首相官邸 首相官邸 トップページ
首相官邸 文字なし
 トップ会議等一覧司法制度改革推進本部顧問会議開催状況

司法制度改革推進本部顧問会議(第15回)議事概要



1 日 時  平成16年1月27日(火) 17:45〜18:45

2 場 所  総理大臣官邸小ホール

3 出席者

(顧問)
佐藤幸治座長、大宅映子顧問、奥島孝康顧問、佐々木毅顧問

(推進本部)
小泉純一郎本部長(内閣総理大臣)、福田康夫副本部長(内閣官房長官)、野沢太三副本部長(法務大臣)

(推進本部事務局等)
山崎潮事務局長、高橋宏志司法アクセス検討会座長、伊藤眞知的財産訴訟検討会座長、菅野和夫労働検討会座長他

4 議事次第
(1) 開会
(2) 内閣総理大臣あいさつ
(3) 平成16年通常国会提出予定法案について
(4) 閉会

5 配布資料[PDF形式]
 1 司法ネットについて(概要)
 2 知的財産関係事件への総合的な対応強化
 3 労働審判制度(仮称)の概要
 4 労働組合法の見直しについて(概要)(厚生労働省作成資料)
 5 検討会の検討状況について

6 会議経過

(1) 開会の後、小泉本部長から、概要以下のとおりあいさつがなされた。

 今年は司法制度改革の総仕上げの年である。司法ネット、知的財産高等裁判所、労働審判制度、裁判員制度等について顧問会議で御議論いただいた上で、必要な法案を速やかに策定し、国会に提出したいと考えている。「より身近で、速くて、頼りがいのある司法」を作り上げるため、各顧問の皆様には、一層の御支援をお願いしたい。

(2) 平成16年通常国会提出予定法案について


ア 山崎事務局長から、司法ネット、知的財産訴訟への総合的な対応強化、労働審判制度等について、資料1から3まで及び5に基づいて説明がなされた。その中で、司法ネットの中核となる運営主体の名称については、「総合法律支援センター」が適当と考えている旨の言及があった。続いて、厚生労働省・青木政策統括官から、労働組合法の見直しについて、資料4に基づいて説明がなされた。

イ 上記説明に関し、概要、以下のような質問・意見があった。

(司法ネットについて)


  • 司法ネットについては、どのくらいの規模、体制で臨むのか。具体的なプランがあれば提示してほしい。
     (事務局から、本部のほかに、地方裁判所本庁所在地に1つずつは置く必要があるので、少なくとも全国で50箇所は置くことになるが、この他、司法過疎地域に置くかどうか、大きな地裁支部所在地についてどうするかといった問題もあるが、最終的には需要に合わせて決めていきたい。現時点で全体の数が決まっているわけではない旨説明がなされた。)

  • いつ頃から発足することを目指しているのか。
     (事務局から、平成18年度中には業務を開始したい旨説明がなされた。)

  • 司法ネットが整備されることは、司法国家を目指す我が国にとってはたいへん結構なことだが、場合によっては、民業圧迫ということもあり得るかも知れない。また、各地方によっても事情が異なるので、あまり画一的に設けるものではないと考えており、その辺りの工夫はあるか。
     (事務局から、運営主体の行う業務は、採算性の観点から民間では対応が困難なものを対象としており、本来的に補完的・補充的なものであると考えている旨、また、司法過疎地域に必要数の弁護士が開業するようになれば、そこの事務所は撤退する等して民業圧迫にならないよう柔軟に対応していきたい旨、さらに、地方の実情に応じた対応を行う観点から、地域ごとに利用者等が参加する協議会を設置し、意見を求めながら進めていきたいと考えており、画一的な運営にならないように注意していきたい旨説明がなされた。)

  • 現時点では、どのくらいの規模でスタートしたいと考えているのか。また、運営主体について、適切な組織形態としてどのようなものを考えているのか。
     (事務局から、規模等については、制度の骨格を作っている段階なので、現時点では明確に申し上げられないが、地域の実情に従って進めていくことになると考えている旨、また、司法ネットの運営は司法との関連もあるので、裁判所関係者にも加わってもらうこと、個々の事件の内容に運営主体が影響を及ぼすことのないよう、弁護士の解任等については有識者等からなる委員会を設け、その裁定に従って判断することとしている旨説明がなされた。)

