし、奥島顧問も強調なさったところであります。それから裁判所、検察庁の定員の拡充の問題もございます。これらの点についても、我々顧問としてコンセンサスができているというか、共通の認識があるのではないかと思いますので、これも顧問会議として1つのペーパーとしてまとめておいたらどうかと思いますけど、いかがでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
【佐藤座長】 よろしゅうございますか。文章として、こんなものをちょっと考えております。予算・定員についてということですが、「国民にとってより身近で,速くて,頼りがいのある司法を構築するため,まず何よりも,司法に携わる人の養成にかかわる法科大学院に適切な予算措置を講ずることが不可欠であり,また,裁判所・検察庁への定員の拡充を推し進める必要がある。」というステートメントでございます。書けばいろいろ書かなくてはいけないということになるかもしれませんが、これで大体趣旨は尽きているのではないか、抽象的に言えば、大体こんなところかと思うのですが、いかがでしょうか。
(「はい」と声あり)
【佐藤座長】 よろしゅうございますか。これもペーパーとして残すことにします。
なぜ、こんなことをやるかと申しますと、最初からお話に出ておりますように、来年はいよいよ正念場です。そして今日いろいろな御報告を受けました。それについて、12月の今年最後の顧問会議でありますので、顧問会議としてこういうことであるということを審議の結果として明確にしておきたいという趣旨でございます。よろしゅうございましょうか。
それで、この2つの問題はそういうことでペーパーとして残して、顧問会議としての意思を確認しておくということにしたいと思います。次の問題は、先ほど笹森顧問がお触れになった裁判員制度の問題です。この問題を相当突っ込んでやりますと、なかなか難しいところがございます。司法制度改革審議会意見書そのものも、様々な考え方がある中でいろいろ議論をし、裁判官と裁判員が協働していい裁判を行う、裁判員が主体的・実質的に参与できるような、参加してよかった、意義があるということを裁判員として認識できるような、そういう制度的な仕組みにしてはどうか、ということでまとまったものでございます。
ただ、主体的・実質的、あるいは協働ということの中身が一体何なのかということについてはいろいろな考え方があるかもしれませんけど、大きな枠組みとしてはそういう枠組みで意見書はできているというように私は理解しております。審議会で委員として御一緒しました井上座長、試案について先程笹森顧問から御指摘がございましたけれども、その辺のことについて少し御説明いただければと思います。
【井上座長】 笹森顧問からいくつかの点について、非常に重要な御発言、御指摘、御質問があったと思います。全部フォローできているかどうか分からないのですけれど、まず先に座長ペーパーを示したタイミングあるいはこういうものを出したこと自体の当否についての御質問ないし御批判があったかと思いますが、これにつきましては、さきほども御報告しましたように、9月までの検討会で二巡議論をしましたので、それを基に、できれば事務局の方から骨格案のようなものを示していただいて、さらにそれを手がかりに議論を深めていくということで、御了解いただいていたところなのです。そうしませんと、もう二巡議論していますので、煮詰まっていて、そのまま議論を続けても同じことの繰り返しになってしまうものですから、そういうことにしていたのですけれども、事務局の方においては、ちょうど各政党を含め、各方面でこの問題についての議論がより本格的になってきたという状況もあって、その段階で何らかの骨格案を出すのはまだ時期尚早ではないか、そういうふうに判断されたのであります。
ただ、検討会の方としては、予定していた会合を2回キャンセルせざるを得なくなって、そのままでは議論が進まない。せっかく議論を積み上げてきたのですから、それを踏まえて、座長として1つの考えられる例を示して、それを踏み台というか、たたき台にしていただいて、さらに議論していただくのが検討会としてはいいのではないか。また、そのように検討会としては議論を独自のスケジュールで進めていくことによって、それも各方面での議論の参考にしていただけるのではないかと考えました。
そういうことから作ったものでして、あくまでたたき台であり、既にたたかれつつあるものですから、顧問からはこれを撤回してはどうかという発言がありましたけれど撤回するというような性質のものではないですし、はしごを外したようなことにもなりますので、そういうものだというようにお受けとりいただきたいと思います。
もう一つ、3番目に言われた時間の問題なのですが、来年の11月が目途というふうにおっしゃったと思うのですけれども、私の承知している限り、政府の推進計画では、来年の通常国会に関連法案を提出するということであったかと思います。