  • 業務の対象となる訴訟には刑事弁護も行政訴訟も含まれてくるので、弁護活動・訴訟活動の独立性の確保は重要である。
     (最後に高橋座長から、司法アクセス検討会でも、司法ネットは、いろいろの機関と連携しながら業務を行うものであり、補完的な位置づけ・役割を持つべきだとの議論、また、個々の弁護士の業務内容に圧力が加わることのないように注意すべきであるとの議論であった旨説明がなされた。)

(知的財産訴訟への総合的対応強化について)

  • 知的財産訴訟について、新たに知的財産高等裁判所(仮称)を創設することは、裁判制度にとって大きな変化となるものであるが、こうした制度改正によって、実際にどのような効果が期待できる見通しか。要望が大きいことは承知しているが、国民に分かりやすい納得を得られる説明をいただきたい。
     (事務局から、知的財産権を重視するという国家思想を内外にアピールすることが重要であり、これによって、知的財産権を尊重するという国民の意識を高め、国内における特許権等の侵害を防ぐ効果が期待されるとともに、海外からの模造品等の流入に対する抑止効果も期待されると考えている旨、特に、独立した裁判所を創設することで迅速な裁判が実現することを世界にアピールし、国際的な事件について、外国でなく日本の裁判所を利用してもらえるようになるという効果につながると期待しており、重要な課題であると認識している旨説明がなされた。)

  • 内外に対するメッセージ性は理解できるが、実際に目に見える効果が現れることを説得し得る材料としては、どこがどう変わることになるのか。
     (事務局から、昨年の民事訴訟法改正において、知的財産訴訟についての5人合議制や管轄の集約化、専門委員制度の導入等を措置しており、こうした措置を踏まえて迅速な裁判を実現するため、今回は組織面の措置として東京高等裁判所の中に知的財産高等裁判所を設けようとするものである旨、さらに、知的財産高等裁判所を組織的に独立させることによって、その中で専門家の育成もしっかりと行われることになると期待され、大きな効果があるものと考えている旨説明がなされた。)

  • 知的財産高等裁判所は東京高等裁判所とはいわば所帯が別になるものと考えているが、どの程度の規模になるのか。
     (事務局から、現在、東京高等裁判所で知的財産訴訟を担当している裁判官は16名おり、少なくともこの人数は確保することになるとともに、今後、事件が増加すれば更に増強する必要があるが、この人数でもかなりの大きさの組織として独立することになると考えている旨説明がなされた。)

  • 国民の側から見てイメージが湧かない。具体的にイメージが湧くような効果は何かないか。
     (事務局から、例えば、偽物が日本に持ち込まれた場合に、そのチェックと裁判が迅速に行われれば、偽物は撤退することになるといった効果があると考えられる旨、裁判が遅いと日本の裁判が利用されず、海外の裁判を利用せざるを得なくなり、我が国の企業にとっては極めて不便となるが、裁判が迅速化すれば日本の裁判が利用されるようになるという効果もある旨、また、調査官の権限を拡大・明確化することによって専門性をより迅速に裁判に投影させることとしており、迅速で的確な裁判の実現が期待できる旨、今般の制度改正は米国のCAFCを念頭に置いて議論されているが、知的財産訴訟についての専門的な裁判所で判決が示されれば、各国で持つその事実上の効力は大きく、産業界としてはそうした判決に基づいて交渉を進めることができるようになるという点に意義がある旨説明がなされた。)

  • どのくらいのスピードで裁判を行うことを目標としているのか。
     (事務局から、地方裁判所レベルでは近年相当迅速化が図られ、平均13か月強程度となっており、具体的に目標数値を挙げることは難しいが、この期間を更に短縮していくことが目標である旨、東京高等裁判所では概ね半年程度で処理することを目標に取り組んでいる旨説明がなされた。)