【佐藤座長】 11月というのは、推進本部の設置期間です。
【井上座長】 そうです。ですから、法案を提出するとすれば、残された時間はあまりないということになります。あまりないから拙速の議論でもよいというわけではむろんなく、検討会としては精一杯の時間を使って議論をしてきたつもりです。我々としては、何らかの結論を出すというのが検討会の使命だとは必ずしも考えておりませんで、あくまで本部が決定される、その基をといいますか、案を作られるのは事務局であって、その事務局に私たちが協力をするという立場なので、それに有益な議論を提供できればと、こういうことで議論をしてきたわけです。
また専門家ばかりの間で議論しているのではないかという御意見なのですけれども、司法制度改革審議会では、御存知のように、委員の過半数が非法律家であり、そこで先程佐藤座長からもお話があったように議論をして、一定の枠組みを作ったのであります。また我々の検討会でも、できる限りの方法で、一般の方々のパブリックコメント的なもの、各層からのご意見をいただき、いろいろなところの世論調査の結果なども当然十分参酌して議論してきたのでございます。決して専門家だけのたこつぼに入ったような議論をしているわけではございません。
ただ、これは十分御承知だと思いますが、裁判員制度は、対象として重大な、場合によっては死刑・無期、あるいは極めて長期の刑につながるような事件を扱うものでありますので、制度の具体的内容については慎重な上にも慎重な検討をしなければならない。そちらの方も忘れてはいけないわけです。
中身につきましても、ちょっと誤解があるかと思うのですが、私どもは、あくまで意見書の理念に基づいて、そこに示された一定の制度枠組みを前提に、それをさらに具体化する方向で議論してきたことは間違いないのです。むろん、先程佐藤座長からお話があったように、裁判員が主体的・実質的に関与し、その意味をあらしめるために具体的にどういう形にすればいいのかとういうところについては、意見の幅があります。しかし、これは審議会意見書自体が指摘しておりますが、裁判官と裁判員の数というものも重要な要素ではあるのですけれども、それだけが決定的なのではなく、公判審理の在り方とか、評決方法、裁判員の権限の在り方といったことと組み合わせて考えるべきである。そういう全体としても仕組みにより、実質的、実効的に関与できるということを担保することを考えていくべきであるということを指摘しています。
また、これも意見書が指示していることですが、裁判員制度の下においても、判決には実質的な理由を付さなければならず、そうした判決が書けるほど評議を実効的に行わなければならないのであります。そういうことも踏まえて、そういう全体の一要素として数というものがあるのだと、こういうふうに意見書は言っているのでありまして、我々もそれを十分踏まえて議論をしております。従って、大分感覚が違うのかもしれませんけれども、裁判官と裁判員とが同数程度とか、私が試しにお示しした裁判員4名ということだと付け足しであるとか、あるいはお茶を濁していると言われるのは、私としてはちょっと心外です。数の大小というよりは、裁判員に実質的、実効的に関与していただいて、裁判官と基本的に対等な立場でいい裁判を形成していく、そういう制度を目指して私どもも議論してきたということは是非理解していただきたいと思います。
詳細につきましては、私のペーパーについての説明をお手元に差し上げていますので、お忙しいでしょうけれども、是非一読お願いしたいと思います。
【佐藤座長】 笹森顧問からも奥島顧問からも人数の問題についても言及なさったわけですけれども、私自身は、先程の時期、いつやらなければいけないかという問題、笹森顧問が御指摘になったものに関連しますが、私自身は、これまで意見書が1つのセットを出していて、これを同時にこの3年間で実現するという前提でやってきているものですから、まず、そのこと自体は非常に私は物を進めていく上で大事なことだと思っております。ですから裁判員制度についても、是非とも次の通常国会で、そこで成立を目指して全力を尽くす必要があることではないかというように考えております。
一番大きな理念のところは、井上座長もおっしゃり、私も先程申しましたけれども、裁判官と裁判員が協働していい裁判をする、ただ、その場合に、素人の一般の国民と専門家という関係もございましょうから、そういうものも考慮しながら、やはり自分たちが参加して良かったというように思ってもらえるような、そういう仕組みは考えなければいけないと思います。人数がどうあるべきかについてははいろいろな考え方がある中で、顧問会議でこうだと人数を決めてしまうということはやや適当ではないと思います。笹森顧問もおっしゃり、奥島顧問もおっしゃり、あるいは井上座長がおっしゃったようなことも含めて、その心を酌み取って、具体的な制度化を早急にやっていただいて、次の通常国会に提出していただくということを目指すほかにないのではないかと思うのですけど。笹森顧問、いかがでしょうか。
【笹森顧問】 話の中で神学論争をするつもりありませんと申し上げたが、要は今の裁判官制度というのは3名でやられているわけです。それに対して審理に国民にどう参加させるか、今の3人でやられること自体がどうだったのかということについて、もう少し率直に受けとめておかなければいけないと思うのです。不具合な部分があったのではないか。不具合な部分についてもしそのままにすると、対等の協働作業だとは言われても、やっぱり専門家の中に素人が飛び込んで行って、専門家の方が、いろいろな今までの事例を含めて、扱っている事件に対して意見を言われて、そして判決の方向性が言われたときに、裁判員の数をあまりにも少ない数とした場合、それもほとんど裁判員と裁判官の数をイーブンのような状態でやった場合には、これは裁判員が意見を言えるような状況にはなりませんよ。
だとすれば、しゃばの空気だとか素人の意見だとか、ごく普通の生活をしている人たちの生活感覚の中でどうするかというと、今の裁判官の数だけは固定させておいて、参加する方の数はなるべく制限しましょうということで本当にそういうものができるのか。そこのところをよく考えていただきたいということです。
【井上座長】 ちょっとよろしいですか。
【佐藤座長】 どうぞ。
【井上座長】 私も神学論争をするつもりはないのですけれども、前提とされているところが審議会ないし検討会の前提となっているところとは違うのかなと思います。現在の裁判官3人で行っている裁判については、それはそれ自体として、基本的にはちゃんと機能しているという前提とされてきた。ただ、これまではあまりにも専門家だけでやってきたので、そこに国民の健全な常識を反映させることによって、より強固な、より質の高い裁判を実現していく。同時に、国民の方々も、主権者として、裁判は自分たちのものであるという意識を強く持っていただこう。こういうのが審議会意見書の趣旨だったと思うのです。それを十分踏まえて、我々は考えているわけです。
もう一つ、今の合議体の法定合議とか裁定合議は裁判官3人でやっているわけですが、それ自体を見直して、御破算で願いましてはというので裁判員制度を設計するというのも1つの考え方かもしれませんが、その制度は存置して、最も重大な事件を裁判員制度の対象にし、それよりは軽い事件については現行どおり3人の裁判官で裁判するということになるわけで、その両者のバランスをどうとるのか。また、特に裁判員制度になりましても、法律問題とか訴訟手続上の判断、これも場合によっては結論を左右する問題になるわけですが、そこのところは裁判官のみで行うというのが、少なくとも検討会での大勢の意見なのですけれども、そういう制度を組み込んだ場合に、果たして制度全体としてバランスがとれるのかどうか。そういったところもお考えいただいた方がよいのではないかと思います。
それともう一つ、これで終りにしますが、基本的なところで、裁判官グループと裁判員グループとが対立・対抗するという関係に立つというような捉え方をされて、その両者の数の比率ということでお考えのようですけれども、審議会意見書は必ずしもそのような考え方には立っていないと思いますし、検討会での議論では、裁判員が裁判官によって押しつぶされるとか、そこまでの見方はなかった。基本的な物の見方が異なるのかもしれませんけれども、少なくとも検討会では、そこまでの御意見を持つ方はおられなかったという気がします。
【佐藤座長】 笹森顧問も両者が対立してどうと、そういうことではなくて、専門家に圧倒されてしまって、あまり実質的、主体的な参加が難しくなるのではないかと、そういうことを懸念しておっしゃっているのではないかと思います。そういう前提ですけれども、今おっしゃったように、審議会の議論のときには、裁判官2人でいいのではないかという議論は出てこなかったことは確かなのです。その後、2人でも十分考えられるのではないか、そういう主張が出てきているということは承知しておりますが、ただ、この問題を顧問会議でどうだというように決め打ちするわけにはいきませんので、いろいろなことを考慮しながら法案を作成していただかなければならないということだろうと思います。
それで、これも先ほどと同じような手法で、委員の間で認識が違わないであろうところを、こういうようにちょっとまとめてみました。ちょっと読ませていただきます。「裁判員制度は、裁判内容に国民の健全な社会常識を反映せしめ、裁判への国民の信頼を高めるとともに、社会秩序の形成維持を自らの課題とするという国民の意識の転換を促そうとするものであり、その導入は今般の司法制度改革の最大の課題である。具体的な制度設計に当たっては、国民が参加の意義を十分に実感できるようなものとなるよう留意するとともに、制度の周知徹底や必要な施設等施行に必要な準備期間に配慮し、法律の早期実現に向けて全力を傾けるべきである。」というようなまとめ方でございます。それぞれの立場からは、不十分で、具体的なことを言ってないではないかとお叱りを受けると何なんですけれども、私としては審議会の意見書以来の、これまでのいろいろな経緯を踏まえて抽象的に述べれば、こういうことかなというように思っているのですけれども、いかがでございましょうか。