  • 知的財産訴訟を非公開で行うことは非常に大きな意義があると考えているが、従来から憲法との関係で議論のあるところである。この点はどのように考えているのか。
     (伊藤座長から、憲法上の裁判の公開原則に照らして合理的なものである必要があり、検討会においても、憲法学者から学説上問題がないか意見を聴いて検討を行い、知的財産権の適切な保護のために適正な審理を実現するという目的に照らし、必要があれば非公開審理を行う可能性を認めることは憲法上問題ないと考えて、厳格な要件の下に新たな制度を構想するに至った旨説明がなされた。)

  • 調査官制度と専門委員制度の関係はどうか。
     (事務局から、専門委員制度は知的財産訴訟に限らず他の専門的な事件でも利用されるものであり、事件単位で必要な専門家を選んでいく制度であるが、調査官は事件ごとに選ばれるのではなく常勤であるとともに、技術的な専門性だけでなく特許法等の法律的な専門性も有する者であり、専門委員とは役割が異なっている旨説明がなされた。)

(労働審判制度について)

  • 労働審判制度が機能すれば、随分変わってくる局面があるのではないか。
     (菅野座長から、労働審判制度については、労使関係者、日弁連、学者の一致した熱意、御努力により、労働調停制度を包含した新たな制度として導入することとなったものであり、たいへんありがたいと考えている旨、労働関係事件では、通常の裁判手続では重すぎる面もあり、労働審判制度がうまく機能すれば、裁判所でも労働関係事件の特徴に即した紛争解決が促進されるようになると期待される旨説明がなされた。)

  • 労働審判員2名は、具体的にはどのような人を想定しているのか。
     (事務局から、労使双方の有識者ということになるが、それぞれで訓練をしていただいたり、裁判所でも受け入れるための努力をしていただく必要があると考えている旨、具体的な人選については、裁判所も実情を承知していない面があるので、労使それぞれから推薦していただいた中から判断していくことになるのではないかと考えられる旨説明がなされた。
     菅野座長から、労使関係の現場で苦労された人材というイメージであり、労使それぞれの立場で共通の意識を持って紛争解決等に携わってきた人材の知識経験を生かすことで、迅速かつ適切な紛争解決を図れるのではないかという発想である旨説明がなされた。)

  • 労働審判員はコンスタントな職か、それとも、人材をプールしておいて事件ごとに来てもらうのか。
     (事務局から、一定の任期で選任された者の中から個別の事件ごとに労働審判委員会を構成していただくことになると考えている旨、調停委員と同様にあらかじめ任命しておいて事件ごとに指定していくイメージである旨説明がなされた。)

(労働組合法の見直しについて)

  • 不当労働行為審査事件の中央労働委員会における再審査は時間がかかっているようだが、どういう理由によるのか。
     (厚生労働省から、審査の途中での証拠調べが長くなったり、将来の円滑な労使関係のために和解を進めて慎重に話を聞いたりすることがあること等が考えられる旨説明がなされた。)

  • 中央労働委員会では公益委員15人全員で審査していたものを小委員会方式にするということだが、最高裁判所の大法廷や小法廷といったイメージか。
     (厚生労働省から、15人全員の合議だと委員の日程調整が困難である旨、小委員会で審査することにより、3つの小委員会で並行して審査が可能となり迅速に処理できるようになるとともに、少人数で審査する方が議論がより深まると考えられる旨説明がなされた。)

ウ 司法ネット、知的財産訴訟、労働審判制度について、本日の議論を踏まえて、事務局の説明の方向で立案を行うことで了承された。

(3) 野沢副本部長から概要以下のとおりあいさつがなされた。

 本日は、この通常国会へ法案の提出を予定しているものについて具体的な構想案を示し協議をいただいた。いずれの課題も現下の日本の社会経済情勢を見ると極めて重要な課題であると考えている。司法制度改革は、我が国司法の在り方を半世紀ぶりに見直す、歴史的意義を有する改革であり、私も大詰めを迎えた司法制度改革の達成に全力を尽くすつもりである。引き続き、皆様の御理解と御支援をお願いする。

以 上
文責:司法制度改革推進本部事務局
注)速報のため、事後修正の可能性あり