【笹森顧問】 顧問何人いるのでしたか、8人でしたか、7人。
【佐藤座長】 8人ですね。
【笹森顧問】 そのうち今日は4人しか出てきてないから、ここが一番関心のあるところだと思うので、座長がまとめるということについては反対いたしませんし結構ですが、最終的に4名の方の意見も伺った上で、それでいいということならそれで通すということにしたらどうですか。
【佐藤座長】 今日の段階では、これでペーパーとして残すということではなくて、御欠席の方の御意見も聞いてということですか。
【笹森顧問】 それでいければいいと思います。
【佐藤座長】 そうですか。では、この点については、そういうように取り扱わせていただきます。どうもありがとうございました。
それから、次に行政訴訟制度でございます。笹森顧問もお触れになりましたが、その御指摘に関連して、塩野座長の方で何かコメントなさるべきようなことがございますか。
【塩野座長】 さらに大きな改革に向けた方向で云々と、そういったお話で、今まで私どもが検討して詰めてきたことが何項目かございますけど、それについては御理解をいただいたものと考えております。問題はその後にどうするかということで、それについても検討会で十分検討させていただきたいと思っております。いろいろな積み残しといいますか、いろんなものがあるものですから、その中でも我々の任期はあと1年でございますから、その中でやれるもの、それから学説判例に委ねるもの、そういったものを整理してまいりたいと思います。
【佐藤座長】 この行政訴訟についても、文章をちょっと考えてきたのですけれども、こういうように考えております。よろしゅうございますか。「原告適格の拡大,義務付け訴訟の法定,差止訴訟の法定,仮の救済制度の整備等を含む,行政に対する司法審査の強化に向けての行政事件訴訟法の改正作業に全力で取り組む。なお,司法制度改革審議会意見書は,行政訴訟制度の見直しにあたっては,司法及び行政の役割を見据えた総合的多角的な検討が必要であるとし,行政訴訟制度の見直しの過程でも,訴訟手続の改革のみでは抜本的に対応できない問題意識が示されており,これを受けとめるにふさわしい体制を整えるための道筋をつける必要がある。」。そういう文章でありますけど、これも先ほどと同じような趣旨で、私どもの議論として、12月のこの段階でまとめておくということですが、いかがでございましょうか。よろしゅうございますか。
(「はい」と声あり)
【佐藤座長】 どうもありがとうございます。
それから、司法ネットについてでございます。アクセスの問題でありますけれども、先ほど来、これについても少し言及していただいておりますけれども、これも既に今日に限らず、これまでもこの顧問会議でいろいろ御議論いただきました。それを踏まえて、こういう形で今日の段階でまとめておければと思うのですけれども。一方的に座長が読んで、お叱りを受けると困るのですけど、こんな形でまとめてみました。「司法ネット構築に関する法律を立案するにあたっては,国民の正義へのユビキタス・アクセスを保障しようとするものであるという理念を明らかにするとともに,その理念にふさわしい内容の制度,その核として新たに設ける組織やその運営の在り方について定めるものとする。」。理念と運営主体を両方きちんと書いた、そういう法案を用意していただくということを言っているわけであります。これも抽象的に言うと、こういうことかなという感じなのですけれども、よろしゅうございますか。
(「はい」と声あり)
【佐藤座長】 ありがとうございます。
さらに労働裁判について、笹森顧問が先ほど御指摘になりましたし、それから、ADRにつきましては、笹森顧問が慎重な対応ということをおっしゃったのに対し、奥島顧問から、しっかりしたものを作るべきだという御指摘がございました。やや、違ったニュアンスの御指摘だったように思います。
それから、知財の問題につきましても、今井顧問が文字どおり、9番目のそういう高裁を作るべきだという御主張をなさったのに対し、先ほど奥島顧問の方から、事実上、そういうしっかり機能できるものであれば、むしろそっちの方を追求すべきではないかというような感じの御指摘がございました。この点は、中山座長代理が先ほど現在それぞれのメリット・デメリットといいますか、それを今検討している最中だとおっしゃいました。この点については、さらにそちらの方の検討に委ねて、しかるべき時期に、またこの顧問会議に出していただいて、私どもとして議論したいというように思います。そういう取扱いでよろしゅうございますか。
(「はい」と声あり)
【佐藤座長】 ありがとうございます。
それから、あと労働審判、労働裁判につきまして、何か菅野座長の方で、さらに付け加えて御指摘になりたいようなことがございますか。
【菅野座長】 笹森顧問が言われた関係者の意見を十分踏まえるというのは、私どもこれまでも意を尽くしてきたつもりでおりますが、今後も十分に心がけたいと思います。研修制度は大変重要な問題でありますので、これもそのような重要性を踏まえて検討したいと思います。
【佐藤座長】 どうもありがとうございます。何か関連してございましょうか。
今まで顧問の方から開陳されました御意見については大体カバーしたのではないかと思いますけど、何か落ちているというような御指摘ございませんでしょうか。よろしゅうございますか。
ペーパーの作成の方は間に合いませんね。
【事務局】 今現在作業しております。
【佐藤座長】 今、ペーパーを作成してもらっていますので、終わった後になるかもしれませんけれども、今日お配りしたいと思います。裁判員制度につきましては、先ほど笹森顧問が御指摘のように、他の顧問の方々の御意見も承って、御賛同が得られれば、今日の顧問会議の決定ということにさせていただければと思います。これはそういう取扱いをさせていただきたいと思います。
時間も予定よりも既にオーバーしておりますので、フリートーキングは以上でとどめさせていただきたいと思います。
なお、先ほど事務局から説明がありました判事補及び検事の経験の多様化のための弁護士職務経験制度につきましては、本日の議論を踏まえつつ、先ほど説明を受けたような方向で立案を行うということで、皆様よろしゅうございましょうか。
(「はい」と声あり)
【佐藤座長】 ありがとうございます。
それでは、閉会に当たりまして、副本部長であられる大臣の方からお言葉をちょうだいできればと思います。
【野沢法務大臣】 顧問の皆様には大変活発な御議論をいただきまして誠にありがとうございました。本日は顧問の皆様、各検討会の座長、座長代理の皆様から、私への御挨拶やら、現状報告をちょうだいしまして、皆々様の司法制度改革への情熱を感じ、大変心強く思った次第でございます。
また、最後の段階で、判事補や検事の弁護士職務経験制度についても、基本的方針の御了解をいただきましたことは、大変重要な課題であり、ありがたくちょうだいをいたしたいと思います。
また、先ほど御議論いただきました国際化を目指した法律の英訳化の問題、さらには予算要員の手当の問題、また裁判員制度の在り方、行政訴訟の今後の在り方、さらには司法ネット構築に関して大変まとまった形で顧問会議の御意見をペーパーとしてちょうだいできるということになりまして、大変私としてはありがたいプレゼントを年末にちょうだいできたと思っておる次第でございます。
今、司法制度制度改革推進本部といたしましては、これまでの御意見も踏まえまして、先ほどいただきましたペーパーも含めて、これを法案の形にまとめまして、来年の通常国会に、できるだけこれを提出し通過させていくという仕事が残っておりまして、これに今鋭意取組んでおるような次第でございます。普段は法務委員会というのはあまり法案は多くはない方ですが、来年は20本前後という空前の法案を提出するような次第になっておりますが、なかなかどこまで通せるか、非常に国会の状況は参議院選挙を控えて厳しいものがございます。大事なものから、そしてまた急ぐものから、何としても、この実現を図るためにも、国会の努力が必要でございます。通常国会へ関係法案を説明し、審議をお願いする私としては、本日の御意見は大変参考になりましたことを、最後に申し添えまして、これから、正念場に差しかかりました司法制度改革に引き続き努力してまいりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
ありがとうございました。
【佐藤座長】 ただいまの大臣のお言葉、大変だなと思いながらも、非常に心強く承りました。来年はいよいよ大変な年かと思いますけど、今日各検討会の座長の皆様においでいただきまして、御苦労の結果をお話しいただき、大変ありがたく思った次第です。御多用のところ、本当にどうもありがとうございました。また、顧問の皆様、今年も本当にありがとうございました。
事務局の方で何か、今後のことを。
【事務局長】 今日は長時間ありがとうございました。本当に胸突き八丁でございますが、最大限頑張っておりますので、御支援を賜りたいと思います。
次回は法案に向けての御承認をいただくという段取りになります。多分1月の下旬ころになるかと思いますけれども、是非よろしくお願い申し上げます。
今日はありがとうございました。
【佐藤座長】 では、どうもありがとうございました。
(以上)
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